JP7306178B2 - 照明装置 - Google Patents
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Description
本発明は、上述した問題を解決するものであり、物体が自然な色合いで視認されるような光を出力できる照明装置を提供することを目的とする。
以下に説明する第1及び第2の実施形態に係る照明装置は、舞台あるいはスタジオ等の色を変化させることが必要な空間を照明するための照明装置であることを想定するものとする。第1及び第2の実施形態に係る照明装置は、舞台あるいはスタジオ等の色を変化させることが必要な空間を照明するものであれば良く、天井や壁などに固定するものであっても良いし、スタンドにセットされるものであっても良い。なお、一般に、人間の目で感じとれることが可能な可視光線は波長が380nm~780nmの範囲とされている。このため、第1および第2実施形態においては、波長が380nm~780nmの範囲の光について説明するものとする。
図1は、第1の実施形態に係る照明装置1の外観構成例を示す図である。
図1に示す構成例において、照明装置1は、光源や点灯制御部を具備する筐体を有する。照明装置1の筐体は、天井または壁などに固定される。第1の実施形態では、照明装置1は、光源からの光がカラーフィルタを介して出力されることを想定して説明するものとする。すなわち、第1の実施形態に係る照明装置1は、舞台あるいはスタジオ等の空間における色を演出するため、カラーフィルタを装着して出力する光の色を変化させるものとする。図1に示す構成例において、照明装置1は、光源からの光をカラーフィルタを介して出力させるために、カラーフィルタを装着するための構成を有する。
図2に示す構成例において、照明装置1は、光源部11(第1光源11A、第2光源11B)、点灯制御部12、および、フィルタ装着部13を有する。
光源部11は、1又は複数の光源により構成する。光源部11は、白色の光源を含むものであれば良い。第1の実施形態において、光源部11は、光源として単数または複数のLEDを有するものとする。
フィルタ装着部13は、オペレータが選択する色のカラーフィルタCFが光源部11から発する光に対してかけられるようにカラーフィルタCFを保持する。すなわち、照明装置1は、光源部11からの光がフィルタ装着部13に装着されたカラーフィルタCFを介して出力されるように構成される。
図3および図4は、照明装置1に対する比較例としての照明装置が発光する光の分光分布を示す図である。図3は、ハロゲンランプを光源とする照明装置にカラーフィルタ(青のカラーフィルタ)を装着した場合の光の分光分布を示す図である。また、図4は、白色LEDを光源とする照明装置に青のカラーフィルタを装着した場合の光の分光分布を示す図である。
人間が視認する物体の色は、人間の目の感度と物体が発する色(物体が反射する光の波長)とが関連する。人間の目の感度を示す情報としては、等色関数と呼ばれるものが知られている。等色関数は、人間の目に対応する分光応答度を示すものである。
図5に示すように、等色関数は、3つの曲線z(λ)、曲線y(λ)および曲線x(λ)を有する。各曲線は、人間が知覚する色を数値化する指標として用いられる。図5に示す等色関数において、曲線x(λ)は、等色関数における最も長い波長での相対値のピークを有する。等色関数の曲線x(λ)では、約600nmの波長において、最も大きい波長での相対値のピークを形成する。すなわち、等色関数において、相対値がピークとなる最も長い波長は約600nmである。このような等色関数に従えば、600nm以上の波長領域においては光の波長が長くなればなるほど、色として数値化するのが困難となる(つまり、等色関数への寄与が小さくなる)。
上述したように、第1光源11Aは、発光素子として白色LEDを有する。白色LEDは、等色関数で数値化できる光色の光を発光するものである。第2光源11Bは、発光素子としてピーク波長が650乃至660nm以上となる光を発光する特定波長のLEDを有する。特定波長のLEDは、等色関数への寄与が小さく等色関数では数値化が困難な波長(650乃至660nm以上)がピーク波長となる光を発光するものである。図7に示す例においては、680nm付近でピークとなる波長の光が特定波長のLEDから発光される光である。また、図7に示す例において、650nm未満でピークとなる波長の光が白色LEDから発光される光である。
図8は、図7に示す分光分布の光に青のカラーフィルタをかけた場合の分光分布を示す図である。図7に示す分光分布の光は、500nm以下でピークとなる波長の光と680nm付近でピークとなる波長の光とがカラーフィルタを通じて出力される。図8に示す分光分布は、図3に示すハロゲンランプを光源とする照明装置にカラーフィルタを装着した場合の分光分布と類似するものとなる。
上述した第1の実施形態では、照明装置1にカラーフィルタを装着することを想定して説明した。これに対して、第2の実施形態では、カラーフィルタを装着することを前提とせずに、光源部に設けた複数のLEDを組合わせて制御することにより所望の光を発光する照明装置について説明する。
図9は、第2の実施形態に係る照明装置101の構成例を示す図である。
図9に示す構成例において、照明装置101は、光源部111(第1光源111A、第2光源111B、第3光源111C、第4光源111D)および点灯制御部112を有する。
以下、特定波長の光と白色光とを照射した場合における色の見え方についての実験結果について説明する。
可視域の端部である680~780 nmの光を以下、Deep-Redと称する。
照明実験室に実験BOX(幅800 mm×奥行700 mm×高1200 mm)を設置して実験を行った。実験BOXは、基準室とテスト室に分け、各室の天井にLED照明装置が設置できるような構成とし、各室の内装と評価対象となるサンプルは同一にした。LED照明装置からの光は拡散板を通してそれぞれの実験BOXとしての部屋に照射されるようになっており、照度を下げる際はLED照明装置と拡散シートの間に黒い布製のフィルタを挟み実験を行った。これは、LED照明装置の入力電流を変えたことにより光色が変化することを防ぐためである。2つの部屋を同時に観察できないように、各部屋を黒のスチレンボードでマスキングし、150 mm角の窓から観察できるようにして実験を行った。
被験者は7名(女性、全員色覚正常、26歳~49歳、平均36.6歳)である。なお、被験者を女性中心としたのは、遺伝学的に色覚特性者が非常に少ないためである。
図10及び図11に、それぞれ基準室及びテスト室に設置したLED照明装置の分光分布を示す。基準室に設置したLED照明装置の光源は、紫LEDと蛍光体の構成であり、Deep-Redを含まない白色光を発する。テスト室に設置したLED照明装置の光源は、青色LEDと蛍光体とピーク波長が690nmのLEDとの構成であり、Deep-Redを含む白色光を発する。そして両光源の、色の見え方の代表的な評価指標である相関色温度、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R9、色域面積比Gaをほぼ同等の値とした。具体的には、基準室の光源の相関色温度、Ra、R9、Gaは、それぞれ2802K、98、92、101、テスト室の光源の相関色温度、Ra、R9、Gaは、それぞれ2806K、98、95、101とした。
評価サンプルは、実験BOX内の各室に同じように配置した。評価サンプルは、ちりめん布地(青、緑、赤、黄及び紫)、マクベスチャート(青、緑、赤、黄及び紫)、ワイン、ウィスキー、青磁及び白色票である。図12は、実験で使用した評価サンプルのCIE1976L*a*b*の測色値を示す。測定は二次元色彩輝度計を用いて500lx時に行い、測色値は、各評価サンプルの三刺激値と、各評価サンプルの位置でのN9.5色票(白色票)の基準白色面の三刺激値とから求めた。実際の実験での肌色の評価は被験者自身の手の甲を用いて評価を行ったが、表中には特殊演色評価用試験色R15(日本人の肌色)の測色値を示した。なお、光が透過する「ワイン」や「ウィスキー」、光沢が非常にある「青磁」は測定が困難であったために、測色値の計算は見送った。
手順1から手順7の流れで被験者7名に対して主観評価を行い、各照度条件各評価サンプルに対して24個の実験データを得た。なお、LED照明装置からの出力を安定させるために、実験はLED照明装置を2時間エージングした後に開始した。
1. 被験者は椅子に座り、実験者が室内照明を消灯する。
2. 被験者は実験方法について実験者から説明を受ける。
3. 実験者から実験開始の合図。
4. 被験者は実験BOXの窓から、基準室とテスト室を交互に観察。
5. 実験者が支持する評価サンプルに対して、被験者は評価を行う。主観評価は基準室の評価サンプルを基準にしたときの見え方について口頭回答する方式とした。
6. 各評価サンプルについて手順4と手順5を繰り返し行う。なお、各評価サンプルは、(マクベスチャート)青→緑→赤→黄→紫→(ちりめん布地)青→緑→赤→黄→紫→肌色→白色票→「ワイン」、「ウィスキー」、「青磁」の順で評価を行った。
7. 照度条件を変更して、30秒間順応した後再び手順4に戻る。なお、照度条件は
500lx →70lx →13lx →500lx →70lx →13lx →500lx →70lx →13lxの順に変更した。
評価サンプル11種類に対する主観評価の結果と、自由回答とした「ワイン」、「ウィスキー」、「青磁」の見え方に関する主なコメントを示す。
図14は、鮮やかさの主観評価の結果を示す。また、図15は、明るさの主観評価の結果を示す。横軸は色票の色、縦軸は主観評価の値(図14参照)である。また、棒グラフは、左から順に照度が13lx、70lx及び500lxである場合における主観評価の値をそれぞれ示す。棒グラフの高さは、被験者7名の平均値、誤差棒は標準誤差を表す。色票の色よって多少異なるが、鮮やかさ、明るさ共に平均値は全体的に0以上となっており、Deep-Redを含む白色光の方が含まない白色光に比べて、鮮やか及び明るい方向にシフトする傾向がみられた。また、照度に注目すると、色票の色によって多少のばらつきはみられるが、傾向としては照度が高くなるほど、鮮やかさと明るさ共に評価が高くなることが示された。
図16は、鮮やかさの主観評価の結果を示す。また、図17は、明るさの主観評価の結果を示す。横軸、縦軸、棒グラフの見方は前節と同様である。マクベスチャートよりは全体的に若干低い評価の方向にシフトおり、ばらつきもややみられるが、鮮やかさ、明るさ共に大多数の条件で平均値は0以上となり、照度が高くなるほど、鮮やかさと明るさ共に評価が高くなる傾向がみられた。
図18は、肌色の主観評価の結果を示す。横軸は評価の種類、縦軸は主観評価の値(図13参照)である。また、棒グラフは、左から順に照度が13lx、70lx及び500lxである場合における主観評価の値をそれぞれ示す。棒グラフの高さは被験者7名の平均値、誤差棒は標準誤差を表す。照度条件によらず、好ましさ、健康さ共に平均値は全体的に0以上となっており、Deep-Redを含む白色光の方が含まない白色光に比べて、好印象にシフトする傾向がみられた。特に照度が高くなるほど評価が高くなることが示された。
図19は、被験者7名からヒアリングをした主な結果を示す。これらは自由回答での意見であるが、少なくともDeep-Redを含んだ白色光が含んでいない白色光とは見え方が異なるといえる。特にDeep-Redを含んだ白色光は「ワイン」や「ウィスキー」については透明感や赤みに影響を与え、「青磁」については白さに影響を与える可能性がある。
Deep-Redを含む白色光(テスト室の照明)と含まない白色光(基準室の照明)を比較すると、色の見え方が異なることが実験からわかった。この主観評価の結果と測色値の違いとの整合性について、評価サンプルの色差から考察した。
実験に使用した2種類のLED照明装置は相関色温度とRa、R9、Gaを主観的な色の見え方に影響がないようにほぼ同等の値にしたが、その他の演色に関する数値は制御していなかった。図21は、Deep-Redを含まない白色光(基準室の照明)とDeep-Redを含む白色光(テスト室の照明)との演色に関する数値を示す。数値は、実験BOXの部屋内中央の位置で(500lx時。2時間エージング後)、分光放射照度計を使用して測定した値である。図21を見ると、実験で注意した指標以外も比較的差が小さくなっているが、特殊演色評価用試験色R12(青色の試験色)とDuvは大きくずれていることがわかる。R12の影響やDuvの影響8)は図12又は図20に示した測色値にも表れる可能性が高いため、純粋なDeep-Redを含む白色光の効果を取り出すには、R12やDuvも同等にした条件間での比較をする必要がある。
図22及び図23は、それぞれ基準室及びテスト室に設置したLED照明装置の分光分布を示す。評価指標である相関色温度、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R9、色域面積比Ga、特殊演色評価数R12、Duvをほぼ同等の値とした照明条件を用意した。なお、図24に基準室およびテスト室の照明条件での色度座標を示す。両者の色度座標は一致しないものの、MacAdam1step内に収まる違いとなっている。
上記と同様に実験を行い、主観評価の結果を示す。
図25は、鮮やかさの主観評価の結果を示す。また、図26は、明るさの主観評価の結果を示す。横軸は色票の色、縦軸は主観評価の値である。また、棒グラフは、左から順に照度が13lx、70lx及び500lxである場合における主観評価の値をそれぞれ示す。
図27は、鮮やかさの主観評価の結果を示す。また、図28は、明るさの主観評価の結果を示す。横軸、縦軸、棒グラフの見方は前節と同様である。
図29は、好ましさ主観評価の結果を示す。また、図30は、健康さの主観評価の結果を示す。横軸、縦軸、棒グラフの見方は前節と同様である。
(ワイン、ウィスキー、青磁)
図31は、被験者7名からヒアリングをした主な結果を示す。
図32は、実験結果の分析を示す。図32では、結果に有意差が存在する項目に「+」、「-」の記号を付している。「+」は結果にプラス方向に(つまり、ポジティブな方向)有意差が存在し、「-」は結果にマイナス方向(つまり、ネガティブな方向)に有意差が存在することを示している。
また、青緑は規則的な変化はせずに、赤黄紫と手肌はポジティブに変化している。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
光源を有する光源部と、
前記光源部の光源を発光させる点灯制御部と、を具備し、
前記光源部は、等色関数において相対値がピークとなる最も長い波長よりもさらに長い波長の領域においてピークを有する分光分布の光を発光する光源を含む、
照明装置。
[C2]
前記光源部は、ピーク波長が650nm以上となる分光分布を含む光を発光する光源を含む、
C1に記載の照明装置。
[C3]
前記光源部は、白色の光を発光する白色LEDを含む複数のLEDを有し、
前記点灯制御部は、白色LEDのみを点灯させる第1の点灯制御と白色LEDを含む複数のLEDを点灯させる第2の点灯制御とを切替える機能を有する、
C1又は2の何れか1項に記載の照明装置。
[C4]
前記光源部は、ピーク波長が500nm以下となる分光分布を含む光を発光する第1のLEDと、ピーク波長が500から600nm以下となる分光分布の光を発光する第2のLEDと、ピーク波長が600から650nm未満となる分光分布の光を発光する第3のLEDと、ピーク波長が650nm以上となる分光分布の光を発光する第4のLEDとを含み、
前記点灯制御部は、前記第1乃至第4のLEDの点灯を制御することにより前記光源部が出力する光の色を制御する、
C1に記載の照明装置。
Claims (2)
- ピーク波長が500nm以下となる分光分布を含む光を発光する第1のLEDと、ピーク波長が500から600nm以下となる分光分布の光を発光する第2のLEDと、ピーク波長が600から650nm未満となる分光分布の光を発光する第3のLEDと、等色関数において相対値がピークとなる最も長い波長よりもさらに長い波長の領域である680nm以上にピーク波長となる分光分布の光を発光する第4のLEDと、を備える光源部と、
前記光源部の光源を発光させる点灯制御部と、を具備する照明装置。 - 前記光源部は、さらに、白色LEDを有し、
前記点灯制御部は、前記白色LEDのみを点灯させる第1の点灯制御と、前記白色LEDを含む複数のLEDを点灯させる第2の点灯制御とを切替える機能を有する、
請求項1に記載の照明装置。
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