JP2007178424A - 色評価装置および色評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光源に依存しない物の色の見えを評価する色評価装置および色評価方法を提供する。
【解決手段】分光分布が異なる光源のもとにおいて被験者が所定の基本色に対して色相、明度または彩度を変化させて作成された複数のマンセル色票を見ることにより当該マンセル色票の前記基本色の色名と、当該色の構成要素を規定する白色、黒色、色みの合計値が一定となるように前記基本色の色名と当該色の各要素量を入力する視覚データ入力手段2と;色みの要素量に基づいて、さらに赤または緑と、黄または青の色み構成比率を算出する要素構成比率演算手段3と;色み構成比率と各要素量構成比率を出力する出力手段4と;を具備している。
【選択図】 図1
【解決手段】分光分布が異なる光源のもとにおいて被験者が所定の基本色に対して色相、明度または彩度を変化させて作成された複数のマンセル色票を見ることにより当該マンセル色票の前記基本色の色名と、当該色の構成要素を規定する白色、黒色、色みの合計値が一定となるように前記基本色の色名と当該色の各要素量を入力する視覚データ入力手段2と;色みの要素量に基づいて、さらに赤または緑と、黄または青の色み構成比率を算出する要素構成比率演算手段3と;色み構成比率と各要素量構成比率を出力する出力手段4と;を具備している。
【選択図】 図1
Description
本発明は色評価装置および色評価方法に関する。
物の色の見えは、物体を照らす光源の分光分布,物体の分光反射率,そして人間の視覚特性によって決まる。そして、JIS Z 8105・2000「色に関する用語」によると、演色とはイルミナントが、それで照明した種々の物体の色の見えに及ぼす効果である。特に、光源またはイルミナントの特性と考えたときには、演色性という。光源の色再現特性を調べる上でこの演色性の評価が重要となる。
今日までこの演色性の評価方法には、CIE(国際照明委員会)やJISで規定された演色評価数が使用されてきた。演色評価数とは、試料光源で照明したときの物体の色刺激値(心理物理学)が、その色順応を適切に考慮したうえで、基準イルミナントで照明した物体の心理物理量と一致する度合を示す数値である。そして、平均演色評価数Raは代表的な指標として用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−258047号公報
しかしながら、この平均演色評価数Raの値を見るだけでは光源の変化が人の色知覚にどのように影響するかを判断することができない。そのため、人の色知覚を考慮した演色性評価方法が必要とされている。
また、平均演色評価数Raは電球や三波長蛍光ランプの分光分布に基づいて算出しているために、分光分布がこれら電球や三波長蛍光ランプとは相違する発光ダイオードに対しては色の見えの指標としては必ずしも有効ではなかった。
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、光源に依存しない物の色の見えを評価する色評価装置および色評価方法を提供することを目的とする。
請求項1に係る発明は、分光分布が異なる光源のもとにおいて、被験者が所定の基本色に対して色相、明度または彩度を変化させて作成された複数のマンセル色票を見ることにより、当該マンセル色票の前記基本色の色名と、当該色の構成要素を規定する白色、黒色および色みの合計値が一定となるような当該色の各構成要素量を入力する視覚データ入力手段と;視覚データ入力手段により入力された色みの要素量に基づいて、さらに赤または緑と、黄または青の色み構成比率を算出する要素構成比率演算手段と;要素構成比率演算手段により算出された色み構成比率と各要素量構成比率を出力する出力手段と;を具備していることを特徴とする色評価装置である。
請求項3に係る発明は、分光分布が異なる光源のもとにおいて、被験者に所定の基本色に対して色相、明度または彩度を変化させて作成された複数のマンセル色票を見せ、当該マンセル色票の前記基本色の色名と、当該色の構成要素を規定する白色、黒色および色みの合計値が一定となるような前記基本色の各構成要素量を被験者に応答させる視覚実験ステップと;この視覚実験ステップにおいて、被験者が応答したマンセル色票の色名と当該色の要素量に基づいて、さらに赤または緑と、黄または青の色みの構成比率をそれぞれ算出する要素構成比率演算ステップと;を具備していることを特徴とする色評価方法である。
請求項4に係る発明は、色覚モデルCIECAM02の観察条件による試料光源の照明下において複数のマンセル色票を被験者に見せ、これらマンセル色票の色の構成要素を規定する白み、黒みまたは色みの合計値が所定値で一定となるような構成要素量を被験者に回答させる視覚実験において、得られた被験者の回答値と、上記マンセル色票の分光反射率をマンセル色票毎に入力させる第2の視覚データ入力手段と;この視覚データ入力手段により入力されたマンセル色票毎の分光反射率を上記CIECAM02に入力して明度J、彩度C、色相hを算出し、これら明度J、彩度Cを変数とした多項式の変換により黒みと色みとを算出し、この黒みと色みとの合計値を上記所定値から差し引くことにより白みを算出し、さらに、赤み、緑み、黄み、青みを、これらについての上記回答値の分布について色相hを変数としたガウス関数の最小二乗法により係数を決定した算出式により算出する第2の要素構成比率演算手段と;この第2の要素構成比率演算手段により算出された白み、黒み、色み、赤み、黄み、緑み、青みを出力する算出手段と;を具備していることを特徴とする色評価装置である。
請求項5に係る発明は、上記白みwの算出式が下記の(4)式であることを特徴とする請求項4記載の色評価装置である。
[数2]
w=10−s−c ……(4)
[数2]
w=10−s−c ……(4)
請求項6に係る発明は、上記黒みsの算出式が下記の(5)式であることを特徴とする請求項4記載の色評価装置である。
[数3]
s=0.0014J2+0.00035C2+0.003JC−0.311J
−0.2C+15 ……(5)
[数3]
s=0.0014J2+0.00035C2+0.003JC−0.311J
−0.2C+15 ……(5)
請求項7に係る発明は、上記色みcの算出式が下記の(6)式であることを特徴とする請求項4記載の色評価装置。
[数4]
c=−0.0025J+0.125C+1.5 ……(6)
[数4]
c=−0.0025J+0.125C+1.5 ……(6)
請求項1〜3に係る発明によれば、近似蛍光ランプ(D65)や白色発光ダイオード(LED)照明装置等光源が相違しても、色名が同一の色の構成要素の構成比率が殆ど変化しないので、この要素構成比率を光源に依存しない色評価指標や絶対色として使用することができる。
また、請求項4〜7に係る発明によっても、光源の分光分布の相違に拘らず、算出式により色の構成要素である黒み、白み、赤み、緑み、黄み、青みの構成比を求めることができる。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る色評価装置1の全体構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように色評価装置1は、視覚実験後の実験データを入力する視覚データ入力手段2、要素構成比率演算手段3、出力手段4を具備している。
視覚データ入力手段2としては、例えばキーボードやタッチパネル、マウス等がある。要素構成比率演算手段3は後述する要素構成比率算出式(1)を使用して要素構成比率を算出するプログラムをROMやRAM等の記録装置に記録し、この算出プログラムをCPUにより実行することにより、要素構成比率を求め、所要のグラフ等所要形式で出力手段4に出力するものである。出力手段4は、プリンタやモニタ等であり、要素構成比率演算手段3により求めた要素構成比率を所要形式で出力するものである。
視覚実験は人の色知覚を考慮した色の見え方評価指標を求めるための実験であり、まず、カテゴリカル・カラーネーミング法による色名視覚実験を実施した後、エレメントメンタルカラースケーリング法による要素構成比率視覚実験を実施して視覚実験データを取得する。以下、この視覚実験方法等を説明する。
(1)実験方法
視覚実験は暗室ブース内を分光分布が異なる複数種類の試料光源により照明し、そこに複数のマンセル色票を呈示し、このマンセル色票の見えについて、複数の被験者に各色視覚に基づく主観的評価をそれぞれさせる。マンセル色票に対する応答は、前述の色知覚に基づいた2つの手法で行なう。今回はこれら手法を別々に、それぞれ3回ずつ行なった。
視覚実験は暗室ブース内を分光分布が異なる複数種類の試料光源により照明し、そこに複数のマンセル色票を呈示し、このマンセル色票の見えについて、複数の被験者に各色視覚に基づく主観的評価をそれぞれさせる。マンセル色票に対する応答は、前述の色知覚に基づいた2つの手法で行なう。今回はこれら手法を別々に、それぞれ3回ずつ行なった。
(1−1)実験ブース
実験ブース内部は光源以外の光が入らないように遮光されており、光源の直下に、所定の間隔を置いて色票呈示台が設置してある。
実験ブース内部は光源以外の光が入らないように遮光されており、光源の直下に、所定の間隔を置いて色票呈示台が設置してある。
(1−2)色票呈示台
これは約10度視野マンセルN5相当の灰色の紙の中央に、被験者の視野角約4度視野に相当する窓が開いており、その窓からマンセル色票が見えるようになっている。
これは約10度視野マンセルN5相当の灰色の紙の中央に、被験者の視野角約4度視野に相当する窓が開いており、その窓からマンセル色票が見えるようになっている。
(1−3)光源
色温度5890Kの白色光を発光する近似蛍光ランプ(D65)と、色温度2800Kと7500Kの白色光をそれぞれ発光する2種類の発光ダイオード(LED)照明装置を使用した。この発光ダイオード(LED)照明装置は、青色発光ダイオードとこの発光ダイオードの青色光により励起されて黄色光を発光する黄色蛍光体とを具備し、これら青色光と黄色光の組合せ(合成)により白色光を発光する照明装置である。図2はこれら近似蛍光ランプ(D65)と2800Kの発光ダイオード照明装置の分光分布図である。照度は色票呈示台のマンセル色票部分で500lxとする。この照度測定はミノルタ社製のデジタル照度計T−10で行なった。
色温度5890Kの白色光を発光する近似蛍光ランプ(D65)と、色温度2800Kと7500Kの白色光をそれぞれ発光する2種類の発光ダイオード(LED)照明装置を使用した。この発光ダイオード(LED)照明装置は、青色発光ダイオードとこの発光ダイオードの青色光により励起されて黄色光を発光する黄色蛍光体とを具備し、これら青色光と黄色光の組合せ(合成)により白色光を発光する照明装置である。図2はこれら近似蛍光ランプ(D65)と2800Kの発光ダイオード照明装置の分光分布図である。照度は色票呈示台のマンセル色票部分で500lxとする。この照度測定はミノルタ社製のデジタル照度計T−10で行なった。
(1−4)色票
被験者が観察する試料色票はJIS準拠の管理色票であるマンセル色票を使用した。このマンセル色票は、色相H(Hue)、明度V(Value)、彩度C(Chroma)の三属性に基づいて作成されている。
被験者が観察する試料色票はJIS準拠の管理色票であるマンセル色票を使用した。このマンセル色票は、色相H(Hue)、明度V(Value)、彩度C(Chroma)の三属性に基づいて作成されている。
この視覚実験に用いたマンセル色票は色相Hが基本11色相の各5,10の20色相、明度Vが2,4,6,8、彩度Cが偶数のもの、無彩色がN2,4,6,8の4枚、合計292枚である。
(2)カテゴリカル・カラーネーミング実験
カテゴリカル・カラーネーミング法は、人が色を分類的に判別する知覚能力に基づいて、試料光源下での色票の色の見えを所定の基本色名から選択する色名視覚実験である。今回は赤・桃・橙・黄・緑・青・紫・茶・白・黒・灰の11の基本色を用いた。
カテゴリカル・カラーネーミング法は、人が色を分類的に判別する知覚能力に基づいて、試料光源下での色票の色の見えを所定の基本色名から選択する色名視覚実験である。今回は赤・桃・橙・黄・緑・青・紫・茶・白・黒・灰の11の基本色を用いた。
そして、この実験の3回の試行のうち、3回共応答した色名が一致した場合に、そのマンセル色票の色名とし、それ以外は不定とする。これをマンセル等明度面(V=2,4,6,8)上にプロットする。これにより、これら各明度での色名領域が得られる。
図3(a),(b)に示すようにV=6では光源による応答色名の変化が顕著であり、発光ダイオード照明装置では橙,青の色名領域が拡大している。このカテゴリカル・カラーネーミング法では色名領域の概形を得ることが容易である。しかし、このカテゴリカル・カラーネーミング法では、若干色みの異なるマンセル色票同士でも同一カテゴリに分類されてしまうと、色情報としては同一視されてしまう。つまり、同一光源内であっても異なる光源間であってもマンセル色票の色みの変化を見ることには適していない。
(3)エレメンタル・カラースケーリング実験
エレメンタル・カラースケーリング法は、色の強弱を判別する人の色知覚に基づく方法であり、マンセル色票の色の見えを構成する要素を被験者に主観的に応答させる要素比率視覚実験である。
エレメンタル・カラースケーリング法は、色の強弱を判別する人の色知覚に基づく方法であり、マンセル色票の色の見えを構成する要素を被験者に主観的に応答させる要素比率視覚実験である。
この方法は、NCS(Natural Color System)表色系に基づいている。NCS表色系は、色の見えが光源に依存しない表色系であるとされており、色をその構成要素である白色量w,黒色量s,色み量cの構成比率(割合)で表し、これら3つの構成要素の比率を感覚的に決めるところに特色がある。色相については反対色説に基づいて赤(R),緑(G),黄(Y),青(B)の4つの原色に分類され、隣接する原色との感覚的比率によって表される。すなわち、赤Rと緑G、黄Yと青Bはそれぞれ補色関係にあり、赤Rと緑Gが隣接している場合には、人はその一方の赤Rまたは緑Gしか見えない。黄Yと青Bも同様である。
このために、NCS表色系では白,黒,赤,緑,黄,青の6つの要素で色を表す。
この実験は、以下の手順で行なった。
まず、色の見えを白色量w,黒色量s,色み量cが
[数6]
w+s+c=10(所定値一定)
を満たすようにw,s,cに配点を行なう。点数は整数値とする。これにより、マンセル色票の色の見えの色み成分と無彩色成分の比が求められる。
[数6]
w+s+c=10(所定値一定)
を満たすようにw,s,cに配点を行なう。点数は整数値とする。これにより、マンセル色票の色の見えの色み成分と無彩色成分の比が求められる。
次に色相を決めるため、マンセル色票の色成分を良く表す原色を1色ないし2色選んで被験者に応答させる。2色選ぶ場合はより強く感じる原色を先に回答させ、続いてもう一方を回答させる。
すなわち、4原色R,G,B,Yの応答に対して、被験者が1色だけ答えた場合は、例えばその原色に満点の3点,2色答えた場合は先に答えた原色に2点,もう一方に1点,選ばれなかった原色は0点,と配点する。被験者はこれら配点を十分に熟知している。
配点がそれぞれ定まったら次の(3)式を用いて、これら6色の構成比率を求める。
[数7]
RまたはG=a
YまたはB=b
d=c×{a/(a+b)}
e=c×{b/(a+b)}
c=d+e
w+s+c=10
w+s+d+e=10 ……(3)
[数7]
RまたはG=a
YまたはB=b
d=c×{a/(a+b)}
e=c×{b/(a+b)}
c=d+e
w+s+c=10
w+s+d+e=10 ……(3)
これにより、算出された6色(白w,黒s,赤R,緑G,黄Y,青B)の数値の分布を要素別にマンセル等明度面上に表示する。マンセル平面状の黒い点がマンセル色票の座標を表す。マンセル平面状に表示することによって、カテゴリカル・カラーネーミング実験の結果と比較することができる。このエレメンタル・カラースケーリング法は色みの構成比に着目しているため、カテゴリカル・カラーネーミング法ではできなかったマンセル色票の色みの構成比を見ることができる。
図4は、近似蛍光ランプD65と2800Kの発光ダイオード照明装置について、カテゴリカル・カラーネーミング法での色名とエレメンタル・カラースケーリング法での要素配分の関係を調べるため、それぞれのカテゴリ内の色票における要素配分の平均を求めたときの色名と要素比率を示している。
この図4は、例えば桃と紫のように、色相だけでは同じ原色の組合せでも白や黒の要素の占める割合が相違するということが色名分類の重要な手掛かりになっていることを示している。
また、光源が変化してもカテゴリ別の要素配分値は殆ど変化しないことが判明した。仮に、白色光源照明下でこの要素配分値に大きな変化が見られないのであれば、この要素配分値を色名を代表する要素配分値と定義することができる。さらに、光源が変化しても被験者の応答色名が同じで、図4のような要素配分値になる色票が存在するならば、色名を代表する色票とすることも可能である。
そして、従来のカテゴリカル演色評価法CCRI(Categorical Color Rendering Index)では、色の見えモデルを用いた色名予測,色名領域予測の計算をする際に膨大な計算量を必要としていたため、十分性を保ちつつ色票を減らす案が検討されてきたが、今回の解析結果からカテゴリ別に色票を抽出する方法を考案することができた。今回の実験データから抽出する色票の候補を選び出して、他の光源を用いてカテゴリカル・カラーネーミング法とエレメンタル・カラースケーリング法の実験を行ない、適切な色票の選定を行なうことができる。
以上の手順で実施された視覚実験で得られた実験データは、上記色評価装置1に、その視覚データ入力手段2により入力される。これにより、要素構成比率演算手段3は、例えば図4で示すように11色の各基本色について、これら基本色をそれぞれ構成する6色の構成要素の構成比率を、NCS表色系の上記(3)式を使用して各光源についてそれぞれ算出する。
この要素構成比率演算手段3により演算された要素構成比率等の演算結果は、例えば図4で示すようなグラフ等所要の表示形式で出力される。
したがって、この色評価装置1によれば、11色の基本色について、その各色の要素の構成比率を各光源毎に、光源に依存しないNCS表色系の算出方法により算出するので、この要素構成比率を光源に依存しない演色評価指標として使用することができるうえに、絶対色に基づく色票を作成することができる。
図5は本発明の第2の実施形態に係る色評価装置1Aの構成を示す模式図である。この色評価装置1Aは、図1で示す色評価装置1において、その視覚データ入力手段2と要素構成比率演算手段3を、第2のデータ入力手段2Aと第2の要素構成比率演算手段3aにそれぞれ置換した点に主な特徴を有する。
すなわち、第1実施形態に係る視覚データ入力手段2では、例えば292枚のマンセル色票について実施したカテゴリカル・カラーネーミング実験とエレメンタル・カラースケーリング実験において、マンセル色票の色の見えを構成する要素比率を被験者に主観的に回答させた当該回答値を入力するが、第2の視覚データ入力手段2aでは、この回答値(応答値)と共に、各マンセル色標の分光反射率を入力する点で主な相違を有する。
また、第1実施形態に係る要素構成比率演算手段3は、色の構成要素を規定する白色(白み)、黒色(黒み)、色みの合計値が所定値で一定である点に基づいて、これら白み、黒み、色み、およびこの色みの赤(赤み)または緑(緑み)、黄(黄み)または青(青み)の構成比率を算出しているが、第2の要素構成比率演算手段3aは、公知の色覚モデルCIECAM02の平均的な周辺の観察条件に基づいて予め作成した算出式により、白み、黒み、色み、およびこの色みの赤み、緑み、黄み、青みの7要素の構成比率を算出する点で主に相違する。
すなわち、第2の要素構成比率演算手段3aは、基準光源である例えばD65による照明下における標準白色板の三刺激値X,Y,Zと、試料(サンプル)光源による照明下におけるマンセル色票292枚についての三刺激値X,Y,Zを、標準白色板と各マンセル色票の分光反射率をCIECAM02に入力することによりそれぞれ算出し、次に、これら三刺激値X,Y,Zに基づいてCIECAM02の平均的な周辺という観察条件の定数を設定する。例えば、c=0.69、Nc=1.0、F=1.0.
そして、第2の視覚データ入力手段2Aは、このように定数設定されたCIECAM02の色覚モデルに、各マンセル色票の分光反射率を入力することにより、色の成分、すなわち、白みw、黒みs、色みc、この色みの赤みr(R)、緑みg(G)、黄みy(Y)、青みb(B)の7要素を、下記の算出式(4)〜(10)により算出するプログラムをROMやRAM等の記録装置に記録し、この算出プログラムをCPU(中央演算装置)により実行することにより、要素構成比率を算出し、所要のグラフ等所要形式でプリンタやモニタ等の出力手段4に与えるものである。
そして、第2の視覚データ入力手段2Aは、このように定数設定されたCIECAM02の色覚モデルに、各マンセル色票の分光反射率を入力することにより、色の成分、すなわち、白みw、黒みs、色みc、この色みの赤みr(R)、緑みg(G)、黄みy(Y)、青みb(B)の7要素を、下記の算出式(4)〜(10)により算出するプログラムをROMやRAM等の記録装置に記録し、この算出プログラムをCPU(中央演算装置)により実行することにより、要素構成比率を算出し、所要のグラフ等所要形式でプリンタやモニタ等の出力手段4に与えるものである。
[数8]
w=10−s−c ……(4)
[数9]
s=0.0014J2+0.00035C2+0.003JC−0.311J
−0.2C+15 ……(5)
[数10]
c=−0.0025J+0.125C+1.5 ……(6)
w=10−s−c ……(4)
[数9]
s=0.0014J2+0.00035C2+0.003JC−0.311J
−0.2C+15 ……(5)
[数10]
c=−0.0025J+0.125C+1.5 ……(6)
次に、これら算出式(4)〜(10)を作成した方法について説明する。
[黒み、白み、色み]
図6(a)は292枚のマンセル色票の黒みsについての実験値(被験者の回答値)と、色覚モデルCIECAM02により算出した明度Jとの相対関係を示すグラフであり、同図(b)は同彩度Cとの相対関係を示すグラフである。なお、これら実験値は被験者が複数人いるので、その単純平均値を採用している。
図6(a)は292枚のマンセル色票の黒みsについての実験値(被験者の回答値)と、色覚モデルCIECAM02により算出した明度Jとの相対関係を示すグラフであり、同図(b)は同彩度Cとの相対関係を示すグラフである。なお、これら実験値は被験者が複数人いるので、その単純平均値を採用している。
この図6(a),(b)に示すように黒みsは明度Jと彩度Cに対して強い関連があり、色相hとの関連は弱いことを示している。これと同様に、色みcについても明度Jと彩度Cと強い関連がある。
すなわち、CIECAM02の明度J、彩度C、色相hは人の知覚値であり、白みw、黒みs、色みcは、その色の成分比率を人間の感覚判断によって測定されるエレメンタル色知覚値であるため、明度J、彩度Cを変数とした多次多項式の変換により、白みw、黒みs、色みcを予測することができると考えた。これから明度J、彩度Cの多次多項式の変換により白みw、黒みs、色みcを予測することができると考えられるため、標準偏差を「1」に近付ける最小二乗法により係数を決定し、以下のように(5),(6)式を作成した。
[数12]
w=10−s−c ……(4)
s=0.0014J2+0.00035C2+0.003JC−0.311J
−0.2C+15 ……(5)
c=−0.0025J+0.125C+1.5 ……(6)
[数12]
w=10−s−c ……(4)
s=0.0014J2+0.00035C2+0.003JC−0.311J
−0.2C+15 ……(5)
c=−0.0025J+0.125C+1.5 ……(6)
なお、白みwは、黒みsと色みcとの合計値(w+c)を、所定値(10)から差し引くことにより求める。これはエレメンタル・カラースケーリング実験において、w+s+c=10となるように被験者に評価させているからである。
図7(a)〜(c)はこれら算出式(4)〜(6)により算出した白みw、黒みs、色みcの算出値と実験値との相対関係を示しており、これら両者の誤差が小さいことを示している。
[赤み、緑み、黄み、青み]
図8はこれら色み成分の実験値を縦軸にとり、CIECAM02により算出した色相角を横軸にとっており、両者の相対関係を示している。
図8はこれら色み成分の実験値を縦軸にとり、CIECAM02により算出した色相角を横軸にとっており、両者の相対関係を示している。
図9(a)〜(d)はこれら色み成分の割合分布を各色み毎に解析したグラフを示している。
これら図8,図9に示すように、色みcの成分である赤みr、緑みg、黄みy、青みbは色相hに対して強い関連があることがわかる。また、それぞれの成分がおおよそガウス関数のよう形状を示しているため、色相hを変数としたガウス関数によって赤みr、緑みg、黄みy、青みbを予測することができると考えられる。しかしながら、赤みr、緑みg、黄みy、青みbのそれぞれがピークを境に左右で若干形状が異っている。
すなわち、青みbについては、赤みr寄りの青みbと、緑みg寄りの青みbでは分布形状が異なる。
また、青みbは、緑みgは低明度から高明度への変化とともに、ピークの色相角が左へシフトしていることが判明し、さらに同程度の色相hに注目することで明度J、彩度Cの影響を解析した。その解析結果を図10の一覧表に示している。
これにより、色相hを変数としたガウス関数に、同程度の色相hへの明度J、彩度Cの影響を考慮することにより、赤みr、緑みg、黄みy、青みbを予測することができると考えられるため、最小二乗法により係数を決定し、次の算出式(7)〜(10)を作成した。
図11はこれら(7),(8)式の係数α,β,γ,δの数値の一例を示している。
そして、図10に示すように、黄みyは、明度Jが増加するとそれに伴って増加し、彩度Cが増加してもそれに伴って増加する傾向がある。そして、ピークの色相角を80°とした算出式はガウス関数にそれらの要因を加味したものとなっている。
青みbは、ピークの左右で異なる傾向を示し、左では明度Jが増加するとそれに伴って増加する傾向がある。
しかし、右では明度Jが増加するとそれに伴って減少し、彩度Cが増加するとそれに伴って増加する傾向がある。そして、ピークの色相角が明度Jの増加とともに左にシフトしていることが分かったため、ピーク色相角は明度Jの変数とした。黄みyと同様に青みbeも算出式は、ガウス関数に、それらの要因を加味したものとなっている。赤みr、緑みgは(9),(10)式に示すように、所定値10から黄青(y/b)分を引くことで求めた。
黄みyについては、低明度、低彩度での算出値が実験値よりも小さい値となった。また、青みbの算出において低明度、低彩度での算出値が実験値よりも大きい値となった。しかしながら、誤差が大きいものは多くが低彩度のものであり、色みcを考慮した圧縮後の最大誤差は全ての色み成分において1.5前後、平均誤差は0.1前後となった。
図12(a)〜(d)は各色み(黄みy、青みb、緑みg、赤みr)毎の実験値と算出値との相対関係を示しており、これら両者はほぼ一致していることを示している。このことから、上記(7)〜(10)式が色み成分の予測ないし算出においてはおおよそ良好であり、精度が高いことを示している。
したがって、この第2の実施形態に係る色評価装置1Aによれば、色の評価対象の分光反射率を視覚データ入力手段2Aにより入力することにより、この色評価対象の白みw、黒みs、色みc、およびその色みの赤みr、緑みg、黄みy、青みbを算出することができる。
このために、これら算出式(4)〜(10)は、照明光源の分光分布に依存しない演色評価指標として主に印刷等の分野において使用できる。
1…色評価装置、2…視覚データ入力手段、2a…第2の視覚データ入力手段、3…要素構成比率演算手段、3a…要素構成比率演算手段、4…出力手段。
Claims (8)
- 分光分布が異なる光源のもとにおいて、被験者が所定の基本色に対して色相、明度または彩度を変化させて作成された複数のマンセル色票を見ることにより、当該マンセル色票の前記基本色の色名と、当該色の構成要素を規定する白色、黒色および色みの合計値が一定となるような当該色の各構成要素量を入力する視覚データ入力手段と;
視覚データ入力手段により入力された色みの要素量に基づいて、さらに赤または緑と、黄または青の色み構成比率を算出する要素構成比率演算手段と;
要素構成比率演算手段により算出された色み構成比率と各要素量構成比率を出力する出力手段と;
を具備していることを特徴とする色評価装置。 - 分光分布が異なる光源のもとにおいて、被験者に所定の基本色に対して色相、明度または彩度を変化させて作成された複数のマンセル色票を見せ、当該マンセル色票の前記基本色の色名と、当該色の構成要素を規定する白色、黒色および色みの合計値が一定となるような前記基本色の各構成要素量を被験者に応答させる視覚実験ステップと;
この視覚実験ステップにおいて、被験者が応答したマンセル色票の色名と当該色の要素量に基づいて、さらに赤または緑と、黄または青の色みの構成比率をそれぞれ算出する要素構成比率演算ステップと;
を具備していることを特徴とする色評価方法。 - 色覚モデルCIECAM02の観察条件による試料光源の照明下において複数のマンセル色票を被験者に見せ、これらマンセル色票の色の構成要素を規定する白み、黒みまたは色みの合計値が所定値で一定となるような構成要素量を被験者に回答させる視覚実験において、得られた被験者の回答値と、上記マンセル色票の分光反射率をマンセル色票毎に入力させる第2の視覚データ入力手段と;
この視覚データ入力手段により入力されたマンセル色票毎の分光反射率を上記CIECAM02に入力して明度J、彩度C、色相hを算出し、これら明度J、彩度Cを変数とした多項式の変換により黒みと色みとを算出し、この黒みと色みとの合計値を上記所定値から差し引くことにより白みを算出し、さらに、赤み、緑み、黄み、青みを、これらについての上記回答値の分布について色相hを変数としたガウス関数の最小二乗法により係数を決定した算出式により算出する第2の要素構成比率演算手段と;
この第2の要素構成比率演算手段により算出された白み、黒み、色み、赤み、黄み、緑み、青みを出力する算出手段と;
を具備していることを特徴とする色評価装置。 - 上記白みwの算出式が下記の(4)式であることを特徴とする請求項4記載の色評価装置。
[数2]
w=10−s−c ……(4) - 上記黒みsの算出式が下記の(5)式であることを特徴とする請求項4記載の色評価装置。
[数3]
s=0.0014J2+0.00035C2+0.003JC−0.311J
−0.2C+15 ……(5) - 上記色みcの算出式が下記の(6)式であることを特徴とする請求項4記載の色評価装置。
[数4]
c=−0.0025J+0.125C+1.5 ……(6)
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