JP7305304B2 - 排気タービン装置及び排気タービン装置を備えた過給機 - Google Patents

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Description

本発明は、排気タービン装置及び排気タービン装置を備えた過給機に関するものである。
内燃機関で発生した排ガスをタービンに導き、タービン翼を回転駆動させることで、タービン軸を回転させる排気タービン装置が知られている。このような装置には、タービン軸を回転可能に支持する軸受が設けられ、当該軸受に潤滑油が供給されるものがある。また、軸受に潤滑油が供給される場合には、軸受に潤滑油を保持させるための構造を備えるものがある(例えば、特許文献1)。
特許文献1では、ブローバイに対するオイル空間の密閉が、中間壁とコンプレッサ・ホイールとの間のラビリンスによって実現されている。
特表2010-501772号公報
ところで、排気タービン装置では、タービン入口側よりも出口側の方が、圧力が低くなる。また、回転するタービンディスクに流体が連れ回る影響で、タービンディスクの外周側よりも内周側(すなわち、タービン軸側)の方が、圧力が低くなる。すなわち、排気タービン装置では、タービン出口側であってタービンディスクの内周側の空間が、最も圧力が低くなる。当該空間の圧力が低くなると、負圧によって軸受から潤滑油が、当該空間に流入し、軸受に潤滑油が保持されなくなり、軸受の潤滑性能が低下する可能性があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、軸受部における潤滑性能の低下を抑制する排気タービン装置及び排気タービン装置を備えた過給機を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の排気タービン装置及び排気タービン装置を備えた過給機は以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係る排気タービン装置は、内燃機関から排出された排ガスによって回転駆動されるタービン翼と、前記排ガス流れの上流側の一端面である前面及び該前面の反対側の他端面である背面を有し、外周部から前記タービン翼が半径方向外側に突出する円盤状のタービンディスクと、一端に前記タービンディスクが連結され、前記タービンディスクによって回転駆動されるタービン軸と、前記タービンディスクの前記背面側に配置され、前記タービン軸を回転可能に支持する軸受部と、前記軸受部に潤滑油を供給する潤滑油供給手段と、前記タービンディスクの前記前面が露出する空間と前記背面が露出する空間とを連通する連通部と、を備えている。
排ガスがタービン翼を通過することによって、タービン翼を回転駆動させるため、タービンディスクの背面が露出する空間(以下、「背面側空間」という。)の圧力は、低下する。また、背面側空間内のガスがタービンディスクの回転に連れ回ることで、背面側空間内には旋回流が発生し、この旋回流の影響により、タービンディスクの中心側(すなわちタービン軸側)の圧力は特に低下する。
上記構成では、タービンディスクの前面が露出する空間(以下、前面側空間)という。と背面側空間とを連通する連通部が設けられている。前面側空間は、排ガス流れの上流側の空間であるので、背面側空間よりも圧力が高くなっている。よって、連通部によって前面側空間と背面側空間とが連通すると、前面側空間のガスが、負圧によって背面側空間に流入するので、背面側空間の圧力の低下が抑制される。これにより、軸受部に供給された潤滑油が、負圧によって背面側空間に流入することを抑制することができる。したがって、軸受部に潤滑油が保持され易くなり、軸受部における潤滑性能の低下を抑制することができる。
また、本発明の一態様に係る排気タービン装置は、前記連通部は、前記前面から前記背面に貫通するように前記タービンディスクに形成された貫通孔を有していていてもよい。
上記構成では、タービンディスクに形成された貫通孔によって、前面側空間と背面側空間とを連通している。これにより、タービンディスクに設ける貫通孔の数や大きさ等を変更し、貫通孔の面積を変更することで、前面側空間から流入するガスの量を調整することができる。したがって、排気タービン装置に応じた適切な貫通孔の面積とし、タービン翼を通過せずに背面側空間に流入する排ガス量を最小限にすることができる。よって、排気タービン装置の出力の低下を最小限とすることができる。
また、上流側空間と下流側空間との差圧は、排気タービン装置の大きさ等によって異なるが、上記構成では、貫通孔の面積を排気タービン装置に応じた適切な面積とすることによって、何れの排気タービン装置においても、軸受部に供給された潤滑油が背面側空間に流入することを抑制するとともに、タービン翼を通過せずに背面側空間に流入する排ガス量を最小限にし、排気タービン装置の出力の低下を最小限とすることができる。
また、貫通孔の面積を変更するだけで調整することができるので、簡易に実現することができる。
また、本発明の一態様に係る排気タービン装置は、前記連通部は、前記タービン翼と前記タービンディスクとの間に形成された隙間を有していてもよい。
上記構成では、タービン翼とタービンディスクとの間に形成された隙間によって、前面側空間と背面側空間とを連通している。このように構成することでも、軸受部に供給された潤滑油が、負圧によって背面側空間に流入することを抑制することができるので、軸受部に潤滑油が保持され易くなり、軸受部における潤滑性能の低下を抑制することができる。
また、本発明の一態様に係る排気タービン装置は、前記貫通孔は、複数形成されていて、複数の前記貫通孔は、前記タービン軸を中心とした同心円上に等間隔に配置されていてもよい。
上記構成では、複数の貫通孔が回転軸を中心とした同心円上に等間隔に配置されている。これにより、タービンディスクの重量の偏りが抑制されるので、タービンディスクを安定して回転させることができる。
また、本発明の一態様に係る排気タービン装置は、前記タービンディスクの前記背面には、該背面から突出する第1突出部が設けられていてもよい。
タービンディスクの回転に連れ回ることで、背面側空間内には旋回流が発生する。旋回流が発生すると、背面側空間内において、内周側(すなわちタービン軸側)の圧力が特に低下する。背面側空間内において、タービン軸側の圧力が低下すると、負圧によって、タービン軸と軸受との間から潤滑油が背面側空間内に、より流入し易くなる。
上記構成では、タービンディスクの端面に設けられた第1突出部が、旋回流の流れを阻害する。これにより、背面側空間内において旋回流の発生が抑制されるので、背面側空間の内周側の圧力の低下を抑制することができる。このように、軸受部に近いより背面側空間の内周側の圧力の低下を抑制することで、軸受部に潤滑油が保持され易くなり、軸受部における潤滑性能の低下をより抑制することができる。
また、本発明の一態様に係る排気タービン装置は、前記タービンディスクの前記前面及び/又は前記背面との間にガス流路を形成する静止部材が設けられていてもよい。
上記構成では、タービンディスクの前面及び/又は背面との間にガス流路を形成する静止部材が設けられている。
静止部材によって形成されるガス流路の流路幅(タービンディスクと静止部材との距離)が狭い場合には、前面側空間又は背面側空間で発生する旋回流の速度が速くなるため、前面側空間又は背面側空間において、タービンディスクの端面の外周側と内周側との圧力差が大きくなる。すなわち、外周側では圧力がより高くなり、内周側では圧力がより低くなる。一方、静止部材によって形成されるガス流路の流路幅が広い場合には、前面側空間又は背面側空間内で発生する旋回流の速度が遅くなるため、前面側空間又は背面側空間内において、タービンディスクの端面の外周側と内周側との圧力差が小さくなる。すなわち、外周側での圧力の上昇が比較的小さくなり、内周側での圧力の低下も比較的小さくなる。
このように、静止部材は、ガス流路の流路幅を調整可能である。したがって、静止部材によって、ガス流路の流路幅を調整することによって、前面側空間及び/又は背面側空間内の圧力分布を所望の圧力分布に調整することができる。すなわち、前面側空間及び/又は背面側空間の圧力を調整することができる。
排気タービン装置の最適な貫通孔の面積は、前面側空間と背面側空間との圧力差によって異なる。上記構成では、静止部材によって、前面側空間及び/又は背面側空間の圧力を調整することができる。すなわち、前面側空間と背面側空間との圧力差を所望の圧力差とすることができる。これにより、タービンディスクに形成された貫通孔の面積のバリエーションを少なくしても、静止部材によって前面側空間と背面側空間内との圧力差を調整することで、何れの排気タービン装置であっても、貫通孔の面積を最適な面積とすることができ、タービン翼を通過せずに背面側空間に流入する排ガス量を最小限とすることができる。
また、本発明の一態様に係る排気タービン装置は、前記静止部材から前記ガス流路に突出する第2突出部が設けられていてもよい。
上記構成では、第2突出部によって、前面側空間及び/又は背面側空間に生じる旋回流の流れを阻害することができるので、前面側空間及び/又は背面側空間の内周側の圧力の低下を抑制するとともに、前面側空間及び/又は背面側空間の外周側の圧力の上昇を抑制することとができる。このように、第2突出部を設けることで、前面側空間及び/又は背面側空間における圧力を調整することができる。これにより、静止部材だけでなく、第2突出部によっても前面側空間及び/又は背面側空間における圧力を調整することができるので、より精密に、前面側空間と背面側空間との圧力差を所望の圧力差とすることができる。したがって、タービンディスクに形成された貫通孔の面積のバリエーションを少なくしても、何れの排気タービン装置であっても、貫通孔の面積を最適な面積とすることができる。
また、本発明の一態様に係る排気タービン装置は、前記タービンディスクの前記前面には、該前面から突出する第3突出部が設けられていてもよい。
上記構成では、第3突出部を設けることで、前面側空間内に生じる旋回流の流れを阻害することができるので、背面側空間の内周側の圧力の低下を抑制するとともに、背面側空間の外周側の圧力の上昇を抑制することとができる。このように、第3突出部を設けることで、前面側空間における圧力を調整することができる。前面側空間の圧力を調整することで、前面側空間と背面側空間との圧力差を所望の圧力差とすることができるので、タービンディスクに形成された貫通孔の面積のバリエーションを少なくしても、何れの排気タービン装置であっても、貫通孔の面積を最適な面積とすることができる。
本発明の一態様に係る過給機は、上記いずれかに記載の排気タービン装置と、前記タービン軸の他端に設けられた圧縮部と、を備える。
上記構成では、軸受部に潤滑油が保持され易くなり、軸受部における潤滑性能の低下を抑制することが可能な過給機を実現することができる。
本発明によれば、軸受部における潤滑性能の低下を抑制することができる。
本発明の排気タービン装置を用いた一実施形態である過給機の要部を示した縦断面図である。 図1の過給機のタービン翼及びタービンディスクの要部拡大図である。 本発明の第2実施形態に係る過給機のタービン翼及びタービンディスクの縦断面図である。 図3のタービンディスクの模式的な正面図である。 本発明の第3実施形態に係る過給機の要部を示した縦断面図である。 図1の変形例に係る過給機の要部を示した縦断面図である。 図1の変形例に係る過給機の要部を示した縦断面図である。 図1の変形例に係る過給機の要部を示した縦断面図である。 図1の変形例に係る過給機の要部を示した縦断面図である。
以下に、本発明に係る排気タービン装置及び排気タービン装置を備えた過給機の一実施形態について、図面を参照して説明する。
以下、本発明の第1実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。
[第1実施形態]
図1には、本発明の排気タービン装置を過給機1に適用した実施形態が示されている。過給機1は、例えば、船舶の主機であるディーゼル機関(内燃機関)や、自動車等の車両のディーゼル機関(内燃機関)に用いられ、ディーゼル機関からの排ガスによって得られた駆動力で空気を圧縮してディーゼル機関の燃焼室に圧縮空気を供給するものである。本実施形態の過給機1は、ディーゼル機関からの排ガスの運動エネルギーを主に用いる動圧式とされる。
過給機1は、排気タービン装置としての排気タービン部2と、吸入した空気を圧縮するコンプレッサ部(圧縮部)3とを備えている。
コンプレッサ部3は、外部から空気を取り入れる空気吸入口(図示省略)と、取り入れた空気を導入する空気導入路4と、空気導入路4から導かれた空気を圧縮するコンプレッサ羽根車5と、コンプレッサ羽根車5の下流側に配置された渦巻き室6と、コンプレッサ羽根車5を収容するとともに空気導入路4を形成する空気案内ケーシング7とを備えている。
コンプレッサ羽根車5は、遠心圧縮機の羽根車とされており、外周に複数のコンプレッサ動翼5aが取り付けられている。コンプレッサ羽根車5は、中心軸線L回りに回転する後述するタービン軸8の一端(図1において左端)に固定されている。
コンプレッサ羽根車5の背面5b(空気導入路4に面していない側の面)側には、背面5bと対向する部分に、複数の溝からなるシール部9が設けられている。シール部9は、渦巻き室6へと導かれる圧縮された空気の、コンプレッサ羽根車5の背面5b側の空間への漏えいを抑制している。
排気タービン部2は、ディーゼル機関からの排ガスを取り入れる排ガス入口ケーシング11と、排ガス入口ケーシング11の下流側に配置された排気タービンノズル12と、この排気タービンノズル12の下流側に配置された排気タービン羽根車13と、排ガスを排出するための排ガス出口ケーシング14と、排気タービン羽根車13とコンプレッサ羽根車5とを連結するタービン軸8と、を備えている。
タービン軸8は、他端(図1において右端)に、排気タービン羽根車13が固定されている。また、タービン軸8は、軸受台15の内部に形成された空間に配置されるスラスト軸受16によってスラスト方向が支持されているとともに、2つのラジアル軸受(第1ラジアル軸受17及び第2ラジアル軸受18)によって回転自由に支持されている。3つの軸受は、コンプレッサ羽根車5の背面5b側からスラスト軸受16、第1ラジアル軸受(軸受部)17、第2ラジアル軸受(軸受部)18の順番で配置されている。すなわち、第2ラジアル軸受18は、排気タービン羽根車13の近傍に配置される。
また、軸受台15の内部には、潤滑油供給装置(潤滑油供給手段)19が設けられている。潤滑油供給装置19は、潤滑油を貯留する潤滑油タンク20と、潤滑油タンク20に貯留されている潤滑油をスラスト軸受16、第1ラジアル軸受17及び第2ラジアル軸受18に供給する潤滑油供給流路21とを有する。
潤滑油タンク20は、軸受台15の内部に設けられ、タービン軸8の回転方向外側に配置されるとともに、コンプレッサ羽根車5の背面5b近傍に配置されている。
潤滑油供給流路21は、一端が潤滑油タンク20に接続され、他端が分岐してスラスト軸受16、第1ラジアル軸受17及び第2ラジアル軸受18に接続されている。潤滑油供給流路21によって供給された潤滑油は、スラスト軸受16、第1ラジアル軸受17及び第2ラジアル軸受18で保持され、スラスト軸受16、第1ラジアル軸受17及び第2ラジアル軸受18とタービン軸8との支持部分を潤滑する。
軸受台15に対しては、空気案内ケーシング7が、ボルト25等によって固定されている。また、軸受台15に対して、排ガス出口ケーシング14が、ボルト26等によって固定されている。これにより、各軸受が配置される軸受台15の内部の空間には、コンプレッサ羽根車5の背面5bが露出するとともに、後述する排気タービン羽根車13のタービンディスク31の背面31bが露出している。
また、排ガス入口ケーシング11は、排ガス出口ケーシング14に対してボルト27等によって固定されている。
排気タービン羽根車13は、中心軸線L回りに回転可能とされた軸流タービンの羽根車とされている。排気タービン羽根車13は、タービン軸8に連結される略円盤状のタービンディスク31と、タービンディスク31の外周部から半径方向外側に突出するタービン動翼(タービン翼)32とを有する。なお、排気タービン羽根車13は、軸流式に限定されるものではなく、遠心式としてもよい。
タービン動翼32は、タービンディスク31の外周部の全周に亘り所定間隔を有して複数設けられており、これらタービン動翼32によって排気タービン動翼群が構成されている。タービン動翼32は、図2に示すように、径方向に延在する翼体32aと、翼体32aに直交するように設けられて翼体32aの一端部が固定されるプラットフォーム32bと、プラットフォーム32bの一端から径方向に延在する動翼基部32cと、を有する。プラットフォーム32bと動翼基部32cとは、鋳造等によって一体的に形成されている。動翼基部32cは、側面に複数の凹凸を有するいわゆるクリスマスツリー形状に形成される。
タービンディスク31は、排ガス流れの上流側の一端面である前面31a及び前面31aの反対側の他端面である背面31bを有する。また、タービンディスク31の外周部には、嵌合溝31cが形成されている。嵌合溝31cは、タービンディスク31の外周縁から半径方向内側に延びており、タービンディスク31の外周の全域に亘って所定間隔を有して複数形成されている。嵌合溝31cは、延在方向の側縁に複数の凹凸が形成されている。タービンディスク31と、タービン動翼32とは、動翼基部32cが、嵌合溝31cと嵌合することにより、連結されている。なお、タービンディスク31と、タービン動翼32とが嵌合した状態において、タービンディスク31の外周端部と、プラットフォーム32bの内周端部との間には所定の長さの隙間Gが形成されている。
また、タービンディスク31には、図1に示すように、前面31aから背面31bに貫通する貫通孔(連通部)33が複数(本実施形態では2つ)形成されている。貫通孔33は、嵌合溝31cの半径方向内側端部よりも内側に形成される。また、2つの貫通孔33は、中心軸線Lを中心とした同心円上に等間隔に配置されているとともに、中心軸線Lに基づいた点対称の位置に配置されている(図4も参照)。
なお、貫通孔33の直径、貫通孔33の個数、及び、貫通孔33を設ける位置等は、タービン動翼32の上流側の圧力と下流側の圧力との比(すなわち、タービンディスク31の前面31aが露出する空間と、背面31bが露出する空間との圧力比)に基づいて設定される。ただし、貫通孔33の直径は、1mm以上が好適である。
排気タービンノズル12は、タービン動翼32の上流側に配置された静翼とされており、中心軸線Lを中心とした円周上に全周にわたって所定間隔を有して固定されている。これら排気タービンノズル12によって排気タービンノズル群が構成されている。
上記構成の過給機1は、以下のように動作する。
ディーゼル機関から排出される排ガスは、排ガス入口ケーシング11に形成されたガス導入路Fを流通し、排気タービンノズル12を通過する。排気タービンノズル12を通過した排ガスは、タービン動翼32に導かれる。タービン動翼32は、排気ガスの流体エネルギーを得て排気タービン羽根車13を回転させる。タービン動翼32を通過した排気ガスは、排ガス出口ケーシング14を通り、過給機1の外部へと排出される。
排ガスによって駆動された排気タービン羽根車13の回転力は、タービン軸8を介してコンプレッサ羽根車5へと伝達され、コンプレッサ羽根車5を中心軸線L回りに回転させる。これにより、空気吸入口から吸い込まれた空気がコンプレッサ動翼5aによって圧縮され、圧縮された空気は、渦巻き室6を通りディーゼル機関の燃焼空間へと送られ、燃焼用空気として用いられる。
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
排ガスがタービン動翼32を通過し、タービン動翼32を回転駆動させるため、タービンディスク31の背面31bが露出する空間(以下、「背面側空間」という。)の圧力は、低下する。また、背面側空間内のガスがタービンディスク31の回転に連れ回ることで、背面側空間内には旋回流が発生し、この旋回流の影響により、タービンディスク31の中心側(すなわちタービン軸8側)の圧力は特に低下する。
本実施形態では、タービンディスク31に前面31aから背面31bに貫通する貫通孔33が設けられている。これにより、排ガス流れにおけるタービンディスク31の前面31aが露出する空間(以下、「前面側空間」という)と、背面側空間とが、貫通孔33によって連通する。前面側空間は、排ガス流れの上流側の空間であるので、背面側空間よりも圧力が高くなっている。よって、貫通孔33によって前面側空間と背面側空間とが連通すると、前面側空間のガスが、負圧によって背面側空間に流入するので、背面側空間の圧力の低下が抑制される。
これにより、各軸受(スラスト軸受16、第1ラジアル軸受17及び第2ラジアル軸受18)に供給された潤滑油が、負圧によって背面側空間に流入することを抑制することができる。したがって、各軸受に潤滑油が保持され易くなり、各軸受における潤滑性能の低下を抑制することができる。
また、タービンディスク31に設ける貫通孔33の数や大きさを変更し、貫通孔33の総面積を変更することで、前面側空間から流入する排ガスの量を調整することができる。これにより、排気タービン部2を構成する際に、貫通孔33の面積を排気タービン部2に応じた適切な貫通孔33の面積とすることで、タービン動翼32を通過せずに背面側空間に流入する排ガス(すなわち、仕事を行わない排ガス)量を最小限にすることができる。したがって、排気タービン部2における出力の低下を最小限とすることができる。
また、前面側空間と背面側空間との圧力比は、過給機1に設けられる排気タービン部2毎に異なる。なぜならば、排気タービンノズル12及びタービン動翼32の組み合わせによって、タービン動翼32の入口(上流側)と出口(下流側)との圧力比が決まるが、一般的に、過給機1の排気タービン部2は、要求される性能に合わせて、排ガス流量や反動度の調整するために、排気タービンノズル12及びタービン動翼32の組み合わせを選定するからである。このように、過給機1毎に排気タービンノズル12及びタービン動翼32の組み合わせが異なるため、前面側空間と背面側空間との圧力比が異なることとなる。
本実施形態では、貫通孔33の総面積を調整することで、前面側空間から流入する排ガスの量を調整することができる。したがって、貫通孔33の総面積を過給機1に応じた適切な面積とすることで、何れの過給機においても、背面側空間の圧力を適切に保ち、各軸受に供給された潤滑油が背面側空間に流入することを抑制するとともに、タービン動翼32を通過せずに背面側空間に流入する排ガス量を最小限にし、排気タービン部2における出力の低下を最小限とすることができる。
また、複数の貫通孔33が中心軸線Lを中心とした同心円上に等間隔に配置されている。これにより、タービンディスク31の重量の偏りが抑制されるので、タービンディスク31を安定して回転させることができる。
また、貫通孔33を嵌合溝31cの半径方向内側端部よりも内側に形成される。嵌合溝31cが形成される外周部は、嵌合溝31cが形成されていることから、比較的強度が低くなっている。一方、嵌合溝31cの半径方向内側端部よりも内側の中央領域は、略円盤形状であり強度が高い。したがって、貫通孔33を形成しても、タービンディスク31の強度の低下を抑制することができる。
なお、背面側空間の圧力の低下が抑制するために、貫通孔33の代わりに、タービンディスク31の外周端部と、プラットフォーム32bの内周端部との間に形成された隙間Gを大きく形成することも考えられる。すなわち、隙間Gを、前面側空間と背面側空間とを連通する連通部とするとともに、前面側空間と背面側空間とを均圧化することができる程度の大きさに形成することも考えられる。このような構成においても、隙間Gを介して前面側空間と背面側空間とを連通することができ、隙間Gから前面側空間の排ガスを背面側空間に流入させる。したがって、背面側空間の圧力低下を抑制し、各軸受に供給された潤滑油が、負圧によって背面側空間に流入することを抑制することができる。
ただし、隙間Gの形状を変更するためには、動翼基部32cの形状の変更が必要となる。動翼基部32cは、複雑な形状であるとともに、嵌合溝31cと嵌合させることを目的としたものであり、形成に際し高い精度が求められる。このため、動翼基部32cは、設計変更等を容易に行うことができない。したがって、このような構成では、隙間Gの面積を容易に変更することができず、隙間Gを排気タービン部2に応じた最適な面積とすることができない可能性がある。
一方、貫通孔33を連通部とする構成では、円盤状のタービンディスク31に貫通孔33を形成するという比較的単純な構成なので、形成する貫通孔33の数や大きさ等を変更させるだけで、貫通孔33の総面積を容易に所望の面積とすることができる。したがって、容易に排気タービン部2に応じた最適な面積とすることができる。
なお、貫通孔33を設けるとともに、隙間Gを大きく形成してもよい。すなわち、貫通孔33と隙間Gとによって、前面側空間のガスを背面側空間に流入させて、背面側空間の圧力の低下を抑制してもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図3及び図4を用いて説明する。
本実施形態では、タービンディスク31の背面31bに突出部(第1突出部)37が設けられている点で、第1実施形態と異なる。第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態に係る過給機では、排気タービン部2のタービンディスク31の背面31bに、背面31bから突出する突出部37が設けられている。突出部37は、図3及び図4に示すように、略半円の板状部材であって、径方向の長さがタービンディスク31の径方向の長さに対して、所定の割合以上(例えば、50%以上)に亘って設けられている。また、突出部37は、複数(本実施形態では2つ)設けられている。複数の突出部37は、図4に示すように、中心軸線Lを中心とした同心円上に等間隔に配置されているとともに、中心軸線Lに基づいた点対称の位置に配置されている。なお、突出部37の数は2つに限定されない。突出部37の数は、単数であってもよく、また3つ以上であってもよい。なお、図4では図示の関係上、嵌合溝31cを省略して図示している。
本実施形態では、以下の作用効果を奏する。
タービンディスク31の回転に連れ回ることで、背面側空間内には旋回流が発生する。旋回流が発生すると、背面側空間内において、内周側(すなわちタービン軸8側)の圧力が特に低下する。背面側空間内において、タービン軸8側の圧力が低下すると、負圧によって、タービン軸8と各軸受(スラスト軸受16、第1ラジアル軸受17及び第2ラジアル軸受18)との間から潤滑油が背面側空間内に、より流入し易くなる。
本実施形態では、タービンディスク31の背面31bに設けられた突出部37が、旋回流の流れを阻害する。これにより、背面側空間内において旋回流の発生が抑制されるので、背面側空間の内周側の圧力の低下を抑制することができる。したがって、より各軸受に潤滑油が保持され易くなり、軸受部における潤滑性能の低下をより抑制することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図5を用いて説明する。
本実施形態では、タービンディスク31の前面31aとの間にガス流路Aを形成する静止部材38が設けられている点で、第1実施形態と異なる。第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態に係る過給機では、上述のように、タービンディスク31の前面31aとの間にガス流路Aを形成する静止部材38が設けられている。静止部材38は、タービンディスク31の前面31aと所定の距離離間するように対向して設けられ、静止部材38とタービンディスク31の前面31aとの間の空間がガス流路Aとなる。静止部材38は、タービンディスク31の前面31aの全域と対向するように設けてもよく、また、前面31aの一部と対向するように設けてもよい。
本実施形態では、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、タービンディスク31の前面31aとの間にガス流路Aを形成する静止部材38が設けられている。
静止部材38によって形成されるガス流路Aの流路幅(タービンディスク31と静止部材38との距離)が狭い場合には、前面側空間又は背面側空間で発生する旋回流の速度が速くなる。このため、前面側空間又は背面側空間において、タービンディスク31の前面31aの外周側と内周側との圧力差が大きくなる。すなわち、外周側では圧力がより高くなり、内周側では圧力がより低くなる。一方、静止部材38によって形成されるガス流路Aの流路幅が広い場合には、前面側空間で発生する旋回流の速度が遅くなるため、前面側空間において、タービンディスク31の前面31aの外周側と内周側との圧力差が小さくなる。すなわち、外周側での圧力の上昇が比較的小さくなり、内周側での圧力の低下も比較的小さくなる。
このように、静止部材38は、ガス流路Aの流路幅を調整可能である。したがって、静止部材38によって、ガス流路Aの流路幅を調整することによって、前面側空間の圧力分布を所望の圧力分布に調整し、前面側空間の圧力を調整することができる。
上述のように、排気タービン部2における最適な貫通孔33の面積は、前面側空間と背面側空間との圧力差によって異なる。本実施形態では、静止部材38によって、前面側空間の圧力を調整することができる。すなわち、前面側空間と背面側空間との圧力比を調整することができる。これにより、タービンディスク31に形成された貫通孔33の面積のバリエーションを少なくしても、静止部材38によって前面側空間の圧力を調整することで、何れの過給機であっても、タービン動翼32を通過せずに背面側空間に流入する排ガス量を最小限とすることができる。また、タービンディスク31に形成された貫通孔33の面積のバリエーションを少なくした場合には、過給機に応じてタービンディスク31を形成する場合と比較して、タービンディスク31を容易かつ安価に製造することができる。
なお、静止部材38は、タービンディスク31の前面31aが露出する流路を形成できればよく、形状等は限定されない。前面側空間を埋める詰め物等をして流路を形成してもよいし、前面31aと対向する板状の部材を設けて流路を形成してもよい。
なお、本実施形態では、タービンディスク31の前面31a側に静止部材38を設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、タービンディスク31の背面31bとの間にガス流路を形成するように静止部材を設けてもよい。このような構成とすることでも、背面側空間の圧力を調整することができるので、前面側空間と背面側空間との圧力比を調整することができる。
また、タービンディスク31の前面31a及び背面31bの両方との間にガス流路を形成するように静止部材を複数設けてもよい。このような構成とすることで、前面側空間と背面側空間との圧力比をより細かく調整することができる。
また、本実施形態では、前面側空間の圧力を調整する構造として、静止部材38を設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。また、前面側空間の圧力を調整する構造として、例えば、タービンディスク31の前面31aに、前面31aから突出する突出部(第3突出部)42を設けてもよい(図7参照)。前面31aに突出部42を設けることで、上述のように前面側空間内に生じる旋回流の流れを阻害することができるので、前面側空間内の圧力を調整することができる。
なお、本発明は、上記各実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、図6及び図7に示すように、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよい。すなわち、突出部及び静止部材の両方を設けてもよい。以下で、突出部及び静止部材の両方を設けた例について説明する。
図6に示す構成では、タービンディスク31の背面31b側に突出部40を設けるとともに、タービンディスク31の背面31bとの間にガス流路を形成する静止部材41を設けている。タービンディスク31と対向する静止部材41の面(以下、「対向面」という。)は、突出部40と干渉しないように、突出部40に沿うように凹んでいる。
また、図7で示す構成では、タービンディスク31の前面31a側に突出部42を設けるとともに、タービンディスク31の前面31aとの間にガス流路を形成する静止部材43を設けてもよい。静止部材43の対向面は、突出部42と干渉しないように、突出部42に沿うように形成されている。
このように、突出部及び静止部材の両方を設けることで、前面側空間または背面側空間の圧力を、より精密に調整することができる。
また、図8及び図9に示すように、静止部材に突出部(第2突出部)45、47を設けてもよい。静止部材に設けられる突出部45,47は、静止部材の対向面に固定されていて、静止部材の対向面からガス流路に突出するように設けられている。以下で、静止部材に突出部が設けられる例について説明する。
図8に示す構成では、タービンディスク31の背面31bとの間にガス流路を形成する静止部材44を設けている。また、当該静止部材44の対向面には、ガス流路に突出するように突出部45を設けられている。
また、図9に示す構成では、タービンディスク31の前面31aとの間にガス流路を形成する静止部材46を設けている。また、当該静止部材46の対向面には、ガス流路に突出するように突出部47を設けられている。
静止部材に設けられる突出部も、タービンディスクに設けられる突出部と同様に、複数設けられてもよく、複数設けられる場合には、同心円上に等間隔に配置されてもよい。
静止部材は、回転しないため、このように突出部を静止部材に設けることで、より旋回流の流れを阻害することができる。
また、上記各実施形態では、貫通孔33を2つ設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。貫通孔33の数は単数であってもよく、また3つ以上であってもよい。
また、上記各実施形態では、排気タービン部2を過給機に適用する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、排気タービン部2をパワータービンに適用してもよい。
また、上記各実施形態では、タービンディスク31とタービン動翼32とを、各々別体とし、タービンディスク31とタービン動翼32とを嵌合させている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。タービンディスク31とタービン動翼32とを一体的に成型した一体構造としてもよい。
1 過給機
2 排気タービン部(排気タービン装置)
3 コンプレッサ部(圧縮部)
4 空気導入路
5 コンプレッサ羽根車
6 渦巻き室
7 空気案内ケーシング
8 タービン軸
9 シール部
11 排ガス入口ケーシング
12 排気タービンノズル
13 排気タービン羽根車
14 排ガス出口ケーシング
15 軸受台
16 スラスト軸受
17 第1ラジアル軸受(軸受部)
18 第2ラジアル軸受(軸受部)
19 潤滑油供給装置(潤滑油供給手段)
20 潤滑油タンク
21 潤滑油供給流路
31 タービンディスク
31a 前面
31b 背面
31c 嵌合溝
32 タービン動翼(タービン翼)
32a 翼体
32b プラットフォーム
32c 動翼基部
33 貫通孔
37 突出部(第1突出部)
38 静止部材
42 突出部(第3突出部)
45 突出部(第2突出部)
47 突出部(第2突出部)

Claims (7)

  1. 内燃機関から排出された排ガスによって回転駆動されるタービン翼と、
    前記排ガス流れの上流側の一端面である前面及び該前面の反対側の他端面である背面を有し、外周部から前記タービン翼が半径方向外側に突出する円盤状のタービンディスクと、
    一端に前記タービンディスクが連結され、前記タービンディスクによって回転駆動されるタービン軸と、
    前記タービンディスクの前記背面側に配置され、前記タービン軸を回転可能に支持する軸受部と、
    前記軸受部に潤滑油を供給する潤滑油供給手段と、
    前記タービンディスクの前記前面が露出する空間と前記背面が露出する空間とを連通する連通部と、を備え、
    前記タービンディスクは、前記外周部に前記タービン翼が嵌合する嵌合溝が形成されていて、
    前記連通部は、前記前面から前記背面に貫通するように前記タービンディスクに形成された貫通孔を有し、
    前記貫通孔は、前記嵌合溝の半径方向内側端部よりも内側に形成されていて、
    前記タービンディスクの前記背面には、該背面から突出する第1突出部が設けられていて、
    前記第1突出部は、板状部材であって、板面が前記タービンディスクの回転方向と交差するように配置されている排気タービン装置。
  2. 前記連通部は、前記タービン翼と前記タービンディスクとの間に形成された隙間を有している請求項1に記載の排気タービン装置。
  3. 前記貫通孔は、複数形成されていて、
    複数の前記貫通孔は、前記タービン軸を中心とした同心円上に等間隔に配置されている請求項1に記載の排気タービン装置。
  4. 前記タービンディスクの前記前面及び/又は前記背面との間にガス流路を形成する静止部材が設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の排気タービン装置。
  5. 前記静止部材から前記ガス流路に突出する第2突出部が設けられている請求項4に記載の排気タービン装置。
  6. 前記タービンディスクの前記前面には、該前面から突出する第3突出部が設けられている請求項1から請求項5のいずれかに記載の排気タービン装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載された排気タービン装置と、
    前記タービン軸の他端に設けられた圧縮部と、を備えた過給機。
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