JP7300911B2 - 内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関 - Google Patents

内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関 Download PDF

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Description

本発明は、内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関に関する。
スパークプラグは、車両用エンジン等の内燃機関における着火手段として用いられる。特許文献1に記載されたスパークプラグは、その先端部において副室を有すると共に、副室の先端側において、副室と主燃焼室とを連通する開口部を備える。そして、開口部の内周側の端部と、中心電極との間に放電ギャップを形成する。
特開2016-95986号公報
しかしながら、放電ギャップに発生した火花放電によって副室内の混合気が着火した際、開口部を通って副室から主燃焼室へと噴出する火炎は、プラグ軸方向に、主燃焼室を形成するピストンに向かって噴出しやすい。それゆえ、噴出した火炎がピストンと衝突することで、火炎が冷却されやすい。それゆえ、着火性を向上させる観点から改善の余地がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内側に保持されると共に該絶縁碍子の先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極の少なくとも一部を覆うように上記ハウジングの先端部に設けられたカバー部(5)と、を有し、上記カバー部には、先端側に貫通した先端貫通孔(51)が形成されており、上記先端貫通孔は、先端へ向かうほど縮径し、上記中心電極の先端部である電極先端部(41)は、先端へ向かうほど縮径する形状を有し、該電極先端部の少なくとも一部は上記先端貫通孔の内側に配されており、上記電極先端部の外周斜面(411)と、上記先端貫通孔の内周斜面(512)との間には、環状噴出路(52)が先端側へ向かうほどプラグ中心軸(C)へ向かうように形成され、上記先端貫通孔の内周端部(511)は、上記中心電極の上記電極先端部との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極を構成している、内燃機関用のスパークプラグ(1)、を備えた内燃機関(10)であって、
主燃焼室(6)と、
上記先端貫通孔が上記主燃焼室に面するように配された上記スパークプラグと、
上記主燃焼室を形成するピストン(64)と、を有し、
上記プラグ中心軸を含む平面による断面において、2ヶ所に表れる上記環状噴出路の断面の延長線(L1、L2)同士が交わる交点(P)は、上死点にある上記ピストンよりも上記主燃焼室側にある、内燃機関にある。
上記内燃機関は、上記スパークプラグを有する。そして、プラグ中心軸を含む平面による断面において、2ヶ所に表れる環状噴出路の断面の延長線同士が交わる交点は、上死点にあるピストンよりも主燃焼室側にある。それゆえ、環状噴出路から噴出する火炎は、火炎同士が主燃焼室にて衝突しやすい。その結果、ピストンへと向かう火炎の勢いが抑制されるため、火炎が冷却されにくい。
以上のごとく、上記態様によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態1における、スパークプラグの断面図。 実施形態1における、スパークプラグを先端側(Z方向)から見た平面図。 図2におけるIII-III線矢視断面相当のスパークプラグの先端部の断面図。 実施形態1における、スパークプラグを用いた内燃機関の断面図。 実施形態1における、上死点にあるピストンとスパークプラグの先端部との位置関係を示す断面図。 実施形態1における、膨張行程時の、火花放電が伸長したときのスパークプラグの先端部の断面図。 実施形態1における、スパークプラグから火炎が噴出している状態の内燃機関の断面図。 比較形態における、スパークプラグの先端部の断面図。 比較形態における、スパークプラグから火炎が噴出している状態の内燃機関の断面図。 実施形態1における、CFD解析による、スパークプラグから火炎が噴出している状態の内燃機関の断面図。 比較形態における、CFD解析による、スパークプラグから火炎が噴出している状態の内燃機関の断面図。 実施形態2における、スパークプラグの先端部の断面図。 実施形態2における、放電ギャップに火花放電が発生したときのスパークプラグの先端部の拡大断面図。 実施形態3における、スパークプラグの先端部の断面図。 実施形態4における、スパークプラグの先端部の断面図。 実施形態5における、スパークプラグの先端部の断面図。 電極先端部が拡径されていない、スパークプラグの先端部の断面図。
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグ1及びこれを備えた内燃機関10に係る実施形態について、図1~図7を参照して説明する。
本実施形態における内燃機関用のスパークプラグ1は、図1に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、カバー部5とを有する。絶縁碍子3は、中心電極4を内側に保持する。中心電極4は、絶縁碍子3の先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。カバー部5は、中心電極4の少なくとも一部を覆うようにハウジング2の先端部に設けられている。カバー部5には、先端側に貫通した先端貫通孔51が形成されている。先端貫通孔51は、先端側へ向かうほど縮径する。中心電極4の先端部である電極先端部41は、先端へ向かうほど縮径する形状を有する。電極先端部41の少なくとも一部は先端貫通孔51の内側に配されている。電極先端部41の外周斜面411と、先端貫通孔51の内周斜面512との間には、環状噴出路52が形成されている。環状噴出路52は、先端側へ向かうほどプラグ中心軸Cへ向かうように形成されている。先端貫通孔51の内周端部511は、中心電極4の電極先端部41との間に放電ギャップGを形成する接地電極を構成している。
本明細書において、スパークプラグ1の中心軸Cに平行な方向を、適宜、Z方向という。また、Z方向の一方であり、スパークプラグ1における点火コイルと接続される側を基端側という。また、その反対側であって、スパークプラグ1における主燃焼室6内に配される側を先端側という。また、スパークプラグ1の中心軸Cを、単にプラグ中心軸Cという。
中心電極4は、全体として略円柱形状を呈している。また、中心電極4は、図1に示すごとく、その中心軸をプラグ中心軸Cと一致するよう配されている。
中心電極4の電極先端部41は、図1、図3に示すごとく、中心電極4の一部を拡径してなる。電極先端部41は、先端に向かって縮径した略円錐台形状を呈する。電極先端部41は、図2、図3に示すごとく、その先端側に先端面412を有する。先端面412は、プラグ中心軸Cと直交するように形成されている。
また、電極先端部41は、図3に示すごとく、先端貫通孔51の外側開口端514よりも主燃焼室6側に突出していない。また、先端面412は、Z方向における先端貫通孔51の中心よりも先端側に位置する。本形態において、先端面412は、外側開口端514と、Z方向において略同じ位置に配されている。つまり、先端面412は、カバー部5の先端側の面と面一になっている。
また、電極先端部41の外周斜面411の少なくとも一部は、図3に示すごとく、先端貫通孔51の内側に配されている。本形態においては、外周斜面411は、Z方向における、先端貫通孔51の内側開口端513のある位置から、外側開口端514のある位置にわたって形成されている。
また、外周斜面411は、図3に示すごとく、プラグ中心軸Cを含む平面による断面に表れる輪郭が、先端側へ向かうほどプラグ中心軸Cに近付くように、Z方向に対して傾斜している。また、先端貫通孔51の内周斜面512も、当該断面に表れる輪郭が、先端側へ向かうほどプラグ中心軸Cに近付くように、Z方向に対して傾斜している。そして、当該断面に表れる2ヶ所の環状噴出路52の断面それぞれにおいて、外周斜面411及び内周斜面512の輪郭同士は、互いに略平行となっている。
また、電極先端部41は、図3に示すごとく、外周斜面411の基端側に大径部413を有する。大径部413は、絶縁碍子3の先端側に突出した中心電極4の他の部分よりも、プラグ径方向における直径が大きい。大径部413は、略円柱形状を呈する。なお、プラグ径方向とは、プラグ中心軸Cと直交する直線に沿った方向であって、スパークプラグ1の径方向を意味する。
また、大径部413の直径は、先端貫通孔51の先端側における直径よりも大きい。また、大径部413の直径は、先端貫通孔51の基端側における直径よりも小さい。また、大径部413は、Z方向における幅よりも、プラグ径方向における幅の方が大きい。
電極先端部41における大径部413の基端側の部分は、図3に示すごとく、基端側へ向かうほど縮径する。当該部分は、プラグ中心軸Cを含む平面による断面に表れる輪郭が、先端貫通孔51の中心側に凸となる曲線となっている。
絶縁碍子3は、略円筒形状を呈する。絶縁碍子3は、例えばアルミナ等のセラミックからなる。
また、絶縁碍子3の先端部における内周の直径は、図1に示すごとく、電極先端部41における大径部413の直径よりも小さい。したがって、組み付けの際、まず、電極先端部41を有さない中心電極4を絶縁碍子3の内側へ挿入する。挿入後、電極先端部41を有さない中心電極4は、絶縁碍子3の内側に保持されると共に、絶縁碍子3の先端側にその一部を突出させる。そして、絶縁碍子3の先端側に突出している中心電極4の先端側に対し、電極先端部41を含む中心電極4の基端側の一部を挿入し、溶接にて接合する。
また、ハウジング2は、図1に示すごとく、スパークプラグ1を内燃機関10のシリンダヘッド61(図4参照)に取り付けるための取付ネジ部21を有する。そして、スパークプラグ1は、図4に示すごとく、ハウジング2の取付ネジ部21を、シリンダヘッド61に設けられたプラグホール611の雌ネジに螺合することで、内燃機関10に取り付けられる。また、図1に示すごとく、取付ネジ部21の基端側の外周には、シリンダヘッド61とスパークプラグ1との間をシールするガスケット22が配されている。そして、ハウジング2におけるガスケット22の基端側には、シリンダヘッド61に対してガスケット22を介して圧接する座部23が形成されている。座部23は、取付ネジ部21よりも外周側に突出するよう形成されている。
カバー部5は、図1に示すごとく、取付ネジ部21の先端側に設けてある。カバー部5の内側には、内側空間50が形成される。カバー部5には、先端貫通孔51とは別に、複数の連通孔53が形成されている。連通孔53は、内側空間50と主燃焼室6(図4参照)とを連通させる。
また、カバー部5は、ハウジング2と一体に形成されているものとすることができる。また、カバー部5は、ハウジング2とは別部材として形成されたものとすることもできる。カバー部5がハウジング2とは別部材であるときは、先端貫通孔51及び連通孔53が形成されたキャップ状のカバー部5を、ハウジング2の先端部に溶接等することで固定される。
連通孔53は、図2に示すごとく、スパークプラグ1をZ方向の先端側から見ると、周方向に等間隔で複数設けられている。複数の連通孔53は、図3に示すごとく、開口方向が放射状となっている。そして、連通孔53は、先端側へ向かうほど外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。また、連通孔53の直径は、先端貫通孔51の直径よりも小さい。より具体的には、連通孔53の直径は、先端貫通孔51の外側開口端514の直径よりも小さい。
本形態では、図2に示すごとく、4個の連通孔53が設けられている。そして、Z方向から見て、プラグ中心軸Cと、連通孔53の中心とを通る直線において、隣り合う2つの連通孔53を通る直線同士がなす角度が90°となるように、各連通孔53は等間隔に配されている。
先端貫通孔51は、図3に示すごとく、先端に向かって縮径した略円錐台形状を呈する。先端貫通孔51の内周斜面512は、電極先端部41の外周斜面411に沿うように形成されている。また、先端貫通孔51は、Z方向における先端側へ向かって開口している。先端貫通孔51の中心軸は、プラグ中心軸Cと略同軸上にある。
内周斜面512と外周斜面411との間に形成される環状噴出路52は、図3に示すごとく、中空の略円錐台形状を呈している。環状噴出路52は、図2に示すごとく、Z方向から見ると、略円環状を呈している。環状噴出路52は、図3に示すごとく、先端に向かって縮径している。また、環状噴出路52は、内側空間50と、カバー部5の外部である主燃焼室6(図4参照)とを連通させている。そして、電極先端部41と内周端部511との間の放電ギャップGに形成された火花放電Sによって、内側空間50内の混合気が燃焼することで、図7に示すごとく、内側空間50から環状噴出路52を通って主燃焼室6へと火炎Fが噴出される。また、内側空間50内の混合気が燃焼することで、連通孔53からも、主燃焼室6に向かって火炎Fが噴出される。
次に、本形態における内燃機関10について説明する。
本形態における内燃機関用のスパークプラグ1を備えた内燃機関10は、図4に示すごとく、主燃焼室6と、スパークプラグ1と、ピストン64とを有する。スパークプラグ1は、先端貫通孔51が主燃焼室6に面するように配されている。ピストン64は、主燃焼室6を形成する。図5に示すごとく、本形態における内燃機関10のプラグ中心軸Cを含む平面による断面において、2ヶ所に表れる環状噴出路52の断面の延長線L1、L2同士が交わる交点Pは、上死点にあるピストン64よりも主燃焼室6側にある。
本形態における内燃機関10において、交点Pは、図5に示すごとく、プラグ中心軸C上にある。交点Pは、Z方向において、電極先端部41の先端面412とピストン64の基端側の面との間に位置する。
また、内燃機関10は、図4に示すごとく、シリンダヘッド61と、シリンダブロック65と、シリンダ60と、吸気バルブ62と、排気バルブ63とを備える。ピストン64は、シリンダ60内に、摺動可能に配置されている。そして、シリンダヘッド61、シリンダブロック65、及びピストン64に囲まれて、主燃焼室6が形成される。シリンダヘッド61には、吸気ポート621及び排気ポート631が形成されており、それぞれ吸気バルブ62及び排気バルブ63が備えられている。そして、シリンダヘッド61における吸気ポート621と排気ポート631との間には、スパークプラグ1が配されている。
内燃機関10は、ピストン64の往復運動に伴って、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程が順次繰り返される。また、内燃機関10において、ピストン64の往復運動により、主燃焼室6の容積は随時変動する。そして、ピストン64が上死点にあるときに、主燃焼室6の容積は最小となる。
また、本形態のスパークプラグ1を取り付けた内燃機関10において、スパークプラグ1の先端部は、主燃焼室6へ突出している。すなわち、カバー部5を主燃焼室6に露出させており、先端貫通孔51及び連通孔53を、主燃焼室6に露出させている。
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
本実施形態のスパークプラグ1は、電極先端部41の外周斜面411と、先端貫通孔51の内周斜面512との間に、環状噴出路52が形成されている。そして、環状噴出路52は、先端側へ向かうほどプラグ中心軸Cへ向かうように形成されている。それゆえ、スパークプラグ1を内燃機関10に取り付けた際、図7に示すごとく、カバー部5の内側空間50から環状噴出路52を通って主燃焼室6へと噴出する火炎Fは、火炎F同士が主燃焼室6内にて衝突しやすい。それゆえ、ピストン64へと向かう火炎Fの勢いが抑制されるため、火炎Fが冷却されにくい。その結果、火炎Fの熱を効率的に混合気に伝えることができ、着火性を向上させることができる。
また、電極先端部41は、中心電極4の一部を拡径してなる。それゆえ、電極先端部41と先端貫通孔51との間に形成される環状噴出路52は、プラグ径方向における直径を大きくすることができる。それゆえ、環状噴出路52から噴出する火炎Fの範囲を広くすることができる。その結果、着火性を向上させることができる。
また、本形態の内燃機関10においては、図5に示すごとく、上述の交点Pが、上死点にあるピストン64よりも主燃焼室6側にある。それゆえ、環状噴出路52から噴出する火炎F同士を、より確実に主燃焼室6にて衝突させることができる。その結果、より確実に着火性を向上させることができる。
また、特に内燃機関10の運転が高負荷域にあるときにおいては、一般的に、火花放電Sによる点火時期を圧縮行程における上死点直前とすることがある。この場合、スパークプラグ1から火炎Fが噴出するタイミングは、ピストン64が上死点付近に位置するときとなりやすい。つまり、スパークプラグ1から噴出する火炎Fと、ピストン64とが最も近くなるタイミングとなりやすい。本形態のスパークプラグ1は、上記のごとく、図5に示す延長線L1、L2同士が交わる交点Pは、上死点にあるピストン64よりも主燃焼室6側にある。それゆえ、内燃機関10が高負荷域にあるときにおいても、環状噴出路52から主燃焼室6へ噴出された火炎Fがピストン64と衝突することを抑制することができる。それゆえ、ピストン64によって火炎Fが冷却されることを抑制することができる。その結果、着火性を向上させることができる。
また、電極先端部41は、先端貫通孔51の外側開口端514よりも主燃焼室6側に突出していない。それゆえ、環状噴出路52から噴出する火炎Fが、電極先端部41と接触しにくい。その結果、冷損を抑制して、着火性を向上させやすい。
なお、上述の作用効果は、主として内側空間50にて初期火炎が形成されるような点火タイミングにてスパークプラグ1を制御する場合について得られるものである。ただし、本形態のスパークプラグ1は、主燃焼室6にて初期火炎を形成させることもできる。つまり、例えば、膨張行程においては、内側空間50から主燃焼室6へと向かう気流が発生しやすい。それゆえ、膨張行程のタイミングで火花放電Sを発生させることで、火花放電Sは、図6に示すごとく、主燃焼室6に向かって伸長しやすい。また、膨張行程のタイミングで火花放電Sを発生させることで、火花放電Sの電極先端部41側及び内周端部511側の起点は、主燃焼室6側へと移動しやすい。その結果、主燃焼室6における着火性を向上させることができる。
また、内側空間50から主燃焼室6へと火炎Fが噴出するタイミングにおいて火花放電Sを発生させることもできる。この場合も、火花放電Sは、主燃焼室6に向かって伸長しやすい。それゆえ、主燃焼室6において、火花放電Sと混合気との接触面積を稼ぎやすい。その結果、主燃焼室6における着火性を向上させることができる。
また、主燃焼室6内に発生した気流によって、主燃焼室6における先端貫通孔51の近傍が内側空間50よりも負圧となるタイミングにて火花放電Sを発生させることもできる。この場合も、火花放電Sは、主燃焼室6に向かって伸長しやすい。それゆえ、主燃焼室6において、火花放電Sと混合気との接触面積を稼ぎやすい。その結果、主燃焼室6における着火性を向上させることができる。
また、自動車エンジン等の内燃機関が冷えている状態で稼働させる冷間始動時などにおいては、上記膨張行程等にて火花放電Sを発生させることで、以下のメリットがある。冷間始動時などは、カバー部5やハウジング2、絶縁碍子3等が低温となっていることがある。また、内燃機関10の運転が軽負荷域にあり、燃料密度が低くなっていることがある。そのため、火花放電Sによって内側空間50内の混合気を着火させたとしても、発生した初期火炎が低温のカバー部5等に触れて冷やされることで、火炎Fが主燃焼室6へ充分に噴出されないこともある。
したがって、特に冷間始動時等においては、主燃焼室6に向かって火花放電Sを伸長させることで、初期火炎とカバー部5等との接触を抑制することができる。これにより、初期火炎のエネルギ損失を抑えやすい。その結果、冷間始動時等における着火性を向上させることができる。
つまり、本形態のスパークプラグ1は、内燃機関10の運転が軽負荷域及び高負荷域のどちらの場合であっても、着火性を向上させることができる。
以上のごとく、本形態によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関を提供することができる。
(評価試験1)
また、内燃機関に設置された実施形態1のスパークプラグ1及び比較形態のスパークプラグ9から噴出する火炎Fについて、CFD解析(「Computational Fluid Dynamics解析」の略)を行った。
比較形態のスパークプラグ9は、図8に示すごとく、電極先端部41が拡径されていない。また、電極先端部41は、先端側に向かって縮径していない。電極先端部41は、略円柱形状を呈する。また、比較形態のスパークプラグ9の先端貫通孔51は、先端側に向かって縮径せず、その基端側と先端側とで直径が略同一である。そして、電極先端部41の外周面410と、先端貫通孔51の内周面510との間には、円筒状噴出路520が形成されている。
また、図8に示すごとく、比較形態のスパークプラグ9のプラグ中心軸Cを含む平面による断面において、2ヶ所に表れる円筒状噴出路520の断面の延長線L3、L4は、Z方向と平行である。つまり、当該延長線L3、L4同士は交わらない。そして、円筒状噴出路520から噴出した火炎Fは、図9に示すごとく、火炎F同士が衝突しにくい。それゆえ、円筒状噴出路520から噴出した火炎Fは、先端側へ向かって伸長しやすい。
その他は、実施形態1のスパークプラグ1と同様である。
実施形態1のスパークプラグ1と比較形態のスパークプラグ9とについて、上述のCFD解析を行った。解析条件は、燃料をプロパン(C)、圧力を0.6MPaとした。当該解析結果における最大噴出状態の火炎Fを、図10、図11のコンター図にて表した。図10、図11には、上死点にあるピストン64を追記した。図10が実施形態1のスパークプラグ1についての解析結果を表し、図11が比較形態のスパークプラグ9の解析結果を表す。
図11に示すごとく、比較形態のスパークプラグ9から噴出された火炎Fは、図10に示す実施形態1のスパークプラグ1から噴出された火炎Fよりも、Z方向において、より先端側まで噴出したことを確認した。なお、ここでは、温度が500K以上の部分を「火炎F」とする。
そして、図11に示すごとく、比較形態のスパークプラグ9において、円筒状噴出路520から主燃焼室6へ噴出した、温度が500K以上の火炎Fの先端は、上死点におけるピストン64と衝突したことを確認した。一方、図10に示すごとく、実施形態1のスパークプラグ1において、環状噴出路52から主燃焼室6へ噴出した、温度が500K以上の火炎Fの先端は、上死点におけるピストン64と衝突しなかったことを確認した。つまり、実施形態1のスパークプラグ1から噴出した火炎Fの先端は、ピストン64の基端側の面よりも、基端側に位置していたことを確認した。
(実施形態2)
本形態のスパークプラグ1は、実施形態1のスパークプラグ1に対して、先端貫通孔51の内周斜面512及び電極先端部41の外周斜面411の形状を変更した形態である。
本形態のスパークプラグ1は、図12に示すごとく、環状噴出路52のZ方向における略中央において、内周斜面512及び外周斜面411は、互いに近付くように突出している。つまり、内周斜面512が突出した内周突出部515と、外周斜面411が突出した外周突出部414とによって、環状噴出路52の一部は、環状噴出路52の他の部分と比較して狭くなっている。また、内周突出部515は、内周斜面512において、周方向に環状に形成されている。外周突出部414は、外周斜面411において、周方向に環状に形成されている。つまり、内周突出部515及び外周突出部414は、それぞれプラグ中心軸Cを中心点とした円環状に形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
本形態におけるスパークプラグ1は、環状噴出路52のZ方向における略中央において、内周突出部515と外周突出部414とが、互いに近付く方向に、対向して突出している。それゆえ、図13に示すごとく、環状噴出路52のZ方向における略中央付近において、火花放電Sが形成されやすい。その結果、火花放電Sによって、内側空間50及び主燃焼室6のいずれの混合気に対する着火性をも向上させやすい。
また、環状噴出路52は、環状噴出路52のZ方向における略中央から先端側の開口端に向かうに従って広がっている。それゆえ、内側空間50から環状噴出路52を通って主燃焼室6へと噴出する火炎Fは、広がって噴出しやすく、かつ先端側へ向かう勢いが抑制されやすい。その結果、火炎Fのピストン64への衝突は抑制されやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
(実施形態3)
本形態のスパークプラグ1は、図14に示すごとく、電極先端部41の先端面412が、先端貫通孔51内に配置された形態である。
本形態における電極先端部41の先端面412は、先端貫通孔51の外側開口端514よりも基端側に配置される。また、先端面412は、Z方向における先端貫通孔51の中心よりも先端側に位置する。例えば、図14に示すごとく、Z方向におけるカバー部5の厚みをtとしたとき、Z方向における先端面412と外側開口端514との間の距離dは、t/2以下とすることができる。
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同様である。
(実施形態4)
本形態のスパークプラグ1は、実施形態1のスパークプラグ1に対して、電極先端部41の形状を変更した形態である。
本形態の電極先端部41は、図15に示すごとく、Z方向における先端側へ向かって突出した凸曲面状を呈する。また、外周斜面411の基端側は、先端貫通孔51の内側開口端513よりも基端側に位置する。また、外周斜面411と内周端部511との間の距離は、環状噴出路52のZ方向における略中央において最短となっている。
また、環状噴出路52のZ方向における略中央から基端側へ向かうに従って、環状噴出路52は、プラグ径方向における幅が大きくなる。言い換えると、環状噴出路52は、環状噴出路52のZ方向における略中央から先端側の開口端に向かうに従って広がっている。
その他は、実施形態1と同様である。
本形態のスパークプラグ1において、環状噴出路52は、環状噴出路52のZ方向における略中央から先端側の開口端に向かうに従って広がっている。それゆえ、内側空間50から環状噴出路52を通って主燃焼室6へと噴出する火炎Fは、広がって噴出しやすく、かつ先端側へ向かう勢いが抑制されやすい。その結果、火炎Fのピストン64への衝突は抑制されやすい。
また、外周斜面411と内周斜面512との間の距離は、環状噴出路52のZ方向における略中央において最短となっている。それゆえ、環状噴出路52のZ方向における略中央付近において、火花放電Sが形成されやすい。その結果、火花放電Sによって、内側空間50及び主燃焼室6の双方の混合気が着火されやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
(実施形態5)
本形態のスパークプラグ1は、図16に示すごとく、実施形態1のスパークプラグ1に対して、環状噴出路52の形状を変更した形態である。
本形態においては、プラグ中心軸Cに対する先端貫通孔51における内周斜面512の傾斜角度が、プラグ中心軸Cに対する電極先端部41における外周斜面411の傾斜角度よりも小さい。これに伴い、図16に示すごとく、先端貫通孔51の内周斜面512と電極先端部41の外周斜面411との間に形成される環状噴出路52は、Z方向における先端側へ向かうほど、プラグ径方向における幅が大きくなっている。
その他は、実施形態1と同様である。
本形態のスパークプラグ1において、環状噴出路52は、先端側の開口端に向かうに従って幅が広がっている。それゆえ、内側空間50から環状噴出路52を通って主燃焼室6へと噴出する火炎Fは、広がって噴出しやすく、かつ先端側へ向かう勢いが抑制されやすい。その結果、火炎Fのピストン64への衝突は抑制されやすい。
また、外周斜面411と内周端部511との間の距離は、環状噴出路52のZ方向における基端側において最短となる。それゆえ、環状噴出路52のZ方向における基端側において、火花放電Sが形成されやすい。その結果、火花放電Sによる内側空間50の混合気の着火性を向上しやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
上記実施形態1~5においては、電極先端部41は、中心電極4の一部を拡径してなる。ただし、電極先端部41は、図17に示すごとく、中心電極4の一部を拡径しない構成とすることもできる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
1 スパークプラグ
2 ハウジング
3 絶縁碍子
4 中心電極
41 電極先端部
411 外周斜面
5 カバー部
51 先端貫通孔
511 内周端部
512 内周斜面
52 環状噴出路
C プラグ中心軸
G 放電ギャップ

Claims (2)

  1. 筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内側に保持されると共に該絶縁碍子の先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極の少なくとも一部を覆うように上記ハウジングの先端部に設けられたカバー部(5)と、を有し、上記カバー部には、先端側に貫通した先端貫通孔(51)が形成されており、上記先端貫通孔は、先端へ向かうほど縮径し、上記中心電極の先端部である電極先端部(41)は、先端へ向かうほど縮径する形状を有し、該電極先端部の少なくとも一部は上記先端貫通孔の内側に配されており、上記電極先端部の外周斜面(411)と、上記先端貫通孔の内周斜面(512)との間には、環状噴出路(52)が先端側へ向かうほどプラグ中心軸(C)へ向かうように形成され、上記先端貫通孔の内周端部(511)は、上記中心電極の上記電極先端部との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極を構成している、内燃機関用のスパークプラグ(1)、を備えた内燃機関(10)であって、
    主燃焼室(6)と、
    上記先端貫通孔が上記主燃焼室に面するように配された上記スパークプラグと、
    上記主燃焼室を形成するピストン(64)と、を有し、
    上記プラグ中心軸を含む平面による断面において、2ヶ所に表れる上記環状噴出路の断面の延長線(L1、L2)同士が交わる交点(P)は、上死点にある上記ピストンよりも上記主燃焼室側にある、内燃機関。
  2. 上記電極先端部は、上記中心電極の一部を拡径してなる、請求項1に記載の内燃機関。
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