以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
商用電源の電路上で、初期段階の直列アークが発生すると、これに応じて特有の高周波信号が発生する。そして、この高周波信号は、商用電源によって供給される低周波(例えば、60Hz)交流信号に重畳されて、電路上を伝送される。ここで、特有の高周波信号とは、10kHzを超える周波数の信号であって、連続的あるいは断続的に発生するものをいう。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るアーク放電検知回路は、商用電源の低周波交流信号に高周波信号が重畳されているときに、その高周波信号を選択して高精度で検知するものである。以下、この原理、つまり、高周波信号が重畳された低周波交流信号から高周波信号を選択して高精度で検知できる原理を、図1及び図2に基づいて説明する。
本実施形態のアーク放電検知回路10は、図1に示すように、抵抗(R)11とインダクタ(L)12とコンデンサ(C)13とを直列に接続した回路(以下「直列RLC回路」という)により構成されている。そしてインダクタ12の両端には、検知信号を外部に出力する端子対14-14´が設けられている。
またアーク放電検知回路10は、商用電源Pの屋内配線EWの線間に、商用電源Pと並列に接続されている。さらに屋内配線EWには、負荷Lが接続されている。
このように構成されたアーク放電検知回路10において、まず、直列RLC回路のうちコンデンサ13と抵抗11とを直列に接続した回路(以下「CR回路」という)の作用について説明する。ここで、抵抗11を含むすべての抵抗のインピーダンスは、その抵抗に印加される電気信号の周波数に依存せず、一定である。つまり、抵抗には、インピーダンス周波数特性は存在しない。
これに対して、コンデンサ13を含むすべてのコンデンサのインピーダンスは、そのコンデンサに印加される電気信号の周波数に依存する。図2は、コンデンサ13のインピーダンス周波数特性の一例を示している。
図2において、コンデンサ13のキャパシタンス(容量)が、例えば、0.1μFであるとき、コンデンサ13のインピーダンスは、商用電源の低周波(例えば、60Hz)信号が印加された場合には、35kΩであるのに対して、アーク放電の高周波(例えば、10kHz)信号が印加された場合には、150Ωである。
そして、抵抗11として、抵抗値が、例えば、30Ωのものを用いた場合、低周波信号についてのコンデンサ13と抵抗11とのインピーダンス比は、1167:1となり、抵抗値が、例えば、90Ωのものを用いたとしても、低周波信号についてのコンデンサ13と抵抗11とのインピーダンス比は、389:1となる。
一方、高周波信号についてのコンデンサ13と30Ωの抵抗11とのインピーダンス比は、5:1となり、高周波信号についてのコンデンサ13と90Ωの抵抗11とのインピーダンス比は、1.7:1となる。
また、コンデンサ13のキャパシタンスが、さらに小さい、例えば、0.022μFであるときには、低周波信号についてのコンデンサ13と30Ωの抵抗11とのインピーダンス比は、6667:1となり、90Ωの抵抗11とのインピーダンス比も、2222:1となって、コンデンサ13のインピーダンスは、さらに増大する。
一方、高周波信号についてのコンデンサ13と30Ωの抵抗11とのインピーダンス比は、23:1となり、90Ωの抵抗11とのインピーダンス比も、7.8:1となる。
以上の結果は、商用電源の低周波信号にアーク放電の高周波信号が重畳されたものをコンデンサ13と抵抗11とを直列に接続したCR回路に印加した場合、コンデンサ13が低周波信号成分を通さないことにより、CR回路には高周波信号成分のみが通ることを意味している。
したがって、本実施形態のアーク放電検知回路10のように、コンデンサ13と抵抗11を直列に接続したCR回路を備えた直列RLC回路においては、重畳された信号のうち、低周波信号成分はコンデンサ13を通らないので、低周波信号成分によって抵抗11及びインダクタ12に電流は流れない。これに対して、高周波信号成分はコンデンサ13を通るので、高周波信号成分によって抵抗11及びインダクタ12に電流が流れる。
このように、アーク放電検知回路10において、CR回路は、低周波交流信号に高周波信号が重畳されているときに、その信号から高周波信号成分を選択して通過させる通過手段として作用する。このことにより、本実施形態のアーク放電検知回路10においては、インダクタ12に電流が流れ、その両端に設けられた端子対14-14´に電圧が発生しているときは、その電圧は、高周波信号によって発生したものであるということができる。
次に、直列RLC回路のうち、インダクタ12とコンデンサ13とを直列に接続した回路(以下「直列LC回路」という)の作用について説明する。
直列LC回路は、インダクタ12のインダクタンスと、コンデンサ13のキャパシタンスと、角周波数ω(=2πf、但し“f”は、直列LC回路を流れる信号の周波数)とを適当に選択することにより、共振現象を起こさせて、共振回路(以下「直列LC共振回路」という)を構成することができる。
直列LC共振回路のインピーダンスは、共振周波数fr(=ωr/2π、但しωrは、共振現象が起きたときの角周波数)において最小になる。このため直列LC共振回路では、上記CR回路を選択的に通過した高周波信号成分による電流が大きくなって、インダクタ12の両端に掛かる電圧が最大となり、インダクタ12の両端に設けられた端子対14-14´からの出力(電圧成分)は大きくなる。これにより、本実施形態のアーク放電検知回路10では、共振周波数frを特定することにより、その共振周波数fr周辺の周波数域の出力が明確となり検知精度が向上する。
なお、共振周波数fr(kHz)は、インダクタLのインダクタンス(mH)と、コンデンサCのキャパシタンス(μF)とから、fr=1/(2π√LC)で求められる。図3は、LC回路の共振周波数特性を示す図である。なお、表3の値は一例に過ぎず、本発明に使用される共振周波数は、これらの値に限定されるものではない。
なお、直列RLC回路は各構成要素、つまりコンデンサ13、抵抗11及びインダクタ12を直列に接続しているので、それぞれの構成要素にも直列アーク放電の高周波信号による電流が流れる。したがって、高周波信号による電圧を出力する端子対を抵抗11の両端に設けることも可能である。現に、本発明者らによる先の発明(上記特許文献2に記載の発明)はインダクタ12を有していないので、抵抗11の両端部に設けた端子対から高周波信号による電圧出力を検知している。
しかし、高周波信号による電流が抵抗11に流れた場合、抵抗11での放電による電力消費が原因で、抵抗11の両端部に設けた端子対から出力される電圧が低下することがある。そこで本実施形態のアーク放電検知回路10では、電力消費のないインダクタ12の両端部に設けた端子対14-14´から出力電圧を得ることにより、極微細な高周波信号による出力電圧を精度よく検知できるようにしている。
このように、インダクタ12の両端部に設けた端子対14-14´の電圧を監視し、電圧が発生したことを検知すれば、その電圧は、高周波信号によって発生したものであることが分かる。
但し、高周波信号を発生させる原因は、アーク放電以外にも、開閉サージやノイズ等があるため、端子対14-14´に電圧が発生したとしても、その電圧は、直列アーク放電が原因となって発生したものであると断定することはできない。これらの各種原因から直列アーク放電が原因となって発生した高周波信号を特定する方法については、下記に示す第3~第6実施形態に係るアーク放電検知装置において説明する。
以上説明した原理により、本実施形態のアーク放電検知回路10は、高周波信号が重畳された低周波交流信号から高周波信号を選択して検知することができる。
なお、図2で例示した高周波信号の周波数、10kHzは、コンデンサにインピーダンス周波数特性があることを説明するために、便宜上採用したに過ぎず、直列アークによって実際に発生した高周波信号の周波数を示している訳ではない。
また、本実施形態のアーク放電検知回路10に使用する抵抗11の抵抗値、インダクタ12のインダクタンス及びコンデンサ13のキャパシタンスは、特に限定するものではない。例えば、抵抗11の抵抗値は、50~300Ωであることが好ましく、100~200Ωであることがより好ましい。また、インダクタ12のインダクタンスは、0.5~2.0mHであることが好ましい。また、コンデンサ13のキャパシタンスは、0.03~0.2μFであることが好ましい。なお、これらを組み合わせて共振周波数を特定することにより、その共振周波数周辺の周波数域の検知精度が向上する。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るアーク放電検知回路20は、図4に示すように、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10と同様に、抵抗(R)21とインダクタ(L)22とコンデンサ(C)23とからなるが、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10とは、回路素子の接続態様が異なっている。
本実施形態のアーク放電検知回路20は、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10と同様に、商用電源Pの低周波交流信号に高周波信号が重畳されているときに、当該高周波信号を選択して高精度で検知するものである。以下、この原理、つまり、高周波信号が重畳された低周波交流信号から高周波信号を選択して高精度で検知できる原理を、図4に基づいて説明する。
図4において、本実施形態のアーク放電検知回路20は、上記第1実施形態における直列RLC回路とは異なり、インダクタ(L)22とコンデンサ(C)23とを並列に接続した回路(以下「並列LC回路」という)に抵抗(R)21を直列に接続した回路(以下「並列RLC回路」という)により構成されている。そしてインダクタ22の両端には、検知信号を外部に出力する端子対24-24´が設けられている。
またアーク放電検知回路20は、商用電源Pの屋内配線EWの線間に、商用電源Pと並列に接続されている。さらに屋内配線EWには、負荷Lが接続されている。
このように接続されたアーク放電検知回路20において、並列RLC回路のうち抵抗21とコンデンサ23とを直列に接続したCR回路の作用については、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10に含まれるCR回路と同様である。しかし、本実施形態のアーク放電検知回路20には、インダクタ22とコンデンサ23とを並列に接続した回路(以下「並列LC回路」という)が含まれている。この並列LC回路でも、インダクタ22のインダクタンスと、コンデンサ23のキャパシタンスと、角周波数ωとを適当に選択することにより、共振現象を起こさせて、共振回路(以下「並列LC共振回路」という)を構成することができる。本実施形態のアーク放電検知回路20においても、この並列LC共振回路を利用して高精度に直列アーク放電を検知するようにしている。
並列LC共振回路は、インダクタ22とコンデンサ23とを並列に接続していることから、並列LC共振回路のインピーダンスは、共振周波数frにおいて最大になる。このため並列LC共振回路では、インダクタ22の両端に掛かる電圧が最大となり、インダクタ22の両端に設けられた端子対24-24´からの出力は大きくなる。これにより、本実施形態のアーク放電検知回路20でも、共振周波数frを特定することにより、その共振周波数fr周辺の周波数域の出力が明確となり検知精度が向上する。
なお、本実施形態のアーク放電検知回路20でも、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10で説明したように、抵抗21の両端部に設けた端子対から高周波信号による出力を検知することもできる。しかしその場合には、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10で説明したように、抵抗21での放電による電力消費が原因で、抵抗21の両端部に設けた端子対から出力される電圧が低下するという問題がある。そこで本実施形態のアーク放電検知回路20でも、電力消費のないインダクタ22の両端部に設けた端子対24-24´から出力電圧を得ることにより、極微細な高周波信号による出力電圧を精度よく検知できるようにしている。
このように、インダクタ22の両端部に設けた端子対24-24´の電圧を監視し、電圧が発生したことを検知すれば、その電圧は、高周波信号によって発生したものであることが分かる。
但し、高周波信号を発生させる原因は、アーク放電以外にも、開閉サージやノイズ等があるため、端子対24-24´に電圧が発生したとしても、その電圧は、直列アーク放電が原因となって発生したものであると断定することはできない。これらの各種原因から直列アーク放電が原因となって発生した高周波信号を特定する方法については、下記に示す第3~第6実施形態に係るアーク放電検知装置において説明する。
以上説明した原理により、本実施形態のアーク放電検知回路20は、高周波信号が重畳された低周波交流信号から高周波信号を選択して検知することができる。
なお、本実施形態のアーク放電検知回路20に使用する抵抗21の抵抗値、インダクタ22のインダクタンス及びコンデンサ23のキャパシタンスは、特に限定するものではなく、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10と同様の範囲であることが好ましい。また、これらを組み合わせて共振周波数を特定することにより、その共振周波数周辺の周波数域の検知精度が向上する。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係るアーク放電検知装置100は、構成要素の1つとして、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10を備え、端子対14-14´に電圧が発生した場合に、直列アーク放電が原因となって発生したものであるかどうかを判定し、検知するものである。以下、本実施形態のアーク放電検知装置100を、図5~図8に基づいて説明する。
本実施形態のアーク放電検知装置100は、図5及び図7に示すように、主として、アーク放電検知回路10と、積分回路30と、コンパレータ40と、2つの電源回路50,60と(以上は図5参照)、単安定マルチバイブレータ70(図7参照)とによって構成されている。
図5中のアーク放電検知回路10は、図1に基づいて上述したアーク放電検知回路10と同じものであり、商用電源Pの屋内配線EWの線間に接続されている。端子Taと端子Tbは、屋内配線EWの各異極からそれぞれ取られたものである。
アーク放電検知回路10中のコンデンサ13と抵抗11との接続点と、出力端子対14-14´のうちの一方の端子14´との間には、2個のツェナーダイオード80a,80bをそれぞれ逆向きに直列に接続したものが並列に接続されている。ここで、「逆向きに直列に接続」とは、ツェナーダイオード80aのカソードとツェナーダイオード80bのカソードを接続して、両ツェナーダイオード80a,80bを直列に接続することを意味している。
この2個のツェナーダイオード80a,80bは、アーク放電検知回路10中のコンデンサ13と抵抗11との接続点と、出力端子対14-14´のうちの一方の端子14´との間に順方向及び逆方向のいずれに過大電圧が印加されたとしても、その後段の積分回路30に所定値以上の電圧を印加しない、保護回路として機能する。
出力端子対14-14´には、積分回路30が接続されている。積分回路30は、ダイオード31と、2個の抵抗32,34と、コンデンサ33とによって構成されている。
ダイオード31のアノードは、端子14に接続され、ダイオード31のカソードは、2個の抵抗32,34の各一端に接続されている。
抵抗32の他端は、端子14´に接続され、抵抗34の他端は、コンデンサ33の一端に接続されている。コンデンサ33の他端は、端子14´に接続されている。
そして、コンデンサ33の両端にそれぞれ端子35,35´が形成され、積分回路30の出力端子対35-35´となっている。
今、商用電源P(図1参照)の低周波信号に、アーク放電による高周波信号が重畳された信号が端子対Ta-Tbに印加されたとすると、アーク放電検知回路10の出力端子対14-14´(図5中、符号“A”で示される位置)には、当該高周波信号に応じた電圧波形が発生する。図6(a)は、この電圧波形の一例を示している。
この電圧波形は、周波数が500ns程度であるので、このままの状態で検知することは困難であるが、波形全体の長さ、つまり波形幅が100μs程度に変換できれば、検知が容易となる。
そこで、本実施形態のアーク放電検知装置100は、積分回路30を用いて、アーク放電検知回路10の出力端子対14-14´に発生した、アーク放電による高周波信号の正側の波形成分を積分し、波形幅に変換している。
図6(b)は、図6(a)の電圧波形をその波形幅に変換した結果を示しており、図5中、符号“B”で示される位置、つまり、出力端子対35-35´に発生した電圧波形を示している。これにより、変換後の電圧波形は、変換前の電圧波形と比較して、周波数が低くなるため、取り扱いが容易になる。
積分回路30の出力端子対35-35´には、コンパレータ40が接続されている。コンパレータ40は、6個の抵抗41~46と、オペアンプ47とによって構成されている。
コンパレータ40の抵抗41の一端は、電源回路50に接続され、抵抗41の他端は、抵抗42及び抵抗43の各一端に接続されている。抵抗42の他端は、端子Tbにて接地(G)されている。抵抗41と抵抗42は、電源回路50から供給される電源電圧を分圧する機能を果たしている。電源回路50は、端子Taと端子Tbとに接続され、商用電源Pの電圧(例えば、100V)をオペアンプ47用の電圧(例えば、6V)に変換している。なお、電源回路50は、一般的に使用される公知の回路によって構成されているため、その回路構成についての説明は省略する。
また、抵抗43の他端は、オペアンプ47のマイナス(-)側入力端に接続されている。抵抗44の一端は、上記端子35に接続され、抵抗44の他端は、オペアンプ47のプラス(+)側入力端に接続されている。
そして、抵抗45が、オペアンプ47の出力端と+側入力端との間に挿入され、正帰還を形成している。
さらに、オペアンプ47の出力端には、抵抗46の一端が接続され、抵抗46の他端は、端子Tbにて接地されている。そして、抵抗46の両端にそれぞれ端子48,48´が形成され、コンパレータ40の出力端子対48-48´となっている。
抵抗41及び抵抗42は、上述のように、電源回路50から供給される電源電圧を分圧し、オペアンプ47の-側入力端に、例えば、+1.0Vの電圧が印加されるようにする。これにより、オペアンプ47は、+側入力端に+1.0V以上の電圧が印加された場合には、ハイ(H)、つまり電源回路50の電源電圧(例えば+6V)を出力する一方、+側入力端に+1.0V未満の電圧が印加された場合には、ロー(L)、例えば0Vを出力する。
したがって、図6(b)の電圧波形がコンパレータ40に入力された場合、コンパレータ40は、その入力電圧が+1.0V以上の区間だけ、+6Vの“H”レベルを出力する。図6(c)は、コンパレータ40からの出力信号を示しており、図5中、符号“C”で示される位置、つまり、出力端子対48-48´に発生した電圧波形を示している。
図6(b)に示す、波形幅変換後の電圧波形の電圧は、時刻T0から時刻T1までの間、+1.0V以上となっているので、コンパレータ40は、図6(c)に示すように、時刻T0から時刻T1までの時間に相当する80μsの時間長の矩形波パルスを生成して出力する。
コンパレータ40の出力端子対48-48´のうち、一方の端子48は、図5に示すように、抵抗82を介して、フォトカプラ81(図5及び図7に分割して記載)の発光ダイオード81aのアノードと接続されている。発光ダイオード81aのカソードは、上記出力端子対48-48´のうち、他方の端子48´と接続されている。
また、図7に示すように電源Vcc(例えば、5V)には、抵抗83の一端が接続され、抵抗83の他端は、トランジスタ87のベース及び抵抗84の一端に接続されている。そして、抵抗84の他端は、フォトカプラ81(図5及び図7に分割して記載)のフォトトランジスタ81bのコレクタに接続され、フォトトランジスタ81bのエミッタは、接地されている。なお、電源Vccは、電源回路60(図5参照)によって供給される。電源回路60は、端子Taと端子Tbとに接続され、商用電源Pの電圧(例えば、100V)を電源Vccの電圧(例えば、5V)に変換する。電源回路60も、電源回路50と同様に、一般的に使用される公知の回路によって構成されているため、その回路構成についての説明は省略する。
トランジスタ87のエミッタは、電源Vccに接続され、トランジスタ87のコレクタは、抵抗85の一端に接続されている。そして、抵抗85の他端は、抵抗86の一端及びNOT回路90aの入力端に接続され、抵抗86の他端は、接地されている。
フォトカプラ81は、アーク放電検知装置100のフォトカプラ81までの回路10,30,40を含む回路と、フォトカプラ81以降の回路70を含む回路とを電気的に絶縁するために用いられる。つまり、アーク放電検知装置100のフォトカプラ81までの回路10,30,40を含む回路は、フォトカプラ81以降の回路70を含む回路と比較して、消費電力が低いため、前者の回路10,30,40を含む回路が、後者の回路70を含む回路の影響を受けて、アーク放電の検出精度が悪化する虞がある。このためフォトカプラ81は、この検出精度を悪化させないように、両者を電気的に切り離す役割を果たしている。
NOT回路90aの出力端は、NOT回路90bの入力端に接続され、NOT回路90bの出力端は、抵抗91の一端に接続され、抵抗91の他端は、コンデンサ92の一端及びNOT回路93aの入力端に接続されている。そして、コンデンサ92の他端は、接地されている。
NOT回路93aの出力端は、NOT回路93bの入力端に接続され、NOT回路93bの出力端は、NOT回路93cの入力端に接続され、NOT回路93cの出力端は、単安定マルチバイブレータ70の入力端に接続されている。
単安定マルチバイブレータ70は、2個のNAND回路71,72と、コンデンサ73と、抵抗74とによって構成されている。
NAND回路71の一方の入力端には、上記NOT回路93cの出力端が接続され、NAND回路71の他方の入力端には、他方のNAND回路72の出力端と、抵抗94を介して電源Vccとが接続されている。
NAND回路71の出力端は、コンデンサ73の一端に接続され、コンデンサ73の他端は、NAND回路72の両入力端及び抵抗74の一端に接続されている。抵抗74の他端は、接地されている。
NAND回路72は、NOT回路として使用されている。NAND回路71の出力は、出力端子75を介し、単安定マルチバイブレータ70の出力として、後段の回路、本実施形態では、警報報知回路110に供給される。なお、警報報知回路110は、電源Vccに接続されるとともに、接地されている。
コンパレータ40の出力端子対48-48´は、上述のように、抵抗82とフォトカプラ81の発光ダイオード81aとの直列回路に接続されている(図5参照)。出力端子対48-48´に、上述した図6(c)に示す矩形波パルスが出力されると、その矩形波パルスの立ち上がりで、つまり、時刻T0で、発光ダイオード81aはオンとなって、発光する。これに応じて、フォトダイオード81bもオンとなって、そのコレクタ電位が接地レベルとなり、電源Vccから抵抗83及び抵抗84に電流が流れる。
その結果、トランジスタ87のベース電位が上昇し、トランジスタ87がオンとなり、電源Vccから抵抗85及び抵抗86に電流が流れる。これに応じて、抵抗85と抵抗86との接続点、つまり、図7中、符号“C”で示される位置の電位も上昇する。
この状態は、上記矩形波パルスが立ち下がるまで継続するので、抵抗85と抵抗86との接続点には、当該矩形波パルスと同一形状の矩形波パルスが発生する。このため、抵抗85と抵抗86との接続点には、出力端子対48-48´と同じ符号“C”が付けられている。
抵抗85と抵抗86との接続点には、上述のように、NOT回路90aの入力端が接続され、その後段には、NOT回路90bが接続されている。図8(a)は、NOT回路90bの出力端と抵抗91との接続点、つまり、図7中、符号“D”で示される位置の電圧波形(矩形波パルス)の一例を示している。図8(a)中、左側の「非検知」欄の矩形波パルスは、商用電源Pの低周波交流信号の周波数が“60Hz”である場合の半周期(略8ms)内に1つずつ発生した例を示している。一方、図8(a)中、右側の「検知」欄の矩形波パルスは、同半周期内に2つずつ発生した例を示している。なお図8(a)~(c)において、破線で示す波形は、商用電源Pの低周波交流信号を全波整流したときの半周期毎の電圧波形を示している。
図7における接続点Cに、図6(c)と同様の矩形波パルスが発生し、矩形波パルスの立ち上がりにより、NOT回路90aの入力が“L”から“H”に切り替わったとき、NOT回路90aの出力は“H”から“L”に切り替わる。これに応じてNOT回路90bの出力は、“L”から“H”に切り替わる。つまり、接続点Cと接続点Dにおける“L”と“H”の状態は同じであるので、接続点Dには、接続点Cにおいて発生した矩形波パルスと同一形状の矩形波パルスが発生する。
接続点Dが“H”である間、電流が接続点Dから抵抗91を介してコンデンサ92に供給される。これに応じてコンデンサ92の電位、つまり図7中、符号“E”で示される位置の電位が上昇する。図8(b)は、この接続点Eの電圧波形の一例を示している。図8(b)中、破線で示す閾値Thは、接続点Eに接続されたNOT回路93aが“L”を出力するための入力電圧の閾値を示している。したがって、接続点Eの電圧、つまりNOT回路93aの入力電圧が閾値Th以上であれば、NOT回路93aは“L”を出力し、接続点Eの電圧が閾値Th未満であれば、NOT回路93aは“H”を出力する。図8(b)の「非検知」欄における電圧波形には、閾値Th以上になる区間が存在しないので、NOT回路93aは、“H”を継続して出力する。一方、図8(b)の「非検知」欄における電圧波形には、閾値Th以上になる区間が存在するので、NOT回路93aは、その区間継続して“L”を出力する。
閾値Thは、NOT回路93aに固有の値であるため、変動することはない。本実施形態では、抵抗91の抵抗値と、コンデンサ92のキャパシタンスとを適当に選択することにより、接続点Dに印加された矩形波パルスの中から、接続点Eの電位が閾値Th以上になる矩形波パルスを特定するようにしている。ここで、特定される矩形波パルスとは、具体的には例えば、所定の時間幅以上継続するパルスである。但し、所定の時間幅以上継続するパルスは、1つのパルスでなくても、複数のパルスにより構成されていてもよい。
図8(a)の「非検知」欄の矩形波パルスは、商用電源Pの低周波交流信号の半周期内に1つの矩形波パルスが発生した例を示している。この場合、1つの矩形波パルスでは、所定の時間幅以上継続するパルスが形成されないので、接続点Eの電位が閾値Th以上に上昇する程の電荷が、コンデンサ92に供給されない。
一方、図8(a)の「検知」欄の矩形波パルスは、商用電源Pの低周波交流信号の半周期内に2つの矩形波パルスが発生した例を示している。この場合、2つの矩形波パルスにより、所定の時間幅以上継続するパルスが形成されるので、接続点Eの電位が閾値Th以上に上昇する程の電荷が、コンデンサ92に供給される。
NOT回路93bの出力端である接続点Fと接続点Eとの間には、接続点Dと接続点Cとの間と同様に、2つのNOT回路93a,93bが接続されているので、接続点Fと接続点Eにおける“L”と“H”の状態は同じである。このため、NOT回路93aの入力端が“L”であれば、つまり接続点Eの電圧が閾値Th未満であれば、NOT回路93bの出力端、つまり接続点Fも“L”となり、NOT回路93aの入力端が“H”であれば、つまり接続点Eの電圧が閾値Th以上であれば、NOT回路93bの出力端、つまり接続点Fも“H”となる。図8(b)の「非検知」欄における電圧波形には、閾値Th以上になる区間が存在しないので、図8(c)の「非検知」欄に示すように、接続点Fにおける電圧は、“L”を継続する。一方、図8(b)の「非検知」欄における電圧波形には、閾値Th以上になる区間が存在するので、図8(c)の「検知」欄に示すように、接続点Fにおける電圧は、その区間“H”を継続する。
単安定マルチバイブレータ70の入力端は、上述したように、NOT回路93cの出力端に接続されている。NOT回路93cは、入力端、つまり接続点Fにおける“H”又は“L”を反転して出力する。したがって、接続点Fの電圧レベルが“L”であれば、NOT回路93cは“H”を出力し、接続点Fの電圧レベルが“H”であれば、NOT回路93cは“L”を出力する。
単安定マルチバイブレータ70は、入力が“H”から“L”に立ち下がったときに、動作を開始する。なお、単安定マルチバイブレータ70の動作を開始させる、このようなパルスは、トリガパルスと呼ばれている。
単安定マルチバイブレータ70が動作を開始すると、出力端子75からは、コンデンサ73のキャパシタンスと抵抗74の抵抗値によって決まる時定数、つまりCR時定数に応じた時間長の矩形波パルスが出力される。なお、単安定マルチバイブレータ70が出力する矩形波パルスは、アーク放電が発生したことを知らせるためのものである。
以上説明したように、本実施形態のアーク放電検知装置100は、アーク放電検知回路10から検知された、高周波信号に応じた電圧波形に基づいて、当該電圧波形の波形幅に応じた矩形波パルスを生成する。そして、商用電源Pの低周波交流信号の半周期内に生成されたパルス信号の時間長に応じたレベルの電位を生成し、生成された電位レベルが所定のレベル以上になった場合に、アーク放電が発生したことを示す警報用信号を生成して、外部に出力する。
このように、本実施形態のアーク放電検知装置100によれば、商用電源Pの低周波交流信号の半周期内に生成されたパルス信号の時間長に応じた電位レベルが所定のレベル以上になった場合に、当該高周波信号をアーク放電が原因の高周波信号と判定して、アーク放電の発生を示す警報用信号を外部に出力するようにしたので、アーク放電検知回路10から検知される高周波信号の中から、アーク放電が原因となって発生する高周波信号を選択して検知でき、これにより、アーク放電の誤検知を防止することができる。
また、本実施形態のアーク放電検知装置100では、アーク放電が原因となって発生する高周波信号に基づいて、アーク放電を検知するようにしたので、つまり、電圧降下をほとんど伴わないアーク放電も検知できるようにしたので、より初期段階の直列アークを確実に、かつ精度良く検知することが可能となる。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係るアーク放電検知装置200は、上記第3実施形態のアーク放電検知装置100と同様に、構成要素の1つとして、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10を備え、端子対14-14´に電圧が発生した場合に、直列アーク放電が原因となって発生したものであるかどうかを判定し、検知するものである。しかし、本実施形態のアーク放電検知装置200は、上記第3実施形態のアーク放電検知装置100に対して、端子対14-14´に発生した電圧が、直列アーク放電が原因となって発生したものであるかどうかを判定する方法が異なっている。以下、本実施形態のアーク放電検知装置200を、図9及び図10に基づいて説明する。
本実施形態のアーク放電検知装置200は構成上、上記第3実施形態のアーク放電検知装置100に対して、フォトカプラ81のフォトトランジスタ81b以降の回路の一部が異なっている。したがって、フォトカプラ81の発光ダイオード81a以前の回路は、上記第3実施形態のアーク放電検知装置100に含まれる回路をそのまま用いることにする。さらに、本実施形態のアーク放電検知装置200に含まれる、フォトカプラ81のフォトトランジスタ81b以降の回路中、上記第3実施形態のアーク放電検知装置100に含まれる構成要素と同じものには、同一符号を付して、その説明を省略する。
図9に示すように、フォトカプラ81のフォトダイオード81bのコレクタには、単安定マルチバイブレータ210の入力端が接続されている。単安定マルチバイブレータ210は、単安定マルチバイブレータ70と同様に、2個のNAND回路211,212と、コンデンサ213と、抵抗214とによって構成されている。しかし、単安定マルチバイブレータ210は、単安定マルチバイブレータ70に対して、コンデンサ213のキャパシタンスと抵抗214の抵抗値が異なっている。つまり、単安定マルチバイブレータ210から出力される矩形波パルスの時間長が異なっている。
単安定マルチバイブレータ210の入力端は、上述のように、フォトカプラ81のフォトダイオード81bのコレクタに接続されている。そして上記第3実施形態において上述したように、フォトダイオード81bのコレクタ電位は、フォトカプラ81が作動しているときは、接地レベルに低下する一方、フォトカプラ81が作動していないときには、電源Vccの電位レベルである。つまり、フォトダイオード81bのコレクタ電位は、通常“H”であり、図10(a)の矩形波パルスが発生すると、その発生開始から終了に至るまで“L”となる。
単安定マルチバイブレータ210は、入力が“H”から“L”に立ち下がったときに、動作を開始する。単安定マルチバイブレータ210が動作を開始すると、出力端子215からは、コンデンサ213のキャパシタンスと抵抗214の抵抗値によって決まる時定数、つまりCR時定数に応じた時間長の矩形波パルスが出力される。図10(b)は、一例として、出力端子215の位置、つまり、図9中、符号“G”で示される位置に発生した時間長7msの矩形波パルスを示している。なお、単安定マルチバイブレータ210が時間長7msの矩形波パルスを生成して出力する理由は、後述する。
単安定マルチバイブレータ210の出力端子215は、抵抗220の一端に接続され、抵抗220の他端は、コンデンサ221の一端及びNAND回路222の一方の入力端に接続されている。NAND回路222の他方の入力端は、上記第3実施形態において上述した抵抗85と抵抗86との接続点Cに接続されている。そして、NAND回路222の出力端は、単安定マルチバイブレータ70の入力端に接続されている。そして、コンデンサ221の他端は、接地されている。
NAND回路222の出力が“H”から“L”に切り替わる場合は、NAND回路222の2つの入力が、いずれも“H”である場合である。つまり、単安定マルチバイブレータ210が矩形波パルスを出力し、かつ、抵抗85と抵抗86との接続点が“H”である場合である。しかし、NAND回路222の一方の入力、つまり、単安定マルチバイブレータ210の出力が供給されている入力は、単安定マルチバイブレータ210から“H”が出力されたとしても、直ちに“H”とはならない。これは、NAND回路222の一方の入力は、コンデンサ221のキャパシタンスと抵抗220の抵抗値によって決まるCR時定数に応じた時間だけ遅れてから、“H”となるからである。本実施形態では、この遅延時間として、例えば1ms(図10(c)において時刻T0から時刻T1までの時間)を採用している。“1ms”は、負荷Lとして誘導負荷が接続され、その誘導負荷の起動時に発生する周期的パルス(以下「誘導負荷発生パルス」という)を検知しない不検知時間として採用したものである。誘導負荷発生パルスは、アーク放電が原因となって発生したパルスではないので、誘導負荷発生パルスを不検知にする必要があるからである。
誘導負荷発生パルスは、商用電源Pの低周波交流信号の半周期に相当する周期毎に発生することが多い。そして、商用電源Pの低周波交流信号の周波数が“60Hz”である場合の半周期は、略8msであり、1つの誘導負荷発生パルスの検知時間として“1ms”を採ると、その次の誘導負荷発生パルスが発生するまでの間隔は、8(ms)-1(ms)=7(ms)となる。この“7ms”が、単安定マルチバイブレータ210が発生する矩形波パルスの時間長に相当する。つまり、単安定マルチバイブレータ210は、隣接する誘導負荷発生パルス間の間隔に相当する時間長の矩形波パルスを出力する。
図10(c)は、抵抗220とコンデンサ221との接続点、つまり図9中、符号“H”で示される位置に発生する矩形波パルスの一例を示している。図10(c)の矩形波パルスは、図10(a)の矩形波パルスに同期して生成された図10(b)の時間長7msの矩形波パルスの立ち上がりから2ms遅延して立ち上がり、時間長5msの矩形波パルスとして生成されている。このように、単安定マルチバイブレータ210から出力された時間長7msの矩形波パルスを2ms遅延させて、時間長5msの矩形波パルスを生成したのは、時間長7msの矩形波パルスのトリガパルス(図10(a)の例では、時刻T0と時刻T2で発生した矩形波パルス)を検知しないようにするためである。
図10(d)は、NAND回路222の出力端、つまり図9中、符号“I”で示される位置から出力された矩形波パルスの一例を示している。図9(d)に示すように、図10(c)の時間長5msの矩形波パルスが発生中に、接続点Cに矩形波パルスが発生したとき、NAND回路222は“H”から“L”に立ち下がる信号を出力する。これに応じて、単安定マルチバイブレータ70は、動作を開始する。なお、単安定マルチバイブレータ70が出力する矩形波パルスは、アーク放電が発生したことを知らせるためのものである。
以上説明したように、本実施形態のアーク放電検知装置200は、アーク放電検知回路10から検知された、高周波信号に応じた電圧波形に基づいて、当該電圧波形の波形幅に応じた矩形波パルスを生成する。そして、商用電源Pの低周波交流信号の半周期内に生成されたパルス信号の個数が2つ以上であることが検出された場合、当該高周波信号は、アーク放電が原因の信号であると判定し、アーク放電が発生したことを示す警報用信号を生成して、外部に出力する。ここで、「商用電源Pの低周波交流信号の半周期内に生成されたパルス信号の個数が2つ以上であること」を検出するために、商用電源Pの低周波交流信号の半周期内に生成されたパルス信号のうちの最初のパルス信号を検知しないようにしている。
このように、本実施形態のアーク放電検知装置200によれば、商用電源Pの低周波交流信号の半周期内に生成されたパルス信号の個数が2つ以上であることが検出された場合に、当該高周波信号をアーク放電が原因の高周波信号と判定して、アーク放電の発生を示す信号を外部に出力するようにしたので、アーク放電検知回路10から検知される高周波信号の中から、アーク放電が原因となって発生する高周波信号を選択して検知でき、これにより、アーク放電の誤検知を防止することができる。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態に係るアーク放電検知装置300は、上記第3及び第4実施形態のアーク放電検知装置100,200と同様に、構成要素の1つとして、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10を備え、端子対14-14´に電圧が発生した場合に、直列アーク放電が原因となって発生したものであるかどうかを判定し、検知するものである。しかし、本実施形態のアーク放電検知装置300は、上記第3及び第4実施形態のアーク放電検知装置100,200に対して、端子対14-14´に発生した電圧が、直列アーク放電が原因となって発生したものであるかどうかを判定する方法が異なっている。以下、本実施形態のアーク放電検知装置300を、図11及び図12に基づいて説明する。
本実施形態のアーク放電検知装置300も構成上、上記第3実施形態のアーク放電検知装置100に対して、フォトカプラ81のフォトトランジスタ81b以降の回路の一部が異なっている。したがって、フォトカプラ81の発光ダイオード81a以前の回路は、上記第3実施形態のアーク放電検知装置100に含まれる回路をそのまま用いることにする。さらに、本実施形態のアーク放電検知装置300に含まれる、フォトカプラ81のフォトトランジスタ81b以降の回路中、上記第3実施形態のアーク放電検知装置100に含まれる構成要素と同じものには、同一符号を付して、その説明を省略する。
図11に示すように、NOT回路93cの出力端は、単安定マルチバイブレータ310の入力端に接続されている。単安定マルチバイブレータ310は、単安定マルチバイブレータ70と同様に、2個のNAND回路311,312と、コンデンサ313と、抵抗314とによって構成されている。しかし、単安定マルチバイブレータ310は、単安定マルチバイブレータ70に対して、コンデンサ313のキャパシタンスと抵抗314の抵抗値が異なっている。つまり、単安定マルチバイブレータ310から出力される矩形波パルスの時間長が異なっている。
NOT回路93cが“H”から“L”に立ち下がる信号を出力すると、単安定マルチバイブレータ310は、図12(c)に示すように、時間長20msの矩形波パルスを出力する。なお図12(c)は、出力端子315の位置、つまり、図11中、符号“J”で示される位置に発生した20msの時間長の矩形波パルスを示している。このように時間長20msの矩形波パルスを出力するようにしたのは、後述するように、この時間長20msの矩形波パルスをトリガパルスとして、トリガパルスの立ち上がりから10ms遅延して立ち上がる時間長40msの矩形波パルスを生成するためである。
単安定マルチバイブレータ310の出力端子315は、抵抗320の一端に接続され、抵抗320の他端は、コンデンサ321の一端及びNAND回路322の両入力端に接続されている。そして、コンデンサ321の他端は、接地されている。
また、NAND回路322の出力端は、単安定マルチバイブレータ320の入力端に接続されている。
単安定マルチバイブレータ310の出力が、図12(c)に示すように、時刻T10で“L”から“H”に切り替わると、抵抗320に電流が流れる。この電流は、コンデンサ321に電荷を供給し、コンデンサ321が満充電になるまで流れる。コンデンサ321が満充電になると、抵抗320には電流が流れなくなり、コンデンサ321と抵抗320との接続点の電位が最大値まで上昇する。これに応じて、NAND回路322は出力値を切り替える。
NAND回路322は、上記NAND回路312と同様に、NOT回路として機能する。したがって、NAND回路322の入力端が“H”になると、NAND回路322の出力端は“L”になる。
単安定マルチバイブレータ330は、単安定マルチバイブレータ310と同様に、2個のNAND回路331,332と、コンデンサ333と、抵抗334とによって構成されている。しかし、単安定マルチバイブレータ330は、単安定マルチバイブレータ310に対して、コンデンサ333のキャパシタンスと抵抗334の抵抗値が異なっている。つまり、単安定マルチバイブレータ330から出力される矩形波パルスの時間長が異なっている。
単安定マルチバイブレータ330は、トリガパルスとして、“H”から“L”に立ち下がるものが入力されたときに、つまり、NAND回路322の出力が“H”から“L”に切り替わったときに、動作を開始して、時間長40msの矩形波パルスを出力する(図12(d)参照)。
しかし、NAND回路322は、単安定マルチバイブレータ310から“H”が出力されたとしても、直ちに“L”を出力しない。これは、NAND回路322は、コンデンサ321のキャパシタンスと抵抗320の抵抗値によって決まるCR時定数に応じた時間だけ遅れてから、“L”を出力するからである。
図12(d)は、単安定マルチバイブレータ330の出力端子335、つまり、図11中、符号“K”で示される位置から出力された矩形波パルスの一例を示している。図12(d)には、時刻T10から10msだけ遅延した時刻T11から、単安定マルチバイブレータ330が矩形波パルスの出力を開始する様子が示されている。この遅延時間“10ms”は、商用電源Pの低周波信号の周波数が“50Hz”である場合の半周期に相当し、次の高周波信号についての不検知期間として機能する。このように時間長10msの不検知期間を設けたのは、負荷Lに電源が供給されたときに、チャタリングなどが原因で発生する高周波信号を、直列アーク放電が原因となって発生した高周波信号と誤判定しないためである。なお、不検知期間の時間長は、“10ms”に限らず、これより長くてもよい。
単安定マルチバイブレータ330の出力端子335は、NAND回路340の一方の入力端に接続されている。NAND回路340の他方の入力端は、NOT回路93cの出力端に接続されている。そして、NAND回路340の出力端は、単安定マルチバイブレータ70の入力端に接続されている。
NAND回路340は、その2つの入力がいずれも“H”である場合に、“L”を出力し、それ以外の場合は、“H”を出力する。
図12(e)は、NAND回路340の出力端、つまり図11中、符号“L”で示される位置から出力された矩形波パルスの一例を示している。図12(e)に示すように、NAND回路340は、単安定マルチバイブレータ330が時間長40msの矩形波パルスを出力している間に、NOT回路93cが、時刻T12で矩形波パルスを出力すると、これに同期して“H”から“L”に立ち下がる信号を出力する。これに応じて、単安定マルチバイブレータ70は、動作を開始する。図12(f)は、単安定マルチバイブレータ70の出力端子75、つまり図11中、符号“M”で示される位置から出力された矩形波パルスの一例を示している。なお、単安定マルチバイブレータ70が出力する矩形波パルスは、アーク放電が発生したことを知らせるためのものである。
以上説明したように、本実施形態のアーク放電検知装置300は、アーク放電検知回路10から検知された、高周波信号に応じた電圧波形に基づいて、当該電圧波形の波形幅に応じた第1矩形波パルスを生成するとともに、当該第1矩形波パルスをトリガパルスとして、所定の時間長(例えば、20ms)の第2矩形波パルスを生成し、さらに、当該第2矩形波パルスをトリガパルスとして、当該第2矩形波パルスの発生時刻から所定時間(例えば、商用電源Pの半周期である10ms)だけ遅延させて、所定の時間長(例えば、40ms)の第3矩形波パルスを生成し、当該第3矩形波パルスの生成中に、次の高周波信号がアーク放電検知回路10から検知されると、当該高周波信号は、アーク放電が原因の信号であると判定し、アーク放電が発生したことを示す警報用信号を生成して、外部に出力する。
そして、上記所定の遅延時間(例えば、10ms)は、次の高周波信号についての不検知期間として機能する。このような不検知期間を設けたのは、負荷Lに電源が供給されたときに、チャタリングなどが原因で発生する高周波信号を、直列アーク放電が原因となって発生した高周波信号と誤判定しないためである。なお、本実施形態では、不検知期間として、商用電源周波数の半周期に相当する期間を採用しているが、これは、この期間内でチャタリングなどが原因で発生する高周波信号が収束すると推定されるからである。もちろん、この期間内に収束しないのであれば、不検知期間を延ばすようにすればよい。
このように、本実施形態のアーク放電検知装置300によれば、最初の高周波信号がアーク放電検知回路10から検知されてから、所定の不検知期間経過後に、次の高周波信号がアーク放電検知回路10から検知されると、当該高周波信号をアーク放電が原因の高周波信号と判定して、アーク放電の発生を示す信号を外部に出力するようにしたので、アーク放電検知回路10から検知される高周波信号の中から、アーク放電が原因となって発生する高周波信号を選択して検知でき、これにより、アーク放電の誤検知を防止することができる。
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態に係るアーク放電検知装置400は、上記第3~第5実施形態のアーク放電検知装置100,200,300と同様に、構成要素の1つとして、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10を備え、端子対14-14´に電圧が発生した場合に、直列アーク放電が原因となって発生したものであるかどうかを判定し、検知するものである。しかし、本実施形態のアーク放電検知装置300は、上記第3~第5実施形態のアーク放電検知装置100,200,300に対して、端子対14-14´に発生した電圧が、直列アーク放電が原因となって発生したものであるかどうかを判定する方法が異なっている。以下、本実施形態のアーク放電検知装置400を、図13及び図14に基づいて説明する。
本実施形態のアーク放電検知装置400も構成上、上記第3実施形態のアーク放電検知装置100に対して、フォトカプラ81のフォトトランジスタ81b以降の回路の一部が異なっている。したがって、フォトカプラ81の発光ダイオード81a以前の回路は、上記第3実施形態のアーク放電検知装置100に含まれる回路をそのまま用いることにする。さらに、本実施形態のアーク放電検知装置400に含まれる、フォトカプラ81のフォトトランジスタ81b以降の回路中、上記第3~第5実施形態のアーク放電検知装置100,200,300に含まれる構成要素と同じものには、同一符号を付して、その説明を省略する。
図13に示すように、NAND回路222の出力端は、NAND回路410の両入力端に接続され、NAND回路410の出力端は、NAND回路411の一方の入力端に接続されている。また、NAND回路411の他方の入力端には、単安定マルチバイブレータ330の出力端子335が接続されている。そして、NAND回路411の出力端は、単安定マルチバイブレータ70の入力端に接続されている。
NAND回路410は、NAND回路222の出力値を反転して出力する。上記第4実施形態において図10(d)を用いて上述したように、単安定マルチバイブレータ210から矩形波パルス(図10(c)参照)が発生中に、接続点Cに矩形波パルスが発生したとき、NAND回路222は“H”から“L”に立ち下がる信号を出力する。したがってこのとき、NAND回路410は、“L”から“H”に立ち上がる信号、つまり接続点Cに発生した矩形波パルスと同一形状の矩形波パルスを出力する。
図14(f)は、NAND回路410の出力端、つまり図13中、符号“N”で示される位置から出力された矩形波パルスの一例を示している。図14(f)に示すように、単安定マルチバイブレータ210から時間長7msの矩形波パルスが出力され、所定の時間(例えば、2ms)遅れて、接続点Hに時間長5msの矩形波パルスが発生しているときに、時刻T3で接続点Cに矩形波パルスが発生すると、NAND回路410から、接続点Cに発生した矩形波パルスと同一形状の矩形波パルスが出力される。
NAND回路411は、NAND回路410の出力と単安定マルチバイブレータ330の出力との“NAND”を出力する。つまり、NAND回路411は、NAND回路410の出力がH”であり、かつ単安定マルチバイブレータ330の出力がH”である場合に限って、“L”を出力する。
図14(g)は、NAND回路411の出力端、つまり図13中、符号“O”で示される位置から出力された矩形波パルスの一例を示している。図14(g)に示すように、NAND回路411は、単安定マルチバイブレータ330が時間長40msの矩形波パルスを出力している間に、NAND回路410が矩形波パルスを出力すると、これに同期して“H”から“L”に立ち下がる信号を出力する。これに応じて、単安定マルチバイブレータ70は、動作を開始する。図14(h)は、単安定マルチバイブレータ70の出力端子75、つまり図13中、符号“P”で示される位置から出力された矩形波パルスの一例を示している。なお、単安定マルチバイブレータ70が出力する矩形波パルスは、アーク放電が発生したことを知らせるためのものである。
以上説明したように、本実施形態のアーク放電検知装置400は、アーク放電検知回路10から検知された、高周波信号に応じた電圧波形に基づいて、当該電圧波形の波形幅に応じた第1矩形波パルスを生成するとともに、当該第1矩形波パルスをトリガパルスとして、所定の時間長(例えば、20ms)の第2矩形波パルスを生成し、さらに、当該第2矩形波パルスをトリガパルスとして、当該第2矩形波パルスの発生時刻から所定時間(例えば、商用電源Pの半周期である10ms)だけ遅延させて、所定の時間長(例えば、40ms)の第3矩形波パルスを生成し、当該第3矩形波パルスの生成中に、商用電源Pの低周波交流信号の半周期内に生成されたパルス信号の個数が2つ以上であることが検出された場合、当該高周波信号は、アーク放電が原因の信号であると判定し、アーク放電が発生したことを示す警報用信号を生成して、外部に出力する。
このように、本実施形態のアーク放電検知装置400によれば、最初の高周波信号がアーク放電検知回路10から検知されてから、所定の不検知期間経過後に、次の高周波信号がアーク放電検知回路10から検知されると、当該高周波信号をアーク放電が原因の高周波信号と判定して、アーク放電の発生を示す信号を外部に出力するようにしたので、アーク放電検知回路10から検知される高周波信号の中から、アーク放電が原因となって発生する高周波信号を選択して検知でき、これにより、アーク放電の誤検知を防止することができる。
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態に係るアーク放電警報装置は、上述した第3~第6実施形態のアーク放電検知装置100,200,300,400の出力側に警報報知回路110を接続したものである。
図7、図9、図11及び図13に示すように、アーク放電検知装置100,200,300,400の各出力側には、警報報知回路110が接続されている。警報報知回路110は、単安定マルチバイブレータ70から矩形波パルスが出力されると(図12(f)及び図14(h)参照)、これに応じて警報報知を行う。ここで、警報報知の具体例としては、ブザー等の音による報知、赤色回転灯等の光による報知、バイブレータ等の振動による報知、等が考えられる。つまり、警報は、人が知覚できる態様で報知できれば、どのような態様のものを用いてもよい。
このように、本実施形態のアーク放電警報装置によれば、アーク放電が発生すると、アーク放電が発生したことを人に直接知らせてくれるので、人は、アーク放電を原因とする火災などが発生する前に、その予防策を講じることができる。
また、警報報知回路110に代えて、商用電源Pの電路を遮断する遮断機を設けるようにしてもよい。これによれば、アーク放電が発生すると、自動的に商用電源Pの電路が遮断されるので、人は、アーク放電を原因とする火災などに対する事前の予防策すら講じる必要がなくなる。
(第8実施形態)
図15は、本発明の第8実施形態に係るアーク放電警報装置500の外観を示す斜視図である。
本実施形態のアーク放電警報装置500は、その筐体内に上記第7実施形態のアーク放電警報装置を設け、上記端子Taと上記端子Tbとにそれぞれ接続された2本の電源コード501と、電源コード501の各端部にそれぞれ設けた端子502とを備えている。
端子502は、各家庭内に設けられた分電盤(図示せず)に接続される。
本実施形態のアーク放電警報装置500によれば、1つの装置で家中の電源ラインの直列アーク放電を検知し、警報することができる。
(第9実施形態)
図16は、本発明の第9実施形態に係るアーク放電警報装置600,610の外観を示す斜視図である。
本実施形態のアーク放電警報装置600,610はいずれも、各家庭内に設置されているコンセント700に差し込んで使用することができるようにしたものである。
アーク放電警報装置600は、上記第8実施形態のアーク放電警報装置500の電源コード501と同様の電源コード601と、電源コード601の端部に設けたコンセントプラグ602とを備えている。
一方、アーク放電警報装置610は、筐体にコンセントプラグの刃611を直接設けたものである。
本実施形態のアーク放電警報装置600,610によれば、電気工事士の資格を有しなくても、商用電源Pの屋内配線EWの線間に本実施形態のアーク放電警報装置600,610を設置することができる。
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記各実施形態のアーク放電検知回路及びアーク放電検知装置では、商用電源の電源周波数の半周期に相当する時間(例えば、電源周波数が60Hzであるときには、8ms)を基準に、アーク放電を原因とする高周波信号を検知するようにしたが、これに限られる訳ではない。
(2)上記第3~第6実施形態のアーク放電検知装置100,200,300,400では、構成要素の1つとして、上記第1実施形態のアーク放電検知回路10を備えるようにしたが、これに代えて、上記第2実施形態のアーク放電検知回路20を備えるようにしてもよい。
(3)上記第3~第6実施形態のアーク放電検知装置100,200,300,400では、時間長の長い矩形波パルスを発生させるために、単安定マルチバイブレータを用いたが、これに限らず、非安定マルチバイブレータを用いてもよいし、他の回路を用いてもよい。要するに、必要な時間長の矩形波パルスを発生できれば、どのようなものを用いてもよい。
(4)本実施形態のアーク放電検知装置では、アーク放電が発生したことを知らせる信号として、矩形波パルスを用いたが、パルス信号に限らず、正弦波やノコギリ波などの他の形状の信号でもよい。