JP7299485B2 - 微生物群の特定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、特定物質の量の変化に係わる微生物群を特定する微生物群の特定方法に関する。
コークス炉排水(安水)からのCOD成分の除去に、活性汚泥法(微生物を用いた生物学的排水処理)などが用いられている。活性汚泥法などの生物学的排水処理プロセスを理解、最適化するため、微生物群集解析が一般的に行われる。
従来、水処理に関与する主要微生物をスクリーニングするため、寒天培地などを用いた培養法による検討が長年試みられてきた。しかし、培養できる微生物は全体の1%にも満たず、主要微生物のスクリーニングはほぼ不可能であった。
一方、あらかじめ排水処理に影響することが分かっている微生物を対象とした解析も試みられている。特許文献1には、生物処理方法において出現する糸状性細菌のうち、固液分離障害を起こす原因となる糸状性細菌の存在を検出するプライマーセットが開示されている。係るプライマーセットによれば、固液分離障害をひきおこすSphaerotilus natansの存在を検出でき、固液分離障害の発生を抑制可能であるとされる。
特許第5337643号公報
特許文献1に記載の方法では、すでに機能が知られている数種類の微生物の存在を検出することは可能であっても、活性汚泥中の、数千を超える膨大な数の微生物種について、其々の微生物がどの排水成分の処理を担っているかを判断することは困難である。
生物学的排水処理プロセス(活性汚泥法など)で処理を担う主要微生物を特定できれば、それら微生物が優先する環境を作り出すことで、水処理プロセスの最適化が可能である。近年、遺伝子解析装置である次世代シーケンサーの開発によって水処理プロセス中の微生物を網羅的に解析することが可能となった。しかし、主要微生物の特定は以下の理由から困難であった。
1)数千以上の膨大な数の微生物が混在且つ変動するため、生データやグラフから存在量(相対割合)の優先種を推定することはほぼ不可能である。
2)ほとんどの微生物の役割(分解能力など)が分かっていない。そもそも死んだ微生物の分解など水処理には関与していない微生物も多数存在する。
3)排水には有機物、窒素化合物、硫黄化合物など様々な汚濁物質が混在しており、それぞれの除去に係わる微生物が異なる。複数の汚濁物質の処理に係わる微生物もいるため、より複雑である。
以上のように複雑かつ膨大なデータを処理する必要があり、これまで水処理データに相関のある微生物種を推定することは不可能であった。たとえば、通常の回帰分析で水処理データに相関のある微生物種を推定することが当該分野ではしばしば試みられるが、水処理データ数(=採取した試料数)に対して、微生物種の数が100倍以上多くなるため、通常の回帰分析で推定することは不可能である。
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、微生物を利用した生物処理方法において、特定物質の量の変化に係わる微生物群を特定可能な、微生物群の特定方法の提供を目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、再標本化により作成した標本に対して罰則付き回帰分析を行うことにより、微生物を利用した生物処理に関わる微生物群の特定が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
(1)以下の工程を含み、特定物質の量の変化に係わる微生物群を特定することを特徴とする微生物群の特定方法:
特定物質及び微生物を含む微生物試料中の、特定物質の量の変化速度、及び前記微生物が分類された微生物群の含有量の測定によって得られたデータセットから、再標本化により標本を作成する標本作成工程、
前記再標本化により作成した標本に対し、前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰係数を0に縮小可能な罰則付き回帰分析を行い、回帰係数に基づき選出された独立変数に対応する微生物群を選出する第一選出工程、
選出された微生物群を特定物質の量の変化に係わる微生物群と特定する特定工程。
(2)前記データセットにおいて、前記微生物群の含有量は、前記特定物質の量の変化速度の測定基準時点と同一時点及び/又は同一時点よりも前の時点の微生物群の含有量の測定によって得られたものである、前記(1)に記載の微生物群の特定方法。
(3)更に、前記第一選出工程で選出された微生物群の、再標本化により作成した標本における選出頻度から信頼度を算出し、前記信頼度に基づいて微生物群を更に選出する第二選出工程を含む、前記(1)又は(2)に記載の微生物群の特定方法。
(4)更に、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰分析を行い、p値に基づいて微生物群を更に選出する、或いは
更に、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、赤池情報量規準(AIC)の計算を行い、得られたAICの値に基づいて、微生物群を更に選出する、第五選出工程を含む、前記(1)~(3)のいずれか一つに記載の微生物群の特定方法。
(5)前記赤池情報量規準の値に基づく選出が、
前記AICの値が最小になる独立変数の組み合わせとして微生物群を選出する、
前記AICの値が小さい順からm番目までの独立変数の組み合わせで過半数を超えて含まれる微生物群を選出する、又は
前記上位数をAICのヒストグラムにより決定された前記m番目までの独立変数の組み合わせで過半数を超えて含まれる微生物群を選出するものである(前記mは1以上の整数である)、前記(4)に記載の微生物群の特定方法。
(6)更に、前記第一選出工程、前記第二選出工程、又は前記第五選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰分析を行い、正相関または負相関のいずれか一方を示す微生物群を更に選出する第三選出工程を含む、前記(1)~(5)のいずれか一つに記載の微生物群の特定方法。
(7)更に、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、正則化項を備えた主成分回帰分析を行い、少なくとも正相関または負相関のいずれかを示す微生物群を更に選出する第四選出工程を含む、前記(1)~(3)のいずれか一つに記載の微生物群の特定方法。
(8)前記主成分回帰分析に、スパース正則化による1段階主成分回帰モデルを用いる前記(7)に記載の微生物群の特定方法。
(9)前記罰則付き回帰に、L1正則化項付き回帰分析手法を用いる前記(1)~(8)のいずれか一つに記載の微生物群の特定方法。
(10)更に、以下の工程を含む、前記(1)~(9)のいずれか一つに記載の微生物群の特定方法:
前記微生物試料中の、特定物質の量の変化速度の値を取得する速度取得工程、
前記微生物試料に含まれる前記微生物の塩基配列を解読する解読工程、
解読された前記塩基配列から、前記微生物試料に含まれる微生物を微生物群に分類し、前記微生物試料中の前記微生物群の相対的含有割合を決定する割合決定工程、
前記決定された微生物群の相対的含有割合から、前記微生物試料中の前記微生物群の含有量を決定する量決定工程。
(11)前記塩基配列の解読に、シーケンサーを用いることを特徴とする前記(10)に記載の微生物群の特定方法。
(12)前記微生物が、生物学的排水処理に使用される微生物であり、
前記微生物試料は前記排水処理が行われる処理槽中の処理水であり、
前記変化速度は、前記処理水に対し測定される前記特定物質の量から算出され、
前記再標本化により作成した標本は同一の処理槽における2以上の時点での特定物質の量の変化速度及び、前記微生物群の含有量のデータを含む前記(1)~(11)のいずれか一つに記載の微生物群の特定方法。
(13)前記特定物質が、アンモニア、フェノール、チオシアン、及びチオ硫酸からなる群から選ばれるいずれか一種以上である、前記(1)~(12)のいずれか一つに記載の微生物群の特定方法。
(14)前記微生物が、アンモニアを酸化し亜硝酸を生成する微生物、フェノールを分解する微生物、チオシアンを分解する微生物、及びチオ硫酸を分解する微生物からなる群から選ばれるいずれか一以上である、前記(1)~(13)のいずれか一つに記載の微生物群の特定方法。
本発明の微生物群の特定方法によれば、特定物質の量の変化に係わる微生物群を特定可能である。
本発明に係る微生物群の特定方法の実施形態を示すフロー図である。 本発明の実施形態に係る、特定物質の量の変化速度と、微生物群の含有量と、の測定により得られたデータセットの一例を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る、Bootstrap標本の作成の一例を示す模式図である。 Lasso推定値の求解の概念を説明する模式図である。 本発明の実施形態に係る、Bootstrap標本に対してLasso解析を行った結果の一例を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る、第二選出工程の一例を説明する模式図である。 実施例で用いられた、生物処理装置の構成を示す模式図である。 実施例において取得された、生物処理装置での亜硝酸生成速度の結果を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置でのチオシアン除去速度の結果を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置での検出された全3752OTUに対する各OTUの相対割合の結果を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置での亜硝酸生成速度の実測値、回帰分析による予測値および交差検証による予測値の平均値を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置でのチオシアン除去速度の実測値、回帰分析による予測値および交差検証による予測値の平均値を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置での亜硝酸生成速度の結果を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置でのチオシアン除去速度の結果を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置でのチオ硫酸除去速度の結果を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置でのフェノール除去速度の結果を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置での亜硝酸生成速度の実測値、回帰分析による予測値および交差検証による予測値の平均値を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置でのチオシアン除去速度の実測値、回帰分析による予測値および交差検証による予測値の平均値を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置でのチオ硫酸除去速度の実測値、回帰分析による予測値および交差検証による予測値の平均値を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置でのフェノール除去速度の実測値、回帰分析による予測値および交差検証による予測値の平均値を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置での亜硝酸生成速度の実測値、および交差検証による予測値を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置でのチオシアン除去速度の実測値、および交差検証による予測値を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置でのチオ硫酸除去速度の実測値、および交差検証による予測値を示す図である。 実施例において取得された、生物処理装置でのフェノール除去速度の実測値、および交差検証による予測値を示す図である。
≪微生物群の特定方法≫
以下、適宜図を参照しながら、実施形態の微生物群の特定方法について、例を挙げて説明する。なお、本発明の微生物群の特定方法は以下の実施形態に限定されない。
図1に示すとおり、実施形態の微生物群の特定方法は、速度取得工程、解読工程、割合決定工程、量決定工程、標本作成工程、第一選出工程を有する選出工程及び特定工程を含む。選出工程がさらに含んでもよい工程として、第二選出工程、第三選出工程、第四選出工程、第五選出工程を例示する。
これら、速度取得工程、解読工程、割合決定工程、及び量決定工程により、標本作成工程に用いられるデータを取得する。特定物質の量の変化速度と、微生物群の含有量の測定により得られるデータセットの夫々の取得は、並列又は独立に行ってよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
(速度取得工程)
速度取得工程は、微生物試料中の、特定物質の量の変化速度の値を取得する工程である。
本実施形態では、微生物試料が、生物学的排水処理が行われる処理槽中の処理水(以下単に「処理水」という場合がある。)である場合について説明する。
処理水としては、例えば、コークス工場から排出されたコークス排水が挙げられる。生物学的排水処理では、処理水には、生物学的排水処理に使用される微生物と、当該微生物の処理対象の特定物質が含まれる。処理槽中の特定物質は、前記微生物が分類された特定の微生物群によって処理され、量が変動する。処理槽中に特定物質を処理する微生物群が多く存在しているほど、特定物質の処理速度がより高められていると仮定できる。
特定物質としては、微生物が直接的又は間接的に処理することのできるものであれば特に限定されるものではない。例えば、特定物質としては、アンモニア、フェノール、チオシアン、及びチオ硫酸からなる群から選ばれるいずれか一種以上を挙げることができる。
処理槽で処理水をバッチ処理する場合、処理水に含まれる特定物質の量の変化速度の値は、例えば、所定の時間内の処理水中の特定物質の変化量を求めることで得られる。特定物質の量は、処理水あたりの特定物質の濃度で表されてもよい。処理水中の特定物質の量は、処理槽からサンプリングして得られた処理水サンプルに対して求めてもよい。
処理槽中の処理水は常に完全混合されることが望ましいが、処理槽中の処理水に含まれる特定物質の量は、処理槽内で均一であるとは限らない。微生物が担体に固定化されている場合など、処理槽内で微生物の配置に偏りがある場合もある。特定物質の量の変化に係わる微生物を特定するという観点から、処理槽中での処理水に含まれる特定物質の量は、処理槽中で微生物の配置された近傍の処理水に対して求めることが好ましい。
処理槽で処理水を連続処理する場合、処理槽中の処理水に含まれる特定物質の量の変化速度の値は、例えば、処理槽中での処理水の滞留時間、水処理時間、処理槽中に流入する被処理水に含まれる特定物質の濃度、及び処理槽で処理された処理水に含まれる特定物質の濃度から求めることができる。
被処理水に含まれる特定物質の量は、処理槽に流入する前の被処理水から求めることが好ましい。係る被処理水として、後述の実施例の場合では、図6の処理槽中の24付近の処理水が挙げられる。
一方、処理槽で処理された処理水に含まれる特定物質の量は、微生物による生物学的処理を経たものでればよく、処理槽中で微生物の配置位置から下流側の処理水に対して求めることが好ましい。係る処理水として、後述の実施例の場合では、図6の処理槽中の20bや処理水25が挙げられる。ただし、上記のように処理槽中の処理水は常に完全混合されることが多く、そのような場合、20aの処理水に対して求めることができる。
(解読工程)
解読工程は、前記微生物試料に含まれる前記微生物の塩基配列を解読する工程である。
生物学的排水処理では、処理水には、生物学的排水処理に使用される微生物と、当該微生物の処理対象の特定物質が含まれる。
本実施形態における生物学的排水処理が対象とする微生物としては、例えば、アンモニアを酸化し亜硝酸を生成する微生物、フェノールを分解する微生物、チオシアンを分解する微生物、及びチオ硫酸を分解する微生物からなる群から選ばれるいずれか一以上を挙げることができる。
アンモニアを酸化し亜硝酸を生成する微生物としては、アンモニア酸化細菌(ammonia-oxidizing bacteria)やアンモニア酸化古細菌(ammonia-oxidizing archaea)が挙げられる。チオ硫酸を分解する微生物としては、チオバシラス・チオパルス(Thiobacillus Thioparus)などが挙げられる。しかしながら、同一の特定物質であっても多種多様な微生物が量の変化に係わるため、特定されている微生物群はごく一部である。加えて、多くの特定物質において量の変化に係わる微生物群は特定されていない。
通常、処理槽中の処理水に含まれる微生物は、1種類のみではなく、複数の微生物群が含まれる。本明細書において「微生物群」とはある形質又は遺伝子型に基づいて分類された微生物集団を指し、例えば属、種、亜種が挙げられ、これらに限定されない。当該遺伝子型としては単に微生物のゲノムの塩基配列も含むものとする。
処理槽中の処理水に含まれる微生物群の数は、一例として、100種類以上100万種類以下であってもよく、1000種類以上1万種類以下であってもよい。
処理槽中の処理水に含まれる微生物の塩基配列は、処理槽からサンプリングして得られた処理水サンプルから求めてもよい。微生物の塩基配列は、微生物のDNAの塩基配列であってもよく、微生物のRNAの塩基配列であってもよく、微生物のcDNA等の逆転写産物の塩基配列であってもよい。処理水が、微生物が固定化若しくは付着した担体を含む、又は微生物が固定化若しくは付着した担体と接触する場合には、処理水に含まれる微生物とは、当該担体に固定化若しくは付着した微生物であってもよい。
本実施形態の解読工程では、例えば、先ず当該担体からDNAを抽出する。抽出されたDNAには、処理槽中の処理水に含まれる微生物のDNAが含まれている。得られたDNAの塩基配列は網羅的に解読してもよく、一部のみを解読してもよい。一部のみを解読する場合として、例えば、特定の遺伝子のDNAの塩基配列を対象に解読してもよい。また、当該担体から抽出されたRNAの逆転写産物(cDNA)の塩基配列を対象に解読してもよい。
通常、処理水に含まれる微生物を系統学的に分類しようとする場合、微生物のリボソームRNA遺伝子(rRNA遺伝子またはrDNA)の塩基配列の全長またはその一部を解読する。また、処理対象の特定物質が単一の場合、機能遺伝子の塩基配列を解読しても良い。一例として、アンモニアを酸化し亜硝酸を生成する微生物の場合、アンモニアモノオキシゲナーゼ遺伝子の塩基配列を解読してもよい。本実施形態では16SリボソームRNA遺伝子の塩基配列の一部を解読する場合を説明する。
解読された塩基配列からは、微生物種を特定できる場合もあるが、本実施形態の微生物の特定方法において、種の特定は必須ではない。例えば、1リードの塩基配列を1つの微生物とみなし、塩基配列の同一性や相同性等に基づいて、塩基配列を分類し、分類された塩基配列の分類群を、微生物の微生物群として扱ってもよい。通常、相同性が97%以上の塩基配列データを1つのグループのクラスタとしてまとめ、各クラスタ配列の中で最も出現頻度の高い配列を代表OTU(OTU; Operational Taxonomic Unit; 操作的分類単位)配列とし、1OTUを1微生物群として扱う。なお、相同性は97%以上でも以下でもよく、例えば、80%以上であってもよく、90%以上であってもよく、95%以上であってもよく、98%以上であってもよい。本実施形態では、当該OTUに基づいて微生物群を分類する。
DNAの抽出及び解読は、公知の方法により行うことができる。塩基配列の解読にはシーケンサーを用いることができる。
本実施形態の微生物群の特定方法は、非常に多くの微生物情報を含むデータに対して好適に用いられる。そのため、前記塩基配列の解読に、次世代シーケンサーを用いることが好ましい。次世代シーケンサーとしては、DNAポリメラーゼ等による逐次的DNA合成反応を利用したものが代表的である。前記塩基配列の解読に用いるシーケンサープラットフォームとして、454、Illumina、SOLiD、Ion torrent、PacBioが挙げられる。
(割合決定工程)
割合決定工程は、前記解読工程で解読された前記塩基配列から、前記微生物試料に含まれる微生物を微生物群に分類し、前記微生物試料中の前記微生物群の相対的含有割合を決定する工程である。
例えば、前記処理水サンプルに、分類群Aに分類される塩基配列30リードと、分類群Bに分類される塩基配列20リードとが含まれているとする。この場合、この処理水サンプルには、分類群Aに分類される微生物群30部と、分類群Bに分類される微生物群20部とが含まれていると見なすことができる。
(量決定工程)
量決定工程は、前記割合決定工程で決定された微生物群の相対的含有割合から、前記微生物試料中の前記微生物群の含有量を決定する工程である。例えば、処理槽中の処理水に含まれる微生物群の含有量は、相対的含有割合を得た処理水サンプルに対応する処理水サンプルに含まれる微生物数の値を得て、相対的含有割合に該微生物数を乗じることで求めることができる。
微生物数の値は、微生物数の値そのものである必要はなく、処理水サンプル間での微生物数の値が反映されているものであればよい。これは、上記の全分類群に分類された微生物を共通して検出できるものがよい。例えば、処理水サンプルに含まれるDNA量から、処理水サンプルに含まれる微生物数を求めてもよい。また、処理水サンプルに含まれる共通の遺伝子の数から、処理水サンプルに含まれる微生物数を求めてもよい。なお、試料間での微生物数の値に違いがないと判断される場合などでは、前期割合決定工程で決定された微生物群の相対割合を微生物群の含有量とすることもできる。
また、上記量決定工程で決定した微生物群の含有量を標準化した値を標準化された微生物量とすることもできる。
上記の速度取得工程、解読工程、割合決定工程、及び量決定工程を経て、前記標本作成工程に用いられる特定物質の量の変化速度、及び前記微生物が分類された微生物群の含有量のデータが取得される。
これらのデータは、例えば処理水サンプルごとに取得される。特定物質の量の変化速度と、微生物群の含有量のデータとは、それぞれ同一の処理水サンプルから取得されてもよい。又は、処理槽中の各微生物群の含有量と、処理槽で処理された特定物質の量の変化との相関を仮定できる範囲において、特定物質の量の変化速度と、微生物群の含有量のデータとは、それぞれ別々の処理水サンプルから取得されてもよい。別々の処理水サンプルを用いる場合の一例としては、処理槽から微生物群の含有量のデータ取得に使用された処理水サンプルが採取され、その後数日後に同一の処理槽から、特定物質の量の変化速度を求めるのに使用された処理水サンプルが採取される場合が挙げられる。
また、処理水サンプルは同一の処理槽に由来するものであってもよいが、処理槽中の各微生物群の含有量と、処理槽で処理された特定物質の量の変化との相関を仮定できる範囲において、別々の処理槽に由来するものであってもよい。
処理水サンプルから得られた特定物質の量の変化速度のデータと、微生物群の含有量のデータとを、これらの相関が仮定できる範囲で組み合わせることにより、特定物質の量の変化速度、及び前記微生物が分類された微生物群の含有量の測定により得られるデータセットを作成する。このデータセットを初期標本として、実施形態の再標本化による標本の作成に用いることができる。前記再標本化により作成した標本は同一の処理槽における2以上の時点での特定物質の量の変化速度及び、前記微生物群の含有量のデータを含むことが好ましい。
(標本作成工程)
標本作成工程は、特定物質及び微生物を含む微生物試料中の、特定物質の量の変化速度、及び前記微生物が分類された微生物群の含有量の測定により得られたデータセットから、再標本化により標本を作成する工程である。
図2は、本実施形態における、処理槽中の処理水に含まれる特定物質の量の変化速度と、処理槽中の処理水に含まれる微生物群の含有量と、の測定により得られたデータセットの一例を示す模式図である。
図2中、tは処理水中から特定物質の変化速度及び微生物群の含有量を取得したデータセット数を表し、1~n番目まで順に番号が付されている。ここでは特定物質が亜硝酸である場合を示す。
Denovoは微生物群の種類を表し、pは微生物群の数を表す。図2中の丸は各微生物群の含有量のデータを表す。例えば、p=3752である場合、処理水に3752種類の微生物群が含まれ、各測定により得られたデータセットには、3752個の各微生物群の含有量のデータが含まれる。図2中の四角は処理水に含まれる亜硝酸量の変化速度のデータを表す。各データセットには、1個の亜硝酸量の変化速度のデータが含まれる。例えば、1日1回、処理水から前記データセットを取得すると、n=23である場合、23日間に取得された23個の処理水の前記データセットがあることを意味する。
データの取得頻度は、任意に設定でき、例えば1日1回、3日に1回、7日に1回である。微生物群の特定を精度よく行うためには、データの取得頻度は高いほうが良いのだが、あまり短い取得頻度を設けると偶発的な変動の結果も取得してしまう場合もあるので、取得頻度はある程度の期間を設けてよい。また処理槽内の微生物群の滞留時間等も考慮して、取得頻度を適宜設定すればよい。
前記データセットにおいて、前記微生物群の含有量は、前記特定物質の量の変化速度の測定基準時点と同一時点のデータ及び/又は同一時点よりも前の時点の含有量のデータを使用してもよい。
Figure 0007299485000001
上記表に示す例では、運転開始N日から7日ごと(Nは0以上の整数を表す)の取得頻度でデータを取得する場合を示している。特定物質の量の変化速度は、例えば流入する被処理水の濃度から処理水に含まれる特定物質の濃度を引いた値を水処理時間で割ることで算出できる。
上記同一時点のデータを用いてデータセットを作成する場合、例えば2時点目のデータを用いてデータセットを作成する場合には、運転(N+14)日目の物質量から算出した特定物質の量の変化速度のデータと、運転(N+14)日目に取得した微生物群の含有量の値のデータとを用いる場合を例示できる。
上記同一時点よりも前の時点の含有量のデータを用いてデータセットを作成する場合、例えば2時点目の特定物質の量の変化速度のデータを用いてデータセットを作成する場合には、運転(N+14)日目の物質量から算出した特定物質の量の変化速度のデータと、運転(N+7)日目に取得した微生物群の含有量の値のデータとを用いる場合を例示できる。
また、データセットには、異なる複数の時点での微生物群の含有量のデータを含めることができる。上記同一時点及び同一時点よりも前の時点の微生物群の含有量のデータを用いてデータセットを作成する場合、例えば2時点目の特定物質の量の変化速度のデータを用いてデータセットを作成する場合には、運転(N+14)日目の物質量から算出した特定物質の量の変化速度のデータと、運転(N+14)日目に取得した微生物群の含有量の値のデータに加え、運転(N+7)日目に取得した微生物群の含有量の値のデータを用いる場合を例示できる。
同一時点よりも前の時点とは、上記に例示したような一時点前のデータの他、二時点前、三時点前等の任意の時点前のデータを採用でき、これら各時点でのデータは、それぞれ組み合わせて使用することも可能である。また、上記例では7日ごとの等間隔の時点を例示しているが、各時点の時間間隔は、同一であってもよく異なっていてもよい。
このように、データセットに、異なる複数の時点での微生物群の含有量のデータを含めることで、特定物質の量の変化速度と含有量との相関に、ある程度のタイムラグがある微生物群のデータも幅広く解析に含めることができ、より高精度に微生物群の特定を行うことが可能である。
図2中、異なる複数の時点での微生物群の含有量のデータを含める場合として、1時点目と2時点目の微生物群の含有量のデータを追加で含めた場合、例えば、処理水に3752種類の微生物群ごとに2時点分のデータが含まれ、p=3752×2となる。
再標本化する手法として、Bootstrap法、Jackknife法等が使用できる。本実施形態では再標本化する手法としてBoootstrap法を用いる場合を説明する。
図3は、本実施形態において、図2に示す取得データのデータセットからBootstrap法によりBootstrap標本を作成する場合の一例を示す模式図である。図3中、前記のn個のデータセット(図中左)から、無作為にn´個のデータセットを再サンプリングし(図中右)、n´個のデータセットからなる複数組(B組)のBootstrap標本を作成する。前記nとn´の値は通常同じだが、異なっても良い。サンプリングされる前記データセットは重複していてもよい。例えば、図3中の1組目に示す例では、t=1が2つ重複してサンプリングされている。図3中、Bは組の番号を表す。例えば、B=1000である場合、1000組のBootstrap標本を作成する。組数は100組以上が好ましく、1000組以上がより好ましい。より好ましくは、組数を徐々に増やしながらBoootstrap標本を作成し、後述の第一選出工程で選出される微生物群の数が変わらなくなるまで組数を増やすことが望ましい。
(第一選出工程)
第一選出工程は、前記再標本化により作成した標本に対し、前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、罰則付き回帰分析を行い、回帰係数に基づき選出された独立変数に対応する微生物群を選出する工程である。
本実施形態における罰則付き回帰分析では、推定された係数の値をより小さくするような罰則を与えることを目的とし、回帰係数を0に縮小可能な罰則付き回帰分析を行う。回帰係数を0に縮小可能な罰則付き回帰分析としては、Lasso(Least Absolute Shrinkage and Selection Operator)、Elastic net及びSCAD(Smoothly Clipped Absolute Deviation)に代表されるL1ノルムの正則化項を備えた回帰式を使用できる。
本実施形態では、罰則付き回帰分析として上記Lasso法を用いる場合を説明する。
例えば、特定物質が亜硝酸である場合、下記式(A)の関数が表される。
Figure 0007299485000002
Lasso法では、係数を0に縮小させることができる。そのため、変数(微生物群)選択(選出)と、定数項及び係数の推定と、を同時に行うことができる。これにより、従来、現実的に分析が不可能であったような独立変数の個数が多いデータに対しても、回帰分析が可能となる。
Lassoとは、下記式(I)で表す関数をパラメータβに関して最小化する方法である。下記式(I)式の第2項がL1ノルムの正則化項である。
Figure 0007299485000003
上記式(I)式は、下記式(II)式に示す係数βに関するL1ノルムの条件付き最小化問題に書き換えることができる。
Figure 0007299485000004
これを図的に理解すると図4のようになる。図4は、Lasso推定値の求解の概念を説明する模式図である。網掛けで示した正方形の制約領域と等高線が接する部分が解となる。以下に、Lasso推定値を決定するためのアルゴリズムを示す。
線形回帰モデルの場合、下記式(III)の最小化を考える。ここで、独立変数は平均0、分散は1に基準化、従属変数は0に平均化している。
Figure 0007299485000005
次に、任意のjについてβ=0とし、j=1,2,…,p,1,2,…、として下記式(IV)を計算する。
Figure 0007299485000006
λは固定として、下記式(V)と更新し、S(・,・)は下記式(VI)で表される。
Figure 0007299485000007
Figure 0007299485000008
本実施形態に係る罰則付き回帰分析において、データセット数nに対する微生物群の数pの比(p/n)は、10≦p/n≦10000であってもよく、100≦p/n≦1000であってもよい。
本実施形態に係る罰則付き回帰分析の、関数あたりの微生物群の数pは、100以上100万以下であってもよく、1000以上1万以下であってもよい。
図5は、前記B組のBootstrap標本に対し、それぞれLasso解析を行った結果を示す模式図である。図5中の1組目のBootstrap標本からは、係数の0とならなかった変数に対応する3つのDenovo(微生物群)が選出されたことを示す。
同じく、B組目のBootstrap標本からは、2つのDenovo(微生物群)が選出されたことを示す。ここで示すように、各Bootstrap標本をLasso解析した場合、選ばれるDenovoの種類は同じとは限らず、選ばれるDenovoの個数も同じとは限らない。
後述の実施例1で具体的に示される例では、3752種類の微生物群から、27種の微生物群が選出できた。
第一選出工程により、特定物質の量の変化に寄与が大きい微生物群が選出される。
(第二選出工程)
第二選出工程は、前記第一選出工程で選出された微生物群の、再標本化により作成した標本における選出頻度から信頼度を算出し、前記信頼度に基づいて微生物群を更に選出する工程である。
前記第一選出工程で再標本化により作成した標本をB組作成して解析し、前記第一選出工程での各微生物群の選出回数をU回とすると、各微生物群の第一選出工程での選出頻度はU/Bで表され、当該値を信頼度とすることができる。
図6は、第二選出工程を説明する模式図である。まず、各微生物群が選出されたことの信頼度を算出する。図6に示すとおり、B組のBootstrap標本を解析した結果を集計し、前記第一選出工程で選出された回数を集計する。図6に示す例では、前記第一選出工程でDenovo1は988回選出され、Denovo2は675回選出されている。ここで、Bootstrap標本を1000組とした場合、Denovo1の信頼度は988/1000=0.988であり、Denovo2の信頼度は675/1000=0.675である。
この得られた信頼度に基づいて、前記第一選出工程で選出された微生物群を更に選出する。大きな信頼度の値を得た微生物群であるほど、特定物質の量の変化に寄与が大きいものであると推定できる。第二選出工程における信頼度の基準値は適宜選択すればよいが、例えば、信頼度0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、又は0.9以上の微生物群をさらに選出することが挙げられる。後述の実施例1で具体的に示されるチオシアン除去の例では、信頼度0.6以上を基準として、27種類の微生物群から、さらに5種の微生物群が選出できた。
第二選出工程により、特定物質の量の変化に寄与がより大きい微生物群が選出される。
(第三選出工程)
第三選出工程は、前記第一選出工程、前記第二選出工程又は後述の第五選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰分析を行い、正相関または負相関のどちらか一方を示す微生物群を更に選出する工程である。
本実施形態では、前記第一選出工程、前記第二選出工程又は第五選出工程のうち、前記第二選出工程で選出された微生物群を用いて解析を行う場合を説明する。なお、第三選出工程では第一及び第二選出工程を経て、既に独立変数の数が絞り込まれているため、第三選出工程における回帰分析は罰則付き回帰分析に限定されず、最小二乗法や最尤法等による罰則項なしの回帰分析の手法を採用してもよい。また、例えば、解析したDenovoに対するp値を得てもよい。得られたp値を基準に、第三選出工程で選出された微生物群から、さらに微生物群を選出することもできる。例えば、p値が0.05未満の微生物群を選出することを例示できる。この工程におけるp値とは、用いた回帰分析における回帰係数の推定値の信頼度である。
第三選出工程の回帰分析を行い、各独立変数の回帰係数を算出する。そして、回帰係数が正または負のどちらか一方を示す微生物群を選出する。後述の実施例1で具体的に示されるチオシアン除去の例では、回帰係数が正を示す微生物として、5種類の微生物群から、さらに3種の微生物群が選出できた。
第三選出工程により、特定物質の量の変化に寄与がより大きく、特定物質の量の変化に正または負のどちらか一方に相関する微生物群が選出される。
(第四選出工程)
第四選出工程は、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、正則化項を備えた主成分回帰分析を行い、少なくとも正相関または負相関のいずれかを示す微生物群を更に選出する工程である。
本実施形態では、前記第一選出工程又は前記第二選出工程のうち、前記第一選出工程で選出された微生物群を用いて解析を行う場合を説明する。図1に示すとおり第二選出工程、第三選出工程及び第五選出工程に代えて第四選出工程により、微生物群を更に選出する。
まず、第四選出工程の正則化項を備えた主成分回帰分析を行い、設定した各主成分軸の回帰係数を算出する。そして、各主成分軸のいずれか1つ以上について、回帰係数と各主成分軸でのOTUの主成分の値とを乗じた値が、少なくとも正または負のどちらかを示す微生物群を選出する。正則化項が備わった主成分回帰では、各主成分軸でのOTUの主成分の値がゼロになることがある。このOTUは、特定物質の量の変化に関わらない微生物群と判断でき、選出から除外する。設定する主成分軸の数は任意であるが、統計処理が複雑になりすぎないよう、主成分軸の数は1~5個程度とするのが好ましい。
主成分回帰分析で設定された各主成分軸は、特定物質の変化に影響を及ぼす外部要因や内部要因等の何らかの要因を反映しているものと考えられる。主成分回帰分析を行うことで、主成分軸ごとに解析を行うことができ、選出された微生物群同士の関係性を推定することが可能となる。
前記要因としては、例えば、処理水のpH、温度、処理される特定物質の量、微生物群同士の相互作用等が挙げられる。
前記主成分回帰(PCR)分析は、スパース正則化による1段階主成分回帰モデルを用いることが好ましい。当該モデルは、スパース主成分回帰(SPCR;sparse principal component regression)モデルと呼ばれ、既報 (Kawano et al., Comput. Stat. Data Anal.89, (2015) 192-203) の内容に基づき解析を実施することが可能である。
SPCRの概要について説明する。データx,... , xに加えて、従属変数に関するデータy,... , yが得られたと仮定し、従属変数がデータ行列X=(x,... , xの主成分に依存している場合を考える。SPCRでは、主成分Bxを用いた下記式(VII)に示す最小化問題(スパース正則化)を考える。ここで、γ0は切片、γ = (γ1,...,γk)Tは回帰係数ベクトル、λβとλγは正の値を取る正則化パラメータ、wとζは0から1の間に値を取るチューニングパラメータを表す。
Figure 0007299485000009
主成分回帰(PCR)は、主成分分析を実行し独立変数の個数をある程度まで減らしてから回帰モデルを構築する2段階法である。主成分回帰では、主成分スコアが新しい独立変数となるが、この新しい独立変数(主成分スコア)の選択は、主成分分析のみから得られており、従属変数には合わされていない。
PCRに対してSPCRは、主成分分析に関連した損失関数と回帰誤差の損失関数の重み付き和を全体の損失関数とし、適当なスパース正則化を導入することにより、1段階法による主成分スコアを独立変数にした回帰モデルである。
SPCRを採用することで、従属変数に寄与する主成分スコアを自動的に抽出することが可能となり、より精度の高い分析が可能となる。
以下、第四選出工程でSPCRを行う場合について説明する。まず、前記第一選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、SPCRを行う。かかる処理において、特定物質の量の変化に関連の低い軸は統計的に自動的に省かれる。得られた各主成分軸の回帰係数を算出し、各主成分軸のいずれか1つ以上について、回帰係数と各主成分軸でのOTUの主成分の値とを乗じた値が、少なくとも正または負のどちらかを示す微生物群を選出する。
後述の実施例3で具体的に示されるチオシアン除去の例では、前記値が正または負を示す微生物として、34種類の微生物群から、27種の微生物群が選出できた。
なお、回帰係数と各主成分軸でのOTUの主成分の値とを乗じた値が正に大きいほど特定物質の量の変化にプラスに寄与し、当該値が負に大きいほど特定物質の量の変化にマイナスに寄与する微生物群であると考えられる。したがって、回帰係数と各主成分軸でのOTUの主成分の値とを乗じた値に基づき、微生物群を更に選出することもできる。
さらに、選出された微生物群同士の関係性を推察することもできる。実施例3の結果を例に、微生物群同士の関係性の推察について説明すると、例えば、表13に示すチオシアン除去のデータを参照すると、主成分軸が3つ得られており、実施例の生物学的排水処理プロセスでは、チオシアン除去に大きく3つの要因が影響しているといえる。
例えば、同じ主成分軸で主成分の値の得られた(主成分の値がゼロでない)微生物群は、同じ要因より影響を受けるものである可能性が推察できる。
同じ主成分軸で主成分の値の得られた微生物群のうち、回帰係数と各主成分軸でのOTUの主成分の値とを乗じた値が、正同士又は負同士のものは、同じ要因により同様の影響を受けるものである可能性が推察できる。対して、同じ主成分軸で主成分の値の得られた微生物群のうち、回帰係数と各主成分軸でのOTUの主成分の値とを乗じた値が、正と負とで逆であるものは、同じ要因により逆の影響を受けるものである可能性が推察できる。
あるいは、同じ主成分軸で値の得られた微生物群のうち、回帰係数と各主成分軸でのOTUの主成分の値とを乗じた値が、正同士又は負同士のものは、共生関係にあるなど、共に増殖しやすい可能性が推察できる。対して、同じ主成分軸で主成分の値の得られた微生物群のうち、回帰係数と各主成分軸でのOTUの主成分の値とを乗じた値が、正と負とで逆であるものは、競合関係にあるなど、共に増殖し難い可能性が推察できる。
異なる主成分軸では主成分の値が得られ、同じ主成分軸では主成分の値の得られていない微生物群同士は、異なる要因により影響を受けるものである可能性が推察できる。この場合、それぞれの微生物群では制御すべき因子が異なる可能性が推察できる。
各主成分軸がどのような要因を反映しているかを特定する方法としては、例えば、選出された微生物群の含有量又は特定物質の量の変化速度と、処理水の温度やpH等の想定される要因との相関を算出し、相関の高い要因を見つけることが挙げられる。同じ主成分軸で選出された他の微生物群についても調べ、同様の相関傾向を示すことを確認することで、上記要因を特定する精度を高めてもよい。
第一選出工程のあとに第四選出工程を行った場合では、第二選出工程における信頼度に基づいた選別をしていないため、人為的な選別の意図によらない合理的なデータ解釈ができる可能性がある。
第一選出工程のあとに第四選出工程を行った場合では、信頼度が低くても特定物質の変化への関与が高いと算出された微生物群も選出される。
(第五選出工程)
第五選出工程は、以下の第五(A)選出工程、又は第五(B)選出工程を含む。
第五(A)選出工程は、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰分析を行い、p値に基づいて微生物群を更に選出する工程である。
第五(B)選出工程は、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、赤池情報量規準の計算を行い、得られた基準量の値(AIC)に基づいて、微生物群を更に選出する工程である。
本実施形態では、前記第一選出工程又は前記第二選出工程のうち、前記第二選出工程で選出された微生物群を用いて解析を行う場合を説明する。なお、第五選出工程の後に第三選出工程を行うことにより、微生物群を更に選出することもできる(図1の第五選出工程から第三選出工程の順)。
以下、上記の第五(A)選出工程について説明する。本実施形態では、前記第一選出工程又は前記第二選出工程のうち、第二選出工程で選出された微生物群を用いて解析を行う場合を説明する。
本実施形態の第五(A)選出工程では、前記第二選出工程で選出された微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰分析を行い、p値が0.05未満の微生物群を選出する。この工程におけるp値とは、用いた回帰分析における回帰係数の推定値の信頼度である。
後述の実施例5で具体的に示される例では、6種類の微生物群から、5種の微生物群が選出できた。
第五(A)選出工程により、特定物質の量の変化に寄与がより大きい微生物群が選出される。
なお、第五(A)選出工程は、上記の第三選出工程とは異なり、正相関または負相関のどちらか一方を示す微生物群を更に選出するものではないが、第五選出工程の回帰分析で得られた回帰係数を基準に、第五選出工程で選出された微生物から、正相関または負相関のいずれか一方を示す微生物群を更に選出することもできる。
以下、上記の第五(B)選出工程について説明する。本実施形態では、前記第一選出工程又は前記第二選出工程のうち、第二選出工程で選出された微生物群を用いて解析を行う場合を説明する。
本実施形態の第五(B)選出工程では、まず、前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数xとし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数Yとする線形回帰モデルを考える(下記の式(VIII)を参照)。
Figure 0007299485000010
前記第二選出工程で選出された前記微生物群の組み合わせを対象に線形回帰モデルを構築し、構築したモデルを赤池情報量規準AIC(Akaike information criterion)で評価する。赤池情報量規準AICは、種々の公知のAICの公式又はその改良されたものを適宜採用してよく、例えば下記の式(IX)で表わされるものを採用できる。また、赤池情報量規準AICに関しては、例えば既報(小西貞則 北川源四郎著「情報量規準」朝倉書店2004年9月25日発行も参照できる。
Figure 0007299485000011
そして、得られたAICの値に基づいて、微生物群を選出する。
用いられた説明変数の組み合わせで、得られたAICの値が小さいほど、その組み合わせが、従属変数を予測するのに適しているということができ、その考えのもと、AICに基づく選出方法を適宜行うことができる。
例えば、以下の選出方法を例示できる。
方法1:AICの値が最小になる独立変数の組み合わせとして微生物群を選出する。
方法2:AICの値が小さい順からm番目までの独立変数の組み合わせで過半数を超えて含まれる微生物群を選出する。ここで、mは1以上の整数であり、例えば3以上である。
方法3:AICヒストグラムにより決定された前記m番目までの独立変数の組み合わせで過半数を超えて含まれる微生物群を選出する。
方法1について、後述の実施例7で具体的に示される例では、AICが最小(この例では236.63)になる独立変数の組み合わせとして、denovo2647_1を除外した5つの微生物群を選出できた。
方法2について、後述の実施例7で具体的に示される例では、AICが小さい順からm=3番目(この例では236.63、238.25、241.33)までの独立変数の組み合わせのうち、denovo2647_1は、AICが238.25の場合でしか用いられていないので、過半数を超えて選出されていないdenovo2647_1を除外した5つの微生物群を選出できる。
方法3おけるAICヒストグラムとは、算出されたAICの最大値から最小値までを区間で区切り、各区間に対応する組み合わせの該当数を縦軸としたヒストグラムにおいて、2つ以上のピークができるよう前記区間を選択し、AICの値が小さい順から任意の数までのピーク数(ただし全ピーク数-1)のピークに含まれるm番目までの組み合わせを用いることを例示できる。ピークが2つ得られた場合の選択ピーク数としては例えば1であり、1番目のピークに含まれる組み合わせの数がmとなる。
第五(B)選出工程により、特定物質の量の変化に寄与がより大きい微生物群が選出される。
本実施形態の微生物群の特定方法においては、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰分析を行い、p値に基づいて微生物群を更に選出する、或いは、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、赤池情報量規準の計算を行い、得られた基準量の値(AIC)に基づいて、微生物群を更に選出する第五選出工程を含む。既に第一選出工程又は第二選出工程で選出した、信頼度の高い微生物群のデータを用いるため、特定物質の量の変化速度への寄与のより大きな微生物群を、精度よく特定できる。
(特定工程)
本実施形態の特定工程は、選出工程で選出された微生物群を、特定物質の量の変化に係わる微生物群と特定する工程である。
選出工程は、第一選出工程を有し、更に第二~第五選出工程からなる群から選択されるいずれか一以上の工程を有していてもよい。第一選出工程を経た後の各選出工程の組み合わせは、微生物群の選出が可能なよう、任意に選択できる。
その一例としては、図1に図示するように、例えば、
第一選出工程→第二選出工程の順、
第一選出工程→第二選出工程→第三選出工程の順、
第一選出工程→第三選出工程の順(不図示)、
第一選出工程→第二選出工程→第三選出工程→第五選出工程の順、
第一選出工程→第三選出工程→第五選出工程の順(不図示)、
第一選出工程→第四選出工程の順、
第一選出工程→第二選出工程→第四選出工程の順、
第一選出工程→第五選出工程の順、
第一選出工程→第二選出工程→第五選出工程の順、
第一選出工程→第五選出工程→第三選出工程の順、
第一選出工程→第二選出工程→第五選出工程→第三選出工程の順、等が挙げられる。
選出工程は第三選出工程又は第四選出工程を含むことが好ましい。上記第三選出工程、又は第四選出工程、で選出された微生物群は、特定物質の量の変化に寄与がより大きいもののうち、特定物質の量の変化に正または負に相関する微生物群であると判定できる。
特定物質の量の変化に正に相関する微生物群としては、例えば、特定物質の量の変化速度として、特定物質の量の増加速度を用いた場合、処理槽中の特定物質を増加させる方向に寄与する微生物群である。逆に、特定物質の量の変化速度として、特定物質の量の減少速度を用いた場合、処理槽中の特定物質を減少させる方向に寄与するものである。
特定物質の量の変化に負に相関する微生物群としては、例えば、特定物質の量の変化速度として、特定物質の量の増加速度を用いた場合、処理槽中の特定物質を減少させる方向に寄与する微生物群である。逆に、特定物質の量の変化速度として、特定物質の量の減少速度を用いた場合、処理槽中の特定物質を増加させる方向に寄与するものである。
以上のように、本実施形態の微生物群の特定方法においては、特定物質及び微生物を含む微生物試料中の、特定物質の量の変化速度、及び前記微生物が分類された微生物群の含有量の測定により得られたデータセットから、再標本化により標本を作成し、その再標本化により作成した標本に対し、前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、罰則付き回帰分析を合わせて行う。つまり、再標本化による標本作成と、それに対する罰則付き回帰分析とを合わせて行う。
従来、生物学的排水処理に係る微生物の解析を行う場合、微生物群の種類が多様で、且つデータ数が少ないため、罰則付き回帰分析では、十分な精度が得られなかった。本実施形態の微生物群の特定方法では、再標本化により標本を作成することで、統計学的にデータ数を大幅に増やすことができるため、その増やした標本を用いて罰則付き回帰分析を合わせて行うことにより、特定物質の量の変化速度に関連のある微生物群を、精度よく特定できる。
本実施形態の微生物群の特定方法においては、前記第一選出工程で選出された微生物群の、再標本化により作成した標本における選出頻度から信頼度を算出し、前記信頼度に基づいて微生物群を更に選出する第二選出工程を含む。再標本化により標本を作成し、統計学的にデータ数を大幅に増やすことで、精度よく選出の信頼度を導きだすことができる。
そのため、特定物質の量の変化速度に関連のある微生物群を、より精度よく特定できる。
本実施形態の微生物群の特定方法においては、前記第一選出工程、前記第二選出工程又は前記第五選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰分析を行い、正相関または負相関のいずれか一方を示す微生物群を更に選出する第三選出工程を含む。既に第一選出工程、第二選出工程又は前記第五選出工程で選出した、信頼度の高い微生物群のデータを用いるため、特定物質の量の変化速度に正または負に相関する微生物群を、精度よく特定できる。
本実施形態の微生物群の特定方法においては、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、正則化項を備えた主成分回帰分析を行い、少なくとも正相関または負相関のいずれかを示す微生物群を更に選出する第四選出工程を含む。既に第一選出工程又は第二選出工程で選出した、信頼度の高い微生物群のデータを用いるため、特定物質の量の変化速度に正または負に相関する微生物群を、精度よく特定できる。
本実施形態の微生物群の特定方法においては、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰分析を行い、p値に基づいて微生物群を更に選出する、或いは、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、赤池情報量規準(AIC)の計算を行い、得られたAICの値に基づいて、微生物群を更に選出する第五選出工程を含む。既に第一選出工程又は第二選出工程で選出した、信頼度の高い微生物群のデータを用いるため、特定物質の量の変化速度に正または負に相関する微生物群を、精度よく特定できる。
従来、特定物質の量の変化に関与する微生物はほとんどが未知であった。このため、塩基配列を解読し、系統学的に分類しても、その微生物の機能を把握することは困難であったが、本実施形態により、特定物質の量の変化に相関する微生物群を精度よく特定できるようになった。
≪生物学的排水処理方法≫
本発明の微生物群の特定方法は、例えば生物学的排水処理方法に適用することができる。一実施形態として、本発明の微生物群の特定方法で特定された微生物群を検出し、前記微生物群の増減に基づいて処理水の処理条件を制御するものである。
ここで、本発明の微生物群の特定方法は、≪微生物群の特定方法≫の段で説明したものが挙げられ、詳細な説明を省略する。
まず、本発明の微生物群の特定方法によって、特定物質の量の変化に係わる微生物群が特定されている。特定された微生物群が処理水中に存在することは、例えば前記解読工程で得られた塩基配列に基づき、処理水中から係る配列を有する核酸を検出することで、検出可能である。また、特定された微生物群の処理水中の量は、前記割合決定工程及び前記量決定工程と同様の操作により求めることができる。
例えば、特定された微生物群が、処理水中で所望の物質の分解反応に寄与するものであると特定された場合、特定された微生物群の生育に適した条件に処理条件を制御すればよい。
例えば、特定された微生物群が、処理水中で所望の物質の分解反応を抑制するものであると特定された場合、特定された微生物群の生育に適さない条件に処理条件を制御すればよい。
処理条件とは、例えば、処理水の温度、pH、溶存酸素濃度、塩濃度、水理学的滞留時間(HRT)、汚泥滞留時間(SRT)、微生物固定用担体の投入、生育促進または阻害物質の添加、処理槽中の攪拌速度、及び前記処理条件の異なる処理槽の組み合わせ等が挙げられる。
実施形態の生物学的排水処理方法によれば、本発明の微生物群の特定方法によって、特定された微生物群を検出し、前記微生物群の増減に基づいて処理水の処理条件を制御することで、処理水の特定物質の処理効率を向上可能である。
本発明の微生物群の特定方法を適用する生物学的排水処理方法の、別の実施形態としては、本発明の微生物群の特定方法で特定された微生物群の少なくとも一種を含む微生物資源を移植して、処理水を処理するものである。
微生物資源としては、例えば活性汚泥、微生物製剤、微生物担体、微生物株、土壌、底泥、海水、河川水、湖水等が挙げられる。
当該実施形態に係る生物学的排水処理方法によれば、本発明の微生物群の特定方法によって、特定された微生物群を積極的に処理水に移植することで、処理水の特定物質の処理効率を向上可能である。
例えば、生物学的排水処理装置を新設する際に、本発明の微生物群の特定方法で特定された微生物群の少なくとも一種を含み、好ましくはそれら微生物群の量が多い微生物資源を移植することで、短時間で必要な処理性能を得ることが可能である。
例えば、既設の生物学的排水処理装置の微生物が一時的な毒物の流入などにより死滅し、処理性能が悪化した場合に、本発明の微生物群の特定方法で特定された微生物群の少なくとも一種を含み、好ましくはそれら微生物群の量が多い微生物資源を移植することで、短時間で必要な処理性能まで回復することが可能である。
以下、本発明について試験例を挙げて具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)生物学的排水処理プロセスの運転、水質分析、分解速度算出および微生物試料の採取
工業用水と自然海水とを体積比2:3で混合して得られた溶媒中に、表2に示す溶質を表2に示す濃度で溶解し、人工排水(被処理水)を調製した。
Figure 0007299485000012
また、図7に示すように、1つの槽内で生物処理領域20aと沈降領域20bとが隔壁23により互いに隔てられていると共にこの隔壁23の下方で互いに連通する構造を有する一体型の生物処理装置20(処理槽)を用意し、生物処理装置20の生物処理領域20a内に10mm×10mm×10mmの大きさのスポンジ担体21〔流動担体(関東イノアック製AQ-1)〕を体積比で20%(v/v)となるように投入した。
このようにして準備された実施例1の生物処理装置20内にそれぞれ上記の被処理水24を流入させると共に微生物植種源として活性汚泥を投入し、スポンジ担体21に微生物を定着させる微生物馴致処理(第1段処理)時には、被処理水24の水理学的滞留時間が24時間となるように流入させた。また、各生物処理装置20内の被処理水24に空気曝気22を行って好気性流動床を形成させ、微生物の馴致を行った。
この生物学的処理の運転開始後、すぐにチオシアン酸イオンの除去が認められたが、徐々にpHの低下傾向が認められ、また、チオシアン酸イオンの除去が不安定であったので、運転開始後69日目から5wt%-水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.5付近に調整しながら処理を継続し、チオシアン酸イオンの除去率が98%以上で安定した段階で微生物馴致処理(第1段処理)を終了した。この微生物馴致処理(第1段処理)の終了時には亜硝酸イオンが増加していた。
この微生物馴致処理(第1段処理)の終了後、各生物処理装置20の生物処理領域20a内の処理水についてチオシアン酸イオン濃度と亜硝酸イオン濃度とを測定してチオシアン酸イオン及び亜硝酸イオンのモニタリングを行なった。モニタリングは約7日ごとに行った。
また、各生物処理装置20の生物処理領域20a内の処理水のpHを測定してpH値のモニタリングを行いながら、運転開始後90日目より領域内の水理学的滞留時間が18時間となるように被処理水24の流入量を増やし(第2段処理)、また、運転開始後111日目より領域内の水理学的滞留時間が12時間となるように被処理水24の流入量を更に増やし(第3段処理)、更に、運転開始後118日目より領域内の水理学的滞留時間が8時間となるように被処理水24の流入量を更に増やし(第4段処理)、最終的に175日目まで運転を継続した。
この間、第2段処理において領域内の水理学的滞留時間を18時間に短縮したことにより、チオシアン酸イオンの除去率を高い値に維持しつつ、亜硝酸イオンの生成の減少傾向が観察され始め、また、第3段処理において領域内の水理学的滞留時間を12時間に短縮したことにより、チオシアン酸イオンの除去率を高い値に維持しつつ、亜硝酸イオンの生成をほぼ完全に抑制することができ、更に、第4段処理において領域内の水理学的滞留時間を8時間に短縮した場合にも、亜硝酸イオンの生成を抑制しつつチオシアン酸イオンの除去率を高い値に維持できることを確認した。
この実施例1での生物学的処理において、運転日数に対する一日当たりの亜硝酸生成速度およびチオシアン除去速度を式(1)および式(2)に従い算出した。
Figure 0007299485000013
Figure 0007299485000014
運転日数一日当たりの、亜硝酸生成速度を図8に、チオシアン除去速度を図9に示す。
(2)DNA抽出、塩基配列解読および微生物群の決定
生物処理装置20の生物処理領域20a内の微生物が付着したスポンジ担体21からのDNA抽出および次世代シーケンス微生物相解析は委託(J-Bio21センター)により実施した。
特定物質の量の変化速度の測定時点と対応した時点ごとに、微生物が付着したスポンジ担体を採取し、採取したスポンジ担体を4分割した後、Extrap Soil DNA Plus ver.2(J-Bio21)を用いてDNAを抽出および精製を行った。
精製DNA溶液のDNA濃度を、PicoGreen dsDNA Assay Kit (Invitrogen)を用いて測定した。
表3に示したプライマーを用いて真正細菌の16S rRNA遺伝子のV4およびV5領域を対象にしたPCR増幅をおこなった。
Figure 0007299485000015
PCR産物を、次世代シーケンサー(MiSeq)を用いて解析することで、塩基配列を決定した。
得られた塩基配列をQIIME(Quantitative Insights Into MicrobialEcology)パイプラインを用いて次の解析を行った。まず、データのクオリティ、キメラをチェックし、基準を満たした配列データのみフィルタリングした。
基準を満たした配列データについて、類似性の高い(相同性97%以上の)配列データを1つのグループのクラスタとしてまとめ、各クラスタ配列の中で最も出現頻度の高い配列を代表OTU(OTU; Operational Taxonomic Unit;
操作的分類単位)配列とし、その代表配列を用いて以降の解析を実施した。すなわち、検出された各OTUの存在及び量が、一微生物群の存在及び量を示すものとして扱った。
この結果、実施例1および後に示す実施例2の微生物試料から合計3,752OTUが検出された。これらOTUは各試料で重複して検出されるもの、1試料のみから検出されるもの様々であった。
また、各OTUの検出回数から全OTUに対する各OTUの相対割合を算出した。
図10に、検出された全3752OTUに対する各OTUの相対割合をグラフ化したものを示す。
各代表のOTU配列について、Greengeneの16S rRNA遺伝子データベースに対する相同性検索を行い、系統分類を推定した。
(3)各微生物群の量の決定
スポンジに付着した真正細菌の遺伝子数をリアルタイムPCR法の一つであるQP-PCR法(J-Bio21)により定量した。
上記(2)で精製したDNA溶液を適宜希釈した後、表4に示すプライマーおよびQProbeを用いて反応液を調製し、Rotor-Gene Q(QIAGEN)により遺伝子数を定量した。
Figure 0007299485000016
上記(2)では全OTUに対する各OTUの相対割合を算出した。しかし、採取日によってスポンジに付着した微生物総量は異なる。そこで、生物学的排水処理プロセス運転期間における各OTUの変動を正確に把握するため、各OTUの相対割合に定量したスポンジに付着した真正細菌の遺伝子数を乗じることで、各OTUの量を決定した。
(4)Bootstrap標本の作成、Lasso法による主要な水処理微生物群の絞り込み、回帰分析
亜硝酸生成およびチオシアン除去に係わった主要微生物群を統計解析により推定した。
上記(3)で示したように、各OTUの相対割合に、定量したスポンジに付着した真正細菌の遺伝子数を乗じることで補正をした各OTUの値を用いて統計解析することで、亜硝酸生成およびチオシアン除去に係わる主要なOTUを推定した。
推定に用いたデータセットにおける各OTUの量の値は、亜硝酸生成およびチオシアン除去速度のデータの測定基準時点と対応した時点ごと採取されて得られたものを用いた(例えば、運転(N+7)日目の物質量から算出した亜硝酸生成速度又はチオシアン除去速度のデータと、運転(N+7)日目に取得した各OTUの量の値のデータとを用いた。)。
しかしながら、亜硝酸生成およびチオシアン除去速度のデータは23であるのに対して、次世代シーケンサーを用いて得られたOTU総数は、その100倍以上多く、通常の回帰分析により相関関係を解析することは不可能であった。
そこで、本発明者らは、推定と変数選択を同時に実施できるLasso法を用いて解析を行うことにした。ここで、Bootstrap標本を1000組作成し、それら標本に対してLasso法を適用することで、測定により得られたデータセットの数を疑似的に増加させ、回帰分析により微生物群を推定することに成功した。この結果、亜硝酸生成およびチオシアン除去速度に影響する微生物群を27OTUに絞り込むことができた。
次に、上記で絞り込んだ27OTUのうち、亜硝酸生成およびチオシアン除去速度への影響について、さらに信頼度の高いOTUをさらに絞り込むことにした。OTUをさらに絞り込むことで、それぞれのOTUを定量する方法を確立することができ、また、定期的にOTUを定量することの時間とコストが低減される。
通常、Lasso法単独の回帰分析では信頼度を算出することが困難である。しかし今回、Bootstrap標本を1000組作成し、それら標本に対してLasso法を適用することで、推定された微生物群の信頼度を出すことにも成功した。
今回推定された27OTUのうち、亜硝酸生成に対して高い信頼度(0.6以上)を示したOTUは6OTU、チオシアン除去に対して高い信頼度を示したOTUは5OTUであった。
前記の通り、Bootstrap標本を作成し、Lasso法により解析することで、高い信頼度で亜硝酸生成およびチオシアン除去速度に影響するOTUを抽出することができた。しかし、負に寄与するOTUは、亜硝酸除去、チオシアン生成をしたことになり、亜硝酸生成、チオシアン除去とは真逆の反応をした微生物群となる。
そこで、前記の通り選定した6または5OTUについて、再び回帰分析(最尤法)を実施することで、亜硝酸生成およびチオシアン除去速度に対する回帰係数およびp値を算出した。この結果、亜硝酸生成およびチオシアン除去速度に正の相関を示すOTUはそれぞれ3OTUであり、それらが夫々、亜硝酸生成およびチオシアン除去に係る主要微生物群と結論付けられた。
結果を表5及び表6に示す。表5および表6は、Bootstrap標本を作成し、Lasso法により亜硝酸生成、チオシアン除去速度への影響が推定されたOTUとその信頼度、および高い信頼度(0.6以上)を示したOTUに対して回帰分析(最尤法)を行い算出した回帰係数およびp値を示す。
なお、さらに絞り込む必要がある場合は、回帰分析のp値に基づき、例えば0.05未満のOTUのみに絞り込めばよい。
Figure 0007299485000017
Figure 0007299485000018
(5)回帰式作成による予測
上記(4)で選定されたOTU(信頼度0.6以上)を独立変数として回帰分析を行い、各水質を予測した。なお、ここでは回帰係数が負のOTUも含めて行った。
この結果、実験値と予測値が非常に高精度で一致した。また、交差検証法によりさらなる検証を行い、やはり高精度に一致することが分かった。
図11および図12に亜硝酸生成およびチオシアン除去速度の実測値、回帰分析による予測値および交差検証により1試料を除いて検証した予測値をそれぞれ示す。図中、一点鎖線は実測値、実線は回帰分析による予測値、破線は交差検証により1試料を除いて検証した予測値である。
これにより、高い精度で水処理微生物群を選定することができ、さらには選定した微生物群を独立変数にすることで、水質を予測できることを示した。
〔実施例2〕
(1)生物学的排水処理プロセスの運転、水質分析、分解速度算出および微生物試料の採取
工業用水と自然海水とを体積比2:3で混合して得られた溶媒中に、表7に示す溶質を表7に示す濃度で溶解し、人工排水(被処理水)を調製した。この実施例2においては、実施例1の溶質に加えて、コークス炉排水に含まれる主なCOD成分のフェノール及びチオ硫酸イオンを追加した。
Figure 0007299485000019
また、図7に示すように、1つの槽内で生物処理領域20aと沈降領域20bとが隔壁23により互いに隔てられていると共にこの隔壁23の下方で互いに連通する構造を有する一体型の生物処理装置20を用意した。また、ポリ瓶に10mm×10mm×10mmの大きさのスポンジ担体〔流動担体(関東イノアック製AQ-1)〕と微生物植種源として高濃度の活性汚泥を投入し、手でよく揉み、一晩蓋をして浸け置くことで、微生物をスポンジ担体に付着させた。
このようにして準備されたスポンジ担体21と活性汚泥を生物処理装置20の生物処理領域20a内にスポンジ担体21の体積比が20%(v/v)となるように投入し、生物処理装置20を準備した。
このようにして準備された実施例2の生物処理装置20内にそれぞれ上記の被処理水24を流入させ、スポンジ担体21に微生物を定着させる微生物馴致処理(第1段処理)時には、被処理水24の水理学的滞留時間が24時間となるように流入させた。また、各生物処理装置20内の被処理水24に空気曝気22を行って好気性流動床を形成させ、微生物の馴致を行った。また、5wt%-水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.5付近に調整しながら処理を行った。
この生物学的処理の運転開始後、すぐにチオシアン酸イオンの除去が認められ、その後チオシアン酸イオンの除去率が99%以上で安定したため、18日目で微生物馴致処理(第1段処理)を終了した。この微生物馴致処理(第1段処理)の期間、被処理水中のアンモニアの22%以上が亜硝酸イオンに酸化された。
なお、スポンジ担体に予め微生物を定着させなかった実施例1よりも71日も早く微生物馴致処理(第1段処理)を終了できた。これは、pHを調整したためと、また事前にスポンジ担体21手でよく揉み、一晩蓋をして浸け置いたためである。
この微生物馴致処理(第1段処理)の終了後、生物処理装置20の生物処理領域20a内の処理水についてチオシアン酸イオン濃度と亜硝酸イオン濃度とを測定してチオシアン酸イオン及び亜硝酸イオンのモニタリングを行なった。
かつ、生物処理装置20の生物処理領域20a内の処理水のpHを測定してpH値のモニタリング行いながら、運転開始後19日目より領域内の水理学的滞留時間が18時間となるように被処理水24の流入量を増やし(第2段処理)、次に、運転開始後39日目より領域内の水理学的滞留時間が12時間となるように被処理水24の流入量を更に増やし(第3段処理)、更に、運転開始後46日目より領域内の水理学的滞留時間が8時間となるように被処理水24の流入量を更に増やした(第4段処理)。その後、74日目より領域内の水理学的滞留時間が10時間となるように被処理水24の流入量を減らし(第5段処理)、更に96日目より領域内の水理学的滞留時間が24時間となるように被処理水24の流入量を減らし(第6段処理)、最終的に164日目まで運転を継続した。
この間、第2段処理において領域内の水理学的滞留時間を18時間に短縮したことにより、チオシアン酸イオンの除去率を高い値に維持しつつ、亜硝酸イオンの生成の減少傾向が観察され始め、更に領域内の水理学的滞留時間を12時間に短縮することにより、チオシアン酸イオンの除去率を高い値に維持しつつ、亜硝酸イオンの生成を更に抑制することができた。
しかしながら、更に、第4段処理において領域内の水理学的滞留時間を8時間に短縮した場合には、亜硝酸イオンの生成をほぼ完全に抑制しながらも、しばらく継続するとチオシアン酸イオンの除去率が低下した。これは実施例1の被処理水には含まれていなかったフェノール及びチオ硫酸を分解する微生物がスポンジ担体21の表面に生息したため、チオシアン酸イオンを除去する微生物がスポンジ担体21の表面で生息する場が少なくなり、その結果除去率が低下してしまったものと考えられる。
このように、チオシアン酸イオンの除去率が目標値を超えて上昇してしまったため、第5段処理においては、水理学的滞留時間を第4段処理の条件(水理学的滞留時間が12時間)に近い10時間に戻して生物学的処理を行った。その結果、チオシアン酸イオンの除去率を94%以上に維持しつつ、亜硝酸イオンの生成をほぼ完全に抑制することができた。
そこで更に、第6段処理においては、水理学的滞留時間を24時間に延長したところ、チオシアン酸イオンの除去率を高い値に維持しながらも、更に驚くべきことには、その後76日間にも亘って、亜硝酸イオンの生成をほぼ完全に抑制することができた。
この実施例2での生物学的処理において、運転日数に対する一日当たりの亜硝酸生成速度、チオシアン除去速度、チオ硫酸除去速度およびフェノール除去速度を、前記式(1)、前記式(2)、下記式(3)および下記式(4)に従い算出した。
Figure 0007299485000020
Figure 0007299485000021
この実施例2での生物学的処理において、運転日数一日当たりの、亜硝酸生成速度を図13に、チオシアン除去速度を図14に、チオ硫酸除去速度を図15に、フェノール除去速度を図16に示す。
(2)DNA抽出、塩基配列解読および微生物群の決定
前記実施例1の(2)と同様にしてDNA抽出、塩基配列解読および微生物群決定を実施した。
(3)各微生物群の量の決定
前記実施例1の(3)と同様にしてDNA抽出、塩基配列解読および微生物群決定を実施した。
(4)Bootstrap標本の作成、Lassoによる主要な水処理微生物群の絞り込み
前記実施例1の(4)と同様にして亜硝酸生成、チオシアン除去、チオ硫酸除去およびフェノール除去に係わった主要微生物群を統計解析により推定した。
Lasso法による解析の結果、亜硝酸生成、チオシアン除去、チオ硫酸除去およびフェノール除去速度に影響する微生物群を、それぞれ28OTU、34OTU、36OTUおよび36OTUに絞り込むことができた。
今回推定されたOTUのうち、亜硝酸生成に対して高い信頼度(0.6以上)を示したOTUは3OTU、チオシアン除去に対して高い信頼度を示したOTUは5OTU、チオ硫酸除去に対して高い信頼度を示したOTUは5OTU、フェノール除去に対して高い信頼度を示したOTUは6OTUであった。
前記の通り、Bootstrap標本を作成し、Lasso法により解析することで、高い信頼度で亜硝酸生成、チオシアン除去、チオ硫酸除去およびフェノール除去速度に影響するOTUを抽出することができたが、負に寄与するOTUは、亜硝酸除去、チオシアン生成、チオ硫酸生成およびフェノール生成をしたことになり、亜硝酸生成、チオシアン除去、チオ硫酸除去、フェノール除去とはそれぞれ真逆の反応をした微生物群となる。
そこで、前記の通り選定した信頼度の高いOTUについて、回帰分析を実施することで、亜硝酸生成、チオシアン除去、チオ硫酸除去およびフェノール除去速度に対する回帰係数およびp値を算出した結果、全て正の回帰係数であった。このため、前記の通り選定した信頼度の高いOTUは、亜硝酸生成、チオシアン除去、チオ硫酸除去およびフェノール除去に係る主要微生物群と結論付けられた。
結果を表8~11に示す。表8、表9、表10および表11はBootstrap標本を作成し、Lasso法により亜硝酸生成、チオシアン除去、チオ硫酸除去およびフェノール除去速度への影響が推定されたOTUとその信頼度、および高い信頼度(0.6以上)を示したOTUに対して回帰分析(最尤法)を行い算出した回帰係数およびp値を示す。
なお、さらに絞り込む必要がある場合は、回帰分析のp値に基づき、例えば0.05未満のOTUのみに絞り込めばよい。
Figure 0007299485000022
Figure 0007299485000023
Figure 0007299485000024
Figure 0007299485000025
(5)回帰式作成による予測
前記実施例1の(5)と同様にして回帰分析を行い、各水質を予測した結果、実験値と予測値が非常に高精度で一致した。また、交差検証法により更なる検証を行い、やはり高精度に一致することが分かった。
図17、図18、図19および図20に亜硝酸生成速度、チオシアン除去速度、チオ硫酸除去速度およびフェノール除去速度の実測値、回帰分析による予測値および交差検証により1試料を除いて検証した予測値をそれぞれ示す。図中、一点鎖線は実測値、実線は回帰分析による予測値、破線は交差検証により1試料を除いて検証した予測値である。
これにより、高い精度で水処理微生物群を選定することができ、さらには選定した微生物群を独立変数にすることで、水質を予測できることを示した。
〔実施例3〕
上記実施例2の(1)~(3)の結果を用い、上記実施例2の(4)において、Bootstrap標本の作成及びLasso法により絞り込まれた微生物群に対し、以下の(4’)に示すSPCRによる解析を行った。
なお、上記実施例2では、Lasso法による解析の結果、亜硝酸生成、チオシアン除去、チオ硫酸除去およびフェノール除去速度に影響する微生物群は、それぞれ28OTU、34OTU、36OTUおよび36OTUに絞り込まれている。
(4’)絞り込みされた微生物群に対するSPCR法による主要な水処理微生物群の絞り込み、微生物種間の関係性の推定および絞り込まれた微生物からの水処理速度の推定
上記の絞り込まれたOTUに対して、主要な水処理微生物群の絞り込みと同時に微生物種間の関係性を推定できるスパース主成分回帰モデル (SPCR)を用いて解析を行った。
SPCR法による解析の結果、亜硝酸生成、チオシアン除去、チオ硫酸除去およびフェノール除去速度に対して選択された主成分の個数は、それぞれ2つ、3つ、3つおよび1つとなった。同じ主成分軸のOTUは相互に関係している、もしくは同じ環境因子に影響されることが推察できる。
亜硝酸生成に対する各主成分軸を表12に、チオシアン除去に対する主成分軸を表13に、チオ硫酸除去に対する主成分軸を表14に、フェノール除去に対する主成分軸を表15に示す。各軸において主成分の値が0のOTUは、各物質の生成や処理に寄与がないOTUであると判断でき、各軸の主成分の値がいずれも0ではないOTUへと絞りこむことができる。したがって、SPCR法による解析の結果、亜硝酸生成、チオシアン除去、チオ硫酸除去およびフェノール除去速度に影響する微生物群を、それぞれ28OTU、27OTU、32OTUおよび35OTUに絞り込むことができた。
Figure 0007299485000026
Figure 0007299485000027
Figure 0007299485000028
Figure 0007299485000029
図21、図22、図23および図24に亜硝酸生成速度、チオシアン除去速度、チオ硫酸除去速度およびフェノール除去速度の実測値、交差検証により1試料を除いて検証した予測値をそれぞれ示す。図中、一点鎖線は実測値、実線は交差検証により1試料を除いて検証した予測値である。
亜硝酸生成に関する切片は32.70551、第一主成分軸に対する回帰係数は3.387741、第二主成分軸に対する回帰係数は4.634266であった。各主成分軸でのOTUの主成分の値に回帰係数を乗じた値が正であれば、亜硝酸生成に正の影響、負であれば負の影響をもたらすことがわかる。また交差検証法により算出した予測R値は0.575であり、実測値と予測値の推移は図21のようになり、実測値と予測値が高精度に一致していた。
実施例2で実施したBootstrap標本の作成、Lasso法で算出および回帰分析で得られた値の予測R値は0.709であり、実施例3で実施したBootstrap標本の作成、Lasso法で算出および主成分回帰分析(SPCR)法で得られた値の予測R値は0.575であった。
チオシアン除去に関する切片は361.94、第一主成分軸に対する回帰係数は3.955、第二主成分軸に対する回帰係数は-22.30、第三主成分軸に対する回帰係数は-75.96となり、交差検証法により算出した予測R値は0.708であった。各主成分軸でのOTUの主成分の値に回帰係数を乗じた値が正であれば、チオシアン除去に正の影響、負であれば負の影響をもたらすことがわかる。実測値と予測値の推移は図22のようになり、実測値と予測値が高精度に一致していた。
実施例2で実施したBootstrap標本の作成、Lasso法で算出および回帰分析で得られた値の予測R値は0.676であり、実施例3で実施したBootstrap標本の作成、Lasso法で算出および主成分回帰分析(SPCR)法で得られた値の予測R値は0.708であるので、SPCR法を採用することで微生物特定精度がさらに向上したことが分かる。
チオ硫酸除去に関する切片は399.47、第一主成分軸に対する回帰係数は0.398、第二主成分軸に対する回帰係数は22.99、第三主成分軸に対する回帰係数は60.04となり、交差検証法により算出した予測R値は0.721であった。各主成分軸でのOTUの主成分の値に回帰係数を乗じた値が正であれば、チオ硫酸除去に正の影響、負であれば負の影響をもたらすことがわかる。実測値と予測値の推移は図23のようになり、実測値と予測値が高精度に一致していた。
実施例2で実施したBootstrap標本の作成、Lasso法で算出および回帰分析で得られた値の予測R値は0.674であり、実施例3で実施したBootstrap標本の作成、Lasso法で算出および主成分回帰分析(SPCR)法で得られた値の予測R値は0.721であるので、SPCR法を採用することで微生物特定精度がさらに向上したことが分かる。
フェノール除去に関する切片は204.8045、回帰係数は25.152、交差検証法により算出した予測R値は0.672であった。各主成分軸でのOTUの主成分の値に回帰係数を乗じた値が正であれば、フェノール除去に正の影響、負であれば負の影響をもたらすことがわかる。実測値と予測値の推移は図24のようになり、実測値と予測値が高精度に一致していた。
実施例2で実施したBootstrap標本の作成、Lasso法で算出および回帰分析で得られた値の予測R値は0.612であり、実施例3で実施したBootstrap標本の作成、Lasso法で算出および主成分回帰分析(SPCR)法で得られた値の予測R値は0.672であるので、SPCR法を採用することで微生物特定精度がさらに向上したことが分かる。
[実施例4]
上記実施例1の(1)~(3)のチオシアン除去速度のデータを用い、上記実施例1の(4)において、推定に用いたデータセットにおける各OTUの量の値として、チオシアン除去速度のデータの測定基準時点に対応した時点ごと採取されて得られたもの、及び測定基準時点と対応した時点より一時点前に採取されて得られたものを用いた(例えば、運転(N+14)日目のチオシアン量から算出したチオシアン除去速度のデータと、運転(N+7)日目(一時点前)及び運転(N+14)日目に取得した各OTUの量の値のデータとを用いた。)こと以外は、前記実施例1の(4)と同様にしてBootstrap標本の作成及びLasso法により、微生物群を信頼度0.6以上のものに絞り込んだ。
結果を表16に示す。
Figure 0007299485000030
チオシアン除去に対して高い信頼度(0.6以上)を示したOTUは5OTUであった。表中の「_1」のOTUは、前記測定基準時点と対応した時点より一時点前に採取されて得られたもののデータである。
次いで、得られた結果をもとに、前記実施例1の(5)と同様にして、交差検証法により予測R値を算出した。算出された予測R値は0.903であり、非常に高い予測精度が認められた。
なお、チオシアン除去速度の測定基準時点より一時点前のOTUの量の値を用いない場合には、予測R値は0.765であったので、チオシアン除去速度の測定基準時点よりも一時点前の微生物群の含有量のデータを解析に含めたことで、微生物特定精度をさらに向上できたことがわかる。
[実施例5]
上記実施例4において、上記実施例2で得られたチオシアン除去速度のデータを用いたこと以外は、前記実施例4と同様にしてBootstrap標本の作成及びLasso法により、微生物群を信頼度0.6以上のものに絞り込んだ。
チオシアン除去に対して高い信頼度(0.6以上)を示したOTUは6OTUであった。表中の「_1」のOTUは、前記測定基準時点と対応した時点より一時点前に採取されて得られたもののデータである。
次いで、前記実施例1の(4)と同様にして、選定した6OTUについて、再び回帰分析(最尤法)を実施することで、チオシアン除去速度に対する回帰係数およびp値を算出した。
結果を表17に示す。
Figure 0007299485000031
この結果、選定した6OTUの全てがチオシアン除去速度に正の関係を示し、6OTUのいずれもが、チオシアン除去に係る主要微生物群と結論付けられた。
さらに、選定した6OTUに対し、回帰分析のp値に基づき、p値が0.05未満のOTUに絞り込んだ。この結果、チオシアン除去速度に影響する微生物群を5OTUに絞り込むことができた。
次いで、前記実施例1の(5)と同様にして交差検証法により予測R値を算出した。最終的に絞りこまれた5OTUのデータを用いて算出された予測R値は0.711であった。
なお、チオシアン除去速度の測定基準時点より一時点前のOTUの量の値を用いない場合には、予測R値は0.677であったので、チオシアン除去速度の測定基準時点よりも一時点前の微生物群の含有量のデータを解析に含めたことで、微生物特定精度をさらに向上できことがわかる。
また、p値での絞り込みを行わなかった6OTUのデータを用いて算出された予測R値は0.622であったので、回帰分析のp値に基づく絞り込みを行うことで、微生物特定精度をさらに向上できたことがわかる。
[実施例6]
上記実施例4において、上記実施例2で得られたフェノール除去速度のデータを用いたこと以外は、前記実施例4と同様にしてBootstrap標本の作成及びLasso法により、微生物群を信頼度0.6以上のものに絞り込んだ。
フェノール除去に対して高い信頼度(0.6以上)を示したOTUは6OTUであった。表中の「_1」のOTUは、前記測定基準時点と対応した時点より一時点前に採取されて得られたもののデータである。
次いで、前記実施例1の(4)と同様にして、選定した6OTUについて、再び回帰分析(最尤法)を実施することで、フェノール除去速度に対する回帰係数およびp値を算出した。
結果を表18に示す。
Figure 0007299485000032
この結果、選定した6OTUの全てがフェノール除去速度に正の関係を示し、6OTUのいずれもが、フェノール除去に係る主要微生物群と結論付けられた。
さらに、選定した6OTUに対し、回帰分析のp値に基づき、p値が0.05未満のOTUに絞り込んだ。この結果、フェノール除去速度に影響する微生物群を5OTUに絞り込むことができた。
次いで、前記実施例1の(5)と同様にして交差検証法により予測R値を算出した。最終的に絞りこまれた5OTUのデータを用いて算出された予測R値は0.732であった。
なお、フェノール除去速度の測定基準時点より一時点前のOTUの量の値を用いない場合には、予測R値は0.613であったので、フェノール除去速度の測定基準時点よりも一時点前の微生物群の含有量のデータを解析に含めたことで、微生物特定精度をさらに向上できことがわかる。
また、p値での絞り込みを行わなかった6OTUのデータを用いて算出された予測R値は0.648であったので、回帰分析のp値に基づく絞り込みを行うことで、微生物特定精度をさらに向上できたことがわかる。
[実施例7]
上記実施例6と同じく、Bootstrap標本の作成及びLasso法により、微生物群を信頼度0.6以上の6OTUに絞り込んだ。
次いで、絞り込んだ結果について、AICによる絞り込みを実施した。
AICによる変数選択の組み合わせのパターン分けを表19に示す。
Figure 0007299485000033
表中、上段にAICの値を示す。また、表中の「〇」はAICの値の算出に微生物群の含有量のデータを使用した場合であることを表し、表中の「×」は微生物群の含有量のデータを使用しない場合であることを表す。
得られたAICの値に基づき、本実施例では、AICの値が最も小さいものを採用(最上位モデルを採用)した。
この結果、denovo2647_1を排除して、フェノール除去速度に影響する微生物群を5OTUに絞り込むことができた。
次いで、前記実施例1の(5)と同様にして交差検証法により予測R値を算出した。最終的に絞りこまれた5OTUのデータを用いて算出された予測R値は0.732であった。
なお、フェノール除去速度の測定基準時点より一時点前のOTUの量の値を用いない場合には、予測R値は0.613であったので、フェノール除去速度の測定基準時点よりも一時点前の微生物群の含有量のデータを解析に含めたことで、微生物特定精度をさらに向上できことがわかる。
また、AICでの絞り込みを行わなかった6OTUのデータを用いて算出された予測R値は0.648であったので、AICの値に基づく絞り込みを行うことで、微生物特定精度をさらに向上できたことがわかる。
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
20…生物処理装置、20a…生物処理領域、20b…沈降領域、21…スポンジ担体、
22…空気曝気、23…隔壁、24…被処理水、25…生物処理装置で処理された処理水

Claims (14)

  1. 以下の工程を含み、特定物質の量の変化に係わる微生物群を特定することを特徴とする微生物群の特定方法:
    特定物質及び微生物を含む微生物試料中の、特定物質の量の変化速度、及び前記微生物が分類された微生物群の含有量の測定によって得られたデータセットから、再標本化により標本を作成する標本作成工程、
    前記再標本化により作成した標本に対し、前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰係数を0に縮小可能な罰則付き回帰分析を行い、回帰係数に基づき選出された独立変数に対応する微生物群を選出する第一選出工程、
    選出された微生物群を特定物質の量の変化に係わる微生物群と特定する特定工程。
  2. 前記データセットにおいて、前記微生物群の含有量は、前記特定物質の量の変化速度の測定基準時点と同一時点及び/又は同一時点よりも前の時点の微生物群の含有量の測定によって得られたものである、請求項1に記載の微生物群の特定方法。
  3. 更に、前記第一選出工程で選出された微生物群の、再標本化により作成した標本における選出頻度から信頼度を算出し、前記信頼度に基づいて微生物群を更に選出する第二選出工程を含む、請求項1又は2に記載の微生物群の特定方法。
  4. 更に、前記第一選出工程又は二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰分析を行い、p値に基づいて微生物群を更に選出する、或いは
    更に、前記第一選出工程又は二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、赤池情報量規準(AIC)の計算を行い、得られたAICの値に基づいて、微生物群を更に選出する、第五選出工程を含み、
    前記第二選出工程が、前記第一選出工程で選出された微生物群の、再標本化により作成した標本における選出頻度から信頼度を算出し、前記信頼度に基づいて微生物群を更に選出する工程である、請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物群の特定方法。
  5. 前記赤池情報量規準の値に基づく選出が、
    前記AICの値が最小になる独立変数の組み合わせとして微生物群を選出する、
    前記AICの値が小さい順からm番目までの独立変数の組み合わせで過半数を超えて含まれる微生物群を選出する、又は
    前記AICの最大値から最小値までを区間で区切り、各区間に対応する組み合わせの該当数を縦軸としたヒストグラムにより、2つ以上のピークができるよう前記区間を選択し、前記AICの値が小さい順から任意の数までのピーク数(ただし全ピーク数-1)のピークに含まれるm番目までの独立変数の組み合わせで過半数を超えて含まれる微生物群を選出するものである(前記mは1以上の整数である)、請求項4に記載の微生物群の特定方法。
  6. 更に、前記第一選出工程、二選出工程、又は五選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰分析を行い、正相関または負相関のいずれか一方を示す微生物群を更に選出する第三選出工程を含み、
    前記第二選出工程が、前記第一選出工程で選出された微生物群の、再標本化により作成した標本における選出頻度から信頼度を算出し、前記信頼度に基づいて微生物群を更に選出する工程であり、
    前記第五選出工程が、前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、回帰分析を行い、p値に基づいて微生物群を更に選出する、或いは
    前記第一選出工程又は前記第二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、赤池情報量規準(AIC)の計算を行い、得られたAICの値に基づいて、微生物群を更に選出する工程である、請求項1~5のいずれか一項に記載の微生物群の特定方法。
  7. 更に、前記第一選出工程又は二選出工程で選出された前記微生物群の含有量を独立変数とし、対応する前記特定物質の量の変化速度を従属変数として、正則化項を備えた主成分回帰分析を行い、少なくとも正相関または負相関のいずれかを示す微生物群を更に選出する第四選出工程を含み、
    前記第二選出工程が、前記第一選出工程で選出された微生物群の、再標本化により作成した標本における選出頻度から信頼度を算出し、前記信頼度に基づいて微生物群を更に選出する工程である、請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物群の特定方法。
  8. 前記主成分回帰分析に、スパース正則化による1段階主成分回帰モデルを用いる請求項7に記載の微生物群の特定方法。
  9. 前記罰則付き回帰に、L1正則化項付き回帰分析手法を用いる請求項1~8のいずれか一項に記載の微生物群の特定方法。
  10. 更に、以下の工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の微生物群の特定方法:
    前記微生物試料中の、特定物質の量の変化速度の値を取得する速度取得工程、
    前記微生物試料に含まれる前記微生物の塩基配列を解読する解読工程、
    解読された前記塩基配列から、前記微生物試料に含まれる微生物を微生物群に分類し、前記微生物試料中の前記微生物群の相対的含有割合を決定する割合決定工程、
    前記決定された微生物群の相対的含有割合から、前記微生物試料中の前記微生物群の含有量を決定する量決定工程。
  11. 前記塩基配列の解読に、シーケンサーを用いることを特徴とする請求項10に記載の微生物群の特定方法。
  12. 前記微生物が、生物学的排水処理に使用される微生物であり、
    前記微生物試料は前記排水処理が行われる処理槽中の処理水であり、
    前記変化速度は、前記処理水に対し測定される前記特定物質の量から算出され、
    前記再標本化により作成した標本は同一の処理槽における2以上の時点での特定物質の量の変化速度及び、前記微生物群の含有量のデータを含む請求項1~11のいずれか一項に記載の微生物群の特定方法。
  13. 前記特定物質が、アンモニア、フェノール、チオシアン、及びチオ硫酸からなる群から選ばれるいずれか一種以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載の微生物群の特定方法。
  14. 前記微生物が、アンモニアを酸化し亜硝酸を生成する微生物、フェノールを分解する微生物、チオシアンを分解する微生物、及びチオ硫酸を分解する微生物からなる群から選ばれるいずれか一以上である、請求項1~13のいずれか一項に記載の微生物群の特定方法。
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