JP2004242578A - 安水処理プラントの活性汚泥中に存在する微生物 - Google Patents
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Abstract
【課題】安水処理プラントのCOD削減のために用いる活性汚泥中に存在する新現微生物、及びその16SrDNA配列又はその断片の提供、活性汚泥法による安水処理プロセスの硝化又は脱窒性能評価方法の提供、活性汚泥を使用する安水の処理方法の提供。
【解決手段】本発明は、上記微生物又はその16SrDNA配列を用いてFISH法により上記安水処理プロセスの硝化又は脱窒性能を評価する方法並びに上記微生物を含む活性汚泥を使用する安水処理方法をも提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明は、上記微生物又はその16SrDNA配列を用いてFISH法により上記安水処理プロセスの硝化又は脱窒性能を評価する方法並びに上記微生物を含む活性汚泥を使用する安水処理方法をも提供する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、安水処理プラントの活性汚泥中に存在する微生物、及びその16SrDNA配列又はその断片に関する。本発明は、上記微生物又はその16SrDNA配列を用いて、FISH法により上記安水処理プロセスの硝化又は脱窒性能を評価する方法並びに上記微生物を含む活性汚泥を使用する安水の処理方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
製鉄所においてコークス炉から発生する安水にはフェノール類、チオシアン、チオ硫酸などの環境上好ましくない成分や、高濃度のアンモニアが含まれている。現在の安水処理システムでは、COD成分となるフェノール類などの有機物や、チオシアン、チオ硫酸などの硫黄化合物が活性汚泥法で除去されている。さらに、この活性汚泥法のシステムに硝化脱窒性能を付加させることで、安水中の有機物と同時にアンモニアも同時に除去する方法が提案されており、試験的にパイロットプラント(安水処理プロセス)を運転し、有機物除去と同時にアンモニアを除去することに成功している。しかしながら、安水処理に用いる活性汚泥で具体的にどのような微生物が有機物やアンモニアの除去に関与しているのかは明らかではなく、微生物群集を解析した研究例はない。
【0003】
一般に、活性汚泥中の微生物の培養可能性(culturability)は低いので、安水活性汚泥中の微生物群集構造を把握するために、パイロットプラント内の微生物について、16SrDNAをターゲットとしたPCR−DGGE法によるモニタリング、クローンライブラリーの作成を行い、そして微生物群集を定量化するため、FISHを用いた解析を行う必要がある。
【0004】
PCR−DGGE法は、以下の非特許文献1、非特許文献2等に記載されている。
【0005】
FISH法は、以下の非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5等に記載されている。
【非特許文献1】
栗栖ら、土木学会論文集No.636/VII −13,23−33,1999.11
【非特許文献2】
Muyzer, G., Waal, E.C., and Uitterlinden, A.G. (1993) Profilin g of Complex Microbial Populations by Denaturing Gradient Gel Electrophoresis Analysis of Polymerase Chain Reaction−Amplifie d Genes Coding for 16SrRNA. Appl.
【非特許文献3】
Amann, R.I., Ludwig, W., and Schleifer, K−H. (1995). Phylogene tic identification and in situ detection of individual microbi al cells without cultivation. Microbiol. Rev., 59, 143−169.
【非特許文献4】
Manz, W., Wagner, M., Amann, R.I., and Schleifer, K.−H. (1994) . In situ characterization of the microbial consortia active i n two wastewater treatment plants. Water Res., 28, 1715−1723.
【非特許文献5】
秋山ら、水環境学会誌 第23巻 第5号 271−278 2000
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような背景から、本発明者らは、安水処理プロセスの活性汚泥内に存在する微生物群集を把握し、COD成分となるフェノール類などの有機物や、チオシアン、チオ硫酸などの硫黄化合物の除去および硝化脱窒に関与する有用な微生物を発見し、安水処理性能を良好に維持するための評価方法及び安水処理方法を提供する必要性がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の1の態様においては、配列番号1又は18に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0008】
本発明の他の態様においては、配列番号2又は19に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteriodetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0009】
本発明の他の態様においては、配列番号3に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Alteromonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0010】
本発明の他の態様においては、配列番号20に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteriodetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0011】
本発明の他の態様においては、配列番号4又は22に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−proteobacteria);Comamonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0012】
本発明の他の態様においては、配列番号5又は21に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−proteobacteria);Ectothiorhodospiraceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0013】
本発明の他の態様においては、配列番号6に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−proteobacteria);Caulobacteraceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0014】
本発明の他の態様においては、配列番号7に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci;Deinococcaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0015】
本発明の他の態様においては、配列番号8、23又は26に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci;Deinococci;Thermaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0016】
本発明の他の態様においては、配列番号24に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するActinobacteria(high GC Gram−positive)近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0017】
本発明の他の態様においては、配列番号9又は25に示す配列を有するCOD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0018】
本発明の他の態様においては、配列番号10に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Burkholderia group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0019】
本発明の他の態様においては、配列番号11に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Alcaligenaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0020】
本発明の他の態様においては、配列番号12又は27に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteriodetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0021】
本発明の他の態様においては、配列番号13に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Rhodocyclus group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0022】
本発明の他の態様においては、配列番号14又は28に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するActinobacteria(high GC Gram−positive)近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0023】
本発明の他の態様においては、配列番号15又は29に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0024】
本発明の他の態様においては、配列番号16又は30に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するFirmicutes;Bacillales(low GC Gram−positive近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0025】
本発明の他の態様においては、配列番号17に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するδ−プロテオバクテリア(δ−Proteobacteria);Desulfuromonas group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0026】
本発明の他の態様においては、配列番号43、54又は67に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Rhodobacteriaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0027】
本発明の他の態様においては、配列番号45に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Rhodobacteriaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0028】
本発明の他の態様においては、配列番号47に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Shingomonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0029】
本発明の他の態様においては、配列番号40、49、50、58、60、69、77、79又は87に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Alcaligenaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0030】
本発明の他の態様においては、配列番号33に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0031】
本発明の他の態様においては、配列番号37、41又は62に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Burkholderia group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0032】
本発明の他の態様においては、配列番号42に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Rhodocyclus group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0033】
本発明の他の態様においては、配列番号31、44、48又は78に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Chromatiaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0034】
本発明の他の態様においては、配列番号32又は86に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Alteromonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0035】
本発明の他の態様においては、配列番号63又は66に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Chromatiaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0036】
本発明の他の態様においては、配列番号73に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Thiothrix group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0037】
本発明の他の態様においては、配列番号76に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0038】
本発明の他の態様においては、配列番号71に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0039】
本発明の他の態様においては、配列番号80に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0040】
本発明の他の態様においては、配列番号85に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0041】
本発明の他の態様においては、配列番号82に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0042】
本発明の他の態様においては、配列番号74に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0043】
本発明の他の態様においては、配列番号83に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0044】
本発明の他の態様においては、配列番号88に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0045】
本発明の他の態様においては、配列番号34、35、53、55、59、61、64、68又は72に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0046】
本発明の他の態様においては、配列番号36、38、39、52、56、57、70又は81に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0047】
本発明の他の態様においては、配列番号46に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0048】
本発明の他の態様においては、配列番号51に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するPlanctomycetes;Planctomycetales近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0049】
本発明の他の態様においては、配列番号75又は84に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するActinobacteria(high GC Gram−positive)近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0050】
本発明の他の態様においては、配列番号65に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在する未分類細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0051】
本発明の他の態様においては、配列番号89に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria;Nitrosomonas近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNAが提供される。
【0052】
本発明の他の態様においては、配列番号90に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);sulfur−oxidizing bacteria近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNAが提供される。
【0053】
本発明の他の態様においては、配列番号91に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNAが提供される。
【0054】
本発明の他の態様においては、配列番号92に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNAが提供される。
【0055】
本発明の他の態様においては、配列番号93に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1492r領域全長DNAが提供される。
【0056】
本発明のさらに他の態様においては、その16SrDNA中に上記のいずれかのDNA断片又は全長DNAを含み、かつ、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在する微生物が提供される。
【0057】
本発明の他の態様においては、その16SrDNA中に配列番号89に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria;Nitrosomonas近縁細菌が提供される。
【0058】
本発明の他の態様においては、その16SrDNA中に配列番号90に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);sulfur−oxidizing bacteria近縁細菌が提供される。
【0059】
本発明の他の態様においては、その16SrDNA中に配列番号91に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌が提供される。
【0060】
本発明の他の態様においては、その16SrDNA中に配列番号92に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌が提供される。
【0061】
本発明の他の態様においては、その16SrDNA中に配列番号93に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌が提供される。
【0062】
本発明のさらに他の態様においては、上記のいずれかに記載の微生物又は細菌を硝化又は脱窒指標微生物として用いて、FISH法により、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プロセスの硝化又は脱窒性能を評価する方法が提供される。
【0063】
本発明のさらに他の態様においては、β−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria;Nitrosomonas近縁細菌、γ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);sulfur−oxidizing bacteria近縁細菌、Thermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌、α−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌、及び/又はCFB;Bacteroidetes近縁細菌を、硝化又は脱窒指標微生物として用いて、FISH法により、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プロセスの硝化又は脱窒性能を評価する方法が提供される。
【0064】
本発明のさらに他の態様においては、上記のいずれかに記載の微生物又は細菌を含む、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理装置の活性汚泥が提供される。
【0065】
本発明のさらに他の態様においては、上記のいずれかに記載の微生物又は細菌を含む、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理装置の活性汚泥が提供される。
【0066】
本発明のさらに他の態様においては、上記の活性汚泥を使用する安水の処理方法が提供される。
【0067】
【発明の実施の形態】
以下、実施例において詳細に説明するが、パイロットプラントから採取した汚泥に対して、PCR−DGGE法、シーケンシング、クローニング法、FISH法などを用いた解析を行い得られた結果を考察した結果、以下のことが分かった。
【0068】
・安水処理プロセス内に存在する微生物群集は、PCR−DGGEでのバンド数が少ないことから、下水処理の微生物群集と比較して種数が少ない。アンモニアが高濃度に含まれる系の中で、フェノール類やチオシアン、チオ硫酸等の硫黄化合物の特殊な基質を利用して生存できる微生物は限られることが推測できる。・性能安定時には、安水処理プロセス内の微生物相の変化はほとんどなく、PCR−DGGEで目立つバンドはほぼ同じである。
・安水処理プロセス内の微生物は、系統学的に様々なグループに属している(α−Proteobacteria、β−Proteobacteria、γ−Proteobacteria、δ−Proteobacteria、CFB、Thermus/Deinococcus group、高GCグラム陽性細菌、低GCグラム陽性細菌、Planctomycetes)。
【0069】
・様々なグループが存在する中で、半定量的に活性を見ることが出来るFISH法の結果によると、γ−Proteobacteriaに属する細菌が多い。作成したクローンライブラリーの結果からは、γ−Proteobacteria、そして活性汚泥では報告例がほとんどないThermus/Deinococcus groupに近縁な細菌が30%ずつと大部分を占めていることが分かる。
・個々の細菌を見ると、安水硝化脱窒処理プロセス内の微生物の中で、Chromaticeae Thiorhodovibrioに近縁な細菌と、Thermus/Deinococcus group Deinococciに近縁な細菌が優占的に存在している可能性が高く、注目に値する細菌であると考えられる。
【0070】
また、本発明者らは、安水処理プロセスのパイロットプラント内の微生物群集構造についてPCR−DGGE法、クローニング法によるクローンライブラリーの作成、FISH法の3つの手法を用いて解析し総合的に判断することを試みた。PCR−DGGE法は、微生物群集の系時的な変化を追うのに適しているが、PCRバイアスがかかってしまう方法であり、また近縁種決定においては200bp程度である為データの信頼性にかける部分が有る。クローンライブラリー作成については、DGGEよりも長い塩基配列の解読が可能であり詳細な系統解析ができるが、PCRバイアスがかかってしまい量の議論はできない。また、FISH法は、PCR等のバイアスが大きくかかる操作を経ないため半定量的な解析を行うことができるが、存在種が既知でプローブが無い限り、グループレベルの考察にとどまってしまう。このように、3つの方法はそれぞれ一長一短であると言える。しかし、3つの方法を組み合わせることで、ある程度バイアスを排除しそれぞれの短所を補って議論することが可能であると考えられる。このことを証明することができるような結果を得ることができた。その例は以下の通りである。
・クローンライブラリーを作成したことにより、DGGEのバンド切り出しで近縁種を決定したのよりも多くの種が存在することがわかった。
・クローンライブラリー作成の際に、全長産物のクローンをとることで興味を持った細菌について全長解塩基配列を決定し、詳細な系統解析を行うことができた。
【0071】
・クローンライブラリー作成で使用するプライマーを変えることによって得られるクローンの全体像が大分変わり、PCRバイアスがかかっている可能性が高いことが示唆された。
・FISH法により、DGGEやクローンではあまり得られなかった、高GCグラム陽性細菌に属する細菌が多く存在することがわかった。
【0072】
そこで、3つの手法で得られた結果を総合的に判断すると、安水処理プロセスのパイロットプラントに存在する微生物群集構造は次のような全体像が考えられる。グループレベルでは、大きな割合を占めているものとしてγ−Proteobacteria、Thermus/Deinococcus group、β−Proteobacteria、高GCグラム陽性細菌が挙げられ、それぞれ2〜3割程度を占めている。その他にCFB、α−Proteobacteria、δ−Proteobacteria、低GCグラム陽性細菌の細菌がいる。これらの各グループの中に数種ずつの微生物種が存在する。微生物種について見ると、γ−ProteobacteriaのChromaticeae Thiorhodovibrioに近縁な細菌と、Thermus/Deinococcus group Deinococciに近縁な細菌が優占的に存在している系であり、硝化は、Nitrosomas属に属する細菌が行っている。
【0073】
以下、実施例に用いた実験原理手順を説明する。
【0074】
サンプリング
プラントから採取した汚泥を、汚泥:エタノール=9:1で混ぜてしばらく4℃で保存した後、DNA抽出用とFISH用の2種類に分けて保存した。DNA抽出用のサンプリングは、採取した汚泥をバッファーで洗い、最終的にペレット状にして−20℃で保存するという操作である。FISH用のサンプリングは、FISH法がrDNAではなくin situの状態でrRNAをターゲットとする手法である為、細胞をできるだけそのままの状態で保存するように、液体窒素で急速に凍らして保存した。
【0075】
1)DNA抽出用サンプリング
1.2mlチューブに汚泥を1ml取ったものを数個用意し、遠心分離にかけ上澄みを取り除く。
2.ペレットをTH(pH8.0)バッファーで懸濁し、遠心分離で上澄みを取り除く。(洗浄操作)
3.−20℃で保存する。
【0076】
2)FISH用サンプリング
1.−80℃で保存可能なクライオチューブに、汚泥を2ml取ったものを1サンプルにつき数個用意する。
2.液体窒素中に保存する。
【0077】
DNA抽出
Fast DNA SPIN Kit for soil(BIO101)
Fast DNA SPIN Kit for soil(BIO101)は、500mgまでの土壌や他の環境サンプルから30分以内で効率的にDNAを抽出出来るKitである。ホモジナイズする装置が必要ではあるが、抽出作業時間が短い、フェノールやクロロホルムなどの有機溶媒が不要、また比較的抽出しにくいとされてきたグラム陽性細菌なども抽出可能、等の利点がある。
【0078】
Fast DNA SPIN Kit for soilの操作は大きく分けて2つのステップからなる。
1)細胞の破砕・DNAの可溶化・タンパク質の可溶化
サンプルを、ホモジナイズとタンパク質の可溶化が可能なバッファーに溶解させ、それをセラミックとシリカからなるビーズと混ぜることにより、細胞を破砕しDNAを可溶化する。この段階で、ほとんどRNAの混入のないDNAを得ることができる。
【0079】
2)DNAの精製と濃縮
可溶化したDNAのみをシリカ製のBinding Matrixに吸着させることで、混在する阻害物質を除去する。その後、Binding Matrixに吸着したDNAを溶出させて、精製DNAを得ることができる。
【0080】
以下、手順を説明する。
1.サンプリングして保存しておいたペレットに、サンプルをホモジナイズしタンパク質を可溶化することのできるSodium Phosphate BufferとMT Bufferを加え、ペレットを懸濁する。
2.ビーズの入ったLysing Matrix E tubeに1を移す。
3.2をFast Perpに設置し、Speed5.0、30secで2回処理を行い、細胞を破砕し溶解させる。
4.上澄みを新しいチューブに移し、PPSを加え、手で攪拌する。
5.遠心分離にかけタンパク質を沈殿させ、上澄みを新しいチューブに移すことでタンパク質を除去する。
【0081】
6.5で移した上澄みと等量のBinding Matrixを加え、手で反転浸透した後数分静置してBinding MatrixにDNAを吸着沈殿させる。
7.上澄みを除去した後、残った液でBinding Matrix−DNAを懸濁し、それをSpin Filterに移す。
8.7を遠心分離にかけ、その後、SEWS−Mを加えてFilter上のBinding Matrix−DNAを洗浄濃縮する。
9.Filter上のBinding Matrix−DNAにDESを加えて、遠心分離によりDNAを溶出させ、PCRグレードのDNAを回収する。DNAは−20℃で保存可能である。
【0082】
PCR
以下の実施においては、解析対象サンプル中に存在する微生物全体を追うため、16SrDNAつまり真正細菌をターゲットとしたPCRを行った。16SrDNAの塩基配列には、多様性に富んだ部分(V1〜V9領域)と高度に保存されている部分があるため、微生物の系統解析には最もよく利用されており、データベースには多くの情報がある。本研究では、V3領域を含むプライマー(357f−518r)や、357−907r、そして全長プライマーなどを目的に応じて使い分けた。PCRの条件については、使用プライマーや目的により異なる為、その都度示す。
【0083】
16SrDNAをターゲットとしたPCR法について、大まかに実験の流れを説明する。
1.DNA抽出後、吸光光度計を用いてDNAの濃度を測定する。
2.テンプレートとするDNAを50ng/μlに調製する。
3.以下の表1に示すようにPCR mixtureを調製する。
【0084】
【表1】
【0085】
使用するprimerは以下の表2に示すように目的により選択する。
【0086】
【表2】
【0087】
4.サーマルサイクラーT3 Thermocycler(Biometra)またはGeneAmp9600(PE Biosystems)で、目的に応じたプログラム条件でPCRを行う。
5.1質量%アガロースゲル(アガロースを1×TAEに溶かし1質量%としたもの)を用いて100Vで15分間電気泳動を行い、その後15分間のエチジウムブロマイド染色を行い、UVトランスイルミネーター(東洋紡)でPCR産物が得られたかどうか確認をする。
【0088】
DGGE
DGGEはdenaturing gradient gel electrophoresis(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法)の略であり、元来染色体DNAの点変異検出に用いられた技術である。DGGE法は、PCRと組み合わせることで、微量のサンプルから環境中に存在する微生物の遺伝子を培養過程を経ずに検出することができるということで、微生物生態分野において急速に普及した。DGGE法は、培養できない微生物の遺伝子でも検出できるという点ではクローニングと似ているが、バンドとして可視化出来るため、環境中にどれくらいの種類の微生物が存在するのかを容易に判断することができるという利点をもっている。
【0089】
DGGEは、DNA変性剤(尿素とホルムアルデヒド)の濃度勾配をつけたポリアクリルアミドゲル中でDNA電気泳動を行うことにより、長さのそろった複数種の2本鎖DNA(例えば、PCR産物)を、塩基配列の違いにより分離できる方法である。図25にその原理を示す。
【0090】
GCクランプ(GCに富む配列)付きのプライマーセットを用いて、PCRで増幅した2本鎖DNAを変性剤の濃度勾配をつけたポリアクリルアミドゲルで電気泳動すると、DNA変性剤の濃度上昇とともに2本鎖DNA間の水素結合が切断され、二重らせん構造から1本鎖DNAに変性する。しかし、GCクランプ部分は結合力が強いため、DNAは3方向に伸びた形になる。このように変性したDNAは、ゲルを移動する速度が著しく小さくなるため、ある場所に集まり、バンドを形成する。配列の異なる複数の2本鎖(異なる微生物)のDNAはA−T、G−C間の水素結合の数および配列の違いにより、異なるDNA変性剤濃度で解離するため、異なる位置にバンドが形成され、その結果、微生物を種類ごとに分離することができる。このようにして、サンプルごとにバンドプロファイルが得られ、そのパターンにより群集を評価することができるということになる。
【0091】
以下、手順を説明する。
【0092】
1)ポリアクリルアミドゲルの作成
1.変性剤について低濃度ゲル溶液、高濃度ゲル溶液、さらに0質量%のゲル溶液を調製する。ポリアクリルアミド濃度は8質量%とする。ゲルの組成を以下の表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
2.1をそれぞれ脱気したものについて、低濃度・高濃度ゲル溶液を14mlずつ用意する。
3.用意した高濃度ゲルにDyeを加え、低濃度高濃度のそれぞれに架橋剤である0.5質量%APSと0.05質量%TEMEDを加える。
4.変性剤の濃度勾配をつけられる装置を用いてゲルキャスティングを行う。
5.12時間放置することで重合を促進させる。
【0095】
2)電気泳動
DGGEの泳動装置には、D code system(Bio−Rad)を使用した。
1.サンプルを用意する。(16SrDNA解析の場合は、GC付きのプライマーである357fGCと518rで増幅したPCR産物)。
2.サンプル20μlと6×Dye4μlを混ぜ、調製する。
3.1×TAE7Lを60℃まで加温したチャンバーにゲルをセットし、サンプルをアプライする。
4.130Vで5〜6時間、電気泳動を行う。
【0096】
3)画像取得と解析
画像取得とその解析はFluoroImager595(MolecularDynamics)Scanner ControlとImage Q want、FragmeNTを使用し行った。
1.泳動し終わったゲルを1万倍に希釈したVistra Greenで15分間染色する。
2.余分な染色液を取り除き、蛍光イメージアナライザーFluoroImager595(Molecular Dynamics)のScanner Controlを用いて、画像解析ソフトImage Q wantで画像を取り込む。
3.塩基配列決定の為、バンドを切り出す必要のある場合はバンドを切り出す。
4.バンド強度をもとめる等の解析をする場合は、画像解析ソフトFragmeNTを利用して付属のマニュアルに従い解析を行う。
【0097】
シーケンシング
以下の実施例において、SQ−5500とABI310の2台のオートシーケンサーを使用した。SQ−5500はゲルスラブタイプの電気泳動でDye Primer法を採用しており、またABI310はキャピラリー電気泳動でDye Terminator法を採用している。両者の方法について、実験の流れを示す。
1)オートシーケンサーSQ−5500(日立製作所)
1.プロトコルに従いポリアクリルアミドゲルを作成する。ゲルの組成を以下の表4に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
2.Vistra sequencing kit(Amasham−Pharmashia)を用い、そのプロトコルに従ってシーケンシング反応のmixtureを調製する。
3.T3 Thermocycler(Biometra)またはGeneAmp9600(PE Biosystems)を用いて、シーケンシング反応を行う。シーケンシング反応のプログラムは、増幅部位の長さに関わらず、<95℃5min−〔95℃:30sec−60℃:30sec〕×25−4℃>を使用する。
【0100】
4.HITACHI SQ−5500で1時間予備泳動したゲルに、3のサンプルをアプライする。
5.適当な時間、電気泳動を行う。(泳動時間は解読塩基長により異なり、n時間で解読できる塩基長は(n−1)×100である。)
6.forward鎖とreverse鎖のassembleを行い、必要に応じて修正し塩基配列を決定する。
【0101】
2)オートシーケンサーABI PRISM Genetic Analyzer 310(Applied Biosystems)
1.Microcon(Millipore)を用いてシーケンスを読みたいPCR産物から過剰プライマーやdNTPを除去する。
2.Bigdye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems)を用いて、そのプロトコルに従い目的のプライマーでシーケンシング反応を行う。PCR条件は<96℃:30sec−〔96℃:10sec−50℃:5sec−60℃:4min〕×25−4℃>を使用する。
【0102】
3.Centrisep スピンカラム(Applied Biosystems)で、過剰のDye Terminatorを除去する。
4.本体のセットアップを行う。
5.3で用意したサンプルをマニュアルに従い処理を行い、ABI PRISM 310 Collectionでシーケンスを解読する。
7.Sequence Anapysisでforward鎖とreverse鎖のassembleを行い、必要に応じて修正し塩基配列を決定する。
【0103】
クローニング
複合微生物系で、ある遺伝子を標的としたPCRを行いそのPCR産物をテンプレートとしてクローニングを行うと、系の中に存在する様々な微生物がある確率で単離した状態で得られ、さらにクローンライブラリーを作成することで、存在微生物の全体像を知ることができる。安水を処理している硝化脱窒型活性汚泥法中の微生物群集解析で、16SrDNAのprimerで得たPCR産物からクローンライブラリーを作成し、系統樹を書くことで系の中の微生物群集について考察することができる。
【0104】
クローニングは、大きく分けて次の2段階の反応からなる。
ライゲーション
ライゲーションとは、プラスミドベクターにインサート(特定の遺伝子産物(PCR産物))を組み込む操作である。クローニングに用いられるプラスミドベクターは、インサートを組み込む必要があるため、制限酵素で切断されるクローニングサイトをもつ必要がある。また、最終的にプラスミドを大腸菌に感染させて、大腸菌を増やすことでプラスミドに組み込まれたPCR産物を増やすことをするので、プラスミドベクターは大腸菌に認識される複製開始点を持ち、さらにプラスミドを持つ大腸菌を選択的に増殖させるために薬剤耐性遺伝子を持つ必要がある。
プラスミドベクターの調製は自分でも行うことはできるが、上記のように調製済みのベクターが市販されている。
【0105】
ライゲーションの際には、PCR産物の末端の修飾方法やベクター/インサート比に注意が必要である。末端の修飾方法にはいくつかあるが、比較的よく行われているのは、PCRでのDNA合成の際に付加されるデオキシアデノシン(dA)を利用したTAクローニングという方法である。また、ベクター/インサート比については、効率よくライゲーションが行われるように通常は1/1〜1/10程度にする必要がある。
【0106】
トランスフォーメーション(形質転換)
トランスフォーメーションとは、ライゲーションを行ったプラスミドを、DNAの取り込む能力のある大腸菌のコンピテント細胞に感染させる操作である。トランスフォーメーションした細胞を薬剤の含んだプレート上に播くことにより、薬剤耐性を持つ大腸菌、すなわちプラスミドを含む大腸菌が選択的に増殖してコロニーを形成する。一つのコロニーは一種類のみのインサートを含む大腸菌から成るので、複合微生物系において微生物ごとに遺伝子を分けることができる。
【0107】
1)クローニングの方法の検討
インサートの末端修飾には幾つかの方法があり、それに伴いライゲーションの方法もいくつかあるが、本実験では、操作が比較的簡単で、形質転換体が70%程度の確率で得られるといわれるTAクローニング法の変法を採用した。TAクローニング法は、PCRでのDNA合成の際に付加されるデオキシアデノシン(dA)を利用した方法であり、鋳型DNAの配列によってはPCR産物にdAが付加しない平滑状のものが混ざった状態なので、PCRの鋳型DNA等の条件によりクローニング効率が変わることに注意を要する。
【0108】
TAクローニング法として市販されているものの中で、具体的にはQIAGEN PCR Cloning System(UAクローニング)のKitを使用した。これは、TAクローニング法の変法で、Tの代わりにUの付いたベクターを用いたものである。Tは非相補的な塩基(G,C,T)とハイブリダイズしやすく、Tが付加されたベクターはベクター同士のアニーリング等の結果をもたらす可能性が有るが、Uは非特異的なベースペアを形成しにくい為、クローニング効率が高いと言われている(QIAGENプロダクトガイド)。本実験においても、TAクローニングとUAクローニングの比較を行った。TAクローニングはインサート率(出現コロニー当たりのインサートが入ったコロニーの割合)が半分程度であったが、UAクローニングはインサート率が9割程度と高く、UAクローニング法の方がクローニング効率がよいことが明らかとなった。
【0109】
2)適切なベクター/インサート比の検討
ベクター/インサート比については、通常1/1〜1/10程度にする。これは、インサートが少ないとインサート率が悪くなり、逆にインサートが多すぎると複数のインサートが一つのベクターに入ってしまうという可能性も出てくるためである。本実験では、QIAGEN PCR Cloning SystemのKitで推奨されている1/5と1/10の両方について実験を行った。その結果、1/5と1/10の両者で1/10の方がコロニー数が1、2割程度多かったものの、顕著な差ではなかったため、1/5や1/10程度の比であればどちらでもよいという結論に達した。
【0110】
3)インサートの確認方法の検討
インサートの確認には、コロニーを液体培養で増やし、ミニプレップでプラスミドの抽出・精製を行った後にPCRまたは制限酵素処理を行い、アガロースゲル電気泳動をする方法を使用した。
【0111】
以下、手順を説明する。
【0112】
1)PCR産物(インサート)の精製
1.クローニングしたい目的のPCR断片を含むPCR産物を1サンプルにつき数本用意する。
2.それらを集め、Microcon(Millipore)を用いて過剰なプライマーやdNTPを除去して精製を行う。
3.精製したサンプルのDNA濃度を測定する。
【0113】
2)クローニング
クローニングの基本的操作は、QIAGEN PCR Cloning Systemのプロトコルに準じた。
1.Ligation mixtureを作成する。(ライゲーション反応液内のベクター/インサート比については、各サンプルにつき1/5と1/10の両方を調製する。)
2.GeneAmp9600(PE Biosystems)で、16℃で30分間インキュベーションし、ライゲーション反応を行う。
【0114】
3.トランスフォーメーションの操作をプロトコル通りに行う。
4.トランスフォーメーション液を寒天プレートに播く。
5.出来上がったプレートを37℃で17時間程度(一晩)インキュベートする。
【0115】
3)プラスミド抽出
1.コロニーの生えたプレートを1時間程度4℃でコールドインキュベーションする。
2.プラスミドが入っているホワイトコロニーのみを楊枝でピックアップし、液体培地に入った15mlチューブに楊枝ごと入れる。
3.2を振とうしながら8〜10時間培養する。
4.QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いて付属のプロトコルに従いプラスミド抽出を行う。(このKitでは、大腸菌からプラスミドを溶出させ、精製、濃縮を行っていることになり、フェノール/クロロホルム抽出やエタノール沈殿等の操作を改めて行う必要は無い。)
【0116】
4)M13 PCR
1.得られたプラスミド抽出液をテンプレートとし、インサートよりも外側に位置している以下の表5に示すM13プライマーを用いてPCRを行う。PCR条件はインサートの長さにより変える必要がある。
【0117】
【表5】
【0118】
FISH
FISHとはFluorescent In Situ Hybridizationの略である。FISH法は、標的とする核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を持つ核酸(プローブ)を蛍光標識したものを用いる。この蛍光標識プローブを単離株や複合微生物系等のサンプルに加えることで、標的核酸にのみハイブリダイズさせ、サンプルを蛍光顕微鏡で観察すると、目的微生物を蛍光によって検出することが出来る。FISH法を微生物の検出に用いる場合、リボソームにあるrRNAを標的とし、プローブにはオリゴヌクレオチドを用いて行う。リボソームは1つの細胞に103〜105個存在しており、プローブもそれだけの量の菌体に入ることになる為、菌体一つ当たりの蛍光が大きくなり、顕微鏡下で蛍光が観察可能になる。図26にその原理を示す。
【0119】
FISH法を微生物に適用する目的としては、まず、サンプル中に標的微生物が存在しているかどうかということ、また存在位置を調べることが挙げられる。さらには、検出された蛍光の面積または菌体数を計測することによりサンプル中の標的種の割合を調べることも可能である。
【0120】
1)検出方法
以下の実施例において、サンプル中に目的とする細菌がどれだけ存在するのかという定量を行うために、FISH法を用いた。全細菌を標識する蛍光色素として、レーザーでしか検出できないCy5は用いずFITCを使用し、また標的細菌については、CLSMの時と同様Cy3標識のプローブを使用した。2重染色を行い、共焦点レーザースキャン顕微鏡(CLSM,Confocal Laser Scanning Microscopy)で画像を取得して面積定量した。
【0121】
2)明るい蛍光を得る検討
蛍光顕微鏡で蛍光は検出できるようになったものの、グラム陰性細菌を標的とするプローブを用いた時でさえも、明るい蛍光がなかなか得られないという問題があり、幾つかの検討を行った。得られる蛍光が暗い最大の原因には、プローブの細胞へ浸透が上手くいっていないことであると考え、この原因を解決する手段として報告されている方法を試してみた。まずは、パラホルムアルデヒド固定の前に、50質量%エタノール固定を行う方法であり、これはグラム陽性細菌等に有効であることが報告されている。パラホルムアルデヒド固定は通常1〜3時間程度行うが、その前にエタノール固定を1時間程度行うことで、浸透しにくい細胞へのプローブの浸透をよくすることを検討した。しかし、やはり満足のいく明るい蛍光は得られなかった。これは、対象サンプルが製鉄所の安水という特殊な排水を処理している活性汚泥であるということで、活性汚泥中に混入している不純物等がプローブの浸透を妨げている、または存在微生物自体の細胞構造やフロック構造によりプローブの浸透がしにくいという可能性が考えられ、通常の下水処理の活性汚泥に対しておこなうFISHとはだいぶ感覚が異なるのではないかということが予想された。そこでさらに、プローブの浸透を良くする方法として報告されていた、パラホルムアルデヒド固定の後にLysozymeとMutanolysin処理を行ってからプローブをサンプルに作用させるということを試してみた。その結果、ある程度の明るい蛍光を得ることに成功した。また、プローブの浸透を検討していたのと同時に、超音波分散をかける時間についても検討を行った。分散をかけないで観察すると、大きなフロック構造を取っていた。そこで、フロック構造を出来るだけ壊しプローブの浸透をよくするために、当初は10Wで3分間、超音波分散で処理をしていた。しかし、3分間処理するとフロック構造はほぼなくなるが、細胞まで壊して逆に蛍光が弱くなってしまうおそれがあると考えた。全く分散処理をしていないサンプルでも前述したLysozymeとMutanolysin処理をすれば蛍光が観察できることが分かり、その後は、10Wで1分の超音波分散を行ったサンプルを用意し、顕微鏡観察・定量を行った。1分間という長さは、本サンプルに関して蛍光顕微鏡を用いて定量化する上で、細胞を壊さない程度かつ定量化に必要な最小限の長さであると判断した。
【0122】
3)複数のプローブを同時に作用させる時のプローブ濃度とホルムアミド濃度の検討
本実験でのFISHは、定量化をする手段として利用したので、全細菌(EUBプローブ)に対する標的細菌の割合を求める為に、同時に複数のプローブを作用した。例えば、Proteobacteria−αの定量の際は、EUB(FITC標識)とALF968(Cy3)を混ぜてサンプルにハイブリダイズすることとなり、さらには本実験でのEUBはEUBmixという3つのプローブを混ぜたものを用いている。EUBwmixを先に調製してから、ターゲットプローブと混ぜた。この方法により、プローブを複数混ぜることでハイブリバッファーのホルムアミド濃度が、設定よりも低くなることをある程度防ぐことができた。
【0123】
以下の表6にプローブの混合方法を示す。
【0124】
【表6】
【0125】
以下、FISHの手順を示す。
【0126】
1)サンプルの固定とスライドガラスの作成
1.液体窒素で保存していたサンプルを常温で溶かし、50質量%エタノールで4℃1時間の固定を行う。
2.3質量%パラホルムアルデヒドで4℃、1〜3時間サンプルを固定する。
3.PBSとエタノールを1:1で混ぜた溶液に懸濁させ、−20℃で保存する。
4.保存しておいたサンプルを、10Wで1分間超音波分散を行う。
5.スライドガラスをゼラチンコート(組成:0.1質量%牛骨ゼラチン、0.01質量%クロムみょうばん)する。
【0127】
6.固定したサンプルについて、ゼラチンコートしたスライドガラスのウェルに2μlずつ滴下し、空気乾燥する。
7.5を50質量%、80質量%、98質量%エタノールに順に3分ずつ浸し、脱水を行う。(出来たスライドガラスは半永久的に保存可能である。)
【0128】
2)ハイブリダイゼーション
1.プローブの浸透をよくするために、lysozymeとmutanolysinで処理を行う。
lysozyme処理:TE Buffer(pH8.0)に溶解した2500unitsのlysozymeをウェルに滴下し10分処理を行う。その後50質量%、80質量%、98質量%エタノールに順に3分ずつ浸し、脱水を行う。
mutanolysin処理:0.1mol/l のphosphate buffer(pH6.8)に溶解した50unitsのmutanolysinをウェルに滴下し10分処理を行う。その後50質量%、80質量%、98質量%エタノールに順に3分ずつ浸し、脱水を行う。
2.Hybridization Bufferを以下の表7に示すように調製する。
【0129】
【表7】
【0130】
3.Hybridization Bufferで湿らせた紙を入れた50mlチューブを46℃で数分インキュベーションする。
4.Hybridization Bufferとプローブを表6に示したように混合する。
5.各ウェルに3を適当量滴下し、2の容器に入れて、46℃で3時間Hybridizationを行う。(EUBプローブとその他のプローブの2重染色でHybridization条件の異なるプローブを使用する際、EUB以外の標的プローブのホルムアミド濃度に合わせて1度でHybridizationを行う。)
6.Hybridization終了後、以下の表8に示す組成をもつWashing Bufferで、洗い流して浸し、48℃で20分間洗浄する。
【0131】
【表8】
【0132】
7.MilliQで、スライドガラスについたBufferを洗い流し、即座に水分を切って空気乾燥する。
8.DAPI染色が必要な時は、DAPI staining solution(1.25μg/ml DAPI,0.9M NaCl,20mM Tris/HCl(pH7.2))を10μlずつウェルに滴下し、5分間の染色を行う。
9.蛍光退色防止剤Slow Fade Lightをスライドガラスに滴下し、カバーガラスをのせ、マニュキュアコートで周りを固めて乾燥を防ぐように、プレパラートとする。
【0133】
3)顕微鏡観察と画像取得
顕微鏡観察は、Olympus BX51蛍光顕微鏡を用いた。ここでは、画像取り込みの際に注意した点を挙げる。
・細胞が出来るだけばらけているところを対象として画像を取得した。
・蛍光標識ごとに画像取り込みの際のシャッタースピードをマニュアルで操作し、バックグランドとシグナルの差がはっきりと区別できるようにする。具体的には、取り込んだ画像について、RGBカラーの各色のピクセル数を見ながら、蛍光標識に相当する色のピクセル数がバックグランドの部分で50以下になるようにした。
・明らかに自家蛍光であるシグナルが入っている画像は解析対象からはずした。
・定量化のため、同一視野について取り込んだEUBプローブの画像と標的プローブの画像、そして位相差画像を1セットとして、評価対象のサンプルにつき20セット以上取得した。
【0134】
4)定量解析
蛍光面積の定量には、画像解析システムQwin600HR(Leica)を使用する。
1.Qwin600HR(Leica)で、取得したRGBカラー画像ファイルを開き、R,Gそれぞれの色の明るさがある数値以上のピクセルを選択する。ある数値というのは、画像ファイルによって多少前後するが、多数の画像を解析しているうちに、数値がほぼ決まり、ある程度オートマチック化できる。しかし、主観に頼らざるを得ないところも少なからずある。
2.同一視野のEUBとターゲットのそれぞれの画像について、選択した部分の面積を求める。
3.2の比をとることで、ターゲットの存在比を求める。
4.誤差をできるだけ少なくする為に、取得している20セット以上について1〜3の操作を行い、平均を求め、これをターゲットの全細菌に対する割合とする。
【0135】
【実施例】
実施例1:パイロットプラントの運転
2001年5月、製鉄所において安水のCOD削減すなわち、フェノール類などの有機物と、チオシアン、チオ硫酸などの硫黄化合物の除去とアンモニアの除去を行う試験的なパイロットプラントの運転を開始し、2003年1月の現時点まで比較的安定な運転を行っている。この間、水質データのモニタリングを行い、また定期的に活性汚泥サンプルの採取を行った。
【0136】
図27に、安水処理プロセスのパイロットプラントの概要を示す。
パイロットプラントは、安水のCOD削減とアンモニア除去を行うため硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法を採用している。対象製鉄所において発生する実安水を海水希釈混合槽で海水によって1:2(安水:海水)に希釈する。
希釈後の組成を以下の表9に示す。
【0137】
【表9】
【0138】
希釈排水は嫌気槽(脱窒槽)、硝化槽(好気槽)、沈殿槽を経て処理される。硝化液の循環率は200%、汚泥返送率は100%であり、また処理水へ一部のSSが流出している為MLSSが安定しており、汚泥の引き抜きは行っていない。各水質項目の測定は、希釈原水(流入水)、脱窒槽出口、処理水の3ヶ所と硝化槽・脱窒槽で行い、測定項目を以下の表10に示す。また微生物群集解析用の活性汚泥サンプルは脱窒槽と硝化槽の2ヶ所から採取した。
【0139】
【表10】
【0140】
以下にパイロットプラントの運転状況を示す。途中でプラントの制御方法を変えたりしたため、2001年5月〜2002年7月までをRUN1〜RUN4と分けた。
以下の表11にRUN1とRUN2の概要を示す。
【0141】
【表11】
【0142】
また、RUN1〜RUN2の基質や窒素分の処理状況については、図28〜図31に示す。
【0143】
1)基質の処理状況
RUN1〜RUN2を通して、流水排水中に含まれる基質のうち、フェノール類、チオシアンは処理水ではほとんど残っておらず、ほぼ全て処理されている。チオ硫酸については、流入200〜400mg/Lのうち数10mg/Lが処理水に出てきてしまっているが、大部分は処理されている。よって、活性汚泥中の主な基質であるフェノール類やチオシアン、チオ硫酸は脱窒の基質として又は酸化分解を受けて、硝化脱窒処理プロセスにおいてほぼ処理されることがわかった。
【0144】
2)窒素分の処理状況
原水中の含有窒素分の処理状況については、RUNによって異なるので、以下に記す。
RUN1
原水中のDTNは600〜1000mg/L程度で推移している。RUN1の2001年5月は立ち上げの為、窒素の処理が安定せず硝化率・窒素除去率共に0〜0.03というように低い値で大きく変動している。RUN1の2001年7月4日は一時的に性能が良好で、ΔDTNが400mg/Lを超えているが、その後はΔDTNが200mg/L前後での変動にとどまっており、硝化率・窒素除去率は平均で0.3程度となっている。
処理水中にNO2−Nはごく微量残っているが、NO3−Nはほとんど残っていないことから、硝化された窒素分の脱窒は上手く機能しており、硝化が律速となっている系であると考えられる。
【0145】
RUN2
2002年1月23日〜2002年2月13日に汚泥槽腐食で改修工事のため原水を停止して空運転をし、その後2002年2月14日に製鉄所実機(標準活性汚泥法)の汚泥を等量(1:1)加えて運転を再開した経緯があり、RUN2はRUN1とは種汚泥が異なる系での立ち上げ期である。また、RUN1で硝化が律速になっている可能性のあることがわかったので脱窒槽と硝化槽の比を1:2から1:3とし、硝化槽の容積を増やした。MLVSSについては、RUN2はRUN1と比べると硝化槽、脱窒槽の両方で4000mg/LとRUN1よりは低い値で推移している。
【0146】
立ち上げの当初(2002年2月20日)は一時的に、硝化率・窒素除去率はよかったが、その後、2002年4月23日頃まで性能が悪くなり、それから2002年6月3日までは安定しながら徐々に硝化率・窒素除去率がよくなり、最も良い時で0.4程度、DTNは約400mg/L脱窒されていた。硝化や脱窒に関して徐々に性能がよくなるという立ち上げ期を比較的良くモニタリングできた系であると言える。
【0147】
処理水中にはNO3−Nはほとんど出ていない。NO2−Nについては性能がよくなるにつれて、50〜80mg/L程度処理水中に残っている。これは、アンモニア態窒素が硝酸態窒素まで硝化されずに亜硝酸態窒素の状態で止まってしまっているか、または脱窒素反応の過程で完全に窒素まで脱窒されずに途中で止まってしまっている可能性が考えられる。しかし、いずれにしても処理水中に残っているNO2−Nは50〜80mg/L程度であり、硝化された窒素分のほとんどについては脱窒されていると言える。RUN1と2を通して、硝化率は平均0.2〜0.3程度と低く、硝化が律速となっていてその為に窒素除去率も硝化率とほぼ同じ値で低く推移していると考えられる。
【0148】
実施例2:PCR−DGGE法による微生物群集モニタリング
PCR−DGGE法は、環境サンプル等の培養できない微生物の遺伝子でも検出、またバンドとして可視化でき、さらにはバンドを切り出すことでそのバンドの塩基配列情報を得ることができるため、近年、複合微生物系である環境サンプルの解析などにおいて急速に普及してきた技術である。また、微生物の変化を系時的にバンドの変化として追うことができるという利点を有しており、安水硝化脱窒処理プロセスのパイロットプラント内に存在している微生物群集をモニタリングする手法として適切であると考え、パイロットプラントのRUN1、RUN2の微生物群集についてPCR−DGGE法を用いてモニタリング、解析を行った。
【0149】
以下、手順を説明する。
【0150】
パイロットプラントRUN1とRUN2において、系時的に採取した汚泥サンプルからDNAを抽出し、GC付きプライマーで16SrDNAのV3領域(357f−518r)を増幅して解析対象とした。PCR条件は、<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:30sec〕×35−72℃:10min−4℃>である。その後、DGGEのプロトコルに従い40〜60質量%の変性剤濃度勾配をつけたゲルを用いて、130Vで6時間電気泳動を行った。
【0151】
予備実験
硝化槽サンプルと脱窒槽サンプルの比較
同日に採取した活性汚泥サンプルについて、硝化槽と脱窒槽の出口ではDGGEのバンドパターンが異なるのかどうかの検討を行った。結果を図32の左図に示す。左から2001年5月1日の硝化槽と脱窒槽、2001年5月7日の硝化槽と脱窒槽であり、この結果から、硝化槽と脱窒槽でのバンドパターンの差異はほとんどないと考え、脱窒槽のサンプルのみで解析を行うことにした。
【0152】
泳動時間の検討
同一のサンプルを用いて、サンプルを1時間ごとに異なるウェルにアプライし、5〜8時間の泳動時間でバンドパターンの異なり方を見て、最適泳動時間の検討を行った。結果を図32の右図に示す。この結果を見ると、今回の実験の最短である5時間でバンドの分離は完了していた。よって解析対象のサンプルについては、バンドパターンを見るには5hの泳動で充分であることが分かった。ゲルの下の方にあるバンドは6時間泳動すれば、ほぼ止まりきれいに分離している。8時間まで泳動すると、上の方にあるバンドの間隔がつまってしまい、バンドの切り出しをするにはよくないと考えられる。これらのことから、実験対象のサンプルのDGGE解析においては、泳動時間は5時間で充分であり、下の方にあるバンドの切り出し等を行うには6時間泳動を行うとよいことが分かった。
【0153】
結果・考察
予備実験より、同日に採取した硝化槽の汚泥と脱窒槽の汚泥では、DGGEのバンドパターンはほとんど変化しないことが分かったので、脱窒槽の汚泥サンプルのみを用いてRUN1とRUN2の2002年4月16日までに関してPCR−DGGE法による解析を行った。その結果を図33に示す。
【0154】
図3から、まず、RUN1とRUN2を通してバンドの数が、比較的少ないことが読み取れる。通常の下水を処理する活性汚泥をPCR−DGGE法で解析すると、バンドが密集してしまうのだが、このようにバンド数が少ないのは、安水という特殊な排水を処理している汚泥であり、フェノール類やアンモニアなどが高濃度に含まれる系で生存できる微生物が限られている為であると考えられる。
また、RUN1とRUN2では種汚泥が異なる(種汚泥を採取したプラントは一緒で採取時期が異なる)が、性能が安定してきた2001年7月4日以降のバンドパターンはあまり変化がないことから、安水の硝化脱窒処理を行うプロセスに存在する微生物相はほとんど変化しないのではないか、ということが示唆された。
【0155】
塩基配列解読によるDGGEバンドの近縁種決定
得られたバンドについて、それぞれどのような微生物なのかを確認し、パイロットプラント内に存在する微生物の全体像を把握するため、各バンドの近縁種の決定を試みた。
方法
DGGEのゲルから主要なバンドを切り出し、滅菌milliQとともに凍結融解を3回繰り返すことで、ゲル片からDNAを回収し、それをテンプレートとしてPCR−DGGEを行うという精製の操作を繰り返し、DGGEのゲル上で一本のバンドにした。最増幅のPCR条件は、<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:30sec〕×25または20−72℃:10min−4℃>である。その後、精製したDNAをテンプレートとしてGC無しのプライマーでV3領域の357f−518r部位を再増幅(PCR条件:<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:30sec〕×25−72℃:10min−4℃>)し、シーケンシング反応のテンプレートとした。シーケンシング反応は先に説明したプロトコルに従い、またシーケンサーはHITACHI(SQ−5500)を用いた。それぞれの357f−518rの塩基配列を決定した後、相同性検索プログラムBLAST(http://spiral.genes.nig.ac.jp/homology/blast.shtml)を用いて既知種の中から相同性の高い塩基配列を検索し、DGGE各バンドの近縁種を決定した。系統樹は、DDBJのClastalW(http://hypernig.nig.ar.jp/homology/clustalw.shtml )によりアライメント解析を行い、作成した。既知種の塩基配列は、Entrez−PubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/ )のNucleotideで、Accession No.を用いて取得した。
【0156】
結果・考察
図34と図35は、RUN1とRUN2それぞれについてPCR−DGGE法で解析し、切り出したバンドを示した写真である。RUN1の2001年7月4日を解析したレーンから主要バンドを17本切り出し(1−1〜1−17)、またRUN2の2002年5月28日を解析したレーンから主要バンドを15本切り出した(2−1〜2−15)その後に、塩基配列を解読して近縁種を特定した結果を以下の表12と表13に示す。塩基配列の決定は、16SrDNAのV3領域の200bp弱について行っており、200bp程度では詳しい系統解析は出来ないが、属レベルまでの決定は可能であると言われている。また、200bpでは類似度が100%のもの以外は同一種である可能性は大変低く、あくまでも最近縁種ということを念頭におく必要がある。
【0157】
【表12】
【表13】
【0158】
結果を見ると、主要バンドは少ないつまり存在微生物の種類は少ないが、真正細菌の様々なグループに属していることがわかる。切り出したバンドとそれぞれの最近縁種を入れて描いた系統樹(図36)では、Proteobacteria、CFB、Thermus/Deinococcus group、グラム陽性細菌(HGC,LGC)など、に属している細菌が存在していることが見て取れる。また、RUN1とRUN2を通して性能が安定している時に常に濃いバンドを形成しているバンド1−5(2−4)と1−8(2−6)はそれぞれ、γ−ProteobacteriaのEctothiorhodospiraceaeに類似度93%で近縁なもの、そしてThermus/Deinococcus groupのDeinococciに類似度92%で近縁な細菌であることがわかった。両者とも類似度低いことから、200bp以上読んだ時に最近縁種が変わる可能もあるが、いずれにしてもバンドが濃く目立っているので、この系において注目すべき細菌であることは確かである。
【0159】
実施例3:クローンライブラリー作成による系統解析
DGGEバンドを切り出して精製し塩基配列を決定する場合、絶対量が少なくある程度の濃さとして現れないバンドを構成する微生物や、近くにバンドがあり精製が困難なバンドを構成する微生物は、塩基配列を決定することができないという問題点がある。また、DGGEの検出限界は500bp前後であり長くなるほどバンドが鮮明でなくなると言われていることから、実施例2では200bp前後で解析を行っており、詳しい系統解析を行うには不充分な長さであった。
【0160】
これらの理由により、さらに詳細な系統解析を行う目的で、16SrDNA全長のクローニングを行い、その後、DGGEからのバンド切り出しによる塩基配列決定より長い357f−907r部位(約550bp)の塩基配列を決定してクローンライブラリーを作成した。クローニングでは、PCRで増幅することができさえすれば、サンプル内に存在する微生物全てが、ある確率でクローンとして得られることになる。
【0161】
方法
クローニングの操作は、先に説明したプロトコルに従って行った。
RUN1の性能安定時2001年11月21日脱窒槽のサンプルについて、DNA抽出液から27f−1518r(Clone library A)と27f−1492r(Clone library B)部位をPCR増幅し(PCR条件<95℃:10min−〔94℃:30sec−50℃:30sec−72℃:2min〕×25−72℃:10min−4℃>)、その産物を精製してクローニングを行った。その後、得られたコロニープレートからそれぞれのクローンライブラリー用に50クローン強ずつ取り、液体培養後プラスミド抽出をして、M13プライマーを用いてPCR増幅をした(PCR条件<95℃:10min−〔94℃:30sec−50℃:30sec−72℃:2min〕×30−72℃:10min−4℃>)。
【0162】
次に、DGGEでクローン産物のスクリーニングを行うために、M13PCR産物をテンプレートとして同様にV3領域を増幅し、DGGEによるスクリーニングを行った。通常、クローン産物のスクリーニングにはRFLP法を用いるが、既に2001年11月21日のサンプルについては、PCR−DGGE解析を行っており、それをマーカーとすることである程度のスクリーニングを行えるのではないかと考えた。クローニングライブラリー作成の為に最終的に塩基配列を読むものについては、スクリーニングの結果同じ位置にいくつかバンドがあるものは、それらのうちの一つを選び、その他のものについては全て、シーケンスを行う対象とした。
【0163】
クローンライブラリーを作成する為の塩基配列の決定は、357f−907rの550bp程度とした。まず、M13 PCR産物をテンプレートとして357f−907rでPCR増幅した(PCR条件<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:1min〕×30−72℃:10min−4℃>)。それをシーケンス反応のテンプレートとし、ABI310(ABI PRISM Genetic Analyzer 310)のプロトコルに従いシーケンス反応を行った。その後ABI310で、357f−907r部位の塩基配列を解読した。
【0164】
塩基配列を決定した後に、相同性検索プログラムBLAST(http://spiral.genes.nig.ac.jp/homology/blast.shtml)を用いて既知種の中から相同性の高い塩基配列を検索し、各クローンの近縁種を決定した。また、近縁種が似ているものどうしを集めて、DDBJのClastalW(http://hyperning.nig.ac.jp/homology/clustalw.shtml)によりアライメント解析を行い、97%以上配列が一致しているものを1つのOTU(Operational TaxonomyUnit)とした。さらに、DDBJのClastalW(http://hypernig.nig.ac.jp/homology/clustalw.shtml )でアライメント解析を行い、系統樹を作成した。系統樹作成の際の既知種の塩基配列は、Entrez−PubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/ )のNucleotideで、Accession No.を用いて取得した。
【0165】
結果・考察
Clone library A
まず、パイロットプラントの2001年11月21日脱窒槽の汚泥について16SrDNA27f−1518r部位のクローニングを行い、各クローンの357f−907r部位の塩基配列決定し作成したClone library Aの結果を図37に示す。全52クローンのClone library Aの内訳を見てみると、活性汚泥では通常優占しているProteobacteriaが大部分を占めており、α−Proteobacteriaに近縁な細菌が10%、β−Proteobacteriaが22%、γ−Proteobacteriaが34%、Thermus/Deinococcus groupが30%そしてPlanctomycetes等その他が4%となっていた。クローニングはPCR等のバイアスがかかる為、定量的ではないが、活性汚泥ではあまり報告例が無くProteobacteriaの仲間には属さないThermus/Deinococcus groupに近縁な細菌が30%を占めていることは注目に値すると考えられる。
【0166】
以下の表14と表15に、各OTUの最近縁種等の情報を示す。
【0167】
【表14】
【表15】
【0168】
個別に見てみると、OTU8のγ−Proteobacteria;Chromatiaceae;Thiorhodovinrioに90%で近縁な細菌が12クローン(23%)、OTU20のThermus/Deinococcus group;Deinococciに90%で近縁な細菌が9クローン(17%)が目立って多いことが分かった。これらの2種の細菌は、実施例2の結果のDGGEで濃く目立っていたものとして2つ示した細菌と一致しており、DGGEのバンドパターンとクローンライブラリーの両方の結果から、系の中で優占している可能性が高いと考えられる。また続いて多かったのは、OUT4のAlcaligenaceaeに属する細菌(12%)や、OTU21のThermus/Deinococcus group;Deinococciに近縁な細菌(12%)であった。
【0169】
Clone library B
Clone library Aでは、DGGEから切り出したバンドの塩基配列解読で比較的多く存在した、CFBに近縁な細菌が全くいなかった。この原因として、PCRのプライマーセットによるバイアスが考えられた為、Universal Primerの他のプライマーセットを用いてClone library Bを作成した。具体的には、クローニングを行うときに、Clonelibrary AではインサートとなるPCR産物を27f−1518rで得たが、Clone library Bでは、27f−1492rとした。Clone library Aと同じく357f−907r部位の塩基配列を決定したが、全45クローンの内訳は図38のようになった。予想通り、CFBに近縁な細菌がOTU12−19の7種類得られ、CFB全体の割合も25%と多かった。これは、明らかにプライマーによるPCRバイアスがかかっていることを示した結果となった。また、他の微生物グループについては、β−Proteobacteriaに近縁な細菌が14%、γ−Proteobacteriaが27%、Thermus/Deinococcus groupが30%となっており、これらはClone library Aの割合とほぼ一緒である。また、α−Proteobacteriaに近縁な細菌は0%と、全く検出されなかったが、この原因は、1492rのプライマーは一般的なProteobacteriaを引っ掛けるようにデザインされているので、プライマーによるPCRバイアスよりも、クローン数が少なく確率的にα−Proteobacteriaのクローンが得られなかったと考えられる。クローンライブラリーを作成する際のクローン数は少なくとも50クローン程度は必要であるとされており、クローンを多く取れば取るほどそのライブラリーの正確さは増すことになる。
【0170】
Clone library AとBのまとめ
上述のように、Clone library AとClone library Bでは、プライマーによるPCRバイアスがかかった顕著な差が見られたので、その差を出来るだけ解消しClone libraryの構成クローンについて総合的に判断する目的で、Clone library AとBの全97クローンをまとめた円グラフを図39として作成した。まとめた結果、Proteobacteriaが全体の約53%を占めており、その内訳はα−Proteobacteriaに近縁な細菌が5%、β−Proteobacteriaが17%、γ−Proteobacteriaが31%であった。さらに、CFBに近縁な細菌が12%、Thermus/Deinococcus groupに近縁な細菌が29%、グラム陽性細菌等のその他が4%であった。グループレベルでは、Clone library AとClone library Bの両方で多かった。γ−ProteobacteriaとThermus/Deinococcus groupに属する細菌がそれぞれ30%前後となっていることが特徴的である。また、個別に見ても、各Clone libraryと同様にOTU8のγ−Proteobacteria;Chromatiaceae;Thiorhodovinrioに近縁な細菌が23%、OTU20のThermus/Deinococcus group;Deinococciに近縁な細菌が16%と多く、続いて、OTU20と非常に近いOTU21のThermus/Deinococcus groupに近縁な細菌も12%と比較的多かった。
【0171】
Clone libraryで得られたOTU数は25であり、下水や他の産業排水を処理している活性汚泥中の微生物相と比較すると、存在している微生物の種類が少ないと考えられる。また、一種類の微生物で数10%を占めるものもいることから、25OTUsの中でも優占している微生物が存在することがわかった。また、微生物の種類は比較的少ないが、それぞれが属するグループはProteobacteriaの各division、CFB、Thermus/Deinococcus group、Planctomycetes、HGCグラム陽性細菌、と広く分布していることも分かった。
【0172】
次に、表14と表15に整理したClone library AとBのクローンについて、その最近縁種を含めた系統樹(図40)を作成した。Out Groupは古細菌(Accession No.ARC18073)に設定し、boot strapは1000回とした。系統樹からは、Proteobacteriaの仲間、CFBの仲間、Thermus/Deinococcus groupの仲間と枝分かれが大きくグループ化していることが読みとれる。また、グラム陽性細菌等その他の細菌(OTU23,24,25)は古細菌に近いところから比較的深い枝として分かれている。各グループに注目すると、まずCFBに属すると思われるクローンはOTU12−19と種類が多いが、同じCFBのBacterioroidetesに近縁な細菌であってもそれぞれが比較的離れた位置に存在し、多様性が高いことがわかった。さらに、Thermus/Deinococcus groupに近縁なクローン(OTU21−22)は互いに近い位置に存在しているが、それぞれの最近縁種としてデータベースであがっていたThermus/Deinococcus groupの細菌とは異なった枝に位置している。このことから、OTU21−22は、Thermus/Deinococcus groupには属す可能性が高いが、Thermus/Deinococcus groupで報告されている細菌数は少ないこともあり、未だ報告されていない新しい科や属に属する細菌であることが予想される。
【0173】
実施例4:FISH法によるグループレベルの微生物群集定量解析
実施例1〜3で述べた結果は、すべてDNA抽出やPCRを経て得たデータであり、これらは多かれ少なかれDNA抽出とPCRのバイアスがかかっていると言ってよい。DNA抽出では、グラム陽性細菌は細胞壁が硬い為抽出されにくいこともあると言われているように、細菌によって抽出され易さが異なる。またPCRでは、16SrDNAのUniversal primerを用いて、系内に存在する全ての細菌を完全に拾うことは不可能であり、それは、ある細菌はUniversal primerの結合部位の配列にミスマッチがあってprimerが結合できなかったり、またある細菌は遺伝子の立体構造によりprimerが上手く結合できなかったりすることがある為である。さらには、PCRはサイクル反応を繰り返すことで遺伝子を増幅させる操作であるので、PCRの後では、微生物間の量の関係を議論することには注意が必要である。
【0174】
このようにDNA抽出、PCRの操作を経ると定量性がほぼ失われてしまい推測の領域となってしまう。そこで、DNA抽出やPCRを行わずにin situの状態で直接顕微鏡観察が出来、半定量的な手法とされているFISH法を用いて、違う角度からパイロットプラントの微生物群集解析を行った。
【0175】
方法
基本的な操作は、先に説明したプロトコルに従った。
解析したサンプルは、実施例3で、clone libraryを作成したものと同じ、パイロットプラント2001年11月21日脱窒槽のサンプルであり、定量評価用に用いたプローブは以下の表16の通りである。
【0176】
【表16】
【0177】
具体的には、グループレベルのプローブである各Proteobacteria、CFB、HGCグラム陽性細菌それぞれのプローブを使用し、全細菌(EUB)に対する割合を求めた。
【0178】
実施例3の手法に従い、それぞれのターゲットプローブとEUBプローブを混ぜたプローブをサンプルにアプライし、ハイブリダイゼーションを行った。Washingの操作後、場合に応じて5分間DAPI染色を行った。FISH画像は、蛍光顕微鏡OlympusBX51を用いて、CCDカメラを通して取得した。定量評価を行う為、各プローブにつき、同視野についてのEUB画像(FITC標識)、ターゲット画像(Cy3標識)、位相差の画像のセットを20セットずつ撮った。また、EUBプローブが全細菌の何%にハイブリダイズしているかを確認する目的で、DAPI染色についても10視野程度取得した。得られた、画像の解析及び定量操作には、画像解析ソフトLeica,Qwin600を使用した。画像解析ソフトによる定量方法の詳細は、実施例3で説明した通りである。
【0179】
結果・考察
使用プローブの検討
FISHのプローブに関する既往の研究については、実施例2に述べた。それらを踏まえた上で、本サンプルの微生物グループレベルでの解析に使用するFISHプローブを検討した。まず、DGGEバンドの切り出し後のシーケンスや、クローンライブラリーの微生物近縁種の結果で、α−Proteobacteria、β−Proteobacteria、γ−Proteobacteria、δ−Proteobacteria、CFB、高GCグラム陽性細菌、低GCグラム陽性細菌、Deinococcus/Thermus groupの9つのグループに近縁な微生物が得られているので、この9つのグループに特異的なプローブを使用して解析することを考えた。しかし、δ−Proteobacteria、LGCグラム陽性細菌、Deinococcus/Thermus groupの3つのグループについては、適当な既存プローブが見つからず、残りの5つのグループについてのみFISHを行い定量することにした。
【0180】
5つのプローブとEUBプローブについてもそれぞれ検討した点があり、以降それらについて記す。まず、α−Proteobacteriaについては、本サンプルについてALF1bとALF968の両方を試してみた。比較した結果、明らかに従来のALF1bの方が蛍光を発している細胞が多く、ALF968の方は光っている細胞はまれであった。しかしながら、最近の論文ではα−Proteobacteriaの定量評価に、ALF968を使用しているものが目立つことから本研究においてもALF968を用いることにした。
【0181】
次に、β−Proteobacteriaとγ−Proteobacteriaについては、通常使用されているプローブは、BET42aとGAM42aである。これらは、表16のように23SrRNAの同一の部分をターゲットとしていてプローブの配列は一塩基のみ異なるため、それぞれのプローブが1ミスマッチで違うターゲットにくっついてしまうおそれがあることが報告されている。本サンプルについても、BET42aやGAM42aのプローブをそれぞれ単独で用いた時に、ある程度細胞が密集している所はBET42aやGAM42aでも光ってしまっているように思えた。そこで、出来るだけ正確に定量する為に、β−Proteobacteriaを定量する際はBET42aと共にBET42a−competitor(GAM42aと同じ塩基配列を持つ蛍光標識なしのプローブ)をアプライし、γ−Proteobacteriaについても同様にGAM42a−competitor(BET42aと同じ塩基配列を持つ蛍光標識なしのプローブ)を利用した。
【0182】
さらに、CFBをターゲットとするプローブについては、CF319aがもともと有名なプローブとして存在している。CF319aは、CFB全体のプローブとして利用するには、網羅していない細菌も多く不完全であるということで、最近では他のプローブも開発されていている。そこで、それらのプローブを混合して使用することを考えたが、本サンプルに存在するCFB数種の全長塩基配列を決定していない為、開発されているプローブのうち本サンプルを定量するためにはどれを使用すべきか判断できず、本実験では多少過小評価になる可能性のあることを考慮した上でCFBに対してCF319aのみを使用した。
【0183】
最後に、全細菌をターゲットとするEUBプローブについてだが、従来使用されてきたEUBプローブが、やはり不完全であることが報告されており、さらに2つのプローブを加えたEUBmixを使用することが常識となりつつある。よって本実験においてもEUBmix(EUBI,EUBII,EUBIII を混合したもの)を使用した(プローブ混合方法については先に説明した通りである)。
【0184】
定量評価
FISHによる解析結果を円グラフにしたものを図41に示す。実施例3において図39で示した、Clone libraryの各グループの構成比と比較すると、α−Proteobacteria、β−Proteobacteria、γ−Proteobacteria、CFBの割合はほぼ一致している。しかし、HGCについては、FISHによる割合は17%となっておりClonelibraryでは数%とであったのと比べてだいぶ多くなっている。この原因としては、Clone library作成の過程で、DNA抽出・PCRでのバイアスがかかっている為と考えられる。特にDNA抽出では、グラム陽性細菌はバイアスがかかり易い。また、PCRのUniversal PrimerはProteobacteriaを中心として設計されていることから、系内に存在しているグラム陽性細菌が使用したUniversal Primerとミスマッチがあることも多いに考えられる。いずれにしても、Clone libraryにおいては、HGCについて過小評価している可能性が高いことが示唆された。また、全体を見ると、80%に満たないが、これについてはClonelibraryの結果から、既存プローブが無く評価できなかったThermus/Deinococcus groupに近縁な細菌が残りの大部分を占めることが推測できる。
【0185】
実施例5:プラントの硝化脱窒性能の指標となる微生物の探索
実施例1〜4において、まず、安水硝化脱窒処理プロセスのパイロットプラントに存在する微生物相の全体について、様々な手法を用いて把握した。
パイロットプラントを立ち上げた本来の目的は、生物学的手法(活性汚泥法)で有機物のみだけでなく、安水中のアンモニアを同時に除去することを検討することにある。アンモニアの除去は、硝化反応と脱窒素反応を経て完了するため、プラントの運転側の立場からは、硝化脱窒性能を良好に維持することが必要となってくる。本実施例においては、硝化脱窒性能の裏付けをする為に、微生物群集解析の立場から硝化脱窒性能の指標となるような微生物を探索することを試みた。
プラント立ち上げ期のPCR−DGGE法による微生物群集変化
硝化脱窒性能の指標となるような微生物を見つける方法として、硝化脱窒性能が悪い時と良い時の微生物相を見比べることを考えた。そこで、パイロットプラントの運転の中で、トラブルにより運転を一時停止し、種汚泥を再度加えて立ち上げ直した時期に注目した。その時期は、2002年2月14月〜2002年6月13日のRUN2に相当する。RUN2の前の2002年1月23日〜2002年2月13日の20日間、汚泥槽腐食による改修工事のために、流入水を停止し空運転を行い、その後標準活性汚泥法で処理している実機の汚泥を等量(1:1)加えて運転を開始したという立ち上げ直した経緯がある。RUN2の硝化や脱窒の状況は、図30と図31に示した通りであるが、立ち上げ当初の2002年2月20日は一時的に硝化脱窒が良かったが、その後一度悪くなり、2002年4月23日〜2002年6月3日にかけて硝化脱窒が良くなった。このパイロットプラントの運転状況から、微生物相は、立ち上げ当初は加えた種汚泥または空運転していた汚泥に存在した微生物が一時的に硝化や脱窒反応を加えたが、その後だんだんと嫌気好気という硝化脱窒処理プロセスに順応した微生物の菌体量が増えてきたのではないかと推測できる。つまりRUN2で増加した微生物は硝化脱窒性能の指標となり得るということである。
【0186】
このような立ち上げ期の微生物の増減をモニタリングする手段としては、微生物をバンドとして可視化でき、さらにバンドの太さによって増減を議論できるPCR−DGGE法が適当であると考え、パイロットプラントRUN2についてPCR−DGGE法による解析を行った。
【0187】
方法
パイロットプラントRUN2で、系時的に採取した汚泥からFast DNAKit for soil(BIO101)によりDNAを抽出し、GC付きプライマーで16SrDNAのV3領域(357f−518r)を増幅した。PCR条件は、<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:30sec〕×35−72℃:10min−4℃>である。その後、DGGE法により40〜60質量%の変性剤濃度勾配のゲルを用いて、130Vで5時間電気泳動を行った。
【0188】
結果
RUN2についてPCR−DGGE法で解析した結果を図42に示す。
図42から、各バンドは大きく分けて以下の4種類の挙動を示していることがわかる。
1.実機での存在の有無に関わらず硝化脱窒性能が良くなるに連れてバンドが濃くなった微生物(実線矢印)(各バンドの強度の変化については図43と図44を参照)
2.標準活性汚泥で処理している実機にも比較的多く存在しているが、硝化脱窒プロセスの立ち上がりに連れて一度減り、その後再び濃くなるという挙動を示した微生物(点線矢印)
3.標準活性汚泥処理の実機でも硝化脱窒処理でもほとんど変わらず存在する微生物
4.実機では存在していたが硝化脱窒処理にすることで減少した微生物
【0189】
まず、図42の1の実線の矢印で示したバンドであるが、図42からも読み取れるようにバンド強度の増加が実機と比べて顕著であり、これらは汚泥が硝化脱窒処理プロセスに馴致され硝化脱窒性能が良くなるに連れて増加した微生物であると考えられる。よって実線の矢印で示した微生物は硝化脱窒性能の指標となり得るだろう。特にバンドa,b,c,e,g,iは、好気処理の実機ではほとんど存在しておらず(図43と図44)、それぞれ硝化能、脱窒能を持つために増えたと考えることもでき、硝化脱窒性能の指標となる有力な候補である。
【0190】
図42の2の点線の矢印で示したバンドは、プラントの立ち上がりにともない一度経るが、その後再び濃くなるため、実線矢印と同じように硝化脱窒性能の指標となる可能性がある。しかし、好気処理のみの実機において、ある程度多い量で存在している為、嫌気槽での脱窒に関与しているかどうかは明らかではない。好気的に基質を酸化分解している可能性もある。
【0191】
また、上記3の微生物は、実機でも硝化脱窒プロセスでもほとんど変化無く存在しているので、好気槽で基質の酸化分解を行いエネルギーを得て存在している可能性が高いと推測できる。
【0192】
以上、解析結果から考察を行ったが、やはりバンドの挙動のみで各微生物がどのような反応に関わっているのかを判断することは難しいと言える。しかしながら、少なくとも図42の1の実線で示した微生物については、硝化脱窒性能の指標とすることが出来ると考えられ、以降、この実線矢印の微生物に絞った解析を行っていくことにした。
【0193】
立ち上げ期に増加傾向にあるDGGEバンドの塩基配列解読による近縁種決定
図42の実線矢印で示した、RUN2のプラント立ち上げ期に増加した微生物について、それぞれどのような微生物であるのかを調べる目的で、近縁種の決定を行った。
方法
図42の実線矢印で示したバンドをゲルから切り出し、滅菌milliQとともに凍結融解を3回繰り返すことで、ゲル片からDNAを回収した。それをテンプレートとしてPCR−DGGEを行うという操作を繰り返し、DGGEのゲル上で一本のバンドまで精製した。その後、精製したDNAをテンプレートとしてGC無しのプライマーでV3領域の357f−518r部位を再増幅(PCR条件:<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:30sec〕×25−72℃:10min−4℃>)し、シーケンシング反応のテンプレートとした。シーケンシング反応は先に説明したプロトコルに従い、またシーケンサーはHITACHI(SQ−5500)を用いた。それぞれの357f−518rの塩基配列を決定した後、相同性検索プログラムBLAST(http://spiral.genes.nig.ac.jp/homology/blast.shtml)(Altschul et al. (1990))を用いて既知種の中から相同性の高い塩基配列を検索し、DGGE各バンドの近縁種を決定した。
結果
近縁種決定結果を以下の表17にまとめた。
【0194】
【表17】
【0195】
band No.は図42で用いたものであり、カッコ内の番号は、実施例2における図34と図35の番号に対応している。
【0196】
近縁種を決定したところ、CFB(Cytophaga−Flavobacterium−Bacteroidetes)に属するものがb,h,iの3種と多かった。しかし、CFBに属する細菌は多様であり、3種のバンドとも単離されている株との相同性が低く、科のレベルについても特定することが難しかった。CFBに属する細菌の中には脱窒機能を持つものがいるという報告がある(Zumft et al. (1992))ので、これらの細菌も脱窒能を持っている可能性がある。その他には、β−ProteobacteriaのComamonas科に近縁な細菌がc,eの2種と続いて多い。この2種も単離株との相同性が90%と低いため属レベルの特定が出来ない。Comamonas科に属する細菌の中には、脱窒に関与しているものがいることが報告されており、様々な研究がなされているので、本研究のパイロットプラント内においても脱窒に関与している可能性が高いと考えられる。
【0197】
また1種ずつの細菌として、aはNitorosomonas属に近縁な細菌、dはEctothiorhodospiraceaeに近縁な細菌、fはThermus/Deinococcus groupに近縁な細菌、gはSphingomonas属に近縁な細菌、jは低GCグラム陽性細菌のBacillusに近縁な細菌となっていた。この中でaのNitrosomonasはアンモニア酸化細菌として有名な微生物であり相同性も98%と高い為、本パイロットプラントの中で硝化を担っていると考えられ、硝化性能の指標となる微生物であることはほぼ間違えない。その他の細菌については、Ectothiorhodospiraceae、Thermus/Deinococcus group、Sphingomonasは脱窒能力があるという報告は見当たらないが、グラム陽性細菌のBacillusに属する細菌は脱窒能力を持つものが多数報告されている。脱窒能を持つ細菌については特定されていないものが多いとされており、いずれにしても、上述した細菌は硝化脱窒プロセスで増加していることから脱窒に関与している可能性が高く、脱窒性能の指標となり得ると考えられる。
【0198】
特筆すべき点としては、dのEctothiorhodospiraceaeとfのThermus/Deinococcus groupに近縁なそれぞれの細菌は、微生物全体の解析で系内に優占的に存在しているであろうと結論付けた細菌であることである。硝化脱窒処理プロセスにすることで菌体量が増加し、さらには系内で優占しているとなると、硝化脱窒性能の指標とするには最適な細菌となる可能性が高い。
【0199】
立ち上げ期に増加傾向にある微生物の16SrDNA全長塩基配列決定
以上、安水の硝化脱窒処理パイロットプラントにおいて、硝化や脱窒を担っている可能性のある性能の指標となり得る微生物を特定することができた。そこで、それらの微生物についてさらに詳細な系統学的地位を調べる為、それぞれの16SrDNA全長の塩基配列決定を行うことにした。
全長配列を決定すると、データベースから得られる最近縁種の情報が正確になることに加え、さらにはその種に特異的なプローブを設計してFISHを行うことで顕微鏡を通してin situの状態でその細菌を確認することが可能になる。
【0200】
方法
まず、解析対象のバンド(図42のa〜j)について、実施例3に示したクローンライブラリー内に対応するクローンが存在するかどうか調べた。その結果は以下の表18の通りである。
【0201】
【表18】
【0202】
実施例3において作成したクローンライブラリーは、全長をターゲットとしたPCR産物のクローニングを行っている為、バンドに対応するクローンがあれば、16SrDNAの全長塩基配列を決定することができる。解析したいバンドのうちクローンが得られていたものは、a,d,f,g,iの5種のみであった。クローンの無かったものの中で特にb,c,eについてはDGGEでのバンド強度の増加が目立って良かった(図42)ので、全長を決定できないのは残念な結果である。クローンライブラリーのクローン数を増やせば得られる可能性はあるが、今回は時間の関係で省略せざるを得なかった。よって以下の操作はa,d,f,g,iの5種に限って行った。
【0203】
先に説明したように、クローニング後にM13プライマーで増幅したPCR産物をテンプレートとし、全長プライマーを用いてPCRを行った(a,d,f,gは27f−1518r、iは27f−1492r)。その後、得られた全長PCR産物について、Microcon(Millipore)とPCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて過剰プライマーやdNTPを除去し精製を行った。その後、精製液のDNA濃度を測定し、シーケンス反応のテンプレートに最適な濃度に調製した。
【0204】
次に全長シーケンスについてだが、16SrDNAは1,500bp程度と長い為、全長シーケンスを一度に取ることはできない。ABI310シーケンサーのキャピラリーにはショートとロングがあり、比較的長い塩基配列の解読用のロングキャピラリーでもせいぜい読めるのは500bp程度である。そこで、約1500bpの塩基配列を数種のUniversal primerでいくつかに分けて読むことになる。分け方は様々であり幾つか考案されているが、理論的にはUniversal primerのいくつかを使用すれば読めることになる。本研究では、図45のように8つのプライマーを用いて全長を分けて解読を試みた。シーケンス反応に使用したプライマーの配列は以下の表19の通りであり、またシーケンス反応については、先に説明したプロトコルに準じた。
【0205】
【表19】
【0206】
各断片の塩基配列を解読した後、ABI310の解析ソフトを用いてクローンごとに断片のAssembleを行い、全長塩基配列とした。そして、相同性検索プログラムBLAST(http://spiral.genes.nig.ac.jp/homology/blast.shtml)を用いて既知種の中から相同性の高い塩基配列を検索し、最近縁種を決定した。さらに、各クローンの系統学的な位置を示す為に系統樹を作成した。系統樹はDDBJのClastal W(http://hypernig.nig.ac.jp/homology/clustalw.shtml )でアライメント解析を行って作成した。系統樹作成の際の既知種の塩基配列は、Entrez−PubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/ )のNucleotideで、Accession No.を利用し取得した。
結果
各クローンの全長配列決定による最近縁種の検索結果は以下の表20のようになった。
【0207】
【表20】
【0208】
最近縁種が2種書いてあるものは、相同性(%)が同じ値で名前が異なる最近縁種が検索結果として得られたためである。また、最近縁種がunculturedのみのクローンに関しては、近縁種として得られた細菌の最も上位にある単離株を載せるつもりであったが、Similarityがかけ離れていた為載せることができなかったものである。
【0209】
それぞれのクローンについて、blastで得られた近縁種検索結果の上位約10種と、最近縁種と近い属の細菌を入れた系統樹を作成した結果を図46〜図50に示す。最近縁種と系統樹を総合して考察を行う。
【0210】
まずclone A3については、最近縁種はNitrosomonas eutropha.であったが、同じSimilarityでNitorosomonas sp.も検索結果に挙がっていた。系統樹を書いてみたところ(図46)、系統学的に最も近い細菌はホモロジー検索で4位であったNitrosomonas sp.(AJ224410)(97%)であることがわかった。系統樹の同じ枝はNitorosomonas sp.でほとんどが占められているので、clone A3はAmmonia−oxidizing bacteriaのNitorosomonas sp.に属すると考えられる。しかし、株レベルでSimilarityが100%一致するものは無かったため、新しい株である可能性は高い。いずれにしても、clone A3全長配列決定の結果、Nitrosomonasであることが分かったので、パイロットプラント内で硝化を担っていることは確かであり、硝化脱窒性能の中でも硝化に対する指標微生物とすることができる。
【0211】
Clone A14は、最近縁種を見ると上位10種でもsulfur−oxidizing bacteriaやmethylobacterなど様々な細菌が挙がっていた。またいずれも92%以下とSimilarityが低く、属名の決定も難しい。図47の系統樹での位置は、同じ枝に入る細菌が全く存在せず、単独となっていることから、新属である可能性もある。よって、近縁種から脱窒能を持つかどうか検討することはできなかった。系統学的に近い位置にsulfur−oxidizing bacteriaやThiorhodovibro等、硫黄に関連した代謝を行っている細菌が多いことから、Clone A14は安水中のチオ硫酸やチオシアン等の分解に関与している可能性が高い。
【0212】
次にClone A28は、最近縁種はThermus/Deinococcus groupのDeinococci(89%)であった。Thermus/Deinococus groupのいくつかの単離株を含めた系統樹(図48)では、Thermus科とDeinococcus科のかたまりのうち、Deinococcus科の方に属することはわかったが、最近縁種であるUnculturedのバクテリアのみしか同じ枝に含まれない為、さらに小さいくくりであるDeinococcus属に属すかどうかはわからなかった。Deinococcus属のかたまりとは、bootstrapが994で分かれているので、新属である可能性もある。Deinococcus科に属する細菌はもともと種類が少なく、既知の脱窒菌は報告されていないが、本プラントの系内では、脱窒に関与している可能性が高い。
【0213】
Clone A19は最近縁種はSphingomonas sp.であり、Similarityが96%と比較的高い。Sphingomonas属のその他の種を含めた系統樹(図49)では、Clone A19はSphingomonas属に属し、さらに種レベルでは、Sphingomonas sp.の仲間に入る細菌であることがわかった。Sphingomonas属はα−Proteobacteriaの中の比較的新しい分類であり、これまで違う属であった細菌がSphingomonas属に再分類されるなど、Sphingomonas属の細菌の数は増えてきている。Sphingomonas属の細菌で脱窒能を持つものは報告例は見当たらなかったが、近縁な属の細菌で脱窒能を持つものが報告されており、脱窒細菌が系統学的に広い範囲に分布していることを考慮すると、Clone A19も本プラントで脱窒に関与している可能性も十分考えられる。
【0214】
Clone B36については、最近縁種がuncultured bacteriumとなっているが、相同性検索の上位を見ると、CFBグループに属する細菌であることが判明した。CFBはCytophaga−Flavobacterium−Bacteroidetesの略であるが、CFBに属する細菌は系統的に多様で、系統樹にでは同じ属の細菌が違う枝に入ってしまうことも良くある。また、様々環境に生息しているのでデータベース中の登録数は多いが、Unculturedつまり単離されていないものが多く、それゆえ大半は機能が調べられていない。CFBに属する既知の細菌を入れて作成した図50の系統樹を見ると、Clone B36はUncultured bacteriumのかたまりに属していた。また近い位置にはCytophagaが多いことから、Cytophaga−Flavobacterium−Bacteroidetesの中では、Cytophagaに近い位置にあることがわかった。Cytophagaに属する細菌で脱窒能が報告されているものが存在することから、Clone B36は脱窒性能の指標となる可能性がある。
【0215】
FISH法による硝化脱窒性能評価の可能性の検討
以上のように、硝化脱窒性能の指標となるような微生物の候補を得ることができた。実際に、この微生物を用いてプラントの性能を評価する場合、方法としてはFISH法の利用が考えられる。つまり、性能の指標となるような微生物に特異的なプローブを用いてサンプルに対してFISHを行い蛍光の割合(標的微生物の割合)によって、性能を評価するという方法である。FISH法以外には、PCR−DGGE法で微生物相をバンドとして可視化し、標的微生物のバンドの濃さで性能を評価する方法も考えられるが、PCR−DGGEを行うにあたってDNA抽出やPCR等の操作に時間がかかり、さらにはどのバンドが標的微生物なのかを常に把握しておく必要がある為、継続的にPCR−DGGE法で解析を行っていない場合は、バンドパターンの解釈が難しく標的微生物のバンドを特定しづらいという欠点がある。それと比較してFISH法は、FISHの操作や蛍光の見分け方に慣れれば、操作は比較的簡単であり短時間で行え、またin situの状態で顕微鏡下で実際の微生物を観察できるので、評価手法としては適切であると考えられる。
そこで、硝化脱窒性能の指標となる可能性のある微生物について、プローブを作成し、プラントの性能と対応させながら、FISH法を用いた定量評価を試みた。
【0216】
方法
プローブの作成
まず、決定した全長塩基配列について、既存の種特異的プローブが有るかどうかprobe base net(http://www.probebase)を利用して調べた。既存のプローブで使えるものが無いものは、以下で述べる操作にしたがってプローブを作成した。
プローブ作成は次の2段階の過程を経て行った。まず、ANGISのBio Manager(http://bn1.angis.org.au/bionav/cgi−bin/wrap.wp/gui/start)のPrimer3プログラムを用いて、プローブの候補を検索し、その後、Michigan State UniversityのRibosomal Database Project II(http://rdp.cme.msu.edu/html/analyses.html )のProbe Matchプログラムで、プローブ自身の自己相補結合(self−complementary)があるかどうかを確認し、無いものを最終的にプローブとした。
【0217】
具体的には、Primer3を起動し、先に得られた16SrDNAの全長塩基配列を入力して行った。その時の検索条件としては、プローブのGC含量が低くなりすぎて変性温度Tdが低くなり、非標的種との区別が難しくならないよう、GC含量を50%以上とした。さらにプローブの長さは、基本的には一般的に用いられている18merとし、18merでターゲットに特異的なプローブの候補が見つからない場合は20merまでの中で候補を探した。Primer3でプローブの候補を検索すると、指定した数の候補が得られるが、それらのスクリーニングは、DDBJの相同性検索プログラムBLAST(http://spiral.genes.nig.ac.ip/homology/blast.shtml)を用いて次のように行った。本研究では、一つの種類の細菌にターゲットを絞ったプローブを作ることが目的のため、プローブの配列が、rRNAのデータベースに登録されている全ての細菌と一致しないものを作成することが理想である。しかしプローブの長さは18〜20bp程度であるので、それが難しい場合は、できるだけ一致または数ミスマッチの配列を持っている細菌が少ないもの、そして完全に一致してしまう細菌がある場合には、それらがプローブを作成するターゲットの細菌と同じ属や科に含まれているものを選んだ。このような過程を経た後に、Ribosomal Database Project IIのProbe Matchプログラムにかけ、自己相補結合が無いかどうかを確認し、最終的なプローブとした。
【0218】
定量評価
基本的な操作は先に説明したプロトコルに準じた。
解析に用いたサンプルはRUN2の立ち上げ時に等量で加えた実機プラントの汚泥(標準活性汚泥法)、さらに2002年4月22日、2002年5月28日の汚泥である。図30、図31のパイロットプラントの運転状況から判断して、立ち上げ期をFISH法により評価する目的でこの3サンプルを選んだ。定量評価は、FISH法を用いて、標的細菌に特異的なプローブ(Cy3標識)と全細菌に対するプローブEUBmix(FITC標識)の2重染色を行い、ターゲットの全細菌に対する割合を求めた。また、FISHの後に、5分間のDAPI染色を行った。
【0219】
FISH画像は、蛍光顕微鏡OlympusBX51を用いて、CCDカメラを通して取得した。定量評価を行う為、各プローブにつき、同視野についてのEUB画像(FITC標識)、ターゲット画像(Cy3標識)、位相差の画像のセットを20セットずつ撮った。また、EUBプローブが全細菌の何%にハイブリダイズしているかを確認する目的で、DAPI染色についても10視野程度取得した。得られた、画像の解析及び定量操作には、画像解析ソフトLeica製Qwin600を使用した。画像解析ソフトによる定量方法の詳細は、先に説明した通りである。
【0220】
結果
既存プローブの有無の確認とプローブ作成
先に決定した全長配列に基づき、既存プローブで使用できるものが無いかどうかを確認した。その結果は、以下の表21に示すとおりである。
【0221】
【表21】
【0222】
clone A3は、アンモニア酸化細菌ということで、既存プローブを検索の結果Nsm156とNso1225の2つのプローブの配列と完全に相補的であった。一般的に、Nsm156はNitrosomonasの一部をターゲットとするプローブであり、Nso1225はアンモニア酸化細菌を広く網羅するプローブである。clone A3のみのアンモニア酸化細菌をFISHで定量評価することが目的であるため、ここでは、よりターゲットが狭いプローブであるNsm156を使う方が良いと考えられる。しかし、系内アンモニア酸化細菌はclone A3の一種類のみしか検出されておらず、実際に一種類しか居ないことも考えられるので、補足としてNso1225プローブによる定量も行うことにした。
【0223】
またclone A19は、Sphingomonasに属する細菌であり、既存プローブの検索結果において、SPH120プローブと完全に相補的であった。SPH120プローブは、Sphingomonas属を標的としたプローブであるが、数株のZymomonas属(系統的にSphingomonas属のクラスターの中に位置している)の細菌も含んでいるプローブである。もし、系内にclone A19以外の他のSphingomonas属の細菌が存在した場合、SPH120プローブでclone A19以外の細菌もひっかかってしまうことになるが、先の実施例においてその他のSphingomonas属の細菌が検出されていない結果を踏まえて、このSPH120プローブをclone A19の定量評価に用いることにした。
【0224】
clone B36は、CFBの細菌であり、既存プローブ検索を行ったところ、CF319aが挙げられた。しかし、CF319aプローブはグループレベルでCFBに特異的なプローブであり、clone B36以外にCFBが存在する本プラントの汚泥には適用出来ない。そこで、clone B36については、出来る限り種特異的なプローブを作成することを試みた。また、cloneA14とclone A28については、使用できる既存プローブが無かった為、それぞれに特異的なプローブを作成した。
【0225】
属レベルのプローブを用いたFISH法による定量評価
表20に示したように、各細菌を種または属レベルで検出可能な既存のFISHプローブのあった、clone A3とclone A19について定量評価を行った。clone A3は硝化性能指標微生物、clone A19は脱窒性能指標微生物の候補であり、それぞれを分けて考察する。定量評価に用いたサンプルは、方法のところで述べたように、性能と比較して定量が行えるようにパイロットプラントRUN2の立ち上げ期の3点(種汚泥(実機)、2002年4月22日、2002年5月28日)を選んだ。
【0226】
clone A3(Nitrosomonas近縁細菌)による硝化性能評価の可能性
Nitrosomonasの一部をターゲットとしているNsm156を用いて定量した結果を図51に、そしてアンモニア酸化細菌全体をターゲットとするNso1225を用いて定量した結果を図52に示す。また、同立ち上げ期を解析したPCR−DGGEにおいてclone A3と同じ細菌であるバンドのバンド強度変化も合わせて図53に示す。
まず、図51のNsm156プローブを使用した結果であるが、プラント立ち上げに伴い硝化脱窒が良くなるに連れて(図31)、Nsm156のプローブが付く細菌つまりNitrosomonas(clone A3)が増加していることがわかった。2002年4月22日と2002年5月28日は標準偏差を示すバーが重なっており、顕著な差は見られないが、標準活性汚泥法で処理している実機の汚泥とは明らかな差が見られた。つまり、Nitrosomonas(clone A3)は硝化脱窒プロセスの性能が良くなるに連れて増加していることがわかる。このことから、Nitrosomonasは硝化脱窒性能の指標のひとつとなり得ることが示唆された。
【0227】
また、図52のNso1225プローブを使用した結果であるが、Nsm156プローブと同じようにプラン立ち上げに伴ってアンモニア酸化細菌が増加するという結果を得ることが出来た。こちらも2002年4月22日と2002年5月28日は標準偏差のバーが重なってしまっていてこの差は不確かであるが、標準活性汚泥法で処理している実機の汚泥とは明らかな差が見られた。Nsm156の結果と比較すると2002年4月22日、2002年5月28日ともに5割程度増えた結果となっており、これはNitrosomonas以外にも系内にアンモニア酸化細菌が存在するかもしれないことを示唆している。しかし、標準偏差のバーが示すように視野ごとに値のばらつきも大きく、clone A3のNitrosomonas以外にアンモニア酸化細菌が存在するかどうかについては、はっきりとはわからない。
【0228】
いずれにしてもこれらの結果から、両方のプローブで、プラントの性能と対応付けたFISHの結果を得ることが出来た。全細菌に対する割合が数%であるため、誤差が大きく効いてくる可能性があり、この少ない割合での増減の議論をすることに注意する必要はあるが、Nitrosomonasは一般に硝化を担っている細菌であり、パイロットプラント内においても硝化性能の指標生物としてよいと考えられる。また、Nsm156とNso1225プローブのどちらを硝化脱窒性能評価に使用すればよいかということについてであるが、clone A3の挙動で評価する場合には、狭い範囲を標的とするNsm156を使用する方が確実である。ただし、アンモニア酸化細菌は硝化脱窒処理プロセスで硝化脱窒が上手く機能するには必須の微生物であり、もしclone A3以外のアンモニア酸化細菌が存在する場合、その細菌も硝化性能の指標生物となる。よって、硝化の評価を行う際には、clone A3も確実に捉えさらに他のアンモニア酸化細菌もターゲットとしているNso1225を使用してもよいと考えられる。
【0229】
clone A19(Sphingomonas近縁細菌)による脱窒性能評価の可能性
主としてSphingomonas属をターゲットとして設計された既存のSPH120プローブを用いて定量した結果を図54に示す。また、同立ち上げ期を解析したPCR−DGGEのバンドの中でclone A19と同じ細菌であるバンドのバンド強度変化も合わせて図55に示す。
【0230】
PCR−DGGE clone A19と同じ細菌であるバンドは、種汚泥ではほとんど存在せず硝化脱窒性能が上昇するに連れて、バンド強度が目立って強くなっていた(図55)。FISH法を用いた解析でも、図54のように、SPH120がターゲットとする細菌つまりSphingomonasに属する細菌が増加しているという結果を得ることが出来た。2002年4月22日と2002年5月28日では、標準偏差のバーが重なっており、どちらが多いかはっきりとは言えず、脱窒率(窒素除去率)は、2002年4月22日は0.1程度、2002年5月28日では0.3程度と差がある(図31)が、FISHによる結果ではその差を議論することはできなかった。しかし、標準活性汚泥法で処理している実機から採取した種汚泥とのSphingomonasの割合の差は明らかであった。以上のことから、FISHでの結果は脱窒性能と対応するものであるかどうか判断することは難しいが、DGGEバンドパターンを再現することは出来ており、さらに半定量的に硝化脱窒プロセスの立ち上げ期に増加したことを評価できたことから、脱窒性能の指標の1つとなることが期待できる結果であると考えられる。
【0231】
その他、既存のプローブで適用可能なものが無かったclone A14、clone A28、clone B36については、プローブ作成プログラムを利用して各3つずつのプローブを作成することに成功した。clone A14、clone A28、clone B36は、硝化脱窒プロセスで馴養することで増加している為、脱窒をすることが出来る細菌であることが予想され、パイロットプラントの脱窒性能の指標となる可能性が高い。
【0232】
まとめ
・PCR−DGGEの結果で、立上げ期(RUN2)に目立って増加した微生物が10種程度存在した。これらの微生物は、硝化脱窒処理プロセスに馴致されたことで増加していると考えられ、硝化や脱窒に関与している可能性が高く、硝化脱窒の指標微生物になり得る。
・脱窒性能の指標微生物の候補について、近縁種を決定したところ、CFBに近縁な細菌が3種、Comamonadaceaeに近縁な細菌が2種、また、Nitorosomonas属に近縁な細菌sufur−oxidizing bacteriumに近縁な細菌、Thermus/Deinococcus groupに近縁な細菌、Sphingomonas属に近縁な細菌、低GCグラム陽性細菌のBacillasに近縁な細菌が1種ずつであった。
・特に、sufur−oxidizing bacteriumに近縁な細菌、Thermus/Deinococcus groupに近縁な細菌は系内で優占している可能性が高いと結論付けた細菌であるので、脱窒性能の指標とするには、最適であると考えられる。
【0233】
・硝化脱窒性能の指標微生物の候補である10種の微生物のうち、5種について16SrDNA全長を解読し系統解析を行うことができた。
・硝化性能の指標微生物の候補であるNitrosomas属の細菌をFISHを利用して定量した結果、Nsm156、Nso1225の両方のプローブで硝化脱窒プロセスの立上げ期に増加するという定量結果を得ることができた。Nitrosomas属の細菌は、硝化に関与することが知られている為、パイロットプラントの硝化性能はこのNsm156、Nso1225プローブを用いて評価できると考えられる。
【0234】
・脱窒性能の指標微生物の候補であるSphingomonas属の細菌について、SPH120プローブでFISHを利用して定量した結果、硝化脱窒プロセスの立上げ期に増加するという定量結果を得ることができた。脱窒性能の評価にSPH120プローブが使用できるかどうかは、Sphingomonas属の細菌の機能が明らかでない為わからないが、パイロットプラント脱窒性能の指標となる可能性は高い。
・既存プローブが存在しなかったsufur−oxidizing bacteriumに近縁な細菌、Thermus/Deinococcus groupに近縁な細菌、CFB;Cytophagaに近縁な細菌に対するFISHプローブを作成することができた。
【0235】
【発明の効果】
本発明は、安水処理プロセスの活性汚泥内に存在する微生物群集を把握し、COD成分となるフェノール類などの有機物や、チオシアン、チオ硫酸などの硫黄化合物の除去および硝化脱窒に関与する有用な微生物を発見した。さらに、これにより、安水処理性能を良好に維持するための評価方法及び安水処理方法を提供することを可能にした。
【0236】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】配列番号1〜8、16SrDNA 357f−518r領域を示す図である。
【図2】配列番号12〜17、16SrDNA 357f−518r領域を示す図である。
【図3】配列番号18〜30、16SrDNA 357f−518r領域を示す図である。
【図4】配列番号31〜34、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図5】配列番号35〜38、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図6】配列番号39〜42、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図7】配列番号43〜46、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図8】配列番号47〜50、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図9】配列番号51〜54、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図10】配列番号55〜58、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図11】配列番号59〜62、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図12】配列番号63〜66、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図13】配列番号67〜69、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図14】配列番号70〜73、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図15】配列番号74〜77、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図16】配列番号78〜81、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図17】配列番号82〜84、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図18】配列番号85〜88、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図19】配列番号89、16SrDNA 27f−1518rを示す図である。
【図20】配列番号90、16SrDNA 27f−1518rを示す図である。
【図21】配列番号91、16SrDNA 27f−1518rを示す図である。
【図22】配列番号92、16SrDNA 27f−1518rを示す図である。
【図23】配列番号93、16SrDNA 27f−1492rを示す図である。
【図24】図1〜図23中に用いたヌクレオチド略語表を示す。
【図25】PCR−DGGE法の原理を示す図である。
【図26】rRNAを標的としてFISH法の原理を示す図である。
【図27】安水処理パイロットプラントの構成を示す図である。
【図28】RUN1、2における基質の処理状況を示す図である。
【図29】RUN1、2における脱窒槽と硝化槽のMLVSSの変化を示す図である。
【図30】RUN1、2における含有窒素分の処理状況を示す図である。
【図31】RUN1、2における窒素除去率と硝化率の変化を示す図である。
【図32】硝化槽汚泥と脱窒槽汚泥のバンドパターンの比較(左図)、及び泳動時間の検討(右図)を示す図である。
【図33】RUN1とRUN2の微生物群集解析結果を示す図である。
【図34】RUN1の解析結果と切り出したバンドを示す図である。
【図35】RUN2の解析結果と切り出したバンドを示す図である。
【図36】系統樹を示す図である。
【図37】Clone library A(27f−1518r)を示す図である。
【図38】Clone library B(27f−1492r)を示す図である。
【図39】Clone library Aと Clone library Bのまとめを示す図である。
【図40】Clone library A、Bで得られたクローンとその最近縁種を含めた系統樹を示す図である。
【図41】FISHによる微生物グループレベルでの定量結果を示す図である。
【図42】RUN2のPCR−DGGE法による解析結果を示す図である。
【図43】実線矢印(図42)で示したバンドの経時的なバンド強度の変化を示す図である。
【図44】実線矢印(図42)で示したバンドの経時的なバンド強度の変化を示す図である。
【図45】16SrDNA配列決定における使用プライマーの位置を示す図である。
【図46】系統樹(clone A3)を示す図である。
【図47】系統樹(clone A14)を示す図である。
【図48】系統樹(clone A28)を示す図である。
【図49】系統樹(clone A19)を示す図である。
【図50】系統樹(clone B36)を示す図である。
【図51】Nitrosomas定量結果(Nsm156probe)を示す図である。
【図52】アンモニア酸化細菌定量結果(Nso1225probe)を示す図である。
【図53】clone A3と同じ細菌のPCR−DGGEでのバンド強度の変化を示す図である。
【図54】Sphigomonasの定量評価(SPH120probe)を示す図である。
【図55】clone A19と同じ細菌のPCR−DGGEでのバンドの強度の変化を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、安水処理プラントの活性汚泥中に存在する微生物、及びその16SrDNA配列又はその断片に関する。本発明は、上記微生物又はその16SrDNA配列を用いて、FISH法により上記安水処理プロセスの硝化又は脱窒性能を評価する方法並びに上記微生物を含む活性汚泥を使用する安水の処理方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
製鉄所においてコークス炉から発生する安水にはフェノール類、チオシアン、チオ硫酸などの環境上好ましくない成分や、高濃度のアンモニアが含まれている。現在の安水処理システムでは、COD成分となるフェノール類などの有機物や、チオシアン、チオ硫酸などの硫黄化合物が活性汚泥法で除去されている。さらに、この活性汚泥法のシステムに硝化脱窒性能を付加させることで、安水中の有機物と同時にアンモニアも同時に除去する方法が提案されており、試験的にパイロットプラント(安水処理プロセス)を運転し、有機物除去と同時にアンモニアを除去することに成功している。しかしながら、安水処理に用いる活性汚泥で具体的にどのような微生物が有機物やアンモニアの除去に関与しているのかは明らかではなく、微生物群集を解析した研究例はない。
【0003】
一般に、活性汚泥中の微生物の培養可能性(culturability)は低いので、安水活性汚泥中の微生物群集構造を把握するために、パイロットプラント内の微生物について、16SrDNAをターゲットとしたPCR−DGGE法によるモニタリング、クローンライブラリーの作成を行い、そして微生物群集を定量化するため、FISHを用いた解析を行う必要がある。
【0004】
PCR−DGGE法は、以下の非特許文献1、非特許文献2等に記載されている。
【0005】
FISH法は、以下の非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5等に記載されている。
【非特許文献1】
栗栖ら、土木学会論文集No.636/VII −13,23−33,1999.11
【非特許文献2】
Muyzer, G., Waal, E.C., and Uitterlinden, A.G. (1993) Profilin g of Complex Microbial Populations by Denaturing Gradient Gel Electrophoresis Analysis of Polymerase Chain Reaction−Amplifie d Genes Coding for 16SrRNA. Appl.
【非特許文献3】
Amann, R.I., Ludwig, W., and Schleifer, K−H. (1995). Phylogene tic identification and in situ detection of individual microbi al cells without cultivation. Microbiol. Rev., 59, 143−169.
【非特許文献4】
Manz, W., Wagner, M., Amann, R.I., and Schleifer, K.−H. (1994) . In situ characterization of the microbial consortia active i n two wastewater treatment plants. Water Res., 28, 1715−1723.
【非特許文献5】
秋山ら、水環境学会誌 第23巻 第5号 271−278 2000
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような背景から、本発明者らは、安水処理プロセスの活性汚泥内に存在する微生物群集を把握し、COD成分となるフェノール類などの有機物や、チオシアン、チオ硫酸などの硫黄化合物の除去および硝化脱窒に関与する有用な微生物を発見し、安水処理性能を良好に維持するための評価方法及び安水処理方法を提供する必要性がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の1の態様においては、配列番号1又は18に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0008】
本発明の他の態様においては、配列番号2又は19に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteriodetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0009】
本発明の他の態様においては、配列番号3に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Alteromonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0010】
本発明の他の態様においては、配列番号20に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteriodetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0011】
本発明の他の態様においては、配列番号4又は22に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−proteobacteria);Comamonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0012】
本発明の他の態様においては、配列番号5又は21に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−proteobacteria);Ectothiorhodospiraceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0013】
本発明の他の態様においては、配列番号6に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−proteobacteria);Caulobacteraceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0014】
本発明の他の態様においては、配列番号7に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci;Deinococcaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0015】
本発明の他の態様においては、配列番号8、23又は26に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci;Deinococci;Thermaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0016】
本発明の他の態様においては、配列番号24に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するActinobacteria(high GC Gram−positive)近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0017】
本発明の他の態様においては、配列番号9又は25に示す配列を有するCOD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0018】
本発明の他の態様においては、配列番号10に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Burkholderia group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0019】
本発明の他の態様においては、配列番号11に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Alcaligenaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0020】
本発明の他の態様においては、配列番号12又は27に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteriodetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0021】
本発明の他の態様においては、配列番号13に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Rhodocyclus group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0022】
本発明の他の態様においては、配列番号14又は28に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するActinobacteria(high GC Gram−positive)近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0023】
本発明の他の態様においては、配列番号15又は29に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0024】
本発明の他の態様においては、配列番号16又は30に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するFirmicutes;Bacillales(low GC Gram−positive近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0025】
本発明の他の態様においては、配列番号17に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するδ−プロテオバクテリア(δ−Proteobacteria);Desulfuromonas group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片が提供される。
【0026】
本発明の他の態様においては、配列番号43、54又は67に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Rhodobacteriaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0027】
本発明の他の態様においては、配列番号45に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Rhodobacteriaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0028】
本発明の他の態様においては、配列番号47に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Shingomonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0029】
本発明の他の態様においては、配列番号40、49、50、58、60、69、77、79又は87に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Alcaligenaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0030】
本発明の他の態様においては、配列番号33に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0031】
本発明の他の態様においては、配列番号37、41又は62に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Burkholderia group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0032】
本発明の他の態様においては、配列番号42に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Rhodocyclus group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0033】
本発明の他の態様においては、配列番号31、44、48又は78に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Chromatiaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0034】
本発明の他の態様においては、配列番号32又は86に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Alteromonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0035】
本発明の他の態様においては、配列番号63又は66に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Chromatiaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0036】
本発明の他の態様においては、配列番号73に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Thiothrix group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0037】
本発明の他の態様においては、配列番号76に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0038】
本発明の他の態様においては、配列番号71に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0039】
本発明の他の態様においては、配列番号80に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0040】
本発明の他の態様においては、配列番号85に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0041】
本発明の他の態様においては、配列番号82に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0042】
本発明の他の態様においては、配列番号74に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0043】
本発明の他の態様においては、配列番号83に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0044】
本発明の他の態様においては、配列番号88に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0045】
本発明の他の態様においては、配列番号34、35、53、55、59、61、64、68又は72に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0046】
本発明の他の態様においては、配列番号36、38、39、52、56、57、70又は81に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0047】
本発明の他の態様においては、配列番号46に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0048】
本発明の他の態様においては、配列番号51に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するPlanctomycetes;Planctomycetales近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0049】
本発明の他の態様においては、配列番号75又は84に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するActinobacteria(high GC Gram−positive)近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0050】
本発明の他の態様においては、配列番号65に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在する未分類細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片が提供される。
【0051】
本発明の他の態様においては、配列番号89に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria;Nitrosomonas近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNAが提供される。
【0052】
本発明の他の態様においては、配列番号90に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);sulfur−oxidizing bacteria近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNAが提供される。
【0053】
本発明の他の態様においては、配列番号91に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNAが提供される。
【0054】
本発明の他の態様においては、配列番号92に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNAが提供される。
【0055】
本発明の他の態様においては、配列番号93に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1492r領域全長DNAが提供される。
【0056】
本発明のさらに他の態様においては、その16SrDNA中に上記のいずれかのDNA断片又は全長DNAを含み、かつ、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在する微生物が提供される。
【0057】
本発明の他の態様においては、その16SrDNA中に配列番号89に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria;Nitrosomonas近縁細菌が提供される。
【0058】
本発明の他の態様においては、その16SrDNA中に配列番号90に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);sulfur−oxidizing bacteria近縁細菌が提供される。
【0059】
本発明の他の態様においては、その16SrDNA中に配列番号91に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌が提供される。
【0060】
本発明の他の態様においては、その16SrDNA中に配列番号92に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌が提供される。
【0061】
本発明の他の態様においては、その16SrDNA中に配列番号93に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌が提供される。
【0062】
本発明のさらに他の態様においては、上記のいずれかに記載の微生物又は細菌を硝化又は脱窒指標微生物として用いて、FISH法により、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プロセスの硝化又は脱窒性能を評価する方法が提供される。
【0063】
本発明のさらに他の態様においては、β−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria;Nitrosomonas近縁細菌、γ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);sulfur−oxidizing bacteria近縁細菌、Thermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌、α−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌、及び/又はCFB;Bacteroidetes近縁細菌を、硝化又は脱窒指標微生物として用いて、FISH法により、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プロセスの硝化又は脱窒性能を評価する方法が提供される。
【0064】
本発明のさらに他の態様においては、上記のいずれかに記載の微生物又は細菌を含む、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理装置の活性汚泥が提供される。
【0065】
本発明のさらに他の態様においては、上記のいずれかに記載の微生物又は細菌を含む、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理装置の活性汚泥が提供される。
【0066】
本発明のさらに他の態様においては、上記の活性汚泥を使用する安水の処理方法が提供される。
【0067】
【発明の実施の形態】
以下、実施例において詳細に説明するが、パイロットプラントから採取した汚泥に対して、PCR−DGGE法、シーケンシング、クローニング法、FISH法などを用いた解析を行い得られた結果を考察した結果、以下のことが分かった。
【0068】
・安水処理プロセス内に存在する微生物群集は、PCR−DGGEでのバンド数が少ないことから、下水処理の微生物群集と比較して種数が少ない。アンモニアが高濃度に含まれる系の中で、フェノール類やチオシアン、チオ硫酸等の硫黄化合物の特殊な基質を利用して生存できる微生物は限られることが推測できる。・性能安定時には、安水処理プロセス内の微生物相の変化はほとんどなく、PCR−DGGEで目立つバンドはほぼ同じである。
・安水処理プロセス内の微生物は、系統学的に様々なグループに属している(α−Proteobacteria、β−Proteobacteria、γ−Proteobacteria、δ−Proteobacteria、CFB、Thermus/Deinococcus group、高GCグラム陽性細菌、低GCグラム陽性細菌、Planctomycetes)。
【0069】
・様々なグループが存在する中で、半定量的に活性を見ることが出来るFISH法の結果によると、γ−Proteobacteriaに属する細菌が多い。作成したクローンライブラリーの結果からは、γ−Proteobacteria、そして活性汚泥では報告例がほとんどないThermus/Deinococcus groupに近縁な細菌が30%ずつと大部分を占めていることが分かる。
・個々の細菌を見ると、安水硝化脱窒処理プロセス内の微生物の中で、Chromaticeae Thiorhodovibrioに近縁な細菌と、Thermus/Deinococcus group Deinococciに近縁な細菌が優占的に存在している可能性が高く、注目に値する細菌であると考えられる。
【0070】
また、本発明者らは、安水処理プロセスのパイロットプラント内の微生物群集構造についてPCR−DGGE法、クローニング法によるクローンライブラリーの作成、FISH法の3つの手法を用いて解析し総合的に判断することを試みた。PCR−DGGE法は、微生物群集の系時的な変化を追うのに適しているが、PCRバイアスがかかってしまう方法であり、また近縁種決定においては200bp程度である為データの信頼性にかける部分が有る。クローンライブラリー作成については、DGGEよりも長い塩基配列の解読が可能であり詳細な系統解析ができるが、PCRバイアスがかかってしまい量の議論はできない。また、FISH法は、PCR等のバイアスが大きくかかる操作を経ないため半定量的な解析を行うことができるが、存在種が既知でプローブが無い限り、グループレベルの考察にとどまってしまう。このように、3つの方法はそれぞれ一長一短であると言える。しかし、3つの方法を組み合わせることで、ある程度バイアスを排除しそれぞれの短所を補って議論することが可能であると考えられる。このことを証明することができるような結果を得ることができた。その例は以下の通りである。
・クローンライブラリーを作成したことにより、DGGEのバンド切り出しで近縁種を決定したのよりも多くの種が存在することがわかった。
・クローンライブラリー作成の際に、全長産物のクローンをとることで興味を持った細菌について全長解塩基配列を決定し、詳細な系統解析を行うことができた。
【0071】
・クローンライブラリー作成で使用するプライマーを変えることによって得られるクローンの全体像が大分変わり、PCRバイアスがかかっている可能性が高いことが示唆された。
・FISH法により、DGGEやクローンではあまり得られなかった、高GCグラム陽性細菌に属する細菌が多く存在することがわかった。
【0072】
そこで、3つの手法で得られた結果を総合的に判断すると、安水処理プロセスのパイロットプラントに存在する微生物群集構造は次のような全体像が考えられる。グループレベルでは、大きな割合を占めているものとしてγ−Proteobacteria、Thermus/Deinococcus group、β−Proteobacteria、高GCグラム陽性細菌が挙げられ、それぞれ2〜3割程度を占めている。その他にCFB、α−Proteobacteria、δ−Proteobacteria、低GCグラム陽性細菌の細菌がいる。これらの各グループの中に数種ずつの微生物種が存在する。微生物種について見ると、γ−ProteobacteriaのChromaticeae Thiorhodovibrioに近縁な細菌と、Thermus/Deinococcus group Deinococciに近縁な細菌が優占的に存在している系であり、硝化は、Nitrosomas属に属する細菌が行っている。
【0073】
以下、実施例に用いた実験原理手順を説明する。
【0074】
サンプリング
プラントから採取した汚泥を、汚泥:エタノール=9:1で混ぜてしばらく4℃で保存した後、DNA抽出用とFISH用の2種類に分けて保存した。DNA抽出用のサンプリングは、採取した汚泥をバッファーで洗い、最終的にペレット状にして−20℃で保存するという操作である。FISH用のサンプリングは、FISH法がrDNAではなくin situの状態でrRNAをターゲットとする手法である為、細胞をできるだけそのままの状態で保存するように、液体窒素で急速に凍らして保存した。
【0075】
1)DNA抽出用サンプリング
1.2mlチューブに汚泥を1ml取ったものを数個用意し、遠心分離にかけ上澄みを取り除く。
2.ペレットをTH(pH8.0)バッファーで懸濁し、遠心分離で上澄みを取り除く。(洗浄操作)
3.−20℃で保存する。
【0076】
2)FISH用サンプリング
1.−80℃で保存可能なクライオチューブに、汚泥を2ml取ったものを1サンプルにつき数個用意する。
2.液体窒素中に保存する。
【0077】
DNA抽出
Fast DNA SPIN Kit for soil(BIO101)
Fast DNA SPIN Kit for soil(BIO101)は、500mgまでの土壌や他の環境サンプルから30分以内で効率的にDNAを抽出出来るKitである。ホモジナイズする装置が必要ではあるが、抽出作業時間が短い、フェノールやクロロホルムなどの有機溶媒が不要、また比較的抽出しにくいとされてきたグラム陽性細菌なども抽出可能、等の利点がある。
【0078】
Fast DNA SPIN Kit for soilの操作は大きく分けて2つのステップからなる。
1)細胞の破砕・DNAの可溶化・タンパク質の可溶化
サンプルを、ホモジナイズとタンパク質の可溶化が可能なバッファーに溶解させ、それをセラミックとシリカからなるビーズと混ぜることにより、細胞を破砕しDNAを可溶化する。この段階で、ほとんどRNAの混入のないDNAを得ることができる。
【0079】
2)DNAの精製と濃縮
可溶化したDNAのみをシリカ製のBinding Matrixに吸着させることで、混在する阻害物質を除去する。その後、Binding Matrixに吸着したDNAを溶出させて、精製DNAを得ることができる。
【0080】
以下、手順を説明する。
1.サンプリングして保存しておいたペレットに、サンプルをホモジナイズしタンパク質を可溶化することのできるSodium Phosphate BufferとMT Bufferを加え、ペレットを懸濁する。
2.ビーズの入ったLysing Matrix E tubeに1を移す。
3.2をFast Perpに設置し、Speed5.0、30secで2回処理を行い、細胞を破砕し溶解させる。
4.上澄みを新しいチューブに移し、PPSを加え、手で攪拌する。
5.遠心分離にかけタンパク質を沈殿させ、上澄みを新しいチューブに移すことでタンパク質を除去する。
【0081】
6.5で移した上澄みと等量のBinding Matrixを加え、手で反転浸透した後数分静置してBinding MatrixにDNAを吸着沈殿させる。
7.上澄みを除去した後、残った液でBinding Matrix−DNAを懸濁し、それをSpin Filterに移す。
8.7を遠心分離にかけ、その後、SEWS−Mを加えてFilter上のBinding Matrix−DNAを洗浄濃縮する。
9.Filter上のBinding Matrix−DNAにDESを加えて、遠心分離によりDNAを溶出させ、PCRグレードのDNAを回収する。DNAは−20℃で保存可能である。
【0082】
PCR
以下の実施においては、解析対象サンプル中に存在する微生物全体を追うため、16SrDNAつまり真正細菌をターゲットとしたPCRを行った。16SrDNAの塩基配列には、多様性に富んだ部分(V1〜V9領域)と高度に保存されている部分があるため、微生物の系統解析には最もよく利用されており、データベースには多くの情報がある。本研究では、V3領域を含むプライマー(357f−518r)や、357−907r、そして全長プライマーなどを目的に応じて使い分けた。PCRの条件については、使用プライマーや目的により異なる為、その都度示す。
【0083】
16SrDNAをターゲットとしたPCR法について、大まかに実験の流れを説明する。
1.DNA抽出後、吸光光度計を用いてDNAの濃度を測定する。
2.テンプレートとするDNAを50ng/μlに調製する。
3.以下の表1に示すようにPCR mixtureを調製する。
【0084】
【表1】
【0085】
使用するprimerは以下の表2に示すように目的により選択する。
【0086】
【表2】
【0087】
4.サーマルサイクラーT3 Thermocycler(Biometra)またはGeneAmp9600(PE Biosystems)で、目的に応じたプログラム条件でPCRを行う。
5.1質量%アガロースゲル(アガロースを1×TAEに溶かし1質量%としたもの)を用いて100Vで15分間電気泳動を行い、その後15分間のエチジウムブロマイド染色を行い、UVトランスイルミネーター(東洋紡)でPCR産物が得られたかどうか確認をする。
【0088】
DGGE
DGGEはdenaturing gradient gel electrophoresis(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法)の略であり、元来染色体DNAの点変異検出に用いられた技術である。DGGE法は、PCRと組み合わせることで、微量のサンプルから環境中に存在する微生物の遺伝子を培養過程を経ずに検出することができるということで、微生物生態分野において急速に普及した。DGGE法は、培養できない微生物の遺伝子でも検出できるという点ではクローニングと似ているが、バンドとして可視化出来るため、環境中にどれくらいの種類の微生物が存在するのかを容易に判断することができるという利点をもっている。
【0089】
DGGEは、DNA変性剤(尿素とホルムアルデヒド)の濃度勾配をつけたポリアクリルアミドゲル中でDNA電気泳動を行うことにより、長さのそろった複数種の2本鎖DNA(例えば、PCR産物)を、塩基配列の違いにより分離できる方法である。図25にその原理を示す。
【0090】
GCクランプ(GCに富む配列)付きのプライマーセットを用いて、PCRで増幅した2本鎖DNAを変性剤の濃度勾配をつけたポリアクリルアミドゲルで電気泳動すると、DNA変性剤の濃度上昇とともに2本鎖DNA間の水素結合が切断され、二重らせん構造から1本鎖DNAに変性する。しかし、GCクランプ部分は結合力が強いため、DNAは3方向に伸びた形になる。このように変性したDNAは、ゲルを移動する速度が著しく小さくなるため、ある場所に集まり、バンドを形成する。配列の異なる複数の2本鎖(異なる微生物)のDNAはA−T、G−C間の水素結合の数および配列の違いにより、異なるDNA変性剤濃度で解離するため、異なる位置にバンドが形成され、その結果、微生物を種類ごとに分離することができる。このようにして、サンプルごとにバンドプロファイルが得られ、そのパターンにより群集を評価することができるということになる。
【0091】
以下、手順を説明する。
【0092】
1)ポリアクリルアミドゲルの作成
1.変性剤について低濃度ゲル溶液、高濃度ゲル溶液、さらに0質量%のゲル溶液を調製する。ポリアクリルアミド濃度は8質量%とする。ゲルの組成を以下の表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
2.1をそれぞれ脱気したものについて、低濃度・高濃度ゲル溶液を14mlずつ用意する。
3.用意した高濃度ゲルにDyeを加え、低濃度高濃度のそれぞれに架橋剤である0.5質量%APSと0.05質量%TEMEDを加える。
4.変性剤の濃度勾配をつけられる装置を用いてゲルキャスティングを行う。
5.12時間放置することで重合を促進させる。
【0095】
2)電気泳動
DGGEの泳動装置には、D code system(Bio−Rad)を使用した。
1.サンプルを用意する。(16SrDNA解析の場合は、GC付きのプライマーである357fGCと518rで増幅したPCR産物)。
2.サンプル20μlと6×Dye4μlを混ぜ、調製する。
3.1×TAE7Lを60℃まで加温したチャンバーにゲルをセットし、サンプルをアプライする。
4.130Vで5〜6時間、電気泳動を行う。
【0096】
3)画像取得と解析
画像取得とその解析はFluoroImager595(MolecularDynamics)Scanner ControlとImage Q want、FragmeNTを使用し行った。
1.泳動し終わったゲルを1万倍に希釈したVistra Greenで15分間染色する。
2.余分な染色液を取り除き、蛍光イメージアナライザーFluoroImager595(Molecular Dynamics)のScanner Controlを用いて、画像解析ソフトImage Q wantで画像を取り込む。
3.塩基配列決定の為、バンドを切り出す必要のある場合はバンドを切り出す。
4.バンド強度をもとめる等の解析をする場合は、画像解析ソフトFragmeNTを利用して付属のマニュアルに従い解析を行う。
【0097】
シーケンシング
以下の実施例において、SQ−5500とABI310の2台のオートシーケンサーを使用した。SQ−5500はゲルスラブタイプの電気泳動でDye Primer法を採用しており、またABI310はキャピラリー電気泳動でDye Terminator法を採用している。両者の方法について、実験の流れを示す。
1)オートシーケンサーSQ−5500(日立製作所)
1.プロトコルに従いポリアクリルアミドゲルを作成する。ゲルの組成を以下の表4に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
2.Vistra sequencing kit(Amasham−Pharmashia)を用い、そのプロトコルに従ってシーケンシング反応のmixtureを調製する。
3.T3 Thermocycler(Biometra)またはGeneAmp9600(PE Biosystems)を用いて、シーケンシング反応を行う。シーケンシング反応のプログラムは、増幅部位の長さに関わらず、<95℃5min−〔95℃:30sec−60℃:30sec〕×25−4℃>を使用する。
【0100】
4.HITACHI SQ−5500で1時間予備泳動したゲルに、3のサンプルをアプライする。
5.適当な時間、電気泳動を行う。(泳動時間は解読塩基長により異なり、n時間で解読できる塩基長は(n−1)×100である。)
6.forward鎖とreverse鎖のassembleを行い、必要に応じて修正し塩基配列を決定する。
【0101】
2)オートシーケンサーABI PRISM Genetic Analyzer 310(Applied Biosystems)
1.Microcon(Millipore)を用いてシーケンスを読みたいPCR産物から過剰プライマーやdNTPを除去する。
2.Bigdye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems)を用いて、そのプロトコルに従い目的のプライマーでシーケンシング反応を行う。PCR条件は<96℃:30sec−〔96℃:10sec−50℃:5sec−60℃:4min〕×25−4℃>を使用する。
【0102】
3.Centrisep スピンカラム(Applied Biosystems)で、過剰のDye Terminatorを除去する。
4.本体のセットアップを行う。
5.3で用意したサンプルをマニュアルに従い処理を行い、ABI PRISM 310 Collectionでシーケンスを解読する。
7.Sequence Anapysisでforward鎖とreverse鎖のassembleを行い、必要に応じて修正し塩基配列を決定する。
【0103】
クローニング
複合微生物系で、ある遺伝子を標的としたPCRを行いそのPCR産物をテンプレートとしてクローニングを行うと、系の中に存在する様々な微生物がある確率で単離した状態で得られ、さらにクローンライブラリーを作成することで、存在微生物の全体像を知ることができる。安水を処理している硝化脱窒型活性汚泥法中の微生物群集解析で、16SrDNAのprimerで得たPCR産物からクローンライブラリーを作成し、系統樹を書くことで系の中の微生物群集について考察することができる。
【0104】
クローニングは、大きく分けて次の2段階の反応からなる。
ライゲーション
ライゲーションとは、プラスミドベクターにインサート(特定の遺伝子産物(PCR産物))を組み込む操作である。クローニングに用いられるプラスミドベクターは、インサートを組み込む必要があるため、制限酵素で切断されるクローニングサイトをもつ必要がある。また、最終的にプラスミドを大腸菌に感染させて、大腸菌を増やすことでプラスミドに組み込まれたPCR産物を増やすことをするので、プラスミドベクターは大腸菌に認識される複製開始点を持ち、さらにプラスミドを持つ大腸菌を選択的に増殖させるために薬剤耐性遺伝子を持つ必要がある。
プラスミドベクターの調製は自分でも行うことはできるが、上記のように調製済みのベクターが市販されている。
【0105】
ライゲーションの際には、PCR産物の末端の修飾方法やベクター/インサート比に注意が必要である。末端の修飾方法にはいくつかあるが、比較的よく行われているのは、PCRでのDNA合成の際に付加されるデオキシアデノシン(dA)を利用したTAクローニングという方法である。また、ベクター/インサート比については、効率よくライゲーションが行われるように通常は1/1〜1/10程度にする必要がある。
【0106】
トランスフォーメーション(形質転換)
トランスフォーメーションとは、ライゲーションを行ったプラスミドを、DNAの取り込む能力のある大腸菌のコンピテント細胞に感染させる操作である。トランスフォーメーションした細胞を薬剤の含んだプレート上に播くことにより、薬剤耐性を持つ大腸菌、すなわちプラスミドを含む大腸菌が選択的に増殖してコロニーを形成する。一つのコロニーは一種類のみのインサートを含む大腸菌から成るので、複合微生物系において微生物ごとに遺伝子を分けることができる。
【0107】
1)クローニングの方法の検討
インサートの末端修飾には幾つかの方法があり、それに伴いライゲーションの方法もいくつかあるが、本実験では、操作が比較的簡単で、形質転換体が70%程度の確率で得られるといわれるTAクローニング法の変法を採用した。TAクローニング法は、PCRでのDNA合成の際に付加されるデオキシアデノシン(dA)を利用した方法であり、鋳型DNAの配列によってはPCR産物にdAが付加しない平滑状のものが混ざった状態なので、PCRの鋳型DNA等の条件によりクローニング効率が変わることに注意を要する。
【0108】
TAクローニング法として市販されているものの中で、具体的にはQIAGEN PCR Cloning System(UAクローニング)のKitを使用した。これは、TAクローニング法の変法で、Tの代わりにUの付いたベクターを用いたものである。Tは非相補的な塩基(G,C,T)とハイブリダイズしやすく、Tが付加されたベクターはベクター同士のアニーリング等の結果をもたらす可能性が有るが、Uは非特異的なベースペアを形成しにくい為、クローニング効率が高いと言われている(QIAGENプロダクトガイド)。本実験においても、TAクローニングとUAクローニングの比較を行った。TAクローニングはインサート率(出現コロニー当たりのインサートが入ったコロニーの割合)が半分程度であったが、UAクローニングはインサート率が9割程度と高く、UAクローニング法の方がクローニング効率がよいことが明らかとなった。
【0109】
2)適切なベクター/インサート比の検討
ベクター/インサート比については、通常1/1〜1/10程度にする。これは、インサートが少ないとインサート率が悪くなり、逆にインサートが多すぎると複数のインサートが一つのベクターに入ってしまうという可能性も出てくるためである。本実験では、QIAGEN PCR Cloning SystemのKitで推奨されている1/5と1/10の両方について実験を行った。その結果、1/5と1/10の両者で1/10の方がコロニー数が1、2割程度多かったものの、顕著な差ではなかったため、1/5や1/10程度の比であればどちらでもよいという結論に達した。
【0110】
3)インサートの確認方法の検討
インサートの確認には、コロニーを液体培養で増やし、ミニプレップでプラスミドの抽出・精製を行った後にPCRまたは制限酵素処理を行い、アガロースゲル電気泳動をする方法を使用した。
【0111】
以下、手順を説明する。
【0112】
1)PCR産物(インサート)の精製
1.クローニングしたい目的のPCR断片を含むPCR産物を1サンプルにつき数本用意する。
2.それらを集め、Microcon(Millipore)を用いて過剰なプライマーやdNTPを除去して精製を行う。
3.精製したサンプルのDNA濃度を測定する。
【0113】
2)クローニング
クローニングの基本的操作は、QIAGEN PCR Cloning Systemのプロトコルに準じた。
1.Ligation mixtureを作成する。(ライゲーション反応液内のベクター/インサート比については、各サンプルにつき1/5と1/10の両方を調製する。)
2.GeneAmp9600(PE Biosystems)で、16℃で30分間インキュベーションし、ライゲーション反応を行う。
【0114】
3.トランスフォーメーションの操作をプロトコル通りに行う。
4.トランスフォーメーション液を寒天プレートに播く。
5.出来上がったプレートを37℃で17時間程度(一晩)インキュベートする。
【0115】
3)プラスミド抽出
1.コロニーの生えたプレートを1時間程度4℃でコールドインキュベーションする。
2.プラスミドが入っているホワイトコロニーのみを楊枝でピックアップし、液体培地に入った15mlチューブに楊枝ごと入れる。
3.2を振とうしながら8〜10時間培養する。
4.QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いて付属のプロトコルに従いプラスミド抽出を行う。(このKitでは、大腸菌からプラスミドを溶出させ、精製、濃縮を行っていることになり、フェノール/クロロホルム抽出やエタノール沈殿等の操作を改めて行う必要は無い。)
【0116】
4)M13 PCR
1.得られたプラスミド抽出液をテンプレートとし、インサートよりも外側に位置している以下の表5に示すM13プライマーを用いてPCRを行う。PCR条件はインサートの長さにより変える必要がある。
【0117】
【表5】
【0118】
FISH
FISHとはFluorescent In Situ Hybridizationの略である。FISH法は、標的とする核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を持つ核酸(プローブ)を蛍光標識したものを用いる。この蛍光標識プローブを単離株や複合微生物系等のサンプルに加えることで、標的核酸にのみハイブリダイズさせ、サンプルを蛍光顕微鏡で観察すると、目的微生物を蛍光によって検出することが出来る。FISH法を微生物の検出に用いる場合、リボソームにあるrRNAを標的とし、プローブにはオリゴヌクレオチドを用いて行う。リボソームは1つの細胞に103〜105個存在しており、プローブもそれだけの量の菌体に入ることになる為、菌体一つ当たりの蛍光が大きくなり、顕微鏡下で蛍光が観察可能になる。図26にその原理を示す。
【0119】
FISH法を微生物に適用する目的としては、まず、サンプル中に標的微生物が存在しているかどうかということ、また存在位置を調べることが挙げられる。さらには、検出された蛍光の面積または菌体数を計測することによりサンプル中の標的種の割合を調べることも可能である。
【0120】
1)検出方法
以下の実施例において、サンプル中に目的とする細菌がどれだけ存在するのかという定量を行うために、FISH法を用いた。全細菌を標識する蛍光色素として、レーザーでしか検出できないCy5は用いずFITCを使用し、また標的細菌については、CLSMの時と同様Cy3標識のプローブを使用した。2重染色を行い、共焦点レーザースキャン顕微鏡(CLSM,Confocal Laser Scanning Microscopy)で画像を取得して面積定量した。
【0121】
2)明るい蛍光を得る検討
蛍光顕微鏡で蛍光は検出できるようになったものの、グラム陰性細菌を標的とするプローブを用いた時でさえも、明るい蛍光がなかなか得られないという問題があり、幾つかの検討を行った。得られる蛍光が暗い最大の原因には、プローブの細胞へ浸透が上手くいっていないことであると考え、この原因を解決する手段として報告されている方法を試してみた。まずは、パラホルムアルデヒド固定の前に、50質量%エタノール固定を行う方法であり、これはグラム陽性細菌等に有効であることが報告されている。パラホルムアルデヒド固定は通常1〜3時間程度行うが、その前にエタノール固定を1時間程度行うことで、浸透しにくい細胞へのプローブの浸透をよくすることを検討した。しかし、やはり満足のいく明るい蛍光は得られなかった。これは、対象サンプルが製鉄所の安水という特殊な排水を処理している活性汚泥であるということで、活性汚泥中に混入している不純物等がプローブの浸透を妨げている、または存在微生物自体の細胞構造やフロック構造によりプローブの浸透がしにくいという可能性が考えられ、通常の下水処理の活性汚泥に対しておこなうFISHとはだいぶ感覚が異なるのではないかということが予想された。そこでさらに、プローブの浸透を良くする方法として報告されていた、パラホルムアルデヒド固定の後にLysozymeとMutanolysin処理を行ってからプローブをサンプルに作用させるということを試してみた。その結果、ある程度の明るい蛍光を得ることに成功した。また、プローブの浸透を検討していたのと同時に、超音波分散をかける時間についても検討を行った。分散をかけないで観察すると、大きなフロック構造を取っていた。そこで、フロック構造を出来るだけ壊しプローブの浸透をよくするために、当初は10Wで3分間、超音波分散で処理をしていた。しかし、3分間処理するとフロック構造はほぼなくなるが、細胞まで壊して逆に蛍光が弱くなってしまうおそれがあると考えた。全く分散処理をしていないサンプルでも前述したLysozymeとMutanolysin処理をすれば蛍光が観察できることが分かり、その後は、10Wで1分の超音波分散を行ったサンプルを用意し、顕微鏡観察・定量を行った。1分間という長さは、本サンプルに関して蛍光顕微鏡を用いて定量化する上で、細胞を壊さない程度かつ定量化に必要な最小限の長さであると判断した。
【0122】
3)複数のプローブを同時に作用させる時のプローブ濃度とホルムアミド濃度の検討
本実験でのFISHは、定量化をする手段として利用したので、全細菌(EUBプローブ)に対する標的細菌の割合を求める為に、同時に複数のプローブを作用した。例えば、Proteobacteria−αの定量の際は、EUB(FITC標識)とALF968(Cy3)を混ぜてサンプルにハイブリダイズすることとなり、さらには本実験でのEUBはEUBmixという3つのプローブを混ぜたものを用いている。EUBwmixを先に調製してから、ターゲットプローブと混ぜた。この方法により、プローブを複数混ぜることでハイブリバッファーのホルムアミド濃度が、設定よりも低くなることをある程度防ぐことができた。
【0123】
以下の表6にプローブの混合方法を示す。
【0124】
【表6】
【0125】
以下、FISHの手順を示す。
【0126】
1)サンプルの固定とスライドガラスの作成
1.液体窒素で保存していたサンプルを常温で溶かし、50質量%エタノールで4℃1時間の固定を行う。
2.3質量%パラホルムアルデヒドで4℃、1〜3時間サンプルを固定する。
3.PBSとエタノールを1:1で混ぜた溶液に懸濁させ、−20℃で保存する。
4.保存しておいたサンプルを、10Wで1分間超音波分散を行う。
5.スライドガラスをゼラチンコート(組成:0.1質量%牛骨ゼラチン、0.01質量%クロムみょうばん)する。
【0127】
6.固定したサンプルについて、ゼラチンコートしたスライドガラスのウェルに2μlずつ滴下し、空気乾燥する。
7.5を50質量%、80質量%、98質量%エタノールに順に3分ずつ浸し、脱水を行う。(出来たスライドガラスは半永久的に保存可能である。)
【0128】
2)ハイブリダイゼーション
1.プローブの浸透をよくするために、lysozymeとmutanolysinで処理を行う。
lysozyme処理:TE Buffer(pH8.0)に溶解した2500unitsのlysozymeをウェルに滴下し10分処理を行う。その後50質量%、80質量%、98質量%エタノールに順に3分ずつ浸し、脱水を行う。
mutanolysin処理:0.1mol/l のphosphate buffer(pH6.8)に溶解した50unitsのmutanolysinをウェルに滴下し10分処理を行う。その後50質量%、80質量%、98質量%エタノールに順に3分ずつ浸し、脱水を行う。
2.Hybridization Bufferを以下の表7に示すように調製する。
【0129】
【表7】
【0130】
3.Hybridization Bufferで湿らせた紙を入れた50mlチューブを46℃で数分インキュベーションする。
4.Hybridization Bufferとプローブを表6に示したように混合する。
5.各ウェルに3を適当量滴下し、2の容器に入れて、46℃で3時間Hybridizationを行う。(EUBプローブとその他のプローブの2重染色でHybridization条件の異なるプローブを使用する際、EUB以外の標的プローブのホルムアミド濃度に合わせて1度でHybridizationを行う。)
6.Hybridization終了後、以下の表8に示す組成をもつWashing Bufferで、洗い流して浸し、48℃で20分間洗浄する。
【0131】
【表8】
【0132】
7.MilliQで、スライドガラスについたBufferを洗い流し、即座に水分を切って空気乾燥する。
8.DAPI染色が必要な時は、DAPI staining solution(1.25μg/ml DAPI,0.9M NaCl,20mM Tris/HCl(pH7.2))を10μlずつウェルに滴下し、5分間の染色を行う。
9.蛍光退色防止剤Slow Fade Lightをスライドガラスに滴下し、カバーガラスをのせ、マニュキュアコートで周りを固めて乾燥を防ぐように、プレパラートとする。
【0133】
3)顕微鏡観察と画像取得
顕微鏡観察は、Olympus BX51蛍光顕微鏡を用いた。ここでは、画像取り込みの際に注意した点を挙げる。
・細胞が出来るだけばらけているところを対象として画像を取得した。
・蛍光標識ごとに画像取り込みの際のシャッタースピードをマニュアルで操作し、バックグランドとシグナルの差がはっきりと区別できるようにする。具体的には、取り込んだ画像について、RGBカラーの各色のピクセル数を見ながら、蛍光標識に相当する色のピクセル数がバックグランドの部分で50以下になるようにした。
・明らかに自家蛍光であるシグナルが入っている画像は解析対象からはずした。
・定量化のため、同一視野について取り込んだEUBプローブの画像と標的プローブの画像、そして位相差画像を1セットとして、評価対象のサンプルにつき20セット以上取得した。
【0134】
4)定量解析
蛍光面積の定量には、画像解析システムQwin600HR(Leica)を使用する。
1.Qwin600HR(Leica)で、取得したRGBカラー画像ファイルを開き、R,Gそれぞれの色の明るさがある数値以上のピクセルを選択する。ある数値というのは、画像ファイルによって多少前後するが、多数の画像を解析しているうちに、数値がほぼ決まり、ある程度オートマチック化できる。しかし、主観に頼らざるを得ないところも少なからずある。
2.同一視野のEUBとターゲットのそれぞれの画像について、選択した部分の面積を求める。
3.2の比をとることで、ターゲットの存在比を求める。
4.誤差をできるだけ少なくする為に、取得している20セット以上について1〜3の操作を行い、平均を求め、これをターゲットの全細菌に対する割合とする。
【0135】
【実施例】
実施例1:パイロットプラントの運転
2001年5月、製鉄所において安水のCOD削減すなわち、フェノール類などの有機物と、チオシアン、チオ硫酸などの硫黄化合物の除去とアンモニアの除去を行う試験的なパイロットプラントの運転を開始し、2003年1月の現時点まで比較的安定な運転を行っている。この間、水質データのモニタリングを行い、また定期的に活性汚泥サンプルの採取を行った。
【0136】
図27に、安水処理プロセスのパイロットプラントの概要を示す。
パイロットプラントは、安水のCOD削減とアンモニア除去を行うため硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法を採用している。対象製鉄所において発生する実安水を海水希釈混合槽で海水によって1:2(安水:海水)に希釈する。
希釈後の組成を以下の表9に示す。
【0137】
【表9】
【0138】
希釈排水は嫌気槽(脱窒槽)、硝化槽(好気槽)、沈殿槽を経て処理される。硝化液の循環率は200%、汚泥返送率は100%であり、また処理水へ一部のSSが流出している為MLSSが安定しており、汚泥の引き抜きは行っていない。各水質項目の測定は、希釈原水(流入水)、脱窒槽出口、処理水の3ヶ所と硝化槽・脱窒槽で行い、測定項目を以下の表10に示す。また微生物群集解析用の活性汚泥サンプルは脱窒槽と硝化槽の2ヶ所から採取した。
【0139】
【表10】
【0140】
以下にパイロットプラントの運転状況を示す。途中でプラントの制御方法を変えたりしたため、2001年5月〜2002年7月までをRUN1〜RUN4と分けた。
以下の表11にRUN1とRUN2の概要を示す。
【0141】
【表11】
【0142】
また、RUN1〜RUN2の基質や窒素分の処理状況については、図28〜図31に示す。
【0143】
1)基質の処理状況
RUN1〜RUN2を通して、流水排水中に含まれる基質のうち、フェノール類、チオシアンは処理水ではほとんど残っておらず、ほぼ全て処理されている。チオ硫酸については、流入200〜400mg/Lのうち数10mg/Lが処理水に出てきてしまっているが、大部分は処理されている。よって、活性汚泥中の主な基質であるフェノール類やチオシアン、チオ硫酸は脱窒の基質として又は酸化分解を受けて、硝化脱窒処理プロセスにおいてほぼ処理されることがわかった。
【0144】
2)窒素分の処理状況
原水中の含有窒素分の処理状況については、RUNによって異なるので、以下に記す。
RUN1
原水中のDTNは600〜1000mg/L程度で推移している。RUN1の2001年5月は立ち上げの為、窒素の処理が安定せず硝化率・窒素除去率共に0〜0.03というように低い値で大きく変動している。RUN1の2001年7月4日は一時的に性能が良好で、ΔDTNが400mg/Lを超えているが、その後はΔDTNが200mg/L前後での変動にとどまっており、硝化率・窒素除去率は平均で0.3程度となっている。
処理水中にNO2−Nはごく微量残っているが、NO3−Nはほとんど残っていないことから、硝化された窒素分の脱窒は上手く機能しており、硝化が律速となっている系であると考えられる。
【0145】
RUN2
2002年1月23日〜2002年2月13日に汚泥槽腐食で改修工事のため原水を停止して空運転をし、その後2002年2月14日に製鉄所実機(標準活性汚泥法)の汚泥を等量(1:1)加えて運転を再開した経緯があり、RUN2はRUN1とは種汚泥が異なる系での立ち上げ期である。また、RUN1で硝化が律速になっている可能性のあることがわかったので脱窒槽と硝化槽の比を1:2から1:3とし、硝化槽の容積を増やした。MLVSSについては、RUN2はRUN1と比べると硝化槽、脱窒槽の両方で4000mg/LとRUN1よりは低い値で推移している。
【0146】
立ち上げの当初(2002年2月20日)は一時的に、硝化率・窒素除去率はよかったが、その後、2002年4月23日頃まで性能が悪くなり、それから2002年6月3日までは安定しながら徐々に硝化率・窒素除去率がよくなり、最も良い時で0.4程度、DTNは約400mg/L脱窒されていた。硝化や脱窒に関して徐々に性能がよくなるという立ち上げ期を比較的良くモニタリングできた系であると言える。
【0147】
処理水中にはNO3−Nはほとんど出ていない。NO2−Nについては性能がよくなるにつれて、50〜80mg/L程度処理水中に残っている。これは、アンモニア態窒素が硝酸態窒素まで硝化されずに亜硝酸態窒素の状態で止まってしまっているか、または脱窒素反応の過程で完全に窒素まで脱窒されずに途中で止まってしまっている可能性が考えられる。しかし、いずれにしても処理水中に残っているNO2−Nは50〜80mg/L程度であり、硝化された窒素分のほとんどについては脱窒されていると言える。RUN1と2を通して、硝化率は平均0.2〜0.3程度と低く、硝化が律速となっていてその為に窒素除去率も硝化率とほぼ同じ値で低く推移していると考えられる。
【0148】
実施例2:PCR−DGGE法による微生物群集モニタリング
PCR−DGGE法は、環境サンプル等の培養できない微生物の遺伝子でも検出、またバンドとして可視化でき、さらにはバンドを切り出すことでそのバンドの塩基配列情報を得ることができるため、近年、複合微生物系である環境サンプルの解析などにおいて急速に普及してきた技術である。また、微生物の変化を系時的にバンドの変化として追うことができるという利点を有しており、安水硝化脱窒処理プロセスのパイロットプラント内に存在している微生物群集をモニタリングする手法として適切であると考え、パイロットプラントのRUN1、RUN2の微生物群集についてPCR−DGGE法を用いてモニタリング、解析を行った。
【0149】
以下、手順を説明する。
【0150】
パイロットプラントRUN1とRUN2において、系時的に採取した汚泥サンプルからDNAを抽出し、GC付きプライマーで16SrDNAのV3領域(357f−518r)を増幅して解析対象とした。PCR条件は、<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:30sec〕×35−72℃:10min−4℃>である。その後、DGGEのプロトコルに従い40〜60質量%の変性剤濃度勾配をつけたゲルを用いて、130Vで6時間電気泳動を行った。
【0151】
予備実験
硝化槽サンプルと脱窒槽サンプルの比較
同日に採取した活性汚泥サンプルについて、硝化槽と脱窒槽の出口ではDGGEのバンドパターンが異なるのかどうかの検討を行った。結果を図32の左図に示す。左から2001年5月1日の硝化槽と脱窒槽、2001年5月7日の硝化槽と脱窒槽であり、この結果から、硝化槽と脱窒槽でのバンドパターンの差異はほとんどないと考え、脱窒槽のサンプルのみで解析を行うことにした。
【0152】
泳動時間の検討
同一のサンプルを用いて、サンプルを1時間ごとに異なるウェルにアプライし、5〜8時間の泳動時間でバンドパターンの異なり方を見て、最適泳動時間の検討を行った。結果を図32の右図に示す。この結果を見ると、今回の実験の最短である5時間でバンドの分離は完了していた。よって解析対象のサンプルについては、バンドパターンを見るには5hの泳動で充分であることが分かった。ゲルの下の方にあるバンドは6時間泳動すれば、ほぼ止まりきれいに分離している。8時間まで泳動すると、上の方にあるバンドの間隔がつまってしまい、バンドの切り出しをするにはよくないと考えられる。これらのことから、実験対象のサンプルのDGGE解析においては、泳動時間は5時間で充分であり、下の方にあるバンドの切り出し等を行うには6時間泳動を行うとよいことが分かった。
【0153】
結果・考察
予備実験より、同日に採取した硝化槽の汚泥と脱窒槽の汚泥では、DGGEのバンドパターンはほとんど変化しないことが分かったので、脱窒槽の汚泥サンプルのみを用いてRUN1とRUN2の2002年4月16日までに関してPCR−DGGE法による解析を行った。その結果を図33に示す。
【0154】
図3から、まず、RUN1とRUN2を通してバンドの数が、比較的少ないことが読み取れる。通常の下水を処理する活性汚泥をPCR−DGGE法で解析すると、バンドが密集してしまうのだが、このようにバンド数が少ないのは、安水という特殊な排水を処理している汚泥であり、フェノール類やアンモニアなどが高濃度に含まれる系で生存できる微生物が限られている為であると考えられる。
また、RUN1とRUN2では種汚泥が異なる(種汚泥を採取したプラントは一緒で採取時期が異なる)が、性能が安定してきた2001年7月4日以降のバンドパターンはあまり変化がないことから、安水の硝化脱窒処理を行うプロセスに存在する微生物相はほとんど変化しないのではないか、ということが示唆された。
【0155】
塩基配列解読によるDGGEバンドの近縁種決定
得られたバンドについて、それぞれどのような微生物なのかを確認し、パイロットプラント内に存在する微生物の全体像を把握するため、各バンドの近縁種の決定を試みた。
方法
DGGEのゲルから主要なバンドを切り出し、滅菌milliQとともに凍結融解を3回繰り返すことで、ゲル片からDNAを回収し、それをテンプレートとしてPCR−DGGEを行うという精製の操作を繰り返し、DGGEのゲル上で一本のバンドにした。最増幅のPCR条件は、<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:30sec〕×25または20−72℃:10min−4℃>である。その後、精製したDNAをテンプレートとしてGC無しのプライマーでV3領域の357f−518r部位を再増幅(PCR条件:<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:30sec〕×25−72℃:10min−4℃>)し、シーケンシング反応のテンプレートとした。シーケンシング反応は先に説明したプロトコルに従い、またシーケンサーはHITACHI(SQ−5500)を用いた。それぞれの357f−518rの塩基配列を決定した後、相同性検索プログラムBLAST(http://spiral.genes.nig.ac.jp/homology/blast.shtml)を用いて既知種の中から相同性の高い塩基配列を検索し、DGGE各バンドの近縁種を決定した。系統樹は、DDBJのClastalW(http://hypernig.nig.ar.jp/homology/clustalw.shtml )によりアライメント解析を行い、作成した。既知種の塩基配列は、Entrez−PubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/ )のNucleotideで、Accession No.を用いて取得した。
【0156】
結果・考察
図34と図35は、RUN1とRUN2それぞれについてPCR−DGGE法で解析し、切り出したバンドを示した写真である。RUN1の2001年7月4日を解析したレーンから主要バンドを17本切り出し(1−1〜1−17)、またRUN2の2002年5月28日を解析したレーンから主要バンドを15本切り出した(2−1〜2−15)その後に、塩基配列を解読して近縁種を特定した結果を以下の表12と表13に示す。塩基配列の決定は、16SrDNAのV3領域の200bp弱について行っており、200bp程度では詳しい系統解析は出来ないが、属レベルまでの決定は可能であると言われている。また、200bpでは類似度が100%のもの以外は同一種である可能性は大変低く、あくまでも最近縁種ということを念頭におく必要がある。
【0157】
【表12】
【表13】
【0158】
結果を見ると、主要バンドは少ないつまり存在微生物の種類は少ないが、真正細菌の様々なグループに属していることがわかる。切り出したバンドとそれぞれの最近縁種を入れて描いた系統樹(図36)では、Proteobacteria、CFB、Thermus/Deinococcus group、グラム陽性細菌(HGC,LGC)など、に属している細菌が存在していることが見て取れる。また、RUN1とRUN2を通して性能が安定している時に常に濃いバンドを形成しているバンド1−5(2−4)と1−8(2−6)はそれぞれ、γ−ProteobacteriaのEctothiorhodospiraceaeに類似度93%で近縁なもの、そしてThermus/Deinococcus groupのDeinococciに類似度92%で近縁な細菌であることがわかった。両者とも類似度低いことから、200bp以上読んだ時に最近縁種が変わる可能もあるが、いずれにしてもバンドが濃く目立っているので、この系において注目すべき細菌であることは確かである。
【0159】
実施例3:クローンライブラリー作成による系統解析
DGGEバンドを切り出して精製し塩基配列を決定する場合、絶対量が少なくある程度の濃さとして現れないバンドを構成する微生物や、近くにバンドがあり精製が困難なバンドを構成する微生物は、塩基配列を決定することができないという問題点がある。また、DGGEの検出限界は500bp前後であり長くなるほどバンドが鮮明でなくなると言われていることから、実施例2では200bp前後で解析を行っており、詳しい系統解析を行うには不充分な長さであった。
【0160】
これらの理由により、さらに詳細な系統解析を行う目的で、16SrDNA全長のクローニングを行い、その後、DGGEからのバンド切り出しによる塩基配列決定より長い357f−907r部位(約550bp)の塩基配列を決定してクローンライブラリーを作成した。クローニングでは、PCRで増幅することができさえすれば、サンプル内に存在する微生物全てが、ある確率でクローンとして得られることになる。
【0161】
方法
クローニングの操作は、先に説明したプロトコルに従って行った。
RUN1の性能安定時2001年11月21日脱窒槽のサンプルについて、DNA抽出液から27f−1518r(Clone library A)と27f−1492r(Clone library B)部位をPCR増幅し(PCR条件<95℃:10min−〔94℃:30sec−50℃:30sec−72℃:2min〕×25−72℃:10min−4℃>)、その産物を精製してクローニングを行った。その後、得られたコロニープレートからそれぞれのクローンライブラリー用に50クローン強ずつ取り、液体培養後プラスミド抽出をして、M13プライマーを用いてPCR増幅をした(PCR条件<95℃:10min−〔94℃:30sec−50℃:30sec−72℃:2min〕×30−72℃:10min−4℃>)。
【0162】
次に、DGGEでクローン産物のスクリーニングを行うために、M13PCR産物をテンプレートとして同様にV3領域を増幅し、DGGEによるスクリーニングを行った。通常、クローン産物のスクリーニングにはRFLP法を用いるが、既に2001年11月21日のサンプルについては、PCR−DGGE解析を行っており、それをマーカーとすることである程度のスクリーニングを行えるのではないかと考えた。クローニングライブラリー作成の為に最終的に塩基配列を読むものについては、スクリーニングの結果同じ位置にいくつかバンドがあるものは、それらのうちの一つを選び、その他のものについては全て、シーケンスを行う対象とした。
【0163】
クローンライブラリーを作成する為の塩基配列の決定は、357f−907rの550bp程度とした。まず、M13 PCR産物をテンプレートとして357f−907rでPCR増幅した(PCR条件<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:1min〕×30−72℃:10min−4℃>)。それをシーケンス反応のテンプレートとし、ABI310(ABI PRISM Genetic Analyzer 310)のプロトコルに従いシーケンス反応を行った。その後ABI310で、357f−907r部位の塩基配列を解読した。
【0164】
塩基配列を決定した後に、相同性検索プログラムBLAST(http://spiral.genes.nig.ac.jp/homology/blast.shtml)を用いて既知種の中から相同性の高い塩基配列を検索し、各クローンの近縁種を決定した。また、近縁種が似ているものどうしを集めて、DDBJのClastalW(http://hyperning.nig.ac.jp/homology/clustalw.shtml)によりアライメント解析を行い、97%以上配列が一致しているものを1つのOTU(Operational TaxonomyUnit)とした。さらに、DDBJのClastalW(http://hypernig.nig.ac.jp/homology/clustalw.shtml )でアライメント解析を行い、系統樹を作成した。系統樹作成の際の既知種の塩基配列は、Entrez−PubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/ )のNucleotideで、Accession No.を用いて取得した。
【0165】
結果・考察
Clone library A
まず、パイロットプラントの2001年11月21日脱窒槽の汚泥について16SrDNA27f−1518r部位のクローニングを行い、各クローンの357f−907r部位の塩基配列決定し作成したClone library Aの結果を図37に示す。全52クローンのClone library Aの内訳を見てみると、活性汚泥では通常優占しているProteobacteriaが大部分を占めており、α−Proteobacteriaに近縁な細菌が10%、β−Proteobacteriaが22%、γ−Proteobacteriaが34%、Thermus/Deinococcus groupが30%そしてPlanctomycetes等その他が4%となっていた。クローニングはPCR等のバイアスがかかる為、定量的ではないが、活性汚泥ではあまり報告例が無くProteobacteriaの仲間には属さないThermus/Deinococcus groupに近縁な細菌が30%を占めていることは注目に値すると考えられる。
【0166】
以下の表14と表15に、各OTUの最近縁種等の情報を示す。
【0167】
【表14】
【表15】
【0168】
個別に見てみると、OTU8のγ−Proteobacteria;Chromatiaceae;Thiorhodovinrioに90%で近縁な細菌が12クローン(23%)、OTU20のThermus/Deinococcus group;Deinococciに90%で近縁な細菌が9クローン(17%)が目立って多いことが分かった。これらの2種の細菌は、実施例2の結果のDGGEで濃く目立っていたものとして2つ示した細菌と一致しており、DGGEのバンドパターンとクローンライブラリーの両方の結果から、系の中で優占している可能性が高いと考えられる。また続いて多かったのは、OUT4のAlcaligenaceaeに属する細菌(12%)や、OTU21のThermus/Deinococcus group;Deinococciに近縁な細菌(12%)であった。
【0169】
Clone library B
Clone library Aでは、DGGEから切り出したバンドの塩基配列解読で比較的多く存在した、CFBに近縁な細菌が全くいなかった。この原因として、PCRのプライマーセットによるバイアスが考えられた為、Universal Primerの他のプライマーセットを用いてClone library Bを作成した。具体的には、クローニングを行うときに、Clonelibrary AではインサートとなるPCR産物を27f−1518rで得たが、Clone library Bでは、27f−1492rとした。Clone library Aと同じく357f−907r部位の塩基配列を決定したが、全45クローンの内訳は図38のようになった。予想通り、CFBに近縁な細菌がOTU12−19の7種類得られ、CFB全体の割合も25%と多かった。これは、明らかにプライマーによるPCRバイアスがかかっていることを示した結果となった。また、他の微生物グループについては、β−Proteobacteriaに近縁な細菌が14%、γ−Proteobacteriaが27%、Thermus/Deinococcus groupが30%となっており、これらはClone library Aの割合とほぼ一緒である。また、α−Proteobacteriaに近縁な細菌は0%と、全く検出されなかったが、この原因は、1492rのプライマーは一般的なProteobacteriaを引っ掛けるようにデザインされているので、プライマーによるPCRバイアスよりも、クローン数が少なく確率的にα−Proteobacteriaのクローンが得られなかったと考えられる。クローンライブラリーを作成する際のクローン数は少なくとも50クローン程度は必要であるとされており、クローンを多く取れば取るほどそのライブラリーの正確さは増すことになる。
【0170】
Clone library AとBのまとめ
上述のように、Clone library AとClone library Bでは、プライマーによるPCRバイアスがかかった顕著な差が見られたので、その差を出来るだけ解消しClone libraryの構成クローンについて総合的に判断する目的で、Clone library AとBの全97クローンをまとめた円グラフを図39として作成した。まとめた結果、Proteobacteriaが全体の約53%を占めており、その内訳はα−Proteobacteriaに近縁な細菌が5%、β−Proteobacteriaが17%、γ−Proteobacteriaが31%であった。さらに、CFBに近縁な細菌が12%、Thermus/Deinococcus groupに近縁な細菌が29%、グラム陽性細菌等のその他が4%であった。グループレベルでは、Clone library AとClone library Bの両方で多かった。γ−ProteobacteriaとThermus/Deinococcus groupに属する細菌がそれぞれ30%前後となっていることが特徴的である。また、個別に見ても、各Clone libraryと同様にOTU8のγ−Proteobacteria;Chromatiaceae;Thiorhodovinrioに近縁な細菌が23%、OTU20のThermus/Deinococcus group;Deinococciに近縁な細菌が16%と多く、続いて、OTU20と非常に近いOTU21のThermus/Deinococcus groupに近縁な細菌も12%と比較的多かった。
【0171】
Clone libraryで得られたOTU数は25であり、下水や他の産業排水を処理している活性汚泥中の微生物相と比較すると、存在している微生物の種類が少ないと考えられる。また、一種類の微生物で数10%を占めるものもいることから、25OTUsの中でも優占している微生物が存在することがわかった。また、微生物の種類は比較的少ないが、それぞれが属するグループはProteobacteriaの各division、CFB、Thermus/Deinococcus group、Planctomycetes、HGCグラム陽性細菌、と広く分布していることも分かった。
【0172】
次に、表14と表15に整理したClone library AとBのクローンについて、その最近縁種を含めた系統樹(図40)を作成した。Out Groupは古細菌(Accession No.ARC18073)に設定し、boot strapは1000回とした。系統樹からは、Proteobacteriaの仲間、CFBの仲間、Thermus/Deinococcus groupの仲間と枝分かれが大きくグループ化していることが読みとれる。また、グラム陽性細菌等その他の細菌(OTU23,24,25)は古細菌に近いところから比較的深い枝として分かれている。各グループに注目すると、まずCFBに属すると思われるクローンはOTU12−19と種類が多いが、同じCFBのBacterioroidetesに近縁な細菌であってもそれぞれが比較的離れた位置に存在し、多様性が高いことがわかった。さらに、Thermus/Deinococcus groupに近縁なクローン(OTU21−22)は互いに近い位置に存在しているが、それぞれの最近縁種としてデータベースであがっていたThermus/Deinococcus groupの細菌とは異なった枝に位置している。このことから、OTU21−22は、Thermus/Deinococcus groupには属す可能性が高いが、Thermus/Deinococcus groupで報告されている細菌数は少ないこともあり、未だ報告されていない新しい科や属に属する細菌であることが予想される。
【0173】
実施例4:FISH法によるグループレベルの微生物群集定量解析
実施例1〜3で述べた結果は、すべてDNA抽出やPCRを経て得たデータであり、これらは多かれ少なかれDNA抽出とPCRのバイアスがかかっていると言ってよい。DNA抽出では、グラム陽性細菌は細胞壁が硬い為抽出されにくいこともあると言われているように、細菌によって抽出され易さが異なる。またPCRでは、16SrDNAのUniversal primerを用いて、系内に存在する全ての細菌を完全に拾うことは不可能であり、それは、ある細菌はUniversal primerの結合部位の配列にミスマッチがあってprimerが結合できなかったり、またある細菌は遺伝子の立体構造によりprimerが上手く結合できなかったりすることがある為である。さらには、PCRはサイクル反応を繰り返すことで遺伝子を増幅させる操作であるので、PCRの後では、微生物間の量の関係を議論することには注意が必要である。
【0174】
このようにDNA抽出、PCRの操作を経ると定量性がほぼ失われてしまい推測の領域となってしまう。そこで、DNA抽出やPCRを行わずにin situの状態で直接顕微鏡観察が出来、半定量的な手法とされているFISH法を用いて、違う角度からパイロットプラントの微生物群集解析を行った。
【0175】
方法
基本的な操作は、先に説明したプロトコルに従った。
解析したサンプルは、実施例3で、clone libraryを作成したものと同じ、パイロットプラント2001年11月21日脱窒槽のサンプルであり、定量評価用に用いたプローブは以下の表16の通りである。
【0176】
【表16】
【0177】
具体的には、グループレベルのプローブである各Proteobacteria、CFB、HGCグラム陽性細菌それぞれのプローブを使用し、全細菌(EUB)に対する割合を求めた。
【0178】
実施例3の手法に従い、それぞれのターゲットプローブとEUBプローブを混ぜたプローブをサンプルにアプライし、ハイブリダイゼーションを行った。Washingの操作後、場合に応じて5分間DAPI染色を行った。FISH画像は、蛍光顕微鏡OlympusBX51を用いて、CCDカメラを通して取得した。定量評価を行う為、各プローブにつき、同視野についてのEUB画像(FITC標識)、ターゲット画像(Cy3標識)、位相差の画像のセットを20セットずつ撮った。また、EUBプローブが全細菌の何%にハイブリダイズしているかを確認する目的で、DAPI染色についても10視野程度取得した。得られた、画像の解析及び定量操作には、画像解析ソフトLeica,Qwin600を使用した。画像解析ソフトによる定量方法の詳細は、実施例3で説明した通りである。
【0179】
結果・考察
使用プローブの検討
FISHのプローブに関する既往の研究については、実施例2に述べた。それらを踏まえた上で、本サンプルの微生物グループレベルでの解析に使用するFISHプローブを検討した。まず、DGGEバンドの切り出し後のシーケンスや、クローンライブラリーの微生物近縁種の結果で、α−Proteobacteria、β−Proteobacteria、γ−Proteobacteria、δ−Proteobacteria、CFB、高GCグラム陽性細菌、低GCグラム陽性細菌、Deinococcus/Thermus groupの9つのグループに近縁な微生物が得られているので、この9つのグループに特異的なプローブを使用して解析することを考えた。しかし、δ−Proteobacteria、LGCグラム陽性細菌、Deinococcus/Thermus groupの3つのグループについては、適当な既存プローブが見つからず、残りの5つのグループについてのみFISHを行い定量することにした。
【0180】
5つのプローブとEUBプローブについてもそれぞれ検討した点があり、以降それらについて記す。まず、α−Proteobacteriaについては、本サンプルについてALF1bとALF968の両方を試してみた。比較した結果、明らかに従来のALF1bの方が蛍光を発している細胞が多く、ALF968の方は光っている細胞はまれであった。しかしながら、最近の論文ではα−Proteobacteriaの定量評価に、ALF968を使用しているものが目立つことから本研究においてもALF968を用いることにした。
【0181】
次に、β−Proteobacteriaとγ−Proteobacteriaについては、通常使用されているプローブは、BET42aとGAM42aである。これらは、表16のように23SrRNAの同一の部分をターゲットとしていてプローブの配列は一塩基のみ異なるため、それぞれのプローブが1ミスマッチで違うターゲットにくっついてしまうおそれがあることが報告されている。本サンプルについても、BET42aやGAM42aのプローブをそれぞれ単独で用いた時に、ある程度細胞が密集している所はBET42aやGAM42aでも光ってしまっているように思えた。そこで、出来るだけ正確に定量する為に、β−Proteobacteriaを定量する際はBET42aと共にBET42a−competitor(GAM42aと同じ塩基配列を持つ蛍光標識なしのプローブ)をアプライし、γ−Proteobacteriaについても同様にGAM42a−competitor(BET42aと同じ塩基配列を持つ蛍光標識なしのプローブ)を利用した。
【0182】
さらに、CFBをターゲットとするプローブについては、CF319aがもともと有名なプローブとして存在している。CF319aは、CFB全体のプローブとして利用するには、網羅していない細菌も多く不完全であるということで、最近では他のプローブも開発されていている。そこで、それらのプローブを混合して使用することを考えたが、本サンプルに存在するCFB数種の全長塩基配列を決定していない為、開発されているプローブのうち本サンプルを定量するためにはどれを使用すべきか判断できず、本実験では多少過小評価になる可能性のあることを考慮した上でCFBに対してCF319aのみを使用した。
【0183】
最後に、全細菌をターゲットとするEUBプローブについてだが、従来使用されてきたEUBプローブが、やはり不完全であることが報告されており、さらに2つのプローブを加えたEUBmixを使用することが常識となりつつある。よって本実験においてもEUBmix(EUBI,EUBII,EUBIII を混合したもの)を使用した(プローブ混合方法については先に説明した通りである)。
【0184】
定量評価
FISHによる解析結果を円グラフにしたものを図41に示す。実施例3において図39で示した、Clone libraryの各グループの構成比と比較すると、α−Proteobacteria、β−Proteobacteria、γ−Proteobacteria、CFBの割合はほぼ一致している。しかし、HGCについては、FISHによる割合は17%となっておりClonelibraryでは数%とであったのと比べてだいぶ多くなっている。この原因としては、Clone library作成の過程で、DNA抽出・PCRでのバイアスがかかっている為と考えられる。特にDNA抽出では、グラム陽性細菌はバイアスがかかり易い。また、PCRのUniversal PrimerはProteobacteriaを中心として設計されていることから、系内に存在しているグラム陽性細菌が使用したUniversal Primerとミスマッチがあることも多いに考えられる。いずれにしても、Clone libraryにおいては、HGCについて過小評価している可能性が高いことが示唆された。また、全体を見ると、80%に満たないが、これについてはClonelibraryの結果から、既存プローブが無く評価できなかったThermus/Deinococcus groupに近縁な細菌が残りの大部分を占めることが推測できる。
【0185】
実施例5:プラントの硝化脱窒性能の指標となる微生物の探索
実施例1〜4において、まず、安水硝化脱窒処理プロセスのパイロットプラントに存在する微生物相の全体について、様々な手法を用いて把握した。
パイロットプラントを立ち上げた本来の目的は、生物学的手法(活性汚泥法)で有機物のみだけでなく、安水中のアンモニアを同時に除去することを検討することにある。アンモニアの除去は、硝化反応と脱窒素反応を経て完了するため、プラントの運転側の立場からは、硝化脱窒性能を良好に維持することが必要となってくる。本実施例においては、硝化脱窒性能の裏付けをする為に、微生物群集解析の立場から硝化脱窒性能の指標となるような微生物を探索することを試みた。
プラント立ち上げ期のPCR−DGGE法による微生物群集変化
硝化脱窒性能の指標となるような微生物を見つける方法として、硝化脱窒性能が悪い時と良い時の微生物相を見比べることを考えた。そこで、パイロットプラントの運転の中で、トラブルにより運転を一時停止し、種汚泥を再度加えて立ち上げ直した時期に注目した。その時期は、2002年2月14月〜2002年6月13日のRUN2に相当する。RUN2の前の2002年1月23日〜2002年2月13日の20日間、汚泥槽腐食による改修工事のために、流入水を停止し空運転を行い、その後標準活性汚泥法で処理している実機の汚泥を等量(1:1)加えて運転を開始したという立ち上げ直した経緯がある。RUN2の硝化や脱窒の状況は、図30と図31に示した通りであるが、立ち上げ当初の2002年2月20日は一時的に硝化脱窒が良かったが、その後一度悪くなり、2002年4月23日〜2002年6月3日にかけて硝化脱窒が良くなった。このパイロットプラントの運転状況から、微生物相は、立ち上げ当初は加えた種汚泥または空運転していた汚泥に存在した微生物が一時的に硝化や脱窒反応を加えたが、その後だんだんと嫌気好気という硝化脱窒処理プロセスに順応した微生物の菌体量が増えてきたのではないかと推測できる。つまりRUN2で増加した微生物は硝化脱窒性能の指標となり得るということである。
【0186】
このような立ち上げ期の微生物の増減をモニタリングする手段としては、微生物をバンドとして可視化でき、さらにバンドの太さによって増減を議論できるPCR−DGGE法が適当であると考え、パイロットプラントRUN2についてPCR−DGGE法による解析を行った。
【0187】
方法
パイロットプラントRUN2で、系時的に採取した汚泥からFast DNAKit for soil(BIO101)によりDNAを抽出し、GC付きプライマーで16SrDNAのV3領域(357f−518r)を増幅した。PCR条件は、<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:30sec〕×35−72℃:10min−4℃>である。その後、DGGE法により40〜60質量%の変性剤濃度勾配のゲルを用いて、130Vで5時間電気泳動を行った。
【0188】
結果
RUN2についてPCR−DGGE法で解析した結果を図42に示す。
図42から、各バンドは大きく分けて以下の4種類の挙動を示していることがわかる。
1.実機での存在の有無に関わらず硝化脱窒性能が良くなるに連れてバンドが濃くなった微生物(実線矢印)(各バンドの強度の変化については図43と図44を参照)
2.標準活性汚泥で処理している実機にも比較的多く存在しているが、硝化脱窒プロセスの立ち上がりに連れて一度減り、その後再び濃くなるという挙動を示した微生物(点線矢印)
3.標準活性汚泥処理の実機でも硝化脱窒処理でもほとんど変わらず存在する微生物
4.実機では存在していたが硝化脱窒処理にすることで減少した微生物
【0189】
まず、図42の1の実線の矢印で示したバンドであるが、図42からも読み取れるようにバンド強度の増加が実機と比べて顕著であり、これらは汚泥が硝化脱窒処理プロセスに馴致され硝化脱窒性能が良くなるに連れて増加した微生物であると考えられる。よって実線の矢印で示した微生物は硝化脱窒性能の指標となり得るだろう。特にバンドa,b,c,e,g,iは、好気処理の実機ではほとんど存在しておらず(図43と図44)、それぞれ硝化能、脱窒能を持つために増えたと考えることもでき、硝化脱窒性能の指標となる有力な候補である。
【0190】
図42の2の点線の矢印で示したバンドは、プラントの立ち上がりにともない一度経るが、その後再び濃くなるため、実線矢印と同じように硝化脱窒性能の指標となる可能性がある。しかし、好気処理のみの実機において、ある程度多い量で存在している為、嫌気槽での脱窒に関与しているかどうかは明らかではない。好気的に基質を酸化分解している可能性もある。
【0191】
また、上記3の微生物は、実機でも硝化脱窒プロセスでもほとんど変化無く存在しているので、好気槽で基質の酸化分解を行いエネルギーを得て存在している可能性が高いと推測できる。
【0192】
以上、解析結果から考察を行ったが、やはりバンドの挙動のみで各微生物がどのような反応に関わっているのかを判断することは難しいと言える。しかしながら、少なくとも図42の1の実線で示した微生物については、硝化脱窒性能の指標とすることが出来ると考えられ、以降、この実線矢印の微生物に絞った解析を行っていくことにした。
【0193】
立ち上げ期に増加傾向にあるDGGEバンドの塩基配列解読による近縁種決定
図42の実線矢印で示した、RUN2のプラント立ち上げ期に増加した微生物について、それぞれどのような微生物であるのかを調べる目的で、近縁種の決定を行った。
方法
図42の実線矢印で示したバンドをゲルから切り出し、滅菌milliQとともに凍結融解を3回繰り返すことで、ゲル片からDNAを回収した。それをテンプレートとしてPCR−DGGEを行うという操作を繰り返し、DGGEのゲル上で一本のバンドまで精製した。その後、精製したDNAをテンプレートとしてGC無しのプライマーでV3領域の357f−518r部位を再増幅(PCR条件:<95℃:10min−〔94℃:30sec−53℃:30sec−72℃:30sec〕×25−72℃:10min−4℃>)し、シーケンシング反応のテンプレートとした。シーケンシング反応は先に説明したプロトコルに従い、またシーケンサーはHITACHI(SQ−5500)を用いた。それぞれの357f−518rの塩基配列を決定した後、相同性検索プログラムBLAST(http://spiral.genes.nig.ac.jp/homology/blast.shtml)(Altschul et al. (1990))を用いて既知種の中から相同性の高い塩基配列を検索し、DGGE各バンドの近縁種を決定した。
結果
近縁種決定結果を以下の表17にまとめた。
【0194】
【表17】
【0195】
band No.は図42で用いたものであり、カッコ内の番号は、実施例2における図34と図35の番号に対応している。
【0196】
近縁種を決定したところ、CFB(Cytophaga−Flavobacterium−Bacteroidetes)に属するものがb,h,iの3種と多かった。しかし、CFBに属する細菌は多様であり、3種のバンドとも単離されている株との相同性が低く、科のレベルについても特定することが難しかった。CFBに属する細菌の中には脱窒機能を持つものがいるという報告がある(Zumft et al. (1992))ので、これらの細菌も脱窒能を持っている可能性がある。その他には、β−ProteobacteriaのComamonas科に近縁な細菌がc,eの2種と続いて多い。この2種も単離株との相同性が90%と低いため属レベルの特定が出来ない。Comamonas科に属する細菌の中には、脱窒に関与しているものがいることが報告されており、様々な研究がなされているので、本研究のパイロットプラント内においても脱窒に関与している可能性が高いと考えられる。
【0197】
また1種ずつの細菌として、aはNitorosomonas属に近縁な細菌、dはEctothiorhodospiraceaeに近縁な細菌、fはThermus/Deinococcus groupに近縁な細菌、gはSphingomonas属に近縁な細菌、jは低GCグラム陽性細菌のBacillusに近縁な細菌となっていた。この中でaのNitrosomonasはアンモニア酸化細菌として有名な微生物であり相同性も98%と高い為、本パイロットプラントの中で硝化を担っていると考えられ、硝化性能の指標となる微生物であることはほぼ間違えない。その他の細菌については、Ectothiorhodospiraceae、Thermus/Deinococcus group、Sphingomonasは脱窒能力があるという報告は見当たらないが、グラム陽性細菌のBacillusに属する細菌は脱窒能力を持つものが多数報告されている。脱窒能を持つ細菌については特定されていないものが多いとされており、いずれにしても、上述した細菌は硝化脱窒プロセスで増加していることから脱窒に関与している可能性が高く、脱窒性能の指標となり得ると考えられる。
【0198】
特筆すべき点としては、dのEctothiorhodospiraceaeとfのThermus/Deinococcus groupに近縁なそれぞれの細菌は、微生物全体の解析で系内に優占的に存在しているであろうと結論付けた細菌であることである。硝化脱窒処理プロセスにすることで菌体量が増加し、さらには系内で優占しているとなると、硝化脱窒性能の指標とするには最適な細菌となる可能性が高い。
【0199】
立ち上げ期に増加傾向にある微生物の16SrDNA全長塩基配列決定
以上、安水の硝化脱窒処理パイロットプラントにおいて、硝化や脱窒を担っている可能性のある性能の指標となり得る微生物を特定することができた。そこで、それらの微生物についてさらに詳細な系統学的地位を調べる為、それぞれの16SrDNA全長の塩基配列決定を行うことにした。
全長配列を決定すると、データベースから得られる最近縁種の情報が正確になることに加え、さらにはその種に特異的なプローブを設計してFISHを行うことで顕微鏡を通してin situの状態でその細菌を確認することが可能になる。
【0200】
方法
まず、解析対象のバンド(図42のa〜j)について、実施例3に示したクローンライブラリー内に対応するクローンが存在するかどうか調べた。その結果は以下の表18の通りである。
【0201】
【表18】
【0202】
実施例3において作成したクローンライブラリーは、全長をターゲットとしたPCR産物のクローニングを行っている為、バンドに対応するクローンがあれば、16SrDNAの全長塩基配列を決定することができる。解析したいバンドのうちクローンが得られていたものは、a,d,f,g,iの5種のみであった。クローンの無かったものの中で特にb,c,eについてはDGGEでのバンド強度の増加が目立って良かった(図42)ので、全長を決定できないのは残念な結果である。クローンライブラリーのクローン数を増やせば得られる可能性はあるが、今回は時間の関係で省略せざるを得なかった。よって以下の操作はa,d,f,g,iの5種に限って行った。
【0203】
先に説明したように、クローニング後にM13プライマーで増幅したPCR産物をテンプレートとし、全長プライマーを用いてPCRを行った(a,d,f,gは27f−1518r、iは27f−1492r)。その後、得られた全長PCR産物について、Microcon(Millipore)とPCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて過剰プライマーやdNTPを除去し精製を行った。その後、精製液のDNA濃度を測定し、シーケンス反応のテンプレートに最適な濃度に調製した。
【0204】
次に全長シーケンスについてだが、16SrDNAは1,500bp程度と長い為、全長シーケンスを一度に取ることはできない。ABI310シーケンサーのキャピラリーにはショートとロングがあり、比較的長い塩基配列の解読用のロングキャピラリーでもせいぜい読めるのは500bp程度である。そこで、約1500bpの塩基配列を数種のUniversal primerでいくつかに分けて読むことになる。分け方は様々であり幾つか考案されているが、理論的にはUniversal primerのいくつかを使用すれば読めることになる。本研究では、図45のように8つのプライマーを用いて全長を分けて解読を試みた。シーケンス反応に使用したプライマーの配列は以下の表19の通りであり、またシーケンス反応については、先に説明したプロトコルに準じた。
【0205】
【表19】
【0206】
各断片の塩基配列を解読した後、ABI310の解析ソフトを用いてクローンごとに断片のAssembleを行い、全長塩基配列とした。そして、相同性検索プログラムBLAST(http://spiral.genes.nig.ac.jp/homology/blast.shtml)を用いて既知種の中から相同性の高い塩基配列を検索し、最近縁種を決定した。さらに、各クローンの系統学的な位置を示す為に系統樹を作成した。系統樹はDDBJのClastal W(http://hypernig.nig.ac.jp/homology/clustalw.shtml )でアライメント解析を行って作成した。系統樹作成の際の既知種の塩基配列は、Entrez−PubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/ )のNucleotideで、Accession No.を利用し取得した。
結果
各クローンの全長配列決定による最近縁種の検索結果は以下の表20のようになった。
【0207】
【表20】
【0208】
最近縁種が2種書いてあるものは、相同性(%)が同じ値で名前が異なる最近縁種が検索結果として得られたためである。また、最近縁種がunculturedのみのクローンに関しては、近縁種として得られた細菌の最も上位にある単離株を載せるつもりであったが、Similarityがかけ離れていた為載せることができなかったものである。
【0209】
それぞれのクローンについて、blastで得られた近縁種検索結果の上位約10種と、最近縁種と近い属の細菌を入れた系統樹を作成した結果を図46〜図50に示す。最近縁種と系統樹を総合して考察を行う。
【0210】
まずclone A3については、最近縁種はNitrosomonas eutropha.であったが、同じSimilarityでNitorosomonas sp.も検索結果に挙がっていた。系統樹を書いてみたところ(図46)、系統学的に最も近い細菌はホモロジー検索で4位であったNitrosomonas sp.(AJ224410)(97%)であることがわかった。系統樹の同じ枝はNitorosomonas sp.でほとんどが占められているので、clone A3はAmmonia−oxidizing bacteriaのNitorosomonas sp.に属すると考えられる。しかし、株レベルでSimilarityが100%一致するものは無かったため、新しい株である可能性は高い。いずれにしても、clone A3全長配列決定の結果、Nitrosomonasであることが分かったので、パイロットプラント内で硝化を担っていることは確かであり、硝化脱窒性能の中でも硝化に対する指標微生物とすることができる。
【0211】
Clone A14は、最近縁種を見ると上位10種でもsulfur−oxidizing bacteriaやmethylobacterなど様々な細菌が挙がっていた。またいずれも92%以下とSimilarityが低く、属名の決定も難しい。図47の系統樹での位置は、同じ枝に入る細菌が全く存在せず、単独となっていることから、新属である可能性もある。よって、近縁種から脱窒能を持つかどうか検討することはできなかった。系統学的に近い位置にsulfur−oxidizing bacteriaやThiorhodovibro等、硫黄に関連した代謝を行っている細菌が多いことから、Clone A14は安水中のチオ硫酸やチオシアン等の分解に関与している可能性が高い。
【0212】
次にClone A28は、最近縁種はThermus/Deinococcus groupのDeinococci(89%)であった。Thermus/Deinococus groupのいくつかの単離株を含めた系統樹(図48)では、Thermus科とDeinococcus科のかたまりのうち、Deinococcus科の方に属することはわかったが、最近縁種であるUnculturedのバクテリアのみしか同じ枝に含まれない為、さらに小さいくくりであるDeinococcus属に属すかどうかはわからなかった。Deinococcus属のかたまりとは、bootstrapが994で分かれているので、新属である可能性もある。Deinococcus科に属する細菌はもともと種類が少なく、既知の脱窒菌は報告されていないが、本プラントの系内では、脱窒に関与している可能性が高い。
【0213】
Clone A19は最近縁種はSphingomonas sp.であり、Similarityが96%と比較的高い。Sphingomonas属のその他の種を含めた系統樹(図49)では、Clone A19はSphingomonas属に属し、さらに種レベルでは、Sphingomonas sp.の仲間に入る細菌であることがわかった。Sphingomonas属はα−Proteobacteriaの中の比較的新しい分類であり、これまで違う属であった細菌がSphingomonas属に再分類されるなど、Sphingomonas属の細菌の数は増えてきている。Sphingomonas属の細菌で脱窒能を持つものは報告例は見当たらなかったが、近縁な属の細菌で脱窒能を持つものが報告されており、脱窒細菌が系統学的に広い範囲に分布していることを考慮すると、Clone A19も本プラントで脱窒に関与している可能性も十分考えられる。
【0214】
Clone B36については、最近縁種がuncultured bacteriumとなっているが、相同性検索の上位を見ると、CFBグループに属する細菌であることが判明した。CFBはCytophaga−Flavobacterium−Bacteroidetesの略であるが、CFBに属する細菌は系統的に多様で、系統樹にでは同じ属の細菌が違う枝に入ってしまうことも良くある。また、様々環境に生息しているのでデータベース中の登録数は多いが、Unculturedつまり単離されていないものが多く、それゆえ大半は機能が調べられていない。CFBに属する既知の細菌を入れて作成した図50の系統樹を見ると、Clone B36はUncultured bacteriumのかたまりに属していた。また近い位置にはCytophagaが多いことから、Cytophaga−Flavobacterium−Bacteroidetesの中では、Cytophagaに近い位置にあることがわかった。Cytophagaに属する細菌で脱窒能が報告されているものが存在することから、Clone B36は脱窒性能の指標となる可能性がある。
【0215】
FISH法による硝化脱窒性能評価の可能性の検討
以上のように、硝化脱窒性能の指標となるような微生物の候補を得ることができた。実際に、この微生物を用いてプラントの性能を評価する場合、方法としてはFISH法の利用が考えられる。つまり、性能の指標となるような微生物に特異的なプローブを用いてサンプルに対してFISHを行い蛍光の割合(標的微生物の割合)によって、性能を評価するという方法である。FISH法以外には、PCR−DGGE法で微生物相をバンドとして可視化し、標的微生物のバンドの濃さで性能を評価する方法も考えられるが、PCR−DGGEを行うにあたってDNA抽出やPCR等の操作に時間がかかり、さらにはどのバンドが標的微生物なのかを常に把握しておく必要がある為、継続的にPCR−DGGE法で解析を行っていない場合は、バンドパターンの解釈が難しく標的微生物のバンドを特定しづらいという欠点がある。それと比較してFISH法は、FISHの操作や蛍光の見分け方に慣れれば、操作は比較的簡単であり短時間で行え、またin situの状態で顕微鏡下で実際の微生物を観察できるので、評価手法としては適切であると考えられる。
そこで、硝化脱窒性能の指標となる可能性のある微生物について、プローブを作成し、プラントの性能と対応させながら、FISH法を用いた定量評価を試みた。
【0216】
方法
プローブの作成
まず、決定した全長塩基配列について、既存の種特異的プローブが有るかどうかprobe base net(http://www.probebase)を利用して調べた。既存のプローブで使えるものが無いものは、以下で述べる操作にしたがってプローブを作成した。
プローブ作成は次の2段階の過程を経て行った。まず、ANGISのBio Manager(http://bn1.angis.org.au/bionav/cgi−bin/wrap.wp/gui/start)のPrimer3プログラムを用いて、プローブの候補を検索し、その後、Michigan State UniversityのRibosomal Database Project II(http://rdp.cme.msu.edu/html/analyses.html )のProbe Matchプログラムで、プローブ自身の自己相補結合(self−complementary)があるかどうかを確認し、無いものを最終的にプローブとした。
【0217】
具体的には、Primer3を起動し、先に得られた16SrDNAの全長塩基配列を入力して行った。その時の検索条件としては、プローブのGC含量が低くなりすぎて変性温度Tdが低くなり、非標的種との区別が難しくならないよう、GC含量を50%以上とした。さらにプローブの長さは、基本的には一般的に用いられている18merとし、18merでターゲットに特異的なプローブの候補が見つからない場合は20merまでの中で候補を探した。Primer3でプローブの候補を検索すると、指定した数の候補が得られるが、それらのスクリーニングは、DDBJの相同性検索プログラムBLAST(http://spiral.genes.nig.ac.ip/homology/blast.shtml)を用いて次のように行った。本研究では、一つの種類の細菌にターゲットを絞ったプローブを作ることが目的のため、プローブの配列が、rRNAのデータベースに登録されている全ての細菌と一致しないものを作成することが理想である。しかしプローブの長さは18〜20bp程度であるので、それが難しい場合は、できるだけ一致または数ミスマッチの配列を持っている細菌が少ないもの、そして完全に一致してしまう細菌がある場合には、それらがプローブを作成するターゲットの細菌と同じ属や科に含まれているものを選んだ。このような過程を経た後に、Ribosomal Database Project IIのProbe Matchプログラムにかけ、自己相補結合が無いかどうかを確認し、最終的なプローブとした。
【0218】
定量評価
基本的な操作は先に説明したプロトコルに準じた。
解析に用いたサンプルはRUN2の立ち上げ時に等量で加えた実機プラントの汚泥(標準活性汚泥法)、さらに2002年4月22日、2002年5月28日の汚泥である。図30、図31のパイロットプラントの運転状況から判断して、立ち上げ期をFISH法により評価する目的でこの3サンプルを選んだ。定量評価は、FISH法を用いて、標的細菌に特異的なプローブ(Cy3標識)と全細菌に対するプローブEUBmix(FITC標識)の2重染色を行い、ターゲットの全細菌に対する割合を求めた。また、FISHの後に、5分間のDAPI染色を行った。
【0219】
FISH画像は、蛍光顕微鏡OlympusBX51を用いて、CCDカメラを通して取得した。定量評価を行う為、各プローブにつき、同視野についてのEUB画像(FITC標識)、ターゲット画像(Cy3標識)、位相差の画像のセットを20セットずつ撮った。また、EUBプローブが全細菌の何%にハイブリダイズしているかを確認する目的で、DAPI染色についても10視野程度取得した。得られた、画像の解析及び定量操作には、画像解析ソフトLeica製Qwin600を使用した。画像解析ソフトによる定量方法の詳細は、先に説明した通りである。
【0220】
結果
既存プローブの有無の確認とプローブ作成
先に決定した全長配列に基づき、既存プローブで使用できるものが無いかどうかを確認した。その結果は、以下の表21に示すとおりである。
【0221】
【表21】
【0222】
clone A3は、アンモニア酸化細菌ということで、既存プローブを検索の結果Nsm156とNso1225の2つのプローブの配列と完全に相補的であった。一般的に、Nsm156はNitrosomonasの一部をターゲットとするプローブであり、Nso1225はアンモニア酸化細菌を広く網羅するプローブである。clone A3のみのアンモニア酸化細菌をFISHで定量評価することが目的であるため、ここでは、よりターゲットが狭いプローブであるNsm156を使う方が良いと考えられる。しかし、系内アンモニア酸化細菌はclone A3の一種類のみしか検出されておらず、実際に一種類しか居ないことも考えられるので、補足としてNso1225プローブによる定量も行うことにした。
【0223】
またclone A19は、Sphingomonasに属する細菌であり、既存プローブの検索結果において、SPH120プローブと完全に相補的であった。SPH120プローブは、Sphingomonas属を標的としたプローブであるが、数株のZymomonas属(系統的にSphingomonas属のクラスターの中に位置している)の細菌も含んでいるプローブである。もし、系内にclone A19以外の他のSphingomonas属の細菌が存在した場合、SPH120プローブでclone A19以外の細菌もひっかかってしまうことになるが、先の実施例においてその他のSphingomonas属の細菌が検出されていない結果を踏まえて、このSPH120プローブをclone A19の定量評価に用いることにした。
【0224】
clone B36は、CFBの細菌であり、既存プローブ検索を行ったところ、CF319aが挙げられた。しかし、CF319aプローブはグループレベルでCFBに特異的なプローブであり、clone B36以外にCFBが存在する本プラントの汚泥には適用出来ない。そこで、clone B36については、出来る限り種特異的なプローブを作成することを試みた。また、cloneA14とclone A28については、使用できる既存プローブが無かった為、それぞれに特異的なプローブを作成した。
【0225】
属レベルのプローブを用いたFISH法による定量評価
表20に示したように、各細菌を種または属レベルで検出可能な既存のFISHプローブのあった、clone A3とclone A19について定量評価を行った。clone A3は硝化性能指標微生物、clone A19は脱窒性能指標微生物の候補であり、それぞれを分けて考察する。定量評価に用いたサンプルは、方法のところで述べたように、性能と比較して定量が行えるようにパイロットプラントRUN2の立ち上げ期の3点(種汚泥(実機)、2002年4月22日、2002年5月28日)を選んだ。
【0226】
clone A3(Nitrosomonas近縁細菌)による硝化性能評価の可能性
Nitrosomonasの一部をターゲットとしているNsm156を用いて定量した結果を図51に、そしてアンモニア酸化細菌全体をターゲットとするNso1225を用いて定量した結果を図52に示す。また、同立ち上げ期を解析したPCR−DGGEにおいてclone A3と同じ細菌であるバンドのバンド強度変化も合わせて図53に示す。
まず、図51のNsm156プローブを使用した結果であるが、プラント立ち上げに伴い硝化脱窒が良くなるに連れて(図31)、Nsm156のプローブが付く細菌つまりNitrosomonas(clone A3)が増加していることがわかった。2002年4月22日と2002年5月28日は標準偏差を示すバーが重なっており、顕著な差は見られないが、標準活性汚泥法で処理している実機の汚泥とは明らかな差が見られた。つまり、Nitrosomonas(clone A3)は硝化脱窒プロセスの性能が良くなるに連れて増加していることがわかる。このことから、Nitrosomonasは硝化脱窒性能の指標のひとつとなり得ることが示唆された。
【0227】
また、図52のNso1225プローブを使用した結果であるが、Nsm156プローブと同じようにプラン立ち上げに伴ってアンモニア酸化細菌が増加するという結果を得ることが出来た。こちらも2002年4月22日と2002年5月28日は標準偏差のバーが重なってしまっていてこの差は不確かであるが、標準活性汚泥法で処理している実機の汚泥とは明らかな差が見られた。Nsm156の結果と比較すると2002年4月22日、2002年5月28日ともに5割程度増えた結果となっており、これはNitrosomonas以外にも系内にアンモニア酸化細菌が存在するかもしれないことを示唆している。しかし、標準偏差のバーが示すように視野ごとに値のばらつきも大きく、clone A3のNitrosomonas以外にアンモニア酸化細菌が存在するかどうかについては、はっきりとはわからない。
【0228】
いずれにしてもこれらの結果から、両方のプローブで、プラントの性能と対応付けたFISHの結果を得ることが出来た。全細菌に対する割合が数%であるため、誤差が大きく効いてくる可能性があり、この少ない割合での増減の議論をすることに注意する必要はあるが、Nitrosomonasは一般に硝化を担っている細菌であり、パイロットプラント内においても硝化性能の指標生物としてよいと考えられる。また、Nsm156とNso1225プローブのどちらを硝化脱窒性能評価に使用すればよいかということについてであるが、clone A3の挙動で評価する場合には、狭い範囲を標的とするNsm156を使用する方が確実である。ただし、アンモニア酸化細菌は硝化脱窒処理プロセスで硝化脱窒が上手く機能するには必須の微生物であり、もしclone A3以外のアンモニア酸化細菌が存在する場合、その細菌も硝化性能の指標生物となる。よって、硝化の評価を行う際には、clone A3も確実に捉えさらに他のアンモニア酸化細菌もターゲットとしているNso1225を使用してもよいと考えられる。
【0229】
clone A19(Sphingomonas近縁細菌)による脱窒性能評価の可能性
主としてSphingomonas属をターゲットとして設計された既存のSPH120プローブを用いて定量した結果を図54に示す。また、同立ち上げ期を解析したPCR−DGGEのバンドの中でclone A19と同じ細菌であるバンドのバンド強度変化も合わせて図55に示す。
【0230】
PCR−DGGE clone A19と同じ細菌であるバンドは、種汚泥ではほとんど存在せず硝化脱窒性能が上昇するに連れて、バンド強度が目立って強くなっていた(図55)。FISH法を用いた解析でも、図54のように、SPH120がターゲットとする細菌つまりSphingomonasに属する細菌が増加しているという結果を得ることが出来た。2002年4月22日と2002年5月28日では、標準偏差のバーが重なっており、どちらが多いかはっきりとは言えず、脱窒率(窒素除去率)は、2002年4月22日は0.1程度、2002年5月28日では0.3程度と差がある(図31)が、FISHによる結果ではその差を議論することはできなかった。しかし、標準活性汚泥法で処理している実機から採取した種汚泥とのSphingomonasの割合の差は明らかであった。以上のことから、FISHでの結果は脱窒性能と対応するものであるかどうか判断することは難しいが、DGGEバンドパターンを再現することは出来ており、さらに半定量的に硝化脱窒プロセスの立ち上げ期に増加したことを評価できたことから、脱窒性能の指標の1つとなることが期待できる結果であると考えられる。
【0231】
その他、既存のプローブで適用可能なものが無かったclone A14、clone A28、clone B36については、プローブ作成プログラムを利用して各3つずつのプローブを作成することに成功した。clone A14、clone A28、clone B36は、硝化脱窒プロセスで馴養することで増加している為、脱窒をすることが出来る細菌であることが予想され、パイロットプラントの脱窒性能の指標となる可能性が高い。
【0232】
まとめ
・PCR−DGGEの結果で、立上げ期(RUN2)に目立って増加した微生物が10種程度存在した。これらの微生物は、硝化脱窒処理プロセスに馴致されたことで増加していると考えられ、硝化や脱窒に関与している可能性が高く、硝化脱窒の指標微生物になり得る。
・脱窒性能の指標微生物の候補について、近縁種を決定したところ、CFBに近縁な細菌が3種、Comamonadaceaeに近縁な細菌が2種、また、Nitorosomonas属に近縁な細菌sufur−oxidizing bacteriumに近縁な細菌、Thermus/Deinococcus groupに近縁な細菌、Sphingomonas属に近縁な細菌、低GCグラム陽性細菌のBacillasに近縁な細菌が1種ずつであった。
・特に、sufur−oxidizing bacteriumに近縁な細菌、Thermus/Deinococcus groupに近縁な細菌は系内で優占している可能性が高いと結論付けた細菌であるので、脱窒性能の指標とするには、最適であると考えられる。
【0233】
・硝化脱窒性能の指標微生物の候補である10種の微生物のうち、5種について16SrDNA全長を解読し系統解析を行うことができた。
・硝化性能の指標微生物の候補であるNitrosomas属の細菌をFISHを利用して定量した結果、Nsm156、Nso1225の両方のプローブで硝化脱窒プロセスの立上げ期に増加するという定量結果を得ることができた。Nitrosomas属の細菌は、硝化に関与することが知られている為、パイロットプラントの硝化性能はこのNsm156、Nso1225プローブを用いて評価できると考えられる。
【0234】
・脱窒性能の指標微生物の候補であるSphingomonas属の細菌について、SPH120プローブでFISHを利用して定量した結果、硝化脱窒プロセスの立上げ期に増加するという定量結果を得ることができた。脱窒性能の評価にSPH120プローブが使用できるかどうかは、Sphingomonas属の細菌の機能が明らかでない為わからないが、パイロットプラント脱窒性能の指標となる可能性は高い。
・既存プローブが存在しなかったsufur−oxidizing bacteriumに近縁な細菌、Thermus/Deinococcus groupに近縁な細菌、CFB;Cytophagaに近縁な細菌に対するFISHプローブを作成することができた。
【0235】
【発明の効果】
本発明は、安水処理プロセスの活性汚泥内に存在する微生物群集を把握し、COD成分となるフェノール類などの有機物や、チオシアン、チオ硫酸などの硫黄化合物の除去および硝化脱窒に関与する有用な微生物を発見した。さらに、これにより、安水処理性能を良好に維持するための評価方法及び安水処理方法を提供することを可能にした。
【0236】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】配列番号1〜8、16SrDNA 357f−518r領域を示す図である。
【図2】配列番号12〜17、16SrDNA 357f−518r領域を示す図である。
【図3】配列番号18〜30、16SrDNA 357f−518r領域を示す図である。
【図4】配列番号31〜34、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図5】配列番号35〜38、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図6】配列番号39〜42、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図7】配列番号43〜46、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図8】配列番号47〜50、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図9】配列番号51〜54、16SrDNA 357f−907r領域を示す図である。
【図10】配列番号55〜58、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図11】配列番号59〜62、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図12】配列番号63〜66、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図13】配列番号67〜69、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図14】配列番号70〜73、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図15】配列番号74〜77、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図16】配列番号78〜81、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図17】配列番号82〜84、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図18】配列番号85〜88、16SrDNA 357f−907rを示す図である。
【図19】配列番号89、16SrDNA 27f−1518rを示す図である。
【図20】配列番号90、16SrDNA 27f−1518rを示す図である。
【図21】配列番号91、16SrDNA 27f−1518rを示す図である。
【図22】配列番号92、16SrDNA 27f−1518rを示す図である。
【図23】配列番号93、16SrDNA 27f−1492rを示す図である。
【図24】図1〜図23中に用いたヌクレオチド略語表を示す。
【図25】PCR−DGGE法の原理を示す図である。
【図26】rRNAを標的としてFISH法の原理を示す図である。
【図27】安水処理パイロットプラントの構成を示す図である。
【図28】RUN1、2における基質の処理状況を示す図である。
【図29】RUN1、2における脱窒槽と硝化槽のMLVSSの変化を示す図である。
【図30】RUN1、2における含有窒素分の処理状況を示す図である。
【図31】RUN1、2における窒素除去率と硝化率の変化を示す図である。
【図32】硝化槽汚泥と脱窒槽汚泥のバンドパターンの比較(左図)、及び泳動時間の検討(右図)を示す図である。
【図33】RUN1とRUN2の微生物群集解析結果を示す図である。
【図34】RUN1の解析結果と切り出したバンドを示す図である。
【図35】RUN2の解析結果と切り出したバンドを示す図である。
【図36】系統樹を示す図である。
【図37】Clone library A(27f−1518r)を示す図である。
【図38】Clone library B(27f−1492r)を示す図である。
【図39】Clone library Aと Clone library Bのまとめを示す図である。
【図40】Clone library A、Bで得られたクローンとその最近縁種を含めた系統樹を示す図である。
【図41】FISHによる微生物グループレベルでの定量結果を示す図である。
【図42】RUN2のPCR−DGGE法による解析結果を示す図である。
【図43】実線矢印(図42)で示したバンドの経時的なバンド強度の変化を示す図である。
【図44】実線矢印(図42)で示したバンドの経時的なバンド強度の変化を示す図である。
【図45】16SrDNA配列決定における使用プライマーの位置を示す図である。
【図46】系統樹(clone A3)を示す図である。
【図47】系統樹(clone A14)を示す図である。
【図48】系統樹(clone A28)を示す図である。
【図49】系統樹(clone A19)を示す図である。
【図50】系統樹(clone B36)を示す図である。
【図51】Nitrosomas定量結果(Nsm156probe)を示す図である。
【図52】アンモニア酸化細菌定量結果(Nso1225probe)を示す図である。
【図53】clone A3と同じ細菌のPCR−DGGEでのバンド強度の変化を示す図である。
【図54】Sphigomonasの定量評価(SPH120probe)を示す図である。
【図55】clone A19と同じ細菌のPCR−DGGEでのバンドの強度の変化を示す図である。
Claims (60)
- 配列番号1又は18に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号2又は19に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteriodetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号3に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Alteromonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号20に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteriodetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号4又は22に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−proteobacteria);Comamonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号5又は21に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−proteobacteria);Ectothiorhodospiraceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号6に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−proteobacteria);Caulobacteraceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号7に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci;Deinococcaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号8、23又は26に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci;Deinococci;Thermaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号24に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するActinobacteria(high GC Gram−positive)近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号9又は25に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号10に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Burkholderia group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号11に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Alcaligenaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号12又は27に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteriodetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号13に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Rhodocyclus group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号14又は28に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するActinobacteria(high GC Gram−positive)近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号15又は29に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号16又は30に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するFirmicutes;Bacillales(low GC Gram−positive近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号17に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するδ−プロテオバクテリア(δ−Proteobacteria);Desulfuromonas group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−518r領域DNA断片。
- 配列番号43、54又は67に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Rhodobacteriaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号45に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Rhodobacteriaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号47に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Shingomonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号40、49、50、58、60、69、77、79又は87に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Alcaligenaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号33に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号37、41又は62に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Burkholderia group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号42に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Rhodocyclus group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号31、44、48又は78に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Chromatiaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号32又は86に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Alteromonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号63又は66に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Chromatiaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号73に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);Thiothrix group近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号76に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号71に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号80に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号85に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号82に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号74に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号83に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号88に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号34、35、53、55、59、61、64、68又は72に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号36、38、39、52、56、57、70又は81に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号46に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号51に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するPlanctomycetes;Planctomycetales近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号75又は84に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するActinobacteria(high GC Gram−positive)近縁細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号65に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在する未分類細菌の16SrRNA遺伝子の357f−907r領域DNA断片。
- 配列番号89に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria;Nitrosomonas近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNA。
- 配列番号90に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);sulfur−oxidizing bacteria近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNA。
- 配列番号91に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNA。
- 配列番号92に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1518r領域全長DNA。
- 配列番号93に示す配列を有する、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌の16SrRNA遺伝子の27f−1492r領域全長DNA。
- その16SrDNA中に請求項1〜49のいずれか1項に記載のDNA断片又は全長DNAを含み、かつ、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在する微生物。
- その16SrDNA中に配列番号89に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するβ−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria;Nitrosomonas近縁細菌。
- その16SrDNA中に配列番号90に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するγ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);sulfur−oxidizing bacteria近縁細菌。
- その16SrDNA中に配列番号91に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するThermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌。
- その16SrDNA中に配列番号92に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するα−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌。
- その16SrDNA中に配列番号93に示す配列を有し、かつ、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プラントの活性汚泥中に存在するCFB;Bacteroidetes近縁細菌。
- 請求項50〜55のいずれか1項に記載の微生物又は細菌を硝化又は脱窒指標微生物として用いて、FISH法により、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プロセスの硝化又は脱窒性能を評価する方法。
- β−プロテオバクテリア(β−Proteobacteria);Ammonia−oxidizing bacteria;Nitrosomonas近縁細菌、γ−プロテオバクテリア(γ−Proteobacteria);sulfur−oxidizing bacteria近縁細菌、Thermus/Deinococcus group;Deinococci近縁細菌、α−プロテオバクテリア(α−Proteobacteria);Sphingomonadaceae近縁細菌、及び/又はCFB;Bacteroidetes近縁細菌を、硝化又は脱窒指標微生物として用いて、FISH法により、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理プロセスの硝化又は脱窒性能を評価する方法。
- 請求項50に記載の微生物又は細菌を含む、COD削減のために用いる活性汚泥法による安水処理装置の活性汚泥。
- 請求項51〜55のいずれか1項に記載の微生物又は細菌を含む、硝化液循環型硝化脱窒活性汚泥法による安水処理装置の活性汚泥。
- 請求項58又は59に記載の活性汚泥を使用する安水の処理方法。
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2003
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