以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
図1は本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置1の平面図であり、図2は図1のA矢視による同装置1の正面図であり、図3は図1のB矢視による同装置1の側面図である。タイヤ試験装置1は、空気入りタイヤ100が試験用リム140(図3参照)に組み付けられたタイヤリム組立体Tを、路面台2のタイヤ接地面2a上で転動させたときの、タイヤ内周面の測定結果に基づいて、空気入りタイヤ100に含まれるベルト層117(図4参照)の変形を推定するものである。
なお、以下の説明では、図1において、路面台2が長手方向に延びる方向をタイヤ試験装置1の前後方向と称し、これに直交する方向をタイヤ試験装置1の左右方向と称する。また、図2及び図3において、路面台2のタイヤ接地面2aに直交する方向をタイヤ試験装置1の上下方向と称する。
図1に示されるように、タイヤ試験装置1は、前後方向に延びる路面台2と、路面台2を下方から支持するベースフレーム3と、ベースフレーム3に対して前後方向に移動可能とされた第1移動体11とを備えている。第1移動体11には、左右方向に移動可能とされた第2移動体12と、第2移動体12に対して水平方向Rに回転可能とされると共に上下方向に移動可能とされた第3移動体13とが設けられている。
図2に示されるように、第3移動体13の下部には、左右方向に延びるタイヤ支持軸14が、上下方向Qに揺動可能に設けられている。タイヤ支持軸14は、一端部にタイヤリム組立体Tが取り付けられるタイヤ取付部14aを備え、タイヤリム組立体Tに駆動力又は制動力を与えられるようになっている。
図1に示されるように、第1移動体11は、サーボモータ21で回転されるボールネジ31により前後方向に移動可能とされている。第2移動体12は、サーボモータ22で回転されるボールネジ32により左右方向に移動可能とされている。図2に示されるように、第3移動体13は、サーボモータ23で回転されるボールネジ33により上下方向に移動可能とされており、且つ、サーボモータ24で回転されるスクリュージャッキ34により水平方向R(図1参照)に回転可能とされている。
タイヤ支持軸14は、サーボモータ25(図1参照)で回転されるスクリュージャッキ35で上下方向Qに揺動可能とされており、サーボモータ26によりタイヤ取付部14aに駆動力又は制動力が与えられる。
図4は、タイヤ試験装置1に取り付けられたタイヤリム組立体Tの子午線方向断面図であり、タイヤリム組立体Tが所定条件下において路面台2に接地している部分が拡大して示されている。ここで、所定条件とは、タイヤリム組立体Tを評価したい条件を意味しており、例えば、装着される車両における空気入りタイヤの使用条件(例えば、接地荷重、充填される気体の圧力、及び駆動転動、制動転動、旋回転動、自由転動等の転動条件)から、評価目的に応じて適宜選択されている。
図4に示されるように、空気入りタイヤ100は、路面台2のタイヤ接地面2aに接地しているトレッド部110と、トレッド部110のタイヤ幅方向両端部からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部120と、一対のサイドウォール部120それぞれのタイヤ径方向内側の端部に位置する一対のビード部130とを備えている。
一対のビード部130の間には、トレッド部110及びサイドウォール部120のタイヤ内面側にカーカスプライ114が掛け渡されている。トレッド部110においてカーカスプライ114の外径側には、複数のベルトを含むベルト層117(本実施形態では3層)と、ベルト補強層118と、トレッドゴム119とがタイヤ径方向内側から順に配置されている。また、カーカスプライ114のタイヤ内面側には、インナライナ113が配置されている。インナライナ113は空気入りタイヤ100のタイヤ内面を構成している。
リム140は、全体として円筒状に形成されており、この軸方向両端部において空気入りタイヤ100のビード部130が係止される一対のリムフランジ141と、一対のリムフランジ141のタイヤ幅方向間に位置しておりリムフランジ141よりもタイヤ径方向内側に位置する円筒部142と、円筒部142の内周部を、この全周にわたって又は断続的に、径方向に接続するハブフランジ143とを有している。タイヤリム組立体Tは、ハブフランジ143において、タイヤ支持軸14のタイヤ取付部14aに固定されている。
また、円筒部142の外周部には、空気入りタイヤ100のタイヤ内周面の形状をタイヤ径方向内側から測定する測定部50が設けられている。測定部50は、円筒部142に固定されており、タイヤリム組立体Tの転動に伴って、タイヤ内周面の特定の部分を測定する。図4は、測定部50による測定範囲が、トレッド部110が路面台2に接地する接地領域Gに位置している場合が示されている。
測定部50として、本実施形態では、撮像手段、具体的にはカメラが採用されている。カメラ50は、撮像する撮像部51と、撮像された画像を記憶する記憶部52とを有している。本実施形態では、カメラ50は、静止画を撮像するものが採用されている。撮像部51の撮影範囲は、タイヤ幅方向において、タイヤ内周面のうち、ベルト層117が配置された領域に少なくとも対応するベルト幅領域を含んでおり、ベルト層117の最大幅WBよりも広い。なお、本実施形態では、ベルト層117の最大幅WBは、トレッド部110の接地幅W0と略同一に設定されている。したがって、撮像部51による撮影範囲は、トレッド部10の接地領域Gを含んでおり、撮像幅WAがトレッド部110の接地幅W0よりも広い。
図5は、図4のV-V線におけるタイヤリム組立体Tのタイヤ赤道線CLに沿った断面図である。図5に示されるように、カメラ50は、円筒部142の周方向に離間した2か所に設けられている。2つのカメラ50それぞれによる撮像領域X1,X2は、タイヤ周方向に重複しており、重複した部分に重複撮像領域X0が構成されている。また、2つのカメラ50は、同期して撮像されており、同じ瞬間における一対の画像を取り出すことが可能である。
図6は、図5のVI-VI線におけるタイヤリム組立体Tの水平方向断面図であり、トレッド部110における接地領域G周辺のタイヤ内周面を上方(タイヤ径方向の内径側)から見た図である。なお、図6において、トレッド部110の接地領域Gが破線にて併せて示されている。図6に示されるように、重複撮像領域X0は、タイヤ幅方向において撮像幅WAが接地幅W0よりも広く接地領域Gを内側に含んでいる。
一方、重複撮像領域X0は、タイヤ周方向において撮像長LAが接地長L0よりも短い。このため、測定部50を用いて接地領域Gのタイヤ内周面側の全域を測定するためには、図5に示されるように、タイヤリム組立体Tの転動時における回転角度範囲のうち、重複撮像領域X0が接地領域G内に対応して位置する接地角度範囲Z0において、所定角度範囲ごとに、2つのカメラ50によってタイヤ内周面の撮像が実施される。
なお、重複撮像領域X0の撮像長LAが、接地長L0よりも長くなるように、2つのカメラ50の配置及び画角を設定してもよい。
好ましくは、所定回転角度は、それぞれの所定回転角度位置ごとに構成される複数の重複撮像領域X0によって、接地領域Gの全域をタイヤ周方向にわたって網羅されるように設定される。また、所定回転角度ごとに構成される複数の重複撮像領域X0は、タイヤ周方向に重複するものでもよい。所定回転角度は、例えば0.1°以上10°以下に設定されている。
また、測定部50による測定は、重複撮像領域X0が接地角度範囲Z0に位置するときに実施されるのに加えて、その前後、すなわちさらに踏み込み側の所定回転角度範囲Z1及び/又はさらに蹴り出し側の所定回転角度範囲Z2においても実施されるのが好ましい。これによって、トレッド部の接地前後におけるタイヤ内面の変形の挙動を把握しやすい。例えば、踏み込み側の所定回転角度範囲Z1及び蹴り出し側の所定回転角度範囲Z2を、接地長L0と同じ長さ範囲L1,L2に対応する角度範囲に設定してもよい。
また、測定部50による測定を、タイヤリム組立体Tの転動のうち、接地領域Gを含む半周の撮像角度範囲において実施してもよく、又は1周若しくは複数周の撮像角度範囲において実施してもよい。
2つのカメラ50を用いて異なる角度から撮像された2組の画像データに基づいて、後述するタイヤ内周面データ作成部43によって、重複撮像領域X0に位置するタイヤ内周面の三次元形状データが、所定回転角度位置ごとに作成される。
また、図6に示されるように、空気入りタイヤ100のタイヤ内周面(インナライナ113の内表面)には、重複撮像領域X0に、被測定部60が設けられている。被測定部60は、塗装等によって付された模様として構成されている。本実施形態では、スプレー等で塗布されたランダムな点状の模様として構成されている。
なお、被測定部60として、種々の模様を採用することができる。例えば、被側部60として、タイヤ幅方向に延びる線分をタイヤ周方向に間隔を空けて塗布により複数設けてもよく、またタイヤ周方向に延びる線分をタイヤ幅方向に間隔を空けて塗布による複数設けてもよく、さらにまたタイヤ幅方向に延びる線分及びタイヤ周方向に延びる線分により格子状に塗布して設けてもよい。
なお、測定部50としては、撮像手段のほか、X線による計測を採用したり、レーザー変位計等を採用したりすることができる。この場合、被測定部60として、それぞれの測定部50によって検出可能なように、X線による計測に対してはタイヤ内周面に金属片を設けてもよく、レーザー変位計に対してはタイヤ内周面に凹凸部を設けてもよい。
また、測定部50としてカメラ50を採用する場合、カメラ50は、タイヤ内周面を動画として撮像するものでもよい。また、カメラ50を、タイヤ幅方向に離間して設け、これらによる撮像領域がタイヤ幅方向に重複する領域として重複撮像領域X0を設定してもよい。さらにまた、重複撮像領域X0を照らす照明部53(図5参照)リム140の円筒部142に設けてもよい。
次に、図3を参照しながら、タイヤ試験装置1に備えた制御装置40について説明する。制御装置40は、CPU、メモリ、記憶装置、入出力装置を備えた周知のコンピュータと、コンピュータに実装されたソフトウエアとにより構成されている。制御装置40は、タイヤ試験装置1の動作を統括的に制御するものである。制御装置40は、タイヤ転動制御部41と、タイヤ内周面測定制御部42と、タイヤ内周面データ作成部43と、ベルト変形推定部44とを備えている。
タイヤ転動制御部41は、各サーボモータ21~26を制御することで、様々な走行条件及び様々なアライメントにおいて、タイヤリム組立体Tを路面台2の上で転動させることできる。例えば、サーボモータ21,23,26を制御することによって、タイヤリム組立体Tを所定荷重で路面台2の上に接地させつつ、自由状態、駆動状態、制動状態を模擬して路面台2の上で転動させることができる。
さらに、上記に加えて、サーボモータ24を制御することによって、第3移動体13を水平方向Rに回転させてタイヤリム組立体Tのスリップ角を調整し、旋回状態を模擬して路面台2の上で転動させることができる。また、サーボモータ25を制御することによって、タイヤ支持軸14を上下方向Qに揺動させて、タイヤリム組立体Tのキャンバ角を調整できる。
タイヤ内周面測定制御部42は、測定部50を制御して、トレッド部110の内周面を測定する。具体的には、2つのカメラ50の撮像部51を制御して、タイヤ内周面を、少なくとも接地角度範囲Z0を含む撮像角度範囲において所定回転角度位置ごとに同期させつつ撮像し、撮像された画像データをそれぞれの記憶部52に記憶する。
タイヤ内周面データ作成部43は、2つの記憶部52に保存された2組の画像データに基づいて、タイヤ内周面の三次元形状データを作成する。上記2組の画像データは、所定回転角度位置ごとに記憶されているので、タイヤ内周面の三次元形状データは、所定回転角度位置ごとに作成される。また、タイヤ内周面の三次元形状データには、撮像された被測定部60が含まれている。
ベルト変形推定部44は、タイヤ内周面データ作成部43によって所定回転角度位置ごとに作成された、複数のタイヤ内周面の三次元形状データについて、点状の被測定部60のうち1つ又は複数の、タイヤ周方向、タイヤ幅方向、及びタイヤ径方向における位置及び形状を算出する。これによって、ベルト変形推定部44は、タイヤ内周面のうち当該注目した点状の被測定部60が設けられた部分の、タイヤリム組立体Tの転動に伴う位置及び形状の変化を、変形として算出する。
なお、変形は、例えば、所定回転角度位置ごとに作成された複数のタイヤ内周面の三次元形状データを、相互に、デジタルデータ相関法(DIC)又はパターンマッチング等により比較することによって算出される。変形には、注目した1つ又は複数の被測定部60についての、位置の変化(変位)と、形状の変化から算出される圧縮変形及び引張り変形等(変形量及び変形方向)とが含まれる。例えば、被測定部60のタイヤ径方向における変化(すなわちタイヤ径方向内側への変位)に基づいて、タイヤリム組立体Tの接地が判断される。
ここで、空気入りタイヤ100のトレッド部110は、タイヤ径方向の最も内面側にインナライナ113を備え、この外面にカーカスプライ114とベルト層117とが順に積層されている。したがって、タイヤ内周面データ作成部43によって作成された三次元形状データ及びベルト変形推定部44によって算出された変形は、それぞれインナライナ113の内周面についての三次元形状データ及び変形となる。
また、インナライナ113とベルト層117との間にはカーカスプライ114が位置しており、トレッドゴム119等の厚肉のゴム部材が存在していないので、インナライナ113の変形とベルト層117の変形とを略同一とみなすことができる。よって、ベルト変形推定部44は、上記算出したインナライナ113の変形を、ベルト層117の変形として推定している。
また、ベルト変形推定部44は、自由転動条件、駆動転動条件、制動転動条件、及び旋回転動条件の種々の条件におけるベルト層117の変形を、他の条件を基準とした変形として推定することもできる。なお、本明細書において、自由転動条件とは、タイヤリム組立体Tを、駆動力も制動力もかけずに路面台2上で転動させる条件を意味している。
自由転動におけるベルト層117の変形を推定する場合、ベルト変形推定部44は、複数の被測定部60の1つ又は複数について、所定回転角度位置ごとに、非接地条件で測定された位置及び形状に対する自由転動条件で測定された位置及び形状の変化として、ベルト層117の変形を推定する。非接地条件とは、タイヤリム組立体Tの内側に所定圧で気体を充填し、これを路面台2に接地させずに路面台2から上方へ離間させた条件を意味している。
非接地条件においては、被測定部60の位置は、タイヤリム組立体Tの回転角度位置によらず変化せず略一定とみなすことができるので、注目する被測定部60について1つの回転角度位置においてのみその位置を算出し、これに対する所定回転角度ごとに算出される被測定部60それぞれの位置の変位を算出するようにしてもよい。
駆動転動条件におけるベルト層117の変形を推定する場合、ベルト変形推定部44は、複数の被測定部60のうち注目する1つ又は複数について、所定回転角度位置ごとに、自由転動条件で測定された被測定部60の位置及び形状に対する駆動転動条件で測定された位置及び形状の変化として、ベルト層117の変形を推定する。
制動転動条件及び旋回転動条件においても同様にベルト層117の変形を推定する場合、ベルト変形推定部44は、複数の被測定部60のうち注目する1つ又は複数について、所定回転角度位置ごとに、自由転動条件で測定された被測定部60の位置及び形状に対する制動転動条件又は旋回転動条件で測定された位置及び形状の変化として、ベルト層117の変形を推定する。
すなわち、ベルト変形推定部44は、ベルト層117の変形として、注目する被測定部60の、1つの条件下における所定回転角度位置ごとの位置(絶対位置)及び形状の変化として算出する一方、ある条件を基準としたときの異なる条件下における位置の変化(相対位置)及び形状の変化としても算出する。
次に、図7に示すフローチャートを参照して、タイヤ試験装置1において実施されるベルト層117の変形を推定する流れについて説明する。
まず、ステップS001において、タイヤ転動制御部41は、タイヤリム組立体Tを非接地状態に維持する。すなわち、タイヤリム組立体Tを路面台2から上方へ離間した位置においてタイヤ軸周りに回転させずに保持するように、サーボモータ21~26が制御される。このときのタイヤリム組立体Tは、所定圧力の空気で充填されている。次いで、タイヤ内周面測定制御部42は、測定部50、すなわち2つのカメラ50の撮像部51を制御して、タイヤリム組立体Tのタイヤ内周面を測定し、撮像された画像データを記憶部52に記憶する。このとき、測定部50は、任意のタイヤ回転角度位置に位置している。
次に、ステップS002において、タイヤ転動制御部41は、タイヤリム組立体Tを路面台2上で自由転動条件により転動させる。このときの接地荷重は評価条件に応じた所定値になるようにサーボモータ21~26が制御される。タイヤリム組立体Tの自由転動時に、タイヤ内周面測定制御部42は、測定部50を制御して、少なくとも接地角度範囲Z0を含む所定の撮像角度範囲において、所定回転角度ごとに、タイヤリム組立体Tのタイヤ内周面を測定する。
次に、ステップS003において、ベルト変形を推定したい条件が、自由転動条件であるか否か判断する。なお、ベルト変形を推定したい転動条件は、タイヤ試験装置1に備えた不図示の入力装置を操作することによって適宜設定されるようになっている。
ステップS003の判定がYESの場合、ステップS010に進み、タイヤ内周面データ作成部43は、ステップS002において測定された2組の画像データに基づいて、自由転動条件でのタイヤ内周面の三次元形状データを所定回転角度位置ごとに作成する。
次に、ステップS011に進み、ベルト変形推定部44は、複数の被測定部60のうち1つ又は複数について、ステップS010において作成されたタイヤ内周面の三次元形状データにおける位置及び形状を所定回転角度位置ごとに算出する。さらに、ベルト変形推定部44は、当該1つ又は複数の被測定部60について、ステップS001において非接地条件で撮像された画像に対する、ステップS010において作成されたタイヤ内周面の三次元形状データにおける画像の変化を所定回転角度位置ごとに算出して、これを自由転動条件におけるベルト層117の変形として推定する。
また、ステップS003の判定がNOの場合、ステップS004に進み、ベルト変形を推定したい条件が、駆動転動条件であるか否か判断する。ステップS004の判定がYESの場合、ステップS005に進み、タイヤ転動制御部41は、タイヤリム組立体Tを、路面台2上で駆動転動条件により転動させる。このときの接地荷重及び駆動荷重が評価条件に応じた所定値になるようにサーボモータ21~26が制御される。
一方、ステップS004の判定がNOの場合、ステップS006に進み、ベルト変形を推定したい条件が、制動転動条件であるか否か判断する。ステップS006の判定がYESの場合、ステップS007に進み、タイヤ転動制御部41は、タイヤリム組立体Tを、路面台2上で制動転動条件により転動させる。このときの接地荷重及び制動荷重が評価条件に応じた所定値になるようにサーボモータ21~26が制御される。
また、ステップS006の判定がNOの場合、ステップS008へ進む。ステップS008においては、ベルト変形を推定したい条件は、自由転動条件でも駆動転動条件でも制動転動条件でもないので、旋回転動条件であると判断されている。ステップS008において、タイヤ転動制御部41は、タイヤリム組立体Tを、路面台2の上で旋回転動条件により転動させる。このときの接地荷重及び旋回転動条件(スリップ角等)が評価条件に応じた所定値になるようにサーボモータ21~26が制御される。
ステップS005,S007,S008において、タイヤリム組立体Tが転動している間に、タイヤ内周面測定制御部42は、測定部50を制御して、所定の撮像角度範囲において、所定回転角度ごとに、タイヤリム組立体Tの内周面を測定する。
ステップS005,S007,S008において測定された後、ステップS010へ進む。ステップS010において、タイヤ内周面データ作成部43は、タイヤ内周面測定制御部42によって測定された2組の画像データに基づいて、それぞれの転動条件におけるタイヤ内周面の三次元形状データを作成する。例えば、ステップS005を経由した場合、自由転動条件及び駆動転動条件におけるタイヤ内周面の三次元形状データが作成される。
次に、ステップS011に進み、ベルト変形推定部44は、複数の被測定部60のうち1つ又は複数について、ステップS010において作成された各転動条件におけるタイヤ内周面の三次元形状データにおける位置及び形状を所定回転角度位置ごとに算出し、これをベルト層117の各転動条件における変形として推定する。さらに、ベルト変形推定部44は、当該1つ又は複数の被測定部60について、自由転動条件において撮像された画像に対する各転動条件において撮像された画像の変化を所定回転角度位置ごとに算出して、これを各転動条件におけるベルト層117の変形として推定する。
図8には、一例として、進行方向Fに対して左側へスリップ角Yでタイヤリム組立体Tを転動させた旋回転動条件下において、1つの被測定部60について、所定回転角度位置ごとに算出された、自由転動条件における位置に対する旋回転動条件における位置の変化として、ベルト層117の変形が示されている。図8に示されるように、接地領域Gにおいて、踏み込み側の領域では、進行方向に沿って接地形状内を蹴り出し側へ向かってトレッド部110の左方へ移動しており、蹴り出し側の領域において、タイヤ幅方向において元に戻るようにトレッド部110の右方へ移動していることが判る。これによって、ベルト層117の剛性を評価することができ、ベルト層117の仕様検討に利用することができる。
上記実施形態に係るタイヤ試験装置1によれば、以下の効果を奏する。
(1)空気入りタイヤ100は、トレッド部110に、インナライナ113とベルト層117とを含んでおり、これらの間にはトレッドゴム119等の厚肉のゴム部材が介在していない。したがって、インナライナ113とベルト層117との間に、変形しやすい厚肉のゴム部材が介在していないので、インナライナ113の変形をベルト層117の変形と概ね同一であるとみなすことができる。よって、本発明によれば、タイヤリム組立体Tの転動時に、インナライナ113の内面のうちベルト幅領域を少なくとも接地角度範囲Z0において測定し、該測定されたインナライナ113の表面形状に基づいて、ベルト層117の変形を精度よく推定できる。
(2)撮像角度範囲として、接地角度範囲Z0に加えて、踏み込み側の所定回転角度範囲Z1及び/又は蹴り出し側の所定回転角度範囲Z2とを含むことによって、接地領域Gにおけるベルト層117の変形に加えて、接地前のベルト層117の変形及び/又は接地後のベルト層117の変形を把握することができるので、ベルト層117の変形挙動をより精度よく推定できる。
(3)複数の被測定部60のうち、タイヤ幅方向における複数の被測定部60について、ベルト層117の変形を推定することによって、ベルト層117がタイヤ幅方向に曲率を有する場合であっても、ベルト層117の変形をより精度よく推定できる。
(4)ベルト層117の変形を、自由転動条件、駆動転動条件、制動転動条件、及び旋回転動条件を含む様々な転動条件において推定できる。
(5)タイヤ幅方向におけるベルト層117の変形を推定することによって、旋回時及びキャンバ角を付された場合等、タイヤリム組立体Tに横方向の力が生じ得る条件下における、ベルト層117のタイヤ幅方向の変形を推定できる。これによってベルト層117の横方向の剛性を評価できる。
(6)自由転動条件における測定結果と旋回転動条件における測定結果とに基づいて、旋回転動条件でのタイヤ幅方向におけるベルト層の変形を推定することによって、自由転動条件下におけるベルト層117の変形を除いて、旋回転動条件下における、ベルト層117のタイヤ幅方向の変形を推定できる。
(7)タイヤ径方向におけるベルト層の変形を推定することによって、タイヤ側面視におけるベルト層117の変形挙動を評価できる。例えば、タイヤ径方向内側への変位に基づいて、トレッド部110の接地を把握しやすい。
(8)非接地条件における測定結果と自由転動条件における測定結果とに基づいて、自由転動条件でのベルト層117の変形を推定することによって、接地によるベルト層117の変形と自由転動によるベルト層117の変形とを、合計として推定できる。
(9)タイヤ周方向におけるベルト層117の変形を推定することによって、タイヤ周方向におけるベルト層117の変形挙動を評価できる。例えば、接地領域Gにおけるベルト層117のタイヤ周方向への引っ張り又は圧縮等の変形を推定できる。
(10)自由転動条件における測定結果と駆動転動条件における測定結果とに基づいて、駆動転動条件でのタイヤ周方向におけるベルト層117の変形を推定することによって、自由転動条件下におけるベルト層117の変形を除いて、駆動転動条件下における、ベルト層117のタイヤ周方向の変形を推定できる。
(11)自由転動条件における測定結果と制動転動条件における測定結果とに基づいて、制動転動条件でのタイヤ周方向におけるベルト層117の変形を推定することによって、自由転動条件下におけるベルト層117の変形を除いて、制動転動条件下における、ベルト層のタイヤ周方向の変形を推定できる。
次に図9~図12を参照して、他の実施形態に係るタイヤ試験装置200について説明する。タイヤ試験装置200のうち、タイヤ試験装置1と同じ構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。図9は、路面台2の上を、転動しているタイヤリム組立体Tを拡大して示す、タイヤ試験装置200の側面図である。図9に示されるように、タイヤ試験装置200は、トレッド部110の外周面の形状を測定する外周測定部210をさらに備えると共に、制御装置40に換えて制御装置240を備えている点で、タイヤ試験装置1に対して異なっている。
外周測定部210は、路面台2に埋設されており、路面台2の一部を構成する路面プレート211と、路面プレート211の下側に位置するカメラ212とを有している。路面プレート211は、透明な例えばガラス板又はアクリル板により構成されてり、少なくとも接地領域Gに対応する広さを有している。カメラ212は、路面プレート211を通して、路面台2の上を転動されるタイヤリム組立体Tを接地面側から撮像する。本実施形態では、カメラ212は1つのみ設けられている。カメラ212は、撮像する撮像部213と、撮像された画像を記憶する記憶部214とを有している。カメラ212による撮像範囲は、少なくとも接地領域Gの全体、すなわち少なくとも接地幅W0(ベルト幅領域)を接地長L0に対応する領域において撮像できるように設定されている。
外周測定部210は、路面台2のうち、路面台2の上を転動されるタイヤリム組立体Tの測定部50が接地領域Gのうちタイヤ周方向中央に対向する回転角度に位置する場所に、位置している。したがって、測定部50による重複撮像領域X0が接地領域Gにおけるタイヤ周方向の中央に位置するときに、測定部50と外周測定部210とはトレッド部110を挟んで上下方向に対向する位置関係にある。
図10は、タイヤリム組立体Tのトレッド部110を径方向外側から見た正面図であり、接地領域Gと測定部50による撮像領域X1,X2及び重複撮像領域X0が合わせて示されている。図10に示されるように、重複撮像領域X0が構成されるトレッド部110の外周部には、外周被測定部220が設けられている。外周被測定部220は、被測定部60と同様に、パターン要素として設けられ、本実施形態では点状のパターン要素が例えばスプレー等の塗布により設けられている。
タイヤ試験装置200は、路面台2の上を転動されるタイヤリム組立体Tのトレッド部110を接地領域Gにおいて測定し、測定されたトレッド部110に基づいて、後述するトレッド接地面変形算出部243によって、接地領域Gにおけるトレッド部110の接地面の変形を算出する。
なお、外周測定部210に関して、カメラ212を2つ設けて、トレッド部110の外周面の3次元形状データを作成するようにしてもよい。これによって、接地前後のブロックの挙動を把握しやすい。
図9を参照して、制御装置240について説明する。制御装置240は、タイヤ試験装置1の制御装置40の各構成要素に加えて、タイヤ外周面測定制御部241と、タイヤ外周面データ作成部242と、トレッド接地面変形算出部243と、トレッドゴム変形推定部244とをさらに備えている。
タイヤ外周面測定制御部241は、外周測定部210を制御して、トレッド部110の外周面を測定する。具体的には、カメラ212の撮像部213を制御して、タイヤ外周面を、測定部50の撮像角度範囲において、測定部50による測定と同期させて所定回転角度位置ごとに撮像し、撮像された画像データを記憶部214に記憶する。また、タイヤ外周面測定制御部241は、非接地条件における測定では、測定部50による重複撮像領域X0が鉛直方向下方に位置するようにタイヤリム組立体Tを保持しつつ、タイヤ外周面を測定する。
タイヤ外周面データ作成部242は、記憶部214に保存された画像データに基づいて、タイヤ外周面の画像データを作成する。なお、カメラ212として、重複撮像領域を有する2つのカメラ212により構成した場合には、2組の画像データに基づいてタイヤ外周面の三次元形状データとして作成する。タイヤ外周面の画像データには、外周被測定部220が含まれている。
トレッド接地面変形算出部243は、タイヤ外周面データ作成部242によって所定回転角度位置ごとに作成された、複数のタイヤ外周面の画像データについて、点状の外周被測定部220のうち1つ又は複数の、タイヤ周方向、タイヤ幅方向、及びタイヤ径方向における位置及び形状を算出する。これによって、トレッド接地面変形算出部243は、タイヤ外周面のうち当該注目した点状の外周被測定部220が設けられた部分の、タイヤリム組立体Tの転動に伴う位置及び形状の変化を、変形として算出する。
また、トレッド接地面変形算出部243は、ベルト変形推定部44と同様に、自由転動条件、駆動転動条件、制動転動条件、及び旋回転動条件の種々の条件におけるタイヤ外周面の変形を、他の条件を基準とした変形として算出することもできる。
トレッドゴム変形推定部244は、所定角度位置ごとに推定されたベルト層117の変形とトレッド部110の外周面の変形とに基づいて、トレッドゴム119の変形を推定する。具体的には、タイヤ内周面に設けられた複数の被測定部60のうち注目する被測定部60と、これに対してタイヤ径方向に対向する外周被測定部220とに対して、それぞれベルト層117の変形と、タイヤ外周面の変形とを算出し、これらを同期して測定された所定回転角度位置ごとに比較することによって、トレッド部110のうち、同一部分について、タイヤ内周面側とタイヤ外周面側の変位を算出し、これらの差分に基づいてトレッドゴム119の変形として推定する。
次に図11に示すフローチャートを参照して、タイヤ試験装置200において実施されるトレッド部110の頂面の変形の算出とトレッドゴム119の推定の流れについて説明する。
まず、ステップS101において、タイヤ転動制御部41は、所定圧力の空気で充填されたタイヤリム組立体Tを非接地状態に維持する。次いで、タイヤ内周面測定制御部42は、測定部50を制御して、タイヤリム組立体Tのタイヤ内周面を測定し、撮像された画像データを記憶部52に記憶する。加えて、タイヤ外周面測定制御部241は、タイヤリム組立体Tのタイヤ外周面(トレッド部110の外周面)を測定する。このとき、外周被測定部220は、外周測定部210に対向するように、タイヤリム組立体Tの鉛直方向直下に位置している。
次に、ステップS102において、タイヤ転動制御部41は、タイヤリム組立体Tを路面台2上で自由転動条件により転動させる。タイヤリム組立体Tの自由転動時に、タイヤ内周面測定制御部42は、測定部50を制御して、所定の撮像角度範囲において、所定回転角度ごとに、タイヤリム組立体Tのタイヤ内周面を測定する。
さらに、測定部50による測定に同期させて、タイヤ外周面測定制御部241は、外周測定部210を制御して、所定の撮像角度範囲において、所定回転角度ごとに、タイヤリム組立体Tのタイヤ外周面を測定する。なお、外周測定部210は、路面台2に固定されており、タイヤリム組立体Tの転動と共に回転しない。このため、タイヤ外周面測定制御部241は、その撮像範囲に外周被測定部220が位置するときにのみ撮像を実施するようにしてもよく、又は外周被測定部220が接地領域Gに位置するときにのみ撮像を実施するようにしてもよい。
次に、ステップS103において、トレッドゴム119の変形を推定したい条件が、自由転動条件であるか否か判断する。なお、トレッドゴム119の変形を推定したい転動条件は、タイヤ試験装置200に備えた不図示の入力装置を操作することによって適宜設定されるようになっている。
ステップS103の判定がYESの場合、ステップS110に進み、タイヤ内周面データ作成部43は、ステップS102において測定された2組の画像データに基づいて、自由転動条件でのタイヤ内周面の三次元形状データを所定回転角度位置ごとに作成する。さらに、タイヤ外周面データ作成部242は、ステップS102において測定された画像データに基づいて自由転動条件でのタイヤ外周面の形状データを所定回転角度位置ごとに作成する。なお、カメラ212が重複撮像領域X0を有する複数で構成されている場合には、タイヤ外周面データ作成部は、タイヤ外周面の三次元形状データを作成する。
次に、ステップS111に進み、ベルト変形推定部44は、複数の被測定部60のうち1つ又は複数について、ステップS110において作成されたタイヤ内周面の三次元形状データにおける位置及び形状を所定回転角度位置ごとに算出する。さらに、ベルト変形推定部44は、当該1つ又は複数の被測定部60について、ステップS101において非接地条件で撮像された画像に対する、ステップS110において作成されたタイヤ内周面の三次元形状データにおける画像の変化を所定回転角度位置ごとに算出して、これを自由転動条件におけるベルト層117の変形として推定する。
また、ステップS103の判定がNOの場合、ステップS104に進み、トレッドゴム119の変形を推定したい条件が、駆動転動条件であるか否か判断する。ステップS104の判定がYESの場合、ステップS105に進み、タイヤ転動制御部41は、タイヤリム組立体Tを、路面台2上で駆動転動条件により転動させる。
一方、ステップS104の判定がNOの場合、ステップS106に進み、トレッドゴム119の変形を推定したい条件が、制動転動条件であるか否か判断する。ステップS106の判定がYESの場合、ステップS107に進み、タイヤ転動制御部41は、タイヤリム組立体Tを、路面台2上で制動転動条件により転動させる。
また、ステップS106の判定がNOの場合、ステップS108へ進む。ステップS108においては、トレッドゴム119の変形を推定したい条件が、自由転動条件でも駆動転動条件でも制動転動条件でもないので、旋回転動条件であると判断されている。ステップS108において、タイヤ転動制御部41は、タイヤリム組立体Tを、路面台2の上で旋回転動条件により転動させる。
ステップS105,S107及びS108において、タイヤリム組立体Tが転動している間に、タイヤ内周面測定制御部42は、測定部50を制御して、所定の撮像角度範囲において、所定回転角度ごとに、タイヤリム組立体Tの内周面を測定する。さらに、測定部50による測定に同期させて、タイヤ外周面測定制御部241は、外周測定部210を制御して、所定の撮像角度範囲において、所定回転角度ごとに、タイヤリム組立体Tのタイヤ外周面を測定する。
ステップS005,S007,S008において測定された後、ステップS110へ進む。ステップS110において、タイヤ内周面データ作成部43は、タイヤ内周面測定制御部42によって測定された2組の画像データに基づいて、それぞれの転動条件におけるタイヤ内周面の三次元形状データを作成する。さらに、タイヤ外周面データ作成部242は、タイヤ外周面測定制御部241によって測定された画像データに基づいて、それぞれの転動条件におけるタイヤ内周面の形状データ(又は三次元形状データ)を作成する。例えば、ステップS105を経由した場合、自由転動条件及び駆動転動条件におけるタイヤ内周面の三次元形状データ及びタイヤ外周面の形状データが作成される。
次に、ステップS111に進み、ベルト変形推定部44は、複数の被測定部60のうち1つ又は複数について、ステップS110において作成された各転動条件におけるタイヤ内周面の三次元形状データにおける位置及び形状を所定回転角度位置ごとに算出し、これをベルト層117の各転動条件における変形として推定する。さらに、ベルト変形推定部44は、当該1つ又は複数の被測定部60について、自由転動条件において撮像された画像に対する各転動条件において撮像された画像の変化を所定回転角度位置ごとに算出して、これを各転動条件におけるベルト層117の変形として推定する。
次に、ステップS112に進み、トレッド接地面変形算出部243は、複数の外周被測定部220のうち1つ又は複数について、より具体的にはステップS111において注目した被測定部60に対してタイヤ径方向に対向する外周被測定部220について、ステップS110において作成された各転動条件におけるタイヤ外周面の形状データにおける位置及び形状を所定回転角度位置ごとに算出し、これをトレッド部110の接地面の各転動条件における変形として算出する。
さらに、トレッド接地面変形算出部243は、当該1つ又は複数の外周被測定部220について、自由転動条件において撮像された画像に対する各転動条件において撮像された画像の変化を所定回転角度位置ごとに算出して、これを各転動条件におけるトレッド部110の接地面の変形として算出する。
次に、ステップS113に進み、トレッドゴム変形推定部244は、ステップS111において算出された1つ又は複数の被測定部60の変形と、ステップS112において算出された、当該1つ又は複数の被測定部60に対応する、1つ又は複数の外周被測定部220の変形とを比較して、トレッドゴム119の変形として推定する。
図12には、一例として、進行方向Fに対して左側へスリップ角Yでタイヤリム組立体Tを転動させた旋回転動条件下において、1つの被測定部60について所定回転角度位置ごとに算出された自由転動条件に対する旋回転動条件の変化として推定されたベルト層117の変形が、黒丸で示されている。また、図12には併せて、当該1つの被測定部60に対応する1つの外周被測定部220について所定回転角度位置ごとに算出された自由転動条件に対する旋回転動条件の変化として算出されたトレッド部110の接地面の変形が、白丸で示されている。
図12に示されるように、接地領域Gにおいて、踏み込み側の領域では、ベルト層117及びトレッド部110の接地面ともに、進行方向に沿って接地形状内を蹴り出し側へ向かってトレッド部110の左方へ移動しており、蹴り出し側の領域において、タイヤ幅方向において元に戻るようにトレッド部110の右方へ移動していることが判る。また、トレッド部110の接地面は、ベルト層117よりも変形が大きい。
図12において点線で示されるように、同一時点における、トレッド部110の接地面の変形とベルト層117の変形との差を、トレッドゴム119の変形(せん断変形)とみなすことができる。これによって、例えば、トレッドゴム119の変形が均一となる観点で、ベルト層117の剛性を評価することができ、ベルト層117の仕様検討に利用することができる。
上記他の実施形態に係るタイヤ試験装置200によれば、タイヤ試験装置1において操奏される効果に加えて、トレッドゴム119の変形を精度よく推定できる。しかも、トレッド部110のうち、同一部位のタイヤ外表面側の部分とタイヤ内表面側の部分とを測定することによって、この間に位置する厚肉のゴム部材であるトレッドゴム119の変形をより精度よく推定できる。
上記実施形態では、タイヤリム組立体Tの内側に所定圧の気体を充填した状態と、種々の転動状態において測定しベルト変形等を推定しているが、このほか、タイヤリム組立体Tの内側に気体を充填しない場合においても測定してもよい。すなわち、タイヤリム組立体Tの内側に気体を充填する前後で比較することによって、気体の充填によるベルト層117の剛性を評価できる。
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。