JP7297309B2 - 歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団の製造方法 - Google Patents

歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団の製造方法、歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団、当該細胞集団又はその培養上清を有効成分とする医薬組成物、当該細胞集団を用いて形成された歯根膜コーティングを有する歯又は歯科インプラントの製造方法、及び歯根膜幹細胞の新規マーカーに関する。
歯根膜(Periodontal Ligament)は、口腔相に存在する歯とそれを支える歯槽骨との間に介在する線維性結合組織である。口腔相は、消化管の入り口に位置し、食物摂取や体外環境因子の吸引等により多種多様な刺激に晒される場所である。その中において、歯根膜は生理的条件下で上皮が断裂している部位に位置することで常に慢性炎症刺激に晒されているほか、物を噛む際に発生する、平均的に自身の体重以上の力に達するといわれる咬合力にも晒されている。このような過酷な環境下で、歯根膜は優れた再生能によってその恒常性を維持し続けている。
歯根膜は、その優れた再生能から、再生医療に使用するための組織幹細胞の有力なソースとして期待されている。再生医療への応用においては、歯根膜から歯根膜幹細胞を又は歯根膜幹細胞を優位に含む細胞集団を利用可能な状態に分離することが求められる。通常、組織幹細胞は組織における存在率が0.1%以下ともいわれる非常に希少な細胞集団であり、歯根膜幹細胞もその例外ではないことから、歯根膜幹細胞を歯根膜から分離又は濃縮する方法の確立が望まれている。
発生学的にみると、歯のエナメル質は上皮系細胞由来であり、歯根や歯髄部分は間葉系細胞由来であるが、一本の高度に結晶化した歯として成熟する前段階において、上皮間葉相互作用が働くことによりそれらが共生する時期があることが知られている。また、歯の成熟後に上皮細胞はアポトーシスにより消退するが、その一部は歯根膜組織中に上皮遺残として残っていることが知られている。この発生学的理由から、歯根膜組織には上皮系幹細胞と間葉系幹細胞とが存在するものと考えられ、これらに着目した研究が進められている。
これまでに、歯根膜から上皮系幹細胞、間葉系幹細胞又はそれらを含む細胞集団を分離する方法が幾つか報告されている。Athanassiouらは、歯根膜のマラッセ上皮遺残から分離した細胞をFGF-10(fibroblast growth factor 10)を添加した培地で培養することで、OCT4, NANOG, SOX2等を発現している多分化能を有する上皮系幹細胞を得たと報告している(非特許文献1)。また、Trubianiらは、歯根膜から分離した細胞をゼノフリーの間葉系幹細胞増殖培地で培養することで間葉系幹細胞を得たと報告している(非特許文献2)。
しかしながら、歯根膜由来の上皮系幹細胞及び間葉系幹細胞に関する学術的知見の蓄積は、例えば骨髄由来の間葉系幹細胞等と比較して未だ十分ではなく、歯根膜から各細胞を効率的に、また幹細胞性を維持したまま分離する条件について、依然として模索が続けられている状態である。また、歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞のそれぞれに特有の分子生物学的又は細胞生物学的特徴、例えば他の細胞との区別を可能にするマーカー等も確立されていない。そのため、現状は、各研究者が独自の方法で分離した細胞について、それぞれの判断に基づいて他の体性幹細胞にも見られる幾つかの特徴を確認したことで、幹細胞と判断しているに留まっている。
M. Athanassiou-Papaefthymiou et. al., Journal of Dental Research, 2015, 94(11): 1591-1600 O. Trubiani et. al., Tissue Engineering: Part C, 2015, 21 (1): 52-64
本発明者は、歯根膜組織に存在する上皮系幹細胞及び間葉系幹細胞は、それぞれが共生的に働き互いの機能を補完することによって歯根膜組織の優れた再生能の維持に寄与するものであり、歯根膜組織その他の歯周組織再生を含む再生医療においてはこれらの歯根膜幹細胞の両方を共存させることで歯の発生を模した環境を作り出すことが重要であると考えた。本発明は、歯根膜幹細胞、特に歯根膜上皮系幹細胞及び/又は歯根膜間葉系幹細胞を多く含む細胞集団を調製する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、特定の増殖因子を含む培地中で歯根膜由来の細胞集団を低酸素濃度で培養することにより、歯根膜上皮系幹細胞及び/又は歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団を製造することができることを見出し、以下の発明を完成させた。
(1)歯根膜から分離した細胞集団をFGF-10及びEGFを含む培地又はFGF-2を含む培地で酸素濃度5%以下で培養する幹細胞選別工程を含む、歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団を製造する方法。
(2)幹細胞選別工程が歯根膜から分離した細胞集団をFGF-10及びEGFを含む培地で酸素濃度5%以下で培養する上皮系幹細胞選別工程であり、歯根膜幹細胞が歯根膜上皮系幹細胞である、(1)に記載の方法。
(3)幹細胞選別工程が歯根膜から分離した細胞集団をFGF-2を含む培地で酸素濃度5%以下で培養する間葉系幹細胞選別工程であり、歯根膜幹細胞が歯根膜間葉系幹細胞である、(1)に記載の方法。
(4)FGF-10及びEGFを含む培地がWntシグナル活性化物質をさらに含む、(1)又は(2)に記載の方法。
(5)FGF-10及びEGFを含む培地がBMPシグナル活性化物質をさらに含む、(1)、(2)又は(4)に記載の方法。
(6)FGF-10及びEGFを含む培地が上皮間葉転換阻害剤をさらに含む、(1)、(2)、(4)又は(5)に記載の方法。
(7)培地がヘパリン及び/又はヘパラン硫酸をさらに含む、(1)~(6)のいずれか一項に記載の方法。
(8) (1)、(2)、(4)~(7)のいずれか一項に記載の方法で製造される、歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団。
(9) (1)、(3)又は(7)のいずれか一項に記載の方法で製造される、歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団。
(10) (8)に記載の歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団と(9)に記載の歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団とを混合してなる、歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団。
(11)歯根膜から分離した細胞集団をFGF-10及びEGFを含有する培地で酸素濃度5%以下で培養する上皮系幹細胞選別工程、前記工程で得られた歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団を継代培養することで歯根膜上皮系幹細胞を歯根膜間葉系幹細胞へと転換させる上皮間葉転換工程を含む、歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団を製造する方法。
(12)FGF-10及びEGFを含む培地がWntシグナル活性化物質をさらに含む、(11)に記載の方法。
(13)FGF-10及びEGFを含む培地がBMPシグナル活性化物質をさらに含む、(11)又は(12)に記載の方法。
(14)FGF-10及びEGFを含む培地が上皮間葉転換阻害剤をさらに含む、(11)~(13)のいずれか一項に記載の方法。
(15)培地がヘパリン及び/又はヘパラン硫酸をさらに含む、(11)~(14)のいずれか一項に記載の方法。
(16) (11)~(15)のいずれか一項に記載の方法で製造される、歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団。
(17) (8)、(9)、(10)又は(16)に記載の細胞集団又はそれらの培養上清を有効成分とする、再生医療のための医薬組成物。
(18)歯周組織の再生のための、(17)に記載の医薬組成物。
(19) (8)、(9)、(10)若しくは(16)のいずれか一項に記載の細胞集団を抜歯された歯若しくは歯科インプラントの存在下で培養することで歯若しくは歯科インプラントの表面に歯根膜を形成させる工程、又は(8)、(9)、(10)若しくは(16)のいずれか一項に記載の細胞集団を培養することで形成された歯根膜シートを歯若しくは歯科インプラントの表面に付着させる工程を含む、歯根膜コーティングを有する歯又は歯科インプラントの製造方法。
(20)CD133、TGF-α、GPR87、EDN1、EFNA1、SPRR2B、S100A8、S100A9、TFCP2L1、ITGA6、CDCP1、EREG及びLIFよりなる群から選択される少なくとも1の分子の、歯根膜上皮系幹細胞マーカーとしての使用。
(21)CDCP1、EREG、EDNRB、CD82、CD93、NR5A2、KDR、LIF、TBX2、TBX3、IFITM1、BMI1及びZFP42よりなる群から選択される少なくとも1の分子の、歯根膜間葉系幹細胞マーカーとしての使用。
(22)以下の(a)~(m)の少なくとも1を特徴とする、歯根膜由来の上皮系幹細胞:
(a)HPRTに対するCD133の相対的発現量が0.01以上であり;
(b)HPRTに対するTGF-αの相対的発現量が3.0以上であり;
(c)HPRTに対するGPR87の相対的発現量が0.2以上であり;
(d)HPRTに対するEDN1の相対的発現量が1.0以上であり;
(e)HPRTに対するEFNA1の相対的発現量が0.8以上であり;
(f)HPRTに対するSPRR2Bの相対的発現量が5.0以上であり;
(g)HPRTに対するS100A8の相対的発現量が0.2以上であり;
(h)HPRTに対するS100A9の相対的発現量が100以上であり;
(i)HPRTに対するTFCP2L1の相対的発現量が0.15以上であり;
(j)HPRTに対するITGA6の相対的発現量が4.0以上であり;
(k)HPRTに対するCDCP1の相対的発現量が3.0以上であり;
(l)HPRTに対するEREGの相対的発現量が1.0以上であり;
(m)HPRTに対するLIFの相対的発現量が10以上である。
(23)(a)~(m)の全てを特徴とする、(22)に記載の上皮系幹細胞。
(24)以下の(n)~(z)の少なくとも1を特徴とする、歯根膜由来の間葉系幹細胞:
(n)HPRTに対するCDCP1の相対的発現量が3.0以上であり;
(o)HPRTに対するEREGの相対的発現量が1.0以上であり;
(p)HPRTに対するEDNRBの相対的発現量が1.0以上であり;
(q)HPRTに対するCD82の相対的発現量が1.0以上であり;
(r)HPRTに対するCD93の相対的発現量が0.5以上であり;
(s)HPRTに対するNR5A2の相対的発現量が0.1以上であり;
(t)HPRTに対するKDRの相対的発現量が0.05以上であり;
(u)HPRTに対するLIFの相対的発現量が10以上であり;
(v)HPRTに対するTBX2の相対的発現量が5.0以上であり;
(w)HPRTに対するTBX3の相対的発現量が3.0以上であり;
(x)HPRTに対するIFITM1の相対的発現量が100以上であり;
(y)HPRTに対するBMI1の相対的発現量が1.0以上であり;
(z)HPRTに対するZFP42の相対的発現量が0.01以上である。
(25)(n)~(z)の全てを特徴とする、(24)に記載の間葉系幹細胞。
(26) (22)若しくは(23)に記載の上皮系幹細胞及び/若しくは(24)若しくは(25)に記載の間葉系幹細胞、又はそれらの培養上清を有効成分とする、医薬組成物。
(27)歯周組織の再生のための、(26)に記載の医薬組成物。
(28) (22)若しくは(23)に記載の上皮系幹細胞及び/若しくは(24)若しくは(25)に記載の間葉系幹細胞を抜歯された歯若しくは歯科インプラントの存在下で培養することで歯若しくは歯科インプラントの表面に歯根膜を形成させる工程、又は(22)若しくは(23)に記載の上皮系幹細胞及び/若しくは(24)若しくは(25)に記載の間葉系幹細胞を培養することで形成された歯根膜シートを歯若しくは歯科インプラントの表面に付着させる工程を含む、歯根膜コーティングを有する歯又は歯科インプラントの製造方法。
本発明によれば、セルソーティング等の手技を用いることなく、特定の増殖因子を含む培地で歯根膜由来の細胞集団を低酸素濃度下で培養することで、歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団を製造することができる。このようにして製造される細胞集団又はその培養上清は、歯根膜組織その他の歯周組織、さらには組織幹細胞による再生が可能な他の組織又は器官の再生を含む再生医療において用いることができる。歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞それぞれについてのマーカーは、それぞれの幹細胞又はそれらを含む細胞集団を製造する、保存する又は使用する際に、各幹細胞であることの確認又はそれらの幹細胞性の確認に利用することができる。
FGF-2の存在下又は非存在下、正常酸素濃度又は低酸素濃度で培養することで形成された歯根膜幹細胞コロニーのクリスタルバイオレット染色像である。 FGF-2の存在下又は非存在下、正常酸素濃度又は低酸素濃度で培養することで形成された歯根膜幹細胞コロニーをクリスタルバイオレット染色した後のプレートの560nmにおける吸光度の相対値を示すグラフである。縦軸は増殖因子の非存在下、正常酸素濃度で培養した歯根膜幹細胞の吸光度を1としたときの相対的吸光度である。 BIO、FGF-10+EGF又はFGF-10+EGF+BIOの存在下又は非存在下、正常酸素濃度又は低酸素濃度で培養することで形成された歯根膜幹細胞コロニーのクリスタルバイオレット染色像である。 FGF-2又はFGF-10+EGFの存在下、低酸素濃度で培養することで形成された歯根膜幹細胞コロニーをクリスタルバイオレット染色した後のプレートの560nmにおける吸光度の相対値を示すグラフである。縦軸は、増殖因子の非存在下、正常酸素濃度で培養した歯根膜幹細胞の吸光度を1としたときの相対的吸光度である。 公知の間葉系幹細胞マーカーについて、従来法により選別された歯根膜間葉系幹細胞における遺伝子発現量を100としたときの本発明による歯根膜間葉系幹細胞における遺伝子発現量を示すグラフである。 公知の間葉系幹細胞マーカーについて、従来法により選別された歯根膜間葉系幹細胞における遺伝子発現量を100としたときの本発明による歯根膜間葉系幹細胞における遺伝子発現量を示すグラフである。 本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞、従来法により選別された歯根膜幹細胞並びに骨髄由来間葉系幹細胞における、ハウスキーピング遺伝子HPRTの発現量で補正した幹細胞マーカー遺伝子の相対的発現量(対HPRT相対的発現量)を示すドットプロットである。 本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞、従来法により選別された歯根膜幹細胞並びに骨髄由来間葉系幹細胞における、ハウスキーピング遺伝子HPRTの発現量で補正した幹細胞マーカー遺伝子の相対的発現量(対HPRT相対的発現量)を示すドットプロットである。 本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞、従来法により選別された歯根膜幹細胞並びに骨髄由来間葉系幹細胞、ハウスキーピング遺伝子HPRTの発現量で補正した幹細胞マーカー遺伝子の相対的発現量(対HPRT相対的発現量)を示すドットプロットである。 本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞、従来法により選別された歯根膜幹細胞並びに骨髄由来間葉系幹細胞における、ハウスキーピング遺伝子HPRTの発現量で補正した幹細胞マーカー遺伝子の相対的発現量(対HPRT相対的発現量)を示すドットプロットである。TFCP2L1の相対的発現量は、2つのドットプロットを用いて示している(図の中段)。 増殖因子の非存在下、正常酸素濃度で培養した細胞(control)、及びFGF-10+EGF又はFGF-10+EGF+SB431542の存在下、低酸素濃度で培養した細胞(それぞれn-EpiSC及びn-EpiSC+SB431542)における上皮島出現率のグラフ及び各細胞の代表的な位相差観察像である。 増殖因子の非存在下、正常酸素濃度で培養した細胞(control)、及びFGF-10+EGF又はFGF-10+EGF+SB431542の存在下、低酸素濃度で培養した細胞(それぞれn-EpiSC及びn-EpiSC+SB431542)における、ハウスキーピング遺伝子HPRTの発現量で補正した幹細胞マーカー遺伝子の相対的発現量(対HPRT相対的発現量)を示すグラフである。 増殖因子の非存在下、正常酸素濃度で培養した細胞(control)、及びFGF-10+EGF又はFGF-10+EGF+SB431542の存在下、低酸素濃度で培養した細胞(それぞれn-EpiSC及びn-EpiSC+SB431542)における、ハウスキーピング遺伝子HPRTの発現量で補正した幹細胞マーカー遺伝子の相対的発現量(対HPRT相対的発現量)を示すグラフである。 増殖因子の非存在下、正常酸素濃度で培養した細胞(control)、及びFGF-10+EGF又はFGF-10+EGF+SB431542の存在下、低酸素濃度で培養した細胞(それぞれn-EpiSC及びn-EpiSC+SB431542)における、ハウスキーピング遺伝子HPRTの発現量で補正した幹細胞マーカー遺伝子及びE-カドヘリン遺伝子の相対的発現量(対HPRT相対的発現量)を示すグラフである。 プロテインアレイにより解析した、本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の培養上清に含まれるサイトカイン及び増殖因子の量を示す。図中、右は各細胞培養上清濃縮物を反応させたプロテインアレイのドットの写真、左はこれをデンシトグラフによって定量化した際の、正常酸素濃度で培養した細胞(control)の培養上清濃縮物の定量値を1としたときの相対値のグラフである。 プロテインアレイにより解析した、本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の培養上清に含まれるサイトカイン及び増殖因子の量を示す。図中、右は各細胞培養上清濃縮物を反応させたプロテインアレイのドットの写真、左はこれをデンシトグラフによって定量化した際の、正常酸素濃度で培養した細胞(control)の培養上清濃縮物の定量値を1としたときの相対値のグラフである。 ELISAにより解析した、本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞、並びにヒト骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清に含まれるサイトカイン及び増殖因子の量を示すグラフである。 本発明による歯根膜上皮系幹細胞を継代培養したときの明視野観察像である。 単独培養又は共培養された本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞から抽出したタンパク質のウエスタンブロット像である。図中、左はCDCP1を、右はEREGを検出した結果である。 単独培養又は共培養された本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞から抽出したタンパク質(GPR87、TFCP2L1、CD133)のウエスタンブロット像である。 単独培養又は共培養された本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞から抽出したタンパク質(CDCP1、EREG)のウエスタンブロット像である。 脂肪細胞、骨芽細胞及び軟骨細胞への分化誘導培地で培養した、本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の細胞混合物の顕微鏡観察像である。上段左の写真は未染色の位相差顕微鏡像、上段右の写真はカルシウム沈着を検出するアリザリンレッド染色、下段の写真は軟骨細胞の細胞外マトリクスを検出するアルシアンブルー染色の結果を示す。 骨芽細胞への分化誘導培地で培養した本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の細胞混合物並びにcontrol細胞の、アリザリンレッド染色後の細胞培養プレートの写真である。 骨芽細胞への分化誘導培地で培養した本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の細胞混合物、並びに骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)の、アリザリンレッド染色後の顕微鏡観察像である。 血管新生アッセイ用の培地で培養した本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の細胞混合物の顕微鏡観察像である。 靭帯分化誘導培地で培養した本発明による歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の細胞混合物の全体像(左)、並びに軸方向及び径方向断面のHE染色像(右上)、軸方向断面のアザン染色像(右中央)及びアルシアンブルー染色像(右下)である。
本発明の第一の態様は、歯根膜から分離した細胞集団をFGF-10及びEGFを含む培地又はFGF-2を含む培地で酸素濃度5%以下で培養する幹細胞選別工程を含む、歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団を製造する方法に関する。
本発明において細胞集団を分離するために用いられる歯根膜は、第三大臼歯、いわゆる親知らずの抜歯、歯列矯正における便宜抜歯、う蝕又は歯周病の治療における抜歯といった処置により摘出された歯の歯根周囲から採取することができる。また歯根膜は、歯根膜剥離用のチップやメス等の器具を用いて、生体から直接採取してもよい。採取された歯根膜は、そのまま、又はティースキーパー「ネオ」(ネオ製薬工業株式会社)等の保存液の中で保存した後に、細胞分離に供される。
歯根膜は、これを原料として製造される歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団が適用される対象と同種または近縁種の対象から採取するのが好ましい。例えば、ヒトの個体に細胞集団を適用する場合、好ましくは同種であるヒトから採取された歯根膜が、より好ましくは適用を受ける同一のヒト個体から採取された歯根膜、すなわち自己歯根膜が用いられる。
歯根膜からの細胞の分離は、コラゲナーゼやトリプシン等の酵素処理に代表される一般的な単細胞化処理により行われる。かかる処理によって歯根膜から分離された細胞集団は、歯根膜組織を構成する種々雑多な種類の細胞が混在する、ヘテロな細胞集団である。
歯根膜から分離された細胞集団は、続いてFGF-10及びEGFを含む培地で酸素濃度5%以下で培養する上皮系幹細胞選別工程、又はFGF-2を含む培地で酸素濃度5%以下で培養する間葉系幹細胞選別工程に供され、これによりそれぞれ歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団又は歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団を製造することができる。
FGF-10及びFGF-2(bFGFとも呼ばれる)は、線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor, FGF)ファミリーのメンバーである。FGFファミリーは、線維芽細胞をはじめとする様々な細胞や組織の増殖及び分化の過程において重要な役割を果たす増殖因子であり、ヒトでは22種のメンバーが同定されている。
EGFは、上皮細胞成長因子(Epidermal Growth Factor)ファミリーのメンバーである。EGFファミリーは、上皮細胞を含めた多様な細胞において細胞増殖及び分裂に関与することが知られており、ヒトでは狭義で7種、広義で13種のメンバーが同定されている。
幹細胞選別工程において用いられるFGF-10、FGF-2及びEGFは、それらが歯根膜細胞に対する活性を有するかぎり、歯根膜細胞の供給源である動物と同種由来のものであっても異種由来のものであってもよい。例えば、ヒトの歯根膜から分離された細胞集団に対しては、ヒト由来のFGF-10、FGF-2及びEGFのほか、マウス又はラット由来のFGF-10、FGF-2及びEGFを用いることもできる。
FGF-10、FGF-2及びEGFは、生体から単離精製したものであってもよいが、遺伝子組換え的に製造されたものであってもよい。遺伝子組換え的な製造は、各種の教科書、ハンドブック、典型的にはSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Press (2001)等に記載され、当業者に広く利用されている遺伝子組換え手法を用いて行うことができる。また、市販されている遺伝子組換型のFGF-10、FGF-2及びEGFを用いることもできる。
幹細胞選別工程において用いられる培地は、上皮系細胞又は間葉系細胞の培養に通常用いられる培地であればよく、例えばDMEM、αMEM、F-12、DMEM / F-12等を用いることができる。培地は細胞培養において通常用いられる程度の量の血清を含んでもよいが、血清から持ち込まれるものを除いて、FGF-10、FGF-2及びEGF以外の増殖因子を実質的に含まないものが好ましい。ここで実質的に含まないとは、かかる増殖因子が全く存在しない、又は細胞に何らかの影響を与えない程度の微量でしか存在しないことを意味する。
幹細胞選別工程において用いられるFGF-10及びEGFを含む培地並びにFGF-2を含む培地は、上述の培地にFGF-10、FGF-2及びEGFを添加することにより調製される。これらの増殖因子の培地への添加濃度は、細胞を刺激するときに通常用いられる濃度であればよい。添加濃度は、例えば1~500ng/mL、好ましくは1~100ng/mL、典型的には10ng/mLである。
上皮系幹細胞選別工程において用いられるFGF-10及びEGFを含む培地は、さらにWntシグナル活性化物質を含むことができる。Wntシグナル伝達経路は、マウスやヒトのES細胞において未分化性の維持に有用とされている。上皮系幹細胞選別工程におけるWntシグナル活性化物質の使用は、製造される細胞集団における上皮系幹細胞の濃縮の程度を著しく向上させることができる。
Wntシグナル活性化物質としては、グリコーゲン合成酵素3(GSK3)の阻害剤、例えばBIO(6BIO (2'Z,3'E)-6-Bromoindirubin-3'-oxime)、SB-216763、SB-415286、CHI99021等が挙げられる。これらの物質の培地への添加濃度は、BIOについて例えば0.1~100μM、好ましくは0.1~10μM、典型的には0.5~2.0μMであり、SB-216763について例えば0.1~100μM、好ましくは1.0~50μM、典型的には5~10μMであり、CHI99021について例えば0.1~50μM、好ましくは0.1~10μM、典型的には0.4~3.0μMである。
上皮系幹細胞選別工程において用いられるFGF-10及びEGFを含む培地は、Wntシグナル活性化物質に加えて又はこれの代わりに、BMPシグナル活性化物質及び/又はセカンドメッセンジャー活性化物質を含んでもよい。BMPシグナル伝達経路及びセカンドメッセンジャーもまた、マウスやヒトのES細胞において未分化性の維持に有用とされており、上皮系幹細胞選別工程におけるBMPシグナル活性化物質及びセカンドメッセンジャー活性化物質の使用は、製造される細胞集団における上皮系幹細胞の濃縮の程度を向上させることが期待される。
BMPシグナル活性化物質であるBMP2及びBMP4は、BMPシグナルを活性化するだけでなく、上皮形成に関与することが知られていることから、上皮系幹細胞選別工程において好ましく用いられる。またセカンドメッセンジャー活性化物質としてはcAMPを活性化するフォルスコリン等が挙げられる。これらの物質の培地への添加濃度は、例えば1.0~100μM、好ましくは5.0~20μM、典型的には10μMである。
上皮系幹細胞選別工程において用いられるFGF-10及びEGFを含む培地はまた、上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition, EMT)の阻害剤を含むこともできる。後述するように、本発明によって製造される歯根膜上皮系幹細胞を継代培養すると間葉系幹細胞が生じることが明らかになっており、継代培養中にEMTが起きているものと推測される。したがって、上皮系幹細胞選別工程におけるEMTの阻害は、製造される細胞集団における上皮系幹細胞の濃縮の程度を向上させることが期待される。
EMT阻害剤としては、TGF-βの阻害剤、例えばSB431542等が挙げられる。SB431542は、4-[4-(1,3 -benzodioxol-5-yl)-5-(2-pyridinyl)-1H-imidazol-2-yl]benzamide(CAS番号301836-41-9)とも呼ばれる、TGF-βスーパーファミリー1型アクチビンレセプター様キナーゼ(ALK)の選択的阻害剤であり、ALK4、5及び7を阻害することが知られている。培地へのEMT阻害剤の添加濃度は、例えば0.1~100μM、好ましくは1.0~20μM、典型的には5~10μMである。
幹細胞選別工程において用いられるFGF-10及びEGFを含む培地並びにFGF-2を含む培地はまた、ヘパリン及び/又はヘパラン硫酸を含むこともできる。ヘパリン及びヘパラン硫酸は、FGFとFGF受容体との結合及びFGF受容体の活性化を促進することが知られており、幹細胞選別工程におけるヘパリン及び/又はヘパラン硫酸の使用は、製造される細胞集団における幹細胞の濃縮の程度を向上させることが期待される。ヘパリン及び/又はヘパラン硫酸の培地への添加濃度は、例えば1.0~100μg/mL、好ましくは5.0~50μg/mL、典型的には15μg/mLである。
幹細胞選別工程における培養は、5%以下、好ましくは1.0~5.0%の酸素濃度で行われる。培養の温度は、上皮系細胞又は間葉系細胞の培養に通常用いられる温度、例えば30~37℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、例えば7~35日間、好ましくは10~30日間、より好ましくは14~28日間である。酸素濃度、培養温度及び時間は、上記の範囲内で、細胞の増殖状況に合わせて適宜調節することができる。
本発明の第一の態様の製造方法によって、歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団、具体的には歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団又は歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団が製造される。かかる細胞集団もまた、本発明の態様の一つである。
歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団とは、当該細胞集団に占める幹細胞の割合が、幹細胞選別工程前の細胞集団、すなわち歯根膜から分離した細胞集団に占める幹細胞の割合よりも高い細胞集団をいう。歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団には、歯根膜幹細胞が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、いっそう好ましくは95%以上含まれ、特に好ましくは、細胞集団は実質的に歯根膜幹細胞のみからなる。ここで実質的に歯根膜幹細胞のみからなるとは、歯根膜幹細胞以外の細胞が検出可能な程度に存在しないことを意味する。
細胞集団における幹細胞は、コロニーフォーメーションアッセイによってその存在を確認し、また細胞集団に占めるその割合を測定することができる。コロニーフォーメーションアッセイは、比較的低密度の細胞集団を培養し、そのコロニー形成能を評価するアッセイであり、幹細胞性を有する細胞であれば高度に希釈された状態、特にシングルセルの状態であっても生存し増殖することが可能であることを利用したものである。
コロニーフォーメーションアッセイは、第一の態様の製造方法によって製造された細胞集団に対して行ってもよく、又は第一の態様の製造方法における幹細胞選別工程の中で、幹細胞の選別と同時に行ってもよい。コロニーフォーメーションアッセイにおける細胞集団の培養条件は、第一の態様において述べられた培養条件と同様であればよい。培養により形成されたコロニーを必要に応じてクリスタルバイオレット等の色素で染色した後、数をカウントし、播種した細胞数で除算することにより、当該細胞集団に占める幹細胞の割合を算出することができる。また、分離されたコロニーをピックアップすることにより、純粋な幹細胞を分離することも可能である。
細胞集団に含まれる幹細胞が上皮系幹細胞であることの確認は、かかる細胞集団又はそれから分離したコロニーに対して上皮系細胞を判別するための公知の手法を適用することによって、例えばコロニー形態の観察、血管形成能の確認、上皮細胞のマーカー遺伝子、例としてE-カドヘリン遺伝子の発現の確認等によって行うことができる。また、細胞集団に含まれる幹細胞が間葉系幹細胞であることの確認は、かかる細胞集団又はそれから分離したコロニーに対して間葉系幹細胞を判別するための公知の手法を適用することによって、例えばコロニー形態の観察、脂肪細胞・軟骨細胞・骨芽細胞等への分化能の確認、間葉系幹細胞のマーカー遺伝子、例としてCD166、CD13、CD73、BMPR1-A、BMPR1-B、BMPR2、N-カドヘリン、CD44、CD90、CD117、CD105、フィブロネクチン1、インテグリンα1、NGFR、CD106、又はCD146遺伝子の発現の確認等によって行うことができる。
本発明のさらなる別の態様は、歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の両方が濃縮された細胞集団に関する。この細胞集団における歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の存在比は任意であり、1 : 99~99 : 1の範囲内であり得る。かかる細胞集団は、第一の態様の製造方法によって製造された歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団と歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団とを混合することによって製造することができる。
また、歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団は、歯根膜から分離した細胞集団をFGF-10及びEGFを含有する培地で酸素濃度5%以下で培養する上皮系幹細胞選別工程、前記工程で得られた歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団を継代培養することで歯根膜上皮系幹細胞を歯根膜間葉系幹細胞へと転換させるEMT工程を含む製造方法によって製造することもできる。かかる製造方法は、本発明のさらなる別の態様である。
EMTは、上皮細胞が上皮としての形質、例として細胞極性や細胞間接着機能を失い、遊走能を持つ間葉細胞に転換する可逆的現象であり、胚発生、組織修復、腫瘍細胞の転移等において起こることが知られている。本発明者らは、第一の態様の製造方法により得られる歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団を継代培養することで上皮系幹細胞から間葉系幹細胞を生じること、すなわちEMTが起こること、及びこのEMTを利用することで歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団の製造が可能であることを見出した。
EMT工程は、第一の態様の製造方法により得られる歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団を継代培養する工程である。この工程によって得られる細胞集団のEMTの程度は、継代培養の培養条件を適宜設定することにより調節することができる。例えば、継代培養の培養時間を短くする、継代回数を少なくする又は適切な濃度のEMT阻害剤やBMP-2若しくはBMP-4を培地に添加することにより、EMTの程度が比較的小さい、すなわち上皮系幹細胞に対する間葉系幹細胞の割合が比較的少ない細胞集団を製造することができる。逆に、継代培養の培養時間を長くする又は継代回数を多くすることにより、EMTの程度が比較的大きい、すなわち上皮系幹細胞に対する間葉系幹細胞の割合が比較的多い細胞集団を製造することができる。
なお、歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団は、継代培養により常にEMTが生じるものではなく、EMTを抑制する条件下での継代培養により、歯根膜間葉系幹細胞が濃縮されていない、歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団のままで増殖させ維持することも可能である。また、歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団も、歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団のままで増殖させ維持することが可能である。
本発明のさらなる別の態様は、上記の歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団、歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団若しくは歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団又はそれらの培養上清を有効成分とする、再生医療のための医薬組成物に関する。
歯の原基である歯胚は上皮系幹細胞及び間葉系幹細胞から構成され、歯の発生はこれらの幹細胞が上皮間葉相互作用を介して互いを刺激することによって進行する。最終的に、歯胚の上皮系幹細胞はエナメル質を形成し、その後歯根形態を決定する鞘の役割を果たしたのち、歯根膜組織中に上皮遺残として残存する。また、間葉系幹細胞は歯髄、セメント質、歯槽骨などを供給する。このような歯の発生プロセスを上皮系幹細胞と間葉系幹細胞とを共存させる系で再現することは、天然と同様の歯及び歯周組織の再生を可能にするものとして再生医療への応用が期待されている。また後述の実施例においても、両幹細胞の共存による好ましい効果が確認されている。
それぞれ本発明の一態様である歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団、歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団、並びに歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団は、再生医療において、歯及び歯周組織、特に歯根膜の再生のための医薬として利用することができる。また前記細胞集団の培養上清には、組織再生に寄与するサイトカインや増殖因子等の様々な液性因子が、再生医療において有用であると考えられている骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清と同等又はそれ以上に含まれることから、前記細胞集団の培養上清もまた医薬として有効であると考えられる。
歯根膜幹細胞が濃縮された細胞集団又はそれらの培養上清を有効成分とする医薬組成物は、歯又は歯周組織の再生が必要とされる疾患、障害又は症状の予防及び/又は治療のために、典型的には歯周病の予防及び/又は治療のために用いることができる。歯周病は歯肉の炎症に始まり、進行すると歯根膜や歯槽骨等の歯周組織が炎症により損傷され、最終的には破壊される。このような炎症により損傷された又は損傷されるおそれのある歯周組織に上記態様の医薬組成物を適用することで、損傷された歯周組織を再生し、また歯周組織の破壊を抑制し、歯周病を予防及び/又は治療することができる。
上記態様の医薬組成物はさらに、歯の再植及び移植においても有用である。例えばう蝕が進行して歯髄炎を生じ、根尖病巣を形成したような場合、当該歯を抜歯し病巣を掻爬した後、当該歯を再植する又は親知らず等の別の歯を当該歯の代わりに移植する治療が施されることがある。歯周組織が健常であれば再植又は移植された歯は歯根膜を介して元通りに歯槽骨に固定されるが、炎症を起こした歯周組織は損傷を受けていることが多い。歯の再植又は移植が予定されているこのような歯周組織に上記態様の医薬組成物を適用することで、歯根膜を含む歯周組織が再生され、再植又は移植された歯を生体内で自然に形成された歯と同様に固定することができる。
上記態様の医薬組成物はさらに、歯科インプラントの移植においても有用である。歯科インプラント治療は、歯が失われた部位の歯槽骨に人工歯根である歯科インプラントを埋め込み、その上に人工歯を装着する治療である。歯科インプラントは主にチタン製であり、埋植後に歯槽骨と強固に結合し、人工歯に天然歯と同等の強度を与えるが、その一方で強固な結合ゆえに埋植後に歯科インプラントに何らかの不具合が生じたとしてもその除去は極めて困難である。歯科インプラント治療において、歯科インプラントの埋植前若しくは埋植と同時に、又は埋植後であって歯科インプラントと歯槽骨とが強固に結合する前に埋植部位に上記態様の医薬組成物を適用することで、歯科インプラントと歯槽骨との間に歯根膜が形成されて歯根膜を介した歯科インプラントの固定が実現されると共に、埋植後に歯科インプラントを天然の歯と同じように摘出することが可能になり、また当該歯科インプラントを矯正移動させること、さらには噛む感覚を取り戻すことも可能になると期待される。
また、歯周病患者においては、治療後の歯科インプラントの結合が十分でないことが多く、治療成功率が低いことが知られている。このような患者の歯科インプラント治療において、上記態様の医薬組成物は、歯周組織再生による歯科インプラントの十分な固定及び埋植後の歯科インプラントの摘出性の確保の両方の面で効果的であると考えられる。
歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団、歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団、並びに歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団は、脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、血管細胞、靭帯細胞等の様々な細胞への分化能を有することが確認されている。したがって、上記態様の医薬組成物は、歯及び歯周組織の再生以外にも、組織幹細胞による再生が可能な多様な組織又は器官の再生に利用され得て、組織又は器官の再生が必要とされる疾患、障害又は症状の予防及び/又は治療のために用いることができる。
上記態様の医薬組成物は、有効量の歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団、歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団若しくは歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団又はそれらの培養上清を含む。ここで「有効量」とは、医薬組成物が適用される目的を達成するために有効な量を意味し、用法、対象の年齢、疾患の状態、その他の条件等に応じて当業者により適宜決定される。
上記態様の医薬組成物は、組織又は器官の再生、特に歯又は歯周組織の再生が必要とされる疾患、障害又は症状を有する又は有するおそれのある哺乳動物、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモットを含むげっ歯類、ヒト、チンパンジー、アカゲザルを含む霊長類、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジを含む家畜、イヌ、ネコを含む愛玩動物といった哺乳動物に適用される。好ましい対象は、ヒトである。
上記態様の医薬組成物の有効成分である歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団、歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団若しくは歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団又はそれらの培養上清は、そのまま使用してもよく、薬学的に許容される担体、緩衝剤、安定剤、保存剤、賦形剤その他の成分及び/又は他の有効成分を含む形態で使用してもよい。薬学的に許容される成分は当業者において周知であり、当業者が通常の実施能力の範囲内で、例えば第十七改正日本薬局方その他の規格書に記載された成分から製剤の形態に応じて適宜選択して使用することができる。また上記態様の医薬組成物は、組織又は器官の再生、特に歯又は歯周組織の再生が必要とされる疾患、障害又は症状の予防及び/又は治療に有益なその他の物質と組み合わせて使用してもよい。
上記態様の医薬組成物の投与方法は対象とする疾患、障害又は症状に応じて任意に選択することができるが、全身投与又は患部への注射若しくは塗布等の局所投与が好ましい。また、医薬組成物は投与方法に応じて公知の形態を取ることができ、例えば注射剤又は軟膏剤であり得る。注射剤は、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ブドウ糖又はD-ソルビトールの等張液等の担体に有効成分及びその他の成分を常法により溶解又は懸濁することにより調製することができる。軟膏剤は、ペースト、クリーム及びゲル形態であることができ、例えば、白色ワセリン、ポリエチレン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン及びベントナイト等を基剤として、有効成分及びその他の成分を常法により混合することにより調製することができる。
本発明のさらなる別の態様は、歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団、歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団若しくは歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団を、抜歯された歯若しくは歯科インプラントの存在下で培養することで、歯若しくは歯科インプラントの表面に歯根膜を形成させる工程、又は当該細胞集団を培養することで形成された歯根膜シートを歯若しくは歯科インプラントの表面に付着させる工程を含む、歯根膜コーティングを有する歯又は歯科インプラントの製造方法に関する。上記態様の歯根膜コーティングを有する歯又は歯科インプラントの製造方法によると、再植若しくは移植が予定されている抜歯された歯又は歯科インプラントの表面に歯根膜コーティングを施すことができ、これにより歯の再植及び移植並びに歯科インプラントの移植における上述の課題を解決することができる。
なお、上記の態様以外にも、有効量の歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団、歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団若しくは歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団又はそれらの培養上清を対象に投与することを含む、組織又は器官、特に歯又は歯周組織の再生方法;有効量の当該細胞集団を対象に投与することを含む、組織又は器官、特に歯又は歯周組織の再生が必要とされる疾患、障害又は症状の予防及び/又は治療方法;当該細胞集団を培養することで形成された歯根膜シートを歯若しくは歯科インプラントの表面に付着させる工程、これにより得られた歯根膜コーティングを有する歯を再植若しくは移植する又は歯科インプラントを移植する工程を含む、欠損歯の治療方法等の各態様が本発明に包含される。これら各態様における用語の意義は、上記の態様において説明したとおりである。
本発明のさらなる別の態様は、CD133、TGF-α、GPR87、EDN1、EFNA1、SPRR2B、S100A8、S100A9、TFCP2L1、ITGA6、CDCP1、EREG及びLIFよりなる群から選択される少なくとも1の分子の、歯根膜上皮系幹細胞マーカーとしての使用に関する。また、本発明のなおさらなる別の態様は、CDCP1、EREG、EDNRB、CD82、CD93、NR5A2、KDR、LIF、TBX2、TBX3、IFITM1、BMI1及びZFP42よりなる群から選択される少なくとも1の分子の、歯根膜間葉系幹細胞マーカーとしての使用に関する。
本発明者らは、第一の態様の製造方法によって製造された細胞集団に含まれる歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の解析を進め、歯根膜上皮系幹細胞においてはCD133、TGF-α、GPR87、EDN1、EFNA1、SPRR2B、S100A8、S100A9、TFCP2L1、ITGA6、CDCP1、EREG及びLIFの、歯根膜間葉系幹細胞においてはCDCP1、EREG、EDNRB、CD82、CD93、NR5A2、KDR、LIF、TBX2、TBX3、IFITM1、BMI1及びZFP42の遺伝子発現が亢進していることを明らかにした。
CD133は、未成熟造血幹細胞、循環内皮前駆細胞、胎児神経幹細胞、その他の組織特異的幹細胞で発現していることが知られており、がん幹細胞のマーカーとしても知られている。
TGF-α(transforming growth factor-alpha)は、腫瘍細胞やケラチノサイトなどで分泌される、組織発生、細胞分化、胚発育等に関与する増殖因子の1つである。
GPR87(G protein-coupled receptor 87)はリゾホスファチジン酸をリガンドとするレセプターであり、DNAダメージへの応答におけるp53/TP53依存性の細胞生存に関与する。
EDN1(endothelin 1)はendothelin/sarafotoxin familyに属する分泌タンパク質のプレプロタンパク質であり、血管収縮に関与する。
EFNA1(Ephrin-A1)は、受容体型チロシンキナーゼファミリーの一つであるEph受容体群(Eph receptors)のリガンド分子のサブタイプである。
SPRR2B(small proline-rich protein 2B)は上皮細胞の一種である角質細胞に発現するタンパク質で、山中4因子の1つとして知られるOCTの転写誘導能を有し、マウスの妊娠維持に関与していることが知られている。
S100A8及びS100A9は分泌型カルシウム結合タンパク質であり、両者が結合したヘテロダイマーはカルプロテクチンとして知られ、抗菌作用を示す。
TFCP2L1(transcription factor CP2 like 1)は転写抑制因子であり、UBP1介在性転写活性化を抑制し、また胎盤におけるCYP11A1の転写を制御する機能を有する。
ITGA6(integrin alpha 6)は、間葉系幹細胞、ES細胞、造血幹細胞、神経幹細胞の足場として認識されるタンパク質である。
CDCP1(CUB domain containing protein 1)は造血幹細胞に発現する幹細胞マーカーであり、プロテアーゼにより切断修飾を受けた70kDaのshort formが活性型として機能し、アポトーシスを抑制して細胞の生存率を高めることが知られている。
EREG(Epiregulin)はチロシンキナーゼErbBファミリー受容体のうちErbB1とErbB4に特異的に結合するEGF様成長因子であり、ケラチン生成細胞、肝細胞等の増殖を刺激する。
LIF(Leukemia Inhibitory Factor)はES細胞の分化を抑制し多能性を維持する液性タンパク質である。
CD133、TGF-α、GPR87、EDN1、EFNA1、SPRR2B、S100A8、S100A9、TFCP2L1、ITGA6、CDCP1、EREG及びLIFは、それぞれ単独で又は複数を組み合わせて、第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜上皮系幹細胞のマーカーとして利用することができる。詳細には、被験細胞が歯根膜上皮系幹細胞であるか否かは、以下の手法により判定される。最初に、上述の公知の手法を用いて、被験細胞が上皮系の幹細胞であることを確認する。被験細胞が上皮系幹細胞であることが確認された場合、当該細胞における上記マーカー遺伝子の発現を測定し、歯根膜から分離された細胞集団を増殖因子を添加しない培地で正常酸素濃度下で培養することにより調製された細胞(対照細胞)における同遺伝子発現量と比較して、対照細胞における遺伝子発現量に対する被験細胞における遺伝子発現量の比を算出する。リアルタイムPCRにより遺伝子発現量を測定する場合、この遺伝子発現量の比は、上記マーカー遺伝子及びHPRT等のハウスキーピング遺伝子であるリファレンス遺伝子のCt値から算出される2-ΔΔCtとして表される。この比が表5及び表6に記載された数値と同等以上である場合、被験細胞は第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜上皮系幹細胞であると判定することができる。
被験細胞が歯根膜上皮系幹細胞であるか否かは、上記判定手法における対照細胞を公知の歯根膜上皮系幹細胞に換えて遺伝子発現量を比較することによっても判定することができる。この場合、公知の歯根膜上皮系幹細胞における遺伝子発現量に対する被験細胞における遺伝子発現量の比が表7に記載された数値と同等以上である場合、被験細胞は第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜上皮系幹細胞であると判定することができる。
判定の確実性をより高めるため、上記対照細胞と公知の歯根膜上皮系幹細胞との両方を比較対象とし、両細胞における遺伝子発現量に対する被験細胞における遺伝子発現量の比がそれぞれ表5及び表6並びに表7に記載された数値と同等以上である場合、被験細胞は第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜上皮系幹細胞であると判定することが好ましい。
また、第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜上皮系幹細胞においては、ハウスキーピング遺伝子であるHPRTに対して、
(a)CD133が好ましくは0.01倍以上、より好ましくは0.03倍以上、更に好ましくは0.05倍以上発現しており;
(b)TGF-αが好ましくは3.0倍以上、より好ましくは5.0倍以上、更に好ましくは10.0倍以上発現しており;
(c)GPR87が好ましくは0.2倍以上、より好ましくは2.0倍以上、更に好ましくは4.0倍以上発現しており;
(d)EDN1が好ましくは1.0倍以上、より好ましくは4.0倍以上、更に好ましくは7.0倍以上発現しており;
(e)EFNA1が好ましくは0.8倍以上、より好ましくは1.4倍以上、更に好ましくは1.8倍以上発現しており;
(f)SPRR2Bが好ましくは5.0倍以上、より好ましくは50倍以上、更に好ましくは100倍以上発現しており;
(g)S100A8が好ましくは0.2倍以上、より好ましくは0.4倍以上、更に好ましくは0.6倍以上発現しており;
(h)S100A9が好ましくは100倍以上、より好ましくは200倍以上、更に好ましくは400倍以上発現しており;
(i)TFCP2L1が好ましくは0.15倍以上、より好ましくは0.5倍以上、更に好ましくは1.0倍以上発現しており;
(j)ITGA6が好ましくは4.0倍以上、より好ましくは8.0倍以上、更に好ましくは10倍以上発現しており;
(k)CDCP1が好ましくは3.0倍以上、より好ましくは5.0倍以上、更に好ましくは10.0倍以上発現しており;
(l)EREGが好ましくは1.0倍以上、より好ましくは2.0倍以上、更に好ましくは3.0倍以上発現しており;
(m)LIFが好ましくは10倍以上、より好ましくは15倍以上、更に好ましくは20倍以上発現している。
したがって、被験細胞が歯根膜上皮系幹細胞であるか否かは、以下の手法によっても判定することができる。最初に、上述の公知の手法を用いて、被験細胞が上皮系の幹細胞であることを確認する。被験細胞が上皮系幹細胞であることが確認された場合、当該細胞から抽出したRNAをPCRに供して上記マーカー遺伝子及びHPRT遺伝子の発現量を定量し、これらの定量値からHPRT遺伝子に対する上記マーカー遺伝子の相対的発現量を算出する。リアルタイムPCRを用いる場合、この相対的発現量は、上記マーカー遺伝子及びHPRT遺伝子のCt値から算出される2-ΔCtとして表される。相対的発現量が上記の数値と同等以上である場合、被験細胞は第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜上皮系幹細胞であると判定することができる。
さらに、HPRT遺伝子に対するマーカー遺伝子の相対的発現量に基づくと、第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜上皮系幹細胞は、上記の(a)~(m)のうちの少なくとも1を、好ましくは上記の(a)~(m)のうちの少なくとも2、3、4又は5を、さらに好ましくは少なくとも6、7、8又は9を、さらにより好ましくは10、11又は12を、最も好ましくは上記の(a)~(m)の全てを特徴とする歯根膜由来の上皮系幹細胞と表すこともでき、これは本発明のさらなる別の態様である。
CDCP1、EREG、EDNRB、CD82、CD93、NR5A2、KDR、LIF、TBX2、TBX3、IFITM1、BMI1及びZFP42は、第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜間葉系幹細胞のマーカーとして利用することができる。
EDNRB(Endothelin receptor type B)はES細胞の未分化性の維持、毛根幹細胞や上皮系メラニン産生細胞の増殖促進に関与し、大脳や腸の神経幹細胞、前駆細胞等に発現していることが知られている。
CD82はtetraspaninファミリーのメンバーであり、他のtetraspaninや膜タンパク質と相互作用してシグナル伝達に関与し、また造血幹細胞の長期的な幹細胞性の維持にも関与している。
CD93はC-typeレクチン様I型膜貫通型タンパク質で、造血系や血管系の発生において細胞間の相互作用に関与しており、造血幹細胞マーカーとして知られている。
NR5A2(Nuclear Receptor Subfamily 5, group A, member 2)は核内受容体の一種で、細胞核内での転写調節機能があり、膵臓がんに関与するとされている。
KDR(Kinase insert domain receptor)は成長因子受容体チロシンキナーゼの一種で、内皮細胞の増殖と分化に関与していることが知られ、造血幹細胞マーカー及びヘマンジオブラスト(血管・血球共通前駆細胞)のマーカーとしても提唱されている。
TBX2(T-box transcription Factor 2)は、胎児期の成長や細胞周期の進行を制御するうえで重要とされる転写因子であり、血管腫における血管腫幹細胞中で高く発現するといわれている因子である。
TBX3(T-box transcription Factor 3)は肝幹細胞の増殖と分化を制御する転写因子であり、肝幹細胞の増殖が盛んな発生初期で強く発現し、肝発生の進行と共に発現が減少することが知られ、ES細胞の分化を抑制し多能性を維持する因子である。
IFITM1(Interferon-induced transmembrane protein 1)はIFITM familyの1つで、免疫応答や胚細胞の成熟及び分化に関与する。
BMI1(Moloney murine leukemia virus integration site 1)はポリコーム群ファミリーに属するstem cell factor であり、幹細胞やその前駆細胞の細胞増殖活性を制御するといわれている。
ZFP42(Zink Finger Protein 42)はC2H2-type zinc-finger protein familyの1つでRex1とも呼ばれ、ES細胞の未分化状態の維持に関与する他、幾つかの腫瘍細胞で発現している。
CDCP1、EREG、EDNRB、CD82、CD93、NR5A2、KDR、LIF、TBX2、TBX3、IFITM1、BMI1及びZFP42は、それぞれ単独で又は複数を組み合わせて、第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜間葉系幹細胞のマーカーとして利用することができる。詳細には、被験細胞が歯根膜間葉系幹細胞であるか否かは、以下の手法により判定される。最初に、上述の公知の手法を用いて、被験細胞が間葉系の幹細胞であることを確認する。被験細胞が間葉系幹細胞であることが確認された場合、当該細胞における上記マーカー遺伝子の発現を測定し、歯根膜から分離された細胞集団を増殖因子を添加しない培地で正常酸素濃度下で培養することにより調製された細胞(対照細胞)における同遺伝子発現量と比較して、対照細胞における遺伝子発現量に対する被験細胞における遺伝子発現量の比を算出する。リアルタイムPCRにより遺伝子発現量を測定する場合、この遺伝子発現量の比は、上記マーカー遺伝子及びHPRT等のハウスキーピング遺伝子であるリファレンス遺伝子のCt値から算出される2-ΔΔCtとして表される。この比が表5に記載された数値と同等以上である場合、被験細胞は第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜間葉系幹細胞であると判定することができる。
被験細胞が歯根膜間葉系幹細胞であるか否かは、上記判定手法における対照細胞を公知の歯根膜間葉系幹細胞に換えて遺伝子発現量を比較することによっても判定することができる。この場合、公知の歯根膜間葉系幹細胞における遺伝子発現量に対する被験細胞における遺伝子発現量の比が表7に記載された数値と同等以上である場合、被験細胞は第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜上皮系幹細胞であると判定することができる。
判定の確実性をより高めるため、上記対照細胞と公知の歯根膜間葉系幹細胞との両方を比較対象とし、両細胞における遺伝子発現量に対する被験細胞における遺伝子発現量の比がそれぞれ表5及び7に記載された数値と同等以上である場合、被験細胞は第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜間葉系幹細胞であると判定することが好ましい。
また、第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜間葉系幹細胞においては、ハウスキーピング遺伝子であるHPRTに対して、
(n)CDCP1が好ましくは3.0倍以上、より好ましくは5.0倍以上、更に好ましくは10.0倍以上発現しており;
(o)EREGが好ましくは1.0倍以上、より好ましくは5.0倍以上、更に好ましくは10.0倍以上発現しており;
(p)EDNRBが好ましくは1.0倍以上、より好ましくは5.0倍以上、更に好ましくは7.0倍以上発現しており;
(q)CD82が好ましくは1.0倍以上、より好ましくは5.0倍以上、更に好ましくは7.0倍以上発現しており;
(r)CD93が好ましくは0.5倍以上、より好ましくは1.0倍以上、更に好ましくは1.5倍以上発現しており;
(s)NR5A2が好ましくは0.1倍以上、より好ましくは0.15倍以上、更に好ましくは0.2倍以上発現しており;
(t)KDRが好ましくは0.05倍以上、より好ましくは0.10倍以上、更に好ましくは0.15倍以上発現しており;
(u)LIFが好ましくは10倍以上、より好ましくは30倍以上、更に好ましくは50倍以上発現しており;
(v)TBX2が好ましくは5.0倍以上、より好ましくは10.0倍以上、更に好ましくは15.0倍以上発現しており;
(w)TBX3が好ましくは3.0倍以上、より好ましくは6.0倍以上、更に好ましくは10.0倍以上発現しており;
(x)IFITM1が好ましくは100倍以上、より好ましくは150倍以上、更に好ましくは300倍以上発現しており;
(y)BMI1が好ましくは1.0倍以上、より好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは3.0倍以上発現しており;
(z)ZFP42が好ましくは0.01倍以上、より好ましくは0.08倍以上、更に好ましくは0.40倍以上発現している。
したがって、被験細胞が歯根膜間葉系幹細胞であるか否かは、以下の手法によっても判定することができる。最初に、上述の公知の手法を用いて、被験細胞が間葉系の幹細胞であることを確認する。被験細胞が間葉系幹細胞であることが確認された場合、当該細胞から抽出したRNAをPCRに供して上記マーカー遺伝子及びHPRT遺伝子の発現量を定量し、これらの定量値からHPRT遺伝子に対する上記マーカー遺伝子の相対的発現量を算出する。リアルタイムPCRを用いる場合、この相対的発現量は、上記マーカー遺伝子及びHPRT遺伝子のCt値から算出される2-ΔCtとして表される。相対的発現量が上記の数値と同等以上である場合、被験細胞は第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜間葉系幹細胞であると判定することができる。
さらに、HPRT遺伝子に対する上記マーカー遺伝子の相対的発現量に基づくと、第一の態様の製造方法により製造された細胞集団に含まれる歯根膜間葉系幹細胞は、上記の(n)~(z)のうちの少なくとも1を、好ましくは上記の(n)~(z)のうちの少なくとも2、3、4又は5を、さらに好ましくは少なくとも6、7、8又は9を、さらにより好ましくは10、11又は12を、最も好ましくは好ましくは上記の(n)~(z)の全てを特徴とする歯根膜由来の間葉系幹細胞と表すこともでき、これは本発明のさらなる別の態様である。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1.歯根膜幹細胞の選別
1)歯根膜細胞懸濁液の調製
北海道大学の自主臨床研究に関する承認及びヒトを対象とする医学系研究に関する倫理指針の下、北海道大学病院歯科診療センターを受診し、歯列矯正又は親知らずの治療のために抜歯が必要であった患者から文書同意を得て抜歯を行った。抜歯後の歯から以下の手順で歯根膜細胞懸濁液を調製した。
抜歯後、歯を速やかに保存液(ティースキーパー「ネオ」、ネオ製薬工業株式会社)に浸漬し、細胞懸濁液調製時まで保存した。歯をPBS (-)で3回洗浄した後、ペニシリンG 100 Unit/mL+ストレプトマイシン硫酸塩100μg/mL+アムホテリシンB 250 ng/mLの3種類の抗生剤を含有するPBS (-)に浸漬して軽く振盪した後、4℃で10分間静置した。歯をPBS (-)で3回洗浄した後、コラゲナーゼ(Collagenase NB 4G:SERVA) 125 Unit+ディスパーゼ(GIBCO)含有PBS (-)中で37℃、30分間酵素処理を行い、歯根膜組織から細胞を分離した。歯を取り出した後の液にFBSを1mL加えて酵素反応を停止させ、1100 rpmで5分間、集細胞遠心を行った。上清を除去した後、0.1%トリプシン含有PBS (-)を加え、37℃で10分間酵素処理を行った。FBSを加えて酵素反応を停止させた後、液を70μmのストレーナーに通してごみを排除し、再度、1100rpmで5分間の集細胞遠心を行った。得られた細胞ペレットを10%FBS 含有DMEM / F-12(SIGMA)に懸濁することで、歯根膜細胞懸濁液を得た。
2)幹細胞選別条件の決定
上記1)で得た細胞懸濁液から間葉系幹細胞及び上皮系幹細胞を選別するため、様々な培養条件下でコロニーフォーメーションアッセイを行い、幹細胞が効率的に選別される条件を決定した。
下の表1に示す培地を、それぞれ2枚のType1コラーゲンコート6ウェルプレート(セルタイトC-1、スミロン)に2ml/ウェルずつ分注した。なお表中の各成分の濃度は終濃度である。
Figure 0007297309000001
上記1)で得た細胞懸濁液の総量の2%相当量を各ウェルに加え、1枚のプレートは18% O2の正常酸素濃度(Normoxia)下で、もう1枚のプレートは5% O2の低酸素濃度(Hypoxia)下で、37℃で3週間培養した。培養後、ウェル内の細胞をPBS(-)で3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定した後、0.5%クリスタルバイオレット溶液で染色した。染色後のプレートについて、波長560nmにおける吸光度を吸光度測定器(TECAN infinite F200)により測定した。測定は1ウェルあたり100点行い、100点の平均値を当該ウェルの定量値とした。波長560nmにおける吸光度が大きいほど、コロニーの総面積が広いこと、すなわちコロニー形成能が高いことを表す。
親知らず抜歯歯根膜から調製した細胞懸濁液を用いたコロニーフォーメーションアッセイにおいて、基本培地及びFGF-2添加培地での培養により形成されたコロニーの画像を図1に、560nmにおける吸光度を図2に示す。アッセイは4連で実施した(N=4)。観察されたコロニーの形態はいずれも、間葉系幹細胞に特徴的な細胞間接着性の希薄な紡錘形であった。また、基本培地でのNormoxia培養と比べて、FGF-2添加培地でのNormoxia培養、基本培地でのHypoxia培養はそれぞれコロニー形成能を向上させ、特にFGF-2添加培地でHypoxia培養を行った場合、コロニー形成能の飛躍的な向上が認められた。以上から、FGF-2とHypoxiaの組み合わせによって歯根膜細胞集団から間葉系幹細胞を効率的に選別することができることが示された。
矯正便宜抜歯歯根膜から調製した細胞懸濁液を用いたコロニーフォーメーションアッセイにおいて、基本培地、BIO添加培地、FGF-10+EGF添加培地及びFGF-10+EGF+BIO添加培地での培養により形成されたコロニーの画像を図3に示す。Normoxia培養全般、基本培地でのHypoxia培養及びBIO添加培地でのHypoxia培養では、少数の間葉系幹細胞様コロニーのみが観察され、上皮系幹細胞様コロニーは観察されなかった。一方、FGF10+EGF添加培地でのHypoxia培養では、間葉系幹細胞様コロニーと共に、上皮系幹細胞に特徴的な細胞間接着性が密な境界明瞭の形態を示すコロニー(図中の矢印)が出現し、観察された全コロニー数に対するその割合は50%以上であった。さらにFGF-10+EGF+BIO添加培地でのHypoxia培養では、観察されたコロニーのほとんどは上皮系幹細胞様コロニーであった。以上から、FGF-10、EGF及びHypoxiaの組み合わせによって歯根膜細胞集団から上皮系幹細胞を選別できること、及びさらにBIOを組み合わせることによって上皮系幹細胞の選別効率を高めることができることが示された。
3)各選別条件下での幹細胞の選別
上記2)で決定した幹細胞選別条件(間葉系幹細胞についてFGF-2+Hypoxia、上皮系幹細胞についてFGF-10+EGF+Hypoxia)のもと、さらなるコロニーフォーメーションアッセイを行った。42検体のコロニーフォーメーションアッセイの結果を図4に示す。FGF-2+Hypoxia、FGF-10+EGF+Hypoxiaの条件で培養された細胞は、対照のGF(-)+Normoxiaの条件で培養された細胞と比べて、高いコロニー形成能を示しており、これらの条件によって歯根膜細胞集団から幹細胞を選別可能であることが確認された。
実施例2.歯根膜間葉系幹細胞における間葉系幹細胞マーカーの発現解析
実施例1において矯正便宜抜歯の歯根膜細胞集団をFGF-2添加培地でHypoxia培養することで得られた間葉系幹細胞様コロニー(n-MSC)をプレートから回収した。また、既報の歯根膜間葉系幹細胞分離方法(Trubiani O. et. al., Tissue Eng Part C Methods. 2015 Jan; 21(1): 52-64)に従って、実施例1と同じ歯根膜細胞集団をTheraPEAK(商標) MSCGM-CD(商標)(LONZA)を用いてNormoxia培養し、間葉系幹細胞(p-MSC)を得た。これら2種類の細胞からISOGEN II(ニッポンジーン)を用いてtotal RNAを抽出し、GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Array(Thermo Fisher Scientific)を用いた遺伝子発現解析を行った。スポットの蛍光強度を標準化したスケーリングデータを、各遺伝子の発現量とした。
16種の公知の間葉系幹細胞マーカーについて、p-MSCにおける遺伝子発現量を100としたときのn-MSCにおける遺伝子発現量を図5及び図6に示す。n-MSCにおいて、CD90以外の公知間葉系幹細胞マーカーがp-MSCと同等以上に発現していたことから、遺伝子発現の点でもn-MSCは間葉系幹細胞であることが確認された。
実施例3.歯根膜幹細胞の遺伝子発現解析
1)リアルタイムPCRによる遺伝子発現の定量
実施例1の矯正便宜抜歯歯根膜細胞集団を基本培地でNormoxia培養することで得られた細胞(control細胞)、FGF-2添加培地でHypoxia培養することで得られた細胞(n-MSC)、及びFGF-10+EGF添加培地でHypoxia培養することで得られた細胞(n-EpiSC)と、既報の歯根膜間葉系幹細胞選別方法により得られた細胞(p-MSC)及び既報の歯根膜上皮系幹細胞選別方法により得られた細胞(p-EpiSC)との遺伝子発現プロファイルを比較した。
Figure 0007297309000002
表2に示す5種類の細胞をそれぞれの選別条件と同様にして継代培養した。また、比較のため、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(Human Mesenchymal Stem Cells from Bone Marrow)(Promocell社)をTheraPEAKTM MSCGM-CDTM(LONZA)でNormoxia培養した。これらの細胞における表3及び表4に記載した遺伝子の発現量を以下の手順により測定した。
ISOGEN II(ニッポンジーン)を用いて各細胞からtotal RNAを抽出した。RNA量を補正した後、Takara PrimeScript RT Master Mix(TaKaRa)を用いた逆転写反応によりcDNAを合成し、これを鋳型として各遺伝子に特異的なプライマーセット(表3及び表4)を使用してRealtime PCR法により各遺伝子の発現量を測定した。PCR酵素はTakara SYBR Premix Ex Taq(TaKaRa)を、PCR機器はStep one Real-time PCR System(Applied Biosystems)を用いた。PCRには2step 法 (95度 1秒→60度 20秒 40サイクル)を用いた。発現量の定量は、ΔΔCT法を用いた比較定量法により行った。具体的には、最初に、細胞毎に表3及び表4の遺伝子のCt値をハウスキーピング遺伝子であるHPRTのCt値で除算して、各遺伝子のΔCt値を算出した。次いでこのΔCt値をcontrol細胞におけるΔCt値で除算して、当該遺伝子のΔΔCt値を算出し、2-ΔΔCtをcontrol細胞における当該遺伝子の発現量に対する各細胞における当該遺伝子の相対的発現量(対control細胞相対的発現量という)とした。
Figure 0007297309000003
Figure 0007297309000004
2)n-MSC及びn-EpiSCにおける幹細胞マーカーの発現
歯根膜幹細胞での発現は知られていないが他の幹細胞においてその幹細胞性の維持に重要であることが知られている遺伝子について、各細胞の対control細胞相対的発現量を表5及び表6に示す。表5の遺伝子は、control細胞と比較してn-MSCにおいて発現量が2倍以上多く、またこれらの遺伝子のうちの多くはn-MSCだけでなくn-EpiSCでも発現が亢進していた。表6の遺伝子は、特にn-EpiSCにおいて発現が大きく亢進していた。
Figure 0007297309000005
Figure 0007297309000006
表5及び表6の遺伝子について、p-MSCとn-MSCの対control細胞相対的発現量の比、及びp-EpiSCとn-EpiSCの対control細胞相対的発現量の比を表7に示す。p-MSCと比較して、n-MSCにおいて、TBX3、ITGA6は2倍以上、CDCP1、EREG、EDNRB、CD82、CD93、NR5A2、LIF、TBX2、IFITM1、ZFP42、GPR87、EDN1、TFCP2L1及びADGRG1は5倍以上発現が亢進していた。また、p-EpiSCと比較して、n-EpiSCにおいて、KDR、ITGA6は2倍以上、CDCP1、EREG、EDNRB、CD82、CD93、LIF、ZFP42、CD133、TGF-α、GPR87、EDN1、EFNA1、SPRR2B、S100A8、S100A9及びADGRG1は5倍以上発現が亢進していた。
Figure 0007297309000007
表5及び表6の遺伝子について上記のΔCt値から2-ΔCtを算出し、これをそれぞれの細胞におけるHPRT遺伝子に対する各遺伝子の相対的発現量(対HPRT相対的発現量という)として図7~10のドットプロットに示した。各プロットにおいて、control細胞及びn-MSCはn=5、n-EpiSCはn=3、p-MSC、p-EpiSC及びBM-MSCはn=1である。表5の遺伝子のうちの多くは、他の細胞と比較してn-MSCにおいて発現が亢進していた(図7及び図8)。表6の遺伝子は、他の細胞と比較してn-EpiSCにおいて発現が亢進していた(図9及び図10)。
以上の結果から、n-MSCはp-MSC及びBM-MSCと異なる遺伝子発現プロファイルを持つ細胞であり、またn-EpiSCはp-EpiSCと異なる遺伝子発現プロファイルを持つ細胞であることが示された。
3)n-MSC及びn-EpiSCにおける歯根膜細胞マーカーの発現
歯根膜マーカーとして知られている又は歯根膜での発現が多数報告されている遺伝子の各細胞における対control細胞相対的発現量を表8に示す。意外なことに、n-MSC及びn-EpiSCは歯根膜由来であるにもかかわらず、表8の遺伝子のいずれについても発現量が低い又は発現が検出されなかった。
Figure 0007297309000008
4)n-EpiSCにおける上皮細胞マーカーの発現
上皮細胞マーカーとして知られているE-カドヘリンについて、p-EpiSC及びn-EpiSCにおける対control細胞相対的発現量の比を表9に示す。いずれの細胞においてもE-カドヘリンの発現が認められ、特にn-EpiSCにおいて高値を示した。このことから、遺伝子発現の点でもn-EpiSCは上皮系幹細胞であることが確認された。、
Figure 0007297309000009
実施例4.歯根膜上皮系幹細胞のさらなる効率的な選別
実施例1と同様に、矯正便宜抜歯歯根膜から調製した細胞懸濁液を基本培地でNormoxia培養することで得られた細胞(control細胞)、FGF-10+EGF添加培地でHypoxia培養することで得られた細胞(n-EpiSC)、及びFGF-10+EGF添加培地にEMT阻害剤であるSB431542を最終濃度5 μMになるように添加したFGF-10+EGF+SB431542添加培地でHypoxia培養することで得られた細胞(n-EpiSC+SB431542)をプレートから回収し、それぞれ同じ条件で継代培養した。継代培養開始から21日後、細胞を位相差顕微鏡で観察し、合計12個のウェルの中で上皮島(細胞同士の接触(cell to cell contact)が希薄な、紡錘形(spindle-shape)を特徴とする間葉系幹細胞に対して、cell to cell contactが密であり、周囲との境界が明瞭な島状のクラスターを形成することを特徴とする上皮系幹細胞の集団)が出現したウェルの数をカウントし、全ウェルに占める上皮島出現ウェルの割合を算出した。各細胞の代表的な位相差顕微鏡観察像及び上皮島の出現率を図11に示す。FGF-10+EGF+SB431542添加培地でのHypoxia培養は上皮島の出現率を向上させたことから、FGF-10、EGF及びHypoxiaの組み合わせにさらにSB431542を組み合わせることによって上皮系幹細胞の選別効率を高めることができることが示された。
次いで、これらの細胞における遺伝子発現を実施例3と同様に解析した。結果を図12~14に示す。いずれの遺伝子も、n-EpiSCよりもn-EpiSC+SB431542において発現が亢進しており、FGF-10+EGF+SB431542添加培地でのHypoxia培養によって上皮細胞をより効率的に選別可能であることが遺伝子発現の点でも確認された。
実施例5.歯根膜幹細胞の分泌タンパク質の解析
実施例1において矯正便宜抜歯の歯根膜から得たcontrol細胞、n-MSC及びn-EpiSCをプレートから回収し、それぞれの選別条件と同様にして継代培養した。コンフレントに達した後、PBS(-)にてそれぞれ10回洗浄した後、DMEM/F-12(無血清、栄養因子不含有)を加え、6日間培地交換せずに培養した。遠心分離によって得た培養上清を0.2μmフィルターに通して培養上清を得た。
次いで既報(Nagata, M., et al. Tissue Eng Part A. 2017 May;23(9-10):367-377.)に記載の方法に準じて培養上清を濃縮し、RayBiotech社のHuman Cytokine Array C8(AAH-CYT)及びHuman Growth Factor Array C1(AAH-GF)抗体アレイを用いて培養上清に分泌されたサイトカイン及び増殖因子を解析した。
結果を図15及び16に示す。n-MSC及びn-EpiSC+SB431542のいずれか又は両方において、再生にとって有利であると考えられるタンパク質であるLIF、HGF、bFGF及びVEGF-Aや上皮細胞の分泌タンパク質であるFGF7及びEGFの産生亢進が認められた。
上記の抗体アレイを用いた網羅的な培養上清発現解析により、良好なデータが得られたために、これまでの報告からその分泌が、組織再生用途において、明らかに有用であると予想される4種類のサイトカインを選定した。選定したHGF、LIF、FGF2、BMP2において、現在培養上清やその細胞自体が組織再生治療において最も汎用性が高く有用であるとされている、BM-MSC(BoneMarrow derived MSC:骨髄由来間葉系幹細胞)を比較対象として、ELISA法による絶対定量によるその分泌量を測定した。ELISAはHuman HGF ELISA Kit(invitrogen)、Human LIF Platinum ELISA(affymetrix)、Human FGF Basic Quantikine ELISA(RandD)及びHuman BMP-2 Quantiline ELISA(RandD)を用いて行った。また、比較対象のBM-MSC培養上清は、購入から3継代以内のヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC、TakaraBio)をTheraPEAKTM MSCGM-CDTM(LONZA)でNormoxia培養して得たものを用いた。
結果を図17に示す。HGF(hepatocyte growth factor)は、BM-MSCの治療効果に大きく寄与すると報告されている増殖因子であるが(Kim MD et. al., Experimental & Molecular Medicine, 2014, 46;Bai L et. al., Nature Neuroscience, 2012, 15(6):862-870;Nita I et. al., Scientific Reports, 2017, 3;7:41901)、n-EpiSCによるHGFの分泌量はBM-MSC分泌量の2倍以上であり、n-MSCによるHGFの分泌量もBM-MSCの分泌量を大きく上回るものであった。さらに、組織再生を促進させることが知られており、褥瘡性潰瘍治療薬や歯周病治療薬としてすでに臨床応用されているFGF2、ES細胞の幹細胞性の維持にとって重要とされているLIF、異所性に骨を誘導する能力を有する強力な骨誘導タンパク質BMP2についても、n-EpiSCは、BM-MSCと比較して著しく分泌量が多かった。以上から、n-MSC及びn-EpiSCは有用タンパク質を多量に分泌する能力を有することが確認された。
実施例6.EMTを利用した歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の混合物の調製
実施例1において矯正便宜抜歯の歯根膜から得たn-EpiSCをプレートから回収し、実施例1における同細胞の選別条件と同条件で培養し継代培養した。継代培養開始から11日後の細胞の観察像を図18に示す。間葉系幹細胞様の細胞集団が、上皮系幹細胞様の細胞集団(黒色の矢印)の周辺を取り囲むように増殖する様子が観察され、上皮系幹細胞から間葉系幹細胞が生じた、すなわちEMTが起こったものと推察された。以上から、n-EpiSCを継代培養することにより、上皮系幹細胞と間葉系幹細胞との混合物を調製可能であることが示された。
実施例7.歯根膜間葉系幹細胞と歯根膜上皮系幹細胞との相互作用の評価
1) 実施例1において矯正便宜抜歯の歯根膜から得たcontrol細胞、n-MSC及びn-EpiSCをプレートから回収した。基本培地にcontrol細胞、n-MSC若しくはn-EpiSCを5.0×105 個ずつ、又はn-MSC及びn-EpiSCをそれぞれ2.5×105ずつ10cm Dishに播種し、37℃で7日間、Hypoxia培養を行った。培養後の細胞を回収し、PRO-PREPTM Protein Extraction Solution(iNtRON Biotechology)で細胞溶出し、Quantus Fluorometer(Promega)を用いてタンパク質含有量を測定した。タンパク質濃度を揃えてSDS-PAGEを行い、セミドライ型転写装置により膜へタンパク質を転写した。膜をCDCP1特異抗体(Rabbit anti-human CDCP1 polyclonal antibody, Cell Signaling)又はEREG特異抗体(Rabbit anti-human EREG monoclonal antibody, Cell Signaling)及びGAPDH特異抗体(Rabbit anti-human GAPDH monoclonal antibody, Cell Signaling)で反応させた後、2次抗体(Anti-Rabbit igG HRP-conjugated, Jackson ImmunoResarch)でも同様に反応させ、化学発光系(ECL Prime, Amersham)によりタンパク質発現を検出し、発現量の定量を行った(ImageQuant LAS4000:GE)。
CDCP1を検出したウエスタンブロット像を図19左に、EREGを検出したウエスタンブロット像を図19右に示す。図中、レーン1はcontrol細胞単独培養、レーン2はn-MSC単独培養、レーン3はn-EpiSC単独培養、レーン4はn-MSC及びn-EpiSCの共培養に相当する。n-MSCの単独培養において検出された活性型CDCP1(約70 kDa)及びEREG(20~30 kDa)のバンドが、n-MSC及びn-EpiSCの共培養によりいずれも強度を増していたことから、共培養による相乗効果が示唆された。
同様に、一次抗体としてGPR87特異抗体(Rabbit anti-human GPR87 Polyclonal antibody, GeneTex)、TFCP2L1特異抗体(Rabbit anti-human CRTR1 polyclonal antibody, abcam)又はCD133特異抗体(Rabbit anti-human CD133 polyclonal antibody, abcam)並びにGAPDH特異抗体(Rabbit anti-human GAPDH monoclonal antibody, Cell Signaling)及びβ-actin特異抗体(Rabbit anti-human β-actin monoclonal antibody, Cell Signaling)を用いて、各タンパク質発現を検出した。結果を図20に示す。図中、レーン1はcontrol細胞単独培養、レーン2はn-MSC単独培養、レーン3はn-EpiSC単独培養、レーン4はn-MSC及びn-EpiSCの共培養に相当する。遺伝子レベルでn-EpiSCにおける発現亢進が確認されたGPR87、TFCP2L1及びCD133はタンパク質レベルでも発現が確認された。
2) 実施例1において得た矯正便宜抜歯の歯根膜から得たn-MSC、実施例4において得たcontrol細胞、n-EpiSC及びn-EpiSC+SB431542をプレートから回収した。上記1)と同様にこれらの細胞を単独培養又は共培養し、培養後の細胞を回収、溶解し、溶解液に含まれるCDCP1及びEREGをウエスタンブロット法により解析した。結果を図21に示す。n-EpiSCにおいてはCDCP1のバンドはわずかに検出されたが、EREGのバンドは検出されなかった。一方、n-EpiSC+SB431542においてはCDCP1、EREG両方のバンドが検出され、これらのバンドはn-MSCとの共培養により強度を増したことから、上記1)同様に共培養による相乗効果が示唆された。
実施例8.歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞の各種細胞への分化能
実施例1において矯正便宜抜歯の歯根膜から得たn-MSC及びn-EpiSCをプレートから回収した。基本培地にn-MSC及びn-EpiSCをそれぞれ2.5×105ずつ10cm Dishに播種し、37℃で7日間、Hypoxia培養を行った。培養後の細胞を回収し、このn-MSC及びn-EpiSCの細胞混合物について、脂肪細胞、骨芽細胞及び軟骨細胞への分化能を既報(Yang, H., et al. Biomaterials. 2013 Sep;34(29):7033-47.)に記載の方法に準じて評価した。n-MSC及びn-EpiSCの混合物は、脂肪細胞、骨芽細胞及び軟骨細胞への分化能を有することが確認された(図22)。
n-MSC及びn-EpiSCの混合物の骨芽細胞への分化能について、実施例1において得たcontrol細胞、及びヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC、TakaraBio)のそれと比較した。n-MSC及びn-EpiSCの混合物を、骨芽細胞への分化誘導培地で培養すると、control細胞もより多くのカルシウムの沈着度を反映するアリザリンレッドの強い染色が観察されたことから(図23)、n-MSC及びn-EpiSCの混合物はcontrol細胞よりも強い骨芽細胞分化能を有するものと考えられた。また、BM-MSCは骨芽細胞への分化誘導処理によって一部が脂肪細胞に分化したが、n-MSC及びn-EpiSCの混合物ではそのような望まれない分化は生じなかった(図24)。
次に、n-MSC及びn-EpiSCの混合物の血管新生能を既報(Okubo, N., et al. J Vasc Res. 2010;47(5):369-83.)に記載の方法に準じて評価した。n-MSC及びn-EpiSCの混合物は血管新生アッセイにおいて3次元的な管腔構造を形成したことから(図25)、血管新生能を有することが確認された。
さらに、n-MSC及びn-EpiSCの混合物が靭帯様構造への分化能を有するかを、既報(Barsby, T., et al. Tissue Eng Part A. 2014 Oct;20(19-20):2604-13.)に記載の方法に準じて評価した。n-MSC及びn-EpiSCの混合物は、靭帯への分化誘導培養により靭帯様の構造体を形成したことから(図26)、靭帯細胞への分化能を有することが推測された。

Claims (14)

  1. 以下の(a)~(m)の全てを特徴とする、歯根膜由来の上皮系幹細胞:
    (a)HPRTに対するCD133の相対的発現量が0.01以上であり;
    (b)HPRTに対するTGF-αの相対的発現量が3.0以上であり;
    (c)HPRTに対するGPR87の相対的発現量が0.2以上であり;
    (d)HPRTに対するEDN1の相対的発現量が1.0以上であり;
    (e)HPRTに対するEFNA1の相対的発現量が0.8以上であり;
    (f)HPRTに対するSPRR2Bの相対的発現量が5.0以上であり;
    (g)HPRTに対するS100A8の相対的発現量が0.2以上であり;
    (h)HPRTに対するS100A9の相対的発現量が100以上であり;
    (i)HPRTに対するTFCP2L1の相対的発現量が0.15以上であり;
    (j)HPRTに対するITGA6の相対的発現量が4.0以上であり;
    (k)HPRTに対するCDCP1の相対的発現量が3.0以上であり;
    (l)HPRTに対するEREGの相対的発現量が1.0以上であり;
    (m)HPRTに対するLIFの相対的発現量が10以上である。
  2. 請求項1に記載の上皮系幹細胞又はその培養上清を有効成分とする、医薬組成物。
  3. 歯周組織の再生のための、請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 請求項1に記載の上皮系幹細胞を抜歯された歯若しくは歯科インプラントの存在下で培養することで歯若しくは歯科インプラントの表面に歯根膜を形成させる工程、又は請求項1に記載の上皮系幹細胞を培養することで形成された歯根膜シートを抜歯された歯若しくは歯科インプラントの表面に付着させる工程を含む、歯根膜コーティングを有する歯又は歯科インプラントの製造方法。
  5. CD133、TGF-α、GPR87、EDN1、EFNA1、SPRR2B、S100A8、S100A9、TFCP2L1、ITGA6、CDCP1、EREG及びLIFよりなる分子群の、歯根膜上皮系幹細胞マーカーとしての使用。
  6. 歯根膜から分離した細胞集団を、1~100 ng/mLのFGF-10及び1~100 ng/mLのEGFを含む培地中、酸素濃度5%以下で14~28日間培養する上皮系幹細胞選別工程を含む、請求項1に記載の歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団を製造する方法。
  7. 1~100 ng/mLのFGF-10及び1~100 ng/mLのEGFを含む培地がWntシグナル活性化物質をさらに含む、請求項6に記載の方法。
  8. 1~100 ng/mLのFGF-10及び1~100 ng/mLのEGFを含む培地が0.5~2.0μMのBIO(6BIO (2'Z,3'E)-6-Bromoindirubin-3'-oxime)をさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
  9. 1~100 ng/mLのFGF-10及び1~100 ng/mLのEGFを含む培地がBMPシグナル活性化物質をさらに含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 1~100 ng/mLのFGF-10及び1~100 ng/mLのEGFを含む培地が上皮間葉転換阻害剤をさらに含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 1~100 ng/mLのFGF-10及び1~100 ng/mLのEGFを含む培地が5~10μMのSB431542(4-[4-(1,3 -benzodioxol-5-yl)-5-(2-pyridinyl)-1H-imidazol-2-yl]benzamide)をさらに含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 培地がヘパリン及び/又はヘパラン硫酸をさらに含む、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 歯根膜から分離した細胞集団を、1~100 ng/mLのFGF-10及び1~100 ng/mLのEGFを含む培地中で酸素濃度5%以下で14~28日間培養する上皮系幹細胞選別工程、並びに前記工程で得られた請求項1に記載の歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団を継代培養することで歯根膜上皮系幹細胞を歯根膜間葉系幹細胞へと転換させる上皮間葉転換工程を含む、歯根膜上皮系幹細胞及び歯根膜間葉系幹細胞が濃縮された細胞集団を製造する方法。
  14. 歯根膜から分離した細胞集団を、1~100 ng/mLのFGF-10及び1~100 ng/mLのEGFを含む培地中、酸素濃度5%以下で14~28日間培養する上皮系幹細胞選別工程、並びに前記工程で得られた請求項1に記載の歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団を抜歯された歯若しくは歯科インプラントの存在下で培養することで歯若しくは歯科インプラントの表面に歯根膜を形成させる工程、又は前記歯根膜上皮系幹細胞が濃縮された細胞集団を培養することで形成された歯根膜シートを抜歯された歯若しくは歯科インプラントの表面に付着させる工程を含む、歯根膜コーティングを有する歯又は歯科インプラントの製造方法。
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大久保 直登,歯周靭帯幹細胞の多分化能力を応用した 靭帯・腱の再生治療法の確立,KAKEN 2015 年度 実施状況報告書,2017年01月06日,インターネット、 URL<https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-15K11234/15K112342015hokoku/>、検索日:2018-11-02

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