JP7297215B2 - 演算装置、演算処理プログラム、および演算方法 - Google Patents

演算装置、演算処理プログラム、および演算方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂流路を流れる溶融樹脂の粘度を算出する演算装置、演算処理プログラム、および演算方法に関する。
近年、多くの分野で大型プラスチック製品の採用が拡大しているが、成形すべき物品が大型になると、その射出成形が非常に難しくなってくる。それにも拘わらず、金型開発期間の短縮・開発費用の削減は以前に増して強く求められている。このような背景から、金型設計を射出成形シミュレーションによって支援するニーズが高まっている。このシミュレーションにおいては、射出成形に供する溶融樹脂の粘度データが必要になる。
前記溶融樹脂の粘度は、キャピラリーレオメーターのような専用測定装置を用いて測定することが考えられる。しかし、射出成形機と一口に言っても、同一機種のマシン間には機差があるのが通常である。例えば、射出成形機のスクリュー形状や各構成要素の摩耗等によって樹脂材料のせん断発熱度合は異なり、繊維強化樹脂材料の場合は繊維破断の度合が異なり、そのため、溶融射出される樹脂の粘度もマシン間で異なる。従って、そのような専用機で得られた粘度に基づいて、シミュレーションを行なっても、必ずしも実機に即したデータは得られない。
これに対して、射出成形機(実機)を用いて樹脂粘度を測定する方法が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された方法では、樹脂流路を流れる溶融樹脂の圧力勾配と流量とに基づいて、溶融樹脂の粘度を求めている。
特開2011-163873号公報
しかしながら、上述の特許文献1に開示された方法では、溶融樹脂量を求めるために、射出成形機による射出を少なくとも2回以上行う必要があるという問題点があった。
本発明の一態様は、前記の問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、射出成形機による射出を1回行うだけで溶融樹脂の粘度を求めることができる演算装置などを提供することにある。
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る演算装置は、溶融樹脂が流入する流入口と、前記溶融樹脂が流出する流出口とが形成され、前記流入口と前記流出口とが流路により連通しているとともに、前記流路を流れる前記溶融樹脂から受ける圧力を検出する第1圧力センサおよび第2圧力センサを備えた樹脂流動装置と接続される演算装置であって、
前記樹脂流動装置から、下記(a)および(b)を取得する取得部と、
(a)前記第1圧力センサにより検出される第1圧力値
(b)前記第2圧力センサにより検出される第2圧力値
前記第1圧力値と、前記第2圧力値との差である圧力差を求めるとともに、前記第1圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第1到達時間と、前記第2圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第2到達時間との差である到達時間差を求め、前記圧力差と前記到達時間差とに基づいて、前記溶融樹脂の粘度を算出する粘度算出部とを備えている構成である。
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る演算方法は、溶融樹脂が流入する流入口と、前記溶融樹脂が流出する流出口とが形成され、前記流入口と前記流出口とが流路により連通しているとともに、前記流路を流れる前記溶融樹脂から受ける圧力を検出する第1圧力センサおよび第2圧力センサを備えた樹脂流動装置と接続される演算装置により実行される演算方法であって、
前記樹脂流動装置から、下記(a)および(b)を取得する取得ステップと、
(a)前記第1圧力センサにより検出される第1圧力値
(b)前記第2圧力センサにより検出される第2圧力値
前記第1圧力値と、前記第2圧力値との差である圧力差を求めるとともに、前記第1圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第1到達時間と、前記第2圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第2到達時間との差である到達時間差を求め、前記圧力差と前記到達時間差とに基づいて、前記溶融樹脂の粘度を算出する粘度算出ステップとを含む方法である。
本発明の一態様によれば、射出成形機による射出を1回行うだけで溶融樹脂の粘度を求めることができるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態に係る樹脂流動装置を取り付けた射出成形機を一部断面で示す側面図である。 前記樹脂流動装置が備える測定ブロックを示す断面図である。 前記測定ブロックを型開き状態で示す断面図である。 符号401で示す図は、前記測定ブロックの入れ子の一部の部分断面斜視図であり、符号402で示す図は、別の入れ子の一部の部分断面斜視図である。 本発明の実施の一形態に係る測定ブロックおよび制御装置の構成の概要を示すブロック図である。 第1圧力センサおよび第2圧力センサの検出結果を示すグラフである。 本発明の実施の一形態に係る演算方法における樹脂粘度の算出過程を示すフローチャートである。 樹脂粘度の算出方法に係る説明図である。 樹脂流路の断面形状が円形の場合における樹脂粘度の算出方法を説明するための測定ブロックを示す断面図である。
〔射出成形機〕
まず、図1~図4に基づき、本発明の実施の一形態に係る射出成形機100の構成について説明する。図1に示す射出成形機100はインラインスクリュー式であり、加熱シリンダ1、ホッパ2、射出装置3、固定盤4、および型締め装置5を備える。型締め装置5は、可動盤6を有している。
加熱シリンダ1は、樹脂材料を溶融可塑化させて輸送するためのものであって、外周にはバンドヒーター7が取り付けられ、内部にはスクリュー8が設けられている。ホッパ2は、加熱シリンダ1にペレット状樹脂材料を供給するものである。射出装置3は、射出シリンダを内蔵している。
樹脂材料は、外部よりの伝熱と、スクリュー8の回転によるせん断力とによって加熱されて可塑化される。スクリュー8の先端には逆流防止弁9が設けられており、スクリュー8の前進によって、加熱シリンダ1の先端の射出ノズル1aから溶融樹脂が成形用金型のキャビティに射出される。
射出成形する際には、固定盤4に成形用固定型(固定型12)が取り付けられ、可動盤6に成形用可動型(可動型13)が取り付けられる。また、可動盤6は、型締め装置5に取付けられている。型締め装置5の可動盤6が作動することによって可動型13が可動する。より具体的には、型締め装置5の可動盤6が作動することによって可動型13が固定型12の配置方向に変位して型締めされる。図1は射出成形用樹脂の樹脂粘度ηを測定するために樹脂流動装置11を射出成形機100に取り付けた状態を示している。樹脂流動装置11は、固定型12と可動型13とによって構成される測定ブロック14を備えている。測定ブロック14では、樹脂流入口(流入口)15aと樹脂流出口(流出口)15bとが樹脂流路(流路)15を介して連通している。樹脂流路15は、測定ブロック14が型締めされることによって形成される。
図2および図3は測定ブロック14の具体的な構造を示している。本実施形態の測定ブロック14では、固定型12と可動型13とは、その一方が上に、他方が下になるように配置されており、型締めによって、両者間に樹脂流路15が形成されるようになっている。これらの図に示すように、可動型13は固定型12の上側に配置されている。固定型12には固定盤4に取り付ける固定側取付板16が設けられ、可動型13には型締め用の可動盤6に取り付ける可動側取付板17が設けられている。また、固定側取付板16にロケートリング16aが設けられている。
樹脂流路15について具体的に説明すると、固定型12は、その上面が固定盤4側から可動盤6側に向かって下り勾配に傾斜している。可動型13の下面も同じく、固定盤4側から可動盤6側に向かって下り勾配に傾斜している。可動型13は、可動型本体18と、可動型本体18に着脱自在に設けられた入れ子19とを備えてなる。図3および図4の符号401で示す図のように、入れ子19の下面には流路溝21が形成されている。また、流路溝21と固定型12の上面とによって、固定盤4側から可動盤6側に向かって下り勾配に傾斜した矩形の断面の樹脂流路15が形成されている。
樹脂流路15の一端(固定盤側)の樹脂流入口15aは、固定側取付板16に形成されたスプル22に接続されている。樹脂流入口15aからは溶融樹脂が流入する。一方、樹脂流路15の他端(可動盤側)の樹脂流出口15bは、固定型12の下方に開放されている。この樹脂流出口15bから溶融樹脂が流出する。従って、スプル22から樹脂流路15に流入する溶融樹脂は高いせん断速度でもって樹脂流路15を流れて樹脂流出口15bから流出する。
固定型12および可動型13の入れ子19には、樹脂流路15の温度を調整するヒータ23、24が設けられている。さらに、固定型12には、樹脂流路15の長手方向に間隔をおいて2箇所に、樹脂流路15を流れる溶融樹脂から受ける圧力を検出する圧力センサ(第1圧力センサ)25および圧力センサ(第2圧力センサ)26が設けられている。また、これらの圧力センサ25、26間、ならびに可動側取付板17には、樹脂流路15を流れる溶融樹脂の温度を検出する温度センサ27、28が設けられている。
次に、図4の符号402で示す図は入れ子19と適宜交換して使用する別の入れ子19を示す。すなわち、この入れ子19は、その流路溝31の幅および深さが符号401で示す図の入れ子19の流路溝21の幅および深さよりも小さくなったものである。このような流路溝の幅および深さの少なくとも一方が異なる複数の入れ子を準備しておく。これにより、入れ子の交換によって、固定型12と可動型13との間に、粘度測定すべき樹脂の種類に応じて幅または高さが異なる矩形の断面の樹脂流路を形成することができる。
〔測定ブロックおよび制御装置〕
次に、図5に基づき、本発明の実施の一形態に係る測定ブロック14および制御装置(演算装置)10の構成の概要について説明する。なお、制御装置10は、樹脂流動装置11の内部に設けられていても良く、樹脂流動装置11の外部に設けられていても良く、その各構成部(各制御ブロック)はそれぞれ独立していても良い。同図に示すように、制御装置10は、温度調整部101、情報取得部(取得部)102、情報取得部102の内部にあるタイマー103、および樹脂粘度算出部(粘度算出部)104を備えている。
また、射出成形機100には、例えば、型締め用の可動盤6が型締めのために固定盤4側へ動き始めたことを示す信号を情報取得部102へ送信するための信号発生部61が取り付けられている。なお、測定開始のトリガとなる信号を発生する信号発生部61の例としては、スイッチの他、光センサ、加速度センサ、距離センサ、圧力センサ、振動センサなどを例示することができる。
温度調整部101は、測定ブロック14が備えるヒータ23、24の温度を調整する。情報取得部102は、溶融樹脂が射出成形機100から射出される前の時点で、可動盤6に取り付けられている信号発生部61から発せられる信号を受信する。溶融樹脂が射出成形機100から射出される前の時点の例としては、例えば、「測定ブロック14の型締めのために型締め装置5の可動盤6が動き始めた時点」を例示することができる。なお、信号発生部61から信号が発せられる時点は、溶融樹脂が射出成形機100から射出される前の時点であれば、いつの時点であっても良い。
前記信号の受信をトリガとして、情報取得部102は、測定ブロック14が備える圧力センサ25、26から、圧力センサ25、26が溶融樹脂から受ける圧力の検出結果などの取得を開始する。その後、情報取得部102は、予め設定された一定の取得時間が経過した後に、圧力センサ25、26からの圧力の検出結果の取得を終了する。なお、前記一定の取得時間は、情報取得部102によって設定されても良い。
情報取得部102は、樹脂流動装置11から、下記(a)および(b)を取得する。
(a)圧力センサ25により検出される第1圧力値、
(b)圧力センサ26により検出される第2圧力値。
また、情報取得部102は、測定ブロック14が備える温度センサ27、28から温度の検出結果を取得する。情報取得部102にはタイマー103が内蔵されている。タイマー103は、情報取得部102が、測定ブロック14の型締めのために型締め装置5の可動盤6が動き始めた時点で、可動盤6に取り付けられている信号発生部61から発せられる信号を受信してから、圧力センサ25および圧力センサ26に溶融樹脂がそれぞれ到達するまでの時間を計測する。
樹脂粘度算出部104は、情報取得部102が取得する圧力の検出結果、および温度の検出結果(ならびに時間の計測結果)に基づき、溶融樹脂の粘度を算出する。具体的には、樹脂粘度算出部104は、前記第1圧力値と、前記第2圧力値との差である圧力差を求める。なお、前記圧力差は、溶融樹脂の流動期における第1圧力値の平均と、第2圧力値の平均との差であっても良い。また、樹脂粘度算出部104は、前記第1到達時間と、前記第2到達時間との差である到達時間差を求める。また、樹脂粘度算出部104は、前記圧力差と前記到達時間差とに基づいて、溶融樹脂の樹脂粘度ηを算出する。
前記構成によれば、制御装置10(樹脂粘度算出部104)は、圧力差と到達時間差とに基づいて、溶融樹脂の樹脂粘度ηを求める。ここで、圧力差と到達時間差とは、射出成形機100による射出を1回行うだけで求めることができる量である。このため、前記構成によれば、射出成形機100による射出を1回行うだけで溶融樹脂の樹脂粘度ηを求めることができる。
〔樹脂粘度の具体的な算出方法〕
次に、図6および図7に基づき、樹脂粘度の具体的な算出方法について説明する。まず、測定ブロック14を射出成形機100に、その固定盤4と型締め用の可動盤6とによって取り付ける。射出成形機100の射出ノズル1aを前進させてスプル22に接続する(ノズルタッチ)。測定ブロック14は、溶融樹脂が樹脂流路15を固化することなく流れるようにヒータ23、24にて適切な温度に調整しておく。
加熱シリンダ1を所定温度に加熱した状態でスクリュー8を回転・後退させる。これにより、ホッパ2から投入された樹脂材料を加熱可塑化させ、溶融樹脂を加熱シリンダ1の先端部に溜めていく。スクリュー8を前進させることにより、加熱シリンダ1の先端部の溶融樹脂を射出ノズル1aからスプル22を介して樹脂流路15に流入させ、樹脂流出口15bから流出させる。
ここで、図6は、圧力センサ25、26による圧力の検出結果を示すグラフである。図6の符号601で示す図のグラフX1(第1グラフ)は、圧力センサ25による圧力と測定時間との関係を示すグラフである。一方、図6の符号601で示す図のグラフX2(第2グラフ)は、圧力センサ26による圧力と測定時間との関係を示すグラフである。これらのグラフは、圧力軸(P軸)と時間軸(t軸)とからなる直交座標系に描かれるグラフである。まず、同図の符号Aに示すように、圧力センサ25、26の圧力0のベースラインを合わせる処理を行う。すなわち、グラフX1のベースラインとグラフX2のベースラインとを一致させて原点較正を行う。原点較正を行った後のグラフが図6の符号602で示す図のグラフである。
次に、図6の符号602で示す図の符号Bに示すように、圧力センサ25、26の圧力増加開始点を算出する。具体的には、樹脂粘度算出部104は、圧力センサ25により検出される前記第1圧力値の時間変化を表すグラフX1の立ち上がり部分を直線近似して求めた直線L1(第1直線)と、時間軸(t軸)との交点tを求めることで前記第1到達時間を算出する。なお、グラフX1の立ち上がり部分とは、第1圧力値が増加に転じた後に単調に増加する部分である。
また、樹脂粘度算出部104は、圧力センサ26により検出される前記第2圧力値の時間変化を表すグラフX2の立ち上がり部分を直線近似して求めた直線L2(第2直線)と、前記時間軸との交点tを求めることで前記第2到達時間を算出する。なお、グラフX2の立ち上がり部分とは、第2圧力値が増加に転じた後に単調に増加する部分である。
例えば、符号Cに示すように、グラフX1の立ち上がり部分を直線近似して求めた直線L1と、時間軸(t軸)との交点である交点tを求める。また、グラフX2の立ち上がり部分を直線近似して求めた直線L2と、時間軸との交点である交点tを求める。この交点tと交点tとの間の距離から到達時間差Δtを算出することができる。この到達時間差Δtは、圧力センサ25、26のそれぞれへ溶融樹脂が到達する時間の差である。
なお、到達時間差は、グラフX1およびグラフX2の各圧力値がそれぞれ増加に転じる領域を曲線で近似し、これらの近似曲線においてそれぞれP=0となる時間の差から求めても良い。また、到達時間差は、グラフX1の圧力値が増加に転じる領域の近似曲線と直線L1の交点における時間とグラフX2の圧力値が増加に転じる領域の近似曲線と直線L2との交点における時間との差から求めても良い。または、測定ブロック14の型締めのために型締め装置5の可動盤6が動き始めた時点で可動盤6に取り付けた信号発生部61から発せられる信号を受信することで第1圧力値および第2圧力値の取得を開始しても良い。このとき、第1圧力値および第2圧力値の取得を開始してから、圧力センサ26に溶融樹脂が到達するまでの時間と、圧力センサ26に溶融樹脂が到達するまでの時間とを、情報取得部102に内蔵するタイマー103でそれぞれ測定し、それらの差から到達時間差を求めても良い。
次に、符号Dで示すように、樹脂粘度算出部104は、グラフX1を参照して溶融樹脂の流動期において圧力センサ25が受ける圧力(第1圧力値)Pを求める。次に、樹脂粘度算出部104は、グラフX2を参照して溶融樹脂の流動期において圧力センサ26が受ける圧力(第2圧力値)Pを求める。これにより、圧力Pと圧力Pとの差から圧力差ΔPを求めることができる。なお、流動期における圧力が変動する場合は、第1圧力値は、流動期における圧力センサ25が受ける圧力の平均値であっても良い。同様に第2圧力値は、流動期における圧力センサ26が受ける圧力の平均値であっても良い。
次に、図7に基づき、樹脂粘度のより具体的な算出方法の流れについて説明する。まず、S101では、P-t曲線(例えば、上述したグラフX1、グラフX2)のベースライン(圧力0のライン)を決定し、グラフX1のベースラインとグラフX2のベースラインとを一致させて原点較正を行い、S102に進む。S102では、P-t曲線の立ち上がり領域(立ち上がり部分)の直線近似を行い、時間軸tとの交点(具体的には、上述した交点t、交点t)を求めて、S103に進む。
次に、S103では、圧力センサ25、26のそれぞれの圧力増加開始点(具体的には、上述した交点tおよび交点tのそれぞれのt軸上の座標)を求めS104に進む。S104では、圧力センサ25、26のそれぞれへ溶融樹脂が到達する時間差(上述したΔt)を求め、S105に進む。次に、S105では、流動期における圧力センサ25、26の圧力差(上述したΔP)を求め、S106に進む。なお、溶融樹脂は、射出開始とともに圧力が高くなっていき、その後、比較的安定した圧力が続き、次いで溶融樹脂の圧力が低下して射出終了に至る。この比較的安定した圧力が続く期間を溶融樹脂の流動期と定義する。
S106では、流路の断面積Sと、圧力センサ25、26間の距離Lを用いて、樹脂流量Qを求め、S107に進む。ここで、樹脂流量は、Q=(S×L)/Δtで与えられる。S107では、圧力差ΔPおよび流路厚Hを用いてせん断応力τを求め、S108に進む。図8において、Hは樹脂流路15の高さ、PおよびPは圧力センサ25、26の検出値である。このとき、δP/δx=(P-P)/L=ΔP/L=2τ/Hの関係が成り立つ。よって、せん断応力τは、τ=(ΔP/L)×(H/2)で与えられる。
S108では、流路幅Wを用いて、矩形の樹脂流路15のせん断速度γ’を求め、S109に進む。
ここで、せん断速度γ’は、γ’=6×Q/(W×H)で与えられる。次に、S109では、せん断応力τとせん断速度γ’とを用いて樹脂粘度ηを算出する。なお、樹脂流路15の断面形状が矩形の場合、樹脂粘度ηは、η=τ/γ’で与えられる。
以上により、ある温度Tでの樹脂粘度ηを求めることができる。なお、温度Tは、例えば温度センサ27、28の検出値にて与えることができる。次に、粘度測定後は、図3に示すように測定ブロック14の型開きを行ない、樹脂流路15内の樹脂20を取り除くことができる。
以上のように、本実施形態では、測定ブロック14を射出成形機100に取り付けて溶融樹脂の樹脂粘度ηを測定する。このため、射出成形機100の機差を包含した粘度データが得られる。また、測定ブロック14に形成された樹脂流路15の断面形状は矩形であり、樹脂流出口15bが外部に開放されている。このため、高せん断流動下の樹脂粘度が得られ、しかも、長繊維入り溶融樹脂であっても、目詰まりを招くことなく、その樹脂粘度を測定することができる。このため、本実施形態によれば、実機に即した射出成形シミュレーションを行なう上で有利になる。
〔樹脂流路の断面形状が円形の場合〕
なお、樹脂流路の断面形状は円形であっても良い。図9に基づき、樹脂流路の断面形状が円形である場合における、樹脂粘度ηの算出方法について説明する。図9は、断面形状が円形である樹脂流路79を備えた測定ブロック71の断面図である。同図に示すように樹脂流入口79aと樹脂流出口79bとは樹脂流路79を介して連通している。
固定型72には、圧力センサ25、圧力センサ26、温度センサ27、ヒータ23がそれぞれ設けられている。可動型73には、温度センサ28、ヒータ24がそれぞれ設けられている。溶融樹脂の流動期において圧力センサ25から取得される圧力の平均値をp1、溶融樹脂の流動期において圧力センサ26から取得される圧力の平均値をp2とする。また、Dは、樹脂流路79の断面の直径である。また、lは、圧力センサ25と圧力センサ26との間の距離である。また、Qは、流動期における溶融樹脂の流量である。
同図に示す状態では、せん断応力τは、τ=〔(p2-p1)×D〕/4lで与えられる。一方、せん断速度γ’は、γ’=(32×Q)/(π×D)で与えられる。これにより、樹脂粘度ηが、η=τ/γ’で与えられる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置10の制御ブロック(特に情報取得部102および樹脂粘度算出部104)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、制御装置10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る演算装置(制御装置10)は、溶融樹脂が流入する流入口(樹脂流入口15a)と、前記溶融樹脂が流出する流出口(樹脂流出口15b)とが形成され、前記流入口と前記流出口とが流路(樹脂流路15)により連通しているとともに、前記流路を流れる前記溶融樹脂から受ける圧力を検出する第1圧力センサ(圧力センサ25)および第2圧力センサ(圧力センサ26)を備えた樹脂流動装置(11)と接続される演算装置であって、
前記樹脂流動装置から、下記(a)および(b)を取得する取得部(情報取得部102)と、
(a)前記第1圧力センサにより検出される第1圧力値
(b)前記第2圧力センサにより検出される第2圧力値
前記第1圧力値と、前記第2圧力値との差である圧力差を求めるとともに、前記第1圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第1到達時間と、前記第2圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第2到達時間との差である到達時間差を求め、前記圧力差と前記到達時間差とに基づいて、前記溶融樹脂の粘度を算出する粘度算出部(樹脂粘度算出部104)とを備えている構成である。
前記構成によれば、粘度算出部は、圧力差と到達時間差とに基づいて、溶融樹脂の粘度を求める。ここで、圧力差と到達時間差とは、射出成形機による射出を1回行うだけで求めることができる量である。このため、前記構成によれば、射出成形機による射出を1回行うだけで溶融樹脂の粘度を求めることができる。
本発明の態様2に係る演算装置(制御装置10)は、前記態様1において、前記樹脂流動装置(11)は、固定型(12)と、型締め装置(5)に取り付けられた可動盤(6)によって可動する可動型(13)と、で構成される測定ブロック(14)をさらに備え、前記測定ブロックは、前記型締め装置の前記可動盤が作動することによって前記可動型が前記固定型の配置方向に変位して型締めされ、前記流路は、前記測定ブロックが型締めされることによって形成され、前記取得部は、前記溶融樹脂が射出成形機から射出される前の時点で、前記型締め装置の前記可動盤に取り付けた信号発生部(61)から発せられる信号を受信することで前記第1圧力値および前記第2圧力値の取得を開始し、予め設定された一定の取得時間が経過した後に前記第1圧力値および前記第2圧力値の取得を終了しても良い。前記構成によれば、射出成形機による射出を1回行うだけで圧力差を求めることができる。
本発明の態様3に係る演算装置(制御装置10)は、前記態様1または2において、前記粘度算出部(樹脂粘度算出部104)は、時間軸と圧力軸とからなる直交座標系に対して描かれる、前記第1圧力値と測定時間との関係を示す第1グラフ(グラフX1)において、前記第1圧力値が増加に転じた後に単調に増加する部分である立ち上がり部分を近似して求めた第1直線(直線L1)と、前記時間軸との交点を求めることで前記第1到達時間を算出し、前記直交座標系に対して描かれる、前記第2圧力値と測定時間との関係を示す第2グラフ(グラフX2)において、前記第2圧力値が増加に転じた後に単調に増加する部分である立ち上がり部分を近似して求めた第2直線(直線L2)と、前記時間軸との交点を求めることで前記第2到達時間を算出し、前記圧力差を用いて前記溶融樹脂のせん断応力を算出し、前記第1圧力センサ(圧力センサ25)と前記第2圧力センサ(圧力センサ26)との間の距離と、前記到達時間差とを用いて前記溶融樹脂のせん断速度を算出し、前記せん断応力と前記せん断速度とから前記溶融樹脂の粘度を算出しても良い。前記構成によれば、射出成形機による射出を1回行うだけで溶融樹脂の粘度を求めることができる。
本発明の態様4に係る演算装置(制御装置10)は、前記態様1~3の何れかにおいて、前記圧力差が、前記溶融樹脂の流動期における前記第1圧力値の平均と、前記第2圧力値の平均との差であっても良い。前記構成によれば、射出成形機による射出を1回行うだけで圧力差を求めることができる。
本発明の態様5に係る演算装置(制御装置10)は、前記態様1~4の何れかにおいて、前記流路(樹脂流路15)の断面形状が矩形であっても良い。樹脂流路の断面形状が矩形の場合、温度センサおよび圧力センサを設置し易くなる。
本発明の態様6に係る演算装置(制御装置10)は、前記態様1~4の何れかにおいて、前記流路(樹脂流路15)の断面形状が円形であっても良い。樹脂流路の断面形状が円形の場合、演算に必要なパラメータが矩形の場合に比べて少なく、樹脂流路断面の直径を変えた場合の補正が簡易である。
本発明の態様7に係る演算方法は、溶融樹脂が流入する流入口(樹脂流入口15a)と、前記溶融樹脂が流出する流出口(樹脂流出口15b)とが形成され、前記流入口と前記流出口とが流路(樹脂流路15)により連通しているとともに、前記流路を流れる前記溶融樹脂から受ける圧力を検出する第1圧力センサ(圧力センサ25)および第2圧力センサ(圧力センサ26)を備えた樹脂流動装置(11)と接続される演算装置(制御装置10)により実行される演算方法であって、
前記樹脂流動装置から、下記(a)および(b)を取得する取得ステップと、
(a)前記第1圧力センサにより検出される第1圧力値
(b)前記第2圧力センサにより検出される第2圧力値
前記第1圧力値と、前記第2圧力値との差である圧力差を求めるとともに、前記第1圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第1到達時間と、前記第2圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第2到達時間との差である到達時間差を求め、前記圧力差と前記到達時間差とに基づいて、前記溶融樹脂の粘度を算出する粘度算出ステップとを含む方法である。前記方法によれば、前記態様1と同様の効果を得ることができる。
本発明の各態様に係る演算装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記演算装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記演算装置をコンピュータにて実現させる演算処理プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
5 型締め装置
6 可動盤
10 制御装置(演算装置)
11 樹脂流動装置
12、72 固定型
13、73 可動型
14、71 測定ブロック
15、79 樹脂流路(流路)
15a、79a 樹脂流入口(流入口)
15b、79b 樹脂流出口(流出口)
25 圧力センサ(第1圧力センサ)
26 圧力センサ(第2圧力センサ)
61 信号発生部
100 射出成形機
102 情報取得部(取得部)
104 樹脂粘度算出部(粘度算出部)

Claims (8)

  1. 溶融樹脂が流入する流入口と、前記溶融樹脂が流出する流出口とが形成され、前記流入口と前記流出口とが流路により連通しているとともに、前記流路を流れる前記溶融樹脂から受ける圧力を検出する第1圧力センサおよび第2圧力センサを備えた樹脂流動装置と接続される演算装置であって、
    前記樹脂流動装置から、下記(a)および(b)を取得する取得部と、
    (a)前記第1圧力センサにより検出される第1圧力値
    (b)前記第2圧力センサにより検出される第2圧力値
    前記第1圧力値と、前記第2圧力値との差である圧力差を求めるとともに、前記第1圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第1到達時間と、前記第2圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第2到達時間との差である到達時間差を求め、前記圧力差と前記到達時間差とに基づいて、前記溶融樹脂の粘度を算出する粘度算出部とを備えていることを特徴とする演算装置。
  2. 前記樹脂流動装置は、固定型と、型締め装置に取り付けられた可動盤によって可動する可動型と、で構成される測定ブロックをさらに備え、
    前記測定ブロックは、前記型締め装置の前記可動盤が作動することによって前記可動型が前記固定型の配置方向に変位して型締めされ、
    前記流路は、前記測定ブロックが型締めされることによって形成され、
    前記取得部は、
    前記溶融樹脂が射出成形機から射出される前の時点で、前記型締め装置の前記可動盤に取り付けた信号発生部から発せられる信号を受信することで前記第1圧力値および前記第2圧力値の取得を開始し、
    予め設定された一定の取得時間が経過した後に前記第1圧力値および前記第2圧力値の取得を終了することを特徴とする請求項1に記載の演算装置。
  3. 前記粘度算出部は、
    時間軸と圧力軸とからなる直交座標系に対して描かれる、前記第1圧力値と測定時間との関係を示す第1グラフにおいて、前記第1圧力値が増加に転じた後に単調に増加する部分である立ち上がり部分を近似して求めた第1直線と、前記時間軸との交点を求めることで前記第1到達時間を算出し、
    前記直交座標系に対して描かれる、前記第2圧力値と測定時間との関係を示す第2グラフにおいて、前記第2圧力値が増加に転じた後に単調に増加する部分である立ち上がり部分を近似して求めた第2直線と、前記時間軸との交点を求めることで前記第2到達時間を算出し、
    前記圧力差を用いて前記溶融樹脂のせん断応力を算出し、
    前記第1圧力センサと前記第2圧力センサとの間の距離と、前記到達時間差とを用いて前記溶融樹脂のせん断速度を算出し、
    前記せん断応力と前記せん断速度とから前記溶融樹脂の粘度を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の演算装置。
  4. 前記圧力差が、
    前記溶融樹脂の流動期における前記第1圧力値の平均と、前記第2圧力値の平均との差であることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の演算装置。
  5. 前記流路の断面形状が矩形であることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の演算装置。
  6. 前記流路の断面形状が円形であることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の演算装置。
  7. 請求項1に記載の演算装置としてコンピュータを機能させるための演算処理プログラムであって、前記取得部および前記粘度算出部としてコンピュータを機能させるための演算処理プログラム。
  8. 溶融樹脂が流入する流入口と、前記溶融樹脂が流出する流出口とが形成され、前記流入口と前記流出口とが流路により連通しているとともに、前記流路を流れる前記溶融樹脂から受ける圧力を検出する第1圧力センサおよび第2圧力センサを備えた樹脂流動装置と接続される演算装置により実行される演算方法であって、
    前記樹脂流動装置から、下記(a)および(b)を取得する取得ステップと、
    (a)前記第1圧力センサにより検出される第1圧力値
    (b)前記第2圧力センサにより検出される第2圧力値
    前記第1圧力値と、前記第2圧力値との差である圧力差を求めるとともに、前記第1圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第1到達時間と、前記第2圧力センサに前記溶融樹脂が到達した時間である第2到達時間との差である到達時間差を求め、前記圧力差と前記到達時間差とに基づいて、前記溶融樹脂の粘度を算出する粘度算出ステップとを含むことを特徴とする演算方法。
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