JP7296971B2 - シート状構造体の製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、以下の[1]~[15]を提供するものである。
[1]下記工程(1)~(2)を有する、シート状構造体の製造方法。
・工程(1):セルロースナノファイバーの水分散液に有機溶剤を添加して組成物を調製する工程。
・工程(2):前記組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥して、シート状構造体とする工程。
[2]前記工程(1)において、前記水分散液を撹拌しながら、前記有機溶剤を前記水分散液に供給する、上記[1]に記載のシート状構造体の製造方法。
[3]前記組成物のpHが4~10である、上記[1]又は[2]に記載のシート状構造体の製造方法。
[4]前記工程(2)において、前記塗膜を形成する際のコーティングギャップが、30~1250μmである、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のシート状構造体の製造方法。
[5]前記工程(2)で得られるシート状構造体が、セルロースナノファイバーを含む膜から構成された閉塞空間を複数備えている、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のシート状構造体の製造方法。
[6]前記工程(2)で得られるシート状構造体の、前記複数の閉塞空間のうち隣接する一組の閉塞空間は少なくとも一つの前記膜を共有している、上記[5]に記載のシート状構造体の製造方法。
[7]前記セルロースナノファイバーの直径(太さ)の平均が、1~1000nmである、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載のシート状構造体の製造方法。
[8]前記セルロースナノファイバーの繊維長の平均が0.01~10μmである、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載のシート状構造体の製造方法。
[9]前記有機溶剤が非水溶系溶媒である、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載のシート状構造体の製造方法。
[10]前記有機溶剤は、下記式(1)で表される、25℃における、ハンセン溶解度パラメータの相互作用距離Raが5.80MPa1/2以下である、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載のシート状構造体の製造方法。
(前記式中、δDは、前記有機溶剤のハンセン溶解度パラメータの分散成分、
δPは、前記有機溶剤のハンセン溶解度パラメータの極性成分、
δHは、前記有機溶剤のハンセン溶解度パラメータの水素結合成分を示す。)
[11]前記組成物の23℃でのTI値(回転数5rpmにおける粘度/回転数50rpmにおける粘度)が、1.2~20である、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載のシート状構造体の製造方法。
[12]前記工程(2)において、前記支持体に塗布する際の前記組成物の23℃、50rpmにおける粘度が、500~20000mPa・sである、上記[1]~[11]のいずれか一つに記載のシート状構造体の製造方法。
[13]前記組成物において、前記セルロースナノファイバーの配合量が、0.1~20質量%である、上記[1]~[12]のいずれか一つに記載のシート状構造体の製造方法。
[14]前記組成物中の固形分率が、当該組成物の全量に対して、80~100質量%である、上記[1]~[13]のいずれか一つに記載のシート状構造体の製造方法。
[15]前記組成物において、前記組成物に含まれる水に対する前記有機溶剤の配合量比が、質量比で0.01~200である、上記[1]~[14]のいずれか一つに記載のシート状構造体の製造方法。
初めに、本発明の実施形態に係るシート状構造体の製造方法(以下、本実施形態の製造方法ということがある)によって得られるシート状構造体について説明する。本実施形態の製造方法によって得られるシート状構造体の好ましい一態様は、支持体と、この支持体上に設けられた、セルロースナノファイバー(CNF)を含む膜で構成される複数の閉塞空間を有する層とを備える。
本明細書において、「CNFを含む膜から構成された閉塞空間」とは、上方、下方、側方等の全方位がCNFを含む膜によって囲まれた、閉じた空間を意味する。なお、後述するように、CNFを含む膜は緻密な膜であるが微細な空隙を有している。したがって、CNFを含む膜によって囲まれた空間が、上記微細空隙を超える大きさの開口に通じていなければ、「CNFを含む膜から構成された閉塞空間」に該当する。
図1(A)は、シート状構造体の一態様であるシート状構造体の部分断面図である。図1(A)に示すように、支持体40上に設けられた、CNFを含む膜35で構成される複数の閉塞空間33を有する層31がシート状構造体を構成する。そして、シート状構造体である層31と支持体40とで支持体付きのシート状構造体50が構成されている。なお、後述するように、支持体40はなくても構わない。支持体40がない場合は、単体のシート状構造体31となる。
本実施形態の製造方法によって形成されるCNFを含む膜35は、複数のCNFが並んだり絡み合ったりすることで形成される網目状もしくは繊維状の緻密な膜であると考えられる。したがって、例えば、シート状構造体31や支持体付きのシート状構造体50を、CNFを含む膜35で囲まれた閉塞空間33内に流体を保持する製品に適用することができる。このような製品(以下、「流体保持用製品」ということがある)は、必要な場合に圧力を加えて構造体を開裂して流体を外部へ供給することができる。
また、CNFを含む膜35は、CNFの緻密な膜であるため、膜を厚くしなくても一定の強度を有しており、流体を内部に保持することができる閉塞空間を構成することができる。したがって、構造体内部に、例えばバインダー成分等の、CNFを含む膜以外の要素が必ずしも必要ではなくなり、構造体における空間の存在割合を高くすることができる。
さらに、CNFを含む膜は多数の微小な空隙を有しており、気体や液体などの流体を少しずつ透過させ得る。したがって、例えば、シート状構造体31や支持体付きのシート状構造体50は、閉塞空間33内に流体を保持させておき、CNFを含む膜35を通して外部に流体を徐々に放出する製品にも適用することができる。以下、膜を介して外部に流体を徐々に放出する性質を徐放性という。
構造体における界面活性剤の含有量の測定方法としては、界面活性剤を溶媒により抽出し、高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)や核磁気共鳴装置(NMR)等で化学組成の同定と定量を行う方法が挙げられる。また、同定の手段として、エネルギー分散型X線分析(EDX)や赤外分光法(IR)を用いることもできる。EDXの場合は、直接組成物を観測し、分析を行っても良い。
なお、従来の凍結乾燥を用いた製造方法は工程が複雑であることに加えて、得られる多孔質体がいわゆる連続気泡構造を有している。このような連続気泡構造を有する多孔質体は、流体を保持するのに適しておらず、上記の流体保持用製品や徐放性を有する製品への適用が難しい。
なお、CNFを含む膜の断面において、CNFを含む膜に沿うように形成された境界が観察されることがある。シート状構造体は、CNFを含む膜がこのような境界を含むものであっても構わない。上記境界は、シート状構造体になる前のCNFの存在状態の違いが反映されたものと推測されるが、この境界の有無はシート状構造体の特性に特に影響を与えない。
ここで、ある図形の「最大フェレ径」とは、2本の平行線で挟まれた当該図形の最大距離を意味する。本明細書においては、CNFを含む膜から構成された複数の閉塞空間を備える構造体を切断したときの切断面において、閉塞空間に対応する図形を特定し、この図形について2本の平行線で挟まれた最大距離を測定することで閉塞空間の最大フェレ径を算出する。
本明細書において、「複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均」は、シート状構造体の任意の切断面における複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均値である。本明細書においては、シート状構造体の厚さ方向の断面において、任意の36個の閉塞空間を選び、各々の最大フェレ径を測定し、それらの平均値を「複数の閉塞空間の最大フェレ径の平均」とする。
CNFを含む膜の平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて各構造体の断面を観察し、得られた拡大画像から36個の閉塞空間を任意に選択し、選択された閉塞空間に対応する多角形を構成する任意の辺を一つ特定し、その辺の略中央の厚さdm(図1(C)に2つの三角マークと引き出し線で示す)を測定し、それらの平均値を算出することにより求められる。
CNFを含む膜の厚さdmは、例えば、CNFの直径(太さ)や繊維長を異ならせることで調整できる。CNFの直径(太さ)を大きくしたり、CNFの繊維長を短くしたりすることで、CNFを含む膜を厚くすることができる。逆に、CNFの直径(太さ)を小さくしたり、CNFの繊維長を長くしたりすることで、CNFを含む膜を薄くすることができる。
本明細書において、構造体の嵩密度は、構造体の質量を、閉塞空間を含む構造体全体の体積で除すことにより算出される。図1のように、支持体上にCNFを含む層が形成されている場合は、予め支持体の厚さと質量を測定しておき、これを減じてから算出すればよい。
構造体の嵩密度は、例えば、組成物におけるCNFを含む外殻を備える粒子の直径を変化させることで調整することができる。つまり、組成物におけるCNFを含む外殻を備える粒子の直径が大きくなると嵩密度は小さくなり、CNFを含む外殻を備える粒子の直径が小さくなると、嵩密度は大きくなる。組成物におけるCNFを含む外殻を備える粒子の直径は、有機溶剤の種類と配合比率を変えたり、撹拌条件を変えたりすることで調整することができる。
シート状構造体の面積や長手方向の大きさに特に制限はなく、製造設備を用意できる範囲で任意の大きさとすることができる。
支持体の材質等については後述する。
次に、本発明の実施形態に係るシート状構造体の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、下記工程(1)~(2)を有する。
・工程(1):CNFの水分散液に有機溶剤を添加して組成物を調製する工程。
・工程(2):前記組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥して、シート状構造体とする工程。
なお、シート状構造体31や支持体付きのシート状構造体50を上述した流体保持用製品や徐放性を有する製品へ適用する場合、シート状構造体を特定の液体に浸漬して閉塞空間内に上記液体を封入したり、シート状構造体を特定の気体雰囲気下において特定種類の気体を閉塞空間内に封入したりすることができる。また、シート状構造体の製造工程中において、これらの流体が閉塞空間に含まれるようにしてもよい。例えば、工程(2-3)における乾燥後も閉塞空間33内に残るように、予め特定種類の有機溶剤(例えば、乾燥温度よりも高い沸点を有する有機溶剤)を組成物中に配合しておいてもよい。また、組成物の調製を特定種類の気体が満たされた雰囲気下で行うことで、閉塞空間内に流体を封入するようにしてもよい。
工程(1)においては、水分散液を撹拌しながら、有機溶剤を少量ずつ水分散液に供給することが好ましい。具体的には、図3(A)に示すように、CNFの水分散液20を容器2内に入れ、CNFの水分散液20を撹拌装置3で撹拌しながら、液供給装置1から有機溶剤10を容器2内の水分散液20に添加する。有機溶剤10が添加された水分散液20が所定時間撹拌されることにより、図3(B)に示すように容器20内に組成物30が生成される。組成物30は、図2を用いて説明したように、CNFを含む外殻を備える粒子32と、水を主体とする媒質34とを含んでいる。粒子32は、有機溶剤を主体とする液体もしくは空気、又はこれら両者を内部に含んでいる。
均一分散したCNFを含む水分散液に有機溶剤が添加された際に、CNFが界面に局在化して生成される粒子は比較的安定性が高いと考えられる。このため、生成されたカプセル同士の結合による大径カプセルへの変化は発生しにくく、上記有機溶剤が添加された水分散液を十分に撹拌することにより、小径でしかも均一な粒子になると考えられる。また、撹拌によって空気が水分散液に巻き込まれ、先に生成した安定な複数の粒子に囲まれて固定されることにより、この空気も安定して保持されることも考えられる(この固定された空気も乾燥後に気泡となると考えられる)。結果的に、組成物全体において、過度な刺激を与えたり、意図的に一定又はそれ以上の圧力を加えたりしない限り、数ヶ月以上消失せず安定して存在する粒子になると考えられる。
工程(1)においては、CNFを含む外殻を備える粒子が形成されずに、有機溶剤が水と相分離してしまうことを防止する観点から、水分散液の全量100質量部に対して、10秒毎の有機溶剤の添加量が、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは7質量部以下となるように有機溶剤を添加する。有機溶剤を連続的に供給してもよいし、有機溶剤を断続的に供給してもよい。いずれにしても、水分散液に限られた量の有機溶剤を添加しながら撹拌することで、有機溶剤が水分散液に均一に分散され、結果として、CNFを含む外殻を備える粒子を良好に生成することができる。
これらの、温度条件、圧力条件、及び、雰囲気条件は、後述する工程(2-1)、工程(2-2)についても当てはまる。
工程(1)によって調製される組成物は、CNF(A)、水(B)、及び、有機溶剤(C)を配合してなるものであって、CNF(A)を含む外殻を備える粒子を含有する。以下、CNF(A)、水(B)、及び、有機溶剤(C)をまとめて「成分(A)~(C)」と称することがある。
上記組成物において、有機溶剤(C)の少なくとも一部は、当該粒子に取り込まれた状態であり、具体的には、前記粒子に内包されている状態、及び、前記粒子の外殻を形成しているCNF(A)に吸着されている状態の少なくとも一方であることが好ましい。
ここで、「有機溶剤(C)が前記粒子に内包されている状態」とは、当該粒子が、CNF(A)を含む外殻から中空粒子を形成し、当該中空粒子の中空部分に有機溶剤(C)が取り込まれた状態を意味する。この際、中空粒子を構成する外殻によって、有機溶剤(C)は、中空粒子の外側から隔てられた状態となっている。
なお、本発明の一態様の組成物において、前記粒子は、有機溶剤(C)を内包しつつ、かつ、当該粒子の外殻を構成するCNF(A)が、有機溶剤(C)と吸着している状態であってもよい。本明細書において、「CNF(A)によって構成される外殻が有機溶剤(C)を吸着する」とは、CNF(A)によって構成される外殻の網目構造内に有機溶剤(C)が存在することを意味する。
また、CNF(A)を含む外殻を備える前記粒子や、前記粒子を形成しておらず水に分散しているCNF(A)が、分散媒である水分子と多く相互作用するほど、水(B)がこれらによって多く保持される。このため、CNF(A)と分離して存在する水(B)によって構成される液体の量は少なくなると考えられる。また、塗工性の観点から、当該組成物中の固形分率は多いほど好ましい。
本発明の一態様の組成物中の固形分率は、当該組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%、よりさらに好ましくは98~100質量%である。
なお、上述のテトロンメッシュ上に残存している固形分には、CNF(A)だけでなく、前記粒子に取り込まれた有機溶剤(C)、前記粒子の外殻に保持された水(B)、及び、前記粒子の外殻の形成には関与していないCNF(A)に保持された水(B)等の質量も含まれる。
構造体の閉塞空間の最大フェレ径の平均が上述した数値範囲になるようにするためには、組成物における、CNFを含む外殻を備える粒子の平均粒子径を適切な範囲に設定することが好ましい。
本発明の一態様の組成物に含まれる、前記粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上、よりさらに好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上であり、また、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下、よりさらに好ましくは35μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
前記粒子の平均粒子径が1μm以上であれば、粒子同士の凝集を抑制しやすくなり、また、構造体の閉塞空間が小さくなりすぎるのを防止しやすくなる。
また、前記粒子の平均粒子径が60μm以下であれば、粒子の浮上を抑制しやすくなる。
なお、本明細書において、前記粒子の平均粒子径、及び平均粒子径に対する標準偏差は、対象となる組成物を、デジタル顕微鏡を用いて倍率500~1000倍にて観察した際に取得した画像から算出することができる。
つまり、当該画像に写し出された前記粒子のうち、任意に選択した36個の粒子の粒径(外径)の平均値を上記の「平均粒子径」とすることができる。また、36個の各粒子の粒径の値から、「平均粒子径に対する標準偏差」も算出することができる。上記標準偏差は母集団の標準偏差であり、上記計算においては、36個の粒径の値の全てを対象として標準偏差を算出する。
なお、後述する工程(2-2)において、組成物を支持体に良好に塗布できるようにするために、組成物を支持体に塗布する際の温度において、組成物の粘度が上記数値範囲となるように材料を選択することが好ましい。
また、本明細書において、組成物の粘度は、JIS Z 8803:2011に準拠して、B型粘度計を用いて測定した値を意味する。
ただし、本発明の一態様の組成物において、CNF(A)、水(B)及び有機溶剤(C)の合計含有量は、前記組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下である。
なお、本明細書において、「有効成分」とは、組成物に含まれる成分のうち、水(B)及び有機溶剤(C)を除いた成分を指す。
また、上記以外にも、CNF(A)の形状(直径、繊維長、アスペクト比)、水(B)及び有機溶剤(C)の配合量、水(B)と有機溶剤(C)との配合量比等を適宜設定することによっても、前記粒子を形成し易くなるように組成物を調製することができる。
本発明の一態様で用いるCNF(A)の原料としては、例えば、木材由来のクラフトパルプ又はサルファイトパルプ;クラフトパルプ又はサルファイトパルプを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース;粉末セルロースを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末;コウゾ、雁皮、三椏等の靭皮繊維パルプ;コットンパルプ、ケナフ、麻、イネ、バカス、竹等の植物由来のセルロース系原料;等のセルロース系原料が挙げられる。植物由来のCNFは、結晶化度が高く直鎖構造を有しアスペクト比が大きいため、外殻の強度を高くでき、しかも入手しやすい。
また、上述のセルロース系原料を高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの分散装置、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザー等で微細化したものを使用することもできる。
また、物理修飾としては、金属やセラミック原料を、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)、無電解メッキや電解メッキ等のメッキ法等によって表面被覆させることが挙げられる。
なお、これらの変性処理は、セルロース系原料を解繊時もしくは解繊する前後のいずれに行ってもよい。
具体的な方法としては、セルロース系原料が水等の分散媒に分散している分散液を調製した後、セルロース系原料にせん断力を印加することで、CNFを含む分散液とする方法が挙げられる。
セルロース系原料にせん断力を印加する方法としては、水等の分散媒にセルロース系原料を添加した後、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式等の装置を用いて調製する方法が好ましい。
この際、分散液にかかる圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは140MPa以上である。
このような高圧下で、セルロース系原料に強力なせん断力を印加する観点から、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
また、対象となるCNFの一部分が、他のCNFと接触して「長さ」の認定が難しい場合には、対象のCNFのうち、太さの測定が可能な部分のみの長さを測定し、当該部分のアスペクト比が上記範囲であればよい。
CNF(A)の直径(太さ)及び繊維長は、透過型電子顕微鏡を用いて測定することができる。また、CNF(A)の直径(太さ)の平均及び繊維長の平均は、任意に選択した複数のCNFの直径(太さ)及び繊維長を測定し、それぞれの平均値を算出することで得られる。CNF(A)の平均アスペクト比は、こうして得られた直径(太さ)の平均と繊維長の平均とを用いて算出することができる。CNF(A)の直径(太さ)、繊維長、これらの平均値、及び、平均アスペクト比は具体的には実施例に示す方法で算出することができる。
本発明の一態様で用いる組成物において、水(B)は、そのほとんどが、前記粒子が備える外殻に吸着されているか、又は、前記粒子の外側に存在している。
ただし、水(B)の一部が、前記粒子の内部で有機溶剤(C)とともに内包されていてもよい。
CNF及び水を含む水分散液は、上述したように、セルロース系原料を水に分散させた後、セルロース系原料にせん断力を印加することで得られる分散液をそのまま水分散液として用いることができる。CNFの水分散液として市販されているものを用いることもできる。
水分散液のpHは、水分散液中でCNF(A)の凝集を抑え、形成される粒子の形状及び大きさのばらつきを小さくする観点から、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下である。
有機溶剤(C)としては、水と混ぜた際に水に対して独立した相を形成し、かつ、水に添加して撹拌することで一時的に乳化状態をとり得るという観点から、非水溶系溶媒を用いることが好ましい。非水溶系溶媒を用いることで、界面活性剤等の分散剤を用いることなく、CNFを含む外殻を備える粒子を生成させることができる。
(前記式中、δDは、前記有機溶剤のハンセン溶解度パラメータの分散成分、
δPは、前記有機溶剤のハンセン溶解度パラメータの極性成分、
δHは、前記有機溶剤のハンセン溶解度パラメータの水素結合成分を示す。)
なお、δD、δP、及びδHの値は、有機溶剤ごとに固有の値であって、特定の計算から算出された値である。
より具体的には、ハンセン溶解度パラメータの定義および計算方法は、「Hansen Solubility Parameters: A Users Handbook(Charles M. Hansen著、CRCプレス、2007年)」に記載されたとおりである。
また、本明細書において、δD、δP、及びδHの値は、計算ソフト「Hansen Solubility Parameters in Practice (HSPiP) Version4.1.03」(Steven Abbott,Charles M. Hansen,Hiroshi Yamamoto著)に含まれる、データベースの値を用いた。
そして、それぞれの有機溶剤のハンセン溶解度パラメータを3次元空間にプロットしたところ、当該3次元空間内において、前記粒子が形成される場合に用いた有機溶剤は、ある領域に密集して分布していることがわかった。
そこで、前記粒子が形成された有機溶剤のプロットが全て内側に含まれ、前記粒子が形成されなかった有機溶剤のプロットが外側にくるような、最大の球(相互作用球)を作図したところ、当該球の半径は「5.80MPa1/2」となった。
式(1)から算出される距離Raは、ハンセン溶解度パラメータの3次元空間における、対象となる有機溶剤のプロットと、当該球の中心との距離を意味する。つまり、距離Raが、当該球の半径である「5.80MPa1/2」以下であれば、対象となる有機溶剤のプロットは、当該球の内側に位置しており、前記粒子を形成しやすい溶剤であると判断し得る。
この結果に鑑みれば、表1に示す有機溶剤以外であっても、距離Raが5.80MPa1/2以下となる有機溶剤(C)であれば、前記粒子が形成しやすくなると推測される。
なお、表1に示された以外の有機溶剤のδD、δP、及びδHの値は、その有機溶剤の分子構造等から算出することができ、もしくは、表1に示すようなδD、δP、及びδHの値が各種文献等により既知である有機溶剤との溶解性についての実験を行うことでも算出可能である。
有機溶剤(C)が混合溶剤の場合、混合溶剤の混合比(体積比)から、加重平均のハンセン溶解度パラメータの3成分(δD、δP、δH)の値を求め、上記式(1)から算出した距離Raが5.80MPa1/2以下となることが好ましい。
そのため、単体では距離Raが5.80MPa1/2超となる有機溶剤であっても、距離Raが5.80MPa1/2以下の他の有機溶剤と、適切な体積比で混合し、距離Raを5.80MPa1/2以下となるように調製した混合溶剤とすることで、前記粒子の形成しやすい有機溶剤(C)とすることも可能である。
つまり、単体では距離Raが5.80MPa1/2超となる有機溶剤を取り込んだ粒子を含む組成物を得たい場合には、上記のような混合溶媒を用いることで、調製しやすくなると考えられる。
そのため、距離Raが5.80MPa1/2以下となる有機溶剤(C)を用いるとともに、本明細書の各成分の項目に記載の事項を適宜考慮して、より容易に前記粒子を形成できるように調製することが好ましい。
炭素数20未満の有機溶剤(C1)は、CNF(A)に取り込まれ易く、前記粒子が形成され易い。
つまり、炭素数が大きい有機溶剤は、有機溶剤の分子同士が集まり易く、また、粘度が高いため、真球に近い粒子の形成が行われ難くなる。その結果、このような有機溶剤は、セルロースナノファイバー(A)に取り込まれずに、前記粒子の外側に残存する割合が多くなると考えられる。
本発明の一態様で用いる組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)~(C)以外の他の成分を含有してもよい。
このような他の成分としては、前記組成物の用途に応じて適宜選択されるが、例えば、着色剤、酸化防止剤、pH調整剤、甘味料等が挙げられる。
ただし、界面活性剤を含む組成物を人体に触れる用途に使用する場合、特に、敏感肌の使用者にとって、当該界面活性剤は浸透剤及び刺激的な刺激物ともなる。また、界面活性剤を含む組成物は、当該組成物の物性の安定性に影響を与える懸念もある。さらに、保持体を、上述した流体保持用製品や流体を徐放する製品に適用する場合、構造体の開裂によって放出される流体や膜を通じて放出される流体に界面活性剤が混入する恐れや、界面活性剤が構造体の物性の安定性に影響を与え、流体の保持性が損なわれたりするおそれがある。
そのため、本発明一態様の組成物において、界面活性剤の含有量は少ないほど好ましい。
上記観点から、本発明の一態様で用いる組成物において、界面活性剤の含有量は、CNF(A)の全量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは1質量部未満、さらに好ましくは0.1質量部未満、よりさらに好ましくは0.01質量部未満、特に好ましくは0.001質量部未満、最も好ましくは0質量部である。組成物における界面活性剤の含有量をこのように調整することで、構造体における界面活性剤の含有量を上述した範囲内とすることができる。
上記観点から、本発明の一態様で用いる組成物において、CNF(A)以外の多糖類の含有量は、CNF(A)の全量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは1質量部未満、さらに好ましくは0.1質量部未満、よりさらに好ましくは0.01質量部未満、特に好ましくは0質量部である。組成物における、CNF(A)以外の多糖類の含有量をこのように調整することで、構造体における、CNF(A)以外の多糖類の含有量を上述した範囲内とすることができる。
工程(2)においては、組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥してシート状構造体とする。工程(2)においては、工程(1)で調製した組成物中の、CNFを含む外殻を備える粒子に過度なストレスがかかるのを回避する観点から、好ましくは、まず組成物を支持体上に供給し(工程(2-1))、次に支持体上の組成物を均一に押し広げて塗布する(工程(2-2))。
(工程(2-1):支持体の一方の面に組成物を供給する工程)
工程(2-1)においては、例えば、図3(B)に示すように、組成物30の入った容器2を傾けて組成物30を自重で容器2から支持体40へと徐々に移動させることにより、CNFを含む外殻を備える粒子を含む組成物30を支持体40上に供給する。また、ポンプ等を用いて組成物を支持体上に供給してもよい。
工程(2-1)における、温度条件、圧力条件、及び、雰囲気条件は、工程(1)で説明したのと同様に設定すればよい。
本発明の実施形態に係る製造方法によって得られるシート状構造体は、CNFを含む膜からなる複数の閉塞空間を持つ層と支持体とを備えている。CNFを含む膜からなる複数の閉塞空間を持つ層と支持体とを一体のものとしてもよいし、CNFを含む膜からなる複数の閉塞空間を持つ層を形成した後に、当該層から支持体を分離できるようにしてもよい。つまり、剥離材を支持体として用いてもよい。
前者の場合は、好ましくは、支持体の、前記組成物が塗布される面に易接着処理を施しておく。易接着処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等を用いることができる。また、例えば、アクリル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂などを用いて易接着層を設けることもできる。後者の場合は、組成物を塗布する面に剥離層が形成されたものを用いてもよいし、支持体全体が、構造体を剥離しやすい材料から構成されているものを用いてもよい。
支持体は、単層フィルム又はシートであってもよく、2層以上の積層体である複層フィルム又はシートであってもよい。
また、樹脂フィルム又はシートは、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
さらに、樹脂フィルム又はシートは、上述の樹脂のほかに、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が含有されていてもよい。
工程(2-2)においては、工程(2-1)で支持体上に供給された組成物を、塗布装置を用いて支持体上に塗布する。具体的には、図3(C)に示すように、例えば、アプリケーター等の塗布部材4を支持体40の平面に沿う方向(図3(B)のx方向)に沿って、支持体40に対して相対移動させ、組成物30を支持体40に塗布する(工程(2-2))。上述した、支持体の一方の面に組成物を供給する工程(工程(2-1))と工程(2-2)とを分けることにより、組成物を支持体に塗布する際に、組成物中の粒子に過度なストレスが加わることを回避しやすくできる。
ここで、塗膜を形成する際のコーティングギャップは、CNFを含む膜で構成される閉塞空間を良好な形状で十分な数だけ形成するとともに、乾燥に時間を要したり比較的高温での加熱が必要になったりする結果、塗布後の組成物における一部の粒子が、壊れたり消失したりするのを防止する観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは150μm以上、よりさらに好ましくは200μm以上であり、また、好ましくは1250μm以下、より好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは750μm以下、よりさらに好ましくは500μm以下とする。
工程(2-2)においては、組成物中の、CNFを含む外殻を備える粒子が塗布によって壊れることを回避する観点から、上記粒子の直径よりも大きいギャップを形成し得る治具を用いることが好ましい。この場合、治具が形成するギャップを、CNFを含む外殻を備える粒子の直径の、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは7.5倍以上、さらにより好ましくは9倍以上であり、好ましくは62.5倍以下、より好ましくは50倍以下、さらに好ましくは37.5倍以下、さらにより好ましくは25倍以下とする。
工程(2-2)における、圧力条件、及び、雰囲気条件は、工程(1)で説明したのと同様に設定すればよい。
工程(2-3)においては、支持体上に塗布された組成物の層を加熱等により乾燥することにより、CNFを含む膜で構成された複数の閉塞空間を備える層を形成する。具体的には、図3(D)に示すように、例えば、支持体40上に塗布された組成物30の層を、ヒーターや熱風乾燥機等の乾燥機5によって乾燥し、粒子の内部に取り込まれているものも含めて、組成物から水や有機溶剤を蒸発させることにより、CNFを含む膜で構成された複数の閉塞空間を備える層を形成する。
工程(2-3)においてCNFを含む膜で構成される閉塞空間が形成される機構は、必ずしもこれに限られるものではないが、次のように推測される。つまり、組成物の層から水と有機溶剤が揮発する過程において、隣接する粒子同士で粒子の一部が固着したり、一部の粒子がより安定な位置へ移動したりして、粒子間の隙間が徐々になくなり、その一方、有機溶剤と水との界面に集まったCNFが安定に存在するため、CNFを含む膜が破壊されることなく、最終的に密な閉塞空間が形成されるものと推測される。
工程(2-3)における、圧力条件、及び、雰囲気条件は、工程(1)で説明したのと同様に設定すればよい。
<実施例1>
1.組成物1の調製
組成物1の調製に際し、下記の市販品のCNFを含む水分散液(1)を使用した。
・水分散液(1)製品名「BiNFi-s AMa10002」、株式会社スギノマシン製。直径(太さ)の平均=76.8nm、長さの平均=1.4μm、平均アスペクト比=18.2である、機械処理型のCNFを2質量%含む水分散液。
水分散液(1)は、CNF100質量部に対して、水を4900質量部含有するものであり、水分散液(1)のpH=7.0であった。
水分散液(1)5000.0質量部(CNF100.0質量部)を容器に投入し、超高速マルチ撹拌システム(プライミクス社製、製品名「ラボ・リューション(登録商標)」、撹拌羽:ホモディスパー(同社製、羽の直径35mm))を用いて、23℃の水分散液を、大気圧下で、回転数3000rpmで撹拌した。撹拌開始後、n-ドデカンを、水分散液の全量100質量部に対して、10秒毎に5質量部の速さで添加した。上記水分散液5000.0質量部(CNF100.0質量部)に対して、n-ドデカンが3000質量部となるまでn-ドデカンの添加を続け、撹拌開始から10分経過後に撹拌を終了し、CNFを含む外殻を備える粒子を含む組成物1を調製した。組成物1のpHは7.0であった。組成物1を調製する際に界面活性剤は使用しなかった。なお、水分散液(1)及び組成物1のpHは、23℃、相対湿度50%の環境下、コンパクトpHメータ(株式会社堀場アドバンスドテクノ製、製品名「LAQUAtwin pH-22B」)を用いて、pH4.01標準液とpH6.86標準液の2点校正を行った後、平面センサ全体を覆うように試料を滴下して測定した。また、透過型電子顕微鏡(カールツァイス社製、製品名「LEO912」)を用いて、水分散液(1)に含まれる任意に選択した10本のCNFの直径(太さ)及び長さを測定し、10本の平均値を、対象となるCNFの「直径(太さ)の平均」及び「長さの平均」とした。さらに、「長さの平均/直径(太さ)の平均」を平均アスペクト比とした。
組成物1について、JIS Z 8803:2011に準拠して、B型粘度計を用いて、23℃、回転数5rpm及び50rpmにおける組成物の粘度を測定したところ、それぞれ67000mP・s、11400mP・sであった。〔回転数5rpmにおける粘度〕/〔回転数50rpmにおける粘度〕の比で表される組成物1のTI値は5.88であった。
デジタル顕微鏡(キーエンス社製、製品名「VHX-5000」)を用いて500倍で組成物1を観察し、得られた拡大画像から36個の閉塞空間を任意に選択し、それぞれの直径を測定し、それらの平均値を算出することにより、各組成物中のCNFを含む外殻を備える粒子の直径の平均とした。CNFを含む外殻を備える粒子の直径の平均は26.8μmであった。
上底面の直径7.2cm、下底面の直径6.8cm、高さ8cmの円錐台形のコップを用いて、コップの上底面に、一辺10cmの正方形に切断したテトロンメッシュ(#200メッシュ)を載せて、クリップでコップの淵とテトロンメッシュを固定し、測定用容器を作成した。
作成した組成物10gを、この測定用容器のテトロンメッシュ上に薄く広げるように塗布し1分間静置した。そして、測定用容器内に落下した組成物中の液体の質量w[g]を測定し、下記式から、組成物中の固形分率を算出した。
・固形分率[質量%]=100-(w[g]/10[g]×100)
組成物1の固形分率は、99.3%であった。
組成物1を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン(登録商標)、品番「A4100」、厚さ:50μm)の易接着層面に静かに載置し、アプリケーター(コーティングギャップ:254μm(10mil))を用いて組成物1を上記フィルムに塗布した。さらに、120℃で10分間加熱して乾燥することにより、シート状構造体1を作製した。
また、コーティングギャップが762μm(30mil)のアプリケーターを用いた以外は、シート状構造体1の作製と同じ手順でシート状構造体2を作製した。
なお、組成物1の調製から塗布までの工程は、全て、空気雰囲気中で、大気圧下、23℃の条件で行った。
(CNFを含む膜の平均厚さ)
走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製S-4700型)を用いて各シート状構造体の上記切断面を観察し、得られた拡大画像から36個の閉塞空間を任意に選択し、それぞれを構成する任意の辺を一つ特定し、その辺の略中央の厚さを測定した。それらの平均値を算出することにより、複数の閉塞空間の、CNFを含む膜の厚さの平均とした。シート状構造体1のCNFを含む膜の厚さの平均は93nmであった。シート状構造体2のCNFを含む膜の厚さの平均は91nmであった。
シート状構造体1、2の、上記切断面のSEM画像から36個の閉塞空間を任意に選択し、それぞれの最大フェレ径を測定し、それらの平均値を算出することにより、最大フェレ径の平均とした。シート状構造体1の閉塞空間の最大フェレ径の平均は29.2μmであり、シート状構造体2の閉塞空間の最大フェレ径の平均は29.0μmであった。
(b/a)
シート状構造体1、2の上記切断面のSEM画像から36個の閉塞空間を任意に選択し、各々について、構造体の厚さ方向の最大長さaと、構造体の平面方向の最大長さbとを測定してb/aの値を求め、それらの平均値を算出することにより、b/aの値とした。シート状構造体1のb/aの値は2.48であり、シート状構造体1のb/aの値は2.35であった。
以下の手順で、支持体付きのシート状構造体1、2の質量と厚さを測定した。そして、これらを用いて、支持体無しのシート状構造体の嵩密度を算出した。シート状構造体1の厚さは37μm、嵩密度は0.05g/mm3であり、シート状構造体2の厚さは140μm、嵩密度は0.04g/mm3であった。
質量:支持体付きのシート状構造体を100mm×100mmの大きさに切断した後、質量を測定し、既知である支持体の質量を減じることで、支持体無しのシート状構造体の質量を算出した。
厚さ:定圧膜厚計を用いて、支持体を含むシート状構造体全体の厚さを測定し、既知である基材の厚さを減じることで、支持体無しのシート状構造体の厚さ(図1の符号Lに相当)を算出した。
2:容器
3:撹拌装置
4:塗布装置
5:乾燥機
10:有機溶剤
20:CNFの水分散液
30:組成物
31:複数の閉塞空間を有する層(シート状構造体)
32:CNFを含む外殻を備える粒子
33、33a、33b:閉塞空間
34:水を主体とする媒質
35:CNFを含む膜
35a:隣り合う一対の閉塞空間で共有される膜
40:支持体
40a:塗布面
50:支持体付きのシート状構造体
a:閉塞空間の構造体の厚さ方向の最大長さ
b:閉塞空間の構造体の平面方向の最大長さ
df:閉塞空間の最大フェレ径
dm:CNFを含む膜の厚さ
L:複数の閉塞空間を有する層の厚さ
x:塗布方向
Claims (13)
- 下記工程(1)~(2)を有し、下記工程(2)で得られるシート状構造体が、セルロースナノファイバーを含む膜から構成された閉塞空間を複数備えている、シート状構造体の製造方法。
・工程(1):セルロースナノファイバーの水分散液を撹拌しながら、前記水分散液に、非水溶系溶媒である有機溶剤を添加して組成物を調製する工程。
・工程(2):前記組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥して、シート状構造体とする工程。 - 前記組成物のpHが4~10である請求項1に記載のシート状構造体の製造方法。
- 前記工程(2)において、前記塗膜を形成する際のコーティングギャップが、30~1250μmである、請求項1又は2に記載のシート状構造体の製造方法。
- 前記工程(2)で得られるシート状構造体の嵩密度が、0.001g/cm3以上0.920g/cm3以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のシート状構造体の製造方法。
- 前記工程(2)で得られるシート状構造体の、前記複数の閉塞空間のうち隣接する一組の閉塞空間は少なくとも一つの前記膜を共有している、請求項4に記載のシート状構造体の製造方法。
- 前記セルロースナノファイバーの直径(太さ)の平均が、1~1000nmである、請求項1~5のいずれか1項に記載のシート状構造体の製造方法。
- 前記セルロースナノファイバーの繊維長の平均が0.01~10μmである、請求項1~6のいずれか1項に記載のシート状構造体の製造方法。
- 前記組成物の23℃でのTI値(回転数5rpmにおける粘度/回転数50rpmにおける粘度)が、1.2~20である、請求項1~8のいずれか1項に記載のシート状構造体の製造方法。
- 前記工程(2)において、前記支持体に塗布する際の前記組成物の23℃、50rpmにおける粘度が、500~20000mPa・sである、請求項1~9のいずれか一項に記載のシート状構造体の製造方法。
- 前記組成物において、前記セルロースナノファイバーの配合量が、0.1~20質量%である、請求項1~10のいずれか1項に記載のシート状構造体の製造方法。
- 前記組成物中の固形分率が、当該組成物の全量に対して、80~100質量%である、請求項1~11のいずれか1項に記載のシート状構造体の製造方法。
- 前記組成物において、前記組成物に含まれる水に対する前記有機溶剤の配合量比が、質量比で0.01~200である、請求項1~12のいずれか1項に記載のシート状構造体の製造方法。
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