JP7296170B2 - 層状複水酸化物エレクトライド及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2020年2月17日に、日本に出願された特願2020-024751号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
エレクトライド中に含まれる電子は、特定の軌道に属さず、局在化しているため、1価のアニオンと同様の電荷を有するとともに、その質量の小ささから量子力学的な挙動を示すことから、その物性に注目が集まっている。具体的には、その低い仕事関数に由来する高い電子供与能力等の特徴により、その応用に関心が高まっている。
市販の層状複水酸化物は、一般式[Mg6Al2(OH)16]CO3・4H2OのMg-Al炭酸型ハイドロタルサイトである。図8は、式:Mg4Al2(OH)16CO3(H2O)4+xで表されるハイドロタルサイトの層状構造を有する層状複水酸化物の構造を示す。
一方、層状複水酸化物の層状構造は、高温で不安定であるため、還元雰囲気において高温処理することができない。層状複水酸化物からなるエレクトライドに関する開示がない。
より低温条件で、工業的に安価に製造することができるエレクトライドが求められている。
更に、本発明の層状複水酸化物エレクトライドを触媒として用いる場合には、高温処理を回避することにより、その表面積が増大し、結果として反応活性点を増加させることも可能となる。
[1] 層間に電子を含み、
電子密度が2.0x1018cm-3以上である、層状複水酸化物エレクトライド。
[2] 前記層状複水酸化物エレクトライドが、一般式(1)で表される層状複水酸化物エレクトライドである、[1]に記載の層状複水酸化物エレクトライド。
[Mp+ 1-xNq+ x(OH)2]a+[Ar- (b-y)e- y]・mH2O (1)
(式(1)中、
Mは、少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Nは、Mとは異なる少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Aは、少なくとも1価のアニオンを形成し得る原子または原子団であり、
pは、1または2であり、
qは、3または4であり、
rは、1~3であり、
0<x<0.9であり、
a=p×(1-x)+x×q-2であり、
b≧a/rであり、
0<y≦bである、かつ
0≦m≦10である。)
[3] 原料層状複水酸化物と
前記原料層状複水酸化物の層間に存在するアニオンを電子で交換する電子交換剤とを混合して層状複水酸化物エレクトライドを生成する工程を含み、前記電子交換剤が、クラウンエーテル化合物と、アルカリ金属を有するTHF系有機溶媒との混合液である、層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。
[4] 前記層状複水酸化物エレクトライドが一般式(1)で表される層状複水酸化物エレクトライドであり、
前記原料層状複水酸化物が一般式(2)で表される層状複水酸化物である、[3]に記載の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。
[Mp+ 1-xNq+ x(OH)2]a+[Ar- (b-y)e- y]・mH2O (1)
(式(1)中、
Mは、少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Nは、Mとは異なる少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Aは、少なくとも1価のアニオンを形成し得る原子または原子団であり、
pは、1または2であり、
qは、3または4であり、
rは、1~3であり、
0<x<0.9であり、
a=p×(1-x)+x×q-2であり、
b≧a/rであり、
0<y≦bである、かつ
0≦m≦10である。)
[Mp+ 1-xNq+ x(OH)2]a+[Ar- b]・mH2O (2)
(式(2)中、
M、N、A、p、q、r、x、a、b、y、mは、式(1)中のM、N、A、p、q、r、x、a、b、y、mと同じ意味である。)
[5] 前記クラウンエーテル化合物が15-クラウン-5-エーテル、12-クラウン-4-エーテルおよび18-クラウン-6-エーテルからなる群から選ばれた少なくとも1種のクラウンエーテル化合物である、[3]又は[4]に記載の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。
[6] 前記アルカリ金属がナトリウムである、[3]又は[4]に記載の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。
[7] 前記クラウンエーテル化合物が15-クラウン-5-エーテル、12-クラウン-4-エーテルおよび18-クラウン-6-エーテルからなる群から選ばれた少なくとも1種のクラウンエーテル化合物であり、
前記アルカリ金属がナトリウムである、[3]又は[4]に記載の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。
[8] 前記生成する工程が、前記クラウンエーテル化合物と前記アルカリ金属のTHF系溶媒とを混合して混合液を得る混合工程と、
前記混合液に前記原料層状複水酸化物を添加し、前記層状複水酸化物エレクトライドを生成する生成工程とを有し、
さらに前記生成工程で得られた層状複水酸化物エレクトライドを洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程で得られた層状複水酸化物エレクトライドを乾燥する乾燥工程とを含む、[3]又は[4]に記載の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。
本発明の層状複水酸化物エレクトライドは、層間に電子を含み、電子密度が2.0x1018cm-3以上である。好ましくは、2.0x1018cm-3以上2.0x1022cm-3以下の範囲である。また、一般式(1)で表される請求項1に記載の層状複水酸化物エレクトライドが好ましい。
Mは、少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Nは、Mとは異なる少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Aは、少なくとも1価のアニオンを形成し得る原子または原子団であり、
pは、1または2であり、
qは、3または4であり、
rは、1~3であり、
0<x<0.9であり、
a=p×(1-x)+x×q-2であり、
b≧a/rであり、
0<y≦bである、かつ
0≦m≦10である。)
上記式(1)において、Mは2価金属であるMg、Zn、Fe、Ca、Ni、Cu、Co、Mn及びCd、並び1価金属であるLiからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。MはMg、Ca及びZnからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
本発明の一実施態様において、一般式(4)で表される層状複水酸化物エレクトライドがより好ましい。
本発明の一実施態様において、一般式(5)で表される層状複水酸化物エレクトライドが更に好ましい。
BET比表面積は、窒素吸着法などで評価することができる。詳細について実施例で説明する。
このヨウ素滴定法は、5mol/Lのヨウ素水溶液中に評価する対象サンプルを入れ、塩酸を加えて溶解させた後、この溶液中に含まれる未反応ヨウ素の量を、チオ硫酸ナトリウムで滴定検出する方法である。この場合、サンプルの溶解により、ヨウ素水溶液中のヨウ素は、以下の反応によりイオン化する。
図4は、原料であるイオン交換前の塩化物イオンを含有した層状複水酸化物、実施例1の層状複水酸化物エレクトライド(238h)、実施例2の層状複水酸化物エレクトライド(167h)の吸収スペクトルを示す。原料の層状複水酸化物は白色の粉末であり、この波長領域にほとんど吸収が観察されないが、実施例1および実施例2の層状複水酸化物エレクトライドは、600~2000nmにかけて強い吸収が観測された。これは、C12A7エレクトライドの電子による吸収とよく似ている。すなわち、原料に含まれていた塩化物イオン(Cl-)と溶媒和電子との間でイオン交換が起こることにより、層間に電子が挿入されたと考えられる。また、この実験により層状複水酸化物の骨格の酸素イオンが抜けて酸素欠陥(Fセンター)が形成されて600~2000nmにかけて強い吸収が現れるわけではないこともわかった。
例えば、図5は、実施例1の層状複水酸化物エレクトライド(238h)と原料層状複水酸化物とのFTIR吸収スペクトルを示す。いずれも、3600cm-1のOH基による吸収が観測され、層状複水酸化物は、エレクトライド化後もOH基が残っていることが分かった。
詳細な測定方法は、実施例部分で説明する。
因みに、このようなイオン交換の平衡定数の大小は、塩化物イオン等のアニオンが有するイオン半径の減少に伴い増加し、例えば、OH->F->Cl->Br->NO3 ->I-の順に例示することができる。
詳細な測定方法は、実施例部分で説明する。
例えば、図7は、実施例1の層状複水酸化物エレクトライド(238h)のESRスペクトルを示す。通常の層状複水酸化物は、不対電子を持たないためESRシグナルは見られないが、層状複水酸化物エレクトライド(238h)は、不対電子に由来するシグナルが観察された。このスペクトルは、C12A7エレクトライドで見られるものと同様である。このことからも、今回の手法により層状複水酸化物中の塩化物イオンを電子にイオン交換できたと考えられる。
本発明の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法は、原料層状複水酸化物と、前記原料層状複水酸化物の層間に存在するアニオンを電子で交換する電子交換剤とを混合して層状複水酸化物エレクトライドを生成する工程を含む。
前記電子交換剤は、クラウンエーテル化合物と、アルカリ金属を有するTHF系有機溶媒との混合液であることが好ましい。すなわち、本発明の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法は、クラウンエーテル化合物と、アルカリ金属を有するTHF系有機溶媒と、原料層状複水酸化物とを混合して層状複水酸化物エレクトライドを生成する工程を含むことが好ましい。
前記層状複水酸化物エレクトライドが一般式(1)で表される層状複水酸化物エレクトライドが好ましい。
Mは、少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Nは、Mとは異なる少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Aは、少なくとも1価のアニオンを形成し得る原子または原子団であり、
pは、1または2であり、
qは、3または4であり、
rは、1~3であり、
0.2<x<0.33であり、
a=p×(1-x)+x×q-2であり、
b≧a/rであり、
0<y≦bである、かつ
0≦m≦10である。)
本発明の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法に係る層状複水酸化物エレクトライドの好ましい形態は、上記説明した「層状複水酸化物エレクトライド」の好ましい形態と同様である。
図2は、本発明の一実施形態の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法を説明する模試図である。図2において、層間に塩化物イオン(Cl-)を含む原料層状複水水酸化物エレクトライドから、クラウンエーテル化合物とナトリウムとを用いて、層状複水水酸化物エレクトライドを合成することを示す。
本発明の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法に係る原料層状複水酸化物は、一般式(2)で表される原料層状複水酸化物であることが好ましい。
本発明の一実施態様において、一般式(9)で表される原料層状複水酸化物がより好ましい。
BET比表面積は、窒素吸着法などで評価することができる。詳細について実施例で説明する。
本発明の製造方法に係る電子交換剤は、前記原料層状複水酸化物から、層間に存在するアニオンを電子で交換させることができれば限定されない。100℃以下で層間に存在するアニオンを電子で交換させることが好ましく、50℃以下で層間に存在するアニオンを電子で交換させることがより好ましい。電子交換剤は、層間に存在するアニオンの種類によって適切に選択することができる。例えば、クラウンエーテル化合物と、ナトリウム等のアルカリ金属を有するTHF系有機溶媒との混合液;液体アンモニアとナトリウム等のアルカリ金属との混合物;ナトリウムナフタレナイト等のアルカリ金属ナフタレナイトなどが挙げられる。特に、前記原料層状複水酸化物の層間アニオンが塩化物イオンである場合、電子交換剤は、クラウンエーテル化合物と、ナトリウム等のアルカリ金属を有するTHF系有機溶媒との混合液であることが好ましい。
本発明の一実施態様に係るクラウンエーテル化合物とは、環状のポリエーテルであって電子供与性の酸素原子により環全体が多座配位子となり、アルカリ金属のイオンを環の空孔内に取り込む機能を持つ化合物であれば特に限定されない。
取り込まれるアルカリ金属イオンは、例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン等が好ましい。より好ましくはカリウムイオン、ナトリウムイオン等である。また、クラウンエーテル化合物は、必要に応じて2種以上を併用することもできる。 前記原料層状複水酸化物の層間アニオンが塩化物イオンである場合、15-クラウン-5-エーテル、12-クラウン-4-エーテルおよび18-クラウン-6-エーテルからなる群から選ばれた少なくとも1種のクラウンエーテル化合物を含むものが好ましい。
THF系有機溶媒、THF,MeTHFおよびdiMeTHFからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の製造方法における反応温度は、-50~100℃が好ましく、0~50℃がより好ましく、10~30℃が更に好ましい。反応圧力は、特に制限はなく、例えば、大気圧でよい。
反応は撹拌下に行ってもよいし、静置下に行ってもよく、また外部循環等を行ってもよい。
本発明の製造方法の一実施形態において、例えば、電子交換剤として、クラウンエーテル化合物と、アルカリ金属のTHF系溶媒とを混合して混合液を用い、1価アニオンである塩化物イオン(Cl-)を用いる場合、層状複水酸化物の塩化物イオン1モル数に対して、クラウンエーテルが1モル以上、アルカリ金属が1モル以上であることが好ましい。クラウンエーテルが5モル以上、アルカリ金属が5モル以上であることがより好ましい。また、より電子密度の高いエレクトライドを得る観点から、クラウンエーテルが10モル以上、アルカリ金属が10モル以上であることが更に好ましい。
例えば、上記洗浄工程で得られる層状複水酸化物エレクトライドに対して、室温~80℃(一例として、50℃)で12~24時間加熱しながら真空排気処理を行うことにより、粉末状の層状複水酸化物エレクトライドを得る。
本発明の層状複水酸化物エレクトライドは、例えば、水素(H2)活性化を含む化学反応、窒素活性化(N2)を含む化学反応、アミノ化反応、二酸化炭素から(化学原料として有用な)一酸化炭素を製造する反応、ケトン化合物から2級アルコール又はジケトン化合物を製造する還元反応、カルボニル化合物をからジオール又はポリジオールを製造する還元的カップリング反応等の化学反応において、化学反応の触媒として、利用される。
水素(H2)活性化を含む化学反応としては、例えば、オレフィン、芳香族化合物、アセチレン系化合物、アルデヒド、カルボン酸、エステル、イミン、ニトリル、ニトロ化合物、硝酸、カルボン酸塩化物、エーテルおよび/またはアセタールの化合物の水素化反応が挙げられる。
本発明の層状複水酸化物エレクトライドの電子材料としての用途としては、例えば、エレクトライドを有する導電性物質を含む、冷電子放出源および有機EL素子のための電子注入層;または、Oxide-TFTのソース・ドレーン電極の導電性バリア材料等が挙げられる。
本発明の層状複水酸化物エレクトライドの電子材料としての用途としては、例えば、エレクトライドを有する導電性物質を含む、太陽電池;または、エレクトライドを有する導電性物質を、白金代替触媒として含む、固体高分子形燃料電池等が挙げられる。
以下の実施例及び比較例の比表面積測定は、液体窒素温度で窒素ガスを吸着させ測定した。分析条件は以下の通りである。
「測定条件」
装置:マイクロトラックベル社製 BELSORP-mini II
吸着ガス:窒素(99.99995%)
吸着温度:液体窒素温度(-196℃)
以下の実施例及の電子濃度測定は、ヨウ素滴定法により行った。条件は以下の通りである。
ヨウ素溶液(0.05mol/L)3mLに層状複水酸化物を10mg程度入れ、そこに濃塩酸(35-37%)を0.1mL入れよく攪拌した。その後、5mmol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液により滴定を行った。
以下の実施例及び比較例の紫外・可視吸収スペクトルは、拡散反射法により測定した。分析条件は以下の通りである。
「測定条件」
装置:日立ハイテクノロジーズ社製 U-4000
測定波長:185~2500nm
以下の実施例及び比較例の赤外吸収スペクトルは、拡散反射法により測定した。分析条件は以下の通りである。
「測定条件」
装置:島津製作所社製 IRTracer-100
測定波数:400-4000cm-1
以下の実施例及び比較例のX線回折パターンは、以下の装置を用い測定した。分析条件は以下の通りである。
「測定条件」
装置:Bruker社製 D8 advance
測定範囲:10~50°
以下の実施例及のESR分析は、以下の装置を用い測定した。分析条件は以下の通りである。
「測定条件」
装置:Bruker社製 EMX 8/2.7
測定温度:室温
原料となるMg6Al2(OH)16Cl2・nH2Oは、Mg2+、Al3+およびCl-を含む溶液を塩基性下で共沈させることにより合成した。AlCl3・6H2O(和光純薬社製,試薬特級)とMgCl2・6H2O(和光純薬社製,試薬特級)をモル比で3:1の割合で秤量し低効率18.2MΩの超純水に溶解し撹拌した。粒状NaOH(和光純薬社製,試薬特級)を超純水に溶解し2mol/L及び0.001mol/L(pH10)のNaOH水溶液を調製した。4つ口のテフロン(登録商標)製丸底フラスコに0.001mol/L(pH10)のNaOH水溶液を入れた。丸底フラスコの4つ口に、透明円筒分液ロート2つと還流管とpH計とを取り付け、2つの分液ロートそれぞれにAlCl3およびMgCl2を溶解した水溶液と2mol/LのNaOH水溶液とを入れた。装置全体にN2ガスを30分程度流しCO2ガスを追い出した。0.001mol/LのNaOH水溶液中に、AlCl3・6H2OおよびMgCl2・6H2Oを溶解した水溶液と2mol/LのNaOH水溶液とをpHが10から大きく変動しないように確認しながら交互に滴下していくと、LDHの白色沈殿を生じた。この際500rpm程度で攪拌し溶液が均一になるようにして行った。滴下終了後、還流管に水道水を流しながら丸底フラスコを70℃のオイルバス中で半日加熱した。加熱後LDHの白濁液をテフロン(登録商標)製の遠沈管に入れ、遠心分離機で20000G、保持時間5分間の条件で遠心分離した。透明な上澄み液をピペットで除去し遠沈管の中に超純水を入れ撹拌して再び白濁液としたのちに再び同条件で遠心分離した。遠心分離および上澄み除去の操作を三回繰り返すことで不純物であるNaClを取り除いた。得られた粉体を50℃程度に加熱しながら半日程度真空排気加熱処理を行って乾燥することにより、白色粉末LDH-1を得た。
「本発明の電子交換剤の作成」
<ナトリウム及びTHF液の準備>
ナトリウム(Na):富士フイルム和光純薬社製、純度98%、使用量0.115g、ブロック状(1cm×1cm程度)
前処理工程:オイルにつかっているNaブロックをグローブボックス中で取り出し、表面をスパチュラで削り取る作業をした。
THF:富士フィルム和光純薬社製、純度99.5%(脱酸素済みのもの)、仕込み量20ml
15-クラウン-5-エーテル:富士フイルム和光純薬社製、純度和光一級、使用量1.1g
Ar雰囲気のグローブボックス内で金属Naブロック(富士フイルム和光純薬社製、98%)の面をスパチュラで削り取り、酸化していない純粋なNa塊を取りした。Naとクラウンエーテルとを、モル比で1:1になるように秤量してバイアル管の中に投入した。その中にTHF(富士フィルム和光純薬社製、脱酸素,安定剤不含,99.5%)を20ml投入した。クラウンエーテルは15-クラウン-5-エーテル(富士フイルム和光純薬社製、和光一級)を使用した。バイアル中にテフロン(登録商標)製撹拌子を入れ、攪拌を開始すると1日~3日程度で溶媒和電子溶液の濃青色液体(混合液M1)が得られた。
<生成工程>
合成例1で得られた前記LDH-1を200℃、6時間の条件で真空排気して材料に含まれる水を除去してAr雰囲気のグローブボックス内へ入れた。上記の方法で調製した混合液M1の中にLDHを0.135g入れた。その後、室温で238時間攪拌した。
イオン交換終了後、テフロン(登録商標)製の遠沈管に溶液を投入し遠心分離機を用いて20000G、保持時間5分間の条件で遠心分離した。上澄み液を取り除きTHFを投入し遠沈管を攪拌したのち同条件で遠心分離した。これを3回繰り返して不純物クラウンエーテルを除去した。これらの操作は、Ar雰囲気のグローブボックス中で行った。最後に、50℃で12-24時間加熱しながら真空排気処理を行うことにより、粉末状の層状複水酸化物エレクトライドを得た。
イオン交換終了後、テフロン(登録商標)製の遠沈管に溶液を投入し遠心分離機を用いて20000G、保持時間5分間の条件で遠心分離した。上澄み液を取り除きTHFを投入し遠沈管を攪拌したのち同条件で遠心分離した。これを3回繰り返して不純物クラウンエーテルを除去した。これらの操作は、Ar雰囲気のグローブボックス中で行った。最後に、50℃で12-24時間加熱しながら真空排気処理を行うことにより、黒色粉末状の層状複水酸化物エレクトライド(LDHE-1)を得た。
実施例1で得られた前記LDHE-1を、上記で説明した評価方法で評価した。電子密度は、6.53x1020cm-3であった。図3~図7は、それぞれ、吸収スペクトル、赤外スペクトル、FT-IRの吸収スペクトル、XPSパターン、ESRスペクトル結果を示した。
生成工程において、室温で167時間放置した以外は、実施例1と同じ方法で層状複水酸化物エレクトライド(LDHE-2)を得た。実施例1と同様な評価方法で評価した。その結果は、図3~図7に示した。
生成工程において、室温で200時間放置した以外は、実施例1と同じ方法で層状複水酸化物エレクトライド(LDHE-3)を得た。実施例1と同様な評価方法で評価した。 実施例2で得られた層状複水酸化物エレクトライド(LDHE-3)は、原料層状複水酸化物(LDH-1)の塩化物イオンを電子で置換し、式:Mg6Al(OH)16(Cl-)2-y(e-)yで表される層状複水酸化物エレクトライドであることがわかった。
また、原料層状複水酸化物の層間Cl-の1/8未満が電子に置換されたことを推測した。すなわち、yが約0.20と推測した。
Claims (8)
- 層間に電子を含み、
電子密度が2.0x1018cm-3以上である、層状複水酸化物エレクトライド。 - 前記層状複水酸化物エレクトライドが、一般式(1)で表される層状複水酸化物エレクトライドである、請求項1に記載の層状複水酸化物エレクトライド。
[Mp+ 1-xNq+ x(OH)2]a+[Ar- (b-y)e- y]・mH2O (1)
(式(1)中、
Mは、少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Nは、Mとは異なる少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Aは、少なくとも1価のアニオンを形成し得る原子または原子団であり、
pは、1または2であり、
qは、3または4であり、
rは、1~3であり、
0<x<0.9であり、
a=p×(1-x)+x×q-2であり、
b≧a/rであり、
0<y≦bである、かつ
0≦m≦10である。) - 原料層状複水酸化物と
前記原料層状複水酸化物の層間に存在するアニオンを電子で交換する電子交換剤とを混合して層状複水酸化物エレクトライドを生成する工程を含み、前記電子交換剤が、クラウンエーテル化合物と、アルカリ金属を有するTHF系有機溶媒との混合液である、層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。 - 前記層状複水酸化物エレクトライドが一般式(1)で表される層状複水酸化物エレクトライドであり、
前記原料層状複水酸化物が一般式(2)で表される層状複水酸化物である、請求項3に記載の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。
[Mp+ 1-xNq+ x(OH)2]a+[Ar- (b-y)e- y]・mH2O (1)
(式(1)中、
Mは、少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Nは、Mとは異なる少なくとも1価の金属カチオンを形成し得る金属元素であり、
Aは、少なくとも1価のアニオンを形成し得る原子または原子団であり、
pは、1または2であり、
qは、3または4であり、
rは、1~3であり、
0<x<0.9であり、
a=p×(1-x)+x×q-2であり、
b≧a/rであり、
0<y≦bである、かつ
0≦m≦10である。)
[Mp+ 1-xNq+ x(OH)2]a+[Ar- b]・mH2O (2)
(式(2)中、
M、N、A、p、q、r、x、a、b、y、mは、式(1)中のM、N、A、p、q、r、x、a、b、y、mと同じ意味である。) - 前記クラウンエーテル化合物が15-クラウン-5-エーテル、12-クラウン-4-エーテルおよび18-クラウン-6-エーテルからなる群から選ばれた少なくとも1種のクラウンエーテル化合物である、請求項3又は4に記載の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。
- 前記アルカリ金属がナトリウムである、請求項3又は4に記載の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。
- 前記クラウンエーテル化合物が15-クラウン-5-エーテル、12-クラウン-4-エーテルおよび18-クラウン-6-エーテルからなる群から選ばれた少なくとも1種のクラウンエーテル化合物であり、
前記アルカリ金属がナトリウムである、請求項3又は4に記載の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。 - 前記生成する工程が、
前記クラウンエーテル化合物と前記アルカリ金属のTHF系溶媒とを混合して混合液を得る混合工程と、
前記混合液に前記原料層状複水酸化物を添加し、前記層状複水酸化物エレクトライドを生成する生成工程とを有し、
さらに前記生成工程で得られた層状複水酸化物エレクトライドを洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程で得られた層状複水酸化物エレクトライドを乾燥する乾燥工程とを含む、請求項3又は4に記載の層状複水酸化物エレクトライドの製造方法。
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