JP7296110B2 - 抗菌剤、農薬、および微生物による植物伝染病害の防除方法 - Google Patents

抗菌剤、農薬、および微生物による植物伝染病害の防除方法 Download PDF

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Description

特許法第30条第2項適用 発表した刊行物:京都大学エネルギー理工学研究所 News Letter 67号 2018年7月 第11頁目 発行者名:京都大学エネルギー理工学研究所 所長 岸本泰明 発行年月日:平成30年7月31日 電気通信回線による発表: 掲載年月日:平成30年7月31日 掲載アドレス:http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/new-iae/NewsRelease/JP/2018/07/31-154913.html http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/new-iae/NewsRelease/img/newsletter67.pdf http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/new-iae/overview/publications.html http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/new-iae//overview/publications/docs/newsletter67.pdf 発表した刊行物:ANNUAL REPORT 2018 p117-119 発行者名:Institute of Advanced Energy Kyoto University 発行年月日:令和1年5月31日 電気通信回線による発表: 掲載年月日:令和1年5月31日 掲載アドレス:http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/new-iae/NewsRelease/JP/2019/05/31-135134.html http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/new-iae/NewsRelease/img/AR2018.pdf http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/new-iae/overview/publications.html http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/new-iae//overview/publications/docs/AR2018.pdf
本発明は、抗菌剤、農薬、および微生物による植物伝染病害の防除方法に関する。
農作物の栽培において、微生物による農作物への病害が問題となっている。前記病害への対処方法として、例えば、他の微生物を散布し、前記微生物が産生する抗菌物質により、前記病害を防除する方法が試みられている。しかしながら、例えば、特許文献1に記載のように、イネに感染する真菌等に対して抗菌活性を示す抗菌物質は知られていない。
特開2003-199558号公報
そこで、本発明は、新たな抗菌剤、農薬、および微生物による植物伝染病害の防除方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の抗菌剤は、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)またはその培養物を有効成分とすることを特徴とする。
本発明の農薬は、前記本発明の抗菌剤を含むことを特徴とする。
本発明の微生物による植物伝染病害の防除方法(以下、「防除方法」ともいう。)は、前記本発明の抗菌剤と植物とを接触させる接触工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、微生物による植物伝染病害を防除できる。
図1は、実施例2におけるフザリウム・フジクロイの観察結果を示す写真である。 図2は、実施例3における抗菌活性の測定結果を示す顕微鏡写真である。
<抗菌剤>
本発明の抗菌剤は、前述のように、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)またはその培養物を有効成分とすることを特徴とする。本発明の抗菌剤は、リゾクトニア・ソラニまたはその培養物を有効成分とすることが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。
本発明者らは鋭意研究の結果、リゾクトニア・ソラニまたはその培養物が、真菌、細菌等の微生物に対し、抗菌活性を示すことを見出した。このため、本発明によれば、例えば、イネの苗や種もみに感染する真菌、細菌等の微生物に対して抗菌活性を示す新たな抗菌剤が提供できる。リゾクトニア・ソラニまたはその培養物の抗菌活性は、β-1,3-グルカナーゼ活性によると推定される。ただし、本発明は、前記推定に何ら制限されない。
本発明において、抗菌活性は、静菌活性でもよいし、殺菌活性でもよい。後述するように、前記抗菌剤を真菌に使用する場合、前記抗菌活性は、例えば、前記真菌の菌糸の伸長阻害または抑制、前記真菌の分生子形成阻害または抑制、および前記真菌の菌糸体の形成阻害または抑制等のいずれを意味してもよい。前記抗菌剤を細菌に使用する場合、前記抗菌活性は、例えば、前記細菌の増殖の阻害または抑制、および滅菌のいずれでもよい。
本発明において、リゾクトニア・ソラニの株は、特に制限されない。リゾクトニア・ソラニの株としては、例えば、後述する実施例のリゾクトニア・ソラニD138株等が使用できる。リゾクトニア・ソラニの培養方法および条件は、特に制限されず、例えば、後述する実施例の培養方法および条件があげられる。前記リゾクトニア・ソラニD138株は、例えば、ケイ・アイ化成株式会社またはオーガニック・テックファーム株式会社から入手できる。
リゾクトニア・ソラニの培養物は、特に制限されず、例えば、リゾクトニア・ソラニの菌体、培養上清、菌体抽出物等があげられる。また、本発明の抗菌剤は、さらに、リゾクトニア・ソラニ以外の微生物の培養物を含んでいてもよい。前記リゾクトニア・ソラニ以外の微生物の培養物としては、特に制限されず、例えば、他の微生物の菌体、前記他の微生物の培養上清、前記他の微生物の菌体抽出物等があげられる。
前記培養物は、例えば、前記菌体の処理物、前記培養上清の処理物、前記菌体抽出物の処理物等でもよい。前記処理物は、特に制限されず、例えば、前記培養物の濃縮物、乾燥物、凍結乾燥物、溶媒処理物、界面活性剤処理物、酵素処理物、タンパク質分画物、超音波処理物、磨砕処理物、前記抗菌物質の精製物等があげられる。また、前記培養物は、例えば、前記菌体、前記培養上清、前記菌体抽出物、前記菌体の処理物、前記培養上清の処理物、前記菌体抽出物の処理物等の混合物でもよい。前記混合物は、特に制限されず、任意の組み合わせおよび比率で混合した混合物とすることができる。前記組み合わせは、特に制限されず、例えば、前記菌体および前記培養上清の混合物等があげられる。
前記処理物が乾燥物である場合、乾燥方法は、特に制限されず、公知の乾燥粉体の作成方法が使用でき、例えば、減圧乾燥機、凍結乾燥機、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)、加熱乾燥機(ドラムドライヤー)等を使用した方法があげられる。前記スプレードライヤーは、例えば、スプレードライヤー機SD-1000(EYELA製)があげられる。前記SD-1000を用いて乾燥を行う場合、例えば、後述する実施例と同様の条件で乾燥を行うことが好ましい。
本発明の抗菌剤において、有効成分は、例えば、β-1,3-グルカナーゼ活性を示す。前記β-1,3-グルカナーゼ活性は、エンド型β-1,3-グルカナーゼ活性およびエキソ型β-1,3-グルカナーゼ活性の少なくとも一方であり、好ましくは、エキソ型β-1,3-グルカナーゼ活性である。前記有効成分は、β-1,3-グルカナーゼ活性のうち、例えば、エキソ型β-1,3-グルカナーゼ活性を単独で示してもよいし、エキソ型β-1,3-グルカナーゼ活性およびエンド型β-1,3-グルカナーゼ活性の両活性を示してもよい。下記参考文献1に記載のように、リゾクトニア・ソラニは、β-1,3-グルカナーゼ活性を示すことが知られている。後述の実施例で示すように、リゾクトニア・ソラニの培養物は、エキソ型β-1,3-グルカナーゼ活性を示し、かつ抗真菌活性を示す。このため、本発明の抗菌剤は、例えば、リゾクトニア・ソラニまたはその培養物の少なくとも一方として、リゾクトニア・ソラニまたはその培養物におけるエキソ型β-1,3-グルカナーゼ活性を示す画分またはエキソ型およびエンド型β-1,3-グルカナーゼ活性を示す画分、好ましくは、分泌型のエキソ型β-1,3-グルカナーゼ含有画分または分泌型のエキソ型およびエンド型β-1,3-グルカナーゼ含有画分を有効成分としてもよい。
参考文献1:Reisuke Kobayashi et.al, “Purification and Characterization of Yeast Cell-lytic Enzyme of a Species of Rhizoctonia.” J.Ferment.Technol.,Vol.58,No.4, 1980, p.319-326
本発明において、前記有効成分は、リゾクトニア・ソラニまたはその培養物であるが、本発明はこれに限定されず、リゾクトニア・ソラニまたはその培養物に代えて、または加えて、リゾクトニア・ソラニ由来のβ-1,3-グルカナーゼを含んでもよい。前記β-1,3-グルカナーゼは、エンド型β-1,3-グルカナーゼまたはエキソ型β-1,3-グルカナーゼでもよいし、エンド型β-1,3-グルカナーゼおよびエキソ型β-1,3-グルカナーゼの両者でもよい。
本発明の抗菌剤は、さらに、例えば、添加剤等の他の成分を含んでいてもよい。前記添加剤としては、特に制限されず、例えば、安定化剤等があげられる。前記抗菌剤の製造方法は、特に制限されず、例えば、後述する抗菌剤の剤型に応じて、適宜決定でき、例えば、通常用いられる製剤化技術等を採用できる。
本発明の抗菌剤は、例えば、種々の細菌、真菌等の微生物に使用できる。前記真菌は、例えば、子嚢菌門に属する真菌があげられる。前記子嚢菌門に属する真菌は、例えば、いわゆる糸状菌があげられ、好ましくは、植物伝染性糸状菌であり、特に好ましくは、イネ伝染性糸状菌類である。前記真菌は、特に制限されず、例えば、Pythium graminicola等のピシウム属(Pythium sp.);Trichoderma viride等のトリコデルマ属(Trichoderma sp.);Pyricularia grisea等のピリキュラリア属(Pyricularia sp.);Fusarium fujikuroi等のフサリウム属(Fusarium sp.);等に属する微生物があげられる。前記植物伝染性糸状菌類は、例えば、前記ピシウム属、前記トリコデルマ属、前記ピリキュラリア属、および前記フザリウム属に属する微生物があげられる。
リゾクトニア・ソラニの採取源としては、特に制限されず、例えば、土壌、植物等があげられる。
リゾクトニア・ソラニの単離方法としては、特に制限されず、例えば、従来公知の採取法、培養法等を用いることができる。前記採取源が土壌の場合、リゾクトニア・ソラニは、例えば、採取した土壌を緩衝液等により懸濁後、この懸濁液を遠心分離し、得られた上清を寒天培地等で培養し、得られたコロニーから単離できる。前記採取源が植物の場合、リゾクトニア・ソラニは、例えば、リゾクトニア・ソラニが感染した植物根片、リゾクトニア・ソラニによる伝染病であるテンサイ葉腐病またはイネ紋枯病に罹患した植物の葉もしくは茎等から単離できる。前記採取源が植物の場合、前記単離方法の一例について、以下に説明する。まず、前記単離方法では、前記リゾクトニア・ソラニが感染した植物をポテトデキストロース寒天培地(以下、「PDAプレート」ともいう)へ播種し、菌糸体がPDAプレートで80%まで集密的に増殖したものを調製する。つぎに、前記単離方法では、培養面積0.5cm×高さ0.5mmの寒天を、別のPDAプレートへ継代する。前記単離方法では、同様の継代を繰り返す中で、リゾクトニア・ソラニを分離して、純粋培養をおこなう。また、前記リゾクトニア・ソラニの分離において、リゾクトニア・ソラニは、例えば、顕微鏡による菌種の形態的種別、菌糸融合(反応)群に基づく種別、分子系統的な分類法、またはリボソームRNA系統解析法等に基づき、分離できる。前記分子系統的な分類法およびリボソームRNA系統解析法は、併用してもよい。なお、リゾクトニア・ソラニは、担子菌門に属する。前記リゾクトニア・ソラニの分離は、例えば、下記参考文献2を参照して実施してもよい。前記単離したリゾクトニア・ソラニは、さらに、例えば、培地中で培養してもよい。
参考文献2:荒川征夫、他、Rhizoctonia属菌における菌糸融合群判定および集団遺伝学解析のための分子マーカー、日植病報 80特集号:81-86(2014)
リゾクトニア・ソラニの培養において、培地は、特に制限されず、液体培地でも固体培地でもよい。前記液体培地は、例えば、後述の実施例で使用した専用培地、ポテトデキストロース培地等が使用でき、前記固体培地は、例えば、ふすま(麩)、蒸し米、稲わら、酵母エキス・麦芽エキス寒天、麦芽エキス寒天、MYP、トウモロコシ煎汁寒天、バレイショ煎汁寒天、オガコ、馬糞煎汁寒天等が使用できる。前記固体培地としてふすま(麩)を使用する場合、例えば、160℃以上で乾熱滅菌することが好ましい。
リゾクトニア・ソラニの培養は、複数回にわけて行ってもよく、その回数は、特に制限されず、例えば、2回である。2回に分けて培養を行う場合、例えば、1回目の培養を、種培養、2回目の培養を、本培養という。
前記種培養を行う場合、培地は、例えば、前記液体培地が使用でき、好ましくは後述する実施例で使用した専用培地である。前記種培養時の条件は、特に制限されず、培養時の温度は、例えば、26~30℃の範囲であり、好ましくは28℃である。培養時のpHは、特に限定されず、例えば、pH4~9の範囲、pH5~8の範囲、pH6.8~7.2の範囲である。種培養の期間は、例えば、5日間~10日間であり、好ましくは7日間である。前記種培養は、例えば、振盪培養を行うことが好ましく、振盪は、往復振盪でも回転振盪でもよい。前記回転振盪を行う場合、その回転数は、特に制限されず、例えば、120rpm~150rpmがあげられる。
前記本培養を行う場合、培地は、例えば、前記固体培地が使用でき、好ましくはふすまである。前記本培養時の条件は、特に制限されず、培養時の温度は、例えば、18~25℃の範囲であり、好ましくは22℃である。培養時のpHは、特に限定されず、例えば、pH4~9の範囲、pH5~8の範囲、pH6.8~7.2の範囲である。本培養の期間は、例えば、7日間~8日間である。前記本培養は、例えば、好気的条件で行うことが好ましい。
前記培養時の光条件は、特に制限されず、例えば、暗黒条件でもよく、照明条件でもよい。
リゾクトニア・ソラニの前記培養において、例えば、リゾクトニア・ソラニのみを培養してもよく、さらに、他の微生物を同時に混合培養してもよい。前記他の微生物としては、特に制限されない。
<農薬>
本発明の農薬は、前述のように、前記本発明の抗菌剤を含むことを特徴とする。本発明の農薬は、前記本発明の抗菌剤を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の農薬によれば、例えば、微生物による植物伝染病害を防除できる。本発明の農薬は、例えば、前記本発明の抗菌剤の説明を援用できる。
本発明の農薬の剤形は、特に制限されず、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、等の固形剤、液剤、乳剤等があげられる。本発明の農薬は、例えば、公知の農薬を含んでもよい。前記公知の農薬は、例えば、生物学的農薬、化学的農薬でもよい。前記生物学的農薬は、例えば、抗菌活性、殺虫活性、殺菌活性、除草活性、植物成長調節活性、昆虫忌避活性等の活性を有する微生物(例えば、細菌、真菌)を含む農薬である。また、前記化学的農薬は、例えば、抗菌物質、殺虫物質、殺菌物質、除草物質、植物成長調節物質、昆虫忌避物質等があげられる。
前記農薬の使用対象は、特に制限されないが、例えば、植物、前記植物を栽培する土壌、水等の培地があげられる。前記植物は、例えば、イネ等のイネ科植物等があげられ、水稲が好ましい。前記農薬を前記植物に使用する場合、前記植物において前記農薬を接触させる位置は、特に制限されず、前記植物個体全体でもよいし、前記植物個体の部分でもよい。前記植物個体の部分は、例えば、器官、組織、細胞または栄養繁殖体等があげられ、いずれでもよい。前記器官は、例えば、花弁、花冠、花、葉、種子、果実、茎、根等があげられる。具体例として、前記使用対象は、例えば、イネの種子(種もみ)、苗等があげられる。前記農薬を使用する際の植物の成長状態は、特に制限されず、例えば、種子でもよいし、苗でもよいし、成長体でもよい。
前記農薬の使用量および使用回数は、特に制限されず、例えば、前記使用対象に応じて適宜設定できる。
本発明の農薬は、例えば、一般的な使用方法により、使用できる。前記使用方法は、例えば、前記農薬を手で直接散布する方法、背負い式散粒機、パイプ散粒機、空中散粒機、動力散粒機、育苗箱用散粒機、多口ホース散粒機、田植え機等に付設した散粒機等の散粒機を用いて散粒する方法等があげられる。また、本発明の農薬が液剤の場合、前記農薬は、例えば、背負い式散布機、動力散布機、スプリンクラー、トラクター等に搭載される型の散布機、多口ホース散布機等の散布機を用いて散布できる。
本発明の農薬の使用場所は、特に制限されず、例えば、水田、乾田、育苗箱、畑地、果樹園、桑畑、温室、露地等の農耕地等に使用できる。
本発明の農薬をイネに使用する場合について、例をあげて説明する。本発明の農薬をイネに使用する場合、本発明の農薬は、例えば、播種時、育苗期、田植時等に使用できる。本発明の農薬は、例えば、未希釈の状態で使用してもよいし、希釈した状態で使用してもよく、例えば、前記水田に使用する場合、例えば、前述の散粒機、散布機、スプリンクラー等を用いて散粒、散布等できる。また、本発明の農薬を前記イネの種もみの消毒に使用する場合、前記農薬は、例えば、前記イネの種もみのコート剤として使用できる。前記本発明の農薬は、例えば、さらに、前記イネの種もみの浸種の際、浸漬する水に溶解して使用してもよいし、前記イネの種もみを種子消毒する際、温湯に溶解して使用してもよいし、前記イネの種もみの催芽の際、水に噴霧してもよい。
前記水田に使用する場合、本発明の農薬の使用量および使用回数は、特に制限されず、前記水田の大きさおよび前記使用方法に応じて適宜決定できる。
<微生物による植物伝染病害の防除方法>
本発明の微生物による植物伝染病害の防除方法は、前述のように、前記本発明の抗菌剤と植物とを接触させる接触工程を含むことを特徴とする。本発明の防除方法は、前記本発明の抗菌剤を使用することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の防除方法によれば、例えば、前記種苗や成長体等の植物を前記真菌、前記細菌等の微生物による植物伝染病害から防除できる。本発明の防除方法は、例えば、前記本発明の抗菌剤、農薬等の説明を援用できる。
本発明において、前記微生物による植物伝染病害の防除は、例えば、前記微生物の感染による病害の発生および進行に対する阻害能または抑制能を意味し、具体的に、例えば、病害の未発生、発生した病害の進行の停止、および、発生した病害の進行の抑制(阻害ともいう)等のいずれでもよい。
前記接触工程は、前記本発明の抗菌剤と植物とを接触させる工程である。前記接触工程は、例えば、前記本発明の抗菌剤として、前記本発明の農薬と前記植物とを接触させてもよい。前記本発明の抗菌剤と前記植物との接触方法等は、例えば、前記本発明の農薬の説明を援用できる。
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらの作業手順書に基づいて使用した。
[実施例1]
本発明の抗菌剤が、真菌に対して抗菌活性を示すことを確認した。
(1)抗菌剤の作成
(1-1)リゾクトニア・ソラニの種培養
下記表1に示す組成の専用培地を作成し、121℃、20分間の条件でオートクレーブ滅菌後、リゾクトニア・ソラニD138株(ケイ・アイ化成株式会社より入手)を種菌として植菌した。そして、培養温度28℃、回転数120rpmの条件下で、7日間種培養した。
Figure 0007296110000001
(1-2)リゾクトニア・ソラニの本培養
本培養用の固体培地として、ふすま(麩)200g(あかふすま、全国農業協同組合連合会製)を容量1Lの三角フラスコへ投入し、160℃以上、2.5時間以上の条件で乾熱滅菌した。乾熱滅菌時には、ふすま内の温度を均一とし、ふすま全体を滅菌できるように、15分ごとにフラスコを手で振ってふすまを撹拌した。前記乾熱滅菌後、クリーンベンチ内でふすまを室温(25℃、以下同様)程度まで冷却し、滅菌後のふすま7gを、滅菌済みの容量200mLの容器へ無菌的に量り取った。その後、前記容器に、滅菌した塩溶液(0.29mol/L リン酸二水素カリウムおよび75.7mmol/L 硫酸アンモニウムの溶液)を7mLと、前記種培養物7mLとを無菌的に添加し、全体がしっとりと湿るまで混和した。なお、前記種培養物は、種培養から1時間以内に使用した。そして、混和した前記混合物を、培養温度22℃で、7日間本培養した。本培養中は、毎日1回決められた時間に、クリーンベンチ内で滅菌したスパーテルを用いて培養物(麩麹)を混和し、十分な酸素を供給した。
(1-3)酵素活性(β-1,3-グルカナーゼ活性)の測定
前記本培養後の培養物(麩麹)を、スパチュラを用いて解砕し、滅菌水60mLを添加して撹拌し、室温で1時間静置した。1時間後、薬局方ガーゼ(FCガーゼ局法、白十字社製)を用いて前記解砕物を濾過し、濾液を回収した。回収後、前記解砕物に再度滅菌水を20mL添加して撹拌し、室温で30分静置した後、同様に濾過して濾液を回収した。そして、1回目の濾液と2回目の濾液を混合し、酵素活性の測定に用いた。
蛍光活性の測定にあたり、バイオラッド社のQuick Startプロテインアッセイキットを使用し、その手順書に従って、得られた濾液中のタンパク質(酵素)をBradford法により定量し、酵素活性の測定に用いた。
まず、β-1,3-グルカン(和光純薬社製)を2%(w/v)の濃度となるように蒸留水に懸濁して、カードラン基質懸濁液を調製した。つぎに、以下の手順で、3,5-Dinitrosalicylic acid(DNS)試薬を調製した。まず、300mLの4.5%NaOH液へ、880mLの1%DNS溶液およびロッセル塩255gを添加し、DNS液を調製した。つぎに、22mLの10%NaOH溶液へ結晶フェノール10gを添加し、さらに、水を添加して溶解し、総量を100mlとしたアルカリ性フェノール液を調製した。69mLの前記アルカリ性フェノール液へ、36.9gのNaHCOを添加して溶かし、前記DNS液を添加してロッセル塩が充分に溶解するまでかき混ぜた。その後、2日放置した後に濾過し、着色瓶へ保存した。なお、前記DNS試薬の調製は、下記参考文献3を参考にした。
参考文献3:福井作蔵,還元糖の定量法II,化学と生物,1965年,3巻,9号,p.484-490.
つぎに、前記定量した酵素100μgを100mmol/Lのクエン酸溶液および200mmol/Lのリン酸ナトリウム溶液に混和し、pHを5.0に調整した酵素溶液を調製した。そして、前記カードラン基質懸濁液0.1mLと、酵素溶液0.9mLとを混合し、36.5℃~37.5℃の条件で30分間反応させた。その後、前記反応液に対し3倍量のDNS試薬を添加して良く混和し、反応を停止した。そして、前記反応停止液を遠心力3,000g、5分間の条件で遠心し、その上清をできるだけ回収して沸騰水中で15分間加熱した。前記加熱後、直ちに水道水の水流で室温まで冷まし、回収した上清量に対して5倍量の純水を添加してよく混和した。そして、吸光度計(島津製作所社)により、波長540nmの吸光度を測定し、グルコースに相当する還元糖量として定量した。1単位のβ-1,3-グルカナーゼ活性は、1分間に1μmolのグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量とした。この結果、本発明の抗菌剤は、2,000単位/mLのβ-1,3-グルカナーゼ活性を有していた。
(1-4)乾燥粉体化
前記(1-3)で得られた濾液を乾燥粉体化し、本発明の抗菌剤とした。
乾燥機として、スプレードライヤー機SD-1000型(EYELA製)を用いた。前記スプレードライヤー機は、乾燥経路において、蒸発缶とサイクロンを備え、乾燥に重要な入口温度、および出口温度を測定可能なように、蒸発缶前の吸気管、および蒸発缶とサイクロンとの間に温度センサーを有している。まず、前記スプレードライヤー機の試料容器に蒸留水を通液し、出口温度を適当な温度に調整した。その後、前記培養後の濾液の全量を、下記設定条件のスプレードライヤー機の試料容器に導入し、乾燥粉体化した。これにより、乾燥粉体化された本発明の抗菌剤を0.3g得た。

入口温度:100~130℃
出口温度:60℃~90℃
ブロア風量:750L/分以下
噴霧圧力:50~200kPa
送液量:1~2mL/分
(2)抗菌活性の測定
まず、96ウェルプレートに、市販のポテトデキストロース寒天培地(PDAプレート、ディフコ社、カタログ番号:213400)をオートクレーブ滅菌した後に流し込み、冷却して固化することにより、PDAプレート培地を調製した。
前記PDAプレート培地に、被検菌株を含むポテトデキストロース液体培地(以下、「PDB」ともいう、ディフコ社、カタログ番号:254920)を15μL添加して播種した。前記被検菌株は、別途あらかじめPDAプレートで80%まで集密的に培養したものを、面積で1平方センチメートルの菌糸を800μLのPDBに回収、懸濁したものを用いた。なお、前記被検菌株は、ピリキュラリア・グリセ MAFF101518株(イネイモチ病菌、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)から分与)、ピシウム・グラミニコラ MAFF238432株(イネ苗立枯病菌、農研機構から分与)、トリコデルマ・ビリデ NBRC30546株(イネ苗立枯病菌、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(以下、NITE)から分与)、を使用した。
本発明の抗菌剤は、前記乾燥粉体化後の抗菌剤を、濃度が10mg/mL、30mg/mL、または50mg/mLとなるように、50mmol/Lのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に溶解して使用した。コントロールは、前記抗菌剤を含まない50mmol/Lのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)とした。
前記播種後、前記各被検菌株を添加した96ウェルプレートに、前記各濃度の抗菌剤、またはコントロールを10μL添加し、30℃、48時間の条件で培養させた(n=2)。これらの結果を下記表2に示す。
Figure 0007296110000002
前記表2に示すように、本発明の抗菌剤は、ピシウム・グラミニコラ MAFF238432株(イネ苗立枯病菌)、トリコデルマ・ビリデ NBRC30546株(イネ苗立枯病菌)、ピリキュラリア・グリセ MAFF101518株(イネイモチ病菌)の菌糸成長を阻害し、抗菌活性を示した。
[実施例2]
本発明の抗菌剤が、真菌の分生子形成を阻害することを確認した。
被検菌株は、菌株継代用としてPDAプレートの斜面培地からあらかじめ培養したフザリウム・フジクロイ MAFF235949株(イネバカ苗病菌、農研機構から分与)を使用した。そして、前記菌株をPDAプレートに植菌し、25℃、3週間培養し、発芽した分生子を含む菌糸体を使用した。前記菌糸体を含むPDAプレートに対し、6mLの0.25%(v/v)Tween20(商品名)を添加し、顕微鏡用のスライドガラスを用いて発芽した分生子を含む菌糸体をかきとり、局方用滅菌ガーゼにより菌糸体を濾過し、分生子を含む濾液を回収した。前記濾液を、7,000g、5分間遠心して上清を捨て、滅菌水を添加して沈殿した分生子を洗浄した。同様の操作を2回繰り返した後、7,000g、5分間遠心して上清を捨て、500μLの滅菌水を添加して分生子を懸濁した。滅菌水へ懸濁した分生子の一部は、保存用として、終濃度30%となるように60%グリセロール液を添加し、-80℃のディープフリーザーで凍結保存した。そして、残りは血球計算盤で分生子数を計数した。得られたフザリウム・フジクロイの分生子数は、6×10個であった。
得られた分生子を、96ウェルプレートに、1ウェルあたり約6×10個となるように添加した。前記添加後、前記分生子を添加した96ウェルプレートに、前記実施例1で調製した各濃度の抗菌剤、またはコントロールを10μL添加し、30℃、48時間の条件で培養した。前記培養後、ラクトフェノール・コットンブルーを用いてフザリウム・フジクロイを染色した。そして、得られたサンプルを正立顕微鏡(BX43システム生物顕微鏡、オリンパス社)を用いて観察した。これらの結果を下記表3および図1に示す。
Figure 0007296110000003
図1は、フザリウム・フジクロイの観察結果を示す写真である。図1において、左側の写真がコントロールを添加した比較例のフザリウム・フジクロイの結果を示し、右側の写真が、本発明の抗菌剤を酵素濃度50mg/Lで添加した実施例のフザリウム・フジクロイの結果である。前記表3および図1に示すように、本発明の抗菌剤は、フザリウム・フジクロイの発芽間の発芽や菌糸成長を抑制した。また、図1において矢印で示すように、本発明の抗菌剤は、成長した菌糸体からの分生子の形成・放出を阻害した。これらのことから、本発明の抗菌剤は、フザリウム・フジクロイ(イネバカ苗病菌)に対して抗菌活性を示すことがわかった。
[実施例3]
本発明の抗菌剤が、イネ病原性糸状菌類を溶菌させることを確認した。
被検菌株として、トリコデルマ・ビリデ NBRC30546株(イネ苗立枯病菌)を用い、本発明の抗菌剤を、濃度50mg/mLとなるように50mmol/Lのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に溶解して使用した。被検菌株に本発明の抗菌剤を添加後、培養条件を30℃、6時間の条件とした以外、実施例1と同様にして培養した。前記培養後、トリコデルマ・ビリデを、ラクトフェノール・コットンブルーを用いて染色した。そして、得られたサンプルについて前記正立顕微鏡を用いて観察した。コントロールは、前記抗菌剤を含まない50mmol/Lのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)とした。これらの結果を図2に示す。
図2は、トリコデルマ・ビリデの観察結果を示す写真である。図2において、左側の写真がコントロールを添加した比較例のトリコデルマ・ビリデの結果を示し、右側の写真が、本発明の抗菌剤を添加した実施例のトリコデルマ・ビリデの結果を示す。図2に示すように、本発明の抗菌剤によれば、トリコデルマ・ビリデは、細胞壁が分解され、溶菌していた。トリコデルマ・ビリデ等の糸状菌の細胞壁は、主に糖鎖繊維のミクロフィブリルから構成される。また、前記糖鎖繊維の主成分は、グルカンであることが知られている。このため、糸状菌は、脂質や脂質糖鎖で構成された細胞膜を有する細菌類と異なり、一般に、抗菌物質により死滅した後の、細胞壁を含む菌糸体の崩壊には数日を要する。これに対して、本発明の抗菌剤は、6時間という短時間でトリコデルマ・ビリデの細胞壁を分解し、溶菌できたことから、本発明の抗菌剤は、真菌(糸状菌)の細胞壁中のグリコシド結合を切断し、溶菌させることで、抗菌活性を示していると考えられた。すなわち、本発明の抗菌剤における有効成分は、エキソ型β-1,3-グルカナーゼ活性単独、またはエンド型β-1,3-グルカナーゼとエキソ型β-1,3-グルカナーゼとの両活性を示すと推定された。ただし、前記推定は、本発明をなんら制限しない。
[参考例1]
エンド型β-1,3-グルカナーゼが、真菌に対して抗菌活性を有さないことを確認した。
β-1,3-グルカナーゼとして、リンゴマイマイ(Helix pomatia)由来β-1,3-グルカナーゼ(製品名、β-(1→3)-D-グルカナーゼ from Helix pomatia、製品番号:67138-10MG、シグマ-アルドリッチ社)を使用した。前記β-1,3-グルカナーゼは、エンド型の糖加水分解酵素であり、酵母(カンジダ・アルビカンス)の細胞壁の骨格多糖であるβ-1,3-グルカンを加水分解可能なことが知られている。
被検菌株として、フザリウム・フジクロイ MAFF235949株、リゾクトニア・ソラニ MAFF305229株、ピリキュラリア・グリセ MAFF101518株、トリコデルマ・ビリデ NBRC30546株を使用した。被検菌株の培養および播種は、ピリキュラリア・グリセのみ、培地をPDAに代えて、コーンミール寒天培地を使用した以外は前記実施例1と同様に実施した。Helix pomatia由来β-1,3-グルカナーゼは、濃度が、0.25U(ユニット)/mL、0.5U/mL、または1U/mLとなるように、50mmol/Lリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)へ溶解して使用した。コントロールは、Helix pomatia由来β-1,3-グルカナーゼを含まない50mmol/Lのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)とした。なお、Helix pomatia由来β-1,3-グルカナーゼの1U(ユニット)は、pH5.0、37℃、1分間の条件で、1μmolのグルコースをラミナリンから遊離させる酵素量に相当する。
前記播種後、前記各被検菌株を添加した96ウェルプレートに、前記各濃度のHelix pomatia由来β-1,3-グルカナーゼ溶液、またはコントロールを15μL添加し、30℃、48時間の条件で培養した(n=2)。これらの結果を下記表4に示す。
Figure 0007296110000004
前記表4に示すように、Helix pomatia由来β-1,3-グルカナーゼは、いずれの被検菌株に対しても抗菌活性を示さなかった。
[参考例2]
エンド型β-1,3-グルカナーゼを含む複合酵素群が、真菌に対して抗菌活性を有さないことを確認した。
参考例2では、ザイモリエイス(登録商標)-20T(ナカライテスク社)を使用した。ザイモリエイス(登録商標)-20Tは、アルスロバクター・ルテウス(Arthrobacter luteus)由来の酵母溶菌酵素として知られており、エンド型β-1,3-グルカナーゼの他、プロテアーゼ、ならびにマンナナーゼの活性を有する複合型酵素である。
被検菌株として、フザリウム・フジクロイ MAFF235949株(農研機構から分与)、リゾクトニア・ソラニ MAFF305229株(農研機構から分与)、ピリキュラリア・グリセ MAFF101518株(農研機構から分与)、トリコデルマ・ビリデ NBRC30546株(NITEから分与)、リゾプス・ミクロスポラス NBRC30499株(NITEから分与)を使用した。被検菌株の培養および播種は、ピリキュラリア・グリセのみ、培地をPDAに代えて、コーンミール寒天培地を使用した以外は前記実施例1と同様に実施した。ザイモリエイス(登録商標)-20Tは、濃度が、10mg/mLとなるように、50mmol/Lリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)へ溶解して使用した。また、被検菌株の非溶菌性の指標として、Helix pomatia由来β-1,3-グルカナーゼを使用した。Helix pomatia由来β-1,3-グルカナーゼは、濃度が、5mg/mLまたは25mg/mLとなるように、50mmol/Lリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)へ溶解して使用した。コントロールは、前記いずれの酵素も含まない50mmol/Lのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)とした。
前記播種後、前記各被検菌株を添加した96ウェルプレートに、前記各濃度のザイモリエイス(登録商標)-20T、Helix pomatia由来β-1,3-グルカナーゼ溶液、またはコントロールを15μL添加し、30℃、48時間の条件で反応させた(n=2)。これらの結果を下記表5に示す。
Figure 0007296110000005
前記表5に示すように、ザイモリエイス(登録商標)-20TおよびHelix pomatia由来β-1,3-グルカナーゼは、いずれの被検菌株に対しても抗菌活性を示さなかった。
前記参考例1および2に示すように、エンド型のβ-1,3-グルカナーゼ、およびそれを含む複合酵素群は、被検菌株に対し抗菌活性を示さなかった。他方、本発明の抗菌剤、すなわちリゾクトニア・ソラニの産生する複合酵素群は、各被検菌株に抗菌活性を示し、溶菌させた。前述のように、リゾクトニア・ソラニの産生する複合酵素群は、エンド型およびエキソ型のβ-1,3-グルカナーゼ活性を示す。これらのことから、本発明の抗菌剤は、エキソ型単独、またはエキソ型とエンド型のβ-1,3-グルカナーゼ活性を有しているため、ピシウム・グラミニコラ、トリコデルマ・ビリデ、ピリキュラリア・グリセ、フザリウム・フジクロイ等の真菌に対して抗菌活性を示すものと推定された。ただし、前記推定は、本発明を何ら制限しない。
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)またはその培養物を有効成分とする、抗菌剤。
(付記2)
前記有効成分は、エキソ型β-1,3-グルカナーゼ活性を示す、付記1記載の抗菌剤。
(付記3)
前記有効成分は、エキソ型β-1,3-グルカナーゼ活性、およびエンド型β-1,3-グルカナーゼ活性を示す、付記1または2記載の抗菌剤。
(付記4)
前記抗菌剤は、真菌に対する抗菌剤である、付記1から3のいずれかに記載の抗菌剤。
(付記5)
前記真菌が、糸状菌である、付記4記載の抗菌剤。
(付記6)
前記真菌が、ピシウム属(Pythium sp.)、トリコデルマ属(Trichoderma sp.)、ピリキュラリア属(Pyricularia sp.)、およびフザリウム属(Fusarium sp.)からなる群から選択された少なくとも一種の真菌である、付記4または5記載の抗菌剤。
(付記7)
前記抗菌剤は、植物伝染性糸状菌類防除用である、付記1から6のいずれかに記載の抗菌剤。
(付記8)
付記1から7のいずれかに記載の抗菌剤を含む、農薬。
(付記9)
付記1から7のいずれかに記載の抗菌剤と植物とを接触させる接触工程を含む、微生物による植物伝染病害の防除方法。
(付記10)
前記植物が、イネである、付記9記載の防除方法。
(付記11)
前記イネが、前記イネの苗または種子である、付記10記載の防除方法。
以上のように、本発明によれば、例えば、イネに感染する真菌、細菌等の微生物に対して抗菌活性を示す、新たな抗菌剤、農薬、および微生物による植物伝染病害の防除方法を提供できる。したがって、本発明は、農業分野、医療分野、環境分野等において極めて有用である。

Claims (8)

  1. リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solaniの菌体抽出物からなり、エキソ型β-1,3-グルカナーゼ活性を示す有効成分を含む、植物伝染性糸状菌類防除用抗菌剤。
  2. 前記菌体抽出物は、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の菌体の水抽出液又はその乾燥物である、請求項1記載の植物伝染性糸状菌類防除用抗菌剤
  3. 前記有効成分は、エキソ型β-1,3-グルカナーゼ活性およびエンド型β-1,3-グルカナーゼ活性を示す、請求項1または2記載の植物伝染性糸状菌類防除用抗菌剤。
  4. 前記植物伝染性糸状菌類が、ピシウム属(Pythium sp.)、トリコデルマ属(Trichoderma sp.)、ピリキュラリア属(Pyricularia sp.)、およびフザリウム属(Fusarium sp.)からなる群から選択された少なくとも一種である、請求項1から3のいずれか一項に記載の植物伝染性糸状菌類防除用抗菌剤。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の抗菌剤を含む、農薬。
  6. 請求項1から4のいずれか一項に記載の抗菌剤と植物とを接触させる接触工程を含む、微生物による植物伝染病害の防除方法。
  7. 前記植物が、イネである、請求項6記載の防除方法。
  8. 前記イネが、前記イネの苗または種子である、請求項7記載の防除方法。
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