〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本実施形態に係るシミュレーション装置は、貯水槽と該貯水槽内の下水を排水するポンプとを備える複数の貯水設備が下水管路で接続されて成る下水管路網の態様を模擬するシミュレーション装置である。一例として、貯水槽はマンホールであり、貯水槽内の下水を排水するポンプは、水中ポンプである。すなわち、シミュレーション装置は、一例として、マンホールと水中ポンプとを備える複数のマンホールポンプ場が下水管路で接続されて成る下水管路網の態様を模擬する。具体的には、本実施形態に係るシミュレーション装置は、下水管路網における各水中ポンプの振る舞いを模擬するとともに、該下水管路網を流れる下水の振る舞いを模擬する。
<下水管路網の一例>
図2は、本実施形態に係るシミュレーション装置によって模擬される下水管路網の一例を概略的に示す図である。下水管路網は、1以上の最上流の貯水槽または下水管路によって受け入れられる流入水をスタートのノードとし、下水処理場をゴールのノードとして、該流入水が下水として移動する経路を構成する。図2に示す下水管路網200は、マンホールと該マンホール内の下水を排水する水中ポンプとを備える複数のマンホールポンプ場100(貯水設備)が下水管路で接続されて成る。下水管路網200において、各マンホールポンプ場100が中継した下水は、最終的に、下水処理場101に送水されるように下水管路の網構造が構築される。
図示の例では、下水管路網200に流入する流入水は、2つのタイプに大別される。1つ目は、下水管路網200において、マンホールポンプ場100の水中ポンプの圧力に依存せずに、貯水機能を持つノードに流入する流入水IFAである。具体的には、マンホールポンプ場100または下水処理場101に直接流入する第1流入水~第6流入水である。これらの流入水IFAは、例えば、家庭から下水管を通って排水された生活排水である。2つ目は、上流ノードから送出されて下流ノードに流入する流入水IFBである。具体的には、上流のマンホールポンプ場100に設置されている水中ポンプによって送り出されたことにより、下流ノード(ホールポンプ場100または下水処理場101)に流入する第7流入水~第11流入水である。
本実施形態に係るシミュレーション装置は、各マンホールポンプ場100に設置されている水中ポンプの振る舞い、および、下水管路網200を下水として流れる第1流入水~第11流入水の振る舞いを模擬する。これにより、シミュレーション装置は、各水中ポンプの設定水位対、具体的には、運転水位および停止水位の対の最適解を、容易にかつ安全に得ることができる。
<下水管路網データ>
図2は、記憶部11に記憶される下水管路網データ30のデータ構造を示しているとも言える。下水管路網データ30は、下水管路網200の網構造を示す情報である。一例として、下水管路網データ30は、図2に示すように、複数のノードと、ノード間をつなぐリンクとを定義した網構造を有する。
図2に示すとおり、下水管路網データ30において、最上流のスタートのノードは、水中ポンプ1による圧送と無関係に流入する流入水IFAとして定義されている。中間のノードは、貯水機能を有するマンホールポンプ場100として定義されている。最下流のゴールのノードは、下水処理場101として定義されている。
ノード間をつなぐリンクは、下水管路を表しており、各リンクには、上流の水中ポンプ1による圧送に依存して流入する流入水IFBと、送水所要時間とが対応付けられている。送水所要時間とは、該当するリンクがつないでいる上流側のノードから下流側のノードへと対応する流入水IFBを送り届けるのにかかる時間を示す。例えば、図2に示す例では、第1マンホールポンプ場100と、第4マンホールポンプ場100とをつなぐリンク(下水管路)に対しては、第7流入水IFBと、送水所要時間「2分」とが対応付けられている。すなわち、第7流入水IFBが、第1マンホールポンプ場100から、第4マンホールポンプ場100に到達するのには2分かかるということを、この下水管路網データ30は示している。
以下では、リンクごとに対応付けられている送水所要時間の情報を送水所要時間データ31と称する。本実施形態では、一例として、図2に示すとおり、下水管路網データ30に、送水所要時間データ31が含まれている。
<マンホールポンプ場の構成>
図3は、下水管路網200に属するマンホールポンプ場100の構成の一例を示す概略図である。マンホールポンプ場100は、水中ポンプ1と、マンホール2と、水位計5と、制御盤8とを備えている。制御盤8は、地面GLより上のマンホール2近傍に設けられる。マンホール2のフタ4より下にある各部は、地面GLより下の地中に埋設されている。
マンホール2は、マンホールポンプ場100への流入水を貯留する貯水槽として機能する。マンホール2に流入する流入水は、例えば、上流の水中ポンプ1によって圧送された流入水IFBであってもよいし、上流の水中ポンプ1の運転とは無関係に、流入管3からまたはマンホール2のフタ4から流入した流入水IFAであってもよい。
水中ポンプ1は、マンホール2に貯留された汚水を、揚水管7を介して流出管6に圧送する。
水位計5は、マンホール2に貯留された汚水の水位を計測する。水位計5としては、例えば、投込圧力式または気泡式の水位センサが用いられる。水位計5は、マンホール2の底部に設置されて、マンホール2に貯留される汚水の水位(以下、マンホール水位PWL)を連続的に検出するように構成されている。
制御盤8は、マンホール2の地上近傍に設けられる。制御盤8は、マイクロコンピュータとしてのポンプ制御部9を備えている。ポンプ制御部9は、水中ポンプ1の運転および停止を制御する。ポンプ制御部9と水中ポンプ1との間、および、ポンプ制御部9と水位計5との間は、電力または制御信号の供給を可能にするための配線がなされている。
また、制御盤8は、ポンプ制御部9で実行される制御プログラムが格納されるとともにワーキング領域として利用される不図示のメモリと、ポンプ制御部9により制御される不図示のポンプ駆動回路を備えている。さらに、制御盤8は、ポンプ制御部9から出力される信号に基づいて、マンホール2の状態および水中ポンプ1の稼動状況などを外部の遠隔管理装置などに無線で送信する不図示の通信部等を備えている。
例えば、通信部は、ポンプ制御部9によって把握される、マンホールポンプ場100の稼動実績情報を外部の遠隔管理装置などに送信してもよい。稼動実績情報は、例えば、水中ポンプ1の運転時刻、1日の起動回数、1日の運転時間、単位時間当たりの消費エネルギー、水中ポンプ1の異常加熱などの異常の有無、該異常の発生時刻、水中ポンプ1に設定されている設定水位対などを含む。消費エネルギーは、より具体的には、消費電流(A)または消費電力(kwh)などであってもよい。
設定水位対(水位データ)は、水中ポンプ1に対して設定されている2つの設定水位の対を指す。具体的には、設定水位の1つ目は、マンホール水位PWLが該水位を下回ったときに水中ポンプ1の運転を停止するように設定される停止水位LWLである。2つ目は、マンホール水位PWLが該水位を上回ったときに水中ポンプ1の運転を開始する(起動する)ように設定される運転水位HWLである。ポンプ制御部9は、水中ポンプ1に設定されている設定水位対と、水位計5によって検出されるマンホール水位PWLとに基づいて、水中ポンプ1の運転と停止とを制御する。
さらに、制御盤8の通信部は、水位計5によって計測されている時々刻々のマンホール水位PWLの計測値をマンホールポンプ場100の稼動実績情報として外部の遠隔管理装置などに送信してもよい。また、通信部は、マンホール水位PWLが異常高水位(以下、上限水位HHWL)を超過した時刻、超過分の高さ(m)、超過していた時間帯などを、上述の稼動実績情報として、外部の遠隔管理装置などに送信してもよい。
さらに、制御盤8の通信部は、所定時間当たりのマンホール2への流水量の時系列データ、および、下流ノードへの送水量の時系列データを上述の稼動実績情報として、外部の遠隔管理装置などに送信してもよい。例えば、ポンプ制御部9は、所定時間当たりの流入量を、水中ポンプ1の停止時に水位計5で計測される直近の水位の上昇速度に基づいて判断してもよい。また、ポンプ制御部9は、精度を上げるために、所定時間当たりの流入量を、所定時間内の平均水位の上昇速度に基づいて、水中ポンプ1の直近の運転時間を加味して、算出してもよい。
例えば、住宅地であれば朝方や夕刻に水の使用量が増し、工場地帯であれば昼間に水の使用量が増す、というように、一日の時間帯、1週間の曜日(平日か週末か)、あるいは、その日が平日か休日(祝日)かにより、下水管路網200への水の流入量には、特徴的なパターンが観測され得る。また、下水管路網200が埋設されている地域の気候に依存して、ある季節では水の使用量が少なく、別の季節では水の使用量が多い、というように季節または月によっても、下水管路網200への水の流入量には、特徴的なパターンが観測され得る。例えば、夏場は、各家庭のシャワーの使用量が増えたり、プールやキャンプ場などの娯楽・観光施設での水の使用量が増えたりすることがあり得るからである。さらに、天気(降雨または降雪の有無)によっても当然下水管路網200への水の流入量には、特徴的なパターンが観測され得る。そこで、ポンプ制御部9は、所定時間当たりの流入量の日ごとの時系列データに、季節、月、曜日、天気、平日か休日(祝日)かの区分、および、時刻などのメタ情報を関連付けて、外部の遠隔管理装置などに送信してもよい。
<シミュレーション装置の構成>
図1は、シミュレーション装置の要部構成の一例を示すブロック図である。シミュレーション装置19は、例えば、制御部10、記憶部11、入力部12および出力部13を備えている。シミュレーション装置19としては、例えば、1つ以上のプロセッサを備えている汎用的なコンピュータを適用することが可能である。シミュレーション装置19は、コンピュータが一般的に備えている不図示のその他の部材(通信部など)を備えていてもよい。
記憶部11は、シミュレーション装置19が使用するプログラムおよびデータを保持する。記憶部11に記憶されているデータは、一例として、下水管路網データ30(網構造に関するデータ)、送水所要時間データ31(所要時間を示すデータ)、ポンプ性能データ32(送水性能に関するデータ)、時刻別流入量データ33(時刻別流入量に関するデータ)、設定水位データ34、および、模擬結果データ35などである。これらの各データのデータ構造については後述する。
入力部12は、ユーザの入力操作を受け付け、該入力操作に基づく入力信号を制御部10へ出力する。入力部12としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、マイク、リモートコントローラなどが想定される。
出力部13は、制御部10が生成した情報に基づく出力信号を、ユーザが知覚可能なように出力して、該情報をユーザに提示する。出力部13としては、例えば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、LED表示器などが想定される。
制御部10は、シミュレーション装置19の各部の動作を統括的に制御する。制御部10は、一例として、プロセッサおよびメモリにより実現される。この例において、プロセッサは、ストレージ(例えば、記憶部11)にアクセスし、ストレージに格納されているプログラム(不図示)をメモリにロードし、該プログラムに含まれる一連の命令を実行する。これにより、制御部10に含まれる後述の各ブロックが実現される。
例えば、制御部10は、上述の各ブロックとして、モデル生成部20、情報取得部21、模擬実行部22(実行部)、算出部23、選択部24および出力制御部25を含む。
モデル生成部20は、下水管路網200に属するマンホールポンプ場100に関する実測値および仕様情報に対して様々な統計的処理を実施して、マンホールポンプ場100に関わる様々な事象をモデル化する。
本実施形態では、一例として、モデル生成部20は、マンホールポンプ場100に設置されている水中ポンプ1の仕様情報と稼動実績情報とを解析して、水中ポンプ1ごとの、送水性能に関するデータ(以下、ポンプ性能データ32)を生成してもよい。ポンプ性能データ32は、マンホールポンプ場100において水中ポンプ1が圧送する送水量Qと、送水量Qを圧送するために水中ポンプ1が稼動した場合に発生する、吐出圧力を示す全揚程Hまたは消費電流Iとの関係を示す情報(ポンプによる下水の送水量に関するデータ)である。
モデル生成部20は、仕様情報および工場試験データなどに基づいて、水中ポンプ1ごとに、送水量Qと全揚程Hおよび消費電流Iの関係を導出する。
本実施形態では、さらに、モデル生成部20は、各マンホールポンプ場100の制御盤8から集約した長期間(例えば、過去1年間分)の稼動実績情報を解析する。そして、モデル生成部20は、マンホール2ごとの、流入する下水の時刻別流入量に関するデータ(以下、時刻別流入量データ33)を生成してもよい。時刻別流入量データ33は、1日のうちのどの時間帯にどのくらいの下水がマンホール2に流入するのかを示すデータであり、マンホールポンプ場100ごとに生成される。
情報取得部21は、模擬実行部22が下水管路網200の態様を模擬するにあたって、必要な初期設定値または条件などを取得し、模擬実行部22に引き渡す。例えば、ユーザは、入力部12を操作して、シミュレーションの開始時の各マンホール2のマンホール水位PWLの初期値を入力する。情報取得部21は、入力部12から伝達された入力信号を、各マンホール2のマンホール水位PWLの初期値として取得し、模擬実行部22に渡す。あるいは、ユーザは、入力部12を操作して、シミュレーション装置19に対して、下水管路網200の態様を模擬させる期間(以下、模擬期間)を指定する。模擬期間は、例えば、ユーザが、模擬開始時刻(または模擬開始日時)と模擬終了時刻(または模擬終了日時)とを指定することにより特定される。情報取得部21は、入力部12から伝達された入力信号を、模擬開始時刻および模擬終了時刻として取得し、模擬実行部22に渡す。
さらに、ユーザは、入力部12を操作して、設定水位データ34を作成することが可能である。設定水位データ34は、下水管路網200に属する水中ポンプ1ごとに、設定可能な停止水位LWLと運転水位HWLとの設定水位対のパターンを示す情報である。ユーザは、例えば、設定水位データ34の生成に必要な、停止水位LWLおよび運転水位HWLそれぞれの設定可能範囲(以下、レンジ)と、停止水位LWLおよび運転水位HWLそれぞれを何m刻みで変更して模擬するのか(段階数)とを指定することができる。具体例を挙げると、ユーザは、運転水位HWLを3~5mの範囲にて0.1m刻みで変更しながら模擬運転処理が実行されるように、シミュレーション装置19に対して指定することができる。情報取得部21は、入力部12から伝達された入力信号に基づくレンジおよび段階数を取得し、これらに基づいて生成された設定水位データ34を、模擬実行部22が参照できるように記憶部11に記憶してもよい。
さらに、情報取得部21は、模擬実行部22が指定された模擬期間における下水管路網200の態様を模擬する際に必要となる様々な入力データを記憶部11から読み出し、模擬実行部22が読み取り可能なように不図示のメモリに展開する。入力データは、例えば、下水管路網データ30、送水所要時間データ31、ポンプ性能データ32および時刻別流入量データ33などである。
模擬実行部22は、情報取得部21が取得した各種の入力データに基づいて、指定された模擬期間における下水管路網200の態様を模擬する模擬運転処理を実行する。具体的には、模擬実行部22は、1回の模擬運転処理につき、指定された模擬期間内で時刻を時々刻々と異ならせながら、該時刻ごとに、模擬運転を繰り返し実行する。模擬運転とは、1つの時刻において、下水管路網200の各マンホールポンプ場100に設置されている水中ポンプ1の想定される振る舞いと、下水管路網200内を流れる下水の想定される振る舞いとを決定することである。模擬実行部22は、経過する時刻ごとの模擬運転の結果を模擬期間分蓄積した模擬結果データ35を生成し、これを1回の模擬運転処理による出力データとして記憶部11に保存する。
模擬実行部22は、設定水位データ34に示される条件のすべての組み合わせ(パターン)を網羅するべく、条件を変えながら上述の模擬運転処理を繰り返し実行し、パターンごとに模擬結果データ35を出力する。
本実施形態では、変更される条件は、下水管路網200の各水中ポンプ1に設定されている設定水位対である。模擬実行部22は、下水管路網200において水中ポンプ1に対して設定し得る、運転水位HWLと停止水位LWLとの対のパターンごとに、該水位が設定された場合の下水管路網200の態様を模擬する。そして、模擬実行部22は、指定された模擬期間の模擬結果データ35を出力する。模擬結果データ35のデータ構造は後に詳述するが、模擬結果データ35は、例えば、模擬期間の時刻ごとの、マンホールポンプ場100の態様を示す時刻別且つポンプ別評価情報を含む。
算出部23は、模擬実行部22によって出力された模擬結果データ35に含まれる時刻別且つポンプ別評価情報を統計的に処理して、1回の模擬運転ごとの運転評価値を算出したり、模擬期間内の模擬運転ごとの運転評価値を積算した評価積算値を算出したりする。算出部23によって算出された運転評価値または評価積算値は、模擬結果データ35に追加される。
算出部23によって算出される評価積算値は、例えば、模擬期間において下水管路網200内の全ての水中ポンプ1によって消費されたエネルギーと相関のある総消費電流を含んでいてもよい。あるいは、評価積算値は、模擬期間において各マンホール2のマンホール水位PWLが上限水位HHWLを超過した総時間または総量を含んでいてもよい。超過した総量は、例えば、時刻ごとの、マンホール水位PWLが上限水位HHWLを超過した高さ(m)を全マンホール2分、および、全模擬期間分合計することにより得られる。超過した総量(m)を、以下では、溢水危険度と称する。
選択部24は、模擬運転処理ごとに算出された評価積算値に基づいて、良好な模擬結果データ35を選択する。そして、選択した模擬結果データ35が得られたときの模擬運転処理における設定水位対のパターンを最適解として決定する。選択部24は、良好と判断した模擬結果データ35およびその模擬の条件である設定水位対に対して最適解であることを示すラベルを付与してもよい。
選択部24は、最良の模擬結果データ35を1つ選択することに限らず、様々な観点から別の模擬結果データ35を、1または複数個選択するように構成されてもよい。例えば、選択部24は、水中ポンプ1の総消費電流が最大または最小となる模擬結果データ35を選択し、「総消費電流最大」または「総消費電流最小」などのラベルを付与してもよい。あるいは、選択部24は、マンホール2の溢水危険度が最大または最小となる模擬結果データ35を選択し、「溢水危険度最大」または「溢水危険度最小」などのラベルを付与してもよい。あるいは、選択部24は、総消費電流と溢水危険度とが比較的バランスよく小さな値をとる、複数個の模擬結果データ35を選択し、「最適候補」などのラベルを付与してもよい。
出力制御部25は、算出部23によって算出された評価積算値が得られたときの模擬運転処理に用いられた設定水位対のパターンを出力部13に出力する。例えば、出力制御部25は、「最適候補」のラベルが付与された模擬結果データ35を、該模擬結果データ35が得られたときの模擬運転処理に用いられた設定水位対のパターンとともに、ディスプレイに表示する。このようにすれば、評価積算値が良好なときの運転水位および停止水位の組をユーザが把握することができる。
選択部24は、年間使用水量が少ない地域または使用水量が相対的に少ない季節の下水管路網200における模擬をしたとき、消費エネルギーの抑制の観点から、低い総消費電流が得られたときの設定水位対のパターンを、最適候補として選択してもよい。
一方、選択部24は、年間使用水量が多い地域または使用水量が相対的に多い季節の下水管路網200における模擬をしたとき、溢水危険度の抑制の観点から、低い溢水危険度が得られたときの設定水位対のパターンを、最適候補として選択してもよい。
出力制御部25は、選択部24によって付与された「消費エネルギー優先最適候補」、または、「溢水危険度優先最適候補」などのラベルとともに、設定水位対のパターンをディスプレイに表示させることができる。
このようにすれば、ユーザは、消費電力を抑制したいのか、溢水危険度を抑制したいのかなどの目的に応じた最適な運転水位および停止水位の組を把握することができる。
<ポンプ性能のモデル化>
図4は、モデル生成部20が、水中ポンプ1のポンプ性能をモデル化した近似式の一例を示す図である。式1は、水中ポンプ1における全揚程Hと送水量Qとの関係を示す。式2は、水中ポンプ1における消費電流Iと送水量Qとの関係を示す。
式1において、H0は、送水量Qが0mであるときの全揚程Hを表す。H0は、マンホールポンプ場100における水中ポンプ1の設置態様と、水中ポンプ1の仕様とに基づいて予め求まる値である。
式1および式2において、Qmaxは、水中ポンプ1が達成し得る最大送水量を表す。Qmaxは、マンホールポンプ場100における水中ポンプ1の設置態様と、水中ポンプ1の仕様とに基づいて予め求まる値である。
式2において、I0は、送水量Qが0mであるときの水中ポンプ1の消費電流Iを表す。I0は、マンホールポンプ場100における水中ポンプ1の設置態様と、水中ポンプ1の仕様とに基づいて予め求まる値である。
式2において、Imaxは、送水量Qが最大送水量Qmaxであるときの水中ポンプ1の消費電流Iを表す。Imaxは、マンホールポンプ場100における水中ポンプ1の設置態様と、水中ポンプ1の仕様とに基づいて予め求まる値である。
モデル生成部20は、一例として、水中ポンプ1の工場試験データを代入し、送水量Qごとの全揚程Hおよび消費電流Iを算出可能な、式1および式2の形で表される近似式を生成する。
図5は、モデル生成部20が、下水管路網200内のある1つの水中ポンプ1について、図4に示す近似式を用いて生成したポンプ性能データ32の具体例を示す図である。ポンプ性能データ32は、上述のとおり、水中ポンプ1が圧送する送水量Qと、送水量Qを圧送するために水中ポンプ1が稼動した場合に発生する全揚程Hおよび消費電流Iとの関係を示す情報である。図5に示すとおり、モデル生成部20は、ポンプ性能データ32を、ポンプ性能テーブル130として生成してもよいし、ポンプ性能グラフ131として生成してもよい。
モデル生成部20は、1つの水中ポンプ1につき、送水量Qと、全揚程Hおよび消費電流Iとの関係を示すポンプ性能データ32を生成し、ポンプ性能をモデル化する。
モデル生成部20は、下水管路網200の全マンホールポンプ場100に配備されているすべての水中ポンプ1ごとに、図5に示すポンプ性能データ32を生成する。
<時刻別流入量のモデル化>
モデル生成部20は、マンホール2が設置されているマンホールポンプ場100の制御盤8から収集された稼動実績情報を用いて、マンホール2の時刻別流入量データ33を生成する。一例として、稼動実績情報は、マンホール2への所定時間当たりの流入量の1日分の時系列データである。モデル生成部20は、例えば、マンホール2に関して、過去1年間分の上述の時系列データを取得し、これらの時系列データを統計的に処理することにより、マンホール2の時刻別流入量データ33を生成する。
上述の時系列データには、該時系列データが観測された日付に基づいて、季節、月、天気、曜日、および、平日か休日(祝日)かの区分などのメタ情報が付加されていてもよい。そこで、モデル生成部20は、1つのマンホール2につき、時刻別流入量データ33を、季節、月、天気、曜日、または、平日か休日(祝日)かの区分ごとに生成してもよい。
例えば、モデル生成部20は、マンホール2における、天気が雨の日の時刻別流入量データ33を生成するとき、過去1年間分の時系列データのうち、天気が雨の日の時系列データだけを抽出する。そして、モデル生成部20は、抽出した雨の日の時系列データに基づいて、マンホール2の雨の日における時刻別流入量データ33を生成する。あるいは、モデル生成部20は、時刻別流入量データ33を、所定季節の流入量の時系列データ、または、所定曜日の流入量の時系列データに基づき生成してもよい。
マンホール2に流入する下水の流入量の傾向は、季節、月、天気、曜日、および、平日か休日(祝日)かの区分などに応じて変わる。上述の構成によれば、特定の季節、月、天気、曜日、または、平日か休日(祝日)かの区分における時刻別流入量データ33を、模擬の入力データとして用いることができる。そのため、季節、月、天気、曜日、または、平日か休日(祝日)かの区分に応じて、下水管路網200の態様をより高精度に模擬することができる。
図6は、モデル生成部20が、マンホールポンプ場100のマンホール2に流入する下水の時刻別流入量をモデル化した関数の一例を示す図である。
本実施形態では、一例として、モデル生成部20は、式3に示すとおり、マンホール2への下水の流入量に関するモデルを、時間変動する平均と標準偏差を持つ正規分布で近似することにより得る。式3において、μ(t)は、時刻tにおける流入量の平均を示し、σ2(t)は、時刻tにおける流入量の分散を示し、N(μ、σ2)は、平均μ、分散σ2の正規分布を示す。
モデル生成部20は、時刻tにおける流入量の平均μ(t)を、式4に基づいて求める。式4において、平均μ(t)の時間変動は、サイン関数を含んだ式で表され、Aμは、サイン関数の振幅を示し、ωμは、サイン関数の角周波数を示し、Tμは、サイン関数の初期位相を示し、A0μは、定数項を示す。
モデル生成部20は、時刻tにおける流入量の標準偏差σ(t)を、式5に基づいて求める。式5において、標準偏差σ(t)の時間変動は、サイン関数を含んだ式で表され、Aσは、サイン関数の振幅を示し、ωσは、サイン関数の角周波数を示し、Tσは、サイン関数の初期位相を示し、A0σは、定数項を示す。
図7は、図1に示す時刻別流入量データ33の具体例を示す図である。時刻別流入量データ33は、モデル生成部20によって、下水管路網200内のマンホール2ごとに、図6に示す関数に基づいて生成される。時刻別流入量データ33は、上述のとおり、1日のうちのどの時間帯にどのくらいの下水がマンホール2に流入するのかを示す情報である。図7に示すとおり、モデル生成部20は、時刻別流入量データ33を、時刻別流入テーブル140として生成してもよいし、時刻別流入グラフ141として生成してもよい。
モデル生成部20は、下水管路網200に属するすべてのマンホール2ごとに、稼動実績情報である時系列データに基づいて、時刻別流入量データ33を、図7に示す時刻別流入テーブル140または時刻別流入グラフ141のように生成する。
本実施形態では、一例として、所定時間当たりのマンホール2への流水量の時系列データは、上流の水中ポンプ1の圧力に依存せずに、該当するマンホール2に流入する流入水IFAと、上流の水中ポンプ1から送出されて、該当するマンホール2に流入する流入水IFBとに分けて生成される。そこで、本実施形態では、モデル生成部20は、流入水IFAの時系列データに基づいて、マンホール2ごとの時刻別流入量データ33を生成してもよい。このように、マンホール2ごとの時刻別流入量のモデル化を流入水IFAについてのみ行うことにより、下水管路網200の模擬をより正確に行うことができる。
また、モデル生成部20は、流入水IFAと流入水IFBとに分けて生成された時系列データに基づいて、送水所要時間データ31を生成することもできる。
このように、過去の実績に基づいてモデル化された時刻別流入量データ33を用いることにより、模擬実行部22は、各マンホール2に流入する下水の流入量を正確に模擬することができるので、下水管路網200の態様をより一層精度よく模擬することができる。
上述のとおり、本実施形態では、一例として、モデル生成部20は、式4および式5を用いて、流入量の平均および標準偏差の時間変動をサインカーブとして得ることにより、時刻別流入量をモデル化している。別の例では、モデル生成部20は、マンホールポンプ場100の制御盤8から収集された流入量の時系列データを統計的に分析して、図8に示すような変動データを生成し、これを、時刻別流入量データ33として模擬実行部22に引き渡してもよい。
図8は、時刻別流入量データ33の他の具体例である変動データを示す図である。変動データの縦軸は、流入量を示し、横軸は、該流入量が発生した時刻を示す。変動データにおいて、流入量は、該当時刻から30分間にマンホール2に流入した下水の量をマンホール水位PWLの積算増加量(m)で表されている。
変動データにおける中央の実線の折れ線は、過去1年間分の時系列データにおいて、該当時刻の流入量の平均値を示す。変動データにおける上の破線の折れ線は、過去1年間分の時系列データにおいて、該当時刻の流入量の平均値に標準偏差を加えた値を示し、下の破線の折れ線は、該平均値から該標準偏差を減じた値を示す。
図8に示す変動データにおいても、模擬実行部22は、1日のうちのどの時間帯にどのくらいの下水がマンホール2に流入するのかを把握することができる。
<処理フロー>
図9は、シミュレーション装置19の処理の流れを示すフローチャートである。図9に示す一連の処理のうち、ステップS108~S117が、模擬実行部22が実行する1回の模擬運転処理に該当する。ステップS111が、1回の模擬運転処理の中で、時刻を変えて繰り返し実行される模擬運転に該当する。
ステップS101では、情報取得部21は、模擬実行部22に模擬させたい下水管路網200の網構造を示す下水管路網データ30を取得する。
ステップS102では、情報取得部21は、下水管路網データ30において、ノード間をつなぐリンクごとに、該リンクに対応付けられている送水所要時間データ31を取得する。
ステップS103では、情報取得部21は、下水管路網200に配備されているすべての水中ポンプ1ごとに、該水中ポンプ1のポンプ性能データ32を取得する。
ステップS104では、情報取得部21は、下水管路網200に属するすべてのマンホール2ごとに、該マンホール2の時刻別流入量データ33を取得する。
ステップS105では、情報取得部21は、下水管路網200に属するすべてのマンホール2ごとに、該マンホール2の初期水位を取得する。初期水位とは、模擬実行部22が模擬を開始するときに最初に想定されている各マンホール2のマンホール水位PWLを意味する。初期水位は、例えば、ユーザが入力部12を操作して各マンホール2の初期水位を指定することにより得られる。
ステップS106では、情報取得部21は、模擬期間を取得する。模擬期間とは、模擬実行部22に実行させる模擬運転処理において模擬の対象となる時間帯を意味する。模擬期間は、例えば、ユーザが入力部12を操作して模擬開始日時と模擬終了日時とを指定することにより得られる。例えば、ユーザが、模擬開始日時を「(当年)4月1日00:000」、模擬終了日時を「(翌年)3月31日24:00」と指定した場合には、模擬実行部22は、4月1日00:00~3月31日24:00の期間を模擬の対象とし、該期間の中で日付および時刻を変えながら模擬運転を繰り返し、模擬運転処理を実行する。
他の例では、情報取得部21は、ステップS107に先だって、さらに、設定水位対のレンジおよび段階数を、ユーザの入力部12に対する操作に伴って取得してもよい。
ステップS107では、模擬実行部22は、パターン番号を初期化する。パターン番号とは、1回の模擬運転処理につき一意に付与される識別情報である。模擬運転処理は、下水管路網200の各水中ポンプ1に設定し得る、設定水位対の組み合わせパターンの総数分繰り返される。したがって、パターン番号Nは、一例として、初期値がN=0とすると、0から(パターン総数-1)の整数の値をとる。
具体的には、設定水位対のパターン総数は、{(選択可能な運転水位の段階数)×(選択可能な停止水位の段階数)}^(下水管路網200内の水中ポンプ1の台数)で求められる。例えば、水中ポンプ1の運転水位が3つの段階の中から選択して設定可能であり、水中ポンプ1の停止水位が3つの段階の中から選択して設定可能であり、下水管路網200内の水中ポンプ1が5台あるとする。この場合、模擬運転処理を実行すべきパターン総数は、(3×3)^5=59049通りとなる。一例として、模擬実行部22は、パターン番号Nを初期化し(N←0)、パターン番号Nが取り得る値を、0~59048の整数と決定する。
記憶部11には、下水管路網200内の各水中ポンプ1に対して設定できる運転水位および停止水位の各段階の情報が、水中ポンプ1の仕様情報として記憶されている。模擬実行部22は、水中ポンプ1の仕様情報と、下水管路網200の水中ポンプ1の台数とに基づいて、下水管路網200において採用し得る、設定水位対のすべてのパターンを網羅した設定水位データ34を生成し、記憶部11に記憶する。上述の例では、模擬実行部22は、全59049通りの設定水位対のパターンを含む設定水位データ34を生成する。
ステップS108では、模擬実行部22は、これから開始する模擬運転処理で使用する設定水位対を水中ポンプ1ごとに設定する。本実施形態では、各水中ポンプ1の設定水位対のパターンを示す設定水位パターン情報を設定水位データ34から取得する。1の模擬運転処理で使用する1つの設定水位対パターン情報は、例えば、下水管路網200に含まれる5台の水中ポンプ1のそれぞれの、運転水位HWLと停止水位LWLとの設定水位対を含む。設定水位パターン情報は、さらに、水中ポンプ1が設置されているマンホールポンプ場100ごとに設定されている上限水位HHWLを含んでいてもよい。
ステップS109では、模擬実行部22は、時刻Tを初期化する。時刻Tの初期値は、S106で取得された模擬開始時刻である。模擬実行部22は、一例として、時刻Tが取り得る値を、模擬開始時刻から模擬終了時刻までの1分刻みの時刻と決定する。
ステップS110では、模擬実行部22は、後述のS111の模擬運転の対象となる注目ポンプを設定する。
ステップS111では、模擬実行部22は、S110で設定した注目ポンプにつき模擬運転を実行する。模擬運転とは、注目ポンプの時刻Tにおける振る舞いを模擬するとともに、その模擬的な運転の前後における、該注目ポンプが設定されているマンホール2の下水の振る舞いを模擬することである。模擬運転の詳細については、別図を参照して後述する。
ステップS112では、模擬実行部22は、下水管路網200内のすべての水中ポンプ1について、模擬運転を実行したか否かを判断する。模擬実行部22は、すべての注目ポンプについて模擬運転が完了していない場合は、S112のNOからS110に戻り、次の水中ポンプ1を注目ポンプに設定して、S111の模擬運転を実行する。模擬実行部22は、時刻Tにつき、すべての注目ポンプについて模擬運転が完了した場合、S112のYESからS113に進む。
ステップS113では、算出部23は、模擬実行部22によって実行された時刻Tにおける水中ポンプ1ごとの模擬運転の結果に基づいて、運転評価値を算出する。例えば、S111では、1回の模擬運転につき、時刻Tにおける、ある1つの水中ポンプ1の模擬運転の結果である、時刻別且つポンプ別評価情報が出力される。算出部23は、時刻Tにおける、それぞれの水中ポンプ1の時刻別且つポンプ別評価情報を統計的に処理して、時刻Tにおける全ポンプの総合評価結果である運転評価値を算出する。
ステップS114では、模擬実行部22は、すべての模擬期間において各水中ポンプ1の模擬運転を完了させたか否かを判断する。すなわち、時刻Tが模擬終了時刻(または模擬終了日時)に到達しているか否かを判断する。模擬運転が未実行の時刻が残っている場合、模擬実行部22は、ステップS114のNOからS115に進む。模擬期間のすべての時刻について模擬運転が完了している場合、模擬実行部22は、ステップS114のYESからS116に進む。
ステップS115では、模擬実行部22は、時刻を1分進めて、すなわち、TにT+1を代入して(時刻T←T+1min)、S110に戻り、水中ポンプ1ごとの模擬運転を繰り返す。
ステップS116では、算出部23は、模擬期間に属する時刻ごとの運転評価値を積算して評価積算値を算出する。評価積算値は、1回の模擬運転処理の結果を示す情報である。
ステップS117では、算出部23は、算出した評価積算値を、上述の模擬運転処理につき一意に付与されたパターン番号と関連付けて、記憶部11に保存する。本実施形態では、評価積算値は、1回の模擬運転処理につき生成される模擬結果データ35に追加される。
ステップS118では、模擬実行部22は、すべての設定水位対のパターンについて模擬運転処理を完了させたか否かを判断する。すなわち、模擬実行部22は、パターン番号が、S107で決定した最終の値(例えば、「59048」)に到達したか否かを判断する。すべてのパターンについて模擬運転処理が完了していない場合には、模擬実行部22は、S118のNOからS119に進む。すべてのパターンについて模擬運転処理が完了している場合、模擬実行部22は、ステップS118のYESに進み、一連の処理を終了する。
ステップS119では、模擬実行部22は、パターン番号を1つインクリメントし、S108に戻り、別の設定水位対のパターンにて、模擬運転処理を繰り返す。
なお、S118のYESの後、図示していないが、選択部24が最適候補となる設定水位対のパターンを選択するステップ、および、出力制御部25が模擬結果データ35を出力部13に出力するステップなどが実行されてもよい。
<模擬運転のフロー>
図10は、模擬実行部22が実行する模擬運転の処理の流れを示すフローチャートである。図10に示す一連の処理は、ある時刻Tにつき、1つの注目ポンプについて実行される、S111の模擬運転1回分に対応する。
ステップS201では、模擬実行部22は、注目ポンプが設置されているマンホール2(以下、注目マンホール2)へ流入する下水の、時刻Tにおける現流入量を、該マンホール2の時刻別流入量データ33に基づいて算出する。一例として、模擬実行部22は、図7に示す時刻別流入テーブル140または時刻別流入グラフ141に示す平均値と標準偏差を持つ正規分布に従う乱数によって、現流入量を算出する。
ステップS202では、模擬実行部22は、注目マンホール2の上流に設置されているマンホール2がある場合には、その上流のマンホール2内の水中ポンプ1から送出される下水の量(以下、送水量)を、上述の現流入量に加算する。例えば、注目マンホール2が、図2に示す第4マンホールポンプ場のマンホール2であるとする。この場合、模擬実行部22は、送水所要時間データ31に基づいて、上流の第2マンホールポンプ場の水中ポンプ1から時刻T-3(分)において圧送された送水量を、時刻Tにおける注目マンホール2への現流入量に加算する。さらに、模擬実行部22は、上流の第1マンホールポンプ場の水中ポンプ1から時刻T-2(分)において圧送された送水量を、時刻Tにおける注目マンホール2への現流入量に加算する。なお、注目マンホール2より上流にマンホールポンプ場100がない場合には、このステップは省略される。
ステップS203では、模擬実行部22は、時刻Tの1つ前の時刻T-1における注目マンホール2のマンホール水位PWLと、S201~S202で算出した現流入量とに基づいて、時刻Tにおける注目マンホール2のマンホール水位PWLを算出する。なお、時刻TがS109で定めた初期値である場合には、模擬実行部22は、時刻Tにおける注目マンホール2のマンホール水位PWLを、S105で取得された初期水位とする。
ステップS204では、模擬実行部22は、時刻T-1における注目ポンプの状態が、「停止」であるか「運転」であるかを判定する。なお、時刻Tが上述の初期値である場合には、模擬実行部22は、ここでは、時刻T-1における注目ポンプの状態を「停止」と判定してもよい。模擬実行部22は、時刻T-1における注目ポンプの状態を「停止」と判定した場合、S204の「1」からS205に進む。模擬実行部22は、時刻T-1における注目ポンプの状態を「運転」と判定した場合、S204の「2」からS214に進む。
ステップS205では、模擬実行部22は、S203で算出したマンホール水位PWLが、運転水位HWLを上回っているか否かを判定する。ここで比較に用いられる運転水位HWLは、S108で取得された設定水位対パターン情報のうち、注目ポンプに対応付けられている運転水位HWLである。マンホール水位PWLが、運転水位HWLを上回る場合、模擬実行部22は、S205のYESからS206に進む。マンホール水位PWLが、運転水位HWL以下である場合、模擬実行部22は、S205のNOからS212に進む。
ステップS206では、模擬実行部22は、時刻Tにおける注目ポンプの状態を模擬的に「運転」と決定する。ここで、模擬実行部22は、S204の「1」を経由してS206に到達したとする。この場合、模擬実行部22は、マンホール水位PWLが運転水位HWLを超えた注目マンホール2について、時刻T-1において「停止」の状態であった注目ポンプを、時刻Tでは模擬的に起動させて「運転」の状態に移行させたことになる。この場合、模擬実行部22は、注目ポンプの状態を、「停止」から「運転」へと切り替えた「起動」の回数をカウントしてもよい。具体的には、模擬実行部22は、時刻Tに関連付けて起動回数「1回」を記録してもよい。
ステップS207では、模擬実行部22は、注目ポンプのポンプ性能データ32に基づいて、時刻Tにおいて注目ポンプが圧送する送水量QTと、時刻Tにおいて注目ポンプが消費する消費電流ITとを算出する。模擬実行部22は、ポンプ性能データ32を参照し、時刻Tにおける全揚程Hに基づいて、送水量QTと、消費電流ITとを算出する。全揚程Hは、(1)注目マンホール2の構造と、(2)注目ポンプの仕様および設置態様と、(3)注目ポンプの吐出先となる下流の貯水槽における水位とに加えて、(4)注目マンホール2の時刻Tにおけるマンホール水位PWLを加味して、動的に求められる。なお、下流の貯水槽が、注目マンホール2よりも高い高度に位置している場合、(3)の下流の貯水槽における水位は、該貯水槽の底面の高度で一定であり、下流の貯水槽の設置態様として事前に模擬実行部22が把握していてもよい。
ステップS208では、模擬実行部22は、S203で算出したマンホール水位PWLから、上述の送水量QTを減じて、時刻Tにおける注目マンホール2のマンホール水位PWLを更新する。
ステップS209では、模擬実行部22は、更新後のマンホール水位PWLが上限水位を上回っているか否かを判定する。ここで比較に用いられる上限水位HHWLは、S108で取得された設定水位対パターン情報のうち、注目ポンプに対応付けられている上限水位HHWLである。マンホール水位PWLが、上限水位HHWLを上回る場合、模擬実行部22は、S209のYESからS210に進む。マンホール水位PWLが、上限水位HHWL以下である場合、模擬実行部22は、S210を省略して、S209のNOからS211に進む。
ステップS210では、模擬実行部22は、更新後のマンホール水位PWLから上限水位HHWLを減じて、時刻Tにおける超過水位を算出する。
ステップS211では、模擬実行部22は、時刻Tにおける注目ポンプの模擬運転の結果を出力する。一例として、模擬実行部22は、時刻別且つポンプ別評価情報を出力する。時刻別且つポンプ別評価情報のデータ構造は後に詳述する。時刻別且つポンプ別評価情報は、S206またはS212で決定した注目ポンプの状態、S207またはS213で決定した送水量QTおよび消費電流IT、S203またはS208で決定したマンホール水位PWL、S210で決定した超過水位、などを含む。
ステップS212では、模擬実行部22は、時刻Tにおける注目ポンプの状態を模擬的に「停止」と決定する。ここで、模擬実行部22は、S204の「1」を経由してS212に到達したとする。この場合には、模擬実行部22は、マンホール水位PWLが運転水位HWLを下回っている注目マンホール2について、時刻T-1において「停止」の状態である注目ポンプの状態を、時刻Tにおいても維持することになる。
ステップS213では、模擬実行部22は、時刻Tにおいて注目ポンプが圧送する送水量QTと、時刻Tにおいて注目ポンプが消費する消費電流ITとを0と決定する。
S204で時刻T-1における注目ポンプの状態が「2:運転」と判定された場合、ステップS214では、模擬実行部22は、S203で算出したマンホール水位PWLが、停止水位LWLを下回っているか否かを判定する。ここで比較に用いられる運転水位HWLは、S108で取得された設定水位対パターン情報のうち、注目ポンプに対応付けられている停止水位LWLである。マンホール水位PWLが、停止水位LWLを下回る場合、模擬実行部22は、S214のYESからS212に進む。マンホール水位PWLが、停止水位LWL以上である場合、模擬実行部22は、S214のNOからS206に進む。
ステップS212において、模擬実行部22は、S204の「2」を経由してS212に到達することが想定される。この場合には、マンホール2は、マンホール水位PWLが停止水位LWLを下回っているマンホール2について、時刻T-1において「運転」の状態であった注目ポンプを、時刻Tでは模擬的に停止させて「停止」の状態に移行させることになる。
ステップS206において、模擬実行部22は、S204の「2」を経由してS206に到達することが想定される。この場合には、模擬実行部22は、マンホール水位PWLが停止水位LWL以上である注目マンホール2について、時刻T-1において「運転」の状態である注目ポンプの状態を、時刻Tにおいても維持することになる。
<模擬結果データ>
図11は、模擬結果データ35のデータ構造の一例を示す図である。模擬結果データ35は、1回の模擬運転処理に一意に付与されるパターン番号に関連付けて、1回の模擬運転処理につき1つ生成される。
一例として、模擬結果データ35は、該当する模擬運転処理で使用された設定水位パターン情報61と、模擬運転結果テーブル62と、運転評価値63と、ポンプ別劣化評価値64と、評価積算値65とを含む。
設定水位パターン情報61は、該当する模擬運転処理のS108で設定水位データ34から取得されたものである。設定水位パターン情報61は、下水管路網200に含まれる5台の水中ポンプ1のそれぞれの、運転水位HWLと停止水位LWLとの設定水位対を含む。
模擬運転結果テーブル62は、該当する模擬運転処理の中で、時刻ごとおよび水中ポンプ1ごとに複数回実行された模擬運転の結果の一覧を示す。模擬運転結果テーブル62は、1回の模擬運転につき1つ生成される時刻別且つポンプ別評価情報66の集合で構成される。各時刻別且つポンプ別評価情報66は、該当する模擬運転において模擬対象であった時刻Tと注目ポンプのポンプ名とに対応付けて格納される。時刻別且つポンプ別評価情報66は、上述したとおり、一例として、時刻Tにおける注目ポンプの状態(停止か運転か)と、送水量QT(m)と、消費電流IT(A)と、注目マンホール2のマンホール水位PWLと、超過水位(m)とを含む。
運転評価値63は、模擬期間中のある時刻におけるすべての水中ポンプ1の総合的な評価値を示す。算出部23は、同じ時刻についての、水中ポンプ1ごとの時刻別且つポンプ別評価情報66を統計的に処理し、該時刻における下水管路網200の総合的な評価値として運転評価値63を算出する。
運転評価値63は、一例として、下水管路網200内の全水中ポンプ1が、ある時刻において消費した消費電流の合計(エネルギーの消費量の総和)である。算出部23は、例えば、時刻T1における、各水中ポンプ1の消費電流を合算し、時刻T1における5台すべての水中ポンプ1によって消費された消費電流の合計(A)を、時刻T1の運転評価値63として出力する。
あるいは、運転評価値63は、下水管路網200内のマンホール2において発生した異常高水位時における超過水位の合計である。算出部23は、例えば、時刻T1において、注目マンホール2ごとに算出された超過水位を合算し、時刻Tにおける5つのすべてのマンホール2で発生した総超過水位(溢水危険度の総和)を、時刻T1の運転評価値63として出力する。
さらに、算出部23は、運転評価値として、水中ポンプ1の各々の運転回数の総和を算出してもよい。このような構成によれば、下水管路網200内の全ての水中ポンプ1の運転回数の総和が運転評価値として算出される。よって、各パターンの模擬運転処理について、運転回数の総和である運転評価値が積算された評価積算値が得られる。したがって、例えば、評価積算値が最小となる模擬運転処理が特定されれば、それはつまり、下水管路網200内の全ての水中ポンプ1の運転回数が最小となる(つまり、ポンプが劣化しにくい)模擬運転処理が特定されることとなる。
本実施形態では、一例として、算出部23は、水中ポンプ1の運転回数を示すポンプ別劣化評価値64(運転回数の総和)を運転評価値として算出する。具体的には、算出部23は、水中ポンプ1が「停止」から「運転」へと状態が切り替えられた回数、すなわち、起動回数をカウントしてもよいし、水中ポンプ1が模擬期間において「運転」の状態にあった時間の長さをカウントしてもよい。
ポンプ別劣化評価値64は、一例として、模擬期間における水中ポンプ1ごとの起動回数と運転時間とを含む。起動回数は、水中ポンプ1が「停止」から「運転」へと状態が切り替えられた回数を指し、運転時間は、「運転」の状態にあった時間の長さを指す。
ポンプの起動時間間隔が短い、つまり、頻繁に「起動」が起こる場合には、頻繁な起動による消費電力量の上昇と、ポンプの電動機の発熱をもたらし、電動機、つまりポンプの寿命を損なう虞がある。そこで、起動回数をカウントすることにより、模擬運転処理における、ポンプの劣化速度を評価することができる。また、ポンプの運転時間が長いほど、ポンプの各部材の消耗が激しくなるため、ポンプの寿命を損なう虞がある、そこで、運転時間をカウントすることにより、模擬運転処理における、ポンプの劣化速度を評価することができる。
評価積算値65は、1回の模擬運転処理を評価する値を示す。評価積算値65は、時刻ごとに算出された運転評価値63、または、水中ポンプ1ごとに算出されたポンプ別劣化評価値64を統計的に処理することによって得られる。一例として、評価積算値65は、総消費電流、溢水危険度、または、劣化評価積算値であってもよい。
具体的には、算出部23は、時刻ごとに算出した運転評価値63としての消費電流を合計して、該当する模擬運転処理における総消費電流を評価積算値65として算出する。あるいは、算出部23は、運転評価値63として時刻ごとに算出された総超過水位を合計して、該当する模擬運転処理における溢水危険度を評価積算値65として算出する。あるいは、算出部23は、運転評価値として、ポンプごとに算出されたポンプ別劣化評価値64を合計して、該当する模擬運転処理における劣化評価積算値を評価積算値65として算出する。劣化評価積算値は、水中ポンプ1ごとの起動回数を合計した、総起動回数(図示の例では「10回」)であってもよいし、水中ポンプ1ごとの運転時間を合計した、総運転時間(図示の例では「41分」)であってもよい。
算出部23は、評価積算値65とは別に、運転評価値63またはポンプ別劣化評価値64の平均値を、1回の模擬運転処理を評価する値として出力してもよい。
なお、上述のとおり、模擬実行部22は、下水処理場101に直接接続されている、下水管路網200の最下流のマンホール2について、模擬運転ごとに、最下流のマンホール2(最後段の貯水設備)の送水量を算出している。
そこで、算出部23は、評価積算値65として、下水管路網200のゴールのノードである下水処理場101に対して、送水される流入水IFBの送水量の安定度を算出してもよい。
この構成によれば、模擬運転毎に、下水処理場への下水の流入量を算出するので、該流入量の経時変化を生成することができる。これにより、各模擬運転処理における、下水処理場への下水の流入量の経時変化に関する評価を行うことができる。
例えば、下水処理場101への送水量の安定度は、下水処理場101へ直接下水を送水する、上述の最下流のマンホール2に設置されている水中ポンプ1の時刻ごとの送水量Qに基づいて算出される。図2の例では、算出部23は、第5マンホールポンプ場100(最後段の貯水設備)に設置されている第5ポンプの時刻ごとの送水量Qに基づいて、安定度を算出する。
第5ポンプの送水量Qの変動が少なく、下水処理場101へ、常に一定の水量にて下水が送られていることが理想である。選択部24は、第5ポンプの送水量Qの変動が少なく安定度が高い模擬結果データ35を、良好な結果として選択することができる。
<出力例>
図12は、ユーザに模擬結果データ35を提示するための出力画面の一例を示す図である。出力制御部25は、1回の模擬運転処理につき、図12に示す4つのグラフを、模擬結果データ35として出力部13に出力してもよい。
第1のグラフ71は、模擬期間の時間の経過に伴って変動する、下水管路網200内の各マンホール2のマンホール水位PWLの変動を示すグラフである。横軸は、経過時間(分)を示し、縦軸は、マンホール水位(m)を示す。図2に示す例では、模擬期間が144分間である場合の各マンホール2のマンホール水位PWLが表されている。
図2に示す例では、下水管路網200内に、マンホール2は5つある。そこで、出力制御部25は、5つのマンホール2の水位を、ユーザが区別して知覚できるように、各マンホール2の水位を対応する線の色または線種を異ならせて表示することが好ましい。出力制御部25は、ゴールの下水処理場101の貯水槽における水位の変動を、該第1のグラフに付加してもよい。
第2のグラフ72は、模擬期間の時間の経過に伴って変動する、下水管路網200内の各水中ポンプ1から圧送される下水の量、すなわち、送水量の変動を示すグラフである。横軸は、経過時間(分)を示し、縦軸は、各水中ポンプ1の送水量を示す。
第3のグラフ73は、模擬期間の時間の経過に伴って変動する、下水管路網200内の各水中ポンプ1によって消費されるエネルギー量、一例として、消費電流の変動を示すグラフである。横軸は、経過時間(分)を示し、縦軸は、各水中ポンプ1の消費電流を示す。
第4のグラフ74は、下水管路網200内の各マンホール2における、異常高水位の発生有無とそのときの超過水位を示すグラフである。横軸は、経過時間(分)を示し、縦軸は、マンホール水位PWLが上限水位HHWLを超過した場合における超過水位を示す。本実施形態では、模擬実行部22は、マンホール水位PWLが上限水位HHWLを超えない場合は、超過水位を0mと判定する。つまり、図示の例は、すべてのマンホール2および下水処理場101の貯水槽において、模擬期間において一度もマンホール水位PWLが上限水位HHWLを超えなかったことを示している。模擬期間のある時刻において異常高水位がいずれかのマンホール2で発生した場合は、該マンホール2に対応する色の線が、該時刻において0より上に描画される。
図13は、ユーザに模擬結果データ35を提示するための出力画面の他の例を示す図である。
選択部24は、模擬実行部22が出力した、すべての模擬運転処理の模擬結果データ35(例えば、上述の例では、59049通り分の模擬結果データ35)を分析し、所定の条件を満足する模擬結果データ35に対してラベルを付与してもよい。
例えば、選択部24は、59049個の模擬結果データ35から成る群のうち、総消費電流の評価積算値65が最も小さい模擬結果データ35に対して、「消費エネルギー最小」のラベルを付与してもよい。あるいは、選択部24は、上述の群のうち、溢水危険度の評価積算値65が最も小さい模擬結果データ35に対して、「溢水危険度最小」のラベルを付与してもよい。あるいは、選択部24は、上述の群のうち、(ポンプの)総起動回数の評価積算値65が最も小さい模擬結果データ35に対して、「ポンプ劣化最小」のラベルを付与してもよい。あるいは、選択部24は、上述の群のうち、総消費電流と溢水危険度とがバランスよく小さい値をとる良好な結果を示す模擬結果データ35に対して「最適候補」のラベルを付与してもよい。
さらに、選択部24は、模擬運転処理の結果が良好でなかった模擬結果データ35に対しても、ネガティブな評価のラベルを付与してもよい。
出力制御部25は、図13に示すとおり、模擬結果データ35、特に、評価積算値65を、選択部24によって付与されたラベルとともに、出力部13に出力する。このとき、出力制御部25は、算出部23が評価積算値65を算出したときの模擬運転処理に用いられた、ポンプごとの設定水位対を含む設定水位パターン情報を併せて出力することが好ましい。この構成によれば、評価積算値を算出したときの模擬運転処理に用いられたポンプごとの設定水位対が出力部13に出力される。そのため、例えば、ユーザは、評価積算値が良好なときの運転水位および停止水位の対を水中ポンプ1ごとに把握することができる。
図14は、ユーザに模擬結果データ35を提示するための出力画面の他の例を示す図である。図14に示すグラフにおいて、横軸は、消費エネルギー、具体的には、総消費電流を示し、縦軸は、溢水危険度を示す。
出力制御部25は、模擬結果データ35に含まれている、総消費電流の評価積算値65と、溢水危険度の評価積算値65とに基づいて、模擬運転処理1回分に相当する点を、図14に示すグラフにプロットする。例えば、上述の例では、模擬結果データ35は、59049通り分存在する。そこで、出力制御部25は、プロットを59049通り分繰り返し、上述のグラフを完成させる。
出力制御部25は、選択部24によって最適候補として選択された模擬運転処理に相当する点が、他の点よりも目立って強調表示されるように、該他の点とは異なる表示態様にて、最適候補の点を表示させてもよい。
〔変形例〕
模擬実行部22は、下水管路網200内に設置されているすべての水中ポンプ1が稼動していると仮定して、模擬運転処理において、すべての水中ポンプ1につき模擬運転を実行してもよい。あるいは、模擬実行部22は、下水管路網200内の一部の水中ポンプ1が故障していると仮定して、模擬運転処理において、一部の水中ポンプ1につき模擬運転を実行してもよい。
〔ソフトウェアによる実現例〕
シミュレーション装置19の制御ブロック(特に、情報取得部21、模擬実行部22、算出部23、選択部24、および、出力制御部25)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、シミュレーション装置19は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。