JP7291455B1 - 造波装置 - Google Patents
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Abstract
Description
さらに、特許文献1では、プールの底部全面に多数の噴出流発生部をマトリックス状に配置する必要があるため、その構造及び制御が複雑化して装置全体が大型化し、コスト高になるという問題があった。
本発明の実施形態に係る造波装置Aは、図1~図5に示すように、噴射された水流によって、自然波に近く、かつ、高低差のある立体的な斜面をもつ形状の人工波を作成する。利用者は、プール1内のこの立体的な斜面を持つ人工波に対して、水流に逆らってサーフィンを行えるようになる。
本発明の実施形態に係る造波装置Aは、水(プール水)が貯められるプール1などからなり、中壁2と突出部3を主要な構成要素として備えている。さらに、造波装置Aは、プール1内を流れる通水路4と、通水路4に水を給排水する給排水管5及び給排水機6と、を備えることが好ましい。
これに加えて造波装置Aは、図3に示されるようにプール1に回避水路7を設けることも可能である。
図1は、本発明の実施形態(第一実施形態)に係る造波装置Aの全体構成を示す説明図であり、図1(a)が作動前の平面図、図1(b)が図1(a)の(1B)-(1B)線に沿える作動時の縦断背面図である。
プール1は、側部11と底部12からなる水槽内のプール水に対して、利用者となるサーファーがサーフボードを浮かべてサーフィンが行える程度の大きさに形成されるとともに、サーフボードのフィンが接触しない所定高さの深さを有している。造波装置Aで行うことができるサーフィンの動作は、パドリング(水上を移動するために行う動作)、テイクオフ(波に乗って立ち上がる動作)、ライディング(波に乗っている状態)などである。造波装置Aは、これらを一連で行えるようにするため、特にライディング姿勢の練習のために人工波を発生させる。
プール1の構成材料としては、主にコンクリートや繊維強化プラスチック(FRP)などの硬質材料が用いられる。プール1の構成材料は、その他にポリ塩化ビニル系樹脂製のシートなどの軟質材料を用いることも可能である。
なお、プール1において手前側から見て前後の奥行方向を「X方向」といい、これと直交する左右の幅方向を以下「Y方向」といい、上下の高さ方向を以下「Z方向」という。
プール1の具体例として図1~図4に示される場合には、プール1の平面形状が矩形(長方形及び正方形を含む角が直角の四辺形)状に形成されている。好ましいプール1のサイズは、槽内の奥行方向(X方向)の寸法を約10m以上、槽内の幅方向(Y方向)の寸法が約17.5m以上である。第二側面11bにおける槽内の高さ方向(Z方向)の寸法は、プール1の両側が2.4m程度であり、中央部分が1.4m程度に斜めに設定することが好ましい。
また、プール1の形状及びサイズは、図示されたものに特定されず、図示例以外の形状や寸法などに変更することが可能である。
造波装置Aの一部を構成するプール1の側部11は、大きく分けて次の4つの側面を有する。
第一側面11aは、奥行き方向(X方向)に対向して幅方向(Y方向)へ略平行に延びる手前側の側面である。
第二側面11bは、奥側側面である。
第三側面11cと第四側面11dは、それぞれ幅方向に対向して奥行き方向へ略平行に延びる右側の側面と左側の側面である。
第一側面11aには、給水口11sと排水口11оを幅方向に間隔が空くように設けることが好ましい。図2の態様では採用されていないが後述するように、プール1の奥側は、第二側面11bを挟んで後述する回避水路7となっていることが好ましい。
給水口11sは、プール1の第一側面11aや底部12などに、奥行き方向(X方向)へ開口するように配置され、後述する給排水機6に連結して、プール1の底側から水面Wに向け斜め上方へ水や温水などのプール水を放出するように設定される。給水口11sから放出されるプール水は、プール1の底部12に沿った層流であることが好ましい。
排水口11оは、後述する変向部11tや突出部3よりも水流方向の下流側となるようにプール1の第一側面11aや第四側面11dなどに配置され、後述する給排水機6に連結され、プール1の内部からプール水をプール1の外部に排出する。
図2の造波装置Aは、足場81を備えている。図示されているように足場81はプール1の高さと同じ高さになっている。図2の造波装置Aは、足場81へと繋がる階段が設けられている。
給水口11sの位置は、水面下であることが好ましい。また、底部12に傾斜がある場合は、傾斜に沿った方向に向いていることが好ましい。給水口11sから出た水流は、底部12の傾斜に沿ってスムーズに流れるようになる。給水口11sの向きや位置は、変更できるように構成されるか、複数の位置に給水口11sを予め設けて、1つの位置や向きの給水口11sを選択できるようにしてもよい。さらに、給水口11sは、同時に複数使用できるように構成されていてもよい。給水口11sの選択は、図示しないバルブなどにより適宜切り替えるようにすることで実現可能である。
排水口11оの位置は適宜であるが、排水側領域1bの水位を決めるように使うことができる。また、排水口11оは、波の形状に影響を与えないのであれば、第四側面11dや排水側領域1bの底部12に設置することも可能である。
第二側面11bにおいて給水口11sから斜めに放出されるプール水の延長方向には、水流の向きを変える変向部11tが形成される。
変向部11tは、給水口11sと奥行き方向(X方向)に対向して配置されている。変向部11tは、給水口11sから斜め上方に放出されるプール水がぶつかることにより、その水流を幅方向(Y方向)のいずれか一方のみへ曲がるように方向転換させる突き当たり面である。変向部11tに突き当りで転向された水流は、第二側面11bに沿って流動(流下)する順流4fとなる。この順流4fは、主に水面W側を流れるが、これと同時にプール1の水底側では、水面W側の順流4fに伴って、順流4fと逆向きの水流(逆流)4bが発生する。
このため、変向部11tは、第二側面11bと第三側面11cとで構成したプール1のコーナー近くに配置されて、水流を幅方向(Y方向)の一方のみに変向させることが好ましい。なお、変向部11tは、給水口11sから送られて来る水流の向きや給水口11sの位置に加え、底部12の構造形状により生じる水流の方向などによりその位置が決まる水流が当たる部位をいう。変向部11tは、突出部3のように、物体として構造形状を有するものではない。
また、変向部11tは、第三側面11cに配置した給水口11sから変向部11tに対して幅方向(Y方向)へ斜めにプール水が放出されるように水放出方向を制御することで、プール1のコーナー近くに変向部11tが配置されなくともよい。
図2に示したように、プール1の底部12は、その少なくとも一部又は全体を傾斜させることが好ましい。
詳しく説明すると、プール1の底部12は、奥行き方向(X方向)の中間位置に形成される最深部位12aを有している。底部12は、第一側面11aから最深部位12aへ至る領域に形成される下り斜面12bを有している。底部12は、最深部位12aから第二側面11bへ至る領域に形成される上り斜面12cを有している。
底部12は、下り斜面12b、最深部位12a及び上り斜面12cを少なくとも有していることが好ましい。
下り斜面12b及び上り斜面12cは、水平面に対して所定角度(約10~25°)で傾斜するように設定されている。
つまり、プール1の底部12において第一側面11aから第二側面11bに至る箇所は、最深部位12aを挟んで下り斜面12bと上り斜面12cの断面形状が略V字形となるように形成される。
特に、プール1の第一側面11aに給水口11sが配置される場合には、給水口11sから放出されたプール水(層流)が、下り斜面12b,最深部位12a及び上り斜面12cに沿って流動し、第二側面11bの変向部11tにぶつかって方向転換される。
中壁2は、プール1の内部において奥行き方向(X方向)の片側である第一側面11aから連続して第二側面11bに向け延び、且つ底部12から水面Wよりも高くなるように設けられる。プール1の底部12において中壁2の端部2aと第二側面11bとの間には、突出部3が配置される。
プール1の内部は、中壁2及び突出部3をプール1の幅方向(Y方向)の中間位置に配置することで、給水口11sが設けられる給水側領域1aと、排水口11оが設けられる排水側領域1bとに分割している。さらに、少なくとも排水側領域1bにおける第二側面11bの上端は、給水側領域1aにおける第二側面11bの上端よりも低くなるように設置することが好ましい。
また、中壁2の頂面2bは、水面Wよりも高いため、利用者(サーファー)のエントリーゾーンP1として利用可能である。中壁2において排水側領域1bに面する側面2cには、サーファーの入水(サーフエントリー)を容易するため、階段若しくはハシゴなどの昇降設備2dを設置することが好ましい。
突出部3は、変向部11tよりも水流の下流側で、且つその頂端をプール1に常時水没するように配置される。
突出部3の設置位置は、プール1の底部12において第二側面11bと隣り合う領域(上り斜面12c)で、詳しくは後述する中壁2と第二側面11bとの間に挟まれるように配置することが好ましい。
さらに、突出部3は、その頂端から下り傾斜する傾斜面3aを有する。傾斜面3aの傾斜角度は、水平面や上り斜面12cに対して所定角度(約40~60°)で傾斜するように設定される。これにより、突出部3の傾斜面3aは、前述した順流4fに伴って水底側に発生した順流4fと逆向きの水流(逆流)4bの少なくとも一部を、プール1の底部12に向け誘導し、底部12で反転させて水面Wに向け流動するように構成される。
また、プール1の底部12に対する突出部3の設置方法には、移動不能に固定する一体的な固定式と、着脱自在に取り付ける着脱式とがある。着脱式の場合には、プール1の底部12に対する突出部3の取り付け位置を調整可能にすることや、サイズが異なる複数種類の突出部3を用意して、利用者(サーファー)の要望に適合した波が作られるように突出部3のサイズや形状を交換することも可能である。
造波装置Aは、突出部3を自動的に交換する装置が取り付けられていてもよい。
通水路4は、給水口11sから変向部11tを経て排水口11оに繋がる流路であり、その平面形状が略C字形(コの字形)又は略L字形に屈曲して形成され、給水口11sから放出されたプール水が変向部11tに突き当たって突出部3に向け流れる。
通水路4において変向部11tよりも下流側で且つ突出部3よりも上流側には、変向部11tで方向転換された水流(順流)4fと、突出部3の傾斜面3a及びプール1の底部12に沿った水流(逆流)4bと、が合わされる合流部4mを有している。
合流部4mでは、変向部11tに対する突き当たりで変向されて主に水面W側を第二側面11bに沿って流動する順流4fと、順流4fに伴い水底側に発生した突出部3の傾斜面3a及びプール1の底部12に沿って水面Wに向け流動する逆流4bと、が互いにぶつかり合う。これにより、水面Wから波が部分的に盛り上がるバックウォッシュが発生する。順流4fと逆流4bの衝突で発生したバックウォッシュによって、プール1の側部11(第二側面11b)に沿った順流4fが、自然波に近い高低差のある立体的な斜面を持つ人工波に変わる。この自然波に近い高低差のある立体的な斜面を持つ人工波には、崩壊域から崩壊直前域の波頭が連なるようなチューブ状の巻き波などの様々な波が含まれる。
給排水管5は、プール1の外側に給水口11sと排水口11оを連結する管路であり、給排水管5には給排水機6が設けられるとともに、開閉弁51を介して水道管や排水管などの給排水源52に連通される。
給排水機6は、ターボ形ポンプやその他のポンプなどで構成され、給排水機6の作動により、排水口11оから排水したプール水を給水口11sに給水することで、プール水を循環させている。図示例では給排水管5の途中に一つ設置されている。また、その他に図示しないが、給水口11sと排水口11оにそれぞれ接続するように複数に設置することも可能である。プール水としては、水道水や地下水又は海水などの低温水に限らず、温泉や沸かし湯などの温水も含まれ、冬季における利用者(サーファー)の寒さ対策を図ることも可能である。
また、給排水機6は、例えば羽根車(図示しない)の逆回転などで、給排水の作動方向を逆向きに制御することが可能である。給水口11sと排水口11оに対して給排水機6から給排水を逆向きに制御することにより、給水口11sと排水口11оが入れ替わって逆向きに循環させることも可能である。つまり、給排水機6は、選択な操作で水の流れを正逆方向へ変更可能に制御される。
開閉弁51を閉じて使用すると、給排水管5を流れるプール水は、排水口11оから吸い込まれたプール水がそのまま給水口11sから流れ出ることになる。プール1の水位の増減はない。また、この態様は、吸い込まれたプール水がそのまま給水口11sから噴射するため、給排水機6の効率を高めることができる。また、排水口11оの位置は、水中に位置させることができるため、意匠的に優れている。ただし、排水口11оから勢いよくプール水が吸い込まれるため、人や物が排水口11оに引き込まれる虞がある。排水口11оの周囲はフレームで囲われるなど安全対策が施されることが好ましい。
開閉弁51を開くと、給排水源52(水道・貯水タンクT)から水が、流入し、プール1の水位を変えることができる。
2機の給排水機6を設置することで両方向への給排水を可能とする。
そして、本発明の実施形態に係る造波装置Aは、少なくともプール1を折り畳み可能や分解可能な構造で且つ簡単な作業により組み立て可能な構造に構成することも可能である。
少なくともプール1が折り畳み可能な構造である場合の具体例としては、プール1をポリ塩化ビニル製の強化シートなどで変形可能な中空状に形成している。プール1は、内部に空気などの気体が充填されていない折り畳み状態で移動自在とし、設置現場で折り畳まれたプール1に気体を充填して組み立て作業が完了する。
少なくともプール1が分解可能な構造である場合の具体例としては、プール1を複数に分離自在な土台(図示しない)と、土台の表面を覆う防水シート(図示しない)とからなり、複数の土台と防水シートを分離した状態で移動自在としている。そして、設置現場で分離された複数の土台を組み付けるとともに防水シートを敷設して組み立て作業が完了する。
プール1の組み立て後の作業は、造波装置Aの給排水管5や給排水機6などを接続し、必要に応じて給水車などと連結させることも可能である。
各ブロックは、内に溜められた水を抜くことで簡単に移設することができる。また、底部12の下り斜面12b,最深部位12a及び上り斜面12cの形状や傾斜を変化させるブロックを用意することは、好ましい態様である。ブロックが沈められることで、波の形状が変化する。
図1(a)(b)及び図2に示される第一実施形態の造波装置A1は、プール1の内部構造を幅方向(Y方向)へ対称形(線対称)に配置したものである。この配置により、造波装置A1は、グーフィーの波(右方向に崩れるレフトの波)とレギュラーの波(左方向に崩れるライトの波)が選択的に作成されるようになる。
プール1内の幅方向(Y方向)中央位置には、突出部3と中壁2が配置され、突出部3と中壁2の中央が中心線となる幅方向(Y方向)の線対称位置に、給水口11s及び排水口11оをそれぞれ配置している。突出部3は、その頂端を挟んで幅方向(Y方向)の両面にそれぞれ下り傾斜する一対の傾斜面3aを有して、突出部3の断面形状が台形や三角形などに形成される。
これにより、通水路4は、中壁2の外側面(端部2a及び両側面2c)に沿って、平面略C字形(コの字形)に形成される。中壁2の両側面2cには、ハシゴなどの昇降設備2dがそれぞれ設置されている。
図示例のプール1の底部12は、奥行き方向(X方向)中央に最深部位12aが配置され、底部12の全体が下り斜面12b,最深部位12a及び上り斜面12cの断面形状をV字形に形成している。
さらに図示例では、給水口11s及び排水口11оの形状は、横長の長方形や楕円形に形成している。希望する波の形状などに応じて、給水口11sの形状は、変えることができる。また、給水口11sの位置は、給水側領域1aにあればよく、第一側面11aのどこでもよいし、また、第一側面11aとはことなる、たとえば底部12などにあってもよい。
排水口11оの形状は、特段の制約はない。
しかし、給排水機6の給水方向を変えて給水側領域1aと排水側領域1bの位置を逆にするように使う場合があるため、対称構造のプール1では、排水口11оは、給水口11sと同じ数で同じ形状で同じ位置関係に設置することが好ましい。
このような対称構造のプール1に水が溜められる。そして、図2に示されるように、正方向の循環による給水口11sからの放水で、水流は、変向部11tにぶつかり、方向転換する。プール1の側部11に沿った順流4fと、突出部3の傾斜面3a及びプール1の底部12に沿って流動する逆流4bとが、合流部4mで順流4fと衝突して、バックウォッシュを発生させる。発生したバックウォッシュは、自然波に近い高低差のある立体的な斜面を持つ人工波としてグーフィーの波を作成する。
図3に示される作動後の状態では、利用者(サーファー)が中壁2の頂面2b(エントリーゾーンP1)から排水側領域1bにエントリーすることができる。そしてエントリーしたその位置こそが、立体的な斜面を持つ人工波(グーフィーの波)において排水側領域1bの部位がサーファーのパドリング領域P2となる。立体的な斜面を持つ人工波において突出部3の直上部位付近がサーファーのテイクオフ領域P3となり、給水側エリアの部位がサーファーのライディング領域P4となる。
また、図示しないが給排水機6の選択的な切り替えにより、給水口11sと排水口11оを入れ替えて給排水が逆向きの循環になると、変向部11tにぶつかる水流の方向転換や、バックウォッシュの発生方向などがすべて幅方向(Y方向)へ反転する。このため、グーフィーの波に代わってレギュラーの波が作成される。
(回避水路)
図3は、本発明の実施形態に係る造波装置A1の変形例(第二実施形態)を示す説明図(作動後の斜視図)である。
図3に示される第二実施形態の造波装置A2は、プール1に回避水路7を追加した構成が、前述した第一実施形態とは異なり、それ以外の構成は第一実施形態と同じものである。
プール1の奥側には、第一実施形態の第二側面11bに相当する隔壁11eが配置され、隔壁11eを挟んで回避水路7が設けられる。
隔壁11eは、第一実施形態の第二側面11bと同様に変向部11tが形成されるものの、隔壁11eの頂部11e’が第二側面11bの高さよりも低く配置されて、適時に水没するように形成される。隔壁11eの頂部11e’は、頂部11e’の角部分の面取り加工などで、利用者(サーファー)が接触しても怪我し難い構造になっている。これにより、隔壁11eの頂部11e’が水没した時には、通水路4からサーフボードが隔壁11eの頂部11e’上を越えて回避水路7へ移動可能になる。
回避水路7は、その深さが水面Wから約1.5m前後に設定され、利用者(サーファー)がライディングを終えて通水路4から退場する時に利用するエスケープ領域P5となる。回避水路7の近くには、水面Wよりも高い出口8を形成することが好ましい。
図示例では、プール1内の奥側に沿って回避水路7が幅方向(Y方向)へ直線状に形成され、プール1の外側に出口8を幅方向(Y方向)の中間位置となるように配置している。また、その他の例は図示しないが、回避水路7の幅方向(Y方向)中央に出口8を設けることで、回避水路7が分割されるように配置することも可能である。
回避水路7においてサーファーは、立体的な斜面を持つ人工波(グーフィーの波又はレギュラーの波)のトップ近くまでライディングしてから、サーフボードの向きを変えて、通水路4から隔壁11eの頂部11e’上を越えて回避水路7に入る。そして、サーファーは、サーフボードのテールを沈めて失速させ、浮き上がったノーズを手で掴むなどしてプルアウト(サーフィンを終える動作)すれば、ライディングをスマートに終えることが可能になる。
貯水タンクTは、適宜な位置に設けられる。貯水タンクTは、配管等で接続されていればプール1から離れて設けられていてもよい。
また、貯水タンクTは必ず必要なものではない。
図3で図示されている第二実施形態の造波装置A2は、給排水管5と給排水機6を外部から遮断するように貯水タンクTが設けている。貯水タンクTは、第一側面11aに隣接して設けられている。そして、貯水タンクTの上面は、足場81として使えることが好ましい。
図1(a)で図示されている造波装置A2は、水を循環する使い方ができるように作られている。給排水源52は、前述したように、水道管などでよいが、貯水タンクTがある場合、貯水タンクTそのものが給排水源52となる。給排水源52となる貯水タンクTの底部に開口した管は、開閉弁51を介して給排水管5や給排水機6と接続される。権限ある者は、開閉弁51を操作することができ、プール1の水位を変更することができる。
(給水口の形状)
図4(a)(b)に示される第三実施形態の造波装置A3は、中壁2及び突出部3のサイズをこれまでの実施形態と比較して大型化している。そして、給水口11s及び排水口11оの形状を変更した構成が、前述した第一実施形態や第二実施形態とは異なり、それ以外の構成は第一実施形態や第二実施形態と同じものである。
図示例では、第三実施形態における中壁2や突出部3の幅方向(Y方向)寸法が、第一実施形態における突出部3の幅方向寸法の約3.5~4.0倍に拡大されている。そして、第三実施形態における突出部3の高さ方向(Z方向)寸法は、第一実施形態における突出部3の高さ方向寸法の約1.3~1.5倍に拡大されている。給水口11s及び排水口11оの形状は、幅方向(Y方向)が高さ方向(Z方向)寸法よりも長尺な矩形に形成されている。
これにより、第三実施形態の造波装置A3は、自然波に近い、かつ、高低差のある立体的な斜面を持つ人工波を安定的に作成できる装置となった。
また、第三実施形態の造波装置A3では、給排水管5の途中にろ過機53が設けられている。図示例は、給排水機6となる循環給水ポンプを挟んで給水口11sと排水口11оとの間にろ過機53がそれぞれ配備されている例である。
したがって、第三実施形態の造波装置A3は、簡単な構造で自然波に近い、かつ、高低差のある立体的な斜面を持つ人工波を造ることができる。
その結果、プールの底部全面に多数の噴出流発生部をマトリックス状に配置する従来のものに比べ、第三実施形態の造波装置A3は、その構造及び制御を簡素化できて装置全体がコンパクト化され、周囲環境に影響されずにどこにでも設置できて、コストの低減化も図れる。
さらに、給排水機6は、給水口11sからの放出圧力を調整することができる。権限ある者は、放水圧力を調整することで、波の大きさ(高さ)と波の力をいかようにも調節することができる。
第三実施形態の造波装置A3を使う権限ある者は、サーファーの技量に合わせて初級者から上級者まで適した波を造ることができる。
この場合には、給水口11sから下り斜面12b,最深部位12a及び上り斜面12cに沿って放水することにより、水流が下り斜面12bを勢いよく流動してから、上り斜面12cに沿って水面Wに向け斜めに流動する。このため、給水口11sからの水流が変向部11tに激しくぶつかって方向転換され、プール1の側部11に沿った順流4fとなって流動し、合流部4mで逆流4bと衝突してバックウォッシュが発生する。これにより、プール1の側部11(第二側面11b)に沿って立体的な斜面を持つ人工波が作成される。
したがって、第三実施形態の造波装置A3は、給水口11sからの給水方向や給水量などについて、厳密な制御は必要なく、簡単な構造で立体的な斜面を持つ人工波を確実に作成することができる。
本発明の造波装置Aは、野外のイベントなどにも使うことが想定される。第二実施形態の造波装置A2が、給排水源52として(水道など)を想定していたが、野外のイベント会場によっては水道などが近くにあるとは限らない。第三実施形態の造波装置A3は、図4(a)に示すように、貯水タンクTに水が蓄えているにもかかわらず、給排水源52が設けられている。これは、第三実施形態の造波装置A3が、給排水源52として給水車を想定しているからである。給水車から延びる送水管は、造波装置A3の給排水源52に設けたジョイントと接続することができる。給水車から送られた水は、貯水タンクTとプール1を満たすのに使われる。その後、開閉弁51が閉じられ、給水車は造波装置A3から離れて行く。第三実施形態の造波装置A3は、貯水タンクTに蓄えられたプール水により再給水を受けなくとも長期にわたり使うことが可能になる。
本発明の造波装置Aは、給排水機6により給水口11sから勢いよくプール水を吹き出す。造波装置Aの部材、特に、給排水機6は動かぬように固定される必要がある。貯水タンクTは、プール水が蓄えられることで重しの役目を果たす。貯水タンクTは、給水口11sのある第一側面11aに隣接して設けられており、給排水機6を含め造波装置A全体は、貯水タンクTの重量により安定する。
このような第一実施形態の造波装置A1で作られる波は、給排水機6による正方向の作動で給水口11sから放水することにより、変向部11tにぶつかって方向転換され、プール1の側部11に沿った順流4fと、水底側に突出部3及びプール1の底部12に沿って流動する逆流4bとが合流部4mで衝突してバックウォッシュが発生し、グーフィーの波になる。
また、権限ある者が、給排水機6を逆方向の作動に変えると、給水口11sと排水口11оが入れ替わり、レギュラーの波となる。
したがって、本発明の造波装置Aは、給排水機6の作動方向の制御のみでグーフィーの波とレギュラーの波を作成することができる。
その結果、利用者は、一つのプール1で崩れ方向が異なる二つの立体的な斜面を持つ人工波を選択できる。本発明は、利用者(サーファー)の要望に合わせたサーフィンの練習が同一場所で行えて利便性に優れるとともに、グーフィーの波専用のプールとレギュラーの波専用のプールを個別に作製する必要が無いため、設置スペースや設置コストに関し有利である。
このような第二実施形態の造波装置A2は、ライディング中のサーファーがサーフボードの向きを変えて、通水路4から隔壁11eの頂部11e’上を越えて回避水路7にプルアウトすることを可能にする。
したがって、利用者(サーファー)は、ライディングをスマートに終えることができる。
その結果、本発明を利用するサーファーは、エントリーからプルアウトまで一連の練習ができ、次に待機するサーファーは、スムーズに交代できる。
プール1は、コンパクトな折り畳み状態や分解状態で設置現場に運ばれる。そして、プール1は、設置現場で折り畳み状態や分解状態の部材を組み立てられる。このように設置者は、プール1を容易に組み立て設置することができる。
したがって、プール1は、設置現場の環境に影響されることなく容易に移設できる。
時限的な運用など、利便性の向上が、設置者に与えられる。
さらに、図面では、給水口11sは、プール1の第一側面11aに配置されていたが、これに限定されない。これらの配置は、第三側面11cに配置した給水口11sから変向部11tに対して斜めに水を放出させることや、プール1の底部12に配置した給水口11sから変向部11tに向けて斜め上方へ水を放出させるなどの変更が可能である。実施形態の排水口11оは、プール1の第一側面11aに配置されていたが、これに限定されず、第四側面11dに排水口11оを配置して通水路4が平面L字形に形成されることや、その他の変更をしてもよい。
また、実施形態の底部12の形状は、下り斜面12bと上り斜面12cが最深部位12aを挟んで断面略V字形に形成されていたが、これに限定されず、プール1の底部12において給水口11sから変向部11tに至る一部分のみを断面略V字形に形成してもよい。プール1の底部12に配置した給水口11sから変向部11tに向けて斜め上方へ水を放出させる場合には、底部12は、部分的にまたは全体的に傾斜面が設けられなくてもよい。
これら場合においても、前述した第一実施形態及び第二実施形態と同様な作用や利点が得られる。
(給排水機と給排水管と貯水タンク)
図5は本発明の実施形態に係る造波装置A4の変形例(第四実施形態)を示す説明図(作動後の斜視図)である。図3に示す実施形態と比較すると、給排水管5が設けられていない。代わりに、給水口11sは、給排水機6の一種である水中ポンプ61に接続されている。水中ポンプ61は貯水タンクTの底部に沈められており、プール水を吸い上げ、給水口11sからプール水を噴射する。
他方、排水口11оは、貯水タンクTと連通するだけになっている。排水口11оの位置がプール1の水面Wの位置、即ち水位を決めている。
貯水タンク水位WTの位置は、プール1の水面Wの位置と同じか、低くなり、排水口11оからプール水がオーバーフローするように貯水タンクT内に流れ込む。
水中ポンプ61は、排水口11оにも接続することができ、接続することで、排水口11оは、給水口11sに変わる。また、2台の水中ポンプ61を、それぞれ排水口11оと給水口11sに接続しておき、権限のある者が、何れか一方の水中ポンプ61のみを作動させることができる。これにより、造波装置A4は、グーフィーとレギュラーのいずれの波でも発生できる。
第四実施形態の排水側領域1bの水面W位置は、常に排水口11оの下端の位置になるので、プール水の水量を適正に管理できる。
プール1は、その縁などの角部に柔らかい緩衝材を取り付けることが可能である。利用者がボードから落下したような場合、緩衝材は、利用者を守る。また、前述したように、排水口11оから勢いよくプール水が吸い込まれる場合は、フレームなどで、物や人が吸い込まれないように安全策を講じることが好ましい。
さらに、初心者がバランスを崩してプール1から落ちないように、周囲にネットなどの落下防護柵を設けるなどしてもよい。
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
1 プール
A1 造波装置(第一実施形態)
A2 造波装置(第二実施形態)
A3 造波装置(第三実施形態)
A4 造波装置(第四実施形態)
1a 給水側領域
1b 排水側領域
11 側部
11a 第一側面
11b 第二側面
11c 第三側面
11d 第四側面
11e 隔壁
11e’ 頂部
11t 変向部
11s 給水口
11о 排水口
12 底部
2 中壁
2a 端部
3 突出部
3a 傾斜面
4 通水路
4f 順流
4b 逆流
4m 合流部
5 給排水管
51 開閉弁
52 給排水源
53 ろ過機
6 給排水機
61 水中ポンプ
7 回避水路
8 出口
81 足場
T 貯水タンク
W 水位
WT 貯水タンク水位
Claims (5)
- プールと、中壁と、突出部と、を備え、
前記プールは、奥行き方向に対向する第一側面及び第二側面と、幅方向に対向する第三側面及び第四側面と、底部と、を有し、
前記中壁は、前記第一側面から前記第二側面に向け延びて、前記プールを給水側領域と排水側領域とに分けるものであり、前記給水側領域には、前記第二側面に向けて水を放出する給水口があり、前記排水側領域には、排水口があり、
前記突出部は、前記中壁の端部と前記第二側面との間の前記底部に設けられることを特徴とする造波装置。
- 前記給水側領域と前記排水側領域は、前記中壁に対して対称形をしており、
前記給水口と前記排水口は、給排水管で連結されており、前記給排水管には、水の流れを正逆に変更可能な給排水機が設けられていることを特徴とする請求項1記載の造波装置。 - 前記プールの奥側に前記第二側面を挟んで回避水路が設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の造波装置。
- 前記プールが折り畳み又は分解可能に構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の造波装置。
- 前記第一側面に隣接して、貯水タンクが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の造波装置。
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