JP7291355B1 - 清浄環境システムおよびエネルギー環境システム - Google Patents

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Abstract

【課題】エネルギー効率が高く、断熱性が高い清浄環境システムを提供する。【解決手段】ガス交換ユニットと、ファンフィルターユニットとを含み、前記ガス交換ユニットは、外界との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する部屋または閉空間の気体と、前記外界の気体との間の少なくとも一部に配置され、前記部屋または閉空間の気体と前記外界の気体との濃度勾配によって気体分子を交換しダスト微粒子を実質的に通さないガス交換膜を有し、当該ガス交換膜を伝導により横切る熱量が、在来換気を適用した場合の換気で失われる熱量より小さく、前記ファンフィルターユニットは、前記部屋または閉空間に配置される、清浄環境システム。【選択図】図1

Description

本発明は、清浄環境システムおよびエネルギー環境システムに関する。
地球は、宇宙空間に浮かぶ孤立閉鎖系であるが、現代文明の進歩に伴い、地球サイズ/ヒューマンアクティビティは、かつてのように無限大とみなすことができず、有限であるとして対策を立てねばならない状況となってきている。
2021年のノーベル物理学賞は、地球に降り注ぐ太陽光エネルギーによる地温の上昇、対流、地表からの黒体輻射、その大気中のCOなどによる吸収を総合的に解析しての地球温暖化の上記CO濃度などのパラメータ依存性、定量的解析に与えられた。同様の解析は、降り注ぐ太陽光エネルギーのビル・建屋、道路等都市構成要素による吸収、都市ビル群・建屋での室内空調等によるエネルギー消費の低減などを考慮することで、都市気候悪化の緩和にも有効である。
本来、地球人類は、宇宙空間に置いて太陽という地球外遠隔地にあって大出力でかつ長期的に安定である完全な核融合炉を有していると捉えることができる。太陽・地球間は、真空であり、空間伝送時のエネルギーロスはない。この核融合炉の利用上の課題は、その最終段階即ち、当該核融合エネルギーによる黒体輻射の地球上におけるディテクター(即ち太陽電池)の効率が高くないことと、太陽光エネルギー密度が低いことである。この後者の欠点のため、大出力の太陽光発電システムは、非常に広い太陽電池設置面積を必要とする。従来の典型的(すなわち非集光の)系太陽光発電では、太陽光を受けた場所で電子。ホールペアが生成し、発電を行っている。つまり受光と光電変換の機能が空間的に縮退している。このため、大出力の太陽を行うには、即ち、メガソーラーを設置するには、きわめて広い敷地が必要となっている。
上記の低エネルギー密度であることに対する一つの方策は、レンズやパラボラアンテナによって光を集めて光密度を上げた集光系太陽光発電システムを組むことであるが、受光部と発電部が三次元的光伝搬でつながっており非常にバルキーとなるため、メトロポリタンエリアに導入することは極めて難しい。
狭い国土の日本では、面積確保が難しく、無理な太陽光発電用造成を行って、災害を招くなどの悲劇も起こっている。両面発電太陽電池の有効性が提案され、一部すでに実施が進んでいる(非特許文献1,2)が、これは、構造上、表と裏の2方向からに留まっており、四方からの光を受け得るというところまでは至っていない。また、折角発電した電気エネルギーの効率的な活用に向け、送電ロス(非特許文献3)を未然に防ぐ意味でも、エネルギー版の“地産地消”も必要であるが、本来大規模発電所が立地して然るべき、一大電力消費地である都会には、太陽光発電システムを大規模に導入するための有効な方策が打ち出せていない。一つの方策は、都市の建物の側面を利用することがあげられる。しかし太陽光パネルをそのままビル側面に張り付けるのは、数十棟に1~2棟ならまだしも、ほとんど全てのビルに適用することは、パネルが濃い紺色あるいは黒色であることを考慮すると、都市景観上、人々に受け入れられることはないと思われる。
以前より、フラクタルの概念を用いた解析も進み、都市空間構造や道路網の解析、あるいは、その形態の分類等の分野へ応用され、都市形態を客観的に定量化することがなされて来たが、喫緊の課題である都市気候変化の緩和や都市におけるエネルギー・環境問題へ絡めた展開には至っていなかった(非特許文献4、5)。
他方、メトロポリタンエリアが大電力消費地であることに起因するヒートアイランド現象や都市気候の悪化傾向の緩和に向け、最近、高反射率の白色ペイントが報告され、実際に当該ペイントを施された物体・壁の温度を、周りの温度に比べて低く保つことが可能であることが示されている(非特許文献6)。この反射により周囲に戻された太陽光成分を、今後もし発電に回すことができれば、より効果的なエネルギー利用と都市気候悪化の緩和につなげることができると期待される。
環境側の面について考察すると、人類は現在、コンピュータ技術の発展に伴い、情報処理・通信環境に関しては、有史以来かつてない高度で便利な環境を実現し、いわば脳にとっては刺激的かつ申し分のない良好な場を実現していると言えようが、反面、体にとっての環境としては、汚染物質の増加や空気中の塵埃、感染性の細菌の浮遊等、現代社会は必ずしも良好な環境とは言い難い。
クリーン環境としては、大規模な半導体製造用として従来から存在している。しかし、これは、プロユース、つまり工業用であり、一般住宅などに用いられるいわゆる民生用としては導入されていない。かつて計算機の世界で、ビジネス用大型コンピューターメインフレームと一線を画する形で、“Computer for the rest of us”を掲げてパーソナルコンピューターが勃興したように、21世紀に入り、環境の重要性が益々高まる中、パーソナルコンピューターの“クリーン環境版”というものが現れても良い。事実、高性能化されて久しい大規模クリーンルームというまさに“メインフレーム”の対極にあるパーソナルクリーンスペースというのは、今後、純粋な民生用に限らず、病院や養護老人施設等の感染症のリスク回避が重要な場面で必ず重要になってくる。特に、PM2.5問題、花粉症対策、更には、喘息症状の緩和や細菌性肺炎の防止などの観点からも、生活空間の微生物存在(microbial)環境(マイクロビアル環境)も含めて空気環境を制御することは、このように今後益々重要となってくる。このため、我々はクリーンユニットシステムプラットフォーム(CUSP)を提案し、清浄環境としての進歩をもたらしてきたが(特許文献1、2、3)。
都市気候変化の緩和、SDGs実現の要素の一つであるゼロエネルギービルディング/ハウス(ZEB/ZEH)の実現に向けて、エネルギーコンサンプションを低減する為にも、自然換気、機械換気に続く第3の換気法の実現が望まれる。在来の清浄環境システム(クリーンルーム)の技術では、空気濾過と外気導入の機能が空間的に縮退している。このため在来型クリーンシステムで用いられるファンフィルターユニット(FFU)では、フィルター部での圧力損失が大きい。
即ち、新型コロナ対策に向け、中性能フィルターではなく、HEPAフィルターを、更にはULPAフィルターを用いて、より細かい浮遊塵埃・菌の除去を目指す必要があるが、目が細かいフィルターであればあるほど、同時に、それを空気が通過する為に大きな圧力が必要であり、フィルター通過後は大きな圧力損失が生ずる。この際の気流を送り込むためのファンモータの電力も大きくならざるを得ない。即ち、濾過膜に対して気流を押し付けて、濾過を行う在来技術では、濾過の緻密さを上げれば上げるほど物質濾過量は増えるものの圧力損失も増大し(非特許文献7)、大電力が必要とされる問題を抱えている。半導体製造のクリーンルームの例を引き合いに出すまでもなく、在来技術では、高清浄度実現と低消費電力化は互いに相入れない2つの要求ということができる。
根本的には、室内の空気質を維持するには外界の酸素を取り入れ、室内の増大した二酸化炭素を排出すればよい。つまり、空気中の窒素は人間活動に対し、中立なバイスタンダーであるにも拘わらず、従来の換気は、空気中の酸素や二酸化炭素のみならず窒素も含めて丸ごと室内外で入れ替えているために、無駄な送風エネルギーならびに、本来不要の室内空調エネルギー消費を伴うため、エネルギー効率が高くなかった。根本的には酸素と二酸化炭素の変化分(減少した酸素と増大した二酸化炭素)のみを入れ替えればよいので、本来は換気に伴う室内空調エネルギー消費はミニマイズできるはずであるが、これが実現できていない。
これまでのビルなどの建屋内換気法は、自然換気や機械換気など気流によるものしかなく、分子の拡散によるものは、エネルギー利用効率の観点からは、十分に解析されておらず、本来の優れた特性を100%生かされている状況ではなかった。
よい比較対象となる熱電変換素子では、温度差による発電を行うところ、熱伝導を担うフォノンと電子について、フォノンにほる熱伝導を極力抑えることが高出力につながる(非特許文献8)が、この換気版というものはまだ定式化されていない。我々は拡散換気の新概念を以って、室内空気の酸素・二酸化炭素濃度を良好に保つガス交換ユニットを実現してきた(特許文献1、3)。
また、熱力学第2法則を見据えつつ、リニューワブルエネルギー特に太陽光発電を活用した新しいエネルギー・環境システムを構築して、ネットゼロエネルギービルディング/ハウス(ZEB/ZEH)の実現、都市機構変化の緩和、ひいてはエネルギー利用効率をあげることによる地球温暖化防止へつなげていくことが重要である。効率的な最適解を求めねばならない。
米国特許第10677483号明細書 国際公開第2014/084086号 特許第6292563号公報
「bifacial-solar-cells」[令和3年12月22日検索]、インターネット〈URL:https://www.futurity.org/bifacial-solar-cells-panels-power-2237612/〉 「両面太陽光発電 発電量推移実績データ」[令和3年12月22日検索]、インターネット〈URL:http://www.nishiyama-s-denki.co.jp/data/hokuto_kuranuma_all.pdf〉 「送電ロスとは」[令和3年12月22日検索]、インターネット〈URL:http://nanoc.imr.tohoku.ac.jp/column.html〉 黒岩孝、宮本和樹、大内宏友、松原三人、「3次元都市空間における街区モデルのフラクタル性に関する研究」、環境情報科学論文集16巻、p.49、2002年:[令和3年12月22日検索]〈URL:https://acaddb.com/articles/articles/11442326〉 水野節子,掛井秀一「都市街路形態のフラクタル解析」、日本建築学会計画系論文報告集 第414号 pp.103-108(1990年8月): [令和3年12月22日検索]〈URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijax/414/0/414_KJ00004075306/_pdf/-char/ja〉 Xiangyu Li, Joseph Peoples, Peiyan Yao, and Xiulin Ruan, "Ultrawhite BaSO4 Paints and Films for Remarkable Daytime Subambient Radiative Cooling", ACS Applied Materials & Interfaces 2021 13 (18), 21733-21739DOI: 10.1021/acsami.1c02368 「環状多層型グラニュラフィルタの微粒子捕集特性、Fig.3右(縦軸名が潰れているがΔPb [Pa]を表している)」[令和3年12月22日検索]、インターネット〈URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/scej/2007f/0/2007f_0_1059/_pdf/-char/ja〉 「熱電変換とは」[令和3年12月25日検索]、インターネット〈URL:https://staff.aist.go.jp/a.yamamoto/mypage/aboutTE.html〉
この発明が解決しようとする課題は、太陽光発電を活用した新しいエネルギー・環境システムを構築して、ネットゼロエネルギービルディング/ハウス(ZEB/ZEH)、都市機構変化の緩和、ひいてはエネルギー利用効率をあげることによる地球温暖化を防止することである。一大電力消費地である都会には、太陽光発電システムを、大規模で且つ景観を損なうことなく利用できる方策を提供することである。
上記を実現する為の要素項目として、この発明が解決しようとする他の課題は、エネルギー効率が高く、断熱性が高い清浄環境システムを提供することである。また、その清浄環境システムと、太陽光発電システムとを組み合わせることによって、エネルギー効率が高く、断熱性が高い次世代のエネルギー環境システムを構築することである。
本発明の発明者は、在来太陽光発電における受光機能と発電機能の空間的な機能縮退を解いて、両者を二次元的に繋ぐ(2-Dimensional PhotoRecepto-Conversion System: 2DPRCSの実現)と共に、在来清浄環境システムにおける濾過機能とフレッシュエア導入機能の空間的な機能縮退を解き、その上で、機能縮退を解いたエネルギー系要素項目と環境系要素項目を襷がけで繋ぐことで、高効率に発電ができるエネルギー技術と消費電力が極めて小さい清浄環境技術を結合した次世代のエネルギー環境システムを構築することができることを見出した。ここで、空間的な機能縮退を解くとは、同一の場所で発現する2つの機能を分離して、物理的に離れた位置でその機能を独立に発現させることを意味する。さらに、清浄環境システムのフレッシュエア導入機能として気体の濃度勾配によって気体分子を交換するダスト微粒子を実質的に通さない特定のガス交換膜を用い、濾過機能として部屋や閉空間に配置されたファンフィルターユニット(FFU)を用いることによって、エネルギー効率が高く、断熱性が高い清浄環境システムを構築することが可能となることを見出した。
したがって、上記の課題を解決するために、本発明は下記の態様を提供する。
[1]ガス交換ユニットと、ファンフィルターユニットとを含み、前記ガス交換ユニットは、外界との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する部屋または閉空間の気体と、前記外界の気体との間の少なくとも一部に配置され、前記部屋または閉空間の気体と前記外界の気体との濃度勾配によって気体分子を交換しダスト微粒子を実質的に通さないガス交換膜を有し、当該ガス交換膜を伝導により横切る熱量が、在来換気を適用した場合の換気で失われる熱量より小さく、前記ファンフィルターユニットは、前記部屋または閉空間に配置される、清浄環境システム。
[2]ガス交換ユニットと、ファンフィルターユニットとを含み、前記ガス交換ユニットは、外界との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する部屋または閉空間の気体と、前記外界の気体との間の少なくとも一部に配置され、前記部屋または閉空間の気体と前記外界の気体との濃度勾配によって気体分子を交換しダスト微粒子を実質的に通さないガス交換膜を有し、前記ガス交換膜の面積をA、前記ガス交換膜の厚みをL、前記ガス交換膜の密度をρ、前記ガス交換膜の比熱をC、前記ガス交換膜の熱拡散係数をDとし、kをボルツマン定数、空気の比熱をC、空気の密度をρ、空気中の分子種iのガス分子拡散係数をD、空気中の分子種iの単位体積当たりの数をφ、前記ガス交換膜を横切る方向の微分演算子をδ/δ、前記部屋または閉空間に在来換気を適用した場合の必要換気風量をFとしたときに、下記の式(1)を満足し、前記ファンフィルターユニットは、前記部屋または閉空間に配置される、清浄環境システム。
Figure 0007291355000002
[3]アボガドロ数をN、系内の圧力における1モル当たりの気体体積をC、二酸化炭素の熱拡散係数をDCO2としたときに、下記の式(2)を満足する、上記[2]に記載の清浄環境システム。
Figure 0007291355000003
[4]前記部屋または閉空間の気体を前記ガス交換膜の表面に沿う第1方向に流す送風機と、前記外界の気体を前記ガス交換膜の表面に沿う第2方向に流す送風機とを有し、前記第1方向に流れる気体の速度ベクトルと前記第2方向に流れる気体の速度ベクトルの内積が負である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の清浄環境システム。
[5]前記部屋または閉空間の体積をV、前記ガス交換膜の酸素のガス分子拡散係数をD、前記ガス交換膜の厚みをLとした時、上記体積Vと前記ガス交換膜の面積Aとを、{(V/A)/(D/L)}でスケーリングさせて設計が行われ、前記部屋または閉空間の酸素消費レートをB、前記外界と平衡状態にあり前記部屋または閉空間で酸素消費の無いときの酸素体積をVO2、前記部屋または閉空間内における目標酸素濃度をη(η>0.18)としたとき、前記ガス交換膜の面積Aが下記の式(3)を満足するように設定される、上記[1]~[4]のいずれかに記載の清浄環境システム。
Figure 0007291355000004
[6]フレッシュエア導入機能と濾過機能の空間的な機能縮退が解かれた清浄環境システムと、受光機能と発電機能の空間的な機能縮退が解かれ、且つ二次元的に接続された太陽光発電システムとからなる、エネルギー環境システム。
[7]前記濾過機能のための電力を上記発電機能により供給することで前記濾過機能と前記発電機能を結合し、上記フレッシュエア導入機能の上記[1]または[2]に記載のガス交換ユニットによる実施と、前記太陽光発電システムの前記受光機能の部屋または閉空間を有する建築物の外面への付与とにより、相乗的断熱性向上を可能とした、上記[6]に記載のエネルギー環境システム。
本発明の清浄環境システムによれば、それが適用される部屋または閉空間が孤立閉鎖系(クローズドエアフローシステム)であるので、空気質向上の内、塵埃捕集に関しては、室内気体を何回もファンフィルターユニットに通過させることにより、当該ファンフィルターユニットの塵埃捕集効率γ(0<γ<1)を下げても悪影響が出にくい。例えば、γ=0.5(或いは0.9)であって、5割(或いは1割)を取り逃すとしても、室内塵埃数は、全室内空気がファンフィルターユニットを10回通過する(内気が10回転する)ことで、(0.5)10~1/1000(或いは(0.1)~1/1000)となる。ファンフィルターユニットの通過回数が20回(或いは6回)では約100万分の1とでき、また通過回数が30回(或いは9回)では10億分の1となり、HEPAフィルターやULPAフィルターを1回通過させたときよりも室内塵埃数を遥かに低減させることが可能となる。γの低下にともない、圧力損失を低減させうることから、気体のフィルター通過に伴うエネルギー散逸が減少し、これに対応して風量を維持するためのファン駆動電力も小さくて済むことから、ファンフィルターユニットの消費電力もトータルに極小化できる。
また、本発明の清浄環境システムでは、フレッシュエアの導入を行うガス交換膜およびガス交換ユニットにおいて、上記分子拡散と熱拡散を独立に制御する。即ち分子拡散係数Dと熱拡散係数Dを変数として、独立に2つの拡散方程式を書き下して、室内空気のガス分子濃度と温度について制御する。これにより、十分なガス交換能力を持ちながら、熱交換を極小化するとともに、消費電力の小さい究極の室内ガス分子濃度制御を行うことができる。
さらに、本発明の清浄環境システムでは、外界と内部との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する部屋または閉空間に対して、内部と外界を仕切る二次元面のガス交換膜に対し、これを横切るようにではなく、これに沿うように内気と外気が流れることで圧力損失を排して電力の増大を回避することができる。上記の土台として、温度差による発電を行う熱伝素子では、熱伝導を担うフォノンと電子について、フォノンによる熱伝導を極力抑えることが高出力につながるが、これに似て、換気においても、熱伝導を担うフォノンとガス分子について、フォノンによる熱伝導をできるだけ抑えることが、エネルギー利用効率の高い換気につながることを見出した。換気の本質は、生命機能維持のために酸素と二酸化炭素を交換し、微量な有害ガス分子を部屋または閉空間の外に排出することであり、人間活動に対する中立なバイスタンダーである窒素の移動、加熱・冷却を極小化することで、換気に伴う室内空調エネルギー消費は室内空調エネルギー消費をミニマイズし、高効率の次世代ZEB、ZEHを実現する。即ち、本発明のガス交換ユニットによれば、エネルギーコンサンプション低減を実現する為に、窒素を動かさない換気を実現する。これは本発明のガス交換ユニットが適用される部屋または閉空間が、外界と内部との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系(クローズドエアフローシステム)であることによって実現可能となる。
本発明のエネルギー環境システムでは、在来太陽光発電システムにおける機能縮退を解いたのちの太陽光を受光する受光部を、例えば、建築物の外面に張り付けることによって空調機能を担う清浄環境システムを含むシステム全体として高い断熱性を実現する(襷掛けその1)ことができる。また、当該受光部端にきわめて少ない物質量をもって光電変換を行う発電部を構成するとともに、当該発電部からの電力を、従来型清浄環境システムにおける機能縮退を解いた後のファンフィルターユニットの駆動電力として使用することができる(襷掛けその2)。
また、本発明のエネルギー環境システムでは、空気質向上の内、室内ガス分子濃度制御に関しても、外気・フレッシュエア導入時の期待の流れが、室内外を仕切る二次元面に対し、これを横切るようにではなく、これに沿うように流れることで、無用の圧力損失を回避することによって省電力の抑制を行う。部屋(閉空間)内部のガス分子濃度の制御は、外気の気流(フロー)としての導入ではなく、気体分子の拡散によって、これを行う。熱力学第2法則に従って、分子拡散は系のエントロピーが増大する向きに起こることを利用して、注目するガス分子のガス交換膜中の拡散に要するエネルギーを室温Tにおける熱エネルギー(kT)にて賄うことで、在来型機械換気によるものと全くの好対照を成し、付加的な電力使用を回避して究極の低消費電力化を実現することができる。
更に、都市部の建築物の外面を利用して発電することで、送電ロスのない電力の地産地消が可能となる。このためのエネルギーが、室温の熱エネルギーにより賄われる超低エネルギー換気が可能となる。γと1との差を大きくすることが可能で、圧力損失が局所化されることで、低消費電力の空気浄化が可能となる。断熱能のある建築物の外面と太陽光を二次元的に捕集するリディレクション導波路やパラボリックミラー等の微小表面構造を結合することで、殆ど消費電力が発生しない清浄化興技術と太陽光発電技術が結合する。都市気候の変化を緩和することのできるSDGs実現に資するシステムが可能となる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムを閉空間に適用した実施例を示す断面図である。 図2は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムで用いられるファンフィルターユニットのダスト微粒子捕集能力を示すグラフである。 図3は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムの高清浄度実現能力を実証した実験結果である。 図4は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムで用いられるガス交換ユニットの一例を示す側面図である。 図5は、図4のV-V線断面図である。 図6は、図4に示すガス交換ユニットを内気入口側から見た正面図である。 図7は、図4に示すガス交換ユニットに用いられているガス交換部の側面図である。 図8は、図7のVIII-VIII線断面図である。 図9は、図8の要部拡大断面である。 図10は、図7に示すガス交換部を内気入口側から見た正面図である。 図11は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムで用いられるガス交換ユニットのガス交換能力のシミュレーション結果である。 図12は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムのガス交換能力を実証した実験結果である。 図13は、本発明の第2実施形態に係るエネルギー環境システムを部屋へ適用した実施例を示す断面図である。 図14は、図13のXIV-XIV線断面図である。 図15は、図13のXV-XV線断面図である。 図16は、本実施形態のエネルギー環境システムを都市空間に適用した実施例を示す概念図である。 図17は、本発明に係るエネルギー環境システムと在来の清浄環境システムのエネルギー収支を示す概念図である。
以下、本発明の実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムを閉空間に適用した実施例を示す断面図である。
図1において、清浄環境システム100は、ガス交換ユニット20と、ファンフィルターユニット30とを有する。ガス交換ユニット20と、ファンフィルターユニット30とは、閉空間10に配置されている。閉空間10は、例えば、プレハブ、倉庫、テント、移動媒体のような壁で閉じられた空間を意味する。移動媒体の例としては、車両(バス、自動車)、鉄道、船舶、飛行機などが挙げられる。清浄環境システム100は、濾過機能(ダスト微粒子の除去)とフレッシュエア導入機能(酸素の吸気と二酸化炭素の排気)の両機能の空間的な機能縮退が解かれている。即ち、濾過機能は、閉空間10(閉空間10の内部11)に置かれたファンフィルターユニット30によって発現され、フレッシュエア導入機能は、閉空間10と外界12との間でダスト微粒子を実質的に通さず、気体分子は通す膜(ガス交換膜)で隔てるガス交換ユニット20によって発現される。これにより、濾過機能とフレッシュエア導入機能とが物理的に離れた別の場所で発現される。清浄環境システム100が適用される閉空間10は、外界12との間に気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系(クローズド・エアフロー・システム)であるが、分子としてのやり取りは存在する。分子導通的には、オープンシステムになる(即ちオープン・モレキュラー・ディフュージョン・システムである)ということで、在来換気とは一線を画するシステムである。なお、閉空間10は、窓や扉を有していてもよい。本実施形態において孤立閉鎖系(クローズド・エアフロー・システム)とは、窓や扉を閉じた状態で、内部11と外界12との間で気流としての気体の出入りが無い系であるが、ガス交換膜やガス交換ユニットを通じて、分子としての気体の出入りは許容する系である。
ここで、在来換気とは、建築基準法など法令で定められた換気を意味する。建築基準法では、換気回数を住居の居室等は0.5回/h以上、これ以外(非居住等)は0.3回/h以上とすることが求められている。換気回数は、居室等の全体の空気が1時間あたりに入れ替わる回数が「換気回数」である。また、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管理法)では、二酸化炭素濃度を1000ppm以下と設定することで、居室の適切な換気量を確保することが求められている。また、学校環境衛生基準では、換気の基準として、二酸化炭素濃度を1500ppm以下とすることが求められている。
ガス交換ユニット20(GEU)は、ガス交換膜25を備える。ガス交換膜25は、閉空間10の内部11と外界12との境界面、すなわち閉空間10の気体(内気1a)と外界12の気体(外気2a)との間の少なくとも一部に配置されている。ガス交換膜25は、閉空間10の気体(内気1a)と外界12の気体(外気2a)の濃度勾配によって気体分子を交換する。閉空間10の内部11で酸素が消費されて酸素濃度が低下し、二酸化炭素が排出されて二酸化炭素濃度が上昇した場合、ガス交換膜25は、外気2aから内気1aに向けて酸素を移動させ、内気1aから外気2aに向けて二酸化炭素を移動させることによってフレッシュエアを導入する。ガス交換ユニット20は、内気1aを取り込む内気入口と、ガス交換膜25によって生成したフレッシュエア1bを放出するフレッシュエア出口とを有する。また、ガス交換ユニット20は、外気2aを取り込む外気入口と、ガス交換膜25によって生成した酸素濃度が低く、二酸化炭素濃度が高い排ガス2bを放出する排ガス出口とを有する。ガス交換ユニット20は、外気2aをガス交換膜25の外界12側の表面に沿う方向に流す外界用送風装置(不図示)と、内部11の気体をガス交換膜25の内部11側の表面に沿う方向に流す内部用送風装置(不図示)とを備える。空気の約78体積%を占める窒素は、閉空間10の内部11と外界12で濃度に差がないかあってもごくわずかである。このため、ガス交換ユニット20では、内気1aと外気2aとの間で窒素は移動しないか移動してもごくわずかである。閉空間10の内部11と外界12との間で交換される気体分子は、ほぼ酸素と二酸化炭素である。このため、閉空間10と外界12との気体分子の交換に伴う熱の拡散が起こりにくい。また、内気1aおよび外気2aは、ガス交換膜25の表面に沿う方向に対向して対称的に流れ、ガス交換膜の両側での圧力差はほぼゼロであるので、気流に乗って移動する気中のダスト微粒子がガス交換膜を横切るための気流がゼロである。更に、内気1aおよび外気2a中のダスト微粒子は(エアロゾルとして空気中を浮遊する新型コロナ等のウイルスを含め)空気の構成分子に比べ桁違いの大きさでありこれらが不織布等ならなる目の極めて細かいガス交換膜をブラウン運動を伴う微粒子拡散プロセスによって横切る確率もほぼゼロである。こうして、ガス交換膜25の厚み方向の(エアロゾルとして空気中を浮遊する新型コロナ等のウイルスを含む)ダスト微粒子拡散はほぼ無視することができる。即ち、ガス交換膜25は、ダスト微粒子を実質的に通さない。
ガス交換膜25としては、例えば、不織布や和紙を用いることができる。特に不織布がポーラスな構造を持ち、空気層がガス交換膜面に垂直方向には相対的に大きな比率を占めると共に、不織布繊維は、専らガス交換膜面に沿った方向に延び、繊維に沿って走るフォノンが額交換膜面に垂直では無く、水平方向に主に伝搬するよう構成されたものが断熱性向上に向けて有効である(図8の構造は、この一つの極限的な例であると見做せる)。
清浄環境システム100で用いるガス交換ユニット20は、分子拡散と熱拡散を独立に制御する。次に、従来換気とガス交換ユニット20とを分子拡散と熱拡散の観点から説明する。
従来換気として、温度がToutにある外界の空気を、閉空間の内部に風量F(単位:m/s)で導入する場合を想定する。時刻t+δtにおける部屋の内部温度をT(t+δt)とし、閉空間の内部体積をV(単位:m)、空気の密度をρ(単位:kg/m)、比熱をC(単位:J/(kg・K))とすると、時刻t+δtにおける閉空間の内部の熱量ρVCT(t+δt)(単位:J)は、下記の式(I)で表される。
Figure 0007291355000005
式(I)から、下記の式(II)が得られる。
Figure 0007291355000006
さらに、式(II)から、下記の式(III)が得られる。
Figure 0007291355000007
これに対して、ガス交換ユニット20を適用した閉空間10において、内部11に人がいて酸素を消費し、二酸化炭素を排出している場合を想定する。閉空間10の壁や窓(図示せず)など外界12と接する構造体部分の断熱性は十分高く、これらを介した熱の出入りはゼロとみなせるものとする。またガス交換ユニット20に関しても、ガス交換膜以外の部分、即ち筐体やダクト継手など部分の断熱性も十分高く、これらを介した熱の出入りは近似的にゼロとみなせるものとする。この場合、熱の出入りはガス交換膜25を介してのものとなり、ガス交換膜25の密度をρ、ガス交換膜25の比熱をCとしてガス交換膜25の熱伝導及び気体分子の出入りに伴う熱量の増減を考慮すると、時刻t+δtにおける閉空間内の熱量ρVCT(t+δt)(単位:J)は、下記の式(IV)で表される(内部で例えば人が活動しているとすると、ガス交換膜25を介して酸素分子は流入、二酸化炭素分子は流出する)。
Figure 0007291355000008
ただし、式(IV)において、Vは閉空間10の内部11の体積(単位:m)、T(t)は時刻tにおける閉空間内部の温度(単位:K)、Aはガス交換膜25の面積(単位:m)、Dはガス交換膜25の熱拡散係数(単位:m/s)、Jは、閉空間10の内部11と外界12の濃度勾配(濃度差)に応じてガス交換膜を介して出入りするガス分子種iのフラックス(流束)(単位:1/(m・s))である。もし、ガス交換ユニットのガス交換膜以外の部分、即ち筐体やダクト継手などその他の部分を通じて部屋(閉空間)と外界の間に有限の熱伝導が残存する場合でも、これらの部分からの熱伝導分をガス交換膜を介した熱伝導分に加えたガス交換ユニット全体での熱伝導に対して改めてDと定義することで以下の解析式はそのまま成立する。右辺第2項は、ガス交換膜25を介した熱伝導による熱の出入りを、また、第3項は、分子一個あたり、オーダーにして約1kTの熱エネルギーを運ぶとして、閉空間10を出入りする分子に伴う熱の出入りを示す(εは、分子が流出する際には-1、流入する際には、+1を取る)。ここで、温度Tは、分子種iの分子の移動元の温度、即ち、分子が流出するときは閉空間内部の温度Tin、流入する際には、外部温度Toutを取る。人の活動に関わらない窒素の濃度は閉空間10の内部11と外界12で共通であり、通常は、酸素と二酸化炭素を考えればよいので、式(IV)は、下記の式(V)に示すように簡略化できる。
Figure 0007291355000009
ただし、式(V)において、JO2は酸素のフラックス(単位:1/(m・s))、JCO2は二酸化炭素のフラックス(単位:1/(m・s))であり、関数形としては、各々の拡散係数を用いて、下記の式(VI)で与えられる。δT/δを考えるに際しては、位置座標の原点として内外界面を取り、外側を正、内側を負ととる。右辺の第3項、第4項は、ガス交換膜25を介した各々酸素分子、二酸化炭素分子の移動(拡散)に伴う熱量の出入りである。例えば、菌類・植物の成長やヒトの呼吸等に伴う水分の発生も厳密に考慮する場合は、上式の二酸化炭素の項の後に、同じく負号を伴う水蒸気のフラックスの項を追加してもよい。
Figure 0007291355000010
ただし、式(VI)において、φは閉空間10の内部11の単位体積当たりの当該ガス分子数(単位:1/m)、Dはガス分子拡散係数(単位:m/s)であり、ガス交換膜25に垂直な方向をx軸としたとき、∇はこのx軸方向の微分演算子である。
式(V)より、下記の式(VII-a)と、酸素と二酸化炭素以外のガス分子も考慮した一般式(VII-b)が得られる。
Figure 0007291355000011
Figure 0007291355000012
段落0052における議論から分かるように、上記の式(VII-a)及び、式(VII-b)において、右辺第1項はガス交換膜の熱伝導による項で、右辺第2項は、ガス分子交換による熱伝導による項であることに留意されたい。
呼吸または燃焼による酸素、二酸化炭素の変化の比は、呼吸商の値からも分かる通り、良い近似で1とみなせるので、δt→0の極限を取ると、式(VII-a)と、一般形の式(VII-b)から式(VIII-a)と、一般形の式(VIII-b)が得られる。
Figure 0007291355000013
Figure 0007291355000014
ガス交換膜25の厚みLは、閉空間10のサイズに比べると2桁以上小さいので、δT/δは、下記の式(IX)で示す差分で置き換えることがよい近似となる。
Figure 0007291355000015
在来換気の熱流入の式(II)と、ガス交換ユニット20を用いた拡散換気の熱流入の式(VIII-a)と比較すると、式(IX)を踏まえて、下記の式(X)が得られる。
Figure 0007291355000016
また、在来換気の熱流入の式(II)と、ガス交換ユニット20を用いた拡散換気の熱流入の式(VIII-b)と比較すると、同じく式(IX)を踏まえて、下記の式(1)が得られる。
Figure 0007291355000017
上記の式(X)または式(1)を満たすようにガス交換膜(或いは段落0052に記したガス交換ユニット全体)の熱拡散係数Dを有するガス交換ユニット20は、在来換気と比較して温度変化を小さくすることができ、空調の消費電力を下げることができる。
ここで、式(X)は、後述の式(XIV)と式(XV)を結んだ際と同様の式変形によって、更に下記の式(XI)へと導かれる。
Figure 0007291355000018
さらに、式(XI)は、下記の式(XII)で表すことができる。
Figure 0007291355000019
これまでの式変形及び議論から分かるように、式(XII)において、左辺第1項はガス交換膜の熱伝導に起因する項で、左辺第2項は、ガス分子交換による熱伝導に起因する項である。ガス交換膜の熱伝導に起因する式(XII)の左辺第1項は、Dを小さくすることで十分小さくできる。他方、左辺第2項のkNは気体定数R(=8.314Jmol-1-1)に等しい。Cは、気体1モルあたりの体積で、22.4L/molが良い近似である。ρは気体の密度で空気では1.3Kg/m(二酸化炭素もほぼ等しいオーダーであり1.9Kg/m)である。比熱Cは、空気では約1000JKg-1-1(二酸化炭素は、約837JKg-1-1)である。よって、式(XII)中のKN/CρCは、8.314Jmol-1-1/(22.4L/mol・1.9Kg/m・8370JKg-1-1)=0.233~O(1)、即ち1のオーダーの数である。ADCO2/Lは、クリーンユニットシステムプラットフォーム(CUSP)の換気性能への要求から在来系の要求換気風量(即ち、式(XII)の右辺のF)に等しいかややこれより大きいが、いずれにせよオーダーFの量である。他方、ηin-ηoutは、閉空間10の内部11の二酸化炭素のバックグラウンド(或いは外界12の二酸化炭素濃度)からの増分で、法令などにより1000或いは1500ppmであることが求められ、通常は、多くても数千ppm以下であり、1万ppm(1%)を超えることは健康維持の観点からも厳に忌避されている。従って、ガス分子交換による熱伝導に起因する式(XII)の左辺第2項は右辺に比べ2桁以上小さく、(上述の十分小さくできる式(XII)左辺第1項と相俟って)機械換気に比べて部屋内と外界の間で入れ替える気体分子の総量が圧倒的に小さいGEUに基づく拡散換気の有効性が定量的に示された。なお、ηin-ηoutが1万ppmである場合、式(XII)は下記の式(2)で表される。
Figure 0007291355000020
上記の式(XII)および式(2)から、ガス交換を実現する分子移動に伴う熱量の移動は、つまり、左辺第2項の大きさは、本発明の技術的思想である拡散換気では、室内空気を全部入れ変えることによる在来換気に比べ、百分の一以下とできることが判る。トータルでの熱のロスを最小にするには、式(XII)および式(2)の左辺第1項が示す、ガス交換膜25を介した熱伝導を極力小さくすることが有効であることが判る。上述の通り、薄手のガス交換膜25を間に空気層を挟んで二重にしたり、ポーラスな不織布、あるいは長めの繊維がガス交換膜の膜面方向に走ることで、面に垂直な方向のフォノン伝導が抑えられた不織布などがこれに寄与する。これにより、式(XII)の不等式が成立し、在来換気に比べ、換気に伴う熱量の損失を少なくすることができる(SDGs実現などに向け、貢献することができる)。
ガス交換ユニット20は、外界12との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する閉空間10の気体と、外界12の気体との間の少なくとも一部に配置され、閉空間10の気体と外界の気体との濃度勾配によって気体分子を交換しダスト微粒子を実質的に通さないガス交換膜25を有し、ガス交換膜25を伝導により横切る熱量は、在来換気法を適用した場合の換気で失われる熱量に比べて十分に小さい。
ガス交換ユニット20はまた、外界12との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する閉空間10の気体と、外界12の気体との間の少なくとも一部に配置され、閉空間10の気体と外界の気体との濃度勾配によって気体分子を交換しダスト微粒子を実質的に通さないガス交換膜25を有し、ガス交換膜25の面積をA(単位:m)、ガス交換膜25の厚みをL(単位:m)、ガス交換膜25の密度をρ(単位:kg/m)、ガス交換膜25の比熱をC(単位:J/(kg・K))、ガス交換膜25の熱拡散係数をD(単位:m/s)とし、kをボルツマン定数、空気の比熱をC(単位:J/(kg・K))、空気の密度をρ(単位:kg/m)、分子種iの拡散係数をD(単位:m/s)、空気中の分子種iの単位体積当たりの数をφ(単位:1/m)、ガス交換膜25を横切る方向の微分演算子をδ/δ、閉空間10に在来換気を適用した場合の必要換気風量をF(単位:m/s)としたときに、上記の式(1)を満足する構成とされている。
また、ガス交換ユニット20は、アボガドロ数をN、系内の圧力における1モル当たりの気体体積をC(単位:m)、二酸化炭素の熱拡散係数をDCO2(単位:m/s)としたときに、上記の式(2)を満足する構成とされている。
次に、閉空間10の内部11のガス分子濃度について説明する。閉空間10の内部11のガス分子濃度η(t)は、下記の式(XIII)の微分方程式を満足する。
Figure 0007291355000021
ただし、式(XIII)において、Aはガス交換膜25の面積(単位:m)、Lはガス交換膜25の厚み(単位:m)、Dはガス交換膜25中の注目するガス分子(酸素分子等)の拡散係数(単位:m/s)、Bは閉空間10の内部11での呼吸等による酸素消費・二酸化炭素発生レート(消費される酸素では正の値となり、二酸化炭素やその他の体外に放出されるガスでは負の値となる)(単位:m/s)、ηは閉空間10の外界12の当該ガス分子濃度(単位:無次元)である。
孤立閉鎖系を構成する閉空間10の内部11においては、アボガドロ数をN、系内の圧力(~1気圧)における1モル当たりの気体体積をC(単位:m)、ガス交換膜25を通して閉空間10の内部11に導入される注目するガス(酸素等)のフラックス(流束)をj(単位:1/(m・s))とすると、時刻t+δtにおける当該ガスの体積Vη(t+δt)は、時刻tにおける当該ガスの体積Vη(t)を使って、下記の式(XIV)で表される。
Figure 0007291355000022
閉空間10の内部11では、ファンフィルターユニット30により発生する空気流により、閉空間10の内部の空気は十分早くかき回され十分早く空間的に均一化するので、閉空間10の内部11内の空気を構成するガス分子濃度の空間座標依存性を良い近似で無視することができる。上記式(XIV)の右辺第3項は、ガス交換膜25の両側(即ち閉空間10の内部11と外界12)での当該ガスの濃度差(濃度勾配)のために流入してくる当該ガスの分子の数である(空気流としてではなく、分子の拡散として当該ガスが閉空間10の内部11に入ってくるのである)。式(XIV)において、jは、前出の式(VI)で与えられる。式(XIII)中のLは、ガス交換膜25の厚みであり、100μmオーダーであり、極めて薄く、閉空間10の空間の差し渡し(数m~数十m)に比べ3桁以上程度小さい。このため、式(XIV)は、下記の式(XV)と高い精度で近似することができる。
Figure 0007291355000023
境界条件としてt=0の時の濃度η(0)は、外部の濃度ηに等しく、式(XIII)と式(XIV)におけるのと同様に、当該ガスが酸素(または二酸化炭素)である場合は通常20.9%程度(または440ppm)である。式(XIV)より、下記の式(XVI)の微分方程式が導かれる。
Figure 0007291355000024
式(V)式の厳密解は、下記の式(XVII)で表される。
Figure 0007291355000025
ここで、右辺のexp(-[AD/L]t/V)=0とおくと、時刻tにおける当該ガスの濃度(例えば酸素濃度)は、下記の式(XVIII)で表される(式(XVII)でt→∞とした場合に一致する)。
Figure 0007291355000026
例えば、式(XVIII)において、人が閉空間10の内部11に滞在することで、消費される酸素のようなガスの場合は、Bは正であるが、二酸化炭素のように閉空間内で生成するガスの場合は、Bは負の値を取る。
式(XVIII)より、在来換気における機械換気風量F(単位:m/s)に当たる量は拡散換気ではAD/L[次元解析を行うと、m・m/s・1/m=m/sであり、風量の次元に一致するもの]であり、F=AD/Lの対応関係が成り立つ。当該拡散は、室温Tに対応する熱エネルギーkTによって、熱力学第2法則に従ってエントロピー増大の方向に生じるもので、原理的には電力を必要としない。拡散換気は、機械換気に比べ圧倒的に消費電力はより少なくて済む。
即ち、図1に示す清浄環境システム100のガス交換ユニット20では、孤立閉鎖系を構成する閉空間10の一部にガス交換膜25を用いた分子拡散を通じて、閉空間10の内部11のガス分子濃度を制御することができる。ガス交換ユニット20では、少なくともその一部に面積A、厚みL、分子拡散係数Dを有するガス交換膜25を用いることで、上記のF=AD/Lなる対応原理(スケーリング則)に従って機械換気風量Fと同等の換気が実現できる。ガス分子濃度を空気流の出し入れに頼ることなく、対応の必要な分子のみに着目してその濃度を制御できる。窒素や室内空気に含まれる水蒸気成分も含め一回合切を入れ替えていた在来型機械換気と対照的に、本発明では、環境中立な成分である窒素を動かさず(かつ、内気の水蒸気成分も室内外水分子濃度に応じて、その差分のみ出し入れし)、また拡散を引き起こすものは空気を構成するガス分子の熱運動であるので特に付加的な電力も要しない、極めて省エネ効果の大きい重要な技術である。
したがって、ガス交換ユニット20は、閉空間10の内部11の体積をV(単位:m3)、ガス交換膜25の酸素の拡散係数をD(単位:m/s)、前記気体交換膜の厚みをL(単位:m)としたとき、体積Vとガス交換膜25の面積A(単位:m)とを、{(V/A)/(D/L)}でスケーリングさせて設計が行われ、閉空間10の内部11の酸素消費レート(単位:m/s)をB、外界12と平衡状態にあり閉空間10の内部11で酸素消費の無いときの酸素体積をVO2(単位:m)、閉空間10内における目標酸素濃度(単位:無次元)をη(η>0.18)としたとき、ガス交換膜25の面積Aが下記の式(3)を満足するように設定されている構成とされている。
Figure 0007291355000027
ファンフィルターユニット30は、閉空間10の内気1aを吸引する開口と、吸引された内気1aを粒子数密度および分子濃度の双方に関して清浄化処理後、その全量を、清浄空気1cとして、再び、閉空間10の内部11に戻す吹き出し口とを有する。塵埃捕集効率γは0<γ<1である。ファンフィルターユニット30としては、中性能フィルターを用いたファンフィルターユニット(FFU)を利用することができる。ファンフィルターユニット30は、閉空間10の内気1aを取り込んで、内気1a中のダスト微粒子を捕集して、ダスト微粒子濃度が低減した清浄空気1cを閉空間10の内部11に導入する。ここで、ダスト微粒子には、閉空間10の内部11に浮遊する微生物(ウイルスや細菌)、粉塵(ダニ、花粉、放射性物質を含む塵埃等)等を含む微粒子全般が含まれる。
図1に示すような、少なくとも内外境界面の一部がガス交換膜25により形成された閉空間10の内部11におけるダスト微粒子の数密度n(t)は、下記の式(XIX)なる微分方程式で表される。
Figure 0007291355000028
ただし、式(XIX)において、Vは閉空間10の内部の体積(単位:m)、Sは、使用者の衣服や家具などの外表面積と閉空間10の内部11の表面積の和(単位:m)、σは単位面積・単位時間当たりのダスト微粒子発生量(単位:1/(m・s))、Fはファンフィルターユニットの風量(単位:m/s)、γはファンフィルターユニットのダスト微粒子捕集効率(単位:無次元)である。
式(XIX)を解くと、下記の式(XX)が得られる。
Figure 0007291355000029
ただし、式(XX)において、t=0のときのダスト微粒子の数密度n(0)=Nとした。t=∞のときのダスト微粒子の数密度n(∞)は、下記の式(XXI)で表される。
Figure 0007291355000030
在来系クリーンルームの濾過で使用されているHEPAフィルターやULPAフィルターは、γが極めて1に近く目詰まりしやすいのみならず、圧力損失も大きくならざるを得ないのに対し、本実施形態のシステムでは、式(XXI)より分かるように、γが1に近いことは、必ずしも重要ではない。例えば、γ=0.9の中性能フィルターであっても、1/0.9=1.11であり、理想的なγ=1の場合(これは実際には目詰まり耐性の観点上、不可能である)に比べても、11%しか劣化しないが、目の相対的な粗さにより、圧力損失的には大きく減少し、消費電力はより少なくて済む。更に、実際には、ファンフィルターユニットの運転を開始してから十分に時間が経った時(t>10V/γF)には実質的に式(XXI)の究極のダスト微粒子数密度が得られる。フィルターの目詰まりが僅少で痛まない、電力消費も極小の静穏清浄空間が実現し、SDGsに大いに資することができる。
清浄環境システム100は、クローズドエアフローシステムであるため、ファンフィルターユニット30から導入された清浄空気1cの全量が、内気1aとしてファンフィルターユニット30の吸気口に還流する。このため、ファンフィルターユニット30を連続的に作動させて、ファンフィルターユニット30に内気1aを繰り返し通過させることによって高い濾過効果を得ることができる。
図2は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムで用いられるファンフィルターユニットのダスト微粒子捕集能力を示すグラフである。図2には、閉空間10の内気1aをファンフィルターユニット30に通過させたときのダスト微粒子捕集能力を示す。ファンフィルターユニット30のフィルターとしては、中性能フィルター、HEPAフィルター、ULPAフィルターを用いた。ファンフィルターユニット30に内気1aの全量を1回通過させたときのダスト微粒子捕集能力を実線で示す。中性能ファンフィルターユニット(FFU)を用いたファンフィルターユニット30に内気1aの全量を2~8回まで繰り返し通過させたときのダスト微粒子捕集能力を破線で示す。
図2の横軸は、ダスト微粒子の粒子径(Particle Size、単位:μm)であり、縦軸は透過率(Transmissivity、単位:%)と濾過効率(Filtrating Efficiency、単位:%)である。濾過効率は、1から透過率を減じた値である。
図2のグラフから、中性能ファンフィルターユニット(FFU)を使用した場合でも、ファンフィルターユニット30に内気1aを多数回通過させることによって、HEPAやULPAを使用したときを上回る濾過効率が得られることがわかる。
図3は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムの高清浄度実現能力を実証した実験結果である。図3に、閉空間10の内気1aを、ダスト微粒子捕集効率が約95%の市販の空気清浄機に繰り返し通過させたときのダスト微粒子カウント数(Particle counts、単位:1/cf)の時間変化を示す(ダスト微粒子のサイズ:0.3μm、0.5μm、1.0μm)。なお、図3において、ダスト微粒子カウント数が0の場合、対数プロットでは-∞に発散するので、便宜上0.1にプロットした。
閉空間10の内部11の体積は約3m、ファンフィルターユニット30の風量は約3m/分の条件で内気1a中のダスト微粒子を捕集した。内気1a中のダスト微粒子カウント数は、“METONEHHPC3+”パーティクルカウンターを用いて測定した。
図3のグラフから、ダスト微粒子捕集効率が約95%の市販の空気清浄機を用いても短時間で内気1aの清浄度が向上することが示された。このグラフに示す結果から、式(XX)から予測されるF/V~1のときのダスト微粒子の減少レートとよく一致することがわかる。
図4は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムで用いられるガス交換ユニットの一例を示す側面図である。図5は、図4のV-V線断面図であり、図6は、図4に示すガス交換ユニットを内気入口側から見た正面図である。図7は、図4に示すガス交換ユニットに用いられているガス交換部の側面図である。図8は、図7のVIII-VIII線断面図であり、図9は、図8のIX部の拡大図であり、図10は、図7に示すガス交換部を内気入口側から見た正面図である。図4~図10では便宜上、左手系を用いた。以下、ガス交換ユニットおよびガス交換部の内気入口側を正面、外気入口側を背面ということがある。
図4~図6に示すように、ガス交換ユニット40は、筐体41と、筐体41に収容されたガス交換部50、間仕切り衝立42a、42bを有する。筐体41の正面の上下方向(z方向)の下方には内気入口43aが、上方には排ガス出口44bが配置されている。また、背面の上下方向(z方向)の下方には外気入口44aが、上方にはフレッシュエア出口43bが配置されている。フレッシュエア出口43bには内部用送風装置43cが設けられ、排ガス出口44bには外界用送風装置44cが設けられている。
内気入口43aと排ガス出口44bとの間に配置された間仕切り衝立42aは、内気1aと排ガス2bとが接触するのを防止する。フレッシュエア出口43bと外気入口44aとの間に配置された間仕切り衝立42bは、フレッシュエア1bと外気2aとが接触するのを防止する。
内気入口43aから導入された内気1aは、ガス交換部50に供給される。また、外気入口44aから導入された外気2aは、ガス交換部50に供給される。ガス交換部50にて、内気1aの二酸化炭素と外気2aの酸素とが置換され、内気1aは、酸素濃度が上昇し、二酸化炭素濃度が低減したフレッシュエア1bとして、外気2aは、酸素濃度が低減し、二酸化炭素濃度が上昇した排ガス2bとして、ガス交換部50から取り出される。フレッシュエア1bは、フレッシュエア出口43bを通って閉空間10に戻される。一方、排ガス2bは、排ガス出口44bを通って外界12に放出される。
図7~図10に示すように、ガス交換部50は、2枚のガス交換膜25が空気スペーサ層51を挟んで積層されたガス交換膜積層体52が間隔53をあけて周期的に配置された構造体とされている。間隔53の距離は、例えば、3~15mmの範囲内である。間隔53の正面側または背面側のいずれか一方の端部に交互に気流ブロック54が設けられている(図8を参照)。気流ブロックは、気体がガス交換部50内に侵入することを防止する。また、気流ブロック54は、上下方向(z方向)の中央に配置された間仕切り56に対して上下方向で交互に異なる位置に設けられている(図10参照)。例えば、ガス交換部50に送られた内気1aは、正面側の下方側の間隔53aを通ってガス交換部50の内部に入る(図10参照)。一方、背面側では、下方側の間隔53は、気流ブロック54が設けられているため気体は通過できない。このため、ガス交換部50の内部で生成したフレッシュエア1bは背面側では上方側の間隔53を通って外部に出る。同様に、外気2aは、背面の下方側の間隔53からガス交換部50の内部に入り、ガス交換部50の内部で生成した排ガス2bは、正面の上方側の間隔53bを通って外部に出る。内気1aが正面の下方側から背面の上方側に向かう方向(第1方向)に流れ、外気2aが背面の下方側から正面の上方側に向かう方向(第2方向)に流れることによって、第1方向に流れる内気1aの速度ベクトルと第2方向に流れる外気2aの速度ベクトルの内積が負(対向流)となる(図4を参照)。
ガス交換ユニット40の内部と外界を隔てる部分は、ガス交換膜25、筐体41を含め、断熱性能の高い素材を用いることで、熱の拡散をより抑えることができる。空気の熱伝導率は、金属やその他固体に比べ、3桁~2桁低いので、熱伝導を気体分子によるもののみに抑えることができる(この気体分子はガス交換を担うものであるので、これをゼロとすることはできないので、これが熱伝導抑制の下限であり、式(VII-a、VII-b)の右辺第2項に対応する)。ガス交換膜積層体52におけるガス交換膜25・空気スペーサ層51・ガス交換膜25の多層構造は、ポロシティー(空隙率)と厚みを制御した単体不織布によって置き換えることも可能である。
また、ガス交換ユニット40においては、ガス交換膜25に沿って室内気流、外気流が流れるため、フィルターを横切って外気が室内に導入される在来換気に比べ、基本的に圧力損失が非常に小さいが、さらに圧力損失を下げるために、乱流発生の効果による圧力損失を抑えることが有効である。図9に示すように、ガス交換部50の内気1aが入る間隔53aの周囲に気流整流器55を配置することによって圧力損失を抑えることができる。また、図示しないが、同様にガス交換部50の外気2aが入る間隔53の周囲に気流整流器55を配置することによって圧力損失を抑えることができる。さらに、ガス交換部50のフレッシュエア1bおよび排ガス2bが出る間隔53の周囲に気流整流器55にも設けることにより乱流発生を抑えることができ、圧力損失の低減に有効である。
図4に破線矢印で示す外気2aの速度ベクトルと内気1aの速度ベクトルは、対向流であることから、内積が負となる。内気1aと外気2aの速度ベクトルの内積が負となる、すなわち内気1aと外気2aとを反平行の方向に流した場合、内気1aと外気2aとを同一方向に流した場合と比較して、特に、後述の拡散時間Tとトランジット時間Tの間にT>Tなる関係を成立させることで、ガス交換効率が大きく向上する。
図11は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムで用いられるガス交換ユニットのガス交換能力のシミュレーション結果である。この図11に示すグラフから、内気1aと外気2aの速度ベクトルの内積が負となる方向(内気1aと外気2aの速度ベクトルが対向する方向)に流すことによってガス交換効率が大きく向上することがわかる。内気1aと外気2aの速度ベクトルの内積が負となる方向に流すことによってガス交換効率が大きく向上する理由は、次のように考えられる。まず、ガス交換ユニット40において、気体のガス交換部50内のトランジットタイムTに比べ、注目するガス分子がガス交換膜25を横切る拡散時間Tが十分小さくなる(T<Tとなる)ように設定されている。このため、ガス交換部50の出口で分子拡散が十分完了している状態(ガス交換膜の両側でガス分子濃度が平衡に達した状態)が実現し、内気1aと外気2aとを同一方向に流した場合については、内気1aの流れと外気2aの流れが、ガス交換膜積層体52を挟んで互いに線対称の配置となる。よって、その対称軸の端点であるガス交換部50の出口での内気(フレッシュエア1b)及び外気(排ガス2b)の注目するガス分子濃度は、ガス交換部50の入口での内気1aと外気2aの各濃度の平均値となる。
これに対して、内気1aと外気2aとを対向する方向に流した場合(内気1aと外気2aの速度ベクトルの内積が負となる場合)については、内気1aの流れと外気2aの流れが、ガス交換膜積層体52を挟んで互いに点対称の配置となる。その対称性の中心であるガス交換部50の中心で内気1aと外気2a中の注目するガス分子濃度は、入り口での各濃度の平均値となる。この結果、図11に示すように、反平行性が高い対向流ほど、内気1aと外気2aの間で、注目するガス分子濃度が、入り口と出口で入れ替わるような効率の高いガス交換が実現する(この時、ガス交換膜中の分子拡散定数に応じて、T<Tとなるようにガス交換ユニット40を流れる風量は決定される)。
図12は、本発明の第1実施形態に係る清浄環境システムのガス交換能力を実証した実験結果である。図12には、ガス交換ユニット40を用いたガス交換能力の実験結果が示されている。ガス交換ユニット40のガス交換部50は、ガス交換膜25は、炭化水素系の繊維からなる不織布(厚み:約160μm)を、多数枚重ねて、内気1aと外気2aとのガス交換が可能な部分の面積が約3mとなるように構成した。閉空間での人の呼吸を模して火を炊き、その後、消火したときの閉空間の酸素濃度と二酸化炭素濃度を測定した。その結果を図12に示す。図12のグラフから、火を炊いた時の酸素濃度の減少と二酸化炭素濃度の増加、消火後の酸素濃度の回復と二酸化炭素濃度の減少が見て取れる。この結果から、ガス交換ユニット40のガス交換能力が実証された。
したがって、ガス交換ユニット40は、閉空間10の気体(内気1a)をガス交換膜25の表面に沿う第1方向に流す送風機と、外界12の気体(外気2a)をガス交換膜25の表面に沿う第2方向に流す送風機とを有し、第1方向に流れる気体の速度ベクトルと第2方向に流れる気体の速度ベクトルの内積が負である構成とされていてもよい。
図13は、本発明の第2実施形態に係るエネルギー環境システムを部屋へ適用した実施例を示す断面図であり、図14は、図13のXIV-XIV線断面をガス交換ユニット側の部屋外から見た図であり、図15は、図13のXV-XV線断面を上方から見た図である。
図13~図15に示すように、部屋110は、壁111で囲われ、上方に天井112を有する。部屋110は、内部115と外界116との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する。部屋110の壁111の一部は断熱材120で覆われている。
エネルギー環境システム200は、清浄環境システムと太陽光発電システムとを備える。
清浄環境システムは、フレッシュエア導入機能と濾過機能の空間的な機能縮退を解いた分離型清浄環境システムであり、フレッシュエア導入機能を有するガス交換ユニット40と、濾過機能を有するファンフィルターユニット30とを備える。ガス交換ユニット40とファンフィルターユニット30は、上述のとおり、部屋110の内部115の高清浄度化、ガス分子濃度の制御を行う。ガス交換ユニット40は部屋110の天井112の上の天井空間113に配置されている。ファンフィルターユニット30は、部屋110の内部115の内部に配置されている。ガス交換ユニット40は、外界116に接続している。部屋110は、建築物内の空間の区画であり壁や天井などで仕切られた空間であり、外界116との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する。ガス交換ユニット40およびファンフィルターユニット30としては、上述の清浄環境システム100で用いられるものを用いることができる。
太陽光発電システムは、受光機能と発電機能の空間的な機能縮退を解いて、両者を二次元的に繋いだ2DPRCSであり、受光機能を有する受光部130と発電機能を有する発電部(不図示)とが二次元的に接続されている。受光部130は、太陽光を受光し、受光した太陽光を発電部に二次元的に送る光導波路としても作用することが好ましい。受光部130が光導波路としても作用することによって、部屋110の外界(建築物の外面)に広範囲で配置することができる。建築物の外面は、例えば、建築物の側面、屋上などである。受光部130としては、例えば、リディレクション導波路およびパラボリックミラーを用いることができる。受光部130のサイズは、例えば、レンガ大のサイズから、ビル側壁材のサイズである1m四方くらいまでのサイズとすることができる。発電部は光電変換素子であり、受光部130から送られた太陽光を用いて発電する。得られた電気エネルギーは、清浄環境システム(ガス交換ユニット40とファンフィルターユニット30)で利用できる。これによって、ファンフィルターユニット30を連続的に作動することができる。このため、中性能フィルターを用いても部屋110の内部115のダスト微粒子の量を低減させることができる。また、ガス交換ユニット40は断熱性を有するので、部屋110の内部115の熱を外界116に放出しにくい。さらに、太陽光発電システムの受光部130は、壁111を通じて部屋110に持ち込まれる太陽光エネルギーを、光のまま発電部へと導き、電気エネルギーに変換するので、受光部130と部屋110の壁111の間に置かれた断熱材120の効果と相まって、建築物に付与される太陽光の照射熱を断熱して、部屋110の内部115の温度上昇を抑止する効果を持つ。清浄環境システムを夜間でも安定して作動させるため、太陽光発電システムは蓄電器を有していて、昼間に発電した電気エネルギーを蓄電して夜間に利用できるようにしてもよい。
本実施形態のエネルギー環境システム200は、在来換気による清浄環境システムにおけるフレッシュエア導入機能と濾過機能の空間的な機能縮退を解いた分離型清浄環境システムと、前記分離型清浄環境システムを作動させるための電気エネルギーを供給する太陽光発電システムと、を備え、前記分離型清浄環境システムが上述の清浄環境システムであり、前記太陽光発電システムが受光機能と発電機能の空間的な機能縮退を解いたものであり、かつ前記受光機能と前記発電機能とが二次元的に接続されたものである。このエネルギー環境システムは、前記濾過機能が前記ファンフィルターユニットによって実施され、前記太陽光発電システムは前記ファンフィルターユニットを連続的に作動させるための電気エネルギーを供給し、前記フレッシュエア導入機能が前記ガス交換ユニットによって実施され、前記ガス交換ユニットは断熱性を有し、前記太陽光発電システムは前記受光機能を有する光導波路を有し、外界との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する部屋または閉空間を有する建築物の外面に前記光導波路が配置されることにより、前記建築物に付与される太陽光の照射熱を断熱する構成とされていてもよい。
図16は、本実施形態のエネルギー環境システムを都市空間に適用した実施例を示す概念図である。都市を構成するビルや建屋などの建築物140の各部屋には、本実施形態の清浄環境システムが適用され、超低消費電力での高清浄度化と室内ガス分子濃度制御が可能となっている。また、この大都市は、建築物140の外側に配置された受光部130と発電部(不図示)とを有する2DPRCSの太陽光発電システムが備えられていて、太陽光発電システムで得られた電気エネルギーは清浄環境システムで利用されるようにされている。この2DPRCSを適用したときの受光部130の設置面積は、非特許文献4、5などが示すように、十分発達した都市空間は面射影時には1.7~1.8程度の(3次元では、2.7~2.8に対応する)フラクタル次元を有していることから、受光部130の設置面として建築物140の側壁や屋上部分の面積を稠密に活用することで、単なる両面発電タイプの太陽光パネル以上の効率を可能とする。即ち、従来の両面発電太陽電池は、表と裏の2方向からの光しか電気エネルギーに変換できなかったのに対し、四方八方からの散乱光(非特許文献6の高反射率白色ペイントを施した側壁からの散乱光、および、在来型建物や道路からの散乱光)を電気エネルギーに変えることができる。電力の一大消費地である大都市部を、そのままメガソーラー発電所とすることができる。送電ロスの全くない大規模電力版“地産地消”を実現することができる。
本実施形態において、建築物140は、外界との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する部屋または閉空間と、フレッシュエア導入機能と濾過機能が空間的に機能縮退しない清浄環境システムと、受光機能と発電機能の空間的な機能縮退が解かれ、且つ二次元的に接続された太陽光発電システムとを有する構成とされていてもよい。
また、本実施形態において、建築物140は、外界との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する部屋または閉空間と、ガス交換ユニットおよびファンフィルターユニットを備える清浄環境システムと、前記清浄環境システムに電気エネルギーを供給する太陽光発電システムとを有し、前記ガス交換ユニットは、前記部屋または前記「閉空間の気体と、前記外界の気体との間の少なくとも一部に配置され、前記部屋または閉空間の気体と前記外界の気体との濃度勾配によって気体分子を交換しダスト微粒子を実質的に通さないガス交換膜を有し、当該ガス交換膜を伝導により横切る熱量が、在来換気を適用した場合の換気で失われる熱量より小さく、前記ファンフィルターユニットは、前記部屋または閉空間に配置され、前記太陽電池システムは、受光部と発電部とを有し、前記受光部は前記建築物の外面に配置され、前記発電部は前記受光部とは物理的に離れた位置に配置され、前記受光部と前記発電部とが二次元的に接続されている構成であってもよい。
さらに、本実施形態において、建築物140は、外界との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する部屋または閉空間と、ガス交換ユニットおよびファンフィルターユニットを備える清浄環境システムと、前記清浄環境システムに電気エネルギーを供給する太陽光発電システムとを有し、前記ガス交換ユニットは、前記部屋または閉空間の気体と、前記外界の気体との間の少なくとも一部に配置され、前記部屋または閉空間の気体と前記外界の気体との濃度勾配によって気体分子を交換しダスト微粒子を実質的に通さないガス交換膜を有し、前記ガス交換膜の面積をA、前記ガス交換膜の厚みをL、前記ガス交換膜の密度をρ、前記ガス交換膜の比熱をC、前記ガス交換膜の熱拡散係数をDとし、kをボルツマン定数、空気の比熱をC、空気の密度をρ、空気中の分子種iのガス分子拡散係数をD、空気中の分子種iの単位体積当たりの数をφ、前記ガス交換膜を横切る方向の微分演算子をδ/δ、前記部屋または閉空間に在来換気を適用した場合の必要換気風量をFとしたときに、前記の式(1)を満足し、前記ファンフィルターユニットは、前記部屋または閉空間に配置され、前記太陽電池システムは、受光部と発電部とを有し、前記受光部は前記建築物の外面に配置され、前記発電部は前記受光部とは物理的に離れた位置に配置され、前記受光部と前記発電部とが二次元的に接続されている構成であってもよい。
図17は、本発明に係るエネルギー環境システムと在来の清浄環境システムのエネルギー収支を示す概念図である。
在来の清浄環境システム(在来システム)では、図17に示すように、在来型換気に必要な大きなエネルギー消費と、有効活用されない太陽光エネルギーが建物に吸収され、建物及びこれを構成する各部屋の温度上昇を他所で発電され、送電ロスを甘受しながら都市部に運ばれた電力Wによる冷房により引き下げる必要があった。電力Wによる冷房においては、熱力学第2法則により、冷房前の温度に於ける高い室内気体の持つ熱エネルギーEと冷房後の低い温度に於ける室内気体の持つエネルギーEの差E-E以上のエネルギーを当該冷房プロセスに注入する必要がある。このため、太陽光吸収による温度上昇をキャンセルする冷房に必要なエネルギーは、建物の温度上昇をもたらした当該太陽光エネルギーよりも多くなり(図17の左端に示す差分が生じ)、都市のヒートアイランド現象に拍車をかけることとなる。このように従来のシステムでは、換気による空気の浄化と空気の温度の調整に多量のエネルギーが必要で、都市気候の変動につながる一つの要因となっていた。
これに対して、本発明に係るエネルギー環境システム(本発明のシステム)は、清浄環境システムのフレッシュエア導入機能と濾過機能の空間的な機能縮退が解かれているので、上述の通り、換気の為の消費エネルギーが大幅に低減する。また、建物に照射される太陽光エネルギーを、2DPRCSを利用して建物に吸収させることなく電気エネルギーへ変換することで、温度上昇の原因を元から断ち、かつ、電力として有効活用するという一石二鳥の効果をもたらすことができる。建物の太陽光吸収による温度上昇を抑え、冷房による電力の消費量を低減させるのみならず、従来無駄に熱として失われた太陽光のエネルギーを電力に変えることができる。このため、図17に示すように、太陽光から生成した生成エネルギー(E)から換気の為の消費エネルギー(-E)の差分(E-E)である最終的なエネルギー収支は、正となり、利用可能エネルギーが残る。残った利用可能エネルギーは、例えば、蓄電器に蓄電して、夜間に清浄環境システムを作動させる際のエネルギーとして利用することができる。近未来におけるSDGsの実現のみならず、都市気候変動の緩和に資することができる。
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、2DPRCSの受光部130の表面構造は平面型に限定されるものではない。受光部130の表面構造は波状であってもよい。また、円柱側面を活用して、上に突、下に突の円柱側面を接続して波状の表面構造をとりながらも、建築物の側壁を覆うこともできる。ファンフィルターユニットは、雨露をしのげるなど耐候性が担保されれば、前記部屋または閉空間の外、即ち外界に配置することも可能である上述の実施の形態において挙げた数値、構造、構成、形状、配置等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、配置等を用いてもよい。
1a 内気
1b フレッシュエア
1c 清浄空気
2a 外気
2b 排ガス
10 閉空間
11 内部
12 外界
20 ガス交換ユニット
25 ガス交換膜
30 ファンフィルターユニット
40 ガス交換ユニット
41 筐体
42a、42b 間仕切り衝立
43a 内気入口
43b フレッシュエア出口
43c 内部用送風装置
44a 外気入口
44b 排ガス出口
44c 外界用送風装置
50 ガス交換部
51 空気スペーサ層
52 ガス交換膜積層体
53 間隔
54 気流ブロック
55 気流整流器
100 清浄環境システム
110 部屋
111 壁
112 天井
113 天井空間
115 内部
116 外界
120 断熱材
130 受光部
140 建築物
200 エネルギー環境システム

Claims (6)

  1. ガス交換ユニットと、ファンフィルターユニットとを含み、
    前記ガス交換ユニットは、外界との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する部屋または閉空間の気体と、前記外界の気体との間の少なくとも一部に配置され、前記部屋または閉空間の気体と前記外界の気体との濃度勾配によって気体分子を交換しダスト微粒子を実質的に通さないガス交換膜を有し、前記ガス交換膜の熱伝導による熱の出入りと前記気体分子の交換による熱伝導の2つを考慮して構成され、
    前記ガス交換膜の面積をA、前記ガス交換膜の厚みをL、前記ガス交換膜の密度をρM、前記ガス交換膜の比熱をC、前記ガス交換膜の熱拡散係数をDとし、kをボルツマン定数、空気の比熱をC、空気の密度をρ、空気中の分子種iのガス分子拡散係数をDi、空気中の分子種iの単位体積当たりの数をφi、前記ガス交換膜を横切る方向の微分演算子をδ/δ、前記部屋または閉空間に在来換気を適用した場合の必要換気風量をFとしたときに、前記ガス交換膜の熱伝導による熱の出入りを抑えることで、下記の式(1)を満足し、
    Figure 0007291355000031
    前記ファンフィルターユニットは、前記部屋または閉空間に配置される、清浄環境システム。
  2. アボガドロ数をN、系内の圧力における1モル当たりの気体体積をC、二酸化炭素の熱拡散係数をDCO2としたときに、下記の式(2)を満足する、請求項に記載の清浄環境システム。
    Figure 0007291355000032
  3. 前記部屋または閉空間がその内部気体を前記ガス交換膜の表面に沿う第1方向に流す送風機と、前記外界の気体を前記ガス交換膜の表面に沿う第2方向に流す送風機とを有するガス交換ユニットを備え、前記ガス交換ユニットにおいて前記第1方向に流れる気体の速度ベクトルと前記第2方向に流れる気体の速度ベクトルの内積が負であり、
    前記内部気体の前記ガス交換ユニットにおけるガス交換部内のトランジットタイムTに比べて、注目するガス分子が前記ガス交換膜を横切る拡散時間Tが十分小さくなる(T<Tとなる)ように設定されている、請求項1または2に記載の清浄環境システム。
  4. 前記部屋または閉空間の体積をV、前記ガス交換膜の酸素のガス分子拡散係数をD、前記ガス交換膜の厚みをLとした時、上記体積Vと前記ガス交換膜の面積Aとを、{(V/A)/(D/L)}でスケーリングさせて設計が行われ、
    前記部屋または閉空間の酸素消費レートをB、前記外界と平衡状態にあり前記部屋または閉空間で酸素消費の無いときの酸素体積をVO2、前記部屋または閉空間内における目標酸素濃度をη(η>0.18)としたとき、前記ガス交換膜の面積Aが下記の式(3)を満足するように設定される、請求項1または2に記載の清浄環境システム。
    Figure 0007291355000033
  5. フレッシュエア導入機能と濾過機能の空間的な機能縮退が解かれた清浄環境システムが適用される閉空間あるいは建築物の外面に、受光機能と発電機能の空間的な機能縮退が解かれ、且つ二次元的に接続された太陽光発電システムの前記受光機能を有する受光部を兼ねる光導波路が配置された、エネルギー環境システムであって、
    前記清浄環境システムは、
    ガス交換ユニットと、ファンフィルターユニットとを含み、
    前記ガス交換ユニットは、外界との間で気流としてのガス交換のない孤立閉鎖系を構成する部屋または閉空間の気体と、前記外界の気体との間の少なくとも一部に配置され、前記部屋または閉空間の気体と前記外界の気体との濃度勾配によって気体分子を交換しダスト微粒子を実質的に通さないガス交換膜を有し、前記ガス交換膜の熱伝導による熱の出入りと前記気体分子の交換による熱伝導の2つを考慮して構成され、
    前記ガス交換膜の面積をA、前記ガス交換膜の厚みをL、前記ガス交換膜の密度をρM、前記ガス交換膜の比熱をC 、前記ガス交換膜の熱拡散係数をD とし、kをボルツマン定数、空気の比熱をC 、空気の密度をρ、空気中の分子種iのガス分子拡散係数をDi、空気中の分子種iの単位体積当たりの数をφi、前記ガス交換膜を横切る方向の微分演算子をδ/δ 、前記部屋または閉空間に在来換気を適用した場合の必要換気風量をFとしたときに、前記ガス交換膜の熱伝導による熱の出入りを抑えることで、下記の式(1)を満足し、
    Figure 0007291355000034
    前記ファンフィルターユニットは、前記部屋または閉空間に配置される、
    エネルギー環境システム
  6. 前記濾過機能のための電力を上記発電機能により供給することで前記濾過機能と前記発電機能を結合し、
    上記フレッシュエア導入機能の請求項に記載のガス交換ユニットによる実施と、前記太陽光発電システムの前記受光部を兼ねる前記光導波路の、前記清浄環境システムが適用される部屋または閉空間を有する建築物の外面への配置により、太陽光を建物に吸収させることなく電気エネルギーに変えることで相乗的にエネルギー効率の向上を可能とした、請求項に記載のエネルギー環境システム。
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