以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、後述する各処理の実行順序は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。
本実施形態では、図1及び図2に示されるプリンタ10を説明する。プリンタ10は、図2に示されるように、筐体20と、筐体20に保持されるパネルユニット21、カバー22、給紙トレイ23、及び排紙トレイ24と、を備える。
パネルユニット21は、パネル本体41と、パネル本体41に保持されたタッチパネル42及び複数の操作スイッチ45とを備える。パネル本体41は、矩形板状であり、筐体20の一面に取り付けられている。以下では、プリンタ10が水平面に載置された状態において、パネル本体41が位置する筐体20の一面を前面として前後方向8を定義し、鉛直方向に沿う方向を上下方向7として説明する。また、プリンタ10を前方から見た場合の左右を左右方向9として定義する。前後方向8及び左右方向9は、水平面と平行であって、かつ上下方向7とそれぞれ直交しており、さらにかつ、互いに直交している。
タッチパネル42は、図1に示されるように、表示パネル43と、表示パネル43に重畳された透明な膜状のタッチセンサ44とを有する。タッチセンサ44は、ユーザがタッチした表示パネル43における位置を示す位置情報を出力する。なお、タッチセンサ44と操作スイッチ45との一方のみがパネルユニット21に設けられていてもよい。
給紙トレイ23は、図2に示されるように筐体20の下部に位置しており、着脱可能に筐体20に保持されている。排紙トレイ24は、筐体20の下部であって、給紙トレイ23の上に位置しており、給紙トレイ23或いは筐体20に保持されている。カバー22は、筐体20の前面の右部に位置しており、回動可能に筐体20に保持されている。カバー22は、筐体20の右部に設けられた開口を閉塞する閉塞位置と、開口を開放する開放位置との間で回動する。装着ユニット30が、開口の奥に配置されており、筐体20に保持されている。
装着ユニット30は、図3に示されるように、筐体20に保持された装着ケース71を備えている。装着ケース71は、複数のカートリッジ13を着脱可能に保持する。図示例では、装着ケース71は、4つのカートリッジ13を着脱可能に保持している。4つのカートリッジ13は、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの色のインクのうちの1つの色のインクをそれぞれ貯留する。すなわち、プリンタ10は、いわゆるカラーのインクジェットプリンタである。ただし、プリンタ10は、いわゆるモノクロプリンタであってもよい。すなわち、装着ケース71は、ブラックのインクを貯留するカートリッジ13のみを保持可能であってもよい。また、装着ケース71は、インクではなく、トナーを収容する複数のカートリッジを着脱可能に保持してもよい。すなわち、プリンタ10は、いわゆるカラーのレーザプリンタであってもよい。インク及びトナーは、消費材の一例である。
図3に示されるように、1つのカートリッジ13と対応付けて、1つのサブタンク72、1つのニードル75、1つのカートリッジI/F74、1つの液面センサ33、及び1つのスライド装置73からなる1つのセットが設けられている。すなわち、4つの上記セットが装着ケース71に設けられている。各セットの構成は略同一であるので、以下では、1つのセットについて説明する。
カートリッジI/F74は、端子である。「I/F」は、インタフェースの略である。カートリッジI/F74は、装着ケース71に装着されたカートリッジ13が有するICチップ14の不図示の電極と当接する位置に設けられている。なお、カートリッジI/F74は、アンテナや、発光ダイオード及びフォトダイオードなどであってもよい。すなわち、カートリッジI/F74は、電波や光を用いて後述のICチップ14と情報やデータを送受信してもよい。
ニードル75は、装着ケース71の側壁に保持されている。ニードル75の一端部は、装着ケース71においてカートリッジ13が保持される空間に向かって突出している。ニードル75の一端部は、装着ケース71に装着された後述のカートリッジ13の流出口16に挿通される。ニードル75の他端部は、後述のサブタンク72の流入口34に挿通されている。すなわち、サブタンク72の内部空間と、装着ケース71に装着されたカートリッジ13の内部空間とは、ニードル75によって連通される。
サブタンク72は、筐体20に保持されている。サブタンク72は、内部空間である液室79にインクを貯留する。サブタンク72は、タンクの一例である。サブタンク72の液室79は、第2室の一例である。また、サブタンク72は、上下方向7に沿って延びる箱状の上部76と、前後方向8に沿って延びる箱状の下部77とを有する。下部77は、ニードル75の他端部が挿通された流入口34を前壁に有している。また、前部81の底は、チューブ32の一端部を接続されている。チューブ32の他端部は、後述の記録ユニット29に設けられたインクの流路に接続されている。すなわち、サブタンク72の内部空間は、チューブ32を通じて、記録ユニット29のインクの流路と連通されている。
下部77の上端は、上述のニードル75の配置位置よりも僅かに高い位置にある。また、下部77の下端は、装着ケース71に装着されたカートリッジ13の下端よりも下方に位置する。したがって、カートリッジ13が空になった直後において、サブタンク72はインクを貯留する。すなわち、プリンタ10は、カートリッジ13が空になった後も、サブタンク72が貯留するインクを用いて印刷を行うことができる。ユーザは、カートリッジ13が空になった後から、サブタンク72に貯留されたインクを使い切るまでの間に、空になったカートリッジ13を新しいカートリッジ13に交換する。すなわち、サブタンク72が設けられることにより、プリンタ10は、インクが無くなって印刷できなくなるおそれを低減することができる。なお、カートリッジ13が空になった状態とは、カートリッジ13に貯留されていたインクが完全に無くなった状態、及び、カートリッジ13からサブタンク72にインクが移動しない程度までインクが無くなった状態を意味する。
上部76は、大気連通口78を上壁に有する。大気連通口78は、サブタンク72の内部空間と外部とを連通する。すなわち、サブタンク72の内部空間は、大気開放されている。また、後述のカートリッジ13の内部空間も大気開放されている。印刷ヘッド31からインクが吐出されると、チューブ32の内部空間が大気圧よりも低い負圧となる。そうすると、大気圧により、サブタンク72の内部空間からチューブ32へインクが流出する。サブタンク72からチューブ32へインクが流出すると、サブタンク72に貯留されたインクの液面が低下する。そうすると、重力と大気圧とにより、サブタンク72に貯留されたインクの液面と、カートリッジ13に貯留されたインクの液面との高さ位置がほぼ等しくなるように、カートリッジ13に貯留されたインクが、ニードル75を通じてサブタンク72の内部空間に流出する。
下部77は、前後方向8における前方に位置する前部81と、後方に位置する後部82と、前部81と後部82とを連結する蛇腹部83と、を有している。前部81は、上部76の下端と連結している。前後方向8における蛇腹部83の前端は、前部81の後端と連結している。前後方向8における蛇腹部83の後端は、後部82の前端と連結している。蛇腹部83は、前後方向8に沿って伸縮可能である。下部77は、蛇腹部83が縮小している縮小状態(図5(A))と、蛇腹部83が拡張している拡張状態(図5(B))とに状態変化可能である。下部77は、スライド装置73によって、縮小状態と拡張状態とに状態変化される。
スライド装置73は、ラックギア84と、ピニオンギア85と、駆動モータ86(図1)と、を備える。ラックギア84は、下部77の後部82に固着されている。ラックギア84は、前後方向8に並ぶ複数の歯を有する。ピニオンギア85は、ラックギア84の歯と噛み合う複数の歯を有する。ピニオンギア85は、筐体20や上述のフレームなどに回転可能に保持されている。ピニオンギア85は、駆動モータ86によって回転される。後述のコントローラ51は、駆動モータ86の回転と停止、及び、回転の向きを制御する。駆動モータ86が一方の向き(以下、正回転と記載する)に回転されると、ピニオンギア85が正回転し、正回転するピニオンギア85と噛み合うラックギア84が、後部82とともに後方へ向かって移動する。その結果、蛇腹部83が伸長して、縮小状態(図5(A))にあったサブタンク72の下部77が拡張状態(図5(B))に状態変化する。駆動モータ86が他方の向き(以下、逆回転と記載する)に回転されると、ピニオンギア85が逆回転し、逆回転するピニオンギア85と噛み合うラックギア84が前方へ向かって移動する。その結果、拡張状態にあったサブタンク72の下部77が縮小状態に状態変化する。スライド装置73によって移動される後部82は、移動壁の一例である。スライド装置73は、切替部の一例である。
液面センサ33は、発光ダイオード及びフォトダイオードを有するフォトインタラプタである。発光ダイオードとフォトダイオードとは、サブタンク72の左右両側に対向して配置されている。すなわち、発光ダイオードが出射する光の光路上にサブタンク72が位置する。サブタンク72は、光を透過する透明な樹脂で成型された樹脂成型品である。液面センサ33は、光路上にインクがある場合と、インクがない場合とで、異なる電圧値の信号を出力する。以下では、液面センサ33は、光路上にインクがある場合に第1検出信号を出力し、光路上にインクがない場合に第2検出信号を出力するものとして説明する。液面センサ33の構成は、上述の構成に限られない。液面センサ33は、インクの量や液面の位置に応じた検出信号を出力可能であれば、どのような構成であってもよい。液面センサ33は、センサの一例である。
上下方向7における液面センサ33の配置位置は、上下方向7における上述のニードル75の高さ位置と同じ高さ位置とされている。すなわち、液面センサ33が出力する検出信号は、サブタンク72が貯留するインクの液面がニードル75に到達したときに、第1検出信号から第2検出信号に変化する。以下では、液面センサ33の設置の高さ位置を、高さ位置Pと記載して説明する。
カートリッジ13は、インクを貯留する内部空間を有する箱状である。カートリッジ13は、内部空間である液室18においてインクを貯留する。液室18は、第1室の一例である。また、カートリッジ13は、上述のニードル75の一端部が挿通される流出口16を側壁の下端部に有する。
カートリッジ13は、大気連通口17を上壁に有する。すなわち、カートリッジ13の内部空間は、大気開放されている。また、カートリッジ13は、ICチップ14を備える。ICチップ14は、端子であるカートリッジI/F74と当接する不図示の電極と、当該電極と電気的に接続されたICメモリ15(図1)と、を有する。なお、ICチップ14は、電極に代えて、アンテナや、発光ダイオード及びフォトダイオードなどを有していてもよい。
図1に示されるように、ICメモリ15は、カートリッジ情報を記憶する。カートリッジ情報は、カートリッジ13の型番や、初期残量値や、CTGシリアル番号などである。初期残量値は、未使用のときにカートリッジ13が貯留するインクの量を示す値である。CTGシリアル番号は、カートリッジ13を他のカートリッジ13と区別する識別情報である。なお、「CTG」は、「cartridge」の略である。
筐体20は、図3に示される印刷エンジン40を内部に保持する。印刷エンジン40は、給紙ローラ25、搬送ローラ26、排紙ローラ27、プラテン28、記録ユニット29、及びメンテナンス機構90(図4(B))を備える。
給紙ローラ25は、給紙トレイ23に載置されたシート6に当接可能に、筐体20内に設けられた不図示のフレームに保持されている。給紙ローラ25は、不図示のモータによって回転される。回転する給紙ローラ25は、シート6を搬送路37に送り出す。搬送路37は、不図示のガイド部材によって区画された空間である。図示例では、搬送路37は、給紙トレイ23の後端から給紙トレイ23の上方となる位置まで湾曲して延びており、次いで、前方に向かって延びている。
搬送ローラ26は、シート6の搬送向きにおける給紙トレイ23の下流に位置している。搬送ローラ26は、従動ローラ35とともにローラ対を構成している。搬送ローラ26は、不図示のモータによって回転される。回転する搬送ローラ26及び従動ローラ35は、給紙ローラ25によって搬送路37に送り出されたシート6を挟持しつつ搬送する。排紙ローラ27は、シート6の搬送向きにおける搬送ローラ26の下流に位置している。排紙ローラ27は、従動ローラ36とともにローラ対を構成している。排紙ローラ27は、不図示のモータによって回転される。回転する排紙ローラ27及び従動ローラ36は、シート6を挟持しつつ搬送し、排紙トレイ24に排出する。プラテン28は、前後方向8における搬送ローラ26と排紙ローラ27との間であって、シート6の搬送向きにおける搬送ローラ26の下流、かつ排紙ローラ27の上流に位置している。
記録ユニット29は、プラテン28の上方に位置している。記録ユニット29は、フレームの一部であるガイドレールによって左右方向9に移動可能に保持されていてもよいし、フレームに固定されていてもよい。すなわち、プリンタは、いわゆるシリアルプリンタであってもよいし、いわゆるラインプリンタであってもよい。
記録ユニット29は、タンク38や流路部材39や印刷ヘッド31などを有する。上述のチューブ32の他端は、タンク38と接続されている。なお、4つのタンク38及び流路部材39が、インクの色と対応して、記憶ユニット29に設けられている。タンク38は、流路部材39を介して印刷ヘッド31と接続されている。印刷ヘッド31は、各色のインクがそれぞれ流通する4つの流路を内部に有する。一の流路は、図4(A)に示されるように、印刷ヘッド31の下面に開口する複数のノズルからなるノズル列89を有する。すなわち、印刷ヘッド31は、4つのノズル列89を有する。ノズル89Bkは、ブラックの色のインクを吐出するノズル列である。ノズル89Mは、マゼンタの色のインクを吐出するノズル列である。ノズル89Cは、シアンの色のインクを吐出するノズル列である。ノズル89Yは、イエローの色のインクを吐出するノズル列である。また、不図示の圧電素子が、上述の流路に設けられている。圧電素子は、直流電圧を供給されることにより変形し、ノズル列89の各ノズルからインク滴をそれぞれ吐出させる。なお、圧電素子に代えて、ヒータが流路に設けられていてもよい。
図4(B)に示されるメンテナンス機構90は、印刷ヘッド31の各ノズル列89からインクを吸引する機能を有する。メンテナンス機構90は、例えば、粘度が高くなったインクや、エアが混入したインク、及び印刷ヘッド31に付着したゴミを吸引することにより、印刷ヘッド31をクリーニングする。また、メンテナンス機構90は、ユーザがプリンタ10を購入後、プリンタ10に最初に電源を投入してカートリッジ13を装着ケース71に装着した後にも動作され、印刷ヘッド31からインクを吸引する。以下では、メンテナンス機構90が印刷ヘッド31からインクを吸引する処理をパージ処理と記載して説明する。
メンテナンス機構90は、キャップ91と、リフトアップ機構92と、複数のチューブ93と、ポンプ94と、開閉弁95と、排液タンク96と、を備える。キャップ91は、印刷ヘッド31の下面に当接してノズル列89を覆うキャップ位置と、印刷ヘッド31の下面から下方に離間する待機位置と、の間で移動可能にリフトアップ機構92に保持されている。キャップ91は、不図示のモータによって、キャップ位置と待機位置との間で移動される。開閉弁95は、キャップ91と排液タンク96との間の流路を開閉する。ポンプ94は、例えば、ロータリ式のチューブポンプである。但し、ポンプ94には、他の種類のポンプが使用されてもよい。なお、メンテナンス機構90は、ポンプ94によって印刷ヘッド31のノズル列89からインクを吸引可能であれば、どのような構成であってもよい。
プリンタ10は、図1に示されるコントローラ51と、通信I/F47と、をさらに備える。通信I/F47は、USBケーブルやLAN(登録商標)などのローカルネットワークと接続される。
コントローラ51は、中央演算処理装置であるCPU52と、メモリ53と、通信バス54と、を有する。CPU52、メモリ53、タッチパネル42、操作スイッチ45、駆動モータ86、通信I/F47、液面センサ33、ポンプ48、及びカートリッジI/F74は、通信バス54と接続されている。すなわち、CPU52は、通信バス54を通じて、メモリ53、タッチパネル42、操作スイッチ45、駆動モータ86、通信I/F47、液面センサ33、ポンプ48、及びカートリッジI/F74と情報やデータや信号を受け渡し可能に接続されている。
メモリ53は、ROM55と、RAM56と、EEPROM57と、を有する。ROM55は、オペレーティングシステムであるOS58と、制御プログラム59と、を予め記憶する。OS58及び制御プログラム59に記述された命令は、CPU52によって実行される。すなわち、OS58及び制御プログラム59は、CPU52によって実行される。CPU52によって実行されるOS58及び制御プログラム59は、表示パネル43に画像を表示させ、タッチセンサ44や操作スイッチ45を通じてユーザの入力を受け付ける。また、CPU52によって実行されるOS58及び制御プログラム59は、通信I/F47やカートリッジI/F74を通じて情報やデータを送受信し、受信した情報やデータをメモリ53に記憶させる。
RAM56は、OS58及び制御プログラム59の実行に用いられ、また、OS58及び制御プログラム59の実行において、情報やデータを一時的に記憶する。EEPROM57は、固定貯留値や、イニシャルフラグや、エンプティ閾値などを予め記憶する。
以下、制御プログラム59が実行する処理について説明する。具体的には、ユーザによって購入されたプリンタ10に電源が投入された場合に実行される初期導入処理(図6)、及びプリンタ10に印刷指示が入力された場合に実行されるメイン処理(図7)について説明する。なお、制御プログラム59が実行する処理は、コントローラ51が実行する処理として説明する。
コントローラ51は、プリンタ10に電源が投入されたことに応じて、図6に示される初期導入処理を実行する。まず、コントローラ51は、イニシャルフラグの値が「ON」であるか「OFF」であるかを判断する(S11)。イニシャルフラグの初期値は「ON」である。コントローラ51は、イニシャルフラグの値が「OFF」であると判断すると(S11:OFF)、初期導入処理を終了する。コントローラ51は、イニシャルフラグの値が「ON」であると判断すると(S11:ON)、駆動モータ86を逆回転させ、サブタンク72の下部77を縮小状態に状態変化させる(S12)。なお、サブタンク72の下部77の初期状態が縮小状態である場合は、ステップS12の処理は省略されてもよい。或いは、コントローラ51は、サブタンク72の下部77の状態に拘わらず、駆動モータ86を逆回転させてもよい。
次に、コントローラ51は、カートリッジ装着指示画面を表示パネル43に表示させる(S13)。カートリッジ装着指示画面は、例えば、「カバーを開き、カートリッジを装着した後、カバーを閉じてください。」の文字を有する。そして、コントローラ51は、カートリッジ13が装着ケース71に装着されたか否かを判断する(S14)。例えば、コントローラ51は、カートリッジI/F74を通じてカートリッジ13のICメモリ15からカートリッジ情報を読み取ることができたか否かにより、カートリッジ13が装着ケース71に装着されたか否かを判断する。コントローラ51は、全てのカートリッジ13が装着ケース71に装着されたと判断するまで(S14:No)、カートリッジ装着指示画面を表示パネル43に表示させる。
購入された直後のプリンタ10においては、インクがサブタンク72の大気連通口78などから流出しないように、サブタンク72は、インクをほとんど貯留しない。そして、ユーザによってカートリッジ13が装着ケース71に装着されると、重力と大気圧とによって、カートリッジ13からサブタンク72に、ニードル75を通じて徐々にインクが移動する。本実施例では、カートリッジ13からサブタンク72へのインクの供給方式はいわゆる水頭差方式を用いており、インクは、カートリッジ13に貯留されたインクの液面の高さ位置と、サブタンク72が貯留するインクの液面の高さ位置とが、ほぼ同じとなるまで、カートリッジ13からサブタンク72に移動する。カートリッジ13からサブタンク72に移動したインクの液面の高さ位置が、液面センサ33の設置位置に到達すると、液面センサ33が出力する検出信号は、第2検出信号から第1検出信号に変化する。
コントローラ51は、全てのカートリッジ13が装着ケース71に装着されたと判断すると(S14:Yes)、全ての液面センサ33が出力する検出信号が、第2検出信号から第1検出信号に変化したか否かを判断する(S15)。すなわち、ステップS15では、カートリッジ13からサブタンク72に移動したインクの液面が液面センサ33に到達したか否かが判断される。
コントローラ51は、液面センサ33が出力する検出信号が第2検出信号から第1検出信号に変化するまで待機する(S15:No)。そして、コントローラ51は、全ての液面センサ33が出力する検出信号が第2検出信号から第1検出信号に変化したと判断すると(S15:Yes)、メンテナンス機構90に印刷ヘッド31からインクを吸引させる上述のパージ処理を実行する(S16)。
パージ処理が実行され、印刷ヘッド31からインクが吸引されると、チューブ32内が負圧となり、大気圧によって、サブタンク72からチューブ32内へインクが吸引される。ここにおいて、サブタンク72に十分な量のインクが無ければ、チューブ32内にエアが侵入する。そうすると、印刷ヘッド31の上述の流路にチューブ32を通じてエアが進入し、ノズルからのインク適の吐出に不具合が生じる。したがって、パージ処理の実行を開始する前には、チューブ32にエアが侵入しない量である所定量以上のインクがサブタンク72に貯留されている必要がある。一方、当該所定量を超えた量のインクがカートリッジ13からサブタンク72に移動してからパージ処理が開始されると、ユーザがカートリッジ13を装着ケース71に装着してからパージ処理が開始されるまでの時間である待機時間が長くなる。また、サブタンク72が上記所定量以上のインクを貯留していることを液面センサ33で確実に検出することが望ましい。さらにまた、上述したように、カートリッジ13が空になった後にサブタンク72が貯留可能なインクの量は、多いほど望ましい。本実施形態では、パージ処理の実行前にサブタンク72が上記所定量以上のインクを貯留していることを液面センサ33で検出でき、かつ、上記待機時間を短くでき、さらにかつ、カートリッジ13が空になった後にサブタンク72が貯留可能なインクの量を増やすことができるように、サブタンク72の下部77が状態変化可能にされている。
詳しく説明すると、サブタンク72の下部77は、縮小状態において、上記所定量或いは上記所定量よりも僅かに多い量のインクを貯留可能な容積V1となるように形成されている。そして、下部77は、拡張状態において、十分な量のインクを貯留可能な容積V2(>V1)となるように形成されている。容積V1は、第1容積の一例である。容積V2は、第2容積の一例である。サブタンク72の下部77の縮小状態は、第1状態の一例である。下部77の拡張状態は、第2状態の一例である。
コントローラ51は、サブタンク72の下部77を縮小状態にし(S12)、かつ、液面センサ33が出力する検出信号が第2検出信号から第1検出信号に変化した後でパージ処理を開始するので(S16)、パージ処理の開始前に、サブタンク72は、チューブ32内にエアが侵入しないだけの量のインクを確実に貯留している。また、待機時間が長くなりすぎることが抑制されている。
コントローラ51は、パージ処理を開始した後(S16)、パージ処理が終了したか否かを判断する(S17)。具体的には、コントローラ51は、所定時間の間、メンテナンス機構90のポンプ94を駆動したか否かを判断する。例えば、コントローラ51は、EEPROM57に予め記憶された所定時間を初期値としてタイマカウンタをカウントダウンさせ、タイマカウンタがタイムアップしたことに応じて、パージ処理が終了したと判断する(S17:Yes)。
コントローラ51は、パージ処理が終了したと判断すると(S17:Yes)、終了画面を表示パネル43に表示させる(S18)。終了画面は、パージが終了したことをユーザに認識させる文字、或いは、時刻設定などの初期設定をタッチセンサ44や操作スイッチ45を用いてユーザに入力させる指示を有する画面である。
また、コントローラ51は、パージ処理が終了したと判断したことに応じて、駆動モータ86を正回転させ、サブタンク72の下部77を、縮小状態から拡張状態に状態変化させる(S19)。そして、コントローラ51は、イニシャルフラグの値を「OFF」にし(S20)、初期導入処理を終了する。パージ処理の終了後、サブタンク72の下部が縮小状態から拡張状態に状態変化されるので、カートリッジ13が空になった後にサブタンク72が貯留可能なインクの量が多くなる。
次に、図7を参照して、メイン処理について説明する。まず、コントローラ51は、印刷指示及び印刷データを取得したか否かを判断する(S31)。コントローラ51は、印刷指示を取得していないと判断すると(S31:No)、メイン処理を終了する。コントローラ51は、印刷指示を取得したと判断すると(S31:Yes)、インクエンプティフラグの値が「ON」であるか「OFF」であるかを判断する(S32)。インクエンプティフラグは、チューブ32にエアが侵入するおそれがある程度までサブタンク72が貯留するインクの量が低下した場合に「ON」にされるフラグである。インクエンプティフラグは、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの各色に対してそれぞれ設定される。
コントローラ51は、インクエンプティフラグの値が「ON」であると判断すると(S32:ON)、メイン処理を終了する。コントローラ51は、インクエンプティフラグの値が「OFF」であると判断すると(S32:OFF)、液面センサ33が出力する検出信号を取得する(S33)。そして、コントローラ51は、印刷処理を実行する(S34)。具体的には、取得した印刷データに基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号を出力する。コントローラ51が出力した駆動信号は、印刷ヘッド31の駆動素子を駆動する駆動回路や、給紙ローラ25や搬送ローラ26や排紙ローラ27を回転させる上述のモータの駆動回路に入力される。
コントローラ51は、印刷ヘッド31の駆動素子を駆動する駆動回路に対して出力した駆動信号に基づいて、駆動素子を駆動した回数、すなわち、インク滴が吐出された回数をカウントする。以下では、インク滴が吐出された回数をインクドットカウント値と記載して説明する。インクドットカウント値は、印刷に使用されたインクの量を示す。なお、コントローラ51は、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの各色に対して、インクドットカウント値をそれぞれカウントする。
コントローラ51は、カウントしたインクドットカウント値を、メモリ53のEEPROM57の所定の記憶領域に記憶された値に加えて積算する(S35)。以下では、EEPROM57の所定の記憶領域に記憶された値を、総カウント値と記載して説明する。総カウント値は、カートリッジ13が交換されるとリセットされる。すなわち、総カウント値は、カートリッジ13が交換された後において使用されたインクの総量を示す。
次に、コントローラ51は、液面センサ33が出力する検出信号が、印刷の前後において変化したか否かを判断する(S36)。具体的には、コントローラ51は、印刷の実行後、液面センサ33が出力する検出信号を取得し、取得した検出信号と、ステップS33で取得した検出信号とを比較する。コントローラ51は、ステップS33で第1検出信号を取得し、印刷の実行後に第2検出信号を取得したと判断すると(S36:Yes)、総カウント値をリセットする(S37)。すなわち、カートリッジ13が交換された場合に加え、インクの液面が液面センサ33の設置位置に到達した場合にも、総カウント値がリセットされる。
次に、コントローラ51は、CTGエンプティフラグを「ON」にする(S38)。そして、コントローラ51は、次ページがあるか否かを判断する(S46)。コントローラ51は、次ページがあると判断すると(S46:Yes)、ステップS32以降の処理を再度実行する。
コントローラ51は、印刷処理の前後で液面センサ33が出力する検出信号が変化していないと判断すると(S36:No)、印刷の実行後に液面センサ33が出力した検出信号が第1検出信号であるか第2検出信号であるかを判断する(S39)。コントローラ51は、印刷の実行後に液面センサ33が出力した検出信号が第1検出信号であると判断すると(S39:第1検出信号)、インクの残量を算出するステップS40、S41の処理を実行する。具体的には、まず、コントローラ51は、初期貯留値をEEPROM57から読み出す(S40)。初期貯留値は、カートリッジ13が交換されたときに算出されてEEPROM57に記憶される値である。コントローラ51は、読み出した初期貯留値と、EEPROM57に記憶された総カウント値とに基づいて、総残量値、CTG残量値、サブタンク残量値を算出する(S41)。総残量値は、カートリッジ13及びサブタンク72が貯留するインクの総量を示す値である。CTG残量値は、カートリッジ13が貯留するインクの量を示す値である。サブタンク残量値は、サブタンク72が貯留するインクの量を示す値である。
そして、コントローラ51は、初期貯留値から総カウント値を減じて、総残量値を算出する。次に、コントローラ51は、算出した総残量値から、CTG残量値及びサブタンク残量値を算出する。例えば、メモリ53は、総残量値から、CTG残量値及びサブタンク残量値を算出する計算式を予め記憶する。コントローラ51は、メモリ53に記憶された計算式及び総残量値に基づいて、CTG残量値及びサブタンク残量値を算出する。コントローラ51が算出した総残量値、CTG残量値、及びサブタンク残量値は、メモリ53のRAM56に記憶される。また、CTG残量値は、カートリッジ13のICメモリ15にも記憶される。
コントローラ51は、印刷の実行後に液面センサ33が出力した検出信号が第2検出信号であると判断すると(S39:第2検出信号)、インクの残量を算出するステップS42、S43の処理を実行する。具体的には、まず、コントローラ51は、固定貯留値をEEPROM57から読み出す(S42)。固定貯留値は、インクの液面が液面センサ33の設置位置にある場合にサブタンク72が貯留するインクの量としてEEPROM57に予め記憶された値である。次に、コントローラ51は、読み出した固定貯留値から、EEPROM57に記憶された総カウント値を減算して総残量値を算出する(S43)。なお、インクの液面が液面センサ33の設置位置に到達した後は、カートリッジ13が貯留するインクの量はゼロである。したがって、算出した総残量値は、サブタンク72が貯留するサブタンク残量値でもある。コントローラ51は、算出した総残量値及びサブタンク残量値をRAM56に記憶させる。また、コントローラ51は、CTG残量値をゼロとしてRAM56に記憶させる。
次に、コントローラ51は、総カウント値がエンプティ閾値以上であるか否かを判断する(S44)。エンプティ閾値は、EEPROM57に予め記憶された閾値である。すなわち、ステップS44では、インクの液面が液面センサ33の設置位置まで低下した後に使用されたインクの量を示す総カウント値が、エンプティ閾値に到達したか否かが判断される。なお、ステップS44において、総カウント値がエンプティ閾値以上であるか否かの判断に代えて、ステップS43で算出したサブタンク残量値が閾値未満であるか否かが判断されてもよい。すなわち、使用されたインクの量が閾値以上か否かの判断に代えて、サブタンク72が貯留するインクの残量が閾値未満であるか否かが判断されてもよい。
コントローラ51は、総カウント値がエンプティ閾値以上であると判断すると(S44:Yes)、インクエンプティフラグの値を「ON」にする(S45)。そして、コントローラ51は、次ページがあるか否かを判断する(S46)。コントローラ51は、次ページがあると判断すると(S46:Yes)、ステップS32以降の処理を再度実行する。コントローラ51は、次ページがないと判断すると(S46:No)、メイン処理を終了する。
なお、フローチャートには示されていないが、コントローラ51は、インクが無くなったカートリッジ13が新しいカートリッジ13に交換されたと判断すると、RAM56に記憶されたサブタンク残量値と、交換された新しいカートリッジ13のICメモリ15から読み出した初期残量値とを足し合わせ、初期貯留値を算出する。そして、コントローラ51は、算出した初期貯留値をEEPROM57に記憶させる。初期値貯留値は、上述のステップS41において、総残量値、CTG残量値、及びサブタンク残量値の算出に用いられる。
[実施形態の作用効果]
また、本実施形態では、初期導入処理において、パージ処理の実行前にサブタンク72の下部77が縮小状態にされ、パージ処理の実行後に下部77が拡張状態にされる。したがって、パージ処理の開始前に、サブタンク72は、チューブ32内にエアが侵入しないだけの量のインクを確実に貯留することができる。また、カートリッジ13が装着ケース71に装着されてからパージ処理が開始されるまでの待機時間が長くなりすぎることが抑制される。さらに、メイン処理において、カートリッジ13が空になったときに、印刷を継続できるだけの十分な量のインクをサブタンク72に貯留させることができる。すなわち、プリンタ10は、スライド装置73によってサブタンク72の下部77の形状を変化させることにより、用途に応じてサブタンク72の液室79の容積を選択することができる。
また、本実施形態では、上述のように、液面センサ33を、カートリッジ13が空になったか否かの判断(S36)と、サブタンク残量値の算出(S41、S43)と、初期導入処理においてパージ処理を開始するか否かの判断(S15)と、に用いている。すなわち、1つの液面センサ33を、複数の用途に用いることができる。
また、本実施形態では、スライド装置73という簡単な構成でサブタンク72の下部77を縮小状態と拡張状態との間で状態変化させることができる。
[その他の変形例]
プリンタ10は、実施形態で説明されたスライド装置73に代えて、図5(C)に示される把持部材97を有していてもよい。把持部材97は、サブタンク72の下部77の後部82に固着されている。ユーザは、把持部材97を把持して、サブタンク72の下部77を、縮小状態(図5(C))と拡張状態(図5(D))との間で状態変化させる。把持部材97は、把持部の一例である。なお、把持部材97は、サブタンク72の下部77の後部82に直接固着されていなくてもよい。把持部材97は、スライド可能に筐体20に保持されており、把持部材97のスライドによって、下部77が縮小状態と拡張状態との間で状態変化されてもよい。この場合、図6のS12の処理に代えて下部77を縮小状態とするようユーザに案内する表示をし、図6のS19処理に代えて下部77を拡張状態とするようユーザに案内する表示をするとよい。製品購入時に下部77が縮小状態であればユーザは下部77を拡張状態にするのみとしてもよい。
上述の実施形態では、いわゆる水頭差方式によってカートリッジ13からサブタンク72にインクが移動する例を説明した。しかしながら、ポンプなどによって、カートリッジ13からサブタンク72にインクが移動されてもよい。或いは、いわゆるチキンフィード方式によってカートリッジ13からサブタンク72にインクが移動されてもよい。
上述の実施形態では、パージ処理を終了したことに応じて(S17:Yes)、サブタンク72の下部77を縮小状態から拡張状態に状態変化させる(S19)例を説明した。しかしながら、コントローラ51は、時刻設定などの初期設定が終了したことや、印刷データの入力を受け付けたことに応じて、サブタンク72の下部77を縮小状態から拡張状態に状態変化させてもよい。