本発明のセミアディティブ工法用積層体は、絶縁性基材(A)の両表面上に、導電性の銀粒子層(M1)、さらに、基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層により導電性が確保された基材であることを特徴とするものである。
また、本発明のより好ましい態様のセミアディティブ工法用積層体は、前記絶縁性基材層(A)と、導電性の銀粒子層(M1)の間に、さらにプライマー層(B)を有することを特徴とするものである。
前記絶縁性基材(A)の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂をグラフト共重合化した塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、セルロースナノファイバー、シリコン、シリコンカーバイド、窒化ガリウム、サファイア、セラミックス、ガラス、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、アルミナ等が挙げられる。
また、前記絶縁性基材(A)として、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含有する樹脂基材を好適に用いることもできる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。一方、前記無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ珪酸ガラス等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂と無機充填剤は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記絶縁性基材(A)の形態としては、平面状のフレキシブル材、リジッド材、リジッドフレキシブル材のいずれのものも用いることができる。より具体的には、前記絶縁性基材(A)にフィルム、シート、板状に成形された市販材料を用いてもよいし、上記した樹脂の溶液、溶融液、分散液から、平面状に成形した材料を用いてもよい。また、前記絶縁性基材(A)は、金属等の導電性材料の上に、上記した樹脂の材料を形成した基材であってもよく、回路パターンが形成されたプリント配線板の上に、上記した樹脂の材料を積層形成した基材であっても良い。
前記銀粒子層(M1)は、本発明のプリント配線板用積層体を用いて、プリント配線板を製造する際に、後述する配線パターンとなる導電層(M3)をめっき工程により形成する際のめっき下地層となる。
前記銀粒子層(M1)を構成する銀粒子には、後述するめっき工程が問題なく実施できる範囲で、銀以外の金属粒子を含有することができるが、銀以外の金属粒子の割合は、後述する非回路形成部のエッチング除去性をより向上できることから、銀100質量部に対して5質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましい。
前記銀粒子層(M1)を、平面状の前記絶縁性基材(A)の両面に形成する方法としては、例えば、前記絶縁性基材(A)上の両面に、銀粒子分散液を塗工する方法が挙げられる。前記銀粒子分散液の塗工方法は、銀粒子層(M1)が良好に形成できれば特に制限はなく、種々の塗工方法を、用いる絶縁性基材(A)の形状、サイズ、剛柔の度合いなどによって適宜選択すればよい。具体的な塗工方法としては、例えば、グラビア法、オフセット法、フレキソ法、パッド印刷法、グラビアオフセット法、凸版法、凸版反転法、スクリーン法、マイクロコンタクト法、リバース法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、スクイズコーター法、含浸コーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、インクジェット法、ダイコーター法、スピンコーター法、バーコーター法、ディップコーター法等が挙げられる。この際、前記銀粒子層(M1)は、前記絶縁性基材(A)の両面に同時形成してもよいし、前記絶縁性基材(A)の片面に形成した後、他方の面に形成してもよい。
前記絶縁性基材(A)、及び、前記絶縁性基材(A)上に形成されたプライマー層(B)は、銀粒子分散液の塗工性向上、めっき工程で形成する導電層(M3)の基材への密着性を向上させる目的で、銀粒子分散液を塗工する前に、表面処理を行ってもよい。前記絶縁性基材(A)の表面処理方法としては、表面の粗度が大きくなって、ファインピッチパターン形成性や粗面による信号伝送ロスが問題とならない限りは特に制限はなく、種々の方法を適宜選択すればよい。このような表面処理方法としては、例えば、UV処理、気相オゾン処理、液層オゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。これらの表面処理方法は、1種の方法で行うことも2種以上の方法を併用することもできる。
前記銀粒子分散液を前記絶縁性基材(A)上、もしくは前記プライマー層(B)上に塗工した後、塗工膜を乾燥することにより、銀粒子分散液に含まれる溶媒が揮発し、前記絶縁性基材(A)上、もしくは前記プライマー層(B)上に前記銀粒子層(M1)が形成される。
上記の乾燥の温度及び時間は、使用する基材の耐熱温度、後述する前記金属粒子分散液に使用する溶媒の種類に応じて適宜選択すればよいが、20~350℃の範囲で、時間は1~200分の範囲が好ましい。また、基材上に密着性に優れた銀粒子層(M1)を形成するために、前記乾燥の温度は0~250℃の範囲がより好ましい。
前記銀粒子層(M1)を形成した前記絶縁性基材(A)、もしくは前記プライマー層(B)を形成した前記絶縁性基材(A)は、必要に応じ、上記の乾燥後、銀粒子層の電気抵抗を低下させる目的や、前記絶縁性基材(A)、もしくは、前記プライマー層(B)と前記銀粒子層(M1)との密着性を向上させる目的で、さらにアニーリングを行ってもよい。アニーリングの温度と時間は、使用する基材の耐熱温度、必要とする電気抵抗、生産性等に応じて適宜選択すればよく、60~350℃の範囲で1分~2週間の時間行えばよい。また、60~180℃の温度範囲では、1分~2週間の時間が好ましく、180~350℃の範囲では、1分~5時間程度とするのが好ましい。
上記の乾燥は、送風を行ってもよいし、特に送風を行わなくてもよい。また、乾燥は、大気中で行ってもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガスの置換雰囲気下、もしくは気流下で行ってもよく、真空下で行ってもよい。
塗工膜の乾燥は、塗工場所での自然乾燥の他、送風、定温乾燥器などの乾燥器内で行うことができる。また、前記絶縁性基材(A)がロールフィルムやロールシートの場合には、塗工工程に続けて、設置された非加熱または加熱空間内でロール材を連続的に移動させることにより、乾燥・焼成を行うことができる。この際の乾燥・焼成の加熱方法としては、例えば、オーブン、熱風式乾燥炉、赤外線乾燥炉、レーザー照射、マイクロウェーブ、光照射(フラッシュ照射装置)等を用いる方法が挙げられる。これらの加熱方法は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記絶縁性基材(A)上、もしくは前記プライマー層(B)上に形成される前記金属粒子層(M1)の形成量は、0.01~30g/m2の範囲が好ましく、0.01~10g/m2の範囲がより好ましい。また、後述するめっき工程による導電層(M3)の形成が容易となり、後述するエッチングによるシード層除去工程が容易となることから、0.05~5g/m2の範囲がさらに好ましい。
前記銀粒子層(M1)の形成量は、蛍光X線法、原子吸光法、ICP法等、公知慣用の分析手法を用いて確認することができる。
また、後述するレジスト層に活性光で回路パターンを露光する工程において、前記銀粒子層(M1)からの活性光の反射を抑制する目的で、前記銀粒子層(M1)を形成でき、後述する電解めっきが問題なく実施でき、後述するエッチング除去性を確保できる範囲で、前記銀粒子層(M1)中に前記活性光を吸収するグラファイトやカーボン、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、ナフトキノン化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物等の光を吸収する顔料、又は色素を光吸収剤として含有させてもよい。これらの顔料や色素は、使用する前記活性光の波長に合わせて適宜選択すればよい。また、これらの顔料や色素は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。さらに、前記銀粒子層(M1)中にこれらの顔料や色素を含有されるためには、後述する銀粒子分散液にこれらの顔料や色素を配合すればよい。
前記銀粒子層(M1)を形成するために用いる銀粒子分散液は、銀粒子が溶媒中に分散したものである。前記銀粒子の形状としては、銀粒子層(M1)を良好に形成するものであれば特に制限はなく、球状、レンズ状、多面体状、平板状、ロッド状、ワイヤー状など、種々の形状の銀粒子を用いることができる。これらの銀粒子は、単一形状の1種で用いることも、形状が異なる2種以上を併用することもできる。
前記銀粒子の形状が球状や多面体状である場合には、その平均粒子径が1~20,000nmの範囲のものが好ましい。また、微細な回路パターンを形成する場合には、銀粒子層(M1)の均質性がより向上し、後述するエッチング液による除去性もより向上できることから、その平均粒子径が1~200nmの範囲のものがより好ましく、1~50nmの範囲のものがさらに好ましい。なお、ナノメートルサイズの粒子に関する「平均粒子径」は、前記金属粒子を分散良溶媒で希釈し、動的光散乱法により測定した体積平均値である。この測定にはマイクロトラック社製「ナノトラックUPA-150」を用いることができる。
一方、銀粒子がレンズ状、ロッド状、ワイヤー状などの形状を有する場合には、その短径が1~200nmの範囲のものが好ましく、2~100nmの範囲のものがより好ましく、5~50nmの範囲のものがさらに好ましい。
前記銀粒子は、銀粒子を主成分とするものが好ましいが、後述するめっき工程を阻害したり、後述する前記銀粒子層(M1)のエッチング液による除去性が損なわれたりしない限りは、前記銀粒子を構成する銀の一部が他の金属で置換されたり、銀以外の金属成分が混合されていてもよい。
置換又は混合される金属としては、金、白金、パラジウム、ルテニウム、スズ、銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、インジウム及びイリジウムからなる群より選ばれる1種以上の金属元素が挙げられる。
前記銀粒子に対して、置換又は混合される金属の比率は、前記銀粒子中に5質量%以下が好ましく、前記銀粒子層(M1)のめっき性、エッチング液による除去性の観点から2質量%以下がより好ましい。
前記銀粒子層(M1)を形成するために用いる銀粒子分散液は、銀粒子を各種溶媒中に分散したものであり、その分散液中の銀粒子の粒径分布は、単分散で揃っていてもよく、また、上記の平均粒子径の範囲である粒子の混合物であってもよい。
前記銀粒子の分散液に用いる溶媒としては、水性媒体や有機溶剤を使用することができる。前記水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、及び、前記水と混和する有機溶剤との混合物が挙げられる。
前記の水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール溶剤;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール溶剤;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム溶剤などが挙げられる。また、前記有機溶剤としては、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
前記アルコール溶剤又はエーテル溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
前記ケトン溶剤としては、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等が挙げられる。また、前記エステル溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、3―メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート等が挙げられる。さらに、その他の有機溶剤として、トルエン等の炭化水素溶剤、特に炭素原子数8以上の炭化水素溶剤が挙げられる。
前記炭素原子数8以上の炭化水素溶剤としては、例えば、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、シクロオクタン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラリン、トリメチルベンゼンシクロヘキサン等の非極性溶剤が挙げられ、他の溶媒と必要に応じて組み合わせて用いることができる。さらに、混合溶剤であるミネラルスピリット、ソルベントナフサ等の溶媒を併用することもできる。
前記溶媒は、銀粒子が安定に分散し、前記絶縁性基材(A)、もしくは、後述する前記絶縁性基材(A)上に形成されたプライマー層(B)上に、前記銀粒子層(M1)を良好に形成するものであれば特に制限はない。また、前記溶媒は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記銀粒子分散液中の銀粒子の含有率は、上記の種々の塗工方法を用いて前記絶縁性基材(A)上の前記銀粒子層(M1)の形成量が0.01~30g/m2の範囲になるように適宜調整し、上記の種々の塗工方法に応じて最適な塗工適性を有する粘度になるように調整すればよいが、0.1~50質量%の範囲が好ましく、0.5~20質量%の範囲がより好ましい。
前記銀粒子分散液は、前記銀粒子が、前記の各種溶媒媒中で凝集、融合、沈殿することなく、長期間の分散安定性を保つことが好ましく、銀粒子を前記の各種溶媒中に分散させるための分散剤を含有することが好ましい。このような分散剤としては、金属粒子に配位する官能基を有する分散剤が好ましく、例えば、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アセトアセチル基、リン原子含有基、チオール基、チオシアナト基、グリシナト基等の官能基を有する分散剤が挙げられる。
前記分散剤としては、市販、もしくは独自に合成した低分子量、又は高分子量の分散剤を用いることができ、金属粒子を分散する溶媒や、金属粒子の分散液を塗工する前記絶縁性基材(A)の種類など、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、ドデカンチオール、1-オクタンチオール、トリフェニルホスフィン、ドデシルアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン;ミリスチン酸、オクタン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;コール酸、グリシルジン酸、アビンチン酸等のカルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物などが好適に用いられる。ここで、後述するプライマー層(B)上に銀粒子層(M1)を形成する場合は、これら2層の密着性が良好になることから、後述するプライマー層(B)に用いる樹脂が有する反応性官能基[X]と結合を形成しうる反応性官能基[Y]を有する化合物を用いることが好ましい。
反応性官能基[Y]を有する化合物としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルキロールアミド基、ケト基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、カルボニル基、アセトアセチル基、エポキシ基、脂環エポキシ基、オキセタン環、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(ブロック化)イソシアネート基、(アルコキシ)シリル基等を有する化合物、シルセスキオキサン化合物等が挙げられる。特に、プライマー層(B)と金属粒子層(M1)との密着性をより向上できることから、前記反応性官能基[Y]は塩基性窒素原子含有基が好ましい。前記塩基性窒素原子含有基としては、例えば、イミノ基、1級アミノ基、2級アミノ基等が挙げられる。
前記塩基性窒素原子含有基は、分散剤1分子中に単数、もしくは複数存在してもよい。分散剤中に複数の塩基性窒素原子を含有することで、塩基性窒素原子含有基の一部は、金属粒子との相互作用により、金属粒子の分散安定性に寄与し、残りの塩基性窒素原子含有基は、前記絶縁性基材(A)との密着性向上に寄与する。また、後述するプライマー層(B)に反応性官能基[X]を有する樹脂を用いた場合には、分散剤中の塩基性窒素原子含有基は、この反応性官能基[X]との間で結合が形成でき、前記絶縁性基材(A)上への後述する金属パターン層(M3)の密着性をより一層向上できるため好ましい。
前記分散剤は、銀粒子の分散液の安定性、塗工性、及び、前記絶縁性基材(A)上に良好な密着性を示す銀粒子層(M1)を形成できることから、分散剤は、高分子分散剤が好ましく、この高分子分散剤としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン、前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物などが好ましい。
前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物としては、ポリエチレンイミンとポリオキシアルキレンとが、直鎖状で結合したものであってもよく、前記ポリエチレンイミンからなる主鎖に対して、その側鎖にポリオキシアルキレンがグラフトしたものであってもよい。
前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物の具体例としては、例えば、ポリエチレンイミンとポリオキシエチレンとのブロック共重合体、ポリエチレンイミンの主鎖中に存在するイミノ基の一部にエチレンオキサイドを付加反応させてポリオキシエチレン構造を導入したもの、ポリアルキレンイミンが有するアミノ基と、ポリオキシエチレングリコールが有する水酸基と、エポキシ樹脂が有するエポキシ基とを反応させたもの等が挙げられる。
前記ポリアルキレンイミンの市販品としては、株式会社日本触媒製の「エポミン(登録商標)PAOシリーズ」の「PAO2006W」、「PAO306」、「PAO318」、「PAO718」等が挙げられる。
前記ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、3,000~30,000の範囲が好ましい。
前記銀粒子を分散させるために必要な前記分散剤の使用量は、前記銀粒子100質量部に対し、0.01~50質量部の範囲が好ましく、また、前記絶縁性基材(A)上、もしくは、後述するプライマー層(B)上に、良好な密着性を示す銀粒子層(M1)を形成できることから、前記銀粒子100質量部に対し、0.1~10質量部の範囲が好ましく、さらに前記銀粒子層(M1)のめっき性を向上できることから、0.1~5質量部の範囲がより好ましい。
前記銀粒子の分散液の製造方法としては、特に制限はなく、種々の方法を用いて製造できるが、例えば、低真空ガス中蒸発法などの気相法を用いて製造した銀粒子を、溶媒中に分散させてもよいし、液相で銀化合物を還元して直接銀粒子の分散液を調製してもよい。気相、液相法とも、適宜、必要に応じて、溶媒交換や溶媒添加により、製造時の分散液と塗工時の分散液の溶剤組成を変更することが可能である。気相、液相法のうち、分散液の安定性や製造工程の簡便さから、液相法を特に好適に用いることができる。液相法としては、例えば、前記高分子分散剤の存在下で銀イオンを還元することによって製造することができる。
前記銀粒子の分散液には、さらに必要に応じて、界面活性剤、レベリング剤、粘度調整剤、成膜助剤、消泡剤、防腐剤などの有機化合物を配合してもよい。
前記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系界面活性剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルホネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム塩等のアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤などが挙げられる。
前記レベリング剤としては、一般的なレベリング剤を使用することができ、例えば、シリコーン系化合物、アセチレンジオール系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。
前記粘度調整剤としては、一般的な増粘剤を使用することができ、例えば、アルカリ性に調整することによって増粘可能なアクリル重合体、合成ゴムラテックス、分子が会合することによって増粘可能なウレタン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、水添加ヒマシ油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン、金属石鹸、ジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
前記成膜助剤としては、一般的な成膜助剤を使用することができ、例えば、ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩等アニオン系界面活性剤、ソルビタンモノオレエート等の疎水性ノニオン系界面活性剤、ポリエーテル変性シロキサン、シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記消泡剤としては、一般的な消泡剤を使用することができ、例えば、シリコーン系消泡剤、ノニオン系界面活性剤、ポリエーテル,高級アルコール、ポリマー系界面活性剤等が挙げられる。
前記防腐剤としては、一般的な防腐剤を使用することができ、例えば、イソチアゾリン系防腐剤、トリアジン系防腐剤、イミダゾール系防腐剤、ピリジン系防腐剤、アゾール系防腐剤、ピリチオン系防腐剤等が挙げられる。
また、本発明のセミアディティブ工法用積層体のより好ましい態様として、前記絶縁性基材層(A)と、導電性の銀粒子層(M1)の間に、さらにプライマー層(B)を有する積層体を挙げることができる。このプライマー層を設けたセミアディティブ工法用積層体は、前記絶縁性基材(A)への導電層(M3)の密着性をより一層向上できることから好ましい。
前記プライマー層(B)は、前記絶縁性基材(A)の表面の一部、又は全面にプライマーを塗工し、前記プライマー中に含まれる水性媒体、有機溶剤等の溶媒を除去することによって形成できる。ここで、プライマーとは、絶縁性基材(A)への導電層(M3)の密着性を向上させる目的で用いるものであり、後述する各種の樹脂を溶剤中に溶解、もしくは分散させた液状組成物である。
前記プライマーを前記絶縁性基材(A)に塗工する方法としては、プライマー層(B)が良好に形成できれば特に制限は無く、種々の塗工方法を、使用する絶縁性基材(A)の形状、サイズ、剛柔の度合いなどによって適宜選択すればよい。具体的な塗工方法としては、例えば、グラビア法、オフセット法、フレキソ法、パッド印刷法、グラビアオフセット法、凸版法、凸版反転法、スクリーン法、マイクロコンタクト法、リバース法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、スクイズコーター法、含浸コーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、インクジェット法、ダイコーター法、スピンコーター法、バーコーター法、ディップコーター法等が挙げられる。
また、フィルム、シート、板状の前記絶縁性基材(A)の両面に、前記プライマーを塗工する方法は、プライマー層(B)が良好に形成できれば特に制限はなく、上記で例示した塗工方法を適宜選択すればよい。この際、前記プライマー層(B)は、前記絶縁性基材(A)の両面に同時形成してもよく、前記絶縁性基材(A)の片面に形成した後、他方の面に形成してもよい。
前記絶縁性基材(A)は、プライマーの塗工性向上や、前記導電層(M3)の基材への密着性を向上させる目的で、プライマー塗工前に、表面処理を行ってもよい。前記絶縁性基材(A)の表面処理方法としては、上述した絶縁性基材(A)上に、銀粒子層(M1)を形成する場合の表面処理方法と同様の方法を用いることができる。
前記プライマーを絶縁性基材(A)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる溶媒を除去してプライマー層(B)を形成する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、前記溶媒を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、前記溶媒を揮発させることが可能で、かつ前記絶縁性基材(A)に悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよく、室温乾燥でも加熱乾燥でもよい。具体的な乾燥温度は、20~350℃の範囲が好ましく、60~300℃の範囲がより好ましい。また、乾燥時間は、1~200分の範囲が好ましく、1~60分の範囲がより好ましい。
上記の乾燥は、送風を行ってもよいし、特に送風を行わなくてもよい。また、乾燥は、大気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの置換雰囲気、もしくは気流下で行ってもよく、真空下で行ってもよい。
前記絶縁性基材(A)が、枚葉のフィルム、シート、板の場合には、塗工場所での自然乾燥の他、送風、定温乾燥器などの乾燥器内で行うことができる。また、前記絶縁性基材(A)がロールフィルムやロールシートの場合には、塗工工程に続けて、設置された非加熱または加熱空間内でロール材を連続的に移動させることにより、乾燥を行うことができる。
前記プライマー層(B)の膜厚は、本発明を用いて製造するプリント配線板の仕様、用途によって適宜選択すればよいが、前記絶縁性基材(A)と前記金属パターン層(M2)との密着性を、より向上できることから、10nm~30μmの範囲が好ましく、10nm~1μmの範囲がより好ましく、10nm~500nmの範囲がさらに好ましい。
プライマー層(B)を形成する樹脂は、前記金属粒子の分散剤に反応性官能基[Y]を有するものを用いる場合、反応性官能基[Y]に対して反応性を有する反応性官能基[X]を有する樹脂が好ましい。前記反応性官能基[X]としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルキロールアミド基、ケト基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、カルボニル基、アセトアセチル基、エポキシ基、脂環エポキシ基、オキセタン環、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(ブロック化)イソシアネート基、(アルコキシ)シリル基等が挙げられる。また、プライマー層(B)を形成する化合物として、シルセスキオキサン化合物を用いることもできる。
特に、前記分散剤中の反応性官能基[Y]が、塩基性窒素原子含有基の場合、前記絶縁性基材(A)上での導電層(M3)の密着性をより向上できることから、プライマー層(B)を形成する樹脂は、反応性官能基[X]として、ケト基、カルボキシル基、カルボニル基、アセトアセチル基、エポキシ基、脂環エポキシ基、アルキロールアミド基、イソシアネート基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基を有するものが好ましい。
前記プライマー層(B)を形成する樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネートポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。なお、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂は、例えば、ウレタン樹脂存在下でアクリル単量体を重合することにより得られる。また、これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
上記のプライマー層(B)を形成する樹脂の中でも、絶縁性基材(A)上への導電層(M3)の密着性をより向上できることから、加熱により還元性化合物を生成する樹脂が好ましい。前記還元性化合物としては、例えば、フェノール化合物、芳香族アミン化合物、硫黄化合物、リン酸化合物、アルデヒド化合物等が挙げられる。これらの還元性化合物の中でも、フェノール化合物、アルデヒド化合物が好ましい。
加熱により還元性化合物を生成する樹脂をプライマーに用いた場合、プライマー層(B)を形成する際の加熱乾燥工程でホルムアルデヒド、フェノール等の還元性化合物を生成する。加熱により還元性化合物を生成する樹脂の具体例としては、例えば、N-アルキロール(メタ)アクリルアミドを含む単量体を重合した樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしN-アルキロール(メタ)アクリルアミドを含む単量体を重合した樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、尿素―ホルムアルデヒド-メタノール縮合物、尿素-メラミン-ホルムアルデヒド-メタノール縮合物、ポリN-アルコキシメチロール(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリルアミドのホルムアルデヒド付加物、メラミン樹脂等の加熱によりホルムアルデヒドを生成する樹脂;フェノール樹脂、フェノールブロックイソシアネート等の加熱によりフェノール化合物を生成する樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、密着性向上の観点から、ウレタン樹脂をシェルとしN-アルキロール(メタ)アクリルアミドを含む単量体を重合した樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、メラミン樹脂、フェノールブロックイソシアネートが好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリルアミド」とは、「メタクリルアミド」及び「アクリルアミド」の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、「メタクリル酸」及び「アクリル酸」の一方又は両方をいう。
加熱により還元性化合物を生成する樹脂は、加熱により還元性化合物を生成する官能基を有する単量体をラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の重合方法により重合することによって得られる。
加熱により還元性化合物を生成する官能基を有する単量体としては、例えば、N-アルキロールビニル単量体が挙げられ、具体的には、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エタノール(メタ)アクリルアミド、N-プロパノール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
また、上記の加熱により還元性化合物を生成する樹脂を製造する際には、加熱により還元性化合物を生成する官能基を有する単量体等とともに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどのその他の各種単量体を共重合することもできる。
前記ブロックイソシアネートを、前記プライマー層(B)を形成する樹脂として用いた場合は、イソシアネート基間で自己反応することでウレトジオン結合を形成し、又は、イソシアネート基と、他の成分が有する官能基とが結合を形成することによって、プライマー層(B)を形成する。この際形成される結合は、前記金属粒子分散液を塗工する前に形成されていてもよいし、前記金属粒子分散液を塗工する前には形成されておらず、前記金属粒子分散液を塗工した後に加熱によって形成されてもよい。
前記ブロックイソシアネートとしては、イソシアネート基がブロック剤によって封鎖され形成した官能基を有するものが挙げられる。
前記ブロックイソシアネートは、ブロックイソシアネート1モルあたり、前記官能基を350~600g/molの範囲で有するものが好ましい。
前記官能基は、密着性向上の観点から、前記ブロックイソシアネートの1分子中に1~10個有するものが好ましく、2~5個有するものがより好ましい。
また、前記ブロックイソシアネートの数平均分子量は、密着性向上の観点から、1,500~5,000の範囲が好ましく、1,500~3,000の範囲がより好ましい。
さらに、前記ブロックイソシアネートとしては、密着性をさらに向上する観点から、芳香環を有するものが好ましい。前記芳香環としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
なお、前記ブロックイソシアネートは、イソシアネート化合物が有するイソシアネート基の一部又は全部と、ブロック剤とを反応させることによって製造することができる。
前記ブロックイソシアネートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香環を有するポリイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物又は脂環式構造を有するポリイソシアネート化合物などが挙げられる。また、前記したポリイソシアネート化合物のそれらのビュレット体、イソシアヌレート体、アダクト体等も挙げられる。
また、前記イソシアネート化合物としては、上記で例示したポリイソシアネート化合物と、水酸基又はアミノ基を有する化合物等とを反応させて得られるものも挙げられる。
前記ブロックイソシアネートに芳香環を導入する場合、芳香環を有するポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。また、芳香環を有するポリイソシアネート化合物の中でも、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が好ましい。
前記ブロックイソシアネートの製造に用いるブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール等のフェノール化合物;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム化合物;ホルムアミドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物;2-ヒドロキシピリジン、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、n-ブタノール、イソブタノール、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、アセトアニリド、酢酸アミド、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ジフェニルアニリン、アニリン、カルバゾール、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1H-ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等が挙げられる。これらの中でも、70~200℃の範囲で加熱することによって解離してイソシアネート基を生成可能なブロック化剤が好ましく、110~180℃の範囲で加熱することによって解離するイソシアネート基を生成可能なブロック化剤がより好ましい。具体的には、フェノール化合物、ラクタム化合物、オキシム化合物が好ましく、特に、フェノール化合物は、ブロック化剤が加熱により脱離する際に還元性化合物となることからより好ましい。
前記ブロックイソシアネートの製造方法としては、例えば、予め製造した前記イソシアネート化合物と前記ブロック化剤とを混合し反応させる方法、前記イソシアネート化合物の製造に用いる原料とともに前記ブロック化剤を混合し反応させる方法等が挙げられる。
より具体的には、前記ブロックイソシアネートは、前記ポリイソシアネート化合物と、水酸基又はアミノ基を有する化合物とを反応させることによって末端にイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を製造し、次いで、前記イソシアネート化合物と前記ブロック化剤とを混合し反応させることによって製造することができる。
上記の方法で得られたブロックイソシアネートの前記プライマー層(B)を形成する樹脂中の含有比率は、50~100質量%の範囲が好ましく、70~100質量%の範囲がより好ましい。
前記メラミン樹脂としては、例えば、メラミン1モルに対してホルムアルデヒドが1~6モル付加したモノ又はポリメチロールメラミン;トリメトキシメチロールメラミン、トリブトキシメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン等の(ポリ)メチロールメラミンのエーテル化物(エーテル化度は任意);尿素-メラミン-ホルムアルデヒド-メタノール縮合物などが挙げられる。
また、上記のように加熱により還元性化合物を生成する樹脂を用いる方法の他に、樹脂に還元性化合物を添加する方法も挙げられる。この場合に、添加する還元性化合物としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、ビタミンC、ビタミンE、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、亜硫酸塩、次亜燐酸、次亜燐酸塩、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、フェノール等が挙げられる。
本発明において、樹脂に還元性化合物を添加する方法は、最終的に低分子量成分やイオン性化合物が残留することで電気特性が低下する可能性があるため、加熱により還元性化合物を生成する樹脂を用いる方法がより好ましい。
また、前記プライマー層(B)を形成する好ましい樹脂として、アミノトリアジン環を有する化合物を含有するものを挙げることができる。前記アミノトリアジン環を有する化合物は、低分子量の化合物であっても、より高分子量の樹脂であってもよい。
前記アミノトリアジン環を有する低分子量の化合物としては、アミノトリアジン環を有する各種添加剤を用いることができる。市販品としては、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジン(四国化成株式会社製「VT」)、四国化成株式会社製「VD-3」や「VD-4」(アミノトリアジン環と水酸基を有する化合物)、四国化成株式会社製「VD-5」(アミノトリアジン環とエトキシシリル基を有する化合物)等が挙げられる。これらは、添加剤として、前記のプライマー層(B)を形成する樹脂中に、1種、もしくは、2種以上を添加して使用することができる。
前記アミノトリアジン環を有する低分子量の化合物の使用量としては、前記樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上50質量部以下が好ましく、0.5質量部以上10質量部以下がより好ましい。
前記アミノトリアジン環を有する樹脂としては、樹脂のポリマー鎖中にアミノトリアジン環が共有結合で導入されているものも好適に用いることができる。具体的には、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂が挙げられる。
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、アミノトリアジン環構造とフェノール構造とがメチレン基を介して結合したノボラック樹脂である。前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物と、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、ビスフェノールA、フェニルフェノール、ナフトール、レゾルシン等のフェノール化合物と、ホルムアルデヒドとをアルキルアミン等の弱アルカリ性触媒の存在下又は無触媒で、中性付近で共縮合反応させるか、メチルエーテル化メラミン等のアミノトリアジン化合物のアルキルエーテル化物と、前記フェノール化合物とを反応させることにより得られる。
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、メチロール基を実質的に有していないものが好ましい。また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂には、その製造時に副生成物として生じるアミノトリアジン構造のみがメチレン結合した分子、フェノール構造のみがメチレン結合した分子等が含まれていても構わない。さらに、若干量の未反応原料が含まれていてもよい。
前記フェノール構造としては、例えば、フェノール残基、クレゾール残基、ブチルフェノール残基、ビスフェノールA残基、フェニルフェノール残基、ナフトール残基、レゾルシン残基等が挙げられる。また、ここでの残基とは、芳香環の炭素に結合している水素原子が少なくとも1つが抜けた構造を意味する。例えば、フェノールの場合は、ヒドロキシフェニル基を意味する。
前記トリアジン構造としては、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物由来の構造が挙げられる。
前記フェノール構造及び前記トリアジン構造は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、密着性をより向上できることから、前記フェノール構造としてはフェノール残基が好ましく、前記トリアジン構造としてはメラミン由来の構造が好ましい。
また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂の水酸基価は、密着性をより向上できることから、50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が好ましく、80mgKOH/g以上180mgKOH/g以下がより好ましく、100mgKOH/g以上150mgKOH/g以下がさらに好ましい。
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
また、前記アミノトリアジン環を有する化合物として、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂を併用することが好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド誘導体由来の構造を有する含リンエポキシ化合物、ジシクロペンタジエン誘導体由来の構造を有するエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油等の油脂のエポキシ化物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記エポキシ樹脂の中でも、密着性をより向上できることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
また、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、密着性をより向上できることから、100g/当量以上300g/当量以下が好ましく、120g/当量以上250g/当量以下がより好ましく、150g/当量以上200g/当量以下がさらに好ましい。
前記プライマー層(B)が、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂を含有する層の場合、密着性をより向上できることから、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂中のフェノール性水酸基(x)と前記エポキシ樹脂中のエポキシ基(y)とのモル比[(x)/(y)]が、0.1以上5以下が好ましく、0.2以上3以下がより好ましく、0.3以上2以下がさらに好ましい。
前記プライマー層(B)として、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂を含有する層を形成する場合には、前記アミノトリアジン環を有する化合物やエポキシ樹脂を含有するプライマー樹脂組成物を用いる。
さらに、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂を含有するプライマー層(B)の形成に用いるプライマー樹脂組成物には、必要に応じて、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等、その他の樹脂を配合してもよい。これらのその他の樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記プライマー層(B)を形成するために用いるプライマーは、塗工性、成膜性の観点から、プライマー中に前記樹脂を1~70質量%含有するものが好ましく、1~20質量%含有するものがより好ましい。
また、前記プライマーに使用可能な溶媒としては、各種有機溶剤、水性媒体が挙げられる。前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、前記水性媒体としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。
前記の水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール溶剤;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール溶剤;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム溶剤などが挙げられる。
また、前記プライマー層(B)を形成する樹脂は、必要に応じて、例えば、アルコキシシリル基、シラノール基、水酸基、アミノ基等、架橋反応に寄与する官能基を有していてもよい。これらの官能基を利用して形成される架橋構造は、後工程の銀粒子層(M1)を形成する工程以前に、すでに架橋構造を形成していてもよく、また、銀粒子層(M1)を形成する工程以降で架橋構造を形成してもよい。銀粒子層(M1)を形成する工程以降で架橋構造を形成する場合、前記導電層(M3)を形成する前に、前記プライマー層(B)に架橋構造を形成しておいてもよく、前記導電層(M3)を形成した後に、例えば、エージングすることによって、前記プライマー層(B)に架橋構造を形成してもよい。
前記プライマー層(B)には、必要に応じて、架橋剤をはじめ、pH調整剤、皮膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを適宜添加して使用してもよい。
前記架橋剤としては、例えば、金属キレート化合物、ポリアミン化合物、アジリジン化合物、金属塩化合物、イソシアネート化合物等が挙げられ、25~100℃程度の比較的低温で反応し架橋構造を形成する熱架橋剤、メラミン系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、ブロックイソシアネート化合物等の100℃以上の比較的高温で反応し架橋構造を形成する熱架橋剤や各種光架橋剤が挙げられる。前記プライマー層(B)として、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂を使用する場合には、プライマー樹脂組成物に、前記架橋剤として、多価カルボン酸を用いることが好ましい。前記多価カルボン酸としては、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、コハク酸等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの架橋剤の中でも、密着性をより向上できることから、無水トリメリット酸が好ましい。
前記架橋剤の使用量は、種類によって異なるものの、基材上への導電層(M3)の密着性向上の観点から、前記プライマーに含まれる樹脂の合計100質量部に対して、0.01~60質量部の範囲が好ましく、0.1~10質量部の範囲がより好ましく、0.1~5質量部の範囲がさらに好ましい。
前記架橋剤を用いた場合、後工程の銀粒子層(M1)を形成する工程以前に、すでに架橋構造を形成していてもよく、また、銀粒子層(M1)を形成する工程以降で架橋構造を形成してもよい。銀粒子層(M1)を形成する工程以降で架橋構造を形成する場合、前記導電層(M3)を形成する前に、前記プライマー層(B)に架橋構造を形成してもよく、前記導電層(M3)を形成した後に、例えば、エージングすることによって、前記プライマー層(B)に架橋構造を形成してもよい。
本発明において、前記プライマー層(B)上に、前記銀粒子層(M1)を形成する方法は、絶縁性基材(A)上に、前記銀粒子層(M1)を形成する方法と同様である。
また、前記プライマー層(B)は、前記絶縁性基材(A)と同様に、前記銀粒子分散液の塗工性向上や、導電層(M3)の基材への密着性を向上する目的で、銀粒子分散液を塗工する前に、表面処理を行ってもよい。
本発明のセミアディティブ工法用積層体は、絶縁性基材(A)の両表面上に導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層により導電性が確保されたものである。
本発明のセミアディティブ工法用積層体において、基材両面の導電性を確保する前記銀層は、銀めっき法により形成されたものであることが好ましい。
本発明のセミアディティブ工法用積層体において、基材両面の導電性を確保するために実施される銀めっきは、絶縁性基材(A)の両表面上に、導電性の銀粒子層(M1)、及び銅層(M2)が、順次積層され、前記銅層(M2)の層厚が、0.1μm~2μmである基材を用いて製造することができる。
基材両面の導電性を確保するための前記銀めっきは、パラジウム触媒を用いた無電解銀めっきを行うことが好ましい。前記無電解銀めっきは、基材表面にパラジウム触媒を付与して行うが、めっき反応の前工程として、貫通孔の内壁表面以外の導電性シードに吸着したパラジウム触媒を除去するソフトエッチング、もしくはマイクロエッチングと呼ばれる工程が存在する。前記銅層(M2)は、無電解銀めっきの工程において、貫通孔の内壁表面以外に吸着したパラジウム触媒を除去するためのエッチング工程において、導電性の銀粒子層(M1)を保護するものである。
前記銅層(M2)の層厚としては、銀めっきの前工程である、銅層(M2)をエッチングして、導電性の銀粒子層(M1)を露出させる工程において、銀粒子層(M1)を損傷せず、効率良く露出させる観点から、0.1μm~2μmであることが好ましく、0.5μm~1.5μmであることが、より好ましい。
前記銅層(M2)を前記導電性の銀粒子層(M1)上に、積層形成する方法としては、前記導電性の銀粒子層(M1)上に、乾式、もしくは湿式の銅めっき法を行うことで形成することができる。
上記の乾式の銅めっき法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどの方法が挙げられる。また、湿式の銅めっき法による処理としては、前記銀粒子層(M1)をめっき触媒とした無電解銅めっき、もしくは、電解銅めっき、無電解銅めっきと電解銅めっきの組み合わせが挙げられる。電解めっきを用いると、めっき析出速度を大きくすることができるため、製造効率が高くなり有利である。
前記銀粒子層(M1)上に銅層(M2)を形成するための銅めっき法としては、特に制限はなく、乾式のめっき法である真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法で形成しても良いし、湿式のめっき法である、無電解銅めっき法、電解銅めっき法、無電解銅めっきと電解銅めっきの組み合わせで形成しても良く、また、乾式のめっき法と湿式のめっき法を組み合わせて形成しても良い。のいずれの場合も、公知慣用の銅めっき法を好適に用いることができる。
前記銅めっきは、前記絶縁性基材(A)の両表面の銀粒子層(A)上に、同じ厚さの銅層(M3)を形成することが好ましい。
前記の銅めっき法により銅層(M2)を形成する工程において、必要に応じて、前記銀粒子層(M1)表面の表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、前記銀粒子層(M1)の表面や形成したレジストパターンが損傷しない条件で、酸性又はアルカリ性の洗浄液による洗浄処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、気相オゾン処理、液相オゾン処理、表面処理剤による処理等が挙げられる。これらの表面処理は、1種の方法で行うことも、2種以上の方法を併用することもできる。
本発明のセミアディティブ工法用積層体において、基材両面の導電性を確保するために実施される銀めっきは、絶縁性基材(A)の両表面上に、導電性の銀粒子層(M1)、及び剥離性カバー層(RC)が、順次積層された基材を用いても製造することができる。
前記剥離性カバー層(RC)は、前記銀粒子層(M1)上に積層することで、本発明のセミアディティブ工法用積層体を製造する際に、後述する両面を貫通する貫通孔を形成する工程において、発生する有機物や無機物のゴミ(スミア)が、銀粒子層(M1)の表面に付着することを防ぎ、また、形成された貫通孔の内壁表面を導電化する工程において、無電解めっき触媒が、導電性の銀粒子層(M1)上に付着するのを防ぎ、銀粒子層(M1)を保護するものである。
前記剥離性カバー層(RC)の素材としては、本発明のプリント配線板の製造方法において、後述する回路パターン層(M3)形成のための電解銅めっき用導電性シードとして用いる工程の前処理工程において、前記導電性の銀粒子層(M1)を保護する目的が達成される限り、特に制限はなく、市販の種々の樹脂フィルムを用いることができるが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのフィルムを好適に用いることができる。
前記剥離性カバー層(RC)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に、剥離性を向上させるためのシリコーン層を有しているものを用いても良い。
本発明で用いる剥離性カバー層(RC)の膜厚は、フィルムのハンドリング性、及び、前記銀粒子層(M1)の保護性、及び、基材への貫通孔形成の簡便さの観点から、10~100μmであることが好ましく、15~70μmであることがより好ましい。
本発明で用いる剥離性カバー層(RC)は、前記銀粒子層(M1)の塗工後、銀粒子層(M1)上に積層することができる。例えば、ロールコーターで銀粒子層(M1)を塗工する場合には、巻き取り時に剥離性カバー層(RC)を一緒に巻き取ることで積層することができる。
本発明の前記剥離性カバー層(RC)の素材としては、また、アルカリ可溶性の樹脂を用いても良い。アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液で現像可能なものであれば、特に限定されるものではなく、公知慣用のものを用いることができ、例えば、アミドイミド樹脂や、カルボキシル基やフェノール性水酸基などのアルカリ可溶性官能基を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性の樹脂は、樹脂溶液を、前記銀粒子層(M1)上に塗工して製膜しても良いし、予めフィルム化したものを使用しても良い。フィルム化したものを用いる場合は、例えば、前記と同様に、ロールコーターで銀粒子層(M1)を塗工、巻き取り時に剥離性カバー層(RC)を一緒に巻き取ることで積層することができる。
本発明のセミアディティブ工法用積層体の製造方法の工程1においては、絶縁性基材(A)の両表面上に、銀粒子層(M1)、及び銅層(M2)が、順次積層され、前記銅層(M2)の層厚が、0.1μm~2μmである積層体、もしくは、絶縁性基材(A)と、銀粒子層(M1)の間に、さらにプライマー層(B)を積層した積層体に両面を貫通する貫通孔を形成する工程である。
また、本発明のセミアディティブ工法用積層体の好適な製造方法の一形態の工程1においては、絶縁性基材(A)の両表面上に、銀粒子層(M1)、及び剥離性カバー層(RC)が、順次積層された積層体、もしくは、絶縁性基材(A)と、銀粒子層(M1)の間に、さらにプライマー層(B)を積層した積層体に両面を貫通する貫通孔を形成する工程である。
工程1において、前記銅層(M2)を有する積層体に前記貫通孔を形成する方法としては、公知慣用の方法を、適宜選択すれば良いが、例えば、ドリル加工、レーザー加工、レーザー加工による銅層の孔開けと酸化剤、アルカリ性薬剤、酸性薬剤等を用いた絶縁性基材の薬剤エッチングを組み合わせた加工法、レジストを用いた銅箔の孔パターンエッチングと、酸化剤、アルカリ性薬剤、酸性薬剤等を用いた絶縁性基材の薬剤エッチングを組み合わせた加工法などの方法が挙げられる。
また、工程1において、前記剥離性カバー層(RC)を有する積層体に前記貫通孔を形成する方法としては、公知慣用の方法を、適宜選択すれば良いが、例えば、ドリル加工、レーザー加工、などの方法が挙げられる。
前記穴開け加工で形成する穴の孔径(直径)は、0.01~1mmの範囲が好ましく、0.02~0.5mmの範囲がより好ましく、0.03~0.1mmの範囲がさらに好ましい。
孔開け加工時に発生する有機物や無機物のゴミ(スミア)が、後述する両面の電気的接続、及び、導電層(M3)を形成するめっき工程でめっき析出性の不良や、めっき密着性の低下、めっき外観を損なう原因となる可能性があるため、ゴミを除去すること(デスミア)が好ましい。デスミアの方法としては、例えば、プラズマ処理、逆スパッタ処理等の乾式処理、過マンガン酸カリウム等の酸化剤水溶液による洗浄処理、アルカリや酸の水溶液による洗浄処理、有機溶剤による洗浄処理等の湿式処理などが挙げられる。
本発明のセミアディティブ工法用積層体の製造方法の工程2には、前記工程1において形成された貫通孔を有する積層体の表面上に、無電解銀めっき用の触媒を付与する工程である。
前記貫通孔の表面に導電性を確保する無電解銀めっき法としては、公知の種々の方法を用いることができ、パラジウム触媒を用いる無電解銀めっき法を、特に好適に用いることができる。基材上にパラジウム触媒を付与する方法としては、公知慣用の種々の方法を利用することができるが、例えば、センシタイジング-アクチベーター法や、キャタリスト-アクセレーター法を用いれば良い。
本発明のセミアディティブ工法用積層体の製造方法の工程3は、前記銅層(M2)をエッチングして、前記銅層(M2)上に付与した触媒を除去するとともに、プリント配線板の製造工程において、導電層(M3)を形成するためのめっきシード層となる導電性の銀粒子層(M1)を露出する工程である。
工程3において、導電性の銀粒子層(M1)上に積層された0.1μm~2μm厚の銅層(M2)をエッチング除去するために用いられる薬剤は、銅層(M2)を効率良くエッチングし、下層の銀粒子層(M1)を損傷しない限り、特に制限はなく、公知慣用の銅のマイクロエッチング液、ソフトエッチング液を用いることができる。銅層(M2)のエッチング液としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩の水溶液、もしくは、硫酸/過酸化水素水溶液を用いて行うことができる。
過硫酸塩の水溶液、もしくは、硫酸/過酸化水素水溶液の濃度は、プリント配線板製造に用いる前記セミアディティブ工法用積層体の銅層(M2)の層厚、製造装置の設計等に合わせて、適宜選択すれば良いが、使用するプロセスにおいて、銅層のエッチング速度が2μm/minより小さくなる様に設定することが好ましく、効率良い銅層(M2)の除去と、下地層である導電性銀粒子層(M1)への損傷を防ぐ観点から、0.1μm/min.~1.5μm/min.のエッチング速度となる様に設定することが、より好ましい。
また、本発明のセミアディティブ工法用積層体の製造に、前記、絶縁性基材(A)の両表面上に、銀粒子層(M1)、及び剥離性カバー層(RC)が、順次積層された積層体、 もしくは、絶縁性基材(A)と、銀粒子層(M1)の間に、さらにプライマー層(B)を積層した積層体を用いた場合、本発明のセミアディティブ工法用積層体を用いたプリント配線板の製造方法の工程3は、前記剥離性カバー層(RC)を剥離して、導電性の銀粒子層(M1)を露出させる工程である。本工程は、後工程の導電層(M3)を形成するためのめっきシード層となる導電性の銀粒子層(M1)を露出する工程であり、工程2において貫通孔を導電化するために用いたパラジウム、導電性ポリマー、カーボンを、貫通孔以外の表面上から除去する目的を有する。
工程3における前記剥離性カバー層(RC)の剥離は、機械的に引き剥がせば良く、各種市販の剥離装置を用いても良い。また、前記剥離性カバー層(RC)として、アルカリ溶解性の樹脂を用いた場合には、アルカリ性溶液への浸漬によって剥離することが可能である。剥離に用いるアルカリ性溶液、剥離条件としては、後述する、パターンレジスト用の剥離液を適宜用いることができる。
本発明のセミアディティブ工法用積層体の製造方法の工程4は、前記工程2と3を経て前記基材の貫通孔の表面上に付与しためっき用の触媒を用いて、無電解銀めっきを行い、貫通孔を銀層で導電化する工程である。
本発明で実施する無電解銀めっきは、公知慣用の方法を用いれば良く、市販の無電解銀めっきプロセスを好適に用いることができる。
本発明のセミアディティブ工法用積層体において、基材両面を接続する貫通孔表面に、前記無電解銀めっきにより形成される銀層の厚みとしては、本発明のプリント配線板の製造法において、後工程の電解銅めっきにより、貫通孔表面に形成された銀層上に銅めっきが問題無く形成されるための導電性が確保されれば良く、特に制限は無いが、50nm~2μmであることが好ましく、確実な導電性の確保とプロセスの効率の観点から、100nm~1.5μmであることが、より好ましい。
本発明のセミアディティブ工法用積層体は、前記工程4の銀めっきの後、乾燥工程を経て、銀粒子層(M1)を導電シードとするセミアディティブ工法用積層体、すなわち、絶縁性基材(A)の両表面上に導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層により導電性が確保された基材であることを特徴とするセミアディティブ工法用積層体として用いることができる。
また、本発明のセミアディティブ工法用積層体は、前記工程4の銀めっきの後、乾燥工程を経て、絶縁性基材(A)の両表面上に、プライマー層(A)、導電性の銀粒子層(M1)を、この順に有し、さらに、基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層により導電性が確保された基材であることを特徴とするセミアディティブ工法用積層体として用いることができる。
本発明のセミアディティブ工法用積層体を用いたプリント配線板の製造方法においては、前記セミアディティブ工法用積層体の導電性の銀粒子層(M1)上に、回路パターンのパターンレジストを形成する。(プリント配線板の製造法の工程5)
工程5のパターンレジストを形成する工程においては、前記銀粒子層(M1)の表面は、レジスト形成前に、レジスト層との密着性向上を目的として、酸性又はアルカリ性の洗浄液による洗浄処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、気相オゾン処理、液相オゾン処理、表面処理剤による処理等の表面処理を行ってもよい。これらの表面処理は、1種の方法で行うことも2種以上の方法を併用することもできる。
前記の表面処理剤による処理としては、例えば、特開平7-258870号公報に記載されている、トリアゾール系化合物、シランカップリング剤および有機酸からなる防錆剤を用いて処理する方法、特開2000-286546号公報に記載されている、有機酸、ベンゾトリアゾール系防錆剤およびシランカップリング剤を用いて処理する方法、特開2002-363189号公報に記載されている、トリアゾールやチアジアゾール等の含窒素複素環と、トリメトキシシリル基やトリエトキシシリル基等のシリル基が、チオエーテル(スルフィド)結合等を有する有機基を介して結合された構造の物質を用いて処理する方法、WO2013/186941号公報に記載されている、トリアジン環とアミノ基を有するシラン化合物を用いて処理する方法、特開2015-214743号公報に記載されている、ホルミルイミダゾール化合物と、アミノプロピルシラン化合物とを反応させて得られるイミダゾールシラン化合物を用いて処理する方法、特開2016-134454号公報に記載されているアゾールシラン化合物を用いて処理する方法、特開2017-203073号公報に記載されている、一分子中にアミノ基および芳香環を有する芳香族化合物と2以上のカルボキシル基を有する多塩基酸、ならびにハロゲン化物イオンを含む溶液で処理する方法、特開2018-16865号公報に記載されているトリアゾールシラン化合物を含有する表面処理剤で処理する方法、などを用いることができる。
本発明のセミアディティブ工法用積層体を用いて、表面に金属パターンを形成するためには、感光性レジストにフォトマスクを通すか、ダイレクト露光機を用いて、活性光でパターンを露光する。露光量は、必要に応じて適宜設定すればよい。露光により感光性レジストに形成された潜像を、現像液を用いて除去することによって、パターンレジストを形成する。
前記現像液としては、0.3~2質量%の炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の希薄アルカリ水溶液が挙げられる。前記希薄アルカリ水溶液中には、界面活性剤、消泡剤や、現像を促進させるために、少量の有機溶剤等を添加してもよい。また、上記で露光した基材を、現像液に浸漬するか、現像液をスプレー等でレジスト上に噴霧することにより現像を行ない、この現像によって、パターン形成部が除去されたパターンレジストを形成できる。
パターンレジストを形成する際には、さらに、プラズマによるデスカム処理や、市販のレジスト残渣除去剤を用いて、硬化レジストと基板との境界部分に生じた裾引き部分や基板表面に残存したレジスト付着物などのレジスト残渣を除去してもよい。
本発明で用いる感光性レジストとしては、市販のレジストインキ、液体レジスト、ドライフィルムレジストを用いることができ、目的とするパターンの解像度、使用する露光機の種類、後工程のめっき処理で用いる薬液の種類、pH等によって適宜選択すればよい。
市販のレジストインキとしては、例えば、太陽インキ製造株式会社製の「めっきレジストMA-830」、「エッチングレジストX-87」;NAZDAR社のエッチングレジスト、めっきレジスト;互応化学工業株式会社製の「エッチングレジスト PLAS FINE PER」シリーズ、「めっきレジスト PLAS FINE PPR」シリーズ等が挙げられる。また、電着レジストとしては、例えば、ダウ・ケミカル・カンパニー社の「イーグルシリーズ」、「ペパーシリーズ」等が挙げられる。さらに、市販のドライフィルムとしては、例えば、日立化成株式会社製の「フォテック」シリーズ;ニッコーマテリアルズ株式会社製の「ALPHO」シリーズ;旭化成株式会社製の「サンフォート」シリーズ、デュポン社製の「リストン」シリーズ等が挙げられる。
効率良くプリント配線板を製造するためには、ドライフィルムレジストを用いることが簡便で、特に微細回路を形成する場合には、セミアディティブ工法用のドライフィルムを用いればよい。この目的に用いる市販のドライフィルムとしては、例えば、ニッコーマテリアルズ株式会社製の「ALFO LDF500」、「NIT2700」、旭化成株式会社製の「サンフォート UFG―258」、日立化成株式会社製の「RDシリーズ(RD-2015、1225)」、「RYシリーズ(RY-5319、5325)」、デュポン社製の「PlateMasterシリーズ(PM200、300)」等を用いることができる。
本発明のセミアディティブ工法用積層体を用いて、基材上に回路パターンを形成するには、前記導電性の銀粒子層(M1)を電解銅めっきのカソード電極として使用し、上記のようにして、現像により露出した前記銀粒子層(M1)上に、電解銅めっき法による処理を行うことにより、積層体の貫通孔を銅めっきで接続すると同時に、回路パターンの導電層(M3)を形成することができる。(本発明のプリント配線板製造法の工程6)
前記の電解銅めっき法により導電層(M3)を形成する前において、必要に応じて、前記銀粒子層(M1)表面の表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、前記銀粒子層(M1)の表面や形成したレジストパターンが損傷しない条件で、酸性又はアルカリ性の洗浄液による洗浄処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、気相オゾン処理、液相オゾン処理、表面処理剤による処理等が挙げられる。これらの表面処理は、1種の方法で行うことも2種以上の方法を併用することもできる。
本発明のセミアディティブ工法用積層体を用いて、絶縁性基材上に回路パターンの導電層(M3)を形成する際、めっき膜の応力緩和や密着力向上を目的として、めっき後にアニーリングを行ってもよい。アニーリングは、後述するエッチング工程の前に行ってもよいし、エッチング工程の後に行ってもよく、エッチングの前後で行ってもよい。
アニーリングの温度は、用いる基材の耐熱性や使用目的によって40~300℃の温度範囲で適宜選択すればよいが、40~250℃の範囲が好ましく、めっき膜の酸化劣化を抑制する目的から、40~200℃の範囲がより好ましい。また、アニーリングの時間は、40~200℃の温度範囲の場合には、10分~10日間、200℃を超える温度でのアニーリングは、5分~10時間程度がよい。また、めっき膜をアニーリングする際には、適宜、めっき膜表面に防錆剤を付与してもよい。
本発明のプリント配線板の製造方法の工程6においては、前記工程5において、めっきにより導電層(M3)を形成した後に、前記感光性レジストを用いて形成したパターンレジストを剥離し、非パターン形成部の銀粒子層(M1)をエッチング液により除去する。パターンレジストの剥離は、用いた感光性レジストのカタログ、仕様書等に記載されている推奨条件で行えばよい。また、パターンレジストの剥離の際に用いるレジスト剥離液としては、市販のレジスト剥離液や、45~60℃に設定した水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムの1.5~3質量%水溶液を用いることができる。レジストの剥離は、前記回路パターンの導電層(M3)を形成した基材を、剥離液に浸漬するか、剥離液をスプレー等で噴霧することによって行うことができる。
また、非パターン形成部の銀粒子層(M1)を除去する際に用いるエッチング液は、前記銀粒子層(M1)のみを選択的にエッチングし、前記導電層(M3)を形成する銅は、エッチングしないものが好ましい。このようなエッチング液としては、カルボン酸と過酸化水素との混合物が挙げられる。
前記カルボン酸としては、例えば、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、アミノ酸等が挙げられる。これらのカルボン酸は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。これらのカルボン酸の中でも、エッチング液としての製造、取り扱いが容易であることから、主として酢酸を用いることが好ましい。
エッチング液として、カルボン酸と過酸化水素との混合物を用いると、過酸化水素がカルボン酸と反応することによって、過カルボン酸(ぺルオキシカルボン酸)が生成すると考えられる。生成した過カルボン酸は、前記導電層(M3)を構成する銅の溶解を抑制しながら、前記銀粒子層(M1)を構成する銀を優先的に溶解するものと推測される。
前記カルボン酸と過酸化水素との混合物の混合割合としては、銅の導電層(M3)の溶解を抑制できることから、カルボン酸1モルに対して、過酸化水素を2~100モルの範囲が好ましく、過酸化水素2~50モルの範囲がより好ましい。
前記カルボン酸と過酸化水素との混合物は、水で希釈された水溶液が好ましい。また、前記水溶液中の前記カルボン酸と過酸化水素との混合物の含有比率は、エッチング液の温度上昇の影響を抑制できることから、2~65質量%の範囲が好ましく、2~30質量%の範囲がより好ましい。
上記の希釈に用いる水としては、イオン交換水、純水、超純水等のイオン性物質や不純物を除去した水を用いることが好ましい。
前記エッチング液には、前記銅の導電層(M3)を保護して、溶解を抑制するための保護剤をさらに添加してもよい。保護剤としては、アゾール化合物を用いることが好ましい。
前記アゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキソゾール、チアゾール、セレナゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール等が挙げられる。
前記アゾール化合物の具体例としては、例えば、2-メチルベンゾイミダゾール、アミノトリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、4-アミノベンゾトリアゾール、1-ビスアミノメチルベンゾトリアゾール、アミノテトラゾール、フェニルテトラゾール、2-フェニルチアゾール、ベンゾチアゾール等が挙げられる。これらのアゾール化合物は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記アゾール化合物のエッチング液中の濃度は、0.001~2質量%の範囲が好ましく、0.01~0.2質量%の範囲がより好ましい。
また、前記エッチング液には、前記銅の導電層(M3)の溶解を抑制できることから、保護剤として、ポリアルキレングリコールを添加することが好ましい。
前記ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の水溶性ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレングリコールが好ましい。また、ポリアルキレングリコールの数平均分子量としては、200~20,000の範囲が好ましい。
前記ポリアルキレングリコールのエッチング液中の濃度は、0.001~2質量%の範囲が好ましく、0.01~1質量%の範囲がより好ましい。
前記エッチング液には、pHの変動を抑制するため、有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
本発明のセミアディティブ工法用積層体において非パターン形成部の銀粒子層(M1)の除去は、前記導電層(M3)を形成した後、前記感光性レジストを用いて形成したパターンレジストを剥離した基材を、前記エッチング液に浸漬するか、前記基材上にエッチング液をスプレー等で噴霧することによって行うことができる。
エッチング装置を用いて、非パターン形成部の銀粒子層(M1)を除去する場合には、例えば、前記エッチング液の全成分を所定の組成になるように調製した後、エッチング装置に供給してもよく、前記エッチング液の各成分を個別にエッチング装置に供給し、装置内で、前記各成分を混合して、所定の組成になるように調製してもよい。
前記エッチング液は、10~35℃の温度範囲で用いることが好ましく、特に過酸化水素を含有するエッチング液を使用する場合には、過酸化水素の分解を抑制できることから、30℃以下の温度範囲で用いることが好ましい。
前記銀粒子層(M1)を、前記エッチング液で除去処理した後、エッチング液中に溶解した銀成分がプリント配線板上に付着、残留するのを防ぐ目的で、水洗以外に、さらに洗浄操作を行ってもよい。洗浄操作には、酸化銀、硫化銀、塩化銀を溶解するが、銀をほとんど溶解しない洗浄溶液を用いることが好ましい。具体的には、チオ硫酸塩もしくはトリス(3-ヒドロキシアルキル)ホスフィンを含有する水溶液、又は、メルカプトカルボン酸もしくはその塩を含有する水溶液を洗浄薬液として用いることが好ましい。
前記、チオ硫酸塩としては、例えば、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム等が挙げられる。また、前記トリス(3-ヒドロキシアルキル)ホスフィンとしては、例えば、トリス(3-ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリス(3-ヒドロキシエチル)ホスフィン、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィン等が挙げられる。これらのチオ硫酸塩又はトリス(3-ヒドロキシアルキル)ホスフィンは、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。
チオ硫酸塩を含有する水溶液を用いる場合の濃度としては、工程時間、用いる洗浄装置の特性等によって適宜設定すればよいが、0.1~40質量%の範囲が好ましく、洗浄効率や連続使用時の薬液の安定性の観点から、1~30質量%の範囲がより好ましい。
また、前記トリス(3-ヒドロキシアルキル)ホスフィンを含有する水溶液を用いる場合の濃度としては、工程時間、用いる洗浄装置の特性等によって適宜設定すればよいが、0.1~50質量%の範囲が好ましく、洗浄効率や連続使用時の薬液の安定性の観点から、1~40質量%の範囲がより好ましい。
前記メルカプトカルボン酸としては、例えば、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、システイン、N―アセチルシステイン等が挙げられる。また、前記メルカプトカルボン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。
メルカプトカルボン酸又はその塩の水溶液を用いる場合の濃度としては、0.1~20質量%の範囲が好ましく、洗浄効率や大量に処理する場合のプロセスコストの観点から、0.5~15質量%の範囲がより好ましい。
上記の洗浄操作を行う方法としては、例えば、前記非パターン形成部の銀粒子層(M1)をエッチング除去して得られたプリント配線板を前記洗浄薬液に浸漬する方法、前記プリント配線板にスプレー等で洗浄薬液を噴霧する方法等が挙げられる。洗浄薬液の温度は、室温(25℃)で用いることができるが、外気温に影響を受けずに安定的に洗浄処理を行えることから、例えば、30℃に温度設定して用いてもよい。
また、前記非パターン形成部の銀粒子層(M1)をエッチング液により除去する工程と洗浄操作は、必要に応じて繰り返して行うことができる。
本発明のプリント配線板は、上記のように、前記エッチング液で非パターン形成部の銀粒子層(M1)を除去処理した後、非パターン形成部の絶縁性を、さらに向上させる目的で、必要に応じて、さらに洗浄操作を行ってもよい。この洗浄操作には、例えば、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの水溶液に、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液を用いることができる。
前記アルカリ性過マンガン酸溶液を用いた洗浄は、20~60℃に設定したアルカリ性過マンガン酸溶液に、上記の方法により得られたプリント配線板を浸漬する方法、前記プリント配線板にスプレー等でアルカリ性過マンガン酸溶液を噴霧する方法等が挙げられる。前記プリント配線板は、アルカリ性過マンガン酸溶液の基材表面への濡れ性をよくし、洗浄効率を向上させる目的で、洗浄前に、アルコール性水酸基を有する水溶性の有機溶媒に接触させる処理を行ってもよい。前記有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記アルカリ性過マンガン酸溶液の濃度は、必要に応じて適宜選択すればよいが、0.1~10質量%の水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム水溶液100質量部に、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを0.1~10質量部溶解させたものが好ましく、洗浄効率の観点から、1~6質量%の水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム水溶液100質量部に、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを1~6質量部溶解させたものがより好ましい。
上記のアルカリ性過マンガン酸溶液を用いた洗浄を行う場合には、アルカリ性過マンガン酸溶液の洗浄後に、洗浄した前記プリント配線板を、中和・還元作用のある液を用いて処理することが好ましい。前記中和・還元作用のある液としては、例えば、0.5~15質量%の希硫酸、又は有機酸を含有する水溶液が挙げられる。また、前記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸、メチオニン等が挙げられる。
上記のアルカリ性過マンガン酸溶液による洗浄は、前記エッチング液中に溶解した銀成分がプリント配線板上に付着、残留するのを防ぐ目的で行う洗浄の後に行ってもよいし、前記エッチング液中に溶解した銀成分がプリント配線板上に付着、残留するのを防ぐ目的で、洗浄を行う代わりに、アルカリ性過マンガン酸溶液による洗浄のみを行ってもよい。
また、本発明のプリント配線板用積層体を用いて得られたプリント配線板は、適宜、必要に応じて、回路パターン上へのカバーレイフィルム積層、ソルダーレジスト層の形成、及び、回路パターンの最終表面処理として、ニッケル/金めっき、ニッケル/パラジウム/金めっき、パラジウム/金めっきを施してもよい。
以上に述べた本発明のセミアディティブ工法用積層体により、真空装置を用いることなく、種々の平滑基材上に密着性の高い、設計再現性が良く、良好な矩形断面形状の平滑表面の回路パターンを有する、両面接続された基板を製造することが可能である。したがって、本発明のセミアディティブ工法用積層体を用いることで、種々の形状、サイズの高密度、高性能のプリント配線板用基板、プリント配線板を、低コストで、良好に提供することができ、プリント配線板分野における産業上の利用性が高い。また、積層体を用いることにより、プリント配線板のみならず、平面上基材表面にパターン化された金属層を有する種々の部材、例えば、コネクター、電磁波シールド、RFIDなどのアンテナ、フィルムコンデンサーなども製造できる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、いずれも質量基準である。
[製造例1:プライマー(B-1)の製造]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエステルポリオール(1,4-シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール)100質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸17.6質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール21.7質量部及びジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート106.2質量部を、メチルエチルケトン178質量部の混合溶剤中で反応させることによって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にトリエチルアミン13.3質量部を加えて、前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基を中和し、さらに水380質量部を加えて十分に攪拌することにより、ウレタンプレポリマーの水性分散液を得た。
上記で得られたウレタンプレポリマーの水性分散液に、25質量%エチレンジアミン水溶液8.8質量部を加え、攪拌することによって、ウレタンプレポリマーを鎖伸長した。次いでエージング・脱溶剤することによって、ウレタン樹脂の水性分散液(不揮発分30質量%)を得た。前記ウレタン樹脂の重量平均分子量は53,000であった。
次に、攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗、重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水140質量部、上記で得られたウレタン樹脂の水分散液100質量部を入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。その後、攪拌しながら、メタクリル酸メチル60質量部、アクリル酸n-ブチル30質量部及びN-n-ブトキシメチルアクリルアミド10質量部からなる単量体混合物と、0.5質量%過硫酸アンモニウム水溶液20質量部とを別々の滴下漏斗から、反応容器内温度を80℃に保ちながら120分間かけて滴下した。
滴下終了後、さらに同温度にて60分間攪拌した後、反応容器内の温度を40℃に冷却して、不揮発分が20質量%になるように脱イオン水で希釈した後、200メッシュ濾布で濾過することによって、前記ウレタン樹脂をシェル層とし、メタクリル酸メチル等を原料とするアクリル樹脂をコア層とするコア・シェル型複合樹脂であるプライマー層用樹脂組成物の水分散液を得た。次に、イソプロパノールと水の質量割合が7/3となり、不揮発分が2質量%となるように、この水分散液にイソプピルアルコールと脱イオン水を加えて混合し、プライマー(B-1)を得た。
[製造例2:プライマー(B-2)の製造]
還流冷却器、温度計、撹拌機を備えた反応フラスコに、37質量%ホルムアルデヒドと7質量%メタノールを含むホルマリン600質量部に、水200質量部及びメタノール350質量部を加えた。次いで、この水溶液に25質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH10に調整した後、メラミン310質量部を加え、液温を85℃まで上げ、メチロール化反応を1時間行った。
その後、ギ酸を加えてpH7に調整した後、60℃まで冷却し、エーテル化反応(二次反応)させた。白濁温度40℃で25質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整し、エーテル化反応を止めた(反応時間:1時間)。温度50℃の減圧下で残存するメタノールを除去(脱メタノール時間:4時間)し、不揮発分80質量%のメラミン樹脂を含むプライマー用樹脂組成物を得た。次に、この樹脂組成物にメチルエチルケトンを加えて希釈混合することで、不揮発分2質量%のプライマー(B-2)を得た。
[製造例3:プライマー(B-3)の製造]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備え、窒素置換された反応容器に、2,2-ジメチロールプロピオン酸9.2質量部、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(東ソー株式会社製「ミリオネートMR-200」)57.4質量部及びメチルエチルケトン233質量部を仕込み、70℃で6時間反応させ、イソシアネート化合物を得た。次いで、反応容器内にブロック化剤としてフェノール26.4質量部を供給し、70℃で6時間反応させた。その後、40℃まで冷却し、ブロックイソシアネートの溶液を得た。
次に、上記で得られたブロックイソシアネートの溶液に、40℃でトリエチルアミン7質量部を加えて前記ブロックイソシアネートが有するカルボキシル基を中和し、水を加えて十分に攪拌した後、メチルエチルケトンを留去して、不揮発分20質量%のブロックイソシアネートと水とを含有するプライマー層用樹脂組成物を得た。次に、この樹脂組成物にメチルエチルケトンを加えて希釈混合することで、不揮発分2質量%のプライマー(B-3)を得た。
[製造例4:プライマー(B-4)の製造]
ノボラック樹脂(DIC株式会社製「PHENOLITE TD-2131」、水酸基当量104g/当量)35質量部、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ基当量188g/当量)64質量部、及び、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジン(四国化成株式会社製「VT」)1質量部を混合後、メチルエチルケトンで不揮発分が2質量%となるように希釈混合することで、プライマー(B-4)を得た。
[製造例5:プライマー(B-5)の製造]
ノボラック樹脂(DIC株式会社製「PHENOLITE TD-2131」、水酸基当量104g/当量)35質量部、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ基当量188g/当量)64質量部、及び、トリアジン環を有するシランカップリング剤(四国化成株式会社製「VD-5」)1質量部を混合後、メチルエチルケトンで不揮発分が2質量%となるように希釈混合することで、プライマー(B-5)を得た。
[製造例6:プライマー(B-6)の製造]
温度計、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコに、フェノール750質量部、メラミン75質量部、41.5質量%ホルマリン346質量部、及びトリエチルアミン1.5質量部を加え、発熱に注意しながら100℃まで昇温した。還流下100℃にて2時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら180℃まで2時間かけて昇温した。次いで、減圧下で未反応のフェノールを除去し、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂を得た。水酸基当量は120g/当量であった。
上記で得られたアミノトリアジンノボラック樹脂65質量部、及びエポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ基当量188g/当量)35質量部を混合後、メチルエチルケトンで不揮発分が2質量%となるように希釈混合することで、プライマー組成物(B-6)を得た。
[製造例7:プライマー(B-7)の製造]
製造例6で得られたアミノトリアジンノボラック樹脂48質量部、及びエポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ基当量188g/当量)52質量部を混合後、メチルエチルケトンで不揮発分が2質量%となるように希釈混合することで、プライマー組成物(B-7)を得た。
[製造例8:プライマー(B-8)の製造]
アミノトリアジンノボラック樹脂とエポキシ樹脂の量をそれぞれ、48質量部から39質量部、52質量部から61質量部に変更した以外は、製造例78と同様にして、不揮発分2質量%のプライマー組成物(B-8)を得た。
[製造例9:プライマー(B-9)の製造]
アミノトリアジンノボラック樹脂とエポキシ樹脂の量をそれぞれ、48質量部から31質量部、52質量部から69質量部に変更した以外は、製造例8と同様にして、不揮発分2質量%のプライマー組成物(B-9)を得た。
[製造例10:プライマー(B-10)の製造]
製造例7で得られたアミノトリアジンノボラック樹脂47質量部、及びエポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ基当量188g/当量)52質量部に、さらに無水トリメリット酸1質量部を混合後、メチルエチルケトンで不揮発分が2質量%となるように希釈混合することで、プライマー(B-10)を得た。
[製造例11:プライマー(B-11)の製造]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水350質量部、界面活性剤(花王株式会社製「ラテムルE-118B」:有効成分25質量%)4質量部を入れ、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。
撹拌下、反応容器中にメタクリル酸メチル47.0質量部、メタクリル酸グリシジル5.0質量部、アクリル酸n-ブチル45.0質量部、メタクリル酸3.0質量部からなるビニル単量体混合物と界面活性剤(第一工業製薬株式会社製「アクアロンKH-1025」:有効成分25質量%)4質量部と脱イオン水15質量部とを混合して得られたモノマープレエマルジョンの一部(5質量部)を添加し、続いて過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、反応容器内温度を70℃に保ちながら60分間で重合させた。
次いで、反応容器内の温度を70℃に保ちながら、残りのモノマープレエマルジョン(114質量部)と、過硫酸カリウムの水溶液(有効成分1.0質量%)30質量部とを、各々別の滴下漏斗を使用して、180分間かけて滴下した。滴下終了後、同温度にて60分間撹拌した。
前記反応容器内の温度を40℃に冷却し、ついで、不揮発分が10.0質量%になるように脱イオン水を使用した後、200メッシュ濾布で濾過することによって、本発明で使用するプライマー層用樹脂組成物を得た。次に、この樹脂組成物に水を加えて希釈混合することで、不揮発分5質量%のプライマー(B-11)を得た。
[調製例1:銀粒子分散液の調製]
エチレングリコール45質量部及びイオン交換水55質量部の混合溶媒に、分散剤としてポリエチレンイミンにポリオキシエチレンが付加した化合物を用いて平均粒径30nmの銀粒子を分散させることによって、銀粒子及び分散剤を含有する分散体を調製した。次いで、得られた分散体に、イオン交換水、エタノール及び界面活性剤を添加して、5質量%の銀粒子分散液を調製した。
[調製例2:銅エッチング液の調製]
イオン交換水に、硫酸37.5g/L、および過酸化水素13.5g・Lの割合で混合し、銅エッチング液を調製した。
[調製例3:無電解銀めっき浴の調製]
イオン交換水に下記の組成の薬剤を混合し、無電解銀めっき浴を調製した。
硝酸銀 0.02mol/L
アミノエタンチオール 0.07mol/L
N-アセチル-L-システイン 0.03mol/L
ヨードチロシン 10mg/L
シクロヘキサノール 5ml/L
[調製例4:銀用エッチング液の調製]
水47.4質量部に、酢酸2.6質量部を加え、さらに、35質量%過酸化水素水50質量部を加えて、銀用エッチング液(1)を調製した。この銀用エッチング液(1)の過酸化水素とカルボン酸とのモル比(過酸化水素/カルボン酸)は13.6であり、銀用エッチング液(1)中の過酸化水素及びカルボン酸の混合物の含有比率は22.4質量%であった。
(セミアディティブ工法用積層体の製造)
(実施例1)
絶縁性基材であるポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製「カプトン 100EN-C」;厚さ25μm)の表面に、調製例1で得られた銀粒子分散体を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて、乾燥後の銀粒子層が0.5g/m2となるように塗工した。次いで、熱風乾燥機を用いて160℃で5分間乾燥した。さらに、フィルムを裏返して、上記と同様にして調製例1で得られた銀粒子分散体を銀粒子層が0.5g/m2となる様に塗工し、熱風乾燥機を用いて160℃で5分間乾燥することによって、ポリイミドフィルムの両表面に銀粒子層を形成した。このようにして得られたフィルム基材を250℃で5分間焼成し、テスターで銀粒子層の導通を確認した。
上記で得られた両表面に導電性の銀粒子層を有するポリイミドフィルムをポリエチレン製の枠に固定し、無電解銅めっき液(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製「サーキュポジット6550」)中に35℃で、10分間浸漬し、両表面に無電解銅めっき膜(厚さ0.2μm)を形成した。次いで、フィルムに、ドリルを用いて100μm径のスルーホールを形成した。
(スルーホールへのパラジウム触媒の付与)
無電解めっき用のプリディップ液(「OPC-SAL-M」、奥野製薬工業株式会社製)を260g/Lの割合になる様に水で希釈して25℃に保持した。この液に、スルーホールが形成された上記フィルムを、1分間浸漬した。
プリディップ液(OPC-SAL-M、奥野製薬工業株式会社製)とSn-Pdコロイド触媒液(OPC-90キャタリスト、奥野製薬工業株式会社製)を、それぞれ、260g/L、30mL/Lの割合になる様に、水で混合希釈し、25℃に保持した。これに前記プリディップ工程後の処理被めっき物を5分間浸漬した後、流水洗浄を2分間行った。
活性化液(「OPC-505アクセレーターA」、奥野製薬工業株式会社製)、及び活性化液(「OPC-505アクセレーターB」、奥野製薬工業株式会社製)を、それぞれ、100mL/L、8mL/Lとなる様に、水で混合希釈し30℃に保持した。これに前記触媒化合物の付与工程後の処理被めっき物を5分間浸漬した後、流水洗浄を2分間行って、スルーホール内壁、及び両銅表面にパラジウム触媒を付与した後、調製例2で作製した硫酸/過酸化水素系の銅エッチング液で、銅を除去し、導電性の銀粒子層(M1)を露出させた。
(無電解銀めっき)
この様にして得られたフィルム基材を、調製例3で作製した無電解銀めっき液に80℃で30分間浸漬して、スルーホール内壁に銀めっき膜を形成した。フィルム上の銀粒子層の表裏面をテスターで検査することにより、表裏面が電気的に接続され、スルーホール内壁の銀めっきによりフィルム表裏の導電性が確保されていることを確認した。このようにして、絶縁性基材(A)の両表面上に、導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層によって導電性が確保されたセミアディティブ工法用積層体を得た。
(実施例2)
無電解銅めっき液中への浸漬時間を10分から、25分に変更した以外は、実施例1と同様にして、絶縁性基材(A)の両表面上に、導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層によって導電性が確保されたセミアディティブ工法用積層体を得た。
(実施例3)
乾燥後の銀粒子層が0.5g/m2から、0.8g/m2となる様に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムの両表面に銀粒子層を形成し、250℃で5分間焼成して、テスターで銀粒子層の導通を確認した。このようにして得られた、両表面に導電性の銀粒子層を有するポリイミドフィルムを銅製の枠に固定し、銀粒子層の表面をカソードに設置し、含リン銅をアノードとして、硫酸銅を含有する電解めっき液(硫酸銅60g/L、硫酸190g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製 カパーグリームST-901」)を用いて、電流密度2A/dm2で4.5分間電解めっきを行うことによって、絶縁性基材(A)であるポリイミドフィルムの両表面上に、銀粒子層(M1)、及び、2μm厚の銅層(M2)が形成された積層体を作製した。
(スルーホールへのパラジウム触媒の付与)以降は、実施例1と同様にして、絶縁性基材(A)の両表面上に、導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層によって導電性が確保されたセミアディティブ工法用積層体を得た。
(実施例4)
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製「カプトン 100EN-C」、厚さ25μm)の表面に、製造例1で得られたプライマー(B-1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて、乾燥後の厚さが120nmとなるように塗工し、次いで、熱風乾燥機を用いて80℃で5分間乾燥した、さらに、フィルムを裏返して、上記と同様にして製造例1で得られたプライマー(B-1)を乾燥後の厚さが120nmとなるように塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で5分間乾燥することによって、ポリイミドフィルムの両表面にプライマー層を形成した。
絶縁性基材(A)を、ポリイミドフィルムから、上記で得られたポリイミドフィルムの両表面にプライマー層を形成したポリイミドに変更した以外は、実施例2と同様にして、絶縁性基材(A)の両表面上に、導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層によって導電性が確保されたセミアディティブ工法用積層体を得た。
(実施例5)
実施例4において、銀粒子層を0.5g/m2から、0.8g/m2となる様に変更し、実施例3と同様に電解銅めっき処理を行うことによって、絶縁性基材(A)であるポリイミドフィルムの両表面上に、プライマー層(B)、導電性の銀粒子層(M1)、及び、2μm厚の銅層(M2)が形成されたセミアディティブ工法用積層体を作製した。以降は実施例4と同様にして、絶縁性基材(A)の両表面上に、プライマー層(B)、導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層によって導電性が確保されたセミアディティブ工法用積層体を得た。
(実施例6~9)
実施例1~4において、銀粒子層(M1)の上に銅層(M2)を形成する代わりに、剥離性カバー層(RC)として、38μm厚のポリエステル製再剥離性粘着テープ(パナック株式会社製、パナプロテクトHP/CT)をラミネートした以外は、それぞれ実施例1から4と同様にして、絶縁性基材(A)の両表面上に、導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層によって導電性が確保されたセミアディティブ工法用積層体を得た。
(実施例10)
実施例5において、銀粒子層(M1)の上に銅層(M2)を形成する代わりに、剥離性カバー層(RC)として、38μm厚のポリエステル製再剥離性粘着テープ(パナック株式会社製、パナプロテクトHP/CT)をラミネートした以外は、実施例5と同様にして、絶縁性基材(A)の両表面上に、プライマー層(B)、導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層によって導電性が確保されたセミアディティブ工法用積層体を得た。
(実施例11)
ドリルを用いた100μm径のスルーホールから、レーザーを用いた70μm径のスルーホール形成に変更した以外は、実施例5と同様にして、絶縁性基材(A)の両表面上に、導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層によって導電性が確保されたセミアディティブ工法用積層体を得た。
(実施例12)
ドリルを用いた100μm径のスルーホールから、レーザーを用いた70μm径のスルーホール形成に変更した以外は、実施例1と同様にして、絶縁性基材(A)の両表面上に、導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層によって導電性が確保されたセミアディティブ工法用積層体を得た。
(実施例13~28)
絶縁性基材種、プライマー層に用いるプライマーの種類及びその乾燥条件、銀粒子層の銀量、銀粒子層のカバー層種、スルーホール形成法を表1又は2に示したものに変更した以外は、実施例1~12と同様にして、セミアディティブ工法用積層体を得た。
(プリント配線板の製造)
(実施例29~34)
実施例1~3、6~8において、スルーホールの形成位置を、配線長100mm、インピーダンス50Ωのマイクロストリップラインの伝送特性評価端子における裏面ベタGNDへの接続位置に設計した以外は、実施例実施例1~3、6~8と同様にして、絶縁性基材(A)の両表面上に、導電性の銀粒子層(M1)を有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層によって導電性が確保されたセミアディティブ工法用積層体を得た。
このようにして得られた銀粒子層(M1)の上に、ドライフィルムレジスト(日立化成株式会社製「フォテックRD-1225」;レジスト膜厚25μm)を、ロールラミネーターを用いて100℃で圧着し、続いて、ダイレクト露光デジタルイメージング装置(オルボッテク社製「Nuvogo1000R」)を用いて、レジスト上に配線長100mm、インピーダンス50Ωのマイクロストリップラインパターン及び、測定プローブ用のGNDに接続するスルーホール部の端子パッドパターンを露光した。次いで、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像を行うことによって、銀粒子層(M1)上にマイクロストリップラインパターン、及びプローブ端子パッド部が除去されたパターンレジストを形成し、ポリイミドフィルム上の銀粒子層(M1)を露出させた。
次いで、パターンレジストが形成された基材の銀粒子層表面をカソードに設置し、含リン銅をアノードとして、硫酸銅を含有する電解めっき液(硫酸銅60g/L、硫酸190g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製 カパーグリームST-901」)を用いて、電流密度2A/dm2で41分間電解めっきを行うことによって、レジストの除去されたマイクロストリップパターン及びプローブ端子パッド部に電解銅めっきによる18μm厚の回路パターンの導電層(M3)を形成した。次いで、銅による金属パターンの形成されたフィルムを、50℃に設定した3質量%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することによって、パターンレジストを剥離した。
次いで、調製例4で得られた銀用エッチング液に、上記で得られたフィルムを、25℃で30秒間浸漬することで、導電層パターン以外の銀粒子層を除去し、プリント配線板を得た。作製したプリント配線板の回路形成部(マイクロストリップライン、及びプローブン端子部)の断面形状は、いずれも、配線高さ、及び、配線幅の減少がなく、かつ、アンダーカットのない矩形形状を示し、平滑な表面の導電層(M3)であった。
(実施例35~56)
実施例4、5、9~28において、スルーホールの形成位置を、配線長100mm、インピーダンス50Ωのマイクロストリップラインの伝送特性評価端子における裏面ベタGNDへの接続位置に設計した以外は、実施例4、5、9~28と同様にして、絶縁性基材(A)の両表面上に、プライマー層(B)、導電性の銀粒子層(M1)をこの順に有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、銀層によって導電性が確保されたセミアディティブ工法用積層体を得た。
以後は、実施例29~34と同様にして、銀粒子層(M1)上に、配線長100mm、インピーダンス50Ω、銅厚18μmのマイクロストリップライン、及びプローブン端子部パターンの導電層(M3)を有するプリント配線板を作製した。作製したプリント配線板回路形成部の断面形状は、いずれも、配線高さ、及び、配線幅の減少がなく、アンダーカットのない矩形形状を示し、平滑な表面の導電層(M3)であった。
(比較例1)
両面に銀粒子層を形成したポリイミドフィルムを用いる代わりに、両面にめっき下地層として3μm厚の粗化銅箔を有する市販の25μm厚ポリイミドベースFCCL(宇部エクシモ株式会社製「ユピセルN-BE1310YSB」)を用いた以外は、実施例29と同様にして、両面を貫通するスルーホールを形成し、常法に基づき、マクダーミッド社のブラックホールプロセス(コンディショニング-カーボン吸着処理-エッチング)に通して、スルーホールの表面にカーボンを付着させ、カーボンの付着した銅箔表面を、調製例2で作製した硫酸/過酸化水素水溶液を用いたエッチング処理で除去することにより、絶縁性基材(A)の両表面上に、銅箔を有し、さらに、絶縁性基材両面を接続する貫通孔を有し、貫通孔の表面が、カーボンによって導電性が確保された基材を得た。
以降は、銀粒子層(M1)表面の代わりに、銅箔表面にパターンレジストを形成する以外は、実施例29と同様にして、銅箔のめっき下地層上に、銅による18μm厚のマイクロストリップライン、及びプローブ端子部パッドパターンの導体回路層を形成した。
次いで、銅のシードエッチングに用いる硫酸/過酸化水素系のフラッシュエッチング液に、浸漬して銅のシードを除去したところ、マイクロストリップラインの導電層(M3)がエッチングされて、膜厚が約3μm薄くなるとともに、配線幅も約6μm減少し、かつ、断面形状が矩形を保持できなくなり「台形」状となった。また銅の導電層表面はエッチングにより粗化されて平滑性が低下した。
(比較例2)
両面に銀粒子層を形成したポリイミドフィルムを用いる代わりに、両面にめっき下地層としてニッケル/クロム(厚さ30nm、ニッケル/クロム質量比=80/20)、さらに70nmの銅をスパッタし、1μm厚の電解銅めっき処理したポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製「カプトン 100EN-C」;厚さ25μm)を用いた以外は、比較例1と同様にして、銅箔のめっき下地層上に、銅による18μm厚のマイクロストリップライン、及びプローブ端子部パッドパターンの導体回路層を形成した。
次いで、銅のシードエッチングに用いる硫酸/過酸化水素系のフラッシュエッチング液に、浸漬して銅のシードを除去したところ、マイクロストリップラインの導電層(M3)がエッチングされて、膜厚が約1μm薄くなるとともに、配線幅も2μm以上減少し、かつ、断面形状が矩形を保持できなくなり「台形」状となった。また銅の導電層表面はエッチングにより粗化されて平滑性が低下した。さらに、導電層(M3)パターン以外の領域では銅層のみが除去され、ニッケル/クロム層が除去されずに残留した。
[アンダーカットの有無及び配線部の断面形状の確認]
上記で得られたプリント配線板の櫛歯電極部の断面を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM7800」)で500~10,000倍に拡大し観察して、アンダーカットの有無及び櫛歯電極部の断面形状を確認した。
作製したプリント配線板の配線表面をレーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK-9710)で観察することにより、配線表面の表面粗さを確認し、Rzが3μm以下であるものを平滑である(平滑性:〇)とし、Rzが3μmを超えるものを平滑ではない(平滑性:×)と評価した。また、配線形成に用いたレジストによる配線の設計幅と、形成された配線の上面幅の差異が2μm以下の場合、サイドエッチが抑制され、矩形形状を保持できた(矩形性:〇)とし、差異が2μmを超えるものを短形形状が保持できなかった(短形成:×)と評価し、表1,表2に示した。