JP7287800B2 - 中性子捕捉療法システム - Google Patents

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Description

本発明は、中性子捕捉療法システムに関するものである。
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の中性子捕捉療法システムが知られている。このシステムは、荷電粒子線を出射する加速器と、荷電粒子線の照射を受けて中性子線を発生させるターゲットと、加速器から出射された荷電粒子線をターゲットへ輸送するビーム輸送路と、荷電粒子線の電流値を検出する電流検出部と、を備えている。そして、電流検出部は、ビーム輸送路の内部に、ビーム輸送路の内壁とは絶縁された状態で内壁に沿って設置されている。
特開2015-217207号公報
上記のような電流検出部は、荷電粒子線のターゲットに対する照射位置の異常検出に用いられる。すなわち、電流検出部で検出される電流値が所定の許容範囲を逸脱する場合には、照射位置が異常であると判定される。この種の中性子捕捉療法システムでは、上記のような異常検出の信頼性を更に向上することが望まれる。
本発明は、荷電粒子線のターゲットに対する照射位置の異常検出の信頼性を高める中性子捕捉療法システムを提供することを目的とする。
本発明の中性子捕捉療法システムは、荷電粒子線を出射する加速器と、荷電粒子線の照射を受けて中性子線を発生させるターゲットと、加速器から出射された荷電粒子線をターゲットへ輸送するビーム輸送路と、ビーム輸送路の内部においてビーム輸送路の内壁とは絶縁された状態で配置され、荷電粒子線の電流値を検出する第1電流検出部と、ビーム輸送路の内部において第1電流検出部よりも下流側でビーム輸送路の内壁とは絶縁された状態で配置され、荷電粒子線の電流値を検出する第2電流検出部と、を備え、ビーム輸送路の延在方向に平行な視線で第1電流検出部及び第2電流検出部を見た場合に、第2電流検出部が、第1電流検出部とは重複しない非重複部位を有する。
また、第1電流検出部は環状をなし、第1電流検出部は、第2電流検出部の非重複部位に対応する位置に形成された切欠部を有することとしてもよい。
本発明の中性子捕捉療法システムは、第1電流検出部よりも上流側に設けられ荷電粒子線を走査する荷電粒子線走査部を更に備え、切欠部は、環状をなす第1電流検出部の内縁部から外周側に切り込むように形成されていることとしてもよい。
本発明の中性子捕捉療法システムは、荷電粒子線の照射位置の異常の有無を判定する異常判定部を更に備え、異常判定部は、第1電流検出部で検出した電流値が所定の許容範囲を逸脱する場合、又は、第2電流検出部で検出した電流値が所定の許容範囲を逸脱する場合に、異常が発生したと判定することとしてもよい。
本発明によれば、荷電粒子線のターゲットに対する照射位置の異常検出の信頼性を高める中性子捕捉療法システムを提供することができる。
実施形態の中性子捕捉療法システムの構成を示す図である。 図1の中性子捕捉療法システムにおける中性子線生成部を示す概略斜視図である。 図2に示す電流検出部の概略構成を示す側断面図である。 (a)は図3に示すIVa-IVa線に沿った横断面図であり、(b)は図3に示すIVb-IVb線に沿った横断面図である。 電流検出部の取付構造の一例を示す側断面図である。 荷電粒子線のターゲットに対する照射位置の異常状態を示す模式図である。 ビーム輸送路の延在方向に平行な視線で2つの電流検出部を見た状態を示す図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る中性子捕捉療法システムの実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明において、単に「上流」、「下流」と言うときには、荷電粒子線Pの上流、下流を意味するものとする。
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を用いて、第1実施形態に係る中性子捕捉療法システム1の概要を説明する。本実施形態に係る中性子捕捉療法システム1は、例えば、ホウ素中性子捕捉療法を用いたがん治療を行う中性子捕捉療法システム1である。図1及び図2に示すように、中性子捕捉療法システム1は、ホウ素(10B)が投与された患者等の被照射体40へ中性子線Nを照射する。
中性子捕捉療法システム1は、加速器10を備える。加速器10は、陽子等の荷電粒子を加速して、陽子線(陽子ビーム)を荷電粒子線Pとして作り出す加速器である。本実施形態では、加速器10としてサイクロトロンが採用されている。加速器10は、例えば、ビーム半径40mm、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Pを生成する能力を有している。なお、加速器10として、サイクロトロンに代えて、シンクロトロン、シンクロサイクロトロン又はライナック等の他の加速器を用いてもよい。
加速器10から出射された荷電粒子線Pは、水平型ステアリング12、4方向スリット14、水平垂直型ステアリング16、四重極電磁石18,19,20、90度偏向電磁石22、四重極電磁石24、水平垂直型ステアリング26、四重極電磁石28、4方向スリット30、電流モニタ32、荷電粒子線走査部34を順次に通過し、中性子線生成部36に導かれる。この荷電粒子線Pは、中性子線生成部36においてターゲットTに照射され、これにより、中性子線Nが発生する。中性子線Nは、治療台38上の被照射体40へ照射される。
水平型ステアリング12、水平垂直型ステアリング16,26は、例えば電磁石を用いて荷電粒子線Pのビームの発散を抑制するものである。同様に、四重極電磁石18,19,20,24,28は、例えば電磁石を用いて荷電粒子線Pのビーム軸調整を行うものである。4方向スリット14,30は、端のビームを切ることにより、荷電粒子線Pのビーム整形を行うものである。
90度偏向電磁石22は、荷電粒子線Pの進行方向を90度偏向するものである。なお、90度偏向電磁石22には、切替部42が設けられており、切替部42によって荷電粒子線Pを正規の軌道から外してビームダンプ44に導くことが可能になっている。ビームダンプ44は、治療前などにおいて荷電粒子線Pの出力確認を行う。
電流モニタ32は、ターゲットTに照射される荷電粒子線Pの電流値(つまり、電荷,照射線量率)をリアルタイムで測定するものである。電流モニタ32は、荷電粒子線Pに影響を与えずに電流測定可能な非破壊型のDCCT(DC Current Transformer)が用いられている。この電流モニタ32には、コントローラ100が接続されている。なお、「線量率」とは、単位時間当たりの線量を意味する(以下、同じ)。
コントローラ100は、制御部102と、表示部104と、を含んで構成されている。制御部102は、電流モニタ32により測定された荷電粒子線Pの電流値から中性子線Nの照射線量を求め、該照射線量に基づき中性子線Nの照射を制御するものであり、例えばCPU、ROM及びRAM等により構成されている。表示部104は、制御部102で求められた中性子線Nの照射線量を表示するものであり、例えばディスプレイやモニタが用いられている。
荷電粒子線走査部34は、荷電粒子線Pを走査し、ターゲットTに対する荷電粒子線Pの照射制御を行うものである。ここでの荷電粒子線走査部34は、例えば、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置や、荷電粒子線Pのビーム径等を制御する。荷電粒子線走査部34によって、荷電粒子線Pがウォブリング動作をすることにより、又は、荷電粒子線Pのビーム径が大きくされることにより、ターゲットT上での荷電粒子線Pの照射領域が広げられる。なお、ウォブリング動作とは、一定のビーム径の荷電粒子線Pのビーム軸を周期的に移動させ、この周期的な移動によってターゲットTに対する荷電粒子線Pの照射面積を広げる動作をいう。
中性子線生成部36は、図2に示すように、荷電粒子線PをターゲットTに照射することにより中性子線Nを発生させ、該中性子線Nをコリメータ46を介して出射する。中性子線生成部36は、荷電粒子線Pを輸送するビーム輸送路48の下流端部に配設されたターゲットTと、ターゲットTで発生した中性子線Nを減速させる減速材50と、これらを覆うように設けられた遮蔽体52と、を含んで構成されている。
ターゲットTは、荷電粒子線Pの照射を受けて中性子線Nを発生するものである。ここでのターゲットTは、例えば、ベリリウム(Be)により形成され、直径160mmの円板状を成している。減速材50は、中性子線Nのエネルギを減速させるものであり、例えば異なる複数の材料から成る積層構造とされている。遮蔽体52は、発生した中性子線N、及び当該中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等を外部へ放出されないように遮蔽するものであり、床54に取り付けられている。なお、ターゲットTは固体(板状)に限られず、液体であってもよい。
本実施形態に係る中性子捕捉療法システム1は、図2に示すように、ビーム輸送路48の内部に、荷電粒子線Pの電流値を検出する電流検出部61(第1電流検出部)及び電流検出部62(第2電流検出部)を備える。電流検出部61,62は、ビーム輸送路48の内部において、荷電粒子線走査部34と中性子線生成部36との間の位置に配設されている。電流検出部61は電流検出部62よりも上流側で、且つ荷電粒子線走査部34よりも下流側に配設されている。
電流検出部61には、例えば配線を介してオシロスコープ63aが接続されている。オシロスコープ63aは、電流検出部61により検出された電流値に対応した波形を表示する。このオシロスコープ63aの波形に基づいて、電流検出部61により検出された電流値が観測される。同様に、電流検出部62には、例えば配線を介してオシロスコープ63bが接続されている。オシロスコープ63bは、電流検出部62により検出された電流値に対応した波形を表示する。このオシロスコープ63bの波形に基づいて、電流検出部62により検出された電流値が観測される。
電流検出部61、62は、それぞれオシロスコープ63a,63bを介して、上述の制御部102に接続されている。制御部102は、電流検出部61,62により検出された荷電粒子線Pの電流値に基づいて、荷電粒子線Pの照射を制御する。なお、制御部102による具体的な制御方法については、後述する。
次に、電流検出部61、62の構成について、図3及び図4を参照して詳細に説明する。
図3は、図2に示す電流検出部61,62の概略構成を示す側断面図である。図4(a)は、図3に示すIVa-IVa線に沿った横断面図であり、図4(b)は、図3に示すIVb-IVb線に沿った横断面図である。図3及び図4に示すように、電流検出部61,62は、内壁48aに沿って、環状に形成されている。電流検出部61,62は、共に、荷電粒子線Bの上下流方向を板厚方向とする円環板状をなしている。電流検出部61と電流検出部62とは、ビーム輸送路48内において、上下流方向に例えば10cm程度離れて平行に並設されている。
電流検出部61と電流検出部62とは、図4に示されるように切欠部65(後述)の有無のみが互いに異なり、その他の構造、取付構造及び機能等は共通するものであるので、以下では電流検出部61の構造、取付構造及び機能について主に説明し、重複する説明を省略する。
電流検出部61は、略一定の幅で、内壁48aの周方向に沿って延び、内壁48aの曲率と略同じ曲率で曲げられた外周面及び内周面を有している。電流検出部61は、ビーム輸送路48の軸方向から見て内壁48aの内側で輪状を呈している(図4参照)。本実施形態では内壁48aは円筒状の形状であるため、電流検出部61の外縁は、真円形に形成されている。電流検出部61は、ビーム輸送路48の径方向における中央側の領域には、高電流の荷電粒子線が通過する開口として開口部61aを有している。また、電流検出部61の円環内縁部には、この円環内縁部から径方向外側に切り込むように複数の切欠部65が形成されている。切欠部65は周方向に等間隔に配列されている。
電流検出部61の内径は、例えば14~17cmであり、電流検出部61の外径は、例えば16~19cmである。電流検出部61は、ビーム輸送路48内において、例えばターゲットTから35cm程度離れた位置に配置されている。
電流検出部61は、荷電粒子線Pと接触することで、荷電粒子線Pの電流を検出する。電流検出部61は、導電性を有し、且つ熱に溶融し難い物質によって形成されている。例えば、電流検出部61は、グラファイト等の炭素材、又は純銅等によって形成されている。
ここで、図3に示すように、ビーム輸送路48の内部を通過する荷電粒子線Pの分布には、電流値(照射線量率)が大きい高電流領域R1と、電流値(照射線量率)が小さい低電流領域R2とが含まれている。低電流領域R2は、高電流領域R1の周囲を囲繞しており、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が正常な状態の場合において、高電流領域R1よりも内壁48aに近い領域である。
高電流領域R1は、例えば1~1.5mA程度の電流値の領域である。低電流領域R2は、例えば2~3μA程度の電流値の領域である。即ち、低電流領域R2は、高電流領域R1の電流値の例えば約0.2%程度の大きさの電流値の領域である。
電流検出部61は、内壁48a側からビーム輸送路48の内部に向かって突出するように設置されている。すなわち、電流検出部61の内径は、少なくとも内壁48aの内径よりも小さく設定されていることにより、ビーム輸送路48へ電流検出部61が内周側へ張り出したような構成となる。これにより、電流検出部61の環状の端面が、荷電粒子線Pの検出面としてビーム輸送路48内に露出した状態で配置されるような構成となる。
電流検出部61は、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が正常な状態において低電流領域R2の荷電粒子線Pが接触するように形成されている。電流検出部61は、低電流領域R2の荷電粒子線Pが接触することにより、当該荷電粒子線Pの微小な電流値を検出する。
例えば、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が正常な状態において荷電粒子線走査部34により荷電粒子線Pのビーム径が広げられている場合には、電流検出部61は、電流検出部61における周方向のどの位置でも常に低電流領域R2の荷電粒子線Pと接触するように形成されている。また、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が正常な状態において荷電粒子線走査部34により荷電粒子線Pがウォブリング動作をしている場合には、電流検出部61は、電流検出部61における周方向のいずれかの位置で低電流領域R2の荷電粒子線Pと接触するように形成されている。
電流検出部61は、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が正常な状態において高電流領域R1の荷電粒子線Pとは接しないように形成されている。荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が正常な状態において、高電流領域R1の荷電粒子線Pは、電流検出部61の開口部61a内を通過する。
続いて、電流検出部61の取付構造の一例について、図5を参照して説明する。図5は、図2に示す電流検出部61の取付構造の一例を示す側断面図である。図5に示すように、電流検出部61は、ビーム輸送路48の内壁48aに形成された突部48bに、絶縁部材5を介して取り付けられている。電流検出部61は、突部48bとの間に絶縁部材5を挟んだ状態で、ネジ3によって突部48bに取り付けられている。即ち、電流検出部61は、ビーム輸送路48の内壁48aとは絶縁された状態で設置されている。電流検出部61と突部48bとの固定箇所は、ビーム輸送路48が延びている方向から見て、それぞれ間隔を空けて複数設けられている。なお、内壁48aと電流検出部61の外周面とは、内壁48aと電流検出部61とを絶縁するために離間している。
次に、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置の正常/異常と、電流検出部61により検出される電流値と、の関係について説明する。
まず、図3を参照して、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が正常状態である場合について説明する。図3に示すように、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置の正常状態においては、電流検出部61は、低電流領域R2の荷電粒子線Pと接触する。これにより、電流検出部61は、当該荷電粒子線Pの微小な電流値(例えば、2μA)を検出する。
続いて、図6を参照して、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が異常状態である場合について説明する。図6は、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置の異常状態を示す模式図である。
図6の(a)に示すように、例えば四重極電磁石18,19,20,24,28、又は荷電粒子線走査部34の不具合等により、荷電粒子線Pのビーム径が正常に広げられない場合、又は、荷電粒子線Pのウォブリング動作が正常に機能しない場合には、電流検出部61は、低電流領域R2の荷電粒子線Pと接触することができない。これにより、電流検出部61によって検出される電流値は、正常状態の場合よりも小さくなる。
図6の(b)に示すように、例えば水平型ステアリング12、水平垂直型ステアリング16,26、四重極電磁石18,19,20,24,28、90度偏向電磁石22、又は荷電粒子線走査部34の不具合等により、荷電粒子線Pのビーム軸が正常な場合のビーム軸A1からずれたビーム軸A2となった場合には、高電流領域R1の荷電粒子線Pの一部が電流検出部61に接触してしまう。これにより、電流検出部61によって検出される電流値は、正常状態の場合よりも大きくなる。
上記の知見に基づけば、制御部102(異常判定部)は、電流検出部61によって検出される電流値(以下、「第1電流値」という)が所定の許容範囲内である場合には、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が正常であると判断することができ、第1電流値が許容範囲を逸脱した場合には、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が異常であると判断することができる。上記許容範囲の下限値・上限値は、予め定められている。下限値は例えば1μA~0μAに定められ、上限値は例えば5μAに定められる。
電流検出部62は、図4(b)に示されるように切欠部65が無い円環状をなしている。前述したとおり、電流検出部62は、電流検出部61と同じ取付構造で電流検出部61の下流側に取付けられており、電流検出部61と同じ機能を有する。制御部102(異常判定部)は、電流検出部62によって検出される電流値(以下、「第2電流値」という)が所定の許容範囲内である場合には、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が正常であると判断することができ、第2電流値が許容範囲を逸脱した場合には、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が異常であると判断することができる。なお、第2電流値に関する許容範囲は、第1電流値に関する許容範囲とは異なっていてもよい。
続いて、電流検出部61と電流検出部62との位置関係について説明する。図7は、ビーム輸送路48の延在方向に平行な視線で、電流検出部61側から、電流検出部61及び電流検出部62を見た状態を示す図である。なお、「ビーム輸送路48の延在方向」とは、厳密には、電流検出部61と電流検出部62との間の区間でビーム輸送路48が延びる方向であり、電流検出部61と電流検出部62との板厚方向でもある。また、電流検出部61と電流検出部62との間の区間における荷電粒子線Bの上下流方向と言い換えてもよい。なお、電流検出部61と電流検出部62との間の比較的短い区間においては、ビーム輸送路48は直線状に延在するものとする。
図7の視線で見た場合、電流検出部62の大部分は電流検出部61と重複し電流検出部61の背後に隠れるが、電流検出部62は、一部、電流検出部61とは重複しない部位を有する。すなわち、電流検出部62のうち電流検出部61の切欠部65に対応する部位は、切欠部65を通してはみ出して見えている。以下では、このように、電流検出部62のうち、図7の視線で見た場合に電流検出部61と重複しない部位を「非重複部位」と呼び「66」の符号を付す。
電流検出部62には、電流検出部61の切欠部65を通過して非重複部位66に接した荷電粒子線Pのみが検出されるので、第2電流値は当該非重複部位66に接した荷電粒子線Pの電流値に対応する。
次に、制御部102による制御方法について詳細に説明する。制御部102は、電流検出部61による第1電流値と、電流検出部62による第2電流値と、に基づいて、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置の正常/異常を判定する。
具体的には、制御部102は、第1電流値が所定の許容範囲を逸脱した、又は第1電流値が所定の許容範囲を逸脱した場合に、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が異常であると判定する。また、それ以外の場合には、制御部102は上記照射位置が正常であると判定する。
そして、制御部102は、上記照射位置を異常と判定した場合には、荷電粒子線Pの照射を停止するインターロック処理を行う。なお、制御部102による荷電粒子線Pの照射の停止は、例えば荷電粒子線Pを発生させる加速器10内のビームチョッパ(不図示)を制御することによって行われる。また、制御部102は、荷電粒子線Pの照射を停止するだけでなく、例えば異常状態の電流値に基づき、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が正常状態となるようにフィードバック制御を行ってもよい。一方、制御部102は、上記照射位置を正常と判定した場合には、荷電粒子線Pの照射をそのまま続けるように制御する。
次に、本実施形態に係る中性子捕捉療法システム1の作用効果について説明する。
中性子捕捉療法システム1では、2つの電流検出部61,62によってそれぞれ荷電粒子線Pの電流値(第1電流値及び第2電流値)を検出し、何れか一方が許容範囲外であれば、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が異常と判定し、荷電粒子線Pの照射が停止される。このように、2つの電流値に基づく判定が実行されることで、例えば、電流検出部61,62の一方に不具合があった場合にも、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置の異常が検出されるので、異常検出の信頼性が向上する。そして、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置に異常があった場合には確実にインターロック処理を実行することができる。
ここで、電流検出部61,62は、上下流方向に配列されるので、互いに完全に同一形状であれば、上流側の電流検出部61に遮られることで、電流検出部62にはほとんど荷電粒子線Pが接しないことになる。これに対し、中性子捕捉療法システム1では、電流検出部61に切欠部65が存在し電流検出部62に非重複部位66が存在することにより、電流検出部62においても荷電粒子線Pの電流値が検出される。すなわち、2つの電流検出部61,62によってそれぞれ荷電粒子線Pの電流値を検出することができ、2つの電流値を照射位置の異常判定に利用することができる。
また、中性子捕捉療法システム1では、電流検出部61の上流側に荷電粒子線走査部34が設けられている。従って、厳密には、荷電粒子線走査部34で走査された荷電粒子線Pは、下流側に向かってビーム輸送路48の径方向に拡がるように進行する。そうすると、仮に、電流検出部61の切欠部65が外縁部に形成されている場合には、切欠部65を通過した荷電粒子線Pは、電流検出部62に到達する前に、ビーム輸送路48の内壁48aに衝突する虞があるといった問題が発生する。これに対し、電流検出部61の切欠部65は、円環内縁部に形成されているので、上記のような問題が発生する可能性が低減され、切欠部65を通過した荷電粒子線Pが正常に電流検出部62に接するようになる。
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、実施例の変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
実施形態では、電流検出部61の切欠部65を通過した一部の荷電粒子線Pが電流検出部62に接するといった態様であるが、これには限定されない。すなわち、荷電粒子線Pを一部通過させるための電流検出部61の構造として、例えば、切欠部65に代えて貫通孔が設けられてもよい。
また、制御部102は、第1電流値及び第2電流値の2つの電流値に基づいて荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置の正常/異常の判定するものであればよく、前述した判定条件には必ずしも限定されない。例えば、制御部102は、第1電流値が所定の許容範囲を逸脱し、且つ第1電流値が所定の許容範囲を逸脱した場合に、荷電粒子線PのターゲットTに対する照射位置が異常であると判定してもよい。
1…中性子捕捉療法システム、10…加速器、34…荷電粒子線走査部、48…ビーム輸送路、61…電流検出部(第1電流検出部)、62…電流検出部(第2電流検出部)、65…切欠部、66…非重複部位、102…制御部(異常判定部)、N…中性子線、P…荷電粒子線、T…ターゲット。

Claims (4)

  1. 荷電粒子線を出射する加速器と、
    前記荷電粒子線の照射を受けて中性子線を発生させるターゲットと、
    前記加速器から出射された前記荷電粒子線を前記ターゲットへ輸送するビーム輸送路と、
    前記ビーム輸送路の内部において前記ビーム輸送路の内壁とは絶縁された状態で配置され、前記荷電粒子線の電流値を検出する第1電流検出部と、
    前記ビーム輸送路の内部において前記第1電流検出部よりも下流側で前記ビーム輸送路の内壁とは絶縁された状態で配置され、前記荷電粒子線の電流値を検出する第2電流検出部と、を備え、
    前記ビーム輸送路の延在方向に平行な視線で前記第1電流検出部及び第2電流検出部を見た場合に、前記第2電流検出部が、前記第1電流検出部とは重複しない非重複部位を有し、
    前記第1電流検出部は、環状をなし、前記第2電流検出部の前記非重複部位に対応する位置に前記荷電粒子線の一部を通過させる構造を有する、中性子捕捉療法システム。
  2. 荷電粒子線を出射する加速器と、
    前記荷電粒子線の照射を受けて中性子線を発生させるターゲットと、
    前記加速器から出射された前記荷電粒子線を前記ターゲットへ輸送するビーム輸送路と、
    前記ビーム輸送路の内部において前記ビーム輸送路の内壁とは絶縁された状態で配置され、前記荷電粒子線の電流値を検出する第1電流検出部と、
    前記ビーム輸送路の内部において前記第1電流検出部よりも下流側で前記ビーム輸送路の内壁とは絶縁された状態で配置され、前記荷電粒子線の電流値を検出する第2電流検出部と、を備え、
    前記ビーム輸送路の延在方向に平行な視線で前記第1電流検出部及び第2電流検出部を見た場合に、前記第2電流検出部が、前記第1電流検出部とは重複しない非重複部位を有し、
    前記第1電流検出部は環状をなし、
    前記第1電流検出部は、前記第2電流検出部の前記非重複部位に対応する位置に形成された切欠部を有する、中性子捕捉療法システム。
  3. 前記第1電流検出部よりも上流側に設けられ前記荷電粒子線を走査する荷電粒子線走査部を更に備え、
    前記切欠部は、環状をなす前記第1電流検出部の内縁部から外周側に切り込むように形成されている、請求項2に記載の中性子捕捉療法システム。
  4. 前記荷電粒子線の照射位置の異常の有無を判定する異常判定部を更に備え、
    前記異常判定部は、第1電流検出部で検出した電流値が所定の許容範囲を逸脱する場合、又は、第2電流検出部で検出した電流値が所定の許容範囲を逸脱する場合に、異常が発生したと判定する請求項1~3の何れか1項に記載の中性子捕捉療法システム。
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