以下、本発明の杭打機用防音装置および杭打設工法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
海洋や河川、湖などの水底地盤に鋼管杭などの杭を打設する際には、アースオーガ等を使用する圧入工法やバイブロハンマ等を使用する振動工法により、杭の下端部を水底地盤に打設する。その後、油圧ハンマ等の杭打機を使用して杭の上端部を打撃することで、杭を水底地盤にさらに深く打設する。図1~図7に例示する本発明の杭打機用防音装置1(以下、防音装置1)は、杭打機30を用いて杭20を水底地盤Gに打設する際の騒音を低減する。
図1に例示するように、防音装置1は、杭打機30の下端部と水底地盤Gに打設される杭20の上部とを囲う上側防音管体9と、上側防音管体9の下部から水中まで下方に延在して杭20が挿通する下側防音管体8とを備えている。この防音装置1はさらに、水底地盤Gまたは浮体構造物に固定されて水上に設置される支持台2を備えており、この支持台2に水中まで延在する下側防音管体8が支持され、支持台2の上に上側防音管体9が設置される。
この実施形態では、支持台2を水底地盤Gに直接的に固定する場合を例示している。支持台2が固定される浮体構造物としては、水上に浮かぶ船舶やフロートなどが例示できる。水底地盤Gに固定されている桟橋や岸壁などに支持台2を固定して、支持台2を水底地盤Gに間接的に固定することもできる。
以下では、防音装置1の各構成要素を、杭20の打設を行う施工水域に設置した状態を基準にして説明する。図中のX方向は水平方向における支持台2の延在方向、Y方向は水平方向においてX方向と直交する支持台2の幅方向、Z方向は上下方向を示している。この実施形態では、四方に配置された4本の杭20の打設作業を行う場合の防音装置1を例示している。
図2および図3に例示するように、支持台2は、杭20および下側防音管体8が挿通する開口部2aを有している。この実施形態の支持台2は、水底地盤Gに立設された支柱3と、支柱3に支持された主桁4と、主桁4の上に設置された横桁5と、横桁5の上に設置された天板6とを有している。支柱3の上部、主桁4、横桁5および天板6は施工水域の水面位置WLよりも高い位置に配置される。支柱3、主桁4、および横桁5は例えば、H形鋼や溝形鋼などの鋼材で構成される。天板6は例えば、金属や樹脂で形成された板状部材で構成される。図3で例示している支持台2の紙面右上部分は天板6を設置する前の状態を示している。
圧入工法や振動工法によって施工水域に打設された4本の杭20を囲むように、X方向とY方向に互いに離間してZ方向に延在する複数の支柱3が水底地盤Gに立設されている。主桁4はX方向に延在し、X方向に直線状に並ぶ複数の支柱3に架け渡された状態で、それぞれの支柱3の上部に固定されている。複数の主桁4が、Y方向に互いに間隔をあけて配設されている。横桁5はY方向に延在し、複数の主桁4に架け渡された状態でそれぞれの主桁4に固定されている。複数の横桁5が、X方向に互いに間隔をあけて配設されている。
複数の横桁5の上には、それぞれの杭20を囲うように天板6が敷設されている。天板6の杭20に対応する位置にはそれぞれ開口部2aが設けられている。天板6は、開口部2aを境界にした位置で分割された複数の分割パネルで構成されている。杭20の側方から分割パネルを設置して分割パネルの端部どうしを継ぎ合せることで、開口部2aに杭20が挿通した状態の天板6を形成できる。天板6は、支持台2の上で作業する作業者の足場としても機能する。支持台2に天板6とは別に足場板などを設けることもできる。
この実施形態の支持台2では、4ヶ所に設けられているそれぞれの開口部2aが下側防音管体8を支持する支持位置Pとなり、それぞれの支持位置Pに対応する位置に上側防音管体9が設置される。支持台2の構造やサイズ、支持台2を構成する部材の数、部材どうしの接合方法、支持台2に設ける支持位置P(開口部2a)の数や配置などは、打設する杭20の数や配置、支持台2を固定する対象、施工条件などに応じて適宜決定できる。この実施形態では、支持台2に杭20が挿通する孔状の開口部2aを設けているが、例えば、支持台2に溝状の開口部2aを設けた構成にすることもできる。
図4および図5に例示するように、下側防音管体8は杭20が挿通可能な貫通孔8aを有する管状の遮音材である。下側防音管体8は、遮音性に優れた金属や樹脂で形成することが好ましい。下側防音管体8は、例えば、鋼管やコルゲートパイプなどで構成される。この実施形態では、横断面が円環状の下側防音管体8を例示しているが、例えば、横断面が多角環状の下側防音管体8にすることもできる。下側防音管体8は、支持台2の開口部2aの内側に配置された状態で支持台2に支持され、下側防音管体8の下端部は水中に配置される。
この実施形態では、下側防音管体8の上部に、下側防音管体8の外周面から周方向外側に突出する環状のフランジ部8bが設けられている。フランジ部8bの横断面の外寸は支持台2の開口部2aよりも大きく設定されている。下側防音管体8のフランジ部8bよりも下側の部分が支持台2の開口部2aの内側に挿入され、フランジ部8bが支持台2(天板6)の支持位置Pに載置されることで、支持台2に下側防音管体8が支持された状態となる。フランジ部8bが支持台2に載置された状態では、支持台2(天板6)の開口部2aの内周縁と下側防音管体8の外周面との間のすき間がフランジ部8bによって覆われた状態となる。下側防音管体8の上部にはクレーン40のワイヤロープを連結可能な吊具8cが設けられている。
下側防音管体8の内側には吸音材12が設けられている。吸音材12としては例えば、発泡樹脂や発泡ゴムなどの発泡体やグラスウールなどを使用できる。この実施形態では、吸音材12を水面位置WLまで延在して配置している。吸音材12は水面位置WLよりも低い位置まで延在して配置することもできる。吸音材12が、水分を吸収することによって吸音性能が低下する仕様の場合には、吸音材12は水面位置WLよりも高い位置に配置することもできる。下側防音管体8に吸音材12は任意に設けることができる。
図6および図7に例示するように、上側防音管体9は、杭打機30の下端部および杭20が挿通可能な貫通部9aを有する管状の遮音材である。上側防音管体9は、遮音性に優れた金属や樹脂で形成することが好ましい。上側防音管体9は、支持台2の上に下側防音管体8に対して非接合状態で設置される。上側防音管体9と下側防音管体8は互いに分離した状態で支持台2に設置されることが好ましいが、両者が直接的に接合されていなければよく、両者の間で直接的に応力が伝達される構造でなければ、両者が間接的に連結されている構成にすることもできる。
図6に例示するように、支持台2に下側防音管体8および上側防音管体9が設置された状態で、上側防音管体9の貫通部9aと下側防音管体8の貫通孔8aとがZ方向に連通し、水上に位置する杭20の上部が上側防音管体9と下側防音管体8とで囲われた状態になる。上側防音管体9と下側防音管体8との間のすき間は支持台2で塞がれた状態となる。上側防音管体9は杭20の上端面よりも上方に延在している。上側防音管体9の内側には吸音材12が設けられている。上側防音管体9に吸音材12は任意に設けることができる。
この実施形態の上側防音管体9は、支持台2に載置される下部防音部10と、下部防音部10から上方に延在する上部防音部11とを有している。下部防音部10は、天井部10b、壁部10cおよび床部10dを有する横断面が四角環状の管体で構成されている。上部防音部11は、横断面が円環状の管体で構成されている。下部防音部10の横断面の外寸は、上部防音部11の横断面の外寸よりも大きく設定されている。また、下部防音部10の壁部10cにおける貫通部10aの横断面積は、上部防音部11の貫通部11aの横断面積よりも大きく設定されている。
下部防音部10の天井部10bの中央には、上部防音部11の貫通部11aと下部防音部10の貫通部10aとを連通させる連通孔が設けられている。壁部10cには防音構造の扉が取付けられた出入口10eが設けられていて、出入口10eを通じて作業者が下部防音部10の内部に入れるようになっている。床部10dには、下側防音管体8のフランジ部8bの外寸よりも大きい開口10fが設けられていて、支持台2(天板6)に下部防音部10が載置された状態では、フランジ部8bの周方向外側に床部10dが配置され、フランジ部8bの外周縁と床部10dの開口10fの内周縁との間のすき間は支持台2(天板6)によって塞がれた状態となる。天井部10bと壁部10cの内面には吸音材12が設けられている。
図1に例示するように、上部防音部11は互いに着脱可能な複数の管状の分割体をZ方向に互いに連結して形成されていて、連結する分割体の数やサイズを変えることで、上部防音部11の高さを変更できる構成になっている。上部防音部11の周面には、上部防音部11の外側から上部防音部11の内部を視認可能な窓部11bが設けられている。窓部11bは例えば、透明なアクリル板等で形成される。上部防音部11の内面には吸音材12が設けられている。
下部防音部10と上部防音部11は分離可能な構造になっていて、下部防音部10の上端部に上部防音部11の下端部が固定具13で固定されている。下部防音部10の上部の外側に設けられている連結具10gと上部防音部11の上端部の外側に設けられている連結具11cは、上側防音管体9の設置作業を行う際のクレーン40のワイヤロープを連結する吊具として機能する。
下部防音部10と上部防音部11のそれぞれの形状やサイズ等は、この実施形態に限定されず他にも様々な構成にすることができる。上側防音管体9は、下部防音部10および上部防音部11で構成する場合に限らず、例えば、1つの管体で構成することもできる。上側防音管体9は、例えば、貫通部9aの横断面積が一定の寸胴の管体で構成することもできる。
次に、防音装置1を使用した杭打設工法を説明する。
図2および図3に例示するように、圧入工法や振動工法により、杭20を水底地盤Gに打設する。そして、支持台2を水底地盤Gまたは浮体構造物に固定した状態で水上に設置する。この実施形態では、クレーン40やバイブロハンマ等を使用して、4本の杭20の周囲の水底地盤Gに複数の支柱3を打設する。そして、水上に位置する複数の支柱3の上部にブラケットやブルマン等を用いて複数の主桁4を固定する。次いで、複数の主桁4の上に複数の横桁5を固定し、複数の横桁5の上に天板6を敷設する。
そして、図4および図5に例示するように、支持台2により、下側防音管体8を支持位置P(開口部2a)で支持して下側防音管体8を支持台2から水中まで下方に延在させた状態にする。この実施形態では、クレーン40を使用して、下側防音管体8を杭20の上方に吊り上げて、下側防音管体8を杭20に外嵌めした状態で下降させる。そして、支持台2の開口部2aに下側防音管体8を挿入し、下側防音管体8のフランジ部8bを支持台2(天板6)に載置して、開口部2aの内周縁と下側防音管体8の外周面との間のすき間をフランジ部8bで塞いだ状態にする。
そして、図6および図7に例示するように、支持台2の上に上側防音管体9を設置する。この実施形態では、下部防音部10および上部防音部11を一体化させた状態の上側防音管体9を、クレーン40を使用して杭20の上方に吊り上げて、上側防音管体9を杭20に外嵌めした状態で下降させる。そして、上側防音管体9(下部防音部11)を支持台2に載置して、上側防音管体9の貫通部9aと下側防音管体8の貫通孔8aとを連通させた状態にする。以上により、防音装置1の設置が完了する。上側防音管体9は、支持台2に下部防音部10を設置した後に、下部防音部10の上に上部防音部11を設置して互いを連結することもできる。
この実施形態では、圧入工法や振動工法により杭20を水底地盤Gに打設した後に、支持台2、下側防音管体8および上側防音管体9の設置を行う場合の手順を例示したが、圧入工法や振動工法による杭20の打設は、例えば、支持台2を設置した後に行ってもよいし、支持台2に下側防音管体8を支持した後に行ってもよいし、支持台2に上側防音管体9を設置した後に行ってもよい。
次いで、図1および図6に例示するように、クレーン40で吊持ちした杭打機30の下端部を、上側防音管体9の上から上側防音管体9の貫通部9aに挿入し、杭打機30によって杭20の上端面を打撃することで、杭20を水底地盤Gにより深く打設する。
図6に例示するように、杭打機30は、クレーン40に吊持ちされるハンマ本体30aと、ハンマ本体30aの下端に支持されたアンビル30bおよびパイルスリーブ30cを備えている。杭20の上端面にアンビル30bを当接させ、杭20の上端部の外側を筒状のパイルスリーブ30cで囲った状態とし、ハンマ本体30aに内蔵されたラム30dをアンビル30bに向けて落下させることで、杭20の上端面を打撃する。
そのため、図6の白抜きの矢印で示すように、杭打機30によって杭20を打撃する際に生じる打設音の大部分は、パイルスリーブ30cの下端部の開口と杭20の外周面との間のすき間から下方向に向かって進む。そして、上側防音管体9によって遮音されることで、打設音の大部分が外部に直接漏れることなく、上側防音管体9の貫通部9aを通って下側防音管体8の貫通孔8aに進入する。貫通孔8aに進入した打設音は、下側防音管体8によって遮音されることで、外部に直接漏れることなく、水面で反射して再び貫通孔8aから上側防音管体9の貫通部9aに進む。海洋などで杭20の打設を行う場合には、上下移動している水面に打設音が衝突し、一部が反射する。
打設音の音エネルギーは、上側防音管体9、下側防音管体8、水面、下側防音管体8、上側防音管体9と進む過程で、上側防音管体9の内面や、下側防音管体8の内面、水面に衝突することで吸収され、減衰される。また、距離減衰によっても減衰される。この実施形態では、打設音が上部防音部11の貫通部11aから横断面積がより大きい下部防音部10の貫通部10aに進入する際に拡散することによっても、打設音の音エネルギーが減衰される。さらに、打設音が上側防音管体9と下側防音管体8を通過する際に、吸音材12によって打設音の音エネルギーが減衰される。それ故、防音装置1により、杭打機30によって杭20を打撃する際に生じる騒音は大幅に低減される。
この実施形態のように、複数の杭20を打設する場合には、支持台2の平面視の異なる支持位置Pで下側防音管体8を支持し、それぞれの異なる支持位置Pに対応する位置で上側防音管体9を支持台2の上に設置して、順次それぞれの異なる支持位置Pで杭20の打設を行う。
具体的には、例えば、支持台2に設けられているそれぞれの支持位置Pに別々の下側防音管体8を支持し、それぞれの支持位置Pに対応する位置に別々の上側防音管体9を設置して、順次それぞれの異なる支持位置Pで杭20の打設を行う。使用できるクレーン40が1台の場合には、支持台2に設けている全ての支持位置Pに下側防音管体8および上側防音管体9を設置した後に、順次異なる支持位置Pで杭20の打設作業を行うとよい。このようにすると、クレーン40から杭打機30を取外すことなく、複数の杭20の打設作業を継続して行なえるので、施工時間の短縮を図るには有利になる。
下側防音管体8の設置作業と、上側防音管体9の設置作業と、杭打機30による杭20の打設作業は、支持位置P毎にそれぞれ別々に行うことができる。それ故、複数のクレーン40を使用できる場合には、例えば、下側防音管体8と上側防音管体9を設置した状態のある支持位置Pで杭打機30による杭20の打設作業を行っているときに、その支持位置Pとは異なる支持位置Pで、並行して別の下側防音管体8の設置作業や上側防音管体9の設置作業を行うこともできる。このようにすると、施工時間の短縮を図るにはより有利になる。
例えば、下側防音管体8を支持させる支持位置Pと上側防音管体9を設置する支持位置Pに対応する位置とを順次変えて、それぞれの異なる支持位置Pで順次杭20の打設を行うこともできる。このようにすると、同じ下側防音管体8と上側防音管体9を用いて、複数の杭20の打設作業を行なえる。それ故、施工現場に搬送する下側防音管体8および上側防音管体9の数を少なくでき、防音装置1の設備コストや搬送コストを低くするには有利になる。
例えば、異なる支持位置Pのうちの少なくとも2ヶ所以上の支持位置Pに下側防音管体8を支持しておき、上側防音管体9を設置する支持位置Pに対応する位置を順次変えて、それぞれの異なる支持位置Pで順次杭20の打設作業を行うこともできる。このように、杭20の打設作業を行っている支持位置Pの次に杭20の打設作業を行う別の支持位置Pに下側防音管体8を支持しておくことで、杭20の打設作業を終えた後に、次の支持位置Pに対応する位置に上側防音管体9を速やかに移設でき、次の杭20の打設作業を速やかに行うことができる。同じ上側防音管体9を用いて複数の杭20の打設作業を行なうことで、施工現場に搬送する上側防音管体9の数も少なくできる。それ故、施工時間の短縮を図りつつ、防音装置1の設備コストや搬送コストを低くでき、複数の杭20の打設作業を非常に効率よく行なえる。
杭打機30による杭20の打設が完了した後には、クレーン40を使用して上側防音管体9と下側防音管体8を順次杭20から撤去する。杭20の打設が完了した後の支持台2は、例えば、杭20の上部にコンクリート構造物を構築する際の型枠を支持する支保工や作業者の足場として利用する。支持台2を支保工や足場として利用しない場合には、クレーン40を使用して支持台2を撤去する。
このように、本発明では、支持台2を水底地盤Gまたは浮体構造物に固定した状態で水上に設置し、その支持台2により下側防音管体8を支持して、支持台2の上に上側防音管体9を設置する。これにより、杭打機30の下端部を囲う上側防音管体9を水上に安定した状態で設置でき、波浪や潮流によって下側防音管体8が受けた外力が上側防音管体9に直接的に伝達されない状態となる。それ故、上側防音管体9が杭打機30に干渉するリスクを低くでき、波浪や潮流の環境条件によらず、杭打機30による杭20の打設作業を安定的に行なえる。特に、支持台2を水底地盤Gに固定すると支持台2と上側防音管体9の動揺をより確実に抑制できるので、杭打機30による杭20の打設作業を安定的に行うには有利になる。
また、支持台2に設置した上側防音管体9と下側防音管体8とを連通させて、下側防音管体8を水中まで下方に延在させることで、打設音の大部分を防音装置1の外部に直接漏らすことなく水面で吸収、反射させることができる。そのため、杭打機30を用いて水底地盤Gに杭20を打設する際に生じる打設音を効果的に減衰させることができ、騒音を大幅に低減できる。
また、上側防音管体9および下側防音管体8を撤去した後の支持台2は、杭20の上部にコンクリート構造物を構築する際の型枠を支持する支保工や作業者の足場として利用できる。それ故、本発明は、水上に桟橋や橋桁などのコンクリート構造体を構築する工事に非常に有用である。
上側防音管体9または下側防音管体8の少なくともいずれかの内側に吸音材12を設けると、上側防音管体9の内側で生じた打設音が、上側防音管体9と下側防音管体8とを通過する過程で、吸音材12によって減衰されるので、騒音を効果的に低減できる。この実施形態のように、上側防音管体9の内側と下側防音管体8の内側にそれぞれ吸音材12を設けると、騒音を低減するにはより一層有利になる。
下側防音管体8が支持台2に載置されるフランジ部8bを有していると、フランジ部8bを支持台2に載置するだけで、支持台2に下側防音管体8を支持した状態にできるので、下側防音管体8の設置作業に要する作業工数を少なくできる。また、下側防音管体8の外周面と支持台2の開口部2aの内周縁との間のすき間をフランジ部8bで塞ぐ構成にすることで、そのすき間から打設音が外部に漏れることを防ぐことができ、騒音を低減するには有利になる。
下側防音管体8を鋼管などの金属で形成された重量が比較的大きい剛体で構成すると、下側防音管体8が波浪や潮流の外力を受けても動揺れし難くなるので、杭20に下側防音管体8が干渉することを回避するには有利になる。一方で、下側防音管体8を樹脂で形成されたコルゲートパイプなどの重量が比較的小さい弾性体で構成すると、下側防音管体8が波浪や潮流の外力を受けたときに、その外力が、下側防音管体8が変形することや動くことで吸収される。そのため、下側防音管体8から支持台2に伝達される応力を小さくするには有利になり、支持台2に求められる強度を低くできるので、支持台2の簡素化や軽量化を図るには有利になる。
図8および図9に本発明の防音装置1の別の実施形態を示す。この実施形態の防音装置1は、図1~図7に例示した実施形態の防音装置1と支持台2の構成が異なっている。その他の構成は同じである。
この実施形態では、支持台2が水上に浮かぶフロート50に固定されている。フロート50は、複数の直方体形状の分割体50aを連結して形成されている。フロート50の杭20の打設位置に対応する位置にはそれぞれ、杭20および下側防音管体8が挿通可能な開口50bが設けられていて、それぞれの開口50bに支持台2が設置され、それぞれの支持台2が下側防音管体8を支持する支持位置Pとなる。図9で例示している支持台2の紙面右下部分は支持台2を設置する前の状態、紙面右上部分は支持台2を設置した状態、紙面左上部分は支持台2に下側防音管体8を支持した状態、紙面左下部分は支持台2に上側防音管体9を設置して杭打機30により杭20の打設作業を行っている状態を示している。
この実施形態の支持台2は、フロート50の上に固定されたX方向に延在する主桁4と、主桁4の上に固定されたY方向に延在する横桁5とを有している。フロート50のそれぞれの開口50bに複数の主桁4がY方向に互いに間隔をあけて配設され、その上に複数の横桁5がX方向に互いに間隔をあけて配設されている。開口50bに架け渡された一対の横桁5どうしの間の開口部2aに下側防音管体8が挿入されて、複数の横桁5の上に下側防音管体8のフランジ部8bと上側防音管体9が載置される構成になっている。
図8に例示するように、この実施形態では、下側防音管体8のフランジ部8bの外寸の大きさと、下部防音部10の床部10dの開口10fの大きさを略同一寸法に設定している。下側防音管体8のフランジ部8bの外周縁と下部防音部10の床部10dの開口10fの内周縁との間にすき間が生じる場合には、そのすき間を土嚢や遮音シートなどで塞ぐこともできる。
この防音装置1を使用した杭打設工法の作業手順は、図1~図7に例示した実施形態の防音装置1を使用する場合と概ね同じである。ただし、この実施形態では、圧入工法や振動工法により杭20の下端部を水底地盤Gに打設し、複数の分割体50aを連結してフロート50を構築する。そして、フロート50に主桁4と横桁5を設置して支持台2を構築し、支持台2に下側防音管体8を支持させた後に、支持台2の上に上側防音管体9を設置する。下側防音管体8のフランジ部8bの外周縁と下部防音部10の床部10dの開口10fの内周縁との間にすき間がある場合には、土嚢や遮音シートなどで塞ぐ。そして、杭打機30による杭20の打設作業を行う。
この実施形態のように、支持台2をフロート50などの浮体構造物に固定する場合には、支持台2を水底地盤Gに直接的に固定する場合に比して、水底地盤Gに支柱3を打設する工程が不要となるため、支持台2の設置作業に要する作業時間を短縮するには有利になる。支持台2を浮体構造物に固定する場合には、アンカーやシンカーなどを使用して浮体構造物の動揺を抑制することが好ましい。支持台2をフロート50に固定する場合には、フロート50が作業者の足場として機能するので、支持台2を水底地盤Gに固定する場合に比して、支持台2をより簡素化できる。
図10および図11に本発明の防音装置1のさらに別の実施形態を示す。この実施形態の防音装置1は、図1~図7に例示した実施形態の防音装置1と、支持台2および下側防音管体8の構成が異なっている。また、上側防音管体9の上端部に蓋部16が設けられている。その他の構成は同じである。
この実施形態では、1本の杭20を打設する場合の防音装置1を例示している。支持台2は船舶60に固定されている。また、支持台2と下側防音管体8とを紐状体14で連結して、支持台2の開口部2aの内側に下側防音管体8を吊った状態で支持している。
この実施形態の支持台2は、船舶60に固定されて船上から水上までX方向に延在する主桁4と、主桁4の上に設置されるY方向に延在する横桁5と、横桁5の上に設置される天板6と、主桁4と船舶60との間に介在する補強部材7とを有している。2本の主桁4がY方向に間隔をあけて配設されている。複数の横桁5がX方向に間隔をあけて配設されていて、それぞれの横桁5は2本の主桁4に架け渡された状態でそれぞれの主桁4に固定されている。
支持台2(天板6)の開口部2aの内周縁の近傍には、紐状体14を連結可能な連結具2bが開口部2aの周方向に間隔をあけて複数配設されている。さらに、支持台2(天板6)の開口部2aの内周縁には、開口部2aの内周縁と下側防音管体8の外周面との間に生じるすき間を塞ぐ遮音膜15が設けられている。遮音膜15は、例えば、ゴムや樹脂などの弾性部材で形成される。下側防音管体8の上端部には、紐状体14を連結可能な連結孔8dが下側防音管体8の周方向に間隔をあけて複数形成されている。蓋部16は、上側防音管体9の上端部の内面と杭打機30の外周面との間のすき間を塞ぐ遮音性を有する膜体である。蓋部16は、例えば、ゴムや樹脂などの弾性部材で形成される。
この防音装置1を使用した杭打設工法の作業手順は、図1~図7に例示した実施形態の防音装置1を使用する場合と概ね同じである。ただし、この実施形態では、支持台2に下側防音管体8を支持させる際に、支持台2の開口部2aに設けられている連結具2bに紐状体14の一端部を連結し、下側防音管体8の上端に設けられている連結孔8dに紐状体14の他端部を連結する。そして、支持台2の開口部2aに下側防音管体8を挿入して、下側防音管体8を吊った状態にする。支持台2に下側防音管体8を吊った状態にすると、遮音膜15の先端部が下側防音管体8の外周面の連結孔8dよりも低い位置に当接した状態となり、遮音膜15により支持台2の開口部2aの内周縁と下側防音管体8の外周面との間のすき間が塞がれた状態になる。
支持台2に上側防音管体9を設置すると、上側防音管体9と下側防音管体8とが遮音膜15を介して連通した状態になる。上側防音管体9の貫通部9aに杭打機30の下端部を挿入すると、蓋部16の先端部が杭打機30の外周面に当接した状態となり、蓋部16により上側防音管体9の上端部の内面と杭打機30の外周面との間のすき間が塞がれた状態になる。
この実施形態のように、支持台2に下側防音管体8を吊った状態で支持すると、下側防音管体8が波浪や潮流により外力を受けた場合にも、その外力は支持台2に対して下側防音管体8が相対移動することで吸収され、下側防音管体8から支持台2に作用する応力が小さくなる。そのため、支持台2に下側防音管体8を載置する場合や固定する場合に比して、支持台2に求められる強度を低くでき、支持台2の簡素化や軽量化を図るには有利になる。支持台2に下側防音管体8を吊る場合には、下側防音管体8を樹脂で形成されたコルゲートパイプなどの弾性体で構成するとよい。また、紐状体14の長さは、支持台2に対する下側防音管体8の相対的な可動範囲が下側防音管体8の内面と杭20とが接触しない条件になるように設定することが好ましい。
支持台2に下側防音管体8を吊る場合には遮音膜15を設けると、上側防音管体9と下側防音管体8との間を打設音が通過する際に打設音が外部に直接漏れることを抑制できる。上側防音管体9の上端部に蓋部16を設けると、上側防音管体9の上部の開口から打設音が外部に漏れることを抑制できるので、騒音を低減するにはより有利になる。