JP7284436B1 - 回転式圧縮機及び空調装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ケーシング(20)内に、ケーシング(20)の一端の第1端板(22)との間に第1空間(S1)を介して配置された可変速の電動機(40)と、電動機(40)との間に第2空間(S2)を介して配置された圧縮機構(30)とを備えた回転式圧縮機(10)で高速回転した場合でもケーシング(20)内で冷媒から潤滑油を十分に分離する。【解決手段】第1空間(S1)の軸方向長さA、第2空間(S2)の軸方向長さB、ケーシング(20)の内径D、圧縮機構(30)の1回転あたりの吸入容積Vcc、圧縮機構(30)の最高回転速度Nmaxが、0.8≦(A+B)*D2/(Vcc*Nmax)≦1.0の関係を満たす。【選択図】図1

Description

本開示は、回転式圧縮機及び空調装置に関するものである。
一般に、回転式圧縮機では、両端が塞がれた円筒状のケーシング内に電動機と圧縮機構が収容され、圧縮機構が電動機で駆動される(例えば特許文献1参照)。
特許文献1の圧縮機は、集中巻きの電動機を用いてコイルを小さくすることで、ケーシング内で潤滑油を冷媒から分離するスペースを確保している。また、この圧縮機では、電動機の上方のケーシング内の空間高さ(L1)と電動機の高さ(コイルの上端から下端までの高さ)(L2)の関係を0.3≦L1/(L1+L2)≦0.6にし、ケーシングの大型化を抑えている。
特許第3670890号公報
しかし、特許文献1では、圧縮機が高速回転すると、ケーシング内での冷媒の流速が速くなるために潤滑油が冷媒から十分に分離されずにケーシングの外へ吐出される。その結果、油の流出量が増えて圧縮機の信頼性低下に繋がるおそれがある。
本開示の目的は、圧縮機を高速回転した場合でもケーシング内で冷媒から潤滑油を十分に分離できるようにすることである。
本開示の第1の態様は、
回転式圧縮機であって、
軸方向の一端に第1端板(22)を備え、他端に第2端板(23)を備える円筒状のケーシング(20)と、
前記ケーシング(20)内に、前記第1端板(22)との間に第1空間(S1)を介して配置された可変速の電動機(40)と、
前記ケーシング(20)内に、前記電動機(40)との間に第2空間(S2)を介して配置され、前記電動機(40)と連結された圧縮機構(30)と、
を備え、
前記第1空間(S1)の軸方向長さをA(mm)、前記第2空間(S2)の軸方向長さをB(mm)、前記ケーシング(20)の内径をD(mm)、前記圧縮機構(30)の1回転あたりの吸入容積をVcc(mm)、前記圧縮機構(30)の最高回転速度をNmax(rps)とすると、
0.8≦(A+B)*D/(Vcc*Nmax)≦1.0
の関係を満たす。
この第1の態様では、ケーシング(20)内の空間容積と圧縮機の最高回転数での吸入容積との比率である(A+B)*D/(Vcc*Nmax)の値を前記の範囲に特定したことにより、圧縮機を高速回転で運転する場合でもケーシング(20)内で冷媒から潤滑油を十分に分離できる。
本開示の第2の態様は、
第1の態様の回転式圧縮機において、
D<100、Nmax≧118
の関係を満たす。
この第2の態様では、特にケーシングを小型化し、圧縮機を高速化する場合に、ケーシング内で冷媒から潤滑油を十分に分離できる。
本開示の第3の態様は、
第1または第2の態様の回転式圧縮機において、
0.85≦(A+B)*D/(Vcc*Nmax)≦0.95
の関係を満たす。
この第3の態様では、前記容積比の範囲を第1の態様より狭く特定したことにより、圧縮機を高速回転した場合にケーシング内で冷媒から潤滑油をより十分に分離できる。
本開示の第4の態様は、
第1から第3の態様のいずれか1つの回転式圧縮機において、
6×10≦Vcc≦8×10
の関係を満たす。
本開示の第5の態様は、
空調装置であって、
蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路(1)を備え、
前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)が第1から第4の態様のいずれか1つの回転式圧縮機である。
図1は、実施形態に係る回転式圧縮機の断面図である。 図2Aは、(A+B)*D/(Vcc*Nmax)で表される容積比(ケーシング内の空間容積と圧縮機の最高回転数での吸入容積との比率)と油上り率の関係を示す表である。 図2Bは、(A+B)*D/(Vcc*Nmax)で表される容積比と油上り率の関係を示すグラフである。 図3Aは、(A+B)*D/(Vcc*Nmax)で表される容積比と圧縮機の振動の値との関係を示す表である。 図3Bは、(A+B)*D/(Vcc*Nmax)で表される容積比と圧縮機の振動の値との関係を示すグラフである。
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
この実施形態に係る回転式圧縮機(以下、単に圧縮機という)(10)は、揺動ピストン式の圧縮機(10)であり、図1に示すように冷媒回路(1)に接続されている。冷媒回路(1)は、この圧縮機(10)と、放熱器(2)、膨張機構(3)、及び蒸発器(4)とが順に冷媒配管(5)で接続され、冷媒が循環することにより蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。膨張機構(3)は、一般に開度調整が可能な膨張弁が用いられるが、開度が固定のキャピラリチューブなど、別の要素部品でもよい。
圧縮機(10)はケーシング(20)を備える。ケーシング(20)は、円筒状の胴体部(21)の軸方向の一端(上端)に第1端板(22)を備え、他端(下端)に第2端板(23)を備える縦長円筒状の密閉容器である。ケーシング(20)の内部には、冷媒回路(1)の冷媒を圧縮する圧縮機構(30)と、圧縮機構(30)を駆動する可変速の電動機(40)とが収容され、それぞれ、胴体部(21)の内周面に固定されている。電動機(40)はケーシング(20)内で第1端板(22)との間に第1空間(S1)を介して配置され、圧縮機構(30)は電動機(40)との間に第2空間(S2)を介して配置されている。
電動機(40)は、共に円筒状に形成されたステータ(41)及びロータ(42)を備える。ステータ(41)は、ケーシング(20)の胴体部(21)に固定される。ステータ(41)の中空部にはロータ(42)が配置される。ロータ(42)の中空部には、ロータ(42)を貫通するように駆動軸(45)が固定され、ロータ(42)と駆動軸(45)とが一体で回転する。
駆動軸(45)は、上下に延びる主軸部(46)を有する。駆動軸(45)には、主軸部(46)の下端寄りに偏心部(47)が一体に形成される。偏心部(47)は、主軸部(46)よりも大径に形成される。偏心部(47)の軸心は、主軸部(46)の軸心に対して所定距離だけ偏心している。
主軸部(46)の下端部には給油ポンプ(48)が設けられている。給油ポンプ(48)は、ケーシング(20)の底部に形成される油溜め部の潤滑油に浸漬する。給油ポンプ(48)は、駆動軸(45)の回転に伴って潤滑油を駆動軸(45)内の給油路(図示せず)へ汲み上げた後で、圧縮機構(30)の各摺動部へ供給する。
圧縮機構(30)は、環状に形成されたシリンダ(31)を有する。シリンダ(31)の軸方向一方端(上端)にはフロントヘッド(32)が固定され、シリンダ(31)の軸方向他方端(下端)にはリアヘッド(33)が固定される。シリンダ(31)、フロントヘッド(32)及びリアヘッド(33)は、上側から下側に向かってフロントヘッド(32)、シリンダ(31)及びリアヘッド(33)の順に積層され、例えば複数のボルトによって締結されて互いに固定される。
駆動軸(45)は、圧縮機構(30)を上下に貫通する。フロントヘッド(32)とリアヘッド(33)には、駆動軸(45)を偏心部(47)の上下両側で支持する軸受部(32a,33a)が形成される。
シリンダ(31)の上端がフロントヘッド(32)によって閉塞される一方、下端がリアヘッド(33)に閉塞され、シリンダ(31)の内部の空間がシリンダ室(35)を構成する。シリンダ(31)(シリンダ室(35))には、駆動軸(45)の偏心部(47)に摺動自在に嵌合する筒状のピストン(34)が収容される。ピストン(34)は、駆動軸(45)が回転すると、シリンダ室(35)の中で偏心回転運動をする。詳細は図示していないが、ピストン(34)の外周面には、該外周面から径方向外側へ延びるブレードが一体に形成される。ブレードは、ピストン(34)に設けられたブッシュ(図示せず)に保持されて、駆動軸(45)の回転に伴って揺動し、ピストン(34)の自転が規制される。
シリンダ(31)には、シリンダ室(35)に通じる吸入ポート(31a)が形成される。吸入ポート(31a)には、胴体部(21)に固定された吸入管(36)が接続される。吸入管(36)には、ケーシング(20)に固定されたアキュムレータ(37)が接続される。
フロントヘッド(32)には、吐出ポート(32b)が、駆動軸(45)の軸心と平行な方向に沿って形成される。吐出ポート(32b)は、吐出弁(図示せず)で開閉される。フロントヘッド(32)の上面には、吐出ポート(32b)及び吐出弁を覆うようにマフラ(38)が取り付けられている。マフラ(38)は、その内部に区画されるマフラ空間(38a)が、上部の吐出開口(38b)を通じてケーシング(20)の内部空間に連通するように形成される。
前記ケーシング(20)には、前述したように、前記吸入ポート(31a)に接続される吸入管(36)が取り付けられ、冷媒がアキュムレータ(37)及び吸入管(36)を通って前記圧縮機構(30)へ吸入される。
ケーシング(20)には、第1端板(22)を貫通して吐出管(39)が取り付けられている。吐出管(39)の下側の端部は、ケーシング(20)の内部に開口する。圧縮機構(30)の吐出ポート(32b)は、マフラ(38)の吐出開口(38b)を通じてケーシング(20)の内部空間に連通している。圧縮機構(30)から吐出された冷媒は、ケーシング(20)の内部空間と吐出管(39)を通じてケーシング(20)の外へ流出する。
ケーシング(20)の第1端板(22)には、電動機(40)へ電力を供給するための電気配線を接続するターミナル(50)が設けられている。
この実施形態の圧縮機は、第1空間(S1)の軸方向長さをA(mm)、第2空間(S2)の軸方向長さをB(mm)、ケーシング(20)の内径をD(mm)、圧縮機構(30)の1回転あたりの吸入容積をVcc(mm3)、圧縮機構(30)の最高回転速度をNmax(rps)とすると、
0.8≦(A+B)*D/(Vcc*Nmax)≦1.0 の関係を満たしている。
本実施形態においては、D<100、Nmax≧118、6×10≦Vcc≦8×103である。A,Bの値は適宜定められる(例えば、Aは約50~70mm、Bは約20~30mmとすることができる)。
この条件において、(A+B)*D/(Vcc*Nmax)で表される容積比(ケーシング内の空間容積と圧縮機(10)の最高回転数での吸入容積との比率)の値が約0.70から1.20の範囲の複数のポイントでの容積比と油上がり率との関係を図2Aの表と図2Bのグラフに示す。さらに、同じ条件で容積比の値が約0.70から1.10の範囲の複数のポイントでの容積比と振動量(ケーシング(20)の振動量)との関係を図3Aの表と図3Bのグラフに示す。
油上がり率は、油の全体量とケーシング(20)のそとへ流出した油量の比率である。この油上がり率は、前記の容積比が小さいほど、言い換えると最高回転数での吸入容積に対してケーシング(20)内の空間容積が小さいほど大きくなり、ケーシング(20)からの油の流出量が多くなる。また、油上がり率は、前記の容積比が大きいほど、言い換えると最高回転数Nmaxでの吸入容積Vccに対してケーシング(20)内の空間容積が大きいほど小さくなり、ケーシング(20)からの油の流出量が少なくなる。
本実施形態では、前記容積比が0.8≦(A+B)*D/(Vcc*Nmax)≦1.0 の関係を満たしており、油上がり率は、図2A,図2Bに示すように0.91から0.35の範囲となる。前記容積比が0.8よりも小さいと油上がり率が大きくなるのに対して、本実施形態では油上がり率の増加を抑えられる。容積比が1.0よりも大きいと油上がり率がほぼ一定になるので、ケーシング(20)内の空間容積を過度に大きくする必要がなく、ケーシング(20)の大型化を抑制できる。
また、前記容積比が0.8≦(A+B)*D/(Vcc*Nmax)≦1.0 の関係を満たしており、ケーシング(20)の振動量(μm)は、図3A,図3Bに示すように27.5~30(μm)の範囲となる。前記容積比が0.8よりも小さいと振動量は小さくなるが油上がり率が大きくなるのに対し、この実施形態では振動量と油上がり率のどちらも抑えられる。さらに、容積比が1.0よりも大きいと振動量が大きくなるが、本実施形態では油上がり率を抑えつつ振動量を小さくできる。
-実施形態の効果-
従来の圧縮機では、小型化のために胴体部の直径を小さくし、吐出量を確保するために回転速度を高速化すると、圧縮機構から吐出管へ向かう上向きの平均ガス流速が大きくなり、ケーシング内の空間での油分離効果が低下し、油上り量が増加する。これに対してケーシング内の空間容積を大きくすると、圧縮機が大型化する。
本実施形態では、前記容積比を0.8≦(A+B)*D2/(Vcc*Nmax)≦1.0にしている。このように、本実施形態では、単にケーシング(20)内の空間の容積を大きくすることで油上がり率を抑えるだけでなく、振動量も小さくなるように前記容積比の範囲を定めている。特に、圧縮機(10)のケーシング(20)の高さが大きくなるのを抑えて小型化を可能とし、且つケーシング(20)の高さを抑えることにより、圧縮機(10)の運転を高速化しても振動を抑えつつ油上がり率の増加を抑えられる。
この実施形態では、圧縮機(10)の振動を抑えられるので、振動によるケーシング(20)や配管の損傷を抑えられる。また、油上がり率を抑えられるため、圧縮機(10)の摺動部の信頼性低下を抑制できる。
本実施形態では、D<100、Nmax≧118の関係が満たされる。本実施形態では、このようにケーシング(20)が小径化されるとともに運転が高速化される圧縮機(10)において、ケーシング(20)の振動を抑えつつ油上がり率の増加を抑えられる。
本実施形態では、6×10≦Vcc≦8×10 の関係が満たされる。本実施形態では、このように小容量の圧縮機において、ケーシング(20)の振動を抑えつつ油上がり率の増加を抑えられる。
本実施形態の圧縮機を備えた空調装置では、圧縮機(10)の油上がり率を抑えることにより、冷媒回路の熱交換器(2,4)に潤滑油が付着して熱伝達が阻害されるのを抑えることができるから、システム効率の低下も抑制できる。
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
<変形例1>
前記実施形態では、前記容積比を、0.85≦(A+B)*D/(Vcc*Nmax)≦0.95の範囲にしてもよい。
このようにすると、前記容積比の範囲を前記実施形態よりも狭い範囲に限定することにより、前記実施形態に比べて油上がり率をさらに低減し、且つケーシング(20)の大型化をさらに抑えて振動量も小さくできる。その結果、ケーシング(20)や配管の損傷、圧縮機(10)の信頼性低下、及びシステム効率の低下を抑制する効果を高められる。
<変形例2>
前記実施形態では、前記容積比を0.9≦(A+B)*D^2/(Vcc*Nmax) ≦1.0の範囲にしてもよい。
このようにすると、前記実施形態及び変形例1に比べて油上がり率をさらに低減し、且つケーシング(20)の大型化抑制が実施形態及び変形例1と同様に容易になり、振動量を小さくできる。その結果、ケーシング(20)や配管の損傷を抑えつつ、圧縮機(10)の信頼性低下とシステム効率の低下をさらに抑制しやすくなる。
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
以上説明したように、本開示は、回転式圧縮機及び空調装置について有用である。
1 冷媒回路
10 回転式圧縮機
20 ケーシング
22 第1端板
23 第2端板
30 圧縮機構
40 電動機
S1 第1空間
S2 第2空間

Claims (5)

  1. 回転式圧縮機であって、
    軸方向の一端に第1端板(22)を備え、他端に第2端板(23)を備える円筒状のケーシング(20)と、
    前記ケーシング(20)内に、前記第1端板(22)との間に第1空間(S1)を介して配置された可変速の電動機(40)と、
    前記ケーシング(20)内に、前記電動機(40)との間に第2空間(S2)を介して配置され、前記電動機(40)と連結された圧縮機構(30)と、
    を備え、
    前記第1空間(S1)の軸方向長さをA(mm)、前記第2空間(S2)の軸方向長さをB(mm)、前記ケーシング(20)の内径をD(mm)、前記圧縮機構(30)の1回転あたりの吸入容積をVcc(mm)、前記圧縮機構(30)の最高回転速度をNmax(rps)とすると、
    0.8≦(A+B)*D/(Vcc*Nmax)≦1.0
    の関係を満たす回転式圧縮機。
  2. 請求項1の回転式圧縮機において、
    D<100、Nmax≧118
    である回転式圧縮機。
  3. 請求項1または2の回転式圧縮機において、
    0.85≦(A+B)*D/(Vcc*Nmax)≦0.95
    である回転式圧縮機。
  4. 請求項1から3のいずれか1つの回転式圧縮機において、
    6×10≦Vcc≦8×10
    である回転式圧縮機。
  5. 空調装置であって、
    蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路(1)を備え、
    前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)が請求項1から4のいずれか1つの回転式圧縮機である空調装置。
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