図面を参照して産業排出物から汚染物質を除去する装置及び方法を説明するが、図面を通じて同じ符号は対応する要素を示す。
例示的実施形態を、添付図面を参照してより十分に説明する。例示的実施形態を挙げて、本開示事項を十全なものとし、当業者にその範囲を十分に伝えるようにしている。本願開示の実施形態の十全な理解を提供するため、具体的な構成要素、素子及び方法の例など、数多くの具体的詳細を記載している。当業者にとって、具体的な詳細を用いる必要はなく、例示的実施形態は多くの異なる形態で実装可能であり、また本願開示を限定するものと解釈すべきでないことは明らかであろう。いくつかの例示的実施形態において、公知の方法、公知の素子構造及び公知の技術は、詳細に記載されない。
本明細書中で用いられる用語は、具体的な例示的実施形態を記述することのみを目的とするものであり、限定的であることを意図しない。本明細書で使用される際、単数形は、明示されていない限り複数形も含むことを意図する。用語「備える」、「備えて」、「含んで」および「有して」は包括的であり、述べられた特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は部品の存在を特定する。しかし、1以上の特徴、整数、工程、操作、要素、部品及び/又は群の存在または追加を排除するものではない。本明細書で記載される方法工程、プロセスおよび操作は、実行順序として詳細に特定されない限り、必ずしも記載または図示された特定の順序で実行を要するものと解釈されるべきではない。追加工程または代替工程が用いられてもよいことも当然である。
要素または層が、他の要素または層「上に」ある、「に係合」、「に接続」または「に連結」すると記される場合、この要素または層は直接に他の要素または層上にあるか、係合、接続、または連結してもよい。または、介在要素または層があってもよい。一方、要素が、他の要素または層の「直接上に」ある、「に直接係合」、「に直接接続」または「に直接連結」すると記される場合、介在要素または層は存在しなくてよい。要素同士の関係を説明するのに使用される他の文言(例えば、「の間に」と「直接の間に」、「隣接して」と「直接隣接して」など)は、同様に解釈されるべきである。本明細書で用いられる際、用語「及び/又は」は1以上の関連づけられたリスト項目の全ての組み合わせを含む。
第一、第二、第三等の用語が各種要素、部品、領域、層及び/又は部位を説明するために本明細書で使用されるが、これらの要素、部品、領域、層及び/又は区間はこれらの用語により限定されるものではない。これらの用語は、ある要素、部品、領域、層及び/又は区間を他の領域、層または区間から区別するためにのみ使用されてもよい。本明細書で使用される際の「第一」「第二」のような用語および他の数に関する用語は、文脈で明示されない限り、配列または順序を意味しない。したがって、下記で論じられる第一要素、部品、領域、層及び/又は区間は、実施例の教示から逸脱することなく第二要素、部品、領域、層及び/又は区間と称されることも可能である。
「インナー」、「アウター」、「真下に」、「下に」、「下側の」「上に」、「上部に」等のような空間的に相対的な用語が、図示する際、ある要素または特徴と他の要素または特徴との関係の記載を容易にするために、本明細書で使われてもよい。空間的に相対的な用語は、図示される向きに加えて、使用時または操作時における装置の異なる向きを包含するものとしてもよい。例えば、図の装置がひっくり返ると、他の要素または特徴の「下に」または「真下に」と記載される要素は、他の要素または特徴の「上に」置かれるだろう。このように、例示の用語「下に」は上と下両方への向きを包含することが可能である。装置は他方向に向いてもよく(90度回転または他の向きに)、本明細書で使用される空間関連の記述はそのように解釈される。
本明細書で用いられる「導管」という用語は、液体及び/又は液体状排出物及び気体及び/又は気体排出物を運ぶのに通常利用可能な全てのパイプの記載をカバーすることを意図するものである。排出物の種類に関わらず、排出物の実際の運搬方法に関して、何ら優先的取り扱いをし、または暗示するものではない。本願明細書で用いられる「常温」という用語は、周囲環境の温度(例えば、標準温度及び圧力「STP」)を示す。加えて、「汚染物質contaminate(s)」および「汚染物質contaminant(s)」という用語は、本願開示中で交換可能に用いられる。
図1を参照して、通常の石炭火力発電所100の模式図が示される。この石炭火力発電所100は、一種以上の石炭燃料2を燃やして電力7を発生させる産業設備である流動床反応器1を有する。この電力7は、その後、電線8を介して配電網に分配されても良い。流動床反応器1内での燃焼は、空気3、火4、及び石炭燃料2によって行われる。この燃焼プロセスは、水を加熱して蒸気5を発生させるのに用いられる。この蒸気は、その後発電機6を回して、電力7を発生させるのに用いられる。燃焼プロセスからの気体排出物10は、煙突9を通って環境中に放出される。石炭火力発電所100に何ら排出物制御システムが設けられない場合(図1)、この排出物10は、フライアッシュ、水銀(Hg)、金属蒸気、二酸化硫黄(SO2)、塩化水素(HCl)及びその他の有害ガスなどの多くの有害汚染物質を含む。
図2を参照して、通常の排出物制御システム202を有する改良型石炭火力発電所200の模式図が示される。この排出物制御システム202により、気体排出物10中の有害汚染物質の一部が捕捉、収集される。この排出物制御システム202は、燃焼反応が起こる流動床反応器1からの気体排出物10を、気体排出物10から二酸化硫黄及びフライアッシュ汚染物質の一部を除去する湿式/乾式気体洗浄装置11に搬送する。気体排出物10を湿式/乾式気体洗浄装置11に搬送するのに代えて、あるいはそれに加えて、この排出物制御システム202は気体排出物10を、二酸化硫黄、有害ガス及びその他の汚染物質の一部が捕捉・収集される噴射乾燥機12に搬送しても良い。この排出物は、フィルタバッグを用いて気体排出物10の流れから粒子を除去する繊維フィルタユニット13(すなわちバグハウス)を通過させても良い。このシステムは、気体排出物10が煙突9を通って周囲の大気(すなわち環境)に放出される前に、気体排出物10から多くの汚染物質を収集し除去する。図2に示される通常の排出物制御システム202の問題点は、金属蒸気排出物に含まれる水銀などのナノサイズの汚染物質が、排出物制御システム202の湿式/乾式気体洗浄装置11、噴射乾燥機12、及び繊維フィルタユニット13を容易に通過することである。
図3を参照して、図2に示される排出物制御システム202に加えて、吸着剤噴射機14と逆ベンチュリ装置15とを有する改良型石炭火力発電所300の模式図が示される。吸着剤噴射機14は、吸着剤を気体排出物10に添加するよう動作し、逆ベンチュリ装置15の上流に配置されても良い。より具体的に、図3に示される例では、吸着剤噴射機は噴射乾燥機12と繊維フィルタユニット13との間に配置される。逆ベンチュリ装置15を異なる位置に配置することも可能だが、図3では、逆ベンチュリ装置は繊維フィルタユニット13と煙突9との間に配置される。この配置の主要な利点の一つは、既存の設備に逆ベンチュリ装置15を設置可能であり、「既存変更許可(Modification to Existing Permit)」を申請するのみで足り、完全に新規の排出物制御システムを申請するのに比べて時間と費用の双方を節約できることである。動作時、気体排出物10は繊維フィルタユニット13から逆ベンチュリ装置15に送られる。以下により詳細に説明するように、この逆ベンチュリ装置15には、水銀、重金属、ナノサイズ粒子及びその他の汚染物質の相当量を収集し、捕捉するのに適する内部構造が設置される。したがって、煙突9を出て行く気体排出物10は、実質上全ての有害汚染物質が取り除かれている。
図4A-図4Dに示されるように、逆ベンチュリ装置15は、逆ベンチュリ形状である筐体16を有する。なお、ベンチュリは、まずより大きな断面からより小さな断面に縮径し、その後より小さな断面からより大きな断面に拡大する導管として一般に記載される。したがって、本願明細書で用いられる「逆ベンチュリ」との用語は、その逆、すなわち、まずより小さな断面からより大きな断面に拡大し、その後より大きな断面からより小さな断面に縮径する導管を意味する。具体的に、開示される逆ベンチュリ装置15の筐体16は中心軸17に沿って延び、入口部18、拡径部19、および出口部20を有する。この筐体16の入口部18は、気体排出物10が、流入速度V1及び圧力P1で特徴づけられる所定の入口流速で流入するような大きさとされる。この筐体16の出口部20は、気体排出物10が、出口速度V3及び圧力P3で特徴づけられる所定の出口流速で流出するような大きさとされる。この拡径部19は、筐体16の入口部18と出口部20との間に配置され、内部に気体排出物10中の汚染物質を捕捉する拡径室21を形成する。この筐体16の拡径部19は、中心軸17とおよそ対向する内面68を有する。筐体16の入口部18、拡径部19、及び出口部20は、中心軸17に沿って、筐体16の入口部18、拡径部19、及び出口部20が互いに流体を介して連通するように順に配置される。すなわち、筐体16の入口部18、拡径部19、及び出口部20は、合わせて中心軸17に沿って延びる導管を形成する。
筐体16の入口部18は、中心軸17を横断する入口部断面積A1を有し、筐体16の出口部20は、中心軸17を横断する出口部断面積A3を有する。所定の入口流速が所定の出口部流速と等しく(すなわち同一と)なるよう、入口部断面積A1は出口部断面積A3と等しく(すなわち同一と)されても良い。あるいは、所定の入口流速が所定の出口部流速と異なる(すなわち、より小さくまたはより大きくなる)よう、入口部断面積A1と出口部断面積A3とは異なって(すなわち、より小さくまたはより大きくて)も良い。本明細書で用いられる「流速」という用語は、排出物の体積流量を示す。
筐体16の拡径部19は、中心軸17を横断し、入口部断面積A1及び出口部断面積A3よりも大きな拡径部断面積A2を有する。したがって、この拡径部19は、筐体16の拡径部19内の気体排出物10の流速V2が、筐体16の入口部18内の気体排出物10の流速V1よりも小さく、かつ筐体16の出口部20内の気体排出物10の流速V3よりも小さくなるような大きさとされる。このように流速が低下することで、筐体16の拡径部19内での気体排出物10の滞留時間が増加する。なお、本明細書中で用いられる「滞留時間」という用語は、気体排出物10内の分子が筐体16の拡径部19を通過するのに必要な時間の平均を意味する。すなわち、筐体16の拡径部19の「滞留時間」とは、拡径室21内の全ての排出物が更新されるのに要する時間と等しい。また、本明細書中で用いられる「断面積」との用語は、筐体16の厚みの変化に関わりなく同一である、内部断面積(すなわち、筐体16内部の空間)を意味する。したがって、拡径部断面積A2は、拡径室21の大きさを反映し、内面68によって区画される。
筐体16の形状により、筐体16の入口部18を通過する気体排出物10の内圧P1と、筐体16の出口部20を通過する気体排出物10の内圧P3とは、筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の内圧P2よりも大きい。筐体16の拡径部19内での気体排出物10の流速V2が筐体16の入口部18での気体排出物10の流速V1よりも小さく、かつ筐体16の出口部20の気体排出物10の流速V3よりも小さいという事実と合わせ、この圧力差によって気体排出物10が筐体16の拡径部19に滞留することになる。上述の圧力及び速度差の結果、及び気体排出物10が自然に膨脹して拡径室21の全体積を占めることになることから、筐体16の拡径部19内の気体排出物10には膨脹力が加えられることになる。この事実と層流、空気力学(pneumatic dynamics)及び気体挙動物理学(gas behavior physics)による効果との組み合わせにより、生じた滞留時間の増加によって逆ベンチュリ装置15の、気体排出物10から効率的に汚染物質を捕捉し、これにより除去する能力が向上する。
筐体16は、各種の異なる形状及び構造とされても良い。限定的でない例として、図4A-図4Dに示される筐体16の入口部18、拡径部19、および出口部20は、全て円形の断面領域A1、A2、A3を有する。これに代え、筐体16の入口部18、拡径部19及び出口部20の一つ以上の断面領域A1、A2、A3は、非円形状であっても良く、円形及び非円形の断面の各種組み合わせが可能であり、本願開示の範囲内であると考えられる。いくつかの構造では、筐体16の拡径部19は、発散端部22と収束端部23とを有しても良い。これらの構造によれば、筐体16の拡径部19は、入口部断面積A1から発散端部22での拡径部断面積A2にかけ外側に向けてテーパ形状とされる。すなわち、筐体16の拡径部19の断面は、発散端部22において、筐体16の入口部18から離れる方向に移動するにつれて大きくなる。これに対し、筐体16の拡径部19は、収束端部23において、拡径部断面積A2から出口部断面積A3に徐々に内向きにテーパ形状とされる。すなわち、筐体16の拡径部19の断面は、収束端部23において、筐体16の出口部20に向かう方向に移動するにつれて小さくなる。したがって、筐体16の拡径部19内の気体排出物10は、ほぼ発散端部22から収束端部23に流れる。筐体16の入口部18、拡径部19、及び出口部20が全て円形断面領域A1、A2、A3を有する実施形態では、筐体16の発散端部及び収束端部22、23は、およそ円錐形状であっても良い。上記に関わらず、筐体16の拡径部19の発散及び収束端部22、23は別の形状とされても良い。限定的でない例として、発散及び収束端部22、23は、逆ベンチュリ装置15の筐体16を通過する気体排出物10の流れに重大な悪影響が及ばないようにしつつ、より製造しやすくするため、多角形とされても良い。別の代替構成では、筐体16の拡径部19は、入口部18と発散端部22との間及び収束端部23と出口部20との間で比較的急激に変化が起こるソーセージに似た形状を有しても良い。急激な変化よりもスムースな変化が好ましいのは、気体排出物10の層流の挙動がより好ましいからであると推定される。しかし、急激な変化に際しての気体排出物10の層流へのわずかな外乱は、絶対的な問題とは考えられず、むしろ滞留時間の増加が必要でない領域においては、より良い流れを生じさせる可能性もある。
引きつづき図4A-図4Dを、またさらに図5-図11を参照すると、反応物質塊24が筐体16の拡径部19内に配置される。この反応物質塊24は、気体排出物10と接触するよう配置される反応外表面25を有する。加えて、この反応物質塊24は、筐体16の拡径部19を通って反応物質塊24の反応外表面25に達する気体排出物10中の汚染物質の少なくとも一部と化学的に結合するアマルガム形成金属をその反応外表面25に含有する。このようにして、反応物質塊24の反応外表面25に結合された汚染物質は、筐体16の拡径部19内に捕捉されたままとなり、したがって筐体16の拡径部19から流出して筐体16の出口部20に流入する気体排出物10の流れから除去される。本明細書中で用いられる「アマルガム形成金属」という用語は、気体排出物10中の汚染物質の一種以上と化合物を形成可能な金属群から選択される材料を意味する。限定的でない例として、このアマルガム形成金属は亜鉛であり、気体排出物10中の汚染物質は水銀であっても良く、これにより気体排出物10が反応物質塊24の反応外表面25と接触する際に、亜鉛と水銀とのアマルガムが形成されても良い。
筐体16の拡径部19は、反応物質塊24中のアマルガム形成金属が気体排出物10中の汚染物質と化学的に結合するための十分に長い滞留時間を確保しつつ、所定の入口流速の気体排出物10を収容可能な大きさとされなくてはならない。したがって、このバランス達成のため、拡径部断面積A2は、1秒から2.5秒の範囲の滞留時間を実現するよう、3平方フィートから330平方フィートの範囲とされても良い。この特定の滞留時間は、気体排出物10中の汚染物質が反応物質塊24中のアマルガム形成金属と化学的に結合するのに十分な時間を確保するのに必要である。このように、拡径部断面積A2の範囲は、1メガワット(MW)から6000メガワット(MW)の範囲の出力を有する石炭火力発電所100において、この滞留時間を実現するよう算出された。化学分野で公知なように、アマルガム形成金属は、各種の異なる金属であって良い。限定的でない例として、このアマルガム形成金属は亜鉛、鉄及びアルミニウムからなる群から選択されても良い。筐体16は、反応物質塊24とは異なる材質からなる。限定的でない例として、筐体16は鋼鉄、プラスチックまたはグラスファイバからなっても良い。
反応物質塊24は、各種の異なる、制限されない構造を有しても良い。図4Aでは、反応物質塊24は、筐体16の内面68を被覆するものとして示される。あるいは、図5-図11に示されるように、反応物質塊24は、筐体16の拡径部19内に配置される一つ以上の障害要素26a-26jを形成しても良い。これらの障害要素26a-26jは、それ自体として筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の曲折流路27を形成する。したがって、障害要素26a-26jは、筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の滞留時間を増加させる。下記のいくつかの実施形態では、筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の流れを完全に分断することから、形成される曲折流路27は完全にランダムなものとされ、これにより、気体排出物10中の汚染物質と、反応物質塊24中のアマルガム形成金属との間の化学反応の機会が大幅に増加することとなる。
図5-図11に示される構造のそれぞれの障害要素26a-26jは、大きな表面積を有し、これにより反応物質塊24の反応外表面25が大きくなる。これは、反応物質塊24の反応外表面25中のアマルガム形成金属と気体排出物10中の汚染物質との化学反応によって、汚染物質を筐体16の拡径部19に捕集し、捕捉し及び/又は収集可能として、気体排出物10から汚染物質が除去されることから有利である。したがって、筐体16の拡径部19によって拡径室21を通過する気体排出物10から除去可能な汚染物質の量は、筐体16の拡径部19中の反応物質塊24の反応外表面25の大きさに比例する。加えて、障害要素26a-26jの複雑な表面形状及び/又は組織により、汚染物質の捕捉が汚染物質とアマルガム形成金属との間の化学反応の結果であるか否かによらず、汚染物質を物理的に捕捉するのを容易にする追加の表面積が得られる。
再び図3を参照すると、吸着剤噴射機14によって排出物に添加される吸着剤は、アマルガム形成金属を含む。吸着剤中のアマルガム形成金属は、気体排出物10が筐体16の拡径部19に流入する前に気体排出物10中の少なくとも一部の汚染物質と化学的に結合する。吸着剤は数多くの異なる組成を有しても良いものの、吸着剤は、例えば亜鉛(Zn)粉末又は、銅・亜鉛・錫・硫黄(CZTS)化合物であっても良い。気体排出物10が筐体16の拡径部19に流入する前に吸着剤が気体排出物10中の少なくとも一部の汚染物質と化学的に結合することから、この吸着剤により、反応物質塊24による気体排出物10からの汚染物質除去が促進される。
図5に示されるように、障害要素26a-26jは、筐体16の拡径部19の内面68から延出する一連の交互配置バッフル26aとして設けられる。この一連の交互配置バッフル26aは中心軸17を横断し、曲折流路27を蛇行形状とする。この曲折流路27の蛇行形状により、気体排出物10の筐体16の拡径部19内の滞留時間が増加し、これにより一連の交互配置バッフル26aを形成する反応物質塊24による気体排出物10中の汚染物質の捕捉及び除去が促進される。一つの例では、この一連の交互配置バッフル26aは亜鉛からなる。別の例では、この一連の交互配置バッフル26aは亜鉛によって被覆される亜鉛以外の材質からなる。交互配置バッフル26aの配置は、中心軸17の長手方向に沿って等間隔又は対称である必要はない。というのは、いくつかの用途では、隣接するバッフル26a間により広い空間がある方が好ましく、他の用途では、隣接するバッフル26a間により狭い空間がある方が好ましいからである。また、この一連の交互配置バッフル26aは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。
図6A及び図6Bに示されるように、少なくとも一つの障害要素26a-26jは、らせん状バッフル26bとされても良い。このらせん状バッフル26bは中心軸17に沿い、また中心軸17を中心として筐体16の拡径部19内でらせん状に延びる。したがって、らせん状バッフル26bにより、曲折流路27がらせん形状となる。この曲折流路27のらせん形状により、気体排出物10の筐体16の拡径部19内の滞留時間が増加し、これによりらせん状バッフル26bを形成する反応物質塊24による気体排出物10中の汚染物質の捕捉及び除去が促進される。一つの例では、このらせん状バッフル26bは亜鉛からなる。別の例では、このらせん状バッフル26bは亜鉛によって被覆される亜鉛以外の材質からなる。さらに別の例では、このらせん状バッフル26bは、中心軸17を中心として筐体16の拡径部19内で回転するよう、機械的に駆動される。このらせん状バッフル26bを回転させることで、筐体16の拡径部19を通る気体排出物の流れを、らせん状バッフルの回転方向に応じて人為的に加速または減速可能となる。このらせん状バッフル26bは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。
図7A及び図7Bに示されるように、少なくとも一つの障害要素26a-26jは、複数のバッフル26cである。それぞれのバッフル26cは、筐体16の拡径部19の内面68から筐体16の拡径部19を横断して延びる。このバッフル26cは中心軸17に沿って互いに離隔され、各バッフル26cは、バッフル26cを通過する気体排出物10の流れを許容するオリフィス28を有する。当然ながら、単一のバッフル26cのみを有する構成を含め、任意の数のバッフル26cが設けられて良い。各バッフル26c中のオリフィス28の大きさ、形状、及び数は変更可能である。例えば、バッフル26cはスクリーン状とされ、オリフィス28がスクリーンの十字線の間に設けられて良い。このバッフル26c中のオリフィス28により、筐体16の拡径部19内の気体排出物10の流れが制限され、筐体16の拡径部19内の気体排出物10の滞留時間が増加する。これにより、バッフル26cを形成する反応物質塊24による気体排出物10からの汚染物質の捕捉及び除去が促進される。一つの例では、このバッフル26cは亜鉛からなる。別の例では、このバッフル26cは亜鉛によって被覆される亜鉛以外の材質からなる。このバッフル26cは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。さらに別の例では、バッフル26cの一つのオリフィス28の大きさは、隣接するバッフル26cのオリフィス28の大きさと異なる。異なるバッフル26cに異なる大きさのオリフィス28を用いることで、気体排出物10の流れが加速及び/又は制限され、バッフル26c内の反応物質塊による気体排出物10中の汚染物質の捕捉及び除去が促進される。同様に、このバッフル26cは拡径室21内で等間隔で離隔配置される必要は無く、またバッフル26cの一つのオリフィス28は隣接するバッフル26cのオリフィス28と同じ大きさ、形状または位置である必要はない。これらオリフィス28の大きさ、形状及び位置を一つのバッフル26cから別のバッフル26cについて異なるものとすることにより、かつバッフル26cの間隔を異なるものとすることにより、筐体16の拡径部19内の気体排出物10の滞留時間を増加させて、反応物質塊24に沿った物理的及び化学的捕捉及び収集箇所との接触増大を促進可能である。
図8-図11に示される別の構成では、少なくとも一つの障害要素26a-26jは筐体16それ自体に固定されなくても良く、その代わりに筐体16の拡径部19内部に自由に配置されても良い。このような構成では、少なくとも一つの障害要素26a-26jは、各種形態の障害媒体26d-26jを含んで良い。障害要素26a-26cと同様、障害媒体26d-26jは、亜鉛からなるものでも、亜鉛によって被覆される亜鉛以外の材質からなるものであっても良い。亜鉛は容易に溶解して、通常の成形方法、失ろう方法、遠心法などを用いて複雑な形状を鋳造可能である。他の形成方法としては、切削、押し出し、焼結、スタンピング、熱間鍛造及び成形、レーザ切断などがある。あるいは、鋼鉄を用いて原型を作り、その後に、表面カバーとして亜鉛で被覆またはメッキしても良い。この障害媒体26d-jは、拡径室21全体を完全に充填、拡径室21を部分的に充填または図7A及び図7Bに関連して前述されたバッフル26cの間を充填するのに使用可能である。
図8は、少なくとも一つの障害要素26a-26jが筐体16の拡径部19内に収容される複数の破片26dである構成を示す。この構成によれば、気体排出物10は、気体排出物10が筐体16の入口部18から出口部20に向けて筐体16の拡径部19を移動する際に、隣接する破片26dとの間の空間を通過する。このために、これらの複数の破片26dは、破片26dが筐体16の拡径部19内にゆるく詰められるように、不定形となっていても良い。限定的でない例として、この複数の破片26dは、モジイ亜鉛(mossy zinc)からなっても良い。モジイ亜鉛は、ポップコーン形状の亜鉛構造であって、溶融亜鉛を水などの冷却液に浸すことによって製造される。得られる溶融亜鉛の滴が固化して、比較的小さな、体積比において極めて大きな表面積を有する球状構造となる。加えて、得られる構造の表面積は、苔状の表面組織を有する。これらの構造は、特定用途のための大きさに製造可能である。鋼鉄を加工することで、モジイ亜鉛に類似する鋼鉄版の複合球状構造を製造可能であり、これは亜鉛によって被覆されても良い。
図8中のこれらの複数の破片26dがゆるく充填されることで、曲折流路27がランダムな形状となり、これにより、気体排出物10の筐体16の拡径部19内の滞留時間が増加する。これにより、複数の破片26dを形成する反応物質塊24による気体排出物10からの汚染物質の捕捉及び除去が促進される。図8中のこの複数の破片26dは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。
図9に示される別の構成では、少なくとも一つの障害要素26a-26jが筐体16の拡径部19内に収容される複数のもつれ糸26eである。この複数のもつれ糸26eは、筐体16の拡径部19内で、毛糸状体を形成する。考えられる構成の一つでは、この複数のもつれ糸26eは、スチールウールのように折りたたまれ、丸められて非常に大きな表面積を有する塊を形成する。このもつれ糸26eそれ自体は、同じ組成、厚み及び長さであっても良く、あるいは異なる組成、厚み及び/又は長さの組み合わせであっても良い。一例では、これらの複数のもつれ糸26eは亜鉛ワイヤからなり、ランダムにもつれて亜鉛ウールを形成する。この亜鉛ウールは、様々なレベルの密度及び/又は大きさのワイヤから製造可能であり、特定の流れ制限能力を付与することができる。別の例では、これらの複数のもつれ糸26eはスチールワイヤからなり、ランダムにもつれてスチールウールを形成する。このスチールウールは亜鉛で被覆されても良い。図9中のこれらの複数のもつれ糸26eがゆるく充填されることで、曲折流路27がランダムな形状となり、これにより、筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の滞留時間が増加する。これにより、複数のもつれ糸26eを形成する反応物質塊24による気体排出物10内の汚染物質の捕捉及び除去が促進される。これらの複数のもつれ糸26eは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。
図10を参照して、少なくとも一つの障害要素26a-26jが、フィルタ素子26fである別の構成が示される。このフィルタ素子26fは中心軸17に対して、筐体16の拡径部19を横切って延びる。このフィルタ素子26fは多孔質であり、フィルタ素子26f中の孔により、気体排出物10が筐体16の入口部18から出口部20に向けて筐体16の拡径部19を流れる際に、フィルタ素子26fを通過可能とされる。焼結金属からなっても良いフィルタ素子26fのこの構成により、曲折流路27がランダムな形状となり、これにより筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の滞留時間が増加する。これにより、フィルタ素子26fを形成する反応物質塊24による気体排出物10内の汚染物質の捕捉及び除去が促進される。フィルタ素子26fの焼結金属は、亜鉛、または亜鉛によって被覆された非亜鉛材料からなるのが好ましい。このフィルタ素子26fは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。
図11を参照して、図7A及び図7Bに示される複数のバッフル26cと、異なる大きさを有し図8に示される複数の破片26dに類似する複数の破片26g-26jとの組み合わせとして、少なくとも一つの障害要素26a-26jが示される。この別の構成によれば、これら複数のバッフル26cと複数の破片26g-26jは、筐体16の拡径部19内に配置される。図7A及び図7Bと同様、図11に示される複数のバッフル26cは、筐体16の拡径部19の内面68から筐体16の拡径部19を横断して延びる。さらに、これらの複数のバッフル26cは、バッフル26cが拡径室21を複数の区画に分割するよう、互いに中心軸17に沿って離隔配置される。各バッフル26cのオリフィス28により、気体排出物10の流れがバッフル26cを通過可能となる。複数の破片26g-26jは、隣接するバッフル26cの間に配置される(すなわち、拡径室21の複数の区画内に配置される)。
図11及び図12A-図12Dに示されるように、複数の破片26g-26jにより反応物質塊24が形成される。これら複数の破片26g-26jは、異なる大きさとされ、同じ大きさのものとグループとされ(すなわち、破片26g、26h、26i、及び26jは別のグループにされ)、別の大きさの破片とはバッフル26cによって分離されても良い。例えば、破片26g-26jのグループは、破片26g-26jの大きさが筐体16の入口部18から遠ざかり、筐体16の出口部20に近づくにつれて小さくなるように配置されても良い。すなわち、各グループの破片26g-26jの大きさを徐々に変え、気体排出物10の筐体16の拡径部19内での全体の流れ方向に小さくなるものとしても良い。一つの例では、この破片26g-26jは亜鉛からなる。例えば、破片26g-26jは、溶融亜鉛を冷却液中に滴下して、非常に大きな表面積と、ランダムな苔状組織とを有するポップコーン形状の構造を作ることによって形成可能である。別の例では、異なる大きさの破片26g-26jが、一緒に混合されて、大きさに基づき分離されないものとしても良い。
図13A-図13Cには、いくつかの別の形状の障害要素26k-26mが非圧縮材として示され、これは図8及び図11に示される破片26d及び26g-26jに加えて、又はこれに代えて用いることができる。図13Aは、障害物26kが反応物質塊24を形成し、子供のおもちゃである「Jacks」に似たアスタリスク形状を有する例を示す。図13Bは、別の形状の障害要素26k-26mが、反応物質塊24を形成し、図8及び図11に示される筐体16及び26g-26jと同様、拡径部19中に配置されてもよい複数の結晶フレーク261(一つのみ示す)である例を示す。この結晶フレーク261は、雪片に類似の形状を有する。図13Cは、別の形状の障害要素26k-26mが、複数のワイヤコイル26m(一つのみ示す)であり、反応物質塊24を形成し、図8及び図11に示される筐体16及び26g-26jと同様、拡径部19中に配置されてもよい例を示す。障害物26kと複数の結晶フレーク261とは、亜鉛、又は(これらに限られないが)失ろう鍛造(lost wax forging)、及び3Dプリンティングなどを用いて亜鉛によって被覆された非亜鉛材料からなっても良い。これら複数のワイヤコイル26mは、例えば、亜鉛ワイヤをばねのように心棒コアに巻き付け、その後に巻き付けられたワイヤのコイル全体に心棒コアの全長に沿って切り込みを入れることで、個々のコイルのリングを得ることによって作られても良い。この別形状の障害要素26k-26mは、拡径室21に完全に充填されても充填されなくても良い。
上述の各種障害要素26a-26kを混ぜて各種の組み合わせを構成しても良い。この混合組み合わせの例は、図5、図6A、図6B、図7A及び図7Bに示される一つ以上のバッフル26a-26cと、図8及び図11に示される複数の破片26d及び26g-26jとを組み合わせることを含む。別の混合組み合わせの例は、図9に示される複数のもつれ糸26eと、図8及び図11に示される複数の破片26d及び26g-26jとを組み合わせることを含む。上述の各種障害要素26a-26kと活性炭などの他のフィルタ要素とを組み合わせる別の構成も可能である。活性炭は、スポンジのように、表面接触によって汚染物質を収集する。したがって、限られた量の活性炭を筐体16の拡径部19に導入して上述の各種障害要素26a-26kとともに作用させても良い。好ましくは、この障害要素26a-26kは、活性炭が拡径室21全体にわたり比較的静的に(relatively statically)配置されるよう、活性炭を筐体16の拡径部19内に保持する。この構成は、活性炭を気体排出物10の流れの中に放出する通常の排出物制御システムと反対である。活性炭が気体排出物とともに自由に流動しないことから、より効率的に活性炭を使用することが可能となる。当業者は、開示された逆ベンチュリ装置15の例が単に例示的なものであり、本願明細書に開示されたいくつかの例を超える数多くの組み合わせが可能かつ特定の用途に対応するのに望ましいことを容易に了解するであろう。
図14を参照して、導管38によって直列に接続される二つの拡径部19、19’を備える別の例示的逆ベンチュリ装置15’が示される。筐体16の一方の拡径部19は、筐体16の入口部18と導管38との間に延び、他方の拡径部19’は導管38と筐体16の出口部20との間に延びる。したがって、気体排出物10の曲折流路27は延伸される。この構成によれば、気体排出物10は、拡径部19から導管38を通って拡径部19’に送られ、拡径部19’でさらなる汚染物質が収集及び/又は捕捉される。本願開示事項は、一つないし二つの拡径部19、19’のみを直列に用いることに限られない。というのは、大量の排出物及び/又は高レベルの汚染物質を伴ういくつかの用途では、数多くの拡径部を直列に接続する必要がある可能性があるからである。
図15を参照して、並列に接続される二つの拡径部19、19’’を備える別の例示的逆ベンチュリ装置15’’が示される。スリーウェイインレットバルブ39が、気体排出物10の流れを制御し、気体排出物10を導管41または導管42に流入させる。スリーウェイアウトレットバルブ40は、導管41から導管42へと逆流させることなく、または導管42から導管41へ逆流させることなく、気体排出物10を導管41または導管42から流出させる。気体排出物10は、導管41から送られると、入口部18から拡径部19に流入し、出口部20から流出する。気体排出物10は、導管42から送られると、入口部18’’から拡径部19’’に流入し、出口部20’’から流出する。図15に示されるこの逆ベンチュリ装置15’’の利点の一つは、拡径部19、19’’の他の一方が稼働を維持できることから、拡径部19、19’’の一方にメンテナンス、修理または掃除が必要となった場合、これを離隔し、システム全体をシャットダウンすることなくオフラインとすることができることである。
時間が経つと、反応物質塊24の反応外表面25上に生じる化学反応及び/又は汚染物質の物理的捕捉により、反応物質塊24が飽和点に達し、逆ベンチュリ装置15の効率が低下する可能性がある。したがって、図15に示される構成では、筐体16の拡径部19、19’’内の反応物質塊24を取り外し、交換及び/又は洗浄することで、完全にシャットダウンすることなく、逆ベンチュリ装置を飽和前の効率に回復することが可能となる。
飽和した反応物質塊から汚染物質を取り除く工程は、具体的な汚染物質の種類、及び使われたアマルガム形成金属の種類に依存する。筐体16の拡径部19、19’’内部に配置された拡径室21、21’’へのアクセスは、用いられる障害物の種類に応じたものとなる。比較的小さな、非圧縮の障害物が用いられる場合、注入及び/又は流出(pouring and/or draining)型のアクセスが必要となる。障害物が比較的大きなブロック、プレート、バッフルまたはアセンブリである場合、適切な持ち上げ及び取り扱い方法及びアクセス(lifting and handling methods and access)が必要となる。
さらに図15を参照して、逆ベンチュリ装置15は、筐体16の拡径部19、19’’と流体を介して連通する一つ以上のスプレーノズル81を有しても良い。このスプレーノズル81は、筐体16の拡径部19、19’’内の反応物質塊24上に脱酸素酸を噴射する位置に配置される。動作時、この脱酸素剤は、反応物質塊24を活性化させるため、反応物質塊24から汚染物質を洗い流す。あるいは、ドレイン82を筐体16の拡径部19、19’’と流体を介して連通させ、使われた脱酸素剤及び汚染物質の溶液を筐体16の拡径部19、19’’から搬出しても良い。飽和した亜鉛は、それが鋼鉄上に被覆されたものであっても、固形亜鉛の構造体であっても、リサイクルして再利用可能である点で好ましい。したがって、障害物中に用いられる材料は、再利用可能である。加えて、捕捉される汚染物質の多くは、特に水銀などの重金属は、照明及び塩素製造に再利用可能である。
図16を参照すると、拡径室45が入口導管43及び出口導管44の体積と比較して大幅に大きな体積を有する別の例示的逆ベンチュリ装置15が示される。この拡径部46は、拡径部46を流れる気体排出物のための拡大された曲折流路77を提供するため、円形、四角形、三角形、楕円形、または所望の数多くの形状の事実上任意の一つであって良い(矩形形状が示される)。
図17を参照して、通常の気体排出物制御システムのブロック図が示される。気体排出物は炉47から静電式集塵装置(ESP)48、流動化気体脱硫(FGD)ユニット49、及び繊維フィルタ(FF)ユニット50に導入され、その後に煙突51を介して大気に放出される。汚染物質の第一濃縮物52が、ESP48において気体排出物から除去される。同様に、汚染物質の第二濃縮物53が、FGDユニット49において気体排出物から除去される。FGDユニット49によって生み出される第二濃縮物53は、しばしば水銀及びその他の重金属を含み、通常、排水中に流れ込む。汚染物質の第三濃縮物54は、FFユニット50において気体排出物から除去される。
図18A及び図18Bを参照すると、図17のブロック図とは、吸着剤噴射ポイントが導入され、気体排出物が上述の逆ベンチュリ装置15を通過する追加の工程が設けられた点で変形されている。図18Aでは、第一吸着剤導入ポイント55が、炉47とESP48との間に示される。これに代え、図18Bでは、第二吸着剤導入ポイント56がFGDユニット49とFFユニット50との間に示される。いずれのオプションが吸着剤にとって最も好ましいと見なされるかは、既存の構造及びプラントの状態に依存する。図18A及び図18Bに示される二つのオプション以外にも、吸着剤を導入可能な導入ポイントないし導入ポイントの組み合わせは数多くあり、したがってこれら二つのオプションは、例示的目的で示される。図18A及び図18B中の逆ベンチュリ装置15は、FFユニット50の後段かつ煙突51の前段に配置される。この逆ベンチュリ装置15は、各種用途に適したものとして、上述の例のいずれに準拠して構成されても良い。最終的に、逆ベンチュリ装置15を出てから煙突51を通じて大気に放出される最終気体排出物は、現状及び将来のEPA排出物規則及び規制に合致し、上回ることができるであろう。
図18A及び図18Bに示される方法は、炉47内で燃料を燃やして汚染物質を含む気体排出物を発生させ、この炉47からの気体排出物をESP48に流入させ、ESP48を使って気体排出物中の第一部分粒子状汚染物質を除去する工程を含む。ESP48を用いて気体排出物中の第一部分粒子状汚染物質を除去する工程により、ESP48によって気体排出物から除去される粒子状汚染物質の第一部分を含む第一濃縮物52が形成される。稼働時、ESP48は印加された静電電荷を用いて気体排出物から微細な汚染物質を除去する。この方法は、ESP48からの気体排出物をFGDユニット49に導入し、FGDユニット49を用いて気体排出物中の二酸化硫黄汚染物質を除去する工程をも含む。FGDユニット49を用いて気体排出物中の二酸化硫黄汚染物質を除去する工程により、FGDユニット49によって気体排出物から除去された二酸化硫黄汚染物質を含む第二濃縮物53が形成される。この方法は、さらにFGDユニット49からの気体排出物をFFユニット50(すなわちバグハウス)に導入して、FFユニット50を用いて気体排出物中の粒子状汚染物質の第二部分を除去する工程を含む。このFFユニット50を用いて気体排出物中の粒子状汚染物質の第二部分を除去する工程により、FFユニット50によって気体排出物から除去される粒子状汚染物質の第二部分を含む第三濃縮物54が形成される。稼働時、気体排出物がFFユニット50の一つ以上の繊維フィルタ(図示せず)を通過する際に、気体排出物から汚染粒子が除去される。
本願開示によれば、この方法は、さらにFFユニット50からの気体排出物を逆ベンチュリ装置15に送り、逆ベンチュリ装置15を用いて気体排出物中の重金属汚染物質を除去する工程を含む。逆ベンチュリ装置15を用いて気体排出物中の重金属汚染物質を除去する工程により、気体排出物は逆ベンチュリ装置15内に配置された反応物質塊を通過する(すなわち、上を流れる)。反応物質塊内のアマルガム形成金属が気体排出物中の重金属汚染物質と化学的に結合する。したがって、重金属汚染物質が反応物質塊中のアマルガム形成金属と結合する際に、反応物質塊によって逆ベンチュリ装置15中の重金属汚染物質が捕捉される。この方法では、さらに逆ベンチュリ装置15からの気体排出物を、気体排出物を周囲の大気に放出する煙突51に送る。逆ベンチュリ装置15は、比較的小さな専有面積を有し、既存のシステムの排出物制御装置48、49、50と、大気への煙突51との間に容易に調和して据え付け可能なものである点で有利である。
この方法は、吸着剤を気体排出物に噴射する工程を含んでも良い。この工程によれば、図18Aに示されるように、吸着剤は炉47とESP48との間に配置された第一吸着剤導入ポイント55において気体排出物に噴射されても良い。あるいは、図18Bに示されるように、吸着剤はFGDユニット49とFFユニット50との間に配置された第二吸着剤導入ポイント56において気体排出物に噴射されても良い。吸着剤はアマルガム形成金属を含み、気体排出物が逆ベンチュリ装置15に流入する前に、気体排出物中の重金属汚染物質の少なくとも一部と結合する。吸着剤を第一吸着剤導入ポイント55または第二吸着剤導入ポイント56において気体排出物内に噴射することによって、より多くの水銀、重金属、及び酸ガスを、以前には実現不可能なレベルでFFユニット50内で収集可能である。上述のように、アマルガム形成金属は、亜鉛、鉄、及びアルミニウムからなる群から選択されて良く、吸着剤は、例えばCZTS化合物であっても良い。吸着剤は、有害汚染物質を収集及びリサイクル可能なように、再生・活性化可能である。
図19を参照して、通常の非気体排出物制御システムのブロック図が示される。液体及び/又は液体状排出物は、沈殿池61に送られる前に、流動化気体脱硫(FGD)ユニット59から、及び/又は、湿式気体洗浄ユニット58から、石灰処理ユニット60に送られる。適切な時間経過後、この非気体排出物は、沈殿池61から乾燥廃棄64の準備用処理システム又は脱水システム62中に送られる。乾燥廃棄64の処理を通って送られた非気体排出物は、廃棄場65内で廃棄準備される。場合により、再循環システムを備える脱水システム62を通って送られた非気体排出物は、例えば、石こう及び/又はセメント製造を含んでも良い二次産業工程63内で用いられるよう準備される。沈殿池61から脱水システム62または乾燥廃棄64用の処理に送られなかった非気体排出物は、排水溝66から排出されるよう送られる。この排水溝66に放出された最終の非気体排出物は、今後何年かした後に規制されるであろう程には規制されていない。提案されるEPAの水排出物規則及び規制は、現状排水溝に放出可能な排出物と比較して極めて制限が厳しい。汚染された液体排出物を排水溝に排出する必要のある産業は、現状の排出物制御技術を有するものの、これは来るべきEPA規制を満たし及び/又は遵守する可能性が実質的にない。
図20を参照すると、図19のブロック図は、上述の吸着剤を含む一つ以上の処理槽67によって変形される。沈殿池61から非気体排出物が送られた後、これらが排水溝66に排出される前に処理槽67が配置される。図20に示される方法は、汚染物質を含む非気体排出物を収集し、この非気体排出物をFGDユニット59及び/又は湿式気体洗浄装置58に通して非気体排出物中の汚染物質の一部を除去し、このFGDユニット59及び/又は湿式気体洗浄装置58からの非気体排出物を石灰処理ユニット60に送り、かつこの非気体排出物に石灰処理ユニット60を通過させて、クラーク法によりこの非気体排出物を軟化させる工程を含む。稼働時、石灰処理ユニット60は、非気体排出物から沈殿により特定のイオン(例えば、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg))を除去する。この方法は、石灰処理ユニット60からの非気体排出物を沈殿池61に送り、非気体排出物中の汚染物質の一部を沈殿させて除去し、沈殿池61中の非気体排出物の第一部分を脱水し、脱水された副産物を二次産業工程63で使用し、沈殿池61からの非気体排出物の第二部分を除去して、この非気体排出物の第二部分に乾燥廃棄処理64を加える工程をも含む。沈殿池中の非気体排出物の第一部分を脱水し、脱水された副産物を二次産業工程63中で利用する工程においては、脱水工程は非気体排出物の第一部分を再循環する工程を含んでも良く、二次産業工程63は、例えば石こう又はセメントの製造工程を含んでも良い。沈殿池61からの非気体排出物の第二部分を除去し、この非気体排出物の第二部分に乾燥廃棄処理64を加える工程においては、乾燥廃棄処理64は非気体排出物の第二部分を廃棄場65中に堆積させる工程を含んでも良い。
本願開示において、この方法はさらに沈殿池61中の非気体排出物の第三部分を、開示された吸着剤を含む処理槽67に送る工程を含む。この吸着剤は、非気体排出物の第三部分内の重金属汚染物質と結合するアマルガム形成金属を含む。したがって、この吸着剤は、重金属汚染物質が吸着剤と結合し、非気体排出物から沈殿/析出する際に、処理槽67中の重金属汚染物質を捕捉する。この方法では、その後、非気体排出物を処理槽67から排水溝66に送って排出しても良い。処理槽67は、非気体排出物(すなわち、廃水流)が処理槽67から連続して流出可能なように設計されても良い。
本願開示の吸着剤に関し、いくつかの例示的実施形態が開示される。これらの例示的実施形態は、単なる例にすぎず、このテーマの可能な変形を網羅したリストを示すものではない。
上述のように、例示的吸着剤の一つは、元素亜鉛粉末である。亜鉛粉末は、亜鉛元素からなる。亜鉛は、粉末として、または粒体として用いられて良い。高温下で、何らかの気体排出物に用いる亜鉛粉末及び/又は粒体の有効寿命を延ばし、事前の酸化を低減及び/又は防止するのに用いられる方法の一つは、この粒体及び/又は粉末をスルファミン酸、クエン酸及び他の有機酸などの固体の酸と混合し、または固体の酸で被覆することである。この粉末/酸混合物は、気体排出物(例えば、燃焼排ガス流)に噴射され、及び/又は逆ベンチュリ装置15の適切な実施形態中に配置されても良い。
亜鉛粉末の最適粒径は、0.5ナノメートルから7,500ミクロンの範囲である。加えて、異なる大きさの粒径範囲を有する粉末混合物が、特に粒径範囲が0.5ナノメートルから7,500ミクロンである場合に有利であることが判明している。同様に、亜鉛粒体の最適粒径は、7,500ミクロンから3.0インチの範囲である。加えて、異なる大きさの粒径範囲を有する粒体混合物が、特に粒径範囲が7,500ミクロンから3.0インチである場合に有利であることが判明している。
別の例示的実施形態では、この吸着剤は、分子式Cu 2 ZnSnS 4 であるCZTSである。CZTSは、他の相の銅、亜鉛、錫及び硫黄からなっても良く、これも有利である。CZTS及び/又は関連する相の銅、亜鉛、錫及び硫黄は、化学量論的な比率で混合され、その後に機械化学配合を粉砕器(mill)中で行っても良い。さらに、このCZTSは、同じ割合のベントナイト又はゼオライトなどの粘土、及び水酸化カルシウム(CaOH)のいずれかと混合されても良い。CZTS粉末の最適粒径は、0.5ナノメートルから7,500ミクロンの範囲である。試験及び開発中に、異なる大きさの粒径範囲を有するCZTS粉末混合物が、特に粒径範囲が0.5ナノメートルから7,500ミクロンである場合に有利であることが判明している。特殊なCZTS粒体が好ましい用途では、最適な粒径は、7500ミクロンから3.0インチの範囲であることが判明している。加えて、異なる大きさの粒径範囲を有するCZTS粒体混合物が、特に粒径範囲が7,500ミクロンから3.0インチである場合に有利であることが判明している。
大部分の汚染物質について、CZTSは、上述の範囲内で最も小さな粒径で、金属相のCZTSが多量に存在する場合に最も効率的である。なお、CZTSの製造時に、銅、亜鉛、錫及び硫黄がCZTSに完全に変換されることはなく、各相(例えば、ダンバ鉱(CuZn2)及び硫化錫(SnS))の混合物となる。
CZTSの例示的な製造方法の一つでは、銅、亜鉛、錫、及び硫黄が粉砕器に特に順序を問わずに追加される。粉砕工程は、ボールミルまたは何らかの種類の摩擦粉砕器を用いて、あるいは、順次用いて所望の粒径を得る粉砕装置の組み合わせにより達成される。例示的粒径は、325標準メッシュスクリーンから100標準メッシュスクリーンの範囲である(1標準メッシュスクリーン=7500ミクロン)。得られる粒子は、さらに所定のモル比である銅:亜鉛:錫:硫黄=1.7:1.2:1.0:4.0に計量される。メッシュサイズとモル比とを確認した後、これらの粒子は粉砕されて、CZTS及びその他の相に機械化学配合される。粉砕時間は、具体的用途に応じて最適な特性を示すよう制御される。なお、粉砕工程は、不活性ガス雰囲気中で行われる、グリコールエーテル、エチレングリコール、アンモニアまたはその他のアルコールなどの適切な溶媒を添加した湿式粉砕工程または不活性ガス雰囲気中で行われる乾式粉砕工程を用いて行うことができる。
粉砕工程中、粒径分析機、SEM、XRDを用いて粒径を判定し、またはラマン法を用いて相変態比率を判定するため、断続的にサンプリングが行われる。粉砕器のボール径は重要であり、試験により、ボール-粒子重量比(ball-to-powder weight ratio)(電荷比)が少なくとも5:1である場合に最適化されることが示されている。粉砕ボールは、鋼鉄、セラミックス、ジルコニアまたはその他の最終製品を汚染することなく、サイズ及び/又は相変換を実現する材料からなるのが最も好ましい。湿式粉砕を採用する場合、CZTSは乾燥させられる。その後、CZTSは、ベントナイトまたはゼオライト、及び水酸化カルシウムを均等に混合するため、リボンブレンダー、V-ブレンダーまたはその他の適切なミキサを用いて混合される。
上述の方法によれば、吸着剤は、温度がおよそ華氏750℃以下の気体排出物中に導入される。この吸着剤は、これらに限られないが、噴射、流動床、被覆フィルタ及び捕捉などのいくつかの方法のいずれかによって気体排出物中に導入される。導入方法は、プラント中の既存の排出物制御システムに基づき、設置を容易とするよう選択可能である。便宜な方法の一つは、CZTSを活性炭の代わりに気体排出物中に噴射することであり、同じ噴射設備を変形し、または変形せずに利用可能である。
いくつかの用途では、有効に汚染物質を除去するためCZTSをベントナイトと混合する場合に、気体排出物の処理が最適化される。あるいは、非気体排出物の処理は、CZTSがゼオライトと混合される場合に最適化される。CZTSと混合される特定の材料に加え、混合物の比率は、最適な汚染物質除去能力を提供するために用途に特化されたものであっても良い。
図18A及び図18Bに示されるように、CZTSを気体排出物処理に用いる場合、繊維フィルタユニット50をCZTS導入ポイント55、56の下流に配置して、繊維フィルタユニット50によって吸着剤粒子を捕捉し、気体排出物と吸着剤との間の接触時間を増加させる。繊維フィルタユニット50の繊維フィルタ(すなわちバグ)上に吸着剤を沈着させることで、気体排出物と吸着剤との間でより長時間接触可能となり、また吸着剤を収集してその後に再生することができる。吸着剤の粒径が小さいことで、風によって塵が運ばれるように、吸着剤を気体排出物の流れに沿って送ることが可能となる。吸着剤が気体排出物の流れの中で運ばれる期間中、吸着剤は気体排出物の流れ中で移動する汚染物質と接触し、これにより汚染物質が吸着剤と化学的に反応し結合することになる。繊維フィルタユニット50に到達すると、気体排出物は繊維フィルタユニット50中のフィルタを引きつづき通過する一方、結合した吸着剤と汚染物質の粒子は、大きすぎるため、フィルタを通過できない。CZTS粒子が10ミクロン以下である場合、繊維フィルタユニット50中のフィルタを予めより大きなCZTS粒子、活性炭、タルク、石灰その他の適切な物質で被覆して、より小さなCZTS粒子がフィルタを通過しないようにする必要がある可能性がある。あるいは、より小さなミクロンサイズのフィルタを繊維フィルタユニット50に用いても良い。
非気体排出物用の他の用途では、CZTSは図20に示される処理槽67に導入されても良い。この構成では、CZTSは処理槽67に導入されて一定時間よく攪拌されるのが好ましく、その後、排出前に、非気体排出物(例えば廃水)にpH調整、凝集、及び濾過が加えられる。その後、処理槽67中のCZTSには、汚染物質をCZTSから除去する再生工程が加えられても良い。使用済みCZTSは、水銀をCZTSから濾過することにより、または真空蒸溜によって再生可能である。得られた汚染物質は、その後に他の産業で再利用可能である。CZTSにより、非気体排出物内の硝酸塩及び窒化物レベルを低減可能であるという利点も得られる。
EPAによって定立された、2016年に施行される排水規制は、空気についてのものよりもはるかに厳しい。ナノグラム/リットル(ng/L)、マイクログラム/リットル(μg/L)、及び/またはグラム/Lの単位で挙げられた現行のEPA規制のいくつかを挙げると以下の通り。水銀119ng/l;砒素(As)8μg/l;セレン(Se)10μg/l;二酸化窒素(NO2)及び硝酸塩(NO3)0.13g/l。鉛(Pb)及びカドミウム(Cd)などの他の重金属も、EPA規制レベル案に含まれる。既存プラントの多くでは、許容可能な排出規制を超える汚染レベルの排水が滞水池及び/又は他の種類の何らかのスラッジ貯水槽に送られる。CZTSは、滞水池内で、本願明細書に開示される非気体排出物を処理するのと同じ方法で固体を処理可能である。重金属のイオン形態、スラッジ組成及び/又はpHに応じて、CZTSの滞水池中の接触時間は適切に調整可能である。十分なpH調整、凝集、及びその後の濾過により、通常の排出、廃棄及び/又は他産業での利用が可能となるが、これらのいずれも以前には不可能であったものである。
なお、本明細書に開示される吸着剤は、当業種で現在用いられる活性炭を含め、遊離炭素を何ら含まない。結果として、開示される方法の副産物として生成される金属硫化物のいずれも濾過されない。したがって、これらの副産物は、石こうウォールボード及びセメント用途において、工業的価値が高い。EPAの金属硫化物濾過試験は公知であり、これらの製品への使用は良く立証されている。
活性炭は、いくつかの別構成では利用可能であるものの、これらの変形例で活性炭を利用するのが制限されるため、活性炭を排出物内に漏出させることはできない。例えば、一例では、活性炭は繊維フィルタユニット50のフィルタ中に埋め込まれる。この活性炭は、気体排出物の流れに自由に漏出することはない。別の形の活性炭の限定的な使用としては、活性炭で結晶形態のCZTSを被覆し、1.0ナノメートル以下の厚みの炭素薄膜を有するCZTSを製造することも可能である。これにより、極めて小さな水銀の金属蒸気粒子の捕捉が促進される。同様に、結晶状のCZTSをナノメートル状のゼオライト薄膜またはその他の被覆材で被覆し、特定用途のための特定の有害汚染物質を対象とすることも可能である。再言するが、この例での活性炭は、気体排出物の流れに自由に漏出することはない。図33に示される別の構成では、逆ベンチュリ型流動床装置は、CZTS吸着剤、CZTS合金吸着剤、及び/又はCZTS混合物吸着剤用の一連の吸着剤処理サブシステムとしての吸着剤を洗浄しリサイクルするための設備を備える。このようなCZTS混合物吸着剤としては、CZTSによって被覆された粉末状酸化鉄(GFO)、及びCZTSによって被覆された炭素系吸着剤が挙げられるが、これらに限られない。
図21を参照して、排出物から公知の排出物制御システムによって除去された汚染物質の割合と、本願で開示された逆ベンチュリ装置および方法によって除去された汚染物質の割合とがグラフによって示される。EPAによって、現在、90%の汚染物質レベル78が気体排出物について定められる。既存の排出物制御システム79は、有害汚染物質の88%から90%を除去するのに有効である。しかし、EPAは数年にわたって必要な最低汚染物質除去割合を引き上げており、既存の排出物制御システムの多くがこの要件を満たすことができず、また多くの他の既存の排出物制御システムは、現行の技術の下で利用可能な最大除去能力において稼働する際に要件を満たすことができるのみである。
さらに図21を参照すると、例示的排出物制御システム80は、本願明細書に開示される逆ベンチュリ装置、吸着剤及び/又は方法に基づく新たな排出物制御システム、又は本願明細書に開示される逆ベンチュリ装置、吸着剤及び/又は方法を含むことで変形及び補強された既存の排出物制御システムのいずれかであって良い。試験により、この例示的排出物制御システム80は、現行のEPA規制レベルを遙かに上回る有害汚染物質の少なくとも98%を除去することが可能であり、有効であることが確認されている。
図22及び図24に示される例示的な排出物制御方法では、汚染気体源150が、一つ以上のプレ流動床フィルタ151を介してシステムに導入され、流動床152、一つ以上のポスト流動床フィルタ153を通り、システム排出部154を経て、環境的に制御された形で気体排出物を煙突155を通して排出する。なお、汚染気体源150を最初に一つ以上のプレ流動床フィルタ151を通すことは必ずしも必要ではない。しかし、特定の用途に応じて、一つ以上のプレ流動床フィルタ151が必要となる場合もある。
流動床152は逆ベンチュリ形状を有し、具体的な長さLと径Dとの比が、最小2.9:1、最大9.8:1とされている。この比率は、汚染気体源150が、反応物質164などの特殊な吸着剤が充填された流動床152中により長く滞留するために最適化されたものである。反応物質164は、銅、亜鉛、錫、硫黄(CZTS)化合物及び/又はその合金からなる吸着剤である。流動床152の長さLの径Dに対する好ましい比率の例は、4.4:1であり、これは試行錯誤を通じて決定される。
好ましくは、流動床152は、略円形の断面を有する。図24には示されないが、本願明細書に開示される一つ以上の各種バッフル及び/又は特定用途のフロー制限障害物を流動床152が備えても良い。流動床152は、略外側に延びる凸状端168および169を有し、反応物質164を通る乱流を最小限にしつつ、滞留時間の延長を促進する。汚染気体源150のフローが流入ポート165で流動床152に流入する際、反応物質164との密接な接触が開始され、ランダムな非乱流166が生じる。ランダムな非乱流166は、略外側に延びる凸状端168および169により自らの側に逆流し、これにより非乱流166が出口ポート167から流動床152を出る前の流動床152内での滞留時間が延長される。非乱流166を促進する反応物質164は、汚染気体源150のランダムな曲折流路を形成する。なお、流動床152の長さLは、凸状端168および169の長さを含まない。
流動床152は、吸着剤洗浄ステーション156につながる側面流出孔170を有する。吸着剤洗浄ステーション156は、消耗した吸着剤157をシステムから除去して廃棄することが可能である。加えて、反応物質164により汚染気体源150から捕捉され、吸着剤洗浄ステーション156で反応物質164から分離された汚染物質158は廃棄及び/又はリサイクル可能である。吸着剤洗浄ステーション156は、洗浄された反応物質164を吸着剤戻りポート159を介して流動床152に戻す。大量再充填吸着剤容器168により、必要に応じて除去・消耗した吸着剤157と置き換えるための補充分の反応物質164が供給される。システム排出部154からは、排気用煙突155から環境的に制御された形で排出される気体排出物が得られる。捕捉された廃棄物160をさらに排出する機構を、追加吸着剤リサイクルサブシステム(図33)として設けても良い。
図23及び図24に示される例示的な排出物制御方法では、汚染非気体源161が、一つ以上のプレ流動床フィルタ151を介してシステムに導入され、流動床152、一つ以上のポスト流動床フィルタ153を通り、システム排出部154を経て、環境的に制御された放出162によって非気体排出物が排出される。なお、汚染非気体源161を最初に一つ以上のプレ流動床フィルタ151を通すことは必ずしも必要ではない。しかし、特定の用途に応じて、一つ以上のプレ流動床フィルタ151が必要となる場合もある。
流動床152は逆ベンチュリ形状を有し、具体的な長さLと径Dとの比が、最小2.9:1、最大9.8:1とされている。この比率は、汚染非気体源161が、反応物質164などの特殊な吸着剤が充填された流動床152中により長く滞留するために最適化されたものである。反応物質164は、銅、亜鉛、錫、硫黄(CZTS)化合物及び/又はその合金からなる吸着剤である。流動床152の長さLの径Dに対する好ましい比率の例は、4.4:1であり、これは試行錯誤を通じて決定される。
流動床152は、略外側に延びる凸状端168および169を有し、反応物質164を通る乱流を最小限にしつつ、滞留時間の延長を促進するのが好ましい。汚染非気体源161のフローが流入ポート165で流動床152に流入する際、反応物質164との密接な接触が開始され、ランダムな非乱流166が生じる。ランダムな非乱流166は、略外側に延びる凸状端168および169により自らの側に逆流し、これにより出口ポート167から流動床152を出る前の流動床152内での滞留時間が延長される。非乱流166を促進する反応物質164は、汚染非気体源161のランダムな曲折流路を形成する。なお、流動床152の長さLは、凸状端168および169の長さを含まない。
好ましくは、流動床152は、略円形の断面を有する。図24には示されないが、本願明細書に開示される一つ以上の各種バッフル及び/又は特定用途のフロー制限障害物を流動床152が備えても良い。流動床152は、吸着剤洗浄ステーション156につながる側面流出孔170を有する。吸着剤洗浄ステーション156は、消耗した吸着剤157をシステムから除去して廃棄することが可能である。加えて、反応物質164により汚染非気体源161から捕捉され、吸着剤洗浄ステーション156で反応物質164から分離された汚染物質158は廃棄及び/又はリサイクル可能である。吸着剤洗浄ステーション156は、洗浄された反応物質164を吸着剤戻りポート159を介して流動床152に戻す。大量再充填吸着剤容器168により、必要に応じて除去・消耗した吸着剤157と置き換えるための補充分の反応物質164が供給される。システム排出部154からは、環境的に制御された放出162によって排出される非気体排出物が得られる。捕捉された廃棄物163の追加排出部も設けられる。
図25は、気体排出物250を一つ以上のプレフィルタ251、流動床253、一つ以上のポストフィルタ255、システム排出部256を通過させ、最終的に排気煙突257から、及び/又は排出物廃棄プロセス262を通じて制御して排出された気体排出物として排出する例示的方法を示す。流動床253は、長手面290によって二等分される。流入ポートP3および出口ポートP4は、流動床253が長手面290と揃った際に気体排出物が流入し、排出されるように構成される。流動床253内部の障害物(図示せず)により、気体排出物が流入ポートP3を通って流入し、出口ポートP4を通って排出される際に特に適した、好適な曲折した流路が形成される。流入ポートP3および出口ポートP4は、流動床253の長手面290の上方に配置される。
図25に示されるように、流動床253はトラック254上に搭載可能であり、回転軸252を中心として流動床253を傾斜させるように構成される。気体排出物が流動床253中で処理される際、流動床253の長手面290は、略水平である。吸着剤洗浄ステーション258は、流動床253の流出孔P5と連通し、吸着剤洗浄ステーション258において、吸着剤によって捕捉された汚染粒子が除去される。除去された汚染物質は、ステーション261によってリサイクルされ、または廃棄可能である。消耗した吸着剤は、ステーション259によって廃棄され、洗浄された吸着剤はリサイクルされて、吸着剤戻りステーション260から戻りポートP6を通じて流動床253に戻される。
図26には、汚染された非気体排出物295を、一つ以上のプレフィルタ251、流動床253、一つ以上のポストフィルタ255、システム排出部256を通過させ、最終的に環境的に制御された非気体排出273として、及び/又は排出物廃棄プロセス274を経由して排出する例示的方法が示される。流入ポートP2および出口ポートP1は、非気体排出物が流入し、排出されるように構成される。流動床253内部の障害物(図示せず)により、非気体排出物が流入ポートP2および出口ポートP1を通って導入される際に特に適した、好適な曲折した流路が形成される。流入ポートP2および出口ポートP1は、流動床253の長手面290によって二等分される(すなわち、流動床253の長手面290と揃って配置される)。
非気体排出物が流動床253中で処理される際、流動床253の長手面290は、略垂直である。吸着剤洗浄ステーション258は、流動床253の流出孔P5と連通し、吸着剤洗浄ステーション258において、吸着剤によって捕捉された汚染粒子が除去される。除去された汚染物質は、ステーション261によってリサイクルされ、または廃棄可能である。消耗した吸着剤は、ステーション259によって廃棄され、洗浄された吸着剤はリサイクルされて、吸着剤戻りステーション260から戻りポートP6を通じて流動床253に戻される。
図27には、開示される好適な反応性CZTS合金吸着剤341と、活性炭342およびゼオライト343を含むその他の吸着剤とを比較した表が示される。汚染物質367は、窒素368、リン369、重金属370、硫黄371、水銀372、およびセレン酸塩373を含む主要な種類が挙げられる。汚染物質367は、さらに気体排出物344、346、および348を非気体排出物345、347、および349と比較して表にした各吸着剤とともにリスト化される。
反応性CZTS合金吸着剤341は、気体排出物344及び/又は非気体排出物345中の汚染物質367の捕捉及び除去にあたって有効であることがテストによって確認される。これに対し、活性炭342は、気体排出物346及び/又は非気体排出物347中の汚染物質367の捕捉及び除去にあたって有効ではない。同様に、ゼオライト343は、気体排出物348及び/又は非気体排出物349中の汚染物質367の捕捉及び除去にあたって有効ではない。
図28に、本願開示の反応性CZTS合金吸着剤351及び腐食剤350、酸化第二鉄355、およびゼオライト356を含むその他の吸着剤を含む吸着剤の拡張リストが示される。反応性CZTS合金吸着剤351は、CZTS硫黄合金352、CZTSセレン酸塩合金353、および酸化第一鉄CZTS合金354を含む。CZTS合金吸着剤351は、下記汚染物群の全てと効果的に反応する。セレン酸塩357、完全イオン化硫黄358、完全イオン化窒素359、および完全イオン化リン360。反応性CZTS合金吸着剤351は、これら汚染物質を、気体および非気体排出物双方から捕捉し除去可能である。
これに対し、腐食剤350は、完全イオン化硫黄358に対してのみ効果的である。酸化第二鉄355は、セレン酸塩357に対してのみ効果的であり、完全窒素359および完全イオン化リン360とは非常に遅い反応特性を有(し、かつ非気体排出物のみに作用)する。ゼオライト356は、完全イオン化窒素359および完全イオン化リン360に対してのみ効果的である。したがって、腐食剤350、酸化第二鉄355、およびゼオライト356等の公知の吸着剤は、本明細書に開示される反応性CZTS合金吸着剤351の広範囲な特性と比べて、限定的な効果特性を有する。公知の吸着剤が一定レベルの有効性を持つ場合でも、これらは全て本明細書に開示される反応性CZTS合金吸着剤351の有効レベルよりも低い。
図29において、表364は、窒素368、リン369、重金属370、硫黄371、水銀372、およびセレン酸塩373を含む汚染物質367を捕捉し除去する排出物制御システムに用いられた後に後処理される先行技術の吸着剤365の能力を示す。気体排出物374及び/又は非気体排出物375中の先行技術の吸着剤から汚染物質367を分離する能力は非常に低く、気体排出物374中の窒素368を除いて事実上存在しない。同様に、表364は、汚染物質367の分離後の先行技術の吸着剤366の再利用能力も、窒素368を含む気体排出物376を除いて事実上存在しないことを示す。
図30において、表378は、窒素368、リン369、重金属370、硫黄371、水銀372、およびセレン酸塩373を含む汚染物質367を捕捉し除去する排出物制御システムに用いられた後に後処理される本明細書開示の反応性CZTS合金吸着剤339の能力を示す。気体排出物374及び/又は非気体排出物375中の汚染物質367を開示される反応性CZTS合金吸着剤339から分離できることは特に有利である。というのは、これは汚染物質367がより容易に廃棄またはリサイクル可能であることを意味し、また反応性CZTS合金吸着剤339が排出物制御システム(表378に示す)で再利用可能であるからである。具体的に、表378は、本明細書開示の反応性CZTS合金吸着剤340が気体排出物376および非気体排出物377中の汚染物質367から分離された後に再利用できることを示す。
図31において、ブロック図により気体排出物250から汚染物質を除去するシステムおよび方法が示される。気体排出物250は、工程379においてモニターおよび分析され、気体排出物250中の汚染物質の種類およびレベルが判定される。モニタリングは、定期的な間隔で行われるシステマティックな断続的抜き取り検査、または連続的インラインモニタリングおよび分析であって良い。工程379によって判定された気体排出物250中に存在する汚染物質の種類及び/またはレベルに基づき、排出物のフローは、気体排出物250が適切なプレフィルタ381、382、383、及び/又は384にさらに導かれるように、プレフィルタ流入マニホルド380を通して送られる。適切なプレフィルタ381、382、383、及び/又は384は、図28に示される選択方法により選択される。
図31に示されるプレフィルタには、図28に示される反応性CZTS合金吸着剤351が充填される。例えば、プレフィルタ381には図28に示される硫黄のCZTS合金352が充填される。プレフィルタ382には図28に示されるセレン酸塩のCZTS合金353が充填される。プレフィルタ383には図28に示される酸化第一鉄のCZTS合金354が充填される。プレフィルタ384にはCZTS合金吸着剤352、353及び/又は354の組み合わせが充填される。気体排出物250に含まれる具体的なレベル及び/又は種類の汚染物質を効果的に処理するよう組み合わされた、それぞれ異なる組み合わせのCZTS合金吸着剤352、353、及び/又は354が充填された追加のプレフィルタをプレフィルタ流入マニホルド380に追加しても良い。
汚染された気体排出物250が適切なプレフィルタに送られた後、プレフィルタ流出マニホルド385は、排出物を流動床253に送る。気体排出物250については、流動床253の筐体は、架台271と略平行な向きに配置される。汚染物質は工程258で吸着剤から分離され、吸着剤戻りポート260を通って流動床253に戻される。
気体排出物250が流動床253を出た後、ポストフィルタモニタリング工程386により気体排出物250に残存する汚染物質の新たなレベル及び/又は種類が判定され、気体排出物250がポストフィルタ流入マニホルド387に導かれる。適切なポストフィルタ388、389、390、及び/又は391は、図28に示される選択方法により選択される。図31に示されるポストフィルタには、図28に示される反応性CZTS合金吸着剤351が充填される。例えば、ポストフィルタ388には図28に示される硫黄のCZTS合金352が充填される。ポストフィルタ389には図28に示されるセレン酸塩のCZTS合金353が充填される。ポストフィルタ390には図28に示される酸化第一鉄のCZTS合金354が充填される。ポストフィルタ391にはCZTS合金吸着剤352、353及び/又は354の組み合わせが充填される。ポストフィルタ流出マニホルド392は、気体排出物250を気体システム排出部256aに送る。気体システム排出部256aでは、気体排出物250の一部が制御された気体排出煙突257から排出され、気体排出物250の一部が適切な廃棄物処理工程262により排出される。
気体排出物250に含まれる具体的なレベル及び/又は種類の汚染物質を効果的に処理するよう組み合わされた、それぞれ異なる組み合わせのCZTS合金吸着剤352、353、及び/又は354が充填された追加のポストフィルタをポストフィルタ流入マニホルド387に追加しても良い。
全てのプレフィルタ381、382、383、384およびポストフィルタ388、389、390、391には、吸着剤洗浄工程258および吸着剤戻りポート260を介して別々に送られる。工程258は、CZTS合金吸着剤351からの汚染物質を分離して、汚染物質をリサイクル及び/又は適切に回収可能として廃棄261する工程を含む。一切の消耗したCZTS合金吸着剤351は、廃棄工程259を通じて廃棄可能である。工程258後に、特定のCZTS合金吸着剤351の交換を各具体的なプレフィルタ381、382、383、384及び/又はポストフィルタ388、389、390、391で行っても良い。吸着剤洗浄工程258から、およびプレフィルタ381、382、383、384及び/又はポストフィルタ388、389、390、391から吸着剤洗浄工程258に吸着剤を送るための具体的な経路図及び/又は回路図は示されない。
図32において、ブロック図により非気体排出物295から汚染物質を除去するシステムおよび方法が示される。非気体排出物295は、工程379においてモニターおよび分析され、非気体排出物295中の汚染物質の種類およびレベルが判定される。モニタリングは、定期的な間隔で行われるシステマティックな断続的抜き取り検査、及び/又は連続的インラインモニタリングおよび分析であって良い。工程379によって判定された非気体排出物295中に存在する汚染物質の種類及び/またはレベルに基づき、排出物のフローは、非気体排出物295が適切なプレフィルタ381、382、383、及び/又は384にさらに導かれるように、プレフィルタ流入マニホルド380を通して送られる。適切なプレフィルタ381、382、383、及び/又は384は、図28に示される選択方法により選択される。
図32に示されるプレフィルタには、図28に示される反応性CZTS合金吸着剤が充填される。例えば、プレフィルタ381には図28に示される硫黄のCZTS合金352が充填される。プレフィルタ382には図28に示されるセレン酸塩のCZTS合金353が充填される。プレフィルタ383には図28に示される酸化第一鉄のCZTS合金354が充填される。プレフィルタ384にはCZTS合金吸着剤352、353及び/又は354の組み合わせが充填される。非気体排出物295に含まれる具体的なレベル及び/又は種類の汚染物質を効果的に処理するよう組み合わされた、それぞれ異なる組み合わせのCZTS合金吸着剤352、353、及び/又は354が充填された追加のプレフィルタをプレフィルタ流入マニホルド380に追加しても良い。
汚染された非気体排出物295が適切なプレフィルタに送られた後、プレフィルタ流出マニホルド385は、排出物を流動床253に送る。非気体排出物295については、流動床253の筐体は、架台271と略垂直な向きに配置される。汚染物質は工程258で吸着剤から分離され、吸着剤戻りポート260を通って流動床253に戻される。
非気体排出物295が流動床253を出た後、ポストフィルタモニタリング工程386により非気体排出物295に残存する汚染物質の新たなレベル及び/又は種類が判定され、非気体排出物295がポストフィルタ流入マニホルド387を通って送られる。適切なポストフィルタ388、389、390、及び/又は391は、図28に示される選択方法により選択される。図32に示されるポストフィルタには、図28に示される反応性CZTS合金吸着剤351が充填される。例えば、ポストフィルタ388には図28に示される硫黄のCZTS合金352が充填される。ポストフィルタ389には図28に示されるセレン酸塩のCZTS合金353が充填される。ポストフィルタ390には図28に示される酸化第一鉄のCZTS合金354が充填される。ポストフィルタ391にはCZTS合金吸着剤352、353及び/又は354の組み合わせが充填される。ポストフィルタ流出マニホルド392は、非気体排出物295を非気体システム排出部256bに送る。非気体システム排出部256bでは、非気体排出物295の一部が環境的に制御された非気体排出273として排出され、非気体排出物295の一部が適切な廃棄物処理工程262により排出される。非気体排出物295に含まれる具体的なレベル及び/又は種類の汚染物質を効果的に処理するよう組み合わされた、それぞれ異なる組み合わせのCZTS合金吸着剤352、353、及び/又は354が充填された追加のポストフィルタをポストフィルタ流入マニホルド387に追加しても良い。
全てのプレフィルタ381、382、383、384およびポストフィルタ388、389、390、391には、吸着剤洗浄工程258および吸着剤戻りポート260を介して分離配置される。工程258は、CZTS合金吸着剤351からの汚染物質を分離して、汚染物質をリサイクル及び/又は適切に回収可能として廃棄261する工程を含む。一切の消耗したCZTS合金吸着剤351は、廃棄工程259を通じて廃棄可能である。工程258後に、特定のCZTS合金吸着剤351の交換を各具体的なプレフィルタ381、382、383、384及び/又はポストフィルタ388、389、390、391で行っても良い。吸着剤洗浄工程258から、およびプレフィルタ388、389、390、391及び/又はポストフィルタ388、389、390、391から吸着剤洗浄工程258に吸着剤を送るための具体的な経路図及び/又は回路図は示されない。
図33には、例示的な排出物制御システムが示される。汚染された排出物は、流入ポート165を介して流動床152に導入される。なお、特定の用途での必要性に応じて、排出物は最初に一つ以上のプレ流動床フィルタ151(図22及び図23)を通過しても良い。
流動床152は逆ベンチュリ形状を有する筐体16を有し、その具体的な長さLと径Dとの比が、最小2.9:1、最大9.8:1の間とされている。この比率は、汚染された排出物が、一種以上の吸着剤を含む特殊な反応物質164が充填された流動床152中により長く滞留するために最適化されたものである。流動床152の長さLの径Dに対する好ましい比率の例は、4.4:1であり、これは試行錯誤を通じて決定される。特定の用途での必要性に応じて、一つ以上の例示的流動床152を直列または平行に連結しても良い。
好ましくは、流動床152は、略円形の断面を有する。図33には示されないが、本願明細書に開示される一つ以上の各種バッフル及び/又は特定用途のフロー制限障害物を流動床152が備えても良い。流動床152は、略外側に延びる凸状端168、169を有し、反応物質164を通る乱流を最小限にしつつ、滞留時間の延長を促進する。汚染された排出物のフローが流入ポート165で流動床152に流入する際、反応物質164との密接な接触が開始され、ランダムな非乱流166が生じる。ランダムな非乱流166は、略外側に延びる凸状端168、169により自らの側に逆流し、これにより非乱流166が出口ポート167から流動床152を出る前の流動床152内での滞留時間が延長される。非乱流166を促進する反応物質164は、汚染された排出物のランダムな曲折流路を形成する。なお、流動床152の長さLは、凸状端168、169の長さを含まない。
流動床152は、動作パラメータについてのデータ、状態およびフィードバックを提供する少なくとも一つのモニタリングセンサステーション421(すなわち、第一モニタリングセンサ)を備える。モニタリングセンサステーション421は、排出フローレベル、圧力、速度、温度、及びその他多くの排出物制御システムに関する関連パラメータを監視するよう構成される。フィードバック情報に基づき、この装置によりいくつかの自動調整が行われるが、他のプロセス及び/又はシステムパラメータは手動調整を要する可能性がある。モニタリングセンサステーション421は、流動床152内部の吸着剤の効率についての情報を提供し、いつ吸着剤を洗浄し、及び/又は再生するかの判断を補助する。
本願開示の例示的実施形態において、流動床152は、それぞれ吸着剤リサイクルサブシステム400、401、402につながる少なくとも一つの側面流出孔403、409、415を有する。図33に示される吸着剤リサイクルサブシステム400、401、402は流動床152の外部に配置されるが、これに代えて流動床152の内部に設置されても良い。
流動床152は、動作パラメータについてのデータ、状態およびフィードバックを提供する少なくとも一つのクローズドループ吸着剤出口ポートモニタリングセンサステーション422及び少なくとも一つのクローズドループ吸着剤戻りポートモニタリングセンサステーション423を備える。モニタリングセンサステーション422は、排出フローレベル、圧力、速度、温度、及びその他多くの排出物制御システムに関する関連パラメータを監視するよう構成される。フィードバック情報に基づき、プログラマブルな装置によりいくつかの自動調整が行われるが、他のプロセス及び/又はシステムパラメータは手動調整を要する可能性がある。モニタリングセンサ423は、吸着剤が出口ポート403、409、または415の一つを通過する際、およびサブシステム400、401、または402に流入する際、吸着剤の状態を識別する。モニタリングセンサステーション423は、排出フローレベル、圧力、速度、温度、及びその他多くの排出物制御システムに関する関連パラメータを監視するよう構成される。
フィードバック情報に基づき、プログラマブルな装置によりいくつかの自動調整が行われるが、他のプロセス及び/又はシステムパラメータは手動調整を要する可能性がある。モニタリングセンサ423は、洗浄及び/又は再生後に吸着剤が、サブシステム400、401、または402の戻りポート407、414、または420の一つを通過する際、吸着剤の状態を識別する。モニタリングセンサステーション424(すなわち第二モニタリングセンサ)は、排出フローレベル、圧力、速度、温度、及びその他多くの排出物制御システムに関する関連パラメータを監視するよう構成される。フィードバック情報に基づき、プログラマブルな装置によりいくつかの自動調整が行われるが、他のプロセス及び/又はシステムパラメータは手動調整を要する可能性がある。モニタリングセンサ424は、洗浄及び/又は再生工程が行われるとき、吸着剤がサブシステム400、401、または402内の各ステーション404、410、または416で処理される際、吸着剤164の状態及び最終的な体積を監視する。モニタリングセンサ421、422、423、424は、互いに協働して処理条件及び/又はパラメータ調整を行い、排出物制御システム内の各ステーションでの一貫性及び最適な吸着剤の効率を達成・維持する。サブシステム400、401、402内の吸着剤を監視することで、各ステーション408、413、および419が、いつ、およびどの程度の量の補充吸着剤を必要とするかが判定される。
別の例示的実施形態(図示略)においては、洗浄及び/又は再生サブシステムが流動床152内部に設置・構成される。この構成では、モニタリングセンサ421、422、423、424および吸着剤リサイクルサブシステム400、401、402の機能は、流動床152の内部で発揮される。
図33をさらに参照すると、流動床152には、CZTS、CZTS合金、CZTS混合物、またはこれら3つのカテゴリーの吸着剤の何らかの組み合わせである吸着剤が充填される。CZTSは、4つの元素成分(銅、亜鉛、錫、硫黄)の化合物である。これらの元素は、同種の原子からなる純粋な化学的物質である。CZTS化合物は、固定された割合で化学的に結合し、安定した化合物を形成する銅、亜鉛、錫、及び硫黄の原子からなる。元素は、化学反応によっては、より単純な物質に分解することはできない。化合物は、化学的方法及び/又は化学反応によって、より単純な物質に分離及び/又は分解することができる。原子の電子が、化合物が形成される際に、元素間で共有される。
合金は、その少なくとも一方が金属である二種以上の化学元素からなる。CZTS合金は、銅、亜鉛、錫及び硫黄の4つの元素、並びに少なくとも一種の金属である元素または化合物を含有してCZTS合金を形成する。この少なくとも一種の金属または化合物の電子は、CZTS化合物と共有され、合金としての新たな化合物を形成する。
CZTS混合物は、少なくとも一種の追加元素又は化合部と組み合わせたCZTS化合物からなる。しかし、CZTS合金とは対照的に、CZTS化合物と少なくとも一種の追加金属元素または化合物との電子は、共有されない。CZTS混合物の成分は、原子の電子を共有しない。混合物のよくある例は、塩化合物(NaCl)を水化合物(H2O)に溶解させることである。この混合物は溶液になるが、塩と水との原子は、互いの間で電子を共有しない。したがって、新たな化合物は形成されず、塩と水の二つの化合物は、化学結合を生じることなく単純に混合されるのみである。
流動床152にCTZS吸着剤からなる反応物質164が充填されると、吸着剤リサイクルサブシステム400により、CTZS吸着剤の最適動作状態が維持される。吸着剤排出ポート403を通じて、吸着剤は吸着剤リサイクルステーション404内に移動可能である。サブシステム400内のこの吸着剤リサイクルステーション404は、洗浄及び再生プロセスの一部としてCZTS吸着剤から汚染物質を分離する一種以上の化学試薬を含む。限定的ではない例として、吸着剤リサイクルステーション404内で用いられるこの化学試薬は、脂肪族アルコールの群から選択されても良い。消耗及び/又は損耗したCZTS吸着剤は、吸着剤廃棄ステーション405を通じて廃棄可能である。排出物から除去された排出物汚染物質は、汚染物質廃棄ポート406を通じて各種産業で用いられるようリサイクル可能である。新たな/フレッシュな吸着剤の容器などの大量再充填ステーション408により、排出物から汚染物質を除去する間に除去及び/又は失われた吸着剤と置き換えるためのCZTS吸着剤の補充分が供給される。CZTS吸着剤戻りポート407において、流動床152に戻るクローズドループが完結する。
CZTSの洗浄及び/又は再生は、グリセリンなどの化合物を用いて行うことができる。リンを含む脂質は、リンが本質的に汚染物質そのものであることから、上手く機能しない。pHの低い脂質は、CZTSを分解し、硫化水素(H2S)を生成して、吸着剤を硫黄欠乏状態とする。したがって、pHの低い脂質を効率的に用いるには、追加再生工程が必要となる。テストの結果、CZTSの酸による劣化を防ぐための最低な最適pH範囲は、6.49から7.73の間であることが分かっている。さらにテストの結果、CZTSの塩基による劣化を防ぐため、pHは、最大9.05に限定されることが分かっている。糖脂質は、その相対粘度が低く吸着剤との接触を容易に最大化でき、洗浄及び/又は再生プロセスが完了した後、特に加熱された場合に、吸着剤から容易に除去/分離できることから好ましい。糖脂質は、また水溶性であり、希釈溶液を使用可能である。水酸基が結合した炭素原子を有する脂質が、CZTSの洗浄及び/又は再生用の最適な脂質として好ましい。
グリセリンの代わりに、熱水に溶かした長鎖アルコール(セチル及びステアリルアルコール)を用いることは、CZTSを洗浄及び/又は再生するにあたって有益である。しかし、グリセリンは、全ての他の公知のCZTS洗浄及び/又は再生物質より好ましい。
水銀などの捕捉された汚染物質は、化合物に溶解可能である。したがって、汚染物質で飽和したCZTSに洗浄及び/又は再生ステーション404内で噴射することで、汚染物質をCZTSから抽出し分離することができる。溶解可能な汚染物質を含む化合物をCZTSから分離した後、蒸気リンス及び/又は熱水リンスが行われて、CZTSの再生プロセスが完了する。リンス工程は、加圧リンスでも、重力流リンス(gravity flow rinse)でも良い。このプロセスにより、CZTSから全ての汚染物質が洗浄され、CZTSを元の状態に再生することから、CZTSを戻りポート407を通じて流動床152に戻すことができる。
このプロセスによれば、化合物が、最適温度である85℃から110℃の間に加熱される。加熱された化合物は、その後飽和したCZTS上に噴射される。接触時間に基づき、化合物を加熱する最低有効温度である常温から5℃高い温度と、上限有効温度である140℃とが、CZTSを洗浄及び/再生するのに有効である。
化合物を用いて汚染物質をCZTSから分離する、洗浄及び/又は再生ステーション404内に一体化可能な別のプロセスは、水銀を蒸留および揮発可能であることから、真空乾燥機を用いることである。汚染物質を真空乾燥機中で揮発させた後、この汚染物質をフィルタ及び/又は洗浄装置中で捕捉可能である。洗浄装置及びフィルタは、希釈した単純脂質中で飽和した場合に特に有効となる可能性がある。
CZTSから分離された汚染された化合物は、汚染物質廃棄ポート406から排出後、汚染物質を通常の工業プロセスにより化合物から分離するプロセスを通じてリサイクル可能である。汚染物質の分離後、消耗した化合物は焼却可能であり、汚染物質は工業用にリサイクルし、及び/又は適切に廃棄するため、別途回収される。洗浄及び/又は再生プロセス中の取り扱いのため、CZTSが失われた場合、大量再充填ステーション408により、流動床152で適切な体積になるようCZTSを回復させる。
流動床152にCTZS合金吸着剤からなる反応物質164が充填されると、吸着剤リサイクルサブシステム401により、CTZS合金吸着剤の最適動作状態が維持される。吸着剤排出ポート409を通じて、吸着剤は吸着剤リサイクルステーション410内に移動可能である。サブシステム401内のこの吸着剤リサイクルステーション410は、洗浄及び再生プロセスの一部としてCZTS合金吸着剤から汚染物質を分離する一種以上の化学試薬を含む。限定的ではない例として、吸着剤リサイクルステーション410内で用いられるこの化学試薬は、脂肪族アルコールの群から選択されても良い。消耗及び/又は損耗したCZTS合金吸着剤は、ステーション411を通じて廃棄可能である。排出物から除去された排出物汚染物質は、汚染物質廃棄ポート412を通じて各種産業で用いられるようリサイクル可能である。大量再充填ステーション413により、排出物から汚染物質を除去する間に除去及び/又は失われた吸着剤と置き換えるためのCZTS合金吸着剤の補充分が供給される。CZTS合金吸着剤戻りポート414において、流動床152に戻るクローズドループが完結する。
CZTS合金の洗浄及び/又は再生は、グリセリンなどの化合物を用いて行うことができる。リンを含む脂質は、リンが本質的に汚染物質そのものであることから、上手く機能しない。pHの低い脂質は、CZTS合金を分解し、硫化水素(H2S)を生成して、吸着剤を硫黄欠乏状態とする。したがって、pHの低い脂質を効率的に用いるには、追加再生工程が必要となる。テストの結果、CZTS合金の酸による劣化を防ぐための最低な最適pH範囲は、6.49から7.73の間であることが分かっている。さらにテストの結果、CZTS合金の塩基による劣化を防ぐため、pHは、最大9.05に限定されることが分かっている。糖脂質は、その相対粘度が低く吸着剤との接触を容易に最大化でき、洗浄及び/又は再生プロセスが完了した後、特に加熱された場合に、吸着剤から容易に除去/分離できることから好ましい。糖脂質は、また水溶性であり、希釈溶液を使用可能である。水酸基が結合した炭素原子を有する脂質が、CZTS合金の洗浄及び/又は再生用の最適な脂質として好ましい。
グリセリンの代わりに、熱水に溶かした長鎖アルコール(セチル及びステアリルアルコール)を用いることは、CZTS合金を洗浄及び/又は再生するにあたって有益である。しかし、グリセリンは、全ての他の公知のCZTS合金の洗浄及び/又は再生物質より好ましい。
水銀などの捕捉された汚染物質は、化合物に溶解可能である。したがって、汚染物質で飽和したCZTS合金に洗浄及び/又は再生ステーション410内で噴射することで、汚染物質をCZTS合金から抽出し分離することができる。溶解可能な汚染物質を含む単純脂質をCZTS合金から分離した後、蒸気リンス及び/又は熱水リンスが行われて、CZTS合金の再生プロセスが完了する。リンス工程は、加圧リンスでも、重力流リンス(gravity flow rinse)でも良い。このプロセスにより、CZTS合金から全ての汚染物質が洗浄され、CZTS合金を元の状態に再生することから、CZTS合金を戻りポート414を通じて流動床152に戻すことができる。
このプロセスによれば、化合物が、最適温度である85℃から110℃の間に加熱される。加熱された化合物は、その後飽和したCZTS合金上に噴射される。接触時間に基づき、化合物を加熱する最低有効温度である常温から5℃高い温度と、上限有効温度である140℃とが、CZTS合金を洗浄及び/再生するのに有効である。
化合物を用いて汚染物質をCZTS合金から分離する、洗浄及び/又は再生ステーション410内に一体化可能な別のプロセスは、水銀を蒸留および揮発可能であることから、真空乾燥機を用いることである。汚染物質を真空乾燥機中で揮発させた後、この汚染物質をフィルタ及び/又は洗浄装置中で捕捉可能である。洗浄装置及びフィルタは、希釈した化合物中で飽和した場合に特に有効となる可能性がある。
CZTS合金から分離された汚染された化合物は、汚染物質廃棄ポート412から排出後、汚染物質を通常の工業プロセスにより化合物から分離するプロセスを通じてリサイクル可能である。汚染物質の分離後、消耗した化合物は焼却可能であり、汚染物質は工業用にリサイクルし、及び/又は適切に廃棄するため、別途回収される。洗浄及び/又は再生プロセス中の取り扱いのため、CZTS合金が失われた場合、大量再充填ステーション413により、流動床152で適切な体積になるようCZTS合金を回復させる。
流動床152にCTZS混合物吸着剤からなる反応物質164が充填されると、吸着剤リサイクルサブシステム402により、炭素系吸着剤の最適動作状態が維持される。吸着剤排出ポート415を通じて、吸着剤は吸着剤リサイクルステーション416内に移動可能である。サブシステム402内のこの吸着剤リサイクルステーション416は、洗浄及び再生プロセスの一部として炭素系吸着剤から汚染物質を分離する一種以上の化学試薬を含む。限定的ではない例として、吸着剤リサイクルステーション416内で用いられるこの化学試薬は、メチルエチルケトン、塩化メチレン及び/又はメタノールなどの溶媒であっても良い。消耗及び/又は損耗した炭素系吸着剤は、吸着剤廃棄ステーション417を通じて廃棄可能である。排出物から除去された排出物汚染物質は、汚染物質廃棄ポート418を通じて各種産業で用いられるようリサイクル可能である。大量再充填ステーション419により、排出物から汚染物質を除去する間に除去及び/又は失われた吸着剤と交換するための炭素系吸着剤の補充分が供給される。炭素系吸着剤戻りポート420において、流動床152に戻るクローズドループが完結する。
CZTS混合物の洗浄及び/又は再生は、グリセリンなどの化合物を用いて行うことができる。リンを含む脂質は、リンが本質的に汚染物質そのものであることから、上手く機能しない。pHの低い脂質は、CZTS混合物を分解し、硫化水素(H2S)を生成して、吸着剤を硫黄欠乏状態とする。したがって、pHの低い脂質を効率的に用いるには、追加再生工程が必要となる。テストの結果、CZTS混合物の酸による劣化を防ぐための最低な最適pH範囲は、6.49から7.73の間であることが分かっている。さらにテストの結果、CZTS混合物の塩基による劣化を防ぐため、pHは、最大9.05に限定されることが分かっている。糖脂質は、その相対粘度が低く吸着剤との接触を容易に最大化でき、洗浄及び/又は再生プロセスが完了した後、特に加熱された場合に、吸着剤から容易に除去/分離できることから好ましい。糖脂質は、また水溶性であり、希釈溶液を使用可能である。水酸基が結合した炭素原子を有する脂質が、CZTS混合物の洗浄及び/又は再生用の最適な脂質として好ましい。CZTS混合物としては、CZTSによって被覆された粉末状酸化鉄、またはCZTSによって被覆された炭素系吸着剤が挙げられるが、これらに限られない。
グリセリンの代わりに、熱水に溶かした長鎖アルコール(セチル及びステアリルアルコール)を用いることは、CZTS混合物を洗浄及び/又は再生するにあたって有益である。しかし、グリセリンは、全ての他の公知のCZTS混合物の洗浄及び/又は再生物質より好ましい。
水銀などの捕捉された汚染物質は、化合物に溶解可能である。したがって、汚染物質で飽和したCZTS混合物に洗浄及び/又は再生ステーション416内で噴射することで、汚染物質をCZTS混合物から抽出し分離することができる。溶解可能な汚染物質を含む化合物をCZTS混合物から分離した後、蒸気リンス及び/又は熱水リンスが行われて、CZTS混合物の再生プロセスが完了する。リンス工程は、加圧リンスでも、重力流リンス(gravity flow rinse)でも良い。このプロセスにより、CZTS混合物から全ての汚染物質が洗浄され、CZTS混合物を元の状態に再生することから、CZTS混合物を戻りポート420を通じて流動床152に戻すことができる。
このプロセスによれば、化合物が、最適温度である85℃から110℃の間に加熱される。加熱された化合物は、その後飽和したCZTS混合物上に噴射される。接触時間に基づき、化合物を加熱する最低有効温度である常温から5℃高い温度と、上限有効温度である140℃とが、CZTS混合物を洗浄及び/再生するのに有効である。
化合物を用いて汚染物質をCZTS混合物から分離する、洗浄及び/又は再生ステーション416内に一体化可能な別のプロセスは、水銀を蒸留および揮発可能であることから、真空乾燥機を用いることである。汚染物質を真空乾燥機中で揮発させた後、この汚染物質をフィルタ及び/又は洗浄装置中で捕捉可能である。洗浄装置及びフィルタは、希釈した化合物中で飽和した場合に特に有効となる可能性がある。混合物としてのCZTSにより被覆された粉末状酸化鉄は汚染された排出物からリン酸塩を抽出するのに特に効率が良く、真空乾燥機中で揮発する。
CZTS混合物から分離された汚染された化合物は、汚染物質廃棄ポート418から排出後、汚染物質を通常の工業プロセスにより化合物から分離するプロセスを通じてリサイクル可能である。汚染物質の分離後、消耗した化合物は焼却可能であり、汚染物質は工業用にリサイクルし、及び/又は適切に廃棄するため、別途回収される。洗浄及び/又は再生プロセス中の取り扱いのため、CZTS混合物が失われた場合、大量再充填ステーション419により、流動床152で適切な体積になるようCZTS混合物を回復させる。
本願開示の一つの実施形態によれば、かつ図33に示されるように、流動床152は、一つ以上の吸着剤用に構成された一つ以上の吸着剤リサイクルサブシステム400、401、402を有する単一のユニットであっても良い。別の例示的実施形態(図示略)によれば、複数の流動床152を互いに直列に構成し、各流動床152が一つ以上の吸着剤リサイクルサブシステム400、401、402用に構成される。別の例示的実施形態(図示略)によれば、複数の流動床152を互いに平行に構成し、各流動床152が一つ以上の吸着剤リサイクルサブシステム400、401、402用に構成される。
モニタリングセンサ421、422、423、424は、排出物制御システムに適用可能な測定装置の網羅的でない例のいくつかにすぎない。当業者であれば、図示された実施形態には示されていない他の多くの排出物制御システムのステーションに配置される数多くの別の種類のモニタリングセンサがあっても良いことを理解するであろう。気体状の汚染された排出物に用いられる具体的なモニタリングセンサは、非気体状の汚染された排出物に用いられる具体的なモニタリングセンサとは異なっても良い。同様に、ある種類の汚染物質に必要とされるモニタリングセンサは、別の汚染物質に必要とされるモニタリングセンサとは異なっても良い。
本願開示の別の側面において、排出物から汚染物質を除去するための排出物制御方法が開示される。図33に示されるこの方法は、排出物に含まれる汚染物質と化学的に結合する一種以上の吸着剤を含む逆ベンチュリ型流動床装置152を含む処理システムに排出物を送り、汚染物質が吸着剤に結合した後、この排出物を逆ベンチュリ型流動床措置152から離れる方向に送る工程を含む。この方法によれば、吸着剤は、銅、亜鉛、錫、硫黄(CZTS)吸着剤、銅、亜鉛、錫、硫黄(CZTS)合金吸着剤、及びCZTS混合物吸着剤を含む材料の群から選択される。この方法は、一つ以上の洗浄及び再生用の吸着剤リサイクルサブシステム400、401、402を通して吸着剤を送る工程も含む。この工程は消耗及び損耗した吸着剤を吸着剤リサイクルサブシステム400、401、402を通して送られた吸着剤から分離し、消耗及び損耗した吸着剤を廃棄し、吸着剤リサイクルサブシステム400、401、402を通して送られた吸着剤から汚染物質を分離し、この汚染物質を廃棄またはリサイクルし、リサイクルされた吸着剤を逆ベンチュリ型流動床装置152に戻す工程を含む。この方法は、新たな吸着剤を逆ベンチュリ型流動床装置152に送って、消耗及び損耗した吸着剤と交換する工程を備えても良い。
逆ベンチュリ型流動床装置152が複数の吸着剤リサイクルサブシステム400、401、402を備える実施形態においては、この方法はさらに、逆ベンチュリ型流動床装置152内に互いに異なる吸着剤を保持し、一つ以上のモニタリングセンサ421、422、423、424により逆ベンチュリ型流動床装置の少なくとも一種のプロセスパラメータを検出し、モニタリングセンサ421、422、423、424によって検出される少なくとも一種のプロセスパラメータに基づき一種以上の異なる吸着剤を通して排出物を送り、異なる吸着剤を、特定の種類の吸着剤処理専用の異なる吸着剤リサイクルサブシステム400、401、402を通して送る工程を含んでもよい。例えば、図示された実施形態では、銅、亜鉛、錫、硫黄(CZTS)吸着剤は、第一吸着剤リサイクルサブシステム400を通って送られ、銅、亜鉛、錫、硫黄(CZTS)合金吸着剤は第二吸着剤リサイクルサブシステム401を通って送られ、銅、亜鉛、錫、硫黄(CZTS)混合物吸着剤は第三吸着剤リサイクルサブシステム402を通って送られる。
なお、この方法での工程は特定の順番で記載され図示されるものの、これらの工程は、工程の順序が別の形で記載される場合を除き、本願開示事項の範囲から逸脱しない範囲で異なる順序で実施されても良い。同様に、本願明細書に記載され図示される方法は、本願開示事項の範囲から逸脱しない範囲で、上述の工程全てを含むことなく、または記載されていない中間工程を追加して実施可能である。
本願開示については、上記開示事項に照らし、数多くの変形例が可能であり、添付請求項の範囲内で具体的に記載されるのとは別の形で実施可能である。これらの先行記載は、発明性のある新規性(inventive novelty)が有用である任意の組み合わせをカバーするものと解釈されるべきである。装置クレーム中の「前記(said)」という単語の使用は、請求項の範囲内に含まれることを意図する積極的記載である先行的基礎を指し示すのに対し、「前記(the)」という単語は、請求項の範囲に含まれることを意図しない用語に前置される。