本セクションは、必ずしも先行技術ではない本願開示事項に関連する背景技術情報を提示するものである。
数多くの経済部門の産業は、一種類以上の排出物を出す。このような排出物は、一方は気体状、他方は非気体状である二つの基本的なグループに分割可能である。気体グループ中の排出物と非気体グループの排出物とは、しばしば有害汚染物質を含む。気体グループ中の排出物は、石炭燃焼プラント又は天然ガス燃焼設備によって発生する排気ガスであっても良い。非気体グループ中の排出物は、液体状、スラッジ状またはスラリー状物質であっても良い。排出物中の有害汚染物質のレベルが許容可能限度に達し、及び/又は許容可能限度を超える場合、この汚染物質を中和し、捕捉し、収集し、除去し、廃棄し、及び/又は何らかの手段で適切に封止しなくてはならない。
多くの産業は、それぞれの方法のいくつかの側面を達成するための手段として燃料を燃焼することに依拠する。例えば、第一の例として、製鋼所では、金属成形、押し出しおよびその他金属鋳造工程中で、金属を燃やし及び/又は溶解する。この金属産業内で用いられる方法は、粉末を金属蒸気及びイオン化金属として放出する操作を含む。環境、植物、動物及び/又は人間に対する有害汚染物質が金属蒸気を介して空気中に放出される。程度の差はあっても、この金属蒸気及び/又は金属蒸気化合物中の有害汚染物質は、収集して、適切に廃棄しなくてはならない。第二の例として、金、銀及び白金等の貴金属の採掘業では、重金属汚染物質を含む金属、金属蒸気排出物、及び粉末をも発生させるが、これらは捕捉、収集し、適切に廃棄されなければ有害であると考えられる。第三の例として、天然ガスを燃焼させる産業では、高いレベルの汚染物質をしばしば含む排出物が発生するが、これらは捕捉、収集し、適切に廃棄されなければ有害であると考えられる。第四の例として、石炭を発電機を回転させるボイラーで蒸気を発生させる燃焼可能な消耗品として用いるエネルギー生産者は、環境、植物、動物及び人間に対して危険と考えられる金属蒸気及び金属化合物を含む排出物を相当な量発生させる。他の有害汚染物質中、金属蒸気排出物は、しばしば水銀(Hg)を含む。
地球規模のジェット気流パターンのため、空中の金属蒸気排出物は、一つの国から運ばれて、他の国に堆積する可能性がある。例えば、中国及び/又はインドで発生した水銀排出物の多くが、実際にアメリカ及び/又はその間の海水中に堆積することとなる可能性がある。同様に、アメリカで発生した水銀を含む排出物の多くが、実際にヨーロッパ及び/又はその間の海中に堆積する可能性がある。この循環を完全なものとする形で、ヨーロッパで発生した水銀を含む排出物は、実際に中国及び/又はインドに堆積する可能性がある。したがって、産業の過程で発生する排出物中の水銀及びその他の有害汚染物質は、地球的規模で解決する努力を要する地球的規模の意味を有する地球的課題である。
このような排出物を発生させるものに対し、国内及び国際規制、規則、制限、手数料、監視、及び多くの、改訂中の、より厳しい内容の法律が提案され、及び/又は実施される。有害排出物に対する規則及び/又は制限は、世界中の国と国とによって異なる。しかし、例えば、排出物が別の国に堆積する可能性のある場合であっても、一つの国が、他の国に、排出物生産者が当該国家において発生する有害排出物を低減する対策をとるよう促すコントロール手段(ましてや強いるコントロール手段)を制定させるのは、不可能でないとしても困難である。
日本は、1970年代以降、水銀生産量及び水銀含有排出物の低減において、全世界的な先駆者である。日本は、水銀生産に特に関連する環境問題に、より大規模な地球コミュニティがどのように対応すべきかに影響する規則を制定している。国際的な水銀法を促進する日本の努力は、水銀による疾患を防止することを目的とするものである。日本に加え、アメリカも、アメリカ環境保護局(EPA)により実施される、世界で最も厳しく制限的ないくつかの法律及び規則を有する。金属蒸気排出物中で最も有害な汚染物質の一つが水銀である。EPAは、石炭燃焼プラントから発せられる水銀の量を2016年までに91%まで低減することを目的として、アメリカ全土に渡る各種公共施設により発生する水銀排出物を規制する「水銀および有害大気物質基準」などの新たな改訂プログラムを発行している。これらの課せられた規制は政治及び法律論争の現在進行形の課題であるが、有害汚染物質は処理しなくてはならない、という問題は、なお影を落としたままである。
EPAによる法律の施行は、インド、中国及びその他の外国などの工業国内の有害排出物の生産者には及ばない。したがって、国連(UN)はその加盟国に、有害金属蒸気の排出物を低減するよう圧力をかけるよう試みている。少なくとも140の加盟国の代表者は、2013年に発効した条約に基づき、全世界の水銀排出物を低減することに同意している。しかし、いくつかの国では全世界的な改善が認められるものの、新興工業国の拡大は、進んだ低減するための努力を大きく上回っているように思われる。
水銀に主眼を置くことで金属蒸気排出物中の他の汚染物質の有害な効果が低減するわけではないが、水銀は、潜在的に最も広く普及し、動物及び人間にとって最も有害である。水銀は世界中の植物、土及び動物に存在する天然元素である。しかし、人間による産業過程により、水銀の蓄積及び/又は水銀鉱床が、天然に存在するレベルを遙かに超えて増加している。地球的規模において、人間の活動により放出された水銀の総量は、1年あたり1,960メートルトンであると推定される。この数字は、2010年に分析されたデータから算出されたものである。全世界的に見たとき、この特定種類の排出物に最も大きく寄与しているのは、石炭燃焼(24%)及び金採掘(37%)活動である。アメリカでは、石炭燃焼が、金採掘活動よりも高い排出物割合を占める。
動物及び人間にとって、水銀にさらされることによる主要な問題は、水銀が生体蓄積物質であるということである。したがって、魚又はその他の動物によって摂取された任意の量の水銀は当該動物中に残留し(すなわち蓄積し)、人間に、または前者が後者によって摂取された場合には、他の動物に移動する。さらに、水銀は、摂取したホストの体から排出されることはない。食物連鎖の中で、最も長寿命な、及び/又は多量の他の動物を補食するより大きな捕食者が、最も過剰な水銀蓄積を負う危険が高い。水銀を含む動物(特に魚)を食べる人間は、神経系疾患及び/又は生殖上の問題を含む、広範囲のよく知られた医学上の問題にさらされる。
水銀排出物には主に以下の三種類がある。人為的放出、再放出、及び天然放出。人為的放出は、その多くが産業活動の産物である。人為的放出源は、工業用石炭燃焼プラント、天然ガス燃焼設備、セメント生産プラント、石油精製設備、塩素アルカリ工業、塩化ビニル工業、採掘事業及び精錬事業などである。再放出は、土に堆積した水銀が、洪水または森林火災によって再びまき散らされた場合に生じる。土に吸収された、及び/又は土に堆積した水銀は、雨水による流出及び/又は洪水により、再び水に放出される。土の浸食がこの問題に寄与する。(自然発生、放火、故意の森林破壊のための火災のいずれかを問わず)森林火災により、水銀が空気及び/又は水源に再放出され、他の場所に堆積する。天然放出は、火山及び地熱口(geothermal vents)を含む。大気に放出される全水銀のおよそ半分は、火山及び地熱口などの天然の事象からのものであると推定される。
上述のように、石炭燃焼プラントにより、毎年、大量の水銀その他の汚染物質が環境中に放出される。したがって、石炭燃焼プラントにより発生する燃焼排ガス排出物中の有害汚染物質の量を低減させる数多くの努力が現在行われている。アメリカ国内の多くの石炭燃焼プラントには、水銀などの有害元素を捕捉し、封止し、及び/又は再生する排出物制御システムが設けられる。石炭燃焼プラントにおいては、石炭が水を沸かし、水を蒸気に変え、発電機を駆動するために燃やされる。石炭燃焼による燃焼排ガス排出物は、しばしば導管システム及び/又は噴射乾燥機システムを通って流体式気体脱硫ユニット(fluid gas desulfurization unit)に送られ、燃焼排ガスからある程度の排出物と、二酸化硫黄(SO2)及び塩化水素(HCl)等の有害ガスが除去される。その後、通常の導管システムにより、燃焼排ガスの流れが湿式/乾式気体洗浄装置に送られ、ここでより多くの二酸化硫黄、塩化水素及びフライアッシュが除去される。燃焼排ガス流は、バグハウスを通り、家庭用掃除機用袋と同じように、燃焼排ガス中の空気流から粒子が分離される。燃焼排ガスは、空気流を通すが、空気流中で移動する、より大きな粒子を通さない空隙率を有するフィルタ状袋を通過する。このフィルタ袋の表面を揺さぶり、及び/又は洗浄することで、捕捉された粒子を収集し、廃棄可能となるようにする。一般に、これらの堆積物はそれ自体として有害排出物であり、廃棄されなくてはならない。この種の排出物制御システムを通過した燃焼排ガスの残りは、高い煙突を通り、大気に放出される。
この種の排出物制御システムの問題点は、これが金属蒸気及び蒸気状の金属化合物中に含まれる水銀などの重金属を捕捉及び/又は収集するのには実際上有効ではないということである。石炭燃焼システムが比較的高い略華氏1500℃で石炭を燃やすことから、水銀はナノサイズの粒子に変わり、最も有効なフィルタシステムをも通過可能である。結果として、空気に含まれる大量の水銀及びその他の有害汚染物質が大気に放出されることになる。
水銀を石炭燃焼システム及び/又はその他の排出源から捕捉・収集するため、この課題に対応するいくつかの公知のシステムが開発されている。これらは三つのカテゴリーの一つに該当する。
第一のカテゴリーは、燃焼排ガス流中に吸着剤を噴射することで水銀を捕捉する一群の方法及び/又はシステムである。貴金属の他、最も一般的な吸着剤材料は活性炭であり、これはしばしば臭素によってハロゲン化される。燃焼排ガス中に吸着剤を噴射するのは、以下の通常型排出物制御装置の一つ及び/又は組み合わせの中で汚染物質を捕捉するためである。静電式集塵装置、流動式気体脱硫システム(fluidized gas desulfurization system)、洗浄機システム、又は繊維フィルタシステム。これらのシステムには、石炭燃焼後に排出物制御システムの様々な時点で活性炭を噴射することを必要とするいくつかのヴァリエーションがある。第一のカテゴリーの例示的方法及び/又はシステムのいくつかは、アメリカ特許番号7,578,869、7,575,629、7,494,632、7,306,774、7,850,764、7,704,920、7,141,091、6,905,534、6,712,878、6,695,894、6,558,454、6,451,094、6,136,072、7,618,603、7,494,632、8,747,676、8,241,398、8,728,974、8,728,217、8,721,777、8,685,351、及び8,029,600に開示される。これらの例示的特許に記載される全ての方法及び/又はシステムは、有害及び/又は使用不能な廃棄物を生じ、これによりそれ自体として廃棄の問題を抱えることになる。加えて、これらの方法及び/又はシステムは、一般に経済的に実行可能ではなく、かつEPA及び/又は他の省庁によって課される排出物規制を満たすことができない。
第一のカテゴリーの公知の解決方法の方法及び/又はシステムの主要な課題は、活性炭を使用することが高価であり、かつ効率が悪いことである。活性炭がシステムを通過する際に、活性炭の略10%しか金属蒸気と相互作用を生じないことから、活性炭の初期費用が増大する。したがって、90%もの高価な活性炭が、主として一酸化炭素(CO)及び/又は二酸化炭素(CO2)として燃焼排ガス中に無駄に放出されることになる。別の問題点は、活性炭がしばしばコンクリート又はその他のフィラーを要する工業製品の製造用原料として適さないフライアッシュを生じることである。フライアッシュを売ることで大きな収入が得られる訳ではないが、大量にある場合、この石炭燃焼プラントの副産物は実際に追加の収入源となる。コンクリート中のフィラーとして用いるのに適さないフライアッシュの副産物量は、有害廃棄物として分類されなくてはならず、したがって廃棄費用を要する。他方、コンクリート中のフィラーとして適するフライアッシュの副産物量は有害廃棄物とは分類されず、したがって販売可能な製品であり廃棄費用を要しない。
第一カテゴリーの公知の解決方法の方法及び/又はシステムの別の課題は、燃焼排ガス中の10%もの水銀が除去されず環境に放出されるということである。この割合は、EPA及びその他の省庁によって許容される水銀放出量と比較して高い。したがって、公知の解決方法の第一カテゴリーの方法及び/又はシステムのいずれも石炭燃焼プラント又は類似の産業用途における水銀の収集及び/又は捕捉のための現行規制に合致しない。
活性炭を用いることによる更に別の問題は、活性炭を燃焼させると、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素が生成し、大気中に放出されることである。アメリカのみで、年に28億トンもの二酸化炭素が石炭燃焼プラントで活性炭を用いることにより発生すると推定される。全世界では、年に144億トンもの二酸化炭素が石炭燃焼プラントで活性炭を用いることにより発生すると推定される。加えて、活性炭は、他の形態の非気体排出物から水銀を除去するのにはあまり有効ではなく、したがって別の方法を用いなくてはならない。
第二のカテゴリーは、石炭燃料中の水銀レベルを低減するため、燃焼前に石炭燃料に前処理を施す方法及び/又はシステム群である。この第二のカテゴリーの例示的方法及び/又はシステムのいくつかは、アメリカ特許番号7,540,384、7,275,644、8,651,282、8,523,963、8,579,999、8,062,410、及び7,987,613に記載される。これらの例示的特許に記載される全ての方法及び/又はシステムは、大量の使用不能な石炭を生じるが、これも有害廃棄物と考えられる。結果として、公知の解決方法の第二カテゴリーの方法及び/又はシステムは、有効ではなく、実施するのには高価である。さらに、石炭の前処理には、しばしば大規模な資本と物理的空間が必要であり、必要な設備を有する多くの既存の排出物制御システムを改変するのは実用的でない。
第三のカテゴリーは、活性炭噴射システムの上流の排出物制御設備に触媒を噴射する一群の方法及び/又はシステムである。これらの方法及び/又はシステム中の触媒は、水銀をイオン化して、燃焼排ガスから水銀を収集し除去するのを容易とする。しかし、このような方法及び/又はシステムの効率は低く、操業費用が高くなり、この公知の解決方法の第三カテゴリーの方法及び/又はシステムは費用効率が高くない。この第三カテゴリーの例は、アメリカ特許番号8,480,791、8,241,398、7,753,992、および7,731,781に記載される。これらの例に加え、アメリカ特許番号7,214,254は、電子レンジと流動床反応器とを用いて高価な吸着剤材料を再生する方法及び装置を開示する。この方法では、吸着剤から選択的に水銀を蒸発させ、この時点で水銀を特殊なフィルタで捕捉し、または濃縮して収集可能とする。電子レンジを利用することから、この方法は大規模な商用用途には実用的でなく、したがって、高価な吸着剤を再生するためだけに有用である。別の例がアメリカ特許出願番号2006/0120935に示され、この中ではいくつかの基板材料の一つを用いて、燃焼排ガスが排出物制御設備を通過する際に水銀に親和力を付与して燃焼排ガスから水銀を除去する方法が開示される。この方法も、大規模な商用用途には実用的でない。
したがって、現行の排出物制御システム及び方法は、一般に有害汚染物質を気体状排出物から非気体状排出物に移動することによって動作し、これにより別の排出物管理問題を生じる。
数多くの法律及び規則が金属蒸気排出物に焦点を当てる一方、スラリー及び/又はスラリー状排出物、スラッジ及び/又はスラッジ状排出物、液体及び/又は液体状排出物、及び他の種類の排出物などの他形態の有害汚染物質を含む排出物も看過すべきではない。挙げられた全ての種類の排出物も、含まれる有害汚染物質を中和し、捕捉し、収集し、除去し、廃棄し、及び/又は適切に何らかの手段で封止可能とする処理を必要とする可能性がある。歴史的に、最も費用効率が高く、かつ最も広く用いられた有害汚染物質除去処理では、(何らかの形態の)活性炭が用いられ、この中を排出物が通過するものとされる。したがって、アメリカ国内での活性炭の需要は、毎年10億ポンドを超え、2017年まで毎年増大し、産業界に1から1.50ドル/ポンドを超える費用を生じることが予測される。これは、毎年約10億ドルに等しい。予測される活性炭需要増大の大部分は、公共事業及び製造業者に石炭燃焼プラントをより厳しい要件に従うよう更新することを要求するEPAが公布した規則の実施に影響されるものである。
より厳しくなる気体排出物規制に加え、EPAは、2016年までに完全に準拠されなくてはならない水質汚染防止法を通じて非気体排出物についてもより厳しい規制を加えている。全ての種類の排出物について強化された複合規制は、各種の異なる産業により生成される複数の種類の排出物を対象とするものである。電力事業者など、燃料を燃やして電力を発生させる事業者は、有害汚染物質を含む一次気体排出物を発生させる。工業規格に従って、これらの気体排出物は、十分な量の有害汚染物質を捕捉して気体排出物の汚染物質を許容限度以下にするために活性炭にさらされる。この燃料を燃やすことにより生じる気体排出物から有害汚染物質を除去する工程により、有害汚染物質を含む液体状又はスラリー状物質である二次非気体排出物が生じる。この二次非気体排出物中の有害汚染物質も捕捉され、及び/又は適切に封止されて、この有害汚染物質の環境中への放出を防止しなくてはならない。一次気体排出物及び二次非気体排出物の双方とも、環境基準を遵守するため、十分な有害汚染物質を適切に捕捉し、及び/又は再生し、及び/又は封止するための手段を必要とする。二次非気体排出物から有害汚染物質を除去可能な公知の方法にかかる産業上のコストは、ほとんど法外なものであり、いくつかの産業では、コストを消費者に添加できなければ設備を閉鎖することを余儀なくされる。
いくつかの実務によれば、高いレベルの汚染物質を含有することから有害と考えられる非気体排出物は、池、山(piles)又は乾燥床中に長期間処分され収容される。このような実務では有害汚染物質が隔離される一方、高額な費用を要し、有害汚染物質それ自体を中和することなく土地を消費することになり、結果として収容地において環境問題を引き起こす可能性がある。非気体排出物の一例はフライアッシュであり、これは石炭を燃やすことによる自然発生物である。フライアッシュは、組成としては火山灰と基本的に同一である。フライアッシュは、微量濃度(すなわち微量)の多種の重金属及びその他公知の有害及び有毒汚染物質(例えば、水銀、ベリリウム、カドミウム、バリウム、クロム、銅、鉛、モリブデン、ニッケル、ラジウム、セレン、トリウム、ウラン、バナジウム、亜鉛)を含む。ある推計によれば、アメリカで燃やされる石炭の10%が、燃焼不能な材料からなり、これが灰となる。したがって、石炭灰中の有害微量元素の濃度は、元の石炭中のこれらの元素の濃度よりも10倍高い。
フライアッシュはポゾラン材料と考えられ、炭酸カルシウムと混合したとき、水とその他の化合物と凝集して、道路、空港滑走路及び橋に適するコンクリート混合物を生成するセメント材料が形成されることから、コンクリートの製造時に長い間用いられてきた。石炭燃焼プラントで生成されるフライアッシュは、燃焼排ガスとともに上昇する超微粒子からなる煙道灰である。上昇しない灰は、しばしばボトムアッシュと呼ばれる。初期の石炭燃焼プラントでは、フライアッシュは単に大気中に放出されるのみであった。近年、環境規制により、排出物制御機構を設置してフライアッシュが大気に放出されるのを防止する必要が生じている。多くのプラントでは、静電式集塵装置を用いることで、フライアッシュが煙突に到達して大気に出て行く前にフライアッシュを捕捉する。通常、ボトムアッシュは捕捉されたフライアッシュと混合されて、石炭灰として知られるものを形成する。通常、フライアッシュはボトムアッシュよりも高いレベルの有害汚染物質を含み、これにより、ボトムアッシュとフライアッシュとを混合することで、非気体排出物の多くの基準に準拠した比例したレベルの有害汚染物質が生じることとなる。しかし、将来の基準では、フライアッシュが有害物質と再定義される可能性がある。フライアッシュが有害物質と再定義された場合には、フライアッシュをセメント、アスファルトの製造及びその他の広く用いられる用途に用いることは出来なくなる。ある研究によれば、フライアッシュをコンクリート製造に用いることが禁止されれば、アメリカ単独で、1年あたり50億ドルを超えるコスト増大が見込まれる。このコスト増大は、フライアッシュに変えてより高価な別の材料を用いることの直接的結果である。加えて、その固有の物理的特性のため、セメントの添加物としてのフライアッシュに直接置き換えられる適切な他の公知の物質はない。
報告書によれば、アメリカ国内で、毎年1億3000万トンを超えるフライアッシュが、450を超える石炭火力発電所において生じている。ある報告書では、フライアッシュの40%のみが再利用されるものと推定され、これは5200万トン/年のフライアッシュが再利用されるが、7800万トン/年がスラリー池及び山にそのまま貯留されることを示す。フライアッシュは、通常湿ったスラリー池の中に貯留されて、飛散粒子が空気に運ばれて、汚染物質が大量貯蔵地から出て大気又は周辺環境に運ばれるのを低減する。大量貯蔵フライアッシュが空気に運ばれて放出されるのに加え、フライアッシュを長期間収容するのに必要な収容システムに破損及び/又は故障が生じる恐れもある。テネシー州で2008年に起こった有名な破損の例では、湿った貯留フライアッシュ池の堤防が崩壊し、540万立方ヤードのフライアッシュが溢れ出た。この溢れ出たフライアッシュは、いくつかの家を破壊し、付近の河を汚染した。洗浄コストは、本願出願時には未確定であり、12億ドルを超える可能性もある。
別の例として、非気体排出物が通常の石炭燃焼設備の排水発生システムの副産物として見られることもある。通常の排水発生システムでは、ボイラー及び水冷却工程から大量の水がもたらされる。これらの大量の排水は、比較的低いレベルの汚染物質を含み、より高いレベルの汚染物質を含む他の排水流を希釈するのに用いられる。通常洗浄装置から排出される汚染された排水流は、ボイラー及び/又は冷却水工程からの大量の排水によって希釈され、その後大型の連続混合槽中で石灰によって処理されて石こうを形成し、その後、沈殿池に圧送される。この工程中、一定量の水銀及び他の重金属が石こうに取り込まれ、ウォールボード及びセメントに用いられるよう安定化される。この石こうは、一般に非浸出性と考えられ、汚染とは考えられない。しかし、沈殿池からの水は、通常排水溝に排出される。現行の規制では、この今も行われている排出が許容されるが、来るべき規制では、特定の汚染物質及び/又は特定のレベルのこれらの汚染物質が、有害な汚染とされなくてはならないことが提案される。
水銀と重金属とを非気体産業排水流から除去することに関して、有害汚染物質を低い残留レベルとなるように低減するため、炭酸塩、リン酸塩又は硫酸塩がしばしば用いられる。水銀と他の有害汚染物質とを産業排水流から除去する公知の方法の一つは、化学的沈殿反応である。別の公知の方法は、イオン交換を用いる。化学的沈殿反応とイオン交換法による主要な問題の一つは、汚染物質の量が多い場合(例えば、フライアッシュスラリー排出物を処理する場合)、これらの方法は、より厳しくなる非気体排出物についてのEPA規則に十分に準拠できないということである。
汚染された非気体排出物の別の源は、海洋船舶廃棄物の排出やバラスト排水である。貨物船やタンカーといった商業用船舶は、廃棄物とバラスト排水の双方を有する。娯楽用のクルーズ船もまた、港で処理すべき廃水を有する。また、軍用船や護衛船も相当量の排水を有する。
海上掘削作業によってもかなりの廃水が生じる。海上掘削施設において現地で廃液を処理すれば、処理のために陸地に廃棄物を輸送するよりも著しく安価で済む。したがって、適切で許容可能なエコロジー規制を維持するために、海への排出に先立って海洋廃棄物を効率的に濾過することが必要である。
二次非気体排出物を処理するため、異なる商品名で販売される各種の公知の商業排出物制御方法及びシステムもある。商品名Blue PROとして知られる処理方法は、共沈及び吸着を利用して二次非気体排出物から水銀を除去する反応濾過方法である。商品名MERSORB-LWとして知られる別の処理方法では、粉末状石炭系吸着剤を用いて共沈殿及び吸着によって二次非気体排出物から水銀を除去する。Chloralkali Electrolysis Wastewaterとして知られる別の処理方法では、塩素を電解生成する際に二次非気体排出物から水銀を除去する。別の処理方法では、吸収動態と肥料排水に由来する活性炭とを用いて水銀を二次非気体排出物から除去する。別の処理方法では、ポリエチレンイミンによって改質された多孔質セルロース単体を吸着剤として用いて水銀を二次非気体排出物から除去する。別の処理方法では、酵素還元中に微生物を用いて水銀を二次非気体排出物から除去する。商品名MerCURxEとして知られるさらに別の処理方法では、化学的沈殿反応を用いて、汚染された液体状非気体排出物を処理する。
本セクションは、開示事項の概括的要約を示すものであり、その全体の範囲ないし全ての特徴を包括的に開示するものではない。
本願開示の一側面において、排出物から汚染物質を除去する装置が開示される。この装置は、逆ベンチュリ形状の筐体を備える。この筐体は、排出物が所定の入口流速で流入する入口部と、排出物を所定の出口流速で排出する出口部と、筐体の入口部と出口部との間に配置され排出物中の汚染物質を捕捉する拡径部とを備える。筐体の入口部、出口部、および拡径部は、互いに流体を介して連通するよう配置される。加えて、筐体の入口部は入口部断面積を有し、筐体の出口部は出口部断面積を有し、筐体の拡径部は拡径部断面積を有する。筐体の逆ベンチュリ形状によれば、拡径部断面積は、入口部断面積及び出口部断面積よりも大きい。この筐体の形状により、筐体の拡径部に流入する排出物は減速して、筐体の入口部及び出口部を通過する速度に対してより低速で筐体の拡径部を通過する。排出物の流れが筐体の拡径部で減速することから、筐体の拡径部中での排出物の滞留時間が増加する。この装置は、筐体の拡径部内に配置される反応物質塊をも有する。この反応物質塊は、排出物と接触するよう配置される反応外表面を有する。さらに、この反応物質塊は反応外表面にアマルガム形成金属を含む。反応物質塊中のアマルガム形成金属は、筐体の拡径部を通って反応物質塊の反応外表面に達する排出物中の汚染物質の少なくとも一部と化学的に結合する。
本願開示の別の側面において、気体排出物から汚染物質を除去する排出物制御方法が開示される。この方法は以下の工程を備える。炉内で燃料を燃やして汚染物質を含む気体排出物を生成する工程、この気体排出物を静電式集塵装置に通し、この静電式集塵装置を用いて気体排出物から粒子汚染物質の第一部分を除去する工程、この気体排出物を流動式気体脱硫ユニットを通してこの流動式気体脱硫ユニットを用いて気体排出物から二酸化硫黄汚染物質を除去する工程、及びこの気体排出物を繊維フィルタユニットに通し、この繊維フィルタユニットを用いて気体排出物から粒子汚染物質の第二部分を除去する工程。この方法は、気体排出物を逆ベンチュリ装置に通し、この逆ベンチュリ装置を用いて気体排出物から重金属汚染物質を除去する工程を含んでも良い。気体排出物を逆ベンチュリ装置に通し、この逆ベンチュリ装置を用いて気体排出物から重金属汚染物質を除去する工程は、気体排出物を逆ベンチュリ装置内に配置された反応物質塊に通す工程を含む。反応物質塊は、気体排出物中の重金属汚染物質と化学的に結合するアマルガム形成金属を含む。したがって、重金属汚染物質が反応物質塊中のアマルガム形成金属と結合する際に、重金属汚染物質が逆ベンチュリ装置中に捕捉される。この方法は、さらに気体排出物を周囲の大気に放出する煙突に気体排出物を送る工程を含む。
本願開示のさらに別の側面において、非気体排出物から汚染物質を除去する排出物制御方法が開示される。この方法は、汚染物質を含む非気体排出物を沈殿池に沈殿させて、非気体排出物中の汚染物質の一部を除去し、沈殿池中の非気体排出物の第一部分を脱水し、脱水された副産物を二次産業工程で使用し、沈殿池からの非気体排出物の第二部分を除去して、この非気体排出物の第二部分に乾燥廃棄処理を加える工程を含む。この方法は、さらに沈殿池中の非気体排出物の第三部分を、吸着剤を含む処理槽に送る工程を含んでも良い。この吸着剤は、非気体排出物の第三部分中の重金属汚染物質と化学的に結合するアマルガム形成金属を含む。したがって、この吸着剤は、重金属汚染物質が吸着剤中のアマルガム形成金属と化学的に結合する際に、処理槽中の重金属汚染物質を捕捉する。この方法は、さらに非気体排出物を処理槽から排水溝に送って排出する工程を有しても良い。
本願明細書に記載される装置及び方法は、公知の排出物制御システム及び方法に対して数多くの利点を有する。本願開示の装置及び方法によって、石炭を燃やしたことによる排出物に活性炭を用いる必要が大幅に低減及び/又はなくなる。現状では、本明細書に開示される反応物質塊中のアマルガム形成金属と吸着剤との初期費用は、活性炭のポンドあたりの取得費用(pound acquisition cost)よりもわずかに1ドルから1.5ドル高い。しかし、アマルガム形成金属は再活性化可能であり、有害汚染物質を集めて再使用可能であることから、増加した費用は、一時的な費用である。結果として、本明細書に開示される材料を含むアマルガム形成金属を用いることによる初年度費用は、再生及び再活性化費用を含め、活性炭の年間費用の1.5倍もしくはアメリカ全土で15億ドルにのぼると推定される。しかし、初年度投資以後に推定される年間コストは、年間再生及び再活性化費用を含むのみであり、これはアメリカ全土で2.5億ドルであると推定される。したがって、10年間にわたり、アメリカ産業に対する初年度費用が15億ドルであり、次の9年間についてそれぞれ2.5億ドルの再生及び再活性化費用を要することとなり、10年間の総費用が37.5億ドルとなる。この数字は、活性炭を用いる場合の、100億ドルを超える費用と比較して低く、10年間で65億ドルの大幅なコスト削減を実現可能である。
大幅なコスト削減効果に加え、本願の装置及び方法は、気体及び非気体排出物から有害汚染物質を除去するのに、公知の排出物制御システム及び方法と比較してより効率的である。これらの改良点は、産業界に予測される規制要件に合致し、及び/又はそれを上回ることを可能とするに十分なほど大幅なものであるが、これは現状の技術では経済的に実現不可能である。したがって、本願の装置及び方法は、規制により、フライアッシュが有害物質として再分類された場合でも、フライアッシュを継続して使用可能とする能力を有し、これにより建設産業、商用発電産業及びその他の非気体の灰状副産物を生成する産業において、大幅なコスト増加を防止可能である。
本願開示の装置及び方法は、また、気体排出物から有害汚染物質を除去する際の活性炭への依存を、完全に使用不要とするものではないとしても、大幅に減少させる。排出物制御システム中の活性炭の使用を減らすことで、年間の二酸化炭素発生がアメリカのみで20億トンも減少するものと推定される。
本願開示の別の側面において、気体排出物から汚染物質を除去する排出物制御方法が開示される。この方法は以下の工程を備える。汚染されている可能性のある気体排出源をシステムに投入する工程、必要に応じて排出物を特定用途向け前置フィルタに通す工程、排出物を逆ベンチュリ形状の流動床に通す工程、必要に応じて排出物を特定用途向け後置フィルタに通す工程、その後排出物をシステム外に出す工程。システムから排出する目的としては、汚染されていないガス流の適切な特定目的での廃棄、及び/又は、環境規制に基づく(environmentally controlled)還元及び/又は放出のいずれかが考えられる。
具体的に、逆ベンチュリ形状の流動床は、気体排出物が装置内に収容された特殊な吸着剤を通過する際、気体排出物の制限滞留時間が最適となるように一定の長さ対直径比を有する大きさに作られても良い。試行錯誤の結果、流動床容器に合った最適な長さ対直径の比は2.9:1から9.8:1の間であって、好ましくは例えば4.4:1とされた。したがって、ある例示的な好ましい実施形態において、直径が4.5フィートの場合、長さは19.8フィートとなり、長さ対直径の比は4.4:1となる。
例示的な気体排出物用の逆ベンチュリ形状流動床装置の別の特徴は、容器の外側のいずれかの端部から見たとき、概ね曲面で外側に突出した凸状端部を有することである。流動床を備えたシステムの実施例におけるテストにより、気体排出物の流れが自らランダムに戻り、キャビテーション乱流が最小となり、従って最大限に密接な接触が多くなることから、吸着剤に接触する滞留時間が明らかとなった。概ね曲面で外側に突出した凸状端部により、流動床の両端で比較的円滑なリターンフローが可能となり、気体排出物のキャビテーション乱流も最小となる。フィルタを介したキャビテーションを伴う乱流は、流れを妨げ及び/又は中断させることが知られている。汚染物質の捕捉や気体排出物からの除去を最適に行うためには、流動床における滞留時間を延長することが望まれる。しかしながら、キャビテーションを伴う乱流の場合、延長された滞留時間が最適化されない。各種バッフルや他の特定用途向けの流量制限障害物を、流動床の筐体に組み込むことが可能である。
本願開示のさらに別の側面において、非気体排出物から汚染物質を除去する排出物制御方法が開示される。この方法は以下の工程を備える。汚染されている可能性のある非気体排出源をシステムに投入する工程、必要に応じて排出物を特定用途向け前置フィルタに通す工程、排出物を逆ベンチュリ形状の流動床に通す工程、必要に応じて排出物を特定用途向け後置フィルタに通す工程、その後排出物をシステム外に排出させる工程。システムから排出する目的としては、汚染されていない非ガス流の適切な特定目的での廃棄、及び/又は、環境規制に基づく(environmentally controlled)還元及び/又は放出のいずれかが考えられる。
具体的に、逆ベンチュリ形状の流動床は、非気体排出物が装置内に収容された特殊な吸着剤を通過する際、非気体排出物の制限滞留時間が最適となるような長さ対直径比を有する大きさに作られても良い。試行錯誤の結果、流動床容器に合った最適な長さ対直径の比は2.9:1から9.8:1の間であって、好ましくは例えば4.4:1とされた。したがって、ある例示的な好ましい実施形態において、直径が4.5フィートの場合、長さは19.8フィートとなり、長さ対直径の比は4.4:1となる。
例示的な非気体排出物用の逆ベンチュリ形状流動床装置の別の特徴は、容器の外側のいずれかの端部から見たとき、概ね曲面で外側に突出した凸状端部を有することである。流動床を備えたシステムの実施例におけるテストにより、非気体排出物の流れが自らランダムに戻り、キャビテーション乱流が最小となり、従って最大限に密接な接触が多くなることから、吸着剤に接触する滞留時間が明らかとなった。概ね曲面で外側に突出した凸状端部により、逆ベンチュリ形状の流動床の両端で比較的円滑なリターンフローが可能となり、非気体排出物のキャビテーション乱流も最小となる。フィルタを介したキャビテーションを伴う乱流は、流れを妨げ及び/又は中断させることが知られている。汚染物質の捕捉や非気体排出物からの除去を最適に行うためには、逆ベンチュリ形状の流動床における滞留時間を延長することが望まれる。しかしながら、キャビテーションを伴う乱流の場合、延長された滞留時間が最適化されない。各種バッフルや他の特定用途向けの流量制限障害物を、流動床の筐体に組み込むことが可能である。
本願開示の別の側面において、気体及び/又は非気体排出物用の逆ベンチュリ形状の流動床システムは、吸着剤から汚染要素を捕集するために逆ベンチュリ形状流動床の容器から外して移動可能である。この場合、捕捉された汚染物質は、適当に廃棄及び/又は適切な産業用途にリサイクル可能である。吸着剤は再生及び/又は活性化された後、該システム内でさらに使用されるべく流動床に再配置可能である。流動床における吸着剤の量を維持するために、吸着剤の組込み投入口を設けても良い。
本願開示の別の側面によれば、逆ベンチュリ形状の流動床は、開示した長さ対直径比の特徴や、概ね曲面で外側に突出した凸状端部の特徴を維持しつつ、個人的な民生用途用にかなり軽量化したり、あるいは、非常に大規模な商業用途用にサイズを大きくすることが可能である。常設システムとしては、これらに限られないが、地上配備サイトシステム、及び/又は、護衛または軍用船や消費者向けクルーズ船における現場組み立て式のものがある。他に考えられる現場組み立て式システムの用途には、特に、工業的石炭燃焼プラント、天然ガス燃焼設備、セメント生産プラント、石油精製設備、塩素アルカリ工業、塩化ビニル工業、採掘事業及び精錬事業がある。
本願開示の別の側面において、例示的な汚染物質除去システムは再構築可能な分節型の構成要素を備える。各システム構成要素は、特定用途での要件に合うように、隔離、バイパス形成、組込み、及び/又は再構築可能である。このシステムは、傾斜メカニズムを組み込んだ流動床装置を備える。
傾斜メカニズムは、水平面に対し平行に配設された架台デッキに固定される。傾斜メカニズムは、流動床の中心を通る軸の向きを、架台デッキに対し平行な向きから架台デッキに対し概ね交差する(transverse)向きに変更する。
傾斜は、ダンプトラックの傾斜荷台が機能する仕組みと同様に任意の数の従来の機械的な連結方法によって実現される。傾斜メカニズムの動力は一般的に、空気圧機構、油圧機構、電気モータ、及び/又はそれらの組み合わせによってもたらされる。正確な位置決め及び傾斜制御は一般的に、プログラム可能な論理制御により実現される。
試行錯誤の結果、傾斜メカニズムは合計スイープ角度が96度に至る間に気体排出物や非気体排出物に対し最適に機能することが示された。合計スイープ角度が具体的に96度に制限されることにより、流動床装置の筐体が90度いっぱいまで傾斜可能になり、また、架台デッキに対して平行な状態と架台デッキに対して交差する(transverse)状態の間で漸増する任意の傾斜角度において固定姿勢で位置決め可能である。
傾斜メカニズムは、流動床装置の筐体を架台デッキに対して平行な向きよりも-2.5度傾斜させ、また、架台デッキに対して交差する(transverse)向きからさらに3.5度傾斜させて(93.5度)、合計スイープ角度96度を実現する。
汚染された気体排出物に対する開示事項の適用例では、傾斜メカニズムは気体排出物に対する振動スイープ角度が5.5度になるように流動床装置の筐体を往復振動させる。具体的には、傾斜メカニズムは、流動床装置の筐体を架台デッキに対して略水平かつ平行な気体排出物処理角度(傾斜角度0度)の向きにする。傾斜メカニズムは、架台デッキに対する筐体の水平向きから+3度上方である第一振動角度と架台デッキに対する筐体の水平向きより-2.5度下方である第二振動角度の間で流動床装置の筐体を振動させる。この向きにおいて、汚染された気体排出物は流動床装置を通され、監視される。筐体を振動スイープ角度5.5度の範囲内で徐々に傾けて、最適な限定的流れが得られる最適な傾斜角度を決定しても良い。
別の適用例において、傾斜メカニズムは、振動スイープ角度5.5度の範囲内で流動床装置の筐体を連続的に振動させるように構成され、汚染された気体排出物が流動床装置内を通過する際に撹拌方法を提供する。
外部機器による振動励起、超音波振動、流動床装置の筐体の回転、径方向の揺動、軸方向の揺動、及び/又はそれらの組み合わせによる方法を実際に適用することにより、気体排出物をさらに撹拌する方法を流動床に適用可能である。
汚染された非気体排出物に対する本開示事項の別の適用例において、傾斜メカニズムは、非気体排出物の振動スイープ角度7.5度で流動床装置の筐体を往復振動させる。具体的に、傾斜メカニズムは、略垂直かつ架台デッキに対し交差する(transverse)非気体排出物処理角度(傾斜角度:90度)で、流動床装置の筐体の向きを定める。傾斜メカニズムは、架台デッキに対し筐体が交差する(transverse)向きから+3.5度である第一振動角度(93.5度)と架台デッキに対し筐体が交差する(transverse)向きより-4.0度下方である第二往復角度(86度)の間で流動床装置の筐体を振動させる。この向きにおいて、汚染された非気体排出物は流動床装置を通され、監視される。流動床の筐体を非気体振動角度7.5度の範囲内で徐々に傾けて、最適な限定的流れが得られる最適な傾斜角度を決定しても良い。
別の例示的な適用例において、傾斜メカニズムは、非気体振動角度7.5度の範囲内で流動床装置の筐体を連続的に振動させ、汚染された非気体排出物が流動床装置内を通過する際に撹拌方法が適用されるように構成される。
外部機器による振動励起、超音波振動、流動床装置の筐体の回転、径方向の揺動、軸方向の揺動、及び/又はそれらの組み合わせによる方法を実際に適用することにより、非気体排出物をさらに撹拌する方法を流動床に適用可能である。
よりスラッジ状で及び/又は自然に曝気された汚染排出物に対する開示事項の別の適用例において、流動床装置の筐体の向きは架台デッキに対して約45度(水平に対して45度)の曝気スラッジ排出物処理角度で定められ、振動スイープ角度は10.0度となる。傾斜メカニズムは、曝気されたスラッジ排出物処理角度に対していずれかの方向に+/-5.0度で(架台デッキに対して40度と50度の間で)流動床装置の筐体を振動させる。この向きにおいて、曝気されたスラッジ状の汚染排出物は流動床装置を通され、監視される。流動床の筐体を振動スイープ角度10.0度の範囲内で徐々に傾けて、最適な限定的流れが得られる最適な傾斜角度を決定しても良い。
別の適用例において、傾斜メカニズムは、振動スイープ角度10.0度の範囲内で流動床装置の筐体を連続的に振動させ、曝気されたスラッジ状の汚染排出物が流動床装置内を通過する際に撹拌方法が適用されるように構成される。
外部機器による振動励起、超音波振動、流動床装置の筐体の回転、径方向の揺動、軸方向の揺動、及び/又はそれらの組み合わせによる方法を実際に適用することにより、曝気されたスラッジ状の汚染排出物をさらに撹拌する方法を流動床に適用可能である。
流動床装置の筐体内への気体排出物用の入口は、非気体排出物用の入口から独立して設けられる。気体排出物用の出口は、非気体排出物用の出口から独立して設けられる。各種排出物用の入口及び出口を設けることにより、流動床装置の筐体の向きに応じて、流動床装置の筐体内の内部障害物を通過するより好適な紆曲流路が形成することができる。
流動床装置はまた、吸着剤材料を洗浄及び/又は交換するための追加的な孔を有する。吸着剤は、流動床装置の筐体から取り外して洗浄可能である。吸着剤が消耗していると思われる場合、分離して廃棄可能である。汚染物質は、吸着剤から分離して産業用にリサイクル又は適切に廃棄するために移送しても良い。洗浄済み吸着剤は、消耗した吸着剤の代替となる代替用の吸着剤と共に流動床装置の筐体に戻されても良い。
特定用途の常設システムに加え、本システムは可搬型システムとしても構成可能である。可搬型システムの例としては、これらに限られないが、トラック搭載型システム、バージ搭載型システム、トレーラー搭載型システム、鉄道車両システムが挙げられる。可搬型システムの用途としては、常設の現地組み立て式システムを補修、点検、及び/又は、修理するために、一時的な排出物のバイパスを設けることによって現地組み立て式システムへのバイパスを設ける際に有用である。可搬型システムはまた、汚染された排出物の流量が常設の現地組み立て式システムの能力を超過する間、常設の現地組み立て式設備に超過分のフィルタ機能を実装する際にも有用である。
本明細書に記載される特殊な吸着剤を、開示される装置及び方法とともに用いることで、数多くの利点がある。一般に、この吸着剤によって開示される排出物装置の水銀その他の有害物質を捕捉、収容及び/又はリサイクルする能力は、公知の排出物制御システム及び方法を用いることでは以前に不可能である。本明細書に開示される吸着剤の別の重要な利点は、この吸着剤が気体及び非気体排出物の双方を処理するのに使用可能であり、これにより、気体排出物を処理するのに用いられる一次排出物制御処理から生じる二次排出物などの、汚染された非気体排出物を処理する公知の方法の問題点の多くを克服可能である。加えて、本明細書に記載される吸着剤により、一次気体排出物処理工程の副産物として生じる非気体排出物を二次処理する必要を無くすことができるほど十分効率的に気体排出物を処理する能力が得られる。本明細書に開示される吸着剤は、再利用可能な点でも有益である。再処理方法を通じて、吸着剤中のアマルガム形成金属と化学的に結合する有害汚染物質を吸着剤から収集する(すなわち除去する)ことが可能であり、これにより気体及び非気体排出物から汚染物質を除去する吸着剤の能力を回復させる。
さらなる適用可能性の範囲は本明細書の記載から明らかとなるだろう。本要約における記載および具体例は単に説明を目的とするものであり、本開示事項の範囲を限定するものではない。
図面を参照して産業排出物から汚染物質を除去する装置及び方法を説明するが、図面を通じて同じ符号は対応する要素を示す。
例示的実施形態を、添付図面を参照してより十分に説明する。例示的実施形態を、本願開示を十全なものとし、当業者にその範囲を十分に伝えるよう示している。本願開示の実施形態の十全な理解を提供するため、具体的な構成要素、素子及び方法の例など、数多くの具体的詳細を記載している。当業者にとって、具体的な詳細を用いる必要はなく、例示的実施形態は多くの異なる形態で実装可能であり、また本願開示を限定するものと解釈すべきでないことは明らかであろう。いくつかの例示的実施形態において、公知の方法、公知の素子構造及び公知の技術は、詳細に記載されない。
本明細書中で用いられる用語は、具体的な例示的実施形態を記述することのみを目的とするものであり、限定的であることを意図しない。本明細書で使用される際、単数形は、明示されていない限り複数形も含むことを意図する。用語「備える」、「備えて」、「含んで」および「有して」は包括的であり、述べられた特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は部品の存在を特定する。しかし、1以上の特徴、整数、工程、操作、要素、部品及び/又は群の存在または追加を排除するものではない。本明細書で記載される方法工程、プロセスおよび操作は、実行順序として詳細に特定されない限り、必ずしも記載または図示された特定の順序で実行を要するものと解釈されるべきではない。追加工程または代替工程が用いられても良いことも当然である。
要素または層が、他の要素または層「上に」ある、「に係合」、「に接続」または「に連結」すると記される場合、この要素または層は直接に他の要素または層上にあるか、係合、接続、または連結しても良い。または、介在要素または層があっても良い。一方、要素が、他の要素または層の「直接上に」ある、「に直接係合」、「に直接接続」または「に直接連結」すると記される場合、介在要素または層は存在しなくてよい。要素同士の関係を説明するのに使用される他の文言(例えば、「の間に」と「直接の間に」、「隣接して」と「直接隣接して」など)は、同様に解釈されるべきである。本明細書で用いられる際、用語「及び/又は」は1以上の関連づけられたリスト項目の全ての組み合わせを含む。
第一、第二、第三等の用語が各種要素、部品、領域、層及び/又は切断面を説明するために本明細書で使用されるが、これらの要素、部品、領域、層及び/又は切断面はこれらの用語により限定されるものではない。これらの用語は、ある要素、部品、領域、層及び/又は切断面を他の領域、層または切断面から区別するためにのみ使用されても良い。本明細書で使用される際の「第一」「第二」のような用語および他の数に関する用語は、文脈で明示されない限り、配列または順序を意味しない。したがって、下記で論じられる第一要素、部品、領域、層及び/又は切断面は、実施例の教示から逸脱することなく第二要素、部品、領域、層及び/又は切断面と称されることも可能である。
「インナー」、「アウター」、「真下に」、「下に」、「下側の」「上に」、「上部に」等のような空間的に相対的な用語が、図示する際、ある要素または特徴と他の要素または特徴との関係の記載を容易にするために、本明細書で使われても良い。空間的に相対的な用語は、図示される向きに加えて、使用時または操作時における装置の異なる向きを包含するものとしても良い。例えば、図の装置がひっくり返ると、他の要素または特徴の「下に」または「真下に」と記載される要素は、他の要素または特徴の「上に」置かれるだろう。このように、例示の用語「下に」は上と下両方への向きを包含することが可能である。装置は他方向に向いてもよく(90度回転または他の向きに)、本明細書で使用される空間関連記述子はそのように解釈される。
加えて、本明細書で用いられる「導管」という用語は、液体及び/又は液体状排出物及び気体及び/又は気体状排出物を運ぶのに通常利用可能な全てのパイプの記載をカバーすることを意図するものである。排出物の種類に関わらず、排出物の実際の運搬方法に関して、何ら優先的取り扱いをし、または暗示するものではない。
図1を参照して、通常の石炭火力発電所100の模式図が示される。この石炭火力発電所100は、一種以上の石炭燃料2を燃やして電力7を発生させる産業設備である流動床反応器1を有する。この電力7は、その後、電線8を介して配電網に分配されても良い。流動床反応器1内での燃焼は、空気3、火4、及び石炭燃料2によって行われる。この燃焼プロセスは、水を加熱して蒸気5を発生させるのに用いられる。この蒸気は、その後発電機6を回して、電力7を発生させるのに用いられる。燃焼プロセスからの気体排出物10は、煙突9を通って環境中に放出される。石炭火力発電所100に何ら排出物制御システムが設けられない場合(図1)、この排出物10は、フライアッシュ、水銀(Hg)、金属蒸気、二酸化硫黄(SO2)、塩化水素(HCl)及びその他の有害ガスなどの多くの有害汚染物質を含む。
図2を参照して、通常の排出物制御システム202を有する改良型石炭火力発電所200の模式図が示される。この排出物制御システム202により、気体排出物10中の有害汚染物質の一部が捕捉、収集される。この排出物制御システム202は、燃焼反応が起こる流動床反応器1からの気体排出物10を、気体排出物10から二酸化硫黄及びフライアッシュ汚染物質の一部を除去する湿式/乾式気体洗浄装置11に搬送する。気体排出物10を湿式/乾式気体洗浄装置11に搬送するのに代えて、あるいはそれに加えて、この排出物制御システム202は気体排出物10を、二酸化硫黄、有害ガス及びその他の汚染物質の一部が捕捉・収集される噴射乾燥機12に搬送しても良い。この排出物は、フィルタバッグを用いて気体排出物10の流れから粒子を除去する繊維フィルタユニット13(すなわちバグハウス)を通過させても良い。このシステムは、気体排出物10が煙突9を通って周囲の大気(すなわち環境)に放出される前に、気体排出物10から多くの汚染物質を収集し除去する。図2に示される通常の排出物制御システム202の問題点は、金属蒸気排出物に含まれる水銀などのナノサイズの汚染物質が、排出物制御システム202の湿式/乾式気体洗浄装置11、噴射乾燥機12、及び繊維フィルタユニット13を容易に通過することである。
図3を参照して、図2に示される排出物制御システム202に加えて、吸着材噴射機14と逆ベンチュリ装置15とを有する改良型石炭火力発電所300の模式図が示される。吸着材噴射機14は、吸着剤を気体排出物10に添加するよう動作し、逆ベンチュリ装置15の上流に配置されても良い。より具体的に、図3に示される例では、吸着材噴射機は噴射乾燥機12と繊維フィルタユニット13との間に配置される。逆ベンチュリ装置15を異なる位置に配置することも可能だが、図3では、逆ベンチュリ装置は繊維フィルタユニット13と煙突9との間に配置される。この配置の主要な利点の一つは、既存の設備に逆ベンチュリ装置15を設置可能であり、「既存変更許可(Modification to Existing Permit)」を申請するのみで足り、完全に新規の排出物制御システムを申請するのに比べて時間と費用の双方を節約できることである。動作時、気体排出物10は繊維フィルタユニット13から逆ベンチュリ装置15に送られる。以下により詳細に説明するように、この逆ベンチュリ装置15には、水銀、重金属、ナノサイズ粒子及びその他の汚染物質の相当量を収集し、捕捉するのに適する内部構造が設置される。したがって、煙突9を出て行く気体排出物10は、実質上全ての有害汚染物質が取り除かれている。
図4A~図4Dに示されるように、逆ベンチュリ装置15は、逆ベンチュリ形状である筐体16を有する。ベンチュリが、まずより大きな断面からより小さな断面に縮径し、その後より小さな断面からより大きな断面に拡大する導管として一般に記載されることはいうまでもない。したがって、本願明細書で用いられる「逆ベンチュリ」との用語は、その逆、すなわち、まずより小さな断面からより大きな断面に拡大し、その後より大きな断面からより小さな断面に縮径する導管を意味する。具体的に、開示される逆ベンチュリ装置15の筐体16は中心軸17に沿って延び、入口部18、拡径部19、および出口部20を有する。この筐体16の入口部18は、気体排出物10が、流入速度V1及び圧力P1で特徴づけられる所定の入口流速で流入するような大きさとされる。この筐体16の出口部20は、気体排出物10が、出口速度V3及び圧力P3で特徴づけられる所定の出口流速で流出するような大きさとされる。この拡径部19は、筐体16の入口部18と出口部20との間に配置され、内部に気体排出物10中の汚染物質を捕捉する拡径室21を形成する。この筐体16の拡径部19は、中心軸17とおよそ対向する内面68を有する。筐体16の入口部18、拡径部19、及び出口部20は、中心軸17に沿って、筐体16の入口部18、拡径部19、及び出口部20が互いに流体を介して連通するように順に配置される。すなわち、筐体16の入口部18、拡径部19、及び出口部20は、合わせて中心軸17に沿って延びる導管を形成する。
筐体16の入口部18は、中心軸17を横断する入口部断面積A1を有し、筐体16の出口部20は、中心軸17を横断する出口部断面積A3を有する。所定の入口流速が所定の出口部流速と等しく(すなわち同一と)なるよう、入口部断面積A1は出口部断面積A3と等しく(すなわち同一と)されても良い。あるいは、所定の入口流速が所定の出口部流速と異なる(すなわち、より小さくまたはより大きくなる)よう、入口部断面積A1と出口部断面積A3とは異なって(すなわち、より小さくまたはより大きくて)も良い。本明細書で用いられる「流速」という用語は、排出物の体積流量を示す。
筐体16の拡径部19は、中心軸17を横断し、入口部断面積A1及び出口部断面積A3よりも大きな拡径部断面積A2を有する。したがって、この拡径部19は、筐体16の拡径部19内の気体排出物10の流速V2が、筐体16の入口部18内の気体排出物10の流速V1よりも小さく、かつ筐体16の出口部20内の気体排出物10の流速V3よりも小さくなるような大きさとされる。このように流速が低下することで、筐体16の拡径部19内での気体排出物10の滞留時間が増加する。なお、本明細書中で用いられる「滞留時間」という用語は、気体排出物10内の分子が筐体16の拡径部19を通過するのに必要な時間の平均を意味する。すなわち、筐体16の拡径部19の「滞留時間」とは、拡径室21内の全ての排出物が更新されるのに要する時間と等しい。また、本明細書中で用いられる「断面積」との用語は、筐体16の厚みの変化に関わりなく同一である、内部断面積(すなわち、筐体16内部の空間)を意味する。したがって、拡径部断面積A2は、拡径室21の大きさを反映し、内面68によって区画される。
筐体16の形状により、筐体16の入口部18を通過する気体排出物10の内圧P1と、筐体16の出口部20を通過する気体排出物10の内圧P3とは、筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の内圧P2よりも大きい。筐体16の拡径部19内での気体排出物10の流速V2が筐体16の入口部18での気体排出物10の流速V1よりも小さく、かつ筐体16の出口部20の気体排出物10の流速V3よりも小さいという事実と合わせ、この圧力差によって気体排出物10が筐体16の拡径部19に滞留することになる。上述の圧力及び速度差の結果、及び気体排出物10が自然に膨脹して拡径室21の全体積を占めることになることから、筐体16の拡径部19内の気体排出物10には膨脹力が加えられることになる。この事実と層流、空気力学(pneumatic dynamics)及び気体挙動物理学(gas behavior physics)による効果との組み合わせにより、生じた滞留時間の増加によって逆ベンチュリ装置15の、気体排出物10から効率的に汚染物質を捕捉し、これにより除去する能力が向上する。
筐体16は、各種の異なる形状及び構造とされても良い。限定的でない例として、図4A~図4Dに示される筐体16の入口部18、拡径部19、および出口部20は、全て円形断面積A1、A2、A3を有する。これに代え、筐体16の入口部18、拡径部19及び出口部20の一つ以上の断面積A1、A2、A3は、非円形状であっても良く、円形及び非円形の断面の各種組み合わせが可能であり、本願開示の範囲内であると考えられる。いくつかの構造では、筐体16の拡径部19は、発散端部22と収束端部23とを有しても良い。これらの構造によれば、筐体16の拡径部19は、入口部断面積A1から発散端部22での拡径部断面積A2にかけ外側に向けてテーパ形状とされる。すなわち、筐体16の拡径部19の断面は、発散端部22において、筐体16の入口部18から遠ざかる方向に移動するにつれて大きくなる。これに対し、筐体16の拡径部19は、収束端部23において、拡径部断面積A2から出口部断面積A3に徐々に内向きにテーパ形状とされる。すなわち、筐体16の拡径部19の断面は、収束端部23において、筐体16の出口部20に向かう方向に移動するにつれて小さくなる。したがって、筐体16の拡径部19内の気体排出物10は、およそ発散端部22から収束端部23に流れる。筐体16の入口部18、拡径部19、及び出口部20が全て円形断面積A1、A2、A3を有する実施形態では、筐体16の発散端部及び収束端部22、23は、およそ円錐形状であっても良い。上記に関わらず、筐体16の拡径部19の発散及び収束端部22、23は別の形状とされても良い。限定的でない例として、発散及び収束端部22、23は、逆ベンチュリ装置15の筐体16を通過する気体排出物10の流れに重大な悪影響が及ばないようにしつつ、より製造しやすくするため、多角形とされても良い。別の代替構成では、筐体16の拡径部19は、入口部18と発散端部22との間及び収束端部23と出口部20との間で比較的急激に変化が起こるソーセージに似た形状を有しても良い。急激な変化よりもスムースな変化が好ましいのは、気体排出物10の層流の挙動がより好ましいからであると推定される。しかし、急激な変化に際しての気体排出物10の層流へのわずかな外乱は、絶対的な問題とは考えられず、むしろ滞留時間の増加が必要でない領域においては、より良い流れを生じさせる可能性もある。
引きつづき図4A~図4Dを、またさらに図5~図11を参照すると、反応物質塊24が筐体16の拡径部19内に配置される。この反応物質塊24は、気体排出物10と接触するよう配置される反応外表面25を有する。加えて、この反応物質塊24は、筐体16の拡径部19を通って反応物質塊24の反応外表面25に達する気体排出物10中の汚染物質の少なくとも一部と化学的に結合するアマルガム形成金属をその反応外表面25に含有する。このようにして、反応物質塊24の反応外表面25に結合された汚染物質は、筐体16の拡径部19内に捕捉されたままとなり、したがって筐体16の拡径部19から流出して筐体16の出口部20に流入する気体排出物10の流れから除去される。本明細書中で用いられる「アマルガム形成金属」という用語は、気体排出物10中の汚染物質の一種以上と化合物を形成可能な金属群から選択される材料を意味する。限定的でない例として、このアマルガム形成金属は亜鉛であり、気体排出物10中の汚染物質は水銀であっても良く、これにより気体排出物10が反応物質塊24の反応外表面25と接触する際に、亜鉛と水銀とのアマルガムが形成されても良い。
筐体16の拡径部19は、反応物質24中のアマルガム形成金属が気体排出物10中の汚染物質と化学的に結合するための十分に長い滞留時間を確保しつつ、所定の入口流速の気体排出物10を収容可能な大きさとされなくてはならない。したがって、このバランス達成のため、拡径部断面積A2は、1秒から2.5秒の範囲の滞留時間を実現するよう、3平方フィートから330平方フィートの範囲とされても良い。この特定の滞留時間は、気体排出物10中の汚染物質が反応物質塊24中のアマルガム形成金属と化学的に結合するのに十分な時間を確保するのに必要である。このように、拡径部断面積A2の範囲は、1メガワット(MW)から6000メガワット(MW)の範囲の出力を有する石炭火力発電所100において、この滞留時間を実現するよう算出された。化学分野で公知なように、アマルガム形成金属は、各種の異なる金属であって良い。制限的でない例として、このアマルガム形成金属は亜鉛、鉄及びアルミニウムからなる群から選択されても良い。筐体16は、反応物質塊24とは異なる材質からなる。制限的でない例として、筐体16は鋼鉄、プラスチックまたはグラスファイバからなっても良い。
反応物質塊24は、各種の異なる任意の構造を有しても良い。図4Aでは、反応物質塊24は、筐体16の内面68を被覆するものとして示される。あるいは、図5~図11に示されるように、反応物質塊24は、筐体16の拡径部19内に配置される一つ以上の障害要素26a~26jを形成しても良い。これらの障害要素26a~26jは、それ自体として筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の紆曲流路27を形成する。したがって、障害要素26a~26jは、筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の滞留時間を増加させる。下記のいくつかの実施形態では、筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の流れを完全に分断することから、形成される紆曲流路27は完全にランダムなものとされ、これにより、気体排出物10中の汚染物質と、反応物質塊24中のアマルガム形成金属との間の化学反応の機会が大幅に増加することとなる。
図5~図11に示される構造のそれぞれの障害要素26a~26jは、大きな表面積を有し、これにより反応物質塊24の反応外表面25が大きくなる。これは、反応物質塊24の反応外表面25中のアマルガム形成金属と気体排出物10中の汚染物質との化学反応によって、汚染物質が筐体16の拡径部19に捕集、捕捉、及び/又は、収集可能となり、気体排出物10から汚染物質が除去されることから有利である。したがって、筐体16の拡径部19によって拡径室21を通過する気体排出物10から除去可能な汚染物質の量は、筐体16の拡径部19中の反応物質塊24の反応外表面25の大きさに比例する。加えて、障害要素26a~26jの複雑な表面形状及び/又は組織により、汚染物質の捕捉が汚染物質とアマルガム形成金属との間の化学反応の結果であるか否かによらず、汚染物質を物理的に捕捉するのを容易にする追加の表面領域が得られる。
再び図3を参照すると、吸着材噴射機14によって排出物に添加される吸着剤は、アマルガム形成金属を含む。吸着剤中のアマルガム形成金属は、気体排出物10が筐体16の拡径部19に流入する前に気体排出物10中の少なくとも一部の汚染物質と化学的に結合する。吸着剤は数多くの異なる組成を有しても良いものの、吸着剤は、例えば亜鉛(Zn)粉末又は、銅・亜鉛・錫・硫化物(CZTS)化合物であっても良い。気体排出物10が筐体16の拡径部19に流入する前に吸着剤が気体排出物10中の少なくとも一部の汚染物質と化学的に結合することから、この吸着剤により、反応物質塊24による気体排出物10からの汚染物質除去が促進される。
図5に示されるように、障害要素26a~26jは、筐体16の拡径部19の内面68から延出する一連の交互配置バッフル26aとして設けられる。この一連の交互配置バッフル26aは中心軸17を横断し、紆曲流路27を蛇行形状とする。この紆曲流路27の蛇行形状により、気体排出物10の筐体16の拡径部19内の滞留時間が増加し、これにより一連の交互配置バッフル26aを形成する反応物質塊24による気体排出物10中の汚染物質の捕捉及び除去が促進される。一つの例では、この一連の交互配置バッフル26aは亜鉛からなる。別の例では、この一連の交互配置バッフル26aは亜鉛によって被覆される亜鉛以外の材質からなる。交互配置バッフル26aの配置は、中心軸17の長手方向に沿って等間隔又は対称である必要はない。というのは、いくつかの用途では、隣接するバッフル26a間により広い空間がある方が好ましく、他の用途では、隣接するバッフル26a間により狭い空間がある方が好ましいからである。また、この一連の交互配置バッフル26aは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。
図6A~図6Bに示されるように、少なくとも一つの要害要素26a~26jは、らせん状バッフル26bとされても良い。このらせん状バッフル26bは中心軸17に沿い、また中心軸17を中心として筐体16の拡径部19内でらせん状に延びる。したがって、らせん状バッフル26bにより、紆曲流路27がらせん形状となる。この紆曲流路27のらせん形状により、気体排出物10の筐体16の拡径部19内の滞留時間が増加し、これによりらせん状バッフル26bを形成する反応物質塊24による気体排出物10からの汚染物質の捕捉及び除去が促進される。一つの例では、このらせん状バッフル26bは亜鉛からなる。別の例では、このらせん状バッフル26bは亜鉛によって被覆される亜鉛以外の材質からなる。さらに別の例では、このらせん状バッフル26bは、中心軸17を中心として筐体16の拡径部19内で回転するよう、機械的に駆動される。このらせん状バッフル26bを回転させることで、筐体16の拡径部19を通る気体排出物10の流れを、らせん状バッフルの回転方向に応じて人為的に加速または減速可能となる。このらせん状バッフル26bは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。
図7A~図7Bに示されるように、少なくとも一つの要害要素26a~26jは、複数のバッフル26cである。それぞれのバッフル26cは、筐体16の拡径部19の内面68から筐体16の拡径部19を横断して延びる。このバッフル26cは中心軸17に沿って互いに離隔され、各バッフル26cは、バッフル26cを通過する気体排出物10の流れを許容するオリフィス28を有する。当然ながら、単一のバッフル26cのみを有する構成を含め、任意の数のバッフル26cが設けられても良い。各バッフル26c中のオリフィス28の大きさ、形状、及び数は変更可能である。例えば、バッフル26cはスクリーン状とされ、オリフィス28がスクリーンの十字線の間に設けられても良い。このバッフル26c中のオリフィス28により、筐体16の拡径部19内の気体排出物10の流れが制限され、筐体16の拡径部19内の気体排出物10の滞留時間が増加する。これにより、バッフル26cを形成する反応物質塊24による気体排出物10からの汚染物質の捕捉及び除去が促進される。一つの例では、このバッフル26cは亜鉛からなる。別の例では、このバッフル26cは亜鉛によって被覆される亜鉛以外の材質からなる。このバッフル26cは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。さらに別の例では、あるバッフル26cのオリフィス28の大きさは、隣接するバッフル26cのオリフィス28の大きさと異なる。異なるバッフル26cに異なる大きさのオリフィス28を用いることで、気体排出物10の流れが加速及び/又は制限され、バッフル26c内の反応物質塊による気体排出物10中の汚染物質の捕捉及び除去を促進可能である。同様に、バッフル26cは拡径室21において均等に離間していなくてもよく、また、あるバッフル26cのオリフィス28は、隣接するバッフル26cのオリフィス28と大きさや形状や位置が同じでなくても良い。これらオリフィス28の大きさ、形状及び位置を一つのバッフル26cから別のバッフル26cについて異なるものとすることにより、かつバッフル26cの間隔を異なるものとすることにより、筐体16の拡径部19内の気体排出物10の滞留時間を増加させて、反応物質塊24に沿った物理的及び化学的捕捉及び収集箇所との接触増大を促進可能である。
図8~図11に示される別の構成では、少なくとも一つの障害物要素26a~26jは筐体16それ自体に固定されなくても良く、その代わりに筐体16の拡径部19内部に自由に配置されても良い。このような構成では、少なくとも一つの障害要素26a~26jは、各種形態の障害媒体26d~26jを含んで良い。障害要素26a~26cと同様、障害媒体26d~26jは、亜鉛からなるものでも、亜鉛によって被覆される亜鉛以外の材質からなるものであっても良い。亜鉛は容易に溶解して、通常の成形方法、失ろう方法、遠心法などを用いて複雑な形状を鋳造可能である。他の形成方法としては、切削、押し出し、焼結、スタンピング、熱間鍛造及び成形、レーザ切断などがある。あるいは、鋼鉄を用いて原型を作り、その後に、表面カバーとして亜鉛で被覆またはメッキしても良い。この障害媒体26d~26jは、拡径室21全体を完全に充填、拡径室21を部分的に充填または図7A~図7Bに関連して前述されたバッフル26cの間を充填するのに使用可能である。
図8は、少なくとも一つの障害要素26a~26jが筐体16の拡径部19内に収容される複数の破片26dである構成である。この構成によれば、気体排出物10は、気体排出物10が筐体16の入口部18から出口部20に向けて筐体16の拡径部19を移動する際に、隣接する破片26dとの間の空間を通過する。このために、これらの複数の破片26dは、破片26dが筐体16の拡径部19内にゆるく詰められるように、不定形となっていても良い。限定的でない例として、この複数の破片26dは、モジイ亜鉛(mossy zinc)からなっても良い。モジイ亜鉛は、ポップコーン形状の亜鉛構造であって、溶融亜鉛を水などの冷却液に浸すことによって製造される。得られる溶融亜鉛の滴が固化して、比較的小さな、体積比において極めて大きな表面積を有する球状構造となる。加えて、得られる構造の表面積は、苔状の表面組織を有する。これらの構造は、特定用途のための大きさに製造可能である。鋼鉄を加工することで、モジイ亜鉛に類似する鋼鉄版の複合球状構造を製造可能であり、これは亜鉛によって被覆されても良い。
図8中のこれらの複数の破片26dがゆるく充填されることで、紆曲流路27がランダムな形状となり、これにより、気体排出物10の筐体16の拡径部19内の滞留時間が増加する。これにより、複数の破片26dを形成する反応物質塊24による気体排出物10からの汚染物質の捕捉及び除去が促進される。図8中のこの複数の破片26dは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。
図9に示される別の構成では、少なくとも一つの障害要素26a~26jが筐体16の拡径部19内に収容される複数のもつれ糸26eである。この複数のもつれ糸26eは、筐体16の拡径部19内で、毛糸状体を形成する。考えられる構成の一つでは、この複数のもつれ糸26eは、スチールウールのように折りたたまれ、丸められて非常に大きな表面積を有する塊を形成する。このもつれ糸26eそれ自体は、同じ組成、厚み及び長さであっても良く、あるいは異なる組成、厚み及び/又は長さの組み合わせであっても良い。一例では、これらの複数のもつれ糸26eは亜鉛ワイヤからなり、ランダムにもつれて亜鉛ウールを形成する。この亜鉛ウールは、様々なレベルの密度及び/又は大きさのワイヤから製造可能であり、特定の流れ制限能力を付与することができる。別の例では、これらの複数のもつれ糸26eはスチールワイヤからなり、ランダムにもつれてスチールウールを形成する。このスチールウールは亜鉛で被覆されても良い。図9中のこれらの複数のもつれ糸26eがゆるく充填されることで、紆曲流路27がランダムな形状となり、これにより、筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の滞留時間が増加する。これにより、複数のもつれ糸26eを形成する反応物質塊24による気体排出物10内の汚染物質の捕捉及び除去が促進される。これらの複数のもつれ糸26eは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。
図10を参照すると、前記少なくとも一つの要害要素26a~26jがフィルタ素子26fである別の代替構成が示される。このフィルタ素子26fは中心軸17に対して、筐体16の拡径部19を横切って延びる。このフィルタ素子26fは多孔質であり、フィルタ素子26f中の孔により、気体排出物10が筐体16の入口部18から出口部20に向けて筐体16の拡径部19を流れる際に、フィルタ素子26fを通過可能とされる。焼結金属からなっても良いフィルタ素子26fのこの構成により、紆曲流路27がランダムな形状となり、これにより筐体16の拡径部19を通過する気体排出物10の滞留時間が増加する。これにより、フィルタ素子26fを形成する反応物質塊24による気体排出物10内の汚染物質の捕捉及び除去が促進される。フィルタ素子26fの焼結金属は、亜鉛、または亜鉛によって被覆された非亜鉛材料からなるのが好ましい。このフィルタ素子26fは、逆ベンチュリ装置15の動作中に飽和した場合には、必要に応じて交換及び/又は洗浄されても良い。
図11を参照して、図7A~図7Bに示される複数のバッフル26cと、異なる大きさを有し図8に示される複数の破片26dに類似する複数の破片26g~26jとの組み合わせとして、少なくとも一つの障害要素26a~26jが示される。この別の構成によれば、これら複数のバッフル26cと複数の破片26g~26jは、筐体16の拡径部19内に配置される。図7A~図7Bと同様、図11に示される複数のバッフル26cは、筐体16の拡径部19の内面68から筐体16の拡径部19を横断して延びる。さらに、これらの複数のバッフル26cは、バッフル26cが拡径室21を複数の区画に分割するよう、互いに中心軸17に沿って離隔配置される。各バッフル26cのオリフィス28により、気体排出物10の流れがバッフル26cを通過可能となる。複数の破片26g~26jは、隣接するバッフル26cの間に配置される(すなわち、拡径室21の複数の区画内に配置される)。
図11及び図12A~図12Dに示されるように、複数の破片26g~26jにより反応物質塊24が形成される。これら複数の破片26g~26jは、異なる大きさとされ、同じ大きさのものとグループとされ(すなわち、破片26g、26h、26i、及び26jは別のグループにされ)、別の大きさの破片とはバッフル26cによって分離されても良い。例えば、破片26g~26jのグループは、破片26g~26jの大きさが筐体16の入口部18から遠ざかり、筐体16の出口部20に近づくにつれて小さくなるように配置されても良い。すなわち、各グループの破片26g~26jの大きさを徐々に変え、気体排出物10の筐体16の拡径部19内での全体の流れ方向に小さくなるものとしても良い。一つの例では、この破片26g~26jは亜鉛からなる。例えば、破片26g~26jは、溶融亜鉛を冷却液中に滴下して、非常に大きな表面積と、ランダムな苔状組織とを有するポップコーン形状の構造を作ることによって形成可能である。別の例では、異なる大きさの破片26g~26jが、一緒に混合されて、大きさに基づき分離されないものとしても良い。
図13A~図13Cには、いくつかの別の形状の障害要素26k~26mが非圧縮材として示され、これは図8及び図11に示される複数の破片26d及び26g~26jに加えて、又はこれに変えて用いることができる。図13Aは、障害物26kが反応物質塊24を形成し、子供のおもちゃである「Jacks」に似たアスタリスク形状を有する例を示す。図13Bは、別の形状の障害要素26k~26mが複数の結晶フレーク26l(一つのみ示す)であり、反応物質塊24を形成し、図8及び図11に示される破片26d及び26g~26jと同様、筐体16の拡径部19中に配置されても良い例を示す。この結晶フレーク26lは、雪片に類似の形状を有する。図13Cは、別の形状の障害要素26k~26mが、複数のワイヤコイル26m(一つのみ示す)であり、反応物質塊24を形成し、図8及び図11に示される破片26d及び26g~26jと同様、筐体16の拡径部19中に配置されても良い例を示す。障害物26kと複数の結晶フレーク26lとは、亜鉛、又は(これらに限られないが)失ろう鍛造(lost wax forging)、及び3Dプリンティングなどの各種工程を用いて亜鉛によって被覆された非亜鉛材料からなっても良い。これら複数のワイヤコイル26mは、例えば、亜鉛ワイヤをばねのような心棒コアに巻き付け、その後に巻き付けられたワイヤのコイル全体に心棒コアの全長に沿って切り込みを入れることで、個々のコイルのリングを得ることによって作られても良い。この別形状の障害要素26k~26mは、拡径室21に完全に充填されても充填されなくても良い。
上述の各種障害要素26a~26kを混ぜて各種の組み合わせを構成しても良い。この混合組み合わせの例は、図5、図6A~図6B及び図7A~図7Bに示される一つ以上のバッフル26a~26cと、図8及び図11に示される複数の破片26d及び26g~26jとを組み合わせることを含む。別の混合組み合わせの例は、図9に示される複数のもつれ糸26eと、図8及び図11に示される複数の破片26d及び26g~26jとを組み合わせることを含む。上述の各種障害要素26a~26kと活性炭などの他のフィルタ要素とを組み合わせる別の構成も可能である。活性炭は、スポンジのように、表面接触によって汚染物質を収集する。したがって、限られた量の活性炭を筐体16の拡径部19に導入して上述の各種障害要素26a~26kとともに作用させても良い。好ましくは、この障害要素26a~26kは、活性炭が拡径室21全体にわたり比較的静的に(relatively statically)配置されるよう、活性炭を筐体16の拡径部19内に保持する。この構成は、活性炭を気体排出物10の流れの中に放出する通常の排出物制御システムと反対である。活性炭が気体排出物とともに自由に流動しないことから、より効率的に活性炭を使用することが可能となる。当業者は、開示された逆ベンチュリ装置15の例が単に例示的なものであり、本願明細書に開示されたいくつかの例を超える数多くの組み合わせが可能かつ特定の用途に対応するのに望ましいことを容易に了解するであろう。
図14を参照して、導管38によって直列に接続される二つの拡径部19、19’を備える別の例示的逆ベンチュリ装置15’が示される。筐体16の一方の拡径部19は、筐体16の入口部18と導管38との間に延び、他方の拡径部19’は導管38と筐体16の出口部20との間に延びる。したがって、気体排出物10の紆曲流路27は延伸される。この構成によれば、気体排出物10は、拡径部19から導管38を通って拡径部19’に送られ、拡径部19’でさらなる汚染物質が収集及び/又は捕捉される。本願開示事項は、一つないし二つの拡径部19、19’のみを直列に用いることに限られない。というのは、大規模な排出物及び/又は高レベルの汚染物質を伴ういくつかの用途では、数多くの拡径部を直列に接続する必要がある可能性があるからである。
図15を参照して、並列に接続される二つの拡径部19、19’’を備える別の例示的逆ベンチュリ装置15’’が示される。スリーウェイインレットバルブ39が、気体排出物10の流れを制御し、気体排出物10を導管41または導管42に流入させる。スリーウェイアウトレットバルブ40は、導管41から導管42へ又は導管42から導管41へと直接逆流させることなく、気体排出物10を導管41または導管42から流出させる。気体排出物10は、気体排出物10が導管41から送られると、入口部18から拡径部19に流入し、出口部20から流出する。気体排出物10は、気体排出物10が導管42から送られると、入口部18’’から拡径部19’’に流入し、出口部20’’から流出する。図15に示されるこの逆ベンチュリ装置15’’の利点の一つは、拡径部19、19’’の他の一方が稼働を維持できることから、拡径部19、19’’の一方にメンテナンス、修理または掃除が必要となった場合、これを離隔し、システム全体をシャットダウンすることなくオフラインとすることができることである。
時間が経つと、反応物質塊24の反応外表面25上に生じる化学反応及び/又は汚染物質の物理的捕捉により、反応物質塊24が飽和点に達し、逆ベンチュリ装置15の効率が低下する可能性がある。したがって、図15に示される構成では、筐体16の拡径部19、19’’内の反応物質塊24を取り外し、交換及び/又は洗浄することで、完全にシャットダウンすることなく、逆ベンチュリ装置を飽和前の効率に回復することが可能となる。
飽和した反応物質塊から汚染物質を取り除く工程は、具体的な汚染物質の種類、及び使われたアマルガム形成金属の種類に依存する。筐体16の拡径部19、19’’内部に配置された拡径室21、21’’へのアクセスは、用いられる障害物の種類に応じたものとなる。比較的小さな、非圧縮の障害物が用いられる場合、注入及び/又は流出(pouring and/or draining)型のアクセスが必要となる。障害物が比較的大きなブロック、プレート、バッフルまたはアセンブリである場合、適切な持ち上げ及び取り扱い方法及びアクセス(lifting and handling methods and access)が必要となる。
さらに図15を参照して、逆ベンチュリ装置15は、筐体16の拡径部19、19’’と流体を介して連通する一つ以上のスプレーノズル81を有しても良い。このスプレーノズル81は、筐体16の拡径部19、19’’内の反応物質塊24上に脱酸素酸を噴射する位置に配置される。動作時、この脱酸素剤は、反応物質塊24を活性化させるため、反応物質塊24から汚染物質を洗い流す。あるいは、ドレイン82を筐体16の拡径部19、19’’と流体を介して連通させ、使われた脱酸素剤及び汚染物質を筐体16の拡径部19、19’’から搬出しても良い。飽和した亜鉛は、それが鋼鉄上に被覆されたものであっても、固形亜鉛の構造体であっても、リサイクルして再利用可能である点で好ましい。したがって、障害物中に用いられる材料は、再利用可能である。加えて、捕捉される汚染物質の多くは、特に水銀などの重金属は、照明及び塩素製造に再利用可能である。
図16を参照すると、拡径室45が入口導管43及び出口導管44の体積と比較して大幅に大きな体積を有する別の例示的逆ベンチュリ装置15が示される。この拡径部46は、拡径部46を流れる気体排出物のための拡大された紆曲流路77を提供するため、円形、四角形、三角形、楕円形、または所望の数多くの形状の事実上任意の一つであって良い(矩形形状が示される)。
図17を参照して、通常の気体排出物制御システムのブロック図が示される。気体排出物は炉47から静電式集塵装置(ESP)48、流動化気体脱硫(FGD)ユニット49、及び繊維フィルタ(FF)ユニット50に導入され、その後に煙突51を介して大気に放出される。汚染物質の第一濃縮物52が、ESP48において気体排出物から除去される。同様に、汚染物質の第二濃縮物53が、FGDユニット49において気体排出物から除去される。FGDユニット49によって生み出される第二濃縮物53は、しばしば水銀及びその他の重金属を含み、通常、排水中に流れ込む。汚染物質の第三濃縮物54は、FFユニット50において気体排出物から除去される。
最終的に、大気に排出される最終排出物は、なおEPAの排出物規則及び規制に適合し得ない。認可可能なEPAの排出物は、少なくとも90%の有害汚染物質が除去されることを要件とするのに対し、現状の一般的排出物制御システムでは、有害汚染物質の88~90%しか除去できない。汚染された排出物を生じる産業における大きな問題は、排出物を規制する規則が時を経るにつれてより厳しいものとなるのに対し、現状の排出物制御技術は、潜在的にその限界に達しているということである。したがって、現在行われている技術の進歩のペースは、より一層厳しくなる排出物規制のペースに追いつくことはできていない。
図18A~図18Bを参照すると、図17のブロック図とは、吸着剤噴射ポイントが導入され、気体排出物が上述の逆ベンチュリ装置15を通過する追加の工程が設けられた点で変形されている。図18Aでは、第一吸着剤導入ポイント55が、炉47とESP48との間に示される。これに代え、図18Bでは、第二吸着剤導入ポイント56がFDGユニット49とFFユニット50との間に示される。いずれのオプションが吸着剤にとって最も好ましいと見なされるかは、既存の構造及びプラントの状態に依存する。図18A~図18Bに示される二つのオプション以外にも、吸着剤を導入可能な導入ポイントないし導入ポイントの組み合わせは数多くあり、したがってこれら二つのオプションは、例示的目的で示される。図18A~図18B中の逆ベンチュリ装置15は、FFユニット50の後段かつ煙突51の前段に配置される。この逆ベンチュリ装置15は、各種用途に適したものとして、上述の例のいずれに準拠して構成されても良い。最終的に、逆ベンチュリ装置15を出てから煙突51を通じて大気に放出される最終気体排出物は、現状及び将来のEPA排出物規則及び規制に合致し、上回ることができるであろう。
図18A~図18Bに示される方法は、炉47内で燃料を燃やして汚染物質を含む気体排出物を発生させ、この炉47から気体排出物をESP48に流入させ、ESP48を使って気体排出物中の第一部分粒子状汚染物質を除去する工程を含む。ESP48を用いて気体排出物中の第一部分粒子状汚染物質を除去する工程により、ESP48によって気体排出物から除去される粒子状汚染物質の第一部分を含む第一濃縮物52が形成される。稼働時、ESP48は印加された静電電荷を用いて気体排出物から微細な汚染物質を除去する。この方法は、ESP48から気体排出物をFDGユニット49に導入し、FDGユニット49を用いて気体排出物中の二酸化硫黄汚染物質を除去する工程をも含む。FDGユニット49を用いて気体排出物中の二酸化硫黄汚染物質を除去する工程により、FDGユニット49によって気体排出物から除去された二酸化硫黄汚染物質を含む第二濃縮物53が形成される。この方法は、さらにFDGユニット49から気体排出物をFFユニット50(すなわちバグハウス)に導入して、FFユニット50を用いて気体排出物中の粒子状汚染物質の第二部分を除去する工程を含む。このFFユニット50を用いて気体排出物中の粒子状汚染物質の第二部分を除去する工程により、FFユニット50によって気体排出物から除去される粒子状汚染物質の第二部分を含む第三濃縮物54が形成される。稼働時、気体排出物がFFユニット50の一つ以上の繊維フィルタ(図示せず)を通過する際に、気体排出物から汚染粒子が除去される。
本願開示によれば、この方法は、さらにFFユニット50から気体排出物を逆ベンチュリ装置15に送り、逆ベンチュリ装置15を用いて気体排出物中の重金属汚染物質を除去する工程を含む。逆ベンチュリ装置15を用いて気体排出物中の重金属汚染物質を除去する工程により、気体排出物は逆ベンチュリ装置15内に配置された反応物質塊を通過する(すなわち、上を流れる)。反応物質塊内のアマルガム形成金属が気体排出物中の重金属汚染物質と化学的に結合する。したがって、重金属汚染物質が反応物質塊中のアマルガム形成金属と結合する際に、反応物質塊によって逆ベンチュリ装置15中の重金属汚染物質が捕捉される。この方法では、さらに逆ベンチュリ装置15からの気体排出物を、気体排出物を周囲の大気に放出する煙突51に送る。逆ベンチュリ装置15は、比較的小さな専有面積を有し、既存のシステムの排出物制御装置48、49、50と、大気への煙突51との間に容易に調和して据え付け可能なものである点で有利である。
この方法は、吸着剤を気体排出物に噴射する工程を含んでも良い。この工程によれば、図18Aに示されるように、吸着剤は炉47とESP48との間に配置された第一吸着剤導入ポイント55において気体排出物に噴射されても良い。あるいは、図18Bに示されるように、吸着剤はFDGユニット49とFFユニット50との間に配置された第二吸着剤導入ポイント56において気体排出物に噴射されても良い。吸着剤はアマルガム形成金属を含み、気体排出物が逆ベンチュリ装置15に流入する前に、気体排出物中の重金属汚染物質の少なくとも一部と結合する。吸着剤を第一吸着剤導入ポイント55または第二吸着剤導入ポイント56において気体排出物内に噴射することによって、より多くの水銀、重金属、及び酸ガスを、以前には実現不可能なレベルでFFユニット50内で収集可能である。上述のように、アマルガム形成金属は、亜鉛、鉄、及びアルミニウムからなる群から選択されて良く、吸着剤は、例えばCZTS化合物であっても良い。吸着剤は、有害汚染物質を収集及びリサイクル可能なように、再生・活性化可能である。
図19を参照して、通常の非気体排出物制御システムのブロック図が示される。液体及び/又は液体状排出物は、沈殿池61に送られる前に、流動化気体脱硫(FGD)ユニット59から、及び/又は、湿式気体洗浄装置58から、石灰処理ユニット60に送られる。適切な時間経過後、この非気体排出物は、沈殿池61から乾燥廃棄64の準備用処理システム又は脱水システム62中に送られる。乾燥廃棄64の処理を通って送られた非気体排出物は、廃棄場65内で廃棄準備される。場合により、再循環システムを備える脱水システム62を通って送られた非気体排出物は、例えば、石こう及び/又はセメント製造を含んでも良い二次産業工程63内で用いられるよう準備される。沈殿池61から脱水システム62または乾燥廃棄64用の処理に送られなかった非気体排出物は、排水溝66から排出されるよう送られる。この排水溝66に放出された最終の非気体排出物は、今後何年かした後に規制されるであろう程には規制されていない。提案されるEPAの水排出物規則及び規制は、現状排水溝に放出可能な排出物と比較して極めて制限が厳しい。汚染された液体排出物を排水溝に排出する必要のある産業は、現状の排出物制御技術を有するものの、これは来るべきEPA規制を満たし及び/又は遵守する可能性が実質的にない。
図20を参照すると、図19のブロック図は、上述の吸着剤を含む一つ以上の処理槽67によって変形される。沈殿池61から非気体排出物が送られた後、これらが排水溝66に排出される前に処理槽67が配置される。図20に示される方法は、汚染物質を含む非気体排出物を収集し、この非気体排出物をFGDユニット59及び/又は湿式気体洗浄装置58に通して非気体排出物中の汚染物質の一部を除去し、このFGDユニット59及び/又は湿式気体洗浄装置58から非気体排出物を石灰処理ユニット60に送り、かつこの非気体排出物に石灰処理ユニット60を通過させて、クラーク法によりこの非気体排出物を軟化させる工程を含む。稼働時、石灰処理ユニット60は、非気体排出物から沈殿により特定のイオン(例えば、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg))を除去する。この方法は、石灰処理ユニット60から非気体排出物を沈殿池61に送り、非気体排出物中の汚染物質の一部を沈殿させて除去し、沈殿池61中の非気体排出物の第一部分を脱水し、脱水された副産物を二次産業工程63で使用し、沈殿池61からの非気体排出物の第二部分を除去して、この非気体排出物の第二部分に乾燥廃棄処理64を加える工程をも含む。沈殿池61中の非気体排出物の第一部分を脱水し、脱水された副産物を二次産業工程63中で利用する工程においては、脱水工程は非気体排出物の第一部分を再循環する工程を含んでも良く、二次産業工程63は、例えば石こう又はセメントの製造工程を含んでも良い。沈殿池61からの非気体排出物の第二部分を除去し、この非気体排出物の第二部分に乾燥廃棄処理64を加える工程においては、乾燥廃棄処理64は非気体排出物の第二部分を廃棄場65中に堆積させる工程を含んでも良い。
本願開示において、この方法はさらに沈殿池61中の非気体排出物の第三部分を、開示された吸着剤を含む処理槽67に送る工程を含む。この吸着剤は、非気体排出物内の重金属汚染物質と結合するアマルガム形成金属を含む。したがって、この吸着剤は、重金属汚染物質が吸着剤と結合し、非気体排出物から沈殿/析出する際に、処理槽67中の重金属汚染物質を捕捉する。この方法では、その後、非気体排出物を処理槽67から排水溝66に送って排出しても良い。処理槽67は、非気体排出物(すなわち、排水流)が処理槽67から連続して流出可能なように設計されても良い。
本願開示の吸着剤に関し、いくつかの例示的実施形態が開示される。これらの例示的実施形態は、単なる例にすぎず、このテーマの可能な変形を網羅したリストを示すものではない。
上述のように、例示的吸着剤の一つは、元素亜鉛粉末である。亜鉛粉末は、亜鉛元素からなる。亜鉛は、粉末として、または粒体として用いられて良い。高温下で、何らかの気体排出物に用いる亜鉛粉末及び/又は粒体の有効寿命を延ばし、事前の酸化を低減及び/又は防止するのに用いられる方法の一つは、この粒体及び/又は粉末をスルファミン酸、クエン酸及び他の有機酸などの固体の酸と混合し、または固体の酸で被覆することである。この粉末/酸混合物は、気体排出物(例えば、燃焼排ガス流)に噴射され、及び/又は逆ベンチュリ装置15の適切な実施形態中に配置されても良い。
亜鉛粉末の最適粒径は、0.5ナノメートルから7,500ミクロンの範囲である。加えて、異なる大きさの粒径範囲を有する粉末混合物が、特に粒径範囲が0.5ナノメートルから7,500ミクロンである場合に有利であることが判明している。同様に、亜鉛粒体の最適粒径は、7,500ミクロンから3.0インチの範囲である。加えて、異なる大きさの粒径範囲を有する粒体混合物が、特に粒径範囲が7,500ミクロンから3.0インチである場合に有利であることが判明している。
別の例示的実施形態では、この吸着剤は、分子式Cu2ZnSnS4であるCZTSである。CZTSは、他の相の銅、亜鉛、錫及び硫黄からなっても良く、これも有利である。CZTS及び/又は関連する相の銅、亜鉛、錫及び硫黄は、化学量論的な比率で混合され、その後に機械化学配合を粉砕器(mill)中で行っても良い。さらに、このCZTSは、同じ割合のベントナイト又はゼオライトなどの粘土、及び水酸化カルシウム(CaOH)のいずれかと混合されても良い。CZTS粉末の最適粒径は、0.5ナノメートルから7,500ミクロンの範囲である。試験及び開発中に、異なる大きさの粒径範囲を有するCZTS粉末混合物が、特に粒径範囲が0.5ナノメートルから7,500ミクロンである場合に有利であることが判明している。特殊なCZTS粒体が好ましい用途では、最適な粒径は、7500ミクロンから3.0インチの範囲であることが判明している。加えて、異なる大きさの粒径範囲を有するCZTS粒体混合物が、特に粒径範囲が7,500ミクロンから3.0インチである場合に有利であることが判明している。
大部分の汚染物質について、CZTSは、上述の範囲内で最も小さな粒径で、金属相のCZTSが多量に存在する場合に最も効率的である。なお、CZTSの製造時に、銅、亜鉛、錫及び硫黄がCZTSに完全に変換されることはなく、各相(例えば、ダンバ鉱(CuZn2)及び硫化錫(SnS))の混合物となる。
CZTSの例示的な製造方法の一つでは、銅、亜鉛、錫、及び硫黄が粉砕器に特に順序を問わずに追加される。粉砕工程は、ボールミルまたは何らかの種類の摩擦粉砕器を用いて、あるいは、順次用いて所望の粒径を得る粉砕装置の組み合わせにより達成される。例示的粒径は、325標準メッシュスクリーンから100標準メッシュスクリーンの範囲である(1標準メッシュスクリーン=7500ミクロン)。得られる粒子は、さらに所定のモル比である銅:亜鉛:錫:硫黄=1.7:1.2:1.0:4.0に計量される。メッシュサイズとモル比とを確認した後、これらの粒子は粉砕されて、CZTS及びその他の相に機械化学配合される。粉砕時間は、具体的用途に応じて最適な特性を示すよう制御される。なお、粉砕工程は、不活性ガス雰囲気中で行われる、グリコールエーテル、エチレングリコール、アンモニアまたはその他のアルコールなどの適切な溶媒を添加した湿式粉砕工程または不活性ガス雰囲気中で行われる乾式粉砕工程を用いて行うことができる。
粉砕工程中、粒径分析機、SEM、XRDを用いて粒径を判定し、またはラマン法を用いて相変態比率を判定するため、断続的にサンプリングが行われる。粉砕器のボール径は重要であり、試験により、ボール-粒子重量比(ball-to-powder weight ratio)(電荷比)が少なくとも5:1である場合に最適化されることが示されている。粉砕ボールは、鋼鉄、セラミックス、ジルコニアまたはその他の最終製品を汚染することなく、サイズ及び/又は相変換を実現する材料からなるのが最も好ましい。湿式粉砕を採用する場合、CZTSは乾燥される。その後、CZTSは、ベントナイトまたはゼオライト、及び水酸化カルシウムを均等に混合するため、リボンブレンダー、V-ブレンダーまたはその他の適切なミキサを用いて混合される。
上述の方法によれば、吸着剤は、温度がおよそ華氏750℃以下の気体排出物中に導入される。この吸着剤は、これらに限られないが、噴射、流動床、被覆フィルタ及び捕捉などのいくつかの方法のいずれかによって気体排出物中に導入される。導入方法は、プラント中の既存の排出物制御システムに基づき、設置を容易とするよう選択可能である。便宜な方法の一つは、CZTSを活性炭の代わりに気体排出物中に噴射することであり、同じ噴射設備を変形し、または変形せずに利用可能である。
いくつかの用途では、有効に汚染物質を除去するためCZTSをベントナイトと混合する場合に、気体排出物の処理が最適化される。あるいは、非気体排出物の処理は、CZTSがゼオライトと混合される場合に最適化される。CZTSと混合される特定の材料に加え、混合物の比率は、最適な汚染物質除去能力を提供するために用途に特化されたものであっても良い。
図18A~図18Bに示されるように、CZTSを気体排出物処理に用いる場合、繊維フィルタユニット50をCZTS導入ポイント55、56の下流に配置して、繊維フィルタユニット50によって吸着剤粒子を捕捉し、気体排出物と吸着剤との間の接触時間を増加させる。繊維フィルタユニット50の繊維フィルタ(すなわちバグ)上に吸着剤を沈着させることで、気体排出物と吸着剤との間でより長時間接触可能となり、また吸着剤を収集してその後に再生することができる。吸着剤の粒径が小さいことで、風によって塵が運ばれるように、吸着剤を気体排出物の流れに沿って送ることが可能となる。吸着剤が気体排出物の流れの中で運ばれる期間中、吸着剤は気体排出物の流れ中で移動する汚染物質と接触し、これにより汚染物質が吸着剤と化学的に反応し結合することになる。繊維フィルタユニット50に到達すると、気体排出物は繊維フィルタユニット50中のフィルタを引きつづき通過する一方、結合した吸着剤と汚染物質の粒子は、大きすぎるため、フィルタを通過できない。CZTS粒子が10ミクロン以下である場合、繊維フィルタユニット50中のフィルタを予めより大きなCZTS粒子、活性炭、タルク、石灰その他の適切な物質で被覆して、より小さなCZTS粒子がフィルタを通過しないようにする必要がある可能性がある。あるいは、より小さなミクロンサイズのフィルタを繊維フィルタユニット50に用いても良い。
非気体排出物用の他の用途では、CZTSは図20に示される処理槽67に導入されても良い。この構成では、CZTSは処理槽67に導入されて一定時間攪拌されるのが好ましく、その後、排出前に、非気体排出物(例えば排水)にpH調整、凝集、及び濾過が加えられる。その後、処理槽67中のCZTSには、汚染物質をCZTSから除去する再生工程が加えられても良い。使用済みCZTSは、水銀をCZTSから濾過することにより、または真空蒸溜によって再生可能である。得られた汚染物質は、その後に他の産業で利用可能である。CZTSにより、非気体排出物内の硝酸塩及び窒化物レベルを低減可能であるという利点も得られる。
EPAによって定立された、2016年に施行される排水規制は、空気についてのものよりもはるかに厳しい。ナノグラム/リットル(ng/L)、マイクログラム/リットル(ug/L)、及び/またはグラム/Lの単位で挙げられた現行のEPA規制のいくつかを挙げると以下の通り。水銀119ng/L、砒素(As)8ug/L、セレン(Se)10ug/L、二酸化窒素(NO2)及び硝酸塩(NO3)0.13g/L。鉛(Pb)及びカドミウム(Cd)などの他の重金属も、EPA規制レベル案に含まれる。既存プラントの多くでは、許容可能な排出規制を超える汚染レベルの排水が滞水池及び/又は他の種類の何らかのスラッジ貯水槽に送られる。CZTSは、滞水池内で、本願明細書に開示される非気体排出物を処理するのと同じ方法で固体を処理可能である。重金属のイオン形態、スラッジ組成及び/又はpHに応じて、CZTSの滞水池中の接触時間は適切に調整可能である。十分なpH調整、凝集、及びその後の濾過により、通常の排出、廃棄及び/又は他産業での利用が可能となるが、これらのいずれも以前には不可能であったものである。
なお、本明細書に開示される吸着剤は、当業種で現在用いられる活性炭を含め、遊離炭素を何ら含まない。結果として、開示される方法の副産物として生成される金属硫化物のいずれも濾過されない。したがって、これらの副産物は、石こうウォールボード及びセメント用途において、工業的価値が高い。EPAの金属硫化物濾過試験は公知であり、これらの製品への使用は良く立証されている。
活性炭は、いくつかの別構成では利用可能であるものの、これらの変形例で活性炭を利用するのが制限されるため、活性炭を排出物内に漏出させることはできない。例えば、一例では、活性炭は繊維フィルタユニット50のフィルタ中に埋め込まれる。この活性炭は、気体排出物の流れに自由に漏出することはない。別の形の活性炭の限定的な使用としては、活性炭で結晶形態のCZTSを被覆し、1.0ナノメートル以下の厚みの炭素薄膜を有するCZTSを製造することも可能である。これにより、極めて小さな水銀の金属蒸気粒子の捕捉が促進される。同様に、結晶状のCZTSをナノメートル状のゼオライト薄膜またはその他の被覆材で被覆し、特定用途のための特定の有害汚染物質を対象とすることも可能である。再言するが、この変形例での活性炭は、気体排出物の流れに自由に漏出することはない。
図21を参照して、排出物から公知の排出物制御システムによって除去された汚染物質の割合と、本願で開示された逆ベンチュリ装置および方法によって除去された汚染物質の割合とがグラフによって示される。EPAによって、現在、90%の汚染物質レベル78が気体排出物について定められる。既存の排出物制御システム79は、有害汚染物質の88%から90%を除去するのに有効である。しかし、EPAは数年にわたって必要な最低汚染物質除去割合を引き上げており、既存の排出物制御システムの多くがこの要件を満たすことができず、また多くの他の既存の排出物制御システムは、現行の技術の下で利用可能な最大除去能力において稼働する際に要件を満たすことができるのみである。
さらに図21を参照すると、例示的排出物制御システム80は、本願明細書に開示される逆ベンチュリ装置、吸着剤及び/又は方法に基づく新たな排出物制御システム、又は本願明細書に開示される逆ベンチュリ装置、吸着剤及び/又は方法を含むことで変形及び補強された既存の排出物制御システムである。試験により、この例示的排出物制御システム80は、現行のEPA規制レベルを遙かに上回る有害汚染物質の少なくとも98%を除去することが可能であり、有効であることが確認されている。
図22および図24を参照して、排出物制御方法の一例が図示される。これによれば、汚染された気体源150がシステムに導入されると、一つ以上の流動床前置フィルタ151と、流動床152と、一つ以上の流動床後置フィルタ153と、システム側排出部154を通過し、気体排出物が環境規制に基づく放出により煙突155から放出される。なお、汚染された気体源150を最初に一つ以上の流動床前置フィルタ151に通すことは常に必要というわけではないが、特定用途での要件に応じて一つ以上の流動床前置フィルタ151が必要となることもある。
流動床152は、具体的な長さL対直径Dの大きさの比が最小で2.9:1、最大で9.8:1である逆ベンチュリ形状を有する。この比は、反応物質164といった特殊な吸着剤が充填された流動床152における汚染された気体源150の滞留時間を延長するため最適化される。反応物質164は、銅・亜鉛・錫・硫化物(CZTS)化合物、及び/又は、その合金からなる吸着剤である。流動床152に合った長さL対直径D比の好ましい例は4.4:1であり、この比は試行錯誤に基づく試験によって決定されている。
好ましくは、流動床152は概ね曲面の断面図を有する。図24には示されていないが、一種以上の各種バッフル及び/又は本明細書で開示される他の特定用途向け流れ制限障害物を流動床152に組み込むことが可能である。流動床152はまた、滞留時間が延長され、反応物質164を通過した乱流が最小限となるように、概ね外側に延出した凸状端部168及び169を特徴として有する。汚染された気体源150の流れが入口165から流動床152に流入すると、反応物質164とまず密接に接触し、その結果、ランダムな非乱流166が生じる。ランダムな非乱流166は概ね外側に延出した凸状端部168及び169により自ら逆戻りし、その結果、非乱流166が出口167から流動床152を出る前の、流動床152中の滞留時間が延長される。反応物質164はランダムな非乱流166を助長し、汚染された気体源150のためのランダムに紆曲流路を形成する。なお、流動床152の長さLは凸状端部168及び169を含まない。
流動床152は、吸着剤洗浄ステーション156に通じる側面排出口170を有する。吸着剤洗浄ステーション156は、使用済みの吸着剤157をシステムから除去して廃棄してもよい。さらに、反応物質164により汚染された気体源150から捕捉され、吸着剤洗浄ステーション156において反応物質164から分離された汚染要素158は、廃棄及び/又はリサイクル可能である。吸着剤洗浄ステーション156は、洗浄済みの反応物質164を、吸着剤戻し口159から流動床152に還元可能である。大量補充用吸着剤容器168によれば、除去された使用済みの吸着剤157に代替するように、必要に応じて反応物質164を補充可能である。システム側排出部154によれば、気体排出物は環境規制に基づく放出により排出用煙突155から排出可能である。さらに、捕捉された廃棄物160の排出も可能である。
図23及び図24を参照して、排出物制御の一例が図示される。これによれば、汚染された非気体源161がシステムに導入されると、一つ以上の流動床前置フィルタ151と、流動床152と、一つ以上の流動床後置フィルタ153と、システム側排出部154を通過し、非気体排出物が環境規制に基づく放出162によって放出される。なお、汚染された非気体源161を最初に一つ以上の流動床前置フィルタ151に通すことは常に必要というわけではないが、特定用途での要件に応じて一つ以上の流動床前置フィルタ151が必要となることもある。
流動床152は、具体的な長さL対直径Dの大きさの比が最小で2.9:1、最大で9.8:1である逆ベンチュリ形状を有し、この比は反応物質164といった特殊な吸着剤が充填された流動床152における汚染された非気体源161の滞留時間を延長するため最適化される。反応物質164は、銅・亜鉛・錫・硫化物(CZTS)化合物、及び/又は、その合金からなる吸着剤である。流動床152に合った長さL対直径D比の好ましい例は4.4:1であり、この比は試行錯誤に基づく試験によって決定されている。
好ましくは、流動床152はまた、滞留時間が延長され、反応物質164を通過した乱流が最小限となるように、概ね外側に延出した凸状端部168及び169を特徴として有する。汚染された非気体源161の流れが入口165から流動床152に流入すると、反応物質164とまず密接に接触し、その結果、ランダムな非乱流166が生じる。ランダムな非乱流166は概ね外側に延出した凸状端部168及び169により自ら逆戻りし、その結果、ランダムな非乱流166が出口167から流動床152を出る前の、流動床152中の滞留時間が延長される。反応物質164はランダムな非乱流166を助長し、汚染された非気体源161のためのランダムに紆曲流路を形成する。なお、流動床152の長さLは凸状端部168及び169を含まない。
好ましくは、流動床152は概ね曲面の断面図を有する。図24には示されていないが、一種以上の各種バッフル及び/又は本明細書で開示される他の特定用途向け流れ制限障害物を流動床152に組み込むことが可能である。流動床152は、吸着剤洗浄ステーション156に通じる側面排出口170を有する。吸着剤洗浄ステーション156は、使用済みの吸着剤157をシステムから除去して廃棄してもよい。さらに、反応物質164により汚染された非気体源161から捕捉され、吸着剤洗浄ステーション156において反応物質164から分離された汚染要素158は、廃棄及び/又はリサイクル可能である。吸着剤洗浄ステーション156は、洗浄済みの反応物質164を、吸着剤戻し口159から流動床152に還元可能である。大量補充用吸着剤容器168によれば、除去された使用済みの吸着剤157に代替するように、必要に応じて反応物質164を補充可能である。システム側排出部154によれば、環境規制に基づく放出162による非気体排出が可能である。さらに、捕捉された廃棄物163の排出も可能である。
図25、図26、図30及び図31を参照して、汚染された気体排出物250を、一つ以上の前置フィルタ251と、流動床253と、一つ以上の後置フィルタ255と、システム側排出部256に通し、最終的に制御された気体排出物として排出用煙突257及び/又は廃棄処理プロセス262を介して放出する方法の一例を示す。流動床253は長手面290によって二等分され、可搬式架台271は面299内で延伸する。入口P3と出口P4は、長手面290が可搬式架台271の面299に対して平行な向きとなるように流動床253が配置される時、気体排出物を受入・排出するように構成される。流動床253内の障害物(図示略)により、気体排出物が入口P3から導入されたり出口P4から排出される際に特によく適した、好ましい紆曲流路が形成される。入口P3と出口P4は流動床253の長手面290より上に配置される(すなわち、可搬式架台271から離間した方向に向く、流動床253の半分側に配置される)。
流動床253はトラック254の可搬式架台271に搭載される。傾斜メカニズム272は、合計スイープ角度292が96度となるように、流動床253を第一傾斜角度267と第二傾斜角度277の間で旋回点252回りに傾斜可能に構成される。気体排出物が流動床253で処理される際、傾斜メカニズム272により流動床253は気体排出物処理角度265に位置決めされ、流動床253の長手面290の向きは可搬式架台271の面299に対し平行となる(すなわち流動床253の長手面290と可搬式架台271の面299の間の傾斜角度が略0度)。なお、トラック254が平地に置かれている場合、気体排出物処理角度265は流動床253の長手面290が略水平となる向きに相当する。また、傾斜メカニズム272は流動床253を第一振動角度266と第二振動角度267の間の気体排出物処理角度265に対して往復振動させ、角度268と269の組み合わせである気体排出物の振動スイープ角度270を規定するように構成されても良い。
気体排出物の場合、流動床253は振動スイープ角度270が5.5度(角度268が3.0度、角度269が2.5度)で傾斜することが好ましい。傾斜メカニズム272は、流動床253を位置263と264の間で撹拌するように振動させ、流動床253内の吸着剤を通る紆曲流路の効果を向上させる。なお、発明者はテストにより、上記で開示された角度が気体排出物の処理に好ましいことを見出しているが、本開示事項の範囲から逸脱することなしに別の角度が採用されても良い。
吸着剤によって捕捉された汚染粒子が除去される吸着剤洗浄ステーション258が、流動床253の排出口P5と流体を介して連通する。除去された汚染物質は、ステーション261を介してリサイクルまたは廃棄可能である。消耗した吸着剤はステーション259を介して廃棄され、洗浄済み吸着剤が吸着剤戻しステーション260から戻し口P6を介して流動床253に戻され再利用される。
図27、図28及び図30~図32を参照して、汚染された非気体排出物295を、一つ以上の前置フィルタ251と、流動床253と、一つ以上の後置フィルタ255と、システム側排出部256に通し、最終的に環境規制に基づく非気体放出273として放出、及び/又は、廃棄処理プロセス274を介して放出する方法の一例を示す。入口P2と出口P1は、長手面290が可搬式架台271の面299に対して交差する(transverse)向きになるように流動床253が位置決めされている時、非気体排出物を受入・排出可能である。流動床253内の障害物(図示略)により、非気体排出物が入口P2や出口P1から導入される際に特によく適した、好ましい紆曲流路が形成される。入口P2及び出口P1は流動床253の長手面290によって二等分される(すなわち、流動床253の長手面290と一直線上に並ぶ)。
非気体排出物が流動床253で処理される際、傾斜メカニズム272により流動床253は非気体排出物処理角度289に位置決めされ、流動床253の長手面290の向きは可搬式架台271の面299に対し交差する(すなわち、流動床253の長手面290と可搬式架台271の面299の間の傾斜角度が略90度)。なお、トラック254が平地に置かれている場合、非気体排出物処理角度289は流動床253の長手面290が略垂直となる向きに相当する。また、傾斜メカニズム272は流動床253を第一振動角度277と第二振動角度278の間の非気体排出物処理角度289に対して往復振動させ、角度279と280の組み合わせである気体排出物の振動スイープ角度281を規定するように構成されても良い。
非気体排出物の場合、流動床253は振動スイープ角度281が7.5度(角度279が3.5度、角度280が4.0度)で傾斜することが好ましい。傾斜メカニズム272は、流動床253を位置275と276の間で撹拌するように振動させ、流動床253内の吸着剤を通る紆曲流路の効果を向上させる。なお、発明者はテストにより、上記で開示された角度が非気体排出物の処理に好ましいことを見出しているが、本開示事項の範囲から逸脱することなしに別の角度が採用されても良い。
吸着剤によって捕捉された汚染粒子が除去される吸着剤洗浄ステーション258が、流動床253の排出口P5と流体を介して連通する。除去された汚染物質は、ステーション261を介してリサイクルまたは廃棄可能である。消耗した吸着剤はステーション259を介して廃棄され、洗浄済み吸着剤が吸着剤戻しステーション260から戻し口P6を介して流動床253に戻され再利用される。
図29、図30及び図31を参照し、曝気されたスラッジ状排出物を流動床253で処理する際、流動床253が曝気スラッジ排出物処理角度297に位置決めされ、流動床253の長手面290が角度291を二等分する(すなわち、流動床253の長手面290と可搬式架台271の面299の間の傾斜角度が略45度)トラック254が示される。このような汚染されたスラッジ状排出物は一般的に、気体排出物と非気体排出物双方の性質を備える。これらの排出物がより気体排出物に近ければ、入口P3と出口P4が使用されても良い。これらの排出物がより非気体排出物に近ければ、入口P2と出口P1が使用されても良い。特定用途向けの選択肢によって、操作者は入口P2とP3のどちらを使用するか、また、出口P1とP4のどちらを使用するかを選択することができる。
図26、図28及び図29を参照し、スラッジ状排出物が自然に曝気され、及び/又は、それにより(濃度が)高められる(enhanced)と、排出物が気体及び/又は非気体排出物とは異なる特有の性質をもって流れる場合がある。このような用途の場合、傾斜メカニズム272は流動床253を第一振動角度284と第二振動角度285の間の曝気スラッジ排出物処理角度297に対して往復振動させ、角度286と287の組み合わせである曝気スラッジ状排出物の振動スイープ角度288を規定するように構成されても良い。
曝気スラッジ状排出物の場合、流動床253は振動スイープ角度288が約10度(角度286が5.0度、角度287が5.0度)で傾斜することが好ましい。傾斜メカニズム272は、流動床253を位置282と283の間で撹拌するように振動させ、流動床253内の吸着剤を通る紆曲流路の効果を向上させる。なお、発明者はテストにより、上記で開示された角度が曝気スラッジ状排出物の処理に好ましいことを見出しているが、本開示事項の範囲から逸脱することなしに別の角度が採用されても良い。
図31を参照し、時計回り(図示略)または反時計回り(図示)の回転293により、流動床253で撹拌可能である。回転による撹拌293は特定用途に応じた可変な範囲の回転速度に設定可能である。流動床253を第一径方向位置295と第二径方向位置296の間で往復回転させて径方向振動角度294を規定し、流動床253を回転振動させることにより、撹拌をさらに強化することができる。径方向振動角度294による回転振動のサイクル速度は、特定用途に応じた可変な範囲の振幅及び/又は弧の長さに設定可能である。
流動床253に適用が提案される別の撹拌方法(図示略)には、外部振動励起装置や、内部超音波振動装置や、加熱システム、及び/又は同様のシステムがある。さらに、流動床253に入る前に排出物の流れにパルス状の乱流(pulse-like disturbance)が生じるようにバルブ装置をプログラミングして排出物の流れを妨害することにより、及び/又は、流動床253の出口で排出物の流れを乱すことにより、流れ(図示略)をさらに撹拌することができる。
なお、この方法での工程は特定の順番で記載され図示されるものの、これらの工程は、工程の順序が別の形で記載される場合を除き、本願開示事項の範囲から逸脱しない範囲で異なる順序で実施されても良い。同様に、本願明細書に記載され図示される方法は、本願開示事項の範囲から逸脱しない範囲で、上述の工程全てを含むことなく、または記載されていない中間工程を追加して実施可能である。
本発明については、上記開示事項に照らし、数多くの変形例が可能であり、添付請求項の範囲内で具体的に記載されるのとは別の形で実施可能なことは明らかである。これらの先行記載は、発明性のある新規性(inventive novelty)が有用である任意の組み合わせをカバーするものと解釈されるべきである。装置クレーム中の「前記(the)」との単語の使用は、請求項の範囲内に含まれることを意図する積極的記載である先行的基礎を指し示すが、この「前記(the)」との単語は、請求項の範囲に含まれることを意図しない用語に前置される。