JP7278859B2 - 荷電粒子加速装置及びその調整方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、荷電粒子加速装置及びその調整方法に関する。
加速器では、荷電粒子のビーム軌道を制御するために、偏向電磁石、四極電磁石、スクリーンモニターといった複数の制御機器が、このビーム軌道に沿って設置される。そしてこれら制御機器は、ビーム軌道に対し、高精度で据え付けられることが要求される。このため、これら制御機器の据え付けに際し、建屋の固定点を基準とし位置決めするアライメント調整が行われる。一方において加速器には、入射器の調整にのみ使用されるエミッタンスモニタのように、調整時のみ設置され通常運転時には取り外される機器が存在する。
特開2007―149405
このように加速器を施工するに際し、調整段階から通常状態に切り替える度に、制御機器の精密アライメントを繰り返し実施する必要があり、多くの時間が割かれていた。
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、制御機器の据え付けを繰り返し実施する場合であっても、アライメント調整を繰り返す必要がない荷電粒子加速装置及びその調整方法を提供することを目的とする。
実施形態に係る荷電粒子加速装置において、荷電粒子が通過するダクトを貫通させるとともに前記荷電粒子のビーム軌道を制御する制御機器と、基礎に固定される架台に支持されるとともに前記ビーム軌道に干渉しないストローク幅で前記制御機器を前記ビーム軌道に対し交差する方向に可逆的に移動させるステージと、を備え、前記ステージは、前記架台に固定される固定板と、前記制御機器が固定されるとともに前記固定板に対して相対的に移動する移動板と、を有し、前記制御機器が設置される前記ステージとは別個に、調整段階で稼働させる調整機器を前記ビーム軌道に対し交差する方向に可逆的に移動させるステージを備えるか、もしくは前記固定板及び前記移動板の少なくとも一方は、通常運転時において前記制御機器が占有する領域を除く領域の一部が分断可能である。
本発明の実施形態により、制御機器の据え付けを繰り返し実施する場合であっても、アライメント調整を繰り返す必要がない荷電粒子加速装置及びその調整方法が提供される。
(A)第1実施形態に係る荷電粒子加速装置の、通常状態における上面図、(B)B-B部分断面図、(C)C-C部分断面図。 (A)第1実施形態に係る荷電粒子加速装置の、調整段階における上面図、(B)B-B部分断面図、(C)C-C部分断面図。 第2実施形態に係る荷電粒子加速装置の部分上面図。 図3に示される荷電粒子加速装置の規制部材のB-B断面図。 (A)第3実施形態に係る荷電粒子加速装置の、設置時における上面図、(B)調整段階における上面図、(C)通常状態における上面図。 各実施形態に係る荷電粒子加速装置の調整方法のフローチャート。
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1(A)は第1実施形態に係る荷電粒子加速装置10Aの通常状態における上面図であり、図1(B)はそのB-B部分断面図であり、図1(C)はそのC-C部分断面図である。
このように荷電粒子加速装置10A(10)は、荷電粒子が通過するダクト11を貫通させるとともに荷電粒子のビーム軌道12を制御する制御機器15(15a,15b,15c)と、基礎(図示略)に固定される架台16に支持されるとともに制御機器15をビーム軌道12に対し交差する方向に可逆的に移動させるステージ20と、を備えている。
荷電粒子加速装置10A(10)は、複数のダクト11の両端の継手部分で相互接続してビーム軌道12が形成される。互いに隣接するダクト11の対向する継手部分(フランジ板)を突合せ、ネジ等で締結し、複数のダクト11を繋ぐことにより、運動する荷電粒子のビーム軌道12が形成される。
そして、このビーム軌道12に沿って偏向電磁石、四極電磁石、スクリーンモニターといった複数の制御機器15(15a,15b,15c)が設置され、ダクト11の内部空間を運動する荷電粒子の軌道が制御される。なお、制御機器15は、これらに限定されるものではない。
架台16は、重量物である荷電粒子加速器10A(10)を、ビーム軌道12に沿って支持する構造物であり、コンクリート打設された基礎(図示略)の上に構築されている。なお図示においてこの架台16は、長手方向を水平に配位したH型鋼を例示しているが、その態様は特に限定はなく、制御機器15の設置位置に応じて、垂直または斜めに配位することも可能である。
ステージ20は、架台16に固定される固定板22と、制御機器15が固定されるとともに固定板22に対して相対的に移動する移動板21と、を有している。さらにこのステージ20は、軸回転することにより固定板22に対し移動板21を移動させる直動機構部23を有している。
移動板21の下面は、固定板22の上面に当接し摺動する。そして移動板21は、ビーム軌道12に沿う方向の移動は規制されつつ、ビーム軌道12と交差する方向は、制御機器15がビーム軌道12に干渉しない程度のストローク幅を持って移動することができる。なお図示を省略しているが、固定板22の上面に位置決めされた移動板21は、その位置において締結部材等で、固定板22に対し動かないように固定することができる。
移動板21には、偏向電磁石、四極電磁石、スクリーンモニター等の制御機器15(15a,15b,15c)が、ダクト11とともに、荷電粒子を通過させる軌道中心を貫くように設置される。さらにこれら制御機器15を設置した移動板21は、固定板22の上面に位置決めされて締結部材等で固定される。これら制御機器15、ダクト11及びステージ20の組み立ては、荷電粒子加速器10A(10)の据え付け場所とは異なる場所で行われ、一体的に組み立てられた後に据え付け場所に輸送される。
荷電粒子加速器10A(10)の据え付け場所において、制御機器15及びダクト11が一体的に組み立てられたステージ20は、高さ調整が可能な結合部材28により架台16の上部に結合される。結合部材28として、広く用いられているネジとナットの組み合わせたものを採用することができるが、高重力物を安定して固定し高さ調整が可能なものであれば適宜採用することができる。
これら制御機器15は、ビーム軌道12に対し、高精度で据え付けられることが要求される。このため、これら制御機器15が設置されたステージ20を架台16に据え付けることに際し、建屋の固定点を基準とし、結合部材28の高さ調整をしながら位置決めするアライメント調整が行われる。
図1(C)に示すように直動機構部23は、移動板21に固定されるナット部27と、このナット部27に螺入し両端が固定板22に回転自在に支持されるネジロッド25と、このネジロッド25に回転トルクを付与する回転駆動部26と、から構成されている。
このように構成される直動機構部23により、制御機器15、ダクト11及び移動板21の一体化物を、位置決めされた位置からビーム軌道12の側方に退避させることができ、さらに元の位置決めされた位置に再現性良く復帰させることができる。
なお直動機構部23の収容スペースは、図示において、固定板22の上面に溝状に設けられているが、移動板21の主面に対し平行に肉厚部を穿孔した貫通孔としてもよい。また直動機構部23は必須の構成要素ではなく、制御機器15、ダクト11及び移動板21の一体化物は、他の方法、例えば人力で移動させてもよい。
図2(A)は第1実施形態に係る荷電粒子加速装置10Aの調整段階における上面図であり、図2(B)はそのB-B部分断面図であり、図2(C)はそのC-C部分断面図である。荷電粒子加速装置10A(10)の調整段階においては、ステージ20の移動板21を、制御機器15がビーム軌道12に干渉しない程度に側方または直動機構部23による移動方向に移動する。
そして、制御機器15を退避させた後のビーム軌道12に、エミッタンス測定装置等の調整機器17を配置する。この調整機器17は、その両端に調整用ダクト18を伴ってビーム軌道12に配置される。図2(C)に示すように、この調整機器17は、支持部材19及び結合部材28を介して、架台16に対し、アライメント調整を伴って、ビーム軌道12に対し、高精度で据え付けられる。
そして荷電粒子加速装置10A(10)の調整段階が終了したところで、架台16から調整機器17を除去し、退避させていた制御機器15をビーム軌道12に戻す。この制御機器15は、元のビーム軌道12の位置に高い再現性で戻るために、アライメント調整を再実施する必要がない。
(第2実施形態)
次に図3及び図4を参照して本発明における第2実施形態について説明する。図3は第2実施形態に係る荷電粒子加速装置10Bの部分上面図である。図4は、図3に示される規制部材30のB-B断面図である。なお、図3及び図4において図1又は図2と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
第2実施形態の荷電粒子加速装置10Bにおいて、ステージ20は、固定板22に対する移動板21の移動を規制する規制部材30を有している。図4に示すように規制部材30は、移動板21の一部に当接する当接部31と、この当接部31及び固定板22を固定する締結部材32と、から構成されている。なお当接部31には、移動板21との当接面の位置を微調整するための調整代33が設けられている。なおこの調整代33は、当接部31の側ではなく固定板22の側に設けられていてもよい。また規制部材30の設けられる位置は、図示される固定板22の主面ではなく縁端側であってもよい。
この規制部材30は、架台16に制御機器15及びステージ20を取り付けた後、アライメント調整を終了するまでに、当接部31を移動板21に当接させた状態で固定板22に固定されている必要がある。このように規制部材30が設けられていることにより、調整段階で退避させた制御機器15をビーム軌道12に戻す際に、移動板21を規制部材30に当接させるだけで正確に元の位置に戻すことができる。
(第3実施形態)
次に図5を参照して本発明における第3実施形態について説明する。図5(A)は第3実施形態に係る荷電粒子加速装置10Cの設置時における上面図であり、図3(B)は調整段階における上面図であり、図5(C)は通常状態における上面図である。なお、図5において図1又は図2と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
第3実施形態の荷電粒子加速装置10Cにおいては、制御機器15(15a,15b,15c)が設置されるステージ20aとは別個に、調整段階で稼働させる調整機器17をビーム軌道12に対し交差する方向に可逆的に移動させるステージ20bを備えている。これにより調整段階において、制御機器15及び調整機器17を交互に入れ替えてビーム軌道12に位置付けるという作業を、再アライメント調整を必要とせずに実施することができる。さらに、調整機器17を設置したステージ20bは、調整段階が終了した後に、図5(C)に示すように取り外すことができる。
さらに図5(C)に示すように、各実施形態の荷電粒子加速装置10(10A,10B,10C)において、固定板22及び移動板21は、通常運転時において制御機器15(15a,15b,15c)が占有する領域を除く領域の一部が分断可能である。
固定板22は、ビーム軌道12を中心とする対称の位置に、一対の分断境界35aが設けられている。そして、この固定板22は、一対の分断境界35aで三分割される構成をとり、少なくとも調整段階においては、この三分割が一体化する構成を有している。同様に、移動板21にも、ビーム軌道12を中心とする対称の位置に、一対の分断境界35bが設けられている。そして、この移動板21は、一対の分断境界35bで三分割される構成をとり、少なくとも調整段階においては、この三分割が一体化する構成を有している。このように構成されることで、調整段階が終了した後は、固定板22及び移動板21の不要な領域を除去することができ、荷電粒子加速装置10の周辺スペースを確保することができる。
図6のフローチャートに基づいて、各実施形態に係る荷電粒子加速装置の調整方法を説明する(適宜、図1~図2参照)。まず図1に示すように、ダクト11、制御機器15(15a,15b,15c)及びステージ20を一体化させたものを架台16に対し取り付ける(S11)。そして、ビーム軌道12に対するアライメント調整を行う(S12)。
次に、ビームの調整工程に入り、図2に示すように、ビーム軌道12から制御機器15が退避するようにステージ20を移動させる(S13)。そして、ビーム軌道12に調整機器17を配置する(S14)。このような状態にしてから、入射器(図示略)から荷電粒子を出射させ、荷電粒子の入射条件を調整する(S15)。
荷電粒子の入射条件の調整が終了したところで、ビーム軌道12から調整機器17を退避させ(S16)、ステージ20を移動させて制御機器15をビーム軌道12に復帰させる(S17)。そして、ビームの調整工程が終了するまで(S13)~(S17)の工程を繰り返す(S18 No Yes,END)。
以上述べた少なくともひとつの実施形態の荷電粒子加速装置によれば、制御機器を前記ビーム軌道に対し交差する方向に可逆的に移動させるステージを持つことにより、制御機器の据え付けを繰り返し実施する場合であっても、アライメント調整を繰り返す必要がなくなる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10(10A,10B,10C)…荷電粒子加速器、11…ダクト、12…ビーム軌道、15…制御機器、16…架台、17…調整機器、18…調整用ダクト、19…支持部材、20(20a,20b)…ステージ、21…移動板、22…固定板、23…直動機構部、25…ネジロッド、26…回転駆動部、27…ナット部、28…結合部材、30…規制部材、31…当接部、32…締結部材、33…調整代、35(35a,35b)…分断境界。

Claims (5)

  1. 荷電粒子が通過するダクトを貫通させるとともに、前記荷電粒子のビーム軌道を制御する制御機器と、
    基礎に固定される架台に支持されるとともに、前記ビーム軌道に干渉しないストローク幅で前記制御機器を前記ビーム軌道に対し交差する方向に可逆的に移動させるステージと、を備え
    前記ステージは、
    前記架台に固定される固定板と、
    前記制御機器が固定されるとともに前記固定板に対して相対的に移動する移動板と、を有し、
    前記制御機器が設置される前記ステージとは別個に、調整段階で稼働させる調整機器を前記ビーム軌道に対し交差する方向に可逆的に移動させるステージを備える荷電粒子加速装置。
  2. 荷電粒子が通過するダクトを貫通させるとともに、前記荷電粒子のビーム軌道を制御する制御機器と、
    基礎に固定される架台に支持されるとともに、前記ビーム軌道に干渉しないストローク幅で前記制御機器を前記ビーム軌道に対し交差する方向に可逆的に移動させるステージと、を備え
    前記ステージは、
    前記架台に固定される固定板と、
    前記制御機器が固定されるとともに前記固定板に対して相対的に移動する移動板と、を有し、
    前記固定板及び前記移動板の少なくとも一方は、通常運転時において前記制御機器が占有する領域を除く領域の一部が分断可能である荷電粒子加速装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の荷電粒子加速装置において、
    前記ステージは、さらに、
    軸回転することにより、前記固定板に対し前記移動板を移動させる直動機構部を有する荷電粒子加速装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の荷電粒子加速装置において、
    前記ステージは、さらに、
    前記固定板に対する前記移動板の移動を規制する規制部材を有する荷電粒子加速装置。
  5. 荷電粒子が通過するダクトを貫通させるとともに、前記荷電粒子のビーム軌道を制御する制御機器と、
    基礎に固定される架台に支持されるとともに、前記ビーム軌道に干渉しないストローク幅で前記制御機器を前記ビーム軌道に対し交差する方向に可逆的に移動させるステージと、を備える荷電粒子加速装置の調整方法であって、
    前記ダクト、前記制御機器及び前記ステージを一体化させたものを前記架台に対し取り付けて、前記ビーム軌道に対するアライメント調整をする工程と、
    前記ビーム軌道から前記制御機器が退避するように前記ステージを移動させる工程と、
    前記ビーム軌道に調整機器を配置して、前記荷電粒子の入射条件を調整する工程と、
    前記ビーム軌道から前記調整機器を退避させる工程と、
    前記ビーム軌道に前記制御機器が復帰するように前記ステージを移動させる工程と、を含む荷電粒子加速装置の調整方法。
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