JP7278212B2 - 歯列矯正ブラケット - Google Patents

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Description

本発明は、歯列矯正ブラケット(orthodontic bracket)に関し、より具体的には、複数のトルク表現(torque expressions)を提供するとともに、患者の歯の前向き面(anterior facing surface)上で同じ相対向き(relative orientation)で実質的に保たれると同時に患者の歯に対して個々に且つ強制的に作用するために多様な形態で動作可能な歯列矯正ブラケットに関する。さらに、この新たな歯列矯正ブラケットは、所定のトルク表現を得るために関連するアーチワイヤを曲げるという従来技術の慣習を排除する。アーチワイヤを曲げることは患者の歯に対して所定の臨床的に大きな動きを与える
先の我々の米国特許第9198740号(該特許の教示は、参照により本願に組み込まれる)において、我々は、治療環境において臨床医により便利に且つ容易に用いられる新規な歯列矯正ブラケットを開示した。係る歯列矯正ブラケットは、これまでできなかったやり方で臨床医が選択した患者の歯の一次、二次及び/又は三次移動(first, second and/or third order movement)を実現するために新たな歯列矯正ブラケットを可動に調節するための便利な手段をさらに提供するものである。とりわけ、前述の新しく新規な歯列矯正ブラケットは、患者の歯の前向き面(anterior facing surface)に固定されるブラケットベースを含むとともに、ブラケットベースが歯に好適に固定された場合に固定された運動軸で(in a fixed axis of movement)ブラケットベースに対して部分的に回動可能でありブラケット本体をさらに有する。上記特許の教示は、歯列矯正治療計画を進める上で、また、過去に用いられてきた従来技術の器具ではできなかったやり方で患者の歯の所望の一次、二次及び三次移動を実現する上で臨床医に対して広範な治療の選択肢を提供するために、所与の歯列矯正治療計画又は期間中にブラケットベースからリリース可能に取り外しできるブラケット本体と、ブラケットベースにリリース可能に取り付けられる代替的なブラケット本体とを開示する。
2015年12月21日に出願された我々の米国特許出願第14/976074号において、我々は、アーチワイヤスロットを有するパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケット(passive self-ligation orthodontic bracket)と共に使用するためのアーチワイヤを開示した。アーチワイヤは、パッシブセルフライゲーションブラケットのアーチワイヤスロット内に受容されるような寸法を有する細長い弾性本体を含む。アーチワイヤの弾性本体は、所定の周方向幅寸法及び可変の厚さ寸法を有する円形-正方形(circular-square)又は円形-長方形(circular-rectangular)の断面形状を有する。新たなアーチワイヤの弾性本体の周方向幅寸法は、アーチワイヤの弾性本体がアーチワイヤスロット内に受容されて、パッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットと協働する場合に患者の歯の一貫した一次移動を少なくとも部分的に維持する。新たなアーチワイヤの可変厚さ寸法は、臨床医により選択可能で制御可能な患者の歯の二次及び三次移動を実現するためにパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットへの調節可能な力の適用を容易にする。この係属中の米国特許出願に記載のアーチワイヤは、米国特許第9198740号で教示されている歯列矯正ブラケットのデザインと共に用いられた場合に特定の有用性が見出された。米国特許第9198740号に記載の歯列矯正ブラケットが導入される前、固定式のパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットが市販されており、患者の歯に対する一次、二次又は三次制御を提供した。これらの先行技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケットのいくつかの形態を図面に示す(図1~図3)。これらの先行技術のパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケット(図1~図3)は一部の臨床環境で用いられる間に時々欠点を呈してきた。係る欠点は、とりわけ望ましく且つ表現されたトルク制御の種類に基づいて可変の角度向きを有する前向き面を提供することを含む。例えば、先行技術は、高偶力(torque couple)又は低偶力を呈することができる歯列矯正ブラケットを含む(それぞれ図1及び図3)。これらの特定の歯列矯正ブラケットは、異なる前向き平面に沿って方向付けられた前向き面を有する。もちろん、これらの前向き面は歯列矯正ブラケットが装着された患者の唇の内側と接触し、これらの歯列矯正ブラケットが装着された患者に対して異なる身体的感覚を作り出す(いわゆる「口当たり」)。さらに、これらの先行技術の歯列矯正ブラケットのパッド上におけるブラケット本体の向き(図1及び図3)は、タイウィングの間隔(tie wing spacing)、すなわちブラケット本体のタイウィングと患者の歯の前向き面に固定された隣接するブラケットとの間の間隔はブラケット本体の上向き面と下向き面との間で測定した場合に変化する。その結果、一部の臨床医にとって、アーチワイヤスロット内に個々のアーチワイヤを適切に配置し固定するのがしばしば困難であるとともに、患者は隣接するパッドに対するブラケット本体の空間的許容差が狭く(close spatial tolerance)患者の歯の上でブラケット本体を支えるため歯の清浄度を維持することがしばしば困難であった。これは、高偶力及び低偶力を呈する歯列矯正ブラケットの場合にとりわけ言えることである(図1及び図3)。さらに、とりわけ患者の上及び下の犬歯へのこれらの歯列矯正ブラケットの臨床上望ましい展開、配置又は設置はしばしば問題があった。図1~図3を観察することによって想像できるように臨床医による患者の隣接する歯への先行技術の歯列矯正ブラケットの視覚的な整列及び各パッドの同じ水平面への整列は、各ブラケット本体の異なる角度方向により実質的に実現するのが不可能であった。さらに、これらの従来技術のパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットの使用は、多くの臨床医にとって認識されている他の多くの困難をしばしば生じさせる。何故なら、適切な量のトルクが矯正される個々の歯に加えられることを促進する理想的なアーチワイヤスロットの整列(archwire slot lineup)を実現するために臨床医が隣接する歯にそれぞれの歯列矯正ブラケットを適切に方向付けることをブラケット本体の物理的な向きが妨げるか又は困難にするからである。
上述の問題にもかかわらず、これらの先行技術のパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットは、従来のアーチワイヤと共に用いられた場合、歯列矯正ブラケットのベース又はパッドを通じて隣接する歯にトルクを伝達することにより患者の歯の移動をもたらしていた(多くの場合、これは「トルクインベース」ブラケットと呼ばれる)。これらの従来技術の歯列矯正ブラケットは、歯列矯正治療の質を大きく前進させ、多くの臨床医によって利用されてきた。しかしながら、これらの器具にCチェーンや弾性体を設置する上でしばしば制約となるタイウィング間隔に関連する問題及び、水平なアーチワイヤスロットラインの整列を実現するのを試みるために歯列矯正ブラケットを隣接する歯列矯正ブラケットと整列させることに関連する問題のために、これらの歯列矯正ブラケットは予測されたほど臨床医によって幅広く活用されなかった。実際に、前述の欠点は、望ましい歯列矯正治療を実現するためにパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットを利用する上で多くの臨床医の主な異論の1つとなっている。前述した認識されている欠点を考慮して、多くの臨床医は彼らの臨床診療においてこの種の又は形式の歯列矯正ブラケットを採用しなかった。その結果、多くの患者の治療時間はしばしば過度に長くなり、臨床医は彼らの患者にとって望ましい適切な最終的な歯の向きを実現することができなかった。
米国特許第9198740号に見られる前述の新たな歯列矯正ブラケット及び米国特許出願第14/976074号に記載の新たなアーチワイヤの操作は大きな成功を収めているが、臨床医にとって、例えば上及び下の犬歯等の患者の歯に歯列矯正ブラケットを適切に方向付けるか又は配置する上でいくつかの困難が依然としてある。これらの及び他の認識された問題は、臨床医が認識する様々な問題や、歯列矯正ブラケットをお互いに対して及び他のやや問題のある歯に対して適切な方向で設置することに関連する他の問題に対する可能な解決策を発明者のそれぞれに詳細に反映させた。この研究及び後の調査は、先行技術の認識された欠点(図1~図3)と、前述した先の米国特許に見られる歯列矯正ブラケット及びこの歯列矯正ブラケットの使用及び操作を高める新たなアーチワイヤの使用によりもたらされる多くの利点との双方の再評価に至った。この調査は、いくつかの異なる形態を有し、本出願の主題である新しい歯列矯正ブラケットの創作をもたらした。
本発明の歯列矯正ブラケットは、上述した従来技術のパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケット(図1~図3)に関連する不利益及び欠点を回避し、臨床医にとってしばしば矯正するのが困難であった上及び下の犬歯等の問題のある不正咬合の歯のために一次、二次又は三次制御を提供する上で、臨床医が追加の臨床上の選択を持てるようにするいくつかの形態を有し、これらおよび他の目的を実現する新たな歯列矯正ブラケットは、本特許出願の主題である。
本発明の第1の態様は歯列矯正ブラケットに関する。歯列矯正ブラケットは患者の歯の前向き面にリリース可能に固定されるブラケット本体を含み、前記ブラケット本体は前向き面をさらに有し、前記ブラケット本体は、前記ブラケット本体に対して所定の角度方向に方向付けされるとともに、所定の断面形状を有するアーチワイヤを受容し協働するアーチワイヤスロットをさらに定義し、該アーチワイヤは、ブラケット本体に受容された場合に、前記患者の歯の一次、二次又は三次移動をもたらすために前記ブラケット本体の前向き面に対して所定量のトルクを呈し、当該歯列矯正ブラケットは、前記患者の隣接する歯に位置する同様のデザインの別の歯列矯正ブラケットと共に用いられた場合に、中心水平のアーチワイヤスロットの整列を形成し、前記隣接する歯に対して前記隣接する歯列矯正ブラケットが異なる一次、二次又は三次移動をもたらすにも関わらず、前記アーチワイヤは、実質的に屈曲されないで各歯列矯正ブラケットの中心水平のアーチワイヤスロットの整列内に受容される。
本発明の別の態様は歯列矯正ブラケットに関し、歯列矯正ブラケットは患者の歯の前向き面にリリース可能に固定されるブラケット本体を含み、前記ブラケット本体は前記患者の歯に対して動かすことができず、前記ブラケット本体は、所定の形状を有するアーチワイヤを受容し協働するアーチワイヤスロットを定義し、前記ブラケット本体は、所定の平面に沿って方向付けられた前向き面をさらに有し、前記ブラケット本体と前記患者の歯との間に所定の一定の寸法を有するタイウィング間隔が定義され、前記ブラケット本体は前記患者の歯に一次、二次又は三次移動をもたらすように製造され且つ動作可能であるにも関わらず、前記ブラケット本体の前向き面は同じ平面において方向付けられたままであり、前記タイウィング間隔の寸法は同じままである。
本発明のさらに別の態様は歯列矯正ブラケットに関し、歯列矯正ブラケットは歯列矯正治療計画を受けている患者の歯の前面にリリース可能に固定されるパッドと、前記パッドと一体形成されるとともに前記パッドに対して前方且つ外方に延在するブラケット本体と、を含み、前記ブラケット本体は所定の形状のアーチワイヤを受容し協働するアーチワイヤスロットを定義し、前記アーチワイヤは前記ブラケット本体と協働する場合に、前記患者の歯の選択された一次、二次又は三次移動をもたらすために前記ブラケット本体に力を伝達し、前記アーチワイヤスロットは直角でない4つの角度により部分的に定義される四辺形の断面形状を有する。
本発明のこれら及び他の態様を出願において以下でさらに詳細に説明する。
下記の添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を以下で説明する。
図1は高偶力を呈するように動作可能な従来技術のパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットの側面図である。 図2は、標準若しくは中立の偶力を呈するか又は偶力を表わさないよう動作可能な従来技術のパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットである。 図3は、低偶力を呈するように動作可能なパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットである。 図4は、高偶力を呈するように動作可能な、本発明の歯列矯正ブラケットの一形態の斜視側面図である。 図5は、標準若しくは中立の偶力を呈するか又は偶力を呈さないよう動作可能な従来技術のパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットの斜視側面図である。 図6は、低偶力を呈するように動作可能な、本発明の新たな歯列矯正ブラケットの別の形態の斜視側面図である。 図7は、本発明の歯列矯正ブラケットの一形態の大きく拡大した部分側面図であり、歯列矯正ブラケットに関連するアーチワイヤスロットの構造を示し、高偶力を呈することができるように動作可能である。 図8は、先行技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケットの大きく拡大した部分側面図であり、この歯列矯正ブラケットと共に用いられるアーチワイヤスロットの構造を示し、標準又は中立の偶力を及ぼすか又は偶力を及ぼさない。 図9は、本発明の歯列矯正ブラケットのさらに別の形態の大きく拡大した部分側面図であり、低偶力を発揮するよう動作可能なアーチワイヤスロットの構造を示す。 図10は、本発明の一形態の大きく拡大した側面図であり、本発明の一形態と共に利用される新たなアーチワイヤに対して高偶力を及ぼすように動作可能である。 図11は、先行技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケットの大きく拡大した側面図であり、該ブラケットと共に利用される新たなアーチワイヤに対して標準又は中立の偶力を発揮するか又は偶力を発揮しないように動作可能である。 図12は、アーチワイヤに低偶力を及ぼすように動作可能な、本発明の歯列矯正ブラケットのさらに別の形態の大きく拡大した側面図である本願で説明する新たな 図13は、本発明の一形態を大きく拡大し且つ簡略化した側面図であり、本発明のアーチワイヤが図示のように四辺形のアーチワイヤスロットと組み合わされて協働する場合を示す。 図14は、先行技術の歯列矯正ブラケットを大きく拡大し且つ簡略化した側面図であり、図示の新たなアーチワイヤが図示の長方形形状のアーチワイヤスロットと協働する場合を示す。 図15は、図示される四辺形状のアーチワイヤスロットと協働する本発明のアーチワイヤを大きく拡大し且つ簡略化した側面図である。 図16は、受容されたアーチワイヤと共に用いられた場合に高偶力を呈するアーチワイヤスロットの形状の一形態を示し、アーチワイヤスロットの角度方向は水平面から約3°上に位置する。 図17は、密閉型アーチワイヤと共に用いられた場合に高偶力を呈するアーチワイヤスロットの形状の第2の形態であり、アーチワイヤスロットの角度方向は水平面から約6°上に位置する。 図18は、受容されたアーチワイヤと共に用いられた場合に高偶力を呈するアーチワイヤスロットの形状のさらに別の形態であり、アーチワイヤスロットは水平面の約9°上に方向付けられている。 図19は、受容されたアーチワイヤと共に用いられた場合に高偶力を呈するアーチワイヤスロットの形状のさらに別の形態であり、アーチワイヤスロットは水平面の約13°上に方向付けられている。 図20Aは、臨床医によって長年にわたって用いられてきた先行技術の標準的な正方形又は長方形のフィニッシングアーチワイヤの大きく拡大した横方向の垂直断面図である。 図20Bは、臨床医によって長年にわたって用いられてきた先行技術の長方形のアーチワイヤの大きく拡大した横方向の垂直断面図である。 図21は、本願で説明する新たなアーチワイヤに沿った大きく拡大した横方向の垂直断面図である。 図22は、本発明の特徴を形成する可動ゲートの大きく拡大した斜視前面図である。 図23Aは、患者のいくつかの歯のうちの1つに配置された、本発明の一形態の大きく拡大した部分環境前面図であり、歯列矯正ブラケットは破線で示される受容されたアーチワイヤーに低偶力を呈するように動作可能である。 図23Bは、患者のいくつかの歯のうちの1つに配置された本発明の大きく拡大した部分環境前面図であり、歯列矯正ブラケットは破線で示される受容されたアーチワイヤに高偶力を呈するよう動作可能である。 図23Cは、患者のいくつかの歯のうちの1つに配置された従来技術の歯列矯正ブラケットの大きく拡大した部分環境前面図であり、歯列矯正ブラケットは破線で示される受容されたアーチワイヤに中立偶力を呈するか又は偶力を呈さないよう動作可能である。 図24Aは、患者のいくつかの歯のうちの1つに配置された本発明の歯列矯正ブラケットの別の形態の大きく拡大した部分環境前面図であり、新たな歯列矯正ブラケットは受容されたアーチワイヤに低偶力を呈するよう動作可能であり、歯列矯正ブラケットのブラケット本体及びパッドは患者の歯の長手軸と揃っていると同時に隣接する歯列矯正ブラケットと水平なスロットワイヤの整列を維持する。 図24Bは、患者のいくつかの歯のうちの1つに配置された本発明の歯列矯正ブラケットの別の形態の大きく拡大した部分環境前面図であり、新たな歯列矯正ブラケットは受容されたアーチワイヤに低偶力を呈するよう動作可能であり、歯列矯正ブラケットのブラケット本体及びパッドは患者の歯の長手軸と揃っていると同時に隣接する歯列矯正ブラケットと水平なスロットワイヤの整列を維持する。 図24Cは、患者のいくつかの歯のうちの1つに配置された本発明の歯列矯正ブラケットの別の形態の大きく拡大した部分環境前面図であり、新たな歯列矯正ブラケットは受容されたアーチワイヤに低偶力を呈するよう動作可能であり、歯列矯正ブラケットのブラケット本体及びパッドは患者の歯の長手軸と揃っていると同時に隣接する歯列矯正ブラケットと水平なスロットワイヤの整列を維持する。
ここで図面を参照して、図4及びそれ以降において本発明の様々な形態を概して符号10で示す。本願で先に説明したように、先行技術のセルフライゲーションブラケットは、該ブラケットに含まれて該ブラケットと協働するアーチワイヤに対して高、中立又は低偶力を発揮するのに利用され得るものであり、図1、図2及び図3のそれぞれに示すように概して参照符号11で示す。なお、本願に記載の歯列矯正ブラケット10の全ては、個人的な外観をより魅力的なものにするとともに、患者の歯列弓における様々な歯の向きによる噛合の不具合を正すために患者の口(図示せず)内の様々な歯の不正咬合を調整又は矯正するのに利用される。患者の歯は、図1、図4、図23A、図23B、図23C、図24A、図24B、図24Cのそれぞれで断片的にしか示していない。治療を受けている患者の歯のそれぞれには、以下で説明するように歯列矯正ブラケット10がリリース可能に取り付けられる(それぞれ図23A~図23C及び図24A~図24C)。各歯12は前向き面13を有し、前向き面13に歯列矯正ブラケット10が好適な接着剤又は他の何らかの機械的手段によりリリース可能に固定されている。本発明は歯列矯正ブラケット10に関し、本発明は様々な形態で及びアーチワイヤとの組み合わせで複数のトルク表現を表す。複数のトルク表現は個々に患者の歯12に対して個々に及び強制的に作用する。これらのトルク表現は、最小限の臨床治療時間で効果的な歯牙移動を実現する軽度の、生物学的に適切な力を提供又は生成するために(開示される)屈曲されていないアーチワイヤによって生成されるか又は作られる。本願の目的のために、以下で用いる「トルク表現」という用語は、患者の歯、即ち、歯根又は歯冠の先端を軸を中心に唇側、舌側又は頬側のいずれかに、即ち、近心方向又は遠心方向に回転させる力として定義される。一次移動は一般的に回転動作及び/又は出入り動作(in-and-out movement)と考えられる。これは、咬合の観点から見ることができる動きを意味する。他方、二次移動は傾斜移動(tipping)としばしば呼ばれ、頬舌又は唇舌の観点から見ることができる。これらの二次移動は、患者の歯の付け根の平行移動及び所定の歯の上げ下げのために用いられる。最後に、一般的に「トルク」と呼ばれる三次移動は、近心-遠位の観点又は頬舌断面から見ることができる。これらの移動は、通常、近心-遠心軸を中心としたものである。この移動は、適切な切歯の傾き、唇側若しくは頬側の傾き又はクラウンの先端を得ることを試みる上で重要となる。ここで図1、図2および図3を参照して、14A及び14Bと表記されるとともに図1~図3にわたってさらに広がる線は、先行技術の歯列矯正ブラケット11を治療を受けている患者の歯12に沿った同じ水平面に整列させ且つ大まかに配置することができるように、臨床医により利用され得る仮想の方向線を表す。使用される従来技術の歯列矯正ブラケット(図1~図3)はサイズが小さいため、これまで、臨床医は、(以下に説明する)アーチワイヤを(歯列矯正ブラケット11により定義されるか又は内部に形成される)アーチワイヤスロット内に挿入するのを可能な限り容易にするために、しばしばパッド16を可能な限り水平に整合させ、次いで同じ水平面内で又は同じ線14A又は14Bに沿って且つ同じ線14A及び14Bの間でパッド16を歯13の前向き面に接着剤で固定する。線15A及び15Bは図1、図2及び図3に提供されている。図3に示すように、線15Aは歯列矯正ブラケットのアーチワイヤスロットの中心を通過し、アーチワイヤスロット内に受容され得るアーチワイヤに低偶力を呈するように動作可能である。他方、線15Bは、図1に示すように歯列矯正ブラケット11のアーチワイヤスロットの中心を通って延び、アーチワイヤスロット内に受け入れられ得るアーチワイヤと高偶力を呈するように動作可能である。これらの線(15A及び15B)は、従来技術の器具を用いることによって水平なアーチワイヤスロットの整列(level archwire slot lineup)を得ることはほぼ不可能であることを示すためにこれらの図に提供されている。これらの欠点を考慮して、臨床医は、アーチワイヤを付随するアーチワイヤスロットで受け入れることができるように、日常的にアーチワイヤを屈曲させるか又は物理的に操作してきた。このアーチワイヤの屈曲は、下にある歯12及び歯12の支持組織に対して生物学的に不適切な量の力を与えることに関連する問題をもたらしてきた。水平なアーチワイヤスロットの整列を一貫して得る上でのこれらの従来技術の歯列矯正ブラケット11の認識された欠点に関するさらに包括的な説明は、以下の段落でなされる。
図1、図2及び図3を再び参照して、図示の従来技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケット11は、いくつかの異なる形態において、患者の歯12に対する一次、二次及び三次移動を呈することができる歯列矯正ブラケットを製造する初期の試みを示す。これに関して、図1は、従来技術の歯列矯正ブラケット1の第1の形態21を示し、後述するように好適なデザインのアーチワイヤがブラケット本体内に受容された場合に高い偶力を呈する。図2は、従来技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケット11の第2の形態22を示し、中立又は標準(無)偶力を呈し、図3は、先行技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケットの第3の形態23を示し、歯列矯正ブラケット23内に受容され且つ歯列矯正ブラケット23と協働するアーチワイヤに対して低偶力を呈し得るように製造される。従来技術の歯列矯正ブラケットの第1の形態21又は第3の形態23のそれぞれにおいて、トルクはブラケット本体がベース又はパッド16に固定されるか又は一体化されるためブラケット本体の所定の角度方向によりベース又はパッド16を通じて呈されるか又は伝達されることを理解することが重要である。先行技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケットの第1の形態21、第2の形態22及び第3の形態23は共通の特徴を有する。第1に、歯列矯正治療を受けている患者の歯12の前向き面13に通常接着剤で固定される後向き面を有するパッド16をそれぞれが有する点である。図23A~図23C及び図24A~図24Cに示すように、各歯12は、13Aと表記した線によって示される長手軸を有する。さらに、従来技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケット11の各形態(図1~図3)は、パッド16に対して前方外側に延びるブラケット本体24を有する。先行技術の歯列矯正ブラケット11の各形態のブラケット本体は、従来デザインの正方形又は長方形のアーチワイヤと協働するような大きさを有する、寸法が同様の長方形のアーチワイヤスロット25を定義する(図20A及び図20B)。これらの先行技術のアーチワイヤをこれらの大きく拡大した断面図に示す。アーチワイヤスロット25は、ブラケット本体24に対して実質的に同軸に方向付けられる。この向きは、前述のように、発生したトルクのパッド16への伝達に少なくとも部分的に寄与する。先行技術の各歯列矯正ブラケット11のブラケット本体24は、上側タイウィング26と、反対側の下側タイウィング27とを部分的に定義する。
図1、図2及び図3にそれぞれ示す従来技術のパッシブセルフライゲーション歯列強制ブラケットの第1の形態21、第2の形態22及び第3の形態23のそれぞれは、各ブラケット本体24により定義される前向き面30を有する。前向き面30は、符号31で表記される線により特定される所与の前向き平面を定義する。図1、図2及び図3を注意深く観察することにより、従来技術の歯列矯正ブラケット11の様々な形態は、高、標準又は低偶力(それぞれ図1、図2及び図3)を呈する場合に、異なる角度の前向き平面31を形成する前向き面30をそれぞれ有することが分かる。これらの各平面31の大きく可変する角度は、歯列矯正治療を受けている患者の内唇によって感じられ得る異なる種類の全体的な表面の質感を与える。さらに、先行技術の歯列矯正ブラケットの各々の前面の外観はかなり異なる。この異なる外観はしばしば類似性がある水平なアーチワイヤスロット25の整列を得るために患者の歯12に沿って各パッド16を水平に且つ整列した向きで臨床医が適切に且つ視覚的に方向付けることを少なくとも部分的に妨害した。さらに、当然のことながら、これらの可変の前向き平面31は、下にある歯12の不正咬合を矯正するために採用されている先行技術の歯列矯正ブラケットの形態に応じて患者に対して異なる快適感(口当たり)をもたらす。引き続き図1、図2及び図3を参照して、ブラケット本体24には従来のデザインの可動ゲート40が取り付けられていることが分かる。可動ゲート40は、前向き面42を有する本体41を有し、本体41は、歯列矯正ブラケット11の各形態の平面31にやや大体及び概ね沿って又は平行に位置する。可動ゲート40は反対側の後ろ向き面43をさらに有する。以下により詳細に説明するように、後ろ向き面43は少なくとも部分的にアーチワイヤスロット25の一部を定義する。可動ゲート40は、前向き面30に沿って摺動可能に又は前向き面30と協働するように動作可能である。可動ゲート40は、アーチワイヤを長方形形状のアーチワイヤスロット25内で動作可能な向きで保持する第1の閉塞位置(occluding positon)44からアーチワイヤをアーチワイヤスロット25から取り外すこと又はアーチワイヤスロット25内に配置することを可能にする第2の非閉塞位置45(破線、図2)に移動する。前記に加えて、図1、図2及び図3の観察から、ブラケット本体24、とりわけブラケット本体24の上側タイウィング26及び下側タイウィング27と、隣接するパッド16との間にタイウィング間隙又は間隔50が定義されていることが分かる。そして、従来技術のブラケット本体24の第1の形態21が高偶力を呈する図1、さらに低偶力を呈する第3の形態23を示す図3を密に観察すると、上側及び下側タイウィング間隙又は間隔51及び52のそれぞれの寸法がかなり大きく変化することが分かる。図1に示すように、上側タイウィング間隙又は間隔51の寸法は、下側タイウィングの間隙又は間隔52の寸法よりも大きい。図3に示す従来技術の歯列矯正ブラケット23の形態については反対のことが言える。本願において先に述べたように、この寸法が小さいか又は非常に可変的なタイウィング間隙又は間隔50は、Cチェーン、弾性体(elastics)等を、設けられたタイウィング間隙内に配置することがしばしば困難であるため、一部の臨床医にとってパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットを用いることの妨げとなっていた。さらに、より小さな寸法のタイウィング間隙又は間隔50は、食べかすや他の望ましくない物質が詰まり得る場所をしばしば提供するため、その後の患者の歯科衛生をややより困難にする。
図1、図2及び図3にさらに示すように、線14A及び14Bが設けられ、これらは、治療を受けている患者の隣接する歯12に先行技術の歯列矯正ブラケット11を適切に配置するのを支援するために歯列矯正医が使用し得る仮想線を表す。図から分かるように、線14Aと線14Bとは所定の距離離れて配置されおり、理想的には、患者の歯12に個々の歯列矯正ブラケット11を配置する臨床医は、実質的に水平なアーチワイヤスロット25の整列を可能な限り提供するため各アーチワイヤスロット25を密に方向付けるか又は整列させるために、これらの仮想線の間にパッド16を整合させる。この水平なアーチワイヤスロット25の整列は、従来のデザインのアーチワイヤ60(図20A及び図20B)をアーチワイヤスロット25内に挿入する上で臨床医を支援し得る。従来技術のアーチワイヤ60の1つを図20Bに示す。しかしながら、図1、図2及び図3の観察し且つ15A及び15Bと表記された線をとりわけ参照することから分かるように、高偶力及び低偶力の歯列矯正ブラケット21及び23、即ち、図1及び図3に示す歯列矯正ブラケットと共に標準又は無トルクのブラケット(図2)を用いた場合、水平なアーチワイヤスロット25の整列を得ることは通常ほぼ不可能であることが容易に認識される。何故なら、図3に示すアーチワイヤスロット25の中心(線15A)と比較して、図1に示すアーチワイヤスロット25の中心(線15B)は、お互いに及び図2に示すアーチワイヤスロット25の中心から垂直方向に大きく離れているからである。図1及び図3に示すように、これらの先行技術の歯列矯正ブラケット11のアーチワイヤスロット25は、異なる所望のトルクを呈するために垂直に移動する。そして、係るトルクはパッド16を通じて下にある歯12に伝達される。この垂直方向の動きのために、隣接する歯列矯正ブラケット11との水平なアーチワイヤスロット25の整列を得るのは不可能であった。その結果、アーチワイヤスロット25内にアーチワイヤ60を挿入するか又は配置するために、臨床医はアーチワイヤ60の屈曲及び/又は他の物理的な操作に頼ることになる。標準のアーチワイヤの屈曲や他の歪みは数々の問題をもたらし、臨床医が患者の歯12に対して適切な一次、二次及び三次制御を実現する上での困難性を高めてきた。さらに、この、アーチワイヤの屈曲及び他の操作により、しばしば患者の歯及び係る歯の支持組織に対して生物学的に不適切な量の力が及ぼされることになってきた。この問題が前述した寸法が小さいタイウィング間隙又は間隔50内にCチェーンや弾性体を配置することの困難性に関連する場合、多くの臨床医は、これらの従来技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケット11を(それらに多くの臨床的な利点があるにも関わらず)使用しないことを選び、その代わりに、他の先行技術の歯列矯正ブラケット又は装具を利用してきた。この臨床的な決定によって治療時間が過度に長くなり、患者の快適さを低減させることがしばしばあった。さらに、実質的に形状が長方形又は正方形の従来のアーチワイヤ60は、多くの場合アーチワイヤスロット25内において摩擦で連結し、さもなければ従来技術の歯列矯正ブラケット11により呈されるに偶力の種類に応じて可動ゲート40の移動を妨げる。
参照により教示が本願に組み込まれる米国特許出願第14/976074号においてより完全に説明されるように、従来技術の長方形のアーチワイヤ61(図20B)の使用は、図1、図2及び図3のそれぞれに示すセルフライゲーション歯列矯正ブラケット11を利用する上で多くの困難を呈してきた。これらの問題のうちで主たる問題は、臨床医が可動ゲート40を閉じるか又は(アーチワイヤ60をアーチワイヤスロット25内でアーチワイヤスロット25に対して動作可能な向きで維持する)第1の閉塞位置44に動かすことの妨げになるか又は実質的にできないようにこれらの従来技術のアーチワイヤが可動ゲート40内で連結するか、さもなければ可動ゲート40と摩擦係合することである。この問題に対処するために、歯科矯正医は、アーチワイヤをアーチワイヤスロット25内に配置するための十分な間隔を作り、その後に付随する可動ゲート40を閉じるために、様々なより小さなサイズの長方形及び/又は正方形のアーチワイヤ70(図20A)を用いてきた。さらに、歯列矯正ブラケット11及び可動ゲート40は、歯列矯正医がゲート40を閉じることができるように、ゲート40において少量の出し入れ動作又は「遊び」ができるように作られている。さらにまた、より小さいサイズのアーチワイヤ70を選択することによって可動ゲート40を閉じることができるようアーチワイヤのサイズを小さくすることによって寸法がより小さいアーチワイヤはトルクが小さく、歯12の回転制御が少なくなるために所定の歯列矯正治療計画を受けている患者の治療時間が往々にして長引く結果として他の問題が生じる。繰り返しになるが、広範な偶力を提供できないと、図1、図2及び図3に示す先行技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケットでは得られることができない臨床医が望む種類の歯の制御を実現する能力が低下する。図20Bに示すように、大きく拡大した断面図に示す長方形のアーチワイヤ61は対応する上向き面62及び下向き面63並びに対応する前向き面64及び後ろ向き面65をそれぞれ有する。長方形状のアーチワイヤ61は4つの端部66を有し、それらのすべてがアーチワイヤスロット25を定義する可動ゲート40の内向き面及び/又は後ろ向き面43のいずれかに摩擦的に且つ強制的に係合できる。図20Aから分かるように、従来デザインの正方形又は長方形のフィニッシングアーチワイヤ70が図示され、優れた一次、二次及び三次制御で歯列矯正治療を提供するために利用されてきた。しかしながら、繰り返しになるが、図20Aに示す正方形又は長方形のアーチワイヤ70は、複数の外向き面71及び角を含み、それらはすべてアーチワイヤスロット25又は可動ゲート40の後ろ向き面43に摩擦係合し得るため、臨床医がゲート40を閉じること及び所定の歯の不正咬合に対処するのに必要な所望の一次、二次及び三次の移動及び制御を実現するのを妨げる。
図1、図2及び図3に示す従来技術の歯列矯正ブラケットを続けて参照して、これらの従来技術の歯列矯正ブラケット11のアーチワイヤスロット25は、ブラケット本体24の上側内向き面81によって少なくとも部分的に定義される長方形80を有することが分かる。上側内向き面81は下側の内向き平行面82から離間している。さらに後ろ側の内向き面83は、上側面81及び下側面82を互いに接続して長方形を形成する。アーチワイヤスロットの形状80は、可動ゲート40の後ろ向き面43によって少なくとも部分的に定義される。図1、図2及び図3の観察から分かるように、アーチワイヤスロットの形状80は、すべてが直角な4つの端部又は角部84により定義される。図1~図3に示すように、各ブラケット本体24に形成されたアーチワイヤスロット25は、ブラケット本体24に対して概ね対称的に、中心に且つ同軸に方向付けられ、さらに長方形のアーチワイヤスロット25はブラケット本体24の前向き面30により定義される前向き平面31に対して概ね垂直に方向付けられる。この物理的な構成のために、ブラケット本体24とアーチワイヤスロット25内のアーチワイヤ60又は70(図20A及び図20B)のそれぞれの協働は、下にある歯12にパッド16を通じて主に伝達されるトルク表現をもたらす。これは、以下で説明するように本発明10とは非常に対照的である。
図4及びそれ以降を参照して、概して符号10で示す本発明の新たな歯列矯正ブラケットは、概してそれぞれ符号101及び103示す第1及び第2の形態を含む。これに関して、図4に示す歯列矯正ブラケットの第1の形態101において、この形態は、以下でより詳細に説明するようにアーチワイヤと組み合わせて用いられた場合に高偶力を呈するように動作可能である。さらに、図5に示す歯列矯正ブラケット22は、以下で説明するようにアーチワイヤ上に中立トルクを呈するか又は偶力を呈さない。歯列矯正ブラケット22は先行技術のものである。さらに、新たな歯列矯正ブラケット103(図6)の第2の形態は、以下で説明するような形で用いられた場合に好適なアーチワイヤに低偶力を付与するように動作可能である。新たな歯列矯正ブラケット10は、先行技術に関連して本願において先に説明したものと一部の点で類似している。共通の特徴の1つは、前向き面105及び反対側の後ろ向き面106により、少なくとも部分的に定義されるパッド104を含む点である。パッド104は、図1~図3に示すパッド16と構造がほぼ同一である。後ろ向き面106は、歯列矯正治療を受けている歯12の前向き面13に適切な接着剤により固定される。パッド104はパッド16と幾分似ているものの、本発明10によって呈されるトルクは、従来技術の歯列矯正ブラケット11(図1及び図3)の場合のようにパッド104を通じて通常伝達されるものではない。むしろ、本発明10のトルクは、後述するようにブラケット本体110の前向き面120において呈される。パッド104の前向き面は、内部に形成された方向線17(それぞれ図23A~図23C及び図24A~図24C)を有し、臨床医はパッドが歯列矯正治療を受けている患者の歯12の長手軸13Aに沿うように又は長手軸13Aと実質的に平行に並ぶように実質的に配置されるように方向付けることができる。これにより、歯列矯正ブラケット10の一形態のブラケット本体110を、185と表記された線(それぞれ図23A~図23C)で示すように実質的に垂直に整列させるか又は方向付けることができる。本発明10の他の形態では、図24A~図24Cに示すように、本発明10の各ブラケット本体110は、各ブラケット本体110が治療を受けている患者の歯12の各々の長手軸13Aに対して整合するように製造又は形成される。各ブラケット本体110個々の配置は、186と表記された線により示される。先の先行技術(図1~図3)に関して説明した内容と同様に、本発明の新たな歯列矯正ブラケット10は、パッド104と一体化されたブラケット本体110を含む。ブラケット本体110は上向き面111及び反対側の下向き面112をさらに有する。さらに、ブラケット本体110は上側タイウィング113と反対側の下側タイウィング114とを定義する。上側タイウィング113及び下側タイウィング114は、各タイウィングとパッド104の前向き面105との間を測定した場合に所定の寸法を有するタイウィング間隙115を定義する。図4、図5及び図6の観察から分かるように、タイウィング間隙115の寸法は、各歯列矯正ブラケット10で実質的に一定である。とりわけ、上側面111及び下側面112で測定したタイウィング間隙115は、使用されている歯列矯正ブラケット(101、22又は103)の形態にかかわらず、大体同様のままであり概ね同じである。この特定のデザイン上の特徴は、先行技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケット(21、22、23)に関連する問題の少なくとも一部を回避する。何故なら、ウィング間隙115内へのCチェーン、弾性体等の配置に関する先の認識されている問題を解消するからである。したがって、この特徴は、臨床医が歯列矯正ブラケット10を素早く簡単に設置できるよう支援し、患者の歯12に歯列矯正ブラケット10が適切に設置された後にその使用を支援する。均一又は一定の寸法のタイウィング間隙115は、臨床治療期間中に患者が歯列矯正ブラケットを清潔に保つことも支援する。
図4及びそれ以降に示す本発明の新たな歯列矯正ブラケット10は、パッド104に対して前側且つ外向きに位置する前向き面120を有する。前向き面120は、符号121により表記された線で示される所定の前向き平面に沿って方向付けられ、容易に観察できるように、新たな発明10のブラケット本体110には、図22において最良に示される可動ゲート130が取り付けられる。可動ゲートは、前向き面132を有する本体131で構成され、平面121に概ね沿って又は平面121に対して平行に実質的に配置される。さらに、可動ゲート130は、反対側の後ろ向き面133を有し、後ろ向き面133は、後で詳細に説明するアーチワイヤスロットの一部を少なくとも部分的に形成する。図6に示すように、ゲート130は、(後述する)アーチワイヤスロット内にアーチワイヤをリリース可能に固定する第1の閉塞位置134と、アーチワイヤをアーチワイヤスロット140に挿入するか又は取り外すことができる第2の非閉塞位置35(破線で示す)との間を移動可能である。図22に示すように、可動ゲート130は、ブラケット本体110と摺動的に協働する対向する周縁端136を有する。前述したように、従来技術の歯列矯正ブラケット11の製造では、製造工程のために可動ゲート40が出入り動作できるようにされるか又は可動ゲート40において「遊び」が存在していた。しかしながら、可動ゲート130におけるそのような動作又は「遊び」は、以下で説明するように、結果として生じるアーチワイヤスロットの断面形状が、本発明の歯列矯正ブラケット10の機能にとって重要であるため弊害をもたし得る。したがって、本発明においては、可動ゲート130(図22)は、前向き面132に取り付けられるか又は一体に作られ、対向する周縁端136に対して実質的に平行に離間した関係で配置される個々のリブ137をさらに含む。リブ137は摺動可能に配置されるとともに、ブラケット本体110と嵌合する。個々のリブ137は、下記で説明するように、アーチワイヤスロットの所定の四辺形形状を維持するように、可動ゲート130をブラケット本体110に対して実質的に一貫した角度方向で維持する。一般に、リブ137は可動ゲート130と同じ材料から製造される。しかしながら、他の材料を選択することができ、それは以下で説明するように同じ機能目的を実現する。
アーチワイヤスロット140は、発明101および103のそれぞれのいくつかの形態において見られる。図4及び図6に示すような本発明のいくつかの形態において見られるアーチワイヤスロット140は、ブラケット本体110に対して個々に対称的に又は同軸に方向付けられていない点に留意することが重要である。また、図4及び図6に見られるように、アーチワイヤスロット140は前向き平面121に対して垂直に方向付けられていない。これは、図1~図3に示す従来技術の歯列矯正ブラケットとはかなり異なる点である。ブラケット本体110により定義されるか又はブラケット本体110内に形成されるアーチワイヤスロット140は、発明10の所定の形態に対して、その歯列矯正ブラケットの特定の形態が高偶力(図4)又は低偶力(図6)を生み出すか又はもたらす能力を付与するに製造の間にブラケット本体110に対して様々な角度を有するか又は方向付けられている。トルク表現が中立か又は無い構成は先行技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケット11(図5)がアーチワイヤと協働した場合に、先行技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケット11によって提供される。この新しい歯列矯正ブラケット10のデザインは、ブラケット本体110の前向き面120にトルクを伝達することにより所与の量のトルクを付与するように製造される。所定量のトルクは患者の歯12の一次、二次及び三次移動をもたらすが、それと同時にブラケット本体110及び前向き面120を歯12に対して同じ向きに維持する。そのため、歯列矯正ブラケット10の前向き面120は患者の唇の内面に位置するか又は寄り掛かっているため新しい歯列矯正ブラケット10を利用する患者は、歯列矯正ブラケット10の前向き表面120の表面の質感又は口当たりの変化を感知しない。これは、図1~図3に示す、ベース又はパッド16を通じてトルクが表現されるか又は伝達される先行技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケット11とは非常に対照的である。これらの先行技術の歯列矯正ブラケット11のそれぞれの前向き面30は非常に異なる前向き平面31において方向付けられている。したがって、本発明10の一態様は歯列矯正ブラケットに関し、トルクが面120又はブラケット本体110において呈される。これは、もちろん図1~図3に示す、ベース又はパッド16にトルクが呈されるか又は伝達される先行技術とは対照的である。図16~図19のそれぞれ示すように、アーチワイヤスロット140は、製造の間に水平面の上下双方の様々な角度に角度を付けるか又は定義できる。図16~図19は、様々な形に角度の付けられたアーチワイヤスロットの一群を示し、それらのすべては個々に高偶力を呈することができる。しかしながら、これらは、製造可能なごく少数の可能性のある角度方向の代表例にすぎない。同様に、水平面の下に位置するとともに図16~図19に示すものと同じ量角度が付けられたアーチワイヤスロットを有する低偶力の形態を製造することができる。アーチワイヤスロット140のこれらの可能性のある動作可能な向き又は角度は例示にすぎない。これらは、所望のトルクを与えるために歯列矯正ブラケット10を製造することができ、不正咬合に対処するため臨床医によって選択され得る、歯牙移動を引き起こすのに有効なアーチワイヤスロット140の角度方向の上限及び下限の範囲を表すものではない。
アーチワイヤスロット140は、ブラケット本体110から又はブラケット本体110内に形成される、上側の内向き面141と、同じブラケット本体110の反対側の離間した下向き面142とによって少なくとも部分的に定義される。これらの前述の面は互いに実質的に平行である。さらに、アーチワイヤスロット140は、ブラケット本体143の後方の内向き面によって少なくとも部分的に定義され、可動ゲート130の後ろ向き面133に対して平行に且つ離間した関係で配置される。アーチワイヤスロット140は、直角ではない4つの角度145によって定義される概して断面が四辺形の形状を有する。角度145の少なくともいくつかは、概ね符号146で示される丸みを帯びた角を有する。これらの丸みを帯びた角は、ブラケット本体110の強度を向上させる所定の曲率又は半径を有する。本発明の1つの可能な形態において、アーチワイヤスロット144の断面形状は平行四辺形の形状を取ってもよく、本発明の別の可能な形態では、アーチワイヤスロットの断面形状はひし形の形状を取り得る。本特許出願の目的のために、平行四辺形の定義は、実質的に平行な辺の対向する対を有する構造又は形状を含み、平行な辺の対向する対のそれぞれは実質的に長さが等しい。他方、菱形形状は、向きが実質的に平行な対向する辺の対を有する構造又は形状を含み、対向する辺の対はそれぞれ異なる長さを有する。
ここで図13~図19及び図21を参照して、本発明の歯列矯正ブラケット10及び米国特許第9198740号に記載の歯列矯正ブラケットにおいて特定の有用性があるアーチワイヤ150が示されている。この新たなアーチワイヤ150も米国特許出願第14/976074号(本願には係る特許出願の教示が参照により組み込まれ、係る特許出願から優先権を主張する)に完全に開示されている。前述の出願に付随の図面において、本発明10のアーチワイヤ150は、図21の大きく拡大した断面図で示されている。この点について、アーチワイヤ150は、円形-正方形又は円形-長方形の断面形状の本体160を有する。円形-正方形又は円形-長方形の断面形状の本体160は弾性を有し、概して符号161により示される長手軸により少なくとも部分的に定義される。なお、円形-正方形又は円形-長方形の形状の本体160は、円形の断面形状のアーチワイヤ162の外向き面163の一部を除去する製造技術により元は円形の断面形状のアーチワイヤ162(破線で示す)から形成されている。先の円形アーチワイヤ162の除去された部分も図21において破線で示す。本体160は、半径寸法164を有し(本発明の一形態では、長手軸161から本体160の湾曲した外向き面165までを測定した場合に一定であり得る)、さらに幅寸法166(長手軸を通る線に沿って凸状に湾曲した外向き面165の間で測定される)を有する。図面に示すように、新たなアーチワイヤ150の円形-正方形又は円形-長方形の形状の本体160は厚さ寸法170を有し、厚さ寸法170は実質的に平面で且つ平行に方向付けられた上向き面171と下向き面172との間で測定される。さらに、本体160は、第1の凸状に湾曲した後ろ向き面173及び第2の凸状に湾曲した前向き面174を含む。一対の凸状に湾曲した面173及び174は、控えめな角度(discreet angular)端又は領域で上向き面171及び下向き面172にそれぞれ結合する。図21の観察から分かるように、それぞれの平行な上向き面171及び下向き面172は幅寸法をそれぞれ有する。これは、後ろ向き湾曲面173及び前向き湾曲面174との間に延びる線に沿ってそれぞれ測定した場合、幅寸法166よりも小さい。この低減された幅寸法は、上向き面171及び下向き172に亘って且つ上側面及び下側面の周縁端を少なくとも部分的に形成する傾斜端又は領域175の間で測定される。外側に湾曲した面173及び174は、臨床医が患者の歯12の一貫した一次移動を維持できるようにすると同時に、臨床医が異なる量の力を歯列矯正ブラケット10に調節可能に加えることを可能にし、それにより臨床医が選択可能で制御可能な二次及び三次移動(その教示が参照により本明細書に組み込まれる、前述の米国特許出願に完全に記載されている)が得られる。アーチワイヤ150の上向き面171及び下向き面172のそれぞれは、図21に示す形状に実質的に機械加工される。後ろ側湾曲面173及び前側湾曲面174のそれぞれは、アーチワイヤスロット140の一部を少なくとも部分的に定義する丸みを帯びた角部146によって表される曲率又は半径よりも大きい所定の曲率を有する。
先の係属中の米国特許出願においてより完全に説明するように、円形正方形又は円形長方形の形状の本体160のユニークで新たな形状は、広範囲の偶力の確立を可能にするが、摩擦により係合し、その後可動ゲート130の閉塞位置134への動き又は移動を又はブラケット本体110のアーチワイヤ150の長さに沿った長手方向の移動を妨げ得るより大きな長方形のアーチワイヤを用いることに関連する先に認識された問題を実質的に解消する。
図4~図6、図23A~図24Cおよび図24A~図24Cのそれぞれに示すように、本発明の歯列矯正ブラケット10の構成及びアーチワイヤスロット140の様々な角度向きは、製造された歯列矯正ブラケットの形状に関わらず、180で表記される線で示す水平なアーチワイヤスロットの整列を容易に得ることを可能にするか又は促進し、用いられた場合に高偶力(図4)又は低偶力(図6A)を呈する歯列矯正ブラケット10の製造を可能にする。前述したように、この水平なアーチワイヤスロットの整列180は、図1、図2及び図3に示す先行技術のパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケット11を用いた場合に得るのがほぼ不可能である。さらにまた、新しい歯列矯正ブラケット10は、一形態において、患者の隣接する歯12に配置される隣接する歯列矯正ブラケットを、符号185で表記する線により示すように実質的に垂直に整合するように配置することができる(図23A~図23C)。図24A~図24Cに示すように、本発明の別の可能な第2の形態では、ブラケット本体110は、歯列矯正ブラケット10が患者の歯12に配置された場合にブラケット本体110及びパッド104の双方が患者の歯12の長手軸13Aと実質的に整合するようにパッド104に固定されているか又はパッド104と一体形されている。本発明のこの形態では、歯列矯正ブラケット10は、図23A~図23Cに示すように垂直に整合していない。しかしながら、水平なアーチワイヤスロットの整列180は維持される。本発明のこの代替形態は、臨床医にさらなる治療上の選択肢を提供する。図24A~図24Cに示す角張ったブラケット本体110は186と表記する線により示される。前で説明したように、そして先行技術の歯列矯正ブラケット11のアーチワイヤスロット25の整列は実現するのはほぼ不可能であるため、選択されたアーチワイヤをアーチワイヤスロット25内に適切に配置し、その後に付随の隣接するゲート40を閉じるのにアーチワイヤ60又は70を屈曲させるか又は他の物理的操作を行う必要がであった。本発明の歯列矯正ブラケット10は、これらの前に特定した問題を完全に回避し、図10~図12、図23A~図23C及び図24A~図24Cのそれぞれに示すようにアーチワイヤ150をアーチワイヤスロット140内に適切に配置し、その後に可動ゲート130を適切な閉塞位置134に移動させることができるようにアーチワイヤ150を屈曲させることなく又は屈曲を最小限にとどめてアーチワイヤスロット140内に挿入できるようにする。したがって、本発明の歯列矯正ブラケット10は、図1、図2及び図3に図示の先行技術のパッシブセルフライゲーション歯列矯正ブラケットを用いるのに臨床医によってしばしば提起されるより重要な臨床上の異論及び障害のいくつかに対処する。これらの認識された異論は、アーチワイヤ(60又は70)の実質的な屈曲なしで水平なアーチワイヤスロットの整列を実現できないことに関連する。さらに、それは、臨床医がCチェーン、弾性バンド等を配置するか又は利用するのに十分なスペースを持てるように実質的に一定の寸法のタイウィング間隔115を提供する。加えて、新たな歯列矯正ブラケット10の前向き面120は同じ前向き平面121内に位置するため、患者が着用した際の歯列矯正ブラケット10の快適さが大幅に改善され、本発明の一形態において隣接する歯列矯正ブラケット10の垂直整列185が実質的に同じままとなる。さらに、図23A~図23C及び図24A~図24Cに見られるように、この類似の前向き面120は視覚的に水平なアーチワイヤスロットの整列180を実現する上で臨床医を支援する。この整列180はアーチワイヤを曲げることなくアーチワイヤスロット140内にアーチワイヤ150を容易に配置できるようにするのに寄与する。最後に、大幅に改善された患者の口腔衛生及びより短い歯列矯正治療期間が可能となる。
図16~図19のそれぞれに示すように、様々な断面形状144及びアーチワイヤスロット140の角度向きが示され、それは平行四辺形又は菱形のいずれかの形状を有する。平行四辺形144の様々な角度方向は、概して符号190で示される水平基準線を参照して示される。水平基準線の上に位置するアーチワイヤスロット140のこれらの角度方向は、図示のように約3度から13度までそれぞれ異なる。これらは、水平基準線190よりも上又は下の双方に位置するアーチワイヤスロットの角度向きのために得られ得る可能な角度向きの代表的な例にすぎない。もちろん、基準線の下に位置する角度向きも、アーチワイヤ150がアーチワイヤスロット140内に受容された場合に低偶力を呈するために用いられ得る。中立又は標準の偶力を得るためには、先行技術のセルフライゲーション歯列矯正ブラケット11(図5)が用いられ得る。もちろん、臨床医が新たな歯列矯正ブラケット10を使用している場合、臨床医は隣接する歯に対して様々な異なる偶力を選択し得る。高偶力(図16~図19)及び低偶力(図6)の双方又は図5に示す偶力が中立又はなしを選択できる。アーチワイヤ150とブラケット本体110との係合は、符号200で表記された矢印(それぞれ図10~図12)により示されている。これは、前向き面120によりブラケット本体110にトルクがどのように伝えられるかを示す。しかしながら、歯列矯正ブラケット10を患者の歯に配置する場合、臨床医は通例実質的に均一に整合した水平なアーチワイヤスロットの整列180を実現でき、屈曲又は他の些細な操作なしにアーチワイヤ150がアーチワイヤスロット140内に配置されるか又は方向付けられる。したがって、これまで不可能であったやり方で歯列矯正治療期間の間に患者の歯12に対して生物学的に緩やかで適切な物理力を加えることができ、臨床医は所望の一次、二次及び/又は三次移動を、そして最小限の優れた臨床結果を最小限の、通常より短い患者治療時間で得ることができる。
動作
本発明の説明した実施形態の動作は容易に分かると考えられ、ここで簡潔に要約する。
本発明は、米国特許第9198740号及び本願が優先権を主張する係属中の米国特許出願第14/976074号の教示に開示されている歯列矯正ブラケットと組み合わせて用いられた場合、過去数十年の間に歯列矯正医に利用可能であった従来技術の装置及び他の器具では得ることができない、臨床医のための全体的な歯列矯正治療システムを提供する。前述の特許に示す歯列矯正ブラケットと、先の係属中の米国特許出願でより完全に説明される図示の新たなアーチワイヤの使用との組み合わせにより、臨床医は複数の不正咬合歯を自信を持って効果的に治療でき、最小限の治療時間で望ましい歯牙移動を実現でき、患者のために大きな結果を実現することができる。
本発明の最も広い態様において、本発明は、患者の歯12の前向き面13にリリース可能に固定され、前向き面120をさらに有するブラケット本体110を含む歯列矯正ブラケット10に関する。ブラケット本体は、ブラケット本体110に対して所定の角度方向に方向付けられ、所定の断面形状を有するアーチワイヤ150を受容し且つ協働するアーチワイヤスロット140を定義する。アーチワイヤ150は、臨床医が選択した患者の歯12の一次、二次又は三次移動をもたらすためにブラケット本体110の前向き面120に所定量のトルクを呈し、歯列矯正ブラケット10は、患者の隣接する歯に配置される同様のデザインの他の歯列矯正ブラケット10と共に使用された場合、中心水平のアーチワイヤスロットの整列(center level archwire slot line-up)180を作り出す。隣接する歯列矯正ブラケット10が、隣接する歯12に異なる一次、二次又は三次移動をもたらすにもかかわらず、アーチワイヤ150は実質的に屈曲されずに各歯列矯正ブラケット10の中心水平のアーチワイヤスロットの整列180内に受容される。本発明の一形態では、患者の歯12にある隣接する歯列矯正ブラケット10は、185と表記する線により示されるように実質的に垂直に整合されるか又は方向付けられたままである(それぞれ図23A~図23C)。図24A~図24Cに示す本発明の別の形態では、ブラケット本体110及びパッド104は、水平アーチワイヤスロット整列180維持するのと同時に、患者の各歯12の長手軸13Aに対して実質的に整合した状態186のままである。
本発明の別の態様は、患者の歯12の前向き面13にリリース可能に固定されるブラケット本体110を含む歯列矯正ブラケット10に関する。ブラケット本体110は、所定の形状を有するアーチワイヤ150を受容し協働するためのアーチワイヤスロット140を定義する。ブラケット本体110は、所定の平面121に沿って方向付けられる前向き面120をさらに有する。タイウィング間隔又は間隙115がブラケット本体110と患者110の歯12との間に定義され、さらに所定の実質的に一定の寸法を有する。ブラケット本体は患者の歯12に一次、二次又は三次移動を与えるよう動作可能にされているにもかかわらず、ブラケット本体110の前向き面120は同じ平面内で方向付けられた状態で留まり、タイウィング間隔又は間隙115の寸法は同じままである受容された。
図面に示すように、新たな歯列矯正ブラケット10のアーチワイヤスロット140は、直角ではない4つの角度145により少なくとも部分的に定義される四辺形の断面形状144を有する。本発明の1つの可能な形態では、歯列矯正ブラケット10は、平行四辺形を形成する断面形状を有するアーチワイヤスロット140を定義する。本発明の別の可能な形態では、本発明の歯列矯正ブラケット10は、菱形を形成する断面形状を有するアーチワイヤスロット140を定義する。図面に示す構成では、歯列矯正ブラケット10は、前向き面132及び後ろ向き面133をそれぞれ有し、ブラケット本体10と摺動可能に協働し、アーチワイヤスロット140に対して閉塞位置134と非閉塞位置135との間をさらに移動する可動ゲート130を含む。可動ゲート130の後ろ向き面133は、可動ゲート130がアーチワイヤスロット140に対して閉塞位置130に配置されている場合にアーチワイヤスロット140の四辺形断面形状144の一部を少なくとも部分的に定義する。可動ゲート130の前向き面132は、ブラケット本体部110の前向き面120によって定義される前向き平面12に概ね沿って又は前向き平面12に対して概ね平行な関係で配置される。
歯列矯正ブラケット10により定義されるアーチワイヤスロット140は、ブラケット本体110に対して角度を持って方向付けられ、平面121に対して垂直には方向付けられていない。さらに、基準水平面又は線から測定された場合、アーチワイヤスロット140のこの角度方向は、基準水平線又は平面190の上又は下であり得る範囲内に位置する。さらに、歯列矯正ブラケット10は、アーチワイヤ150と協働する場合に低偶力(図6)又は高偶力(図4)を付与し得る。アーチワイヤスロット14内に受容される取り囲まれたアーチワイヤ150への偶力が中立又は無い構成は、先行技術の歯列矯正ブラケット11(図5)によってもたらすことができる。新たな発明10は、患者の歯12に対して少なくとも部分的に一次、二次又は三次移動をもたらす。
本発明の歯列矯正ブラケット10はさらに、屈曲なしか又は最小限の屈曲でアーチワイヤスロット140内に受容されるような寸法を有する細長く弾性を有し、さらに円形-正方形又は円形-長方形の断面形状を有する(図16~図19)本体160を有するアーチワイヤ150(図21)と組み合わせてさらに利用される。アーチワイヤ150の弾性本体160は所定の選択的に可変の厚さ寸法170を有し、アーチワイヤスロット140内に受容され、さらにブラケット本体110と協働した場合にアーチワイヤ150の弾性本体160の可変の厚さ寸法に少なくとも部分的に基づく力を及ぼす。アーチワイヤ150の可変の厚さ寸法は、ブラケット本体110と協働した場合に患者の歯12の一次、二次又は三次移動をもたらす。加えて、アーチワイヤ150の弾性本体160は、所定の周方向幅寸法166を有する。周方向幅寸法166は、アーチワイヤ150がブラケット本体110と協働する場合に患者の歯12の一貫した一次移動制御を維持する。アーチワイヤ150の可変厚さ寸法170は、患者の歯12の制御可能な2次又は3次移動を実現するためにブラケット本体110への力の調整可能な適用を容易にする。図面に示す構成では、ブラケット本体10によって定義されるアーチワイヤスロット140は、概ね垂直方向に測定した場合に高さ又は厚さ寸法を有する。さらに、アーチワイヤ140の高さ又は厚さ寸法170の増加がアーチワイヤスロット140の高さ寸法の約50%よりも大きいと、ブラケット本体110に調整可能な量のトルク力が与えられ、歯列矯正治療計画の間に患者の歯に選択的な二次又は三次制御を提供する。これは、アーチワイヤ150の部分的な円形形状165の影響によるものであり、歯列矯正治療期間を通して、患者の歯12の理想的な一次回転制御が維持される。
より具体的には、本発明は、歯列矯正治療計画を受けている患者の歯12の前向き面13にリリース可能に固定されるパッド104を含む歯列矯正ブラケット10に関する。さらに、歯列矯正ブラケット10は、パッド104と一体形成され、パッドに対して前方且つ外向きに延在するブラケット本体110を含む。ブラケット本体110は、所定の形状を有するアーチワイヤ150を受容し協働するためのアーチワイヤスロット140を定義する。アーチワイヤ150は、ブラケット本体110と物理的に協働した場合、臨床医が選択した患者の歯12の一次、二次又は三次移動もたらすためにブラケット本体150の前向き面120にトルクを伝達する。アーチワイヤスロット140は、直角ではない4つの角度145により部分的に定義される四辺形の断面形状144を有する。
したがって、本発明の歯列矯正ブラケット10は、図1、図2及び図3のそれぞれに示す先行技術の歯列矯正ブラケットよりも多くの利点を提供することが分かる。本発明の歯列矯正ブラケット10は、患者に短縮された治療時間を提供し、さらにこれまでできなかったやり方で水平なアーチワイヤスロットの整列180を実現できる手段を臨床医にもたせる。さらに、本発明のアーチワイヤ150を利用することで、アーチワイヤを屈曲せずに又は最小限の屈曲で挿入でき得ることを含む多くの利点を提供する。その結果、臨床医は、患者治療時間を従来技術の器具及びこれまでに知られている技術を利用することにより得ることができない量の短縮しながら、これまで得ることができなかった優れた歯の一次、二次及び三次制御を実現できる。

Claims (6)

  1. 歯列矯正ブラケットであって、
    患者の歯の前向き面にリリース可能に固定されるブラケット本体を含み、
    前記ブラケット本体は前向き面をさらに有し、前記ブラケット本体はアーチワイヤスロットをさらに定義し、該アーチワイヤスロットは前記ブラケット本体に対して所定の角度方向に方向付けされるとともに、所定の断面形状を有するアーチワイヤを受容し且つ該アーチワイヤと協働し、該アーチワイヤは、該アーチワイヤスロットに受容された場合に、前記患者の歯の一次、二次又は三次移動をもたらすために前記ブラケット本体の前向き面に対して所定量のトルクを呈し、当該歯列矯正ブラケットは、前記患者の隣接する歯に位置する同様のデザインの別の歯列矯正ブラケットと共に用いられた場合に、中心水平のアーチワイヤスロットの整列を形成し、前記隣接する歯に対して前記隣接する歯列矯正ブラケットが異なる一次、二次又は三次移動をもたらすにも関わらず、前記アーチワイヤは、実質的に屈曲されないで各歯列矯正ブラケットの中心水平のアーチワイヤスロットの整列内に受容され、
    前記ブラケット本体と前記患者の歯との間に所定の一定の寸法を有するタイウィング間隔が定義され、前記ブラケット本体は前記患者の歯に対して一次、二次又は三次移動をもたらすように製造され且つ動作可能であるにもかかわらず、前記ブラケット本体の前向き面は同じ平面において方向付けられたままであり、前記タイウィング間隔の寸法は同じままであり、
    前記アーチワイヤスロットは、菱形を形成する断面形状を有し、
    当該歯列矯正ブラケットは前向き面及び後ろ向き面を有し、前記ブラケット本体と摺動的に協働する可動ゲートをさらに含み、該可動ゲートは、前記アーチワイヤスロットに対して閉塞位置と非閉塞位置との間を移動し、
    前記アーチワイヤの所定の断面形状は2つの対向する湾曲面と2つの対向する平坦面とを有し、該2つの対向する湾曲面は前記アーチワイヤの断面の最も大きい寸法を定義する、
    歯列矯正ブラケット。
  2. 前記患者の隣接する歯に配置される隣接する歯列矯正ブラケットのブラケット本体は、実質的に垂直方向が互いに揃った状態でとどまる、請求項1に記載の歯列矯正ブラケット。
  3. 前記患者の歯は長手軸を有し、前記ブラケット本体は前記患者の歯の長手軸と整合している、請求項1に記載の歯列矯正ブラケット。
  4. 前記アーチワイヤスロットは、直角でない4つの角度により少なくとも部分的に定義される四辺形の断面形状を有する、請求項1に記載の歯列矯正ブラケット。
  5. 前記可動ゲートの後ろ向き面は、前記可動ゲートが前記アーチワイヤスロットに対して前記閉塞位置に位置する場合に前記アーチワイヤスロットの断面形状の一部を少なくとも部分的に定義し、前記アーチワイヤスロットの断面形状は、直角でない4つの角度によって定義される四辺形である、請求項1に記載の歯列矯正ブラケット。
  6. 前記アーチワイヤスロットは前記ブラケット本体に対して角度方向を有し、前記アーチワイヤスロットの角度方向は水平面から測定された場合に該水平面の下又は上の範囲にある、請求項1に記載の歯列矯正ブラケット。
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