本開示を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る揺れ推定システム1が適用される建物2の構成図である。
揺れ推定システム1は、建物2に適用される。揺れ推定システム1は、適用される建物2の揺れを推定するシステムである。
建物2は、複数の階床を有する。建物2において、エレベーター3が設けられる。建物2において、エレベーター3の昇降路4が設けられる。昇降路4は、複数の階床にわたる空間である。建物2において、昇降路4の上部にエレベーター3の機械室5が設けられる。
エレベーター3は、巻上機6と、懸架体7と、そらせ車8と、かご9と、釣合い錘10と、制御装置11と、を備える。
巻上機6は、機械室5に設けられる。巻上機6は、駆動シーブ12と、巻上機モータ13と、巻上機ブレーキ14と、を備える。駆動シーブ12は、エレベーター3の滑車である。巻上機モータ13は、駆動シーブ12を回転させる機器である。巻上機ブレーキ14は、駆動シーブ12の回転を制動する装置である。巻上機ブレーキ14は、例えば電磁ブレーキである。巻上機ブレーキ14は、ブレーキ車と、ブレーキシューと、ブレーキばねと、電磁マグネットと、を備える。ブレーキ車は、駆動シーブ12と同軸に結合されたブレーキドラムまたはブレーキディスクなどである。ブレーキシューは、駆動シーブ12の回転を制動するときにブレーキ車に接触する部材である。ブレーキバネは、ブレーキシューをブレーキ車に弾性力によって押し付けるバネである。電磁マグネットは、駆動シーブ12の回転の制動を解除するときにブレーキバネの弾性力に抗してブレーキシューをブレーキ車から引き離す機器である。
懸架体7は、例えば複数本のロープまたは複数本のベルトなどである。懸架体7は、駆動シーブ12に巻き掛けられる。そらせ車8は、機械室5に設けられる。そらせ車8は、懸架体7が巻き掛けられる滑車である。懸架体7の両端は、機械室5から昇降路4に下げられる。懸架体7の一端は、昇降路4においてかご9に接続される。懸架体7の他端は、昇降路4において釣合い錘10に接続される。
かご9および釣合い錘10は、懸架体7によって昇降路4において吊り下げられている。かご9および釣合い錘10は、巻上機6によって昇降路4を互いに反対方向に昇降する。かご9は、エレベーター3の利用者などを複数の階床の間で輸送する機器である。釣合い錘10は、懸架体7の両端側に掛かる荷重のバランスをかご9との間でとる機器である。
制御装置11は、機械室5に設けられる。制御装置11は、エレベーター3の動作を制御する装置である。制御装置11は、巻上機6の回転を制御することで、予め設定された速度でかご9を昇降路4において昇降させる。
エレベーター3は、一対のかごガイドレール15と、一対の釣合い錘ガイドレール16と、を備える。各々のかごガイドレール15および各々の釣合い錘ガイドレール16は、昇降路4に設けられる。一対のかごガイドレール15は、例えばかご9の左右に配置される。各々のかごガイドレール15は、かご9の昇降を案内する。一対の釣合い錘ガイドレール16は、例えば釣合い錘10の左右に配置される。各々の釣合い錘ガイドレール16は、釣合い錘10の昇降を案内する。
エレベーター3は、かご緩衝器17と、釣合い錘緩衝器18と、を備える。かご緩衝器17および釣合い錘緩衝器18は、昇降路4の底部に設けられる。かご緩衝器17は、かご9の下方に設けられる。かご緩衝器17は、かご9が昇降路4の底部に衝突する場合の衝撃を緩和する機器である。釣合い錘緩衝器18は、釣合い錘10の下方に設けられる。釣合い錘緩衝器18は、釣合い錘10が昇降路4の底部に衝突する場合の衝撃を緩和する機器である。
エレベーター3は、P波感知器19(P波:Primary wave)と、S波感知器20(S波:Secondary wave)と、を備える。P波感知器19およびS波感知器20は、地震波を感知する機器である。P波感知器19は、昇降路4の底部に設けられる。P波感知器19は、P波を感知する。S波感知器20は、機械室5に設けられる。S波感知器20は、S波を感知する。
エレベーター3において、制御装置11は、例えばP波感知器19などにおいて感知された地震波が予め設定された閾値を超える揺れであったときに、エレベーター3の運行を通常運転から地震管制運転に移行する。地震管制運転において、制御装置11は、走行中のかご9を最寄りの階床に停止させる。その後、かご9に乗車している利用者に対してかご9から降車するように通知が行われる。予め設定された揺れより大きな揺れがS波感知器20において感知されなかった場合に、制御装置11は、エレベーター3の運行を通常運転に復帰する。
図2は、実施の形態1に係る揺れ推定システム1の構成図である。
揺れ推定システム1は、建物2の揺れを推定するシステムである。ここで、揺れ推定システム1が推定する建物2の揺れは、例えば建物2の高さについての揺れ量の分布などである。揺れ量は、例えば揺れの最大加速度、最大速度、または最大変位などである。揺れ推定システム1は、例えば地震が発生したときに当該地震による建物2の揺れを推定する。揺れ推定システム1は、例えば水平方向における建物2の揺れを推定する。揺れ推定システム1は、複数の振動センサ21と、揺れ推定装置22と、を備える。
各々の振動センサ21は、建物2に設けられる。この例において、各々の振動センサ21は、建物2に対して固定されている。複数の振動センサ21の一部または全部は、例えば昇降路4に配置される。各々の振動センサ21は、振動を検出する機器である。各々の振動センサ21は、振動の加速度、速度、または変位などを振動の検出値として出力する。各々の振動センサ21は、建物2において互いに異なる高さに配置される。各々の振動センサ21は、例えば互いに異なる階床に配置される。
揺れ推定装置22は、例えば建物2に設けられるサーバコンピュータなどである。あるいは、揺れ推定装置22は、例えば制御装置11などのエレベーター3のハードウェアに一体に搭載されていてもよい。あるいは、揺れ推定装置22は、建物2の外部の拠点などに設けられるサーバコンピュータなどであってもよい。外部の拠点は、例えばエレベーター3の情報を収集する情報センターなどである。あるいは、揺れ推定装置22は、例えばクラウドサービス上の仮想サーバなどであってもよい。揺れ推定装置22は、建物揺れ推定部23と、エレベーター揺れ推定部24と、を備える。
建物揺れ推定部23は、各々の振動センサ21の検出結果に基づいて建物2の揺れを推定する部分である。建物揺れ推定部23は、推定した建物2の揺れをエレベーター揺れ推定部24に出力する。
エレベーター揺れ推定部24は、建物揺れ推定部23が推定した建物2の揺れに基づいてエレベーター3の機器の揺れを推定する部分である。揺れが推定されるエレベーター3の機器は、例えばかご9または釣合い錘10などである。エレベーター揺れ推定部24は、例えば制御装置11などの移動しない機器の揺れを推定してもよい。ここで、エレベーター揺れ推定部24が推定するエレベーター3の機器の揺れは、例えばエレベーター3の機器の揺れ量などである。揺れ量は、例えば揺れの最大加速度、最大速度、または最大変位などである。
続いて、図3を用いて、揺れ推定システム1における振動センサ21の配置の例を説明する。
図3は、実施の形態1に係る揺れ推定システム1が適用される建物2の振動モードを示す図である。
図3において、縦軸は建物2の高さを表す。図3において、横軸は各々の振動モードにおける振動の振幅を表す。図3の左側のグラフは、1次の振動モードを表す。図3の中央のグラフは、2次の振動モードを表す。図3の右側のグラフは、3次の振動モードを表す。
この例において、揺れ推定システム1は、中間階において3つの振動センサ21を備える。3つの振動センサ21は、建物2の振動モードを用いて設定された位置に配置される。
建物2が地震によって地表面から強制加振を受けるときに、建物2は、一次元の連続弾性体としてモデル化できる。この例において、建物2の振動モードは、最下階を基準とする相対的な振動を表す。このモデルにおいて、建物2の上端部である最上階は自由端である。また、建物2の下端部である最下階は固定端である。このとき、建物2の揺れは、連続弾性体としてモデル化した建物2の振動モードの重ね合わせによって表される。このため、各々の振動センサ21は、建物2のいずれかの振動モードの振動の情報を取得しうるように、当該振動モードの腹部のいずれかの位置に配置される。ここで、腹部は、振動モードにおいて振動の振幅が極大となる部分である。腹部は、例えば建物2の上端部であってもよい。nを自然数として、n次の振動モードは、例えばn個の腹部を有する。また、n次の振動モードは、例えばn個の節部を有する。節部は、振動モードにおいて振動の振幅が0となる部分である。節部は、例えば建物2の下端部であってもよい。建物2の下端部は、例えば最下階に対応する。一般に、地震による建物2の揺れは、1次、2次、および3次の3つの振動モードによってよく再現される。このため、3つの振動センサ21は、3次までの3つの振動モードの腹部のうちのいずれかの位置に配置される。また、揺れ推定システム1は、振動モードの振動の基準となる位置に配置される振動センサ21をさらに備える。当該振動センサ21は、例えば建物2の最下階に配置される。
簡単のため、建物2の振動モードの波形が正弦波形で表される例を用いて、中間階における3つの振動センサ21の配置を説明する。建物2の振動モードの波形が正弦波形で表されない一般の場合においても、同様の手順によって複数の振動センサ21の配置が設定される。建物2の振動モードの波形は、例えば建物2の構造などに基づいて予め算出されたものが用いられる。
n次の振動モードの波形φn(x)は、次の式(1)に示されるように正弦波形で表される。ここで、xは建物2の高さを表す変数である。高さxの原点は、例えば地上の最下階において0となるように設定される。高さxは、建物2の最上階において1となるように規格化される。
3つの振動センサ21の配置は、建物2の振動モードを次数の低い順に用いて設定される。
建物2の1次の振動モードの波形φ1(x)は、次の式(2)に示される。1次の振動モードは、最低次の振動モードである。1次の振動モードは、基本振動モードである。
3つの振動センサ21のうちの1つ目である第1振動センサ21aは、1次の振動モードの腹部に配置される。1次の振動モードの腹部は、x=1となる上端の部分のみである。このため、第1振動センサ21aは、x=x1=1となる上端の腹部に配置される。当該腹部は、第1腹部である。x1は、第1腹部の位置である。
建物2の2次の振動モードの波形φ2(x)は、次の式(3)に示される。2次の振動モードは、基本振動モードより高次の高次振動モードの例である。
2つの振動センサ21のうちの2つ目である第2振動センサ21bは、2次の振動モードの腹部のいずれかに配置される。2次の振動モードの腹部は、x=1/3となる部分、およびx=1となる上端の部分の2つである。x=1となる上端の部分において既に第1振動センサ21aが配置されているため、第2振動センサ21bは、x=x2=1/3となる腹部に配置される。当該腹部は、第2腹部である。x2は、第2腹部の位置である。
建物2の3次の振動モードの波形φ3(x)は、次の式(4)に示される。3次の振動モードは、高次振動モードよりさらに高次の振動モードの例である。
3つの振動センサ21のうちの3つ目である第3振動センサ21cは、3次の振動モードの腹部のいずれかに配置される。3次の振動モードの腹部は、x=1/5となる部分、x=3/5となる部分、およびx=1となる上端の部分の3つである。x=1となる上端の部分において既に第1振動センサ21aが配置されているため、第3振動センサ21cは、x=1/5となる部分、またはx=3/5となる部分のいずれか一方に配置される。
ここで、振動センサ21が設けられていない位置における建物2の揺れの推定の精度の低下を抑えうるように、各々の振動センサ21は、建物2の高さの全域にわたって配置されることが好ましい。このため、各々の振動センサ21は、できるだけ互いに離れた位置に配置される。この例において、第3振動センサ21cは、第1腹部および第2腹部の近い方からの遠さが最も大きい腹部に配置される。2つの腹部の間の遠さは、例えば2つの腹部の間の高さの差である。
この例において、x=1となる第1腹部からのx=1/5となる部分の遠さΔxは、Δx=4/5である。x=1/3となる第2腹部からのx=1/5となる部分の遠さΔxは、Δx=2/15である。このため、第1腹部および第2腹部の近い方からのx=1/5となる部分の遠さは、2/15である。同様に、第1腹部および第2腹部の近い方からのx=3/5となる部分の遠さは、4/15である。このため、第1腹部および第2腹部の近い方からの遠さが最も大きい3次の振動モードの腹部は、x=3/5となる部分である。したがって、第3振動センサ21cは、x=x3=3/5となる腹部に配置される。当該腹部は、第3腹部である。x3は、第3腹部の位置である。
揺れ推定システム1が4つ以上の振動センサ21を含む場合においても、同様の手順によって振動センサ21の配置が設定される。n次の振動モードの腹部のいずれかに配置される振動センサ21は、n次の振動モードの腹部のうち、例えばn次より低次の振動モードを用いて振動センサ21が配置された腹部のうち最も近い腹部からの遠さが最も大きい腹部に配置される。
続いて、図4を用いて、揺れ推定システム1における建物2の揺れの推定の例を説明する。
図4は、実施の形態1に係る揺れ推定システム1において検出された振動の例を示す図である。
図4において、横軸は時間を表す。図4において、縦軸は建物2において振動センサ21が設けられる位置の振動を表す。図4の上段のグラフは、第1腹部における振動を表す。図4の下段のグラフは、第2腹部における振動を表す。図4の中段のグラフは、第3腹部における振動を表す。図4の上段から下段までの3つのグラフにおいて、各々のグラフに対応する腹部に配置された振動センサ21の振動の検出値から、地表の最下階に設けられた基準の振動センサ21の振動の検出値を差し引いた相対値が示される。この例において、振動の検出値は、振動の加速度である。なお、各々の振動センサ21において振動の検出値が速度または変位である場合においても、同様の処理によって建物2の揺れが推定される。
例えば地震などが発生している間、各々の振動センサ21が設けられる位置の振動の検出値である変位、速度、または加速度などは、時間とともに変化する。このため、揺れ推定システム1は、揺れ量として振動の変位、速度、または加速度などの最大値を推定しうるように、振動の検出値の最大値を取得する。ここで取得される最大値は、例えば地震が発生している間の全時間領域における最大値である。揺れ推定システム1において、建物2の振動モードに基づいて建物2の揺れを推定しうるように、同一の時刻における各々の振動センサ21の検出値が取得される。このため、各々の振動センサ21における時刻は、例えば互いに同期されている。
建物揺れ推定部23は、例えば地震が発生するときに建物2の揺れを推定する。揺れ推定システム1において、地震の発生および終了は、例えばP波感知器19またはS波感知器20などによって感知されてもよい。あるいは、地震の発生および終了は、いずれかの振動センサ21の検出値に基づいて感知されてもよい。
いずれかの振動モードの腹部に配置される振動センサ21の振動の検出値について、地震が発生してからの振動の最大値が更新されるときに、建物揺れ推定部23は、当該振動センサ21の最大値を記憶する。ここで、振動の最大値は、例えば基準の振動センサ21による検出値を差し引いた相対値における最大値である。当該最大値は、図4において丸記号によって示される。このとき、建物揺れ推定部23は、同一の時刻における他の全ての振動センサ21の振動の検出値をあわせて記憶する。ここで記憶される検出値は、例えば基準の振動センサ21による検出値を差し引いた相対値である。当該相対値は、図4において四角記号によって示される。この例において、腹部に配置される振動センサ21は3つあるので、各々の振動センサ21の検出値の相対値が最大となる3つの時刻t1、t2、およびt3における各々の振動センサ21の検出値が記憶される。
建物2の揺れは振動モードの重ね合わせで表現されるため、時刻t1における各々の振動センサ21の検出値の相対値は、次の式(5)によって表される。ここで、a11は、時刻t1において検出された第1振動センサ21aの検出値についての基準の振動センサ21に対する相対値を表す。a21は、時刻t1において検出された第2振動センサ21bの検出値についての基準の振動センサ21に対する相対値を表す。a31は、時刻t1において検出された第3振動センサ21cの検出値についての基準の振動センサ21に対する相対値を表す。また、q1(t)は、時刻tにおける1次の振動モードのモード振幅を表す。q2(t)は、時刻tにおける2次の振動モードのモード振幅を表す。q3(t)は、時刻tにおける3次の振動モードのモード振幅を表す。ここで、モード振幅は、各々の振動モードの成分の例である。
既知の各々の振動モードの波形φ1、φ2、およびφ3を用いて、建物揺れ推定部23は、式(5)に基づいて時刻t1におけるモード振幅q1(t1)、q2(t1)、およびq3(t1)を算出する。建物揺れ推定部23は、算出したモード振幅に基づいて、振動センサ21が設けられていない位置を含む建物2の任意の位置xについての時刻t1における建物2の揺れ量を算出できる。この例において、建物揺れ推定部23は、各々の階床に対応する位置について揺れ量を算出する。同様にして、建物揺れ推定部23は、各々の階床に対応する位置について、時刻t2およびt3における建物2の揺れ量を算出する。
続いて、図5および図6を用いて、揺れ推定システム1における建物2の揺れの推定結果の例を説明する。
図5は、実施の形態1に係る揺れ推定システム1において検出された振動の例を示す図である。
図6は、実施の形態1に係る揺れ推定システム1において推定された各階の揺れ量の例を示す図である。
図5において、横軸は時間を表す。図5において、縦軸は建物2において振動センサ21が設けられる位置の振動の加速度を表す。図5の実線のグラフは、第1腹部における振動を表す。図5の破線のグラフは、第2腹部における振動を表す。図5の一点鎖線のグラフは、第3腹部における振動を表す。この例において、建物2は20階建てである。また、第1腹部、第2腹部、および第3腹部は、建物2の20階、7階、および12階である。第1振動センサ21aは、第1腹部である20階に配置される。第2振動センサ21bは、第2腹部である7階に配置される。第3振動センサ21cは、第3腹部である12階に配置される。第1振動センサ21aの検出値は、12.5秒付近の時刻において最大となる。
図6において、図5に示される振動の検出結果に基づいて、第1振動センサ21aの検出値が最大となる時刻について建物揺れ推定部23に推定された建物2の揺れが示される。図6において、横軸は建物2の階床を表す。図6において、縦軸は、建物2の揺れ量としての加速度を示す。図6において、実線のグラフは揺れ推定部による推定値を示す。図6において、四角記号は第1振動センサ21aの検出値が最大となる時刻における建物2の各階の揺れ量を示す。
図6に示されるように、揺れ推定部による推定値は建物2の各階の揺れ量にほぼ対応している。このように、少ない数の振動センサ21によって建物2全体の揺れ量が高い精度で推定される。このため、建物2に設けられた機器についての揺れの影響は、建物2の揺れ量に基づいて診断できる。
続いて、図7を用いて、揺れ推定システム1におけるエレベーター3の機器の揺れの推定の例を説明する。
図7は、実施の形態1に係る揺れ推定システム1の動作の例を示すフロー図である。
地震が発生するときに、制御装置11は、エレベーター3の運行を通常運転から地震管制運転に移行する。エレベーター3において、予め設定された揺れより大きな揺れが例えばS波感知器20などにおいて感知された場合に、診断運転の可否が判定される。診断運転は、エレベーター3において異常の有無を点検することで揺れの影響を診断する運転である。
診断運転の可否は、例えば各々の振動センサ21の検出結果に基づいて揺れ推定システム1が推定した建物2の揺れに基づいて判定される。建物揺れ推定部23は、建物2の揺れの推定結果をエレベーター揺れ推定部24に出力する。
エレベーター揺れ推定部24は、建物2の揺れの推定結果を建物揺れ推定部23から取得する。エレベーター揺れ推定部24は、エレベーター3の機器の位置を例えば制御装置11などから取得する。エレベーター3の機器の位置は、例えばかご9または釣合い錘10などの位置である。エレベーター揺れ推定部24は、建物2の揺れの推定結果およびエレベーター3の機器の位置に基づいて、エレベーター3の機器の揺れを推定する。エレベーター揺れ推定部24は、例えば、取得した機器の位置における建物2の揺れを当該機器の揺れとして推定する。
その後、エレベーター揺れ推定部24は、推定したエレベーター3の機器の揺れ量を予め設定された閾値と比較する。ここで、当該閾値は、エレベーター3の診断運転の可否を判定する基準として例えばエレベーター揺れ推定部24などが予め記憶している値である。エレベーター揺れ推定部24は、推定した揺れ量が閾値を下回るときに、診断運転が可能であると判定する。一方、エレベーター揺れ推定部24は、推定した揺れ量が閾値以上であるときに、診断運転が不可であると判定する。エレベーター揺れ推定部24は、診断運転の可否の判定結果を制御装置11に出力する。
診断運転を可とする判定結果をエレベーター揺れ推定部24から受け付けた場合に、制御装置11は、エレベーター3の診断運転を開始する。診断運転において異常が検知されない場合に、制御装置11は、エレベーター3の運行を通常運転に復帰する。
一方、診断運転を不可とする判定結果をエレベーター揺れ推定部24から受け付けた場合に、制御装置11は、エレベーター3の運行を休止させて保守員による点検まで待機させる。
なお、揺れ推定システム1は、振動モードの腹部に設けられる振動センサ21を4つ以上備えていてもよい。また、揺れ推定システム1は、振動モードの腹部に設けられる振動センサ21を2つのみ備えていてもよい。このとき、建物揺れ推定部23は、例えば1次の振動モードおよび2次の振動モードに基づいて建物2の揺れを推定する。
また、P波感知器19またはS波感知器20が振動の波形を出力する機能を有する場合などに、揺れ推定システム1において、P波感知器19またはS波感知器20は振動センサ21の機能を兼ねていてもよい。例えば昇降路4の底部に配置されるP波感知器19は、建物2の最下階に配置される基準の振動センサ21として機能してもよい。また、機械室5に配置されるS波感知器20は、基本振動モードの腹部に配置される振動センサ21として機能してもよい。
また、建物2において、昇降路4の上部などに機械室5が設けられていなくてもよい。このとき、建物2に設けられるエレベーター3は、機械室レスエレベーターであってもよい。建物2に設けられるエレベーター3は、ここで例示した種類に限定されない。建物2に設けられるエレベーター3は、巻上機を有する2:1ローピングのエレベーター、または巻上機を有しない自走式のエレベーターなどの種類のエレベーターであってもよい。また、建物2において、複数のエレベーター3が設けられていてもよい。このとき、各々のエレベーター3の運行は、例えば群管理装置などによって管理されていてもよい。
また、揺れ推定システム1は、エレベーター揺れ推定部24を有していなくてもよい。揺れ推定システム1は、推定した建物2の揺れの情報を、例えばエレベーター3の揺れの影響を診断する外部のシステムなどに出力してもよい。
以上に説明したように、実施の形態1に係る揺れ推定システム1は、複数の振動センサ21と、建物揺れ推定部23と、を備える。各々の振動センサ21は、建物2に設けられる。各々の振動センサ21は、振動を検出する。建物揺れ推定部23は、各々の振動センサ21の検出結果に基づいて建物2の揺れを推定する。複数の振動センサ21は、第1振動センサ21aと、第2振動センサ21bと、を含む。第1振動センサ21aは、第1腹部に設けられる。第1腹部は、建物2の基本振動モードの腹部である。第2振動センサ21bは、第2腹部に設けられる。第2腹部は、建物2の高次振動モードの複数の腹部のうち第1腹部から最も遠い腹部である。高次振動モードは、基本振動モードより高次の振動モードである。
当該構成において、複数の振動センサ21は、第1腹部および第2腹部を含む建物2の位置に配置される。第1腹部の振動は、基本振動モードによる振動をよく表す。第2腹部の振動は、高次振動モードによる振動をよく表す。建物2の揺れは基本振動モードおよび高次振動モードなどの振動モードの重ね合わせによって表されるため、少ない数の振動センサ21によって建物2の揺れを特徴づける情報が検出される。これにより、建物揺れ推定部23は、振動センサ21の数を抑えつつ建物2の揺れを精度よく推定できる。また、建物2の揺れが精度よく推定されるので、揺れの影響を診断する機器が建物2に多数設けられていても、当該機器の各々に振動を検出するセンサを設ける必要がない。このため、揺れの影響の診断に用いられる振動センサ21などのセンサの数の増大が抑えられる。
また、建物揺れ推定部23は、各々の振動センサ21の検出結果に基づいて建物2の各々の振動モードの成分を推定する。建物揺れ推定部23は、推定した振動モードの成分を用いて建物2の揺れを推定する。
当該構成により、建物揺れ推定部23は、振動モードの波形に基づいて、振動センサ21が設けられていない位置においても揺れ量を精度よく推定できる。
また、建物揺れ推定部23は、少なくともいずれかの振動センサ21によって振動の最大値が検出された時刻における複数の振動センサ21の各々による振動の検出値に基づいて建物2の揺れを推定する。
当該構成において、同時刻における各々の腹部の振動の検出値が取得される。このため、建物揺れ推定部23は、振動モードの成分を一意に精度よく推定できる。また、推定される揺れは、振動が最大となった腹部に対応する振動モードをよく反映した揺れとなる。このため、揺れ推定システム1によって、各々の振動モードによる揺れの影響が精度よく診断できる。
また、複数の振動センサ21は、第3振動センサ21cを含む。第3振動センサ21cは、第3腹部に設けられる。第3腹部は、第2腹部に対応する高次振動モードよりさらに高次の振動モードの複数の腹部のうち、第1腹部および第2腹部の近い方からの遠さが最も大きい腹部である。
当該構成により、建物揺れ推定部23は、建物2の揺れをより高い精度で推定できる。また、各々の振動センサ21が建物2の全体にわたって互いに離れて配置される。このため、建物揺れ推定部23は、建物2全体の揺れをより高い精度で推定できる。
また、揺れ推定システム1は、エレベーター揺れ推定部24を備える。エレベーター揺れ推定部24は、建物揺れ推定部23が推定した建物2の揺れに基づいて、建物2に設けられるエレベーター3の機器の揺れを推定する。
当該構成により、エレベーター3の機器における揺れの影響の診断が精度よく行われるようになる。また、釣合い錘10などの建物2において移動するエレベーター3の機器に振動センサ21を設ける必要がない。このため、釣合い錘10などに電力供給または信号通信などの配線を行う必要がない。したがって、釣合い錘10などにおいて当該配線の引っ掛かりなどへの対策を行う必要がない。また、建物2に複数のエレベーター3が設けられている場合においても、エレベーター3ごとに振動センサ21を設ける必要がない。このため、揺れの影響の診断に用いられる振動センサ21などのセンサの数の増大が抑えられる。また、エレベーター揺れ推定部24によって、エレベーター3の診断運転の可否が精度よく判定される。診断運転が可能な場合に診断運転がより確実に行われるようになるので、地震発生時において通常運転に復旧するエレベーター3を増やすことができる。また、診断運転が不可な場合に診断運転が行われることが抑えられるので、診断運転におけるエレベーター3の機器の破損などの二次被害の発生が抑えられる。
続いて、図8を用いて、揺れ推定システム1のハードウェア構成の例について説明する。
図8は、実施の形態1に係る揺れ推定システム1の主要部のハードウェア構成図である。
揺れ推定システム1の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。処理回路は、プロセッサ100aおよびメモリ100bと共に、あるいはそれらの代用として、少なくとも1つの専用ハードウェア200を備えてもよい。
処理回路がプロセッサ100aとメモリ100bとを備える場合、揺れ推定システム1の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ100bに格納される。プロセッサ100aは、メモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、揺れ推定システム1の各機能を実現する。
プロセッサ100aは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ100bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどの、不揮発性または揮発性の半導体メモリなどにより構成される。
処理回路が専用ハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
揺れ推定システム1の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、揺れ推定システム1の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。揺れ推定システム1の各機能について、一部を専用ハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、専用ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで揺れ推定システム1の各機能を実現する。
実施の形態2.
実施の形態2において、実施の形態1で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態2で説明しない特徴については、実施の形態1で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
図9は、実施の形態2に係る揺れ推定システム1において検出された振動の例を示す図である。
図9において、横軸は時間を表す。図9において、縦軸は建物2において振動センサ21が設けられる位置の振動を表す。図9のグラフは、第1腹部における振動を表す。
建物揺れ推定部23は、建物2の揺れが発生している期間を複数の時間幅に分割する。建物2の揺れが発生している期間は、例えば建物2を強制加振する地震が発生してから終了するまでの期間である。各々の時間幅の長さは、例えば一定の時間Tである。建物揺れ推定部23は、各々の時間幅に対して建物2の揺れを推定する。図9において、各々の時間幅が点線の枠で示される。
建物揺れ推定部23は、各々の時間幅について建物2の揺れを推定する。建物揺れ推定部23は、各々の時間幅において、振動モードの腹部に配置された振動センサ21の各々の最大値を記憶する。建物揺れ推定部23は、いずれかの振動センサ21において最大値が検出された時刻における他の全ての振動センサ21の検出値を記憶する。建物揺れ推定部23は、検出値を記憶した時刻の各々について、例えば各々の振動モードのモード振幅の算出などによって揺れ量を推定する。揺れ推定システム1が腹部に配置される振動センサ21を3つ備える場合に、建物揺れ推定部23は、各々の時間幅について3つの時刻におけるモード振幅を算出する。
以上に説明したように、実施の形態2に係る揺れ推定システム1の建物揺れ推定部23は、建物2の揺れが発生している期間を分割した複数の時間幅の各々に対して建物2の揺れを推定する。
当該構成において、より多くの時刻における建物2の揺れが推定される。このため、建物2の振動センサ21が設けられていない位置において揺れ量が大きくなる場合の見落としが抑制される。
なお、地震の持続時間が長い場合などに、振動センサ21の検出値のデータ容量を抑制しうるように、建物揺れ推定部23は、検出値が既に記憶されている時間幅のデータを最大値が小さい時間幅のデータから順に上書きして記憶してもよい。
実施の形態3.
実施の形態3において、実施の形態1または実施の形態2で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態3で説明しない特徴については、実施の形態1または実施の形態2で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
図10は、実施の形態3に係る揺れ推定システム1の構成図である。
揺れ推定装置22は、重み係数記憶部25を備える。重み係数記憶部25は、予め算出された重み係数を記憶する部分である。重み係数は、エレベーター3の機器の揺れの推定に用いられる係数である。重み係数は、建物2の各々の振動モードに対応して予め設定される。重み係数は、例えばエレベーター3の機器の固有振動数と建物2の各々の振動モードの固有振動数との関係を通じて建物2の振動モードに対応する。例えばエレベーター3の機器がかご9である場合に、かご9の固有振動数は、かご9およびかごガイドレール15の間の機械的な連動をバネなどによる結合としてモデル化することなどによって算出される。同様に、エレベーター3の機器が釣合い錘10である場合に、釣合い錘10の固有振動数は、釣合い錘10および釣合い錘ガイドレール16の間の機械的な連動をモデル化することなどによって算出される。
図11は、実施の形態3に係る重み係数の例を示す図である。
図11において、横軸は振動数を表す。図11において、縦軸は重み係数を表す。図11のグラフは、重み係数と建物2の振動モードの固有振動数との関係を表す。
この例において、建物2の1次、2次、および3次の振動モードの固有振動数は、ω1、ω2、およびω3であるとする。また、エレベーター3の機器の固有振動数はω0であるとする。重み係数は、例えば建物2の振動モードの固有振動数がω0に近いほど大きい値になる関数によって設定される。
例えばエレベーター3の機器の固有振動数ω0から十分離れた固有振動数ω1を持つ1次の振動モードについて、重み係数記憶部25は、重み係数α1=1を記憶する。また、エレベーター3の機器の固有振動数ω0に近い固有振動数ω2を持つ2次の振動モードについて、重み係数記憶部25は、重み係数α2=2を記憶する。また、エレベーター3の機器の固有振動数ω0に中程度に近い固有振動数ω3を持つ3次の振動モードについて、重み係数記憶部25は、重み係数α3を記憶する。この例において、1<α3<2である。
エレベーター揺れ推定部24は、建物揺れ推定部23が推定した建物2の各々の振動モードのモード振幅に重み係数を乗じた値を算出する。エレベーター揺れ推定部24は、算出した値を用いて、時刻t1において位置xにあるエレベーター3の機器の揺れy(t1,x)を次の式(6)によって推定する。
以上に説明したように、実施の形態3に係る揺れ推定システム1は、重み係数記憶部25と、エレベーター揺れ推定部24と、を備える。重み係数記憶部25は、建物2の各々の振動モードに対して予め設定された重み係数を記憶する。エレベーター揺れ推定部24は、建物揺れ推定部23が推定した建物2の各々の振動モードの成分に重み係数記憶部25が記憶している重み係数を乗じた結果を用いて、建物2に設けられるエレベーター3の機器の揺れを推定する。
当該構成により、エレベーター3の機器の揺れがより高い精度で推定される。これにより、診断運転によるエレベーター3の復旧がより確実に行われる。また、診断運転による二次被害の発生がより確実に抑えられる。
実施の形態4.
実施の形態4において、実施の形態1から実施の形態3で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態4で説明しない特徴については、実施の形態1から実施の形態3で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
図12は、実施の形態4に係る揺れ推定システム1の構成図である。
揺れ推定装置22は、フロアレスポンス記憶部26を備える。フロアレスポンス記憶部26は、予め算出された建物2のフロアレスポンスを記憶する部分である。ここで、建物2のフロアレスポンスは、建物2の振動モデルに対して最大値で正規化した複数の地震波を与えることで、各階の揺れ量に対する最大値を保存したデータである。この例において、建物2のフロアレスポンスは、振動センサ21が配置される振動モードの腹部を含む建物2の位置に対応して記憶されている。
図13は、実施の形態4に係る建物揺れ推定部23による建物2の揺れの推定の例を示す図である。
図13において、縦軸は建物2の高さxを表す。図13において、横軸は建物2の揺れ量を表す。図13において、実線のグラフはフロアレスポンス記憶部26が記憶している建物2のフロアレスポンスを表す。図13において、四角記号は、各々の振動センサ21による振動の検出値を表す。ここで、振動の検出値は、例えば地表の最下階に設けられた基準の振動センサ21の振動の検出値を差し引いた相対値である。あるいは、振動の検出値は、各々の振動センサ21による検出値自体であってもよい。図13において、破線のグラフは、建物揺れ推定部23が推定した建物2の揺れを表す。
建物揺れ推定部23は、各々の振動センサ21について、地震が発生している時間にわたる検出値の最大値を取得する。図13において、第1振動センサ21a、第2振動センサ21b、および第3振動センサ21cについて取得された最大値が四角記号によって示されている。建物揺れ推定部23は、取得した最大値と当該最大値に対応する振動センサ21の位置についてフロアレスポンス記憶部26が記憶している建物2のフロアレスポンスとの間の差異を算出する。ここで算出される差異は、例えば差分または比率などであってもよい。
建物揺れ推定部23は、算出した差異に基づいて、建物2のフロアレスポンスに対する補正係数を算出する。振動センサ21が配置される腹部における補正係数は、例えば建物2のフロアレスポンスに対する当該振動センサ21について取得された最大値の比率である。ここで、補正係数β1は、位置x1における補正係数である。補正係数β2は、位置x2における補正係数である。補正係数β3は、位置x3における補正係数である。建物揺れ推定部23は、振動センサ21が配置される腹部における補正係数を補間することによって、建物2の高さ全体についての補正係数を算出する。建物揺れ推定部23は、補正係数の算出に例えば線形補間を用いる。例えば高さxの区間(0,x2)について、建物揺れ推定部23は、区間の両端の補正係数の値1およびβ2を用いて線形補間を行う。また、高さxの区間(x2,x3)について、建物揺れ推定部23は、区間の両端の補正係数の値β2およびβ3を用いて線形補間を行う。また、高さxの区間(x3,x1)について、建物揺れ推定部23は、区間の両端の補正係数の値β3およびβ1を用いて線形補間を行う。
建物揺れ推定部23は、建物2の高さ全体にわたって算出した補正係数をフロアレスポンス記憶部26が記憶している建物2のフロアレスポンスに重畳して乗じた値を算出する。図13において、算出された値が破線で示される。建物揺れ推定部23は、算出した値に基づいて建物2の揺れを推定する。
以上に説明したように、実施の形態4に係る揺れ推定システム1は、フロアレスポンス記憶部26を備える。フロアレスポンス記憶部26は、予め設定された建物2のフロアレスポンスを記憶する。建物揺れ推定部23は、フロアレスポンス記憶部26が記憶している建物2のフロアレスポンス、ならびに第1振動センサ21aおよび第2振動センサ21bの検出値のうちの各々の最大値に基づいて建物2の揺れを推定する。
当該構成において、各々の振動センサ21の検出値の最大値の情報を用いて建物2の揺れが推定される。このため、各々の振動センサ21において時刻が同期されていない場合においても建物2の揺れを精度よく推定できる。また、同時刻における各々の振動センサ21の検出値が必要とされないので、振動センサ21の検出結果のデータ容量を節約できる。このため、揺れ推定システム1の記憶容量に制限がある場合においても、建物2の揺れを精度よく推定できる。
また、建物揺れ推定部23は、各々の振動センサ21が設けられる位置についてフロアレスポンス記憶部26が記憶している建物2のフロアレスポンス、および当該位置に設けられる振動センサ21の検出値のうちの最大値の差異を算出する。建物揺れ推定部23は、各々の振動センサ21が設けられる位置について算出した差異を建物2の位置について補間した補正係数を算出する。建物揺れ推定部23は、算出した補正係数をフロアレスポンス記憶部26が記憶している建物2のフロアレスポンスに乗じた結果を用いて建物2の揺れを推定する。
当該構成において、建物揺れ推定部23は、補間した補正係数によって振動センサ21が設けられていない位置における揺れ量についても、既知のフロアレスポンスに基づいて推定できる。また、建物揺れ推定部23は、線形補間などの簡易でロバストな方法を用いて建物2の揺れを推定できる。