JP7274951B2 - 靭性に優れた溶接金属及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、靭性に優れた溶接金属及びその製造方法に関する。
近年、サワーガスと呼ばれる硫化水素を多く含む天然ガスを輸送する海底パイプラインの需要が増加している。一般的に海底パイプラインの現地円周溶接部(以下、溶接金属とする)には高い靱性が要求されるが、サワーガスを輸送するパイプラインのそれには、硫化水素を含む環境からの水素混入による溶接金属の水素脆化も懸念されるためより高い靭性が求められる。
海底パイプラインの敷設作業は専用の敷設船の上で行われる。海底パイプラインの敷設作業は、定尺の鋼管を円周溶接によって繋げる溶接工程と、溶接部の健全性を非破壊検査にて確認する非破壊検査工程と、海底敷設後の耐食性を確保するために塗覆装を巻きつける塗覆装行程とから構成され、これらの工程は同時並行作業で実施される。すべての作業が終了後に作業船が鋼管一本分の長さ進水する。この作業が何千回と繰り返され、海底パイプラインは敷設される。ここでパイプラインの敷設作業の能率は最も遅い行程の作業時間に支配される。通常は溶接作業に多大な時間を有するために溶接工程が律速になりやすい。よって海底パイプラインの敷設作業のコスト低減には高能率・高溶接速度での円周溶接が求められる。
海底パイプラインの専用の敷設船の上で行われる定尺の鋼管を円周溶接によって繋げる現地円周溶接には様々な方法が用いられているが、作業性・能率などの利点から消耗電極式ガスシールド溶接(MAG溶接)が用いられることが多い。また開先形状は、能率向上の観点からU形状の開先が採用されることが多い。当然ながら溶接欠陥が発生した場合は溶接部としての靱性が低下するため、高い靱性を有する溶接部を得るためには溶接欠陥が発生しないことが望ましい。よって、海底パイプラインの現地円周溶接に用いられる溶接材料には高靱性を満足することに加え溶接時における作業性(割れ発生感受性の低さ、溶融池の垂れにくさなど)の高さも求められる。
特許文献1は、溶接金属の成分をTP=240×(Mn)+50×(Ni)で表されるTPを350~600、EP=1300×(Ti)-600×(O)で表されるEPを20~220とすることを推奨している。これにより、溶接金属中のTi系酸化物の存在形態を制御することで、溶接金属中にアシキュラーフェライトと呼ばれる微細組織を生成させる。その結果、590MPa以上の高強度であり、しかも-60℃域での低温靭性にも優れた溶接金属を提供することができると記載されている。
特許第4398751号公報
しかしながら、特許文献1に記載の溶接金属に含まれるNiは溶接金属の硫化物応力割れ(SSC)を引き起こす可能性があるため、硫化水素を多く含むサワーガスを輸送する海底パイプラインには特許文献1に記載の溶接金属を適用できないという問題がある。
また、特許文献1に記載の溶接方法において、溶接速度は30cm/minと記載されている。海底パイプラインの建設工事において特許文献1に記載の溶接方法を適用すると溶接速度が遅いため海底パイプラインの建設工事費用が高くなる問題がある。また、特許文献1に記載の溶接方法において、溶接速度を大きくした場合、溶接金属の冷却速度は速くなり、アシキュラーフェライトの生成量が減少し、さらに、溶接金属において溶接欠陥が発生し、溶接金属の靭性が低下するという問題がある。
さらに、特許文献1に記載の溶接方法において、開先形状はV字であり、開先角度は45度である。この開先を海底パイプラインの円周溶接に適用した場合、溶接金属の形状が凸になる。これにより、次層溶接時に凸部の止端部を溶かし込むことが困難となり、融合不良などの溶接欠陥が発生しやすくなり、溶接金属の靭性が低下するという問題が懸念される。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、狭開先かつ高溶接速度の溶接条件において、高靭性を有する、サワーガスを輸送する海底パイプラインに使用される靭性に優れた溶接金属及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供している。
(1)質量%で、
C:0.05~0.08%、
Si:0.50%超かつ0.85%以下、
Mn:1.15~1.40%、
Ca:0.0005%以下、
Al:0.006%以下、
Ti:0.015~0.020%、
B:0.0005%以下、
O:0.0330~0.0450%
を含有し、
残部がFeおよび不純物からなり、
溶接金属の組織が、70面積%以上のアシキュラーフェライトを有し、残部が粒界フェライトを含む、
ことを特徴とする靭性に優れた溶接金属。
(2)Tiの含有量を単位質量%でTi、Oの含有量を単位質量%でOと表したとき、Ti/Oが0.33~0.55であることを特徴とする(1)に記載の靭性に優れた溶接金属。
(3)前記溶接金属の0℃におけるシャルピー衝撃試験値が200J以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の靭性に優れた溶接金属。
(4)(1)~(3)のいずれか一項に記載の靭性に優れた溶接金属の製造方法であって、
溶接速度が100cm/min以上であることを特徴とする靭性に優れた溶接金属の製造方法。
本発明によれば、靭性に優れた溶接金属及びその製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態に係る靭性に優れた溶接金属の開先形状を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る靭性に優れた溶接金属の光学顕微鏡写真である。 本発明の実施形態に係る靭性に優れた溶接金属の電子線後方散乱回折(EBSD)により測定された結晶粒形を示す図である。 本発明の実施形態に係る靭性に優れた溶接金属のTiとOとの質量比であるTi/Oとアシキュラーフェライトの面積分率との関係を示す図である。 本発明の実施形態に係る溶接金属の有限要素シミュレーションにより計算した溶接時の冷却速度を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
(溶接金属の成分組成)
溶接金属の成分組成について説明する。なお、以下、成分組成の単位である「質量%」は「%」で表す。
C:0.05~0.08%
Cは溶接金属中に固溶することで、溶接金属の強度を向上させると同時に、溶接金属の焼き入れ性を向上させる。溶接金属の強度を確保するためにCは0.05%以上含有する必要がある。一方、Cは溶接金属中に存在する場合、炭化物やマルテンサイトが形成しやすくなり、溶接金属の靭性が低下するため好ましくない。また、Cは溶接金属の溶接高温割れを発生しやすくさせるため好ましくない。さらにサワーガスを輸送するパイプラインの溶接金属は通常はビッカース硬度をHv250以下とすることが求められるため、Cが多いと硬度規制を満足できなくなる。したがって、Cの含有量は0.08%以下に抑える必要がある。
Si:0.50%超、かつ0.85%以下
Siは脱酸作用を有する元素であり、溶接中に溶接金属中の介在物の個数を減少させることで、溶接金属の靭性を向上させるため好ましい。また、SiとOとの親和性はTiとOとの親和性より低いため、Siはアシキュラーフェライトの核となるTi酸化物の形成を妨げないため好ましい。さらに、Siは溶接金属に固溶することで、溶接金属の強度を向上させると同時に、溶接金属の焼き入れ性を向上させるため好ましい。この効果を得るために、Siは0.50%超含有する必要がある。一方、Siは溶接金属中に固溶することで、マルテンサイトが形成しやすくなり、溶接金属の靭性が低下するため好ましくない。さらにサワーガスを輸送するパイプラインの溶接金属は通常はビッカース硬度をHv250以下とすることが求められるため、Siが多いと硬度規制を満足できなくなる。したがって、Siの含有量は0.85%以下に抑える必要がある。
Mn:1.15~1.40%
Mnは溶接金属中に固溶することで、溶接金属の強度を向上させると同時に、溶接金属の焼き入れ性を向上させるため好ましい。この効果を得るために、Mnは1.15%以上含有する必要がある。一方、Mnは溶接金属に固溶することで、マルテンサイトが形成しやすくなり、溶接金属の靭性が低下するため好ましくない。また、Mnは破壊の起点となる粗大な硫化物系介在物を形成し、溶接金属の靭性を低下させるため好ましくない。さらに、Mnはサワーガスに含まれる硫化水素により硫化物応力割れを引き起こすため好ましくない。したがって、Mnの含有量は1.40%以下に抑える必要がある。
Ca:0.0005%以下
Caはサワーガスを輸送する鋼管(ラインパイプ)に添加されている元素であるため、Caは溶接中に母材から溶接金属へ混入する。CaとOとの親和性はTiとOとの親和性よりも高いため、Caはアシキュラーフェライトの生成核となるTi酸化物の形成を阻害することで、溶接金属の靭性を低下させるため好ましくない。したがって、Caの含有量は0.0005%以下に抑える必要がある。
Al:0.006%以下
Alは脱酸作用を有する元素である。溶接中に溶接金属中の介在物の個数を減少させるため好ましい。また、AlとOとの親和性はTiとOとの親和性よりも高いため、Alはアシキュラーフェライトの生成核となるTi酸化物の形成を阻害することで、溶接金属の靭性を低下させるため好ましくない。したがって、Alの含有量は0.006%以下に抑える必要がある。
Ti:0.015~0.020%
TiはOと反応して、アシキュラーフェライトの核となるTi酸化物を形成し、溶接金属の靭性を向上させるため好ましい。この効果を得るために、Tiは0.015%以上含有する必要がある。一方、Tiが多すぎる場合は、アシキュラーフェライトの核を生成する能力が低下し、溶接金属の靭性を低下させるため好ましくない。したがって、Tiの含有量は0.020%以下に抑える必要がある。
B:0.0005%以下
Bは溶接金属中に固溶することで粒界フェライトの形成を抑制する。これにより、アシキュラーフェライトの形成を促進し、溶接金属の靭性を向上させるため好ましい。この効果を得るために、Bは含有しなくてもよいが、0%以上含有してもよく、0.0001%以上含有してもよい。一方、Bは溶接金属に固溶した場合、マルテンサイトが形成しやすくなり、溶接金属の靭性が低下するため好ましくない。したがって、Bの含有量は0.0005%以下に抑える必要がある。
O:0.0330~0.0450%
OはTiと反応して、アシキュラーフェライトの核となるTi酸化物を形成し、溶接金属の靭性を向上させるため好ましい。この効果を得るために、Oは0.0330%以上含有する必要がある。一方、Oは酸化物を形成し、溶接金属の靭性が低下するため好ましくない。したがって、Oの含有量は0.0450%以下に抑える必要がある。
溶接金属の残部はFe及び不純物である。不純物とは、溶接材料、母材、シールドガス等の周辺雰囲気等から混入する成分であり、意図的に含有させたものではない成分のことをいう。
具体的には、P、S、O、Sb、Sn、W、Co、As、Pb、Bi、及びHがあげられる。このうち、Oは、上述の好適な範囲となるように制御されることが好ましい。
その他の元素については、通常、S、P、Sb、Sn、W、Co、及びAsは0.1%以下、Pb及びBiは0.005%以下、Hは0.0005%以下の不純物としての混入があり得るが、通常の範囲であれば、特に制御する必要はない。
Ti/O:0.33~0.55
本実施形態に係る溶接金属の成分組成は、さらに、Tiの含有量を単位質量%でTi、Oの含有量を単位質量%でOと表したとき、Ti/Oが0.33~0.55であることがなお好ましい。Ti/Oが0.33以上かつTi/Oが0.55以下である場合、Ti酸化物以外の酸化物系介在物が減少し、溶接金属の靭性が向上するためより好ましい。これにより、溶接金属中のアシキュラーフェライト量が増加し、溶接金属の靭性が向上するためより好ましい。
(溶接金属の組織)
次に、本実施形態に係る靭性に優れた溶接金属の金属組織について説明する。
アシキュラーフェライト:70面積%以上
本発明においてアシキュラーフェライトとは、フェライト組織の内、Ti系酸化物またはアシキュラーフェライト粒界を変態核または起源として旧オーステナイト粒内に析出したフェライト組織で、かつ、有効結晶粒径(結晶粒の形状を円形状と見立てた時の直径)が10μm以下のフェライト組織と定義する。溶接金属中のアシキュラーフェライトの割合が大きいほど、溶接金属の靭性が向上するため好ましい。この効果を得るために、溶接金属中のアシキュラーフェライトの面積率は70面積%以上とする必要がある。
粒界フェライト:30面積%以下
本発明において粒界フェライトとは、旧オーステナイト粒界から析出したフェライト組織である。粒界フェライトは、粗大な組織であるがゆえに、溶接金属中に存在すると靭性を低下させるため好ましくない。そのため、溶接金属中の粒界フェライトは30面積%以下であることが好ましい。
残部
溶接金属の組織の残部は粒界フェライトを含む。溶接金属の組織の残部の内、粒界フェライト以外の組織は、例えば、マルテンサイトやオーステナイトなどが挙げられる。溶接金属中の、粒界フェライトを除いた残部はできるだけ少ないことが好ましい。
(溶接金属の製造方法)
次に、本実施形態に係る靭性に優れた溶接金属の溶接方法について説明する。
<溶接方法>
本発明の実施形態に係る靭性に優れた溶接金属の製造方法は、溶接姿勢が変化する溶接方法により溶接される場合でも溶接欠陥が発生しにくいことが好ましい。溶接欠陥が発生すると溶接金属の靭性が低下し好ましくない。溶接方法として、特に限定されないが、例えば、ガスアークシールド溶接が挙げられる。
<母材及び溶接材料>
母材及び溶接材料の成分組成及び組織は、溶接後の溶接金属の成分組成及び組織が本発明の実施形態に係る靭性に優れた溶接金属の成分組成及び組織の規定を満す限り、特に限定されない。
<溶接速度>
本実施形態に係る溶接金属の製造方法において、溶接速度は100cm/min以上である。100cm/min以下の場合、溶接能率が低くなり、特に海底パイプラインの建設工事においては工事費用が高くなり好ましくない。溶接速度は100~140cm/minであることがより好ましい。溶接速度は溶接金属中のアシキュラーフェライトの量に影響を及ぼす。溶接速度が100cm/min未満であると、結晶粒径が10μm超のフェライト粒が多くなり、溶接金属中のアシキュラーフェライトが減少する。これにより、溶接金属の靭性が低下するため好ましくない。一方、溶接速度が140cm/min超であると、溶接入熱が低くなりすぎるため、溶け込み不良等の溶接欠陥が発生するため好ましくない。
<溶接電流及びアーク電圧>
溶接電流及びアーク電圧は溶接金属中のアシキュラーフェライトの量に影響を及ぼす。 溶接電流及びアーク電圧が過剰に高いと、結晶粒径が10μm超のフェライト粒が多くなり、溶接金属中のアシキュラーフェライトが減少する。また、円周溶接においては溶接金属(溶融池)の垂れなどが発生し溶接することが困難となる。一方、溶接電流及びアーク電圧が過剰に低いと、入熱不足から溶接欠陥が発生するため好ましくない。溶接電流は例えば、270~320Aとしてもよい。アーク電圧は例えば、22.0~27.0Vとしてもよい。
<溶接入熱>
溶接入熱は溶接金属中のアシキュラーフェライトの量に影響を及ぼす。溶接入熱が過剰に高いと、結晶粒径が10μm超のフェライト粒径が多くなり、溶接金属中のアシキュラーフェライトが減少する。その結果、溶接金属の靭性が低下するため好ましくない。また、溶接入熱が過剰に低いと、溶接欠陥が発生するため好ましくない。溶接入熱は例えば、2800~4700J/cmとしてもよい。
<開先形状>
開先形状は、溶接金属の量が少なくできる狭開先を用いてもよい。開先形状が狭開先であると溶接金属の冷却速度が大きくなり、溶接金属中のアシキュラーフェライトの量が多くなる。これにより、溶接金属の靭性が向上するためより好ましい。また、開先形状が狭開先であると、溶接姿勢が変化する溶接条件においても、溶接欠陥が少なくなり、溶接金属の靭性が向上するためより好ましい。さらに、開先形状が狭開先であると、溶接速度を大きくしても溶け込み不良による溶接欠陥を防止し、溶接金属の靭性が向上するためより好ましい。開先形状は特に限定されないが、例えば、ベベル角が2~4度、ルートフェースが1.6~2.0mmのU字が開先を用いてもよい。
<裏当て金>
裏当て金は、溶接時に溶け落ち等の溶接欠陥を防止するため、また溶接中に溶融金属(溶融池)が垂れる落ちることを防止するためにルート部に取り付けられる。裏当て金には特に初層溶接部の冷却速度を向上させる効果もある。裏当て金は特に限定されないが、例えば、銅裏当て金や表面をセラミック溶射した銅裏当て金が挙げられる。
<シールドガス>
シールドガスは、溶接中に溶融金属と大気とを遮断することで、溶接金属の酸化や窒化を防止する役割がある。シールドガスは特に限定されないが、例えば、ArとCOの混合ガスを使用することができる。
本実施形態に係る靭性に優れた溶接金属によれば、Ti及びOの成分組成を制御することで、アシキュラーフェライトの核となるTi酸化物を溶接金属中に分散させることができる。また、C、Si、Mn、Bを制御することで狭開先かつ高溶接速度の溶接条件において、溶接金属中にアシキュラーフェライトを形成することができる。
そして、Oとの親和性が高いAl及びCaを制御することでTi酸化物の形成を阻害することなく溶接金属中の介在物の個数を制御することができる。これにより、靭性に優れた溶接金属を提供することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。実施例で示した条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一例であり、本発明は、この一例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的が達成される限りにおいて、種々の条件を採用することができる。
Tiの含有量のみが異なる2種類の溶接材料及びAr/COの体積比率の異なる3種類のシールドガスを用いて、鋼管の狭開先突き合わせ円周溶接を、マグ溶接を用いて行い、実施例1~3及び比較例1~2の合計5種類の溶接金属を得た。溶接材料の種類、シールドガスのAr/COの体積比率及び溶接条件は表1に示した。
図1に示すように、マグ溶接で使用した開先形状は、ベベル角が3度、ルートフェースが1.8mmのU字開先であった。
Figure 0007274951000001
比較例1は実施例1と比較して、Tiを含有しない溶接材料を使用している点で異なる。実施例2及び比較例2は実施例1と比較して、シールドガスのCOの体積比率を変えた点で異なる。実施例2及び実施例3は実施例1と比較して溶接入熱を大きくした点が異なる。初層及び2層目それぞれの溶接電流、アーク電圧及び溶接速度は平均値を表1に示した。
実施例1~3及び比較例1~2の初層溶接金属の成分組成は表2に示した。溶接金属の化学成分の分析方法は、まず、溶接金属から試験片を切り出す。その後、C、Si、Mn、P、S、Ti、Al、Ca、BはJIS G 1258鉄及び鋼ICP発行分光分析方法を、OはJIS G 1239不活性ガス溶融-赤外線吸収法を、NはJIS G 1228鉄及び鋼-窒素定量方法をそれぞれ用いて溶接金属の成分組成を分析した。
Figure 0007274951000002
溶接金属の断面組織を光学顕微鏡により観察した。断面組織の観察場所は、観察対象である初層の溶接金属と2層目の溶接金属との境界から1mm程度離れたルート部である。図2に示すように、実施例1~3の溶接金属のフェライト粒径は比較例1~2の溶接金属のフェライト粒径よりも微細であった。
溶接金属の結晶粒形を電子線後方散乱回折(EBSD)により分析した。結晶粒径の測定場所は、観察対象である初層の溶接金属と2層目の溶接金属との境界から1mm程度離れた初層溶接金属(ルート部)である。なお各結晶の方位差が15度以上の界面を結晶粒界と定義した。図3に示すように、実施例1~3の溶接金属のフェライト粒径は比較例1~2の溶接金属のフェライト粒径よりも微細であった。
溶接金属のアシキュラーフェライトの面積比率は電子線後方散乱回折(EBSD)により測定した。電子線後方散乱回折(EBSD)の測定間隔は0.2μm、測定視野は218.5μm×594.0μmである。また、結晶粒界に囲まれた領域すなわち結晶粒を円と仮定したときの直径すなわち結晶粒径が10μm以下のフェライト粒をアシキュラーフェライトと定義した。アシキュラーフェライトの面積率の測定結果は図4に示した。
図4に示すように、Ti及びOの含有量が本発明の範囲内である実施例1~3のアシキュラーフェライトの面積率は70面積%以上であった。一方、Oの含有量のみが本発明の範囲内であり、Tiの含有量が本発明の範囲外であった比較例1のアシキュラーフェライトの面積率は31面積%と低かった。また、Ti及びOの含有量がともに本発明の範囲外であった比較例2のアシキュラーフェライトの面積率は35面積%と低かった。
図2及び図3に示した光学顕微鏡写真および電子線後方散乱回折(EBSD)による結晶方位分析の測定位置であるルート部の溶接金属における冷却曲線を有限要素シミュレーションによって計算した。図5に示すようにアシキュラーフェライトが生成される温度域である500~800℃までの間の冷却時間は0.73秒であった。
溶接金属の靭性はシャルピー衝撃試験により測定した。シャルピー衝撃試験はJIS Z 2242金属材料のシャルピー衝撃試験方法に従い実施し、試験片形状はVノッチ試験片とした。なおノッチ位置は溶接金属幅方向中央部とした。
Figure 0007274951000003
表3に示すように、アシキュラーフェライトの面積率が70面積%以上であった実施例1~3のシャルピー衝撃試験値は、Oの含有量のみが本発明の範囲内であり、Tiの含有量が本発明の範囲外であった比較例1、及びTi及びOの含有量がともに本発明の範囲外であった比較例2のいずれのシャルピー衝撃試験値よりも高かった。
このことから、本発明によれば、靭性に優れた溶接金属及びその製造方法を提供することができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.05~0.08%、
    Si:0.50%超かつ0.85%以下、
    Mn:1.15~1.40%、
    Ca:0.0005%以下、
    Al:0.006%以下、
    Ti:0.015~0.020%、
    B:0.0005%以下、
    O:0.0330~0.0450%
    を含有し、
    残部がFeおよび不純物からなり、
    溶接金属の組織が、70面積%以上のアシキュラーフェライトを有し、残部が粒界フェライトを含
    前記アシキュラーフェライトは、フェライト組織の内、Ti系酸化物またはアシキュラーフェライト粒界を変態核または起源として旧オーステナイト粒内に析出したフェライト組織であり、かつ、結晶粒の形状を円形状と見立てた時の直径である有効結晶粒径が10μm以下のフェライト組織である、
    ことを特徴とする靭性に優れた溶接金属。
  2. Tiの含有量を単位質量%でTi、Oの含有量を単位質量%でOと表したとき、Ti/Oが0.33~0.55であることを特徴とする請求項1に記載の靭性に優れた溶接金属。
  3. 前記溶接金属の0℃におけるシャルピー衝撃試験値が200J以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の靭性に優れた溶接金属。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の靭性に優れた溶接金属の製造方法であって、
    溶接速度が100cm/min以上140cm/min以下であることを特徴とする靭性に優れた溶接金属の製造方法。
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