本発明に係るサービス車両の待機好適エリア判定システムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態のシステムは、ユーザからの配車依頼に応じて車両を配車するサービスにおいて、ユーザからの配車依頼があるまでの間に配車車両が待機するのに適したエリアを判定するシステムである。車両を配車するサービスを提供する主体である車両管理者は、本システムの判定結果を利用して、車両を配車するエリアを決定する。車両管理者としては、タクシー会社等、車両によって旅客輸送を提供する事業者を前提として説明をするが、これに限らず、緊急時に車両を配車するロードサービスを提供する事業者が車両管理者であってもよい。また、以降では、各事業者が提供するサービスを利用する顧客をユーザと称して説明する。したがって、事業者ごとに、提供されるサービスを受けるユーザが存在することになる。
本実施形態では、配車サービスに利用される車両としては、タクシーのような、旅客輸送サービスに用いられる車両や、ロードサービスにより緊急時に配車される車両が挙げられる。車両は、ユーザを乗せて目的地まで輸送している以外の時間には、駐車場のような駐停車可能なスペースに停車することや街中を走行することによってユーザからの配車依頼を待つことになる。そして、ユーザからの配車依頼があると、当該ユーザのところまで迎えに行き、ユーザ乗車後に、ユーザが希望する目的地まで走行を行う。特に限定されるわけではないが、本実施形態に係るシステムは、ユーザを目的地まで輸送した車両が次のユーザからの配車依頼を待つ場面で適用される。
本実施形態に係る待機好適エリア判定サーバ101を含むシステムの構成を図1を用いて説明する。図1は、本実施形態における待機好適エリア判定システム100の機能構成の一例を示すブロック図である。
待機好適エリア判定サーバ101は、電気通信回線網を構成するネットワークを介して車両201と接続している。車両201は通信部202を備え、通信部202を介して、車両待機信号を送信する。また、待機好適エリア判定サーバ101は、配車サービスを提供する車両管理者が操作するサーバやユーザが操作する端末機(図示しない)と、ネットワークを介して接続していることとしてもよい。待機好適エリア判定サーバ101は、少なくとも制御装置110、記憶装置120、通信装置130を含んで構成される。本実施形態における待機好適エリア判定サーバ101は、ハードウェア及びソフトウェアを備えたコンピュータにより構成され、プログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)を備えている。なお、動作回路としては、CPUに代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。図1に示す制御装置110はCPUに相当し、また、図1に示す記憶装置120はROM及びRAMに相当する。
制御装置110は、制御部111、高効率エリア判定部112、需要エリア判定部113、待機好適エリア判定部114を含む。
制御部111は、制御装置110全体の処理を制御する。また、制御部111は、車両がユーザを目的地まで輸送した後に送信される車両待機信号を受付ける。車両待機信号は、車両がユーザを目的地に降ろした後に、次のユーザの依頼を受け入れ可能となったことを通知するための信号である。
高効率エリア判定部112は、高効率エリア判定を実行する。高効率エリアは、車両のエネルギー消費効率が高いエリアである。対象とする車両は、例えば、電気自動車やガソリン車が挙げられる。なお、本実施形態では、車両が電気自動車の場合について説明をするため、消費エネルギーを消費電力、エネルギー消費効率を電費として説明するが、ガソリン車のような、電気自動車以外の車両の場合には、消費エネルギーを消費燃料、エネルギー消費効率を燃費としてもよい。また、本実施形態では、高効率エリアの一例として、車両が低速で走行できるエリアを挙げて説明をする。一般的に、電気自動車は、低速で走行できると、電費を良くすることができるからである。
高効率エリア判定部112は、まず、記憶装置120に格納されている地図データベース121から、対象地域にあるリンク情報を取得し、リンクごとに、リンクを走行する車両の平均旅行速度を算出する。対象地域の範囲は所定のルールによって設定される。例えば、各車両に定められた営業地域を対象地域とする。あるいは、各車両の現在位置から所定の範囲の地域を対象地域としてもよい。
車両の平均旅行速度の算出については、まず、高効率エリア判定部112は、通信装置130を介して取得した道路交通情報から、リンクを走行する車両の旅行速度情報を取得する。道路交通情報としては、例えば、実際に走行している車両から取得されるプローブ情報や、車両感知器や検知カメラといった、道路上に設置されているインフラセンサから取得される車両走行情報が挙げられる。なお、プローブ情報では、車両の位置情報と時刻情報が対応付けられている。高効率エリア判定部112は、車両のプローブ情報から、リンク上の2地点を車両が通過した際の時刻情報をそれぞれ取得し、2地点の位置情報から算出した2地点間の移動距離と、時刻情報から算出した移動時間に基づき、当該リンクにおける車両の旅行速度を算出する。そして、高効率エリア判定部112は、ある一定時間の間に実際にリンクを走行した複数の車両の旅行速度を取得し、当該一定時間の間にリンクを走行した車両の平均旅行速度を算出する。また、高効率エリア判定部112は、リンク上に一定の間隔で設置されたインフラセンサにより検出された車両の旅行速度を取得し、平均旅行速度を算出することとしてもよい。なお、プローブ情報は、車両管理者が管理する配車車両のみならず、通信が可能な一般車両から取得することとしてもよい。そして、高効率エリア判定部112は、車両の旅行速度情報に基づき、車両の平均旅行速度を算出し、算出した平均旅行速度を当該リンクの平均旅行速度とする。例えば、平均旅行速度を算出する時点から所定の時間前のタイミングを設定し、当該タイミングから平均旅行速度を算出する時点までの間に対象リンクを走行した車両の旅行速度を取得して、平均旅行速度を算出する。
次に、高効率エリア判定部112は、リンクごとに、対象リンクの車両の平均旅行速度に応じて、低速リンクか非低速リンクかの判定を行う。判定の基準は、平均旅行速度が所定の速度以下であるか否かであり、リンクの平均旅行速度が所定の速度以下である場合には、当該リンクを低速リンクと判定する。なお、渋滞等により、平均旅行速度が0km/hであった場合でも、所定の速度以下であれば、同じように、当該リンクを低速リンクと判断する。また、リンクの平均旅行速度が所定の速度以下ではない場合には、当該リンクを非低速リンクと判定する。なお、所定の速度は、車両の種類ごとの電費の良い速度に基づいて設定されている。
全リンクについて判定処理を実行した後、高効率エリア判定部112は、対象地域を所定の大きさの複数のメッシュに分割し、メッシュごとに、対象メッシュ内にある低速リンク数が所定値以上であるか否かを判定する。なお、本実施形態では、メッシュ単位で、車両がユーザからの依頼を待つ車両待機エリアを設定することになる。高効率エリア判定部112は、対象メッシュ内の低速リンク数が所定値以上であると判定される場合には、対象メッシュを高効率エリアとする。また、低速リンク数が所定値以上であると判定されない場合には、対象メッシュを非高効率エリアとする。なお、低速リンク数による判定ではなく、低速リンク数の割合によって判定することとしてもよい。例えば、メッシュ内のリンク数に対する低速リンク数の割合が所定値以上であるか否かを判定することとしてもよい。メッシュ内の全メッシュについて判定処理を実行すると、高効率エリア判定が終了する。
なお、高効率エリア判定は、低速リンク数を基準に判定するだけではなく、停車可能なスペースの数を基準に判定することとしてもよい。例えば、対象地域内の駐車場等の、車両が停車するための停車スペースのうち、空車状態で停車可能なスペースの位置情報を取得し、各メッシュにおける停車可能なスペースの数が所定値以上であれば、高効率エリアと判定することとしてもよい。また、高効率エリア判定部112は、低速リンク数に基づく判定や停車可能スペースの数に基づく判定の他に、天気情報といった外部情報に基づいて判定を行うこととしてもよい。例えば、気温が低いと電費は悪くなると考えられるので、天気情報を取得し、気温が所定値以下であるエリアがあれば、当該エリアを非高効率エリアと判定することとしてもよい。あるいは、逆に、気温が高い場合にも電費は悪くなると考えられるので、気温が所定値以上であるエリアがあれば、当該エリアを非高効率エリアと判定することとしてもよい。
需要エリア判定部113は、配車サービスに対するユーザの需要予測を行い、需要エリア判定を実行する。需要エリアは、配車サービスに対するユーザの需要が高いと予測されるエリアである。車両は、需要エリアでユーザの依頼を待つことで、ユーザから依頼があれば、すぐにユーザのところに向かうことができ、効果的にサービスを提供することができる。
需要エリア判定部113は、まず、対象地域におけるユーザの需要予測を行う。需要予測の方法は、例えば、配車サービスを提供する事業者が独自に集計している過去のサービス提供実績に基づき、サービス利用の多い場所を需要エリアとして判定する。なお、需要予測は、地図情報と対応付けられるものとし、例えば、地図上で、需要があると予測される位置が特定されるものとする。また、利用頻度の高いユーザの位置情報を取得し、利用頻度の高いユーザのリアルタイムな位置の分布によって需要予測を行うこととしてもよい。
次に、需要エリア判定部113は、対象地域を分割するメッシュごとに、需要予測の結果に基づき、需要エリアであるか否かの判定を行う。例えば、需要エリア判定部は、需要予測によってメッシュごとに需要度を求め、需要度が所定値以上であれば、対象メッシュを需要エリアとする。また、需要度が所定値以上でなければ、当該メッシュを非需要エリアとする。需要度としては、ユーザ数あるいは頻度が挙げられる。例えば、メッシュごとのユーザ数を需要度とする。あるいは、前述の、利用頻度の高いユーザのリアルタイムな位置の分布に基づき、対象メッシュが需要エリアであるか否かを判定する。また、過去の利用実績から、メッシュごとのユーザからの依頼の頻度を需要度として算出することとしてもよい。全メッシュについて判定処理を実行すると、需要エリア判定を終了する。
なお、ユーザの需要予測に関しては、例えば、車両管理者が、タクシー会社のような、車両による旅客輸送サービスを提供する事業者ではなく、ロードサービスを提供する事業者であった場合、配車サービスに対するユーザの需要予測は異なる結果になると考えられる。そのため、需要エリア判定部113は、本システムを利用する車両管理者の事業情報を取得し、事業内容に基づいた需要予測を行う。例えば、車両管理者がロードサービスを提供する事業者であれば、対象地域におけるロードサービス提供実績に関するデータを用いて需要予測を行う。これにより、事業者ごとの事業内容に即してより正確な需要予測を行うことができる。
また、同じように、メッシュごとの需要エリアか非需要エリアかの判定についても、事業者の事業内容に即して行うこととしてもよい。例えば、メッシュの範囲の大きさを、事業者ごとに変更することとしてもよい。車両管理者がロードサービスを提供する事業者であれば、旅客輸送サービスを提供する事業者よりも、メッシュの範囲を広く設定する。ロードサービスは、ユーザの依頼に対して広範囲に素早く対応することが求められるからである。また、メッシュの範囲の大きさは同じで、隣接するメッシュの判定結果も加味して需要エリアの判定を行うこととしてもよい。例えば、車両管理者がロードサービスを提供する事業者であれば、対象メッシュに隣接するメッシュのうち2面以上が需要エリアであることを条件に加えて、当該対象メッシュを需要エリアとすることとしてもよい。これも、ロードサービスは、ユーザの依頼に対して広範囲に素早く対応することが求められるからである。
また、需要エリア判定部113は、前述の需要予測による需要エリア判定の他に、曜日、時間、天気及び地域イベントといった外部情報に基づいて、需要エリア判定を行うこととしてもよい。前述の通り、需要予測には、過去の営業成績等を用いることがあり、需要予測の方法によっては、需要エリア判定を行う当日の外部情報を加味して需要エリアを判定することで、より現状に即した需要予測を行うことができる。例えば、曜日の情報を取得し、土曜日や日曜日に人が集まるエリアがあれば、曜日が土曜日や日曜日である場合に、当該エリアを需要エリアとして判定する。また、時間帯が終業時間後であれば、主要な駅があるエリアを需要エリアとして判定する。さらに、局所的に雨が降っているエリアがあれば、当該エリアを需要エリアとして判定する。そして、コンサートが開催される等、人が集まる地域のイベントがあるエリアを需要エリアとして判定する。
待機好適エリア判定部114は、待機好適エリア判定を実行する。本実施形態では、待機好適エリアは、高効率エリアかつ需要エリアであるエリアを示す。待機好適エリアは、配車車両のエネルギー消費効率が高く、ユーザの需要も高いと予測されるエリアであり、すなわち、エネルギー消費に対するサービス提供の効率が高いエリアである。また、高効率エリアであり、かつ、隣接しているエリアの少なくともひとつが需要エリアである場合には、当該エリアを待機準好適エリアとする。すなわち、待機準好適エリアは、需要エリアではないため、待機好適エリアとして判定されないものの、当該エリアで車両が待機することで、車両のエネルギー消費効率を高めることができ、隣接する需要エリアでユーザからの配車依頼があれば、すぐにユーザを迎えに行くことができるエリアである。そして、待機好適エリア判定部114は、待機好適エリアであると判定されず、待機準好適エリアであるとも判定されないエリアを待機不適エリアとする。
また、待機好適エリア判定を、事業者の事業内容に即して行うこととしてもよい。例えば、対象メッシュに隣接するエリアのうち、需要エリアがいくつあるかによって、対象メッシュにおける判定結果を変更することとしてもよい。例えば、車両管理者がロードサービスを提供する事業者であれば、対象エリアに隣接するエリアのうち、2つ以上が需要エリアである場合には、当該対象エリアを待機好適エリアとする。ロードサービスは、ユーザの依頼に対して広範囲に素早く対応することが求められるから、判定範囲を広く設定することで、より事業内容に即した待機好適エリア判定を行うことができる。
通信装置130は、車両との間で情報の送受信を行う。例えば、車両からの車両待機信号を受信する。また、対象地域におけるリンクごとの車両の旅行速度に関するプローブデータやインフラセンサが取得する情報を受信する。通信装置130は、曜日、時刻、天気及び地域イベント情報等の外部情報を受信する。また、配車サービスを提供する車両管理者が使用しているサーバと通信を行い、本実施形態に係るシステムによる判定結果を送信することとしてもよい。
記憶装置120は、地図データベース121や、旅行速度データベース122、停車場所データベース123、ユーザ情報データベース124、外部情報データベース125及び判定結果データベース126を含む。また、制御装置110が実行するプログラムが格納されている。
地図データベース121(図1の地図DB(121))は、道路情報を有する地図データベースである。地図データベース121には、交差点や分岐点がノードとして、ノードとノードの間の道路区間がリンクとして道路情報が保存されている。また、地図データベース121には、所定の領域を矩形に分割したメッシュデータが記憶されていることとしてもよい。また、駐車場やタクシープールのような、配車車両が駐停車可能なスペースの位置情報が保存されている。
旅行速度データべース122(図1の旅行速度DB(122))は、リンク単位で収集した、リンクを走行する車両の旅行速度のデータベースで、リンクごとに、リンクを識別するためのリンク番号、リンクの位置、リンクにおける平均旅行速度、低速リンクか非低速リンクかの判定結果を含むデータベースである。
停車場所データベース123(図1の停車場所DB(123))は、図8で示されるように、駐車場やタクシープール、車道等の、車両が停車できる停車場所について、それぞれ、停車場所を識別するための識別番号と、位置、停車場所のタイプ、停車可否の現況を含むデータベースである。
ユーザ情報データベース124(図1のユーザ情報DB(124))は、配車サービスを利用するユーザが、利用時、あるいはユーザ登録時に入力した各種情報が、ユーザ識別情報とともに保存されている。本実施形態では、ユーザごとに利用頻度を記憶していて、需要予測の際に、利用頻度の高いユーザを抽出し、当該ユーザの位置情報と対応付けて、需要度の高いエリアを判定する際に利用される。
外部情報データベース125(図1の外部情報DB(125))は、曜日、時刻、天気及び地域イベントに関する情報を保存している。高効率エリアや需要エリアを判定する際に、これらの情報が用いられる。
判定結果データベース126(図1の判定結果DB(126))は、対象地域における高効率エリアの判定結果、需要エリアの判定結果及び待機好適エリアの判定結果を保存している。本実施形態では、過去の判定結果に基づく待機好適エリア判定を行う際に、判定結果データベース126に保存されている過去の判定結果に関する情報が用いられる。
続いて、図2を用いて、上記構成による待機好適エリア判定システムにより、サービス車両の待機好適エリアを判定するフローチャートの概要を説明する。
ステップS200では、通信装置130は、ユーザを目的地まで輸送した車両から送信される車両待機信号を受信する。車両は、ユーザの輸送が完了した後、次のユーザからの配車依頼があるまで、待機をすることとなる。待機の方法としては、例えば、回遊しながら走行することや、タクシープールのような、駐停車可能なスペース内に停止することが挙げられる。通信装置130は、受信した車両待機信号を制御部111に出力する。制御部111に車両待機信号が入力されると、待機好適エリア判定にかかる一連の処理を開始し、ステップS300に進む。なお、次のユーザの輸送を行うことがすでに決まっている、あるいは、旅客輸送サービスを終了する等、車両が待機を必要としない場合には、車両は車両待機信号を送信しない。
ステップS300では、高効率エリア判定部112が高効率エリア判定を実行する。高効率エリア判定については、図3のフローチャートにしたがい実行される。以下、図3を用いて、高効率エリア判定の処理の一例を説明する。
ステップS301では、制御部111は、nの値を0、mの値を0にセットする。
ステップS302では、高効率エリア判定部112は、地図データベース121から、対象地域の全リンク情報を取得し、リンクごとに、当該リンクを走行する車両の平均旅行速度を算出する。以下、具体的な算出方法について説明する。
まず、通信装置130は、リンクごとに、当該リンクを走行する車両の旅行速度情報を取得する。例えば、実際に走行している車両から取得されるプローブ情報や、車両感知器や検知カメラといった、道路上に設置されているインフラセンサから取得される情報に基づき、車両の旅行速度情報を取得する。高効率エリア判定部112は、通信装置130が取得した車両の旅行速度に基づき、平均旅行速度を算出する。対象地域の全リンク(リンク数p)の平均旅行速度を算出すると、ステップS303に進む。なお、リンク単位で収集した平均旅行速度は、図4で示されるように、旅行速度データベース122に保存される。
ステップS303では、制御部111は、現在のnの値に1を加えてnの値を更新する。
ステップS304では、高効率エリア判定部112は、図4で示される旅行速度データベース122から、n番目のリンクの平均旅行速度を取得し、当該平均旅行速度が、所定速度以下であるか否かを判定する。平均旅行速度が所定速度以下であると判定される場合には、ステップS305に進み、所定値以下であると判定されない場合には、ステップS306に進む。
ステップS305では、高効率エリア判定部112は、n番目のリンクを低速リンクと判定し、ステップS307に進む。
ステップS306では、高効率エリア判定部112は、n番目のリンクを非低速リンクと判定し、ステップS307に進む。
ステップS307では、制御部111は、nの値がpに等しいか否かを判定する。nの値がpに等しい場合には、全リンクにおける判定処理が終了し、ステップS308に進む。nの値がpに等しくない場合には、次のリンクの判定処理を行うため、ステップS303に戻り、以下、nの値がpに等しくなる(全リンクの判定処理が終了する)まで、フローを繰り返す。
ステップS308では、制御部111は、記憶装置120に格納されている地図データベース121の地図情報に基づき、対象地域を複数のメッシュに分割する(メッシュ数q)。分割された各メッシュには、1~q番のメッシュ識別番号が振り分けられる。あらかじめ地図データベース121に保存されているメッシュデータを取得して利用することとしてもよい。
ステップS309では、制御部111は、現在のmの値に1を加えてmの値を更新する。
ステップS310では、高効率エリア判定部112は、m番目のメッシュについて、旅行速度データベース122を参照して、メッシュ内における、低速リンクと判定されたリンクの数を取得し、低速リンク数が所定値以上であるか否かを判定する。低速リンク数が所定値以上であると判定される場合には、ステップS311に進み、低速リンク数が所定値以上であると判定されない場合には、ステップS312に進む。
ステップS311では、高効率エリア判定部112は、m番目のメッシュを高効率エリアとし、ステップS313に進む。メッシュ内の低速リンクの数が多ければ、車両が低速で走行できるリンクが多く、それだけ電費を良くすることができるからである。
ステップS312では、高効率エリア判定部112は、m番目のメッシュを非高効率エリアとし、ステップS313に進む。
ステップS313では、制御部111は、mの値がqに等しいか否かを判定する。mの値がqに等しい場合には、高効率エリア判定を終了する。mの値がqに等しくない場合には、次のメッシュの判定処理を行うため、ステップS309に戻り、以下、mの値がqに等しくなる(全メッシュの判定処理が終了する)まで、フローを繰り返す。以上により、図3における高効率エリア判定に係るフローが終了すると、図2に戻る。
ステップS300における高効率エリア判定が終了すると、ステップS400に進む。
ステップS400では、需要エリア判定部113は、需要エリア判定を実行する。需要エリアは、車両の配車に対するユーザの需要が高いと予測されるエリアである。需要エリア判定は、図5のフローチャートにしたがい、実行される。以下、図5を用いて、需要エリア判定の処理の一例を説明する。
まず、ステップS401では、制御部111は、mの値を0にセットする。
ステップS402では、需要エリア判定部113は、本実施形態にかかるシステムを利用する車両管理者の事業内容に関する事業情報を取得する。取得方法としては、例えば、あらかじめいくつかの事業内容に関する選択肢(例えば、旅客輸送のための配車サービスを提供する事業者か、緊急時に配車を行うロードサービスを提供する事業者か)を設定し、当該選択肢を、車両管理者が利用する端末機等の表示画面を備えた装置に表示し、車両管理者に選択情報を入力させる。なお、本実施形態では、車両管理者は、旅客輸送のための配車サービスを提供する事業者であるとして説明する。
ステップS403では、需要エリア判定部113は、対象地域におけるユーザの配車サービスに対する需要予測を行う。あるいは、配車サービスの実施主体である車両管理者が需要予測のデータを既に所持している場合には、当該需要予測のデータを用いることとしてもよい。例えば、配車サービスの提供実績、すなわち、対象地域内のどのエリアで利用頻度が多かったかのデータに基づいて需要予測を行ったものが挙げられる。なお、需要予測データは、対象地域の地図情報と対応付けられているものを用いる。
需要予測の方法としては、例えば、利用頻度の高いユーザの位置情報に基づく需要予測方法がある。記憶装置120は、ユーザ情報として、ユーザごとの利用履歴情報をユーザ情報データベース124に記憶している。そして、需要エリア判定部113は、ユーザ情報データベース124から、対象地域内にいる利用頻度の高いユーザのユーザ情報を抽出し、通信装置130を介して、利用頻度の高いユーザが所有する携帯端末の位置情報を取得する。そして、需要エリア判定部113は、取得した位置情報を地図データベース121の対象地域の地図情報に対応づけてプロットすることで、利用頻度の高いユーザの分布を算出する。利用頻度の高いユーザが多いエリアが、需要が高いエリアであると予測されることになる。
ステップS404では、制御部111は、現在のmの値に1を加えてmの値を更新する。
ステップS405では、需要エリア判定部113は、まず、ステップS403で予測あるいは取得した需要予測データを、対象地域内の各メッシュ(q個)に反映させる。そして、需要予測の結果に基づいて、m番目のメッシュの需要度が所定値以上であるか否かを判定する。例えば、需要エリア判定部113は、ステップS403で求めた利用頻度の高いユーザ数の分布に基づき、メッシュ内の利用頻度の高いユーザ数をメッシュの需要度として、需要度が所定値以上であるか否かを判定する。需要度が所定値以上であると判定されると、ステップS406に進み、需要度が所定値以上であると判定されない場合には、ステップS407に進む。
ステップS406では、需要エリア判定部113は、m番目のメッシュを需要エリアとし、ステップS408に進む。
ステップS407では、需要エリア判定部113は、m番目のメッシュを非需要エリアとし、ステップS408に進む。
ステップS408では、制御部111は、mの値がqに等しいか否かを判定する。mの値がqに等しい場合には、需要エリア判定を終了する。mの値がqに等しくない場合には、次のメッシュ判定処理を行うため、ステップS404に戻り、以下、mの値がqに等しくなる(全メッシュの判定処理が終了する)まで、フローを繰り返す。以上により、図5における需要エリア判定に係るフローが終了すると、図2に戻る。
ステップS400における需要エリア判定が終了すると、ステップS500に進む。
ステップS500では、待機好適エリア判定部114は、ステップS300の高効率エリア判定とステップS400の需要エリア判定の判定結果に基づき、待機好適エリア判定を実行する。待機好適エリア判定は、図6のフローチャートにしたがい、実行される。以下、図6を用いて、待機好適エリア判定の処理の一例を説明する。
ステップS501では、制御部111は、nの値を0にセットする。
ステップS502では、制御部111は、現在のnの値に1を加えてnの値を更新する。
ステップS503では、待機好適エリア判定部114は、n番目のメッシュが高効率エリアかつ需要エリアであるか否かを判定する。高効率エリアかつ需要エリアであると判定されると、ステップS504に進み、高効率エリアかつ需要エリアであると判定されない場合には、ステップS505に進む。
ステップS504では、待機好適エリア判定部114は、n番目のメッシュを待機好適エリアとし、ステップS508に進む。すなわち、待機好適エリア判定部114は、高効率エリアかつ需要エリアであるメッシュを待機好適エリアとして判定する。
ステップS505では、待機好適エリア判定部114は、n番目のメッシュが高効率エリアである、かつ、n番目のメッシュに隣接するメッシュのうち少なくともひとつが需要エリアであるか否かを判定する。隣接するメッシュとは、対象メッシュの各辺に接しているメッシュを示すものである。高効率エリアかつ隣接するメッシュのうち少なくともひとつが需要エリアであると判定されると、ステップS506に進み、判定がされないと、ステップS507に進む。
ステップS506では、待機好適エリア判定部114は、n番目のメッシュを待機準好適エリアとし、ステップS508に進む。
ステップS507では、待機好適エリア判定部104は、n番目のメッシュを待機不適エリアとし、ステップS508に進む。
なお、車両管理者の事業内容に基づき、待機好適エリアあるいは待機準好適エリアの判定条件を変更してもよい。例えば、車両管理者の事業内容がロードサービスを提供する事業である場合には、高効率エリアかつ需要エリアであることを条件とすることに加えて、隣接するメッシュのうち少なくとも2つのエリアが需要エリアであるということを、対象メッシュが待機好適エリアであると判定する条件としてもよい。ロードサービスを提供する事業者は、広範囲で緊急時に素早く対応できる必要があり、複数の需要エリアをカバーできるエリアで待機することが望ましいからである。
ステップS508では、制御部111は、nの値がqに等しいか否かを判定する。nの値がqに等しい場合には、待機好適エリア判定を終了する。nの値がqに等しくない場合には、次のメッシュ判定処理を行うため、ステップS502に戻り、以下、nの値がqに等しくなる(全メッシュの判定処理が終了する)まで、フローを繰り返す。以上により、図6における待機好適エリア判定に係るフローが終了すると、図2に戻る。
ステップS500における待機好適エリア判定が終了すると、ステップS600に進む。
ステップS600では、通信装置130は、待機好適エリア、待機準好適エリア及び待機不適エリアに関する情報を車両管理者が使用しているサーバに送信する。あるいは、ウェブサーバと通信を行い、ウェブサーバに当該情報を送信し、本実施形態のシステムに係るウェブサイトに表示し、車両管理者にアクセスさせることとしてもよい。また、これらの情報とともに、高効率エリアや需要エリアの情報も併せて送信することとしてもよい。情報の表示の仕方としては、対象地域におけるメッシュごとの判定結果を地図情報に重畳させて表示する。例えば、図7に示されるように、高効率エリア、需要エリア、待機準好適エリアあるいは待機好適エリアとして判定されたメッシュをそれぞれハッチング等の判別可能な方法で表示する。
なお、本実施形態では、高効率エリア判定の方法として、メッシュ内の低速リンク数を用いることとしているが、停車可能なスペースの数に応じて、高効率エリアの判定を行うこととしてもよい。車両がユーザからの依頼を待っている時に停車することで、エネルギー消費を抑えることができるからである。具体的には、高効率エリア判定部112は、対象地域における停車可能スペースの情報を取得し、メッシュ内の停車可能スペース数が所定値以上であるか否かで高効率エリアであるか否かを判定する。なお、停車可能スペースは、駐車場や、タクシープール、車道端に停車可能な道路等の停車スペースのうち、他車両等に占有されておらず停車できる停車スペースを示す。
まず、高効率エリア判定部112は、地図データベース121の地図情報で、停車スペースの位置情報を取得し、プローブ情報やインフラ情報に基づき、停車スペースごとに、停車可能か否かの現況の情報を取得する。図8で示されるように、停車スペースごとに、停車スペースを識別する番号と、位置と、停車スペースのタイプ、停車可能か否かの情報が記憶装置120の停車場所データベース123に保存されている。
対象地域内の停車スペースの停車可否の現況情報を取得した後、高効率エリア判定部112は、停車場所データベース123と地図データベース121に基づき、メッシュごとに、メッシュ内の停車スペースのうち、現況が「停車可能」である停車スペースと、「停車不可」である停車スペースを特定する。図9は、メッシュ分割された対象地域における停車スペースの現況を表示する一例である。図9では、停車可能スペースを、白色の点で、停車不可スペースを、黒色の点で、それぞれ表示している。本実施形態では、メッシュごとに、停車可能スペース数が所定数以上である場合には、対象メッシュを高効率エリアと判定する。あるいは、対象メッシュ内の、停車可能スペース数が停車不可スペース数よりも多い場合には、当該対象メッシュを高効率エリアと判定することとしてもよい。また、停車可能スペース数による判定と、低速リンク数による判定の両方を用いて高効率エリアの判定を行うこととしてもよい。
また、本実施形態では、ステップS500で実行する待機好適エリア判定に関して、待機好適エリア判定部114は、判定結果を記憶装置120の判定結果データベース126に蓄積し、過去の判定結果に基づいて待機好適エリア判定を行うこととしてもよい。例えば、対象地域における過去の待機好適エリア判定の結果について、時間帯別に、過去数日分の判定結果を集計し、待機好適エリアと判定された頻度が所定値以上であるメッシュを待機好適エリアとして判定する。あるいは、現時点における待機好適エリア判定を行い、現時点における判定結果と過去の実績に基づく判定結果の両方を用いて判定することとしてもよい。具体的には、待機好適エリア判定部114は、対象メッシュについて、現時点における判定結果と過去の判定結果の両方で待機好適エリアと判定されたメッシュのみを待機好適エリアと判定する。
さらに、本実施形態では、高効率エリア判定部112は、記憶装置120の外部情報データベース125に記憶された、天気に関する情報を用いて、高効率エリア判定を行うこととしてもよい。また、同様に、需要エリア判定部113は、記憶装置120の外部情報データベース125に記憶された、曜日、時刻、天気及び地域イベントに関する情報のうち、当該情報の少なくともひとつを用いて、需要エリアの判定を行うこととしてもよい。具体的には、高効率エリアや需要エリアの判定を行ったあと、外部情報データベース125の情報に基づいて、高効率エリアや需要エリアとして判定されなかったメッシュについて、高効率エリアや需要エリアとして追加で判定したり、逆に、高効率エリアや需要エリアとして判定されたメッシュについて、高効率エリアや需要エリアから除外する。これは、例えば、過去の判定結果に基づき、待機好適エリアを判定する場合、当日の天気や地域イベントに関する情報を反映させることが難しいため、外部情報データベース125の情報による判定結果の調整を行うものである。外部情報による判定としては、例えば、対象メッシュが、大型ショッピングモールがある等、平日よりも土曜日や日曜日に人が多く集まるエリアである場合には、需要エリア判定部113は、当日の曜日情報を取得し、曜日が土曜日や日曜日であれば、当該対象メッシュを需要エリアと判定する。また、時刻が一般的な就業時間前後の時間帯であれば、オフィス街や駅があるエリアのメッシュを需要エリアとしてもよいし、雨が降っているエリアがあれば、当該エリアを需要エリアとして判定することとしてもよい。あるいは、イベント情報を取得し、商店街でイベントがあるエリアのメッシュを需要エリアから除外することとしてもよい。なお、外部情報データベース125の情報のみに基づいて判定を行うこととしてもよい。
以上により、本実施形態に係る待機好適エリア判定システム100は、車両がユーザからの配車依頼を待つエリアである車両待機エリアが、車両のエネルギー消費効率が高いエリアを示す高効率エリアであるか否かを判定し、車両待機エリアが、ユーザの配車に対する需要が高いエリアを示す需要エリアであるか否かを判定し、高効率エリア及び需要エリアに基づき、車両待機エリアが待機好適エリアであるか否かを判定する。これにより、ユーザに車両を配車する移動サービスにおいて、エネルギー消費に対するサービス提供の効率が高いエリアで車両がユーザからの依頼を待つことができる。
また、本実施形態では、車両待機エリア内のリンクごとに、リンクを走行する車両の平均旅行速度を取得し、平均旅行速度が所定速度以下である場合に、リンクを低速リンクとして判定し、車両待機エリア内の低速リンクの数に基づき、車両待機エリアを高効率エリアとして判定する。これにより、車両のエネルギー消費効率が高いエリアについて、車両が低速で走行できるリンクの数に基づくエリアの判定を行うことができる。
本実施形態では、車両待機エリア内の停車可能スペース数を取得し、停車可能スペース数に基づき、車両待機エリアを高効率エリアとして判定する。これにより、車両のエネルギー消費効率が高いエリアについて、車両が停車して待機できる停車可能スペースの数に基づくエリアの判定を行うことができる。
本実施形態では、リンクを走行する車両が取得する道路交通情報に基づき、平均旅行速度を取得する。これにより、リンクごとに、車両が低速で走行できるリンクかどうかの判定を行うことができる。
本実施形態では、リンクに設置され、リンクの道路交通情報を検出する検出装置から平均旅行速度を取得する。これにより、リンクごとに、車両が低速で走行できるリンクかどうかの判定を行うことができる。
本実施形態では、車両待機エリアが待機好適エリアであるか否かの過去の判定結果に基づき、車両待機エリアが待機好適エリアであるか否かを判定する。これにより、エネルギー消費に対するサービス提供の効率が高いエリアで車両がユーザからの依頼を待つことができる。
本実施形態では、天気情報に基づき、車両待機エリアが高効率エリアであるか否かを判定する。これにより、車両のエネルギー消費効率が高いエリアの判定を、判定時の天気の状況に即して行うことができる。
本実施形態では、曜日、時刻、天気及び地域イベントに係る情報のうち、少なくともひとつの情報に基づき、車両待機エリアが需要エリアであるか否かを判定する。これにより、車両のエネルギー消費効率が高いエリアの判定を、判定時の外部状況に即して行うことができる。
本実施形態では、車両を配車するサービスを提供する事業者に、待機好適エリアの情報を通知する。これにより、車両を配車するサービスを提供する事業者が、車両がユーザからの配車依頼を待つのに適したエリアを把握することができる。
本実施形態では、車両を配車するサービスを提供する事業者の事業内容に関する事業情報を取得し、事業情報に基づき、需要エリアを判定する。これにより、車両を配車するサービスを提供する事業者の事業内容に即した、ユーザの配車に対する需要が高いエリアの判定を行うことができる。