本発明は、幹細胞および多次元生体材料の作製へのその使用の分野に関する。具体的には、本発明は、脂肪由来幹細胞(ASC)を含む生体材料、そのような生体材料を治療用に調製および使用する方法に関する。
骨欠損とは、通常であれば骨であるべき身体領域に骨組織がないことである。骨欠損は様々な外科的方法によって治療することができる。しかし、多くの場合、糖尿病、免疫抑制療法、運動状態の不良および処置を計画する際に考慮に入れる必要のあるその他の因子など、骨治癒の障害となる因子が存在する。
骨欠損を再建する外科的方法としては、特に皮質剥離、切除および固定、海綿骨移植ならびにイリザロフの介在骨輸送法が挙げられる。ただし、患者の歩行障害の期間が長くなり、機能面および審美面からみた結果も最適ものとならないことが多い。
組織工学では、生細胞の使用によって組織の構造または機能を回復させる。一般的工程は、細胞の単離および増殖と、それに続く足場材料を使用する再移植処置とからなる。間葉系幹細胞(MSC)は、成熟組織の細胞の優れた代替物となり、骨および軟骨の組織再生の細胞供給源として多数の利点がある。
定義によれば、幹細胞は、自己再生することが可能であり、多系列に分化し、最終的に分化細胞を形成することが可能であることを特徴とするものである。理想的には、再生医療に適用する幹細胞は、以下の基準を満たすべきである:(i)大量に(数百万~数十億個の細胞が)存在するべきである;(ii)低侵襲性の方法によって収集および回収することができる;(iii)再現可能に複数の細胞系列経路に沿って分化することができる;(iv)自家宿主または同種宿主に安全かつ効率的に移植することができる。
複数の研究で、幹細胞には中胚葉、内胚葉および外胚葉起源の細胞に分化する能力があることが明らかにされている。MSCの可塑性はほとんどの場合、幹細胞内に保持している、系列の境界を越え、他の組織に固有の細胞の表現型の特性、生化学的特性および機能的特性を取り入れる先天的能力を指す。成体間葉系幹細胞は、例えば骨髄および脂肪組織から単離することができる。
脂肪由来幹細胞は多能性であり、著明な再生能がある。この同じ脂肪組織細胞集団を識別するのに以下の用語:脂肪由来幹細胞/間質細胞(ASC);脂肪由来成体幹(ADAS)細胞、脂肪由来成体間質細胞、脂肪由来間質細胞(ADSC)、脂肪間質細胞(ASC)、脂肪間葉系幹細胞(AdMSC)、脂肪芽細胞、周皮細胞、脂肪前駆細胞、処理脂肪吸引組織(Processed Lipoaspirate)(PLA)細胞が用いられている。文献にこのように多様な命名法が用いられることにより、大きな混乱を招いた。この問題に対処するため、International Fat Applied Technology Societyは、単離されており、可塑性のある付着性の多能性細胞集団を識別するのに「脂肪由来幹細胞」(ASC)という用語を採用することで意見が一致した。
骨原性分化ASCは様々な前臨床モデルで、様々な足場、例えばβリン酸三カルシウム(β-TCP)、ヒドロキシアパタイト(HA)、I型コラーゲン、ポリ-乳酸-co-グリコール酸(PLGA)およびアルギン酸などに播種すると大きな治癒能を示すことが明らかにされている。国際特許出願第2013/059089号は、幹細胞と、リン酸三カルシウムおよびヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウムセメントの混合物とを含む、骨ペーストに関するものである。米国特許出願公開第2011/104230号には、合成セラミック材料と間葉系幹細胞とシグナル伝達分子とを含む足場材料を含む、骨パッチが開示されている。
しかし、小動物モデルでは有望な結果が得られているものの、足場に搭載したASCを用いる臨界サイズの骨再建は未だ、骨欠損のサイズが大きいことによる、したがって、設計する移植片の大きさによる制約を受けている。播種細胞の細胞生着についても、酸素および栄養素の拡散不良による制約を受けている。さらに、足場内での細胞の位置が、細胞のin vitroおよびin vivoでの生存率に対する大きな制約となっている。細胞をより均一に分布させる移植片内での細胞遊走、移植片の中心部に酸素および栄養素を送達することによる細胞生存ならびに(流体せん断力による)骨原性細胞分化が改善されるように、足場のフロー灌流を備えたバイオリアクターが設計されている。これらの技術は有望なものではあるが、大型動物モデルでの関連する前臨床および臨床データが少ない。
このように、当該技術分野では依然として、完全に生体に適合し、指定された用途に適した機械的特徴をもたらす、骨組織再生のための組織設計材料が必要とされている。したがって、本発明は、生体適合材料を有する多次元骨原性構造物に分化したASCから作製される、移植片に関するものである。
本発明は、骨原性分化脂肪由来幹細胞(ASC)と生体適合材料と細胞外基質とを含む多次元構造を有し、オステオプロテジェリン(OPG)を分泌する、生体材料に関する。
一実施形態では、生体材料は、OPGを少なくとも生体材料1g当たり約5ng、好ましくは少なくとも約10ng/g分泌する。
一実施形態では、生体適合材料は粒子の形態である。
一実施形態では、生体適合材料は脱灰骨基質(DBM)の粒子である。一実施形態では、DBM粒子は、約50~約2500μmの範囲の平均径を有する。
一実施形態では、生体適合材料はリン酸カルシウムの粒子である。一実施形態では、リン酸カルシウムの粒子は、約50μm~約1500μmの範囲の平均サイズを有する。
一実施形態では、リン酸カルシウムの粒子は、ヒドロキシアパタイト(HA)および/またはβリン酸三カルシウム(β-TCP)の粒子である。一実施形態では、リン酸カルシウムの粒子は、10/90~90/10の範囲の比のHA/β-TCPの粒子である。別の実施形態では、HA/β-TCPの粒子は20/80~80/20の比である。別の実施形態では、HA/β-TCPの粒子は65/35の比である。
一実施形態では、生体適合材料はゼラチンの粒子である。好ましい実施形態では、生体適合材料はブタゼラチンの粒子である。
一実施形態では、生体材料は、VEGFを少なくとも生体材料1g当たり約10ng含む。
一実施形態では、生体材料は三次元のものである。
ある特定の実施形態では、生体材料は成形可能または形成可能なものである。
本発明は、本発明による多次元生体材料を含む、医療装置または医薬組成物にも関する。
本発明のまた別の目的は、本発明による多次元生体材料を作製する方法であって、
脂肪由来幹細胞(ASC)増殖の段階と、
第4継代でのASC骨原性分化の段階と、
多次元誘導、好ましくは3D誘導の段階と
を含む、方法である。
本発明はさらに、本発明による方法によって得られる多次元生体材料に関する。
本発明のまた別の目的は、骨欠損および/または軟骨欠損の治療に使用する、本発明による生体材料である。
定義
本発明では、以下の用語は以下のような意味を有する:
値の前に記載される「約」という用語は、前記値±10%の値を意味する。
「脂肪組織」という用語は、任意の脂肪組織を指す。脂肪組織は、皮下、大網/内臓、乳房、性腺またはその他の脂肪組織部位に由来する、褐色脂肪組織または白色脂肪組織であり得る。好ましくは、脂肪組織は皮下白色脂肪組織である。このような細胞は、初代細胞培養物または不死化細胞系列を含み得る。脂肪組織は、脂肪組織を有し、生存している、または死亡した任意の生物体に由来するものであり得る。好ましくは、脂肪組織は動物、より好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくは、脂肪組織はヒトである。脂肪組織の便利な供給源として脂肪吸引術由来のものがあるが、脂肪組織の供給源も脂肪組織単離の方法も本発明にとって重要なものではない。
本明細書で使用される「脂肪由来幹細胞」(「脂肪組織由来幹細胞」とも呼ばれる)という用語は、脂肪組織の「非脂肪細胞」分画を指す。細胞は、新鮮なものであっても、培養したものであってもよい。「脂肪由来幹細胞」(ASC)は、脂肪組織に由来し、様々な異なる細胞型、例えば、特に限定されないが、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などへの前駆体としての役割を果たし得る、間質細胞を指す。
本明細書で使用される「セラミック材料」という用語は、無機非金属固体材料を指す。セラミック材料は、リン酸カルシウム(CaP)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム(Ca[OH]2)またはその組合せの粒子であり得る。セラミック材料は粒子の形態であり得る。セラミック材料は、粉末、ビーズまたは顆粒の形態であり得る。セラミック材料は多孔性であり得る。
「再生」または「組織再生」という用語は、特に限定されないが、本開示のASCからの新たな細胞型または組織の成長、発生または再建を含む。一実施形態では、細胞型または組織としては、特に限定されないが、骨原性細胞(例えば、骨芽細胞)、軟骨細胞、内皮細胞、心筋細胞、造血細胞、肝細胞、脂肪細胞、神経細胞および筋管が挙げられる。特定の実施形態では、「再生」または「組織再生」という用語は、本開示のASCからの骨原性細胞(例えば、骨芽細胞)の発生または再建を指す。
本明細書で使用される「成長因子」という用語は、組織成長、細胞増殖、血管新生などを促進する分子のことである。特定の実施形態では、「成長因子」という用語は、骨組織形成を促進する分子を含む。
本明細書で使用される「培養された」という用語は、in vitro、in vivoまたはex vivoの環境で細胞分裂の過程にある、または細胞分裂の過程にない1つまたは複数の細胞を指す。in vitroの環境は、in vitroで細胞を維持するのに適した当該技術分野で公知の任意の培地、例えば、適切な液体培地または寒天などであり得る。細胞培養に適したin vitroの環境の具体例が、Culture of Animal Cells:a manual of basic techniques(3rd edition),1994,R.I.Freshney(ed.),Wiley-Liss,Inc.;Cells:a laboratory manual(vol.1),1998,D.L.Spector,R.D.Goldman,L.A.Leinwand(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press;およびAnimal Cells:culture and media,1994,D.C.Darling,S.J.Morgan John Wiley and Sons,Ltd.に記載されている。
「コンフルエンシー」という用語は、細胞培養表面(培養皿またはフラスコなど)の付着細胞の数、すなわち、細胞によって覆われている表面の割合を指す。100%のコンフルエンシーは、表面が細胞によって完全に覆われていることを意味する。一実施形態では、「細胞がコンフルエンスに達する」または「細胞がコンフルエントである」という表現は、細胞が表面の80~100%を覆ったことを意味する。一実施形態では、「細胞がサブコンフルエントである」という表現は、細胞が表面の60~80%を覆っていることを意味する。一実施形態では、「細胞がオーバーコンフルエントである」という表現は、細胞が少なくとも表面の100%を覆っている、かつ/または数時間または数日以来、100%のコンフルエントであることを意味する。
「冷蔵すること」または「冷蔵」という用語は、対象の正常な生理的温度未満の温度にする処理を指す。例えば、長期間にわたって、例えば、少なくとも約1時間、少なくとも約1日、少なくとも約1週間、少なくとも約4週間、少なくとも約6か月などにわたって、約-196℃~約+32℃の範囲内で選択される1つまたは複数の温度で。一実施形態では、「冷蔵すること」または「冷蔵」は、0℃未満の温度にする処理を指す。冷蔵することは、手作業で実施しても、好ましくは、冷蔵プログラムを実行することが可能な特別の装置を用いて実施してもよい。一実施形態では、「冷蔵」という用語は、当該技術分野で「凍結すること」および「凍結保存」として知られる方法を含む。当業者には、冷蔵方法が、冷蔵目的で試薬を添加することを含めた他の段階を含み得ることが理解されよう。
本明細書で使用される「非胚細胞」という用語は、胚から単離されるものではない細胞を指す。非胚細胞は、分化したものであっても未分化のものであってもよい。非胚細胞は、ほぼあらゆる体細胞、例えば子宮外の動物から単離した細胞などを指し得る。一実施形態では、非胚細胞は生殖細胞を含む。これらの例は、限定することを意図するものではない。
本明細書で使用される「分化細胞」という用語は、特殊化していない表現型から特殊化した表現型に発生した前駆細胞を指す。例えば、脂肪由来幹細胞は骨原性細胞に分化し得る。
本明細書で使用される「分化培地」という用語は、分化細胞を作製するのに本発明の培養系で使用する化合物の集合物の1つを指す。化合物の作用機序に関しては、いかなる限定も意図されない。例えば、薬剤は、表現型の変化を誘導または補助する、特定の表現型を有する細胞の増殖を促進する、または他の細胞の増殖を遅らせることによって、分化過程を補助するものであり得る。薬剤は、培地中に存在するか、細胞集団によって合成され、望ましくない細胞型への経路に沿って分化を指令する可能性のある他の因子に対して、阻害剤として作用し得るものであってもよい。
「治療」、「治療すること」または「軽減」という用語は、目的を骨欠損を予防すること、または速度を低下させる(減少させる)こととする、治療的処置を指す。治療を必要とする者には、既に障害を有する者および障害を発症しやすい者または骨欠損を予防するべき者が含まれる。治療量の本発明の方法による生体材料を入れた後、患者に、骨欠損の軽減および/または骨欠損による1つもしくは複数の症状のある程度の緩和;罹病率および死亡率の低下ならびに生活の質の改善のうち1つまたは複数のものについて観察可能かつ/または測定可能な軽減または不在がみられる場合、対象の骨欠損が良好に「治療された」ことになる。疾患の良好な治療および改善を評価するための上記パラメータは、医師がよく知るルーチンの方法によって容易に測定可能なものである。
本開示の生体材料の治療的使用に関連して、「同種」療法では、ドナーとレシピエントが同じ種に属する異なる個体であるのに対して、「自家」療法では、ドナーとレシピエントが同じ個体であり、「異種」療法では、ドナーは、レシピエントと異なる種に属する動物に由来するものである。
「有効量」という用語は、臨床結果を含めた有益な結果または所望の結果を得るのに十分な量を指す。有効量を1回または複数回の投与で投与することができる。
「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。対象の例としては、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウマ、ウシおよびそのトランスジェニック種が挙げられる。一実施形態では、対象は「患者」、すなわち、医療を受けるのを待っているか受けている、または医療処置の対象であった/である/となる、または疾患の発症を監視している温血動物、より好ましくはヒトであり得る。一実施形態では、対象は成体(例えば、18歳超のヒト対象)である。別の実施形態では、対象は子供(例えば、18歳未満のヒト対象)である。一実施形態では、対象は雄である。別の実施形態では、対象は雌である。
「生体適合性」という用語は、細胞、細胞培養物、組織または生物体などの生体系に適合する、無毒性材料を指す。
「脱灰骨基質」または「DBM」という用語は、脱細胞化し脱灰した骨の断片を指す。一実施形態では、当該分野の成功事例に従ってDBMを調製する。一実施形態では、ヒト死体同種移植骨を一定の大きさに粉砕した後、ミネラル化相を弱い鉱酸で抽出することによってDBMを調製する。
「多次元」という用語は、2以上の次元、例えば二次元(2D)または三次元(3D)を指す。一実施形態では、多次元構造を有する生体材料は、2Dまたは3D構造を有する生体材料を指す。
(詳細な説明)
本発明は、脂肪組織由来幹細胞(ASC)と生体適合材料と細胞外基質とを含む多次元構造を有し、オステオプロテジェリン(OPG)を含む、生体材料に関する。
本明細書で使用される「多次元構造を有する生体材料」という用語は、本発明全体を通して「多次元生体材料」という用語に置き換えられ得る。
一実施形態では、細胞は、脂肪組織から単離されるものであり、以降、脂肪由来幹細胞(ASC)と呼ぶ。
一実施形態では、ASC組織は動物起源、好ましくは哺乳動物起源、より好ましくはヒト起源のものである。したがって、一実施形態では、ASCは動物ASC、好ましくは哺乳動物ASC、より好ましくはヒトASCである。好ましい実施形態では、ASCはヒトASCである。
脂肪組織から幹細胞を単離する方法は当該技術分野で公知であり、例えばZukら(Tissue Engineering.2001,7:211-228)に開示されている。一実施形態では、脂肪吸引術によって脂肪組織からASCを単離する。
例として、針生検または脂肪吸引術による吸引によって脂肪組織を収集し得る。最初に、任意選択で抗生物質、例えば1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で組織試料を徹底的に洗浄することによって、脂肪組織からASCを単離し得る。次いで、試料を組織消化用のコラゲナーゼ(例えば、2%P/Sを含有するPBSで調製したI型コラゲナーゼ)とともに無菌組織培養プレートに入れ、37℃、5%CO2で30分間インキュベートし得る。培地(例えば、10%血清を含有するDMEM)を添加することによってコラゲナーゼ活性を中和し得る。崩壊後、試料をチューブに移し得る。試料を(例えば、2000rpmで5分間)遠心分離することによって、ASCが含まれる間質血管細胞群(SVF)が得られる。間質細胞と初代脂肪細胞との分離を完了させるため、試料を激しく振盪して、ペレットを徹底的に破壊し、細胞をかき混ぜ得る。遠心分離段階を反復し得る。遠心分離しコラゲナーゼ溶液を吸引した後、ペレットを溶解緩衝液に再懸濁させ、氷上で(例えば10分間)インキュベートし、(例えばPBS/2%P/Sで)洗浄し、(例えば、2000rpmで5分間)遠心分離し得る。次いで、上清を吸引し、細胞ペレットを培地(例えば、間質培地、すなわち、20%FBS、1%L-グルタミンおよび1%P/Sを添加したα-MEM)に再懸濁させ、細胞懸濁液を(例えば70μmのセルストレーナーで)ろ過し得る。最後に、細胞が含まれる試料を培養プレートに播き、37℃、5%CO2でインキュベートし得る。
一実施形態では、脂肪組織の間質血管細胞群から本発明のASCを単離する。一実施形態では、脂肪吸引組織を使用前に室温で数時間もしくは+4℃で24時間、または長期保存に0℃未満、例えば-18℃で保持し得る。
一実施形態では、ASCは、新鮮なASCまたは冷蔵したASCであり得る。新鮮なASCとは、冷蔵処理を実施していない単離ASCのことである。冷蔵したASCとは、冷蔵処理を実施した単離ASCのことである。一実施形態では、冷蔵処理は、0℃未満の任意の処理を意味する。一実施形態では、冷蔵処理を約-18℃、-80℃または-180℃で実施し得る。特定の実施形態では、冷蔵処理は凍結保存であり得る。
冷蔵処理の例として、ASCを80~90%のコンフルエンスで回収し得る。洗浄および皿からの剥離の段階の後、細胞を冷蔵保存培地とともに室温でペレット化し、バイアルに入れ得る。一実施形態では、冷蔵保存培地は、80%ウシ胎児血清またはヒト血清、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)および10%DMEM/Ham’s F-12を含む。次いで、バイアルを-80℃で一晩保管し得る。例えば、バイアルを-80℃に達するまで毎分約1℃で徐々に冷却するアルコール凍結容器に入れ得る。最後に、凍結したバイアルを長期保存用の液体窒素容器に移し得る。
一実施形態では、ASCは分化ASCである。好ましい実施形態では、ASCは骨原性分化ACSである。換言すれば、好ましい実施形態では、ASCを骨原性細胞に分化させる。特定の実施形態では、ASCを骨芽細胞に分化させる。
骨原性分化を制御および評価する方法は当該技術分野で公知である。例えば、オステオカルシンおよび/または(例えばフォン・コッサで)リン酸塩を染色することによって;(例えばアリザリンレッドで)リン酸カルシウムを染色することによって;磁気共鳴画像法(MRI)によって;ミネラル化基質形成の測定によって;あるいはアルカリホスファターゼ活性の測定によって、本発明の細胞または組織の骨分化を評価し得る。
一実施形態では、ASCを骨原性分化培地(MD)で培養することによって、ASCの骨原性分化を実施する。
一実施形態では、骨原性分化培地はヒト血清を含む。特定の実施形態では、骨原性分化培地はヒト血小板溶解物(hPL)を含む。一実施形態では、骨原性分化培地は他のいかなる動物血清も含まず、好ましくは、骨原性分化培地はヒト血清以外の血清を含まない。
一実施形態では、骨原性分化培地は、デキサメタゾン、アスコルビン酸およびリン酸ナトリウムを添加した増殖培地を含むか、これよりなるものである。一実施形態では、骨原性分化培地は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンおよび/またはアンホテリシンBなどの抗生物質をさらに含む。一実施形態では、いずれの培地も動物タンパク質を含まない。
一実施形態では、増殖培地は、細胞の成長を補助するよう考案された当業者に公知の任意の培地であり得る。本明細書で使用される増殖培地は、「成長培地」とも呼ぶ。成長培地の例としては、特に限定されないが、MEM、DMEM、IMDM、RPMI 1640、FGMもしくはFGM-2、199/109培地、HamF10/HamF12またはMcCoy’s 5Aが挙げられる。好ましい実施形態では、増殖培地はDMEMである。
一実施形態では、骨原性分化培地は、L-アラニル-L-グルタミン(Ala-Gln、「Glutamax(登録商標)」または「Ultraglutamine(登録商標)」とも呼ばれる)、hPL、デキサメタゾン、アスコルビン酸およびリン酸ナトリウムを添加したDMEMを含むか、これよりなるものである。一実施形態では、骨原性分化培地は、L-アラニル-L-グルタミン、hPL、デキサメタゾン、アスコルビン酸およびリン酸ナトリウム、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアンホテリシンBを添加したDMEMを含むか、これよりなるものである。
一実施形態では、骨原性分化培地は、L-アラニル-L-グルタミン、hPL(約5%、v/v)、デキサメタゾン(約1μM)、アスコルビン酸(約0.25mM)およびリン酸ナトリウム(約2.93mM)を添加したDMEMを含むか、これよりなるものである。一実施形態では、骨原性分化培地は、L-アラニル-L-グルタミン、hPL(約5%、v/v)、デキサメタゾン(約1μM)、アスコルビン酸(約0.25mM)およびリン酸ナトリウム(約2.93mM)、ペニシリン(約100U/mL)およびストレプトマイシン(約100μg/mL)を添加したDMEMを含むか、これよりなるものである。一実施形態では、骨原性分化培地はアンホテリシンB(約0.1%)をさらに含む。
一実施形態では、骨原性分化培地は、L-アラニル-L-グルタミン、hPL(約5%、v/v)、デキサメタゾン(約1μM)、アスコルビン酸(約0.25mM)およびリン酸ナトリウム(約2.93mM)を添加したDMEMよりなる。一実施形態では、骨原性分化培地は、L-アラニル-L-グルタミン、hPL(約5%、v/v)、デキサメタゾン(約1μM)、アスコルビン酸(約0.25mM)およびリン酸ナトリウム(約2.93mM)、ペニシリン(約100U/mL)、ストレプトマイシン(約100μg/mL)およびアンホテリシンB(約0.1%)を添加したDMEMを含むか、これよりなるものである。
一実施形態では、ASCは後期継代脂肪由来幹細胞である。本明細書で使用される「後期継代」という用語は、少なくとも継代4以降に分化した脂肪由来幹細胞を意味する。本明細書で使用される継代4は第4継代、すなわち、細胞を培養容器の表面から剥離することによって分けた後、新鮮培地に再懸濁させる4回目の行為を指す。一実施形態では、後期継代脂肪由来幹細胞を継代4、継代5、継代6またはそれ以降に分化させる。好ましい実施形態では、ASCを継代4以降に分化させる。
本明細書で使用される「容器」という用語は、任意の細胞培養表面、例えばフラスコまたはウェルプレートなどを意味する。
初代細胞の初期継代は継代0(P0)と呼ばれた。本発明では、継代P0は、ペレット化した間質血管細胞群(SVF)の細胞懸濁液を培養容器に播種することを指す。したがって、継代P4は、細胞を培養容器の表面から(例えば、トリプシンでの消化によって)4回(P1、P2、P3およびP4に)剥離し、新鮮培地に再懸濁させたことを意味する。
一実施形態では、本発明のASCを第4継代まで増殖培地で培養する。一実施形態では、本発明のASCを第4継代以降、分化培地で培養する。したがって、一実施形態では、継代P1、P2およびP3で、ASCを培養容器の表面から剥離し、次いで、増殖培地で適切な細胞密度まで希釈する。さらにこの実施形態では、継代P4でASCを培養容器の表面から剥離し、次いで、分化培地で適切な細胞密度まで希釈する。したがって、この実施形態では、P4で、本発明のASCを分化させる(すなわち、分化培地で培養する)前に、これを増殖培地に再懸濁させ、コンフルエンスに達するまで培養するのではなく、分化培地に直接再懸濁させ、培養する。
一実施形態では、細胞を少なくともコンフルエンス、好ましくは70%~100%のコンフルエンス、より好ましくは80%~95%のコンフルエンスに達するまで骨原性分化培地で維持する。一実施形態では、細胞を少なくとも5日間、好ましくは少なくとも10日間、より好ましくは少なくとも15日間、骨原性分化培地で維持する。一実施形態では、細胞を5~30日間、好ましくは10~25日間、より好ましくは15~20日間、骨原性分化培地で維持する。一実施形態では、分化培地を2日毎に交換する。ただし、当該技術分野で公知のように、細胞成長速度はドナーによってわずかに異なる可能性がある。したがって、骨原性分化の継続期間および培地交換の回数は、ドナーによって異なりものとなり得る。
一実施形態では、細胞を少なくとも類骨、すなわち、骨組織成熟の前に形成される骨基質の非ミネラル化有機部分の形成まで、骨原性分化培地で維持する。
一実施形態では、本発明の生体適合材料は、本明細書で生体適合性粒子と呼ぶ粒子の形態である。一実施形態では、粒子は、ビーズ、粉末、球状物、マイクロスフェアなどであり得る。
一実施形態では、本発明の生体適合材料は、予め定められた3Dの形状または足場、例えば立方体などを形成するよう構築されていない。一実施形態では、本発明の生体適合材料は、予め定められた形状でも足場でもない。一実施形態では、本発明の生体適合材料は立方体の形状ではない。
一実施形態では、本発明の生体適合材料は、脱灰骨基質(DBM)、セルロースなどの有機基質;ポリマー、例えばゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、エラスチンなど;またはセラミック、例えばヒドロキシアパタイト(HA)、βリン酸三カルシウム(β-TCP)、ヒドロキシアパタイト/βリン酸三カルシウム(HA/β-TCP)、αリン酸三カルシウム(α-TCP)、硫酸カルシウムなどを含み得る。
一実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、約50μm~約2500μm、好ましくは約50μm~約1500μm、より好ましくは約100μm~約1000μmの範囲の平均径を有する。一実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、約200μm~約600μmの範囲の平均径を有する。別の実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、約300μm~約700μmの範囲の平均径を有する。
一実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、少なくとも約50μm、好ましくは少なくとも約100μm、より好ましくは少なくとも約150μmの平均径を有する。別の実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、少なくとも約200μm、好ましくは少なくとも約250μm、より好ましくは少なくとも約300μmの平均径を有する。
一実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、最大約2500μm、好ましくは最大約2000μm、より好ましくは最大約1500μmの平均径を有する。別の実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、最大約1000μm、好ましくは最大約900μm、より好ましくは少なくとも最も約800μm、さらにより好ましくは最大約700μmの平均径を有する。
特定の実施形態では、本発明の生体適合性粒子は脱灰骨基質(DBM)である。
一実施形態では、DBMは動物起源、好ましくは哺乳動物起源、より好ましくはヒト起源のものである。特定の実施形態では、ヒトドナーの皮質骨を粉砕することによってヒトDBMを得る。
DBMを得る方法は当該技術分野で公知である。例えば、最初に、一晩にわたる(例えば99%の)アセトン浴、次いで、2時間にわたる脱塩水での洗浄によって、ヒト骨組織を脱脂し得る。(例えば0.6Nの)HCLに室温で攪拌しながら3時間浸漬する(骨1グラム当たり20mLの溶液)ことによって、脱灰を実施し得る。次いで、脱灰した骨の粉末を脱塩水で2時間すすぎ得、pHを調整する。pHが酸性に傾きすぎる場合、攪拌しながらDBMを(例えば0.1Mの)リン酸塩溶液で緩衝し得る。最後に、DBMを乾燥させ、重量を測定し得る。DBMを当該分野で公知の技術に従い、例えば約25キログレイのガンマ線照射によって滅菌し得る。
一実施形態では、DBMは同種異系のものである。一実施形態では、DBMは同種のものである。別の実施形態では、DBMは異種のものである。
一実施形態では、DBMは、本明細書で脱灰骨基質粒子またはDBM粒子と呼ぶ粒子の形態である。一実施形態では、DBM粒子は、約50~約2500μm、好ましくは約50μm~約1500μm、より好ましくは約50μm~約1000μmの範囲の平均径を有する。一実施形態では、DBM粒子は、約100μm~約1500μm、より好ましくは約150μm~約1000μmの範囲の平均径を有する。一実施形態では、DBM粒子は、約200~約1000μm、好ましくは約200μm~約800μm、より好ましくは約300μ~約700μmの範囲の平均径を有する。
一実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、少なくとも約50μm、好ましくは少なくとも約100μm、より好ましくは少なくとも約150μmの平均径を有する。別の実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、少なくとも約200μm、好ましくは少なくとも約250μm、より好ましくは少なくとも約300μmの平均径を有する。
一実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、最大約2500μm、好ましくは最大約2000μm、より好ましくは最大約1500μmの平均径を有する。別の実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、最大約1000μm、好ましくは最大約900μm、より好ましくは少なくとも最も約800μm、さらにより好ましくは最大約700μmの平均径を有する。
一実施形態では、脱灰骨基質の量は、生体材料に3D構造を与えるのに最適なものである。一実施形態では、脱灰骨基質を培地1mL当たり約1~約25mgの範囲の濃度で加える。好ましい実施形態では、脱灰骨基質を培地1mL当たり約1~約20mg、より好ましくは培地1mL当たり約5~約20mgの範囲の濃度で加える。
一実施形態では、脱灰骨基質を150cm2の容器に対して約500mg~約2000mg、好ましくは約750mg~約1500mg、より好ましくは約1000mg~約1250mgの範囲の濃度で加える。
一実施形態では、脱灰骨基質を培養容器1cm2当たり約3mg~約13mg、好ましくは約5mg~約10mg、より好ましくは約6.5mg~約8mgの範囲の濃度で加える。
一実施形態では、脱灰骨基質は年齢40歳未満のドナーに由来するものである。ある実施形態では、骨基質の脱灰率は、約90~約99%、好ましくは約95~約98%の範囲内、さらにより好ましくは約97%である。一実施形態では、脱灰率は、0.6NのHClを3時間にわたって用いる工程によって得られるものであるのが有利である。ある特定の実施形態では、脱灰骨基質を滅菌する。
一実施形態では、本発明の生体適合性粒子は、リン酸カルシウム(CaP)、炭酸カルシウム(CaCO3)または水酸化カルシウム(Ca[OH]2)の粒子である。
リン酸カルシウム粒子の例としては、特に限定されないが、ヒドロキシアパタイト(HA、Ca10(PO4)6(OH)2)、リン酸三カルシウム(TCP、Ca3[PO4]2)、αリン酸三カルシウム(α-TCP、(α-Ca3(PO4)2)、βリン酸三カルシウム(β-TCP、β-Ca3(PO4)2)、リン酸四カルシウム(TTCP、Ca4(PO4)2O)、リン酸八カルシウム(Ca8H2(PO4)6.5H2O)、非晶質リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)、ヒドロキシアパタイト/βリン酸三カルシウム(HA/β-TCP)、ヒドロキシアパタイト/リン酸四カルシウム(HA/TTCP)などが挙げられる。
一実施形態では、本発明のセラミック材料は、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸三カルシウム(TCP)、ヒドロキシアパタイト/βリン酸三カルシウム(HA/β-TCP)、硫酸カルシウムまたはその組合せを含むか、これよりなるものである。一実施形態では、本発明のセラミック材料は、ヒドロキシアパタイト(HA)、βリン酸三カルシウム(β-TCP)、ヒドロキシアパタイト/βリン酸三カルシウム(HA/β-TCP)、αリン酸三カルシウム(α-TCP)、硫酸カルシウムまたはその組合せを含むか、これよりなるものである。
一実施形態では、本発明の生体適合性粒子はヒドロキシアパタイト(HA)の粒子である。別の実施形態では、本発明の生体適合性粒子はβリン酸三カルシウム(β-TCP)の粒子である。別の実施形態では、本発明の生体適合性粒子はヒドロキシアパタイト/βリン酸三カルシウム(HA/β-TCP)の粒子である。換言すれば、一実施形態では、本発明のセラミック粒子は、ヒドロキシアパタイト粒子とβリン酸三カルシウム粒子の混合物(HA/β-TCP粒子と呼ぶ)である。一実施形態では、本発明のセラミック粒子は、ヒドロキシアパタイト粒子とβリン酸三カルシウム粒子(HA/β-TCP粒子と呼ぶ)よりなる。
一実施形態では、HA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、顆粒、粉末またはビーズの形態である。一実施形態では、HA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、多孔性の顆粒、粉末またはビーズの形態である。一実施形態では、セラミック粒子、好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、多孔性セラミック材料である。一実施形態では、セラミック粒子、好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、粉末粒子である。特定の実施形態では、HA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、多孔性顆粒の形態である。別の特定の実施形態では、HA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、粉末の形態である。一実施形態では、HA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、予め定められた3Dの形状または足場、例えば立方体などを形成するよう構築されていない。一実施形態では、本発明のセラミック材料は、3D足場ではない。一実施形態では、セラミック材料は予め定められた形状でも足場でもない。一実施形態では、本発明のセラミック材料は立方体の形状ではない。一実施形態では、本発明の生体材料は足場がない。
一実施形態では、本発明のセラミック粒子、好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、約50μmより大きく、好ましくは約100μmより大きい。一実施形態では、本発明のセラミック粒子、好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、約50μmより大きい、好ましくは約100μmより大きい平均径を有する。
一実施形態では、本発明のセラミック粒子、好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、少なくとも約50μm、好ましくは少なくとも約100μm、より好ましくは少なくとも約150μmの平均径を有する。別の実施形態では、本発明のセラミック粒子、好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、少なくとも約200μm、好ましくは少なくとも約250μm、より好ましくは少なくとも約300μmの平均径を有する。
別の実施形態では、本発明のセラミック粒子、好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、最大約2500μm、好ましくは最大約2000μm、より好ましくは最大約1500μmの平均径を有する。一実施形態では、本発明のセラミック粒子、好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、最大約1000μm、900μm、800μm、700μmまたは600μmの平均径を有する。
一実施形態では、本発明のセラミック粒子、好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、約50μm~約1500μm、好ましくは約50μm~約1250μm、より好ましくは約100μm~約1000μmの範囲の平均径を有する。一実施形態では、本発明のセラミック粒子、好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子は、約100μm~約800μm、好ましくは約150μm~約700μm、より好ましくは約200μm~約600μmの範囲の平均径を有する。
一実施形態では、HA/β-TCP粒子は、約50μm~約1500μm、好ましくは約50μm~約1250μm、より好ましくは約100μm~約1000μmの範囲の平均径を有する。一実施形態では、HA粒子およびβ-TCP粒子は、約100μm~約800μm、好ましくは約150μm~約700μm、より好ましくは約200μm~約600μmの範囲の平均径を有する。
一実施形態では、粒子中のHAとβ-TCPの比(HA/β-TCP比)は、0/100~100/0、好ましくは10/90~90/10、より好ましくは20/80~80/20の範囲内にある。一実施形態では、粒子中の比HA/β-TCPは、30/70~70/30、35/65~65/35または40/60~60/40の範囲内にある。
一実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は0/100である、すなわち、粒子はβリン酸三カルシウムの粒子である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は100/0である、すなわち、粒子はヒドロキシアパタイトの粒子である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は10/90である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は90/10である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は20/80である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は80/20である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は30/70である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は70/30である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は35/65である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は65/35である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は40/60である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は60/40である。別の実施形態では、粒子中のHA/β-TCP比は50/50である。
一実施形態では、HA、TCPおよび/またはHA/β-TCPの量は、生体材料に3D構造を与えるのに最適なものである。一実施形態では、HA粒子、TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子を150cm2の容器に対して約0.5cm3~約5cm3mg、好ましくは約1cm3~約3cm3、より好ましくは約1cm3~約2cm3の範囲の濃度で加える。好ましい実施形態では、HA粒子、TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子を150cm2の容器に対して約1.5cm3の濃度で加える。
一実施形態では、HA粒子、TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子を培地1mL当たり約7×10-3~7×10-2cm3の範囲の濃度で加える。一実施形態では、HA粒子、TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子を容器1cm2当たり約3.3×10-3~3.3×10-2cm3の範囲の濃度で加える。
一実施形態では、本発明の生体適合性粒子はゼラチンである。一実施形態では、本発明のゼラチンはブタゼラチン(porcine gelatin)である。本明細書で使用される「ブタゼラチン(porcine gelatin)」という用語は、「ブタゼラチン(pork gelatin)」または「ブタゼラチン(pig gelatin)」で置き換えられ得る。一実施形態では、ゼラチンはブタ皮膚ゼラチンである。
一実施形態では、本発明のゼラチンはマクロ多孔性微小担体である。
ブタゼラチン粒子の例としては、特に限定されないが、Cultispher(登録商標)G、Cultispher(登録商標)S、SpongostanおよびCutanplastが挙げられる。一実施形態では、本発明のゼラチンはCultispher(登録商標)GまたはCultispher(登録商標)Sである。
一実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタゼラチンは、少なくとも約50μm、好ましくは少なくとも約75μm、より好ましくは少なくとも約100μm、より好ましくは少なくとも約130μmの平均径を有する。一実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタゼラチンは、最大約1000μm、好ましくは最大約750μm、より好ましくは最大約500μmの平均径を有する。別の実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタゼラチンは、最大約450μm、好ましくは最大約400μm、より好ましくは少なくとも最も約380μmの平均径を有する。
一実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタゼラチンは、約50μm~約1000μm、好ましくは約75μm~約750μm、より好ましくは約100μm~約500μmの範囲の平均径を有する。別の実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタゼラチンは、約50μm~約500μm、好ましくは約75μm~約450μm、より好ましくは約100μm~約400μmの範囲の平均径を有する。別の実施形態では、本発明のゼラチン、好ましくはブタゼラチンは、約130μm~約380μmの範囲の平均径を有する。
一実施形態では、ゼラチンを150cm2の容器に対して約0.1cm3~約5cm3、好ましくは約0.5cm3~約4cm3、より好ましくは約0.75cm3~約3cm3の範囲の濃度で加える。一実施形態では、ゼラチンを150cm2の容器に対して約1cm3~約2cm3の範囲の濃度で加える。一実施形態では、ゼラチンを150cm2の容器に対して約1cm3、1.5cm3または2cm3の濃度で加える。
一実施形態では、ゼラチンを150cm2の容器に対して約0.1g~約5g、好ましくは約0.5g~約4g、より好ましくは約0.75g~約3gの範囲の濃度で加える。一実施形態では、ゼラチンを150cm2の容器に対して約1g~約2gの範囲の濃度で加える。一実施形態では、ゼラチンを150cm2の容器に対して約1g、1.5gまたは2gの濃度で加える。
一実施形態では、細胞が分化後にコンフルエンスに達したとき、本発明のゼラチンを加える。換言すれば、一実施形態では、細胞が分化培地中でコンフルエンスに達したとき、本発明のゼラチンを加える。一実施形態では、P4の少なくとも5日後、好ましくは10日後、より好ましくは15日後に本発明のゼラチンを加える。一実施形態では、P4の5~30日後、好ましくは10~25日後、より好ましくは15~20日後に本発明のゼラチンを加える。
一実施形態では、本発明の生体適合材料は、脱灰骨基質(DBM)、リン酸カルシウム粒子、好ましくはHA粒子および/またはβ-TCP粒子あるいはゼラチン、好ましくはブタゼラチンである。一実施形態では、本発明の生体適合材料は、脱灰骨基質(DBM)、HA粒子、βTCP粒子、HA/β-TCP粒子またはゼラチンである。一実施形態では、本発明の生体適合材料は、脱灰骨基質(DBM)、HA粒子、βTCP粒子、HA/β-TCP粒子またはブタゼラチンである。
一実施形態では、本発明の生体適合材料は、脱灰骨基質(DBM)、リン酸カルシウム粒子、好ましくはHA粒子および/またはβ-TCP粒子ならびにゼラチン、好ましくはブタゼラチンを含むか、これよりなる群から選択される。一実施形態では、本発明の生体適合材料は、脱灰骨基質(DBM)、HA粒子、βTCP粒子、HA/β-TCP粒子およびゼラチンを含むか、これよりなる群から選択される。一実施形態では、本発明の生体適合材料は、脱灰骨基質(DBM)、HA粒子、βTCP粒子、HA/β-TCP粒子およびブタゼラチンを含むか、これよりなる群から選択される。
一実施形態では、細胞の分化後に本発明の生体適合材料を培地に加える。一実施形態では、細胞がサブコンフルエントであるときに本発明の生体適合材料を加える。一実施形態では、細胞がオーバーコンフルエントであるときに本発明の生体適合材料を加える。一実施形態では、細胞が分化後にコンフルエンスに達したとき、本発明の生体適合材料を加える。換言すれば、一実施形態では、細胞が分化培地中でコンフルエンスに達したとき、本発明の生体適合材料を加える。一実施形態では、P4の少なくとも5日後、好ましくは10日後、より好ましくは15日後に本発明の生体適合材料を加える。一実施形態では、P4の5~30日後、好ましくは10~25日後、より好ましくは15~20日後に本発明の生体適合材料を加える。
一実施形態では、本発明による生体材料は二次元のものである。この実施形態では、本発明の生体材料は、1mm未満の薄膜を形成し得る。
別の実施形態では、本発明による生体材料は三次元のものである。この実施形態では、本発明の生体材料は、厚さが少なくとも1mmの厚膜を形成し得る。生体材料の大きさを使用に適合させ得る。
一実施形態では、本発明の生体材料は足場を含まない。本明細書で使用される「足場」という用語は、ヒトおよび動物の組織を含めた天然の哺乳動物組織、例えば天然の哺乳動物、好ましくはヒトの骨または細胞外基質などの多孔性、孔径および/または機能を模倣する構造を意味する。このような足場の例としては、特に限定されないが、人工骨、コラーゲンスポンジ、ヒドロゲル、例えばタンパク質ヒドロゲル、ペプチドヒドロゲル、ポリマーヒドロゲルおよび木材系ナノセルロースヒドロゲルなどが挙げられる。一実施形態では、本発明の生体材料は人工骨を含まない。一実施形態では、本発明の生体適合材料は人工骨ではない。
一実施形態では、本発明の生体材料の多次元性は、天然の細胞外基質構造を模倣する足場によるものではない。一実施形態では、本発明の生体材料は、天然の細胞外基質構造を模倣する足場を含まない。
一実施形態では、本発明の生体材料の多次元性は、本発明の脂肪組織由来幹細胞による細胞外基質の合成によるものである。
一実施形態では、本発明の生体材料は細胞外基質を含む。一実施形態では、本発明の細胞外基質は、ASCに由来するものである。一実施形態では、本発明の細胞外基質は、ASCによって産生されるものである。
本明細書で使用される「細胞外基質」(ECM)という用語は、非細胞多次元高分子ネットワークを意味する。ECMの基質成分が互いに結合するとともに細胞接着受容体とも結合し、それにより複雑な複合体ネットワークを形成し、その中で細胞が組織または本発明の生体材料中に存在する。
一実施形態では、本発明の細胞外基質は、コラーゲン、プロテオグリカン/グリコサミノグリカン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニンおよび/またはその他の糖タンパク質を含む。特定の実施形態では、本発明の細胞外基質はコラーゲンを含む。別の特定の実施形態では、本発明の細胞外基質はプロテオグリカンを含む。別の特定の実施形態では、本発明の細胞外基質は、コラーゲンとプロテオグリカンとを含む。一実施形態では、本発明の細胞外基質は、成長因子、プロテオグリカン、分泌因子、細胞外基質調節因子および糖タンパク質を含む。
一実施形態では、本発明の生体材料の中にあるASCが、本明細書でASC組織と呼ぶ組織を形成する。一実施形態では、本発明の生体材料の中にあるASCならびにセラミック材料、好ましくはセラミック粒子、より好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子が細胞外基質中の包埋されている。一実施形態では、好ましくは骨細胞に分化したASCが、セラミック材料、好ましくはセラミック粒子、より好ましくはHA粒子、β-TCP粒子および/またはHA/β-TCP粒子とともに、細胞外基質を有する3D構造を形成する。一実施形態では、ASC組織は血管新生した組織である。一実施形態では、本発明の生体材料は血管新生したものである。
一実施形態では、ASC組織は細胞化された相互結合組織である。一実施形態では、細胞化された相互結合組織に生体適合材料、好ましくは生体適合性粒子が組み込まれている。一実施形態では、ASC組織内に生体適合材料、好ましくは生体適合性粒子が分散している。
一実施形態では、本発明の生体材料は、生体適合材料、好ましくは生体適合性粒子の間で形成される、相互結合組織を特徴とする。一実施形態では、本発明の生体材料は、生体適合材料、好ましくは生体適合性粒子周囲でのミネラル化を特徴とする。一実施形態では、形成された生体材料の組織としての性質を組織退縮によって確認し得る。
一実施形態では、本発明の生体材料は、オステオカルシン発現およびミネラル化特性に関して実骨と類似した特性を有する。一実施形態では、本発明の生体材料は骨細胞を含む。一実施形態では、本発明の生体材料は骨細胞と細胞外基質とを含む。一実施形態では、本発明の生体材料は骨細胞とコラーゲンとを含む。特定の実施形態では、コラーゲンは、石灰化しミネラル化したコラーゲンである。一実施形態では、本発明の生体材料は骨基質を含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、生体材料の細胞の分化が終点に達したものであり、生体材料の表現型は、移植しても変化しないままである。
一実施形態では、本発明の生体材料は成長因子を含む。
一実施形態では、生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後、本発明の生体材料による成長因子の含有量または分泌を評価する。
破骨細胞形成阻害因子(OCIF)または腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー11B(TNFRSF11B)としても知られるオステオプロテジェリン(OPG)は、サイトカイン受容体の1つである。マウスでは、OPGの過剰発現または投与によって破骨細胞形成が鈍化することがわかっている。同様に、OPGが欠如した動物では破骨細胞形成が促進され、重度の骨粗鬆症が発現することが確認されている。OPGは現在、RANKL(腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー11(TNFSF11)、TNF関連活性化誘導サイトカイン(TRANCE)、オステオプロテジェリンリガンド(OPGL)または破骨細胞分化因子(ODF)としても知られる核因子カッパBリガンドの受容体活性化因子)に関してRANKと競合する可溶性デコイ受容体であることが知られている。RANK/RANKL/OPGシグナル伝達経路は、破骨細胞の分化および活性化を調節することが明らかにされている。したがって、破骨細胞形成の刺激因子であるRANKLの発現と阻害剤であるOPGの発現のバランスが、再吸収される骨の量を決定する。
一実施形態では、好ましくは生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後、本発明の生体材料のOPGの含有量および/または分泌を当該技術分野で公知の任意の方法により、例えばELISAなどにより定量化し得る。
一実施形態では、本発明の生体材料はOPGを含む。一実施形態では、本発明の生体材料はOPGを分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料のASCはOPGを分泌する。一実施形態では、本発明の細胞設計生体材料はOPGを分泌する。
一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを少なくとも生体材料中の細胞106個当たり約250pg、好ましくは少なくとも500pg/106個分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり少なくとも約750pg、800pg、850pg、900pgまたは950pg分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり少なくとも約1000pg、1100pg、1200pg、1300pgまたは1400pg分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり少なくとも約1000pg、1500pg、2000pg、2500pgまたは3000pg分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり少なくとも約2000pg、2100pg、2200pg、2300pg、2400pgまたは2500pg分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり少なくとも約2550pg、2600pg、2650pgまたは2750pg分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり少なくとも約1000pg分泌する。別の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり少なくとも約2500pg分泌する。別の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり少なくとも約2750pg分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり約1000pg分泌する。別の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり約2500pg分泌する。別の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり約2750pg分泌する。
一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり約250~約10000pg、好ましくは約500~約5000pg/106個、より好ましくは約1000~約4000pg/106個分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを細胞106個当たり約250~約5000pg、好ましくは約500~約4500pg/106個、より好ましくは約750~約4000pg/106個分泌する。好ましい実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを約1000~約3500pg/106個の範囲の濃度で分泌する。特定の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを約1000または1200pg/106個の濃度で分泌する。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを約3000または3500pg/106個の濃度で分泌する。
一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり少なくとも約5ng、好ましくは少なくとも約10ng/g、より好ましくは少なくとも約15ng/g分泌する。別の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり少なくとも約20ng、好ましくは少なくとも約25ng/g、より好ましくは少なくとも約30ng/g分泌する。
一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり少なくとも約35ng、40ngまたは45ng分泌する。別の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり少なくとも約50ng、好ましくは少なくとも約60ng/g、より好ましくは少なくとも約70ng/g分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり少なくとも約75ng分泌する。別の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり少なくとも約80ng、85ng、90ng、95ngまたは100ng分泌する。
一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり約5~約200ng、好ましくは約10~約175ng/g、より好ましくは約15~約150ng/g分泌する。別の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり約5~約150ng、好ましくは約5~約140ng/g、より好ましくは約5~約120ng/g分泌する。別の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり約10~約150ng、好ましくは約10~約140ng/g、より好ましくは約10~約120ng/g分泌する。別の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり約15~約150ng、好ましくは約15~約140ng/g、より好ましくは約15~約120ng/g分泌する。別の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり約30~約150ng、好ましくは約30~約140ng/g、より好ましくは約30~約120ng/g分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり約5~約100ng、約10~約100ng/g、約15~約100ng/g、約20~約100ng/g、約25~約100ng/gまたは約30~約100ng/g分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり約5~約90ng、約10~約90ng/g、約15~約90ng/g、約20~約90ng/g、約25~約90ng/gまたは約30~約90ng/g分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを生体材料1g当たり約5~約85ng、約10~約85ng/g、約15~約85ng/g、約20~約85ng/g、約25~約85ng/gまたは約30~約85ng/g分泌する。一実施形態では、本発明の生体材料は、約15~約30ng/g生体材料、分泌する。
特定の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを約15ng/g生体材料の濃度で分泌する。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを約30ng/g生体材料の濃度で分泌する。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを約75ng/g生体材料の濃度で分泌する。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを約85ng/g生体材料の濃度で分泌する。
一実施形態では、本発明の生体材料は、生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、OPGを本明細書で上に記載した濃度で分泌する。換言すれば、一実施形態では、本発明の生体材料は、多次元誘導の開始から4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、OPGを本明細書で上に記載した濃度で分泌する。
一実施形態では、好ましくは生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後、本発明の生体材料のRANKLの含有量および/または分泌を当該技術分野で公知の任意の方法により、例えばELISAなどにより定量化し得る。
一実施形態では、培地中での本発明の生体材料中または生体材料の上清中のRANKLのレベルは検出不可能なものである。一実施形態では、本発明の生体材料が1mL当たり200pg未満、好ましくは156pg/mL未満、好ましくは100pg/mL未満、より好ましくは78pg/mL未満、さらにより好ましくは50pg/mL未満、さらにより好ましくは10pg/mL未満、さらにより好ましくは7.8pg/mL未満のRANKLを含むか、生体材料のASCがこれを分泌する。
一実施形態では、本発明の生体材料は実質的にRANKLを含まない。一実施形態では、本発明の生体材料のASCは実質的にRANKLを分泌しない。
一実施形態では、本発明の生体材料は、生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、RANKLを本明細書で上に記載した濃度で分泌する。換言すれば、一実施形態では、本発明の生体材料は、多次元誘導の開始から4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、RANKLを本明細書で上に記載した濃度で分泌する。
一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを分泌し、かつRANKLを分泌しないか、検出可能なレベルのRANKLを分泌しない。
一実施形態では、本発明の生体材料は、OPGを少なくとも本明細書で上に記載した濃度で分泌し、かつRANKLを最大でも本明細書で上に記載した濃度で分泌する。
一実施形態では、本発明の生体材料は血管内皮成長因子(VEGF)を含む。特定の実施形態では、本発明の生体材料は高レベルのVEGFを含む。
一実施形態では、好ましくは生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後、本発明の生体材料のVEGF含有量を当該技術分野で公知の任意の方法により、例えばELISAなどにより定量化し得る。
一実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを少なくとも約10ng/g生体材料、好ましくは少なくとも約20ng/g、より好ましくは少なくとも約30ng/gの濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを少なくとも約50ng/g生体材料、好ましくは少なくとも約60ng/g、より好ましくは少なくとも約70ng/gの濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを少なくとも約100ng/g生体材料、好ましくは少なくとも約125ng/g、より好ましくは少なくとも約150ng/gの濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを約10ng/g~約250ng/g生体材料、好ましくは約20ng/g~約225ng/g、より好ましくは約30ng/g~約200ng/gの範囲の濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを約10ng/g~約50ng/g生体材料、好ましくは約15ng/g~約45ng/g、より好ましくは約20ng/g~約40ng/gの範囲の濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを約50ng/g~約150ng/g生体材料、好ましくは約60ng/g~約125ng/g、より好ましくは約70ng/g~約100ng/gの範囲の濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを約100ng/g~約250ng/g生体材料、好ましくは約120ng/g~約225ng/g、より好ましくは約140ng/g~約200ng/gの範囲の濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを約35ng/g生体材料の濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを約75ng/g生体材料の濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを約95ng/g生体材料の濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを約135ng/g生体材料の濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、VEGFを約190ng/g生体材料の濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、VEGFを本明細書で上に記載した濃度で含む。換言すれば、一実施形態では、本発明の生体材料は、多次元誘導の開始から4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、VEGFを本明細書で上に記載した濃度で含む。
インスリン様成長因子(IGF-1)は、骨ミネラル密度の維持およびのちの骨折リスクを低下させる高いピーク骨量の獲得と正の相関がある。
一実施形態では、好ましくは生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後、本発明の生体材料のIGF-1含有量を当該技術分野で公知の任意の方法により、例えばELISAなどにより定量化し得る。
一実施形態では、本発明の生体材料はIGF-1を含む。特定の実施形態では、本発明の生体材料は高レベルのIGF-1を含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を少なくとも約5ng/g生体材料、好ましくは少なくとも約10ng/g、より好ましくは少なくとも約15ng/g、さらにより好ましくは少なくとも約20ng/gの濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を少なくとも約10ng/g生体材料、11ng/g生体材料、12ng/g生体材料、13ng/g生体材料、14ng/g生体材料、15ng/g生体材料、16ng/g生体材料、17ng/g生体材料、18ng/g生体材料、19ng/g生体材料または20ng/g生体材料の濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を少なくとも約50ng/g生体材料、好ましくは少なくとも約60ng/g、より好ましくは少なくとも約70ng/g、さらにより好ましくは少なくとも約80ng/gの濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を少なくとも約90ng/g生体材料、91ng/g生体材料、92ng/g生体材料、93ng/g生体材料、94ng/g生体材料、95ng/g生体材料、96ng/g生体材料、97ng/g生体材料、98ng/g生体材料、99ng/g生体材料または100ng/g生体材料の濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を約5ng/g~約500ng/g生体材料、好ましくは約10ng/g~約400ng/g、より好ましくは約15ng/g~約300ng/gの範囲の濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を約5ng/g~約200ng/g生体材料、好ましくは約10ng/g~約150ng/g、より好ましくは約15ng/g~約125ng/gの範囲の濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を約5ng/g、10ng/g、15ng/gまたは20ng/g~約150ng/g生体材料の範囲の濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を約5ng/g、10ng/g、15ng/gまたは20ng/g~約125ng/g生体材料の範囲の濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を約5ng/g、10ng/g、15ng/gまたは20ng/g~約100ng/g生体材料の範囲の濃度で含む。特定の実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を約20ng/g~約100ng/g生体材料の範囲の濃度で含む。
別の実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を約50ng/g~約150ng/g生体材料、好ましくは約70ng/g~約125ng/g、より好ましくは約80ng/g~約110ng/g、さらにより好ましくは約85ng/g~約100ng/gまたは約90ng/g~約100ng/gの範囲の濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を生体材料1g当たり約20ng含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を約90ng/g生体材料、91ng/g生体材料、92ng/g生体材料、93ng/g生体材料、94ng/g生体材料、95ng/g生体材料、96ng/g生体材料、97ng/g生体材料、98ng/g生体材料、99ng/g生体材料または100ng/g生体材料の濃度で含む。特定の実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を生体材料1g当たり約90ng含む。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を生体材料1g当たり約95ng含む。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料は、IGF-1を生体材料1g当たり約100ng含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、IGF-1を本明細書で上に記載した濃度で含む。換言すれば、一実施形態では、本発明の生体材料は、多次元誘導の開始から4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、IGF-1を本明細書で上に記載した濃度で含む。
間質細胞由来因子1アルファまたはCXCL12とも呼ばれるSDF-1αは、破骨細胞の分化および活性化を刺激する役割を果たす。破骨細胞、特に破骨細胞前駆体は、SDF-1αに対する固有の受容体であるCXCR4に対して強い陽性を示す。SDF-1αは破骨細胞形成を直接誘導するが、最近、SDF-1αがRANKL発現のアップレギュレーションを介して間接的に破骨細胞形成に影響を及ぼし得ることがわかった。破骨細胞およびその前駆体上にRANKが存在することから、間質細胞上に存在する破骨細胞分化因子がRANKLである可能性が示唆された。
一実施形態では、好ましくは生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後、本発明の生体材料のSDF-1α含有量を当該技術分野で公知の任意の方法により、例えばELISAなどにより定量化し得る。
一実施形態では、本発明の生体材料はSDF-1αを含む。特定の実施形態では、本発明の生体材料は低レベルのSDF-1αを含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを最大約1000ng/g生体材料、好ましくは最大約750ng/g、より好ましくは最大約500ng/g、さらにより好ましくは最大約400ng/gの濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを最大約300ng/g生体材料、好ましくは最大約275ng/g、より好ましくは最大約250ng/gの濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを最大約290ng/g生体材料、280ng/g生体材料、270ng/g生体材料、260ng/g生体材料または250ng/g生体材料の濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを最大約240ng/g生体材料、230ng/g生体材料、220ng/g生体材料、210ng/g生体材料または200ng/g生体材料の濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを最大約100ng/g生体材料、好ましくは最大約75ng/g、より好ましくは最大約50ng/gの濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを最大約70ng/g生体材料、65ng/g生体材料、60ng/g生体材料、59ng/g生体材料、58ng/g生体材料、57ng/g生体材料、56ng/g生体材料、55ng/g生体材料、54ng/g生体材料、53ng/g生体材料、52ng/g生体材料または51ng/g生体材料の濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを最大約49ng/g生体材料、48ng/g生体材料、47ng/g生体材料、46ng/g生体材料、45ng/g生体材料、44ng/g生体材料、43ng/g生体材料、42ng/g生体材料または41ng/g生体材料の濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを最大約40ng/g生体材料の濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを最大約39ng/g生体材料、38ng/g生体材料、37ng/g生体材料、36ng/g生体材料、35ng/g生体材料、34ng/g生体材料、33ng/g生体材料、32ng/g生体材料または31ng/g生体材料の濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを最大約30ng/g生体材料の濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを約5ng/g~約1000ng/g生体材料、好ましくは約15ng/g~約750ng/g、より好ましくは約20ng/g~約500ng/gの範囲の濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを約5ng/g~約300ng/g生体材料、好ましくは約15ng/g~約275ng/g、より好ましくは約20ng/g~約250ng/gの範囲の濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを約25ng/g~約250ng/g生体材料、より好ましくは約30ng/g~約250ng/gの範囲の濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを約100ng/g~約400ng/g生体材料、好ましくは約150ng/g~約350ng/g、より好ましくは約200ng/g~約300ng/gの範囲の濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを約5ng/g~約100ng/g生体材料、好ましくは約15ng/g~約75ng/g、より好ましくは約25ng/g~約60ng/gの範囲の濃度で含む。一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを約30ng/g生体材料~約100ng/g、好ましくは約30ng/g~約75ng/g、より好ましくは約30ng/g~約50ng/gの範囲の濃度で含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを約30ng/g生体材料~約40ng/gの範囲の濃度で含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを生体材料1g当たり約250ng含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを生体材料1g当たり約30ng含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを生体材料1g当たり約40ng含む。別の実施形態では、本発明の生体材料は、SDF-1αを生体材料1g当たり約50ng含む。
一実施形態では、本発明の生体材料は、生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、SDF-1αを本明細書で上に記載した濃度で含む。換言すれば、一実施形態では、本発明の生体材料は、多次元誘導の開始から4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、SDF-1αを本明細書で上に記載した濃度で含む。
骨形成タンパク質2またはBMP2は、骨の発達の刺激に重要な役割を果たす。例えば、BMP2は骨芽細胞分化を強力に誘導することが示されている。
骨形成タンパク質7またはBMP7は、具体的には、次に多数の骨原性遺伝子の発現を誘導するSMAD1およびSMAD5のリン酸化を誘導することによって、間葉細胞の骨へ転換に鍵となる役割を果たす。
一実施形態では、好ましくは生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後、本発明の生体材料のBMP2およびBMP7の含有量を当該技術分野で公知の任意の方法により、例えばELISAなどにより定量化し得る。
一実施形態では、培地中での本発明の生体材料中または生体材料の上清中のBMP2のレベルは検出不可能なものである。一実施形態では、本発明の生体材料は実質的にBMP2を含まない。一実施形態では、本発明の生体材料のASCは実質的にBMP2を分泌しない。
一実施形態では、本発明の生体材料が1mL当たり100pg未満、好ましくは85pg/mL未満、より好ましくは75pg/mL未満、さらにより好ましくは62.5pg/mL未満のBMP2を含むか、生体材料のASCがこれを分泌する。
一実施形態では、培地中の本発明の生体材料中または生体材料の上清中のBMP7のレベルは検出不可能なものである。一実施形態では、本発明の生体材料は実質的にBMP7を含まない。一実施形態では、本発明の生体材料のASCは実質的にBMP7を分泌しない。
一実施形態では、本発明の生体材料が1mL当たり50pg未満、好ましくは40pg/mL未満、より好ましくは35pg/mL未満、さらにより好ましくは31.2pg/mL未満のBMP7を含むか、生体材料のASCがこれを分泌する。
一実施形態では、本発明の生体材料は、生体適合材料を加えてから4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、BMP2および/またはBMP7を本明細書で上に記載した濃度で含む。換言すれば、一実施形態では、本発明の生体材料は、多次元誘導の開始から4週間後、5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、BMP2および/またはBMP7を本明細書で上に記載した濃度で含む。
一実施形態では、本発明による生体材料はミネラル化されている。本明細書で使用される「ミネラル化」または「骨組織ミネラル密度」という用語は、生体材料によって形成された骨または「骨様」組織の1平方センチメートル当たりのミネラル物質の量を指し、百分率で表されることもある。したがって、本明細書で使用される「ミネラル化」または「骨組織ミネラル密度」という用語は、生体材料の1平方センチメートル当たりのミネラル物質の量を指し、百分率で表されることもある。
生体材料のミネラル化度を評価する方法は当該技術分野で公知である。このような方法の例としては、特に限定されないが、マイクロコンピュータ断層撮影法(マイクロCT)解析、イメージング質量分析、カルセインブルー染色、骨ミネラル密度分布(BMDD)解析などが挙げられる。
一実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は約1%以上である。
別の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、少なくとも約1%、好ましくは少なくとも約2%、より好ましくは少なくとも約5%である。
別の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約20%、さらにより好ましくは少なくとも約25%である。一実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、少なくとも約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%または38%である。
一実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、約1%~約50%、好ましくは約1%~約45%、より好ましくは約1%~約40%の範囲内にある。別の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、約5%~約50%、好ましくは約10%~約45%、より好ましくは約20%~約40%の範囲内にある。一実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、約30%~約50%、好ましくは約35%~約50%、より好ましくは約35%~約45%、さらにより好ましくは約35%~約40%の範囲内にある。
別の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、約1%~約30%、好ましくは約1%~約20%、より好ましくは約1%~約10%の範囲内にある。別の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、約1%~約5%の範囲内にある。
別の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、少なくとも1%または1.24%である。別の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、少なくとも2%、2.5%または2.77%である。別の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、約1%または1.24%である。別の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は、約2%、2.5%または2.77%である。
1つの特定の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は約2%である。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は約20%である。別の特定の実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度は約38%である。
一実施形態では、本発明の生体材料のミネラル化度はOPG分泌に比例する。一実施形態では、生体材料がOPGを多く含むほど、生体材料がミネラル化されている。
本発明は、骨原性細胞に分化した脂肪組織由来幹細胞(ASC)と、生体適合材料と、細胞外基質とを含み、生体材料がオステオプロテジェリン(OPG)を含む、多次元生体材料を作製する方法にも関する。
一実施形態では、本発明による生体材料を作製する方法は、
細胞増殖の段階と、
細胞分化の段階と、
多次元誘導の段階と
を含む。
一実施形態では、本発明による生体材料を作製する方法は、
ASC増殖の段階と、
ASCの骨原性分化の段階と、
多次元誘導、好ましくは3D誘導の段階と
を含む。
一実施形態では、本発明による生体材料を作製する方法は、
対象から細胞、好ましくはASCを単離する段階と、
細胞、好ましくはASCを増殖させる段階と、
増殖した細胞、好ましくは増殖したASCを分化させる段階と、
分化細胞、好ましくは分化したASCを生体適合材料の存在下で培養する段階と
を含む。
一実施形態では、本発明の生体材料を作製する方法は、細胞増殖の段階の前に実施する、細胞、好ましくはASCの単離の段階をさらに含む。一実施形態では、本発明の生体材料を作製する方法は、細胞増殖の段階の前に実施する、細胞、好ましくはASCを単離する段階をさらに含む。
一実施形態では、増殖の段階を本明細書で上に記載した通りに実施する。一実施形態では、増殖の段階を増殖培地で実施する。特定の実施形態では、増殖培地はDMEMである。一実施形態では、増殖培地にAla-Glnおよび/またはヒト血小板溶解物(hPL)を添加する。一実施形態では、増殖培地は、ペニシリンおよび/またはストレプトマイシンなどの抗生物質をさらに含む。
一実施形態では、増殖培地は、Ala-GlnおよびhPL(5%)を添加したDMEMを含むか、これよりなるものである。一実施形態では、増殖培地は、Ala-Gln、hPL(5%、v/v)、ペニシリン(100U/mL)およびストレプトマイシン(100μg/mL)を添加したDMEMを含むか、これよりなるものである。
一実施形態では、増殖の段階をP8まで実施する。一実施形態では、増殖の段階がP4、P5、P6、P7またはP8まで継続する。したがって、一実施形態では、細胞増殖の段階は少なくとも3継代を含む。一実施形態では、細胞増殖の段階は最大7継代を含む。一実施形態では、細胞増殖の段階は3~7継代を含む。1つの特定の実施形態では、増殖の段階をP4まで実施する。したがって、一実施形態では、細胞増殖の段階は、継代P1、P2およびP3で、培養容器の表面から細胞を剥離し、次いで、それを増殖培地で希釈することを含む。P6までの増殖の一実施形態では、細胞増殖の段階は、継代P1、P2、P3、P4およびP5で、培養容器の表面から細胞を剥離し、次いで、それを増殖培地で希釈することを含む。
一実施形態では、増殖の段階は、細胞を3回、4回、5回、6回または7回継代するのに必要な長さだけ継続する。特定の実施形態では、増殖の段階は、細胞を3回継代するのに必要な長さだけ継続する。一実施形態では、増殖の段階は、最後の継代後に細胞がコンフルエンス、好ましくは70%~100%のコンフルエンス、より好ましくは80%~95%のコンフルエンスに達するまで継続する。一実施形態では、増殖の段階は、第3継代、第4継代、第5継代、第6継代または第7継代後に細胞がコンフルエンスに達するまで継続する。
有利な実施形態では、生体適合性粒子を加える前に、細胞、好ましくはASCを分化培地で培養することが、本発明の方法の鍵となる段階である。このような段階は、ASCを骨原性細胞に分化させるのに必要なものである。さらに、この段階は、多次元構造を得るのに必要なものである。
一実施形態では、P4、P5、P6、P7またはP8の後に分化の段階を実施する。一実施形態では、細胞がコンフルエンスでないときに分化の段階を実施する。特定の実施形態では、P4、P5、P6、P7またはP8の後、細胞をコンフルエンスまで培養せずに分化の段階を実施する。
一実施形態では、P4、P5、P6、P7またはP8で分化の段階を実施する。一実施形態では、細胞がコンフルエンスでないときに分化の段階を実施する。特定の実施形態では、P4、P5、P6、P7またはP8で、細胞をコンフルエンスまで培養せずに分化の段階を実施する。
一実施形態では、細胞を分化培地、好ましくは骨原性分化培地でインキュベートすることによって、分化の段階を実施する。一実施形態では、培養容器の表面から剥離した細胞を分化培地、好ましくは骨原性分化培地に再懸濁させることによって、分化の段階を実施する。
一実施形態では、骨原性分化培地でのASCのインキュベーションを少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間、より好ましくは少なくとも10日間、より好ましくは少なくとも15日間実施する。一実施形態では、骨原性分化培地でのASCのインキュベーションを5~30日間、好ましくは10~25日間、より好ましくは15~20日間実施する。一実施形態では、分化培地を2日毎に交換する。
一実施形態では、本明細書で上に明記した生体適合材料を分化培地に加えることによって、多次元誘導、好ましくは3D誘導の段階を実施する。一実施形態では、多次元誘導、好ましくは3D誘導の段階において、細胞を分化培地で維持する。
一実施形態では、細胞が分化培地でコンフルエンス、好ましくは70%~100%のコンフルエンス、より好ましくは80%~95%のコンフルエンスに達したとき、多次元誘導、好ましくは3D誘導の段階を実施する。
別の実施形態では、形態学的変化、例えば小結節の前形成などがみられたとき、多次元誘導、好ましくは3D誘導の段階を実施する。一実施形態では、類骨小結節が少なくとも1つ形成されたとき、多次元誘導、好ましくは3D誘導の段階を実施する。本明細書で使用される「類骨」という用語は、骨組織成熟の前に形成される骨基質の非ミネラル化有機部分を意味する。
別の実施形態では、細胞がコンフルエンスに達したとき、形態学的変化がみられたとき、および類骨小結節が少なくとも1つ形成されたとき、多次元誘導、好ましくは3D誘導の段階を実施する。
一実施形態では、本発明の細胞および生体適合材料を少なくとも5日間、好ましくは少なくとも10日間、より好ましくは少なくとも15日間インキュベートする。一実施形態では、本発明の細胞および生体適合材料を10日間~30日間、好ましくは15~25日間、より好ましくは20日間インキュベートする。一実施形態では、多次元誘導、好ましくは3D誘導の段階において、培地を2日毎に交換する。
本発明は、本発明による方法によって入手可能な多次元生体材料にも関する。一実施形態では、多次元生体材料を本発明による方法によって得る。一実施形態では、多次元生体材料を本発明による方法によって作製する。一実施形態では、本発明の方法によって入手可能な、または得られる生体材料は、ヒトまたは動物の体内に移植することを意図するものである。一実施形態では、移植する生体材料は、自家起源または同種異系のものであり得る。一実施形態では、本発明の生体材料を骨または軟骨の領域に移植し得る。一実施形態では、この生体材料をヒトまたは動物身体の不規則な形の領域に移植し得る。
一実施形態では、本発明の生体材料は均質なものであり、このことは、生体材料の構造および/または構成が組織全体を通じてほぼ同じであることを意味する。一実施形態では、生体材料は、天然の疾患領域への移植に必要な望ましい取扱適性および機械的特性を有する。一実施形態では、本発明の方法によって入手可能な、または得られる生体材料は、裂けることなく手術器具で持つことができるものである。
本発明の別の目的は、本発明による生体材料を含む医療装置である。
また別の目的は、本発明による生体材料と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物である。
本発明は、薬物として使用する、本発明による生体材料または医薬組成物にも関する。
本発明は、本発明の生体材料の医療装置としての、または医療装置もしくは医薬組成物に含める、任意の使用に関する。ある特定の実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、使用前に操作および成形し得るパテ様材料である。
本発明はさらに、必要とする対象の骨欠損または軟骨欠損を治療する方法であって、対象に治療有効量の本発明による生体材料、医療装置または医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。
本明細書で使用される「骨欠損」という用語は、通常であれば骨であるべきである身体領域または骨組織の形成が治療上望まれる身体領域に骨組織がないことを意味する。
本明細書で使用される「軟骨欠損」という用語は、通常であれば軟骨であるべきである身体領域または軟骨組織の形成が治療上望まれる身体領域に軟骨組織がないことを意味する。
本発明の別の目的は、必要とする対象の骨欠損または軟骨欠損の治療に使用する、本発明による生体材料、医療装置または医薬組成物である。本発明のまた別の目的は、必要とする対象の骨欠損の治療への本発明による生体材料、医療装置または医薬組成物の使用である。
骨欠損の例としては、特に限定されないが、骨折、骨脆弱、骨ミネラル密度の低下、関節炎、先天性偽関節などの偽関節、骨粗鬆症、脊椎分離症、脊椎すべり症、骨軟化症、骨減少症、骨癌、パジェット病、硬化性病変、骨の浸潤性障害、二分脊椎症、遷延治癒、骨形成不全症、(例えば、腫瘍切除または出血後の)頭蓋欠損、骨壊死および代謝性骨喪失が挙げられる。
軟骨欠損の例としては、特に限定されないが、身体領域内の軟骨損傷または軟骨欠損が挙げられる。軟骨欠損の原因は、外傷、骨壊死、骨軟骨炎およびその他の病態によるものであり得る。軟骨欠損は、膝関節にもっともよくみられ、その場合、外傷を原因とし、前十字靭帯(ACL)断裂などの靭帯損傷に付随してみられることが多い。
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、骨折、骨脆弱、骨ミネラル密度の低下、関節炎、先天性偽関節などの偽関節、骨粗鬆症、脊椎分離症、脊椎すべり症、骨軟化症、骨減少症、骨癌、パジェット病、硬化性病変、骨の浸潤性障害、海綿骨および皮質骨の壊死、二分脊椎症、遷延治癒、骨形成不全症、(例えば、腫瘍切除または出血後の)頭蓋欠損、骨壊死および代謝性骨喪失を含むか、これよりなる群から選択される骨欠損を治療する、またはその治療に使用するものである。
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、骨折、関節炎、先天性偽関節、骨粗鬆症、脊椎分離症、脊椎すべり症、骨癌、パジェット病、硬化性病変および代謝性骨喪失を含むか、これよりなる群から選択される骨欠損を治療する、またはその治療に使用するものである。
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、脊椎分離症および/または脊椎すべり症を治療する、またはその治療に使用するものである。脊椎分離症とは、椎弓の関節突起間部にみられる欠損または疲労骨折のことである。脊椎すべり症またはすべり症は、1つの椎骨が隣接する椎骨に対して並進移動する、または非解剖学的に整列することであり、脊椎分離症のある患者の約30%に認められる。
一実施形態では、脊椎すべり症は、異形成性、分離性、変性、外傷性、病的および/または術後/医原性脊椎すべり症である。一実施形態では、脊椎すべり症は、第5腰椎の上方仙骨椎間関節または下方椎間関節の先天性異常による異形成性脊椎すべり症(1型とも呼ばれる)である。別の実施形態では、脊椎すべり症は、関節突起間部の欠損を原因とする分離性脊椎すべり症(2型とも呼ばれる)であるが、伸長部とともにみられることもある。別の実施形態では、脊椎すべり症は、椎間関節炎および関節再構築によって起こる変性脊椎すべり症(3型とも呼ばれる)である。別の実施形態では、脊椎すべり症は、上記の部以外の神経弓の急性骨折によって起こる外傷性脊椎すべり症(4型とも呼ばれる)である。別の実施形態では、脊椎すべり症は、感染症または悪性腫瘍を原因とする病的脊椎すべり症(5型とも呼ばれる)である。別の実施形態では、脊椎すべり症は、術後合併症を原因とする術後/医原性脊椎すべり症(6型とも呼ばれる)である。
一実施形態では、脊椎すべり症は、マイヤーディング分類によるグレードI、グレードII、グレードIII、グレードIVまたはグレードVのものである。一実施形態では、脊椎すべり症は、椎体の幅に対する割合として測定されるすべり度0~25%に対応する、グレードIのものである。別の実施形態では、脊椎すべり症は、すべり度25%~50%に対応するグレードIIのものである。別の実施形態では、脊椎すべり症は、すべり度50%~75%に対応するグレードIIIのものである。別の実施形態では、脊椎すべり症は、すべり度75%~100%に対応するグレードIVのものである。別の実施形態では、脊椎すべり症は、すべり度100%超に対応するグレードVのものである。
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、必要とする対象の椎体間隙および/または移植する固定ケージ(1つまたは複数)を充填するものである。
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、先天性偽関節を治療する、またはその治療に使用するものである。特定の実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、先天性脛骨偽関節症(CPT)を治療する、またはその治療に使用するものである。CPTは、自発的に、または軽度の外傷の後に発症する脛骨骨折による偽関節を指し、脛骨には、骨の前外側湾曲を生じる部分的異形成の領域がみられる。CPTは通常、神経線維腫症を伴い、未だ小児整形外科が直面する最も厄介で恐ろしい病態の1つである。
この疾患は通常、生後1年以内の幼年期に明らかになるが、12歳まで発見されないこともある。
一実施形態では、CPTは、クロフォード分類によるI型、II型、III型またはIV型のものである。一実施形態では、CPTは、皮質密度の増大および髄質の狭小化を伴う前弯に対応するI型のものである。別の実施形態では、CPTは、髄質が狭小化し硬化した前弯に対応するII型のものである。別の実施形態では、CPTは、嚢胞または骨折の前兆を伴う前弯に対応するIII型のものである。別の実施形態では、CPTは、脛骨と腓骨を結ぶことが多い偽関節を伴う前弯および明白な骨折に対応する、IV型のものである。
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、小児患者の先天性脛骨偽関節症を治療する、またはその治療に使用するものである。一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物は、小児先天性脛骨偽関節症を治療する、またはその治療に使用するものである。
本発明は、整形外科、特に顎顔面外科手術または形成外科手術への本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物の使用にも関する。本発明の生体材料は、リウマチ学でも使用し得る。
本発明はさらに、先天性もしくは後天性の関節、頭蓋顔面顎骨の異常、歯科矯正障害、外科手術後の骨もしくは関節骨の障害(例えば、置換)、外傷またはその他の先天性もしくは後天性の異常を治療、是正または軽減するために、ならびに他の筋骨格移植片、具体的には人工移植片および合成移植片を補助するために、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物を使用する方法に関する。
別の態様では、本発明は、骨再建に使用する、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物に関する。一実施形態では、本発明の生体材料は、ヒトまたは動物の身体に対して骨空洞を充填するのに使用するものである。
さらに別の態様では、本発明は、再建手術または美容外科手術に使用する、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物に関する。
一実施形態では、本発明は、再建手術に使用する、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物に関する。別の実施形態では、本発明は、美容外科手術に使用する、本発明の生体材料に関する。
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物を同種異系移植片または自家移植片として使用し得る。一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物を異種移植片として使用し得る。一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物を組織移植に使用し得る。
本発明の生体材料はさらに、血管新生を刺激するのに有利である。実際、生体材料のASCは、新たな血管の成長を刺激する血管内皮成長因子(VEGF)を放出する。
一実施形態では、対象はヒト対象である。別の実施形態では、対象は動物対象、例えば、ペット、家畜または生産動物などである。一実施形態では、対象は哺乳動物対象である。
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物をヒトおよび/または動物に使用し得る。一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物をヒト医学および獣医学で使用し得る。
一実施形態では、対象は骨欠損および/または軟骨欠損に罹患している。
特定の実施形態では、対象は脊椎分離症および/または脊椎すべり症に罹患している。別の特定の実施形態では、対象は先天性脛骨偽関節症(CPT)に罹患している。特定の実施形態では、対象は小児先天性脛骨偽関節症(CPT)に罹患している。
一実施形態では、対象は、既に骨欠損および/または軟骨欠損の治療を受けている。
特定の実施形態では、対象は、既に脊椎分離症および/または脊椎すべり症の治療を受けている。脊椎分離症および/または脊椎すべり症の他の治療法の例としては、特に限定されないが、保存的治療、例えば固定具装着、活動制限、伸展運動、屈曲運動および深腹部強化など;ならびに外科手術、例えば脊椎固定および椎弓切除などが挙げられる。
別の特定の実施形態では、対象は、既にCPTの治療を受けている。CPTの他の治療の例としては、特に限定されないが、固定具装着および外科手術、例えば骨移植を伴う髄内釘固定、血管柄付き骨移植、イリザロフ法、誘導膜および海綿自家移植などが挙げられる。
一実施形態では、対象は、少なくとも1つの他の骨欠損および/または軟骨欠損治療に不応である。
一実施形態では、対象は乳児または小児である。したがって、一実施形態では、対象は小児対象である。一実施形態では、対象は18歳未満、好ましくは15歳未満、12歳未満または10歳未満である。
別の実施形態では、対象は成人である。したがって、一実施形態では、対象は18歳以上である。
一実施形態では、必要とする対象に骨欠損および/または軟骨欠損の処置、例えば脊椎固定処置などの過程で、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物を投与する。
一実施形態では、本発明の生体材料、医療装置または医薬組成物を創面清掃、1つもしくは2つの椎体間ケージの設置および両側椎弓根スクリュー固定ならびに/あるいはリハビリテーションとともに使用する。
本発明は、本発明による生体材料、医薬組成物または医療装置と、適切な固定手段とを含む、キットにも関する。適切な固定手段の例としては、特に限定されないが、外科用接着剤、組織接着剤または外科手術に使用し、生体適合性、無毒性であり、任意選択で生体吸収性である、任意の接着組成物が挙げられる。
DBMと間接的に接触させたL929細胞(5%FBSを添加したRPMI培地で培養したマウス線維芽細胞)の細胞生存率を未処理細胞と比較した百分率で示すヒストグラムである。
3種類の異なる濃度(1.5cm3、2.85cm3および5.91cm3)のHA/β-TCPと間接的に接触させたhASCの細胞生存率を未処理細胞と比較した百分率で示すヒストグラムである。
DBM(A)、HA/β-TCP(B)、HA(C)またはβ-TCP(D)を用いて形成した生体材料を肉眼的に見たものを示す一連の写真である。
DBM(A)またはHA/β-TCP(B)を用いて形成した生体材料の顕微鏡像を示す一連の写真である。
DBM(左)またはHA/β-TCP(右)を用いて形成した生体材料のヘマトキシリン-エオシン染色(A)、マッソンのトリクロム染色(B)、フォン・コッサ染色(C)およびオステオカルシン染色(D)を示す一連の写真である(ND:未決定)。
DBM(左)またはHA/β-TCP(右)を用いて形成した生体材料に関するマイクロCT解析を3種類の異なる縮尺(A、BおよびC)で示す一連の写真である。
DBM(左)またはHA/β-TCP(右)を用いて形成した生体材料のIGF1(暗灰色)、VEGF(明灰色)およびSDF-1(中灰色)の含有量を示すヒストグラムである。
MP培地およびMD培地の2D培養物中ならびにDBMを用いて形成した生体材料の培養液中およびHA/β-TCPを用いて形成した生体材料中でのASCによるOPG分泌を細胞106個当たりのpg数で示すヒストグラムである。
2D培養MD培地中ならびにDBMを用いて形成した生体材料ならびにHA/β-TCP、HAおよびβ-TCPを用いて形成した生体材料の培養物中でのASCによるOPG分泌を材料1g当たりng数で示すヒストグラムである。
NVD-1(A)およびNVD-0(B)のヘマトキシリン-エオシン染色を示す一連の写真である。
HA/β-TCPを用いて形成した本発明の生体材料(生体材料)での遺伝子FGFR1(A)、IGFR1(B)、RUNX2(C)、TWIST1(D)、TGFBR1(E)、SMAD2(F)、SMAD4(G)、SMAD5(H)の発現をMP(MP)中およびMD(MD)中のASCと比較して示す一連のグラフである。*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001。
HA/β-TCPを用いて形成した本発明の生体材料(生体材料)での遺伝子ANG(A)、EFNA1(B)、EFNB2(C)、VEGFA(D)、FGF1(E)、LEP(F)の発現をMP(MP)中およびMD(MD)中のASCと比較して示す一連のグラフである。*:p<0.05、**:p<0.01。
HA/β-TCPを用いて形成した本発明の生体材料(生体材料)の低酸素状態(1%)または酸素正常状態(21%)でのVEGF(A)およびSDF-1α(B)分泌をMP(MP)中およびMD(MD)中のASCと比較して示す一連のヒストグラムである。
本発明の生体材料の外植片のフォン・ヴィルブランド因子に対する免疫染色を示す写真である。HA/β-TCP粒子が記号*によって示されており、血管が黒矢印によって示されている。
本発明の生体材料の血管面積の百分率(A)および血管数/mm2(B)を示す一連のヒストグラムである。
ラットに移植後第28日の本発明の生体材料におけるHLA/ヒト白血球抗原免疫染色のペルオキシダーゼ顕色によって褐色で示されたヒト細胞の存在(図中、黒矢印によって示されている)を示す写真である。HA/β-TCP粒子が記号*によって示されている。
本発明の生体材料(左上および左下)およびHA/β-TCP粒子単独(右上および右下)をラットに移植してから1か月後の大腿骨のマイクロCTスキャンを示す一連の写真である。下の写真は上の写真を拡大したものである。点線の四角形は移植部位を示している。
HA/β-TCP粒子の移植から1か月後の骨欠損の組織学的検査を示す一連の写真である:ヘマトキシリン-エオシン染色、元の倍率5倍(A);マッソン・トリクロム染色、元の倍率20倍(B)。白矢印は、製品が統合されておらず、重大な線維症があることを示している。黒矢印は、天然の骨とHA/β-TCPの移植片との間の境界にある欠損に軟骨内骨化がみられないことを示している。
本発明の生体材料の移植から1か月後の骨欠損の組織学的検査を示す一連の写真である:ヘマトキシリン-エオシン染色、元の倍率5倍(A);マッソン・トリクロム染色、元の倍率20倍(B);HLA-I免疫染色、元の倍率10倍(C)。白矢印は、製品の統合および骨融合を示している。黒矢印は、骨統合過程を示す、天然の骨と生体材料との間に直接接する軟骨内骨化を示している。
骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher G)とASCで形成された培養2.5週間後(A)および培養7.5週間後(B)の生体材料を肉眼的に見たものを示す一連の写真である。
骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher G)とASCで形成された培養7.5週間後の生体材料のヘマトキシリン-エオシン染色を示す一連の写真である。元の倍率5倍(A)、拡大10倍(B)。
骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher G)とASCで形成された培養7.5週間後の生体材料のフォン・コッサ染色を示す一連の写真である。元の倍率5倍(A)、拡大10倍(B)。
骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher G)とASCで形成された培養7.5週間後の生体材料のオステオカルシン発現を示す一連の写真である。元の倍率5倍(A)、拡大10倍(B)。
骨分化培地中でASCとCultipher Gで形成された本発明の生体材料(生体材料)での遺伝子ANG(A)、ANGPT1(B)、EPHB4(C)、EDN1(D)、THBS1(E)、PTGS1(F)、LEP(G)、VEGFA(H)、VEGFB(I)、VEGFC(J)、ID1(K)およびTIMP1(L)の発現をMP(MP)中のASCと比較して示す一連の写真である。*:p<0.05。
骨分化培地中でASCとCultipher Gで形成された様々な成熟レベル、すなわち、4週間(A)、8週間(B)、12週間(C)および25週間(D)の本発明の生体材料を示す一連の写真である。透明で示される3D基質の中にミネラル化が黄色で示されている。
骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher GまたはS)とASCで形成された培養7.5週間後の生体材料のヌードラットに移植後第29日の「移植片部位」のX線撮影の写真である。
骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher GまたはS)とASCで形成された培養7.5週間後の生体材料のWistarラット移植後第29日の「移植片部位」のX線撮影の写真である。
骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher GまたはS)とASCで形成された培養7.5週間後の生体材料のフォン・コッサ染色を示す写真である。
骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher S)とASCで形成された培養7.5週間後の生体材料のヘマトキシリン-エオシン染色を示す写真である。
骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher S)とASCで形成された培養7.5週間後の生体材料をヌードラットに移植してから29日後のフォン・コッサ染色を示す写真である。
骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher GまたはS)とASCで形成された培養7.5週間後の生体材料(A)および粒子単独で形成された生体材料(B)のヌードラットに移植後第29日の「移植片部位」のX線撮影を示す一連の写真である。
移植を実施していないラット(A)、Cultispher S粒子単独を移植した後のラット(B)および骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher S)とASCで形成された培養8週間後の生体材料を移植したラット(C)の第0日(D0)、第15日(D15)、第23日(D23)および第34日(D34)の下肢の創傷治癒を示す一連の写真である。
未治療(偽治療)の非虚血性下肢またはCultispher S粒子単独(Cultispher)もしくは骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher S)とASCで形成された培養8週間後の生体材料(生体材料)で治療した非虚血性下肢の創傷サイズの曲線下面積(AUC)を、100%に固定した偽治療と比較して評価したものを示す、ヒストグラムである。
Cultispher S粒子単独(四角)もしくは骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher S)とASCで形成された培養8週間後の生体材料(丸)で治療した後または未治療(偽治療、三角)の第0~第34日の創傷面積を百分率で示すグラフである。
Cultispher S粒子単独(点付きのヒストグラム)もしくは骨分化培地中でブタゼラチン(Cultispher S)とASCで形成された培養8週間後の生体材料で治療した後(黒いヒストグラム)または未治療(偽治療、縞模様のヒストグラム)の第1日、第5日、第15日および第34日の非虚血性下肢の中心部の上皮スコア(A)、非虚血性下肢の辺縁部の上皮スコア(B)、非虚血性下肢の中心部の真皮スコア(C)および非虚血性下肢の辺縁部の真皮スコア(D)を示す一連のヒストグラムである。
(実施例)
以下の実施例により本発明をさらに説明する。
実施例1:本発明の生体材料の作製
hASCの単離
インフォームドコンセントおよび血清学的スクリーニングの後、コールマン法による腹部領域の脂肪吸引によってヒト皮下脂肪組織を回収した。
入ってくる脂肪組織から迅速にヒト脂肪由来幹細胞(hASC)を単離した。脂肪吸引組織は、+4℃で24時間、または-80℃でさらに長期間保管することができる。
最初に、品質管理の目的で脂肪吸引組織の一部を単離し、残りの脂肪吸引組織の体積を測定した。次いで、脂肪吸引組織をHBSSで(最終濃度約8U/mLに)調製したコラゲナーゼ溶液(NB 1、Serva Electrophoresis社、ハイデルベルク、ドイツ)により消化した。消化に使用した酵素溶液の体積は、脂肪組織の体積の2倍とした。消化を37℃±1℃で50~70分間にわたって実施した。15~25分後、1回目の断続的振盪を実施し、35~45分後、2回目の断続的振盪を実施した。MP培地(増殖培地または成長培地)の添加により消化を停止させた。MP培地は、5%ヒト血小板溶解物(hPL)(v/v)を添加したDMEM培地(4.5g/Lグルコースおよび4mM Ala-Gln;Sartorius Stedim Biotech社、ゲッティンゲン、ドイツ)を含むものとした。DMEMは、塩、アミノ酸、ビタミン、ピルビン酸塩およびグルコースを含有し、炭酸塩緩衝剤で緩衝した標準培地であり、生理的pH(7.2~7.4)を示す。使用したDMEMは、Ala-Glnを含有するものとした。ヒト血小板溶解物(hPL)は、間葉系幹細胞(hASCなど)のin vitroでの成長を刺激するのに用いる成長因子の豊富な供給源となる。
消化した脂肪組織を遠心分離(500g、10分、室温)し、上清を除去した。ペレット化した間質血管細胞群(SVF)をMP培地中に再懸濁させ、200~500μmメッシュのフィルターに通した。ろ過した細胞懸濁液をもう一度遠心分離した(500g、10分、20℃)。hASCを含有するペレットをMP培地中に再懸濁させた。細胞懸濁液のごく一部を細胞カウント用に取っておくことができ、残りの細胞懸濁液を全部用いて1つの75cm2Tフラスコに播種した(継代P0と呼ぶ)。播種した細胞の数を推定するため、(情報のみを目的として)細胞カウントを実施した。
単離段階の翌日(第1日)、75cm2Tフラスコから成長培地を除去した。細胞をリン酸塩緩衝液で3回すすぎ、次いで、新たに調製したMP培地をフラスコに加えた。
ヒト脂肪由来幹細胞の成長および拡大
工程ののちの諸段階に十分な量の細胞を得るため、増殖期にhASCを4回継代した(P1、P2、P3およびP4)。
P0から第4継代(P4)までの間、細胞をTフラスコで培養し、新鮮なMP培地を供給した。70%以上100%以下のコンフルエンス(目標コンフルエンス:80~90%)に達したとき、細胞を継代した。1つのバッチの全細胞培養レシピエントを同時に継代した。継代毎に、細胞を組換え動物不含細胞解離酵素であるTrypLE(Select 1X;75cm2フラスコに9mLまたは150cm2フラスコに12mL)で培養容器から剥離した。TrypLe消化は37℃±2℃で5~15分間実施し、MP培地の添加により停止させた。
次いで、細胞を遠心分離(500g、5分、室温)し、MP培地に再懸濁させた。均一な細胞懸濁液を確保するため、回収した細胞をプールした。再懸濁後、細胞をカウントした。
次いで、継代P1、P2およびP3で、残りの細胞懸濁液を適切な細胞密度までMP培地で希釈し、さらに大きい組織培養表面に播種した。これらの段階で、75cm2フラスコには体積15mLの細胞懸濁液を播種し、150cm2フラスコには体積30mLの細胞懸濁液を播種した。各継代で、細胞を0.5×104~0.8×104細胞/cm2で播種した。異なる継代間で、培地を3~4日毎に交換した。細胞の挙動および成長速度はドナーによってわずかに異なる可能性がある。このため、2継代間の期間および継代間の培地交換の回数はドナーによって異なるものとなり得る。
骨原性分化
継代P4(すなわち、第4継代)で、細胞をもう一度遠心分離し、MD培地(分化培地)に再懸濁させた。再懸濁後、細胞をもう一度カウントした後、適切な細胞密度までMD培地で希釈し、150cm2フラスコに体積70mLの細胞懸濁液を播種し、骨原性MD培地を供給した。第4継代の後は、この方法に従い、細胞を直接、骨原性MD培地で培養した。したがって、細胞がコンフルエンスに達していないうちに骨原性MD培地を加えた。
骨原性MD培地は、デキサメタゾン(1μM)、アスコルビン酸(0.25mM)およびリン酸ナトリウム(2.93mM)を添加した増殖培地(DMEM、Ala-Gln、hPL5%)からなるものとした。
細胞の挙動および成長速度がドナーによってわずかに異なる可能性がある。このため、骨原性分化段階の期間および継代間の培地交換の回数がドナーによって異なるものとなり得る。
細胞の多次元誘導
細胞がコンフルエンスに達したとき、形態学的変化がみられ、フラスコ内に類骨小結節(骨組織成熟の前に形成される骨基質の非ミネラル化有機部分)が少なくとも1つ観察された場合に3D誘導を開始した。
骨原性MD培地に曝露した後、付着骨原性細胞のコンフルエントな単層が含まれる培養容器に様々な生体適合材料:
DBM:150cm2フラスコに1000~1200mg±10%(RTI Surgical社、米国)、
HA/β-TCP粒子:150cm2フラスコに65/35の比で1.5cm3(Teknimed社、フランス)、
HA粒子:150cm2フラスコに1.5cm3(Biocetis社、フランス)または
β-TCP粒子:150cm2フラスコに1.5cm3(Biocetis社、フランス)
をゆっくりと均一に撒いた。
細胞をMD培地で維持した。多次元誘導の間、3~4日毎に定期的な培地交換を実施した。この培地交換は、生体適合材料粒子および発達中の構造物(1つまたは複数)が除去されないようにして慎重に実施した。
実施例2:生体材料の特徴付け
材料および方法
細胞毒性
L929細胞(マウス線維芽細胞、5%FBSを添加したRPMI培地で培養)で細胞毒性を評価した。次いで、トランスウェルインサート法を実施して細胞毒性を解析した。
この方法の目的は、細胞-材料間の間接的な接触(培地中での滲出可能な化学物質の拡散)の毒性を評価することであった。この方法では、hASC細胞およびL929細胞を2つの24ウェルプレートに8000細胞/cm2(1ウェル当たり15200個)で播種し、37℃で72時間インキュベートした。次いで、細胞がコンフルエンスに達したとき、培地を除去し、底部微小孔膜を含むトランスウェルインサートに生体適合材料:
6.6mg/cm2のDBM、
150cm2の容器に3種類の異なる量、すなわち、1.5cm3、2.85cm3および5.91cm3のHA/β-TCP、
150cm2の容器に1.5cm3のHA粒子または
150cm2の容器に1.5cm3のβ-TCP粒子
に負荷し、次いで個々のウェルに入れ、37℃/5%CO2で24時間インキュベートした。
インキュベーション後、増殖および細胞傷害性アッセイで生細胞数を定量化する「CCK-8キット」(Sigma社)を供給業者の指示通りに用いて、細胞生存率を評価した。簡潔に述べれば、培地を除去し、プレートの各ウェルに体積100μLのCCK-8溶液を加えた。混合物を37℃/5%CO2で2~4時間インキュベートした。複雑な細胞機序により、安定なテトラゾリウム塩が可溶性ホルマザン色素に切断される。この生体内還元は、生細胞内での解糖によるNAD(P)H生成に大きく依存する。したがって、形成されるホルマザン色素の量は、培養物中の代謝活性のある細胞の数と直接相関する。ホルマザン色素の量は、分光光度計プレートリーダーを用いて450nmでの吸光度(OD)を測定することにより評価する。
相対細胞生存率(%)を未処理対照細胞に対する百分率で表した。この値は以下のように求めた:
相対細胞生存率=(OD-ブランク)処理/(OD-ブランク)未処理×100
(OD-ブランク)未処理:陰性対照(未処理細胞)の(OD-ブランク)の平均値。
生体適合材料を撒いていない細胞を陰性対照(未処理細胞)として用いた。Triton 1%溶液で処理した細胞を陽性対照として用いた。
組織学的解析
生体適合性粒子の添加から4週間後および8週間後、MD培地中の構造物の生検試料を採取した。
構造/細胞充実度/細胞外基質の存在
ヘマトキシリン-エオシン染色およびマッソン・トリクロム染色を実施した後、組織の構造、細胞充実度および細胞外基質の存在を評価した。
骨分化およびミネラル化
組織の骨分化およびミネラル化をそれぞれオステオカルシン(1/200希釈のオステオカルシン抗体、参照ab13418、Abcam社)およびマイクロCTで評価した。
Skyscan 1172G(Bruker社)(Erwan Plougonven、ULg、リエージュ)を用いて取得を実施した。Bruker社のマイクロCTソフトウェアであるNRecon、v.1.6.10.1で再構築を実施した。調整後、約1700×1700×700ボクセル(3Dピクセル)の3D画像を再構築した。上記の解像度で、1ボクセルの体積は985μm3であった。減衰領域の体積および厚さの平均測定値を総体積の%で記録した。減衰領域はミネラル化領域と一致した。
成長因子含有量
形成された組織の生物活性を評価するため、生体適合性粒子の添加から4週間後および8週間後、タンパク質の抽出および定量化に生検試料を採取した。比色分析(BCA Protein Assay Kit、ThermoFisher Scientific社)およびBMP2、BMP7、VEGF、SDF1α、IGF1に関するELISA(Human Quantikine ELISAキット、RD Systems社)により、供給業者の指示通りに総タンパク質および成長因子含有量を定量化した。
破骨細胞活性
無hPL条件で72時間培養した後、(MD培地またはMP培地での)培養物のASCおよび(DBMまたはHA/βTCPの添加により約8週間にわたって誘導した)多次元培養物のASCの上清を回収し、のちの定量化にそのまま-20℃で直接保管した。生体適合性粒子単独のタンパク質も抽出して、OPGおよびRANKLのレベルを定量化した。
ELISAキット(Human TNFSF11/RANKL/TRANCE ELISAキット;Human Osteoprotegerin ELISAキット;LS Bio社)を供給業者の指示通りに用いてOPGおよびRANKLを定量化した。
結果
細胞毒性
DBMに細胞毒性は検出されなかった。トランスウェルインサート法を用いて細胞をDBMと24時間培養したところ、細胞生存率の百分率の増加さえ認められた(170.3%まで、図1)。
低濃度(10mg/cm2)では、hASCとHA/β-TCP粒子との間接的な接触によって細胞生存率が改善した(細胞単独と比較して111.1%の細胞生存率)。これとは対照的に、19mg/cm2および39.4mg/cm2の濃度では、細胞生存率がそれぞれ10%および52.3%に低下した(図2)。
組織学的解析
生体適合性粒子との4週間または8週間のインキュベーション後、構造物間に有意差は認められなかった。
構造/細胞充実度/細胞外基質の存在
生体適合材料添加の数日後、骨原性細胞および分散した生体適合材料粒子がミネラル化細胞外基質の中に徐々に閉じ込められていった。
数日後、骨原性細胞および生体適合材料粒子が、一部ミネラル化した黄褐色の成形可能なパテの大きな三次元パッチ(または少数のこれより小さいパッチ)を形成し、各培養容器から剥離し始めた。約15日後には、多次元生体材料が発達し、フラスコから剥離し得る。
hASCと様々な粒子(DBM、HA/β-TCP、HAおよびβ-TCP)のいずれかとを骨原性分化培地で共培養したところ、3D構造の形成がみられた。この構造物は鉗子でつまむことができ、機械的強度に耐性を示すものであった(図3)。
両組織の細胞充実度は同程度であり、DBMを用いて形成した生体材料が253±66細胞/mm2(n=3)、HA/β-TCPを用いて形成した生体材料が262±205細胞/mm2(n=7)であった。DBMまたはHA/β-TCPを用いて形成した生体材料の顕微鏡像を図4に示す(それぞれAおよびB)。
ヘマトキシリン-エオシンおよびマッソンのトリクロム染色による組織学的解析では、両組織とも、細胞および粒子の間に相互結合組織が存在し、細胞化された相互結合組織に粒子が組み込まれていることが明らかになった(それぞれ図5Aおよび5B)。
骨分化/ミネラル化
両組織とも細胞外基質のオステオカルシン染色が陽性であり(図5D)、ASCが適切に骨原性細胞に分化したことが示された。
マイクロCT解析およびフォン・コッサ染色では、HA/β-TCPを用いて形成した生体材料のミネラル化度が38.2%±12.3(n=5)、DBMを用いて形成した生体材料のミネラル化度が1.9%であることが明らかになった(それぞれ図6および図5C)。
成長因子含有量
生体適合性粒子との4週間または8週間のインキュベーション後、構造物間に有意差は認められなかった。
結果を下の表1および図7に示す。
本発明の生体材料の成長因子含有量(ng/g生体材料)
本発明の生体適合性粒子を用いて形成した生体材料はいずれも、VEGF、IGF1およびSDF-1αを含む。それでも、SDF-1αの含有量はVEGFおよびIGF1のものよりも少ない。全組織にBMP2もBMP7も検出されなかった。
破骨細胞活性
MP/MD培地、DBMを用いて形成した生体材料、HA/β-TCPを用いて形成した生体材料、HAを用いて形成した生体材料およびβ-TCPを用いて形成した生体材料中のhASCの上清のOPG/RANKL分泌を定量化した。
RANKLは検出されなかった。MP培地またはMD培地中の細胞の上清にOPGはみられなかった。
これとは対照的に、3D構造物はいずれもOPGを分泌することがわかった。DBMを用いて形成した生体材料は約1160pg/106細胞を分泌し、HA/β-TCPを用いて形成した生体材料は約3010pg/106細胞を分泌する(図8)。組織1グラム当たりの濃度では、DBMを用いて形成した生体材料は約15.5ng/g分泌し、HA/β-TCPを用いて形成した生体材料は約30ng/g分泌し、HAを用いて形成した生体材料は約76ng/g分泌し、β-TCPを用いて形成した生体材料は約84ng/g分泌する(図9)。
DBM単独およびHA/β-TCPによるOPG分泌も評価し、ほぼ検出不可能なレベルであることがわかった(図9)。
実施例3:本発明に従って形成した生体材料と異なるプロトコルに従って形成した生体材料との比較
材料および方法
組織作製
2つの異なるドナーに由来する脂質幹細胞を用いて組織を製造した。実施例1のプロトコルに従い、生体適合材料にDBMを用いてNVD-1を作製した。NVD-1の作製プロトコルに従ってNVD-0を作製したが、以下の2つの重要な修正を加えた:(i)NVD-0の培地(MPおよびMD)には(NVD-1の培地の5%HPLの代わりに)10%FBSを用い、(ii)NVD-0作製の第4継代では、(NVD-1作製で第4継代から骨原性分化およびDBM粒子添加まで細胞を直接MDで培養したのに代えて)細胞を増殖培地(MP)でコンフルエンシーまで培養し、次いで、MDで骨原性分化およびDBM粒子添加まで培養した。
NVD-1およびNVD-0の作製にはRTI Surgicals社のDBM粒子を用いた。DBM粒子添加の8週間後まで、組織をMD(NVD-1では5%HPL、またはNVD-0では10%FBSを添加)で培養して維持し、3~4日毎に培地を交換した。
粒子添加の8週間後、組織学的解析、生物活性の評価およびミネラル化の定量化により組織の特徴を明らかにした。さらに、1つのドナーに関してプロテオーム解析を実施して、細胞によって分泌される基質の組成の特徴を明らかにした。
組織学的解析
粒子添加の8週間後、組織の生検試料を採取した。生検試料をホルモールで固定し、ヘマトキシリン-エオシン(当業者に公知の方法によるHE染色)用に調製した。組織を組織学的に解析し、特徴を明らかにした、すなわち、HEスライドで細胞をカウントした後、基質の細胞充実度および効力比を求めた。
in vitroの生物活性
形成された組織の生物活性を評価するため、粒子添加の8週間後、各組織につき3例の生検試料を採取し、重量を測定した。この27例の生検試料をHPLもFBSも含まないMD中に72時間置いた。次いで、分泌された成長因子のELISA(BMP2、BMP7、IGF1、SDF1a、VEGF、OPG、RANKL)による定量化に上清を回収した。
生検試料をタンパク質の抽出および定量化に用いた。比色分析(Pierce BCA Protein Assay Kit、ThermoFisher Scientific社)およびELISA(VEGF、SDF1a、IGF1、BMP2、BMP7、OPG、RANKL(Human Quantikine ELISAキット、RD Systems社))によって、それぞれ供給業者の指示通りに総タンパク質および成長因子含有量を定量化した。
結果
組織学的解析
組織学的解析の結果(n=1)から、NVD-1の方がNVD-0よりも細胞充実度が高いことが明らかになった。表2および図10に示すように、両群とも組織中の基質の割合は同程度であったが、NVD-1の方がNVD-0よりも重要な基質密度がみられた。
in vitroの生物活性
NVD-1とNVD-0との間に意味のある差がみられ、NVD-1の方がNVD-0よりもVEGFおよびSDF1aの含有量が高く、IGF1およびOPGの含有量が低いことが示された(表3)。BMP2およびRANKLは定量化の下限未満であった。
<LOQ:定量化の限界未満
NVD-1およびNVD-0の成長因子含有量(ng/g生体材料)
実施例4:骨形成能および血管新生能
材料および方法
Qiazol溶解試薬(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)およびPrecellysホモジナイザー(Bertin instruments社、モンティニー=ル=ブルトンヌー、フランス)を用いて、増殖培地(MP)のASC(n=4、4例の異なるヒト脂肪組織ドナー由来)、分化培地のASC(MD、粒子を含まない古典的な骨原性培地で培養した細胞)(n=4、4例の異なるヒト脂肪組織ドナー由来)および1.5cm3のHA/β-TCPを用いて形成した生体材料(n=4、4例の異なるヒト脂肪組織ドナー由来)から全RNAを抽出した。Rneasy mini kit(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を追加のオンカラムDNアーゼ消化とともに製造業者の指示通りに用いて、RNAを精製した。分光光度計(Spectramax 190、Molecular Devices社、カリフォルニア州、米国)を用いて、RNAの性質および量を明らかにした。市販のPCRアレイ(Human RT2 Profiler Assay-血管新生;Human RT2 Profiler Assay-骨形成、Qiagen社)による骨原性および血管新生の遺伝子発現プロファイルには、RT2RNA first strand kit(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を用いて全RNA0.5μgからcDNAを合成した。増幅産物の検出にはABI Quantstudio 5システム(Applied Biosystems社)およびSYBR Green ROX Mastermix(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を用いた。ΔΔCT法に従って定量化を実施した。各試料の最終結果を3種類のハウスキーピング遺伝子(ACTB、B2MおよびGAPDH)の発現レベルの平均値に対して正規化した。
リアルタイムRT-PCR(human RT2 Profiler Array、Qiagen社)を用いて、mRNAレベルでの骨原性遺伝子および血管新生遺伝子の発現を実施した。
結果
本発明の生体材料では、84種類の被験骨原性遺伝子のうち骨格発生に関与する11種類の遺伝子(ACVR1、BMPR1A、BMPR1B、BMPR2、CSF1、EGFR、FGFR1、IGFR1、RUNX2、TGFBR1、TWIST1)、3種類の転写因子(SMAD2、SMAD4、SMAD5)、2種類の成長因子(VEGFA、VEGFB)および3種類の細胞接着分子(ITGA1、ITGB1、ICAM1)がMPのASCまたはMDのASCと比較して調節されることがわかった(図11)。
本発明の生体材料にはMPまたはMDのASCと比較して、軟骨細胞および破骨細胞の骨形成関連遺伝子の発現を促進し、細胞周期進行を調節し、骨微小環境を改善し、機能に影響を及ぼす不可欠な骨形成特異的転写因子(Bruderer M et al,Eur Cell Mater,2014;Xu J et al,Am J Trans Res,2015)であるRunt関連転写因子2(Runx2)が有意に高く発現した(図11C)。
本発明の生体材料にはMDのASCと比較して、骨格間葉に発現し、骨格発生の過程で間葉細胞系列の配分の制御に鍵となる役割を果たすTWIST関連タンパク質1(TWIST1)(Johnson D et al.Mech Dev.2000;Rice DP,et al.Mech Dev.2000)も有意に高く発現した(p=0.09)(図11D)。
骨形成に重要な経路の1つにトランスフォーミング成長因子ベータ/骨形成タンパク質(TGF-b/BMP)経路がある。TGF-bは(TGFBR1活性化を介して)SMADなどの細胞内シグナル伝達タンパク質を活性化する。これらの因子は、TGFベータ制御遺伝子の転写を調節し、それにより骨原性遺伝子転写を活性化、造骨分化を促進する(Song B,Cytokine Growth Factor Rev.Author,2010)。興味深いことに、本発明の生体材料にはMDのASCと比較して、TGFBR1およびSMAD2/5 mRNAが高く発現することがわかった(図11E~11H)。
MPのASC、MDのASCおよび本発明の生体材料で試験した84種類の血管新生遺伝子のうち、6種類の遺伝子が成長因子に関連するものであり(ANG、EFNA1、EFNB2、VEGFA、FGF1、TGFB1)、2種類のECM分子(LEP、TIMP1)および2種類の細胞接着分子(ENG、THBS1)が調節された(図12)。
本発明の生体材料にはMPのASCと比較して、アンジオポエチン(ANG)mRNAが有意に高く発現することがわかった(図12A)。アンジオポエチンシグナル伝達は、既存の血管から新たな動脈および静脈を形成する過程である血管新生を促進する(Fagiani E et al,Cancer Lett,2013)。
さらに、本発明の生体材料にはMPおよびMDのASCと比較して、胚発生および成体組織での血管新生を調節するエフリンA1(EFNA)mRNA(Pasquale EB.et al.Nat Rev Mol Cell Biol 2005)が高く発現することがわかった(図12Bおよび12C)。
本発明の生体材料中のASCではMPまたはMDのASCと比較して、血管内皮成長因子AのmRNA(VEGFA)の発現も有意に改善された(図12D)。VEGFは、血管発生および血管新生の調節に最も重要な成長因子の1つである。骨は極めて血管が発達した器官である(同時に、血管新生が骨形成の重要な調節因子となっている)ため、VEGFも骨格発生および出生後の骨修復に正に影響を及ぼす(Hu K et al,Bone 2016)。
本発明の生体材料にはMPのASCと比較して、線維芽細胞成長因子1(FGF1)mRNA(強力な血管新生促進因子、Murakami M et al,Curr Opin Hematol 2009)およびレプチン(LEP)mRNA(重要な血管新生のエンハンサーおよびVEGF発現のインデューサー;Bouloumie A et al,Circ.Res.1998;Sierra-Honigmann MR et al,Science(New York,N.Y.)1998)の過剰発現もみられた(それぞれ図12Eおよび12F)。
結論として、本発明の生体材料は、移植後、骨分化能とともに細胞生着のために血管新生を促進する能力を分子レベルで発現する細胞が(3D構造内に)存在することによって、骨原性であると定義され得る。
実施例5:移植後の線維性環境内での血管新生および骨形成の促進
4.1.in vitro
組織傷害に最もよくみられる要素の1つが低酸素状態の存在である。間質が損傷すると多くの場合、凝固カスケードが活性化し、低酸素状態の領域が生じる。このことに関連して、本発明の生体材料が、移植後の血管新生の鍵となる成長因子であるVEGF(Madrigal M et al.,J Transl Med.2014 Oct 11;12:260)を分泌する能力を評価した。様々な組織で酸素圧が低下すると、血管内皮成長因子(VEGF)などの血管新生遺伝子の転写を誘導する低酸素誘導因子(HIF-1α)(Ahluwalia A et al.,Curr Med Chem.2012;19(1):90-97;Hawkins KE et al.,Regen Med.2013;8(6):771-782)のほかにもMSC化学誘引間質細胞由来因子1(SDF-1α)(Youn SW et al.,Blood.2011;117:4376-4386.Ceradini DJ et al.,Nat Med.2004;10(8):858-864)の活性化が起こることが知られている。
材料および方法
低酸素濃度が生体材料の血管新生促進特性に及ぼす影響を評価するため、3例のドナー由来のASCと1.5cm3HA/β-TCPとから形成した生体材料をPBSで2回洗浄し、(培地中に外因性成長因子が存在しないよう)hPLを含まない骨原性分化培地(MD)10mLが入った6ウェルプレートで、二重反復でインキュベートした。プレートを5%CO2、37℃で72時間、低酸素状態(1%O2)または酸素正常状態(21%O2)に置いた。次いで、ELISAによるVEGFおよびSDF-1αの定量化に上清を回収した。
さらに、6ウェルプレートに二重反復で入っている3例のドナーに由来する継代4のコンフルエントなASCをPBSで2回洗浄し、hPLを含まない5mLまたは10mLの増殖培地(MP)または骨原性分化培地(MD)に5%CO2、37℃で72時間、低酸素状態(1%O2)または酸素正常状態(21%O2)で入れた。次いで、ELISAによるVEGFおよびSDF-1αの定量化に上清を回収した。
結果
低酸素圧では2D(MPおよびMD)での細胞によるVEGF分泌が増大した(1%O2対21%O2で、MPがそれぞれ242±51pg/105細胞対29±27pg/105細胞、MDがそれぞれ565±507pg/105細胞対182±216pg/105細胞(p<0.05))が、低酸素状態が本発明の生体材料のVEGF分泌に及ぼす影響はみられなかった(1%O2対21%O2でそれぞれ、760±594pg/105細胞対806±530pg/105細胞)(図13A)。したがって、低酸素圧が本発明の生体材料の使用に対する限定要因となることはない。
さらに、1%O2条件でも21%O2条件下でも、本発明の生体材料にMPおよびMDのASCより高いVEGF分泌がみられた(図13A)。
低酸素刺激後、MDのASCにSDF-1α分泌の刺激が観察され(p=0.009)、21%O2では、本発明の生体材料によって、MPおよびMDのASCよりも有意に高い量のSDF-1αが放出された(それぞれ、p=0.013および0.025)(図13B)。
さらに、1%O2では、MDのASCの方がMPのASCおよび本発明の生体材料よりも分泌が低いことが明らかになった(それぞれ、p=0.009および0.013)(図13B)。
本発明の生体材料を低酸素圧(線維性組織にみられる1%酸素)に曝露することにより、ASCには脈管形成の鍵となるエフェクターを分泌する能力があることが明らかになった。これらの分泌は、細胞外基質を有する三次元中、すなわち、本発明の生体材料中のASCの方が、二次元で培養した増殖/骨原性培地のASCよりも(低酸素状態および酸素正常状態で)優れていた。
4.2.in vivo
低酸素条件下での本発明の生体材料の生物活性を明らかにする目的で、筋壊死の前臨床モデルを実施した。Schubertら(Biomaterials,2011;32(34):8880-91)によって示された異所性モデルは、生体材料の生物活性を検討するゴールドスタンダードモデルであり、腰部領域内の焼灼脊椎傍筋によって形成されたポケットに被験品(生体材料)を移植することにある。
材料および方法
ヌードラットに、いかなる移植片拒絶反応も起こらないよう本発明の生体材料(ヒト起源)を移植する、2つの実験を実施した。
第一の実験は、移植の1か月後に組織リモデリングに本発明の生体材料が果たす役割を評価するようデザインしたものである。第二の実験は、(移植後第29日に)組織リモデリングを分子レベルで評価するようデザインしたものである。
両実験とも、生体材料を10個体のヌードラットに両側移植した。移植した生体材料の体積は約0.3cm3(500mgまたは4.7×106細胞に相当する)であった。
第一の実験では、移植後第28日、フォン・ヴィルブランド病に対する免疫染色後に血管新生を組織形態計測によって定量化し、HLAに対する免疫組織化学によってヒト細胞の存在を評価した。
第二の実験では、移植後第29日、HLAに対する免疫組織化学によってヒト細胞の存在を評価し、マッソン・トリクロム染色後、組織形態計測解析によって移植片の血管再生を評価した。
さらに、Qiazol溶解試薬(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)およびPrecellysホモジナイザー(Bertin instruments社、モンティニー=ル=ブルトンヌー、フランス)を用いて、外植片から全RNAを抽出した。Rneasy mini kit(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を追加のオンカラムDNアーゼ消化とともに製造業者の指示通りに用いて、RNAを精製した。分光光度計(Spectramax 190、Molecular Devices社、カリフォルニア州、米国)を用いて、RNAの性質および量を求めた。市販のPCRアレイ(Human RT2 Profiler Assay-血管新生;Human RT2 Profiler Assay-骨形成、Qiagen社)による骨原性および血管新生の遺伝子発現プロファイルには、RT2 RNA first strand kit(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を用いて全RNA0.5μgからcDNAを合成した。増幅産物の検出にはABI Quantstudio 5システム(Applied Biosystems社)およびSYBR Green ROX Mastermix(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を用いた。ΔΔCT法に従って定量化を実施した。各試料の最終結果を3種類のハウスキーピング遺伝子(ACTB、B2MおよびGAPDH)の発現レベルの平均値に対して正規化した。
移植後第29日、本発明の生体材料から得た外植片の間で骨原性遺伝子の発現を比較した。次いで、外植片について84種類の骨原性遺伝子を試験した。
結果
第一の実験
移植から1か月後、生体材料の内部に血管内部成長の存在が確認された(図14)。
血管表面積および血管数/mm2の結果を図15に示す。
本発明の生体材料内のヒト細胞の存在により、本発明の生体材料中のヒトASCが(筋肉領域/移植部位の焼灼の後に)壊死宿主組織内で生き延びることが可能であることが明らかになった(図16)。
第二の実験
移植後第29日、本発明の生体材料中にヒト細胞が存在することが明らかになった(データ不掲載)。
既に記載したように、第一の生物活性に関する実験では、移植後第29日に移植片の血管再生が確認された(データ不掲載)。
in vivo実験から、本発明の生体材料が製品内で血管新生を誘導することが可能であることが明らかになった。
実施例6:骨欠損の治療
骨形成における本発明の生体材料の効果を試験するため、ラットモデルの臨界寸法の骨欠損をデザインした。このモデルについては文献(Saxer et al.,Stem Cells 2016-Manassero et al.,Journal of Visualized Experiments 2016)に十分に記載されている。
材料および方法
本発明のヒト生体材料のレシピエントには、いかなるT細胞免疫反応も起こらないよう雄ヌードラットを選択した。簡潔に述べれば、ヌードラット14個体(HA/β-TCP粒子単独および生体材料それぞれのレシピエント7個体からなる2つのグループ)にRatFix System(登録商標)(RISystem社、スイス)を用いることによって、ラット大腿骨に臨界寸法の骨欠損を実施した。5mmの欠損を生じさせ、スクリューで固定したプレートを用いることにより、大腿骨の2つのセグメントを連結した。
骨欠損誘導から3週間後、X線撮影を実施して、骨欠損の不可逆性を評価し、いかなる自発的骨再生も起こらないようにした。
(骨欠損が持続し、いかなる固定材料破損もみられない)ヌードラットレシピエントにHA/β-TCP粒子(500mgに相当する総体積0.344cm3)またはASCと1.5cm3のHA/β-TCP粒子と(500mgに相当する総体積0.313cm3および4.7×106個の細胞)を用いて形成した本発明の生体材料を移植した。
移植から1か月後、移植片統合および骨融合のレベルを評価する目的で、各個体にマイクロCTスキャンおよび組織学的検査を実施した。
結果
移植から1か月後、本発明の生体材料は大腿骨の両セグメントの間に完全に統合されて、二皮質骨融合(2つの大腿皮質構造物の連続性)が起こっていた(図15、左上および左下)が、HA/β-TCP粒子単独のものは骨欠損内に位置し、全く統合されていなかった(図17、右上および右下)。実際、皮質骨とHA/β-TCP粒子との間に架橋はみられず、両側皮質融合(図17右下の記号*で示される)および大腿骨欠損端の萎縮様相もみられなかった。
以上の結果を組織学的検査により確認した(図18および19)。HA/β-TCP粒子単独の移植から1か月後、製品は統合されておらず、重大な線維症が観察された(図18A、白矢印)。天然の骨とHA/β-TCPの移植片との間の境界にある欠損には、軟骨内骨化がみられなかった(図18B、黒矢印)。本発明の生体材料の移植から1か月後、製品の統合および骨融合が観察された(図19A、白矢印)。天然の骨と生体材料との間に直接接する形で軟骨内骨化がみられ、骨統合過程が示された(図19B、黒矢印)。HLA-I染色では、ヒト細胞が存在することがわかる(図19C)。
以上のin vivoの試験から、(i)本発明の生体材料が低酸素環境中で骨形成を改善することが可能であること、および(ii)臨界寸法の骨欠損において骨融合を起こすことが可能であることが明らかになった。本発明の生体材料は、骨形成および骨再建の点でHA/β-TCP粒子単独よりも優れていることが明らかになった。
実施例7:脊椎固定ラットモデルを用いた生体材料に関する試験(試験CP-2017025-生体内分布群)
試験の目的
GLP準拠試験(試験CP-2017025)を実施して、(i)治験製品が目的とする臨床使用に関連する条件に従った関連動物モデルでの生体材料の全般的毒性(いわゆる「CP-2017025-毒性試験群」)および(ii)治験細胞の生体内分布および異所性組織の継続的発達能(いわゆる「CP-2017025-生体内分布群」)を評価するという2つの目的を遂行した。
免疫適格動物に予想されるヒト細胞拒絶反応が起こらないよう免疫不全(ヌード)ラットモデルを選択した。脊椎固定手術モデルは、文献(Wang et al.,J.Bone and Joint Surg.2003,85:905-911)に十分に記載されており、同じ組織環境中で大腿骨欠損よりも移植体積を大きくすることができる(Belill et al.,Comp.Med.2014,61(3):186-192)ため、同モデルを関連モデルに選択した。さらに、脊椎固定外科処置で生じる移植環境は、大腿骨欠損などの骨非統合モデルで生じる環境と比較して極めて類似していると考えられている。
試験デザイン
「生体内分布試験群」の目的には、健常な9週齢ホモ接合ヌード胸腺欠損ラット20個体(雄10個体および雌10個体;Hsd:RH-Foxn1 rnu/rnu)をグループ1および2(1グループ当たり雄5個体および雌5個体)に無作為に割り付けた(表4)。
試験(CP-2017025-生体内分布群)デザイン
D0に、グループ1の個体を下に記載する外科的処置により生体材料(臨床バッチと同じ工程に従って製造した1つのバッチ)で治療した。グループ2の個体には生体材料による治療を実施しなかったが、D0にグループ1の個体と同じ外科的処置を実施した。
Wangらによって記載されている外科手術法に従い、第5または第6腰椎に沿って皮膚および筋肉を切開した。背部の筋肉を分けて離し、腰椎が見えるようにした。L5腰椎の横突起に円形の骨欠損を生じさせた。直径が一定のドリルビットを使用することにより骨欠損の大きさを統一して、欠損を直径2.0mm、深さ1mmに制御した。腰椎の両側を欠損させた。グループ1の個体には、腰椎の両側(左および右)に生じさせた穴およびその周囲の領域に生体材料(それぞれ0.56×107個の細胞を含む0.375cm3のものを2片)を移植した。次いで、背部の筋肉および皮膚を縫合した。ラットの体重に基づけば、この生体材料の量は10(250gのラット対30kgの患者)~23.4(250gのラット対70kgの患者)の相対安全域に相当する。
D29に、ラットを屠殺し、剖検を実施した。ラット組織内の生体材料ヒト細胞の存在を検出および定量化する目的で、投与部位、骨髄、脳、生殖腺、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、骨格筋および脾臓から全ゲノムDNAを抽出した後、ヒトAluエレメントベースのqPCR法を用いて解析した。
器官を採取し、重量を測定し、DNA抽出まで-80℃で保管した。次いで、機械的方法を用いることによって組織を抽出緩衝液中で完全にホモジナイズした後、DNA抽出を実施した。被験ラット組織試料または対照ラット組織試料のゲノムDNAを125ng用いて、qPCR実験を20μlで実施した。各試料を3回反復で試験した。ラットの特定の組織DNA基質125ngに添加したヒトDNAの20fg(全器官の定量化の下限値)または70fg(骨格筋の定量化の下限値)~7ng(定量化の上限値)の範囲の定量化について、AluエレメントベースのqPCR法の妥当性を検証した。
結果
グループ1および2の個体の骨髄、脳、生殖腺、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、骨格筋および脾臓ならびにグループ2の個体の投与部位の試料に定量化の限界値以下のヒトDNAが検出されることはなかった。グループ1の個体の全投与部位およびグループ1の10個体のうち1個体の心臓にヒトDNAが検出された。
生体材料治療ラットの全移植部位に加えて、生体内分布を目的に解析した生体材料治療ラット10個体のうち1個体の心臓にヒトDNAが検出された。原因は明らかでないが、この結果は、それが解析した10個体のうち1個体だけに観察されたものであること、また、検出されたDNAの量が少なかった(心臓中のヒト細胞166個に相当する推定数)ことから、試料採取時の汚染によるものであると思われる。さらに、生体材料治療ラット10個体の心臓に移植してから29日後に実施した組織病理学的解析では、異所性組織形成を思わせる組織病理学的観察結果は認められなかった。
実施例8:脊椎固定ラットモデルを用いた生体材料に関する試験(CP-2017025-毒性試験群)
GLP準拠試験2件を含めた以下の動物試験3件により、生体材料開発のための非臨床毒性試験を実施した:
-脊椎固定ラットモデルを用いた生体材料に関する単回投与毒性試験(GLP試験CP-2017025-毒性試験群);
-NSGマウスを用いた生体材料に関する腫瘍形成能試験(GLP試験CP-2017026);および
-NSGマウスを用いて腫瘍形成能を検討した生体材料に関する局所耐容性試験(CP-2017073)。
背景および目的
GLP準拠試験(試験CP-2017025)を実施して、(i)治験製品が目的とする臨床使用に関連する条件に従った関連動物モデルでの生体材料の全般的毒性(いわゆる「CP-2017025-毒性試験群」)および(ii)治験細胞の生体内分布および異所性組織の継続的発達能(いわゆる「CP-2017025-生体内分布群」)を評価するという2つの目的を遂行した。
「毒性試験群」の目的は、潜在的毒性、その発現(急性または遅延)および観察された毒性が消失する可能性を確認し、特徴付け、定量化することであった。
免疫適格動物に予想されるヒト細胞拒絶反応が起こらないよう免疫不全(ヌード)ラットモデルを選択した。脊椎固定手術モデルは、文献(Wang et al.2003)に十分に記載されており、同じ組織環境中で大腿骨欠損よりも移植体積を大きくすることができる(Belill et al.2014)ため、同モデルを関連モデルに選択した。さらに、脊椎固定外科処置で生じる移植環境は、大腿骨欠損などの骨非統合モデルで生じる環境と比較して極めて類似していると考えられている。
試験デザイン
「毒性試験群」の目的には、健常な9週齢ホモ接合ヌード胸腺欠損ラット40個体(雄20個体および雌20個体;Hsd:RH-Foxn1 rnu/rnu)をグループ1および2(1グループ当たり雄10個体および雌10個体)に無作為に割り付けた(表5)。
D0に、グループ1の個体を下に記載する外科的処置により生体材料(臨床バッチと同じ工程に従って製造した1つのバッチ)で治療した。グループ2の個体には生体材料による治療を実施しなかったが、D0にグループ1の個体と同じ外科的処置を実施した。
Wangらによって記載されている外科手術法に従い、第5または第6腰椎に沿って皮膚および筋肉を切開した。背部の筋肉を分けて離し、腰椎が見えるようにした。L5腰椎の横突起に円形の骨欠損を生じさせた。直径が一定のドリルビットを用い骨欠損の大きさを統一して、欠損を直径2.0mm、深さ1mmに制御した。腰椎の両側を欠損させた。グループ1の個体には、腰椎の両側(左および右)に生じさせた穴およびその周囲の領域に生体材料(それぞれ0.56×107個の細胞を含む0.375cm3のものを2片)を移植した。次いで、背部の筋肉および皮膚を縫合した。ラットの体重に基づけば、この生体材料の量は10(250gのラット対30kgの患者)~23.4(250gのラット対70kgの患者)の相対安全域に相当する。
外科手術後、ラットの麻酔後の回復を観察し、次いで、D29まで個体の創傷治癒、運動、罹病率、死亡率および明白な毒性の徴候を毎日モニターした。
D0に、次いで少なくとも週2回、無作為化を目的に体重を測定した。体重変化を評価し、グループ1と2の個体の間で比較した。
D3およびD29に、絶食させたグループ1および2のラットから血液を採取して、血液学的パラメータ、凝固パラメータおよび生化学的パラメータを測定した。D29に、ラットを屠殺し、剖検を実施した。
毒性検査を目的に、1グループ当たり雌雄それぞれ5個体の器官を肉眼で観察し、採取した。脾臓、肝臓、腎臓および心臓の重量を測定した。採取した器官はいずれも、4%のホルマリンに入れて室温で保存し、パラフィンで包埋し、スライドを作製し(1器官当たり3枚;20個体)、顕微鏡で解析した。
結果
モニタリング期間中、重要な観察結果は報告されなかった。体重に関して、グループ1と2の個体間に体重の統計的有意差は観察されなかった。第3日および第29日に採取した血液試料に関して実施した解析から、血液学的パラメータ、生化学的パラメータおよび凝固パラメータに関してグループ1と2の個体間に重要な差は報告されなかった。肉眼的には、実施した剖検から重要な事柄は報告されなかった。顕微鏡的には、グループ1の全個体の移植部位に生体材料移植によるものと考えられる異物肉芽腫が観察された。これ以外に生体材料移植に起因すると考えられる組織病理学的な全身変化は観察されなかった。
結論として、ヌードラットの関連するモデルを用いた生体材料移植後に毒性は認められなかった。
実施例9:細胞形質転換リスクの評価
ヒトでは、骨肉腫を含めた様々な肉腫が間葉起源であることを裏付ける証拠が相当量得られている。一方、MSCについては、長期培養で染色体異常が発現するものの、in vitroで自然形質転換が起こることは示されていない(Aguilar et al.,Stem Cells.2007,25(6):1586-1594;Bernardo et al.,Cancer Res.2007,67(19):9142-9149;Xiao et al.,Clin.Sarcoma Res.2013,3(1):10)。このような奇形はこれまでに記載されており、in vitroの培養条件に対する自然な適応であって、形質転換リスクが高いこととは関係ないことが示唆されている(Tarte et al.,Blood.2010,115(8):1549-1553)。
臨床バッチに提案される工程で作製した生体材料の開発バッチを3つ以上製造する過程で、生体材料の原薬の細胞遺伝学的安定性を分子核型分析(aCGH/SNP法)により試験することによって、ASCの自発的細胞形質転換の可能性をin vitroで評価した。アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)と高密度一塩基多型(SNP)の組合せは、負担となる事前の有糸分裂細胞単離を必要とせずに、ゲノム全域にわたってコピー数変化をスクリーニングし、臨床的に重要な染色体異常および染色体障害を検出する代替手段となるのに十分に確立された分子ジェノタイピング法である(Cooper et al.,Nat.Genetics.2011,43(9):838-846;Slavotinek.A.M.,Hum.Genetics.2008,124(1):1-17)。
結果から、製造工程でも生体材料の原薬の放出試験に相当する継代レベルでも、hASCが細胞遺伝学的に安定であるものと思われることがわかる。
NSGマウスを用いた生体材料に関するin vivoのGLP腫瘍形成能試験(試験CP-2017026)
背景および目的
MSC由来細胞療法を実施する場合、これまでにヒト患者に腫瘍形成が観察されたことはないが、こうして得られた結果は、患者に対する腫瘍形成能のリスクを確認するものでも排除するものでもない(Barkholt et al.,Cytotherapy.2013,15(7):753-759)。
研究CP-2017026の目的は、NSG(NOD scidガンマ)免疫不全マウスに移植したのち最大6か月にわたって、生体材料に含まれるヒト脂肪由来MSCの細胞形質転換のリスクを腫瘍形成能の点から評価することであった。腫瘍形成能が確認されていることで選択したHT-29細胞系を陽性対照に用いた。
試験デザイン
この試験には、健常な7週齢のNSG雌マウス30個体を含めた。マウスを2つのグループ(グループ1には20個体、グループ2には10個体)に無作為に割り付けた。グループ1の個体には、生体材料(1.5×107個の細胞を含む1g(±1cm3))を切開により皮下空隙に移植した(臨床バッチと同じ工程に従って製造し、研究CP-2017025に使用したものと同じバッチ)。グループ2の個体には、HT-29細胞を皮下注射により接種した(0.9%NaCl 200μlで107個/個体)。
マウスの生存率、行動および体重を実験終了まで週2回記録した。各個体を週2回観察し、投与部位に新たに形成された小結節を触診した。新たに形成された小結節があれば測定した。グループ1のマウス(生体材料で治療)は最大6か月間観察し、グループ2のマウス(HT-29細胞で治療)は、腫瘍体積が1000mm3に達するか、壊死が観察されるまでモニターした。
剖検時、各個体の肉眼観察を実施した。グループ1の個体(被験品)については、組織病理学的検査用に移植部位、肝臓、脾臓、肺、心臓、腎臓、脳、鼠経リンパ節(目に見える場合)のスライドを作製した。
結果
グループ2(HT-29、陽性対照)のマウス10個体に進行性の腫瘍成長がみられ、D27(最初の屠殺の日)の平均腫瘍体積(MTV)が611.6±335.4mm3であった。1個体のマウスを腫瘍の壊死により屠殺し、他の9個体のマウスはTV>1000mm3のため屠殺した。グループ2のマウスの剖検時に実施した器官の肉眼観察で異常はみられなかった。
グループ1のマウスのうち1個体については、投与部位の縫合が開いたことによりD0~D1に被験品が喪失した。グループ1の個体は、移植後(D2)の移植部位の平均体積が1194.6±392.7mm3(N=19)であった。移植後、一部のマウスに投与部位のレベルで治癒しない重度の創傷がみられた。
その結果、グループ1のマウス20個体のうち10個体を上記の投与部位における重度の皮膚創傷のため、D3~D27に倫理上の理由で屠殺した。屠殺したグループ1のマウス10個体のうち、5個体では移植部位に乾燥した黄色の皮膚がみられ、他の2個体では移植部位に壊死が観察された。組織病理学的検査では、移植部位に炎症がみられ、腫瘤が壊死性のものもみられた。上を覆う皮膚および周囲の筋組織には炎症および/または潰瘍が観察された。
グループ1の個体は、移植部位の平均体積が試験終了時点(D180)で1032.5±245.3(n=9)mm3であり、D2の移植部位の平均体積と比較して体積増大はみられなかった。
グループ1のマウスの剖検時に実施した器官の肉眼観察で異常はみられなかった。試験終了時(D180)に屠殺したグループ1のマウスについては、顕微鏡観察で移植部位に多房性腫瘤がみられ、壊死はなく、全般的には組織付近に炎症を伴うものではなかった。解析した移植部位およびその他の器官の組織病理学的検査では、グループ1のいずれのマウスにも腫瘍は観察されなかった。
グループ2(HT-29細胞で治療)の10個体のうち少なくとも9個体に進行性に成長する腫瘍がみられたことから、この試験は妥当なものである。約1.5×107個の細胞が含まれる被験品(生体材料1g)の単回皮下移植後、グループ1の(雌NSG)いずれのマウスにも腫瘍は観察されなかった。
組織病理検査報告書には、この実験の条件下で、「NSGマウスに約1g[生体材料]を皮下移植しても、6か月の観察期間にわたって細胞増殖は一切誘導されなかった。移植部位には、被験品と直接関係のある多房性腫瘤がみられた。それにより、一部のマウスについては局所炎症性反応を伴う皮膚潰瘍のため早期に屠殺した。このことは、固い材料を大量に皮下移植したことを原因とする機械的外傷と関係があるものと考えられた。」と記載されていた。
NSGマウスを用いた生体材料に関するin vivoの局所耐容性試験および腫瘍形成能の検討(試験CP-2017073)
背景および目的
GLP腫瘍形成能試験CP-2017026では、生体材料移植片の局所耐容性が低いことが観察され、このことは、NSG免疫不全マウスに固い材料を大量に皮下移植したことを原因とする機械的外傷と関係があるものと考えられた。
生体材料1g(±1cm3)の(試験CP-2017026で実施した通り)単一部位(n=8)または2つの部位(1部位当たり0.5g)(n=8)への移植後の局所耐容性を(元の計画の通り2週間の期間で)さらに検討するため、試験CP-2017073を開始した。
注目すべきことに、試験CP-2017073では、試験CP-2017026とは対照的に、病変(例えば、筋レベルで融合していない移植部位の黄色皮膚)が観察された場合でも、生体材料1gを移植した個体のうち、投与部位の重度の皮膚創傷により倫理上の理由で屠殺しなければならない個体はみられなかった。次いで、既に試験CP-2017026で得た腫瘍形成能に関するデータを補完するため、最初に定めた2週間の追跡期間を超える期間(最大6か月)にわたってグループ1の個体(n=8)をモニターすることにした。
試験デザイン
7週齢の健常なNSG(NOD scidガンマ)免疫不全雌マウス16個体を2つのグループ(1グループ当たり8個体)に無作為に割り付けた。グループ1の個体には、生体材料(1.5×107個の細胞を含む1g)を切開により右側腹部の皮下空隙に移植した。グループ2の個体には、生体材料(各部位に0.75×107個の細胞を含む2×0.5g)を切開により右側腹部および左側腹部の皮下空隙に移植した。マウスの生存率、行動および体重を実験終了まで週2回記録した。各個体について毎日、臨床徴候および局所反応を観察した。グループ1のマウス(1部位を被験品で治療)は最大6か月間観察した。グループ2のマウス(2部位を被験品で治療)は15日間にわたってモニターした。各個体について肉眼剖検を実施した。グループ1の個体(被験品)については、組織病理学的検査用に移植部位、肝臓、脾臓、肺、心臓、腎臓、脳、鼠経リンパ節(目に見える場合)のスライドを作製した。
結果
グループ1のマウスのうち、D79からD85まで体重減少がみられた1個体を除いて、各マウスの体重はD0から屠殺まで徐々に増加した。前者のマウスはD89に死亡していた。
グループ1の個体は、D2の移植部位の平均体積が1228.3±195.3mm3(n=8)であった。試験終了時(D180)には、移植部位の平均体積が945.5±92.7mm3(n=7)に減少し、被験品の皮下移植後、いずれの移植部位にも試験期間中に大きさの増大は観察されないことが示された。
グループ1(1部位)およびグループ2(2部位)のマウスは全個体とも、モニタリングパラメータ(運動および歩行、身のこなし、行動、呼吸、眼球、皮膚(移植部位以外)、体毛、粘膜、排泄および無麻痺)が正常であった。
屠殺時、グループ1のマウス(1部位)またはグループ2(2部位)に実施した肉眼観察で異常な器官はみられなかった。D180に屠殺したグループ1のマウスには、組織病理学的解析で細胞増殖は一切認められなかった。移植部位に多房性のミネラル化が観察されたが、上を覆う皮膚および付近の筋組織に炎症はみられなかった。このミネラル化した材料は、移植した被験品であると解釈される。
この実験下では、以下のような結論を導くことができる:
・生体材料を1つまたは2つの部位に投与したところ、両群とも、移植部位に黄色の皮膚が観察される場合でも局所耐容性に何ら有意な影響を及ぼすことはなかった。この観察結果に関して、グループ1の個体には、D44に移植部位に最後に黄色の皮膚が観察されて以降、回復がみられた。
・雌NSGマウスに1.5×107個の細胞を含む生体材料を単回皮下移植し、6か月間の追跡後に肉眼および顕微鏡で検討したところ、腫瘍形成の誘導はみられなかった。
・組織病理検査報告書には、1.5×107個の細胞を含む生体材料1gをNSGマウスに皮下移植しても、6か月間にわたって細胞増殖の誘導はみられないことが記載されていた。移植部位には、被験品と直接関係のある多房性のミネラル化がみられた。
実施例10:本発明の生体材料の作製
10.1.hASCの単離
インフォームドコンセントおよび血清学的スクリーニングの後、コールマン法による腹部領域の脂肪吸引によってヒト皮下脂肪組織を回収した。
入ってくる脂肪組織から迅速にヒト脂肪由来幹細胞(hASC)を単離した。脂肪吸引組織は、+4℃で24時間、または-80℃でさらに長期間保管することができる。
最初に、品質管理の目的で脂肪吸引組織の一部を単離し、残りの脂肪吸引組織の体積を測定した。次いで、脂肪吸引組織をHBSSで(最終濃度約8U/mLに)調製したコラゲナーゼ溶液(NB 1、Serva Electrophoresis社、ハイデルベルク、ドイツ)により消化した。消化に使用した酵素溶液の体積は、脂肪組織の体積の2倍とした。消化を37℃±1℃で50~70分間にわたって実施した。15~25分後、1回目の断続的振盪を実施し、35~45分後、2回目の断続的振盪を実施した。MP培地(増殖培地または成長培地)の添加により消化を停止させた。MP培地は、5%ヒト血小板溶解物(hPL)(v/v)を添加したDMEM培地(4.5g/Lグルコースおよび4mM Ala-Gln;Sartorius Stedim Biotech社、ゲッティンゲン、ドイツ)を含むものとした。DMEMは、塩、アミノ酸、ビタミン、ピルビン酸塩およびグルコースを含有し、炭酸塩緩衝剤で緩衝した標準培地であり、生理的pH(7.2~7.4)を示す。使用したDMEMは、Ala-Glnを含有するものとした。ヒト血小板溶解物(hPL)は、間葉系幹細胞(hASCなど)のin vitroでの成長を刺激するのに用いる成長因子の豊富な供給源となる。
消化した脂肪組織を遠心分離(500g、10分、室温)し、上清を除去した。ペレット化した間質血管細胞群(SVF)をMP培地中に再懸濁させ、200~500μmメッシュのフィルターに通した。ろ過した細胞懸濁液をもう一度遠心分離した(500g、10分、20℃)。hASCを含有するペレットをMP培地中に再懸濁させた。細胞懸濁液のごく一部を細胞カウント用に取っておくことができ、残りの細胞懸濁液を全部用いて1つの75cm2Tフラスコに播種した(継代P0と呼ぶ)。播種した細胞の数を推定するため、(情報のみを目的として)細胞カウントを実施した。
単離段階の翌日(第1日)、75cm2Tフラスコから成長培地を除去した。細胞をリン酸塩緩衝液で3回すすぎ、次いで、新たに調製したMP培地をフラスコに加えた。
10.2.ヒト脂肪由来幹細胞の成長および拡大
工程ののちの諸段階に十分な量の細胞を得るため、増殖期にhASCを4回継代した(P1、P2、P3およびP4)。
P0から第4継代(P4)までの間、細胞をTフラスコで培養し、新鮮なMP培地を供給した。70%以上100%以下のコンフルエンス(目標コンフルエンス:80~90%)に達したとき、細胞を継代した。1つのバッチの全細胞培養レシピエントを同時に継代した。継代毎に、細胞を組換え動物不含細胞解離酵素であるTrypLE(Select 1X;75cm2フラスコに9mLまたは150cm2フラスコに12mL)で培養容器から剥離した。TrypLe消化は37℃±2℃で5~15分間実施し、MP培地の添加により停止させた。
次いで、細胞を遠心分離(500g、5分、室温)し、MP培地に再懸濁させた。均一な細胞懸濁液を確保するため、回収した細胞をプールした。再懸濁後、細胞をカウントした。
次いで、継代P1、P2およびP3で、残りの細胞懸濁液を適切な細胞密度までMP培地で希釈し、さらに大きい組織培養表面に播種した。これらの段階で、75cm2フラスコには体積15mLの細胞懸濁液を播種し、150cm2フラスコには体積30mLの細胞懸濁液を播種した。各継代で、細胞を0.5×104~0.8×104細胞/cm2で播種した。異なる継代間で、培地を3~4日毎に交換した。細胞の挙動および成長速度はドナーによってわずかに異なる可能性がある。このため、2継代間の期間および継代間の培地交換の回数はドナーによって異なるものとなり得る。
10.3.骨原性分化
継代P4(すなわち、第4継代)で、細胞をもう一度遠心分離し、MD培地(分化培地)に再懸濁させた。再懸濁後、細胞をもう一度カウントした後、適切な細胞密度までMD培地で希釈し、150cm2フラスコに体積70mLの細胞懸濁液を播種し、骨原性MD培地を供給した。第4継代の後は、この方法に従い、細胞を直接、骨原性MD培地で培養した。したがって、細胞がコンフルエンスに達していないうちに骨原性MD培地を加えた。
骨原性MD培地は、デキサメタゾン(1μM)、アスコルビン酸(0.25mM)およびリン酸ナトリウム(2.93mM)を添加した増殖培地(DMEM、Ala-Gln、hPL5%)からなるものとした。
細胞の挙動および成長速度がドナーによってわずかに異なる可能性がある。このため、骨原性分化段階の期間および継代間の培地交換の回数がドナーによって異なるものとなり得る。
10.4.細胞の多次元誘導
細胞がコンフルエンスに達したとき、形態学的変化がみられ、フラスコ内に類骨小結節(骨組織成熟の前に形成される骨基質の非ミネラル化有機部分)が少なくとも1つ観察された場合に3D誘導を開始した。
骨原性MD培地に曝露した後、付着骨原性細胞のコンフルエントな単層が含まれる培養容器に、ゼラチン粒子(Cultispher-GおよびCultispher-S、Percell Biolytica社、オーストルプ、スウェーデン)を150cm2の容器に対して1cm3、1.5cm3および2cm3の濃度でゆっくりと均一に撒いた。
細胞をMD培地で維持した。多次元誘導の間、3~4日毎に定期的な培地交換を実施した。この培地交換は、ゼラチン粒子および発達中の構造物(1つまたは複数)が除去されないようにして慎重に実施した。
実施例11:生体材料の特徴付け
11.1.材料および方法
11.1.1.構造/組織学的検査
ASCとCultispher GおよびCultispher S粒子とから得られる3D構造物の形成を試験した。6例の異なるドナーに由来する継代4のコンフルエントなASCにCultispherの粒子を加えた。様々な体積、すなわち、150cm2の容器当たり1cm3、1.5cm3、2cm3の粒子を試験した。細胞を分化培地(DMEM 4.5g/LグルコースとUltraglutamine+1%ペニシリン/ストレプトマイシン+0.5%アンホテリシンAB+デキサメタゾン(1μM)、アスコルビン酸(0.25mM)およびリン酸ナトリウム(2.93mM))で維持し、3~4日毎に培地を交換した。
MPとMDの培養を比較するため、粒子の添加から5日後、14日後および8週間後にMD中の3D構造物の生検試料を採取した。
細胞充実度を評価するため、Cultispher粒子の添加から4週間後、8週間後および12週間後に3D構造物の生検試料を採取した。
これらをホルモールで固定し、ヘマトキシリン-エオシン染色、マッソン・トリクロム染色、オステオカルシン染色およびフォン・コッサ染色用に調製した。
組織の骨分化およびミネラル化をそれぞれオステオカルシン染色およびフォン・コッサ染色のスライドで評価した。ヘマトキシリン-エオシン染色およびマッソン・トリクロム染色後に組織の構造、細胞充実度および細胞外基質の存在を評価した。
11.1.2.生物活性
生物活性に関するin vitro試験を、(i)最終産物中の成長因子VEGF、IGF1、SDF-1αの抽出および定量化ならびに(ii)低酸素状態および高血糖状態(例えば、糖尿病性創傷治癒の条件)での本発明の生体材料の成長因子の分泌/含有能により評価した。さらに、(iii)本発明の生体材料の生物活性特性をqRT-PCRにより分子レベルでin vitroで特徴付けた。
成長因子含有量
形成された組織の生物活性を評価するため、ゼラチン(1.5cm3)の添加から4週間後および8週間後、タンパク質の抽出および定量化に生検試料を採取した。比色分析(BCA Protein Assay Kit、ThermoFisher Scientific社)およびVEGF、SDF1α、IGF1に関するELISA(Human Quantikine ELISAキット、RD Systems社)により、供給業者の指示通りに総タンパク質および成長因子含有量を定量化した。
低酸素状態および高血糖状態での培養
本発明の生体材料の生物活性ならびにこの3D構造物の生物活性に対する酸素状態および血糖状態の影響を評価するため、Cultispher G(1.5cm3)と3例のドナー由来のASCとで形成された8週間後の組織の生検試料をPBSで2回すすぎ、HPLを含まない4.5g/L(高血糖条件)または1g/L(正常血糖条件)グルコースのMD 10mLが入った6ウェルプレートに二つ組で入れた。プレートを低酸素状態(1%O2)または酸素正常状態(21%O2)に5%CO2、37℃で72時間置いた。次いで、比色分析(BCA Protein Assay Kit、ThermoFisher Scientific社)およびELISA(BMP2、BMP7、VEGF、SDF-1α、IGF1、FGFb(Human Quantikine ELISAキット、RD Systems社)による総タンパク質および成長因子定量化にそれぞれ上清を回収した。タンパク質の抽出、精製ならびに総タンパク質および成長因子含有量の定量化に組織を処理した。
qRT-PCR
脈管形成および血管新生に関与する遺伝子の発現の解析により、本発明の生体材料の血管新生促進能を検討した。様々な状態にある脂肪幹細胞、すなわち、増殖培地中の脂肪幹細胞(表現型の方向付けがない、MP)、粒子を含まない古典的な骨原性培地(MD)中の脂肪幹細胞および最後に本発明の生体材料(脂肪幹細胞および細胞外基質による三次元無足場構造物の形成を誘導することを目的とする1.5cm3の粒子)による遺伝子発現を解析した。
Qiazol溶解試薬(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)およびPrecellysホモジナイザー(Bertin instruments社、モンティニー=ル=ブルトンヌー、フランス)を用いて、増殖培地(MP)で培養した2000個以上のASC(n=4、独立したヒト脂肪組織の供給源)および本発明の生体材料の約1cm2の生検試料(n=5)から全RNAを抽出した。Rneasy mini kit(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を追加のオンカラムDNアーゼ消化とともに製造業者の指示通りに用いて、RNAを精製した。分光光度計(Spectramax 190、Molecular Devices社、カリフォルニア州、米国)を用いて、RNAの品質および量を明らかにした。市販のPCRアレイによる(Human RT2 Profiler Assay-血管新生)骨原性および血管新生の遺伝子発現プロファイルには、RT2 RNA first strand kit(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を用いて全RNA0.5μgからcDNAを合成した。増幅産物の検出にはABI Quantstudio 5システム(Applied Biosystems社)およびSYBR Green ROX Mastermix(Qiagen社、ヒルデン、ドイツ)を用いた。ΔΔCT法に従って定量化を実施した。各試料の最終結果を3種類のハウスキーピング遺伝子(ACTB、B2MおよびGAPDH)の発現レベルの平均値に対して正規化した。
11.1.3.生体材料の成熟がその特性に及ぼす影響
生体材料(「組織」とも呼ぶ)の成熟がその特性に及ぼす影響をミネラル化レベルの評価、組織学的評価(細胞充実度の決定)および生物活性の評価(成長因子VEGF、IGF1、SDF-1αの抽出および定量化)によって評価した。本明細書では、生体材料の成熟は、ASCを分化培地中でCultispher粒子とともに培養する期間を意味する。
Cultispher粒子の添加から4週間後(ドナー1例)、8週間後(ドナー6例)、12週間後(ドナー3例)および25週間後(ドナー1例)、3D構造物の生検試料を採取し、マイクロCTスキャナ解析用にホルモールで固定した。末梢定量CT機器(Skyscan 1172G、Bruker micro-CT NV社、コンティフ、ベルギー)を用いて3D構造物のミネラル化を評価した。
さらに、組織の生検試料(4週間(n=3)、8週間(n=8)、12週間(n=3)および25週間(n=1))をホルモールで固定し、ヘマトキシリン-エオシン染色、マッソン・トリクロム染色およびフォン・コッサ染色用に調製した。
11.2.結果
11.2.1.構造/組織学的検査
Cultispher粒子をhASCとともに増殖培地で培養した場合、3D構造物は得られなかった。肉眼レベルの3D構造物がみられなかったのと同じように、顕微鏡レベルの構造物も形成されなかった。
増殖培地とは対照的に、ASCとともに骨原性分化培地で培養したCultispherでは、シート様の3D構造物の形成がみられた(図20A)。さらに、この構造物は、鉗子でつまめるものであった(図20B)。
ASCとともに骨原性分化培地で培養したCultispherの組織学的検査では、粒子間に細胞化された相互結合組織が存在することが明らかになった。さらに、粒子の細孔内に細胞外基質および細胞がみられた(図21)。フォン・コッサ染色では、単離したミネラル化粒子が存在することがわかった。これとは対照的に、細胞外基質はフォン・コッサで染色されなかった(図22)。最後に、相互結合組織にオステオカルシンの発現がみられた(図23)。
11.2.2.生物活性
成長因子の含有および分泌
Cultispher GおよびCultispher S単独ではタンパク質含有はみられなかった。IGF-1がごくわずかに検出されたが、ELISA法の定量化下限値未満であった。
ASCとともに骨原性分化培地で培養したCultispherの生検試料の上清中に検出されたIGF-1およびBMP7のレベルは、ELISA法の定量化下限値未満であり、BMP2およびFGFbは微量に検出された。これとは対照的に、VEGFおよびSDF-1αの有意な分泌はみられなかった。
培養条件が成長因子分泌に及ぼす有意な影響はみられなかった(表6)。
培養条件が本発明の生体材料によるVEGFおよびSDF-1α分泌に及ぼす影響
ASCとともに骨原性分化培地で培養したCultispherの生検試料のタンパク質抽出物中に検出されたBMP2、BMP7およびFGFbのレベルは、ELISA法の定量化下限値未満であった。これとは対照的に、IGF-1、VEGFおよびSDF-1αの有意な含有量がみられた。
VEGF含有量に対する培養条件の有意な影響はみられなかった。一方、4.5g/Lグルコースで酸素正常状態(21%O2)でのIGF-1含有量は他のグループより高かった(p<0.05)。酸素正常状態および正常血糖状態の方が低酸素状態(1g/Lおよび4.5g/Lグルコース)よりSDF-1α含有量が高かった(p<0.05)(表7)。
培養条件が本発明の生体材料のVEGF、SDF-1αおよびIGF1含有量に及ぼす影響
qRT-PCR解析
qRT-PCR解析によって解析した84種類の血管新生促進遺伝子のうち13種類のmRNAが、異なる培養条件間で調節されていた。10種類の遺伝子が本発明の生体材料で増殖培地のASCよりもアップレギュレートされ(ANG、ANGPT1、EPHB4、EDN1、LEP、THBS1、PTGS1、VEGFA、VEGFBおよびVEGFC)、2種類の遺伝子が本発明の生体材料でMPのASCよりもダウンレギュレートされていた(ID1、TIMP1)(図24)。
本発明の生体材料にはMPのASCと比較して、アンジオポエチン(ANGおよびANGPT1)mRNAが有意に高く発現することがわかった(図24Aおよび24B)。アンジオポエチンシグナル伝達は、既存の血管から新たな動脈および静脈を形成する過程である血管新生を促進する(Fagiani E et al,Cancer Lett,2013)。
本発明の生体材料ではMPのASCと比較して、脈管形成に不可欠な役割を果たす膜貫通タンパク質であるEPHB4(エフリン受容体B4)、強力な血管収縮剤であるエンドセリン(EDN1)(Wu MH,Nature,2013)、血管拡張剤であるトロンボスポンジン1(THBS1)および内皮細胞を調節するシクロオキシゲナーゼ1(PTGS1/COX-1)が有意にアップレギュレートされていた(それぞれ図24C、24D、24Eおよび24F)。
本発明の生体材料にはMPのASCと比較して、レプチン(LEP)mRNA(重要な血管新生のエンハンサーおよびVEGF発現のインデューサー;Bouloumie A et al,Circ.Res.1998;Sierra-Honigmann MR et al,Science(New York,N.Y.)1998)の過剰発現もみられた(図24G)。
最後に、本発明の生体材料中のASCではMPのASCと比較して、血管内皮成長因子A、BおよびCのmRNA(VEGFA/B/C)の発現も有意に改善された(それぞれ図5H、5Iおよび5J)。VEGFは、血管発生および血管新生の調節に最も重要な成長因子の1つである。骨は極めて血管が発達した器官である(同時に、血管新生が骨形成の重要な調節因子となっている)ため、VEGFも骨格発生および出生後の骨修復に正に影響を及ぼす(Hu K et al,Bone 2016)。
これとは対照的に、本発明の生体材料ではMPのASCと比較して、in vivoの血管新生減少と関係のあるDNA結合タンパク質阻害剤(ID1)およびメタロペプチダーゼ阻害剤1(TIMP1)(Reed MJ et al,Microvasc Res 2003)がダウンレギュレートされていた(それぞれ図24Kおよび24L)。
全体として、以上の分子解析から、細胞が本発明の生体材料中の3D基質に埋め込まれているとき、ASCの血管新生促進能がアップレギュレートされることがわかる。
11.2.3.生体材料の成熟がその特性に及ぼす影響
ミネラル化レベルの評価
4週間後、8週間後、12週間後および25週間後の3D移植片の拡大写真では同じ肉眼レベルの構造(図6、上パネル)が明らかになり、マイクロCTで解析した。ミネラル化体積の百分率を求めたところ、4週間後が0.07%、8週間後が0.28%±0.33%であり、12週間後が1.24%±0.35%であり、25週間後が2,77%であった(図25、下パネル)。
したがって、成熟レベルが高いほどミネラル化が高い。
組織学的評価
解析した異なる組織で同程度の細胞充実度が定量化されたことから、組織の成熟が細胞含有量に及ぼす影響はみられなかった(データ不掲載)。
これとは対照的に、組織中のECMの割合は成熟レベルとともに増大し、4週間後のECMの割合が有意に低く、25週間後のECMの割合が有意に高かった(4週間後、8/12週間後および25週間後のECMはそれぞれ28±7%対33±11/34±11%対56±8%(p<0.05))(表8)。
様々な成熟時点の本発明の生体材料に関する組織形態学的解析。
著明なフォン・コッサ染色によって示されるように、12週間および25週間の成熟の時点でミネラル化度が高いことがわかった(データ不掲載)。
生物活性の評価
4週間、8週間、12週間および25週間の成熟の時点での生体材料の生物活性をタンパク質抽出、精製およびELISAによる成長因子(VEGF、IGF1、SDF-1α)の定量化の後に検討した(表9)。
4週間、8週間、12週間および25週間の成熟の時点での組織中のタンパク質および成長因子の含有量
実施例12:血管新生および骨原性特性に関するin vivo試験
12.1.材料および方法
12.1.1.ヌードラットを用いたin vivo実験
第0日、10個の本発明の生体材料(7.5週間の成熟期間にわたって、1.5cm3のCultispher GまたはCultispher Sとともに実施例10に記載した通りに培養したASC)の複製物をヌードラットの焼灼腰部筋に縫合した。移植の29日後、生体材料を回収して画像および組織学的検査により解析した。
12.1.2.Wistarラットを用いたin vivo実験
第0日、10個の本発明の生体材料(7.5週間の成熟期間にわたって、1.5cm3のCultispher GまたはCultispher Sとともに実施例10に記載した通りに培養したASC)の複製物をWistarラットの焼灼腰部筋に縫合した。移植の29日後、生体材料を回収して画像および組織学的検査により解析した。
実験期間を通して毎日、個体の全般的臨床状態を確認した。
小動物イメージング用の高解像度X線マイクロCTシステム、SkyScan1076を用いて、30例の標本にミネラル化の解析を実施した。CTvolおよびCTanソフトウェア(Skyscan)を用いて、スキャンの三次元再構築およびミネラル化組織の解析を実施した。
製品のin vivoの血管新生および骨誘導特性を評価するため、筋肉試料の組織学的解析を実施した(ヘマトキシリン-エオシン染色、マッソン・トリクロム染色、フォン・コッサ染色(組織中のミネラル化の位置を正確に特定する)、ヒト組織マーカーKu80染色(動物組織中のヒト起源細胞を確認する)およびCD3染色(組織中のCD3+免疫細胞の配分を明らかにする))。
12.2.結果
12.2.1.ヌードラットを用いたin vivo実験
in vivo実験中、苦痛の徴候も著明な病変の徴候もみられず、この製品が動物に有害作用を引き起こさないことが示された。
ヌードラットでは、第29日に実施したX線写真にミネラル化を示唆する放射線不透過性の構造物の存在が観察された(図26)。
ヌードラットの試料ではヒト細胞の存在が際立っていた。2つのグループで、ヒト細胞が存在する場合、辺縁部を除き、移植片部位の細胞のうちヒト細胞が平均して半分を占めていた。移植片部位には、ラット細胞のみが存在する辺縁部以外は、ラット起源の細胞とヒト起源の細胞が均等に分布していた。
12.2.2.Wistarラットを用いたin vivo実験
Wistarラットでは、第29日に実施したX線写真にミネラル化を示唆する放射線不透過性の構造物の存在が観察された(図27)。
ミネラル化の解析から、各移植片部位にミネラル化組織が存在することが示唆される。
フォン・コッサ染色から、ミネラル化が粒子上に局在していることがわかる(図28)。
実施例13:in vivo生物活性試験
13.1.材料および方法
13.1.1.試料の調製
約0.5gの生体材料(8週間の成熟期間にわたって、1.5cm3のCultispher Sとともに実施例10に記載した通りに培養したASC)の試料10個をヌードラット10個体の脊椎傍筋に移植するために調製した。さらに、Cultispher S粒子の約0.5gの試料2個を対照として用いた。
試料の成長因子含有量を評価するため、生体材料の試料をタンパク質の抽出および定量化用に調製した(VEGF、IGF1、SDF-1α)。
生体材料の品質を評価するため、試料1個をヘマトキシリン-エオシン(HE)染色およびフォン・コッサ染色(VK)用にホルモールで固定した。HE染色後、組織中の細胞数をカウントすることによって、脱細胞化処理の効果を評価した。
13.1.2.動物施設での飼育
動物は、獣医療組織による承認を受けている動物施設「Centre Preclinique Atlanthera」で飼育し、現時点での法律(実験目的で用いる動物に関する2013年2月1日の法令番号2013-118)に従ったあらゆる実験手順で用いた。試験開始前、動物を最低7日間順化させ、その間、動物の全般的状態を毎日追跡した。動物は、空調管理された動物舎で標準寸法のプラスチック製の箱の中に入れて飼育した。人工的な昼/夜の光周期を明期12時間と暗期12時間に設定した。全個体は、水を自由摂取させ、市販の固形飼料を自由摂取させた。耳標(リング)により各個体を識別した。
13.1.3.実験プロトコル
第0日、ヌードラット10個体の焼灼腰部筋に生体材料の複製物を縫合し、ヌードラット1個体の腰部筋に生じさせた筋焼灼区画内に粒子を単独で移植した。移植の29日後、生体材料が含まれている筋肉を回収して、画像および組織学的検査により解析した。
腰部筋内への移植
ラットに完全に麻酔をかけて、最良の条件下で外科手術を実施した。外科手術のほぼ30分前、ブプレノルフィン注射で無痛処置を開始した後、翌日、もう1度注射を実施した。
外科手術:各個体に、腰部の位置にある脊柱に沿って縦方向に皮膚切開を実施した。1個体のラットには、皮膚切開の両側に筋肉の区画を生じさせた(すなわち、腰部筋内に区画を生じさせた)。区画を焼灼した。この区画内に粒子を単独で移植した。10個体のラットには、生体材料を焼灼腰部筋に縫合した。外科処置後、外科用ステープルを用いて皮膚創傷を縫合した。
臨床経過観察
実験期間を通して毎日、個体の全般的臨床状態を確認した。週2回、呼吸器、眼球、心血管、胃腸管の徴候;運動活動および行動;発作の徴候;皮膚の評価;移植部位の炎症に重点を置いて詳細な臨床経過観察を実施した。
さらに、週2回、詳細な臨床経過観察と同時に体重測定を実施した。
終末処置および死後解析
第29日、ラットを放血により屠殺し、肉眼的評価を実施した。剖検では、死体の外観を観察し、内部の病変異常の可能性を示す病的体液喪失があれば記録した。
心臓、腎臓、脾臓、肝臓および肺に重点を置いて内臓の病変による変化を評価するため、胸腔および腹腔を大きく切開した。
移植片部位の肉眼的評価
筋肉の移植片部位を露出させ、局所組織反応ならびに移植片の存在および局在に重点を置いて詳細な肉眼的評価を実施した(X線撮影解析)。
筋肉の移植片部位を取り出した。中性に緩衝したホルマリン溶液で外植片を室温で48時間固定した。
3D組織形態計測解析
小動物イメージング用の高解像度X線マイクロCTシステム、SkyScan1076を用いて、標本にミネラル化の解析を実施した。
以下のパラメータ、すなわち、電源電圧:50kV;回転ステップ:0.5°;ピクセルサイズ:18μm;1つの位置につき1フレームを用いて、筋肉試料を室温でスキャンした。
CTvolおよびCTanソフトウェア(Skyscan)を用いて、スキャンの三次元再構築およびミネラル化組織の解析を実施した。
各試料について、骨ミネラル化組織のシグナルと同じシグナルの量(閾値40/255)を求めた(骨体積:BVとする)。用いた「組織体積」の値は、形成した移植片の体積である。
病理組織学的解析および2D組織形態計測解析
製品のin vivoの血管新生および骨誘導特性を評価するため、筋肉試料の組織学的解析を実施した。
ホルマリン固定した外植片を15%EDTA中で13日間脱灰した。次いで、試料を脱水し、パラフィンに包埋した。ミクロトームを用いて4~5μmの切片を切り出し、スライド上で伸ばした。150μm離れた2つの異なる位置で薄切を実施した。
この2つの薄切領域で(パラフィン包埋または凍結した標本の切片を用いて)ヘマトキシリン-エオシン(HE)、マッソン・トリクロム(MT)およびCD146の免疫組織化学を実施した。
デジタルスライドスキャナ(Nanozoomer、Hamamatsu社)を用いて、染色した切片全体の画像を取得した。NDPview2ソフトウェアを用いて、血管が占める面積の定量化(トリクロムマッソン、CD146)を以下の通りに実施した。組織の特徴に基づき、目的とする領域の輪郭を手動で描いて、切片上の「移植片部位」の面積を画定した。各血管の輪郭を手動で描いて、目的とする領域内で血管が占める面積を定量化した。血管に対応する表面および血管の数を「移植片部位」の総面積に対して報告した。
13.2.結果
13.2.1.組織学的解析
HE染色後、組織中の細胞数を求めた(図29):146.5±50.4個/mm2。
組織のフォン・コッサ染色から、粒子上に局在するミネラル化がわずかにみられた(図30)。
13.2.2.生体材料の生物活性に関するin vivo試験
苦痛の徴候も著明な病変の徴候もみられず、この製品が動物に有害作用を引き起こさないことが示された。実験を通して記録したラットの体重から、いずれの個体も、第2日に体重の増加はみられず、次いで、第2日~第28日に規則的な体重増加がみられることがわかった。多くの場合、外科手術直後に体重増加がみられなくなることが観察され、これは被験製品のいかなる毒性も示すものではないと考えられる。第2日~第28日に観察された規則的な体重増加は、粒子がラットの代謝に影響を及ぼさなかったことを裏付けるものである。in vivo実験終了時の剖検では、肉眼レベルで際立った器官の病変は一切みられなかった。
移植片部位のミネラル含有量
第29日に実施したX線写真では、生体材料を移植した全部位にミネラル化を示唆する放射線不透過性の構造物の存在が観察された(図31)。
筋肉内へのミネラル化組織形成の百分率を定量化するため、小動物イメージング用の高解像度X線マイクロCTシステム、SkyScan1076を用いて、「移植片部位」のミネラル化の解析を実施した。その結果を表10に示す。
小動物イメージング用の高解像度X線マイクロCTシステム、SkyScan1076の結果
この解析から、生体材料を移植した各部位のミネラル化組織の含有量が顕著であることが示唆され、BV/TVの平均値は0.118である。
移植片の血管新生
血管新生を明らかするため、線維性結合組織中の毛細血管の存在を検討した。
マッソンのトリクロム染色の後、移植片中および筋肉と移植片部位の間の接合部における血管の数/面積および血管密度を定量化した。
マッソンのトリクロム染色により、生体材料を用いた移植片には血管が新生されていることが明らかになり、その数値は40.8±18.5血管/mm2であった。
実施例14:高血糖/虚血異種間ラットモデルを用いたin vivo効果に関する試験
14.1.材料および方法
14.1.1.動物
250~300gの雌Wistarラット56個体にストレプトゾトシン(50mg/kg)を腹腔内投与した。ストレプトゾトシン投与の7~10日後、血糖レベルを尾静脈血から血糖検査ストリップにより測定した。グルコースレベルが11.1mMを超えたラットを高血糖であるとし、試験に含めた(n-42匹)。
Levigneら(Biomed Res Int 2013)に記載されている通りに各ラットの左肢に虚血を誘発した。剃毛した鼠経領域を縦方向に切開することにより、外腸骨動脈および大腿動脈を共通の腸骨動脈-伏在動脈から剥離した。虚血状態を誘起するため、左肢は剥離した動脈を共通の腸骨動脈から切除し、右肢は動脈を温存して、肢を非虚血性であるとした。いずれの外科処置も手術用顕微鏡(Carl Zeiss社、イェーナ、ドイツ)下で実施し、麻酔の導入に5%イソフルランの吸入、維持に3%イソフルランの吸入を用いてラットに麻酔をかけた。
ラットを無作為に3つのグループ:
-偽治療群(n=10、雌Wistarラット);
-Cultispher群(n=10、雌Wistarラット)、すなわち、粒子単独;
-生体材料群(n=14、雌Wistarラット)、すなわち、ASCと組織を形成するゼラチン粒子
に分けた。
14.1.2.被験品
約0.5gのCultispher粒子の試料を14例調製し、ガンマ線を照射した。
移植には約2cm2の生体材料(8週間の成熟期間にわたって、1.5cm3のCultispher Sとともに実施例10に記載した通りに培養したASC)の試料を14例調製した。
試料の成長因子含有量を評価するため、生体材料の試料1例をタンパク質の抽出および定量化用に調製した(VEGF、IGF1、SDF-1α)。
生体材料の品質を評価するため、試料をヘマトキシリン-エオシン(HE)染色用にホルモールで固定した。HE染色後、組織中の細胞数をカウントすることによって、脱細胞化処理の効果を評価した。
14.1.3.創傷治癒の肉眼的評価
移植後第0日、第15日、第24日および第34日、下肢の写真を撮影した。
創傷閉鎖を定量化するため、2名の異なる操作者がImage Jソフトウェアを用いて画像解析することにより、創傷面積を測定した。D0~D34の各時点で測定した創傷面積に関して曲線下面積を算出し、100%に固定した偽治療群と比較して表した。
14.1.4.創傷治癒の顕微鏡的評価
下肢を切開して創傷組織を取り出し、この最後のものを横方向に向けて、組織の厚さ全体にわたる組織学スライドを得た。5μmの組織学スライドを作製し、上皮(op ‘t Veld RC et al,Biomaterials 2018)および真皮のスコアリング(Yates C et al,Biomaterials 2007)にHEで染色した:
創傷(中心部および辺縁部)の代表的な切片3枚の上皮治癒のスコア:
-0:上皮細胞の移動がみられない、
-1:部分的な移動、
-2:角化を伴わない/部分的角化を伴う全面的移動、
-3:全面的角化を伴う全面的移動、
-4:肥厚の進行。
創傷(中心部および辺縁部)の代表的な切片3枚の真皮治癒のスコア:
-0:治癒がみられない、
-1:炎症性浸潤、
-2:肉芽組織の存在-線維増殖および血管新生、
-3:肉芽組織に代わるコラーゲン沈着が50%超、
-4:肥厚性線維化応答。
さらに、組織形態計測による血管面積の評価にマッソンのトリクロム染色を実施し、免疫応答および炎症性応答の評価にCD3、CD68免疫染色を実施した。さらに、KU80染色を実施して移植後のヒト細胞の存在を確認した。
14.2.結果
ストレプトゾトシン注射を実施したラット56個体のうち、42個体に高血糖症が認められ、試験に選択し、14個体に低血糖症が認められ、外科合併症が認められたため、試験から除外した。
14.2.1.創傷治癒の肉眼的評価
創傷の肉眼写真を図32に示す。生体材料群には、外科手術後第15日(D15)に他のグループ(偽治療対照および粒子単独)よりも良好な創傷治癒が見られる。この差は、虚血性創傷、非虚血性創傷ともに目で確認できるものである。
非虚血性創傷の曲線下面積の結果を図33に示す。Cultispher単独の移植では、創傷治癒が未治療個体と比較してそれぞれ23%低かった。これとは対照的に、本発明の生体材料で治療したグループには良好な創傷治癒(25%)がみられた。
非虚血性創傷のD0~D34の創傷面積の変化を図34に示す。本発明の生体材料で治療した創傷は、D21~D34の未治癒組織が他のグループと比較して少ないことに注目されたい。
14.2.2.創傷治癒の顕微鏡的評価
各時点で非虚血性創傷に関して評価した上皮および真皮のスコアを図35に示す。本発明の生体材料では、真皮も表皮も他のグループと比較して迅速であった。