JP7272999B2 - 油入変圧器 - Google Patents
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Description
本発明は、巻線に冷却ダクトを有した油入変圧器に関する。
変圧器の一種として、鉄心と巻線から構成される変圧器中身をタンクに入れ、絶縁油で浸し、絶縁油が外気と触れぬようにカバーで蓋をした油入変圧器がある。
油入変圧器の寿命は、巻線の絶縁紙により定義されており、絶縁紙の劣化は熱的要因によるところが大きい。絶縁紙の熱劣化が促進された状態で、異常電圧や短絡機械力などの電気的、機械的ストレスを受けると絶縁紙の破壊のリスクは高まる。油入変圧器の運転時の巻線の最高点温度は、電気学会電気規格調査会標準規格(JEC規格):JEC2200-2014(変圧器)によれば油入自冷式の場合、以下の式にて定義されている。
巻線の最高点温度=周囲温度+巻線温度上昇限度+巻線平均温度と最高点温度の差
この時、周囲温度は25°C、巻線温度上昇限度は油入変圧器の耐熱クラスをA種とした場合65K、巻線平均温度と最高点温度の差は15Kとされており、巻線は最高で105°Cの状態で連続運転されていることとなる。変圧器を通電し、巻線が発熱すると次第に油の温度も上昇してくる。油の温度が上がると、膨張し密度が小さくなり対流により上部に上がっていくため、油入変圧器の温度分布としては図1のようになる。図1に示すように、巻線上部では油温が高くなり、最高点温度も高くなる。そのため、巻線の上部は中央部や下部と比較して熱的により過酷な状態で運転していることになり、巻線上端部の絶縁紙は劣化が進みやすくなる。変圧器の寿命は、最も劣化が進みやすい巻線上端部の絶縁紙の劣化度合いで決まるともいえる。
巻線の最高点温度=周囲温度+巻線温度上昇限度+巻線平均温度と最高点温度の差
この時、周囲温度は25°C、巻線温度上昇限度は油入変圧器の耐熱クラスをA種とした場合65K、巻線平均温度と最高点温度の差は15Kとされており、巻線は最高で105°Cの状態で連続運転されていることとなる。変圧器を通電し、巻線が発熱すると次第に油の温度も上昇してくる。油の温度が上がると、膨張し密度が小さくなり対流により上部に上がっていくため、油入変圧器の温度分布としては図1のようになる。図1に示すように、巻線上部では油温が高くなり、最高点温度も高くなる。そのため、巻線の上部は中央部や下部と比較して熱的により過酷な状態で運転していることになり、巻線上端部の絶縁紙は劣化が進みやすくなる。変圧器の寿命は、最も劣化が進みやすい巻線上端部の絶縁紙の劣化度合いで決まるともいえる。
特許文献1には、変圧器の巻線の層間に、電線の巻回し方向に所定間隔おいて複数本の棒状片を挿入して冷却用ダクトを形成し、油を流すことにより、巻線を冷却するように構成した油入変圧器が開示されている。
前述の通り、油入変圧器の温度分布は、巻線上部にいくにつれて温度が高くなるため、油入変圧器の寿命は、最も劣化の進みやすい巻線上端部の絶縁紙の劣化度合いで決まる。すなわち、巻線上部の冷却効率を向上させ熱劣化を抑制することができれば、油入変圧器自身の寿命を延ばす効果が期待できる。
特許文献1記載の油入変圧器においては、巻線上部の冷却効率を向上させることは、考慮されていない。
本発明では、巻線に冷却ダクトを有した油入変圧器において、巻線上部の冷却効率を向上させ、巻線上端部の絶縁紙の局所的な熱劣化を抑制する冷却ダクト構造を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための、本発明の「油入変圧器」の一例を挙げるならば、
鉄心と巻線から構成される変圧器中身をタンクに入れ、絶縁油で浸した油入変圧器において、前記巻線に、電線の巻回し方向に間隔を開けて複数の棒状体を上下方向に配置し、隣り合う棒状体の間に上下方向の絶縁油の油道を形成した冷却ダクト構造を備え、巻線上部の油道の幅を、巻線下部の油道の幅よりも広くしたものである。
鉄心と巻線から構成される変圧器中身をタンクに入れ、絶縁油で浸した油入変圧器において、前記巻線に、電線の巻回し方向に間隔を開けて複数の棒状体を上下方向に配置し、隣り合う棒状体の間に上下方向の絶縁油の油道を形成した冷却ダクト構造を備え、巻線上部の油道の幅を、巻線下部の油道の幅よりも広くしたものである。
本発明によれば、現行の巻線構造は大きく変えることなく、巻線上部での温度上昇を抑制することができるため、巻線上端部での絶縁紙の局所的な熱劣化を抑制し、油入変圧器の長寿命化を図ることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。なお、実施の形態を説明するための各図において、同一の構成要素にはなるべく同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
本発明の実施例を説明する前に、従来の油入変圧器を説明する。
図2に、従来の巻線の構造の一例を示す。図2(a)は巻線の平面図、図2(b)は巻線の正面図である。鉄心10の周りには巻線20が設けられており、図示しないが、巻線20は、間に絶縁紙を介して電線が多層に巻回されている。巻線20の層間或いは表面には、電線の巻回し方向に間隔を開けて、上下方向に角柱状の複数の棒状体51が配置されている。間隔を開けて棒状体51を取り付けることで、隣り合う棒状体51の間に絶縁油の流路(油道)を形成し、冷却ダクト構造とすることで、巻線20の冷却を行うことができる。図は、巻線20の外表面にダクト構造を設けた例で、符号23はその上に巻き付けた外装絶縁紙であるが、複数の棒状体51の外側に更に巻線を施して、巻線の層間にダクト構造を設けるようにしてもよい。
図3に、従来の冷却ダクトの構造を示す。図3(a)は正面図、図3(b)は上面から見た図である。絶木やプレスボードなどの絶縁体から形成される、上下方向に同一幅の長方形状の棒状体51を、間隔を開けて等間隔で上下方向に配置をしている。水平方向に間隔を開けて複数の棒状体を上下方向に配置し、隣り合う棒状体の間に上下方向の絶縁油の油道52を形成している。図の例では、板状或いはシート状の台板50に複数の棒状体51が取り付けられている。
図4に、自冷式油入変圧器の絶縁油の循環のモデル図を示す。図において、鉄心10と巻線20で構成される変圧器中身が波リブタンク30に収容され、絶縁油40が満たされ、カバー35で蓋がされている。巻線20に設けた前述のダクトの隙間(油道)に冷却媒体である絶縁油40が入り込む。そして、発熱源である巻線20により絶縁油40に熱が伝わり、絶縁油の温度が上がると密度が軽くなり上部に上がる。この絶縁油の熱が、タンク壁や放熱器(波リブ)に伝わり、この熱はタンク壁や放熱器の表面から空気の自然対流によって外部に放出されることで冷却される。
図1に示すように、油入変圧器の温度分布は、巻線上部にいくにつれて温度が高くなるため、油入変圧器の寿命は、最も劣化の進みやすい巻線上端部の絶縁紙の劣化度合いで決まる。すなわち、巻線上部の冷却効率を向上させ熱劣化を抑制することができれば、油入変圧器自身の寿命を延ばす効果が期待できる。
本発明は、巻線に冷却ダクトを有した油入変圧器において、巻線上部の冷却効率を向上させ、巻線上端部の絶縁紙の局所的な熱劣化を抑制する冷却ダクト構造を提供する。
図5に、本発明における実施例1の冷却ダクト構造を示す。図5(a)は正面図、図5(b)は上面から見た図である。
図に示すように、冷却ダクトを構成する複数の棒状体55は、巻線の下部において幅が広く、巻線の上部において幅が狭い台形状に構成されている。そのため、隣り合う棒状体間の間隔は、巻線の下部において幅が狭く、巻線の上部において幅が広くなっている。棒状体55の材質は、絶木やプレスボードなどの絶縁性能を有する材料であればよい。台板50上に間隔を開けて複数の棒状体55を取り付け、巻線の層間、例えば一次巻線と二次巻線の間やそれぞれの巻線の層間に配置することにより、冷却ダクトを構成する。巻線のその他の構成は、図3の従来のものと同様である。
冷却ダクトを構成する棒状体55を、従来の長方形の形状から、台形状とすることで巻線の上側のダクトの隙間が広くなり、巻線により暖められた絶縁油が上部へ上がりやすい構造となっている。これにより、巻線上部での油の循環効率が向上し、巻線上部での温度上昇が抑制される効果が期待できる。
本実施例によれば、従来の油入変圧器の構造を大きく変えることなく、ダクトを構成する棒状体の形状を変えるのみで実現可能なため、簡易的な手法で巻線上部の冷却性能を改善することができる。巻線下部でのダクトの隙間は狭くなるが、油入変圧器の下部は、図1に示す通り、中央部や上部よりも温度が低いため問題とはならない。ダクトを構成する棒状体の形状は、台形に限らず三角形状等下部に比べて、上部でのダクトの隙間が広くなるような形状であればよい。三角形状とすることにより台形状よりもさらに巻線上部の油道の幅を広くすることができる。
図6に、本発明における実施例2の冷却ダクト構造を示す。図6(a)は正面図、図6(b)は上面から見た図である。
図に示すように、冷却ダクトを構成する複数の棒状体57は、上下方向に異なる幅の棒状体に分割されている。そして、上部棒状体57bの幅は、下部棒状体57aの幅よりも狭く構成されている。
冷却ダクトを構成する棒状体57を、上下方向に異なる幅の棒状体に分割し、上部棒状体57bの幅を下部棒状体57aの幅よりも狭く構成することにより、上側のダクトの隙間が広くなり、巻線により暖められた絶縁油が上部へ上がりやすい構造となっている。これにより、巻線上部での油の循環効率が向上し、上部での温度上昇が抑制される効果が期待できる。
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、棒状体を幅の異なる同一幅の長方形に分割したので、棒状体の製造が容易となる。
なお、図では棒状体を2つに分割したが、3つ以上に分割して、上側ほど幅を広くすればよい。また、図では、下側棒状体57aと上側棒状体57bとが接触しているが、下側棒状体57aと上側棒状体57bとの間に間隔を設けてもよい。
実施例1および実施例2で述べたように、本発明によれば、巻線に設けた冷却ダクト構造において、巻線上部の油道の幅を巻線下部の油道の幅よりも広くしたので、巻線上部での温度上昇を抑制することができ、巻線上端部での絶縁紙の局所的な熱劣化を抑制し、油入変圧器の長寿命化を図ることができる。
10 鉄心
20 巻線
23 絶縁紙
30 波リブタンク
35 タンクの蓋
40 絶縁油
45 絶縁油の循環経路
50 台板
51 従来構造の棒状体
52 油道(ダクトの隙間)
55 実施例1の台形状棒状体
57 実施例2の棒状体
20 巻線
23 絶縁紙
30 波リブタンク
35 タンクの蓋
40 絶縁油
45 絶縁油の循環経路
50 台板
51 従来構造の棒状体
52 油道(ダクトの隙間)
55 実施例1の台形状棒状体
57 実施例2の棒状体
Claims (5)
- 鉄心と巻線から構成される変圧器中身をタンクに入れ、絶縁油で浸した油入変圧器において、
前記巻線に、電線の巻回し方向に間隔を開けて複数の棒状体を上下方向に配置し、隣り合う棒状体の間に上下方向の絶縁油の油道を形成した冷却ダクト構造を備え、
巻線上部の油道の幅を、巻線下部の油道の幅よりも広くしたことを特徴とする油入変圧器。 - 請求項1に記載の油入変圧器において、
冷却ダクトを構成する前記複数の棒状体を、巻線下部よりも巻線上部の幅が狭い台形状とすることにより、巻線上部の油道の幅を、巻線下部の油道の幅よりも広くしたことを特徴とする油入変圧器。 - 請求項1に記載の油入変圧器において、
冷却ダクトを構成する前記複数の棒状体を三角形状とすることにより、巻線上部の油道の幅を、巻線下部の油道の幅よりも広くしたことを特徴とする油入変圧器。 - 請求項1に記載の油入変圧器において、
冷却ダクトを構成する前記複数の棒状体を、上下方向に分割した幅の異なる複数種類の棒状体で構成し、巻線下部に配置した棒状体の幅よりも巻線上部に配置した棒状体の幅を狭くすることにより、巻線上部の油道の幅を、巻線下部の油道の幅よりも広くしたことを特徴とする油入変圧器。 - 請求項1乃至4の何れか1項に記載の油入変圧器において、
前記冷却ダクト構造は、巻線の層間または巻線の表面に配置されていることを特徴とする油入変圧器。
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