JP7272916B2 - 分析装置及び分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、分析装置及び分析方法に関する。
電場のかかった気体中において負イオン又は正イオンを移動させることにより負イオン又は正イオンを分離し検出するイオン移動度分析(Ion Mobility Spectrometry、IMS)が知られている(例えば特許文献1、2参照)。IMSでは、通常、放射能、コロナ放電、UV照射、電子線などを利用して試料ガスをイオン化する。
また、電極基板と表面電極との間に中間層を設けた電子放出素子が知られている(例えば、特許文献3参照)。
特表2013-541701号公報 特表2003-527734号公報 特開2015-18637号公報
従来のIMSでは、試料ガスをイオン化する際に、負イオン、正イオン、ラジカル、中性分子など様々な中間物質が発生し、これらの相互作用で様々なイオンが発生する。このため、多くのピークを有するスペクトルが測定され、このスペクトルから試料ガスを識別することが難しくなっている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、試料ガスの成分を高精度で分析することができる分析装置を提供する。
本発明は、電子放出素子と、紫外線照射部と、検出部と、電場形成部とを備え、前記電子放出素子は、下部電極、表面電極及び前記下部電極と前記表面電極との間に配置された中間層を有し、かつ、前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加することによりイオン化領域に向けて電子を放出するように設けられ、かつ、前記イオン化領域において放出した電子により直接的又は間接的に負イオンを生成するように設けられ、前記紫外線照射部は、前記イオン化領域に向けて紫外線を照射することにより直接的に又は間接的に正イオンを生成するように設けられ、前記電場形成部は、前記イオン化領域で生成した負イオン又は正イオンが前記検出部へ向かって移動するイオン移動領域に電場を形成するように設けられ、前記検出部は、前記イオン移動領域を通過した負イオン又は正イオンを検出するように設けられた分析装置を提供する。
本発明の分析装置では、電子放出素子から放出した低エネルギー電子により試料ガスをイオン化できるため、試料ガスをイオン化する際に発生する中間物質の種類を減らすことができ、発生するイオン種を少なくすることができる。このため、ピークの少ないスペクトルが測定され、このスペクトルに基づき試料の成分を高精度で分析をすることができる。
本発明の分析装置では、紫外線照射部から照射した紫外線により試料ガスをイオン化できるため、試料ガスから正イオンを発生させることができ、この正イオンを検出することができる。このため、多くの種類の試料成分を検出・識別することが可能になる。
本発明の分析装置では、電子放出素子と紫外線照射部との両方を用いて試料ガスをイオン化できるため、電子放出素子又は紫外線照射部を単独でイオン化する場合とは異なるイオン種を発生させることが可能になる。このため、電子放出素子又は紫外線照射部を単独で用いてイオン化した場合とは異なるIMSスペクトルを測定することができる。
本発明の分析装置は、電子放出素子を単独で用いてイオン化した場合に測定されるIMSスペクトルと、紫外線照射部を単独で用いてイオン化した場合に測定されるIMSスペクトルと、電子放出素子と紫外線照射部の両方で用いてイオン化した場合に測定されるIMSスペクトルとを組み合わせて同一試料ガスを成分分析することができるため、試料ガスの成分を高精度で分析することができる。
本発明の分析装置では、電子放出素子又は紫外線照射部を用いて試料ガスをイオン化するため、装置を小型化することが可能である。
本発明の一実施形態の分析装置の概略断面図である。 本発明の一実施形態の分析装置の概略断面図である。 本発明の一実施形態の分析装置の概略断面図である。 本発明の一実施形態の分析装置の概略断面図である。 本発明の一実施形態の分析装置の概略断面図である。 本発明の一実施形態の分析装置の概略断面図である。
本発明の分析装置は、電子放出素子と、紫外線照射部と、検出部と、電場形成部とを備え、前記電子放出素子は、下部電極、表面電極及び前記下部電極と前記表面電極との間に配置された中間層を有し、かつ、前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加することによりイオン化領域に向けて電子を放出するように設けられ、かつ、前記イオン化領域において放出した電子により直接的又は間接的に負イオンを生成するように設けられ、前記紫外線照射部は、前記イオン化領域に向けて紫外線を照射することにより直接的に又は間接的に正イオンを生成するように設けられ、前記電場形成部は、前記イオン化領域で生成した負イオン又は正イオンが前記検出部へ向かって移動するイオン移動領域に電場を形成するように設けられ、前記検出部は、前記イオン移動領域を通過した負イオン又は正イオンを検出するように設けられたことを特徴とする。
本発明の分析装置は、静電ゲート電極を備えてもよい。また、前記静電ゲート電極は、イオン化領域からイオン移動領域への負イオン又は正イオンの注入を制御するように設けられることが好ましく、前記電場形成部は、負イオン又は正イオンが検出部へ向かって移動するような電位勾配をイオン移動領域に形成するように設けられたことが好ましい。
前記下部電極又は前記表面電極は、電場形成部の一部として機能するように設けられてもよい。また、前記電場形成部は、負イオン又は正イオンが前記検出部へ向かって移動するような電位勾配をイオン化領域及びイオン移動領域に形成するように設けられることが好ましい。このことにより、イオン化領域で生成されたイオンを検出部へ向かって移動させることができる。
本発明の分析装置は、電源部を含む制御部を備えてもよい。また、前記電場形成部は、第1電極と、第1電極に対向するように配置された第2電極とを備えることが好ましい。前記制御部は、非対称の分散電圧及び補償電圧を第1電極又は第2電極に印加するように設けられたことが好ましい。
本発明の分析装置は、対向電極を備えてもよい。また、前記対向電極は、電子放出素子の表面電極に対向するように配置されたことが好ましい。このことにより、電子放出素子から放出された電子又は電子から生成された負イオンがイオン化領域へ移動するような電場を形成することができる。
前記電子放出素子及び前記紫外線照射部は、紫外線照射部が照射した紫外線が電子放出素子に直接照射されないように配置されることが好ましい。このような構成により、紫外線照射部が照射した紫外線が電子放出素子に照射されることを抑制することができ、電子放出素子が紫外線に起因するダメージを受けることを抑制することができる。具体的には、電子放出素子2に含まれるシリコーン樹脂などの絶縁性樹脂が紫外線により変質することを抑制することができる。このため、電子放出素子の電子放出特性が変化することを抑制することができる。
本発明の分析装置は、遮光部を備えることが好ましく、遮光部は、紫外線照射部が照射した紫外線が電子放出素子に直接照射されないように配置されることが好ましい。このような構成により、紫外線照射部が照射した紫外線が電子放出素子に照射されることを抑制することができ、電子放出素子が紫外線に起因するダメージを受けることを抑制することができる。このため、電子放出素子の電子放出特性が変化することを抑制することができる
前記電子放出素子又は前記紫外線照射部は、交換可能に設けられたことが好ましい。
本発明は、電子放出素子から電子を放出させ、紫外線照射部から紫外線を照射することにより試料ガスをイオン化するステップと、試料ガスから生成されたイオンを電場が形成されたイオン移動領域を通過させるステップと、イオン移動領域を通過したイオンを検出するステップとを含む分析方法も提供する。
以下、複数の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
第1実施形態
図1は本実施形態の分析装置の概略断面図である。
本実施形態の分析装置40は、電子放出素子2と、紫外線照射部3と、検出部4と、電場形成部5とを備え、電子放出素子2は、下部電極6、表面電極7及び下部電極6と表面電極7との間に配置された中間層8を有し、かつ、下部電極6と表面電極7との間に電圧を印加することによりイオン化領域11に向けて電子を放出するように設けられ、かつ、イオン化領域11において放出した電子により直接的又は間接的に負イオンを生成するように設けられ、紫外線照射部3は、イオン化領域11に向けて紫外線を照射することにより直接的に又は間接的に正イオンを生成するように設けられ、電場形成部5は、イオン化領域11で生成した負イオン又は正イオンが検出部4へ向かって移動するイオン移動領域12に電場を形成するように設けられ、検出部4は、イオン移動領域12を通過した負イオン又は正イオンを検出するように設けられる。
本実施形態の分析装置40は、分析装置40を制御するように設けられた制御部9を有することができる。制御部9は、例えば、CPU、メモリ、タイマー、入出力ポートなどを有するマイクロコントローラを含むことができる。また、制御部9は、電源部10、電位制御回路15、検出回路30などを含むことができる。
本実施形態の分析装置40は、試料ガスをイオン移動度分析(IMS)で分析する装置である。分析装置40はイオン移動度分析装置であってもよい。分析装置40は、ドリフトチューブ方式IMSで分析する装置であってもよく、アスピレーション方式IMSで分析する装置であってもよく、フィールド非対称方式IMS(FAIMS)で分析する装置であってもよい。本実施形態では、ドリフトチューブ方式IMSで分析する装置について説明する。
ドリフトチューブ方式IMSでは、試料注入口32から注入された試料ガスをイオン化領域11においてイオン化し、生成したイオンを電場によりコレクター13(検出部4)へ向けてイオン移動領域12を移動させ、移動してきたイオンをコレクター13を用いて検出する。この際、イオン種によりイオン移動領域12を移動する速さが異なるため、コレクター13を用いて測定される移動時間スペクトル(IMSスペクトル)に各種イオンのピークが現れる。このピークを有するIMSスペクトルから試料ガスに含まれる成分を識別する。
試料注入口32は、イオン化領域11に試料ガスを供給するように設けられる。試料ガスは、気体試料であってもよく、液体試料などを気化させた試料であってもよい。また、試料ガスは、キャリアガスと共にイオン化領域11に供給されてもよい。キャリアガスは例えば、空気とすることができる。また、キャリアガスは、空気清浄フィルターにより清浄化された空気(清浄乾燥空気)であることが好ましい。
試料ガスをイオン化領域11に供給する前に、試料ガスを含まないキャリアガスをイオン化領域11に供給してもよい。このことにより、電子放出素子2が汚染されることを抑制することができ、電子放出素子2を長寿命化することが可能になる。また、次の測定までの必要な間隔(リカバリー時間)を短縮することができる。
また、このキャリアガスは50℃以上の温度であることが好ましい。このことにより、前回の測定で電子放出素子2などに付着した汚染物質を除去することが可能になる。
図1に示した分析装置40では、試料ガスが電子放出素子2の後ろ側(電子放出方向の反対方向)から供給され電子放出素子2を回り込み電子放出素子2の前方(電子放出方向)のイオン化領域11に共有されるように試料注入口32が設けられているが、試料注入口32は、電子放出素子2の側方から電子放出素子2の前方のイオン化領域11に供給されるように設けられてもよい。
ドリフトガス注入口33は、ドリフトガスを分析チャンバー29に注入するように設けられた部分である。ドリフトガスは、イオン移動領域12においてイオンの移動方向とは逆方向に流すガスであり、イオンがイオン移動領域12を移動する際の抵抗となるガスである。ドリフトガスは、乾燥空気であってもよく、乾燥窒素ガスであってもよく、不活性ガスであってもよい。他にもCO2ガスやイオン化を補助するためのドーパントをガスに混合させてもよい。ドリフトガス注入口33は、圧縮気体シリンダーの気体を分析チャンバー29に注入するように設けてもよく、ポンプにより気体を分析チャンバー29に注入するように設けてもよく、排気口34が分析チャンバー29の気体を強制排気することにより自然に気体を分析チャンバー29に吸い込むように設けてもよい。また、乾燥剤中を流通させた後のドリフトガスを分析チャンバー29に注入してもよい。また、ドリフトガス注入口33は、排気口34により分析チャンバー29から排出された気体を浄化した後の気体を分析チャンバー29に供給するように設けられてもよい。また、ドリフトガスを分析チャンバー29に注入する前にフィルターを用いてドリフトガスに含まれる不純物を除去してもよい。
排気口34は、分析チャンバー29の気体を排出するように設けられる。排気口34は、ドリフトガス、キャリアガス及び試料ガスを分析チャンバー29から排出するように設けられる。排気口34は、排気ファンなどにより分析チャンバー29の気体を強制排気するように設けられてもよく、分析チャンバー29の気体を自然排気するように設けられてもよい。排気口34は例えば、イオン化領域11の側壁に配置することができる。
イオン化領域11では、電子放出素子2から放出される電子により試料ガスを直接的又は間接的にイオン化してもよく、紫外線照射部3から照射される紫外線により試料ガスを直接的又は間接的にイオン化してもよく、電子放出素子2から放出される電子及び紫外線照射部3から照射される紫外線の両方により試料ガスを直接的又は間接的にイオン化してもよい。
電子放出素子2は、表面電極7から電子をイオン化領域11へ向けて放出するように設けられた素子であり、この放出された電子により直接的又は間接的に試料ガスをイオン化し負イオンを生成するための素子である。
電子放出素子2は、分析装置40から取り外すことができるように設けることができる。このことにより、電子放出素子2を交換することが可能になる。また、分析装置40は、電子放出素子2を組み込んだユニットを分析装置40から取り外すことができるように設けられてもよい。このことにより、ユニットごと電子放出素子2を交換することが可能になる。
また、電子放出素子2は、周りからの放電を防ぐように絶縁処理が施されていてもよい。
電子放出素子2は、下部電極6と、表面電極7と、下部電極6と表面電極7との間に配置された中間層8とを有する。
表面電極7は、電子放出素子2の表面に位置する電極である。表面電極7は、好ましくは10nm以上100nm以下の厚さを有することができる。また、表面電極7の材質は、例えば、金、白金である。また、表面電極7は、複数の金属層から構成されてもよい。
表面電極7は、40nm以上の厚さを有する場合であっても、複数の開口、すき間、10nm以下の厚さに薄くなった部分を有してもよい。中間層8を流れた電子がこの開口、すき間、薄くなった部分を通過又は透過することができ、表面電極7から電子を放出することができる。このような開口、すき間、薄くなった部分は、例えば、下部電極6と表面電極7との間に電圧を印加することによっても形成することができる。
下部電極6は、中間層8を介して表面電極7と対向する電極である。下部電極6は、金属板であってもよく、絶縁性基板上もしくはフィルム上に形成した金属層又は導電体層であってもよい。また、下部電極6が金属板からなる場合、この金属板は電子放出素子2の基板であってもよい。下部電極6の材質は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルなどである。下部電極6の厚さは、例えば200μm以上1mm以下である。
中間層8は、表面電極7と下部電極6との間に電圧を印加することにより形成される電界により電子が流れる層である。中間層8は、半導電性を有することができる。中間層8は、絶縁性樹脂、絶縁性微粒子、金属酸化物のうち少なくとも1つを含むことができる。絶縁性樹脂は、例えば、シリコーン樹脂である。金属酸化物は、例えばポーラスアルミナである。また、中間層8は導電性微粒子を含むことが好ましい。導電性微粒子は、例えば、金微粒子、銀微粒子、白金微粒子、およびパラジウム微粒子等である。
また、中間層8は、無機材料からなることが好ましい。このことにより、紫外線照射部3から照射される紫外線により中間層8が変質することを抑制することができ、電子放出素子2の電子放出特性が変化することを抑制することができる。
中間層8の厚さは、例えば、0.5μm以上1.8μm以下とすることができる。
電子放出素子2は、表面電極7と下部電極8との間に絶縁層27を有してもよい。この絶縁層27は、開口を有することができる。絶縁層27の開口は、表面電極7の電子放出領域を規定するように設けられる。絶縁層27には電子が流れることができないため、絶縁層27の開口に対応する中間層8に電子が流れ表面電極7から電子が放出される。従って、開口を有する絶縁層27を設けることにより、表面電極7に形成される電子放出領域が規定される。電子放出領域は、例えば5mm角の領域とすることができる。
表面電極7及び下部電極6はそれぞれ制御部9の電源部10又は電位制御回路15と電気的に接続することができる。電位制御回路15を用いて下部電極6の電位を表面電極7の電位と実質的に同じにすると、中間層8には電流は流れず電子放出素子2から電子は放出されない(電子放出素子2がオフ状態となる)。
電位制御回路15を用いて下部電極6の電位が表面電極7の電位よりも低くなるように下部電極6と表面電極7との間に電圧を印加すると中間層8に電流が流れ、中間層8を流れた電子が表面電極7を通過しイオン化領域11へ向けて放出される(電子放出素子2がオン状態となる)。電子放出素子2をオン状態とするために下部電極6と表面電極7との間に印加する電圧は、例えば5V以上40V以下とすることができる。
電子放出素子2のオン状態とオフ状態の切り換えは制御部9により制御される。
また、電位制御回路15は、下部電極6又は表面電極7が電場形成部5として機能するように下部電極6及び表面電極7の電位を調節することができる。
電子放出素子2からイオン化領域11へ放出された電子は、直ちにガス分子と衝突しガス分子の負イオンを形成する(電子付着現象(非解離性電子付着、解離性電子付着))。試料注入口32からイオン化領域11へ試料ガスが供給されるため、表面電極7付近に試料ガスに含まれる成分が存在するとき、表面電極7から放出された電子が試料ガスに含まれる成分に衝突し負イオンが生成する。また、生成した負イオンが他の成分又は他のイオンと反応し異なる負イオンが生成する場合がある。
電場形成部5は、電子放出素子2から放出された電子又は電子から生成された負イオンをイオン化領域11へと移動させるように電場を形成することができる。
キャリアガス又はドリフトガスが空気である場合、表面電極7付近には酸素ガスが豊富に存在するため、表面電極7から放出された電子が酸素ガスに衝突し、酸素の負イオンが生成される。この酸素の負イオンは、イオン化領域11において試料ガスに含まれる成分に電荷を受け渡し試料ガスに含まれる成分の負イオンを生成する。また、酸素の負イオンと試料ガスに含まれる成分とが反応し負イオンが生成される場合がある。従って、電子放出素子2を用いてイオン化領域11に試料ガスに含まれる成分の負イオンを間接的に生成することができる。
紫外線照射部3は、イオン化領域11に向けて紫外線を照射するように設けられた部分であり、照射した紫外線により試料ガスがイオン化され直接的に又は間接的に正イオンが生成される。
具体的には、紫外線照射部3から照射された紫外線をイオン化領域11の気体が吸収し、光イオン化が引き起こされ、正イオンが生成される。また、生成した正イオンが他の成分と反応し正イオンが生成される場合がある。光イオン化では負イオンが生成される場合もある。
紫外線照射部3は、例えば、紫外線LED、紫外線ランプ(水銀ランプなど)などである。また、紫外線照射部3による紫外線照射は、制御部9により制御される。
紫外線照射部3は、分析装置40から取り外すことができるように設けることができる。このことにより、紫外線照射部3を交換することが可能になる。また、分析装置40は、紫外線照射部3を組み込んだユニットを分析装置40から取り外すことができるように設けられてもよい。このことにより、ユニットごと紫外線照射部3を交換することが可能になる。
紫外線照射部3は、紫外線照射部3から照射される紫外線が直接電子放出素子2に照射されないように配置することができる。このことにより、紫外線照射部3から照射される紫外線で電子放出素子2が劣化し電子放出素子2の電子放出特性が変化することを抑制することができる。
分析装置40は、電子放出素子2と紫外線照射部3との両方を備えるため、電子放出素子2を用いて試料ガスから負イオンを生成することができ、紫外線照射部3を用いて試料ガスから正イオンを生成することができる。従って、分析装置40は、同一試料ガスについて、電子放出素子2を用いて試料ガスを負イオン化して分析することと、紫外線照射部3を用いて試料ガスを正イオン化して分析することの両方を行うことができる。このため、分析装置40は試料ガスを高精度で分析することができる。
電子放出素子2からイオン化領域11へ向けて電子を放出させ、紫外線照射部3からイオン化領域11へ向けて紫外線を照射すると、放出電子によるイオン化及び紫外線による光イオン化の両方により負イオン又は正イオンが生成される。また、生成した負イオン又は正イオンが他の成分と反応し負イオン又は正イオンが生成される場合がある。
電子放出素子2による電子放出と紫外線照射部3による紫外線照射は、同時に放出・照射してもよく、時間差をつけて交互に放出・照射してもよい。
電場形成部5は、イオン化領域11で生成した負イオン又は正イオンが検出部4へ向かって移動するイオン移動領域12に電場を形成するように設けられる。ドリフトチューブ方式IMSでは、電場形成部5は、イオン化領域11で生成した負イオン又は正イオンがコレクター13(検出部4)へ向かって移動するような電位勾配をイオン化領域11及びイオン移動領域12に形成するように設けられる。
検出部4で負イオンを検出する場合、電場形成部5は、イオン化領域11側の電位が低く検出部4側の電位が高い電位勾配をイオン化領域11及びイオン移動領域12に形成する。この電位勾配により、イオン化領域11で生成した負イオンを検出部4に向かって移動させることができる。
検出部4で正イオンを検出する場合、電場形成部5は、イオン化領域11側の電位が高く検出部4側の電位が低い電位勾配をイオン化領域11及びイオン移動領域12に形成する。この電位勾配により、イオン化領域11で生成した正イオンを検出部4に向かって移動させることができる。
従って、検出部4で負イオンを検出する場合と、検出部4で正イオンを検出する場合とで、電場形成部5で形成する電位勾配が異なる(印加される電圧極性が異なる)。電場形成部5で形成する電位勾配は制御部9により制御される。
電場形成部5は、複数の電場形成用電極16a~16g(これらを電場形成用電極16という)から構成されてもよい。電場形成用電極16は、イオン化領域11及びイオン移動領域12に電位勾配を形成することができればその形状は限定されないが、例えば、リング状電極であってもよく、アーチ状電極であってもよい。複数の電場形成用電極16は、リング内部又はアーチ内側にイオン移動領域12が形成されるように一列に並ぶ。また、電場形成部5を構成する複数の電場形成用電極16は、それぞれ制御部9の電源部10又は電位制御回路15と電気的に接続する。
電子放出素子2の下部電極6又は表面電極7は、電場形成部5の一部として機能するように設けられてもよい。この場合、下部電極6の電位又は表面電極7の電位は、複数の電場形成用電極16と共にイオン化領域11及びイオン移動領域12に電位勾配を形成するように電位制御回路15により調節される。この場合、電子放出素子2の後ろ側に配置された電場形成用電極16aは省略可能である。
例えば、紫外線照射部3から紫外線を照射することによりイオン化領域11にイオンを生成する場合、電子放出素子2の下部電極6又は表面電極7を用いてイオン化領域11に電位勾配を形成することができる。
電場形成部5に含まれる隣接する2つの電場形成用電極16は抵抗体を挟んで電気的に接続することができる。このことにより隣接する2つの電場形成用電極16の間に電位差を生じさせることができ、それぞれの電極間にこの電位差を生じさせることができる。このため、イオン化領域11及びイオン移動領域12に電位勾配を形成することができる。
例えば、図1に示した分析装置40では、電場形成部5は、複数の電場形成用電極16a~16gから構成され、隣接する2つの電場形成用電極16は抵抗体を挟んで電気的に接続している。また、複数の電場形成用電極16のうち最も検出部4に近い電極9gは、グリッド電極25に抵抗体を挟んで電気的に接続している。また、グリッド電極25は例えばグラウンドに接続している。また、検出部4から最も遠い電極16aの電位を電位制御回路15により制御することができる。
例えば、検出部4で負イオンを検出する場合、電位制御回路15は、電極16aの電位が例えば-1080Vとなるように電圧を印加することができる。また、グリッド電極25はグラウンドに接続するため0Vとなる。また、隣接する2つの電場形成用電極16は抵抗体を挟んで電気的に接続するため、一列に並んだ複数の電場形成用電極16の電位は検出部4に近づくに従い階段状に高くなる。このため、イオン化領域11及びイオン移動領域12に検出部4に近づくに従い電位が徐々に高くなる電位勾配を形成することができる。ただし、この電位勾配は、静電ゲート電極14近辺において静電ゲート電極14の電位により変化する。
また、例えば、検出部4で正イオンを検出する場合、電位制御回路15は、電極16aの電位が例えば+1080Vとなるように電圧を印加することができる。このことにより、イオン化領域11及びイオン移動領域12に検出部4に近づくに従い電位が徐々に低くなる電位勾配を形成することができる。ただし、この電位勾配は、静電ゲート電極14近辺において静電ゲート電極14の電位により変化する。
また、電子放出素子2を用いて試料ガスをイオン化する場合、イオン化領域11及びイオン移動領域12に形成される電位勾配を考慮して電位制御回路15により下部電極6及び表面電極7の電位を調節することができる。
静電ゲート電極14は、イオン化領域11とイオン移動領域12とを仕切る電極であり、イオン化領域11において生成したイオンのイオン移動領域12への注入をイオンと静電ゲート電極14との静電相互作用を利用して制御する電極である。
静電ゲート電極14は、リング状電極であってもよく、グリッド電極であってもよく、リング状電極の開口にグリッド電極を設けた電極であってもよい。静電ゲート電極14は、電場形成部5を構成する複数の電場形成用電極16と共に一列に並べて配置することができる。静電ゲート電極14は、制御部9の電位制御回路15と電気的に接続することができる。また、静電ゲート電極14は、電場形成部5により形成される電位勾配を変化させることができるように設けられる。
制御部9は、静電ゲート電極14の電位を変化させて静電ゲート電極14のオープン状態とクローズ状態とを切り替えることができるように静電ゲート電極14の電位を制御する。
静電ゲート電極14がクローズ状態の場合、制御部9は、静電ゲート電極の電位がイオン化領域11で生成したイオンが静電相互作用により静電ゲート電極14に近づくことができない電位、又はイオン化領域11で生成したイオンが静電ゲート電極14に吸い寄せられるような電位となるように静電ゲート電極に印加する電圧を制御することができる。この場合、静電ゲート電極14の位置に電位の障壁又は電位が低下した領域が形成される。
制御部9が、電位の障壁又は電位が低下した領域が形成されないように静電ゲート電極14の電位を調節することにより静電ゲート電極14をオープン状態とすることができる。
制御部9により、静電ゲート電極14がオープン状態となる電位範囲よりも高い電位から前記電位範囲よりも低い電位となるように静電ゲート電極14に印加する電圧を瞬間的に変化させた場合、又は制御部9が静電ゲート電極14がオープン状態となる電位範囲よりも低い電位から前記電位範囲よりも高い電位となるように静電ゲート電極14に印加する電圧を瞬間的に変化させた場合、静電ゲート電極14は、クローズ状態→オープン状態→クローズ状態と瞬間的に変化する。従って、制御部9を用いてこのように静電ゲート電極14に印加する電圧を変化させることにより、静電ゲート電極14をごく短い時間だけオープン状態とすることができ、イオン化領域11のイオンをこの短い時間にだけイオン移動領域12に注入することができる。イオンがイオン移動領域12に注入される時間は例えば0.1μ秒間以上0.1m秒間以下とすることができる。このことにより検出ピークをシャープにすることができる。
検出部4で負イオンを検出する場合、隣接する電場形成用電極16よりも高い電位に設定された静電ゲート電極14を、隣接する電場形成用電極16より低い電位に切り替えることにより、負イオンを検出部4に向かって移動させることができる。
検出部4で正イオンを検出する場合、隣接する電場形成用電極16よりも低い電位に設定された静電ゲート電極14を、隣接する電場形成用電極16より高い電位に切り替えることにより、正イオンを検出部4に向かって移動させることができる。
イオン移動領域12に注入された負イオン又は正イオンは、電位制御回路15が電場形成部5、グリッド電極25に電圧を印加することにより形成される電位勾配によりイオン移動領域12をコレクター13(検出部4)へと向かって移動する。また、イオン移動領域12において検出部4側から静電ゲート電極14側に向かって流れるドリフトガスは、静電ゲート電極14から検出部4へと向かって移動する負イオン又は正イオンの抵抗となる。この抵抗の大きさ(イオンの移動度)はイオン種により異なる。一般的に移動度はイオンの衝突断面積に反比例するため、イオンの衝突断面積が大きいほどイオンがコレクター13に到達するためにかかる時間が長くなる。従って、静電ゲート電極14によりイオン移動領域12に注入されてからコレクター13へと到達するまでの時間(移動時間、ピーク位置)が負イオンのイオン種又は正イオンのイオン種により異なる。従って、この移動時間(ピーク位置)に基づき負イオン又は正イオンを特定することが可能になる。また、試料ガスに含まれる複数の成分から生成した負イオン又は正イオンをイオン移動領域12において分離することができる。
また、負イオン又は正イオンが静電ゲート電極14から検出部4まで移動する時間は装置の設計(静電ゲート電極14から検出部4までの距離や印加電圧)により異なるが、小型の検出器の場合であれば、負イオン又は正イオンは検出部4に数ミリ秒で到達するため、分析装置40による1回の測定は数ミリ秒で終わる。
検出部4は、電位勾配によりイオン移動領域12を移動してきた負イオン又は正イオンを検出するように設けられる。検出部4は、例えば、電位イオン検出器、マルチチャンネルプレート、フェデラーカップなどである。
検出部4は、負イオンの電荷又は正イオンの電荷を集める金属製のコレクター13を有することができる。また、コレクター13は制御部9の検出回路30と電気的に接続することができる。また、この検出回路30は、コレクターに電荷が溜まることにより生じる電流を測定するように設けられる。この測定値からIMSスペクトルを得ることができる。具体的には、静電ゲート電極14の電位を中間電位に切り替えてからイオンが検出部4に到達するまでのイオンの飛行時間を横軸に、検出部4の信号強度を縦軸にプロットすることによりIMSスペクトルが得られる。
試料ガスなどから複数の負イオン又は複数の正イオンが生成される場合、各イオンはイオン移動領域12において分離されて検出部4に到達するため、IMSスペクトルは、各イオンの移動時間に対応したピークを有する。
このピーク位置(イオンの移動時間)はイオン種により異なるため、試料ガスに含まれる成分の種類を特定することが可能になる。また、ピーク面積から試料ガスに含まれる成分の濃度を定量分析することが可能になる。
また、分析装置40により1つの試料ガスについて複数回連続して測定を行う場合、それぞれの測定の検出曲線を積算することができる。このことにより、分析装置40の電気ノイズの影響を減らすことができるため、検出感度を向上させることができる。積算回数は例えば、10回とすることができる。
分析装置40は、検出部4(コレクター13)とイオン移動領域12との間にグリッド電極25を有することができる。また、グリッド電極25を設けることにより、イメージ電流の発生を抑えることができる。
分析装置40による1回の測定は短時間で終わるため、1つの試料ガスについて複数の測定モードで測定することが可能である。例えば、電子放出-負イオン検出モード、紫外線照射-正イオン検出モード、電子放出-紫外線照射-負イオン検出モード、電子放出-紫外線照射-正イオン検出モードなどで試料ガスを測定することができる。
電子放出-負イオン検出モードは、電子放出素子2から電子を放出させることによりイオン化領域11において負イオンを生成し、この負イオンをイオン移動領域12を移動させ検出部4で検出する測定モードである。この測定モードでは、電子放出素子2から放出した低エネルギー電子により試料ガスをイオン化できるため、試料ガスをイオン化する際に発生する中間物質の種類を減らすことができ、発生するイオン種を少なくすることができる。このため、ピークの少ないIMSスペクトルが測定され、このIMSスペクトルに基づき試料ガスの成分を高精度で分析をすることができる。
紫外線照射-正イオン検出モードは、紫外線照射部3から紫外線を照射することによりイオン化領域11において正イオンを生成し、正イオンをイオン移動領域12を移動させ検出部4で検出する測定モードである。
電子放出-紫外線照射-負イオン検出モードは、電子放出素子2から電子を放出させ紫外線照射部3から紫外線を照射することによりイオン化領域11において負イオン及び正イオンを生成し、負イオン及び正イオンのうち負イオンをイオン移動領域12を移動させ検出部4で検出する測定モードである。電子放出素子2による電子放出と紫外線照射部3による紫外線照射は、同時に放出・照射してもよく、時間差をつけて交互に放出・照射してもよい。
電子放出-紫外線照射-正イオン検出モードは、電子放出素子2から電子を放出させ紫外線照射部3から紫外線を照射することによりイオン化領域11において負イオン及び正イオンを生成し、負イオン及び正イオンのうち正イオンをイオン移動領域12を移動させ検出部4で検出する測定モードである。電子放出素子2による電子放出と紫外線照射部3による紫外線照射は、同時に放出・照射してもよく、時間差をつけて交互に放出・照射してもよい。
これらの測定モードでは、イオン化領域11において生成するイオン種又はイオン移動領域12を検出部4へ向かって移動するイオン種が異なるため、得られるIMSスペクトルのピーク位置、ピーク形状、ピーク強度などが異なる。従って、複数のIMSスペクトルを利用して試料ガスを高精度で分析することができる。
また、分析装置40は、試料ガスをイオン化領域11に供給していない状態(キャリアガス及びドリフトガスをイオン化領域11に供給)で、上記の複数の測定モードで測定を行うことができる。このことにより、キャリアガス及びドリフトガスに起因するIMSスペクトルのピークを特定することができる。
第2実施形態
図2は本実施形態の分析装置の概略断面図である。
本実施形態の分析装置40は、遮光部20を備える。この遮光部20は、紫外線照射部3が照射した紫外線が電子放出素子2に直接照射されないように配置される。このため、電子放出素子2が紫外線に起因するダメージを受けることを抑制することができる。具体的には、電子放出素子2に含まれるシリコーン樹脂などの絶縁性樹脂が紫外線により変質することを抑制することができる。このため、電子放出素子2の電子放出特性が変化することを抑制することができる。
遮光部20は、紫外線を遮断する材料を含む。また、遮光部20は、シート状又は板状とすることができる。また、遮光部20は、イオン化領域11におけるイオンの生成及びイオンのイオン移動領域12への移動を阻害しないように設けられる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。また、第1実施形態についての記載は矛盾がない限り第2実施形態についても当てはまる。
第3実施形態
図3は、本実施形態の分析装置の概略断面図である。
本実施形態の分析装置40では、電子放出素子2と紫外線照射部3は、電子放出素子2の電子放出方向と紫外線照射部3の紫外線照射方向が同じになるように並ぶように配置される。また、紫外線照射部3の照射面が、電子放出素子2の電子放出面と同一面に位置するか、或いは電子放出素子2の電子放出面よりも前方に位置する。このことにより、紫外線照射部3が照射した紫外線が電子放出素子2に照射されることを抑制することができ、電子放出素子2が紫外線に起因するダメージを受けることを抑制することができる。具体的には、電子放出素子2に含まれるシリコーン樹脂などの絶縁性樹脂が紫外線により変質することを抑制することができる。このため、電子放出素子2の電子放出特性が変化することを抑制することができる。
その他の構成は第1又は第2実施形態と同様である。また、第1又は第2実施形態についての記載は矛盾がない限り第3実施形態についても当てはまる。
第4実施形態
図4は、本実施形態の分析装置40の概略断面図である。
本実施形態の分析装置40は、フィールド非対称方式IMS(FAIMS)で分析する装置である。
本実施形態の分析装置40では、イオン化領域11において電子放出素子2及び/又は紫外線照射部3を用いてキャリアガスに含まれる試料ガスをイオン化し、このイオンを平行平板電極間のイオン移動領域12(電場形成用電極16aと電場形成用電極16bとの間の領域)にキャリアガスと共に流通させる。そして、イオン移動領域12の下流側に配置した検出部4a、4b(検出部4)によりイオン移動領域12を移動してきた負イオン又は正イオンを検出する。
本実施形態の分析装置40は、検出部4a及び検出部4bを備えることができる。検出部4a及び検出部4bのうち一方で負イオンを検出することができ、他方で正イオンを検出することができる。このため、負イオンと正イオンを同時に検出することができる。また、検出部4aの電位と検出部4bの電位とを制御部9で調節することにより負イオンと正イオンとを分離することができる。
検出部4aと検出部4bは対向するように設けることができる。検出部4aと検出部4bとが対向する方向は、電場形成用電極16aと電場形成用電極16bとが対向する方向と同じであってもよく、異なってもよい。
分析装置40は、電子放出素子2の表面電極7と対向するように設けられた対向電極17を備える。対向電極17の電位は、制御部9により表面電極7の電位より高くなるように調節される。この表面電極7及び対向電極17により、電子放出素子2から放出された電子又は電子から生成された負イオンがイオン化領域11へと移動するような電場を形成することができる。
また、電子放出素子2及び対向電極17は、周りからの放電を防ぐように絶縁処理が施されていてもよい。
試料ガスと共にイオン化領域11及びイオン移動領域12に流通させるキャリアガスは、例えば、空気とすることができる。また、キャリアガスは、空気清浄フィルターにより清浄化された空気(清浄乾燥空気)であることが好ましい。
試料ガスをイオン化領域11に供給する前に、試料ガスを含まないキャリアガスをイオン化領域11及びイオン移動領域12に流通させてもよい。このことにより、電子放出素子2が汚染されることを抑制することができ、電子放出素子2を長寿命化することが可能になる。また、次の測定までの必要な間隔(リカバリー時間)を短縮することができる。
また、このキャリアガスは50℃以上の温度であることが好ましい。このことにより、前回の測定で電子放出素子2などに付着した汚染物質を除去することが可能になる。
また、排気口から出たガスをフィルターで清浄化、必要に応じて乾燥した後に循環ポンプでキャリアガス入口に循環させることも可能である。
電場形成用電極16aと電場形成用電極16bとの間隔は数十μmから数mm(0.01~2mm)であり、長さは数百μmから数十mm(0.1~30mm)である。
電場形成用電極16aと電場形成用電極16bとの間には、制御部9を用いて非対称の高周波電圧(分散電圧)及び直流電圧(補償電圧)が印加される。分散電圧は波形の1周期間での時間平均が0となるように印加することができる。また電圧は電極間で±数千V(±100~±2000V)くらいで、電界強度は±数万V/cm(±5000~±40000V/cmくらい)、周波数は数百KHzから数MHz(100kHz~3MHz)である。
電場形成用電極16aと電場形成用電極16bとの間のイオン移動領域12を流れる気体に含まれるイオンは、分散電圧により形成される電場の極性の変化により揺れ動きながら流れ、進行方向が変化する。イオンの移動度は低電界中では電界強度によらず一定であるが、高電界中では電界強度に依存してイオン移動度が変化する。このイオン移動度の変化は、イオン種により異なる。このため、イオン移動領域12を通過できるイオン種と、電場形成用電極16a、16bに衝突しイオン移動領域12を通過できないイオン種とが生じる。イオン移動領域12を通過したイオンは検出部4a、4bにより検出される。電場形成用電極16a、16bに衝突したイオンは中性化される。
補償電圧は、電場形成用電極16aと電場形成用電極16bとの間に印加される直流電圧であり、補償電圧の大きさや極性によりイオン移動領域12を流れる気体に含まれるイオンの進行方向が変化する。このため、分散電圧を固定して補償電圧を所定の範囲で時間によってスキャンすると、イオン移動領域12を通過できるイオン種が変化し、検出部4a、4bによる測定値からIMSスペクトルを得ることができる。補償電圧のスキャン範囲は、±100V程度の範囲であり、電界強度のスキャン範囲は±2000V/cm程度の範囲である。
本実施形態の分析装置40では、電子放出素子2と紫外線照射部3のどちらか一方又は両方を用いてイオン化領域11で試料ガスをイオン化することができる。このため、分析装置40では、1つの試料ガスについて複数の測定モードで測定することが可能である。例えば、電子放出モード、紫外線照射モード、電子放出-紫外線照射モードなどで試料ガスを測定することができる。
電子放出モードは、電子放出素子2から電子を放出させることによりイオン化領域11において負イオンを生成し、この負イオンをイオン移動領域12を移動させ検出部4a、4bで検出する測定モードである。この測定モードでは、電子放出素子2から放出した低エネルギー電子により試料ガスをイオン化できるため、試料ガスをイオン化する際に発生する中間物質の種類を減らすことができ、発生するイオン種を少なくすることができる。このため、ピークの少ないIMSスペクトルが測定され、このIMSスペクトルに基づき試料ガスの成分を高精度で分析をすることができる。
紫外線照射モードは、紫外線照射部3から紫外線を照射することによりイオン化領域11において正イオンを生成し、正イオンをイオン移動領域12を移動させ検出部4a、4bで検出する測定モードである。
電子放出-紫外線照射モードは、電子放出素子2から電子を放出させ紫外線照射部3から紫外線を照射することによりイオン化領域11において負イオン及び正イオンを生成し、負イオン及び正イオンをイオン移動領域12を移動させ検出部4a、4bで検出する測定モードである。電子放出素子2による電子放出と紫外線照射部3による紫外線照射は、同時に放出・照射してもよく、時間差をつけて交互に放出・照射してもよい。
これらの測定モードでは、イオン化領域11において生成するイオン種が異なるため、得られるIMSスペクトルのピーク位置、ピーク形状、ピーク強度などが異なる。従って、複数のIMSスペクトルを利用して試料ガスを高精度で分析することができる。
また、分析装置40は、キャリアガスのみをイオン化領域11及びイオン移動領域12に流通させている状態で、上記の複数の測定モードで測定を行うことができる。このことにより、キャリアガスに起因するIMSスペクトルのピークを特定することができる。
その他の構成は第1~第3実施形態と同様である。また、第1~第3実施形態についての記載は矛盾がない限り第4実施形態についても当てはまる。
第5実施形態
図5は本実施形態の分析装置の概略断面図である。
本実施形態の分析装置40は、フィールド非対称方式IMS(FAIMS)で分析する装置であり、遮光部20を備える。この遮光部20は、紫外線照射部3が照射した紫外線が電子放出素子2に直接照射されないように配置される。このため、電子放出素子2が紫外線に起因するダメージを受けることを抑制することができる。具体的には、電子放出素子2に含まれるシリコーン樹脂などの絶縁性樹脂が紫外線により変質することを抑制することができる。このため、電子放出素子2の電子放出特性が変化することを抑制することができる。
その他の構成は第1~第4実施形態と同様である。また、第1~第4実施形態についての記載は矛盾がない限り第5実施形態についても当てはまる。
第6実施形態
図6は、本実施形態の分析装置の概略断面図である。分析装置40は、フィールド非対称方式IMS(FAIMS)で分析する装置である。
本実施形態の分析装置40では、電子放出素子2と紫外線照射部3は、電子放出素子2の電子放出方向と紫外線照射部3の紫外線照射方向が同じになるように並ぶように配置される。また、紫外線照射部3の照射面が、電子放出素子2の電子放出面と同一面に位置するか、或いは電子放出素子2の電子放出面よりも前方に位置する。このことにより、紫外線照射部3が照射した紫外線が電子放出素子2に照射されることを抑制することができ、電子放出素子2が紫外線に起因するダメージを受けることを抑制することができる。具体的には、電子放出素子2に含まれるシリコーン樹脂などの絶縁性樹脂が紫外線により変質することを抑制することができる。このため、電子放出素子2の電子放出特性が変化することを抑制することができる。
その他の構成は第1~第5実施形態と同様である。また、第1~第5実施形態についての記載は矛盾がない限り第6実施形態についても当てはまる。
2:電子放出素子 3:紫外線照射部 4:検出部 5:電場形成部 6:下部電極 7:表面電極 8:中間層 9:制御部 10:電源部 11:イオン化領域 12:イオン移動領域 13、13a、13b:コレクター 14:静電ゲート電極 15:電位制御回路 16a~16g:電場形成用電極 17:対向電極 20:遮光部 22:筐体 24:素子ホルダー 25:グリッド電極 27:絶縁層 29:分析チャンバー 30:検出回路 32:試料注入口 33:ドリフトガス注入口 34:排気口 40:分析装置

Claims (9)

  1. 電子放出素子と、紫外線照射部と、検出部と、電場形成部とを備え、
    前記電子放出素子は、下部電極、表面電極及び前記下部電極と前記表面電極との間に配置された中間層を有し、かつ、前記下部電極と前記表面電極との間に電圧を印加することによりイオン化領域に向けて電子を放出するように設けられ、かつ、前記イオン化領域において放出した電子により直接的又は間接的に負イオンを生成するように設けられ、
    前記紫外線照射部は、前記電子放出素子から放出される電子により直接的又は間接的に負イオンが生成する領域と同じ前記イオン化領域に向けて紫外線を照射することにより直接的に又は間接的に正イオンを生成するように設けられ、
    前記電場形成部は、前記イオン化領域で生成した負イオン又は正イオンが前記検出部へ向かって移動するイオン移動領域に電場を形成するように設けられ、
    前記検出部は、前記イオン移動領域を通過した負イオン又は正イオンを検出するように設けられた分析装置。
  2. 静電ゲート電極をさらに備え、
    前記静電ゲート電極は、前記イオン化領域から前記イオン移動領域への負イオン又は正イオンの注入を制御するように設けられ、
    前記電場形成部は、負イオン又は正イオンが前記検出部へ向かって移動するような電位勾配を前記イオン移動領域に形成するように設けられた請求項1に記載の分析装置。
  3. 前記下部電極又は前記表面電極は、前記電場形成部の一部として機能するように設けられ、
    前記電場形成部は、負イオン又は正イオンが前記検出部へ向かって移動するような電位勾配を前記イオン化領域及び前記イオン移動領域に形成するように設けられた請求項1又は2に記載の分析装置。
  4. 電源部を含む制御部をさらに備え、
    前記電場形成部は、第1電極と、第1電極に対向するように配置された第2電極とを備え、
    前記制御部は、非対称の分散電圧及び補償電圧を第1電極又は第2電極に印加するように設けられた請求項1に記載の分析装置。
  5. 対向電極をさらに備え、
    前記対向電極は、前記表面電極に対向するように配置された請求項4に記載の分析装置。
  6. 前記電子放出素子及び前記紫外線照射部は、前記紫外線照射部が照射した紫外線が前記電子放出素子に直接照射されないように配置された請求項1~5のいずれか1つに記載の分析装置。
  7. 遮光部をさらに備え、
    前記遮光部は、前記紫外線照射部が照射した紫外線が前記電子放出素子に直接照射されないように配置された請求項1~5のいずれか1つに記載の分析装置。
  8. 前記電子放出素子又は前記紫外線照射部は、交換可能に設けられた請求項1~7のいずれか1つに記載の分析装置。
  9. 電子放出素子から電子を放出させ、紫外線照射部から紫外線を照射することにより試料ガスをイオン化するステップと、
    試料ガスから生成されたイオンを電場が形成されたイオン移動領域を通過させるステップと、
    前記イオン移動領域を通過したイオンを検出するステップとを含み、
    前記紫外線照射部は、前記電子放出素子から放出される電子により直接的又は間接的に負イオンが生成する領域と同じ領域に向けて紫外線を照射する分析方法。
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