実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる固定子100を示す上面図であり、図2は、実施の形態1にかかる固定子100を示す斜視図である。固定子100は、円筒状のケーシング31(後述する)の内部に固定される。以下の図面において、軸方向及び周方向という場合は、ケーシング31の軸方向及び周方向を指す。また、径方向、内径側及び外径側という場合は、ケーシング31の径方向、内径側及び外径側を指す。後述するが、固定子100は、ケーシング31の内周面に沿って円筒状に形成されるため、ケーシング31の軸方向、周方向及び径方向と、固定子100の軸方向、周方向及び径方向とは一致する。
固定子100は、複数の分割固定子110を備える。図1及び図2において、固定子100は、9個の分割固定子110を環状に組み合わせて円筒状に形成されている。分割固定子110は、分割積層鉄心10と、絶縁部材11と、コイル12とを備える。すなわち、固定子100は、環状に組み合わされた複数の分割積層鉄心10と、それぞれの分割積層鉄心10上に装着された絶縁部材11と、絶縁部材11を介してそれぞれの分割積層鉄心10に巻装されるコイル12と備える。以下、詳細を説明する。
まず、分割固定子110の分割積層鉄心10について説明する。図3は、実施の形態1にかかる固定子100の分割積層鉄心10を示す斜視図である。図3(a)は、分割積層鉄心10を、後述するシュー部10c側から見た斜視図であり、図3(b)は、分割積層鉄心10を、後述するヨーク部10a側から見た斜視図である。図3に示すように、分割積層鉄心10は、ヨーク部10aと、ティース部10bと、シュー部10cとを有する。ティース部10bは、円筒状のケーシング31の内周面に固定され、ケーシング31の周方向に延在するヨーク部10aの内周面から内径側に延伸する。シュー部10cは、ティース部10bの内径側の端部から周方向両側に突出する。
分割積層鉄心10において、ヨーク部10aの内径側の面を内周面10as、ティース部10bの周方向の両側面をそれぞれ側面10bs、シュー部10cの外径側の面を外周面10csとする。また、分割積層鉄心10の軸方向の両端部において、ヨーク部10aの内径側の縁を縁10ainとし、ティース部10bの内径側の縁を縁10binとする。また、内周面10as、側面10bs及び外周面10csで囲まれた部分に、後述するコイル12が配置される。分割積層鉄心10において、コイル12が配置される部分を、スロットという。分割積層鉄心10は、磁性を有する複数の鉄心片1を、固定子100の軸方向に積層して形成される。
図4は、実施の形態1にかかる分割積層鉄心10の鉄心片1を示す上面図である。鉄心片1は、鉄心片ヨーク部1aと、鉄心片ティース部1bと、鉄心片シュー部1cとを有する。鉄心片ヨーク部1a、鉄心片ティース部1b及び鉄心片シュー部1cは、それぞれ鉄心片1が固定子100の軸方向に積層されたときに、分割積層鉄心10のヨーク部10a、ティース部10b及びシュー部10cとなる。さらに、鉄心片ヨーク部1aの内径側の縁を縁1ain、鉄心片ティース部1bの周方向の両側面を側面1bs、鉄心片シュー部1cの外径側の縁を縁1csとする。これらも、それぞれ鉄心片1が固定子100の軸方向に積層されたときに、分割積層鉄心10の内周面10as(縁10ain)、側面10bs及び外周面10csとなる。
図4(a)において、鉄心片ヨーク部1aの縁1ainと側面1bsとのなす角は、90度よりも大きい。すなわち、縁1ainは、鉄心片ティース部1bが延伸する方向(ケーシング31の径方向)と直交する方向に対して、外径側に傾斜している。よって、ヨーク部10aの内周面10asは、ティース部10bが延伸する方向(ケーシング31の径方向)と直交する方向に対して、外径側に傾斜している。なお、図4(b)に示すように、鉄心片ヨーク部1aの縁1ainと、鉄心片ティース部1bの側面1bsとは直交していてもよい。すなわち、ヨーク部10aの内周面10asは、ティース部10bが延伸する方向(ケーシング31の径方向)と直交していてもよい。
次に、分割固定子110の絶縁部材11について説明する。図5は、実施の形態1にかかる分割積層鉄心10及び絶縁部材11を示す斜視図である。図5(a)は、分割積層鉄心10及び分割積層鉄心10に装着された絶縁部材11を、シュー部10c側から見た斜視図であり、図5(b)は、分割積層鉄心10及び分割積層鉄心10に装着された絶縁部材11を、ヨーク部10a側から見た斜視図である。図5に示すように、分割積層鉄心10には、絶縁部材11が装着されている。絶縁部材11は、端面用インシュレータ14と、スロット用インシュレータ15とを有する。以下、詳細を説明する。
まず、端面用インシュレータ14について説明する。端面用インシュレータ14は、分割積層鉄心10の軸方向両端部の鉄心片1上にそれぞれ装着される。端面用インシュレータ14において、分割積層鉄心10の一方の端部に装着される端面用インシュレータ14を端面用インシュレータ14aとし、他方の端部に装着される端面用インシュレータ14を端面用インシュレータ14bとする。端面用インシュレータ14は、2個1組で後述するコイル12の巻枠となる。
端面用インシュレータ14aは、外鍔2aと、内鍔2bと、ティース部端面被覆部2tとを有する。さらに、端面用インシュレータ14aは、斜面状に形成された第1の接続部2sと、階段状に形成された第2の接続部2dとを有する。端面用インシュレータ14aは、後述するコイル12と分割積層鉄心10の軸方向端部との絶縁距離を確保している。
外鍔2aは、分割積層鉄心10の軸方向端部のヨーク部10aのうち、縁10ainよりも内径側から縁10ainよりも外径側の所定の範囲を密着して覆うとともに、外鍔2aが配置されるヨーク部10aに対して、分割積層鉄心10が延在する方向とは反対方向に立ち上がっている。外鍔2aをヨーク部10aの縁10ainよりも内径側から覆うとは、外鍔2aの内径側の面が、縁10ainよりも内径側に配置されるということである。これは、後述する切り欠き部2akを外鍔2aに形成するためである。なお、外鍔2aは、ヨーク部10a全体を覆う必要はなく、外鍔2aの外径側の面がヨーク部10a上にあればよい。外鍔2aは、切り欠き部2ak及びオーバーハング部2ahを有しているが、これらの詳細は後述する。
内鍔2bは、分割積層鉄心10の軸方向端部のシュー部10c及びティース部10bの内周側の縁10binから内径側の所定の範囲を密着して覆うとともに、外鍔2aと同じ方向に立ち上がっている。
ティース部端面被覆部2tは、外径側端部が、第2の接続部2dを介して外鍔2aと接続され、内径側端部が、第1の接続部2sを介して内鍔2bに接続されている。ティース部端面被覆部2tは、外鍔2aと内鍔2bとの間のティース部10bを覆っている。
第1の接続部2sは、外径側がティース部端面被覆部2tに接続され、内径側が内鍔2bに接続されている。第1の接続部2sは、内径側に向かって軸方向の厚さが厚くなる。第2の接続部2dは、内径側がティース部端面被覆部2tに接続され、外径側が外鍔2aに接続されている。第2の接続部2dは、外径側に向かって軸方向の厚さが厚くなる。第2の接続部2dは、第2の接続部2dにおいて斜面となっている部分に、段を有している点で、第1の接続部2sと異なる。内鍔2b側に第1の接続部2s、外鍔2a側に第2の接続部2dを設ける例を示したが、逆でもよいし、両方第1の接続部2sとしても、両方第2の接続部2dとしてもよい。ティース部端面被覆部2tに、第1の接続部2s及び第2の接続部2dのいずれも設けなくてもよい。また、第2の接続部2dは段の数が2段となっているが、特に段の数は限定しない。
端面用インシュレータ14bは、外鍔3aと、内鍔3bと、ティース部端面被覆部3tとを有する。さらに、端面用インシュレータ14bは、斜面状に形成された第1の接続部3sと、階段状に形成された第2の接続部3dと、溝部3fとを有する。端面用インシュレータ14bは、溝部3fが設けられている点で、端面用インシュレータ14aと異なる。溝部3fは、後述するコイル12の1ターン目となる導線5aを収めるものである。端面用インシュレータ14bは、溝部3f以外の構成が、端面用インシュレータ14aの構成と共通しているため、詳細な説明は省略する。
ここで、図5に示すように、内鍔2b及び内鍔3bの周方向側面のシュー部10c側には、それぞれスリット部2bs及びスリット3bsが形成されている。スリット部2bs及びスリット3bsには、後述するスロット用インシュレータ15が差し込まれ、固定される。
また、図5(a)に示すように、第2の接続部2dの周方向の端部を、第2の接続部2dが形成されたティース部端面被覆部2tに対して分割積層鉄心10が延在する方向に延伸させることにより、後述するスロット用インシュレータ15を差し込むスリット部2ds(第2のスリット部)を形成できる。これにより、ヨーク部10aとティース部10bとの交点部分において、スロット用インシュレータ15の軸方向端部がスリット部2dsに差し込まれ、固定されるため、安定して導線5a(後述する)を巻き回すことができる。なお、第2の接続部2dの周方向の端部を延伸させる例を示したが、第1の接続部2sの端部を、第1の接続部2sが形成されたティース部端面被覆部2tに対して分割積層鉄心10が延在する方向に延伸させてもよい。これにより、シュー部10cとティース部10bとの交点部分において、スロット用インシュレータ15の軸方向端部がスリット部2dsに差し込まれ、固定されるため、安定して導線5a(後述する)を巻き回すことができる。
また、図5(b)に示すように、内鍔2bの周方向側面上及び内鍔3bの周方向側面上には、内鍔2b及び内鍔3bそれぞれが装着される鉄心片1に対して、それぞれ分割積層鉄心10が延在する方向に延伸し、シュー部10cの外周面10csに沿って配置されるスロット用インシュレータ15の軸方向端部が差し込まれるスリット部2bs及びスリット部3bs(以下、合わせて「第3のスリット部」という)を形成してもよい。これにより、シュー部10cの外周面10csに配置されるスロット用インシュレータ15を固定できるため、安定して導線5a(後述する)を巻き回すことができる。
スロット用インシュレータ15は、内周面10as、側面10bs及び外周面10csを覆う。すなわち、スロット用インシュレータ15は、スロット上に継ぎ目無く配置され、スロット用インシュレータ15の厚み分、コイル12と、分割積層鉄心10の内周面10as、側面10bs及び外周面10csとの絶縁距離を確保する。スロット用インシュレータ15は、分割積層鉄心10に対して、ティース部10bを挟んで2個装着される。なお、スロット用インシュレータ15には、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムのような絶縁材料を用いればよい。
次に、分割固定子110のコイル12について説明する。図6は、実施の形態1にかかる固定子100の分割固定子110を示す斜視図であり、図7は、実施の形態1にかかる固定子100の分割固定子110を示す概略図である。図7は、破線部から紙面上側は分割固定子110の断面図を示し、紙面下側は、分割固定子110の上面図を示す。図8は、実施の形態1にかかる固定子100の分割固定子110の一部を示す概略図である。図9は、実施の形態1にかかる分割固定子のコイルの形成方法を説明する図である。図9は、巻線ノズル20によって、スロットに導線5aを巻き回す様子を端面用インシュレータ14b側から見た図である。図7に示す距離d3は、図11で説明する。コイル12は、導線5aによって形成される。図7及び図8において、導線5a内の数字は、導線5aが巻き回されたターン数を示す。図7、図8及び図9に示すように、導線5aは、スロットに数字1から順次、巻線ノズル20によって巻き回され、数字82、すなわち第82ターン目まで巻き回されてコイル12を形成する。以下、コイル12の形成方法について説明する。
図7(b)は図7(a)の一部を拡大した図である。図7(b)に示すように、コイル12の1層目の最初のターンとなる導線5a(数字1)は、端面用インシュレータ14aのティース部端面被覆部2t上を、第2の接続部2dに沿って巻き回される。第2ターン目以降となる導線5a(数字2~11)は、内鍔2b側に向かって、スロット用インシュレータ15及びティース部端面被覆部2tを介して、分割積層鉄心10に順次巻き回される。そして、コイル12の1層目の最後のターンとなる導線5a(数字12)は、端面用インシュレータ14aのティース部端面被覆部2t及び第1の接続部2sの双方に当接して巻き回されて、コイル12の1層目が形成される。
コイル12の2層目の最初のターンとなる導線5a(数字13)は、1層目の最後のターンとなる導線5a(数字12)及び第1の接続部2sの双方に当接するように巻き回される。その後、コイル12の2層目を形成する各ターンとなる導線5a(数字14~24)は、1層目の隣り合う2つのターンとなる導線5aの双方に当接するように、外鍔2a側に向かって順次巻き回され、コイル12の1層目の上に俵積みされる。
ここで、2層目の最後のターンとなる導線5a(数字25)は、コイルの1層目の最初のターンとなる導線5a(数字1)及び第2の接続部2dの双方に当接するように巻き回され、3層目の最初のターンとなる導線5a(数字26)は、2層目の最後のターンとなる導線5a(数字25)、外鍔2a及び第2の接続部2dに当接するように巻き回される。すなわち、例えば数字11と数字12の導線5aと当接するように、数字14の導線5aが配置される。
その後、コイル12の3層目を構成する各ターンとなる導線5a(数字27~38)は、2層目の隣り合う2つのターンとなる導線5aの双方に当接するように、内鍔2b側に向かって順次巻き回され、コイル12の2層目の上に俵積みされる。
4層目の最初のターンとなる導線5a(数字39)は、3層目の最後のターンとなる導線5a(数字38)及び内鍔2bに当接するように巻き回される。
その後、コイル12の4層目を構成する各ターンとなる導線5a(数字40~51)は、3層目の隣り合う2つのターンとなる導線5aの双方に当接するように、外鍔2a側に向かって順次巻き回され、コイル12の3層目の上に俵積みされる。
5層目の最初のターンとなる導線5a(数字52)は、4層目の最後のターンとなる導線5a(数字51)及び外鍔2aに当接するように巻き回される。
その後、コイル12の5層目を構成する各ターンとなる導線5a(数字53~61)は、4層目の隣り合う2つのターンとなる導線5aの双方に当接するように、内鍔2b側に向かって順次巻き回され、コイル12の4層目の上に俵積みされる。
6層目の最初のターンとなる導線5a(数字62)は、5層目の最後のターンとなる導線5a(数字61)及び隣接するターンの導線5a(数字60)に当接するように巻き回される。
その後、コイル12の6層目を構成する各ターンとなる導線5a(数字63~70)は、5層目の隣り合う2つのターンとなる導線5aの双方に当接するように、外鍔2a側に向かって順次巻き回され、コイル12の6層目の上に俵積みされる。そして、コイル12の7層目及び9層目が5層目と同様に俵積みされ、コイル12の8層目が6層目と同様に俵積みされる。このようにして、コイル12が形成される。
ここで、先に述べたオーバーハング部2ah及び切り欠き部2ak(第1の切り欠き部)について、図7及び図8を用いて説明する。オーバーハング部2ahは、外鍔2aにおいて、後述する切り欠き部2akよりも内径側に突出した部分を指す。以下、外鍔2aの内径側の面において、切り欠き部2akに対してヨーク部10aと反対側を、オーバーハング部2ahの内径側の面と記載する場合がある。また、オーバーハング部2ahは、ヨーク部10aと対向する面である面2ahbを有する。
ヨーク部10aの内径側の面に沿って配置されたスロット用インシュレータ15は、オーバーハング部2ahよりも外径側に配置される。また、ヨーク部10aの内径側の面に沿って配置されたスロット用インシュレータ15は、オーバーハング部2ah及びオーバーハング部3ah間に配置される。
切り欠き部2akは、外鍔2aの内径側の面のヨーク部10a側を、オーバーハング部2ahの内径側の面よりも外径側に窪ませて形成される。また、切り欠き部2akは、外鍔2aの周方向に延在している。切り欠き部2akは、外鍔2aの内径側の面からヨーク部10aの縁10ain上又は縁10ainよりも外径側まで窪んでいる。図7において、切り欠き部2akは、ヨーク部10aの縁10ainに沿って形成されている。さらに、切り欠き部2akは、ヨーク部10aの周方向両端部に向かって、テーパ状に形成される。
ヨーク部10aとティース部10bとの交点における、オーバーハング部2ahの内径側の面と切り欠き部2akとの距離である距離d1inは、スロット用インシュレータ15の厚みt以上となっている。ヨーク部10aの内周面10asが、ティース部10bが延伸する方向と直交する方向に対して、外径側に傾斜している場合について説明する。この場合、ヨーク部10aの縁10ainが、ティース部10bが延伸する方向と直交する方向に対して、外径方向に傾斜しているのに対し、オーバーハング部2ah(外鍔2a)の内径側の面が、ティース部10bが延伸する方向と直交する方向に延伸しているため、外鍔2aの周方向端部におけるオーバーハング部2ahの内径側の面と切り欠き部2akと間の距離である距離d1outは、距離d1inよりも深くなっている。すなわち、また、オーバーハング部2ahの内径側の面に対する切り欠き部2akの窪みの深さは、周方向両端部に向かって深くなるよう形成されている。
コイル12の3層目の最初のターンとなる導線5a(数字26)、5層目の最初のターンとなる導線5a(数字52)、7層目の最初のターンとなる導線5a(数字71)及び9層目の最初のターンとなる導線5a(数字80)は、スロット用インシュレータ15を覆い、端面用インシュレータ14aのオーバーハング部2ahと端面用インシュレータ14bのオーバーハング部3ah間を軸方向に渡すように巻き回されていることになる。よって、ヨーク部10aの内周面10asとコイル12との間にはスロット用インシュレータの厚みt以上の距離が、距離d1inから距離d1outの範囲で保たれている。
このとき、スロット用インシュレータ15の軸方向端部と、オーバーハング部2ahの面2ahbとの間には、隙間としての空間R1が確保されている。この空間R1を形成することによって、導線5a巻き回される力によってオーバーハング部2ahの面2ahbがスロット用インシュレータ15の軸方向端部を押し、スロット用インシュレータ15に皺が寄ることを抑制できる。
図10は、実施の形態1にかかる固定子の分割固定子を示す断面図である。図10(a)は、図7のAA断面を示し、図10(b)は、図10(a)の一部を拡大した図である。図10に示すように、ティース部端面被覆部2tの軸方向端部の周方向両端は、なだらかに面取りされており、周方向両端となる部分は、スロット用インシュレータ15が当接する切り欠き部2tkよりも、周方向外側にオーバーハングするように張り出している。この部分をオーバーハング部2thとする。そして、オーバーハング部2thが、周方向に張り出している距離である距離d2は、スロット用インシュレータ15の厚みt以上である。また、切り欠き部2tk間におけるティース部端面被覆部2tの周方向の幅は、分割積層鉄心10の周方向の幅と同じである。なお、ティース部端面被覆部2tの切り欠き部2tkは、外鍔2aの切り欠き部2akと連続するように形成される。
したがって、コイル12の1層目となる複数の導線5a(数字1~12)は、スロット用インシュレータ15を覆い、端面用インシュレータ14aのオーバーハング部2thと端面用インシュレータ14bのオーバーハング部3th間を軸方向に渡すように巻き回されていることになり、ティース部10bとコイル12との間には距離d2が保たれている。
また、図10(a)に示すように、スロット用インシュレータ15の軸方向の長さLは、分割積層鉄心10の軸方向の長さLcよりも大きい。また、軸方向に対向するオーバーハング部2th及びオーバーハング部3th間の長さを長さLdとしたとき、スロット用インシュレータ15の軸方向の長さLは、長さLdよりも短く、ティース部10bの側面に沿って配置されたスロット用インシュレータ15は、2つの端面用インシュレータ14のオーバーハング部2thとオーバーハング部3thとの間に収まっている。
また、長さLdを長さLよりも長くすれば、図10(b)に示すように、ティース部10の側面に沿って配置されたスロット用インシュレータ15の軸方向端部と、オーバーハング部2thの面2thbとの間に、隙間としての空間R2が確保できる。この空間R2を形成することによって、導線5aが巻き回される時に、巻き回された導線5aの力によって、分割積層鉄心10及び端面用インシュレータ14が締め付けられ、面2thbによってスロット用インシュレータ15に皺が寄ることを抑制する。ここで、面2thbとは、オーバーハング部2thにおいて、ティース部10の側面に沿って配置されたスロット用インシュレータ15の軸方向端部と対向する面である。オーバーハング部3thも、オーバーハング部2thと同様に面3thb(図示なし)を有する。
図11は、実施の形態1にかかる固定子の分割固定子を示す断面図である。図11は、図7のBB断面を示す。図11において、切り欠き部2sk及び切り欠き部3skは、第1の接続部2sに形成される。切り欠き部2sk及び切り欠き部3skには、スロット用インシュレータ15が差し込まれ、スロット用インシュレータ15の軸方向端部側には、オーバーハング部2sh及びオーバーハング部3shが形成される。スロット用インシュレータ15の軸方向端部とオーバーハング部2sh(オーバーハング部3sh)との間には、空間R3が形成される。空間R3を形成することによって、導線5aが巻き回される時に、巻き回された導線5aの力によって、分割積層鉄心10及び端面用インシュレータ14が締め付けられ、スロット用インシュレータ15に皺が寄ることを抑制する。
コイル12の1層目の最後のターンとなる導線5a(数字12)及びコイル12の2層目の最初のターンとなる導線5a(数字13)は、端面用インシュレータ14aのオーバーハング部2shと、端面用インシュレータ14bのオーバーハング部3shとの間を軸方向に渡すように巻き回されていることになり、ティース部10b及びシュー部10cとコイル12との間には距離d3が保たれている。
以上のように、固定子100は、円筒状のケーシング31の内周面に固定され、ケーシング31の周方向に延在するヨーク部10a、ヨーク部10aの内径側の面から内径方向に延伸するティース部10b、及びティース部10bの内径側の端部から周方向両側に突出するシュー部10cを有し、ケーシング31の軸方向に延在するとともに、ケーシング31の内周面に沿って環状に複数組み合わされる分割積層鉄心10と、複数の分割積層鉄心10のそれぞれに装着された絶縁部材11と、複数の分割積層鉄心10のそれぞれに絶縁部材11を介して巻装されたコイル12と、を備え、絶縁部材11は、分割積層鉄心10の軸方向の両端部に密着して装着され、それぞれの端部のヨーク部10aにおいて、内径側の縁10ainよりも内径側から内径側の縁10ainよりも外径側まで密着して覆うとともに、ヨーク部10aに対して分割積層鉄心10が延在する方向と反対方向に延伸する外鍔2a、それぞれの端部のシュー部10cとティース部10bの内径側とを覆うとともに、外鍔2aと同じ方向に延伸する内鍔2b、及びそれぞれの端部のティース部10bを覆い、一端が外鍔2aに接続され、他端が内鍔2bに接続されるティース部端面被覆部2tを有する端面用インシュレータ14、並びにヨーク部10aの内径側の面と、ティース部10bの周方向の側面と、シュー部10cの外径側の面とを覆い、それぞれの面に沿って連続して形成されたスロット用インシュレータ15を有し、外鍔2aは、外鍔2aの内径側に形成されたオーバーハング部2ah及び外鍔2aの内径側であってオーバーハング部2ahよりヨーク部10a側に形成された切り欠き部2akを有し、切り欠き部2akは、外鍔2aの内径側の面が、オーバーハング部2ahの内径側の面よりも外径側に窪んで形成され、切り欠き部2akの窪みは、外鍔2aの周方向に延在し、オーバーハング部2ahの内径側の面からヨーク部10aの内径側の縁10ain上又は内径側の縁10ainよりも外径側まで窪み、少なくともスロット用インシュレータ15の厚みよりも深く、ヨーク部10aの内径側の面に沿って配置されたスロット用インシュレータ15は、オーバーハング部2ahよりも外径側に配置されるものである。
図12は、実施の形態1にかかる分割固定子110を示す下面図である。図12は、分割固定子110を端面用インシュレータ14b側から見た図である。
上述の構成によって、固定子100は、切り欠き部2akを設けることにより、巻線ノズル20をスロット用インシュレータ15に干渉させずにスロット用インシュレータ15からの距離である距離c1を確保した状態で、コイル12を整列して配置し、コイルの占積率を向上できる。さらに、導線5aを安定して巻き回すことができる。
また、固定子100は、分割固定子110が磁極ごとに分割されているため、分割積層鉄心10を直線状に展開することで、磁極間のスリット幅が拡大され、巻線ノズル20の幅を拡大して、太線巻線を巻き回すことができる。
また、ヨーク部10aの内周面10asが、外径側に向かってテーパ状になっているとともに、端面用インシュレータ14aのオーバーハング部2ahと端面用インシュレータ14bのオーバーハング部3ahにコイル12の複数の導線5aが当接されるため、内周面10asがティース部10bの側面10bsに対して垂直であって、且つヨーク部10aの周方向端部の径方向の幅が等しい場合よりも、分割固定子110の磁気特性を低下させることなく、鉄損の増加を抑制できる。そのため、コイル12の占積率を向上でき、回転電機の性能を向上できる。
実施の形態2.
図13は、実施の形態2にかかる分割積層鉄心10及び絶縁部材11を示す斜視図であり、図14は、実施の形態2にかかる固定子100の分割固定子120を示す斜視図である。図13(a)は、分割積層鉄心10及び分割積層鉄心10に装着された絶縁部材11を、シュー部10c側から見た斜視図であり、図13(b)は、分割積層鉄心10及び分割積層鉄心10に装着された絶縁部材11を、ヨーク部10a側から見た斜視図である。図13及び図14において、図5及び図6と同じ符号を付けたものは、同一又は対応する構成を示しているため、詳細な説明は省略する。固定子100の分割固定子120は、端面用インシュレータ14aの外鍔2aの内径側の面に、内径側に張り出した段部2eを設けている点で、分割固定子110と異なる。
図15は、実施の形態2にかかる固定子100の分割固定子120を示す概略図である。図16は、破線部から紙面上側は分割固定子120の断面図を示し、紙面下側は、分割固定子120の上面図を示す。図16は、実施の形態2にかかる固定子の分割固定子の一部を示す概略図である。図15及び図16において、図7及び図8と同じ符号を付けたものは、同一又は対応する構成を示しているため、詳細な説明は省略する。以下、コイル12の形成方法について説明するが、実施の形態1で示した箇所と異なる部分を説明し、共通する部分は省略する。
コイル12の3層目の最初のターンとなる導線5a(数字26)は、2層目の最後のターンとなる導線5a(数字25)、第2の接続部2d及び段部2eに当接するように巻き回される。
コイル12の5層目の最初のターンとなる導線5a(数字52)は、4層目の最後のターンとなる導線5a(数字51)及び段部2eに当接するように巻き回される。
コイル12の7層目の最初のターンとなる導線5a(数字71)は、6層目の最後のターンとなる導線5a(数字70)及び段部2eに当接するように巻き回される。
コイル12の8層目の最初のターンとなる導線5a(数字80)は、7層目の最後のターンとなる導線5a(数字71)、外鍔2a及び段部2eに当接するように巻き回される。
コイル12の9層目の最初のターンであり最終ターンとなる導線5a(数字84)は、8層目の最初のターンとなる導線5a(数字81)及び外鍔2aに当接するように巻き回される。
このように、スロット内において、コイル12の3層目、5層目及び7層目の最初のターンとなる導線5a(数字26、52及び71)は、段部2eに沿って巻き回され、コイル12の8層目及び10層目の最初のターンとなる導線5a(数字80及び84)は、外鍔2aの内径側の面に沿って巻き回される。
上述の構成によって、固定子100は、切り欠き部2akを設けることにより、巻線ノズル20をスロット用インシュレータ15に干渉させずにスロット用インシュレータ15からの距離である距離c1を確保した状態で、コイル12を整列して配置し、コイルの占積率を向上できる。さらに、導線5aを安定して巻き回すことができる。
また、外鍔2a(オーバーハング部2ah)の内径側の面上であり、内径側の面と第2の接続部2dとの間に段部2eを設けることによって、オーバーハング部2ahを外径方向にオフセットできるため、巻線可能なスペースが拡大される。これにより、分割固定子120は、分割固定子110と比較して、導線5aの総巻数を増やすことができるため、回転電機の出力を向上できる。
また、ヨーク部10aの内周面10asが、外径側に向かってテーパ状になっているとともに、端面用インシュレータ14aのオーバーハング部2ahと端面用インシュレータ14bのオーバーハング部3ahにコイル12の複数の導線5aが当接されるため、内周面10asがティース部10bの側面10bsに対して垂直であって、且つヨーク部10aの周方向端部の径方向の幅が等しい場合よりも、分割固定子120の磁気特性を低下させることなく、鉄損の増加を抑制できる。そのため、コイル12の占積率を向上でき、回転電機の性能を向上できる。
実施の形態3.
図17は、実施の形態3にかかる分割積層鉄心10及び絶縁部材11を示す斜視図であり、図18は、実施の形態3にかかる固定子100の分割固定子130を示す斜視図である。図17(a)は、分割積層鉄心10及び分割積層鉄心10に装着された絶縁部材11を、シュー部10c側から見た斜視図であり、図17(b)は、分割積層鉄心10及び分割積層鉄心10に装着された絶縁部材11を、ヨーク部10a側から見た斜視図である。図17及び図18において、図13及び図14と同じ符号を付けたものは、同一又は対応する構成を示しているため、詳細な説明は省略する。固定子100の分割固定子130は、端面用インシュレータ14aの外鍔2aに、スリット部2as(第1のスリット部)を設けている点で、分割固定子120と異なる。
スリット部2asは、オーバーハング部2ahの内径側の面の一部が、分割積層鉄心10側に延伸して形成される。図17に示すように、段部2eの端部を分割積層鉄心10側に延伸して形成してもよい。スロット用インシュレータ15の軸方向端部は、スリット部2asに差し込まれることによって、固定される。ここで、スリット部2asの軸方向の端部は、例えばスリット部2dsの軸方向の端部と、軸方向において同一の位置に配置されている。なお、スリット部2as、2dsの軸方向の端部とは、軸方向下方の端部をいう。
上述の構成によって、固定子100は、切り欠き部2akを設けることにより、巻線ノズル20をスロット用インシュレータ15に干渉させずにスロット用インシュレータ15からの距離である距離c1を確保した状態で、コイル12を整列して配置し、コイルの占積率を向上できる。さらに、導線5aを安定して巻き回すことができる。
また、外鍔2a(オーバーハング部2ah)の内径側の面上であり、内径側の面と第2の接続部2dとの間に段部2eを設けることによって、オーバーハング部2ahを外径方向にオフセットできるため、巻線可能なスペースが拡大される。これにより、分割固定子130は、分割固定子110と比較して、導線5aの総巻数を増やすことができるため、回転電機の出力を向上できる。
また、スリット部2asによって、スロット用インシュレータ15が固定されていることにより、スロット用インシュレータ15の位置が規制され、より安定して導線5aを巻き回すことができる。これにより、分割固定子130の磁気特性を低下させることなく、コイル12の占積率を向上させ、回転電機の性能が向上するとともに、生産性を向上できる。
また、ヨーク部10aの内周面10asが、外径側に向かってテーパ状になっているとともに、端面用インシュレータ14aのオーバーハング部2ahと端面用インシュレータ14bのオーバーハング部3ahにコイル12の複数の導線5aが当接されるため、内周面10asがティース部10bの側面10bsに対して垂直であって、且つヨーク部10aの周方向端部の径方向の幅が等しい場合よりも、分割固定子130の磁気特性を低下させることなく、鉄損の増加を抑制できる。そのため、コイル12の占積率を向上でき、回転電機の性能を向上できる。
なお、実施の形態3において、分割固定子130にスリット部2asを形成する例を示したが、分割固定子110に形成してもよい。
実施の形態4.
図19は、実施の形態4にかかる分割積層鉄心10及び絶縁部材11を示す斜視図である。図19(a)は、分割積層鉄心10及び絶縁部材11を、シュー部10c側から見た斜視図であり、図19(b)は、分割積層鉄心10及び絶縁部材11を、ヨーク部10a側から見た斜視図である。また、図20は、実施の形態4にかかる固定子100の分割固定子140を示す斜視図である。
図19及び図20に示すように、本実施の形態の固定子100の分割固定子140は、実施の形態3と同様に、端面用インシュレータ14aのオーバーハング部2ahの一部が分割積層鉄心10側に延伸して形成されたスリット部2as(第1のスリット部)を有する。本実施の形態の分割固定子140において、第1のスリット部2asの、軸方向における端部2afと、第2のスリット部2dsの、軸方向における端部2dfとが、軸方向において異なる高さに配置される点について、分割固定子130と異なる。図17及び図18に示した構成要素と同一又は対応する構成要素については、図17及び図18と同じ符号を付し、説明を省略する。
図21は、実施の形態4にかかる固定子100の分割固定子140を示す概略図である。図21に示す破線から紙面上側には、分割固定子140の断面図を示し、破線から紙面下側には、固定子140の上面図を示している。また、図22は、実施の形態4にかかる固定子100の分割固定子140の一部を示す概略図である。図21及び図22において、図15及び図16に示した構成要素と同一又は対応する構成要素については、図15及び図16と同じ符号を付し、説明を省略する。なお、図21に示すコイル12は、実施の形態1で説明した形成方法と同様の方法により形成可能なため、コイル12の形成方法についての説明を省略する。
図19に戻り、第1のスリット部2as及び第2のスリット部2dsについてそれぞれ説明する。図19(a)に示すように、第1のスリット部2asは、端面用インシュレータ14aの外鍔2aに設けられ、端面用インシュレータ14aのオーバーハング部2ahの一部が分割積層鉄心10側に延伸して形成されている。一方、図19(a)に示すように、第2のスリット部2dsは、端面用インシュレータ14aの第2の接続部2dの周方向の端部が、分割積層鉄心10側に延伸して形成されている。なお、第1のスリット部2asのスリット幅と、第2のスリット部2dsのスリット幅とは、異なってもよいし、同一であってもよい。
第1のスリット部2asと第2のスリット部2dsを設ければ、ヨーク部10aの内周面10ainと、ティース部10bの内周面10binとが交差する位置に配置されるスロット用インシュレータ15の屈曲部が、第1のスリット部2asと第2のスリット部2dsにより位置決めされる。そのため、ヨーク部10a及びティース部10bに沿って配置されるスロット用インシュレータ15の内周面が、周方向又は径方向にずれることを抑制できる。これにより、スロット用インシュレータ15の位置ずれを防止して固定子100の組立性を向上できる。
また、第1のスリット部2as及び第2のスリット部2dsの径方向外側には、スロット用インシュレータ15が配置される切り欠き部2akが形成されている。そして、第1のスリット部2as及び第2のスリット部2dsに、スロット用インシュレータ15の軸方向端部が差し込まれ、スロット用インシュレータ15が端面用インシュレータ14aに固定される。
ここで、第1のスリット部2asと切り欠き部2akの間の距離と、第2のスリット部2dsと切り欠き部2akの間の距離とは、等しいと好ましい。すなわち、第1のスリット部2asの内径側の面と切り欠き部2akとの距離、及び第2のスリット部2dsと切り欠き部2akとの距離は等しいと好ましい。なお、図21の例では、第1のスリット部2asの内径側の面と切り欠き部2akとの距離、及び第2のスリット部2dsと切り欠き部2akとの距離を、それぞれ距離d1として示している。
また、第1のスリット部2asにおける径方向内側の面と、第2のスリット部2dsにおける径方向外側の面とが、径方向において同一の位置に配置されると好ましい。上述のようにすると、スロット用インシュレータ15を第1のスリット部2as及び第2のスリット部2dsに差し込む際に曲げる等の変形が不要となり、固定子100の組立性を向上できる。
次に、第1のスリット部2as及び第2のスリット部2dsの位置関係について説明する。図23は、実施の形態4にかかる分割積層鉄心10及び絶縁部材11を示す断面図である。図23には、図21のAA断面における、径方向内側から分割積層鉄心10及び絶縁部材11を見た図を示している。なお、図23において、コイル12の図示は省略している。
図23に示すように、第1のスリット部2asは、第2の接続部2d及び第2のスリット部2dsよりも周方向外側に配置されており、第1のスリット部2asと第2のスリット部2dsとは、周方向において離間している。第1のスリット部2asと第2のスリット部2dsとを周方向において離間して配置すれば、スロット用インシュレータ15が、複数の位置(図23の例では、第1のスリット部2as及び第2のスリット部2dsの2点)で固定されるため、強固に位置決めできる。
さらに、第1のスリット部2asと、第2のスリット部2dsとが周方向において離間し、第1のスリット部2asと、第2のスリット部2dsとの間に間隙があれば、第1のスリット部2asに面取り加工を施すことが可能になる。例えば、図23の例に示すように、第1のスリット部2asの周方向における側面に、傾斜面を設けることができる。ここで、ここで、第1のスリット部2asの周方向における側面に傾斜面を設ける場合、例えば、第1のスリット部2asに面取り加工を施し、軸方向下側から軸方向上方に向かって、径方向の幅が大きくなるよう、傾斜面を形成すればよい。
なお、図示は省略するが、第1のスリット部2asと、第2のスリット部2dsとが周方向において離間している場合、第2のスリット部2dsについても同様に、周方向における側面に傾斜面を設けることができる。また、第2のスリット部2dsの周方向における側面に傾斜面を設ける場合、例えば、第2のスリット部2dsに面取り加工を施し、軸方向下側から軸方向上方に向かって、径方向の幅が大きくなるよう、傾斜面を形成すればよい。
上述したように、第1のスリット部2as、第2のスリット部2dsの周方向における側面に傾斜面を設ければ、スロット用インシュレータ15を第1のスリット部2as、第2のスリット部2dsに差し込む際に、第1のスリット部2as、第2のスリット部2dsの角部にスロット用インシュレータ15が引っかかることを防止できる。これにより、スロット用インシュレータ15の差し込み作業の作業性を向上できる。
また、第1のスリット部2asの軸方向における端部(図23中、軸方向下側の端部2af)は、第2のスリット部2dsの軸方向における端部(図23中、軸方向下側の端部2df)よりも、軸方向において上方に配置されている。なお、端部2af及び端部2dfは、少なくとも切り欠き部2akにおける軸方向上側の面よりも下方に配置される。すなわち、第1のスリット部2asの端部2afと、第2のスリット部2dsの端部2dfとの間には、高低差h1が存在する。例えば、図23に示すように、端部2dfが端部2afよりも低い場合、スロット用インシュレータ15を差し込む際、スロット用インシュレータ15との接触面積が大きい一方のスリット部(第2のスリット部2ds)で固定された後に、スロット用インシュレータ15を他方のスリット部(第1のスリット部2as)に差し込むことができる。
ここで、第1のスリット部2asの端部2afが第2のスリット部2dsの端部2dfよりも、軸方向において下方に配置されていてもよい。つまり、第1のスリット部2asの端部2afと、第2のスリット部2dsの端部2dfは、いずれか一方が他方よりも軸方向において上方に配置されていればよい。このようにすると、上述したように、スロット用インシュレータ15を差し込む際、スロット用インシュレータ15との接触面積が大きい一方のスリット部で固定された後に、スロット用インシュレータ15を他方のスリット部に差し込むことができる。これにより、スロット用インシュレータ15をスリット部に差し込む際の順序を規定して組立作業の機械化が容易となるため、回転電機の生産性を向上できる。
なお、本実施の形態において、端面用インシュレータ14bについても、端面用インシュレータ14aと同様に、第1のスリット部3asを設けてもよい。この場合、第1のスリット部3asは、端面用インシュレータ14bのオーバーハング部3ahの一部を分割積層鉄心10側に延伸させて形成すればよい。端面用インシュレータ14bに第1のスリット部3asを設ければ、スロット用インシュレータ15の軸方向下側を第1のスリット部3asで固定できるため、スロット用インシュレータ15を強固に位置決めできる。
実施の形態5.
図24は、実施の形態5にかかる回転電機30を示す横断面図であり、図25は、実施の形態5にかかる回転電機30を示す縦断面図である。
回転電機30は、回転電機30の外殻を構成する円筒状のケーシング31と、ブラケット32を介してケーシング31に回転自在に支持される回転子33と、回転子33の外周に配置されるとともに、ケーシング31の内周面に固定される固定子34を備えている。なお、回転子33は、回転子33の外周に対向配置される固定子34との間に、0.3~1.0mm程度の空隙を有する。ここで、固定子34とは、実施の形態1~4に示した固定子100を指す。以下、回転電機30の構成について説明するが、固定子34については、実施の形態1~4で説明したため、詳細な説明は省略する。
回転子33は、円筒状の回転子鉄心35と、回転子鉄心35に埋め込まれた永久磁石36と、回転子鉄心35の中央部に固定されたシャフト37とを有する。また、回転子鉄心35は、電磁鋼板で形成される鉄心片38を軸方向に積層して、例えばカシメ加工によって一体化して構成される。回転子鉄心35には、回転子鉄心35を貫通する、12個の磁石挿入孔39が形成されている。永久磁石36は磁石挿入孔39に挿入されて、回転子鉄心35に固定される。また、2個の磁石挿入孔39がV字形に配置されて、磁石挿入孔39の組を構成している。回転子33は6組の磁石挿入孔39の組を備えている。そして、磁石挿入孔39の組のそれぞれに挿入及び固定される2個の永久磁石36が1個の磁極を構成している。したがって、回転子33は6個の磁極を備えている。
永久磁石36は、回転子鉄心35の軸方向に長い平板状の部材である。永久磁石36は、回転子鉄心35の周方向に幅を有し、径方向に厚さを有している。永久磁石36の厚さは、例えば2mmである。なお、永久磁石36は、例えば、ネオジウム(Nd)、鉄(Fe)及びボロン(B)を主成分とする希土類磁石で構成されていて、厚さ方向に着磁されている。
各磁極の両端部に位置する磁石挿入孔39の端部には、フラックスバリア(漏れ磁束抑制穴)40が形成されている。フラックスバリア40によって、フラックスバリア40と回転子鉄心35との外周の間にある鉄心との肉厚が薄くなる。そのため、隣接する磁極の間での磁束の短絡が抑制される。その結果、隣接する磁極間での漏れ磁束の発生が抑制される。なお、フラックスバリア40と回転子鉄心35の外周の間の薄肉部の厚さは、回転子鉄心35の鉄心片38の厚さと同じであることが望ましい。
上述の構成によって、回転電機30は、固定子34、すなわち固定子100を備えるため、巻線ノズル20をスロット用インシュレータ15に干渉させずにスロット用インシュレータ15からの距離である距離c1を確保した状態で、コイル12を整列して配置し、コイルの占積率を向上できる。さらに、導線5aを安定して巻き回すことができる。
なお、実施の形態5において、回転子33が6個の磁極を備える例を示したが、回転子33が備える磁極は6個には限定されない。回転子33は2個以上の磁極を備えればよい。
また、実施の形態5において、V字形に配置された2個の永久磁石36が1個の磁極を構成する例を例示したが、回転電機30は係る構成を備えるものには限定されない。回転電機30は、1個の永久磁石36が1個の磁極を構成するものであってもよい。回転子33において、1個の永久磁石36が1個の磁極を構成する場合、永久磁石36は、その幅方向が回転子33の半径と直交するように配置される。
また、実施の形態5において、インナーロータ型の回転電機30を例として示したが、回転電機30はインナーロータ型には限定されない。回転電機30はアウターロータ型であってもよい。
また、実施の形態5において、回転電機30の固定子34に絶縁部材11を装着して、絶縁部材11の上に導線44を巻き回してコイル12を形成する例を示したが、回転子33に絶縁部材11及びコイル12を形成してもよい。
なお、本開示において、絶縁部材11は、端面用インシュレータ14及びスロット用インシュレータ15を組み合せて構成されるものには限定されない。絶縁部材11の形状と機械的構成は、必要に応じて、変更することができる。
また、本開示において、外鍔2a(オーバーハング部2ah)の内径側の面が、分割積層鉄心10が延在する方向と平行に延在する例を示したが、外径側に傾斜していてもよいし、段差を有していてもよい。外鍔2aの内径側の面を外径側に傾斜させる場合、俵積みに配置する導線5aに沿うように、例えば60度の傾斜をつければよい。
また、本開示において、切り欠き部2akは、テーパ状に外径側に深くなる例を示したが、窪みの深さは、少なくともスロット用インシュレータ15の厚みtより深ければよいので、一定の深さとしてもよい。これにより、組み立て時の作業性を向上できる。
また、本開示において、オーバーハング部2ahの面2ahbと切り欠き部2akとによって形成される溝の形状は四角形に限られず、円弧状に形成してもよい。
また、本開示において、回転電機は、電動機として動作してもよいし、発電機として動作してもよい。
また、本開示において、発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせることや、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。