実施形態に係る眼科装置は、瞬きや被検眼の動きなどの検査阻害要因を検知する機能を備える。検査には自覚検査と他覚検査とが含まれる。自覚検査の例として、遠用視力検査、近用視力検査、コントラスト検査、グレア検査などがある。他覚検査には、被検眼の特性を測定するための他覚測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とがある。他覚測定の例として、他覚屈折測定、角膜形状測定、眼軸長測定、眼圧測定などがある。撮影の例として、角膜内皮細胞撮影、前眼部撮影、眼底撮影(眼底カメラ、走査型レーザ検眼鏡等)、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)などがある。
実施形態に係る眼科装置の光学系の光軸は、前後方向(Z方向)に対して傾斜していてよい。この傾斜の方向及び角度は任意であってよい。また、傾斜の方向及び角度が固定されていてもよいし、傾斜の方向及び/又は角度が可変であってもよい。後者の場合、傾斜の方向及び/又は角度を検知するためのセンサ及び/又はソフトウェアが設けられていてよく、検知された情報を制御や演算に利用することができる。
以下の実施形態では、光学系の光軸が前後方向に対して傾斜している眼科装置について説明するが、光学系の光軸が前後方向と平行に配置された眼科装置に対して以下の実施形態と同様の構成を適用することも可能である。
〈構成〉
実施形態に係る眼科装置の外観構成の例を図1に示す。眼科装置1は、ベース2と、架台3と、ヘッド部4と、顔受け部5と、ジョイスティック8と、表示部10とを備える。
架台3は、ベース2上に設けられている。ジョイスティック8が操作されると、ベース2に対して上下・前後・左右に架台3が移動する。典型的には、ジョイスティック8をその軸周りに回転操作すると架台3が上下方向に移動し、ジョイスティック8を傾倒操作すると架台3が前後・左右に移動する。
ヘッド部4には、各種の光学系や機構が格納されている。ヘッド部4は、架台3上に設けられており、後述の電動的な機構によって、架台3に対して上下・前後・左右に移動される。
顔受け部5は、被検者の顔を固定するための顎受け6及び額当て7を備える。ジョイスティック8は、架台3上に設けられている。表示部10は、ヘッド部4の背面(被検眼が配置される正面側に対向する側)に設けられ、タッチパネルを備える。このタッチパネルには、各種グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)が表示される。
眼科装置1には外部装置11が接続されている。外部装置11は、任意の装置であってよく、また、眼科装置1と外部装置11との間の接続態様(通信形態等)も任意であってよい。外部装置11の例として、レンズの光学特性を測定するためのレンズメータ、記録媒体のリーダ・ライタ、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOMサーバ、医師端末、モバイル端末、眼科装置1のメーカ側のサーバや端末、クラウドサーバなどがある。
眼科装置1の内部構成の例を図2に示す。眼科装置1は、光学ユニット20と、Zアライメント系30と、移動機構40と、データ処理部50と、ユーザインターフェイス60と、制御部70とを備える。
(光学ユニット20)
光学ユニット20は、例えば、被検眼Eの特性を測定するための各種の光学素子と、被検眼Eを撮影するための各種の光学素子と、いくつかの光学素子を移動させるための機構とを含む。光学ユニット20は、ヘッド部4に格納されている。本実施形態においては、光学ユニット20は、検査光学系21と、観察光学系22と、XYアライメント系23とを含む。
XYアライメント系23は、ハーフミラー等のビームスプリッタ24によって観察光学系22の光路から分岐された光路に設けられている。検査光学系21の光路と観察光学系22の光路とは、ハーフミラー又はダイクロイックミラー等のビームスプリッタ25によって合成され、この合成光路OPが対物レンズ26を介して被検眼Eに導かれている。
合成光路OPの軸(光学系の光軸)は、前後方向(Z方向)に対して上方(+Y方向)に角度θだけ傾斜している。なお、光軸の傾斜方向は、上方には限定されず、Z方向に対して任意方向(例えば下方、左方、右方等)であってもよい。また、角度θは固定されても可変であってもよい。固定の場合、角度θの値は任意であり、例えば5度に設定されている。可変の場合、角度θの範囲は任意である。このとき、傾斜方向も任意に可変であってもよい。
なお、検査光学系21の光路と観察光学系22の光路とが合成されない場合もある。例えば、眼科装置1が角膜内皮細胞撮影装置としての機能を有する場合(例えば前述の引用文献を参照)、検査光学系21は、互いに異なる向きに光軸が配置された照明光学系及び撮影光学系に加え、照明光学系及び撮影光学系の双方の光軸と異なる向きに光軸が配置された観察光学系を含む。この観察光学系の光軸は、典型的には、Z方向に沿って配置される。よって、検査光学系21の光軸(照明光学系の光軸、撮影光学系の光軸)は、Z方向と異なる向きに配置される。このように、検査光学系21の光軸が2以上存在していてもよい。その場合、2以上の光軸の少なくとも1つがZ方向に対して傾斜していればよい。
(検査光学系21)
検査光学系21は、被検眼Eの情報を取得するための光学系である。検査光学系21により取得される情報には、任意の眼科測定手法により取得される測定データ、及び/又は、任意の眼科撮影手法(眼科モダリティ)により取得される撮影データ(画像データ、画像データを形成するために収集されたデータなど)が含まれる。検査光学系21は、実施可能な測定及び/又は撮影の種別に応じた光学系を含む。検査光学系21により実施可能な測定及び/又は撮影の種別は1つには限定されず、2以上であってもよい。検査光学系21は、任意の眼科測定及び/又は任意の眼科撮影を実施可能に構成されていてよい。
例えば、眼科装置1は、角膜内皮細胞撮影装置、OCT装置、眼底カメラ、スリットランプ、SLO、レフラクトメータ、ケラトメータ、眼圧計、視野計などのうちの1つ以上の装置として機能する。
一例を説明する。眼科装置1が角膜内皮細胞撮影装置としての機能を備える場合、検査光学系21は、従来の角膜内皮細胞撮影装置と同様に、角膜内皮細胞照明光学系(スリット光照明光学系)と、角膜内皮細胞撮影光学系とを含んでいる(例えば前述の引用文献を参照)。検査光学系21により取得された画像はデータ処理部50に送られる。
他の例として、眼科装置1がOCT装置としての機能を備える場合、検査光学系21は、一般的なOCT装置と同様に、次の構成要素を含む:光源(低コヒーレンス光源、波長掃引光源など);光源から出力された光を測定光と参照光とに分割し、且つ、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光とを干渉させる干渉光学系;干渉光学系により生成された干渉光を検出する検出部(分光器、バランスドフォトディテクタなど)。検査光学系21により収集されたデータはデータ処理部50に送られる。
検査光学系21は、検査に付随する機能を提供するための構成を備えていてよい。例えば、被検眼Eを固視させるための視標(固視標)を眼底Efに投影するための固視光学系が設けられていてよい。
(観察光学系22)
観察光学系22は、被検眼Eを動画撮影(及び静止画撮影)する。観察光学系22は、各種のレンズ(結像レンズ、フォーカシングレンズ、リレーレンズなど)と、レンズ以外の光学素子(絞り、撮像素子(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなど))とを含む。また、観察光学系22は、光源を含んでいてよい。この光源は、例えば、赤外光(近赤外光)及び/又は可視光を発する。本実施形態では、赤外光を用いて前眼部を動画撮影する。
観察光学系22は、2以上のカメラを含んだ構成であってもよい。例えば、光学ユニット20の前面(被検者に対向する面)の異なる位置に2つのカメラを設ける。そして、2つのカメラを用いて異なる方向から前眼部を撮影する。すなわち、2つのカメラは、前眼部のステレオ撮影を行う。眼科装置1は、2つのカメラにより実質的に同時に取得された2つの画像に基づいて、前眼部の位置情報を求めることが可能である。
(XYアライメント系23)
XYアライメント系23は、検査光学系21及び観察光学系22の合成光路OPの光軸に直交する方向(左右方向(X方向)、上下方向(Y方向))のアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに投射する。
XYアライメント系23は、ビームスプリッタ24により観察光学系22の光路から分岐された光路に設けられた光源(赤外光源)を含む。この光源から出力された光は、ビームスプリッタ24及び25により反射され、対物レンズ26を通過して被検眼Eに投射される。その角膜Ecによる反射光は、対物レンズ26を通過し、ビームスプリッタ25により反射され、ビームスプリッタ24を透過し、観察光学系22の撮像素子により検出される。
このように検出された反射光の像(輝点像)は、観察光学系22により得られる前眼部像に描出され、XYアライメントを行うための指標として用いられる(XYアライメント指標)。制御部70は、XYアライメント指標を含む前眼部像を表示部61(表示部10等)に表示させることができる。このとき、制御部70は、アライメントのずれの許容範囲を示す画像(アライメントマーク)などを前眼部像に重ねて表示させることができる。
手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマーク内にXYアライメント指標を誘導するようにヘッド部4(光学ユニット20)の移動操作を行う。
自動でアライメントを行う場合、データ処理部50は、アライメントマークに対するXYアライメント指標の変位を算出する。更に、制御部70は、データ処理部50により算出された変位がキャンセルされるように、XY方向におけるヘッド部4(光学ユニット20)の移動制御を実行する。
なお、観察光学系22を用いてXYアライメント指標を検出する代わりに、例えば、専用の光検出器(PSDセンサ等)を用いてXYアライメント指標を検出することも可能である。
(Zアライメント系30)
Zアライメント系30は、光学ユニット20と一体的に移動する。Zアライメント系30は、被検眼Eに対して前後方向(Z方向)におけるアライメントを行うための光を被検眼Eに投射し、その戻り光を検出する。Zアライメント光源(赤外光源)31から出力された光は、角膜Ecに投射され、角膜Ecにて反射され、結像レンズ32によりラインセンサ33に結像される。
被検眼Eと光学ユニット20との相対位置がZ方向に変化すると、ラインセンサ33に対する光の投影位置が変化する。ラインセンサ33に対する投影像は、Zアライメントを行うための指標として用いられる(Zアライメント指標)。データ処理部50は、ラインセンサ33に対するZアライメント指標の投影位置に基づいて、被検眼Eの角膜頂点、角膜内皮等のZ方向における変位を求める。制御部70は、算出された変位がキャンセルされるように、Z方向におけるヘッド部4の移動制御を実行する。
なお、従来の技術では、Z方向への移動と、傾斜角度θに応じたXY方向への移動とを交互に行うが、本実施形態では、傾斜角度θに応じた方向(検査光学系21の光軸の方向)にヘッド部4を移動するようになっている。
(移動機構40)
移動機構40は、光学ユニット20(ヘッド部4)を移動するための機構である。移動機構40は、光学ユニット20を3次元的に移動することができる。移動機構40は、光学ユニット20を電動で移動させるための機構(例えば、架台3に対してヘッド部4を移動させるための機構)を含む。このような電動機構に加え、又は電動機構に代えて、移動機構40は、光学ユニット20を手動で移動させるための機構(例えば、ベース2に対して架台3を移動させるための機構)を含んでよい。
移動機構40には、光学ユニット20を左右方向(X方向)に移動するための左右移動機構40Xと、上下方向(Y方向)に移動するための上下移動機構40Yと、前後方向(Z方向)に移動するための前後移動機構40Zとが設けられていてよい。
左右移動機構40X、上下移動機構40Y、及び前後移動機構40Zのそれぞれは、アクチュエータを備えている。アクチュエータは、例えばパルスモータを含む。アクチュエータは、制御部70による制御を受けて駆動力を発生する。移動機構40は、アクチュエータにより出力された駆動力を伝達して光学ユニット20を移動するための伝達機構を含む。
制御部70は、既定のコンピュータプログラムにしたがって、3つのアクチュエータのうちの少なくとも1つを制御する。また、制御部70は、ユーザインターフェイス60の操作部62から入力される操作信号に基づいて、3つのアクチュエータのうちの少なくとも1つを制御する。
(データ処理部50)
データ処理部50は、眼科装置1により取得された情報の処理と、外部から入力された情報の処理とを実行する。例えば、データ処理部50は、アライメントに関する処理を実行する。また、データ処理部50は、検査光学系21により取得されたデータの処理や、観察光学系22により取得された画像の処理など、各種データ処理を実行する。
データ処理部50は、このような処理を実行するためのプロセッサ、記憶装置、ソフトウェア(コンピュータプログラム)等を含む。また、データ処理部50は、被検眼Eの動きや瞬き等の検査阻害要因の発生を検知するための処理を実行する。そのための要素として、データ処理部50は、相対位置特定部51と、許容範囲設定部52と、判定部53とを含む。
(相対位置特定部51)
相対位置特定部51は、ラインセンサ33からの出力に基づいて、前後方向(Z方向)における被検眼Eと光学系との間の相対位置を特定する。
ラインセンサ33には光検出素子列が設けられており、各光検出素子にはアドレスが割り当てられている。前述の引用文献にも記載されているように、光検出素子のアドレスはZ方向の位置に対応する。ラインセンサ33は、各光検出素子が検出した光量を表す信号、つまり、光検出素子列に相当するZ方向の範囲からの反射光の光量分布を表す信号を出力する。
ラインセンサ33から出力される信号の例を図3に示す。図3は、光検出素子列のアドレスを横軸にとり、光量の値を縦軸にとった座標系により表現された光量分布グラフとして、ラインセンサ33からの出力信号を表している。この光量分布グラフは、2つのピークP1及びP2を有する。ピークP1は、最大光量を検出した光検出素子のアドレスQ1に対応し、Z方向の位置としては角膜表面に相当する。ピークP2は、二番目に大きい光量を検出した光検出素子のアドレスQ2に対応し、Z方向の位置としては角膜内皮に相当する。
相対位置特定部51は、例えば、ピークP1及びP2の少なくとも一方に対応するアドレス(Q1及び/又はQ2)に基づいて、Z方向における被検眼Eと光学系(光学ユニット20、又は検査光学系21など)との間の相対位置を特定する。この相対位置は、例えば、Z方向における空間的距離、又は、それと実質的に等価な情報であってよい。
眼科装置1が角膜内皮細胞撮影装置として機能する場合、相対位置特定部51は、角膜内皮に対応するピークP2を特定し、特定されたピークP2に対応する光検出素子のアドレスを特定し、特定されたアドレスと既定の基準アドレスとの間の差を求める。ここで、ピークP2やこれに対応する光検出素子のアドレスは、Zアライメント指標の例である。基準アドレスは、例えば、光検出素子列の中心に配置された光検出素子のアドレスであり、既定のワーキングディスタンスに相当するZ方向の位置に相当する。また、隣接する光検出素子の間隔は既知であり、よって、隣接するアドレスの間隔に対応する空間的距離も既知である。相対位置特定部51は、ピークP2と基準アドレスとの差を空間的距離に換算する。更に、相対位置特定部51は、この空間的距離とワーキングディスタンスの値とに基づいて、角膜内皮と光学系との間の相対位置(Z方向における距離)を求めることができる。
なお、ピークP1を参照する場合においても、同様の処理によって角膜表面と光学系との間の相対位置を求めることができる。
ここで、相対位置特定部51により特定された相対位置に基づき実行される、Zアライメントに関する処理について説明する。Zアライメントは、ピークP2が基準アドレスに配置するように移動機構40を制御することにより行われる。つまり、データ処理部50は、基準アドレスに対するピークP2の変位が打ち消される制御量(例えば、基準アドレスに対するピークP2の差に対応する制御量、又は、この差を換算して得られた空間的距離に対応する制御量など)を求める。この制御量(Z制御量)は、前後移動機構40Zの制御に用いられる。
更に、データ処理部50は、光学ユニット20をZ方向へ移動するときにZ方向に対する光軸の傾斜角度θに起因して発生するXY方向への変位を補正するための制御量を求める。つまり、データ処理部50は、左右移動機構40Xの制御量(X制御量)及び上下移動機構40Yの制御量(Y制御量)の少なくとも一方を、Z制御量に基づいて演算する。
ここで演算される制御量は、Z方向に対する検査光学系21の光軸の傾斜の方向に応じた制御量である。本実施形態では、図2に示すように、合成光路OPの光軸がY方向に傾斜しているので、Y制御量が求められる。以下、Z制御量からY制御量(及び/又はX制御量)を求めるための処理の例を説明する。
Z制御量からY制御量を求めるための処理の第1の例として、予め作成された対応情報を参照することができる。対応情報は、例えば、制御部70又はデータ処理部50に予め記憶される。或いは、外部装置11に対応情報を予め格納し、これを参照するようにしてもよい。対応情報が記憶される要素(記憶部)は、例えば、半導体メモリ、磁気記憶装置、光学記憶装置、光磁気ディスクのいずれかを含んでよい。
対応情報は、例えば、Z制御量の複数の値のそれぞれにY制御量が対応付けられたテーブル情報である。このようなテーブル情報においては、例えば、Z制御量の値0,ΔZ1,ΔZ2,ΔZ3,・・・・,ΔZN-1,ΔZNに対して、それぞれ、Y制御量の値0,ΔY1,ΔY2,ΔY3,・・・・,ΔYN-1,ΔYNが対応付けられている(ΔZn<ΔZn+1、ΔYn<ΔYn+1)。ここで、ΔZnとΔYnとの関係は、Z方向に対する検査光学系21の光軸(合成光路OPの光軸)の傾斜角度θに基づき決定される。具体的には、関係式ΔYn=ΔZn×tanθによって、ΔZnに対するΔYnが算出される(n=1,2,・・・・,N)。
対応情報は、上記テーブル情報のような離散的な情報には限定されない。例えば、Z制御量の値とY制御量の値との関係を連続的に表すグラフを対応情報として用いることができる。これは、例えば、Z制御量の値ΔZを横軸にとり、Y制御量の値ΔYを縦軸にとったグラフである。このようなグラフは、関係式ΔY=ΔZ×tanθによって得られる。
傾斜角度θが可変である場合、傾斜角度θの複数の値(離散的な値)θ1,θ2,・・・・,θKのそれぞれについて対応情報を準備することができる。例えば、傾斜角度θ=θk(k=1,2,・・・・,K)のそれぞれについて、Z制御量の値ΔZn(θk)にY制御量の値ΔYn(θk)が対応付けられたテーブル情報を作成することができる。ここで、Z制御量の値ΔZn(θk)とY制御量の値ΔYn(θk)とは、関係式ΔYn(θk)=ΔZn(θk)×tanθkを満足する。また、同様の関係式を利用することで、傾斜角度θ=θk(k=1,2,・・・・,K)のそれぞれについてのグラフを作成することもできる。
或いは、傾斜角度θの連続的な変化を考慮した対応情報を準備することも可能である。例えば、連続的な変数である傾斜角度θについて、Z制御量の値ΔZn(θ)にY制御量の値ΔYn(θ)が対応付けられたテーブル情報を作成することができる。ここで、Z制御量の値ΔZn(θ)とY制御量の値ΔYn(θ)とは、関係式ΔYn(θ)=ΔZn(θ)×tanθを満足する。また、同様の関係式を利用することで、連続的な変数である傾斜角度θをインデックスとする関数族として対応情報を作成することもできる。
なお、対応情報は、テーブル情報やグラフに限定されるものではない。また、Z制御量に対してX制御量が対応付けられた対応情報についても、Z制御量に対してY制御量が対応付けられた対応情報と同じ要領で作成することができる。
データ処理部50は、相対位置特定部51により特定された相対位置に基づくZ制御量と、対応情報とに基づいて、Y制御量(及び/又はX制御量)を求めることができる。
対応情報がテーブル情報である場合、データ処理部50は、まず、Z制御量に応じたテーブル情報中のZ制御量の値を選択する。テーブル情報では、Z制御量の値は離散的である。Z制御量と等しい値がテーブル情報に含まれる場合、この値が選択される。選択された値がY制御量として採用される。
Z制御量と等しい値がテーブル情報に含まれない場合、データ処理部50は、例えば、このZ制御量に最も近い値を選択する。或いは、このZ制御量より小さい値のうちの最も大きい値を選択することや、このZ制御量より大きい値のうちの最も小さい値を選択することも可能である。選択された値が、このZ制御量に対応するY制御量として採用される。
対応情報が(連続的な)グラフである場合、データ処理部50は、Z制御量に応じたZ制御量の座標軸(例えば横軸)上の座標を特定し、当該グラフによって当該座標に対応付けられたY制御量の座標軸(例えば縦軸)上の座標を特定する。特定された座標が示す値が、このZ制御量に対応するY制御量として採用される。
Z制御量からY制御量を求めるための処理の第2の例を説明する。本例では、データ処理部50は、Z制御量に対応するY制御量(及び/又はX制御量)を、検査光学系21の光軸の傾斜角度θに基づき演算する。つまり、本例では、Z制御量に対応するY制御量(及び/又はX制御量)がその都度算出される。
具体的には、データ処理部50は、Z制御量と傾斜角度θとに基づき、三角法を用いて、Y制御量(及び/又はX制御量)を演算する。ここで、第1の例の場合と同様に、三角法の関係式「(Y制御量)=(Z制御量)×tanθ」を利用することができる。本例では、制御部70、データ処理部50、外部装置11等に、このような関係式が予め記憶される。
(許容範囲設定部52)
本実施形態では、Zアライメント系30及び相対位置特定部51は、被検眼Eと光学系との間の相対位置を求めるための動作を繰り返し実行する。例えば、制御部70は、被検眼Eと光学系との間の相対位置を所定の時間間隔で取得するようにZアライメント系30及び相対位置特定部51の制御を行う。このような制御により、被検眼Eと光学系との間の相対位置の検出結果が時系列的に得られる。
許容範囲設定部52は、相対位置特定部51により時系列的に特定された複数の相対位置に基づいて、前後方向(Z方向)における許容範囲を設定する。許容範囲設定部52は、例えば、複数の相対位置の変化や、この変化の速度(光学系の移動速度)など、相対位置特定部51により時系列的に特定された複数の相対位置から得られる情報に基づいて、許容範囲の設定を行うことができる。
図4を参照しつつ、許容範囲を設定する処理の例を説明する。相対位置特定部51は、ラインセンサ33から所定の時間間隔で出力される信号に基づいて、Z方向における被検眼Eと光学系との間の相対位置を当該時間間隔で特定する。これにより、時系列に沿って配列された複数の相対位置Z1,Z2,・・・・,Zhが得られる。なお、図4において、横軸は時間軸であり、縦軸は、被検眼Eと光学系との間の相対位置を表す。
許容範囲設定部52は、現時点までに取得された複数の相対位置Z1,Z2,・・・・,Zhの少なくとも一部に基づいて、許容範囲を設定する。許容範囲設定処理は、例えば、複数の相対位置Z1,Z2,・・・・,Zhの少なくとも一部に基づいて回帰直線又は回帰曲線を求める処理を含む。その具体例として、複数の相対位置Z1,Z2,・・・・,Zhのうちのいずれか2つ(例えば直近の2つ)を通る直線を求めることができる。或いは、複数の相対位置Z1,Z2,・・・・,Zhのうちのいずれか3以上に対して最小二乗法を適用することにより回帰直線を求めることができる。なお、線形回帰の手法は最小二乗法には限定されず、また、回帰分析の手法は線形回帰には限定されない。
本例において、許容範囲設定部52は、求められた回帰直線又は回帰曲線に基づいて許容範囲を設定する。この処理は、例えば、回帰直線又は回帰曲線と、将来の所定時間において時間軸に直交する直線との交点を求める処理と、この交点を含む許容範囲を設定する処理とを含む。許容範囲は、例えば、その中心に交点が配置されるように設定されてよい。或いは、回帰直線等の傾きに応じた方向に当該傾きに応じた距離だけ許容範囲の中心から変位した位置に交点が配置されてもよい。また、許容範囲の大きさは任意であってよい。例えば、許容範囲の大きさはデフォルト設定されていてよい。また、回帰直線等の傾きや直前の相対位置に基づいて許容範囲の大きさを設定してもよい。
図4における符号Rh+1は、このようにして設定された許容範囲の例を示す。なお、インデックス「h+1」は、直前の相対位置Zhの次の相対位置に関する許容範囲であることを示す。なお、許容範囲は次の相対位置に関するものである必要はなく、将来の任意のタイミングで取得される相対位置に関するものであってよい。例えば、許容範囲の演算に要する時間と、相対位置特定が行われる間隔とに基づいて、将来のどのタイミングにおける相対位置に関する許容範囲を設定するか決定することができる。
(判定部53)
許容範囲設定部52により許容範囲が設定された後に相対位置特定部51が相対位置を特定したとき、判定部53は、この新たな相対位置が許容範囲に含まれるか判定する。この処理は、新たな相対位置と許容範囲との比較を含む。
図5において、新たな相対位置Zh+1は許容範囲Rh+1に含まれる相対位置の例であり、新たな相対位置Zh+1’は許容範囲Rh+1に含まれない相対位置の例である。被検眼Eが瞬きをしているときに相対位置を特定するための検出(Zアライメント系30による検出)が行われた場合、図6に示すような光量分布グラフが得られる。この光量分布グラフは、瞼の表面に対応するピークPLを有する。ピークPLは、被検眼Eの角膜表面よりも-Z側の位置に相当するアドレスQLの光検出素子に対応する。このようなアドレスQLから得られる相対位置は、許容範囲Rh+1に含まれない相対位置Zh+1’の典型的な例である。
データ処理部50は、光学ユニット20(例えば検査光学系21)により得られたデータに基づいて被検眼情報を取得する。取得される被検眼情報の種類は、眼科装置1の機能に対応する。
一例として、光学ユニット20により角膜内皮細胞画像が得られた場合、つまり、眼科装置1が角膜内皮細胞撮影装置として機能する場合、前述の引用文献を含む、当該分野の任意の公知技術を利用することが可能である。典型的には、データ処理部50は、次のような処理を実行することができる:角膜内皮細胞画像の補正(コントラスト補正、輝度補正、鮮鋭化等);連続して取得された複数の画像のうちから最適な画像を選択する処理;異なる部位の画像からパノラマ画像を生成する処理;画像を解析して角膜内皮細胞の密度を求める処理;角膜内皮細胞の輪郭を表す画像を生成する処理。
他の例として、光学ユニット20によりOCTデータが収集された場合、つまり、眼科装置1がOCT装置として機能する場合、当該分野の任意の公知技術を利用することが可能である。典型的には、データ処理部50は、収集されたOCTデータに基づき断層像を形成する。例えば、データ処理部50は、従来のスウェプトソースOCTと同様に、Aライン毎のサンプリング結果に基づくスペクトル分布に信号処理を施してAライン毎の反射強度プロファイルを形成し、これらAラインプロファイルを画像化してスキャンラインに沿って配列する。上記信号処理には、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などが含まれる。また、データ処理部50は、断層像に対して画像処理や解析処理を施してもよい。例えば、データ処理部50は、ラスタースキャンデータに基づく3次元画像データ(スタックデータ、ボリュームデータ等)の作成、3次元画像データのレンダリング、画像補正、解析アプリケーションに基づく画像解析などを実行するように構成されてよい。
(ユーザインターフェイス60)
ユーザインターフェイス60は、表示部61と操作部62とを含む。表示部61は、表示部10を含み、制御部70による制御を受けて動作する。操作部62は、眼科装置1の操作や情報の入力に使用される。表示部61と操作部62は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。例えばタッチパネルのように表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることが可能である。
(制御部70)
制御部70は、プロセッサ、記憶装置、通信インターフェイス、ソフトウェア等を含んで構成される。制御部70は眼科装置1における各種制御を行う。例えば、制御部70は、検査光学系21の制御、観察光学系22の制御、XYアライメント系23の制御、Zアライメント系30の制御、移動機構40の制御(左右移動機構40X、上下移動機構40Y、及び前後移動機構40Zの個別的制御及び/又は連係的制御等)、データ処理部50の制御、表示部61の制御などを実行する。
アライメントに関する制御について説明する。制御部70は、XYアライメント及びZアライメントのための制御を実行する。XYアライメントでは、制御部70は、XYアライメント系23にXYアライメント指標を生成させる。データ処理部50は、アライメントマークに対するXYアライメント指標(例えば、観察光学系20により得られる前眼部像に描出されたXYアライメント指標の像)の変位を算出する。制御部70は、データ処理部50により算出された変位がキャンセルされるように、XY方向におけるヘッド部4(光学ユニット20)の移動制御を実行する。このような変位算出と移動制御とが、前眼部像のフレームレートに応じた時間間隔で反復的に実行される。
Zアライメントでは、制御部70は、Zアライメント系30にZアライメント指標を生成させる。更に、制御部70は、Zアライメント指標(例えば、ラインセンサ33に対する投影像)に基づいて、合成光路OPの光軸に沿って光学ユニット20を移動するように移動機構40を制御する。本実施形態では、制御部70は、データ処理部50により取得されたZ制御量に基づく前後移動機構40Zの制御と、データ処理部50により取得されたY制御量(及び/又はX制御量)に基づく上下移動機構40Y(及び/又は左右移動機構40X)の制御とを並行して実行することにより、合成光路OPの光軸に沿った光学ユニット20の移動を実現する。
このようなZアライメントにおいて、制御部70は、Z制御量に基づく前後移動機構40Zの制御の開始タイミングと、Y制御量(及び/又はX制御量)に基づく上下移動機構40Y(及び/又は左右移動機構40X)の制御の開始タイミングとを、略一致させることができる。更に、制御部70は、Z制御量に基づく前後移動機構40Zの制御の終了タイミングと、Y制御量(及び/又はX制御量)に基づく上下移動機構40Y(及び/又は左右移動機構40X)の制御の終了タイミングとを、略一致させることができる。
このような連係的制御は、前後方向(Z方向)への移動速度と、上下方向(又は、左右方向、若しくは、上下成分と左右成分の双方を含む移動方向)への移動速度とを、調整することによって実現される。例えば、Z方向への移動距離をDZとし、Y方向への移動距離をDYとし、Z方向への移動速度をVZとすると、Y方向への移動速度VYを次式により設定することができる:VY=VZ×(DY/DZ)。
制御部70は、アライメントが完了したか判定することができる。XYアライメントの典型的な例において、データ処理部50は、アライメントマークに対するXYアライメント指標の変位を算出する。制御部70は、この変位の量を既定の閾値と比較する。変位量が閾値を超える場合、XYアライメントは完了していないと判定され、XYアライメントが継続される。変位量が閾値以下である場合、XYアライメントは完了したと判定される。つまり、XYアライメントは、アライメントマークに対するXYアライメント指標の変位量が閾値以下になるように実行される。
Zアライメントでは、ラインセンサ33におけるZアライメント指標の位置(ラインセンサ33に含まれる光検出素子列のうちZアライメント指標の生成に寄与した光検出素子の位置)が参照される。制御部70は、Zアライメントが適正な状態に対応するラインセンサ33の位置(例えば、光検出素子列の中心に位置する光検出素子)に対する変位、つまり、Zアライメント指標の形成に寄与した光検出素子の位置(アドレス)に基づいて、Zアライメントが完了したか否か判定することができる。或いは、データ処理部50により求められたZ制御量を既定閾値と比較し、Z制御量が閾値以下であるときにZアライメントは完了したと判定することができる。
典型的な例では、XYアライメントの後にZアライメントが行われる。この場合、XYアライメントが完了したと制御部70により判定されたことに対応して、制御部70は、XYアライメントのための制御を終了し、Zアライメントのための制御を開始する。更に、Zアライメントが完了したと制御部70により判定されたことに対応して、制御部70はZアライメントを終了し、所定の制御(検査光学系21に検査の開始、検査が開始できる旨のメッセージの表示など)を実行する。
制御部70は、判定部53により得られた判定結果に応じた制御を行う。例えば、新たな相対位置が許容範囲に含まれると判定部53により判定されたとき、制御部70は、アライメント(Zアライメント)を完了して検査光学系21に検査を実行させる。
逆に、新たな相対位置が許容範囲に含まれないと判定部53により判定されたとき、制御部70は、所定の制御を実行する。第1の例として、制御部70は、光学ユニット20の移動を停止するように移動機構40を制御することができる。第2の例として、制御部70は、光学ユニット20の移動速度を低下するように移動機構40を制御することができる。第3の例として、制御部70は、被検眼Eから離れる方向(-Z方向)に光学ユニット20を移動するように移動機構40を制御することができる。第1~第3の例によれば、光学ユニット20等が被検者に接触したり過近接したりする事態を回避することが可能である。
第4の例として、制御部70は、情報出力手段に報知情報を出力させることができる。情報出力手段は、例えば、表示部61及び/又は音声出力部を含む。情報出力手段が表示部61を含む場合、制御部70は、例えば、瞬きや眼球運動等の異常が発生したことを示す視覚的情報(メッセージ、画像等)を表示部61に表示させることができる。また、情報出力手段が音声出力部を含む場合、制御部70は、例えば、異常が発生したことを示す聴覚的情報(警告音、音声メッセージ等)を音声出力部に出力させることができる。なお、情報出力手段は眼科装置1に含まれていてもよいし、眼科装置1の外部に設けられていてもよい。
なお、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているコンピュータプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
〈動作〉
眼科装置1の動作について説明する。眼科装置1の動作の例を図7に示す。
(S1:前眼部撮影を開始する)
まず、制御部70は、観察光学系22を制御して前眼部撮影を開始させる。観察光学系22から逐次に出力されるフレームは、制御部70を介してデータ処理部50に送られる。これと並行し、制御部70は、前眼部像を表示部61に動画表示させることができる。
(S2:アライメント指標の生成を開始する)
続いて、制御部70は、XYアライメント系23及びZアライメント系30を制御し、XYアライメント指標とZアライメント指標とを生成させる。XYアライメント系23から出力された光は、角膜Ecにて反射され、前眼部像のフレームに輝点像として描出される。制御部70は、前眼部像のフレームをデータ処理部50に逐次に転送する。
Zアライメント光源31から出力された光は、角膜Ecにて反射され、結像レンズ32によりラインセンサ33に投影される。ラインセンサ33は、既定の時間間隔で検出信号を制御部70に入力する。制御部70は、この検出信号をデータ処理部50に逐次に転送する。
なお、本例では、XYアライメントの後にZアライメントを実行する。よって、XYアライメント時にはXYアライメント指標のみを生成し、Zアライメント時にはZアライメント指標のみを生成するようにしてもよい。
(S3:XYアライメントを行う)
制御部70、データ処理部50及び移動機構40は、ステップS2で生成が開始されたXYアライメント指標に基づいてXYアライメントを実行する。つまり、データ処理部50は、XYアライメント指標を参照してXY方向のずれを求め、制御部70は、このずれをキャンセルするように左右移動機構40X及び/又は上下移動機構40Yを制御する。XYアライメントは、例えば、アライメントマークに対するXYアライメント指標の変位が既定値以下となるように行われる。XYアライメントが完了したか否かの判定は、制御部70によって行われる。
(S4:Zアライメント及び異常検知を開始する)
ステップS3のXYアライメントが完了したら、制御部70、データ処理部50及び移動機構40は、ステップS2で生成が開始されたZアライメント指標に基づいてZアライメントを開始するとともに、異常検知を開始する。異常検知は、Zアライメント系30、相対位置特定部51、許容範囲設定部52、及び判定部53により、前述した要領で実行される。
Zアライメントのために、データ処理部50は、Zアライメント指標を参照してZ方向のずれを求め、制御部70は、このずれをキャンセルするように前後移動機構40Zの制御を行いつつ、このZ方向への移動に伴うY方向(及び/又はX方向)へのずれを補正するために上下移動機構40Y(及び/又は左右移動機構40X)を制御する。ここで、Z方向への移動に伴うY方向(及び/又はX方向)へのずれは、Z方向と合成光路OPの光軸とがなす角度θに起因する。
本実施形態では、データ処理部50が、Zアライメント指標に基づいてZ制御量を求め、データ処理部50が、このZ制御量と上記対応情報又は上記関係式とに基づいてY制御量を求める制御部70は、データ処理部50により求められたZ制御量及びY制御量に基づいて、Z方向への移動速度(Z移動速度)とY方向への移動速度(Y移動速度)とを設定することができる。制御部70は、Z制御量及びZ移動速度に基づく前後移動機構40Zの制御と、Y制御量及びY移動速度に基づく上下移動機構40Yの制御とを並行して実行する。これにより、合成光路OPの光軸に沿って光学ユニット20が移動される。
Zアライメントは、例えば、Zアライメント指標がラインセンサ33の所定位置(ラインセンサ33に含まれる光検出素子列のうちの所定の光検出素子)にて得られるように行われる。Zアライメントが完了したか否かの判定は、制御部70によって行われる。
(S5:アライメント完了?)
Zアライメントが未だ完了していないとき(S5:No)、処理はステップS6に移行する。他方、Zアライメントが完了したとき(S5:Yes)、処理はステップS8に移行する。
(S6:異常が検知された?)
異常が検知されない場合(S6:No)、Zアライメントが継続される(ステップS5)。他方、異常が検知された場合(S6:Yes)、処理はステップS7に移行する。
(S7:所定の制御を行う)
Zアライメントの実行中に異常が検知された場合(S6:Yes)、制御部70は、所定の制御を実行する。
第1の例として、所定の制御は、光学ユニット20の移動を停止するための移動機構40の制御を含んでよい。この場合、例えば、ユーザは、異常を確認した後、アライメントを再開するための指示を入力することができる(S3又はS4へ)。
第2の例として、所定の制御は、光学ユニット20の移動速度を低下するための移動機構40の制御を含んでよい。この場合、例えば、制御部70は、異常の解消を受けて、アライメントを再開することができる(S3又はS4へ)。また、ユーザは、異常を確認した後、アライメントを再開するための指示を入力することができる(S3又はS4へ)。
第3の例として、所定の制御は、被検眼Eから離れる方向(-Z方向)に光学ユニット20を移動するための移動機構40の制御を含んでよい。この場合にも、制御部70又はユーザによってアライメントを再開することができる(S3又はS4へ)。
第4の例として、所定の制御は、表示部61や音声出力部に報知情報を出力させることができる。この場合、例えば、ユーザによってアライメントを再開することができる(S3又はS4へ)。
(S8:検査を行う)
アライメント(Zアライメント)が完了したと判定されると(S5:Yes)、制御部70は、被検眼Eのデータを取得するための検査光学系21の制御を実行する。それにより、アライメントの完了と実質的に同時に検査(測定、撮影等)が開始される。つまり、アライメント(Zアライメント)の完了を検査開始トリガとして用いることができる。
或いは、制御部70は、アライメントが完了したこと(或いは、検査を開始できること)を示す視覚的情報や聴覚的情報を出力させることができる。ユーザは、検査を開始するための指示を入力することができる。
取得された検査データ(測定データ、画像データ等)は、制御部70の記憶装置に保存される。また、検査データを外部装置11に送ることもできる。以上で、本動作例に係る処理は終了となる。
〈作用・効果〉
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
実施形態に係る眼科装置は、光学系と、移動機構と、相対位置特定部と、許容範囲設定部と、判定部と、制御部とを備える。
光学系は、検査系と、投射系と、検出系とを含む。検査系は、被検眼のデータを光学的に取得する。投射系は、被検眼の前眼部に斜め方向から光を投射する。検出系は、投射系により前眼部に投射された光の戻り光を検出する。上記実施形態において、検査系は検査光学系21を含み、投射系はZアライメント系30のZアライメント光源(赤外光源)31を含み、検出系は結像レンズ32及びラインセンサ33を含む。
移動機構は、光学系を移動する。一例において、移動機構は、被検眼に対して前後方向(Z方向)及びそれに直交する方向(X方向、Y方向)に光学系を移動可能である。上記実施形態において、移動機構は移動機構40を含み、前後方向への移動は前後移動機構40Zが担っており、前後方向に直交する方向への移動は左右移動機構40X及び上下移動機構40Yが担っている。
相対位置特定部は、移動機構により光学系が少なくとも前後方向に移動されているとき(つまりZアライメントが行われているとき)、検出系からの出力に基づいて、前後方向における被検眼と光学系との間の相対位置を特定する。上記実施形態において、相対位置特定部は相対位置特定部51を含む。
許容範囲設定部は、相対位置特定部により時系列的に特定された複数の相対位置に基づいて、前後方向における許容範囲を設定する。上記実施形態において、許容範囲設定部は許容範囲設定部52を含む。
判定部は、相対位置特定部により特定された新たな相対位置が上記許容範囲に含まれるか判定する。上記実施形態において、判定部は判定部53を含む。
制御部は、判定部により得られた判定結果に応じた制御を行う。上記実施形態において、制御部は制御部70を含む。
新たな相対位置が許容範囲に含まれないと判定部により判定されたとき、制御部は、例えば次のいずれかの制御を実行することができる:光学系の移動を停止するように移動機構を制御する;光学系の移動速度を低下するように移動機構を制御する;被検眼から離れる方向に光学系を移動するように移動機構を制御する;情報出力手段に報知情報を出力させる。
このような実施形態によれば、瞬きや被検眼の動きといった検査阻害要因(異常)の発生を検知することができる。また、異常の発生時の制御によれば、異常の発生を報知することや、被検者への眼科装置の接触・過近接を回避することが可能である。
以上に示された実施形態は、本発明を実施するための一例に過ぎない。本発明を実施しようとする者は、本発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。