JP7270878B2 - 水不溶性s-スルホン化ケラチンタンパク質を使う成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
S-スルホン化反応は、下記の簡略した化学式2で示すように、ケラチンタンパク質のシスチン残基のジスルフィド結合(S-S結合)およびシステイン残基のメルカプト基(SH基)が酸化されて生成するところのジスルフィド結合がS-スルホン化剤と反応することによって、S-スルホネート基(-S-SO3 -基)に変換されるものとして化学式2のように簡略的に説明される(非特許文献9,非特許文献10,非特許文献11)。
[化学式2]
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4で、それぞれ、ケラチン含有物質として、古着のウールセーターから回収した羊毛繊維、羊毛生地、羊毛トップ、古くなって廃棄された羽根枕から回収した羽毛を原料とする水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質の調製について説明する。実施例5以下にはフィルムやシートや容器形状物の製造法とそれら成形物の機械的物性、耐水性、土壌中での生分解挙動について説明する。なお、水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と結着剤と可塑剤の組み合わせとこれらの組成比(重量比)については一つの実施形態として例示しているのであって、実施例で示す組み合わせと組成比にのみに限定されるものではない。実施例での成形は圧縮成形法の場合にて例示しているが、どの成形法でも(成形物の厚さを決める)いわゆる雌金型と雄金型の対面する間隔長は0.01mmから10mmの範囲に制御される。最高加熱温度と加圧値は上記のした範囲である。実施例で示す加熱温度や加圧値は一つの実施形態である。なお、加圧値(MPa)はロードセルで補正した加重値を雌金型の片面の面積で割った値である。成形物の機械的物性(最大破断強度、最大破断伸度、ヤング率)は、サン科学(株)のCR-300レオメーターを使って、試験片(厚さ0.15mm-1.0mm)を長方形(幅10mm、長さ70mm)に切り取って、10mm/分の引張速度で、RH70-80%、温度23-25℃で求めた。引っ張り初期は応力とひずみはほぼ直線関係にあった。最大破断伸度(%)、初期弾性域におけるヤング率、膨潤度(%)と溶出度(%)はそれぞれ次の数式(数1,数2、数3、数4)で求めた。なお、膨潤度は溶出度で補正していない。文中のmLはミリリットルの意味である。
羊毛を原料とする水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質の調製。 黄色いウールセーター古着(100g)をおおよそ10mmx10mmの大きさに細断して洗浄し、水を加えて、全量を約1L(リットル)とした。加熱して85-97℃に達してから、二亜硫酸ナトリウム(30g)を入れ、同温度で30分間、時々攪拌しながら、エヤーポンプで空気を吹き込みながら、加熱した。セーターは当初のボリューム感を失いクタクタの状態になった。室温まで冷却後、不溶物をステンレス製ふるいでわけ取り、水で洗浄し、再び水を加え,3M苛性ソーダ水溶液を加えることでpHが6.5-8.5になるように調節した。遠心して固形物を風乾して水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質を得た;収量、約87g。これをミルで粉砕して薄黄色パウダーとした。当該S-スルホン化ケラチンタンパク質のアミノ酸分析によるとシステイン、シスチン残基以外のアミノ酸残基は洗浄した原料羊毛の値に準じていた。一方、S-スルホネート基(―S―SO3 -)の含量はFTIRスペクトルでのS-O伸縮振動吸収バンド(1201cm-1と1023cm-1)の面積増減をS-エチルチオスルホ酸ナトリウム(C2H5S-SO3 - Na+)を標準試料に使って比較することで概算したところ、原料の羊毛繊維のシステイン残基とハーフシスチン残基の合計値(全アミノ酸残基の10.5%)の55±15%がS-スルホシステイン残基(化学式1)となっていることが示唆された(非特許文献4,非特許文献14)。
羊毛生地からの水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質の調製。生地(11cmx42cm、12g)をステンレス製金網からなる直径5cmのシリンダーにゆるく巻いて水(0.8L)に浸漬し60rpmで回転しながら二亜硫酸ナトリウム(10g)を加えて87-97℃で加熱した。約30分後、シリンダーを取り出し水で洗浄し、再び水に浸けて3M苛性ソーダ水溶液でpH7-8に調整後、軽く遠心して風乾し、羊毛生地のS-スルホン化ケラチンタンパク質(10.5g)を得た。実施例1の方法でS-スルホネート基の含量を調べたところ原料生地のシステイン残基とハーフシスチン残基の合計値(全アミノ酸残基の5-7%)の50±20%がS-スルホシステイン残基となっていることが示唆された。
羊毛トップからの水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質の調製。 羊毛トップ(メリノ、12g)をステンレス製金網からなる直径5cmのシリンダーにゆるく巻いて水(0.8L)に浸漬し60rpmで回転しながら二亜硫酸ナトリウム(10g)を加えて87-97℃で加熱した。約30分後、シリンダーを取り出し水で洗浄し、再び水に浸けて3M苛性ソーダ水溶液でpH7-8に調整後、軽く遠心して風乾し、羊毛トップのS-スルホン化ケラチンタンパク質(10.3g)を得た。 実施例1の方法でS-スルホネート基の含量を調べたところ原料生地のシステイン残基とハーフシスチン残基の合計値(全アミノ酸残基の5%)の53±18%がS-スルホシステイン残基となっていることが示唆された。
羽毛を原料とする水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質の調製。 使用した羽毛枕の羽毛は白、茶、黒色の羽毛の混じったものであった。この羽毛(300g)を家庭用の洗濯用洗剤を使って洗浄した後、遠心脱水した。半湿り状態の羽毛を5Lのステンレス釜に入れ脱塩素処理した水道水を加えて全体を約3Lにした。これを攪拌機でゆるく攪拌しながら水温が87-98℃に達した後、二亜硫酸ナトリウム粉末(150g)を投入し、同温度で20分間、空気を吹き込みながら、攪拌した。反応物は、実施例1と同じような方法で不溶物を濾過分別し、水に分散して、pHを7.0-pH8.5に調整してから遠心脱水を経て風乾し、ミルで粉砕した; 収量、270g。実施例1で記述した方法でS-スルホネート基の含量を調べたところ原料羽毛のシステイン残基とハーフシスチン残基の合計値(全アミノ酸残基の5%)の60±15%がS-スルホシステイン残基となっていることが示唆された。
羊毛生地の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質を使ったフィルムの調製。古ウール生地(Herdwick種、30cm x 30cm)を、実施例2の方法に準じて、水不溶性S-スルホン化した(元の生地のおおきさをほぼ保っていた)。この一部(8cm x 8cm)を95℃に加熱しておいたシート成形用の金型(プレス板間隔は0.21mm)に挟んで3.5MPaで170℃まで昇温(40℃/分)しながら加熱加圧し、その後、圧力を保ったまま95℃以下に冷却した。面積は元の面積に近く、半透明で屈曲性がある薄茶色のフィルムが得られた(厚さ、0.23-0.24mm)。最大破断強度,5.4MPa;最大破断伸度、5.7%;ヤング率、310MPa。膨潤度、28%;溶出度、5%。
羊毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質を使うシートの製造。 実施例1で得た水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(pH7/0.067Mリン酸緩衝液処理済み)をミルで粉砕し、その6.0gに水(14mL)を加えてよく練り、長方形(10cmx10cm)に広げて7.0gになるまで風乾した。風乾物(3.5g)をシート成形用の金型(プレス板間隔は0.35mmに設定)に仕込み、実施例5と同じように加熱加圧、冷却して、薄黄色のしなやかな透明シートを得た(厚さ、約0.33mm)。最大破断強度、8.3MPa;最大破断伸度、3.5%;ヤング率、280MPa。膨潤度、11%;溶出度、10%-12%。
羊毛トップの水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質とマンニトールを使ったフィルムの調製。 羊毛トップ(メリノ;2-3cmに切断)を使って調製した水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(2.1g)を長方形(7cm x 10cm)に広げてマンニトール(7.5mL;固形分、約0.9g)を注ぎ、全体に馴染ませ,水分が10-15%までに風乾した。これを95℃に加熱しておいたシート成形用の金型(プレス板間隔は0.15mm)に仕込み、実施例5と同じように成形して、薄黄色の透明でしなやかなフィルムを得た;厚さ、約0.16mm。最大破断強度、12.5MPa;最大破断伸度、6.7%;ヤング率、950MPa。膨潤度、27%;溶出度28%。
羊毛(メリノ)の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と卵白の混合物を使うシートの製造。 水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(14.0g)に卵白パウダー(6.8g)を加え、電動ミルで攪拌粉砕した。これに水(30mL)を加えてよく混練し、多孔スリットから押し出してから水分15重量%を含むまで乾燥してペレット(直径、約2-3mm;長さ、2-6mm)を得た。ペレット(8g)をあらかじめ95℃に保った丸形シート成形用の金型(直径、8cm;最小間隔、0.3mmに調整)に仕込み、3.3MPaで圧しながら165℃に昇温(40℃/分)した。この後、90-95℃に急速冷却することで薄褐色半透明均一な堅いシート(厚さ0.32mm)を得た。最大破断強度、31MPa;最大破断伸度,8%;ヤング率、450MPa;膨潤度、37%;溶出度5%。
羊毛(Herdwick種)の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と卵白とマルチトール(重量比、65:20:15)の混合物を使うフィルムの製造;酵素の利用。 卵白パウダー(2.4g)とマルチトール(1.7g)をリン酸緩衝液(pH 7、0.67M、9 mL)に溶かし、水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(pH7/0.067Mリン酸緩衝液処理済み;8.2g)に加え混練した。別途、ラウリル硫酸ナトリウム(35mg)と2-メルカプトエタノール(0.2mL)を溶かした0.067M/リン酸緩衝液(pH7、10mL)に精製パパイン酵素(20mg;自然化粧品研究所製、型番WCi341)を溶かした。この酵素溶液を先に調製しておいた混練物に添加し、よく混ぜてから30℃で6時間熟成した後、ペレット(約10-15重量%の水を含む)に加工した。ペレット(約5g)を、上記実施例8に準じて成形し薄褐色の透明なフィルム(厚さ0.21mm)を得た。最大破断強度、9.0MPa;最大破断伸度、5%;ヤング率、210MPa;膨潤度、5%未満;溶出度、25%。
羊毛(メリノ)のS-スルホン化ケラチンタンパク質と大豆タンパクと豆乳の混合物を使うシートの製造。大豆タンパク質(SPI、2.7g)と成分無調整豆乳(30mL;固形物、約3.3g)をよく混ぜてからS-スルホン化ケラチンタンパク質の粉末(5.5g)を加え混練しペレット状にした。ペレット(含水量、15重量%;3.5g)をシート成形用の金型(最小間隔、0.30mm)に仕込み、実施例8の方法に準じて成形して薄褐色の半透明なシート(厚さ0.35mm)を得た。最大破断強度、9.3MPa;最大破断伸度,5%;ヤング率、250MPa;膨潤度、41%;溶出度、13%。
水鳥の羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質を使うシートの製造。
実施例4で調製した羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(7.5g)に水(18mL)を加えよく攪拌混合し、1M苛性ソーダを使ってpH7.0-pH8.5に微調整してから水分が全体の10-15重量%を含む灰色ペレット(直径2-5mm、長さ3-6mm)とした。ペレット(4.0g)をあらかじめ95℃に熱したシート成形用の金型(プレス板間隔は0.33mmに設定)に仕込み、実施例5と同じように成形して、表面が艶をおびた黒褐色の堅いシート(厚さ、約0.35mm)を得た。 最大破断強度、7.0-7.3MPa;最大破断伸度、35-50%;ヤング率、62-110MPa;膨潤度、31%;溶出度3%未満。
白レグホンの羽根の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質を使うシートの製造。レグホンの白羽を使って調製した水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質を使って実施例11と同じ方法で成形して、表面が艶をおびた薄褐色の堅い半透明シート(厚さ、約0.35mm)を得た。最大破断強度、10MPa;最大破断伸度、3%;ヤング率、420MPa;膨潤度、40%;溶出度、1%未満。約3%延伸したシートでは最大破断強度、18MPa;ヤング率、420MPa。
羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と豆乳を使うシートの製造。 実施例4で調製したS-スルホン化ケラチンタンパク質(10.0g)をミルで粉砕し、成分無調整豆乳(固形物含量11.5%、10.0mL)と6M苛性カリ水溶液(0.3mL)を加え混練した。混合物はpH7-pH8であり、これをペレット状にした後、温風で水分が全体の10-15重量%になるまで乾燥した。ペレット(直径約3mm、約3.5g)を実施例5と同じようにして成形して透明部と黒茶色の半透明部が混在しているべっ甲模様の艶のある堅いシートを得た(厚、約0.23mm)を得た。最大破断強度、16MPa;最大破断伸度、3%;ヤング率.610MPa;膨潤度、38%;溶出度、1%未満。約3%延伸したシートでは最大破断強度、27MPa;ヤング率、610MPa。
羽毛のS-スルホン化ケラチンタンパク質と卵白と小麦ふすまを使うシートの製造。実施例4と同じ方法で調製したS-スルホン化ケラチンタンパク質(10.0g)に卵白パウダー(0.4g)を加えミルで粉砕混合した。一方、小麦ふすま(1.0g)に水(30mL)と6M苛性ソーダ水溶液(7滴)を加えて室温で約5分間攪拌した。この小麦ふすま分散物(pH8-9)をブンテ塩と卵との粉砕混合物に加え、よく混練し、ペレット状にして水分が全体の10-15重量%を含むまで温風乾燥を得た。ペレット(直径、約3mm;4.0g)をシート成形用の金型(プレス板間隔は2.0mmに設定)に仕込み、95℃から昇温(40℃/分)しながら5MPaまで加圧した。165℃に達した時点で加圧を保ちながら95℃以下に急速に冷却することで表面が艶をおびた黒褐色の堅いシート(約2mm)を得た。最大破断強度、8.5MPa;最大破断伸度、2%;ヤング率.490MPa;膨潤度、30%;溶出度、5%未満。
羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と羊毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質とグルテンを使うシートの製造。水(40mL)にグルテン粉末(2.4g)を加え室温で攪拌しながら6M苛性ソーダ水溶液を12滴を添加して白濁液とした。一方、実施例4と同じ方法で調製した羽毛のS-スルホン化ケラチンタンパク質物(10.0g)と羊毛のS-スルホン化ケラチンタンパク質物(4.5g)の混合物をミルで粉末とした。この粉末にグルテンの白濁液を加え練ってから灰色ペレットとし水分が全体重量の10-15重量%になるまで風乾した。ついで、ペレット(約3.0g)をシート成形用の金型(プレス板間隔は0.33mmに設定)を使い、実施例5に準じて成形して表面が艶をおびた黒茶色シート(厚、約0.36mm)を得た。最大破断強度、8.5MPa;最大破断伸度、2-3%;ヤング率、280MPa;膨潤度、36%;溶出度、3%未満。
羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と卵とゼラチンの混合物を使うシートの製造。 実施例4と同じ方法で調製した羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(10g)と卵白パウダー(1.4g)を混ぜてミルで粉砕し、ゼラチン水溶液(12重量%、16g)を加えよく練ってから灰色ペレットとし水分が全体重量の10-15重量%になるまで風乾した。ペレット(約7.5g)を実施例15と同じように加熱加圧、冷却して、表面が艶をおびた黒茶色シート(厚、約0.35mm)を得た。最大破断強度、11MPa;最大破断伸度、2%;ヤング率、560MPa;膨潤度、33%;溶出度,16%。
羊毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と卵白とおからパウダーを使うシートの製造。 羊毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(実施例1; 3.0g)と羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(実施例4; 6.4g)に卵白パウダー(0.6g)を加えミルで粉砕混合した。一方、おからパウダー(1.0g)と水(30mL)と6M苛性ソーダ水溶液(8滴)の混合物を室温で約5分間攪拌した。このおからの水分散物を先に調製しておいた羊毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質S-スルフォネート化物と羽毛S-スルフォネート化物と卵白の粉砕混合物に加え、よく混練してからペレット状(pH7-8)とし、これを乾燥して水分が全体の10-15重量%を含む灰色ペレット(直径2-3mm、長さ3-5mm)を得た。ペレット(6.0g)をシート成形用の金型(プレス板間隔は0.33mmに設定)に仕込み、実施例15と同じように加熱加圧、冷却して、表面が艶をおびた黒褐色の堅いシート(約0.35mm)を得た。最大破断強度、20MPa;最大破断伸度、3%;ヤング率、800MPa;膨潤度、30%;溶出度、6%。
羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と羊毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と米ぬか使うシートの製造。 水(40mL)に米ぬか(3.0g)を加え室温で攪拌しながら6M苛性ソーダ水溶液を12滴を添加して懸濁液(pH7―pH8)とした。 一方、羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(実施例4参照;10g)と羊毛のS-スルホン化ケラチンタンパク質(実施例1参照;4.5g)の混合物をミルで混合粉末とした。この粉末に米ぬかの懸濁液を加え練って灰色ペレットとし水分が全体重量の10-15重量%になるまで風乾した。ペレット(3.5g)を95℃に予備加熱したシート成形用の金型(プレス板間隔は0.40mmに設定)に仕込み、昇温(40℃/分)しながら6MPaに加圧した。加圧を保ちながら165℃に達した時点で90℃以下に急速に冷却することによって、表面が艶をおびた褐色シート(厚、約0.45mm)を得た。最大破断強度、7MPa;最大破断伸度、2-4%;ヤング率、460MPa;膨潤度、35%;溶出度、30%。2%延伸したシート:最大破断強度、12-16MPa;ヤング率、460MPa。
羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と卵白と大豆蛋白を使うシートの製造。 実施例4に準じて調製した羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(10g)に卵白パウダー(1.5g)を加えミルで粉砕混合した。一方、酸性沈殿大豆蛋白(SPI)(2.2g、水分率10重量%)と水(30mL)と6M苛性ソーダ水溶液(10-12滴)の混合物を室温で10分間攪拌することで高粘度の大豆蛋白溶液とした。この大豆蛋白液を先に調製しておいた羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と卵白パウダーの混合物に加えて混練しペレット状に押し出し、温風乾燥して水分が全体の10-15重量%を含む灰色ペレット(直径2-4mm、長さ3-6mm)とした。ついで、ペレット(3.6g)を実施例18に準じて成形して表面が艶をおびた黒褐色の堅いシート(約0.43mm)を得た。最大破断強度、19MPa;最大破断伸度、4%;ヤング率、580MPa;膨潤度、30%;溶出度、3%。
水牛の蹄角粉を使う水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質の製造とシートの製造。 超音波槽に蹄角粉(30g)をドデシル硫酸ナトリウム水溶液(3重量%;300mL)に入れ、60℃で加温しながら、100Wで5分間、超音波処理した。不溶物を濾過、水洗し、水(300mL)に浸し、攪拌しながら87-97℃に加熱した後、二亜硫酸ナトリウム(15g)加え、30分加熱した。反応後は実施例1で示す方法で濾過、分別、洗浄を経て乾燥して蹄角の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質を得た(23g)。この蹄角の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(5.0g)に卵白パウダー(0.5g)を混ぜミルで混合粉砕してから豆乳(20mL)を加え混練し、約5mmの厚さに平たくして、水分15重量%まで乾燥した。乾燥物(5g)をシート成形用の金型(プレス板間隔は0.33mmに設定)に仕込み、7MPaで加圧しながら昇温した。180℃に達した後、95℃未満に急冷して成形物を得た。最大破断強度、53MPa;最大破断伸度、4%;ヤング率、210MPa;膨潤度、27%;溶出度、17%。
カップ製造用金型を使って羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と卵白の混合物からカップの製造。 実施例4に準じて調製した羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(15.0g)に卵白パウダー(6.0g)を加えてミルで混合した粉末に水(23mL)を加えてよく練ってペレット状(直径、約3mm;長さ、約5mm)とし、水分が10-15重量%になるまで風乾した。このペレット(12.0g)を95℃に予備加温した円錐台形のカップ製造用の金型(口直径6cm、底面直径5cm、深さ3cm、壁間隙1.0mm)に入れ約10kNで加重しながら約125℃まで昇温(約40℃/分)した後、20kNに増圧して165℃まで昇温し、すぐに90℃以下に冷却して黒茶色のカップ成形物を取り出した。カップを沸騰水に30分、浸漬してもカップ形状を保持した(図2)。熱水処理前のカップの壁を2cmx4cm;厚さ、1.1-1.2mmに切断した断片は熱可塑性をほとんど示さないが、熱水で膨潤した断片(重量膨潤度、約30%)は加熱加圧すると展性を示して約2倍の面積のシート(厚さ、0.5mm)に広がった。
羊毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と豆乳の混合物からの葉模様物の製造。 羊毛トップのS-スルホン化ケラチンタンパク質(10.0 g)に豆乳(54mL)を加え、その混練物のペレット(水分が15重量%; 1.8g)を造花用金型にいれ、4MPaに加圧して170℃まで昇温(30℃/分)し、その後は95℃以下まで冷やした。薄褐色半透明の葉形状の成形品を取り出した。
造花用金型を使って羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質と卵白と豆乳の混合物からの葉形物の製造。 実施例4に準じて調製した羽毛の水不溶性S-スルホン化ケラチンタンパク質(10.0g)と卵白パウダー(1.4g)と成分無調整豆乳(固形分11、5%;10mL)をよく混練してから実施例8の方法でペレットにして水分が15重量%まで乾燥した。このペレット(1.8g)を金型にいれ、4MPaに加圧して170℃まで昇温(30℃/分)し、その後は95℃以下まで冷やして艶のある茶褐色葉形状の成形品を得た。
実施例21に準じ、シート用金型を使い、羽毛のS-スルホン化ケラチンタンパク質と卵白のペレットからシート(厚さ、2.2mm)を作った。このシートを水で湿らせ、皿成形用の金型(雌金型: 上直径、6cm;下直径、5cm;深さ、1cm; 雌金型と雄金型の間隔、1.0mm)に仕込み、170℃、3MPaで加熱成形した。得られた黒艶のある皿形状物は沸騰水に30分浸漬しても形状を保った。
生分解性の試験。 文献の方法に準じて(非特許文献15)、実施例6と実施例13に準じて製造した羊毛と羽毛からのシート(厚さ、それぞれ、0.33mm、0.25mm)をそれぞれ2.5cm四方の8片に切り出し、各1片をポリエチレンネットに入れてシールし、園芸ポット中の田んぼの土の深さ約8cmのところに埋めた。ときおり乾燥を防ぐために雨水をふりかけ、また土中温度は22-25℃に制御して4ヶ月間、2週間の間隔でネットを取り出し、ゆるやかに水洗し、ネットのまま乾燥して重量を元の重量と比較した。また、残渣物を目視あるいは顕微鏡で観察した。試験片の内、羊毛S-スルホネート化物から製造したシートは8-12週間で、一方、羽毛S-スルホネート化物から製造したシートは4-10週間でほぼ崩壊するか消失した。
Claims (4)
- ケラチンタンパク質を含有するケラチン含有物質をスルファイト イオン(SO3 2-)を発生する化合物と反応させて調製した、ケラチンタンパク質中のシステイン残基とハーフシスチン残基の合計数の10%以上80%未満が-[C(=O)CH(CH2-S-SO3 - M+)NH]-(化学式1)で示すS-スルホシステイン残基として存在し、かつ、水に不溶性であることを特徴とするS-スルホン化ケラチンタンパク質を成形加工する成形品の製造法。
(前記において、M+は陽イオンである。―S-SO3 -基はブンテ塩基もしくはS-スルホネート基と呼ばれる。) - 請求項1に記載のS-スルホン化ケラチンタンパク質を成形加工する成形品の製造法であって、前記S-スルホン化ケラチンタンパク質が結着剤との混合物であり、結着剤が卵白、 大豆蛋白、小麦強力粉、 成分無調整豆乳、 成分無調整牛乳、大豆おから、 ゼラチン、 カゼイン、 小麦タンパク、グルテン、 小麦や燕麦のふすま、 米ぬか、既知の水溶性であるS-スルホン化ケラチンタンパク質、及び、ポリ乳酸から選択される1種又は2種以上である、成形品の製造法。
- 請求項1に記載のS-スルホン化ケラチンタンパク質を成形加工する成形品の製造法であって、前記S-スルホン化ケラチンタンパク質が可塑剤との混合物であり、可塑剤がサクロース、 ソルビトール、 マンニトール、 ジグリセロール、 グリセロール、 エチレン グリコール、プロピレン グリコール、マルチトール、 グリコール モノステアレート、 エチレン グリコール モノステアレート、大豆レシチン、又は、卵黄レシチンである、成形品の製造法。
- 請求項1に記載のS-スルホン化ケラチンタンパク質を成形加工する成形品の製造法であって、前記S-スルホン化ケラチンタンパク質が結着剤と可塑剤との混合物であり、結着剤が卵白、 大豆蛋白、小麦強力粉、 成分無調整豆乳、 成分無調整牛乳、大豆おから、 ゼラチン、 カゼイン、 小麦タンパク、グルテン、 小麦や燕麦のふすま、 米ぬか、既知の水溶性であるS-スルホン化ケラチンタンパク質、又は、ポリ乳酸の1種又は2種以上であり、可塑剤がサクロース、 ソルビトール、 マンニトール、 ジグリセロール、 グリセロール、 エチレン グリコール、プロピレン グリコール、マルチトール、 グリコール モノステアレート、 エチレン グリコール モノステアレート、大豆レシチン、又は、卵黄レシチンである、成形品の製造法。
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