以下、図面を参照して本願の開示するエッチング方法およびエッチング装置の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。また、本実施形態により開示する発明が限定されるものではない。各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
[三次元積層半導体メモリの構造]
まず、実施形態に係るエッチング方法を用いて製造される三次元積層半導体メモリの一例について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、3D NANDフラッシュメモリの構造を概念的に示した斜視図である。図2は、図1の3D NANDフラッシュメモリの1-1断面図である。3D NANDフラッシュメモリは、三次元積層半導体メモリの一例である。
図1に示したNANDフラッシュメモリ100は、例えば、各々が消去の一単位となる複数のブロックから構成される。図1には、二つのブロックBK1、BK2が例示されている。ソース拡散層102は、半導体基板内に形成され、例えば全てのブロックに共通して1つ設けられる。ソース拡散層102は、コンタクトプラグPSを介して、ソース線SLに接続される。ソース拡散層102上には、例えば、比誘電率の異なる第1の膜及び第2の膜が交互に積層された多層膜が形成される。図1では、多層膜は図示の便宜のために6層構造であるが、16層や32層であってもよく、それ以上であってもよい。
図1では、最上層を除く残りの5つの絶縁膜は、各ブロックBK1、BK2内でそれぞれプレート状に形成され、かつ、そのX方向の端部は、各々の絶縁膜にコンタクトをとるために階段形状に形成される。これにより、多層膜は略ピラミッド状に形成される。最下層は、ソース線側セレクトゲート線SGSとなり、最下層及び最上層を除く残りの4つの絶縁膜は、4つのワード線WLとなる。なお、図1では、多層膜の絶縁膜に1層ずつの階段形状を形成した場合を図示したが、多層膜は、2以上の絶縁膜ずつの階段形状が形成されてもよい。
最上層は、X方向に延びるライン状の複数の導電線から構成される。1つのブロックBK1内には、例えば、6本の導電線が配置される。最上層の例えば6本の導電線は、6つのビット線側セレクトゲート線SGDとなる。
そして、NANDセルユニットを構成するための複数の活性層ACは、複数の絶縁膜を突き抜けてソース拡散層102に達するように、Z方向(半導体基板の表面に対して鉛直方向)に柱状に形成される。
複数の活性層ACの上端は、Y方向に延びる複数のビット線BLに接続される。また、ソース線側セレクトゲート線SGSは、コンタクトプラグPSGを介して、X方向に延びる引き出し線SGS1に接続されている。ワード線WLは、それぞれコンタクトプラグPW1~PW4を介してX方向に延びる引き出し線W1~W4に接続される。
さらに、ビット線側セレクトゲート線SGDは、それぞれ、コンタクトプラグPSDを介して、X方向に延びる引き出し線SGD1に接続される。複数のビット線BL及び引き出し線SGS1,引き出し線W1~W4は、例えば金属から構成される。
図2は、図1の1-1線に沿って切断された断面図である。ソース線側セレクトゲート線SGS及びワード線WL1~WL4は、コンタクトプラグPSG、コンタクトプラグPW1~PW4を介してX方向に延びる引き出し線SGS1,引き出し線W1~W4から図示しないドライバを構成するトランジスタTrに接続される。
[エッチング装置の全体構成]
次に、実施形態に係るエッチング装置の全体構成について、図3は、実施形態に係るエッチング装置の構成の一例を示す断面図である。エッチング装置10は、下部2周波数の平行平板型(容量結合型)プラズマエッチング装置として構成されており、例えば表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる円筒形の真空チャンバ(処理容器)11を有している。チャンバ11は、接地されている。
チャンバ11内には、被処理体としての半導体ウエハW(以下、ウエハWと称呼する)を載置する載置台12が設けられている。載置台12は、たとえばアルミニウムからなり、絶縁性の筒状保持部14を介してチャンバ11の底から鉛直上方に延びる筒状支持部16に支持されている。載置台12の上面であって静電チャック40の周縁部には、エッチングの面内均一性を高めるために、例えばシリコンから構成されたフォーカスリング18が配置されている。
チャンバ11の側壁と筒状支持部16との間には、排気路20が形成されている。排気路20には、環状のバッフル板22が取り付けられている。排気路20の底部には、排気口24が設けられ、排気管26を介して排気装置28に接続されている。排気装置28は、図示しない真空ポンプを有しており、チャンバ11内の処理空間を所定の真空度まで減圧する。チャンバ11の側壁には、ウエハWの搬入出口を開閉する搬送用のゲートバルブ30が取り付けられている。
載置台12には、プラズマ中のイオン引き込み用(バイアス用)の第1高周波電源31及びプラズマ生成用の第2高周波電源32が整合器33及び整合器34を介してそれぞれ電気的に接続されている。第1高周波電源31は、載置台12上のウエハWにプラズマのイオンを引き込むのに寄与する周波数、例えば、0.4MHzの第1高周波電力を載置台12に印加する。第2高周波電源32は、チャンバ11内にてプラズマを生成するために寄与する周波数、例えば、100MHzの第2高周波電力を載置台12に印加する。このようにして、載置台12は、下部電極としても機能する。チャンバ11の天井部には、後述するシャワーヘッド38が接地電位の上部電極として設けられている。これにより、第2高周波電源32からの高周波電力は、載置台12とシャワーヘッド38との間に容量的に印加される。
載置台12の上面には、ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック40が設けられている。静電チャック40は、導電膜からなる電極40aを一対の絶縁膜の間に挟み込んだものである。電極40aには、直流電圧源42がスイッチ43を介して電気的に接続されている。静電チャック40は、直流電圧源42からの電圧により、クーロン力でウエハWを静電チャック上に吸着保持する。
伝熱ガス供給源52は、Heガス等の伝熱ガスをガス供給ライン54に通して静電チャック40の上面とウエハWの裏面との間に供給する。
天井部のシャワーヘッド38は、多数のガス通気孔56aを有する電極板56と、電極板56を着脱可能に支持する電極支持体58とを有する。ガス供給源62は、エッチングに用いる各種のガスを供給可能とされている。例えば、ガス供給源62は、Ar、O2、C4F8、He、CH3F、CF4、NF3、Cl2などの各種のガスを供給可能とされている。ガス供給源62は、ガス供給配管64を介してガス導入口60aからシャワーヘッド38内にガスを供給する。シャワーヘッド38は、ガス供給源62から供給されたガスを多数のガス通気孔56aからチャンバ11内に供給する。
チャンバ11の周囲には、環状または同心円状に延在する磁石66が配置され、磁力によりチャンバ11内のプラズマ生成空間に生成されるプラズマを制御する。
載置台12の内部には、冷媒管70が設けられている。冷媒管70には、チラーユニット71から配管72,73を介して所定温度の冷媒が循環供給される。また、静電チャック40の裏面には、ヒータ75が設けられている。ヒータ75には、交流電源44から所望の交流電圧が印加される。かかる構成によれば、チラーユニット71による冷却と、ヒータ75による加熱とによってウエハWを所望の温度に調整することができる。チラーユニット71およびヒータ75の温度制御は、制御部80からの指令に基づき行われる。本実施形態では、例えば、ウエハWの温度を45℃に調整する。
制御部80は、エッチング装置10に取り付けられた各部、たとえば排気装置28、交流電源44、直流電圧源42、静電チャック用のスイッチ43、第1及び第2高周波電源31,32、整合器33,34、伝熱ガス供給源52、ガス供給源62及びチラーユニット71を制御する。なお、制御部80は、図示しないホストコンピュータとも接続されている。
制御部80は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有し、CPUは、図示しない記憶部に格納された各種のプログラムやレシピに従って、エッチング装置10に各種の処理を実行させる。例えば、制御部80は、多層膜に階段形状を形成するエッチング工程をエッチング装置10に実行させる。記憶部は、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどを用いてRAM、ROMとして実現されうる。プログラムやレシピは、記憶媒体に格納して提供され、図示しないドライバを介して記憶部に読み込まれるものであってもよく、また、図示しないネットワークからダウンロードされて記憶部に格納されるものであってもよい。また、上記各部の機能を実現するために、CPUに代えてDSP(Digital Signal Processor)が用いられてもよい。なお、制御部80の機能は、ソフトウエアを用いて動作することにより実現されてもよく、ハードウエアを用いて動作することにより実現されてもく、ソフトウエアとハードウエアの両方を用いて実現されてもよい。
次に、実施形態に係るエッチング装置10がエッチングを行なう際の動作の流れを簡単に説明する。エッチングを行なう際、ゲートバルブ30は開口する。チャンバ11内には、ゲートバルブ30から、搬送アーム上に保持されたウエハWが搬入される。搬入されたウエハWは、載置台12から上昇させた図示しないプッシャーピンに保持され、プッシャーピンを降下させることにより、静電チャック40上に載置される。ウエハWを搬入後、ゲートバルブ30が、閉じられる。ガス供給源62は、エッチングに用いるプロセスガスを所定の流量および流量比でチャンバ11内に導入する。また、排気装置28は、チャンバ11内の圧力を設定値に減圧する。さらに、第1高周波電源31及び第2高周波電源32は、所定のパワーの高周波電力を載置台12に供給する。また、直流電圧源42は、静電チャック40の電極40aに電圧を印加して、ウエハWを静電チャック40上に固定する。また、伝熱ガス供給源52は、静電チャック40の上面とウエハWの裏面との間に伝熱ガスとしてHeガスを供給する。シャワーヘッド38からシャワー状に導入されたプロセスガスは、第2高周波電源32からの高周波電力によりプラズマ化される。これにより、上部電極(シャワーヘッド38)と下部電極(載置台12)との間のプラズマ生成空間にプラズマが生成される。プラズマ中のイオンは、第1高周波電源31からの高周波電力によりウエハWに向かって引き込まれる。これにより、ウエハWの主面は、プラズマによってエッチングされる。
プラズマエッチング終了後、ゲートバルブ30は、開口する。ウエハWは、プッシャーピンにより持ち上げられ保持される。チャンバ11内には、ゲートバルブ30から、搬送アームが搬入される。プッシャーピンが下げられ、ウエハWは、搬送アーム上に保持される。搬送アームは、ウエハWをチャンバ11の外へ搬出し、次のウエハWをチャンバ11内へ搬入する。この処理を繰り返すことで連続してウエハWが処理される。
[階段形状を形成するエッチング工程]
次に、階段形状を形成するエッチング工程について説明する。図4Aは、ウエハの構成の一例を模式的に示した図である。ウエハWには、第1の膜110と第2の膜120とが交互に積層された多層膜mlが形成されている。多層膜mlは、例えば、第1の膜110及び第2の膜120が交互に数十層から数百層積層されているものとする。
第1の膜110及び第2の膜120は、比誘電率が異なる絶縁膜である。比誘電率が異なる多層膜mlとして、本実施形態では、第1の膜110にシリコン酸化膜(SiO2)、第2の膜12にシリコン窒化膜(SiN)が形成されている。
ただし、第1の膜110及び第2の膜120の組み合わせは、上記のシリコン酸化膜/シリコン窒化膜に限られない。例えば、第1の膜110にポリシリコン膜(不純物ドーピング)、第2の膜120にポリシリコン膜(不純物ドーピングなし)が形成されてもよい。ドープの有無により第1の膜110及び第2の膜120の比誘電率を異ならせることができる。不純物ドーピングの不純物として、例えばボロン等をドーピングしてもよい。
また、第1の膜110及び第2の膜120の組み合わせとしては、第1の膜110にシリコン酸化膜(SiO2)、第2の膜120にポリシリコン膜(不純物ドーピング)が形成されてもよい。また、第1の膜110及び第2の膜120の組み合わせとしては、第1の膜110にシリコン酸化膜(SiO2)、第2の膜120にポリシリコン膜(不純物ドーピングなし)が形成されてもよい。
多層膜mlの直上には、マスクとして機能するフォトレジスト層PRが設けられている。このフォトレジスト層PRの主に水平方向のエッチングが、階段形状の形成に寄与する。フォトレジスト層PRの材料としては、有機膜、アモルファスカーボン膜(α―C)が一例として挙げられる。
エッチング装置10は、第1のエッチング工程と、第2のエッチング工程とを含み、第1のエッチング工程から第2のエッチング工程を所定回繰り返すエッチング処理を行って、ウエハWに対してエッチングを行って多層膜mlに階段形状を形成する。
第1のエッチング工程では、第1の膜110及び第2の膜120をエッチングする。第1の膜110と第2の膜120は、別のプロセスを用いてエッチングしてもよい。また、第1の膜110と第2の膜120は、同じプロセスを用いてエッチングしてもよい。
第1のエッチング工程により、ウエハWでは、フォトレジスト層PRがマスクとして機能し、多層膜mlの表面のフォトレジスト層PRで覆われていない部分が主にエッチングされる。
第1のエッチング工程の後に、第2のエッチング工程では、フォトレジスト層PRをエッチングする。第2のエッチング工程では、鉛直方向に対する水平方向のエッチングを高め、フォトレジスト層PRがなるべく水平方向にエッチングされるように、プロセス条件が適正化される。第2のエッチング工程のエッチングは、フォトレジスト層PRの側面もエッチングするため、トリミングとも呼ばれる。
第2のエッチング工程により、ウエハWでは、フォトレジスト層PRの多層膜mlに対して反対側となる鉛直方向の表面と、水平方向の表面がエッチングされる。
図4Bは、フォトレジスト層のエッチング結果の一例を模式的に示した図である。図4Bに示すように、フォトレジスト層PRは、鉛直方向にエッチングされると共に、水平方向にもエッチングされる。図4Bには、1回の第2のエッチング工程において、フォトレジスト層PRの鉛直方向にエッチングされた加工量TVと、水平方向にエッチングされた加工量TLとが示されている。第2のエッチング工程は、TL/TVが大きいほど好ましい。
階段形状を形成するエッチング工程では、第1のエッチング工程による多層膜mlのエッチングと、第2のエッチング工程によるフォトレジスト層PRの後退を繰り返して、多層膜mlに、階段構造を形成する。
図4Cは、多層膜に形成された階段構造の一例を模式的に示した図である。図4Cの例は、第1のエッチング工程を5回行い、第2のエッチング工程を4回行った状態であり、5段の階段構造が形成されている。なお、図4Cの例では、1回の第1のエッチング工程で、第1の膜110および第2の膜120を複数層エッチングしている。図4Cには、階段構造を形成するエッチング工程において、フォトレジスト層PRの鉛直方向にエッチングされた総加工量AVと、水平方向にエッチングされた総加工量ALとが示されている。また、図4Cには、階段構造の平面となるテラス部分のテラス幅Wtと、階段構造の断面部分の角度であるテーパー角θが示されている。
ところで、従来の階段形状のエッチングでは、階段形状の断面部分のラフネスが大きくなる場合がある。例えば、多層膜mlをエッチングする第1のエッチング工程により、フォトレジスト層PRの側面には、反応生成物が付着する。この反応生成物は、例えば、多層膜mlをエッチングした際に生成されるシリコン含有する反応生成物である。
図4Dは、反応生成物が付着した状態の一例を模式的に示した図である。図4Dに示すように、フォトレジスト層PRの側面には、シリコン含有する反応生成物(Si系デポ)が付着する。第1のエッチング工程でシリコン含有する反応性生物がフォトレジスト層PRの側面に不均一に付着した場合、第2のエッチング工程においてシリコン含有する反応生成物の付着量によってエッチング量に差が生じるため、フォトレジスト層PRの側面に凹凸が生じる。この凹凸形状が次の第1のエッチング工程で多層膜mlに転写される。さらに、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程が繰り返されることによって、ウエハWの多層膜mlに形成された階段形状の断面部分のラフネスが大きくなる。
図5Aは、エッチングされた階段形状の一例を示す斜視図である。図5Bは、エッチングされた階段形状の一例を示す上面図である。図5Aおよび図5Bは、SEM(Scanning Electron Microscope)画像を図示したものである。図5Aおよび図5Bに示すように、階段形状の断面SFには、凹凸が生じている。
そこで、本実施形態に係るエッチング装置10は、第2のエッチング工程において、チャンバ11内の圧力を第1のエッチング工程よりも高い所定の圧力状態とする。そして、エッチング装置10は、チャンバ11内に、酸素およびハロゲンを含有する第1のプロセスガスを供給する。例えば、本実施形態に係るエッチング装置10は、O2およびCl2を含有する第1のプロセスガスをシャワーヘッド38から供給する。
図6は、ハロゲン族の元素と反応生成物の大気圧(1気圧)の状態での沸点の一例を示す図である。図6には、ハロゲン族の元素として、F、Cl、Brが示されている。また、図6には、F、Cl、Brと反応して生成される代表的な反応生成物が示されている。F、Cl、Brのハロゲンガスをそれぞれ第2のエッチング工程のプロセスガスに含有させた場合、ハロゲンガスは、フォトレジスト層PRの側面等に付着したシリコン含有する反応生成物と反応して、Si系の反応生成物を生成する。また、ハロゲンガスは、フォトレジスト層PRと反応して、C系の反応生成物を生成する。例えば、Clは、Si系の反応生成物として、SiCl4を生成する。また、Clは、C系の反応生成物として、CCl4を生成する。SiCl4は、1気圧の状態で沸点が57.7℃である。CCl4は、1気圧の状態で沸点が76.8℃である。このように、Si系の反応生成物の沸点<C系の反応生成物の沸点の場合、Si系の反応生成物を選択的に除去しやすい状態となる。Clよりも元素番号が大きいハロゲン族の元素では、何れもSi系の反応生成物の沸点<C系の反応生成物の沸点となる。
実施形態に係るエッチング装置10は、シリコン含有する反応生成物と反応して、当該反応生成物を第2のエッチング工程の圧力状態より高い蒸気圧を有する第1の物質に変質し、フォトレジスト層PRと反応して、第2のエッチング工程の圧力状態より低い蒸気圧を有する第2の物質を生成する特性のハロゲン族の何れかの元素を第2のエッチング工程のプロセスガスに含有させる。例えば、エッチング装置10は、Cl2のガスを第2のエッチング工程のプロセスガスに含有させる。
実施形態に係るエッチング装置10は、第2のエッチング工程の処理容器内の圧力において、Si系の反応生成物の沸点より高く、C系の反応生成物の沸点より低い温度にウエハWの温度に調整する。例えば、エッチング装置10は、処理容器内の圧力を8000Torr[8Torr]、ウエハWの温度を45℃に調整する。ここで、図6の例は、大気圧(1気圧)の沸点である。第2のエッチング工程は、減圧下(8Torr)なので、ウエハWの温度が低い設定となっている。これにより、SiCl4とSiCl4のうち、SiCl4が気化し、フォトレジスト層PRの側面等に付着したシリコン含有する反応生成物が除去される。なお、第2のエッチング工程のプロセスガスに含有させるハロゲンは、ウエハWの温度に応じて定めてよい。
これにより、フォトレジスト層PRは、側面に付着した反応生成物が除去されて、反応生成物による凹凸が生じなくなる。この結果、実施形態に係るエッチング装置10は、ウエハWの多層膜mlに形成される階段形状の断面部分のラフネスを低減できる。
また、本実施形態に係るエッチング装置10は、第2のエッチング工程において、酸素およびハロゲンに加え、フロロカーボン、ハイドロフロロカーボンの少なくとも一方を含有する第1のプロセスガスをシャワーヘッド38から供給する。例えば、本実施形態に係るエッチング装置10は、酸素およびハロゲンに加え、CF4、NF3の少なくとも一方を含有する第1のプロセスガスをシャワーヘッド38から供給する。これにより、エッチング装置10は、エッチングレートの低下を抑制できる。
なお、本実施形態に係るエッチング装置10は、第2のエッチング工程において、チャンバ11内に、酸素およびハロゲンを含有する第1のプロセスガスを供給するものとしたが、酸素とハロゲンを別々に供給してもよい。例えば、エッチング装置10は、チャンバ11内に、ハロゲンを含有する第2のプロセスガスを供給した後に、酸素を含有する第3のプロセスガスを供給してもよい。この場合、ハロゲンを含有する第2のプロセスガスによって、フォトレジスト層PRの側面等に付着したシリコン含有する反応生成物が除去される。そして、酸素を含有する第3のプロセスガスによって、フォトレジスト層PRがエッチングされる。よって、この場合も、エッチング装置10は、ウエハWの多層膜mlに形成される階段形状の断面部分のラフネスを低減できる。
ところで、多層膜mlは、第1のエッチング工程のエッチングによって露出した露出面がダメージを受ける場合がある。例えば、エッチングによって、露出した多層膜mlの側面のシリコン酸化膜(SiO2)、シリコン窒化膜(SiN)や、シリコン酸化膜(SiO2)の水平面がダメージを受ける場合がある。
そこで、本実施形態に係るエッチング装置10は、第2のエッチング工程において、ハロゲンを含有する第2のプロセスガスの供給の前に、酸素を含有する第4のプロセスガスを供給してもよい。酸素を含有する第4のプロセスガスによって、露出面が酸化される。これにより、エッチング装置10は、第1のエッチング工程のエッチングによる露出面がダメージを受けることを抑制できる。
[エッチングの流れ]
次に、本実施形態に係るエッチング装置10が実施するエッチング方法の流れを説明する。図7は、実施形態に係るエッチング方法の流れの一例を示すフローチャートである。図7は、階段形状を形成するエッチング工程の流れを示している。
制御部80は、カウンタnを1に初期化する(ステップS10)。制御部80は、チャンバ11内に配置されたウエハWに対して、フォトレジスト層PRをマスクとして多層膜mlをエッチングする第1のエッチング工程を行うようエッチング装置10を制御する(ステップS11)。制御部80は、チャンバ11内の圧力を第1のエッチング工程よりも高い所定の圧力状態とし、チャンバ11内に、酸素およびハロゲンを含有する第1のプロセスガスを供給する第2のエッチング工程を行うようエッチング装置10を制御する(ステップS12)。
制御部80は、カウンタnの値が階段形状の段数に対応する所定値以上となったか否かを判定する(ステップS13)。カウンタnの値が所定値未満の場合(S13:No)、制御部80は、カウンタnに1を加算し(ステップS14)、上述のステップS11へ移行する。
一方、カウンタnの値が所定値以上の場合(S13:Yes)、処理を終了する。
以下、実施例を用いて効果を説明する。最初に、比較例を説明する。図8Aは、比較例のプロセス条件の一例を示す図である。ウエハWは、図4Aに示すように構成されている。第1の膜110は、シリコン酸化膜とする。第2の膜120は、シリコン窒化膜とする。図8Aには、第1のエッチング工程と、第2のエッチング工程のプロセス条件が示されている。第1のエッチング工程では、シリコン酸化膜(Ox)のエッチングと、シリコン窒化膜(SiN)のエッチングで、プロセス条件を変えており、プロセス条件を交互に切り替えてシリコン酸化膜とシリコン窒化膜のエッチングを行う。サイクル(Cycle)Aは、階段形状の1階層でシリコン酸化膜とシリコン窒化膜をエッチングする回数である。図8Aの例では、第1のエッチング工程として、シリコン酸化膜(Ox)のエッチングと、シリコン窒化膜(SiN)のエッチングとを交互に3回繰り返し、その後、第2のエッチング工程として、フォトレジスト層PRのエッチングを行う。サイクル(Cycle)Bは、サイクルAを繰り返す回数である。図8Aの例では、サイクルAを5回行う。これにより、ウエハWの多層膜mlには、サイクルBの回数に応じた階層の階段形状が形成される。
例えば、比較例では、第1のエッチング工程のシリコン酸化膜(Ox)のエッチングを以下のプロセス条件で行う。
エッチング時間: 9.0[sec]
圧力: 50[mTorr]
第2高周波電源32(100MHz)のパワー: 2400[W]
第1高周波電源31(0.4MHz)のパワー: 200[W]
ガス種及びガス流量: Ar/O2/C4F8=600/20/35[sccm]
また、比較例では、第1のエッチング工程のシリコン窒化膜(SiN)のエッチングを以下のプロセス条件で行う。
エッチング時間: 12.0[sec]
圧力: 50[mTorr]
第2高周波電源32(100MHz)のパワー: 1800[W]
第1高周波電源31(0.4MHz)のパワー: 300[W]
ガス種及びガス流量: O2/He/CH3F=60/150/100[sccm]
また、比較例では、第2のエッチング工程を以下のプロセス条件で行う。比較例は、2のエッチング工程のプロセスガスを酸素のみとしており、ハロゲン、フロロカーボン、ハイドロフロロカーボンを含有させていない。
エッチング時間: 15.0[sec]
圧力: 8000[mTorr]
第2高周波電源32(100MHz)のパワー: 5000[W]
第1高周波電源31(0.4MHz)のパワー: 0[W]
ガス種及びガス流量: O2=1000[sccm]
エッチング装置10は、比較例のプロセス条件に従い、ウエハWの多層膜mlに階段形状を形成するエッチング工程を行う。
図8Bは、比較例のプロセス条件でウエハの多層膜に形成された階段形状を評価した評価結果の一例を示す図である。図8Bの例では、評価として、フォトレジスト層PRの平均トリミングレート、階段形状の断面部分のラフネス3σ、TL/TVを示している。なお、階段形状の断面部分のラフネス3σは、4段目の断面部分から求めている。
比較例のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。
フォトレジスト層PRの平均トリミングレート: 1898.4[nm/min]
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 12.3[nm]
TL/TV: 0.65
次に、実施例1を説明する。図9Aは、実施例1のプロセス条件とエッチングに関する評価の一例を示す図である。実施例1の第1のエッチング工程は、比較例と同じプロセス条件である。一方、実施例1の第2のエッチング工程は、比較例から、エッチング時間を短く変更し、プロセスガスに、O2と、CF4と、Cl2とを含有させている。
例えば、実施例1の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
エッチング時間: 10.0[sec]
ガス種及びガス流量: O2/CF4/Cl2=1000/160/40[sccm]
エッチング装置10は、実施例1のプロセス条件に従い、ウエハWの多層膜mlに階段形状を形成するエッチング工程を行う。
図9Bは、実施例1のプロセス条件でウエハの多層膜に形成された階段形状を評価した評価結果の一例を示す図である。図9Bの例では、評価として、フォトレジスト層PRの平均トリミングレート、階段形状の断面部分のラフネス3σ、TL/TVを示している。
実施例1のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。
フォトレジスト層PRの平均トリミングレート: 3519.6[nm/min]
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 4.5[nm]
TL/TV: 0.72
このように、実施例1は、比較例と比べて、ラフネス3σの値が小さくなっており、階段形状の断面部分のラフネスを低減できている。また、実施例1は、比較例と比べて、平均トリミングレートおよびTL/TVが向上している。
次に、実施例2-5を説明する。図10Aは、実施例2-5のプロセス条件を示す図である。実施例2-5の第1のエッチング工程は、比較例と同じプロセス条件である。一方、実施例2-5の第2のエッチング工程は、実施例1よりもエッチング時間を長くしており、プロセスガスに、酸素と、Cl2とを含有させており、Cl2の含有の割合を変化させている。図10Aでは、Cl2のガス流量を「xx」と表記している。
例えば、実施例2の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
ガス種及びガス流量: O2/Cl2=1000/5[sccm]
実施例3の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
ガス種及びガス流量: O2/Cl2=1000/10[sccm]
実施例4の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
ガス種及びガス流量: O2/Cl2=1000/20[sccm]
実施例5の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
ガス種及びガス流量: O2/Cl2=1000/40[sccm]
エッチング装置10は、実施例2-5のプロセス条件に従い、それぞれウエハWの多層膜mlに階段形状を形成するエッチング工程を行う。
図10Bは、実施例2-5のプロセス条件でウエハの多層膜に形成された階段形状を評価した評価結果の一例を示す図である。図10Bの例では、評価として、平均テラス幅、平均テーパー角、階段形状の断面部分のラフネス3σ、TL/TVを示している。また、図10Bには、比較例(O2=1000[sccm])の評価結果も示している。
比較例のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。
平均テラス幅: 474.6[nm]
平均テーパー角: 73度
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 12.3[nm]
TL/TV: 0.65
実施例2のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。
平均テラス幅: 633.5[nm]
平均テーパー角: 79度
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 4.3[nm]
TL/TV: 0.73
実施例3のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。
平均テラス幅: 599.0[nm]
平均テーパー角: 77度
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 5.8[nm]
TL/TV: 0.72
実施例4のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。
平均テラス幅: 461.6[nm]
平均テーパー角: 77度
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 4.9[nm]
TL/TV: 0.66
実施例5のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。
平均テラス幅: 409.3[nm]
平均テーパー角: 77度
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 5.8[nm]
TL/TV: 0.64
このように、実施例2-5は、比較例と比べて、ラフネス3σの値が小さくなっており、階段形状の断面部分のラフネスを低減できている。実施例2-5の結果から、第2のエッチング工程のプロセスガスは、O2に対するCl2の含有割合が0.5%以上であれば、階段形状の断面部分のラフネスを低減できる。
一方、実施例2-5は、比較例と比べて、平均テラス幅が同程度かまたは若干低下している。第2のエッチング工程を同じ時間行っても、フォトレジスト層PRの側面のトリミングレートが大きい場合、テラス幅が大きくなる。実施例2-5は、平均テラス幅が比較例と同程度かまたは若干低下しているため、実施例1と比べて、平均トリミングレートが若干低くなっている。
次に、実施例6-8を説明する。図11Aは、実施例6-8のプロセス条件を示す図である。実施例6-8の第1のエッチング工程は、比較例と同じプロセス条件である。一方、実施例6-8の第2のエッチング工程は、実施例1よりもエッチング時間を長くしており、プロセスガスに、O2と、CF4とを含有させており、CF4の含有の割合を変化させている。図11Aでは、CF4のガス流量を「xx」と表記している。
例えば、実施例6の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
ガス種及びガス流量: O2/CF4=1000/20[sccm]
実施例7の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
ガス種及びガス流量: O2/CF4=1000/80[sccm]
実施例8の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
エッチング時間: 10.0[sec]
ガス種及びガス流量: O2/CF4=1000/160[sccm]
エッチング装置10は、実施例6-8のプロセス条件に従い、それぞれウエハWの多層膜mlに階段形状を形成するエッチング工程を行う。
図11Bは、実施例6-8のプロセス条件でウエハの多層膜に形成された階段形状を評価した評価結果の一例を示す図である。図11Bの例では、評価として、平均テラス幅、平均テーパー角、階段形状の断面部分のラフネス3σ、TL/TVを示している。また、図11Bには、図10Bと同様に、比較例(O2=1000[sccm])の評価結果も示している。
実施例6のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。
平均テラス幅: 488.6[nm]
平均テーパー角: 75度
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 10.9[nm]
TL/TV: 0.65
実施例7のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。
平均テラス幅: 876.9[nm]
平均テーパー角: 73度
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 12.5[nm]
TL/TV: 0.79
実施例8のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。なお、実施例8では、エッチング時間を10.0[sec]と短くしたため、平均テラス幅を15.0[sec]に換算した値で示している。
平均テラス幅: 1298.6[nm]
平均テーパー角: 74度
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 8.1[nm]
TL/TV: 0.82
このように、実施例6-8は、比較例と比べて、CF4のガス流量が多いほど、平均テラス幅が大きくなっている。よって、第2のエッチング工程では、プロセスガスに含有させるCF4のガス流量が多くするほど、平均トリミングレートが向上する。
一方、実施例6-8は、比較例と比べて、ラフネス3σの値が同程度かまたは若干低下しており、階段形状の断面部分のラフネスを十分に改善できていない。すなわち、実施例2-5の第2のエッチング工程では、プロセスガスに、酸素と、CF4とを含有させても、ラフネスを十分に改善できない。
次に、実施例9-10を説明する。図12Aは、実施例9-10のプロセス条件を示す図である。実施例9-10の第1のエッチング工程は、比較例と同じプロセス条件である。一方、実施例9-10の第2のエッチング工程は、実施例1よりもエッチング時間を長くしており、プロセスガスに、酸素と、NF3とを含有させており、NF3の含有の割合を変化させている。図12Aでは、NF3のガス流量を「xx」と表記している。
例えば、実施例9の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
ガス種及びガス流量: O2/NF3=1000/40[sccm]
実施例10の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
ガス種及びガス流量: O2/NF3=1000/80[sccm]
エッチング装置10は、実施例9-10のプロセス条件に従い、それぞれウエハWの多層膜mlに階段形状を形成するエッチング工程を行う。
図12Bは、実施例9-10のプロセス条件でウエハの多層膜に形成された階段形状を評価した評価結果の一例を示す図である。図12Bの例では、評価として、平均テラス幅、平均テーパー角、階段形状の断面部分のラフネス3σ、TL/TVを示している。また、図12Bには、図10Bと同様に、比較例(O2=1000[sccm])の評価結果も示している。
実施例9のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。なお、階段形状の断面部分が荒く、テーパー角の変化も大きいため、平均テーパー角は、参考値として示す。
平均テラス幅: 682.2[nm]
平均テーパー角: 73度(参考値)
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 53.8[nm]
TL/TV: 0.69
実施例10のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。なお、階段形状の断面部分が荒く、テーパー角の変化も大きいため、平均テーパー角は、参考値として示す。
平均テラス幅: 1205.5[nm]
平均テーパー角: 69度(参考値)
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 61.2[nm]
TL/TV: 0.83
このように、実施例9-10は、比較例と比べて、NF3のガス流量が多いほど、平均テラス幅が大きくなっている。よって、第2のエッチング工程では、プロセスガスに含有させるNF3のガス流量が多くするほど、平均トリミングレートが向上する。
一方、実施例9-10は、比較例と比べて、ラフネス3σの値が大きく低下しており、階段形状の断面部分のラフネスを改善できていない。すなわち、実施例9-10の第2のエッチング工程では、プロセスガスに、酸素と、NF3とを含有させても、ラフネスを改善できない。
次に、実施例11-12を説明する。図13Aは、実施例11-12のプロセス条件を示す図である。実施例11-12の第1のエッチング工程は、比較例と同じプロセス条件である。一方、実施例11-12の第2のエッチング工程は、エッチング時間を変更しており、プロセスガスに、酸素と、Cl2と共に、CF4またはNF3を含有させており、Cl2、CF4、NF3の含有の割合を変化させている。図12Aでは、第2のエッチング工程のエッチング時間を「ww」と表記し、CF4のガス流量を「xx」と表記し、Cl2のガス流量を「yy」と表記し、NF3のガス流量を「zz」と表記している。
例えば、実施例11の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
エッチング時間: 10.0[sec]
ガス種及びガス流量: O2/CF4/Cl2=1000/160/40[sccm]
実施例12の第2のエッチング工程は、比較例から、以下のようにプロセス条件を変更している。
エッチング時間: 10.0[sec]
ガス種及びガス流量: O2/NF3/Cl2=1000/80/40[sccm]
エッチング装置10は、実施例11-12のプロセス条件に従い、それぞれウエハWの多層膜mlに階段形状を形成するエッチング工程を行う。
図13Bは、実施例11-12のプロセス条件でウエハの多層膜に形成された階段形状を評価した評価結果の一例を示す図である。図13Bの例では、評価として、平均テラス幅、平均テーパー角、階段形状の断面部分のラフネス3σ、TL/TVを示している。また、図13Bには、図10Bと同様に、比較例(O2=1000[sccm])の評価結果も示している。
実施例11のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。なお、実施例11では、エッチング時間を10.0[sec]と短くしたため、平均テラス幅を15.0[sec]に換算した値で示している。
平均テラス幅: 826.1[nm]
平均テーパー角: 70度
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 5.0[nm]
TL/TV: 0.71
実施例12のプロセス条件では、エッチングに関する評価が以下のようになる。なお、実施例12でも、エッチング時間を10.0[sec]と短くしたため、平均テラス幅を15.0[sec]に換算した値で示している。
平均テラス幅: 896.7[nm]
平均テーパー角: 72度
階段形状の断面部分のラフネス3σ: 6.3[nm]
TL/TV: 0.73
このように、実施例11-12は、比較例と比べて、ラフネス3σの値が小さくなっており、階段形状の断面部分のラフネスを低減できている。
また、実施例11-12は、比較例と比べて、平均テラス幅が大きくなっている。よって、第2のエッチング工程では、プロセスガスに、O2とCl2に加えて、CF4またはNF3を含有させることにより、平均トリミングレートが向上する。
図14は、プロセスガスのラフネスとトリミングレートの依存関係の一例を示す図である。図14には、第2のエッチング工程のプロセスガスに含有させるガス種が示されている。階段形状を形成するエッチング工程では、実施例11のように、第2のエッチング工程のプロセスガスにO2、CF4、Cl2を含有させることで、比較例のようにプロセスガスにO2のみを含有させた場合と比べて、ラフネスが低下する。また、トリミングレートが向上する。なお、階段形状を形成するエッチング工程では、実施例12のように、第2のエッチング工程のプロセスガスにO2、NF3、Cl2を含有させることでも、ラフネスが低下する。また、トリミングレートが向上する。
一方、階段形状を形成するエッチング工程では、実施例2-5のように、第2のエッチング工程のプロセスガスにO2、Cl2を含有させることで、比較例のようにプロセスガスにO2のみを含有させた場合と比べて、ラフネスが低下する。しかし、トリミングレートが若干低下する。
また、階段形状を形成するエッチング工程では、実施例6-10のように、第2のエッチング工程のプロセスガスにO2と共に、CF4またはNF3を含有させることで、比較例のようにプロセスガスにO2のみを含有させた場合と比べて、トリミングレートが向上する。しかし、ラフネスが低下する。
[効果]
このように、実施形態に係るエッチング装置10は、第1の膜110と第2の膜120とが交互に積層された多層膜mlの表面にフォトレジスト層PRが形成され、チャンバ(処理容器)11内に配置されたウエハWに対して、フォトレジスト層PRをマスクとして多層膜mlをエッチングする第1のエッチング工程を行う。エッチング装置10は、酸素およびハロゲンを含有する第1のプロセスガスを供給する、または、ハロゲンを含有する第2のプロセスガスを供給した後に酸素を含有する第3のプロセスガスを供給する第2のエッチング工程を行う。エッチング装置10は、第1のエッチング工程から第2のエッチング工程を複数回繰り返す。これにより、エッチング装置10は、多層膜mlに階段形状を形成できる。また、エッチング装置10は、多層膜mlに形成される階段形状の断面部分のラフネスを低減できる。
また、実施形態に係るエッチング装置10は、第2のエッチング工程において、チャンバ11内の圧力を第1のエッチング工程よりも高い所定の圧力状態とする。これにより、エッチング装置10は、フォトレジスト層PRの水平方向のエッチングレートを高めることができる。
また、実施形態に係るエッチング装置10は、第1のプロセスガスに含有するハロゲンを、第1のエッチング工程により生成される、シリコン含有する反応生成物と反応して、当該反応生成物を第2のエッチング工程の圧力状態より高い蒸気圧を有する第1の物質(Si系の反応生成物)に変質し、フォトレジスト層PRと反応して、第2のエッチング工程の圧力状態より低い蒸気圧を有する第2の物質(C系の反応生成物)を生成する特性のハロゲン族の何れかの元素とする。これにより、エッチング装置10は、第2の物質と第1の物質のうち、第1の物質を選択的に除去できる。
また、実施形態に係るエッチング装置10は、第1のプロセスガスに、フロロカーボン、ハイドロフロロカーボンの少なくとも一方をさらに含有する。例えば、実施形態に係るエッチング装置10は、第1のプロセスガスに、CF4またはNF3をさらに含有する。これにより、エッチング装置10は、フォトレジスト層PRのトリミングレートを向上させることができる。
また、実施形態に係るエッチング装置10は、第1のプロセスガスの酸素に対するハロゲンの含有割合を0.5%以上とする。これにより、エッチング装置10は、多層膜mlに形成される階段形状の断面部分のラフネスを低減できる。
また、実施形態に係るエッチング装置10は、第2のプロセスガスの供給の前に、酸素を含有する第4のプロセスガスを供給する。これにより、エッチング装置10は、第1のエッチング工程のエッチングによる露出面がダメージを受けることを抑制できる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
例えば、上記の実施形態では、多層膜mlに階段形状を形成するエッチングを行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。階段形状を形成する対象は、シリコン含有膜であればよく、単層膜であってもよい。
また、上記の実施形態では、被処理体を、多層膜mlが形成されたウエハWとする場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。被処理体は、階段形状を形成する対象であれば、何れであってもよい。