以下、本発明の加工装置10について、図面を参照しつつ説明する。加工装置10は、平角線2の端部を加工するために用いられるものである。
先ず、加工装置10の説明に先立って、加工装置10の加工対象である平角線2について説明する。平角線2は、例えばモータのコイルを形成するために用いられるものである。平角線2は、導体の表面がエナメル等の絶縁被膜3で覆われている。
図4に示すとおり、平角線2は、断面視において略矩形(略長方形)の形状を有している。平角線2は、工場等に納品された際には、長尺の平角線2が芯材などに巻かれた状態となっている。平角線2は、加工装置10により加工が行われる前に、巻かれた状態から直線状にされ、所定の長さとなるようカットされる。また、本実施形態の加工装置10により加工が行われる平角線2は、直線状にされる際に、少なくとも一方の端部が加工される。
より具体的に説明すると、平角線2は、単にカットされた状態において、図4(a)に示すように、導体の周部の全域が絶縁被膜3に覆われている。本実施形態の加工装置10の加工対象とされる平角線2は、図4(a)の破線で示すとおり、端部の周面のうち、両側の短辺面が削られて短辺面の絶縁被膜3が除去された状態で準備される。
なお、本発明の加工装置の加工対象とされる平角線は、本実施形態に限定されない。例えば、平角線は、端部の周面が削られていない状態で準備されるものであってもよいし、あるいは端部の周面のうち長辺面及び短辺面(四方面)の絶縁被膜3を除去した状態で準備されるものであってもよい。
本実施形態の加工装置10は、平角線2の周面の絶縁被膜3(本実施形態では短辺面の絶縁被膜3)を除去するとともに、平角線2の端部の角部を削ってC面を形成する(図21(b)参照)。平角線2は、表面の絶縁被膜3を除去するとともに、溶接精度向上のためにC面(先端C面)を形成する加工が行われる。
なお、図4に示すように、以下の説明において、平角線2の周面のうち、断面形状において長辺となる面(断面形状における縁が長手方向となる面)を、単に「長辺面2a」と記載して説明する場合がある。また、平角線の四つの周面のうち、断面形状において短辺となる面(断面形状における縁が短手方向となる面)を、単に「短辺面2b」と記載して説明する場合がある。さらに、平角線2の断面形状において、長辺を単に「長辺4a」と記載し、短辺を単に「短辺4b」と記載して説明する場合がある。
さらに、平角線2の姿勢について、短辺面2bが垂直方向に向くような姿勢を単に「横向きの姿勢」(図4(b-1)参照)と、長辺面2aが垂直方向に向くような姿勢を単に「縦向きの姿勢」(図4(b-2)参照)と記載して説明する場合がある。また、平角線2の姿勢について、長辺面2aが傾斜するような姿勢を「傾斜した姿勢」と記載して説明する場合がある。さらに、平角線2が傾斜した姿勢において、上流A1側に傾くように傾斜する姿勢を、単に「上流A1側に傾斜した姿勢」(図4(b-3)参照)と、下流A2側に傾くように傾斜する姿勢を、単に「下流A2側に傾斜した姿勢」(図4(b-4)参照)と記載して説明する場合がある。
図1に示すとおり、加工装置10は、搬送装置20、押出装置70、供給装置90、及びプレス装置100(切削装置)を有している。加工装置10は、予め所定の長さとされた平角線2を、平角線2の長手方向と交差する方向(搬送方向X)に搬送しつつ端部を切削して絶縁被膜3を除去する加工やC面を形成する加工を行う。
図1及び図2に示すとおり、加工装置10は、搬送装置20の幅方向の一方にプレス装置100が配置されており、他方に押出装置70が配置されている。また、加工装置10は、搬送装置20の長手方向の一方に供給装置90が設けられている。加工装置10は、搬送装置20の長手方向に沿って平角線2を搬送可能とされている。
加工装置10では、平角線2は、長手方向の向きが搬送装置20の幅方向に沿うように搬送される。また、平角線2は、プレス装置100が配置された側の端部(基端)の加工が行われる。
なお、以下の説明において、搬送装置20の長手方向(平角線2が搬送される方向)を、単に「搬送方向X」と記載して説明する場合がある。また、搬送方向Xのうち、供給装置90が設けられた側を単に「上流A1側」と記載し、上流A1側と反対側を単に「下流A2側」と記載して説明する場合がある。
また、以下の説明において、搬送装置20の幅方向を、単に「幅方向Y」と記載して説明する場合がある。また、幅方向Yの両側のうち、プレス装置100が設けられた側(平角線2の基端が向けられる側)を単に「基端B1側」と、基端B1側とは反対側(平角線2の基端とは反対側の末端が向けられる側)を単に「末端B2側」と記載して説明する場合がある。
さらに、幅方向Yのうち、末端B2側から基端B1側に向かう方向を、単に「突き当て方向y1」又は「近接方向y1」と、基端B1側から末端B2側に向かう方向を、単に「退避方向y2」又は「離間方向y2」と記載して説明する場合がある(図1参照)。
さらに、加工装置10が設置された状態における上下方向を、単に「上下方向H」と記載して説明する場合がある(図1参照)。
加工装置10は、搬送装置20により、複数の平角線2を長手方向の向きが幅方向Yに向くように保持しつつ、姿勢を変化させながら平角線2を搬送可能とされている。言い方を換えれば、搬送装置20は、複数の平角線の姿勢を同時に変化させつつ、順送りすることができる。以下、加工装置10の各構成について説明し、次いで加工装置10全体の動作について説明する。
図5に示すとおり、搬送装置20は、保持体22、及び搬送体30備えている。また、図6に示すとおり、搬送装置20は、搬送機構40、及びオフセット機構60を備えている。搬送装置20は、搬送機構40を介して搬送体30が保持体22に対して取り付けられた構成とされている。
保持体22は、平角線2を保持するために設けられている。より具体的には、保持体22は、平角線2を搬送方向Xにおいて位置決めして保持しつつ、保持された平角線2を所定の姿勢に保持するために設けられている。
図5(a)に示すとおり、保持体22は、保持側本体23と、一対の保持プレート24とを有している。保持側本体23は、側面視において略コの字状の外観をなしている。保持体22は、保持側本体23の幅方向Yの両側にそれぞれ保持プレート24が取り付けられた構成とされている。
図5(c)に示すとおり、保持プレート24は、上方縁25に略V字状の複数の窪み(本実施形態では9箇所)が形成されたプレート状の部材である。また、保持プレート24には、後述する供給装置90を構成する供給部92が形成されている。保持プレート24は、長手方向が搬送方向Xに向くように配置されている。
図5(c)に示すとおり、保持プレート24の上方縁25の9箇所に形成された略V字状の窪みの最深部には、それぞれ保持凹部26(保持溝)が形成されている。保持凹部26は、保持プレート24の長手方向において、略等間隔(間隔D1)となるように設けられている。なお、以下の説明において、一の保持凹部26に対して、搬送方向Xに間隔D1を空けて形成されている保持凹部26を、「隣接する保持凹部26」等と記載して説明する場合がある。
図9に示すとおり、保持プレート24には、上流A1側から下流A2側に向けて、保持凹部26a、保持凹部26b、保持凹部26c、保持凹部26d、保持凹部26e、保持凹部26f、保持凹部26g、保持凹部26h、及び保持凹部26iの9つの保持凹部26が設けられている。各保持凹部26は、略V字状、あるいは略コの字状など、所定の形状に形成されている。
図9に示すとおり、略V字状に形成されている保持凹部26(例えば保持凹部26a)では、平角線2は長辺面2aあるいは短辺面2bが傾斜するように保持凹部26と接触し、傾斜した姿勢で保持される。また、略コの字状に形成されている保持凹部26(例えば保持凹部26bや保持凹部26d)では、平角線2は長辺面2aあるいは短辺面2bが略垂直となるよう保持凹部26と接触して、縦向きあるいは横向きの姿勢で保持される。
保持体22は、平角線2の長手方向の二箇所を一対の保持プレート24の保持凹部26により保持して、保持凹部26が設けられた搬送方向Xにおける位置(保持位置Px)において、平角線2を搬送方向Xに位置決めして保持することができる。また、保持体22は、保持凹部26の縁部に平角線2の周面を接触させて保持して、平角線2を保持凹部26の形状に沿う姿勢で保持することができる(図9参照)。
搬送体30は、保持体22の保持凹部26に保持された平角線2を持ち上げて、隣接する保持凹部26に平角線2を搬送するために設けられている。
図5(a)に示すとおり、搬送体30は、可動本体32と、一対の可動プレート34を有している。図3及び図6に示すとおり、可動本体32は、一対の可動本体形成プレート32aが連結部材32bを介して連結された構成とされている。また、図6に示すとおり、可動本体32には、後で説明する公転軸52を挿通させるための公転軸挿通部32cが形成されている。上述のとおり、搬送体30は、搬送機構40を介して保持体22に対して取り付けられており、一対の保持プレート24に挟まれるように配置されている(図3参照)。
図5(b)に示すとおり、可動プレート34は、上方縁35に略V字状の複数の窪み(本実施形態では9箇所)が形成されたプレート状の部材である。また、可動プレート34には、後述する供給装置90を構成するアゴ部98が形成されている。可動プレート34は、長手方向が搬送方向Xに向くように配置されている。
図5(b)に示すとおり、可動プレート34の上方縁35の9箇所に形成された略V字状の窪みの最深部には、それぞれ搬送凹部36が形成されている。搬送凹部36は、可動プレート34の長手方向において、略等間隔(間隔D1)となるように設けられている。すなわち、複数の搬送凹部36は、複数の保持凹部26が設けられた間隔と略一致する間隔(間隔D1)で配置されている。
図10に示すとおり、可動プレート34には、上流A1側から下流A2側に向けて、搬送凹部36a、搬送凹部36b、搬送凹部36c、搬送凹部36d、搬送凹部36e、搬送凹部36f、搬送凹部36g、搬送凹部36h、及び搬送凹部36iの9つの搬送凹部36が設けられている。図10に示すとおり、多くの搬送凹部36は、平角線2の周面と傾斜して接触するような形状に形成されている。
図10に示すとおり、搬送凹部36h以外の搬送凹部36では、平角線2は長辺面2aあるいは短辺面2bが傾斜するように搬送凹部36と接触し、傾斜した姿勢で保持される。また、搬送凹部36hでは、平角線2は長辺面2aが略水平となるよう搬送凹部36hと接触して、横向きの姿勢で保持される。
搬送機構40は、搬送体30を保持体22に対して変位させるために設けられている。
より具体的には、搬送機構40は、搬送体30を保持体22に対して円軌道を描くように変位させるための機構として設けられている。また、本実施形態の加工装置10は、搬送装置20にオフセット機構60が設けられている。そのため、搬送機構40により搬送体30が円軌道を描くように移動する際に、搬送体30は保持体22に対して幅方向Yにオフセットしつつ変位する。
図6に示すとおり、搬送機構40は、一対のリンク機構を構成する上流A1側に設けられた上流側リンク機構40aと、下流A2側に設けられた下流側リンク機構40bとが、伝達ベルト(図示を省略)を介して相互に回転動力が伝達される構成とされている。より具体的に説明すると、上流側リンク機構40aと、下流側リンク機構40bとは、一対のリンク機構として搬送方向Xに離間するように略同じ高さとなるよう配置されている。また、搬送機構40は、上流側リンク機構40aに設けられたプーリ46と、下流側リンク機構40bに設けられたプーリ46とが、伝達ベルトを介して連結されており、上流側リンク機構40a及び下流側リンク機構40bが同期して作動する。
図6に示すとおり、搬送機構40(上流側リンク機構40a及び下流側リンク機構40b)は、駆動軸42、操作部44、クランク部材50、及び支持軸54を備えている。なお、上流側リンク機構40a、及び下流側リンク機構40bには、それぞれ駆動軸42、操作部44、クランク部材50、及び支持軸54が設けられている。なお、駆動軸42には、後で説明する第一ギア82が取り付けられている。
駆動軸42は、保持体22を貫通するように設けられている。駆動軸42は、軸線L1が幅方向Yに沿うように設けられており、操作部44が取り付けられている。駆動軸42は、操作部44を回転させると、操作部44と一体的に回転する。
図6に示すとおり、クランク部材50は、駆動軸42と連結されている。クランク部材50は、駆動軸42の回転に連動して、軸線L1を中心として回転する。クランク部材50は、公転軸52と、一対のクランクアーム部53a,53bを備えている。一対のクランクアーム部53a,53bは、公転軸52の両端にそれぞれ連結されている。クランク部材50は、幅方向Yの一方(末端B2側)を駆動軸42により支持され、他方(基端B1側)が支持軸54により支持されている。クランク部材50の公転軸52は、駆動軸42の回転に伴って、軸線L1を中心として、円軌道を描くように回転(公転)する。言い方を換えれば、公転軸52の軸線L2は、駆動軸42の回転に伴って、軸線L1回りに公転する。
図6に示すとおり、搬送体30は、公転軸挿通部32cに公転軸52を挿通させることで、保持体22に対して取り付けられている。より具体的には、搬送体30は、公転軸挿通部32cに公転軸52を挿通させて、上流A1側及び下流A2側の二箇所において公転軸52に支持された状態で保持体22に取り付けられている。そのため、操作部44を回転させる操作が行われると、搬送体30は、公転軸52に支持されつつ略水平の姿勢を維持して、軸線L1回りに円軌道を描くように移動する(図7参照)。なお、搬送体30は、幅方向Yに摺動可能な状態で公転軸52に支持されている。
オフセット機構60は、搬送体30を幅方向Yにオフセットさせつつ移動させるために設けられている。図6に示すとおり、オフセット機構60は、カム部62、ボールプランジャ64、及び付勢部材66を備えている。なお、カム部62、ボールプランジャ64、及び付勢部材66は、上流側リンク機構40a及び下流側リンク機構40bのそれぞれに対応するように設けられている。
本実施形態の付勢部材66は、コイルスプリングとされている。付勢部材66は、公転軸52に取り付けられている。より具体的には、図6に示すとおり、付勢部材66は、搬送体30の基端B1側であって、搬送体30と保持体22との間に位置するように公転軸52に取り付けられている。図3に示すとおり、付勢部材66は、搬送体30を基端B1側から末端B2側に付勢するように配置されている。なお、以下の説明において、付勢部材66により搬送体30が付勢される方向を、単に「付勢方向F」と記載して説明する場合がある。搬送体30は、付勢部材66の付勢力により、操作部44が設けられた方向(退避方向y2)に付勢された状態で公転軸52に支持されている。
カム部62は、正面視において略円形の形状を有する部材である。図6に示すとおり、カム部62は、搬送体30に取り付けられている。より具体的には、カム部62は、搬送体30の幅方向Yの外側であって、付勢部材66が設けられた側とは反対側(末端B2側)に設けられている。
図8に示すとおり、カム部62の端面には、径方向の一方から他方に向けて傾斜するような傾斜面62aが形成されている。傾斜面62aは、上流A1側から下流A2側に向けて高さが低くなるような面として形成されている。
図6及び図8に示すとおり、ボールプランジャ64は、クランク部材50に取り付けられている。より具体的には、ボールプランジャ64は、クランク部材50のクランクアーム部53aに取り付けられており、先端部64aがカム部62の傾斜面62aに接触するように配置されている。
駆動軸42の回転に伴ってクランク部材50が軸線L1回りに回転すると、これに伴ってボールプランジャ64が軸線L1回りに円軌道を描くように変位する。また、上述のとおり、搬送体30は、公転軸52に対して幅方向Yにスライド可能に取り付けられているとともに、付勢部材66により退避方向y2(付勢方向F)に付勢されている。
駆動軸42の回転に伴って搬送体30が円軌道を描くように変位すると、これに伴ってボールプランジャ64の先端部64aが傾斜面62a上で円軌道を描くように移動する。ここで、ボールプランジャ64は幅方向Yにおける位置を維持しつつ円軌道を描くように変位するのに対して、搬送体30は退避方向y2(付勢方向F)付勢されつつ変位可能とされている。そのため、搬送体30は、円軌道を描くように変位する際に、ボールプランジャ64の先端部64aと傾斜面62aとが接触する位置(カム部62の高さ)に依存して幅方向Yの位置が制御される。
言い方を換えれば、オフセット機構60は、搬送体30を、接触部材(本実施形態ではボールプランジャ64)が被接触部材(本実施形態ではカム部62)に対して接触する範囲内(図8(c)の範囲R1)における高低差(図8(c)の高さD2)に相当する距離をオフセットさせる。このように、搬送体30は、円軌道を描くように変位する際に、ボールプランジャ64と傾斜面62aとの接触位置に応じて、幅方向Yの位置がオフセットされる。
次いで、操作部44が回転操作された際の駆動軸42の回転角度と、可動プレート34(搬送体30)の位置について、図7及び図8を参照しつつ説明する。
上述のとおり、搬送体30は、操作部44への回転操作により、保持体22に対して略水平の姿勢を維持したまま回転軌道を描くように移動する。本実施形態で示す加工装置10では、操作部44のハンドル部44a(図7では図示を省略)が最も上方に位置する状態において搬送体30が最も下方に位置し(図7(a)参照)、操作部44のハンドル部44aが最も下方に位置する状態において搬送体30が最も上方に位置する(図7(c)参照)。
また、上述のとおり、搬送体30は操作部44の回転操作により駆動軸42が回転すると、駆動軸42の回転に伴って円軌道を描くように変位する。言い方を換えれば、搬送体30は、駆動軸42の回転角度に同期して位置を変位する。そのため、以下の説明において、駆動軸42の回転角度を、単に「軸回転角度」と記載して説明する。なお、図中では、軸回転角度を、単に「90°」、「180°」等、角度を示して図示している。
また、可動プレート34の上方縁35が保持プレート24の上方縁25に対して最も下方に離間する状態を「軸回転角度0度」として、駆動軸42が正方向(図7では反時計回り)に回転して再び軸回転角度0度(駆動軸42が一回転)に到達するまでの角度を、駆動軸42が回転した角度に応じた「軸回転角度」と記載して説明する。
例えば、軸回転角度0度から駆動軸42が正方向(図7では反時計回り)に90度回転した状態を単に「軸回転角度90度」と、軸回転角度0度から駆動軸42が正方向に180度回転した状態を単に「軸回転角度180度」と、軸回転角度0度から駆動軸42が正方向に270度回転した状態を単に「軸回転角度270度」と、軸回転角度0度から駆動軸42が正方向に360度回転して再び軸回転角度0度に到達した状態を「軸回転角度0度」と記載して説明する。
<可動プレートの動きについて>
図7(a)に示すとおり、軸回転角度0度では、可動プレート34の上方縁35は保持プレート24の上方縁25より下方に配置されている。軸回転角度0度から操作部44が正方向に回転操作されると、可動プレート34は、上方縁35が保持プレート24の上方縁25に近づくように上流A1寄りに変位する。
また、軸回転角度0度では、平角線2は、長手方向の二箇所が保持凹部26に支持された状態となっている。すなわち、平角線2は、長手方向の二箇所において、幅方向Yに離間するように配置された一対の保持プレート24の保持凹部26に嵌め込まれて、保持体22に保持された状態となっている。
図7(b)に示すとおり、軸回転角度0度から駆動軸42が回転して軸回転角度90度に到達した状態では、可動プレート34は、上方縁35が保持プレート24の上方縁25と略一致する高さに到達する。また、軸回転角度90度では、可動プレート34の上方縁35が保持プレート24の上方縁25と上下方向Hにおいて略一致する高さとなり、保持凹部26と搬送凹部36とが上下方向Hの位置及び搬送方向Xの位置において、略一致する位置となる。
また、軸回転角度90度では、平角線2が保持凹部26及び搬送凹部36の双方と接触するような状態となり、軸回転角度90度からさらに駆動軸42が正方向に回転すると、平角線2が保持凹部26及び搬送凹部36の双方に保持された状態となる(図11(b)参照)。軸回転角度90度からさらに駆動軸42が正方向に回転して可動プレート34が上方に移動すると、保持凹部26に保持されていた平角線2が搬送凹部36にすくい上げられるように持ち上げられて、搬送体30に保持された状態となる(図11(c)参照)。
さらに、図8(a)に示すとおり、搬送体30は、軸回転角度90度の場合には、ボールプランジャ64の先端部64aが、先端部64aの移動範囲R1(図8(c)参照)において傾斜面62aの最も高い部分に接触する。そのため、搬送体30は、軸回転角度90度の場合において、最も近接方向y1にオフセットする。
図7(c)に示すとおり、軸回転角度90度からさらに駆動軸42が正方向に回転すると、可動プレート34はさらに上方に変位する。なお、軸回転角度90度から軸回転角度270度に到達する間には、平角線2は搬送体30に保持された状態(図11(c)参照)となる。搬送体30は、平角線2を保持しつつ、円軌道を描くように保持体22の上方を移動する。また、軸回転角度90度から軸回転角度270度に到達する間に、搬送体30は搬送方向Xにおいて下流A2側に間隔D1分変位する。
図7(d)に示すとおり、軸回転角度270度では、平角線2が再び保持凹部26及び搬送凹部36の双方と接触するような状態となる(図11(d)参照)。軸回転角度270度からさらに駆動軸42が正方向に回転して可動プレート34が下方に移動すると、搬送凹部36に保持されていた平角線2が保持凹部26に持ち替えられた状態となり、保持体22に保持された状態となる(図11(f)参照)。
また、図8(b)に示すとおり、搬送体30は、軸回転角度270度の場合には、ボールプランジャ64の先端部64aが、先端部64aの移動範囲R1において傾斜面62aの最も低い部分に接触する。そのため、搬送体30は、軸回転角度270度の場合において、最も離間方向y2にオフセットされる。また、搬送体30に保持されている平角線2(図8では図示を省略)も、搬送体30とともに退避方向y2にオフセットされる。
このように、搬送装置20は、駆動軸42の回転に伴って搬送体30を変位させ、一の保持凹部26に保持されていた平角線2を搬送凹部36により持ち上げて下流A2側に隣接する保持凹部26に搬送する。
また、搬送体30は、円軌道を描くように移動する場合、軸回転角度90度となる位置で平角線2を持ち上げて搬送を開始し、軸回転角度270となる位置で平角線2を隣接する保持凹部26に平角線2を保持させて搬送を終了する。言い方を換えれば、搬送装置20は、搬送体30が近接方向y1側に位置するタイミング(軸回転角度90度のタイミング)で平角線2の搬送を開始して、平角線2を保持させた状態で搬送体30を離間方向y2にオフセットさせながら搬送体30から保持体22に平角線2を保持させる。
このように、搬送装置20は、平角線2を搬送させる一連の過程において平角線2をプレス装置100から離間するようにオフセットさせる。そのため、平角線2を一の保持凹部26から隣接する保持凹部26に順送りして搬送する際に、後述する基準面114に平角線2が接触したり、位置決め部112に平角線2が乗り上げたりすることを抑制することができる。
また、上述のとおり、加工装置10では、平角線2を順送りする動作(搬送体30の円軌道を描くように変位する動作)と、平角線2をオフセットさせる動作(搬送体30を幅方向Yにオフセットさせる動作)とを、駆動軸42の軸回転角度により同期して行うこととしている。そのため、これらの動作をそれぞれ別途に制御する制御装置等を要さず、構成や制御を簡易化することができる。
<保持溝の形状と平角線の姿勢について>
続いて、保持凹部26や搬送凹部36に保持される際の平角線2の姿勢について、図11及び図12を参照しつつ説明する。上述のとおり、平角線2は、保持体22に保持された状態から、搬送体30の移動に伴って下流A2側に搬送される。より具体的には、平角線2は、搬送体30の移動(変位)により、保持凹部26から下流A2側に隣接する保持凹部26に搬送される。
平角線2は、周面が各保持凹部26の外縁や各搬送凹部36の外縁と接触して保持される(図9及び図10参照)。そのため、平角線2は、保持凹部26の外縁や搬送凹部36の外縁が鉛直方向に対して傾斜するように形成されている場合には、外縁の傾斜角度に応じて傾斜した姿勢で保持される。また、平角線2は、保持凹部26の外縁や搬送凹部36の外縁が略水平や略鉛直に形成されている場合には、縦向きの姿勢、あるいは横向きの姿勢で保持される。
以下、各保持凹部26の外縁の形状や搬送凹部36の外縁の形状と、平角線2の姿勢について説明する。なお、以下の保持凹部26の外縁や搬送凹部36の外縁の形状に関する説明では、加工装置10の幅方向Yのうち、操作部44が設けられた側から視認した状態を「正面視」と記載して説明する。
なお、以下の説明では、保持凹部26a、保持凹部26b及び搬送凹部36aの正面視における形状と、平角線2が保持凹部26aに保持された状態から搬送凹部36aに保持された状態で保持凹部26bに搬送される間の姿勢について詳細に説明し、そのあと各保持凹部26及び各搬送凹部36の形状について説明する。
保持凹部26aは、最も上流A1側に設けられた保持凹部26である。保持凹部26には、供給装置90から切り出された平角線2が保持される。図9に示すとおり、保持凹部26aは、外縁が、鉛直方向に対して傾斜するように形成されている。そのため、保持凹部26aに平角線2を保持させた状態では、平角線2は傾斜した姿勢で保持される。
搬送凹部36aは、最も上流A1側に設けられた搬送凹部36である。搬送凹部36aは、保持凹部26aに保持された平角線2を下方から持ち上げて搬送し、隣接する保持凹部26bに平角線2を搬送する。図10に示すとおり、搬送凹部36aは、外縁が、上流A1側の傾斜角度が保持凹部26aの上流A1側の外縁の傾斜角度よりも大きい。搬送凹部36aに平角線2が保持されると、平角線2は、上流A1側の外縁にもたれかかるように、縦向き寄りで傾斜した姿勢となる。
保持凹部26bは、保持凹部26aの下流A2側に設けられた保持凹部26である。言い方を換えれば、保持凹部26bは、保持凹部26aの下流A2側に隣接する保持凹部26である。保持凹部26bの外縁は、正面視において略コの字に形成されており、平角線2の短辺面2bと略一致する幅を備えている。保持凹部26bに平角線2が保持されると平角線2は、短辺面2bが保持凹部26bの底部と接触し、下方側の長辺面2aが立ち上がるように形成された外縁に支持されて、縦向きの姿勢となる。
図11(a)及び図11(b)に示すとおり、搬送体30が上方に移動すると、やがて搬送凹部36が保持凹部26と略一致する高さに到達して、平角線2が保持凹部26の外縁と搬送凹部36の外縁との双方と接触した状態(双方に支持された状態)となる。図11(b)に示すとおり、保持凹部26aに傾斜した姿勢で保持された平角線2が搬送凹部36に下方からすくい上げられるように保持される際、平角線2は上流A1側の外縁を背もたれのようにして搬送凹部36aに持ち上げられ、縦向き寄りに傾斜した姿勢となる。
図11(c)に示すとおり、搬送体30は、円軌道を描くように保持凹部26の上方を下流A2側に向けて平角線2を保持した状態で移動する。
図11(d)に示すとおり、搬送体30が移動して搬送凹部36aが保持凹部26bと略一致する位置まで到達すると、搬送凹部36aに保持された平角線2は、長辺面2aが搬送凹部36の外縁に支持されながら保持凹部26bに案内される。また、搬送体30がさらに下方に移動すると、平角線2は保持凹部26bに縦向きの姿勢で保持されるとともに、搬送凹部36が平角線2から離間する。
このように、加工装置10は、保持凹部26の外縁や搬送凹部36の外縁に平角線2の周面を接触させつつ、姿勢を変化させながら平角線2を搬送する。
図12は、平角線2が上流A1側から下流A2側に順送りされる際の姿勢の変化を示す図である。図12に示すとおり、搬送装置20では、保持凹部26から搬送凹部36に持ち替えられる際、あるいは搬送凹部36から保持凹部26に持ち替えられる際に、概ね45度の範囲内で平角線2の姿勢を変化させるようにしている。
より具体的に説明すると、搬送装置20は、一の保持凹部26の外縁の角度と、当該保持凹部26から搬送体30が平角線2を持ち上げる際に、平角線2と接触する搬送凹部36の外縁の角度とが、概ね45度の範囲を超えないようにされており、平角線2が持ち替えられる際の平角線2の姿勢変化が少なくなるようにしている。具体的には、本実施形態の搬送装置20では、平角線2が持ち替えられる際の姿勢変化(平角線2の傾斜の変化)が、概ね45度の範囲とされている。
なお、図12には、各保持凹部26や各搬送凹部36に保持される際の平角線2の姿勢を示すとともに、各保持凹部26において行われる切削工程等の有無を示している。例えば、保持凹部26aは、後述する供給装置90から平角線2が切り出された際に平角線2が保持される位置(切り出し位置)に相当し、図12では「切り出し」と記載して示している。
また、保持凹部26b、保持凹部26d、保持凹部26e、保持凹部26g、及び保持凹部26iは、後述するプレス装置100により切削加工が行われる位置(工程位置)に相当し、図12では「工程位置」と記載して示している。
さらに、保持凹部26c、保持凹部26f、及び保持凹部26hは、プレス装置100により切削工程が行われない位置(アイドル工程)に相当し、図12では「アイドル工程」と記載して示している。
アイドル工程は、第一切削工程と第二切削工程との間や、第三切削工程と第四切削工程との間、さらに第四切削工程と第五切削工程との間に設けられている。本実施形態の加工装置10では、切削工程から次の切削工程に向けて平角線2を順送りする間にアイドル工程(切削等の加工が行われない工程)を設け、かつアイドル工程において平角線2の姿勢を変化させることで、平角線2をより滑らかに、かつ確実に姿勢を変化させることができる。
より具体的に説明すると、加工装置10は、平角線2が持ち替えられる際の一度の姿勢変化を比較的少なくし、姿勢を変化させる回数を増やすことで、平角線2を搬送する際に、確実に意図した姿勢に変化させることができる。言い方を換えれば、加工装置10では、一の切削工程から次ぎの切削工程に至る間に、平角線2の姿勢を大きく変化させる必要がある場合(例えば90度など)には、平角線2の姿勢を変化させる角度を数回に分散して、平角線2の姿勢を確実に変化させることができる。
例えば、平角線2を搬送凹部36から保持凹部26に据え置く際には、搬送体30の変位により、平角線2には搬送方向Xに慣性力が働き、平角線2を据え置く際に平角線2が搬送体30の変位方向(下流A2側など)に転ぶ恐れがある。加工装置10は、このような平角線2を搬送する際に平角線が意図しない方向に転ぶなど搬送不良を抑制し、姿勢の再現性を向上させることができる。
次いで、押出装置70について図面を参照しつつ説明する。押出装置70は、平角線2を突き当て方向y1に押し付けるために設けられている。図13に示すとおり、押出装置70は、押出装置本体71、及び複数のプッシャ76(本実施形態では8個)を備えている。また、図14に示すとおり、押出装置70は、押出機構80を備えている。なお、図6に示すとおり、押出機構80は、上流側リンク機構40a及び下流側リンク機構40bに対応するように設けられている。図14及び図15では、上流側リンク機構40aに対応する押出機構80を図示し、下流側リンク機構40bに対応する押出機構80については図示を省略する。
図13に示すとおり、押出装置70は、複数のプッシャ76が押出装置本体71のプッシャ連結部74に取り付けられた構成とされている。また、押出装置本体71は、スライドプレート72と、プッシャ連結部74とが連結された構成とされている。
押出装置70は、複数のプッシャ76をプッシャ連結部74に取り付けて連結させ、これらをスライドプレート72に取り付けることで、複数のプッシャ76を一体的に移動可能としている。スライドプレート72は、後述する押出機構80に連結されており、幅方向Yに往来するように変位可能とされている(図15参照)。そのため、加工装置10では、複数のプッシャ76のそれぞれを作動させるための個別の作動装置(シリンダ等)を要さず、構成を簡素化することができる。
図13に示すとおり、複数のプッシャ76は、上流A1側から順に、プッシャ76a~プッシャ76hの順に搬送方向Xに並ぶように配置されている。また、各プッシャ76a~76hは、保持凹部26b~26iに対応するように設けられている。例えば、プッシャ76aは、保持凹部26bに保持された平角線2を押し出すために設けられており、プッシャ76bは、保持凹部26cに保持された平角線2を押し出すために設けられている。
ここで、図13に示すとおり、押出装置70は、保持凹部26aに対応する位置にはプッシャ76が設けられておらず、代わりにプッシャ連結部74が退避方向y2に後退させるように形成された後退部74aが設けられている。本実施形態の加工装置10では、保持凹部26aが切出工程に対応する保持凹部26として設けられており、保持凹部26aには、他の保持凹部26における平角線2の幅方向Yの位置よりも退避方向y2寄りに平角線2が切り出されて保持される。後退部74aは、保持凹部26aにおいて退避方向y2寄りに保持された平角線2とプッシャ連結部74とが干渉しないように設けられている。
押出機構80は、押出装置本体71を幅方向Yに往来させるための機構として設けられている。図14に示すとおり、押出機構80は、クランク部84、リンクアーム86、及びガイド部89を備えている。また、押出機構80には、伝達機構81が設けられている。
伝達機構81は、搬送装置20の搬送体30の動作に連動して、押出装置70を作動させるために設けられている。本実施形態の伝達機構81は、複数のギア(ギア)を介して搬送装置20の動力を押出装置70に伝達して、搬送装置20と押出装置70とを同期して作動させるようにしている。
より具体的には、図14に示すとおり、伝達機構81は、搬送装置20の駆動軸42に取り付けられて駆動軸42と一体的に回転する第一ギア82と、第一ギア82と噛み合う第二ギア83とを備えており、第一ギア82及び第二ギア83を介して駆動軸42の回転動力が伝達される。言い方を換えれば、伝達機構81は、第二ギア83の軸線L3が、駆動軸42の軸線L1と交差するように(略直交するように)配置されており、駆動軸42の回転動力が伝達される。
なお、本実施形態の加工装置10では、駆動軸42が一回転(360度回転)するのに同期して、第一ギア82が一回転(360度)する。言い方を換えれば、加工装置10では、駆動軸42の回転角度(軸回転角度)に応じて作動する搬送装置20と同期して、押出装置70が作動する。
図14に示すとおり、クランク部84は、軸部84aとアーム部84bとを備えている。軸部84aは、軸線L3が上下方向Hに向くように配置されている。また、クランク部84の軸部84aは第二ギア83と一体的に回転するように連結されている。リンクアーム86は、クランク部84のアーム部84bと、スライドプレート72の連結部88とを連結するように取り付けられている。
図15に示すとおり、クランク部84が軸部84aを中心に回転すると、クランク部84に牽引されるように連結部88が円軌道を描くように移動するとともに、スライドプレート72がこれに伴って移動する。ここで、スライドプレート72は、ガイド部89により変位方向が幅方向Yに規制されているため、幅方向Yに往来するように直線的に移動する。このように、押出機構80は、クランク部84の回転に従動してスライドプレート72を直線的に移動させるクランク・スライダ機構を形成している。
スライドプレート72が幅方向Yに往来するように(直線状に)変位すると、複数のプッシャ76が一体的に変位する。押出装置70は、複数のプッシャ76のそれぞれをストロークさせる必要がなく、一体的に移動させることができる。そのため、それぞれのプッシャ76を変位させるための制御装置等を設ける必要がなく、簡易な構造とすることができる。
また、押出装置70は、クランク・スライダ機構を形成する変位機構を採用することにより、幅方向Yの最大ストローク量(図15中の変位距離D3)を大きくすることができる。より具体的に説明すると、押出装置70は、プッシャ連結部74を揺動させる等の構成にする場合と比較して、直線的に平角線2を押し出すことができることに加え、ストローク量を大きくすることができる。
図15は、押出装置70の動作を示す平面図である。押出装置70は、上述のとおり駆動軸42の回転に同期して作動する。次の説明では、押出装置70の動作について、駆動軸42の軸回転角度とこれに対応するプッシャ76の位置などを、軸回転角度ごとに説明する。なお、図15では駆動軸42の図示を省略して説明する。
図15(a)に示すとおり、押出装置70は、軸回転角度0度の場合に、連結部88が最も基端B1側に位置するとともに、ストローク量(変位距離D3)が最大となり、スライドプレート72が突き当て方向y1に向けて押し出される。この場合、プッシャ76の先端部77は、最大ストローク位置Py1に位置することとなる。
図15(b)に示すとおり、軸回転角度0度から駆動軸42が正方向に回転して軸回転角度90度を経て軸回転角度が180度に到達する間には、スライドプレート72が退避方向y2にスライドする。
図15(c)に示すとおり、軸回転角度が180度に到達すると、連結部88は最も末端B2側に位置するとともに、ストローク量(変位距離D3)が最小となり、スライドプレート72が最も末端B2側に位置することとなる。この場合、プッシャ76の先端部77は、最小ストローク位置Py2に位置することとなる。
図15(d)に示すとおり、軸回転角度180度から駆動軸42が正方向に回転して軸回転角度270度を経て再び軸回転角度0度に到達する間には、スライドプレート72が突き当て方向y1にスライドする。
このように、押出装置70は、駆動軸42の回転に同期して(軸回転角度に応じて)、プッシャ76の先端部77の位置を幅方向Yにおいて往来するように直線的に変位させる。また、軸回転角度0度において、プッシャ76の先端部77が最も突き当て方向y1の位置(最大ストローク位置Py1)に位置し、回転角度180度において、プッシャ76の先端部77が最も退避方向y2の位置(最小ストローク位置Py2)に位置することとなる。
上述の一連の動作において、押出装置70は、オフセット機構60により退避方向y2にオフセットされた平角線2を突き当て方向y1にして、平角線2の位置決めを行う。また、押出装置70は、後で説明するとおり、ガイドポスト116に干渉しないように切り出された平角線2を基準面114に到達するように平角線2を押す機能を有する。
次いで、図16等を参照しつつ供給装置90について説明する。供給装置90は、所定の長さとされた平角線2をストックしつつ、搬送装置20に平角線2をひとつずつ切り出して供給するためのものである。
図16に示すとおり、供給装置90は、供給部92と、切出部材91とを備えている。切出部材91は、可動プレート34と接触可能な位置となるように供給部92に取り付けられている。
供給部92は、幅方向Yに離間するように配置された一対の供給プレート91cにより平角線2を保持させて平角線2をストックすることができる。供給部92は、図16に示す外観を有している。
本実施形態の供給装置90では、供給部92が保持プレート24の長手方向の端部に形成されている(図5(c)参照)。より具体的には、図16に示すとおり、本実施形態の供給部92は、保持プレート24の上流A1側の端部に供給部形成部92aを形成し、供給部形成部92aに対して挟持プレート92bを取り付けることにより供給プレート91cを形成し、一対の供給プレート91cを幅方向Yに配置することにより形成されている。なお、本発明の加工装置は、供給部を保持プレートと別体のものに構成してもよい。
図17に示すとおり、供給部92(供給プレート91c)には、ストック領域93、払出領域94、ストッパー部95、及びスライド孔97が形成されている。
図17に示すとおり、ストック領域93は、供給プレート91cに取り囲まれるように形成された領域である。ストック領域93には、所定の長さとされた平角線2をストックすることができる。ストック領域93は、加工装置10の上下方向Hにおいて、保持凹部26が配置される位置よりも高い位置に形成されている。
図17に示すとおり、払出領域94は、供給部形成部92aと挟持プレート92bとの間の隙間(スリット)として形成されている。より具体的には、払出領域94は、ストック領域93から連続するように形成され、保持凹部26に向けて下り勾配となるような隙間として形成されている。また、払出領域94は、隙間の離間距離が、平角線2の短手方向の距離と略一致するように形成されている。そのため、ストック領域93に保持された平角線2が払出領域94の入口近傍に到達すると、払出領域94の傾斜に沿って上流A1側に傾斜した姿勢で滑り落ちるように自重で落下する。
さらに、供給部92には、払出領域94の下方側となる位置にストッパー部95が形成されている。ストッパー部95は、平角線2の短辺4bの長さと概ね一致するような段差として形成されている。そのため、ストック領域93から払出領域94を滑り落ちてストッパー部95に到達した平角線2は、ストッパー部95と接触して下方への移動が規制される。挟持プレート92bには、ストッパー部95の上方となる位置にストッパー部95を平角線2が乗り越えて切り出される際に、平角線2が干渉しないような凹状の部分が形成されている。
スライド孔97は、長孔の貫通孔として供給部形成部92aに形成されている。本実施形態の供給装置90では、二つのスライド孔97が下流A2側に傾斜するように並べて形成されている。スライド孔97は、払出領域94の傾斜と交差するように(略直交するように)形成されている。
切出部材91は、平角線2をひとつずつ切り出すために設けられている。図16に示すとおり、切出部材91は、略長方形の板状の部材とされている。図16に示すとおり、切出部材91の両端には、挿通部91aが設けられている。切出部材91は、挿通部91aをスライド孔97に挿通させることにより長手方向の両端が供給部92に取り付けられている。
切出部材91は、スライド孔97の軸線L4に沿って変位可能とされている。具体的には、切出部材91は、下方側の位置から、スライド孔97の軸線L4に沿って斜め上方(下流A2寄りの斜め上方)に変位可能とされている。
図18(a)に示すとおり、切出部材91が下方に位置する場合(払出領域94に到達しない高さとされている場合)には、払出領域94に位置する平角線2は、ストッパー部95に移動が規制された状態となる。
図18(b)に示すとおり、切出部材91が上方に移動して払出領域94に到達する高さとなると、切出部材91がストッパー部95と隣接する平角線2を上方に持ち上げる。これにより、平角線2はストッパー部95を乗り越えて、保持凹部26aに滑り落ちるように自重で落下する。このように、供給装置90は、平角線2をひとつずつ切り出して保持凹部26aに供給することができる。
また、切出部材91は、搬送体30のアゴ部98と接触可能な位置に配置されている。搬送体30が変位する際(搬送体30が上方に変位する際)に、搬送体30のアゴ部98が切出部材91と接触すると、切出部材91は上方に持ち上げられて払出領域94に到達し、平角線2が切り出される。
具体的には、図19に示すとおり、軸回転角度90度では、切出部材91から離れて位置していたアゴ部98は、搬送体30の変位に伴って軸回転角度150度に至ると切出部材91の持ち上げを開始する(図19(b)参照)。このように、供給装置90は、操作部44が正方向に回転操作された場合において、搬送体30による搬送開始(軸回転角度90度)よりも後(本実施形態では軸回転角度150度)のタイミングでアゴ部98が切出部材91を持ち上げる動作を開始する。
また、図19(g)に示すとおり、供給装置90は、操作部44が正方向に回転操作された場合において、搬送体30による搬送終了(軸回転角度270度)よりも前(本実施形態では軸回転角度175度)のタイミングでアゴ部98が切出部材91を持ち上げる動作を終了する。
すなわち、供給装置90は、搬送装置20に平角線2が保持されて、保持凹部26aに平角線2が保持されていない期間(軸回転角度90度から軸回転角度270度に至る間)において、平角線2を保持凹部26aに切り出す一連の動作を完了する。
続いて、プレス装置100(切削装置)について、図20等を参照しつつ説明する。プレス装置100は、平角線2の端部を切削して絶縁被膜3を除去する、あるいは平角線2の端部にC面を形成するために設けられている。
図20(a)に示すとおり、プレス装置100は、上型104及び下型106により構成される金型102を有している。また、上型104と下型106とは、プレス装置100の長手方向の両側(搬送方向Xの両側)に設けられたガイドポスト116により位置決めされている。
プレス装置100には、一対のガイドポスト116の中心を通る中心線C上となる位置に、複数の切削工程部108が形成されている。本実施形態の加工装置10のプレス装置100には、搬送方向Xに沿って5つの切削工程部108が形成されている。各切削工程部108には、それぞれ刃部110が設けられており、各切削工程部108において平角線2の基端B1側の端部の切削加工が行われる。
すなわち、本実施形態のプレス装置100は、一つの金型102の中に平角線2の端部を切削する複数の切削工程部108が設けられている。そのため、本実施形態の加工装置10は、平角線2を搬送方向Xに順送りしながら複数の切削工程部108を経由させて端部の切削加工を行うことができる。これにより、本実施形態の加工装置10は、切削工程ごとにプレス装置を設ける場合と比較して、装置全体のコストを大幅に削減することができる。
図20(b)に示すとおり、各切削工程部108には、平角線2の端部を接触させて平角線2を長手方向に位置決めするための位置決め部112が設けられている。また、位置決め部112には、平角線2の端面を接触させて位置決めするための基準面114が設けられている。
五つの切削工程部108は、上流A1側から下流A2側に向けて、第一切削工程部108a、第二切削工程部108b、第三切削工程部108c、第四切削工程部108d、第五切削工程部108eの順に並べて設けられている。
なお、本実施形態では、プレス装置100に5箇所の切削工程部108を設けた例を示したが、本発明の加工装置はこれに限定されない。具体的には、本発明の加工装置は、事前に準備される平角線に応じて、あるいは平角線の端部にC面を形成するか否か等に応じて、適宜設定することができる。例えば、本発明の加工装置の切削装置(プレス装置)は、切削工程部を2つ、あるいは3つとしてもよいし、6以上としてもよい。また、各切削工程部においてどのような切削加工を行うかについては、本実施形態に限定されず、いかなる順序で平角線の端部の切削加工を行ってもよい。
五つの切削工程部108は、保持位置Pxに対応する位置に設けられている。具体的には、図20(b)に示すとおり、第一切削工程部108aは保持位置Px2に、第二切削工程部108bは保持位置Px4に、第三切削工程部108cは保持位置Px5に、第四切削工程部108dは保持位置Px7に、第五切削工程部108eは保持位置Px9に、それぞれ対応する位置に設けられている。
各切削工程部108では、保持凹部26に保持された姿勢で平角線2の端部の切削が行われる。例えば、平角線2が傾斜した姿勢で保持されている切削工程部108では、平角線2の角部を切削して、角部に残存する絶縁被膜3を除去する加工が行われる(図21(a-1)の切削ラインS2,S3参照)。
また、平角線2が縦向き、あるいは横向きで保持されている切削工程部108では、平角線2の周面(長辺面2a、あるいは短辺面2b)を切削して絶縁被膜3を除去する加工、あるいは平角線2の端部にC面を形成する加工が行われる(図21(a-1)の切削ラインS1参照)。
さらに、平角線2が縦向き、あるいは横向きで保持されている切削工程部108では、平角線2の先端面の縁部を切削して、平角線2の先端面にC面を形成する加工が行われる(図21(a-2)の切削ラインS4、及び図21(a-3)の切削ラインS5参照)。
なお、本実施形態の加工装置10では、上述のとおり平角線2の周面のうち、短辺面2bの絶縁被膜3が除去された状態で供給される。本実施形態の加工装置10では、5つの切削工程部108において、切削工程部108ごとに平角線2の周面や角部の絶縁被膜3を除去するとともに、平角線2の端部にC面を形成して、平角線2の先端面が略カマボコ型の外観に形成される(図21(b)参照)。
ここで、上述のとおり、加工装置10では、一つのプレス装置100に設けられた複数の切削工程部108に対して、平角線2を順送りしつつ平角線2の切削加工を行う。供給装置90から切削工程部108に向けて搬送方向Xに沿って真っ直ぐ平角線2を搬送する場合を仮定すると、平角線2がガイドポスト116と干渉することとなる。
加工装置10は、供給装置90から切り出された平角線2は、ガイドポスト116と干渉しないように、他の保持位置Pxにおいて保持された平角線2よりも退避方向y2となるように供給される。より具体的に説明すると、図22(a)に示すとおり、供給装置90(図22では図示を省略)から保持位置Px1(保持凹部26a)に切り出された平角線2は、そのまま略まっすぐに搬送方向Xに移動したとしてもガイドポスト116と干渉しない位置(切出位置Py3)に切り出される。
さらに、加工装置10は、押出装置70のストローク量(変位距離D1)が十分確保されている。言い方を換えれば、加工装置10では、ガイドポスト116に干渉しないように退避させるように切り出された平角線2を、基準面114に到達するように押し出すことができるストローク量を備えている(ロングストローク化を実現している)。そのため、本実施形態の加工装置10は、一つのプレス装置100で複数の切削工程を行いつつ、ガイドポスト116と平角線2とが干渉する問題を解決している。
具体的には、図22(a)に示すとおり、平角線2は、基端B1側の端部がガイドポスト116の中心線Cから離れた位置(切出位置Py3)に切り出される。また、図22(b)に示すとおり、平角線2は、切出位置Py3から搬送装置20により退避方向y2に距離D2オフセットされて下流A2側に搬送される(図8等参照)。
図22(c)に示すとおり、押出装置70は、最小ストローク位置Py2から最大ストローク位置Py1までロングストロークを可能としている。そのため、ガイドポスト116から離れるように切り出された平角線2を、基準面114と接触する位置(当接位置Pt)に至るように押し出して位置決めすることができる。
このように、加工装置10では、プレス装置100に複数の切削工程部108を設けつつ、プレス装置100のガイドポスト116に平角線2が干渉しないように切り出した後、切削工程部108に至るように平角線2を押し出すことができる。
その結果、加工装置10は、切り出された平角線2をプレス装置100に順送りする際に、切り出された位置(切出位置Py3)から当接位置Ptに到達する位置まで平角線2を移動させる装置等、別途の機構を要さない。言い方を換えれば、加工装置10の押出装置70は、退避方向y2にオフセットされた平角線2を基準面114に突き当てる機能と、切り出された位置から当接位置Ptに到達する位置まで平角線2を移動させる機能とを兼ね備えており、これらの機能を実現するために別途の装置を設けることを要さない。
<加工装置全体の動作について>
続いて、軸回転角度に応じた加工装置10の各構成の動作を時系列で説明する。図23は、軸回転角度0度から駆動軸42が正回転して、軸回転角度90度、軸回転角度180度、軸回転角度270度を経て再び軸回転角度0度となり、その後軸回転角度90度に至るまでの間の、各構成の動作を示すタイミングチャートである。
図23に示すとおり、軸回転角度0度では、平角線2が保持体22に保持された状態となっている。軸回転角度0度から軸回転角度90度に至る過程において搬送体30が上昇して、軸回転角度90度から搬送体30による平角線2の搬送が開始される。
上述のとおり、加工装置10は、搬送体30により平角線2を下流A2側に搬送する際に、離間方向y2にオフセットされる。そのため、搬送完了の時点では、平角線2が搬送開始時の位置よりも退避方向y2にオフセットされて搬送される。これにより、加工装置10は、搬送された平角線2が位置決め部112に乗り上げるなど、搬送不良の発生を抑制することができる。
また、搬送体30により平角線2が搬送されている間(搬送中)は、保持凹部26に平角線2が保持されていない状態(保持凹部空き)となる。加工装置10は、保持凹部26に平角線2が保持されていない間に、保持凹部26aに供給部92から平角線2を切り出す。具体的には、加工装置10は、軸回転角度150度となるタイミングから軸回転角度170度となるタイミングの間に、アゴ部98が切出部材91を持ち上げて、平角線2を切り出す(図18、図19参照)。
搬送体30により平角線2の搬送が完了した後、加工装置10は、押出装置70を突き当て方向y1にストロークさせる。軸回転角度0度のタイミングにおいて、押出装置70は、プッシャ76を平角線2に押し当てて、平角線2を基準面114に押し付けて平角線2を幅方向Yに位置決めさせる。
平角線2の位置決めが完了した後に、プレス装置100による平角線2の切削加工が行われる。
上述のとおり、加工装置10は、搬送体30による平角線2の搬送動作に同期して、平角線2をオフセットさせるとともに、押出装置70や供給装置90を作動させる。言い方を替えれば、加工装置10は、一つの軸(駆動軸42)の回転に同期するように、平角線2の位置決めや平角線2の切り出しが行われる。
なお、上述の実施形態では、駆動軸42を操作部44の回転操作により回転させるものとした例を示したが、本発明の加工装置は、モータ等の動力源を用いて駆動軸を回転させるものであってもよい。