JP7265162B2 - 焼結排ガスのNOx低減方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、造粒水分を4.0~6.0%として焼結原料を造粒し、焼結原料を連続下方吸引式焼結機に供給し、コークス燃焼反応進行中の焼結ベッド表面へ5.0~90.0l/t-原料の水分を供給する焼結鉱の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、焼結原料として、4.0mass%以上の結晶水を含有する高結晶水鉄鉱石を含む鉄鉱石と、副原料と、燃焼反応の開始温度が450℃未満である低温燃焼固体燃料を10mass%以上含む固体燃料とを前記高結晶水鉄鉱石が前記焼結原料中に30mass%以上含まれるように配合する焼結鉱の製造方法が開示されている。特許文献1に記載の技術は、配合原料中の水分量と散水量との配分を適正化することによりNOx排出量の低減するものであり、特許文献2に記載の技術は、高結晶水鉱石と固体燃料(チャー)とを組み合わせて使用することにより、NOx排出量を低下させるものである。
(1)複数の銘柄の鉄鉱石を含む配合原料を用いて焼結鉱を製造する際に排出される焼結排ガス中のNOx排出量を低減する焼結排ガスのNOx低減方法において、
前記焼結排ガス中のNOx濃度を監視し、
監視する前記焼結排ガス中のNOx濃度が所定の閾値を超えた際に、前記複数の銘柄の鉄鉱石の配合割合を変更して、前記配合原料に含まれる全鉄鉱石の平均結晶水含有量を低くする、
ことを特徴とする焼結排ガスのNOx低減方法。
(2)前記焼結排ガス中のNOx濃度の実測値に基づいて求めた酸素濃度補正値を用いて、前記焼結排ガス中のNOx濃度を監視する、
ことを特徴とする(1)に記載の焼結排ガスのNOx低減方法。
(3)前記配合割合の変更は、前記複数の銘柄の鉄鉱石に含まれる少なくとも1銘柄の鉄鉱石を、前記複数の銘柄の鉄鉱石に含まれる他の銘柄の鉄鉱石に少なくとも部分的に置き換えることを含む、
ことを特徴とする(1)又は(2)に記載の焼結排ガスのNOx低減方法。
(4)前記配合割合の変更において、変更前と変更後における前記配合原料に含まれる全鉄鉱石中の平均SiO2濃度を維持する、
ことを特徴とする(1)から(3)のいずれか1つに記載の焼結排ガスのNOx低減方法。
ここで、「維持する」とは、変更前の全鉄鉱石中の平均SiO2濃度に対して変更後の全鉄鉱石中の平均SiO2濃度の差がSiO2の操業管理許容値以下となる範囲を言う。ここに、SiO2の操業管理許容値は0.1質量%、好ましくは0.03質量%、理想的には0.01質量%である。
鉄鉱石の銘柄毎に特有のNOx排出傾向を確認するため、5種の銘柄の鉄鉱石(鉄鉱石A~鉄鉱石E)を単味で配合した5つの実験(実験1~実験5)を実施した。実験1~実験5は、焼結機での焼結現象を模した小型(直径100mm)の焼結鍋試験により行った。
表1は、実験1~実験5で用いた焼結用の各原料の配合割合を示す。表1に示すように、返鉱および炭材を除いた新原料(鉄鉱石、石灰石、生石灰、および橄欖岩)を100質量%として、返鉱と炭材の配合割合を、それぞれ外数で、15.0質量%、4.5質量%とした。
各焼結用原料を、表1に示す配合割合で混合した配合原料を造粒し、造粒した原料造粒物を焼成した。主要な実験装置は表4に示す通りである。
ガス分析には堀場製作所ポータブルガス分析計PG-350を用いた。NOx濃度は、化学発光式分析ユニット、酸素濃度はジルコニア式分析ユニットを用いて測定を行った。
表5の最右欄に、後述する式(1)により、測定したNOx濃度および酸素濃度から算出したNOx濃度(O2=15%補正値)を示す。また、図1は、表5の結晶水含有量と、NOx濃度(O2=15%補正値)との関係を示すグラフである。図1に示すように、結晶水含有量とNOx濃度(O2=15%補正値)とには相関関係があり、鉄鉱石中の結晶水含有量が低くなるほど、焼成により発生するNOx濃度(NOx排出量)は低減する傾向があることが確認された。また、図1より、鉄鉱石中の結晶水含有量を1%低くすることにより、NOx濃度が約5ppm低下することが分かった。
(焼結機の操業)
焼結鉱の原料は、鉄鉱石(複数の銘柄の鉄鉱石が配合される。ここでは、配合後の鉄鉱石を均鉱と呼ぶ)、雑原料(スケール、ダストなどの鉄分を含有するリサイクル原料)、副原料(石灰石、橄欖岩などの焼結鉱中のCaO成分、MgO成分を調整するための原料)から成る新原料と、炭材(コークス、無煙炭などの焼結反応の熱源となる原料)、および返鉱(成品の篩下を循環使用するもの)とである。なお、焼結機における焼結鉱の製造方法は、上述した通り([0002]参照)であるので、ここでは、その説明を省略する。
鉄鉱石の配合割合(ここでは、均鉱(全鉄鉱石)に対する質量比率で表す)は、例えば、各鉄鉱石銘柄の入荷量、価格、焼結鉱のSiO2およびAl2O3の目標成分組成を勘案して決定される。副原料の配合割合(ここでは、新原料に対する質量比率で表す)は、焼結鉱のCaOおよびMgO成分の実績推移を見ながら随時調整される。炭材と返鉱の配合割合(ここでは、新原料に対する質量比率を外数で表す)は、焼結操業状況(歩留、生産性、焼結鉱品質の状況)に応じて随時調整される。なお、炭材または返鉱の配合割合の変更による焼結鉱の化学成分の変化は無視できるレベルであるので、炭材または返鉱の配合割合の変更に合わせて副原料の配合割合を変更する必要はない。
焼結機実機から排出される焼結排ガス中のNOx濃度(実測値)は、メインブロアから煙突までの間に設置されたNOx分析計(化学発光法)によって連続的に測定される。また、焼結排ガス中の酸素濃度(実測値)は、ジルコニア式分析計、ガルバニ電池式分析計、磁気ダンベル式分析計等によって連続的に測定される。
測定されたNOx濃度(実測値Cs)と酸素濃度Osに基づいて、下記式(1)を用いて、補正後のNOx濃度(酸素濃度補正値C、以下、NOx濃度監視値ともいう)を算出する。NOx濃度(実測値Cs)は、燃焼排ガスの希釈度(漏風量)により値が変化するため、所定の酸素濃度(標準酸素濃度)におけるNOx濃度(酸素濃度補正値C)が、排出基準などの規制値との比較対象とされている。焼結機においては、規制値との比較対象となる値は、焼結排ガス中に残留する標準酸素濃度が15%となるように、下記式(1)を用いて補正した値である。
C=(21-On)/(21-Os)×Cs・・・式(1)
C : 酸素濃度補正後のNOx濃度 ( ppm )
Os : 排出ガス中の酸素濃度 ( 当該濃度が20%を超える場合は20%とする。)
On : 標準酸素濃度 ( % ) ※焼結機の場合は15%
Cs : 排出ガス中のNOx実測値( ppm )
算出されたNOx濃度監視値が、操業管理値を超えた場合、均鉱中の鉄鉱石の配合割合を変更する。算出されたNOx濃度監視値が、操業管理値以下である場合、鉄鉱石の配合割合を変更することなく操業を続ける。
一方、NOx濃度監視値が操業管理値を超えた場合、複数の銘柄の鉄鉱石の配合割合を変更して、均鉱の結晶水含有量を低減させる。複数の銘柄の鉄鉱石の配合割合の変更は、例えば、配合原料中の少なくとも1銘柄の鉄鉱石のうちの少なくとも一部を、より結晶水含有の少ない他の少なくとも1銘柄の鉄鉱石へ置き換えることによる。この操作で均鉱の結晶水含有量を低くすることができ、焼結排ガス中のNOx濃度(NOx濃度監視値)を低くすることができる。配合原料中の複数の銘柄の鉄鉱石の配合割合の変更は、NOx濃度監視値が操業管理値以下となるまで、繰り返される。
CW=Σ(Xi×CWi)/100・・・式(2)
CW:鉄鉱石の平均の結晶水含有量(質量%)
Xi:鉄鉱石iの配合割合(質量%)
CWi:鉄鉱石iの結晶水含有量(質量%)
なお、本願では、鉄鉱石中の結晶水を対象としているので、その平均は鉄鉱石(均鉱)の範囲となる。すなわち、ΣXi=100(質量%)である。
以下に、上記鉄鉱石の配合割合の変更について、表5に示した5銘柄の鉄鉱石(鉄鉱石A~鉄鉱石E)を、原料の鉄鉱石として配合して焼結鉱を製造している場合を例にして、具体的に説明する。
このような置き換えによりNOx濃度監視値が、操業管理値以下となった時点で置き換え操作(鉄鉱石の配合割合の変更)を終了する。
実施形態2は、上記実施形態1において、さらに、鉄鉱石の配合割合の変更前後において、均鉱のSiO2濃度がほぼ一定となるように、配合割合を変更する方法である。表7は、実施形態2の一例の鉄鉱石の配合割合の変更を示す。表7に示すように、鉄鉱石A(SiO2濃度4.6質量%)を減配する場合、鉄鉱石C(SiO2濃度3.3質量%)と鉄鉱石D(SiO2濃度8.2質量%)とを約2:1の比率で増配する。すなわち、24質量%の鉄鉱石Aを、2/3の16質量%の鉄鉱石Cと1/3の8質量%の鉄鉱石Dとに置き換える。均鉱中のSiO2濃度を維持しつつ、鉄鉱石の結晶水含有量を低減できる。具体的には、この鉄鉱石の配合割合の変更により、均鉱の結晶水含有量が1.2%低下し、図1より、NOx濃度監視値が6ppm低減することが期待できる。
実施形態1に比較して、配合割合変更の前後で均鉱のSiO2濃度を一定とすることで、副原料の配合変更を同時に行う必要がないので、焼結鉱の成分変動を抑制しやすい。
実施形態1および2ともに鉄鉱石の配合変更を均鉱内に留めかつ鉄鉱石の置換を「等量」とした。すなわち新原料に対する均鉱の比率が一定の例である。これによって、鉄鉱石の配合変更にともなう焼結鉱の成分変動が比較的低減できるので、好ましい実施形態となる。一方、本願発明の効果は、配合原料での鉄鉱石由来の結晶水の入量(配合原料中の鉄鉱石由来の結晶水の比率)が低減していれば、発現する。従って、実施形態1および2で鉄鉱石の置換を「等量」としたが、その限りではない。この場合に、均鉱の比率が新原料に対して変わることになるが、これは副原料の比率を同時に変えることとなり、焼結鉱の塩基度やMgO含有量を大きく変える。均鉱の比率をどの程度まで変更可能かは、高炉スラグの成分が所望の範囲になるかどうかで判断する。
また、本実施の形態においては、操業管理値を規制値よりも低い値としたが、操業管理値は規制値以下の値であればよい。また、監視対象である焼結排ガス中のNOx濃度は、NOx濃度の実測値、または、この実測値に基づいて求められた値(例えば、酸素濃度補正値)であればよい。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
Claims (4)
- 複数の銘柄の鉄鉱石を含む配合原料を用いて焼結鉱を製造する際に排出される焼結排ガス中のNOx排出量を低減する焼結排ガスのNOx低減方法において、
前記焼結排ガス中のNOx濃度を監視し、
前記焼結排ガス中のNOx濃度が所定の閾値を超えた際に、前記複数の銘柄の鉄鉱石の配合割合を変更して、前記配合原料に含まれる全鉄鉱石の平均結晶水含有量を低くする、
ことを特徴とする焼結排ガスのNOx低減方法。 - 前記焼結排ガス中のNOx濃度の実測値に基づいて求めた酸素濃度補正値を用いて、前記焼結排ガス中のNOx濃度を監視する、
ことを特徴とする請求項1に記載の焼結排ガスのNOx低減方法。 - 前記配合割合の変更は、前記複数の銘柄の鉄鉱石に含まれる少なくとも1銘柄の鉄鉱石を、前記複数の銘柄の鉄鉱石に含まれる他の銘柄の鉄鉱石に少なくとも部分的に置き換えることを含む、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の焼結排ガスのNOx低減方法。 - 前記配合割合の変更において、変更前と変更後における前記配合原料に含まれる全鉄鉱石中の平均SiO2濃度を維持する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の焼結排ガスのNOx低減方法。
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