JP7264462B2 - 生体センサ - Google Patents

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Description

本発明は、ノイズが少ない高感度の生体センサに関するものである。
レーザドップラ血流計の基本原理となるLDF(Laser Doppler flowmetry)法は、レーザ光照射に伴う生体組織からの後方散乱光スペックルにより非侵襲に微小循環血流を計測可能な方法として1980年代初頭から盛んに研究され始め、現在ではレーザ血流計という一般名称で商品化されている。最近では、皮膚科学研究や微小循環血流メカニズム解明などの医学系研究に用いられるのみならず、皮膚血流が交感神経支配であることを利用した自律神経機能障害などの臨床診断用途にも用いられるようになっている。糖尿病患者の末梢循環障害や閉塞性動脈疾患などによって発症する下肢の血行不全状態の診断などにも応用が進み、その有用性が認識されつつある。生体情報のウェアラブル計測は、健康管理や予防医学、または運転中やスポーツ中の危険防止などの観点から要望が高い。特に、血流量センサは、レーザ光を用いて末梢組織血流量を非侵襲に測定でき、臨床医用の分野において新たな治療指標として注目されている。また非侵襲モニタであることから、自動車や電器、化粧品、入浴剤、繊維メーカー等の研究部門において快適性などの生理学的研究に用いられるなど、医学以外の分野にもその応用が広がっている
近年、MEMS(Micro-electro-mechanical systems)加工技術を用いて作製した微小な集積型レーザドップラ血流センサデバイスをプローブ先端部へ搭載することによってファイバを廃し、バッテリー駆動と信号処理部等システム部分の小型化設計によりシステム全体を身体に装着可能としたウェアラブルな携帯型レーザ血流計が実現されている。従来では考えられなかった運動時や日常生活時などの動的環境下において安定した末梢血流計測が可能になる。また、より振動に強い脈波センサとしても有望であることが報告されている。この研究成果に加え、最近、医学分野の研究者からも微小循環(末梢血管)が注目されるようになり、集積型レーザドップラ血流センサを搭載した携帯型レーザ血流計の今後の実用化と応用拡大が期待されている。
しかし、医療分野でも常時モニタリングやヘルスケアへの適用を考慮する上で、装置の小型化、高感度化ならびに使用中に目に光が入ることによる生体への損傷等を防止するには光(レーザ光)の低出力化を実現する必要がある。そのためには、レーザ光のガウシアン形状の強度分布の中心部における光強度の高い部分を利用することが、小型化、高感度化ならびに発光の低出力化の課題を解決する方法の一つである。
発光素子と受光素子の両素子を接近させ、装置の小型化、光強度分布の中央付近の強度の高い光を有効利用することは、小型化、高感度化ならびにレーザ光の低出力化の問題を解決する方法として有望であるが、被測定対象の生体の表面での反射光など、生体内部から以外の光が直接ならびに迂回してノイズとして受光素子に入るために高いSN比の信号を得ることができなかった。
生体表面での反射に関しては、理論上は、生体表面と接触するガラス等透明体の屈折率差が小さければ、生体表面での反射を防ぐことが可能であるが、現実は生体の屈折率は被測定対象の生体によって大きくばらつきが大きく、生体表面での反射はノイズとして検出されるので無視できない課題である。
特許文献1は発明者らによる先行技術であり、ピンホール(導光部)を受光素子の受光面上に載置することで発光部と受光部とを隔てる障壁を省略する可能とする技術が開示されている。この際、ピンホールを受光面に隙間無く連結することで受光部への散乱光の回り込み等を防止するために、ピンホールを載置した後、遮光性液体でピンホールと受光素子の外面等を覆い、乾燥させるポッティングを行う。しかしながら、小型血流量センサの場合は発光素子と受光素子とが近接するため、ポッティングによる遮光層が薄いため、発光素子から出射される自然光等の受光素子への透過を完全に防ぐのが困難であり、発光素子のレーザ光を出力が1mWでも透過光を受光素子の暗電流の1.5倍以内に抑えるのがやっとであり、高感度の血流量センサとすることが難しかった。
特許第4061409号(特願2004-324937)
R. Inoue, H. Nogami, E. Higurashi, R. Sawada, A New Extremely Small Sensor for Measuring a Blood Flow and a Contact pressure Simultaneously, 2017 International Conference on Optical MEMS ad Nanophotonics (OMN), Session We-3
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、生体の表面(皮膚)からの直接反射光や光学素子からの光が直接あるいは迂回して受光素子にノイズとして入ることを確実に防止し、光学素子の出射光の光強度分布の強度の高い中央部付近の光を有効に利用可能とすることで、ノイズの少ない高感度の血流量センサを提供することを目的とする。
以上のような課題を解決するために、本発明の第1の態様による生体センサは、発光素子からの光で生体を照射した際に発生する生体内部組織からの散乱光を検出することで生体情報を得る生体センサにおいて、前記散乱光が受光素子に到達する前にピンホールからのみ透過させ、ピンホール以外から光を透過させないように、ピンホール以外を遮光した構造体で前記受光素子の上面及び側面を覆うとともに、ピンホールの深さ方向が生体表面の法線と平行になるように配置され、前記発光素子からの前記光の一部が生体表面で反射して前記ピンホールに入射する反射光の生体表面での反射角θが、前記ピンホールのアスペクト比でd/hにより制限される角度θth=Arctan(d/h)よりも大きいことを特徴とする。ここで、θは前記反射光が前記生体表面の法線となす角度、dは前記ピンホールの幅、hは前記ピンホールの深さである。
上記のような構成とすることで、前記生体表面(皮膚)で反射したいかなる光も前記ピンホールを通して直接前記受光素子に入ることはない。これにより生体の表面(皮膚)からの直接反射光が直接受光素子にノイズ光として入ることを確実に防止することができ、ノイズの少ない高感度の生体センサを実現できる。
本発明の第2の態様による生体センサは、発光素子からの光で生体を照射した際に発生する生体内部組織からの散乱光を検出することで生体情報を得る生体センサにおいて、キャビティ構造の基板凹部内に発光素子と受光素子とを配置し、さらに前記基板凹部内において前記散乱光が受光素子に到達する前にピンホールからのみ透過させ、ピンホール以外から光を透過させないように、ピンホール以外を遮光した構造体で前記受光素子の上面及び側面を覆うとともに、ピンホールの深さ方向が生体表面の法線が平行になるように配置され、前記生体との接触面積を一定にするための透明突起部を上面とした透明材料で前記基板凹部を封止し、前記発光素子からの前記光の一部が生体表面で反射して前記ピンホールに入射する反射光の生体表面での反射角θが、前記ピンホールのアスペクト比d/hにより制限される角度θth’=Arcsin(sin(θth)/n)よりも大きいことを特徴とする。ここで、θは前記反射光が前記生体表面の法線となす角度、θth=Arctan(d/h)、dは前記ピンホールの幅、hは前記ピンホールの深さ、nは前記透明材料の屈折率である。
上記のような構成とすることで、前記生体表面(皮膚)で反射したいかなる光も前記ピンホールを通して直接前記受光素子に入ることはない。これにより生体の表面(皮膚)からの直接反射光が直接受光素子にノイズ光として入ることを確実に防止することができ、ノイズの少ない高感度の生体センサを実現できる。
前記第1と第2の生体センサにおいて、前記受光素子並びに遮光構造体を載置する部位の下地は、前記発光素子並びに前記受光素子をマウントするための金属膜と同じ金属膜あるいは他の材料で遮光することを特徴とする。
上記のような構成とすることで、受光素子下部からの自然光等のノイズ光の受光を確実に防止することができ、ノイズの少ない高感度の生体センサを実現できる。
上記のような構成とすることで、前記発光素子からあらゆる方向に出射される自然光の受光することを防止することができ、ノイズの少ない高感度の生体センサを実現できる。
前記生体センサにおいて、前記発光素子は、ガウシアンビームを出射する面発光レーザであることを特徴とする。
上記のような構成とすることで、前記発光素子と前記受光素子とを接近配置が可能となり、小型の生体センサを実現できる。
本発明は、生体表面(皮膚)での直接反射光であるノイズ光の受光を抑止し、血管等のある生体内部からの散乱光のみを受光素子で受光可能とするために、所定の幾何学的条件を満たす高アスペクト比のピンホールを形成した遮光構造体で受光素子を覆うことで、光学素子(半導体レーザチップ)と受光素子(フォトダイオードチップ)を接近させて配置可能とすることを特徴とする。これにより、発光素子から出射される中央部付近の光を有効に利用可能となり、従来と比較して大幅にノイズの少ない高感度の血流量センサを実現できる。
本発明の血流量センサは、小型、低レーザ出力で、高い血流量信号出力(高いSN比信号)を得ることができる利点がある。
本発明の第一実施形態に係わる血流量センサの概略構成を示す断面も式図 図1の発光素子2、受光素子14付近を拡大した図 ピンホールのアスペクト比に対するLthと光ビームの中央部の光ビーム強度に対しての強度割合 本発明の第2実施形態に係わる血流量センサの概略構成を示す断面も式図 透明突起を形成したガラスにより光学素子を内蔵した凹部を封止した構造でのθ=θthとなる場合の設計値と各センサ設計A、B、Cの条件を表示したグラフ。設計Aは本発明を適用しない従来法、BとCは本発明を適用した実施例を示す。
本発明ではレーザ光の強度分布で最も強度がある中央部付近の光を使用し、生体表面(皮膚)からの直接反射を抑止するという目的を、最小の部品点数で、光学系構成部品を大きくすることなく実現した。
以下、本発明のセンサ部及び生体センサを、その実施形態に基づいて説明する。以下においては、生体センサの一例として血流量センサに用いた場合について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係わる血流量センサの概略構成を示す断面も式図である。血流量センサ1は発光素子2から出射した光の一部の光3が、血流量センサと生体間に配置された透明ガラス平板等(図示せず)を介して生体表面(皮膚)4で反射後(反射光5)受光素子14に向かって進む。他の光は生体内部6に拡散した後、生体内の血液7や静止組織8で反射し散乱する。その散乱光9と生体の静止組織8からの散乱光10の干渉光11が遮光構造体12に形成したピンホール13を通して、受光素子14で受光される。受光出力をフーリエ変換した後、血流量に比例するパワースペクトルの一次モーメントを算出する。また、発光素子からは、血流量の測定に有効な高い方向性を有する可干渉なレーザ光の他、ノイズ光となりうる、あらゆる方向に)出射する自然光14も出射される。図1では生体表面の法線とピンホールの深さ方向(長手方向が互いに平行の場合を示している。
また、一般に発光素子(面発光レーザ)から出射する光の強度はガウシアン分布で近似される分布16を有し、発光素子(面発光レーザ)のレーザ光の光軸方向に対する広がり角度の関数としてあらわされ、中心部すなわち広がり角度がゼロ(光軸)17での光強度が最も高く、広がり角度が大きくなるにつれて強度は低下する。生体表面での反射位置が強度の高い中心部付近(中心部付近より若干ピンホール側に広がった角度)の位置になるようにすれば、強度の高い光を有効に使用できるが、生体表面からの反射光が直接ピンホールに入る場合、血流量信号成分を相対的に大幅に低下させることになり、かえってSN比の劣化を招く。
従って、SN比(Signal/Noise、 ノイズに対する信号出力比)を高めるには、できるだけ中心部付近の高い強度の光を使用し、かつ生体表面からの直接反射光がピンホールを通って受光素子に到達しないようにすることが必要である。
図2は図1の発光素子2、受光素子14付近を拡大した図であり、生体表面の法線とピンホールの深さ方向(長手方向)が互いに平行の場合を示し、発光素子2から出射した光3の生体表面(皮膚)4で反射した光5がピンホール13を通って受光素子14にて受光される様子を示した説明図である。本発明の主体は光学系の実装方法にあるので、電子、機構系の説明は省略する。
(数1) θth =Arctan(d/h) (1)
上記の数式1におけるθth、dおよびhを表1に示す。ここで、dは実際に光を受光面上で受光する領域の幅で、hは反射光がピンホールに入る入口と受光面までの距離である。図2において、Etlはピンホール13の上部の左端、すなわちピンホール入口で生体からの反射光が入射する側のエッジ、Ebrはピンホール13の下の右端、fはEtlとEbrを結ぶ直線が受光素子14の受光面と交じあう点である。gはEbrから受光面に垂直におろした直線が受光面と交じ合う点である。dはピンホール13の幅d0と、gとfを結ぶ線分の長さl(g、f)との和である。hはピンホール13の深さh0とEbrとgを結ぶ線分(ギャップ)の長さl(Ebr、g)との和である。受光面がgとfを結ぶ線分の長さl(g、f)より小さい場合、すなわち、受光面の端(受光可能な活性層がある部分と受光可能な活性層がない部分の境界)がfよりピンホールの中心側にある場合には、dは実際に受光する領域の幅であるので、ピンホールから見た際にみられる受光面の端の位置により決定される。表1には、ピンホールのエッジEbrで起こる光の回折現象を無視できるものとして、また、実際上受光面の制御が容易である、受光面がピンホールの径d 0 に対し十分広い場合、すなわち、受光面の端が図2のfの位置よりもピンホールと反対側の位置にある場合について説明している。図2に示すように受光面がピンホール13の幅d 0 と、gとfを結ぶ線分の長さl(g、f)との和よりも大きい場合には、ピンホールのエッジEbrでの回折現象が無視できる場合、d/hはd0/h0で近似できる。角度θthは発光素子2からの出射光の一部の光が生体表面4にて反射された後、ピンホール13を通って受光される限界の角度を示す。Lは発光素子2の出射口位置とピンホール13の中心軸位置との距離で、生体表面4での反射角θがθthでピンホール13に入射するときの発光素子2の出射口位置とピンホール13の中心軸位置の距離Lを特にLthとする。LをLthよりも大きくすると、生体表面4で反射したいかなる光もピンホールには入ることはない。なお、図2では発光素子2の光軸とピンホール13の長手方向が互いに平行であるが、発光素子2の光軸がピンホール13の長手方向に対して傾いている場合にも、前記受光される限界の角度は、発光素子2の光軸の傾き角度とは無関係で、出射光と生体表面4の法線となす角度θによりのみ決定される。なお、発光素子2から出射した光は、血流量センサと生体間に配置された透明ガラス平板等を介して生体表面(皮膚)4に到達するが、ここでは平板内部雰囲気との屈折率差は無いものとして説明した。
Figure 0007264462000001
ピンホール13の穴の径を小さくすることによりアスペクト比を高めることができるが、ピンホール径を小さくすると受光される光量が低下し、受光部14の暗電流と同等程度まで光量が低下すると、信号が微弱となり、ノイズが増えるためにピンホール径を小さくするには限界がある。一方で、散乱光による干渉の結果発生するスペックルパターン(斑点)のサイズにも依存するため、ピンホール径を大きくしすぎると、生体からの散乱光9に基づいた血流量の変動に関する信号変化が小さくなり、血流量信号検出感度が低下(悪化)する。ピンホール径は通常、小型の携帯可能のセンサでは、レンズ等の光学系を設けない場合には、30μmから200μmの範囲である。
一般に、生体内の血管にある血液7からの反射散乱光9は、組織内を透過し微弱化すると同時に、血管内の血液でほんの一部の光が散乱光として生体外の受光素子14に入るために非常に微弱光である。従って、発光素子(面発光レーザ)2から出射され、直接生体の表面(皮膚)4にて反射する光5がピンホール13を通って受光素子14に入る光ならびに発光素子2からあらゆる方向に向かって発光する自然光、言い換えれば生体の内部から以外の光や散乱光の受光を抑止することが、取りもなおさず感度(SN比)を高めることになる。
拡散角θが<Arctan (d/h)のとき、生体表面(皮膚)4からの反射光5が直接ピンホール13を通して受光素子14の受光面に到達することになり、相対的に血管の血液からの散乱光9の強度を低下させる。そこで、ピンホール13の位置を発光素子(面発光レーザ)2から離すこと、あるいは同じピンホール13の位置でh/dを大きくする、すなわち、θ>θthのとき、生体表面(皮膚)4からの反射光5が受光面に入ることを防ぐことができる。言い換えれば、生体表面(皮膚)4からの反射光5は一切ピンホール13を通って受光されることはない。一方、発光素子(面発光レーザ)2の中央部付近の強度が高い光を利用するには、ピンホール13の位置を発光素子(面発光レーザ)2に近づけて、θを小さくする必要がある。このように、生体表面(皮膚)4からの直接反射光5が受光面入らないようにした上で、かつ発光素子(面発光レーザ)2の中央部の強度の高い光を使用するためにはθthを小さく、すなわちh/dを大きくする必要がある。
θ>θthの時、発光素子(面発光レーザ)2と高アスペクト比のピンホール13を有する受光素子14を近づけることにより、発光素子(面発光レーザ)2の高い強度の光を有効に使用でき、生体表面(皮膚)4からの反射光5を抑止できる効果があるのは前述したが、発光素子(面発光レーザ)2と高アスペクト比のピンホール13を有する受光素子を近づける際には、特に皮膚4からの反射光4の他にもう一つ生体からの散乱光とは無関係の光、例えば、レーザ2からあらゆる角度に拡散される自然光15(レーザ光の出射の際に必ず自然発光も起こる)やレーザ光の一部が装置内部で反射した光が受光素子14に入ることを防ぐ必要がある。これらの光は高アスペクト比のピンホール13を有する構造体12を遮光体にすることにより、ピンホール13以外からの光が入らないようにすることができる。
図3に、ピンホール13のアスペクト比を変化させたとき、皮膚4への反射角θ=θthおけるレーザ2の出射光位置とピンホール13の中心軸位置間の距離、ならびにθthにおける光ビームの中央部17の光ビーム強度に対しての強度割合を示す。θthは数式1で与えられる。
本発明を実施するために、図4に示すように、キャビティ構造のセラミック基板19で形成した凹部の中にある発光素子2ならびに受光素子14等を気密封止ならびに生体との接触部の面積を一定にするために透明突起21を上面とした面が平行の透明ガラス(屈折率n=1.53)20によって凹部を封止した構造のセンサを作製した。この場合、ピンホール13によって反射光5を抑止できる限界の生体表面4における反射角度θth’は前述のガラス20がない場合の数式1のθthではなく、下記の数式2で表される。なお、nは透明ガラスの屈折率である。
(数2)θth’=Arcsin (sin(θth)/n) (2)
使用したピンホール13を形成した遮光構造体12はシリコンをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて深堀エッチングにより作製し、シリコンだと近赤外を透過するので遮光のため外壁を約300nmの厚さのTiターゲットをスパッタリングプロセスでコートした。使用した最も高アスペクト比のピンホール13はd0(径)50μm、h0深さ)700μmである。
ここで受光素子14の限界入射角θthを決めるパラメータhとdの比(すなわち実際に受光素子の受光面上で受光する領域の幅d、受光面とピンホール上部の深さhで割った値)は、前述しているように受光面がピンホールに対し十分広い場合、また、ピンホール下部がほぼ受光面に接近していることからピンホールのエッジEbrでの回折による光の広がりが無視できるので、h/d≒h0/d0と近似した。
この場合、数式1からθth=Arctan(50/700)=4.1度である。透明突起21と生体表面4の境界での反射角θthはArcsin (sin(θth)/n) = 2.6度である。使用した受光素子14は、暗電流20nAのフォトダイオードチップ、発光素子2として、波長860nm、e2分の1の広がり角度10度の発光素子(面発光レーザ)チップである。
ここで、本発明を適用しない従来法と、従来法に本発明の数式1の条件を適用した場合、ならびに高アスペクト比のピンホールを使用すると同時に、本発明の数式1の条件を適用した場合の3例の血流量センサを評価比較した結果を表2に示す。
ピンホール13を受光素子14の受光面上に載置(マウント)する従来法だと、ピンホールを載置した後、遮光液体でピンホール並びに受光素子を覆い乾燥させるポッティングという工程が加わる。その上に、小型のセンサの場合には受光素子と発光素子が近接するため、両者の間をポッティング液で両者間を埋めた場合の厚さが薄いため、発光素子から出射される自然光等の受光素子への透過を完全に防ぐのが困難で、発光素子のレーザ光を1mWの出力で発振させるだけで、透過光の受光を暗電流の1.5倍以内に抑えるのがやっとであった。一方で、本実施例に使用したTi-コートしたシリコン構造体を使用すると、ほぼ検出限界の暗電流検出となり、発光素子から出射されるあらゆる方向に出射される自然光も含めた光が遮光されているのが確認できた。
また、これまでは、1)皮膚からの反射光をできるだけ受光しないように、受光素子をレーザ出射位置から離して配置させるか、2)あるいは、発光素子と受光素子を接近させたときに、生体表面(皮膚)からの反射光を含め受光した大きなDC成分が加わった信号から血流量に関わる成分のみを取り出す高度な信号処理を行っていた。
指を一定の接触圧で突起21に当てて測定した場合、Bのセンサにおいて、生体で反射された光5がピンホール13に入らないような位置、すなわちθ>θthを満足した位置関係となるようにピンホール13を形成した遮光構造体12で受光素子14を覆うことにより、θ<θthの場合と比べ7倍ほど向上させることができた。一方、高アスペクト比のピンホール13を形成した遮光構造体12で受光素子14を、θ>θthを満足した位置関係となるように覆ったセンサCは、遮光効果とVCSEL出射光の強度分布における高い強度の光利用が可能となり、従来法と比べSN比を51倍向上させることができた。
さらに、受光部14並びに遮光構造体12を載置する下地は、受光素子14をマウントする金属膜と同じ金属膜(例えば、NiとAuの2層)22を形成しておくことにより、下部からの光の受光を防ぐことができる。
Figure 0007264462000002
数式1と数式2は前述したように、出射光の光軸の傾きとは無関係に成立する。そこで、光軸を若干ピンホール13側に傾けることによりレーザ光出射位置とピンホール中心軸の位置の距離を接近させなくても接近させたと同様に、生体表面(皮膚)4からの反射光5を受光することなく出射光の強度が高い中央部の光を利用することができる。光軸を傾けた場合でも、傾けていない場合と同様に、生体表面4からの反射光5が受光素子14に入射する角度θとピンホール13のアスペクト比等で求められるθthにより反射光5による影響の除去効果が決まる。傾けることによりSN比の大幅な改善があるのは確かであるが、その傾ける最適な角度については、生体の状態に大きく依存することもあって予め求めることは実際上難しい。本実施例では発光素子(VCSEL)チップを約0.5度、ピンホール形成構造体側へ傾けた結果、SN比がおよそ3倍向上した。
本発明を適用することにより、より高感度で、小型化の血流量センサを実現できるために、より精度よく血流量や脈波高さの変化により炎天下時における作業や運動における脱水症、糖尿病時における抹消血流量の変化や運動時における血流量の変化の検知にも適用できる。
1 センサ
2 発光素子(面発光レーザ) チップ
3 発光素子から出射した光
4 生体表面(皮膚)
5 生体表面で反射した光
6 生体
7 血管内の血液
8 生体内の静止組織
9 血液で反射した散乱光
10 静止組織で反射した散乱光
11 血液で反射した散乱光と静止組織で反射した散乱光
12 遮光構造体
13 ピンホール
14 受光素子(フォトダイオード)チップ
15 発光素子からあらゆる方向に出射する自然光
16 発光素子から出射される光の強度分布
17 光の強度分布で最も強度が高い中心部(光軸方向)
18 生体表面で反射する光の強度
19 凹部を形成するセラミック基盤
20 封止ガラス
21 接触面積を一定にするための透明突起
22 金属膜

Claims (4)

  1. 発光素子から出射した光を外部の生体に向かって照射した際に発生する生体内部組織からの散乱光を受光部で検出することで生体情報を得る生体センサにおいて、前記散乱光が受光素子に到達する前にピンホールが配置され、そのピンホール以外から光を透過させないように、ピンホール以外を遮光した構造体で前記受光素子の上面及び側面を覆うとともに、ピンホールの深さ方向が生体表面の法線と平行になるように配置され、前記発光素子からの前記光の一部が生体表面で反射して前記ピンホールに入射する反射光の生体表面での反射角θが、前記ピンホールのアスペクト比d/hにより制限される角度θth=Arctan(d/h)よりも大きいことを特徴とする生体センサ。ここで、θは前記反射光が前記生体表面の法線となす角度、dは前記ピンホールの幅、hは前記ピンホールの深さを示す。
  2. 発光素子から出射した光を外部の生体に向かって照射した際に発生する生体内部組織からの散乱光を受光部で検出することで生体情報を得る生体センサにおいて、キャビティ構造の基板凹部内に発光素子と受光素子とを配置し、さらに前記基板凹部内において前記散乱光が受光素子に到達する前にピンホールが配置され、そのピンホール以外から光を透過させないように、ピンホール以外を遮光した構造体で前記受光素子の上面及び側面を覆うとともに、ピンホールの深さ方向が生体表面の法線と平行になるように配置され、前記生体との接触面積を一定にするための透明突起部を上面とした透明材料で前記基板凹部を封止し、前記発光素子からの前記光の一部が生体表面で反射して前記ピンホールに入射する反射光の生体表面での反射角θが、前記ピンホールのアスペクト比d/hにより制限される角度θth‘=Arcsin(sin(θth)/n)よりも大きいことを特徴とする生体センサ。
    ここで、θは前記生体表面の法線となす角度、
    θth=Arctan(d/h)、
    は前記ピンホールの幅、hは前記ピンホールの深さ、
    nは前記透明材料の屈折率。
  3. 前記受光素子並びに遮光構造体を載置する部位の下地は、前記発光素子並びに前記受光素子をマウントするための金属膜と同じ金属膜あるいは他の材料で遮光することを特徴とする請求項1と2のいずれかに記載の生体センサ。
  4. 前記発光素子は、ガウシアンビームを出射する面発光レーザであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の生体センサ。
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