JP7262736B2 - 癌の診断を補助する方法、および癌を診断するシステム - Google Patents
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Description
これらのタンパク質は、潜在的な唾液疾患マーカーとして疾患の初期検出のため、並びに治療の前・後及び間の疾患進行をモニタリングするための、簡単な臨床ツールの開発をもたらすことから注目を集めてきた。
係る状況下、本発明は、簡便な操作で実施することができる新たな癌を診断する方法およびシステムを提供することを目的とする。
前記癌診断VOCの検出可否および/または検出量から、前記癌診断VOCの健常者群と癌患者群とを判定する判定基準を用いて、前記被験者の癌の可能性を判定する判定工程と、を有する癌の診断を補助する方法。
<2> 前記癌診断VOCとして、前記消失群、前記新生群、および前記増減群からなる群から選択される異なる2以上の群のVOCを用いる前記<1>記載の方法。
<3> 前記VOC検出工程で検出する前記癌診断VOCが、消失群から選択される1以上のVOCの消失VOCであり、
前記判定工程が、前記消失VOCが検出されない場合癌と判定する、および/または、前記消失VOCが検出される場合癌ではないと判定する判定工程である前記<1>記載の方法。
<4> 前記VOC検出工程で検出する前記VOCが、新生群から選択される1以上のVOCの新生VOCであり、
前記判定工程が、前記新生VOCが検出される場合癌と判定する、および/または、前記新生VOCが検出されない場合癌ではないと判定する判定工程である前記<1>記載の方法。
<5> 前記VOC検出工程が、前記消失群から選択される1以上の癌診断VOCと、前記新生群から選択される1以上の癌診断VOCとを検出するものであり、
前記判定工程が、前記消失群の癌診断VOCが検出され、かつ、前記新生VOCの癌診断VOCが検出されない場合、癌ではないと判定し、前記消失群の癌診断VOCが検出されず、かつ、前記新生VOCの癌診断VOCが検出される場合、癌であると判定する前記<1>または<2>に記載の方法。
<6> 前記VOC検出手段が、前記消失群から選択される1以上の癌診断VOC、および/または、前記新生群から選択される1以上の癌診断VOCを検出し、かつ、前記増減群から選択される1以上のVOCを検出するものであり、
前記判定工程が、前記消失群のVOCが検出されず、および/または、前記新生群のVOC検出される場合、増減群のVOCの検出量により、癌の進行を判定することを特徴とする前記<1>または<2>に記載の方法。
<7> 前記VOC検出工程が、前記増減群から選択される1以上のVOCの検出量を測定するものであり、
前記判定工程が、前記VOCの検出量について予め作成された健常者と癌患者とを判別する閾値と対比して判定するものである前記<1>記載の方法。
<8> 前記VOC検出工程が、前記消失群、前記新生群、及び前記増減群から選択される少なくとも3種以上のVOCの検出量を測定するVOC検出量群を検出するものであり、
前記判定工程が、前記VOC検出量群のVOC検出量を説明変数として、健常者と癌患者とを判別する多変量解析を行う判別式により判別する判別工程を有する前記<1>または<2>に記載の方法。
<9> 前記癌患者が、口腔癌の患者であり、
前記消失群が、ウンデカン、1-ヘプタノール、1-オクタノール、アセトアルデヒドベンゼン、(E,E)-2,4-デカジエナール、ブチロラクトン、およびベンジルアルコールからなる群から選択される1以上のVOCであり、
前記新生群が、3-ヘプタノン、メトキシアセトアルデヒド、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、3-メチル-2-ブタノール、メトキシ-フェニル-オキシム、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、ブチルエステルブタン酸、1-ヘキサデカノール、および1-テトラデカノールからなる群から選択される1以上のVOCであり、
前記増減群が、エタノール、2-ペンタノン、1-プロパノール、1-ヒドロキシ-2-プロパノン、1-オクテン-3-オール、フェニルエチルアルコール、フェノール、2-ピペリジノン、ヘキサデカン酸、およびインドールからなる群から選択される1以上のVOCである前記<1>~<8>のいずれかに記載の方法。
<10> 前記体液が、唾液、汗、および尿からなる群から選択されるいずれかである前記<1>~<9>のいずれかに記載の方法。
<11> 前記VOC検出工程が、前記体液に含まれるVOCを濃縮する濃縮工程を含み、前記濃縮工程で濃縮されたVOCを検出するものである前記<1>~<10>のいずれかに記載の方法。
<12> 前記濃縮工程が、ゼオライト及びシリコーンの複合膜に、前記体液を接触させ、前記複合膜に前記体液の前記VOCを吸着させる吸着工程と、前記複合膜に吸着した前記VOCを回収流体中に回収する回収工程とを含み、前記VOC検出工程が、前記回収流体中のVOC検出量を測定するものである前記<11>記載の方法。
<13> 前記VOC検出工程が、ガスクロマトグラフィーおよび/またはガスクロマトグラフ質量分析を用いてVOC検出量を測定するものである前記<1>~<12>のいずれかに記載の方法。
前記癌診断VOCの検出可否および/または検出量から、前記癌診断VOCの健常者群とを癌患者群とを判定する判定基準を用いて、前記被験者の癌の可能性を判定する判定手段と、を有するシステム。
<15> 前記癌診断VOCとして、前記消失群、前記新生群、および前記増減群からなる群から選択される異なる2以上の群のVOCを用いる前記<14>記載のシステム。
<16> 前記VOC検出手段で検出する前記癌診断VOCが、消失群から選択される1以上のVOCの消失VOCであり、
前記判定手段が、前記消失VOCが検出されない場合癌と判定する、および/または、前記消失VOCが検出される場合癌ではないと判定する判定手段である前記<14>記載のシステム。
<17> 前記VOC検出手段で検出する前記VOCが、新生群から選択される1以上のVOCの新生VOCであり、
前記判定手段が、前記新生VOCが検出される場合癌と判定する、および/または、前記新生VOCが検出されない場合癌ではないと判定する判定手段である前記<14>記載のシステム。
<18> 前記VOC検出手段が、前記増減群から選択される1以上のVOCの濃度を測定するVOC濃度群を検出するものであり、
前記判定手段が、前記VOC濃度について予め作成された健常者と癌患者とを判別する閾値と対比して判定するものである前記<14>記載のシステム。
<19> 前記VOC検出手段が、前記消失群、前記新生群、及び前記増減群から選択される少なくとも3種以上のVOCの検出量を測定するVOC検出量群を検出するものであり、
前記判定手段が、前記VOC検出量群のVOC検出量を説明変数として、健常者と癌患者とを判別する多変量解析を行う判別式により判別する判別手段を有する前記<14>または<15>に記載のシステム。
<20> 前記癌患者が、口腔癌の患者であり、
前記消失群が、ウンデカン、1-ヘプタノール、1-オクタノール、アセトアルデヒドベンゼン、(E,E)-2,4-デカジエナール、ブチロラクトン、およびベンジルアルコールからなる群から選択される1以上のVOCであり、
前記新生群が、3-ヘプタノン、メトキシアセトアルデヒド、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、3-メチル-2-ブタノール、メトキシ-フェニル-オキシム、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、ブチルエステルブタン酸、1-ヘキサデカノール、および1-テトラデカノールからなる群から選択される1以上のVOCであり、
前記増減群が、エタノール、2-ペンタノン、1-プロパノール、1-ヒドロキシ-2-プロパノン、1-オクテン-3-オール、フェニルエチルアルコール、フェノール、2-ピペリジノン、ヘキサデカン酸、およびインドールからなる群から選択される1以上のVOCである前記<14>~<19>のいずれかに記載のシステム。
本発明の癌の診断を補助する方法は、被験者から採取された体液中の揮発性有機化合物(VOC)を検出するものであり、前記VOCとして、健常者では検出されるが癌患者では検出されないVOC群である消失群、健常者では検出されないが癌患者では検出されるVOC群である新生群、及び健常者と癌患者の両方で検出されるが癌患者で検出量が顕著に増減するVOC群である増減群からなる群から選択される1以上の癌診断VOCを検出するVOC検出工程と、
前記癌診断VOCの検出可否および/または検出量から、前記癌診断VOCの健常者群と癌患者群とを判定する判定基準を用いて、前記被験者の癌の可能性を判定する判定工程を有する。
以下、本発明の癌の診断を補助する方法を、「本発明の癌を診断する方法」と略記する場合がある。
本発明の癌を診断するシステムは、被験者から採取された体液中の揮発性有機化合物(VOC)を検出するものであり、前記VOCとして、健常者では検出されるが癌患者では検出されないVOC群である消失群、健常者では検出されないが癌患者では検出されるVOC群である新生群、及び健常者と癌患者の両方で検出されるが癌患者で検出量が顕著に増減するVOC群である増減群からなる群から選択される1以上の癌診断VOCを検出するVOC検出手段と、
前記癌診断VOCの検出可否および/または検出量から、前記癌診断VOCの健常者群とを癌患者群とを判定する判定基準を用いて、前記被験者の癌の可能性を判定する判定手段と、を有する。
本発明の癌を診断するシステムによれば、特定のVOCを測定することで、簡易な操作でも癌を診断することができる。
なお、本願において本発明の癌を診断する方法は、本発明の癌を診断するシステムを用いて行うこともでき、本願においてそれぞれの発明に対応する構成は相互に利用することができる。
本発明者等は、癌患者および健常者から採取した体液に含まれるVOCを測定した結果、特定のVOCに癌患者と健常者との間に差がみられることを見出した。その差として、消失群に分類するVOCは、健常者の体液に含まれるものの、癌患者の体液には含まれず、癌となることで消失する傾向がみられることを見出した。また、新生群に分類するVOCは、健常者の体液に含まれないものの、癌患者の体液には含まれ、癌となることで新生する傾向がみられることを見出した。また、増減群に分類するVOCは、健常者の体液に含まれるものの、癌患者の体液では優位に増加または減少し、癌となることで明らかに増加または減少する傾向がみられることを見出した。このような知見に基づき、体液の消失群、新生群、増減群のVOCの有無やその検出量や濃度等を検出することで癌を診断することができることを見出した。
本発明の癌を診断する方法は、被験者から採取された体液中の揮発性有機化合物(VOC)を検出するVOC検出工程を有する。このVOC検出工程は、VOCとして、消失群、新生群、及び増減群からなるいずれかの癌診断VOCを検出するものである。なお、本発明において、検出とは、対象とするVOCが検出下限以上含まれるか否かの特定(検出可否)や、その検出量の特定も含む概念として、検出と呼ぶ。
本発明は、体液に含まれるVOCに基づいて癌を診断するものである。本発明において体液は、生体由来のVOCを含む液体成分の総称であり、被験者から採取できるものをいう。例えば、血液;リンパ液;組織液(組織間液、細胞間液、間質液);漿膜腔液、胸水、腹水、心嚢液などの体腔液;脳脊髄液(髄液);関節液(滑液);眼房水(房水);唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液などの消化液;汗;涙;鼻水;尿;精液;膣液;羊水;乳汁が挙げられる。また、呼気や痰を液体に溶解・分散させたものも含む。これらのうち、適宜癌の種類や、体液の採取しやすさ、VOCの含みやすさを考慮して、診断に適した体液を用いることができる。
これらの中でも、採取しやすさや被験者の症状によるVOCの変化の生じやすさ等を考慮し、血液や、唾液、汗、尿などが好ましく用いられる。血液は侵襲的な採取によること、コストがかかること、感染の恐れがあることなどが懸念される場合がある。このため、特に、唾液や、汗、尿を用いることが好ましい。簡単な採取及び処理、最小限の侵襲性、並びに低い費用のために、唾液は本発明に係る診断に用いる検体に特に適している。
本発明における被験者とは、癌患者や健常者など、癌か否か診断する対象となるものをいう。VOCは食事や喫煙習慣等の影響も受ける可能性があるため、被験者からのサンプリング条件をある程度統一した状態とした方がよい。この状態は、判定工程で用いる健常者、癌患者の判定基準の作成時にも同様の状態とした方がよい。具体的には、食事、飲酒、服薬、喫煙の条件をある程度統一したほうがよい。例えば、起床後、朝食前の所定の時間に採取したり、食後1時間以上や、1.5時間以上、2時間以上空けてから、体液を採取したほうがよい。また、ばらつきや傾向を確認するために同日に時間を空けて複数回採取したり、別日に複数回採取してもよい。
本発明は、VOCの検出結果に基づいて癌を診断するものである。VOCは、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略称である。揮発性有機化合物は、揮発性を有する有機化合物であり、分子量が数百程度の低分子である。本発明では、このような低分子の代謝産物をモニターできる点が特徴である。
消失群、新生群、増減群のVOCから選択され、判定の対象として用いるものを癌診断VOCと呼ぶ。この癌診断VOCは、消失群、新生群、増減群のいずれかから1種以上を用いる。この癌診断VOCは、複数種のVOCを用いることが好ましく、癌診断VOCに用いるVOCは、2種以上が好ましく、3種以上がより好ましく、4種以上がさらに好ましい。用いるVOCが多いほど、より信頼性が高い判定ができる。このとき同一の群から複数用いてもよいし、複数の群から1種以上を用いてもよい。なお、用いるVOCの数は特に上限を定めなくてもよいが、検出対象を限定してより高い精度で検出しやすいように、30種以下や、27種以下、20種以下、15種以下、12種以下、10種以下のような上限を設けてもよい。
消失群は、健常者では検出されるが癌患者では検出されないVOC群である。消失群のVOCは、健常者の群で検出量を測定したとき、その出現頻度が0.08以上や、0.1以上のものとすることが好ましく、0.2以上や、0.3以上、0.4以上のものを用いることが好ましい。一方で、癌患者の群で出現頻度が、0.08未満や、0.05未満、0.03未満のものとすることが好ましく、0であることが最も好ましい。
例えば、口腔癌の判定に適した消失群のVOCは、次のものである。ウンデカン(undecane)、1-ヘプタノール(1-heptanol)、1-オクタノール(1-octanol)、アセトアルデヒドベンゼン(benzeneacetaldehyde)、ブチロラクトン(butyrolactone)、(E,E)-2,4-デカジエナール(E,E-2,4-decadienal)、ベンジルアルコール(benzyl alcohol)。
この消失群のVOCは、健常者の体液に含まれるものの、口腔癌の癌患者の体液には含まれず、口腔癌となることで消失する傾向がみられる。
新生群は、健常者では検出されないが癌患者では検出されるVOC群である。新生群のVOCは、癌患者の群で検出量を測定したとき、その出現頻度が0.1以上や、0.2以上のものとすることが好ましく、0.3以上や、0.4以上のものを用いることがより好ましい。一方で、健常者の群で出現頻度が、0.1未満や、0.05未満、0.03未満のものとすることが好ましく、0であるものとすることが最も好ましい。
この新生群のVOCは、健常者の体液に含まれないものの、口腔癌の癌患者の体液には含まれ、口腔癌となることで新生する傾向がみられる。
増減群は、健常者と癌患者の両方で検出されるが癌患者で検出量が顕著に増減するVOC群である。増減群のVOCは、健常者と、癌患者とでいずれも出現頻度が0.25以上のものを用いることが好ましく、0.3以上、0.4以上、0.5以上と、より出現頻度が高いものを用いることが好ましい。一方で、その増減に顕著な差を確認できることが好ましい。癌患者で増加するものは増加群、癌患者で減少するものは減少群と呼んでもよい。また、検出量を踏まえて、健常者における検出量を基準として、その変化比の絶対値(1-「癌患者の検出量の平均値/健常者の検出量の平均値」×100(%))が5%以上や、10%以上、20%以上のような増減群のいずれかのVOCとする指標を設定してもよい。
口腔癌の患者においてこれらの増減群のVOCは減少群とよぶこともでき、健常者の体液に含まれるものの、口腔癌の癌患者の体液では優位に減少し、口腔癌となることで明らかに減少する傾向がみられる。
消失群は、ウンデカン、1-ヘプタノール、1-オクタノール、アセトアルデヒドベンゼン、(E,E)-2,4-デカジエナール、ブチロラクトン、およびベンジルアルコールからなる群から選択される1以上のVOCであり、
新生群は、3-ヘプタノン、メトキシアセトアルデヒド、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、3-メチル-2-ブタノール、メトキシ-フェニル-オキシム、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、ブチルエステルブタン酸、1-ヘキサデカノール、および1-テトラデカノールからなる群から選択される1以上のVOCであり、
増減群は、エタノール、2-ペンタノン、1-プロパノール、1-ヒドロキシ-2-プロパノン、1-オクテン-3-オール、フェニルエチルアルコール、フェノール、2-ピペリジノン、ヘキサデカン酸、およびインドールからなる群から選択される1以上のVOCである。
本発明の癌を診断する方法は、VOC検出工程が、体液に含まれるVOCを濃縮する濃縮工程を含み、濃縮工程で濃縮されたVOCを検出するものであることが好ましい。濃縮には体液からその体液よりもVOC濃度が高いものとすることができる任意の手法を用いることができる。体液中のVOC以外の成分は、水やタンパク質等が含まれるため、これらの成分を選択的に回収したり蒸散、除去させることでVOC濃度を増大させたり、VOC相当の成分等を選択的に回収することで濃縮してもよい。VOC相当の成分を選択的に回収する手法としては、VOCに相当する成分を吸着する多孔質材等の吸着素材に吸着させて、その後、吸着素材に吸着しているVOCを回収することで濃縮することもできる。
濃縮工程を行うことで、この唾液のように、VOCの含有量が少ない体液から、VOC以外の成分を排除して、VOCを検出しやすくなる。
吸着工程には、ゼオライト及びシリコーンの複合膜を用いることが好ましい。ゼオライトとシリコーンの複合膜は、ゼオライトが比較的分子量が小さいものを吸着しやすく、シリコーンが比較的分子量が大きいものを吸着しやすい。さらに粒状や粉状の場合が多いゼオライトをシリコーンと複合化することで、シートやフィルム等の膜状で一体化しているため取り扱いやすい。
吸着工程で複合膜に吸着したVOCを回収してVOCを検出する。VOCの検出は、回収流体に複合膜を接触させることで行うことができる。この回収流体は、液体でも気体でもよい。癌診断VOCとして選択していないもの、または、消失群、新生群、増減群のいずれにも属さない有機溶媒等を用いることが好ましい。例えば、メタノールなどを用いることができる。回収流体にVOCを吸着した複合膜を接触させることで、吸着膜に吸着していたVOCが回収流体側に移行し、この回収流体を分析することでVOCを検出することができる。この吸着と、回収との液量の調整などにより、タンパク質等の余分な成分を除去して、VOCを選択的に含む濃縮ができる。
本発明の癌を診断する方法において、VOCの検出は、癌診断VOCとして選択するVOCを検出の可否、またはVOCの検出量を測定することができる任意の手法を採用することができる。
例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、電気化学分析、毛細管電気泳動(CE)、質量分析(MS)、屈折率分光法(RI)、紫外分光法(UV)、蛍光分析、ガスクロマトグラフィー(GC)、放射化学分析、近赤外分光法(近IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)、及び光散乱分析(LS)、を含む群から選択されるいずれかの分析手段を用いることができる。また、光導波路センサ及び水晶振動子センサを用いた検出手段(特許第5388309号公報、特許第5652847号公報参照)を用いた検出などを用いることができる。また、VOCを選択して検出するため、癌診断VOCとして選択するVOCに適したセンサを組み合わせたものを検出手段としてもよい。また、これらの検出手段は、適宜組み合わせて用いてもよい。
ガスクロマトグラフィーやガスクロマトグラフ質量分析することで、複数のVOCを短時間で効率的に、分子量及び分子構造を決定することができ、その量の程度も含めて分析することができる。例えば、まずGC-MSを用いて、RTとVOCを関係付けてVOCを特定し、その後はガスクロマトグラフィー単独で検出してもよい。
検出手段は、癌診断VOCを消失群および/または新生群から選択する場合、検出されるか否かの検出可否の検出のみ行うものであってもよい。
本発明の癌を診断する方法は、前記癌診断VOCの検出可否および/または検出量から、前記癌診断VOCの健常者群とを癌患者群とを判定する判定基準を用いて、前記被験者の癌の可能性を判定する判定工程を有する。この判定は、選択された癌診断VOCがいずれの群に属するかに応じて、各種判定をすることができる。また、判定基準は、健常者群と、癌患者群とを分類するものとして設定される基準である。例えば、癌診断VOCの検出の有無や増減に対する閾値に対する比較、複数の癌診断VOCによる決定樹、複数の癌診断VOCを用いた関数や、多変量解析による判別式などを用いて、設定された判断基準と対比して、癌の可能性の有無や、その程度などを判定する。
消失群のVOCについては、健常者では通常検出されて、癌患者において消失する傾向がある。このため健常者で検出され、癌患者で検出されないということを判断基準として用いて、消失群のVOCが検出されるか否かで診断することができる。消失群のVOCが検出されない場合、癌の可能性が高いと判定される。
すなわち、本発明の癌を診断する方法は、VOC検出工程で検出するVOCが、消失群から選択される1以上のVOCの消失VOCであり、判定工程が、消失VOCが検出されない場合癌と判定する、および/または、VOCが検出される場合癌ではないと判定する判定工程を有することができる。
新生群のVOCについては、健常者では通常検出されず、癌患者において検出される傾向がある。このため健常者で検出されず、癌患者で検出されるということを判断基準として用いて、新生群のVOCが検出されるか否かで診断することができる。新生群のVOCが検出される場合、癌の可能性が高いと判定される。
すなわち、本発明の癌を診断する方法は、VOC検出工程で検出するVOCが、新生群から選択される1以上のVOCの新生VOCであり、判定工程が、新生VOCが検出される場合癌と判定する、および/または、新生VOCが検出されない場合癌ではないと判定する判定工程を有することができる。
VOC検出工程が、増減群から選択される1以上のVOCの検出量を検出するものであり、判定工程が、VOC濃度について予め作成された健常者と癌患者とを判別する閾値と対比して判定するものとすることもできる。
増減群のVOCについては、健常者では通常検出され、癌患者において増加または減少する傾向がある。このため健常者の群の上限量または下限量を判断基準として用いて、その上限以上か否かまたは下限量以下か否かを基準として、診断することができる。増減群のVOCが所定の値より高い場合や低い場合、癌の可能性が高いと判定される。また、癌のステージによる検量線を設けて、そのステージを判断する指標としてもよい。
本発明の癌を診断する方法は、VOC検出工程で検出するVOCが、消失群、新生群、及び増減群から選択される少なくとも3以上のVOCの検出量を測定するVOC検出量群であり、
判定工程が、VOC検出量群のVOCの検出量を説明変数として、健常者と癌患者とを判別する多変量解析を行う判別式により判別する判別工程を有することができる。多変量解析の説明変数として用いる癌診断VOC検出量の数は、4以上が好ましく、6以上がより好ましい。
この3以上のVOCは、消失群、新生群、または増減群のいずれか同じ1つの群に属するものを3種以上としてもよいし、異なる2以上の群のものを1種以上含むものとしてもよい。同じ1つの群に属するものを用いることで、多種のVOCを用いる解析を行うことで、信頼性が高い判定ができる。異なる2以上の群のものを用いることで、それぞれ傾向が異なるものを含む判定となることから、より誤判定や判定不能となることが少なく信頼性が高い判定ができる。
多変量解析には、
(1)予測式(関係式)の発見や量の推定などに用いる重回帰分析や正準相関分析、
(2)標本の分類や質の推定などに用いるクラスター分析や判別分析、
(3)多変量の統合整理(減らす)、変量の分類、および代表変量の発見などに用いる主成分分析や因子分析などが含まれる。本発明に用いる多変量解析は、これらの方法のいずれを採用してもよい。
また、癌患者を、ステージや症状に応じてさらに分類したものを目的変数とした判別式とすることもでき、これにより癌のステージや、種類も判定することができる。
このようにして判定された判定結果は、モニターに「癌である」や「癌ではない」のように表示したり、「癌の可能性X%」のように確率などで表示したり、音や表示灯で示す等、任意の手法で表示することができる。その内容を診断結果として採用したり、その結果に基づいてさらに詳細な精密検査などを行うことができる。
本発明で診断する癌は、種々の癌を対象とすることができる。癌は、血液(および骨髄)-造血細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫;脳腫瘍;乳がん;子宮体がん;子宮頚がん;卵巣がん;食道癌;胃癌;虫垂癌;大腸癌 ;肝癌、肝細胞癌;胆嚢癌;胆管癌;膵臓がん(膵がん);副腎癌;消化管間質腫瘍;中皮腫(胸膜、腹膜、心膜など);頭頚部癌(喉頭癌;口腔癌、口腔底癌、歯肉癌、舌癌、頬粘膜癌;唾液腺癌;副鼻腔癌、上顎洞癌、前頭洞癌、篩骨洞癌、蝶型骨洞癌、甲状腺癌);腎臓がん;肺癌;骨肉腫;前立腺癌;精巣腫瘍(睾丸がん);腎細胞癌;膀胱癌;横紋筋肉腫;皮膚癌;肛門癌などの各種癌を診断対象とすることができる。診断対象とする癌の種類に応じて、癌診断VOCとして用いるVOCを変更し、その判定基準とする閾値等を設定して実施することができる。
特に、頭頚部癌(喉頭癌;口腔癌、口腔底癌、歯肉癌、舌癌、頬粘膜癌;唾液腺癌;副鼻腔癌、上顎洞癌、前頭洞癌、篩骨洞癌、蝶型骨洞癌、甲状腺癌)を診断対象とすることが好ましく、中でも、口腔癌、口腔底癌、歯肉癌、舌癌、頬粘膜癌を診断対象とすることが特に好ましい。
特に本発明の癌を診断する方法は、口腔癌を診断する方法として好適である。
図1は、本発明の方法を実施するフローチャートの一例を示すものである。被験者の体液が、VOC検出のサンプルとして供給される(サンプル供給S11)。次に、供給されたサンプルはVOCを濃縮する処理が行われる(濃縮S21)。次に、濃縮されたVOCを回収する処理が行われる(回収S22)。そして、回収されたVOCの有無や検出量の検出が行われる(検出S23)。検出結果は、適宜、読み取って判定手段に入力したり、電子データとして判定手段に入力されて、その結果に基づいて、癌の可能性が判定される(判定S31)。その判定結果は、表示手段に表示される(表示S41)。表示結果をもとに、癌の診断等が行われる。
本発明の癌を診断するシステムは、第一の形態として、被験者から採取された体液中に含まれる、前述の消失群から選択される1以上のVOCの消失VOCを検出する消失VOC検出手段を有する。また、前記消失VOCが検出されない場合癌と判定する、および/または、前記VOCが検出される場合癌ではないと判定する判定手段を有するものとすることができる。
消失VOC検出手段は、消失群から選択されたいずれかの消失VOCの有無を検出するものでよい。そして、その検出結果に基づいて、検出されない場合癌と判定、および/または、検出される場合VOCと判定する判定手段を有する。
本発明の癌を診断するシステムは、第二の形態として、被験者から採取された体液中に含まれる、前述の新生群から選択される1以上のVOCの新生VOCを検出する新生VOC検出手段を有する。また、前記新生VOCが検出されない場合癌と判定する、および/または、前記新生VOCが検出される場合癌ではないと判定する判定手段を有するものとすることができる。
新生VOC検出手段は、新生群から選択されたいずれかの新生VOCの有無を検出するものでよい。そして、その検出結果に基づいて、検出される場合癌と判定、および/または、検出されない場合VOCと判定する判定手段を有する。
図3は、本発明の癌を診断するシステムの第一の形態や第二の形態の構成の一例を説明するための図である。癌の診断システム11は、検出手段21、判定手段31を有しており、表示手段41と、メモリ61を有している。採取された唾液は、検出手段21に供給され、検出対象のVOCの有無や検出量などが検出される。この検出手段21は、第一の癌を診断するシステムでは、消失VOCを検出する。また、第二の癌を診断するシステムでは、新生VOCを検出する。
本発明の癌を診断するシステムの第三の形態は、被験者から採取された体液中の、前述の消失群、新生群、及び増減群からなる群から選択され、少なくとも3種以上の化合物を含む癌診断VOC検出量群に基づいて判定するものとすることができる。また、前記癌診断VOC検出量群の各VOCの検出量を説明変数として、健常者と癌患者とを判別する多変量解析を行った判別式により癌を判別する判定手段を有する。このような複数の癌診断VOCによる分析を行うことで、より、精度が高い判定をすることができる。この多変量解析は、複数の癌患者の癌診断VOCと、健常者の癌診断VOCとを予め取得して、それらを判別するために作成した判別式を用いる。
判定手段32では、操作部52から入力したり、メモリ62から読み込んだ、被験者の癌診断VOC群の各VOCの検出量を説明変数として、健常者と癌患者とを判別する多変量解析を行った判別式により癌を判別する。この判別式は、予め、健常者と癌患者とを判別する判別式として作成されたものを用いて、その判別式はメモリ62に保存されている。この判別式により、被験者の判定を行うことで、被験者が癌か否かや、その可能性を判定して、その結果は、表示手段42に表示される。なお、ここでは、被験者の癌診断VOC群を、既知の判別式で判別するものを例に説明したが、被験者の癌診断VOC群を、既に取得していた他の健常者と癌患者との癌診断VOC群とともに多変量解析することで判定するものとしてもよい。なお、これらの各手段は、適宜、装置内に組み込んで癌を診断する装置としてもよいし、その一部(例えば判定手段32やメモリ62)をサーバで実施したり、そのためのプログラムとしたり、これを保存した記録媒体としてもよい。
本発明は、癌の診断を行うことができる。本発明は、個体における口腔癌の早期診断又はその予後の提供に使用するための、口腔癌に特異性を示す新規の揮発性唾液メタボロームを提供するものとすることができる。また、個体の唾液中に見出される揮発性代謝産物を検出することによって、口腔癌を診断する又はその進行や予後を提供することができる。更に、病気の進行に伴って唾液中に見出される揮発性代謝産物が、増減・消滅・新生といった異なる匂い群に分かれ、その匂い群を形成する1種又は1種以上の揮発性代謝産物の代謝プロファイルから口腔癌を検出・診断する方法に関するものとすることができる。
本実施例では、ZSM-5/PDMS複合薄膜を用いたVOCの分析により、口腔癌患者及び健康者を特徴づける唾液VOCの代謝パターンの確立に有用な技術を検討した。アルコール、ケトン、炭化水素、アルデヒド、有機酸、エステル、フェノール類として分類された口腔癌群(n=24)と対照群(n=51)の試料の間で80種類の揮発性代謝産物が検出され、そのうち口腔癌に特異性を示す27種類の代謝産物(10種類が減少し、7種類が消滅し、10種類が新たに口腔癌群で産生された)発見することができた。以下、より具体的な操作とその結果を説明する。
本実施例において口腔癌患者(12名)は、病理組織検査、生検、外科的切除により扁平上皮癌と確定診断された者で、放射線療法や化学療法などの治療歴のない者とした。健常者(8名)は基礎疾患がなく、悪性腫瘍の病歴が無い者とした。
被験者からの唾液サンプルは、採取前に口を水ですすぎ、10mLのサンプル瓶に平均2mLの安静時唾液を5~10分かけて採取した。唾液は、採取後直ちに-80℃の環境下で保管した。唾液中のVOCは、生体内代謝に起因する内因性成分と、食事や飲酒、服薬、喫煙など、生活歴や環境由来の外因性成分が混在し、成分が変動しやすい。従って、これらVOCの日間変動や個体間変動を考慮し、一人当たり複数回唾液の採取を行った。健常者は、朝食をとらず午前7時から10時の間に、最低5日間連続して唾液を採取した。口腔がん患者に関しては、食後少なくとも1.5時間以上経過し、入院後手術までの期間、可能な限り複数回採取した。全ての被験者に、唾液採取1時間前には歯磨剤や洗口液を含めた口腔清掃や喫煙を避けるよう、指示した。
表1に、唾液サンプル採取に関する対象者情報等を示す。
本発明では、従来から固相抽出に多く用いられているジメチルポリシロキサン(PDMS)吸着マトリックスにゼオライトの一種であるZSM-5を加えたPDMS/ZSM-5複合膜に基づく薄膜抽出法(Thin Film Microextraction, TFME)を組み合わせたガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)に基づき、口腔癌の病態に特異的なVOC分子情報をもとに口腔癌と高い相関性をもつ新規バイオマーカーの発見を試みた。
(原料)
・ゼオライト(ZSM-5):JGC Catalysts and Chemicals社製、ZSM-5(SiO2/Al2O3モル比= 30,Lot.110421)
・ジメチルポリシロキサン(PDMS):Dow Corning社製Sylgard 184 silicone elastomer kitを用いて製造
(複合膜を作成するための操作)
PDMSを凝固させる前に、PDMSに対してZSM-5の重量比が20%となるように混合して、その混合物1.0gをガラス瓶に滴下し、25℃で72時間放置することでZSM-5/PDMS複合膜を担持した抽出デバイス作成した。次いで100℃で1時間加熱した後、続いて、ZSM-5/PDMSフィルムを有する抽出デバイスを3日間メタノールで振とう洗浄を行うことで、未反応のPDMSモノマーを除去した。
・ガスクロマトグラフ質量分析:日本電子(JEOL)社製(JMS-Q1000GC、Agilent社製ガスクロマトグラフ7890A合体型)
・検出部:四曲歯質量分析計(電子イオン化モード電位70eV)
・カラム:Agilent社製、DB-WAXキャピラリカラム(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.5μm)
(運転条件等)
超高純度のヘリウムガス(純度99.999%)をキャリアガスとして1.0mL/minの流速で流した。GCインジェクタの温度は230℃に保たれた。オーブンの温度は、40℃で3分間保持し、10℃/分で230℃まで昇温し、10分間保持するようにプログラムした。保持時間データを5分20秒から32分まで記録した。データ収集は、m/z=25-310およびスキャン時間300msのフルスキャンモードで行った。試料成分の同定は、米国標準技術研究所(NIST)質量スペクトルライブラリ検索ソフトウェア(JEOLバージョン1.5)を用いて行った。信頼できるVOC同定のために、700を超える構造的類似性を有する化合物を候補バイオマーカーとして選択した。
口腔癌患者12名及び健常者8名からそれぞれ73及び42種のVOCが検出され、両群に共通して検出された成分は35成分であった。
図6は、腔癌患者群において著しく減少した10個の唾液VOCピーク面積の健常者対照群との比較結果を示すものである。
(5-1)27成分による分析例
図7は、27成分のVOCのGCピーク面積を説明変数として、主成分分析(PCA)スコアプロットした結果を示すものである。主成分分析は、オリジン9ソフトウェア(Origin 9 software、Origin Lab Corporation, Northampton, MA, USA)を用いておこなった。図7に示すように多変量解析(主成分分析)の結果は、これらのVOCが癌患者群と、健常者群の区別に寄与できることが確認された。この図7では、主成分分析のPC1を用いて、PC1が約-1以上のものは健常者(Healthy)と判定され、約-1未満のものは、癌患者(Cancer)と判定される基準とできる。この基準に基づき、被験者のVOCを測定して、この主成分分析による基準により分析することで、被験者が癌であるか否か、またその可能性を判定することができる。
癌診断VOCとして、前記(5-1)と同様に27成分のGC-MS検出量を用いて、「健常者群8名(試料数50)」、「癌患者群11名(試料数22)」について主成分分析を行った結果を図10に示す。さらに、癌患者(舌癌ステージ4)1名(試料数2)を未知の試料として追加して主成分分析を行った結果を図11に示す。追加した癌患者はいずれの試料(C1、C2)も「癌患者である」と判断されるPC1であった。
図12は、2-ペンタノン、ウンデカン、ヘキサデカン酸、1,3ブタンジオールを、癌診断VOCとして用いた、癌判定の決定樹である。それぞれのVOCについて、GC-MSによる検出量(peak area)に基づいて基準を設けて、この基準と比較して判定していくことで、癌患者(C)と、健常者(H)が分類できることを確認した。
表5は、健常者と、癌患者とで共通して検出された代表的な成分のp-valueと、検出量の増減(表中「↓」は減少、「↑」は増加)を示すものである。
21 検出手段
31、32 判定手段
41、42 表示手段
52 操作部
61、62 メモリ
Claims (12)
- 被験者から採取された体液中の揮発性有機化合物(VOC)を検出するものであり、前記VOCとして、健常者では検出されるが癌患者では検出されないVOC群である消失群、健常者では検出されないが癌患者では検出されるVOC群である新生群、及び健常者と癌患者の両方で検出されるが癌患者で検出量が顕著に増減するVOC群である増減群からなる群から選択される1以上の癌診断VOCを検出するVOC検出工程と、
前記癌診断VOCの検出可否および/または検出量から、前記癌診断VOCの健常者群と癌患者群とを分類する基準と比較して、前記被験者の癌の可能性を求める比較工程と、を有し、
前記癌患者が、口腔癌、口腔底癌、歯肉癌、舌癌、および頬粘膜癌からなる群から選択されるいずれかの患者であり、
前記癌診断VOCとして、少なくとも前記消失群を含み、
前記消失群が、ウンデカン、1-ヘプタノール、1-オクタノール、アセトアルデヒドベンゼン、(E,E)-2,4-デカジエナール、ブチロラクトン、およびベンジルアルコールからなる群から選択される1以上のVOCである癌の診断を補助する方法。 - 前記癌診断VOCとして、さらに、前記新生群および/または前記増減群のVOCを用いる請求項1記載の方法。
- 前記VOC検出工程が、前記消失群、前記新生群、及び前記増減群から選択される少なくとも3種以上のVOCの検出量を測定するVOC検出量群を検出するものであり、
前記比較工程が、前記VOC検出量群のVOC検出量を説明変数として、健常者と癌患者とを判別する多変量解析を行う判別式により判別する判別工程を有する請求項1または2に記載の方法。 - 前記新生群が、3-ヘプタノン、メトキシアセトアルデヒド、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、3-メチル-2-ブタノール、メトキシ-フェニル-オキシム、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、ブチルエステルブタン酸、1-ヘキサデカノール、および1-テトラデカノールからなる群から選択される1以上のVOCであり、
前記増減群が、エタノール、2-ペンタノン、1-プロパノール、1-ヒドロキシ-2-プロパノン、1-オクテン-3-オール、フェニルエチルアルコール、フェノール、2-ピペリジノン、ヘキサデカン酸、およびインドールからなる群から選択される1以上のVOCである請求項1~3のいずれかに記載の方法。 - 前記体液が、唾液、汗、および尿からなる群から選択されるいずれかである請求項1~4のいずれかに記載の方法。
- 前記VOC検出工程が、前記体液に含まれるVOCを濃縮する濃縮工程を含み、前記濃縮工程で濃縮されたVOCを検出するものである請求項1~5のいずれかに記載の方法。
- 前記濃縮工程が、ゼオライト及びシリコーンの複合膜に、前記体液を接触させ、前記複合膜に前記体液の前記VOCを吸着させる吸着工程と、前記複合膜に吸着した前記VOCを回収流体中に回収する回収工程とを含み、前記VOC検出工程が、前記回収流体中のVOC検出量を測定するものである請求項6記載の方法。
- 前記VOC検出工程が、ガスクロマトグラフィーおよび/またはガスクロマトグラフ質量分析を用いてVOC検出量を測定するものである請求項1~7のいずれかに記載の方法。
- 被験者から採取された体液中の揮発性有機化合物(VOC)を検出するものであり、前記VOCとして、健常者では検出されるが癌患者では検出されないVOC群である消失群、健常者では検出されないが癌患者では検出されるVOC群である新生群、及び健常者と癌患者の両方で検出されるが癌患者で検出量が顕著に増減するVOC群である増減群からなる群から選択される1以上の癌診断VOCを検出するVOC検出手段と、
前記癌診断VOCの検出可否および/または検出量から、前記癌診断VOCの健常者群と癌患者群とを判定する判定基準を用いて、前記被験者の癌の可能性を判定する判定手段と、を有し、
前記癌患者が、口腔癌、口腔底癌、歯肉癌、舌癌、および頬粘膜癌からなる群から選択されるいずれかの患者であり、
前記癌診断VOCとして、少なくとも前記消失群を含み、
前記消失群が、ウンデカン、1-ヘプタノール、1-オクタノール、アセトアルデヒドベンゼン、(E,E)-2,4-デカジエナール、ブチロラクトン、およびベンジルアルコールからなる群から選択される1以上のVOCである癌の診断を補助するシステム。 - 前記癌診断VOCとして、さらに、前記新生群および/または前記増減群のVOCを用いる請求項9記載のシステム。
- 前記VOC検出手段が、前記消失群、前記新生群、及び前記増減群から選択される少なくとも3種以上のVOCの検出量を測定するVOC検出量群を検出するものであり、
前記判定手段が、前記VOC検出量群のVOC検出量を説明変数として、健常者と癌患者とを判別する多変量解析を行う判別式により判別する判別手段を有する請求項9または10に記載のシステム。 - 前記新生群が、3-ヘプタノン、メトキシアセトアルデヒド、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、3-メチル-2-ブタノール、メトキシ-フェニル-オキシム、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、ブチルエステルブタン酸、1-ヘキサデカノール、および1-テトラデカノールからなる群から選択される1以上のVOCであり、
前記増減群が、エタノール、2-ペンタノン、1-プロパノール、1-ヒドロキシ-2-プロパノン、1-オクテン-3-オール、フェニルエチルアルコール、フェノール、2-ピペリジノン、ヘキサデカン酸、およびインドールからなる群から選択される1以上のVOCである請求項9~11のいずれかに記載のシステム。
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