以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る立軸ポンプ(ポンプ)10を示す。この図1に示すように、立軸ポンプ10は、ポンプケーシング15、回転軸25、及び羽根車27を備え、吸水槽1の上方を覆う据付床2に取り付けられ、吸水槽1に流入した雨水等の液体を下流側へ排出する。
ポンプケーシング15は、筒状であり、直管状の揚水管16と、揚水管16の上端に接続された吐出管20とを備える。ポンプケーシング15は、据付床2に形成された取付孔2aに上方から差し込まれ、据付床2に固定されている。
揚水管16は、取付孔2aから鉛直方向下向きに突出している。揚水管16は、筒状の直管17と、径方向外向きに膨出した楕円筒状のベーンケーシング18と、上端から下端に向けて次第に拡開したベルマウス19とを備える。直管17、ベーンケーシング18、及びベルマウス19は、この順で上から下へ接合されている。
吐出管20は、概ね90度屈曲された曲がり管であり、据付床2から上方へ突出している。吐出管20には、下流側の吐出槽に配管された送水管(図示せず)が機械的に接続される。吐出管20と送水管の間には、流路を開閉可能な仕切弁(図示せず)が介設されていてもよい。
揚水管16の上端には、ポンプケーシング15を据付床2に固定するためのフランジ部21が設けられている。但し、フランジ部21は吐出管20の下端側に設けられてもよい。吐出管20の上部には、駆動部28(図6参照)を取り付けるための台22が設けられている。なお、駆動部28には電動モータが用いられているが、内燃機関の1つであるディーゼル機関を用いてもよい。
回転軸25は、吐出管20を貫通して揚水管16内に配置されている。揚水管16内に位置する回転軸25の下側部分(一部)は、揚水管16の軸線に沿って上下方向に延びている。吐出管20から外側へ突出した回転軸25の上側部分は、台22から突出し、駆動部28に機械的に接続されている。吐出管20における回転軸25が貫通する部分は、軸封装置26によって液密にシールされている。
羽根車27は、回転軸25のベーンケーシング18内に位置する部分に取り付けられている。詳しくは、ベーンケーシング18内には軸受ケーシング18aが設けられている。羽根車27は、軸受ケーシング18aを貫通した回転軸25の下端に取り付けられ、軸受ケーシング18aの下側に配置されている。
駆動部28によって回転軸25が回転されると、羽根車27が回転軸25と一体に回転する。これにより、吸水槽1内の水は、揚水管16の下端の吸込口19aから吸引され、ポンプケーシング15内の揚水路15aを通して下流側へ排出される。なお、ベーンケーシング18内においては、ベーンケーシング18と軸受ケーシング18aの間が揚水路15aを構成する。
揚水管16内において回転軸25は、水中軸受30によって回転可能に支持されている。水中軸受30の数は、揚水管16の全長によって定められており、本実施形態では合計で2個用いられている。上側に位置する水中軸受30は、直管17内に配置されたホルダ35内に配置されている。下側に位置する水中軸受30は、軸受ケーシング18a内に配置されたホルダ36内に配置されている。
図2A及び図2Bを参照すると、水中軸受30は、回転軸25に摺接する円筒状の摺接部材34を備える。回転軸25は、摺接部材34が摺接する部分に円筒状のスリーブ25aを備える。摺接部材34はセラミック又は熱伝導率が低い樹脂からなり、スリーブ25aは摺接部材34よりも高硬度の材料からなる。
運転によって摺接部材34が過度に摩耗したり部分的に損傷(割れ欠け)したりすると、回転軸25に振れ回りが発生することで、ポンプケーシング15が振動し、据付床2が劣化する。よって、立軸ポンプ10においては、摺接部材34の摩耗状態及び損傷状態を定期的に点検し、摩耗又は損傷が著しい場合には摺接部材34を交換する必要がある。
そこで、本実施形態では、大型のポンプ10を分解することなく、点検作業の簡易性及び信頼性を向上するために、工業用内視鏡(以下「内視鏡」と略す。)50によって摺接部材34の状態を画像で確認できるようにしている。
(内視鏡の挿入構造の概要)
図1、図2A及び図2Bに示すように、立軸ポンプ10は、摺接部材34に対して回転軸25が延びる方向(軸方向)に隣接する間隙部40と、ポンプケーシング15の外部と間隙部40とを連通させる通路(第1通路)42とを備える。軸受監視装置は、通路42に挿入可能な内視鏡50を備える。
詳しくは、図2A及び図2Bに示すように、水中軸受30は、ホルダ35,36の内側に取り付けられたカバーケース31、カバーケース31の内側に取り付けられた一対のシェル32、シェル32の内側にそれぞれ取り付けられた一対の摺接部材34を備える。
カバーケース31は円筒状であり、上端にフランジ部31aを備え、下端に保持部31bを備える。フランジ部31aは、円筒状の本体から径方向外向きに突出しており、ホルダ35,36に端面に配置される。保持部31bは、円筒状の本体から径方向内向きに突出しており、シェル32の下端を保持する。
シェル32は、円筒状であり、摺接部材34を個別にカバーケース31に取り付ける。シェル32は、振動抑制用の防振部材33を介してカバーケース31の内側に配置されている。シェル32の一端には、防振部材33を保持する保持片32aが設けられている。上段のシェル32の保持片32aは下側に配置され、下段のシェル32の保持片32aは上側に配置されている。
一対の摺接部材34はそれぞれ、円筒状であり、回転軸25の軸方向(上下)に間隔をあけて配置され、回転軸25(スリーブ25a)を回転可能に支持する。摺接部材34の内面とスリーブ25aの外面との間には、回転軸25を回転可能に支持できる範囲で可能な限り小さい隙間(図示せず)が確保されている。
ホルダ35,36は、回転軸25を部分的に取り囲む円筒状の本体35a,36aと、複数(本実施形態では3個)のリブ35b,36bとを備える。リブ35b,36bによって本体35a,36aは、揚水管16の軸線と同軸に配置されている。図2Bを参照すると、軸受ケーシング18a側のホルダ36には、スペーサ37を介して水中軸受30が配置されている。
図2A及び図2Bに示すように、回転軸25に沿った方向において、直管17側のホルダ35の全長は、軸受ケーシング18a側のホルダ36の全長よりも長い。これは、直管17側のホルダ35が受ける水圧は、ベーンケーシング18側のホルダ36が受ける水圧よりも大きく、回転軸25の軸方向におけるリブ35bの幅(強度)を確保する必要があるためである。ホルダ35の下端部35cと回転軸25との間には、回転軸25の回転を許容できる範囲で可能な限り小さい隙間Sが形成されている。
図2A、図2B及び図3に示すように、間隙部40は、回転軸25(スリーブ25a)とホルダ35,36の間の円筒状の空間である。直管17側のホルダ35には、一対の摺接部材34間及び水中軸受30の下部に、間隙部40が設けられている。ベーンケーシング18側のホルダ36には、一対の摺接部材34間だけに間隙部40が設けられている。
以下の説明では、直管17側において、一対の摺接部材34間に形成する空間を間隙部40Aと言い、水中軸受30の下部に形成する空間を間隙部40Bと言うことがある。また、ベーンケーシング18側の一対の摺接部材34間に形成する空間を間隙部40Cと言うことがある。
一対の摺接部材34に対して間隙部40A,40Cは、回転軸25の軸方向にそれぞれ隣接している。間隙部40Bは、下段に位置する1個の摺接部材34だけに隣接している。間隙部40A~40Cはそれぞれ、摺接部材34とスリーブ25aの間の隙間に連通しており、液体、気体、及びこれらの混合体である流体が流動可能である。
通路42は、ポンプケーシング15の外部と間隙部40とを連通させる孔である。通路42の直径は内視鏡50の直径よりも大きく、通路42と内視鏡50の間には空気(流体)の流動を許容する空間が確保されている。個々の間隙部40に連通する個々の通路42は、放射状に突出する複数のリブ35b,36bのうちの1個に設けられている。以下の説明では、間隙部40Aに連通する孔を通路42Aと言い、間隙部40Bに連通する孔を通路42Bと言い、間隙部40Cに連通する孔を通路42Cと言うことがある。
直管17に形成する通路42A,42Bは、ホルダ35の本体35aとリブ35b、及び直管17を貫通している。通路42Aと通路42Bとは、異なるリブ35bに形成されているが、同じリブ35bに形成されてもよい。ベーンケーシング18に形成する通路42Cは、ホルダ36の本体36aとリブ36b、軸受ケーシング18a、リブ18b、及びベーンケーシング18を貫通している。そのうち、リブ36b,18bは、軸受ケーシング18aを介して一体構造となるように面状に連なっている。カバーケース31には、間隙部40A,40Cと通路42A,42Cに連通する連通孔31cが設けられている。
図3を参照すると、リブ35b,36bは、円環状の間隙部40に対して接する方向へ、本体35a,35bから突出している。間隙部40に隣接した本体35a,36aに形成される通路42の端部42aは、回転軸25の軸方向から見て、スリーブ25a(回転軸25)に接する線(つまり接線)Tに沿って延びている。
ここで、接線Tに沿って延びるとは、接線Tに対して平行に延びる構成は勿論、接線Tに対して45度未満、好ましくは30度未満で傾いた角度範囲αの線(直線及び曲線)が含まれる。傾斜角度が上記角度範囲以外の場合、不慣れな作業者が内視鏡50を操作した際、通路42に沿って間隙部40内に挿入した内視鏡50が、スリーブ25aに衝突して破損する虞がある。このような不都合を防ぐために、接線Tに対して端部42aは、上記定められた範囲に設けることが好ましい。
図1を参照すると、直管17側の通路42A,42Bは、前述のようにホルダ35、リブ35b、及び直管17を貫通して設けられている。つまり、通路42A,42Bは、本体35aに形成された端部42a、リブ35bに形成された第1部分42b、及び直管17に形成された接続部17aを備える。リブ35bは回転軸25に対して直交方向に延びている。よって、端部42aと第1部分42bは直線状に延びている。接続部17aは通路42Aの入口を構成する孔を備えている。
ベーンケーシング18側の通路42Cは、前述のようにホルダ36、リブ36b、軸受ケーシング18a、リブ18b、及びベーンケーシング18を貫通して設けられている。つまり、通路42Cは、本体36aに形成された端部42a、リブ36bに形成された第1部分42b、軸受ケーシング18aを含むリブ18bに形成された第2部分42c、及びベーンケーシング18に形成された接続部18cを備える。リブ36b,18bは、ベーンケーシング18の径方向の内側から外側へ向かうに従って上向きに傾斜している。第1部分42bと第2部分42cは、互い直線状に延び、端部42aに対してリブ36b,18bと同じ向きに傾斜している。接続部18cは通路42Cの入口を構成する孔を備えている。なお、ホルダ36の内側に位置するスペーサ37には、間隙部40C及び通路42Cを連通させる連通孔37aが設けられている。
引き続いて図1を参照すると、ポンプケーシング15の外側には、個々の通路42に対応する外部配管45がそれぞれ配置されている。外部配管45の下端は接続部17a,18cにそれぞれ接続され、外部配管45の上端は据付床2の上側に配置されている。この外部配管45の上端には、内視鏡50の挿入及び流体(空気)の供給を行うための導入部46が設けられている。
図4に示すように、導入部46は、外部配管45に接続された直管部46aと、直管部46aから分岐した分岐管部46cとを備える。直管部46aは、外部配管45に対して同軸に接続されている。分岐管部46cは、直管部46aに分岐接続された第1曲部46dと、第1曲部46dの下端に接続された第1垂直部46eと、第1垂直管17の下端に接続された第2曲部46fと、第2曲部46fの上端に接続された第2垂直部46gとを備える。第1曲部46dは、第1垂直部46eと直管部46aを連通させる扇形状の曲がり管である。第1垂直部46eと第2垂直部46gは鉛直方向に延びる直管である。第2曲部46fは、第1垂直部46eの下端と第2垂直部46gの下端を連通させる半円環状の曲がり管である。
分岐管部46cの端である第1導入口46hには内視鏡50が挿入される。直管部46aの端である第2導入口46bには給気装置53が接続される。分岐管部46c内には、所定の比重の液体(水)が貯留されている。垂直部46e,46gの全高は、貯留した液体による水頭圧によって、第2導入口46bから注入した所定圧力の空気の漏れを防ぐことが可能な長さに設定されている。
内視鏡50は、延在する軸線を中心として希望の方向に変形可能なユニバーサルコードを備える。内視鏡50は、ユニバーサルコードの先端に対物レンズ50aを備え、撮像した画像を制御装置70(図6参照)に出力する。なお、内視鏡50の画像スコープの長さ方向に目印を付加し、この印に基づいて透明度が無い汚水中でも水中軸受30にアクセス可能とすることが好ましい。
図4を参照すると、給気装置(第2供給手段)53は、所定圧力の圧搾空気を供給するコンプレッサ54、所定圧力の空気を貯留可能なアキュムレータ55、及び逆止弁56を備える。コンプレッサ54及びアキュムレータ55によって、外部配管45及び通路42を通して間隙部40へ所定圧力の空気を供給する。逆止弁56は、アキュムレータ55から外部配管45に向けた空気の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する。
第1導入口46hから挿入した内視鏡50は、外部配管45及び通路42を通して間隙部40内に案内され、摺接部材34の摩耗状態及び損傷状態を撮像する。
具体的には、間隙部40Aに対して内視鏡50は、外部配管45、通路42Aを通して案内される。間隙部40Bに対して内視鏡50は、外部配管45、通路42Bを通して案内される。図3に示すように、間隙部40A,40B内では、内視鏡50は、ホルダ35の内周面の内周面に沿って案内され、回転軸25周りに移動される。
間隙部40Cに対して内視鏡50は、外部配管45、通路42Cを通して案内される。間隙部40C内では、内視鏡50は、スペーサ37(ホルダ36)の内周面に沿って案内され、回転軸25周りに移動される。
間隙部40A,40C内では、上段の摺接部材34の下側部分と下段の摺接部材34の上側部分とを撮像し、点検できる。間隙部40B内では、下段の摺接部材34の下側部分を撮像し、点検できる。
給気装置53によって間隙部40に空気を供給することで、間隙部40を画定するホルダ35,36の内壁、摺接部材34の軸方向の端面、及び回転軸25と摺接部材34の間の汚れを除去し、洗浄できる。つまり、給気装置53は、第1の洗浄装置の機能を兼ね備える。これにより、内視鏡50によって摺接部材34の状態を鮮明に確認できる。また、揚水に含まれた微細な異物(塵埃等)による摺接部材34のアブレシブ摩耗を抑制し、摺接部材34を長寿命化できる。
直管17側のホルダ35では、必要に応じて2個の間隙部40A,40Bのうちのいずれかに選択的に空気を供給する。これにより、ホルダ35内を効率的に洗浄できるため、利便性及び洗浄性を向上できる。
(第2の給気装置の概要)
図2A及び図2Bに示すように、水中軸受30の上側には、スリーブ25aと摺接部材34の間の隙間への異物の侵入を抑制するための収容部60が設けられている。図1に示すように、収容部60には第2の洗浄装置の機能を兼ね備える給気装置67が接続されている。給気装置67は、ポンプケーシング15の外部と収容部60とを連通させる通路(第2通路)65に接続されている。
図5は直管17側のホルダ35の上側に配置した収容部60を示す。ベーンケーシング18のホルダ36の上部に配置する収容部60も同様に形成されている。図5に示すように、収容部60は、水中軸受30に隣接して設けられ、摺接部材34と回転軸25の間の隙間を通して間隙部40に連通するとともに、ポンプケーシング15内の揚水路15aに連通している。収容部60は、カバーケース31のフランジ部31aに取り付けられた受け部61と、回転軸25に取り付けられたカバー62とを備える。
受け部61は、円環状の底壁部61aと、底壁部61aの外周から突出した円筒状の外周部61bとを備え、外周部61bの上端を開口61cとした受皿状(有底円筒状)である。底壁部61aの内周部とスリーブ25aの外周面との間には、水が流動可能な隙間を有する。
カバー62は、外周部61bを取り囲む円筒状の外周部62aと、外周部62aの上端を覆う円環状の天壁部62bとを備え、外周部62aの下端を開口62cとした蓋体である。カバー62の外周部62aと受け部61の外周部61bとの間には、水が流動可能な隙間を有する。
カバー62の外嵌によって受け部61の開口61cが塞がれている。回転軸25の駆動によって、カバー62は回転軸25と一体に回転し、受け部61は静止状態に維持される。つまり、受け部61に対してカバー62は相対的に回転する。
カバー62の外周部62aの下端、及び受け部61の外周部61bの下端には、揚水に含まれる異物の侵入を抑制するスリンガ63がそれぞれ配置されている。カバー62の外周部62aの内面には、水の流動を抑制するラビリンス64が設けられている。ラビリンス64は、環状の溝を軸方向に並設した構成であり、受け部61の外周部61bと対向する部分に設けられている。なお、ラビリンス64は、受け部61の外周部61bに設けてもよいし、両方の外周部61b,62aに設けてもよい。
通路65は、ポンプケーシング15の外部と収容部60内とを連通させる孔である。通路42と同様に、通路65は、複数のリブ35b,36bのうち、1個に設けられ、残りには設けられていない。図2Aに示す直管17側の通路65Aは、通路42Aを形成したリブ35bに形成されている。図2Bに示すベーンケーシング18側の通路65Bは、通路42Cを形成したリブ36bとは異なるリブ36bに形成されている。但し、通路65A,65Bを形成するリブ35b,36bは、必要に応じて変更が可能である。
直管17側の通路65Aは、通路42Aと同様に、ホルダ35、リブ35b、及び直管17を貫通している。ベーンケーシング18側の通路65Bは、通路42Cと同様に、ホルダ36、リブ36b、軸受ケーシング18a、リブ18b、及びベーンケーシング18を貫通している。
収容部60側に位置する通路65A,65Bの端部65aはそれぞれ、回転軸25に沿って上向きに延びている。端部65aと連通するように、カバーケース31のフランジ部31aと受け部61の底壁部61aには、連通孔31d,61dがそれぞれ設けられている。
図1を参照すると、ポンプケーシング15の外側には、2本の外部配管66が配置されている。一方の外部配管66の下端は通路65Aに接続され、他方の外部配管66の下端は通路65Bに接続されている。2本の外部配管66の上端はそれぞれ給気装置67に接続されている。
給気装置(第1供給手段)67は、図4に示す給気装置53と同様に、所定圧力の圧搾空気を供給するコンプレッサ、所定圧力の空気を貯留可能なアキュムレータ、及び逆止弁を備える。
収容部60にはスリンガ63及びラビリンス64が設けられているが、ポンプ10の運転中に揚水路15aから収容部60へ揚水の一部が流入することは不可避である。収容部60内に流入した揚水の一部は、摺接部材34とスリーブ25aの間の隙間へ流れる。但し、揚水に含まれた異物は、収容部60内に貯まる水によって分離される。このように、摺接部材34とスリーブ25aの間への異物の侵入を抑制できるため、摺接部材34のアブレシブ摩耗を抑制し、摺接部材34を長寿命化できる。
給気装置67によって通路65に空気を供給することで、収容部60内、回転軸25と摺接部材34の間の隙間、及び間隙部40内の汚れを除去し、残存していた汚水を空気に置換できる。これにより、摺接部材34の状態を鮮明に確認できる。なお、収容部60内及び水中軸受30内に残存していた汚水は、ホルダ35,36の下端から揚水路15aへ排出される。
次に、給気装置53,67による空気の流れについて、具体的に説明する。
間隙部40Aに供給された空気は上下に分流する。上向きに流れる空気は、上段の摺接部材34とスリーブ25aの間の隙間、収容部60内、及び受け部61とカバー62の間の隙間の順で通過し、揚水路15a内へ排出される。下向きに流れる空気は、下段の摺接部材34とスリーブ25aの間の隙間、間隙部40B内、及び回転軸25とホルダ35の間の隙間Sの順で通過し、揚水路15a内へ排出される。間隙部40Cに供給された空気は、下向きに流れる空気が下段の摺接部材34とスリーブ25aの間の隙間を通過すると、揚水路15a内へ直ぐに排出される点でのみ、間隙部40Aの場合と相違する。
間隙部40Bに供給された空気の大部分は、下段の摺接部材34とスリーブ25aの間の隙間、間隙部40A、上段の摺接部材34とスリーブ25aの間の隙間、収容部60内、及び受け部61とカバー62の間の隙間の順で通過し、揚水路15a内へ排出される。供給された空気の一部は、回転軸25とホルダ35の隙間Sを通って揚水路15a内へ排出される。
収容部60内に供給された空気の大部分は、上段の摺接部材34とスリーブ25aの間の隙間、間隙部40A、下段の摺接部材34とスリーブ25aの間の隙間、間隙部40B、及び回転軸25とホルダ35の隙間Sの順で通過し、揚水路15a内へ排出される。供給された空気の一部は、受け部61とカバー62の間の隙間を通って揚水路15a内へ排出される。
空気の流れが相殺されることを防止するために、直管17側では、間隙部40A、間隙部40B、及び収容部60への給気は、同時に行わない方が好ましい。また、ベーンケーシング18側では、間隙部40C及び収容部60への給気は、同時に行わない方が好ましい。
(システムの概要)
図6に示すように、立軸ポンプ10は、駆動部28、内視鏡50、及び合計で5つの給気装置(コンプレッサ)53,67に電気的に接続された制御装置70を備える。制御装置70には、パーソナルコンピュータを用いることができる。制御装置70には更に、立軸ポンプ10の運転状態等を表示するモニタ71が電気的に接続されている。
制御装置70は、吸水槽1内の水位又はオペレータの指示に従って駆動部28を駆動する。点検時には、内視鏡50によって撮像した画像をモニタ71に表示するとともに、オペレータの指示に従って給気装置53,67を駆動する。これにより、水中軸受30の点検作業を容易かつ確実に行うことができる。
制御装置70には更に、流量計72と差圧計73が電気的に接続されている。図4を参照すると、流量計72は、給気装置53のアキュムレータ55と逆止弁56の間に介設されている。給気装置67にも流量計72を設けてもよい。差圧計73の一端は、アキュムレータ55と流量計72の間に接続されている。図1を参照すると、差圧計73の他端は、吐出管20内に接続されている。
磨耗によって摺接部材34とスリーブ25aの間の隙間が拡大すると、これらの隙間を通過する空気流量が増加する。制御装置70は、流量計72により検出された空気流量と、差圧計73により検出された差圧と、定められた閾値とに基づいて、摺接部材34の摩耗状態を判断する監視装置としての機能を兼ね備えている。また、制御装置70は、摺接部材34の摩耗が許容値を超えたと判断すると、交換を促すメッセージをモニタ71に表示させる。
このように構成した本実施形態の立軸ポンプ10は、以下の特徴を有する。
通路42を通して間隙部40に内視鏡50を挿入することで、間隙部40に隣接した摺接部材34の摩耗状態や損傷状態を点検できる。内視鏡50は筒状の空間からなる間隙部40に挿入されるため、ポンプ10が運転中であるか否、つまり回転軸25が回転しているのか停止しているのかに拘わらず、点検を行うことができる。
通路42は、ポンプケーシング15、リブ35b,36b、及びホルダ35,36を貫通して設けられ、通路42の端部42aは、回転軸25に接する線Tに沿って延びている。よって、内視鏡50の操作が不慣れな作業者であっても、ホルダ35,36の内面に沿って内視鏡50を回転軸25周りに移動でき、摺接部材34全体を容易かつ確実に点検できる。
通路42を通して間隙部40に空気を供給する給気装置53を備える。これにより、間隙部40を画定するホルダ35,36の内周面、摺接部材34の端面、及び回転軸25と摺接部材34の間の汚れを除去し、残存していた汚水を空気に置換できる。よって、摺接部材34の状態を鮮明に確認できるため、点検による判断の簡易性及び信頼性を向上できる。また、揚水に含まれた微細な異物による摺接部材34のアブレシブ摩耗を抑制し、摺接部材34を長寿命化できる。
通路42に連通する外部配管45に接続された導入部46に、内視鏡50が挿入される第1導入口46hと、給気装置53が接続される第2導入口46bとが設けられている。よって、通路42を通して間隙部40に内視鏡50と空気を確実に導入できる。
水中軸受30の上側に収容部60が隣接して設けられている。ポンプ10の運転中には、揚水の一部が揚水路15aから収容部60を通って摺接部材34と回転軸25の間の隙間へ流れるが、揚水に含まれる微細な異物は、収容部60内に一時的に貯まる水によって分離される。よって、摺接部材34と回転軸25の間への異物の流入を抑制できるため、この点でも摺接部材34のアブレシブ摩耗を抑制し、摺接部材34を長寿命化できる。
収容部60内とポンプケーシング15の外部とを連通させる通路65と、空気を供給する給気装置67とを備える。これにより、収容部60内、回転軸25と摺接部材34の間の隙間、及び間隙部40内の汚れを除去し、残存していた汚水を空気に置換できる。よって、摺接部材34の状態を鮮明に確認できるため、点検による判断の簡易性及び信頼性を向上できる。
直管17側のホルダ35には3つの給気装置53,67が接続され、これらを必要に応じて選択的に使用することで、ホルダ35内を効率的に洗浄できるため、利便性及び洗浄性を向上できる。流量計72と差圧計73の検出結果に基づいて水中軸受30の摩耗状態を判断する機能を備えているため、作業者による画像診断、及び制御装置70による自動診断を同時に実施できる。よって、点検に関する利便性及び信頼性を向上できる。
(第2実施形態)
図7A及び図7Bは第2実施形態の立軸ポンプ10の一部を示す。この第2実施形態では、カバー62の開口62cをシールする伸縮式のシール部材76を配置した点で、第1実施形態と相違する。なお、図7A及び図7Bでは、直管17側の収容部60のみを図示しているが、ベーンケーシング18側の収容部60にも同様に形成されている。
カバー62と対向するホルダ35には、外周部62aの下端と対応する位置に、円環状に窪む凹部75が設けられている。この凹部75内には、可撓性を有する材料によって形成された伸縮可能な円環状のシール部材76が配置されている。シール部材76は、内筒部76a、外筒部76b、上壁部76c、及び下壁部76dを備える。
内筒部76aと外筒部76bは、波状の凹凸を繰り返す蛇腹状の円筒体である。内筒部76aにおける最小部分の直径は、外周部62aの内径よりも大きい。外筒部76bにおける最大部分の直径は、外周部62aの外径よりも小さい。上壁部76cは、内筒部76aの上端と外筒部76bの上端とに連なる円環状の板体である。下壁部76dは、内筒部76aの下端と外筒部76bの下端とに連なる円環状の板体である。下壁部76dには、通路78に連通する通気孔(図示せず)が設けられている。
ホルダ35の複数のリブ35bのうちの1個には、ポンプケーシング15の外部とシール部材76内とを連通させる通路(第3通路)78が設けられている。通路65と同様に、通路78は、複数のリブ35aのうち、1個に設けられ、残りには設けられていない。本実施形態の通路78は、通路65を形成したリブ35aに形成されているが、異なるリブ35aに形成されてもよい。通路78は、ホルダ35の本体35aとリブ35b、及び直管17を貫通している。シール部材76側に位置する通路78の端部78aは、下壁部76dの通気孔に連通している。
ポンプケーシング15の外側には、いずれも図示しない外部配管と給気装置(第3供給手段)とが配置されている。外部配管の下端は通路78に接続され、外部配管の上端は給気装置に接続されている。給気装置は、図4に示す給気装置53と同様に、所定圧力の圧搾空気を供給するコンプレッサ、所定圧力の空気を貯留可能なアキュムレータ、及び逆止弁を備える。
給気装置によって通路78に空気を供給することで、シール部材76内に空気を充満させ、カバー62の外周部62aの下端に向けてシール部材76を伸張できる。外部配管は切換弁を備え、シール部材76内の空気が排出されることで、カバー62の外周部62aから離反するようにシール部材76を収縮できる。
回転軸25の回転を停止した状態で、シール部材76の上壁部76cを外周部62aの下端に圧接してシールすることで、受け部61とカバー62の間からの空気の漏れを防止する。この状態で、給気装置67(図6参照)を駆動することにより、スリーブ25aと摺接部材34の間及び間隙部40を通して、収容部60内の汚水をホルダ35の下端から効率的に排出できる。よって、残存していた汚水を空気に効率的に置換できるとともに、収容部60、摺接部材34と回転軸25の間の隙間、及び間隙部40を効率的に洗浄できる。
(導入部の変形例)
図8及び図9は導入部46の変形例を示す。図4に示す導入部46の代わりに図8又は図9に示す導入部46を用いても、第1実施形態と同様に、通路42を通して間隙部40に空気と内視鏡50を確実に導入できる。
図8の変形例では、導入部46は、有底筒状の容器80と、円筒状の内筒81と、接続パイプ82とを備える。
容器80は、底壁80aと、底壁80aの外周部から立ち上がった筒状の外周壁80bとを備える。外周壁80bの上端開口80cが、内視鏡50を導入する第1導入口を構成する。
内筒81は、両端を開口したパイプであり、下端開口81aが容器80内に配置され、上端開口81bが容器80から上方へ突出している。この上端開口81bが、給気装置53に接続される第2導入口を構成する。
接続パイプ82は、両端を開口したパイプであり、上端開口82aが内筒81内に配置され、下端の接続口82bが底壁80aを貫通して容器80の外側へ突出している。接続口82bに図1に示す外部配管45が接続される。
容器80内には所定の比重の液体(水)が貯留されている。液体は、下端開口81aによって連通した内筒81内にも流入している。外周壁80bの全高は、貯留した液体による水頭圧によって、上端開口81bから注入した所定圧力の空気の漏れを防ぐことが可能な寸法に設定されている。
内視鏡50は、容器80の上端開口80cから挿入され、下端開口81aから内筒81内の導入された後、上端開口82aから接続パイプ82内に導入される。これにより、図1に示す外部配管45及び通路42を通して間隙部40に内視鏡50を挿入できる。
給気装置53によって内筒81内に供給された空気は、容器80内の液体によって内筒81の下端開口81aから容器80内への流出が阻止される。そのため、空気は、内筒81内の上端開口82aから接続パイプ82内に流入し、図1に示す外部配管45及び通路42を通して間隙部40に供給される。
図9の変形例では、導入部46は、四つ又パイプによって構成されている。詳しくは、導入部46は、図1に示す外部配管45に接続される接続管部85a、内視鏡50を挿入する第1導入管部85b、空気が導入される第2導入管部85c、及び水が導入される第3導入管部85dを備える。
第1導入管部85bには、内視鏡50の外周面に圧接されるパッキン86が取り付けられている。第2導入管部85cには、給気装置53が接続されている。第3導入管部85dには、水を供給する給水装置87が接続されている。
第1導入管部85bに挿入した内視鏡50は、接続管部85a、並びに図1に示す外部配管45及び通路42を通して間隙部40に案内される。
給気装置53によって第2導入管部85cに供給された空気は、接続管部85a、並びに図1に示す外部配管45及び通路42を通して間隙部40に案内される。
給気装置53によって第2導入管部85Cに空気を供給するとともに、給水装置87によって第3導入管部85dに水を供給することで、接続管部85a、並びに図1に示す外部配管45及び通路42を通して、所定圧力の水を間隙部40に供給できる。これにより、水中軸受内、ホルダ内、及び収容部内に残存していた汚水を水に置換できる。なお、間隙部40内の透明度が30%以上になるまで、給水装置87によって水を供給することが好ましい。
なお、本発明のポンプ10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
例えば、水中軸受30に用いる摺接部材34の数は、1個のみとしてもよいし、3個以上としてもよい。第1実施形態においては、通路65及び給気装置67を設けなくてもよい。第2実施形態においては、カバー62の外周部62aが対向する部分が水中軸受30である場合、シール部材76を水中軸受30に配置することが好ましい。
内視鏡50を挿入するための間隙部40及び通路42を設ける構成は、立軸ポンプ10に限られず、水平方向に延びるように回転軸を配置した横軸ポンプに適用してもよい。