JP7253741B2 - セメント濁水の浄化方法、およびセメント濁水の浄化システム - Google Patents
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Description
本発明の一態様に係るセメント濁水の浄化方法は、セメント濃度とイオン強度とが調整されたモデル濁水を複数準備し、モデル濁水毎に濃度が異なるようにして凝集剤を添加して、セメントの凝集沈降実験を行う。
モデル濁水は、ジャーテスト用のセメント濁水のモデルであり、イオン強度およびセメント濃度が調整されている。モデル濁水は、建設現場にて用いられるセメント、および当該セメントに添加される化学混和剤の種類および量に応じて組成が決定される。モデル濁水の組成を決定した後、当該モデル濁水に含まれるイオン濃度の評価条件を決定するとよい。また、決定したイオン濃度の評価条件に基づき、モデル濁水を調製するための条件を決定すればよい。
モデル濁水に用いるセメントは、特に限定されるものではなく、例えば、超微粒子セメント(UFC)、ポルトランドセメント(OPC)、高炉セメント(BFSC)、また、混合セメントや特殊セメント等を挙げることができる。建設現場に用いられるセメントに応じ、適宜、モデル濁水の調製に用いるセメントを選択すればよい。
モデル濁水において使用すべきセメントを決定した後、セメントから濁水中に溶出するイオン濃度の評価条件を決定するとよい。例えば、所定量のセメントを純水に添加し、十分に撹拌することで懸濁液を得た後、シェイカー等によって当該懸濁液を振とうしつつ、継時的にサンプルを採取する。シリンジフィルター等によって当該サンプルから浮遊物質を濾過し、得られたセメント抽出液のイオン濃度をイオンクロマトグラフィーによって測定し、このときに、濃度を測定すべきイオンの種類を決定するとよい。測定する代表的なイオン種としては、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、硫酸イオン(SO4 2-)、塩化物イオン(Cl-)、水酸化物イオン(OH-)等が挙げられる。なお、セメント種によってイオン種およびイオン濃度が異なるため、使用するセメント毎に濃度を測定すべきイオンの種類を決定することが望ましい。また、セメント濁水におけるイオン濃度の経時的変化から、セメントが水和し、イオン濃度が安定化するまでの水和時間を求め、当該水和時間をイオン濃度の評価条件の基準とすることがモデル濁水のイオン強度をより的確に求めるために好ましい(図1の(a))。
モデル濁水を調製するためのセメント懸濁液には、凝集沈降により除去する対象であるセメント粒子が浮遊物質として含まれる。セメント懸濁液は、建設現場におけるセメント濁水を再現すべく、建設現場と同様に所定量の化学混和剤が添加され得る。また、建設現場におけるセメント濁水と同程度の浮遊物質をモデル濁水に含ませるべく、セメント懸濁液における水/セメント質量比(g/g)を調製しておくとよい。
モデル濁水を調製するためのセメント抽出液は、モデル濁水のイオン濃度を調製するためのイオン溶液であって、セメントの懸濁液から溶出したイオンを含んでいる。
モデル濁水は、上述のように調製したセメント懸濁液とセメント抽出液とを混合することによって調製される。所定のセメント濃度に調製したセメント懸濁液と、セメント抽出液とを等量ずつ混合することで1つのモデル濁水を調製し、同じセメント濃度であるセメント懸濁液に、先のセメント抽出液とはイオン強度が異なる別のセメント抽出液を調製するという手順を繰り返し、これにより、所定のセメント濃度を有し、イオン強度が異なる複数のモデル濁水を調製する。1つのセメント濃度条件に対し、2つ以上のイオン強度条件が異なるモデル濁水を調製するとよい。
モデル濁水の評価結果から、建設現場におけるセメント濁水の管理を行うための管理図の作成方法について説明する。
本発明の一態様に係る管理図による、セメント濁水の浄化はイオン強度に関連する導電率測定によっても達成することができる。図5に示すように、上述のジャーテストを行ったときにおけるモデル濁水のイオン強度(Ic)と導電率(EC)の対数との関係式は、略一次の関係を示している。このモデル濁水のイオン強度(Ic)と導電率(EC)との関係に基づき、建設現場の管理では、イオン強度に変えて、目標とするセメント除去率と、導電率とに基づき、どの凝集剤/セメント質量比(mf/mc)を採用すべきかを決定することができる。建設現場において、イオン強度に関連するECを管理することは、適切な添加量を決定するための有効な方法である。
本発明の一実施形態に係るセメント濁水の浄化システムは、本発明の一態様に係るセメント濁水の浄化方法によって、セメント濁水を浄化する、セメント濁水の浄化システムである。
モデル濁水を調整するための超微粒子セメント(UFC)として、HNP-1500(日鉄住金セメント株式会社製)を使用した。
0.5gの超微粒子セメントを1Lの純水に添加し、当該セメント懸濁液を1分間、家庭用ミキサーIHB-602-W(アイリスオーヤマ株式会社製)を用いて急速撹拌した。次いで、セメント懸濁液をポリプロピレン容器に移し、5分間、ガラス棒で攪拌しつつ、超音波発生装置VS-D100(アズワン株式会社製)によって超音波分散した。その後、超音波分散したセメント懸濁液をシェイカーMMS-2000(EYELA,東京理科機器株式会社製)により150rpmの条件で振とうしつつ、継時的にサンプルを採取し、イオン濃度を測定し、イオン強度を算出した。なお、振とう時間は、イオンの溶出量が減り、イオンの数値が安定するための経過時間として設定したが、イオン溶出量の計時変化を把握すればよく、3時間と限らなくともよい。
超微粒子セメントを含むセメント懸濁液と、これとは別に調製した超微粒子セメントの懸濁液から抽出したセメント抽出液とが等量になるように混合した。これにより超微粒子セメントの濃度が500mg/Lである条件において、それぞれが異なるイオン強度を有する複数のモデル濁水を調製した。
モデル濁水用のセメント懸濁液の調製として、まず、超微粒子セメント0.5g当りに対し、0.1gの高性能減水剤が添加されるように、純水に予め高性能減水剤を溶解した。次いで、高性能減水剤を添加した純水に、水/セメント質量比(w/c)が1000となるように、超微粒子セメントを添加した。その後、セメント懸濁液を1分間、家庭用ミキサーを用いて急速撹拌し、セメント懸濁液をポリプロピレン容器に移し、5分間、ガラス棒で攪拌しつつ、超音波分散した。その後、超音波分散したセメント懸濁液を150rpmの条件で3時間振とうした。振とうして得たセメント懸濁液を、浮遊物質(SS)を含むモデル濁水用のセメント懸濁液とした。
モデル濁水用のセメント抽出液は、水/セメント質量比が10、100、500、1000、および2000であるセメント懸濁液を別個に調製し、これらセメント懸濁液からイオンが溶解したセメント抽出液を調製した。純水に対して所定量の超微粒子セメントを添加し、セメント懸濁液を1分間、家庭用ミキサーを用いて急速撹拌し、セメント懸濁液をポリプロピレン容器に移し、5分間、ガラス棒で攪拌しつつ、超音波分散した。その後、超音波分散したセメント懸濁液を150rpmの条件で3時間振とうした。振とうして得たセメント懸濁液から浮遊物質(SS)を含む濁水を収集し、シリンジフィルター(0.45μm)を用いて濾過し、これにより、セメント抽出液を得た。
ジャーテストは、ジャーテスト装置JMD-2E(宮本理研工業株式会社製)を用い、室温(20℃)の条件にて行った。ジャーテスト用の撹拌装置における撹拌翼はシングルブレードであり、幅は50mm、高さは16mmであった。複数のトールビーカーに300mLのモデル濁水を投入し、モデル濁水毎に異なる量にて凝集剤であるPGAFを添加した。なお、モデル濁水に添加した凝集剤の添加量は、凝集剤/セメント質量比をmf/mcと規定し、0.0067~2.6667の範囲内にて、10プロットの異なる濃度条件で評価した。
図3に示すグラフに基づき、式(1-C/C0)×100から計算した除去率(%)をxyz座標空間にプロットした3次元グラフを図4の(a)に示す。図4の(a)の3次元グラフにおいて、(1-C/C0)×100=80に位置するx-z面は、目標とする除去率が80%である条件を示しており、x-z面上の実線に沿ってセメント濁水のイオン強度が所定のときに必要とされる凝集剤/セメント質量比(mf/mc)を確認することができる。図4の(a)の3次元グラフをもとに、図4の(b)に示すように、x-z面上の実線を目標とするセメント除去率を示すプロットとして、x軸がイオン強度(Ic)、z軸が凝集剤/セメント質量比(mf/mc)であるグラフに抽出する。これによって、必要とされるセメント濁水に含まれる浮遊物質の除去率に応じ、必要とされる凝集剤の添加量を決定することができる。例えば、図4の(b)において、低いイオン強度のセメント濁水において除去率80%以上を目標とする場合、凝集剤/セメント質量比(mf/mc)を大きくすることで、より高い除去率を達成できることを予測することができる。また、例えば、セメント濁水のイオン強度が高い場合、凝集剤/セメント質量比(mf/mc)を大きくすることによる効果は限定的であると判断でき、過剰な凝集剤の添加を回避することもできる。
図5に、モデル濁水におけるイオン強度(Ic)と導電率(EC)とをプロットしたグラフを示す。図5に示す、グラフに示されているイオン強度と導電率との各プロットは、上述のイオンクロマトグラフィーによって測定されたセメント抽出液のイオン強度、および導電率である。図5に示すように、セメント抽出液におけるイオン強度と導電率の対数値とは略一次の関係(y=8.3331x1.0434+0.9578)を示していた。当該関係式にセメント濁水の導電率を入力することで、セメント濁水のイオン強度を推定できることを確認した。
セメント濁水を処理するための処理装置における撹拌力の影響を評価するため、別の実験として、撹拌装置の撹拌翼をシングルブレードからダブルブレードに変更し、3分間、150rpmの急速撹拌を、5分間、240rpmの急速撹拌に変更した以外は、同じ条件にてジャーテストを行った。
上述のジャーテストと同じ条件においてモデル濁水を調製し、所定の条件で攪拌した後、120分間、静置した。その後、浮遊物を含む濁水をモデル濁水として10mL採取した。ゼータサイザーナノZS(マルバーン・パナリティカル社製)を用いて、電気泳動移動度μを測定した。超微粒子セメントの平均粒径(約1.5μm)に対し、拡散二重層の厚さは十分に小さいものと判断されることから、以下に示すスモルコフスキーの式からゼータ電位ζを求めた。
10 原水槽
11 反応槽
11a 撹拌部
12 沈降槽
13 放流槽
20 制御部
20a 測定部(導電率測定部,イオン測定部)
20b 測定部(濁度測定部)
21 定量フィーダ(添加部)
Claims (7)
- 所定のセメント濃度を有し、イオン強度が互いに異なる複数のモデル濁水を準備し、
モデル濁水毎に濃度が異なるように凝集剤を添加したモデル濁水を複数調製し、
前記凝集剤を添加したモデル濁水毎に、セメント濃度の変化率とイオン強度とを測定し、
目標とするセメント除去率に相当するセメント濃度の前記変化率と、セメント濁水のイオン強度とから、前記セメント濁水への凝集剤の添加量を決定する、セメント濁水の浄化方法。 - 前記モデル濁水のセメント濃度とイオン強度とを、前記モデル濁水が含むセメントの濃度を調整したセメント懸濁液と、イオン強度を調整したセメント抽出液とを混合して調整する、請求項1に記載のセメント濁水の浄化方法。
- 前記モデル濁水のイオン強度を第1軸に設定し、前記モデル濁水の凝集剤/セメント質量比を第2軸に設定する管理図に、イオン強度と、凝集剤/セメント質量比とに対する、前記モデル濁水の吸光度比から算出される前記セメント除去率の変化を表示し、
前記管理図に表示された前記セメント除去率と、前記セメント濁水のイオン強度とから、前記セメント濁水への凝集剤の添加量を決定する、請求項1又は2に記載のセメント濁水の浄化方法。 - 前記モデル濁水の導電率を測定し、前記モデル濁水のイオン強度と前記モデル濁水の導電率との関係式を算出し、当該関係式に前記セメント濁水から測定した導電率を入力して算出されるイオン強度と、前記セメント除去率とから、前記セメント濁水への凝集剤の添加量を決定する、請求項3に記載のセメント濁水の浄化方法。
- 請求項4に記載のセメント濁水の浄化方法を行う、セメント濁水の浄化システムであって、
前記浄化システムは、前記セメント濁水の導電率を測定する導電率測定部と、
前記導電率測定部が測定した導電率と、前記管理図から算出される管理データにおける前記セメント除去率とから、前記セメント濁水への凝集剤の添加量を決定する制御部と、
決定した添加量の凝集剤を前記セメント濁水に添加する添加部とを備える、セメント濁水の浄化システム。 - 請求項3に記載のセメント濁水の浄化方法を行う、セメント濁水の浄化システムであって、
前記浄化システムは、前記セメント濁水に含まれる各イオン種の濃度を測定するイオン測定部と、
前記イオン測定部が測定した前記セメント濁水のイオン濃度から算出されるイオン強度と、前記管理図に表示された前記セメント除去率とから、凝集剤の添加量を決定する制御部と、
決定した添加量の凝集剤を前記セメント濁水に添加する添加部とを備える、セメント濁水の浄化システム。 - 請求項5又は6に記載のセメント濁水の浄化システムであって、
前記添加部によって凝集剤を添加した前記セメント濁水からセメントを除去した排水の濁度を測定する濁度測定部を備える、セメント濁水の浄化システム。
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