(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。図1乃至図6は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
まず、図1及び図2により、本実施の形態によるキャップの概要について説明する。本実施の形態によるキャップは、例えばスパウト付き容器や、PETボトル等の容器を閉栓する際に好適に使用することができる。なお、本明細書中、「上」および「下」とは、それぞれキャップ10を正立させた状態(図2)における上方および下方のことをいう。
図1及び図2に示すように、キャップ10は、後述する複数の金型部材80を用いて成形された樹脂製のキャップ本体20と、キャップ本体20に連結されたピルファープルーフバンド70とを備えている。ここでは、まず、キャップ本体20について説明する。
キャップ本体
図1乃至図4Bに示すように、キャップ本体20は、天板30と、天板30の外周縁30eから下方に延び、キャップ本体20の軸線方向Xに対して傾斜する複数の傾斜突起50が設けられた筒状部40とを備えている。
このうち天板30は、円盤状に形成されており、天板30の中心に、後述する金型部材80の後述するゲート81dに対応し(図5A参照)、後述する金型部材80のコア82側へ引込むようなテーパ形状の凹部31が形成されている。また、図4Bに示すように、天板30の内面のうち、略中央部には下方に突出した栓部32が設けられている。また、栓部32の先端部には環状アンダーカット33が設けられ、環状アンダーカット33が、容器100の口部110に嵌合するように構成されている。
筒状部40は、図1乃至図3及び図4Bに示すように、天板30の下方に配置された小径部41と、小径部41の下方に配置された拡径部42と、拡径部42の下方に配置された大径部43とを有している。小径部41および大径部43は、それぞれ全体として略均一な径をもつ円筒形状を有しており、大径部43は、小径部41よりも径が大きくなっている。一方、拡径部42は、小径部41側から大径部43側に向けて徐々に径が拡大する形状を有している。
図2及び図4Bに示すように、筒状部40の大径部43の下端部には、複数の台座部47が形成されている。この台座部47の高さ(上下方向距離)は、後述する複数のブリッジ71よりも小さくなっており、各々の台座部47と、ピルファープルーフバンド70との間に、隙間が形成されるようになっている。このように、キャップ本体20の筒状部40の下端部に複数の台座部47が形成されていることにより、金型部材80を用いてキャップ10を作製した際に、ピルファープルーフバンド70と筒状部40とを互いに連結するブリッジ71が潰されて破断してしまう不具合を抑制することができる。すなわち、金型部材80を用いてキャップ10を作製した際に、ピルファープルーフバンド70に上方への力が作用した場合であっても、ピルファープルーフバンド70が筒状部40ではなく、筒状部40の下端部に形成された複数の台座部47に当接する。このため、ブリッジ71が完全には潰されることはない。この結果、ブリッジ71が潰されて破断してしまう不具合を抑制することができる。
また、図4Bに示すように、筒状部40の内面に、容器100の口部110のねじ部111に螺合するねじ部45が形成されている。なお、キャップ本体20は、打栓式であっても良い。
次に、筒状部40に設けられた傾斜突起50について説明する。
傾斜突起50は、上述したように、キャップ本体20の軸線方向Xに対して傾斜している(図1及び図2参照)。このように、複数の傾斜突起50がキャップ本体20の軸線方向Xに対して傾斜することにより、使用者がキャップ10を開栓する際に、傾斜突起50に対する使用者の指の指掛かり性を向上させることができ、キャップ10のグリップ性を向上させることができる。このため、キャップ10に対して、開栓方向の力を作用させやすくなり、容易にキャップ10を開栓することができる。また、図2に示すように、本実施の形態による複数の傾斜突起50は、筒状部40の内面に形成されたねじ部45(図2の仮想線(二点鎖線)参照)のねじ溝が延びる方向に対して傾斜している。これにより、キャップ本体20をキャップ10の開栓方向に回転させた際に、傾斜突起50に対する使用者の指の指掛かり性を更に向上させることができる。なお、この複数の傾斜突起50の軸線方向Xに対する傾斜角度θ1は、キャップ本体20の外径等にもよるが、例えば10°以上50°以下であっても良い。また、複数の傾斜突起50のねじ部45のねじ溝が延びる方向に対する傾斜角度θ11は、90°以上120°以下であっても良い。
また、複数の傾斜突起50は、筒状部40の円周方向に沿って略等間隔に配置されており、各々の傾斜突起50は、互いに略平行に延びている。また、複数の傾斜突起50は、円周方向に沿って5°以上30°以下の間隔で配置されている。複数の傾斜突起50を円周方向に沿って5°以上30°以下の間隔で配置させることにより、使用者がキャップ10を開栓する際に、傾斜突起50に対する使用者の指の指掛かり性を向上させることができ、キャップ10のグリップ性を向上させることができる。
また、図1乃至図4Aに示すように、複数の傾斜突起50は、第1傾斜突起51と、第1傾斜突起51よりも短い第2傾斜突起52とを含んでいる。このうち第1傾斜突起51は、小径部41の高さ方向の略全域に亘って延びている。また、複数の傾斜突起50の下端は、拡径部42まで延びている。これにより、使用者がキャップ10を開栓する際に、複数の傾斜突起50に使用者の指が確実に当接する。このため、キャップ10に対する使用者の指の指掛かり性を向上させることができ、キャップ10のグリップ性を向上させることができるようになっている。また、図1及び図2に示すように、第1傾斜突起51のうち第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511は、小径部41の高さ方向の略全域に亘って延びることなく、他の第1傾斜突起51よりも短くなっていても良い。これにより、キャップ本体20を金型部材80から離型する際の離型性を向上させることができる。なお、図1に示す例においては、第2傾斜突起52と、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511は、互いに異なる傾斜突起50に対応する仮想線IL上に位置している。
また、図4Aに示すように、キャップ本体20の水平断面において、複数の傾斜突起50は、それぞれ筒状部40の外面側に傾斜する裾部51aを有している。また、キャップ本体20の少なくとも一部の水平断面において、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511の裾部511aと筒状部40の外面41aとがなす角度(以下、裾部角度とも称する)θ2は、他の第1傾斜突起51の裾部51aと外面41aとがなす角度θ3よりも大きくなっている。ここで、角度θ2は、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511の裾部511aと筒状部40の外面41aとが交わる点における外面41aに対する接線と、当該裾部511aとがなす角度を意味している。また、角度θ3は、他の第1傾斜突起51の裾部51aと筒状部40の外面41aとが交わる点における外面41aに対する接線と、当該裾部51aとがなす角度を意味している。角度θ2が角度θ3よりも大きくなっていることにより、後述するように、キャップ本体20を金型部材80から離型する際の離型性を向上させることができる。なお、この場合、角度θ2は、例えば180°以上200°以下とすることができる。また、角度θ3は、例えば150°以上175°以下とすることができる。
なお、図4Aに示すように、キャップ本体20の少なくとも一部の水平断面において、上述した第1傾斜突起511に隣接する第1傾斜突起512の裾部512aと筒状部40の外面41aとがなす角度θ31は、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511以外の第1傾斜突起51の裾部51a(例えば、図4に示す第1傾斜突起513の裾部513a)と筒状部40の外面41aとがなす角度θ3よりも大きくなっている。ここで、角度θ31は、上述した第1傾斜突起511に隣接する第1傾斜突起512の裾部512aと筒状部40の外面41aとが交わる点における外面41aに対する接線と、当該裾部512aとがなす角度を意味している。角度θ31が角度θ3よりも大きくなっていることにより、キャップ本体20を金型部材80から離型する際の離型性を向上させることができる。このように、一の第1傾斜突起51における裾部角度が、当該一の第1傾斜突起51よりも円周方向において第2傾斜突起52から遠い側に位置する他の第1傾斜突起51における裾部角度よりも大きくなるように構成することにより、キャップ本体20を金型部材80から離型する際の離型性を向上させることができる。
また、第1傾斜突起51の幅W1(円周方向に沿った長さ)は、例えば、0.5mm以上2.0mm以下とすることができる。第1傾斜突起51の幅W1を0.5mm以上とすることにより、使用者がキャップ10を開栓する際に、傾斜突起50に対する使用者の指の指掛かり性を向上させることができ、キャップ10のグリップ性を向上させることができる。また、第1傾斜突起51の幅W1を2.0mm以下とすることにより、キャップ本体20を作製するための樹脂量を低減することができる。
また、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511の高さH11(径方向距離)は、他の第1傾斜突起51の高さH1よりも低くなっている。これにより、キャップ本体20を複数の金型部材80から離型する際に、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511が金型部材80に干渉する不具合を抑制することができ、キャップ本体20を金型部材80から離型する際の離型性を向上させることができる。このような第1傾斜突起51の高さH1(径方向距離)は、例えば、0.1mm以上1.0mm以下とすることができる。また、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511の高さH11は、例えば、0.1mm以上0.5mm以下とすることができる。また、この場合、一の第1傾斜突起51の高さが、当該一の第1傾斜突起51よりも円周方向において第2傾斜突起52から遠い側に位置する他の第1傾斜突起51の高さよりも低くなるように構成されていても良い。これにより、キャップ本体20を複数の金型部材80から離型する際に、第1傾斜突起51が金型部材80に干渉する不具合を更に効果的に抑制することができ、キャップ本体20を金型部材80から離型する際の離型性を更に向上させることができる。
次に、第2傾斜突起52について説明する。第2傾斜突起52は、上述したように、第1傾斜突起51よりも短くなっている。図1及び図2に示すように、第2傾斜突起52は、複数の傾斜突起50を筒状部40の円周方向に等間隔に配置した場合における傾斜突起50に対応する仮想線ILと、複数の金型部材80のパーティングラインPLとが交わる部分に設けられている。このように、第2傾斜突起52が、傾斜突起50に対応する仮想線IL上に位置することにより、使用者がキャップ10を開栓する際に、使用者が違和感を感じることを抑制することができる。本実施の形態においては、2つの第2傾斜突起52が筒状部40に設けられている。これらの2つの第2傾斜突起52は、それぞれ異なる傾斜突起50に対応する仮想線IL上に位置している。また、第1傾斜突起51よりも短い第2傾斜突起52が、複数の金型部材80のパーティングラインPL上に位置することにより、後述するように、キャップ本体20(キャップ10)が樹脂製であっても、キャップ本体20を金型部材80から離型する際に、金型部材80の分離が困難であったり、傾斜突起50が変形してしまう不具合を抑制することができる。このため、キャップ本体20が樹脂製であっても、キャップ本体20の軸線方向Xに対して傾斜した傾斜突起50を形成することができ、キャップ開栓時のグリップ性を向上させることができる。
また、第2傾斜突起52の幅W2は、例えば、0.5mm以上1.0mm以下とすることができる。第2傾斜突起52の幅W2を0.5mm以上とすることにより、使用者がキャップ10を開栓する際に、傾斜突起50に対する使用者の指の指掛かり性を向上させることができ、キャップ10のグリップ性を向上させることができる。また、第2傾斜突起52の幅W2を1.0mm以下とすることにより、キャップ本体20を金型部材80から離型する際の離型性を向上させることができる。
さらに、このような第2傾斜突起52の高さH2は、例えば、0.1mm以上1.0mm以下とすることができる。
ピルファープルーフバンド
次に、ピルファープルーフバンドについて説明する。図1、図2、図4B及び図4Cに示すように、ピルファープルーフバンド70は、筒状部40の下端部に、複数のブリッジ71を介して連結されている。この複数のブリッジ71のうち、少なくとも1つは、破断可能になっている。また、ピルファープルーフバンド70は、周方向に分割された複数のリング分割体70aを有している。この場合、周方向で互いに隣接するリング分割体70aは、破断可能な連結部材72により、互いに連結されている。
また、図4Cに示すように、ピルファープルーフバンド70の内周面に、径方向内方に突出した突出部70bが設けられている。具体的には、突出部70bは、ピルファープルーフバンド70のリング分割体70aの内周面に設けられている。この場合、例えば、キャップ10が取り付けられる容器100には、ピルファープルーフバンド70の突出部70bと係合するラチェット部101が設けられていてもよい。この場合、キャップ10を開栓方向に回転させた場合に、ピルファープルーフバンド70の突出部70bと容器100のラチェット部101とが係合する。これにより、ブリッジ71および連結部材72に対して回転力が加わるようになっている。このため、破断可能なブリッジ71および連結部材72が破断するように構成されている。一方、キャップ10を閉栓方向に回転させた場合には、ピルファープルーフバンド70の突出部70bが容器100のラチェット部101を乗り越えるように構成されている。これにより、ブリッジ71および連結部材72に対して回転力を加えることなく、キャップ10が回転できるようになっている。そして、ブリッジ71が破断されているかどうかを確認することにより、あるいは、連結部材72が破断されているかどうかを確認することにより、キャップ10の不正な開封が生じていたかどうかを判断することができる。キャップ10が、このようなピルファープルーフバンド70を備えている場合、ピルファープルーフバンド70の突出部70bが容器100のラチェット部101に係止されることによってブリッジ71および連結部材72が破断されるため、予め定められた位置において、ブリッジ71および連結部材72を確実に破断させることができる。
ところで、上述したキャップ10は、合成樹脂材料を射出成形することにより一体に製作することができる。この場合の材料としては、例えば、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等を用いることができる。なお、上述したキャップ10は、合成樹脂材料を圧縮成形することにより一体に製作されても良い。
金型
次に、図5Aおよび図5Bにより、合成樹脂材料を射出成形してキャップ本体20(キャップ10)を作製する複数の金型部材80から構成される金型80Aについて、説明する。なお、図面を明瞭にするために、ピルファープルーフバンド70等を作製するためのスライドコア等の図示を省略しているが、ピルファープルーフバンド70は、キャップ本体20と一体に成形され得る。
図5Aおよび図5Bに示すように、金型80Aは、上部金型81aと、一対のキャビティ付き金型81b、81c(図5B参照)と、上部金型81aおよび一対のキャビティ付き金型81b、81c内に収容されるコア82とを有している。ここで、本明細書において、上部金型81a、一対のキャビティ付き金型81b、81cおよびコア82を総称して、金型部材80という。
このうち、上部金型81aは、図5Aに示す上下方向に沿って移動可能に構成されている。また、一対のキャビティ付き金型81b、81cは、分割方向d1(図5B参照)に沿って移動可能に構成されている。そして、上部金型81aが、図5Aに示す上下方向に沿って移動し、一対のキャビティ付き金型81b、81cが、分割方向d1に沿って移動することにより、金型80Aが開閉するようになっている。また、図5Aに示すように、上部金型81aおよび一対のキャビティ付き金型81b、81cを閉じた際に、天板30の中心に対応する位置に、射出樹脂を射出するためのゲート(注入口)81dが形成されるようになっている。この場合、上部金型81aおよび一対のキャビティ付き金型81b、81c内にコア82が収容された状態で、上部金型81aと、一対のキャビティ付き金型81b、81cと、コア82との間の空間にゲート81dから射出樹脂が射出されることにより、キャップ本体20が作製されるようになっている。
また、図5Bに示すように、上述した一対のキャビティ付き金型81b、81cには、第1傾斜突起51に対応する凹部83が形成されている。ここで、一対のキャビティ付き金型81b、81cの水平断面において、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511に対応する凹部831の裾部831aと一対のキャビティ付き金型81bの内面81eとがなす角度(以下、裾部角度とも称する)θ4は、角度θ2に対応し、他の第1傾斜突起51に対応する凹部83の裾部83aと一対のキャビティ付き金型81bの内面81eとがなす角度θ5は、角度θ3に対応する。このため、角度θ4は、角度θ5よりも大きくなっている。これにより、後述するように、キャップ本体20を金型部材80から離型する際の離型性を向上させることができる。また、この場合、一対のキャビティ付き金型81b、81cの少なくとも一部の水平断面において、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511に対応する凹部831の裾部831aは、分割方向d1に略平行な方向に沿って延びている。なお、一対のキャビティ付き金型81b、81cにおいても、一の第1傾斜突起51に対応する凹部83における裾部角度が、当該一の第1傾斜突起51よりも円周方向において第2傾斜突起52から遠い側に位置する他の第1傾斜突起51に対応する凹部83における裾部角度よりも大きくなっている。これにより、キャップ本体20を金型部材80から離型する際の離型性を向上させることができる
また、一対のキャビティ付き金型81b、81cのうち、キャビティ付き金型81bには、上述した第2傾斜突起52の一部に対応する凹部84aが形成されており、キャビティ付き金型81cには、上述した第2傾斜突起52の一部に対応する凹部84bが形成されている。具体的には、キャビティ付き金型81bの図5Bに示す下端(図5Bに示す分割方向d1の第1側s1の端部)には、第2傾斜突起52のうち、筒状部40の外面41aからの突出量が最大となる部分よりも分割方向d1の第2側s2の部分に対応する凹部84aが形成されており、キャビティ付き金型81cの図5Bに示す上端(図5Bに示す分割方向d1の第2側s2の端部)には、第2傾斜突起52のうち、筒状部40の外面41aからの突出量が最大となる部分よりも分割方向d1の第1側s1の部分に対応する凹部84bが形成されている。
ところで、上述したように、本実施の形態による複数の傾斜突起50は、キャップ本体20の軸線方向Xに対して傾斜している。これにより、キャップ本体20を射出成形により作製した後に、後述する金型部材80のコア82を一対のキャビティ付き金型81b、81cから、例えば下方に引き抜く場合、図5Aにおいて網掛け(灰色)によって示す符号A部と、キャップ本体20に形成された傾斜突起50とが干渉し、コア82に取り付けられたキャップ本体20を、一対のキャビティ付き金型81b、81cから下方に引き抜くことが困難になる。このため、一対のキャビティ付き金型81b、81cを分割させることにより、成形されたキャップ本体20を一対のキャビティ付き金型81b、81cから取り出す必要がある。
一方、一対のキャビティ付き金型81b、81cを分割させる場合においても、キャップ本体20の筒状部40の外面から突出する傾斜突起50の形状によっては、傾斜突起50と一対のキャビティ付き金型81b、81cとが干渉し、一対のキャビティ付き金型81b、81cを分割させることが困難な場合がある。とりわけ、一対のキャビティ付き金型81b、81cのパーティングラインPL近傍に位置する第1傾斜突起51においては、他の第1傾斜突起よりも、一対のキャビティ付き金型81b、81cの分割方向d1に直交する方向d2への突出量が大きくなる。このため、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511の形状が、図5Bの点線に示すように他の第1傾斜突起51と同様である場合、図5Bにおいて網掛け(灰色)によって示す符号B部と、キャップ本体20に形成された第1傾斜突起511とが干渉し、一対のキャビティ付き金型81b、81cを分割方向d1に移動させることが困難になる。
これに対して、本実施の形態では、一対のキャビティ付き金型81b、81cの水平断面において、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511に対応する凹部831の裾部831aと一対のキャビティ付き金型81bの内面81eとがなす角度θ4は、他の第1傾斜突起51に対応する凹部83の裾部83aと一対のキャビティ付き金型81bの内面81eとがなす角度θ5よりも大きくなっている。とりわけ、本実施の形態では、一対のキャビティ付き金型81b、81cの少なくとも一部の水平断面において、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511に対応する凹部831の裾部831aが、分割方向d1に略平行な方向に沿って延びている。このため、一対のキャビティ付き金型81b、81cを分割方向d1に移動させて分割させる際に、一対のキャビティ付き金型81b、81cとキャップ本体20の第1傾斜突起511とが干渉する不具合を抑制することができる。このため、キャップ本体20を成形した後に、キャップ本体20を一対のキャビティ付き金型81b、81cから取り出すことができるようになっている。
また、上述したように、一対のキャビティ付き金型81b、81cのうち、キャビティ付き金型81bには、上述した第2傾斜突起52の一部に対応する凹部84aが形成されており、キャビティ付き金型81cには、上述した第2傾斜突起52の一部に対応する凹部84bが形成されている。さらに、凹部84a、84bにより形成される第2傾斜突起52は、第1傾斜突起51よりも短くなっている。これにより、筒状部40の外面41aにキャップ本体20の軸線方向Xから傾斜する傾斜突起50が形成されているキャップ本体20であっても、一対のキャビティ付き金型81b、81cのうち、キャビティ付き金型81bを分割方向d1の第2側s2へ移動させ、キャビティ付き金型81cを分割方向d1の第1側s1へ移動させることにより、キャップ本体20を一対のキャビティ付き金型81b、81cから取り出すことができるようになっている。
次に、本実施の形態による作用について説明する。ここでは、キャップ10の製造方法について、図6および図7により説明する。
(キャップの製造方法)
まず、複数の金型部材80、すなわち、上部金型81aと、一対のキャビティ付き金型81b、81cと、コア82とを準備する。
次に、図6(a)に示すように、上部金型81aおよび一対のキャビティ付き金型81b、81c内にコア82を収容する。このようにして、上部金型81aと、一対のキャビティ付き金型81b、81cと、コア82とが型締めされる。
次いで、図6(b)-(c)に示すように、上部金型81aと、一対のキャビティ付き金型81b、81cと、コア82との間の空間に、ゲート81dから射出樹脂を射出する。射出樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンを用いることができる。射出された射出樹脂は、上部金型81aと、一対のキャビティ付き金型81b、81cと、コア82との間に進入し、この射出樹脂によりキャップ本体20が成形される。この際、一対のキャビティ付き金型81b、81cには、第1傾斜突起51および第2傾斜突起52にそれぞれ対応する凹部83、84a、84bが形成されている(図5A及び図5B参照)。これにより、キャップ本体20に第1傾斜突起51および第2傾斜突起52がそれぞれ形成される。
次に、図6(d)に示すように、得られたキャップ本体20が、複数の金型部材80から外方へ取出される。ここで、一対のキャビティ付き金型81b、81cの少なくとも一部の水平断面において、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511に対応する凹部831の裾部831aは、分割方向d1に略平行な方向に沿って延びている(図5B参照)。このため、一対のキャビティ付き金型81b、81cを分割方向d1に移動させて分割させる際に、一対のキャビティ付き金型81b、81cとキャップ本体20の第1傾斜突起511とが干渉する不具合を抑制することができる。このため、キャップ本体20を成形した後に、キャップ本体20を一対のキャビティ付き金型81b、81cから取り出すことができるようになっている。
また、一対のキャビティ付き金型81b、81cのうち、キャビティ付き金型81bには、上述した第2傾斜突起52の一部に対応する凹部84aが形成されており、キャビティ付き金型81cには、上述した第2傾斜突起52の一部に対応する凹部84bが形成されている。さらに、凹部84a、84bにより形成される第2傾斜突起52は、第1傾斜突起51よりも短くなっている。これにより、筒状部40の外面41aにキャップ本体20の軸線方向Xから傾斜する傾斜突起50が形成されているキャップ本体20であっても、一対のキャビティ付き金型81b、81cのうち、キャビティ付き金型81bを分割方向d1の第2側s2へ移動させ、キャビティ付き金型81cを分割方向d1の第1側s1へ移動させることにより、キャップ本体20を一対のキャビティ付き金型81b、81cから取り出すことができるようになっている。
このようにして、筒状部40にキャップ本体20の軸線方向Xに対して傾斜する複数の傾斜突起50が設けられたキャップ本体20が得られる。
以上のように本実施の形態によれば、第1傾斜突起51よりも短い第2傾斜突起52が、複数の傾斜突起50を筒状部40の円周方向に等間隔に配置した場合における傾斜突起50に対応する仮想線ILと、複数の金型部材80のパーティングラインPLとが交わる部分に設けられている。このように、第2傾斜突起52が、傾斜突起50に対応する仮想線IL上に位置することにより、使用者がキャップ10を開栓する際に、使用者が違和感を感じることを抑制することができる。また、第1傾斜突起51よりも短い第2傾斜突起52が、複数の金型部材80のパーティングラインPL上に位置することにより、キャップ本体20(キャップ10)が樹脂製であっても、キャップ本体20を金型部材80から離型する際に、傾斜突起50が変形してしまう不具合を抑制することができる。このため、キャップ本体20が樹脂製であっても、キャップ本体20の軸線方向Xに対して傾斜した傾斜突起50を形成することができ、キャップ開栓時のグリップ性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、キャップ本体20の水平断面において、複数の傾斜突起50は、それぞれ筒状部40の外面側に傾斜する裾部51aを有し、キャップ本体20の少なくとも一部の水平断面において、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511の裾部511aと筒状部40の外面とがなす角度θ2は、他の第1傾斜突起51の裾部51aと筒状部40の外面とがなす角度θ3よりも大きくなっている。これにより、キャップ本体20を作製した後に、キャップ本体20を金型部材80から離型する際の離型性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起H11の高さH11は、他の第1傾斜突起51の高さH1よりも低くなっている。これにより、キャップ本体20を作製した後に、キャップ本体20を金型部材80から離型する際の離型性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、筒状部40の内面にねじ部45が形成され、複数の傾斜突起50は、ねじ部45のねじ溝が延びる方向に対して傾斜している。これにより、キャップ本体20をキャップ10の開栓方向に回転させた際に、傾斜突起50に対する使用者の指の指掛かり性を更に向上させることができる。
なお、上述した本実施の形態において、ピルファープルーフバンド70が、複数のブリッジ71を介して連結されている例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、ピルファープルーフバンド70が、単一のブリッジ71を介して筒状部40に連結されていても良い。
また、上述した本実施の形態において、ピルファープルーフバンド70が、周方向に分割された複数のリング分割体70aを有している例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、ピルファープルーフバンド70が、単一の部材により構成されていても良い。
また、上述した本実施の形態において、ピルファープルーフバンド70の内周面に、径方向内方に突出した突出部70bが設けられている例について説明したが、これに限られない。例えば、図7乃至図9に示すように、ピルファープルーフバンド70が、本体部73と、本体部73と一体に形成された複数のフラップ74とを含んでいてもよい。このうちフラップ74は、図示しない折れ線に沿って、図8に示す矢印方向に折り曲げることができるように構成されている。また、キャップ10が容器100に取り付けられる前のフラップ74は、本体部73から下方かつ径方向内方に延びた状態になっている。なお、本変形例においては、図9に示すように、ピルファープルーフバンド70は、8つのフラップ74を含んでいる。しかしながら、フラップ74の個数は任意であり、これに限られることはない。
また、この場合、キャップ10が取り付けられる容器100には、径方向外方に突出し、ピルファープルーフバンド70のフラップ74と係合する突起部102(図10(b)参照)が設けられていてもよい。
ところで、このようなキャップ10を容器100に取り付ける場合、まず、図10(a)に示すように、キャップ10を準備する。この場合、ピルファープルーフバンド70のフラップ74は、本体部73から下方かつ径方向内方に延びた状態になっている。
次に、図10(b)に示すように、キャップ10を容器100に取り付ける。この際、ピルファープルーフバンド70のフラップ74が本体部73から上方かつ径方向内方に延びるように、フラップ74を折り曲げながら、キャップ10を容器100に取り付ける。あるいは、フラップ74が本体部73から上方かつ径方向内方に延びるように、フラップ74を折り曲げてから、キャップ10を容器100に取り付ける。このため、フラップ74は、本体部73から上方かつ径方向内方に延びた状態で、容器100と本体部73との間に介在するようになる。
キャップ10を開栓する場合には、キャップ本体20を開栓方向に回転させる。これにより、キャップ本体20が上昇する。この際、ピルファープルーフバンド70のフラップ74が容器100の突起部102と係合し、ピルファープルーフバンド70の上方への移動が制限される。そして、更にキャップ本体20を開栓方向に回転させてキャップ本体20を上昇させることにより、図10(c)に示すように、ブリッジ71が破断し、キャップ本体20とピルファープルーフバンド70とが分離する。この際、キャップ本体20から分離されたピルファープルーフバンド70は、フラップ74と容器100の突起部102とが係合するため、容器100に取り付けられた状態となる。このため、本変形例によれば、キャップ10を開栓した後のキャップ本体20の取り扱い性を向上させることができる。例えば、ピルファープルーフバンド70が容器100に取り付けられた状態となるため、キャップ10の開栓後にピルファープルーフバンド70がキャップ本体20に取り付けられている場合と比較して、容器100を再度密封(リクローズ)する際に、ピルファープルーフバンド70が邪魔になることはない。
また、上述した本実施の形態において、2つの第2傾斜突起52が筒状部40に設けられている例について説明したが、これに限られない。例えば、図11に示すように、筒状部40に設けられた第2傾斜突起52が1つであっても良い。この場合、第2傾斜突起52と、第2傾斜突起52に隣接する第1傾斜突起511は、互いに同一の傾斜突起50に対応する仮想線IL上に位置していても良い。
また、上述した本実施の形態において、複数の傾斜突起50が、筒状部40の内面に形成されたねじ部45のねじ溝が延びる方向に対して傾斜している例について説明した。この場合、図12に示すように、複数の傾斜突起50が、筒状部40の内面に形成されたねじ部45のねじ溝(図12の仮想線(二点鎖線)参照)が延びる方向に対して直交していても良い。すなわち、複数の傾斜突起50のねじ部45のねじ溝が延びる方向に対する傾斜角度θ11が、90°であっても良い。
さらに、上述した本実施の形態において、第1傾斜突起51が、小径部41の高さ方向の略全域に亘って延びている例について説明したが、これに限られない。例えば、図13に示すように、第1傾斜突起51が、小径部41の高さ方向の一部分に亘って延びていても良い。また、この場合、第1傾斜突起51の上方に、キャップ本体20の軸線方向Xに平行に延びる補助突起53が設けられていても良い。このように、第1傾斜突起51の上部に、キャップ本体20の軸線方向Xに平行に延びる補助突起53を設けることにより、キャップ10を容器100に取り付ける際に、補助突起53をキャッピング用のローレットとして使用することができ、キャッピング工程を容易にすることができる。なお、補助突起の幅や高さは、上述した第1傾斜突起51と同程度であっても良い。また、図示はしないが、補助突起53は、第2傾斜突起52の上方に設けられていても良い。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図14により説明する。図14は本発明の第2の実施の形態によるキャップ10を示す斜視図である。
図14に示す第2の実施の形態は、複数の傾斜突起50が、筒状部40の上部に設けられた上部傾斜突起51b、52bと、筒状部40の下部に設けられた下部傾斜突起51c、52cとを含む点が異なるものであり、他の構成は、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と略同一である。図14に示す第2の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図14に示すように、複数の傾斜突起50は、筒状部40の上部に設けられた上部傾斜突起51b、52bと、筒状部40の下部に設けられた下部傾斜突起51c、52cとを含んでいる。すなわち、第1傾斜突起51は、筒状部40の上部に設けられた第1上部傾斜突起51bと、筒状部40の下部に設けられた第1下部傾斜突起51cとを含み、第2傾斜突起52は、筒状部40の上部に設けられた第2上部傾斜突起52bと、筒状部40の下部に設けられた第2下部傾斜突起52cとを含んでいる。
本実施の形態では、上部傾斜突起51bは、下部傾斜突起51cの延長線(図14の仮想線(二点鎖線)参照)上に位置するように配置されている。このため、上部傾斜突起51b、52bのピッチと、下部傾斜突起51c、52cのピッチとは、略同一となっている。また、上部傾斜突起51b、52bの軸線方向Xに対する傾斜角度θ6と、下部傾斜突起51c、52cの軸線方向Xに対する傾斜角度θ7とは、略同一となっている。さらに、上部傾斜突起51bの長さと、下部傾斜突起51cの長さとは、略同一となっており、上部傾斜突起52bの長さと、下部傾斜突起52cの長さとは、略同一となっている。
本実施の形態によれば、複数の傾斜突起50が、筒状部40の上部に設けられた上部傾斜突起51b、52bと、筒状部40の下部に設けられた下部傾斜突起51c、52cとを含んでいる。これにより、キャップ本体20を形成する際の樹脂量を削減することができ、キャップ10の製造コストを低減することができる。
なお、上述した本実施の形態において、上部傾斜突起51bは、下部傾斜突起51cの延長線上に位置するように配置されている例について説明した。しなしながら、これに限られることはなく、例えば、図15に示すように、上部傾斜突起51b、52bと、下部傾斜突起51c、52cとが、筒状部40の外面に沿って周方向に千鳥状に配置されていても良い。
また、上述した本実施の形態において、上部傾斜突起51b、52bのピッチと、下部傾斜突起51c、52cのピッチとが、略同一となっている例について説明した。しかしながら、これに限られることはなく、例えば、図16に示すように、上部傾斜突起51b、52bのピッチと、下部傾斜突起51c、52cのピッチとが、互いに異なっていても良い。
また、上述した本実施の形態において、上部傾斜突起51bの長さと、下部傾斜突起51cの長さとは、略同一となっており、上部傾斜突起52bの長さと、下部傾斜突起52cの長さとは、略同一となっている例について説明した。しかしながら、これに限られることはなく、例えば、図17に示すように、上部傾斜突起51bの長さと、下部傾斜突起51cの長さとが、互いに異なっており、上部傾斜突起52bの長さと、下部傾斜突起52cの長さとが、互いに異なっていても良い。
また、上述した本実施の形態において、上部傾斜突起51b、52bの軸線方向Xに対する傾斜角度θ6と、下部傾斜突起51c、52cの軸線方向Xに対する傾斜角度θ7とが、略同一となっている例について説明した。しかしながら、これに限られることはなく、例えば、図18に示すように、上部傾斜突起51b、52bの軸線方向Xからの傾斜角度θ6と、下部傾斜突起51c、52cの軸線方向Xからの傾斜角度θ7とが、互いに異なっていても良い。
また、上述した本実施の形態においても、図19に示すように、ピルファープルーフバンド70が、本体部73と、本体部73と一体に形成された複数のフラップ74とを含んでいてもよい。
上記各実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記各実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。