本発明の他の目的、利点、及び新規な特徴は、添付の図面と併せて考慮する場合、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。「完全培地」は、10%ウシ胎仔血清及び抗生物質(ペニシリン及びストレプトマイシン)及びL-グルタミンを含むRPMIを意味する。
修飾された毒性免疫刺激性RNAオリゴヌクレオチドは、粒子中でプロタミンと製剤化することができる。 配列’ A.G.U(5F).G.U(5F).U(5F).A.U(5F).U(5F).C.U(5F).U(5F).G.U(5F).A.U(5F).G.G.U(5F).U(5F).G 3’(配列中U(5F)は5フルオロウリジンである)を伴う21残基の修飾された毒性免疫刺激性RNA(mtiRNA)を合成し(Dharmacon、ベルギー))、脱塩及び凍結乾燥した。それを純水中に1mg/mlで再懸濁した。120マイクログラムのmtiRNA(120マイクロリットル)を120マイクロリットルの水で希釈し、RNA最終濃度が0.5mg/mlに達した。注射用プロタミン5000 IPEXを水中で0.5mg/mlに希釈した。240マイクロリットルのmtiRNA(120マイクログラム)及び240マイクロリットルの希釈したプロタミン(120マイクログラム)を一緒に混合し、溶液をピペットで上下させることによりホモジナイズした。10分後、グルコース40%を加えて5%グルコースの溶液を提供し、5%グルコースを加えて、100マイクロリットル中10マイクログラムのRNA(及びプロタミン)の最終濃度を得た。この溶液の30マイクロリットルをグルコース5%の170マイクロリットルで希釈し、DynaPro Plate Reader-II(Wyatt Technology)を使用した光散乱分光法により分析した。図1に提示する結果により、mtiRNAが均一なプロタミン粒子中で製剤化することができ、それにより、粒子が平均約107nmの予測サイズ(以前に同一条件において製剤化された非修飾RNAを使用して観察される)を有することが実証される。このように、毒性修飾(5フルオロウリジン)は、定義されたサイズの均質粒子中に核酸を凝縮させるプロタミンの能力に干渉しない。
プロタミン-mtiRNA粒子は、腫瘍細胞に対して毒性である。CT26腫瘍細胞を、200マイクロリットルの完全培地中で、1ウェルあたり5000個細胞で48ウェルプレート中に播種した。プレートを37℃で一晩置いた。次に、プレートを戻すことにより培地を除去し、滴定量のプロタミン-mtiRNA粒子(「PR11_5FU_Oligo」)又はプロタミン-RNA(「PR11_Unmod(R18)_oligo」)を含む200マイクロリットルの新鮮な完全培地を加えた(100nmのプロタミン-mtiRNA及びプロタミン-RNA粒子は、30マイクログラムのmtiRNA(5’A.G.U(5F).G.U(5F).U(5F).A.U(5F).U(5F).C.U(5F).U(5F).G.U(5F).A.U(5F).G.G.U(5F).U(5F).G3’(配列中、U(5F)は5フルオロウリジンである)又は未修飾RNAオリゴ(配列5’AAGUUUUUUUUUUGUAUGG3’)を、純粋中の0.5mg/mlの30マイクログラムのプロタミンを伴う純水中に0.5mg/mlで混合させることにより調製した)。細胞を37℃で2.5時間インキュベートした。次に、プレートを戻すことにより培地を除去し、800マイクロリットルの新鮮な完全培地を各々のウェルに加えた。プレートを37℃で3日間にわたり置いた。次に、プレートを戻すことにより培地を除去し、500マイクロリットルのRPMIを洗浄のために各々のウェル中に加え、プレートを戻してRPMIを除去し、500マイクロリットルのPBSを各々のウェル中に加えた。次に、プレートを-80℃で凍結させた。1日後、プレートを室温で4時間放置し、1500rpmで5分間スピンさせた。各々のウェルからの10マイクロリットルの上清を、平底の96ウェルプレートのウェル中に入れた。40マイクロリットルのLDH基質(Cytotox96キット、Promega)を各々のウェルに加えた。約5分後、40マイクロリットルの停止溶液を各々のウェル中に加え、OD490nmを記録した。図2は、3通りの結果を提示する(サンプルのOD490nm値-10マイクロリットルのPBS + 40マイクロリットルのLDH基質+40マイクロリットルの停止溶液について得られたOD490nm値)。それらは、プロタミン-RNA粒子は細胞増殖に干渉しないが、2.5時間パルスされた0.625マイクログラム/ml超(細胞培養物中のRNA濃度に関連して)のプロタミン-mtiRNA粒子が細胞増殖を阻止することを実証する。このように、プロタミン-mtiRNA粒子は、腫瘍細胞に対して毒性である。
プロタミン-mtiRNA粒子はインビトロで免疫刺激性である。プロタミン-mtiRNA(「PR_5FU」)及びプロタミン-mRNA(ルシフェラーゼ)(「PR_Luc」)粒子を図2のように調製した(100nmのプロタミン-mtiRNA及びプロタミン-RNA粒子は、30マイクログラムのmtiRNA 5’ A.G.U(5F).G.U(5F).U(5F).A.U(5F).U(5F).C.U(5F).U(5F).G.U(5F).A.U(5F).G.G.U(5F).U(5F).G(配列中、U(5F)は5フルオロウリジンである)又は未修飾のルシフェラーゼをコードするmRNAを、純粋中の0.5mg/mlの30マイクログラムのプロタミンを伴う純水中に0.5mg/mlで混合させることにより調製した)。4マイクロリットルの粒子をU底の96ウェルプレートのウェル中に入れた。200マイクロリットル(100万個の細胞)の新鮮なヒト末梢血単核細胞(フィコール溶液での新鮮な血液の遠心分離により得られたPBMC)の調製物を粒子の頂部に加えた。プレートを37℃で一晩インキュベートした。ネガティブコントロールとして、PBMCを単独で(「PBMC単独」)、又は1マイクログラムのプロタミン(「プロタミン」)と、もしくは1マイクログラムのmtiRNA(「5FU」)と培養した。次に、上清を収集し、インターフェロン-アルファを、PBLからの汎インターフェロン-アルファELISAキットを使用して定量した。図3に提示する結果により、プロタミン-mRNA(ルシフェラーゼ)粒子と同様に、プロタミン-mtiRNA粒子が免疫刺激性であり、PBMCにおけるインターフェロン-アルファ産生を誘導することが実証される。このように、mtiRNAオリゴヌクレオチド中の5フルオロウリジン残基は、形質細胞様樹状細胞を含むヒト免疫細胞を刺激する粒子の能力に干渉しない。
プロタミン-mtiRNA粒子はインビボで免疫刺激性である。プロタミン-mtiRNA粒子は、図1のように、120マイクログラムのmtiRNA(5’A.G.U(5F).G.U(5F).U(5F).A.U(5F).U(5F).C.U(5F).U(5F).G.U(5F).A.U(5F).G.G.U(5F).U(5F).G 3、配列中、U(5F)は5フルオロウリジンである)を、純粋中の0.5mg/mlの120マイクログラムのプロタミンを伴う純水中に0.5mg/mlで混合させることにより調製した。10分後、グルコース40%を加えて5%グルコース溶液を提供し、5%グルコースをさらに加えて100マイクロリットル中に10マイクログラムのmtiRNAを含む溶液を有した。5匹のBALB/cマウスに100マイクロリットルの溶液を静脈注射し、2時間後に再び100マイクロリットルのプロタミン-mtiRNA製剤(「PR11_5FU」)を再度注射した。対照として、4匹のマウスが5%グルコース(「未処理」)の2回注射(2時間間隔)を受けた。血清を、2回目の注射の3時間後に末梢血から収集した。20マイクロリットルの血清中のインターフェロン-アルファを、PBLからのVerikine(商標)ELISAキットを使用して定量した。図4に提示する結果により、プロタミン-mtiRNA粒子がインビボで免疫刺激(インターフェロン-アルファの産生)を誘導することができることが実証される。このように、mtiRNAオリゴヌクレオチド中の5フルオロウリジン残基は、インビボでマウス免疫細胞を刺激する粒子の能力に干渉しない。
発明の詳細な説明
以下において、本発明の全ての態様に適用される定義を提供する。
本発明を以下に詳細に記載するが、本発明が、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル、及び試薬に限定されないことを理解されたい。なぜなら、これらが変動しうるためである。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される、本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されたい。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。
以下では、本発明の要素について記載する。これらの要素は特定の実施形態と列挙されているが、しかし、追加の実施形態を作成するために任意の様式で任意の数で組み合わせることができることを理解すべきである。種々に記載された実施例及び好ましい実施形態は、本発明を明示的に記載した実施形態だけに限定すると解釈すべきではない。この記載は、明示的に記載した実施形態を、任意の数の開示する及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施形態を裏付け、包含すると理解すべきである。さらに、本出願に記載する全ての要素の任意の順列及び組み合わせが、文脈が他を示さない限り、本出願の記載により開示されると考えるべきである。
好ましくは、本明細書で使用する用語は、「バイオテクノロジー用語の多言語用語集:(IUPAC勧告)」(Leuenberger, B. Nagel, and H. Kolbl, Eds., (1995) Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland)に記載されるように定義する。
本発明の実施は、他に示さない限り、この分野の文献で説明される生化学、細胞生物学、免疫学、及び組換えDNA技術の従来の方法を用いる(参考、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrook et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照のこと)。
本明細書及びそれに続く添付の特許請求の範囲を通して、文脈が他を要求しない限り、用語「含む(comprise)」及び変形、例えば「comprises」及び「comprising」などは、記載のメンバー、整数、もしくは工程、又はメンバー、整数、もしくは工程の群の包含を意味し、任意の他のメンバー、整数、もしくは工程、又はメンバー、整数、もしくは工程の群の除外を意味しないと理解されるが、一部の実施形態では、そのような他のメンバー、整数、もしくは工程、又はメンバー、整数、もしくは工程の群は除外してもよく、即ち、被験体-事柄は、記載のメンバー、整数、もしくは工程、又はメンバー、整数、もしくは工程の群の包含にある。本発明(特に特許請求の範囲の文脈において)を記載する文脈で使用される用語「a」及び「an」及び「the」及び類似の参照は、本明細書中で他を示さないか、文脈により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈すべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内の各々の別個の値を個々に参照する略式の方法として役立つことを単に意図するものである。本明細書中で他に示さない限り、個々の値は、個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載する全ての方法は、本明細書中で他に示さない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供する任意の及び全ての実施例、又は例示的な言語(例、「例えば、など」)の使用は、単に本発明をより良く例証することを意図しており、他で請求する本発明の範囲に対して限定を課さない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠な、請求されていない任意の要素を示すものとして解釈すべきではない。
いくつかの文書を本明細書の本文を通して引用する。本明細書に引用する文書(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書などを含む)の各々が、上記又は下記を問わず、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本明細書におけるいかなるものも、本発明が、先行発明により、そのような開示よりも先行する資格がないことを承認するものとして解釈すべきではない。
本発明者は、驚くべきことに、細胞傷害性部分(例、5-フルオロウリジン)を含む修飾RNAを含む粒子が、免疫細胞の刺激及び罹患細胞(例えば腫瘍細胞など)に対する毒性の二重の生物学的活性を有することを観察した。そのような毒性免疫刺激性粒子を生成するために、修飾された毒性免疫刺激性RNA(mtiRNA)は、好ましくは、RNA残基又は毒性カーゴ(例えば毒素など)に対する修飾でありうる1つ又は複数の毒性部分を含む免疫刺激性RNA(好ましくはU残基及び/又はG残基を含む)である。さらに、プロタミンは、粒子中のカチオン性キャリア剤(カチオン性ポリマー)として好ましく、プロタミン対RNA(mtiRNA及び本発明の粒子により場合により含まれうる任意の他のRNA)の質量比は、好ましくは少なくとも0.5(プロタミンよりRNAが2倍以下だけ多い)である。好ましい実施形態では、この比は1又はそれ以上(最も好ましくは、同じ質量のプロタミン及びRNA又は全RNAよりも多くのプロタミンが使用される)、2又はそれ以上、4又はそれ以上、好ましくは16まで、より好ましくは8までである。一実施形態では、プロタミン:RNA重量比は16:1~1:2、より好ましくは4:1~1:2である。1:1又はそれ以上のプロタミン対RNAの質量比(即ち、全RNAより多いプロタミン)は、それによりRNAの最適な圧縮がもたらされるため好ましい。
カチオン性物質(カチオン性ポリマー)としてプロタミンを含む本発明の粒子を調製するための好ましい手順は、プロタミン及びRNA(mtiRNA及び場合により任意の他のRNA、例えば非修飾RNAなどを含む)を、純水又は低塩溶液(好ましくは125mM未満の電解質)を使用し、次に2つの溶液を混合することにより、およそ5mg/ml、最良には1mg/ml又はそれ以下の濃度で希釈する工程を含む。
一実施形態では、本発明の粒子は、以下の工程を含む方法により調製する:
(a)RNAの水溶液を提供する;
(b)プロタミンの水溶液を提供する;並びに
(c)工程(a)及び(b)で得られた溶液を組み合わせる。
好ましくは、上記工程(a)は、0~125mMの電解質を含む、好ましくは100mM未満、より好ましくは50mM未満、特に25mM未満の電解質を含む水溶液中に適当な量の乾燥RNAを再懸濁させることにより実施する。
好ましくは、上記工程(b)は、好ましくは1000(「プロタミン1000」)~5000(「プロタミン5000」)ヘパリン中和単位/mlを含む、プロタミンの溶液、好ましくはプロタミンの水性等張ストック溶液を、0~125mMの電解質を含む、好ましくは100mM未満、より好ましくは50mM未満、特に25mM未満の電解質を含む溶液で希釈することにより行う。例えば、プロタミン1000及び5000ストック溶液は、Valeant Pharmaceuticals International(米国カリフォルニア州アリソビエホ)からそれぞれValeant(登録商標)1000及び5000の商標で市販されている。
一実施形態では、本発明の粒子は、0~125mM電解質を含む水溶液中、好ましくは純水中で、プロタミン及びRNAを5mg/ml未満、好ましくは1mg/ml又はそれ以下に希釈することにより調製する。一実施形態では、(i)プロタミンは、少なくとも10mg/ml(プロタミン5000)の医薬等張溶液を純水で希釈することにより0.5mg/ml溶液として製剤化し、(ii)RNAは、乾燥RNAペレットを純水中で希釈することにより0.5mg/ml溶液として製剤化し、(iii)これらの2つの調製物を混合する。本発明によれば、そのような手順は、規定されたサイズの均質な粒子を形成することが実証されている。
一実施形態では、本発明の粒子は、以下の工程を含む方法により調製する:
(a)純水中の5mg/ml未満のRNA水溶液を提供する;
(b)プロタミンの5000ヘパリン中和単位/mlを含む水性等張ストック溶液を純水で希釈することにより5mg/ml未満のプロタミン水溶液を提供する;
(c)工程(a)及び(b)で得られた溶液を組み合わせる。
用語「免疫応答」は、好ましくは疾患に対して保護する生物内の応答を指す。免疫応答は、予防的及び/又は治療的でありうる。本発明によれば、「誘導された免疫応答」は、増加レベルのインターフェロン-アルファにより反映されうる。
用語「免疫原性」は、特定の物質、特にRNAが動物(例えばヒトなど)の体内で免疫応答を誘発する能力を指す。換言すれば、免疫原性は免疫応答を誘導する能力である。
「免疫応答を誘導する」とは、免疫応答を誘導する前に免疫応答がなかったことを意味しうるが、免疫応答を誘導する前にあるレベルの免疫応答があり、免疫応答を誘導した後、前記免疫応答が増強されることも意味しうる。このように、「免疫応答を誘導する」には、「免疫応答を増強する」ことが含まれる。好ましくは、被験体において免疫応答を誘導した後、前記被験体は疾患(例えば癌疾患など)の発症から保護されるか、又は免疫応答を誘導することにより疾患状態が寛解される。
用語「細胞傷害性」は、特定の物質、特にRNAが有害である、特に細胞に有害である能力を指す。一実施形態では、そのような物質は細胞を死滅させる。細胞傷害性化合物で細胞を処理することにより、種々の細胞運命をもたらすことができる。細胞は壊死を受けることがあるが、そこでは膜の完全性が失われ、細胞溶解の結果として迅速に死滅し、活発に成長及び分裂することを停止する(細胞生存率の低下)ことができ、又は細胞が制御された細胞死の遺伝的プログラム(アポトーシス)を活性化することができる。
「細胞傷害性を誘導する」とは、細胞傷害性を誘導する前に細胞傷害性がなかったことを意味しうるが、細胞傷害性を誘導する前にあるレベルの細胞傷害性があり、細胞傷害性を誘導した後、前記細胞傷害性が増強されることも意味しうる。このように、「細胞傷害性を誘導する」には、「細胞傷害性を増強する」ことが含まれる。好ましくは、被験体において細胞傷害性を誘導した後、前記被験体は疾患(例えば癌疾患など)の発症から保護されるか、又は細胞傷害性を誘導することにより疾患状態が寛解される。
本明細書に記載の粒子は、細胞傷害性ヌクレオチド又は細胞傷害性ヌクレオチド類似体を含む、及び/又は細胞毒素に共有結合したRNAを含む。そのようなRNAは、本明細書において修飾毒性免疫刺激性RNA(mtiRNA)とも呼ばれる。粒子は、場合により、他のRNA(例えば非mtiRNA、特に非修飾RNA又は非毒性RNAなど)をさらに含みうる。本発明の目的のために、mtiRNAならびに他のRNAは、本明細書では一般に「RNA」と言及する。
本発明の文脈において、用語「RNA」は、リボヌクレオチド残基を含み、好ましくはリボヌクレオチド残基で全体的又は実質的に構成される分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を伴うヌクレオチドに関する。用語「RNA」は、単離RNA、例えば部分的又は完全に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、及び組換え生成されたRNAなどを含み、1つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換、及び/又は改変により天然に生じるRNAとは異なる修飾RNAを含む。そのような改変は、RNAの末端に、又は内部的に、例えばRNAの1つ又は複数のヌクレオチドなどに、非ヌクレオチド物質の付加を含みうる。RNA分子中のヌクレオチドはまた、非標準ヌクレオチド、例えば天然に生じないヌクレオチド又は化学的に合成されたヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドなどを含みうる。これらの改変されたRNAは、天然に生じるRNAの類似体と言及することができる。
RNAは、細胞から単離することができ、DNA鋳型から作製することができ、又は当該分野で公知の方法を使用して化学的に合成することができる。好ましい実施形態では、RNAは、インビトロでDNA鋳型から合成する。特に好ましい一実施形態では、RNA、特にmRNAは、DNA鋳型からのインビトロ転写により生成する。インビトロ転写の方法論は当業者に公知である。例えば、種々のインビトロ転写キットが市販されている。特に好ましい一実施形態では、RNAはインビトロで転写されたRNA(IVT RNA)である。mtiRNAを提供するために、合成(例えば化学合成又はインビトロ転写など)中に細胞傷害性ヌクレオチド又は細胞傷害性ヌクレオチド類似体を組み入れることができ、又は転写後にRNAに修飾を加えることができる。
本発明によれば、「RNA」にはmRNA、tRNA、rRNA、snRNA、ssRNA、及びdsRNAが含まれる。
本発明によれば、RNAとしては、6~100、好ましくは10~50、特に15~30、もしくは15~20ヌクレオチドの合成オリゴヌクレオチド又は長い転写物、例えば50超のヌクレオチド、好ましくは50~10,000、好ましくは100~5000、特に200~1000ヌクレオチドのメッセンジャーRNA(mRNA)などが好ましい。
本発明によれば、用語「mRNA」は「メッセンジャーRNA」を意味し、DNA鋳型を使用して生成され、ペプチド又はタンパク質をコードしうる「転写物」に関する。典型的には、mRNAは、5’UTR、タンパク質コード領域、及び3’UTRを含む。本発明の文脈において、mRNAは、DNA鋳型からのインビトロ転写により生成されうる。
「ssRNA」は一本鎖RNAを意味する。ssRNAは、RNAの一部が折り畳まれ、それ自身で対になって二重らせんを形成することを可能にする自己相補的配列を含みうる。
本発明によれば、「dsRNA」は二本鎖RNAを意味し、二つの部分的又は完全に相補的な鎖を伴うRNAである。鎖のサイズは、6ヌクレオチド~10000、好ましくは10~8000、特に200~5000、200~2000、又は200~1000ヌクレオチドで変動しうる。
本発明による粒子を調製するために適切なRNA分子のための特異的リボヌクレオチド配列の要件はない。しかし、特定のRNA配列が最良の生物学的活性を提供することを除外しない。しかし、好ましくは、RNA成分は少なくとも25%のウリジン残基を含むべきである。
一実施形態では、RNAは20%超のU含量を有する。特定の態様では、RNAは、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超などのU含量を含む。
本明細書で使用するように、用語「U含量」は、典型的にはパーセントで表され、ウリジン(U)である、特定のRNA分子又はRNA配列(mtiRNAを含む)のヌクレオシドの量を指す。特定のRNAの配列が既知である場合、U含量は、以下の式を使用して決定することができる:
式中、G、C、A、及びUは、特定のRNA分子又はRNA配列中の各々の残基の数を指し、U含量を提供する。
本明細書で説明するように、mtiRNAのU残基の全部又は一部、例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%が、細胞傷害性ヌクレオチド又は細胞傷害性ヌクレオチド類似体(例えばフルオロウリジン)を提供するように修飾されうる。
用語「ヌクレオシド」は、リン酸基を伴わないヌクレオチドと考えることができる化合物に関する。ヌクレオシドは糖(例、リボース又はデオキシリボース)に連結された核酸塩基であるが、ヌクレオチドはヌクレオシド及び1つ又は複数のリン酸基で構成される。ヌクレオシドの例には、シチジン、ウリジン、アデノシン、及びグアノシンが含まれる。
核酸を構成する5つの標準的なヌクレオシドは、ウリジン、アデノシン、チミジン、シチジン、及びグアノシンである。5つのヌクレオシドは、それぞれ一般にそれらの1文字コードU、A、T、C、及びGで略記する。しかし、チミジンは、ウリジン中に見いだされるリボフラノース環ではなく2’デオキシリボフラノース部分を含むため、より一般には「dT」(「d」は「デオキシ」を表す)として書く。これは、チミジンがデオキシリボ核酸(DNA)中で見いだされ、リボ核酸(RNA)では見いだされないためである。逆に、ウリジンはRNA中で見いだされ、DNAでは見いだされない。残りの3つのヌクレオシドは、RNA及びDNAの両方において見いだされうる。RNA中では、それらはA、C、及びGとして表すのに対し、DNA中ではdA、dC、及びdGとして表す。
本明細書中で使用する用語「細胞傷害性ヌクレオチド又は細胞傷害性ヌクレオチド類似体」は、任意のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体、特に、細胞傷害性であるか、又は細胞傷害性である部分(例えばヌクレオシドもしくはヌクレオシド類似体もしくは核酸塩基類似体もしくは核酸塩基類似体など)を含む核酸(例えばRNAなど)中に取り入れることができるヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を指す。細胞傷害性ヌクレオチド又は細胞傷害性ヌクレオチド類似体は、核酸分子(特にRNA分子)の一部が、細胞傷害性部分(例えばヌクレオシド又はヌクレオシド類似体又は核酸塩基又は核酸塩基類似体など)の放出後に細胞傷害性でありうる。類似体は天然の化合物及び部分に類似しているが、しかし、それらは特定の効果(例えば細胞傷害性など)をもたらすように修飾されている。したがって、用語「細胞傷害性ヌクレオチド又は細胞傷害性ヌクレオチド類似体」には、細胞傷害性プリンヌクレオシド類似体及び細胞傷害性ピリミジンヌクレオシド類似体、例えばA、G、U、C、dA、dG、dT、dCの細胞傷害性類似体又はホモログなどが含まれる。
種々の実施形態では、細胞傷害性を提供する細胞傷害性ヌクレオチド又は細胞傷害性ヌクレオチド類似体の修飾は、塩基部分(例、5フルオロウリジン(5-FU)、6メルカプトプリン、デオキシコルモマイシン(ペントスタチン)、及び2-クロロ-アデニン) 又は糖部分(例、シトシンアラビノシド(シタラビン)又はゲムシタビン)又は両方(例、フルダラビン)に対する。
種々の実施形態では、アデニン残基及び/又はグアニン残基を6メルカプトプリン又はデオキシコルモマイシン又はフルダラビンで修飾し、アデニン残基を2-クロロ-アデニンで修飾し、シチジン残基をシタラビン又はゲムシタビンで修飾し、並びに/或いはウラシル残基をフルオロウラシル(例えば5フルオロウラシルなど)で修飾する。特に好ましい一実施形態では、ウラシル残基をフルオロウラシル(例えば5フルオロウラシルなど)で修飾する。
本発明によれば、用語「細胞傷害性ヌクレオチド又は細胞傷害性ヌクレオチド類似体」には、限定するものではないが、以下からなる群より選択される部分を含むヌクレオチド及びヌクレオチド類似体が含まれる:
アザシチジン(4-アミノ-1-β-D-リボフラノシル-1,3,5-トリアジン-2(1H)-オン)、
クラドリビン(5-(6-アミノ-2-クロロ-プリン-9-イル)-2-(ヒドロキシメチル)オキソラン-3-オール)、
クロファラビン(5-(6-アミノ-2-クロロ-プリン-9-イル)-4-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)オキソラン-3-オール)、
シタラビン(4-アミノ-1-[(2R、3S、4R、5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2-オン)、
デシタビン(4-アミノ-1-(2-デオキシ-β-D-エリスロ-ペントフラノシル)-1,3,5-トリアジン-2(1H)-オン)、
フロクスウリジン(5-フルオロ-1-[4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]-1H-ピリミジン-2,4-ジオン)、
フルダラビン([(2R、3R、4S、5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシ-オキソラン-2-イル]メトキシホスホン酸)、
フルオロウリジン(例えば5-フルオロ-ウリジンなど)、
ゲムシタビン(4-アミノ-1-(2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-β-D-エリスロ-ペントフラノシル)ピリミジン-2(1H)-オン)、
ネララビン((2R、3S、4S、5R)-2-(2-アミノ-6-メトキシ-プリン-9-イル)-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-3,4-ジオール)、
ペントスタチン((R)-3-((2R、4S、5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-3,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[4,5-d][1,3]ジアゼピン-8-オール)、
アザチオプリン(6-[(1-メチル-4-ニトロ-1H-イミダゾール-5-イル)スルファニル]-7H-プリン)、
カルマフール(5-フルオロ-N-ヘキシル-2,4-ジオキソ-ピリミジン-1-カルボキサミド)、
メルカプトプリン(3,7-ジヒドロプリン-6-チオン)、
テガフール((RS)-5-フルオロ-1-(テトラヒドロフラン-2-イル)ピリミジン-2,4(1H、3H)-ジオン)、及び
チオグアニン(2-アミノ-1H-プリン-6(7H)-チオン)。
細胞傷害性又は免疫抑制薬剤の有用なクラスは、例えば、抗チューブリン薬剤、DNA副溝結合剤(例、エンジイン及びレキシトロプシン)、DNA複製阻害剤、アルキル化薬剤(例、白金錯体、例えばシスプラチン、モノ(白金)、ビス(白金)及び三核白金錯体など、ならびにカルボプラチン)、アントラサイクリン、抗生物質、抗葉酸剤、代謝拮抗剤、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ化ピリミジン、イオノフォア、ニトロソウレア、プラチノール、予備成形化合物、プリン代謝拮抗剤、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン(例、パクリタキセル及びドセタキセル)、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどを含む。
個々の細胞毒性剤には、例えば、アンドロゲン、アントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC-1065、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、サイトカラシンB、ダカルバジン、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ダウノルビシン、デカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エストロゲン、5フルオロデオキシウリジン、5フルオロウラシル、グラミシジンD、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン、メルファラン、6メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、プリカマイシン、プロカルバジン(procarbizine)、ストレプトゾトシン、テノポシド、6チオグアニン、チオテパ、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP-16、及びVM-26が含まれるが、これらに限定しない。
抗チューブリン剤の例として、ドラスタチン(例、アウリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)、メイタンシノイド、タキサン(例、パクリタキセル、ドセタキセル)、T67(Tularik)、ビンカアルカロイド(vinca alkyloids)(例、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)、バカチン誘導体、タキサン類似体(例、エポチロンA及びB)、ノコダゾール、コルヒチン及びコルシミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、並びにエレウテロビンが含まれるが、これらに限定しない。
一実施形態では、用語「細胞毒素」は細胞傷害性抗体を指す。用語「細胞傷害性抗体」は、罹患細胞(例えば腫瘍細胞など)を標的とする能力を有するモノクローナル抗体(mAB)であり、免疫エフェクター媒介細胞死滅(補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC))のためにそれらを標識する、及び/又は増殖及びアポトーシスの低減に導く。
用語「細胞毒素」はまた、本明細書に記載の細胞傷害性薬物に結合した抗原特異的構造(例えばmABなど)を含む。抗体固有の標的化能力と細胞傷害性薬物の癌死滅能力とを組み合わせることにより、抗体-薬物複合体(ADC)は従来の化学療法剤と比較してより低い副作用を示し、より広い治療域を提供する。好ましい一実施形態では、細胞傷害性抗体により結合された標的抗原(疾患関連抗原)は、細胞表面に局在し、循環抗体に接近可能である。
本発明によれば、用語「抗原特異的構造」は、標的抗原(例えば疾患関連抗原など)への結合能力を有する任意の化合物を含む。この用語には、分子、例えば抗体及び抗体フラグメント、二重特異性分子又は多重特異性分子、キメラ抗原受容体(CAR)、及び標的への結合能力を有する全ての人工結合分子(足場)(ナノボディ、アフィボディー、アンチカリン、DARPin、モノボディー、アビマー、及びマイクロボディが含まれるが、これらに限定しない)などが含まれる。一実施形態では、前記結合は特異的結合である。
用語「抗体」は、ジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質を指す。用語「抗体」は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及びキメラ抗体を含む。各々の重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域からなる。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域からなる。VH領域及びVL領域は、より保存され、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分することができる。各々のVH及びVLは、以下の順でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介しうる。
用語「細胞毒素に共有結合したRNA」には、同じ細胞毒素の1つ又は複数の分子がRNA分子に共有結合している、並びに異なる細胞毒素がRNA分子に共有結合している状況が含まれる。後者の状況では、異なる細胞毒素の各々の1つ又は複数の分子をRNA分子、又はそれらの組み合わせに結合させてもよい(例、1つの細胞毒素の1つの分子が結合し、別の細胞毒素のいくつかの分子が結合している)。
RNA-細胞毒素複合体の生成は、当業者に公知の任意の技術により達成することができる。RNA-細胞毒素複合体は、従来の技術に従って細胞毒素をRNAに結合させることにより調製することができる。RNAと細胞毒素は、それ自体のリンカー基を介して直接的に、又はリンカーもしくは他の物質を介して間接的に互いに結合させてもよい。RNA-細胞毒素複合体を作製するための当技術分野で公知の多くの連結基がある。リンカーは、好ましくは、RNA及び細胞毒素のいずれか又は両方と反応する1つ又は複数の官能基を含む。
最も好ましくは、mtiRNAは、以下の配列(5’から3’と記載)を有するオリゴヌクレオチドである:“21mer5FU”:
A.G.U(5F).G.U(5F).U(5F).A.U(5F).U(5F).C.U(5F).U(5F).G.U(5F).A.U(5F).G.G.U(5F).U(5F).G(配列中U(5F)は5-フルオロウリジン(配列番号1)である)。
本発明によれば、RNAの安定性を必要に応じて改変してもよい。例えば、RNAは、RNAに対する安定化効果を有する1つ又は複数の修飾により安定化してもよい。
本発明に従って使用されるRNAの状況での用語「修飾」は、前記RNA中に天然には存在しないRNAの任意の修飾を含む。
本発明の一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAは、キャップされていない5’-三リン酸を有さない。そのようなキャップされていない5’-三リン酸の除去は、RNAをホスファターゼで処理することにより達成することができる。
本発明の一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAは、(例えば、非コード転写物上に)キャップされていない5’-三リン酸を有する。
本発明によるRNAは、その安定性を増加させるために、修飾された天然又は合成リボヌクレオチドを有してもよい。例えば、一実施形態では、本発明に従って使用されるRNA中で、5-メチルシチジンを、シチジンについて部分的又は完全に、好ましくは完全に置換する。代替的又は追加的に、一実施形態では、本発明に従って使用されるRNA中で、プソイドウリジンを、ウリジンについて部分的又は完全に、好ましくは完全に置換する。
一実施形態では、用語「修飾」は、5’キャップ又は5’キャップ類似体を伴うRNAを提供することに関する。用語「5’キャップ」は、mRNA分子の5’末端に見出されるキャップ構造を指し、一般的に、異常な5’→5’三リン酸結合を介してmRNAに連結されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態では、このグアノシンは7位でメチル化される。用語「従来の5’キャップ」は、天然に生じるRNA 5’キャップ、好ましくは7メチルグアノシンキャップ(m7G)を指す。本発明の文脈において、用語「5’キャップ」には、RNAキャップ構造に似ており、好ましくはインビボ及び/又はインビボでそれに結合した場合にRNAを安定化する能力を持つように修飾された5’キャップが含まれる。
5’キャップ又は5’キャップ類似体を有するRNAを提供することは、前記5’キャップ又は5’キャップ類似体の存在下でのDNA鋳型のインビトロ転写により達成されうるが、前記5’キャップは、生成RNA鎖中に転写的に組み込まれる、又はRNAは、例えば、インビトロ転写により生成してもよく、及び5’キャップは、キャッピング酵素、例えば、ワクシニアウイルスのキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに結合させてもよい。
RNAはさらなる修飾を含みうる。例えば、本発明で使用するRNAのさらなる修飾は、天然に生じるポリ(A)テールの伸長又は切断でありうる。
RNAの用語「安定性」は、RNAの「半減期」に関する。「半減期」は、分子の活性、量、又は数の半分を除去するのに必要な時間に関する。本発明の文脈において、RNAの半減期は、前記RNAの安定性を示している。
無論、本発明によれば、RNAの安定性を減少させることが望ましい場合、上に記載するエレメントの機能に干渉するようにRNAを修飾し、RNAの安定性を増加させることが可能である。
一実施形態では、本明細書に記載するRNA(例えばmtiRNAなど)は、ペプチド又はタンパク質をコードする(修飾)RNA、特に(修飾)mRNAである。本発明によれば、用語「ペプチド又はタンパク質をコードするRNA」は、そのRNAが、適当な環境、好ましくは細胞内に存在する場合、アミノ酸の集合を導き、翻訳のプロセスの間にペプチド又はタンパク質を産生する、即ち、発現することができる。好ましくは、本発明によるRNAは、ペプチド又はタンパク質の翻訳を可能にする細胞翻訳機構と相互作用することができる。
用語「発現」は、最も一般的な意味で本発明に従って使用され、RNA及び/又はペプチドもしくはタンパク質の産生(例、転写及び/又は翻訳による)を含む。RNAに関して、用語「発現」又は「翻訳」は、特に、ペプチド又はタンパク質の産生に関する。それは核酸の部分発現も含む。さらに、発現は一過性又は安定的であることができる。
本発明の文脈において、用語「転写」は、DNA配列中の遺伝子コードがRNAに転写されるプロセスに関する。その後、RNAはタンパク質に翻訳されうる。本発明によれば、用語「転写」は、「インビトロ転写」を含み、用語「インビトロ転写」は、RNA、特にmRNAが、好ましくは適当な細胞抽出物を使用して無細胞系においてインビトロで合成される。好ましくは、クローニングベクターを転写物の生成のために適用する。これらのクローニングベクターは一般的に転写ベクターと名付けられ、本発明に従って用語「ベクター」に包含される。
本発明による用語「翻訳」は、メッセンジャーRNAの鎖がアミノ酸配列の集合を導いてペプチド又はタンパク質を作製する、細胞のリボソーム中でのプロセスに関する。
本発明の粒子は、好ましくは約10~約1000nm、好ましくは約50nm~約400nm、より好ましくは約100nm~約200nmの定義された平均サイズ(直径)を有する。
粒子の平均「サイズ」は、一般的に、確立された方法に従って調製された粒子の「設計サイズ」又は意図されたサイズである。サイズは、直接測定された寸法(例えば平均直径又は最大直径など)であってもよく、又は間接的アッセイ(例えば濾過スクリーニングアッセイなど)により決定してもよい。粒径の直接測定は、典型的には、動的光散乱により行う。サイズにおける小さな変動が製造プロセス中に生じるため、記載する測定値の40%までの変動が許容可能であり、記載するサイズ内にあるとみなされる。あるいは、マイクロキャリアのサイズは、濾過スクリーニングアッセイにより決定されうる。例えば、粒子の少なくとも97%が記載するサイズの「スクリーンタイプ」フィルターを通過する場合、粒子調製物は記載するサイズよりも小さい。
本発明の粒子中で担体として使用することが熟慮されるカチオン性ポリマー又は脂質には、RNA、特にmtiRNAが、RNAと複合体を形成するか、又はRNAが封入もしくはカプセル化された小胞を形成することにより会合し、好ましくはネイキッドRNAと比較してRNAの安定性の増加がもたらされる任意の物質又は媒体が含まれる。
本発明に従って有用な担体には、脂質含有担体(例えばカチオン性脂質、リポソーム、及びミセルなど)、カチオン性ポリマー(例えばDEAEデキストラン又はポリエチレンイミンなど)、及びナノ粒子が含まれる。
カチオン性脂質は、負に荷電した核酸と複合体を形成しうる。任意のカチオン性脂質を本発明に従って使用してもよい。カチオン性脂質及びカチオン性ポリマーを使用し、核酸を複合体化させ、それにより、いわゆるリポプレックス(脂質+RNA)、ポリプレックス(ポリマー+RNA)、及びリポポリプレックス(脂質プラスポリマー+RNA)を形成することができ、これらの複合体により核酸を細胞に送達することが示されている。
一実施形態では、ポリプレックス又はリポ多糖類は、RNA複合体化ペプチド又はタンパク質からなる群より選択される少なくとも1つの薬剤を含む。一実施形態では、少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、プロタミン、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン、又はヒストンからなる群より選択される少なくとも1つの薬剤を含む。
一実施形態では、リポプレックスはカチオン性リポソームである。一実施形態では、リポソームは、リン脂質(例えばホスファチジルコリンなど)及び/又はステロール(例えばコレステロールなど)を含む。
リポソームは、しばしば、小胞形成脂質(例えばリン脂質など)の1つ又は複数の二重層を有する微視的な脂質小胞であり、薬物をカプセル化することが可能である。異なる種類のリポソーム(多層小胞(MLV)、小単層小胞(SUV)、大単層小胞(LUV)、立体的に安定したリポソーム(SSL)、多小胞小胞(MV)、及び大多小胞小胞(LMW)並びに当技術分野で公知の他の二重層形態を含むが、これらに限定しない)を本発明の文脈において用いてもよい。リポソームのサイズ及び層状性は、調製方法に依存し、使用される小胞の種類の選択は、好ましい投与様式に依存する。好ましい注射可能なリポソームは、直径が10~500、20~400、50~200、50~150、50~120、50~100、又は50~90nmの範囲のものである。カチオン性リポソームは、正に荷電した脂質で作製される構造であり、負に荷電した核酸及び細胞膜との良好な相互作用のために、遺伝子治療においてますます使用されている。カチオン性リポソームはカチオン性リポプレックスとしても公知である。リポソームは、単層からなるミセル及び逆ミセルと混同すべきではない。脂質集合体は、安定剤と組み合わせてもよい。安定剤の非限定的な例には、コレステロール及び類似の膜活性ステロール、リポポリマー(例えばPEG化脂質など)が含まれる。
リポソームの形成は自発的なプロセスではない。脂質小胞は、リン脂質(例えばレシチンなど)が水中に置かれ、結果的に、十分なエネルギーが供給されると、水分子により各々が分離された1つの二重層又は一連の二重層を形成する場合に形成される。リポソームは、標準的な方法(例えば逆蒸発法(REV)、脱水-再水和法(DRV)、超音波処理、又は他の適切な方法など)を使用して形成してもよい。リポソームは、例えば、リン脂質を水中で超音波処理することにより作製することができる。低剪断速度により、多くの層を有する多層リポソームが作製される。継続的な高剪断超音波処理には、より小さな単層リポソームを形成する傾向がある。この技術では、リポソームの内容物は、水相の内容物と同じである。超音波処理は、一般的に、カプセル化される薬物の構造に損傷を与える可能性があるため、「肉眼的」な調製方法と考えられている。新しい方法(例えば押出法及びモザファリ法など)が、ヒトでの使用のための材料を産生するために用いられている。
リポソーム形成後、リポソームは、実質的に均質なサイズ範囲、典型的には約10~500nmのリポソームの集団を得るためにサイズ決定することができる。
任意の適切なリポソーム形成材料を本リポソーム中で使用することができる。
リポソームは、親水性ポリマーで誘導体化された小胞形成脂質を含み、リポソーム表面上に親水性ポリマー鎖の表面コーティングを形成することができる。
本発明によれば、プロタミンはカチオン性担体薬剤(カチオン性ポリマー)として好ましい。用語「プロタミン」は、アルギニンが豊富であり、種々の動物(魚など)の精子細胞中の体細胞性ヒストンの代わりに特にDNAと関連する、比較的低分子量の種々の強塩基性タンパク質のいずれかを指す。特に、用語「プロタミン」は強塩基性であり、水に可溶性であり、熱により凝固せず、主に加水分解時にアルギニンを生じる、魚精子中で見いだされるタンパク質を指す。精製形態では、インスリンの長時間作用型製剤中で使用され、ヘパリンの抗凝固効果を中和する。
本発明によれば、本明細書中で使用する用語「プロタミン」は、天然供給源又は生物学的供給源から得られた又はそれらに由来する任意のプロタミンアミノ酸配列(そのフラグメント及び前記アミノ酸配列又はそのフラグメントの多量体形態を含む)を含むことを意味する。さらに、この用語は、人工であり、特定の目的のために特異的に設計され、天然供給源又は生物供給源から単離することができない(合成された)ポリペプチドを包含する。
本発明に従って使用されるプロタミンは、硫酸化プロタミン又は塩酸プロタミンでありうる。好ましい実施形態では、本発明の粒子の産生のために使用するプロタミン供給源は、等張性塩溶液中に10mg/ml(5000ヘパリン中和単位/ml)超のプロタミンを含み、 上記のように希釈するプロタミン5000である。
本発明の粒子は、好ましくは、16:1~1:2、好ましくは8:1~1:2、より好ましくは4:1~1:2のプロタミン:RNA重量比を有する。一実施形態では、プロタミン:RNA重量比の範囲の下限は1:1、好ましくは2:1である。RNAは、mtiRNAだけ、又はmtiRNA及び他のRNA(例えば非毒性RNAなど)との混合物中であってもよい。
本発明の一実施形態によれば、本発明の粒子は、その外面に、標的細胞集団に、及び/又は標的器官もしくは組織に粒子を選択的に又は好ましくは送達することができる標的薬剤又はリガンド(例えば抗体など)を含む。例えば、リガンドを担持するリポソームは、罹患細胞上に発現される受容体を標的とすることができる。このリガンド結合により、細胞中への効率的な薬物取り込みが促進され、有効性が増強される。探索されている1つの標的化手段では、共有結合的に又は静電的相互作用を通じて粒子表面に結合した抗体を用いる。
リガンドは疾患関連抗原に結合することが可能でありうるが、粒子が投与時に、疾患関連抗原を発現する細胞により特徴付けられる、好ましくは疾患関連抗原とそれらの細胞表面との会合により特徴付けられる罹患器官又は組織に蓄積するようにする(例、疾患関連抗原は膜貫通タンパク質である)。疾患関連抗原は腫瘍関連抗原であってもよく、好ましくは罹患細胞(例えば腫瘍細胞など)の表面と会合するが、好ましくは健常細胞の表面とは会合しない。好ましくは、部位特異的標的化のためのリガンドは、疾患関連抗原の細胞外部分に結合する。
本発明による用語「ペプチド」は、オリゴペプチド及びポリペプチドを含み、ペプチド結合により共有結合された、2又はそれ以上、好ましくは3又はそれ以上、好ましくは4又はそれ以上、好ましくは6又はそれ以上、好ましくは8又はそれ以上、好ましくは10又はそれ以上、好ましくは16又はそれ以上、好ましくは21又はそれ以上、より好ましくは8、10、20、30、40又は50まで、特に100のアミノ酸を含む物質を指す。用語「タンパク質」は、好ましくは大きなペプチド、好ましくは100を超えるアミノ酸残基を伴うペプチドを指すが、一般的に用語「ペプチド」及び「タンパク質」は同義語であり、本明細書では互換的に使用する。
本発明によれば、RNA(例えばmtiRNAなど)は、ペプチド又はタンパク質をコードしうる。したがって、RNAは、ペプチド又はタンパク質をコードするコード領域(オープンリーディングフレーム(ORF))を含みうる。例えば、RNAは、抗原又は医薬的に活性なペプチドもしくはタンパク質、例えば免疫学的に活性な化合物(好ましくは抗原ではない)などをコードし、発現しうる。この点において、「オープンリーディングフレーム」又は「ORF」は、開始コドンで始まり停止コドンで終わるコドンの連続ストレッチである。
用語「医薬的に活性なペプチド又はタンパク質」は、ペプチド又はタンパク質の発現が、例えば疾患又は障害の症状を改善する際に有益でありうる被験体の処置において使用することができるペプチド又はタンパク質を含む。例えば、医薬的に活性なタンパク質は、通常はタンパク質を発現しないか、又はタンパク質を誤発現する細胞においてタンパク質発現を置換又は増強することができる(例、医薬的に活性なタンパク質は所望のタンパク質を供給することにより変異を補うことができる)。また、「医薬的に活性なペプチド又はタンパク質」は、被験体において有益な結果を産生することができ、例えば、感染性疾患に対して被験体にワクチン接種するタンパク質を産生するために使用することができる。好ましくは、「医薬的に活性なペプチド又はタンパク質」は、治療有効量で被験体に投与された場合に、被験体の状態又は疾患状態に対して陽性又は有利な効果を有する。好ましくは、医薬的に活性なペプチド又はタンパク質は、治癒的又は緩和的な特性を有し、疾患又は障害の1つ又は複数の症状の寛解、軽減、緩和、逆転、発症の遅延、又は重症度の低下のために投与しうる。医薬的に活性なペプチド又はタンパク質は、予防的特性を有してもよく、疾患の発症を遅延させるか、又はそのような疾患又は病理学的状態の重症度を低下するために使用してもよい。用語「医薬的に活性なペプチド又はタンパク質」は、タンパク質又はポリペプチド全体を含み、その医薬的に活性なフラグメントを指すこともできる。これはまた、ペプチド又はタンパク質の医薬的に活性な類似体を含みうる。用語「医薬的に活性なペプチド又はタンパク質」は、抗原であるペプチド及びタンパク質を含み、即ち、ペプチド又はタンパク質は、治療的又は部分的又は完全に防御的でありうる被験体において免疫応答を誘発する。
医薬的に活性なタンパク質の例には、限定はしないが、サイトカイン及び免疫系タンパク質、例えば免疫学的に活性な化合物など(例、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、インテグリン、アドレニン、セレチン、ホーミング受容体、T細胞受容体、免疫グロブリン、可溶性の主要組織適合性複合体抗原、免疫学的に活性な抗原、例えば細菌性抗原、寄生虫性抗原、又はウイルス性抗原、アレルゲン、自己抗原、抗体など)、ホルモン(インスリン、甲状腺ホルモン、カテコールアミン、ゴナドトロピン、栄養ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、ドーパミン、ウシソマトトロピン、レプチンなど)、成長ホルモン(例、ヒト成長ホルモンなど)、成長因子(例、表皮成長因子、神経成長因子、インスリン様性因子など)、成長因子受容体、酵素(組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、コレステロール生合成又は分解、ステロイド生成酵素、キナーゼ、ホスホジエステラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、デヒドロゲナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アロマターゼ、シトクロム、アデニル酸又はグアニル酸シクラーゼ、ノイラミダーゼなど)、受容体(ステロイドホルモン受容体、ペプチド受容体)、結合タンパク質(成長ホルモン又は成長因子結合タンパク質など)、転写及び翻訳因子、腫瘍成長抑制タンパク質(例、血管新生を阻害するタンパク質)、構造タンパク質(例えばコラーゲン、フィブロイン、フィブリノーゲン、エラスチン、チューブリン、アクチン、及びミオシンなど)、血液タンパク質(トロンビン、血清アルブミン、第VII因子、第VIII因子、インスリン、第IX因子、第X因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、プロテインC、フォンウィレブランド因子、アンチトロンビンIII、 グルコセレブロシダーゼ、エリスロポエチン顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)又は修飾第VIII因子、抗凝固剤などが含まれる。
一実施形態では、本発明の医薬的に活性なタンパク質は、リンパ球ホメオスタシスの調節に関与するサイトカイン、好ましくはT細胞の発生、初回刺激、増殖、分化、及び/又は生存に関与し、好ましくは誘導又は増強するサイトカインである。一実施形態では、サイトカインはインターロイキンである。一実施形態では、本発明の医薬的に活性なタンパク質は、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、及びIL-21からなる群より選択されるインターロイキンである。
用語「免疫学的に活性な化合物」は、免疫細胞の成熟を誘導及び/又は抑制すること、サイトカイン生合成を誘導及び/又は抑制すること、ならびに/あるいはB細胞による抗体産生を刺激することにより体液性免疫を変化させることにより免疫応答を変化させる任意の化合物に関する。免疫学的に活性な化合物は、強力な免疫刺激活性(抗ウイルス活性及び抗腫瘍活性を含むが、これらに限定しない)を持ち、免疫応答の他の局面を下方調節することも可能であり、例えば、TH2免疫応答から離れて免疫応答をシフトさせ、これは広範囲のTH2介在性疾患を処置するために有用である。免疫学的に活性な化合物は、ワクチンアジュバントとして有用でありうる。
一実施形態では、抗原(例えば疾患関連抗原など)をコードするRNAは、特に抗原(疾患関連抗原)を含む又は発現する疾患を有する哺乳動物を処置することが望まれる場合、哺乳動物に投与する。RNAは、好ましくは、哺乳動物の抗原提示細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、又は他の細胞)に取り込まれる。RNAの抗原性翻訳産物が形成され、産物がT細胞による認識のために細胞の表面上に提示される。一実施形態では、それらの任意の処理により産生された抗原又は産物は、それらのT細胞受容体を通じたT細胞による認識のために、MHC分子の状況において細胞表面上に提示され、それらの活性化をもたらす。
インターフェロンは、抗ウイルス活性、抗増殖活性、及び免疫調節活性により特徴付けられる重要なサイトカインである。インターフェロンは、調節された細胞表面上のインターフェロン受容体に結合し、それにより細胞内でのウイルス複製を防止することによって、細胞内の遺伝子の転写を変化及び調節するタンパク質である。インターフェロンは、2つのタイプに分類することができる。IFN-ガンマは唯一のII型インターフェロンである;他の全てはI型インターフェロンである。I型及びII型インターフェロンは、遺伝子構造(II型インターフェロン遺伝子は3つのエクソンを有する;I型、1)、染色体位置(ヒトではII型は染色体12上に位置付けられ、I型インターフェロン遺伝子は連結し、染色体9上にある)、及びそれらが産生される組織の型(I型インターフェロンは遍在的に合成され、II型はリンパ球により合成される)において異なる。I型インターフェロンは、細胞受容体に互いに結合して競合的に阻害するが、II型インターフェロンは、別個の受容体を有する。本発明によれば、用語「インターフェロン」又は「IFN」は、好ましくはI型インターフェロン、特にIFNアルファ及びIFNベータに関する。
本発明の文脈において、用語「塩」及び「電解質」を互換的に使用し、水中でそのそれぞれの対イオンに少なくとも部分的に解離する化合物を意味する。
本発明によれば、用語「mM電解質」は、RNA溶液を再懸濁又は希釈するために使用される溶液中、及びプロタミンストック溶液(例えばプロタミン1000又は5000など)を希釈するために使用される溶液中での全ての電解質(無機塩、例えばNaCl、KCl、NaH2PO4、Na2HPO4、KH2PO4、K2HPO4、MgCl2、MnCl2、Na2SO4、K2SO4、MgSO4など及び塩、例えばトリス-HCl、EDTA、Hepesなどを含む)の合計の濃度(10-3mol/リットル)を意味する。
本明細書において、本発明の粒子が二重活性を有することを実証する:細胞(例えば腫瘍細胞及び/又は分裂細胞など)に対する免疫刺激及び毒性。したがって、本発明は、本発明による有効量の医薬組成物の投与を含む、疾患(例えば癌など)の免疫化学的処置の方法を提供する。
本発明は、特定の疾患状態、特に慢性疾患(例えば癌又は感染性疾患など)、特に持続性ウイルス感染において免疫を開始、活性化、又は強化するため、ならびに罹患細胞(例えば癌細胞又は感染細胞など)を死滅させるために有用である。このように、本発明の方法は、前記疾患状態の処置において有用である。
本発明によれば、用語「疾患」は、任意の病理学的状態(癌疾患を含む)を指す。癌(医学用語:悪性新生物)は、細胞群が制御不能な成長(正常限度を超える分裂)、侵襲(隣接組織の侵入及び破壊)、及び時には転移(リンパや血液を介した身体における他の部位への拡散)を呈する疾患のクラスである。癌のこれらの3つの悪性特性により、自己限定的であり、浸潤又は転移しない良性腫瘍からそれらは鑑別される。大半の癌は、腫瘍、即ち、異常成長により形成される腫脹又は病変(新生細胞又は腫瘍細胞と呼ばれる)を形成するが、一部(白血病など)は形成しない。本発明による用語「癌」は、白血病、セミノーマ、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸管癌、肝臓癌、結腸癌、胃癌、腸癌、頭頸部癌、胃腸癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、耳、鼻、及び喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、及び肺癌ならびにそれらの転移が含まれる。それらの例は、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、子宮頸癌、又は上記の癌種又は腫瘍の転移である。本発明による癌という用語はまた、癌転移を含む。
本発明の粒子及び医薬組成物を用いて処置可能な癌の例には、悪性黒色腫、全ての種類の癌腫(結腸癌、腎細胞癌、膀胱癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、及び小細胞肺癌など)、リンパ腫、肉腫、芽腫、神経膠腫などが含まれる。
悪性黒色腫は深刻な種類の皮膚癌である。これは、メラノサイトと呼ばれる色素細胞の無秩序な成長によるものである。
本発明によれば、「癌腫」は上皮細胞に由来する悪性腫瘍である。この群は、乳癌、前立腺癌、肺癌、及び結腸癌の一般的な形態を含む最も一般的な癌を表す。
リンパ腫及び白血病は、造血(血液形成)細胞に由来する悪性腫瘍である。
肉腫は、胚性中胚葉から発生する多数の組織のうちの1つにおける形質転換細胞から生じる癌である。このように、肉腫には、骨組織、軟骨組織、脂肪組織、筋肉組織、血管組織、及び造血組織の腫瘍が含まれる。
芽球腫瘍又は芽腫は、未熟組織又は胚組織に似ている腫瘍(通常は悪性)である。これらの腫瘍の多くは小児において最も一般的である。
神経膠腫は、脳や脊髄で開始する腫瘍の一種である。それはグリア細胞から生じるため、神経膠腫と呼ばれる。神経膠腫の最も一般的な部位は脳である。
「転移」により、その本来の部位から身体の別の部位への癌細胞の伝播を意味する。転移の形成は非常に複雑なプロセスであり、原発腫瘍からの悪性細胞の剥離、細胞外マトリックスの浸潤、体腔及び血管に入る内皮基底膜の浸透、次に血液による輸送後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位での新たな腫瘍(即ち、二次腫瘍又は転移腫瘍)の成長は、血管新生に依存する。腫瘍転移は、腫瘍細胞又は成分が残存し、転移能を発現することがあるため、原発腫瘍の除去後でさえもしばしば生じる。一実施形態では、本発明による用語「転移」は、原発腫瘍及び局所リンパ節系から離れた転移に関連する「遠隔転移」に関する。
本発明の粒子は、特に、病原体が分裂細胞中で発生するか、又は細胞増殖を駆動する場合に、感染性疾患を処置するためにも使用してもよい。本発明の粒子及び医薬組成物で処置可能な感染性疾患の例には、ウイルス性感染症、例えばAIDS(HIV)、A型、B型又はC型肝炎、ヘルペス、帯状ヘルペス(鶏痘)、三日ばしか(風疹ウイルス)、黄熱病、デング熱など、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、出血性感染症(マールブルグ又はエボラウイルス)、細菌性感染症、例えばレジオネア病(レジオネラ)、胃潰瘍(ヘリコバクター)、コレラ(ビブリオ)、大腸菌(E.coli)、ブドウ球菌、サルモネラ又はストレプトコッカス(破傷風)による感染;原虫病原体による感染、例えばマラリア、睡眠病、リーシュマニア症など;トキソプラズマ症、即ち、マラリア原虫(Plasmodium)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、リーシュマニア(Leishmania)及びトキソプラズマ(Toxoplasma)による感染;あるいは、例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマトティディス(Blastomyces dermatitidis)又はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が原因である真菌感染症が含まれる。
本発明の粒子及び医薬組成物は、本発明の粒子又は医薬組成物の投与の前、同時に又は後に投与することができる別の治療用薬剤と併用することもできる。そのような治療用薬剤としては、癌患者のための化学療法薬物(例、ゲムシタビン、エトポフォス、シスプラチン、カルボプラチン、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、又は抗菌剤)が含まれ、本発明の粒子と同時に投与される場合、本発明の医薬組成物中に存在してもよい。
特に、本発明の粒子及び医薬組成物は、免疫療法剤、好ましくは標的化された、即ち、特異的な免疫反応を誘導する又はもたらす免疫療法剤と併用することもできる。そのような免疫療法剤には、疾患関連抗原に対して向けられた薬剤、例えば疾病関連抗原又は疾患関連抗原を発現する細胞に対して向けられた免疫応答を誘導する治療用抗体又は薬剤などが含まれる。有用な免疫療法剤には、疾患関連抗原又は疾患関連抗原を発現する細胞に対してB細胞応答又はT細胞応答を誘導するタンパク質又はペプチドが含まれる。これらのタンパク質又はペプチドは、疾患関連抗原あるいはその1つ又は複数のフラグメントの配列に本質的に対応するか又は同一である配列を含みうる。一実施形態では、タンパク質又はペプチドは、疾患関連抗原に由来するMHC提示ペプチドの配列を含む。タンパク質又はペプチドを投与する代わりに、タンパク質又はペプチドをコードする核酸、好ましくはmRNAを投与することも可能である。タンパク質又はペプチドをコードするRNAは、本発明の粒子に含まれるmiRNA又は他のRNAでありうる。代替的又は追加的に、タンパク質又はペプチドをコードするRNAは、本発明の粒子中に含まれないRNAであってもよく、このRNAは同時に(この場合では、RNAは本発明の医薬組成物の一部を形成しうる)、ならびに/あるいは本発明の医薬組成物の投与前に及び/又は後に投与してもよい。したがって、本発明の医薬組成物は遺伝子ワクチン接種に使用してもよく、抗原又はそのフラグメントをコードする適切な核酸分子(DNA又はmRNA)を被験体中に導入することにより免疫応答が刺激される。
一実施形態では、疾患関連抗原は腫瘍関連抗原である。この実施形態では、本発明の粒子及び医薬組成物は、癌又は癌転移の処置において有用でありうる。好ましくは、罹患器官又は組織は、疾患関連抗原を発現する及び/又は疾患関連抗原とその表面との会合により特徴付けられる罹患細胞(例えば癌細胞など)により特徴付けられる。インタクトな又は実質的にインタクトな腫瘍関連抗原又はそのフラグメント(例えばそのような抗原又はフラグメントをコードするMHCクラスI及びクラスIIペプチド又は核酸、特にmRNA)を用いた免疫化により、MHCクラスI及び/又はクラスII型応答を誘発することが可能になり、このように、癌細胞及び/又はCD4+T細胞を溶解することが可能であるT細胞(例えばCD8+細胞傷害性Tリンパ球など)を刺激する。そのような免疫はまた、体液性免疫応答(B細胞応答)を誘発し、腫瘍関連抗原に対する抗体の産生をもたらしうる。さらに、抗原提示細胞(APC)(例えば樹状細胞(DC)など)は、直接的に、又はインビトロで腫瘍抗原又は腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸を用いたトランスフェクションによりMHCクラスI提示ペプチドを負荷し、患者に投与することができる。
本発明によれば、腫瘍関連抗原は、好ましくは、型及び/又は発現レベルに関して、腫瘍又は癌ならびに腫瘍細胞又は癌細胞に特徴的である任意の抗原を含む。一実施形態では、用語「腫瘍関連抗原」は、正常な条件下で、即ち、健常な被験体において、限定数の器官及び/又は組織中で、あるいは特定の発生段階で特異的に発現されるタンパク質に関する(例えば、腫瘍関連抗原は、胃組織中、好ましくは胃粘膜中、生殖器官中(例、精巣中)、栄養芽組織中(例、胎盤中)、又は生殖系列細胞中で正常な条件下で特異的に発現されうる、あるいは1つ又は複数の腫瘍又は癌組織において異常に発現される)。この文脈において、「限定数」は、好ましくは3以下、より好ましくは2又は1以下を意味する。本発明の文脈における腫瘍関連抗原には、例えば、分化抗原、好ましくは細胞型特異的分化抗原(即ち、特定の分化段階で特定の細胞型において正常な条件下で特異的に発現されるタンパク質)、癌/精巣抗原(即ち、精巣及び場合によっては胎盤において正常な条件下で特異的に発現されるタンパク質)、及び生殖系列特異的抗原が含まれる。本発明の文脈において、腫瘍関連抗原は、好ましくは、癌細胞の細胞表面と会合しており、好ましくは正常組織では発現しないか、又はまれにしか発現しない。好ましくは、腫瘍関連抗原又は腫瘍関連抗原の異常な発現により、癌細胞が同定される。本発明の文脈において、被験体(例、癌疾患に罹患している患者)において癌細胞により発現される腫瘍関連抗原は、好ましくは前記被験体中の自己タンパク質である。好ましい実施形態では、本発明の文脈における腫瘍関連抗原は、非必須である組織又は器官、即ち、免疫系により損傷された場合に被験体の死亡に至らない組織又は器官、あるいは免疫系により到達可能ではないか、又はほとんど到達可能ではない身体の器官又は構造体において通常の条件下で発現される。一実施形態では、腫瘍関連抗原のアミノ酸配列は、正常組織中で発現される腫瘍関連抗原と、癌組織中で発現される腫瘍関連抗原の間で同一である。好ましくは、腫瘍関連抗原は、それが発現される癌細胞により、MHC分子の状況において提示される。
腫瘍免疫療法において、特に腫瘍ワクチン接種において標的構造として本発明により熟慮される腫瘍関連抗原についての基準を理想的に満たす分化抗原についての例は、クローディンファミリーの細胞表面タンパク質(例えばCLDN6及びCLDN18.2など)である。これらの分化抗原は、種々の起源の腫瘍において発現され、それらの選択的発現(毒性に関連する正常組織中での発現なし)及び原形質膜への局在化のために、抗体媒介性癌免疫療法に関連する標的構造として特に適している。
本発明において有用でありうる抗原のさらなる例は、p53、ART-4、BAGE、ベータ-カテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、CLAUDIN-12、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gap100、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(又はhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、好ましくはMAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、又はMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/メラン-A、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、-2、-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、p190マイナーBCR-abL、Pm1/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1又はRU2、SAGE、SART-1又はSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、SURVIVIN、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、TPTE、及びWT、好ましくはWT-1である。
本発明の医薬的組成物は、本発明の粒子及び少なくとも1つの抗原、例えば上で考察する抗原もしくはその免疫原性フラグメント、又は核酸、特に前記抗原又はフラグメントをコードするRNAを含むワクチン調製物の形態を取りうる。このRNAは、本発明の粒子内に存在してもよく、場合によりmtiRNAであってもよい。
「抗原」は、抗体の形成及び/又は細胞性免疫応答の活性化を起こすことができる任意の構造を意味すると理解すべきである。抗原の例は、ポリペプチド、タンパク質、細胞、細胞抽出物、炭水化物/多糖類、多糖複合体、脂質、及び糖脂質である。これらの抗原は、腫瘍抗原又はウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、及び原生生物抗原又はアレルゲンでありうる。用語「抗原」はまた、形質転換を通じて(例、分子中の中間で、体タンパク質での完成により)抗原性となる(感作される)二次物質としての誘導体化抗原、及び原子団(例、イソシアネート、ジアゾニウム塩)の人工的取り込みを通じて新たな構成的特異性を示す複合体抗原を含む。抗原は、適切な担体に結合したハプテンの形態で本発明のワクチン中に存在してもよい。適切な担体は、当業者に公知であり、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。ハプテンは、従来技術で周知のプロセスにより(例、ポリペプチド担体の場合、アミド結合を介してLys残基に結合する)担体に結合させてもよい。
本発明の粒子は、ポリエチレングリコールによりコーティングしてもよく、それにより、安定性又はバイオアベイラビリティ又は機能性が増強される。
「治療する」により、被験体において疾患を予防又は排除する(腫瘍のサイズ又は腫瘍の数を低減させることを含む);被験体において疾患を停止又は減速させる;被験体において新たな疾患の発症を阻害又は減速させる;現在疾患を有する又は以前に疾患を有していた被験体において症状及び/又は再発の頻度又は重症度を減少させる;及び/又は被験体の寿命を延ばす、即ち、増加させるために、本明細書に記載の化合物又は組成物を被験体に投与することを意味する。
特に、用語「疾患の治療」は、治癒、持続時間の短縮、進行又は悪化の寛解、予防、減速、もしくは阻害、又は疾患もしくはその症状の発症の予防もしくは遅延を含む。
用語「免疫療法」は、好ましくは特異的免疫反応及び/又は免疫エフェクター機能を含む処置に関連する。
用語「免疫化」又は「ワクチン接種」により、治療上又は予防上の理由のために被験体を処置するプロセスを記載する。
用語「被験体」は哺乳動物に関する。例えば、本発明の文脈における哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、家畜(例えばイヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマなど)、実験動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモットなど)、ならびに捕獲動物(例えば動物園の動物など)である。本明細書で使用する用語「被験体」にはヒトも含まれる。
本発明の医薬組成物は、好ましくは無菌であり、有効量の本発明の粒子及び、場合により、本明細書で考察するさらなる薬剤(例えば所望の反応又は所望の効果を生成する治療用薬剤及び抗原など)を含む。
本発明の医薬組成物はまた、追加の免疫調節剤(例えば抗CTL-A4又は抗PD1又は抗PDL1など)又は抗制御性T細胞試薬(例えば抗CD25抗体又はシクロホスファミドなど)を含みうる。
本発明の医薬組成物は、補充免疫増強物質、例えば1つ又は複数のアジュバントなどと一緒に投与してもよく、その有効性をさらに増加させるために、好ましくは免疫刺激の相乗効果を達成するために、1つ又は複数の免疫増強物質を含んでもよい。
用語「アジュバント」は、免疫応答を延長又は増強又は加速させる化合物に関する。この点に関する種々の機構が、種々の種類のアジュバントに応じて可能である。例えば、DCの成熟を可能にする化合物(例、リポ多糖又はCD40リガンド)が、第1のクラスの適切なアジュバントを形成する。一般的に、「危険シグナル」(LPS、GP96、dsRNAなど)又はサイトカイン(例えばGM-CSFなど)の種類の免疫系に影響を及ぼす任意の薬剤を、免疫応答が制御された方法で強化される及び/又は影響を受けることを可能にするアジュバントとして使用することができる。CpGオリゴデオキシヌクレオチドもまた、場合により、この文脈において使用することができるが、上で説明したような特定の状況下で生じるそれらの副作用を考慮すべきである。しかし、一次免疫刺激剤としてRNAを含む本発明による免疫刺激剤の存在のために、(CpG DNAのみによる免疫刺激と比較して)比較的少量のCpG DNAだけが必要である。このように、CpG DNAを、カチオン性ポリマー(例えばプロトン又はカチオン性脂質など)の添加前にmtiRNAに加えて、全ての核酸を粒子内で凝縮させるか、又は予め形成した粒子に加えることができる。特に好ましいアジュバントは、サイトカイン、例えばモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、又はケモカイン(例、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、INFα、INF-γ、GM-CSF、LT-α)又は成長因子(例、hGH)である。リポペプチド(例えばPam3Cysなど)もまた、本発明の医薬組成物中のアジュバントとしての使用のために適切である。
医薬組成物は、通常は均一な剤形で提供され、それ自体公知の方法で調製してもよい。本発明の医薬組成物は、例えば、溶液又は懸濁液の形態でもよい。
本発明の医薬組成物は、塩、緩衝物質、保存剤、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含み、それらの全てが好ましくは医薬的に許容可能である。用語「医薬的に許容可能な」は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない材料の非毒性を指す。
本発明の医薬組成物の使用のための適切な保存剤には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン、及びチメロサールが含まれる。
注射用製剤は、医薬的に許容可能な賦形剤(例えばリンガー乳酸塩など)を含みうる。
用語「担体」は、適用を容易にする、増強する、又は可能にするために活性成分が組み合わされる、天然又は合成の性質の有機又は無機成分を指す。本発明によれば、用語「担体」はまた、患者への投与のために適切である、1つ又は複数の適合性のある固体又は液体の充填剤、希釈剤、又はカプセル化物質を含む。
非経口投与のための可能な担体物質は、例えば、滅菌水、リンゲル液、リンゲル乳酸、無菌の塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、特に、生体適合性のラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーである。
用語「賦形剤」は、本明細書で使用する場合、本発明の医薬組成物中に存在してもよく、活性成分ではない全ての物質(例えば担体、結合剤、滑沢剤、増粘剤、界面活性剤、保存剤、乳化剤、緩衝剤、着香剤、又は着色剤)を指すことを意図する。
本明細書に記載の薬剤及び組成物は、任意の従来の経路、例えば注射又は注入を含む非経口投与などにより投与することができる。投与は、好ましくは非経口的(例、静脈内、動脈内、皮下、皮内、又は筋肉内)である。それはまた、腫瘍内でありうる。
非経口投与のための適切な組成物は、通常は、好ましくはレシピエントの血液と等張である活性化合物の滅菌水性又は非水性調製物を含む。適合する担体及び溶媒の例は、リンガー溶液及び等張塩化ナトリウム溶液又はグルコース5%である。また、通常、無菌の不揮発性油を溶液又は懸濁媒質として使用する。
本明細書に記載する薬剤及び組成物は、有効量で投与される。「有効量」は、所望の反応又は所望の効果を単独で、又はさらなる用量と一緒に達成する量を指す。特定の疾患又は特定の状態の処置の場合では、所望の反応は、好ましくは、疾患の経過の阻害に関連する。これは、疾患の進行を遅くすること、特に、疾患の進行を中断又は逆転させることを含む。疾患又は状態の処置における所望の反応はまた、前記疾患又は前記状態の発症の遅延又は発症の予防であってもよい。
本明細書に記載する薬剤又は組成物の有効量は、処置される状態、疾患の重症度、患者の個々のパラメータ(患者の年齢、生理学的状態、サイズ及び体重を含む)、治療期間、 付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路、及び同様の因子に依存する。したがって、本明細書に記載する薬剤の投与量は、そのようなパラメータの幾つかに依存しうる。患者における反応が初回用量では不十分である場合では、より高用量(又は異なるより局所的な投与経路により達成される効果的により高い用量)を使用してもよい。
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を例示することを意図しており、特許請求の範囲に定める本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。