特許法第30条第2項適用 〔発行者名〕 NHK松山放送局技術部(企画) 〔刊行物名〕 第28回 NHK中国四国地方 放送技術報告会 予稿 〔発行年月日〕 2018年4月27日 〔発行者名〕 兼六館出版株式会社 〔刊行物名〕 放送技術9月号 〔発行年月日〕 2018年9月1日
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔監視システム〕
まず、本発明の実施形態による中継器を含む監視システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態による中継器を含む監視システムの全体構成を示す概略図である。
この監視システム1は、複数の中継局に設置されたそれぞれの子局装置2-1,2-2,・・・、各種情報を中継する中継器(無線中継器)3-1,3-2,・・・、及び、放送会館に設置されたホスト装置4を備えて構成される。以下、子局装置2-1,2-2,・・・を総称して子局装置2といい、中継器3-1,3-2,・・・を総称して中継器3という。尚、監視システム1において、子局装置2は1台であってもよい。
以下、監視システム1を構成する子局装置2、中継器3及びホスト装置4について、実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
子局装置2、中継器3及びホスト装置4のそれぞれは、無線信号の電波を送受信するための送受信共通のアンテナを備えている。子局装置2、中継器3及びホスト装置4は、所定のブランチ毎(予め設定された上位局及び下位局毎)に無線通信により接続され、通信データの電波の送受信を行う。中継器3は、所定のブランチを介して、通信データを双方向にリレー中継する。リレー中継の段数は制限されない。
子局装置2、中継器3及びホスト装置4による無線通信は、無線通信規格に依存しないで実現するものとする。具体的には、OSI参照モデルのアプリケーション層にて多段中継を行うため、各種の無線通信規格に対応することができる。
監視システム1において、ホスト装置4は、子局装置2の設備の状況を監視し、例えば中継局である放送所の放送中情報、停電情報、自家発電情報、燃料残量等の状態情報を、子局装置2から中継器3を介して受信する。また、ホスト装置4は、中継器3の停電情報等を、中継器3から(他の中継器3を介して)受信する。さらに、ホスト装置4は、後述する設定情報を中継器3及び子局装置2へ送信する。詳細については後述する。
図2は、図1に示した子局装置2の構成例を示す概略図である。この子局装置2は、通信用基板10、太陽電池11、I/F(インターフェース)基板12及び中継局監視装置13を備えている。ここで、通信用基板10は、後述する図3及び図4に示す通信用基板10と同一であり、子局装置2、中継器3及びホスト装置4は、共通に使用可能かつ同一の機能を有する通信用基板10を備えている。
通信用基板10は、送受信共通のアンテナ、及び、例えばLPWA(Low Power Wide Area)無線技術の920MHz帯を用いるLoRa(Long Range)仕様を実現する特定小電力無線の通信モジュール等を備えている。通信用基板10の詳細については後述する。太陽電池11は、通信用基板10の電源として使用される。
I/F基板12は、上位局から送信されてきた受信データを、通信用基板10から中継局監視装置13へ転送すると共に、上位局へ送信する送信データを、中継局監視装置13から通信用基板10へ転送する。
中継局監視装置13は、当該子局装置2が設置された中継局である放送所の状態情報を管理する。中継局監視装置13は、例えばホスト装置4から送信された状態情報の送信リクエストを、通信用基板10からI/F基板12を介して入力し、これに対応する状態情報を送信データとして、I/F基板12を介して通信用基板10へ出力する。また、中継局監視装置13は、例えば所定の警報が発生したタイミングで、状態情報を送信データとして、I/F基板12を介して通信用基板10へ出力する。状態情報は、ホスト装置4へ送信される。
図3は、図1に示した中継器3の構成例を示す概略図である。この中継器3は、通信用基板10及び太陽電池11を備えている。通信用基板10及び太陽電池11は、図2に示したものと同様である。
図4は、図1に示したホスト装置4の構成例を示す概略図である。このホスト装置4は、通信用基板10、太陽電池11及びホスト監視装置14を備えている。通信用基板10及び太陽電池11は、図2及び図3に示したものと同様である。
ホスト監視装置14は、例えば状態情報の送信リクエストを送信データとして、通信用基板10に出力する。これにより、状態情報の送信リクエストが中継器3を介して子局装置2へ送信される。ホスト監視装置14は、子局装置2及び中継器3から送られてくる状態情報を、通信用基板10を介して入力し、これを画面表示する。また、ホスト監視装置14は、例えば状態情報に含まれる所定の情報及び予め設定された閾値に基づいて、警報の発生を判断し、警報を画面表示する。
また、ホスト監視装置14は、例えば子局装置2及び中継器3の設定情報を送信データとして、通信用基板10に出力する。これにより、設定情報が子局装置2及び中継器3へ送信され、子局装置2及び中継器3に設定情報が設定され、子局装置2及び中継器3に記憶されている設定情報が変更される。
また、ホスト監視装置14は、例えば設定情報の送信リクエストを送信データとして、通信用基板10に出力する。これにより、設定情報の送信リクエストが子局装置2及び中継器3へ送信される。ホスト監視装置14は、子局装置2及び中継器3から送られてくる設定情報を、通信用基板10を介して入力し、これを画面表示する。
〔本発明の概要〕
次に、本発明の概要について、図1に示した監視システム1を用いて説明する。監視システム1は、以下の4つの機能を有する。
(a)受信チャンネルの設定機能
(b)上位局及び下位局の設定機能
(c)送信電力の設定機能
(d)中継遅延時間の設定機能
以下、(a)~(d)について説明する。
まず、(a)について説明する。(a)は受信チャンネルの設定機能であり、混信を回避するために用いられる。
図5は、受信チャンネルの設定により混信を回避する一例を説明する図である。子局装置2-1、中継器3-1,3-2及びホスト装置4は、受信チャンネルを設定する機能を有する。
図5において、子局装置2-1では送信チャンネルが1chに設定されており、中継器3-1では受信チャンネルが1chに、送信チャンネルが2chに設定されているものとする。また、中継器3-2では受信チャンネルが2chに、送信チャンネルが3chに設定されており、ホスト装置4では受信チャンネルが3chに設定されているものとする。
子局装置2-1は、1chの送信チャンネルを用いて無線信号の電波を送信し、中継器3-1は、1chの受信チャンネルを用いて、子局装置2-1から送信された電波を受信する。また、中継器3-1は、2chの送信チャンネルを用いて電波を送信し、中継器3-2は、2chの受信チャンネルを用いて、中継器3-1から送信された電波を受信する。中継器3-2は、3chの送信チャンネルを用いて電波を送信し、ホスト装置4は、3chの受信チャンネルを用いて、中継器3-2から送信された電波を受信する。
ここで、子局装置2-1、中継器3-1,3-2及びホスト装置4において、受信チャンネルの設定ができず、共通の受信チャンネルが固定設定される場合を想定する。中継器3-1,3-2は、山頂等の見通し条件の良い場所に設置されるのが通常である。子局装置2-1、中継器3-1,3-2及びホスト装置4において、例えば変調方式としてLoRa変調が使用される場合、数10kmの無線通信が可能である。そうすると、受信チャンネルが共通に固定設定される場合には、混信が発生する可能性がある。
図5の例では、ホスト装置4は、固定の受信チャンネルを用いて、子局装置2-1及び中継器3-2から送信された電波をそれぞれ受信してしまうため、ホスト装置4において混信が発生する可能性がある。
そこで、本発明の実施形態では、子局装置2-1、中継器3-1,3-2及びホスト装置4に備えた通信用基板10が、受信チャンネルを設定するようにした。これにより、混信関係の無線回線が存在する場合には、無線通信のチャンネルを分けることができ、混信の発生を回避することができる。
次に、前述の(b)について説明する。(b)は上位局及び下位局の設定機能であり、無線回線をブランチ化するために用いられる。
図6は、上位局及び下位局の設定により無線回線をブランチ化する一例を説明する図である。中継器3A,3B-1,・・・,3B-n,3C-1,・・・,3C-mは、上位局及び下位局を設定する機能を有する。
中継器3Aにおいて、上位局としてn台の中継器3B-1,・・・,3B-n(n個の上位局コード及び上位局チャンネル)が設定されているものとする。また、下位局としてm台の中継器3C-1,・・・,3C-m(m個の下位局コード及び下位局チャンネル)が設定されているものとする。n,mは正の整数である。
同様に、中継器3B-1,・・・,3B-n,3C-1,・・・,3C-mにおいても、上位局及び下位局が設定される。尚、図示しない子局装置2-1,・・・においては、上位局が設定され、図示しないホスト装置4においては、下位局が設定される。
このように、本発明の実施形態では、子局装置2、中継器3-1,3-2及びホスト装置4に備えた通信用基板10が、上位局及び下位局を設定するようにした。これにより、有線回線のように、無線回線をブランチ化することができ、複数の中継器3によるリレー中継を実現し、予備通信ルートを確保することができる。
次に、前述の(c)について説明する。(c)は送信電力の設定機能であり、混信を軽減するために用いられる。
図7は、送信電力の設定により混信を軽減する一例を説明する図である。子局装置2-1,2-2、中継器3-1,3-2,3-3及びホスト装置4は、送信電力を設定する機能を有する。
子局装置2-1,2-2、中継器3-1,3-2,3-3及びホスト装置4には、図7に示す送信チャンネル及び受信チャンネルが設定されているものとする。図7に示すように、中継器3-3の送信チャンネルは1chであり、中継器3-1及びホスト装置4の受信チャンネルは1chである。
このような送信チャンネル及び受信チャンネルの設定状況では、中継器3-3は、1chの送信チャンネルを用いて無線信号の電波を送信し、中継器3-1及びホスト装置4は、1chの受信チャンネルを用いて、中継器3-3から送信された電波を受信する。この場合、中継器3-1は、1chの受信チャンネルを用いて、子局装置2-1及び中継器3-3から送信された電波を受信するため、中継器3-1において混信が発生してしまう。
そこで、本発明の実施形態では、中継器3-3が、電波を送信する際の送信電力を設定するようにした。具体的には、中継器3-3は、1chの送信チャンネルを用いて電波を送信する際に、電波が中継器3-1へ届かないように、かつホスト装置4へ届くように、1chの送信チャンネルの送信電力を設定する。
これにより、ホスト装置4は、中継器3-3から送信された電波を受信することができ、中継器3-1は、当該電波を受信することができない。つまり、中継器3-1は、1chの受信チャンネルを用いて、子局装置2-1から送信された電波を受信し、中継器3-3から送信された電波を受信しないため、中継器3-1における混信を軽減することができる。
このように、中継器3-3から過剰な送信電力にて電波が送信されると、中継器3-1において混信が発生する可能性がある。このため、中継器3-3は、送信電力を低く設定することで、中継器3-1への電波の飛び出しを抑制する。これにより、中継器3-1における混信を軽減することができる。
次に、前述の(d)について説明する。(d)は中継遅延時間の設定機能であり、電波の送信タイミング及び受信タイミングが同じになる、いわゆる送受信の競合の発生を回避するために用いられる。
図8は、中継遅延時間の設定により送受信の競合を回避する一例を説明する図である。子局装置2-1,2-2、中継器3-1,3-2,3-3及びホスト装置4は、中継遅延時間を設定する機能を有する。
図8において、ホスト装置4の下位局は中継器3-1であり、中継器3-1の上位局はホスト装置4であり、中継器3-1の下位局は中継器3-2,3-3であり、中継器3-2,3-3の上位局は中継器3-1であるものとする。また、中継器3-2の下位局は子局装置2-1であり、子局装置2-1の上位局は中継器3-2であり、中継器3-3の下位局は子局装置2-2であり、子局装置2-2の上位局は中継器3-3であるものとする。つまり、図8に示す上位局及び下位局が、子局装置2-1,2-2、中継器3-1,3-2,3-3及びホスト装置4に設定されているものとする。
このような上位局及び下位局の設定状況において、ホスト装置4は、子局装置2-1から状態情報を取得するため、状態送信リクエストを含む通信データの電波を下位局の子局装置2-1へ送信する(ステップS1)。
中継器3-1は、上位局のホスト装置4から当該通信データの電波を受信すると、当該通信データの電波を下位局の中継器3-2へ送信する(ステップS2)。また、中継器3-1は、当該通信データの電波を下位局の中継器3-3へ送信する(ステップS7)。
中継器3-2は、上位局の中継器3-1から当該通信データの電波を受信すると、当該通信データの電波を下位局の子局装置2-1へ送信する(ステップS3)。子局装置2-1は、上位局の中継器3-2から当該通信データの電波を受信すると、通信データに含まれる状態送信リクエストに対応した状態情報を生成し、状態情報を含む通信データの電波を上位局の中継器3-2へ送信する(ステップS4)。
中継器3-2は、下位局の子局装置2-1から当該通信データの電波を受信すると、当該通信データの電波を上位局の中継器3-1へ送信する(ステップS5)。そして、中継器3-1は、下位局の中継器3-2から当該通信データの電波を受信すると、当該通信データの電波を上位局のホスト装置4へ送信する(ステップS6)。これにより、ホスト装置4は、子局装置2-1から状態情報を取得することができる。
しかしながら、中継器3-1において、ステップS7の送信タイミングとステップS5の受信タイミングとが同じになってしまうことがあり得る。中継器3-1は、送受信共通のアンテナを備えているため、電波を中継器3-3へ送信しているときに、中継器3-2から電波を受信することができない。
具体的には、中継器3-1は、ホスト装置4から電波を受信すると、中継器3-2の送信チャンネルを設定して電波を中継器3-2へ送信し、そして、中継器3-3の送信チャンネルを設定して電波を中継器3-3へ送信する。このため、中継器3-1は、送信リクエストを含む通信データの電波を中継器3-3へ送信しているときに、既に送信済みの中継器3-2への送信リクエストに対応するアンサーの電波を中継器3-2から受信することがあり得る。
このように、中継器3-1が、送信リクエストを複数の中継器3-2,3-3へ転送する際に、中継器3-3への送信と中継器3-2からの受信との競合が発生し、中継器3-1は、中継器3-2からの電波を受信することができないことがあり得る。
そこで、本発明の実施形態では、中継器3-1は、送信リクエストを複数の中継器3-2,3-3へ転送する際に、送信リクエストを送信した後、次に送信リクエストを送信するタイミングを遅延させるため、中継遅延時間を設定するようにした。具体的には、中継器3-1は、送信リクエストを含む通信データの電波を中継器3-2へ送信し、予め設定された中継遅延時間経過したときに、送信リクエストを含む電波を中継器3-3へ送信する。中継遅延時間は、送信リクエストを送信してから、当該送信リクエストに対応するアンサーを受信するまでの間の時間を超える所定の時間が、予め設定される。
これにより、中継器3-1は、送信リクエストを含む通信データの電波を中継器3-2へ送信し、中継器3-2から当該送信リクエストに対応するアンサーの電波を受信する。そして、中継器3-1は、その後の中継遅延時間経過したときに、送信リクエストを含む通信データの電波を中継器3-3へ送信することとなる。つまり、中継器3-1が、送信リクエストを複数の中継器3-2,3-3へ転送する際に、中継器3-3への送信と中継器3-2からの受信との競合を回避することができる。
〔中継器3/通信用基板10〕
次に、図1及び図3に示した中継器3について説明する。図9は、中継器3に備えた通信用基板10のハードウェア構成例を示す概略図である。子局装置2及びホスト装置4に備えた通信用基板10についても、図9及び後述する図10~図19が適用される。
通信用基板10は、CPU21と、通信処理プログラム(無線中継プログラム)、テーブル及びデータ(設定情報、送信キューのデータ)等を記憶するRAM及びEEPROM等からなるメモリ22と、図示しないアンテナを介して通信データの電波の送受信を行う通信I/F部23と、ユーザによる通信処理プログラムの開発時に、メモリ22に記憶された通信処理プログラム及びテーブル等のダウンロード及びアップロード並びに修正等を行うために用いる開発用I/F部24と、中継局監視装置13、ホスト監視装置14等との間でデータの入出力を行う監視用I/F部25と、図示しない他の構成部と、を備えて構成される。これらはシステムバス26を介して相互に接続される。
通信処理プログラムは、上位局及び下位局から通信データを受信する処理、通信データを上位局及び下位局へ送信する処理、通信データに含まれる通信コマンドに基づいた処理等を実行するためのプログラムである。
尚、通信処理プログラムは、当該通信用基板10が処理を行うときに、CPU21によりメモリ22から読み出されて実行される。また、各種のテーブル及びデータは、通信処理プログラムの実行に伴い生成され、または通信I/F部23を介して受信され、メモリ22に格納される。そして、各種のテーブル及びデータは、CPU21によりメモリ22から読み出されて処理され、メモリ22に書き込まれる。
制御部20は、CPU21及びメモリ22により構成され、CPU21がメモリ22に格納された通信処理プログラムを読み出して実行することにより、通信用基板10全体を統括制御する。このように、通信用基板10は、図9に示したハードウェア構成により、制御部20が通信処理プログラムに従って各種処理を行う。
(機能構成)
図10は、通信用基板10の機能構成例を示すブロック図であり、図9に示した制御部20が通信処理プログラムの処理を実行する際の機能構成を示している。この通信用基板10は、アンテナ30、スイッチ31、受信部32、送信部33、通信処理部34及びメモリ35を備えている。
スイッチ31、受信部32の一部及び送信部33の一部は、図9に示した通信I/F部23に対応する。また、受信部32の他の部分、送信部33の他の部分、通信処理部34及びメモリ35は、図9に示した制御部20に対応する。
アンテナ30は、送受信共通のアンテナである。スイッチ31は、通常時に、アンテナ30と受信部32とを接続し、送信時に、アンテナ30と送信部33とを接続する。
つまり、通信用基板10は、通常時にアンテナ30と受信部32とが接続された受信待機状態となっており、受信部32は、アンテナ30及びスイッチ31を介して無線信号の電波を受信する。一方、通信用基板10は無線信号の電波を送信する際に、スイッチ31はアンテナ30と送信部33とを接続し、送信部33は、スイッチ31及びアンテナ30を介して電波を送信する。そして、通信用基板10は、送信が完了すると、スイッチ31はアンテナ30と受信部32とを接続し、通常時の受信待機状態となる。
このように、通信用基板10は、電波の送受信を同時に行うことができず、通常時は受信待機状態となっており、送信を行うときに送信可能状態となり、送信が完了すると受信待機状態に戻る。
受信部32は、電源投入時等の初期状態のときに、または後述する設定情報に含まれる受信チャンネルが変更されたときに、通信処理部34から、メモリ35に格納された設定情報に含まれる受信チャンネルをチャンネル情報として入力する。そして、受信部32は、チャンネル情報の示す受信チャンネルを設定し保持する。
受信部32は、アンテナ30及びスイッチ31を介して、受信チャンネルの電波を受信し、その信号に対し周波数変換処理、AD(アナログデジタル)変換処理及び復調処理等を行うことで、受信した電波から通信データを生成する。そして、受信部32は、通信データを通信処理部34に出力する。
送信部33は、電源投入時等の初期状態のときに、または後述する設定情報に含まれる送信電力値が変更されたときに、通信処理部34から、メモリ35に格納された設定情報に含まれる送信電力値を入力する。
送信部33は、電波を送信する際に、通信処理部34から、メモリ35に格納された設定情報に含まれる上位局チャンネルまたは下位局チャンネル(送信先のチャンネル)をチャンネル情報として入力する。
送信部33は、通信処理部34から通信データを入力し、通信データに対し変調処理、周波数変換処理、電力増幅処理等を行う。そして、送信部33は、変調処理等が行われた信号を通信データの電波として、チャンネル情報の示す送信チャンネルを用いて送信電力値の電力にて、スイッチ31及びアンテナ30を介して送信する。
ここで、送信部33は、周波数変換処理にて、通信データのアナログ信号の周波数を、チャンネル情報の示す送信チャンネルの無線周波数に変換する。また、送信部33は、電力増幅処理にて、無線周波数の信号の電力が送信電力値の電力となるように増幅する。
通信処理部34は、受信処理手段40、送信処理手段41、データ処理手段42及び送信電力設定処理手段43を備えている。
受信処理手段40は、電源投入時等の初期状態のときに、または設定情報に含まれる受信チャンネルが変更されたときに、メモリ35から設定情報に含まれる受信チャンネルを読み出す。そして、受信処理手段40は、受信チャンネルをチャンネル情報として受信部32に出力する。
受信処理手段40は、受信部32から通信データを入力し、通信データが自局宛であるか、または全局宛であるかを判定する。また、受信処理手段40は、通信データが上位局からのデータであるか、または下位局からのデータであるかを判定する。
送信処理手段41は、通信データを送信する際に、メモリ35の送信キューに、送信する通信データ毎に宛先局コード及び通信データを格納し、送信キューからこれらのデータを順番に取り出す。送信処理手段41は、メモリ35から、設定情報に含まれる上位局チャンネルまたは下位局チャンネルを宛先局コードに対応するチャンネルとして読み出し、これをチャンネル情報として送信部33に出力すると共に、通信データを送信部33に出力する。
送信処理手段41は、メモリ35の送信キューから宛先局コード及び通信データを取り出し、通信データを送信部33に出力した際に、メモリ35の送信キューに、次の宛先局コード及び通信データが格納されているか否かを判定する。送信処理手段41は、次の宛先局コード及び通信データが格納されていると判定した場合、メモリ35から設定情報に含まれる中継遅延時間を読み出す。そして、送信処理手段41は、中継遅延時間経過した後に、メモリ35の送信キューから次の宛先局コード及び通信データを取り出し、通信データを送信部33に出力する。
これにより、連続して通信データを送信する場合、後の通信データは、中継遅延時間経過した後に送信される。したがって、図8に示したとおり、送受信の競合を回避することができる。
データ処理手段42は、受信処理手段40が受信部32から入力した通信データが自局宛または全局宛の場合、通信データに含まれる通信コマンドに基づいた処理を行う。
送信電力設定処理手段43は、電源投入時等の初期状態のときに、または設定情報に含まれる送信電力値が変更されたときに、メモリ35から設定情報に含まれる送信電力値を読み出す。そして、送信電力設定処理手段43は、送信電力値を送信部33に出力する。
図11は、通信データの構成例を示す図である。この通信データは、子局装置2、中継器3及びホスト装置4が送受信するデータであり、ヘッダと、発局コード、着局コード、通信コマンド、本体(データ本体)等からなるペイロードとにより構成される。
発局コードは、通信データを発信(送信)した発信元である子局装置2、中継器3またはホスト装置4の局コードである。局コードは、子局装置2、中継器3及びホスト装置4におけるそれぞれの局を識別するためのユニークなコードである。子局装置2、中継器3及びホスト装置4のそれぞれは、自らの局コード(自局コード)を保持している。
着局コードは、通信データを着信させる(通信データの発信先である)子局装置2、中継器3またはホスト装置4の局コードである。全ての子局装置2、中継器3及びホスト装置4を発信先とした場合、着局コードには、全局宛のコードが格納される。
通信コマンドは、図10に示した通信処理部34のデータ処理手段42により実行されるデータ処理の種類を示す識別子である。詳細については、後述する図19にて説明する。
本体は、通信コマンドに応じたデータである。例えば、通信コマンドが「状態データ送信」の場合、本体には状態情報が格納される。
図12は、メモリ35に格納された設定情報の一例を示す図である。この設定情報は、受信チャンネル、複数の上位局コード及び上位局チャンネル、複数の下位局コード及び下位局チャンネル、送信電力値及び中継遅延時間からなる。上位局コード及び上位局チャンネルは一対の情報であり、下位局コード及び下位局チャンネルも一対の情報である。
設定情報は、ユーザにより予め設定され変更されるか、または、ホスト装置4から送信される「設定情報送信」の通信コマンドを含む通信データにより予め設定され変更される。
受信チャンネルは、当該通信用基板10が通信データの電波を受信する上位局及び下位局のチャンネルであり、上位局チャンネル及び下位局チャンネルに相当する。
上位局コードは、無線回線をブランチ化する際(図6を参照)の上位局のコードである。当該通信用基板10は、上位局コードを保持する他の通信用基板10との間で、通信データの電波を送受信することができる。
上位局チャンネルは、対応する上位局コードの上位局から通信データの電波を受信する際の受信チャンネルであり、また、対応する上位局コードの上位局へ通信データの電波を送信する際の送信チャンネルである。
下位局コードは、図6に示したように、無線回線をブランチ化する際の下位局のコードである。当該通信用基板10は、下位局コードを保持する他の通信用基板10との間で、通信データの電波を送受信することができる。
下位局チャンネルは、対応する下位局コードの下位局から通信データの電波を受信する際の受信チャンネルであり、また、対応する下位局コードの下位局へ通信データの電波を送信する際の送信チャンネルである。
送信電力値は、混信を軽減するために(図7を参照)、通信データの電波を送信する際の電力を制限するための情報である。
中継遅延時間は、送受信の競合を回避するために(図8を参照)、連続して通信データの電波を送信する際の送信タイミングを遅延させるための情報である。
尚、送信電力値は、複数の上位局及び複数の下位局におけるそれぞれの局毎の値であってもよい。この場合、通信処理部34の送信処理手段41は、メモリ35から、設定情報に含まれる局毎の送信電力値のうち、宛先局コードに対応する送信電力値を読み出し、送信電力値を送信部33に出力する。送信部33は、送信処理手段41から送信電力値を入力し、通信データの電波を、チャンネル情報の示す送信チャンネルを用いて送信電力値の電力にて送信する。これにより、送信チャンネル毎に異なる送信電力値の電力にて電波が送信されるから、送信チャンネルに対応する受信チャンネルが設定される子局装置2、中継器3及びホスト装置4のそれぞれの位置に応じて、混信の発生を一層軽減することができる。
図13は、メモリ35の送信キューに格納されるデータの構成例を示す図である。この送信キューには、送信する通信データ毎に宛先局コード及び通信データが順番に格納される。宛先コード及び通信データは一対の情報である。
宛先局コード及び通信データは、図10に示した通信処理部34の送信処理手段41により、送信キューに順番に格納される。また、宛先局コード及び通信データは、送信キューから、格納された順番に取り出され、取り出された際に削除される。
(通信処理)
図14は、図10に示した通信処理部34による処理例を示すフローチャートである。通信処理部34の受信処理手段40は、受信部32から通信データを入力したか否か(受信有か否か)を判定する(ステップS1401)。受信処理手段40は、ステップS1401において、通信データを入力していないと判定した場合(ステップS1401:N)、当該通信処理部34による処理は終了し、受信処理手段40はステップS1401の処理を再開する。
受信処理手段40は、ステップS1401において、通信データを入力したと判定した場合(ステップS1401:Y)、通信データが自局宛であるか否かを判定する(ステップS1402)。具体的には、受信処理手段40は、通信データのペイロードから着局コードを抽出し、着局コードが当該通信用基板10の保持している自局コードに一致するか否かを判定する。
受信処理手段40は、ステップS1402において、通信データが自局宛であると判定した場合(ステップS1402:Y)、すなわち着局コードが自局コードに一致すると判定した場合、通信データをデータ処理手段42に出力する。そして、データ処理手段42は、受信処理手段40から通信データを入力し、通信データに基づいてデータ処理を行う(ステップS1403)。当該通信処理部34による処理は終了し、受信処理手段40はステップS1401の処理を再開する。データ処理の詳細については後述する。
一方、受信処理手段40は、ステップS1402において、通信データが自局宛でないと判定した場合(ステップS1402:N)、すなわち着局コードが自局コードに一致しないと判定した場合、通信データが全局宛であるか否かを判定する(ステップS1404)。具体的には、受信処理手段40は、通信データのペイロードから抽出した着局コードが全局宛のコードであるか否かを判定する。
受信処理手段40は、ステップS1404において、通信データが全局宛であると判定した場合(ステップS1404:Y)、すなわち着局コードが全局宛のコードであると判定した場合、通信データをデータ処理手段42に出力する。そして、データ処理手段42は、受信処理手段40から通信データを入力し、ステップS1403と同様に、通信データに基づいてデータ処理を行い(ステップS1405)、ステップS1406へ移行する。データ処理の詳細については後述する。
一方、受信処理手段40は、ステップS1404において、通信データが全局宛でないと判定した場合(ステップS1404:N)、すなわち着局コードが全局宛のコードでないと判定した場合、通信データが上位局から受信したデータであるか否かを判定する(ステップS1406)。具体的には、受信処理手段40は、通信データのペイロードから発局コードを抽出すると共に、メモリ35から設定情報に含まれる全ての上位局コードを読み出し、発局コードが全ての上位局コードのうちのいずれかに一致するか否かを判定する。
受信処理手段40は、ステップS1406において、通信データが上位局から受信したデータであると判定した場合(ステップS1406:Y)、すなわち発局コードが全ての上位局コードのうちのいずれかに一致すると判定した場合、通信データの宛先が下位局であるか否かを判定する(ステップS1407)。具体的には、受信処理手段40は、メモリ35から設定情報に含まれる全ての下位局コードを読み出し、通信データのペイロードから抽出した着局コードが全ての下位局コードのうちのいずれかに一致するか否かを判定する。
受信処理手段40は、ステップS1407において、通信データの宛先が下位局であると判定した場合(ステップS1407:Y)、すなわち着局コードが全ての下位局コードのうちのいずれかに一致すると判定した場合、着局コードを宛先局コードに設定する。受信処理手段40は、宛先局コード及び通信データを送信処理手段41に出力する。
送信処理手段41は、受信処理手段40から宛先局コード及び通信データを入力し、宛先局コード及び通信データに基づいて、宛先局への送信処理を行う(ステップS1408)。当該通信処理部34による処理は終了し、受信処理手段40はステップS1401の処理を再開する。宛先局への送信処理の詳細については後述する。
受信処理手段40は、ステップS1407において、通信データの宛先が下位局でないと判定した場合(ステップS1407:N)、すなわち着局コードが全ての下位局コードに一致しないと判定した場合、全ての下位局コードを宛先局コードに設定する。受信処理手段40は、宛先局コード(全ての下位局コード)及び通信データを送信処理手段41に出力する。
送信処理手段41は、受信処理手段40から宛先局コード(全ての下位局コード)及び通信データを入力し、宛先局コード(全ての下位局コード)及び通信データに基づいて、全下位局への送信処理を行う(ステップS1409)。当該通信処理部34による処理は終了し、受信処理手段40はステップS1401の処理を再開する。全下位局への送信処理の詳細については後述する。
受信処理手段40は、ステップS1406において、通信データが上位局から受信したデータでないと判定した場合(ステップS1406:N)、すなわち発局コードが全ての上位局コードに一致しないと判定した場合、通信データが下位局から受信したデータであるか否かを判定する(ステップS1410)。具体的には、受信処理手段40は、メモリ35から設定情報に含まれる全ての下位局コードを読み出し、通信データから抽出した発局コードが全ての下位局コードのうちのいずれかに一致するか否かを判定する。
受信処理手段40は、ステップS1410において、通信データが下位局から受信したデータであると判定した場合(ステップS1410:Y)、すなわち発局コードが全ての下位局コードのうちのいずれかに一致すると判定した場合、通信データの宛先が上位局であるか否かを判定する(ステップS1411)。具体的には、受信処理手段40は、メモリ35から設定情報に含まれる全ての上位局コードを読み出し、通信データのペイロードから抽出した着局コードが全ての上位局コードのうちのいずれかに一致するか否かを判定する。
受信処理手段40は、ステップS1411において、通信データの宛先が上位局であると判定した場合(ステップS1411:Y)、すなわち着局コードが全ての上位局コードのうちのいずれかに一致すると判定した場合、着局コードを宛先局コードに設定する。受信処理手段40は、宛先局コード及び通信データを送信処理手段41に出力する。
送信処理手段41は、受信処理手段40から宛先局コード及び通信データを入力し、宛先局コード及び通信データに基づいて、宛先局への送信処理を行う(ステップS1412)。当該通信処理部34による処理は終了し、受信処理手段40はステップS1401の処理を再開する。宛先局への送信処理の詳細については後述する。
受信処理手段40は、ステップS1411において、通信データの宛先が上位局でないと判定した場合(ステップS1411:N)、すなわち着局コードが全ての上位局コードに一致しないと判定した場合、全ての上位局コードを宛先局コードに設定する。受信処理手段40は、宛先局コード(全ての上位局コード)及び通信データを送信処理手段41に出力する。
送信処理手段41は、受信処理手段40から宛先局コード(全ての上位局コード)及び通信データを入力し、宛先局コード(全ての上位局コード)及び通信データに基づいて、全上位局への送信処理を行う(ステップS1413)。当該通信処理部34による処理は終了し、受信処理手段40はステップS1401の処理を再開する。全上位局への送信処理の詳細については後述する。
図15は、宛先局への送信処理(ステップS1408,S1412)を示すフローチャートである。この処理は、図14に示したステップS1408,S1412の詳細を示している。
送信処理手段41は、受信処理手段40から宛先局コード及び通信データを入力し、メモリ35の送信キューに宛先局コード及び通信データを格納する(ステップS1501)。そして、送信処理手段41は、通信データ送信処理を行う(ステップS1502)。通信データ送信処理の詳細については後述する。
図16は、全下位局への送信処理(ステップS1409)を示すフローチャートである。この処理は、図14に示したステップS1409の詳細を示している。
送信処理手段41は、受信処理手段40から宛先局コード(全ての下位局コード)及び通信データを入力し、全ての下位局コードのそれぞれを宛先局コードとして、メモリ35の送信キューに、宛先局コード及び通信データを順次格納する(ステップS1601)。そして、送信処理手段41は、通信データ送信処理を行う(ステップS1602)。通信データ送信処理の詳細については後述する。
図17は、全上位局への送信処理(ステップS1413)を示すフローチャートである。この処理は、図14に示したステップS1413の詳細を示している。
送信処理手段41は、受信処理手段40から宛先局コード(全ての上位局コード)及び通信データを入力し、全ての上位局コードのそれぞれを宛先局コードとして、メモリ35の送信キューに、宛先局コード及び通信データを順次格納する(ステップS1701)。そして、送信処理手段41は、通信データ送信処理を行う(ステップS1702)。通信データ送信処理の詳細については後述する。
図18は、通信データ送信処理(ステップS1502,S1602,S1702)を示すフローチャートである。この処理は、図15に示したステップS1502、図16に示したステップS1602及び図17に示したステップS1702の詳細を示している。
送信処理手段41は、メモリ35の送信キューから先頭の(先頭に格納されている)宛先局コード及び通信データを取り出す(ステップS1801)。送信キューから先頭の宛先局コード及び通信データが取り出されることにより、先頭の次に格納されていた宛先局コード及び通信データが先頭へシフトする。
送信処理手段41は、送信キューから取り出した通信データについて、所定のヘッダを設定する(ステップS1802)。
送信処理手段41は、送信キューから取り出した宛先局コードについて、メモリ35から、設定情報に含まれる上位局チャンネルまたは下位局チャンネルのうち、当該宛先局コードに一致する上位局コードに対応する上位局チャンネル、または下位局コードに対応する下位局チャンネルを読み出し(ステップS1803)、これを送信チャンネルとする。
送信処理手段41は、送信チャンネルをチャンネル情報とし、通信データ及びチャンネル情報を送信部33に出力する(ステップS1804)。送信部33は、送信処理手段41から通信データ及びチャネル情報を入力する。
受信部32及び送信部33は、受信チャンネルから送信チャンネルに切り替える(ステップS1805)。スイッチ31はアンテナ30と送信部33とを接続し、当該通信用基板10は送信可能状態となり、送信部33は、通信データの電波を送信する(ステップS1806)。この場合、送信部33は、送信処理手段41から入力したチャンネル情報の示す送信チャンネルを用いて、送信電力設定処理手段43から既に入力済みの送信電力値の電力にて、通信データの電波を送信する。
送信処理手段41は、メモリ35の送信キューに、宛先局コード及び通信データが有るか否か(格納されているか否か)を判定する(ステップS1807)。
送信処理手段41は、ステップS1807において、送信キューに宛先局コード及び通信データが有ると判定した場合(ステップS1807:Y)、メモリ35から設定情報に含まれる中継遅延時間を読み出す(ステップS1808)。そして、送信処理手段41は、中継遅延時間待機し(ステップS1809)、ステップS1801へ移行する。これにより、送信処理手段41から送信部33に通信データが出力され送信された後、中継待機時間が経過すると、次の通信データが出力され送信される。
送信処理手段41は、ステップS1807において、送信キューに宛先局コード及び通信データが無いと判定した場合(ステップS1807:N)、受信部32及び送信部33は、送信チャンネルから受信チャンネルに切り替える(ステップS1810)。スイッチ31はアンテナ30と受信部32とを接続し、当該通信用基板10は通常時の受信待機状態となる(ステップS1811)。
図19は、データ処理(ステップS1403,S1405)を示すフローチャートである。この処理は、図14に示したステップS1403,S1405の詳細を示している。
データ処理手段42は、受信処理手段40から通信データを入力し、通信データのペイロードから通信コマンド(及び本体)を抽出する(ステップS1901)。ここで、データ処理手段42は、通信データのペイロードに本体のデータが格納されている場合、通信コマンド及び本体を抽出し、本体のデータが格納されていない場合、通信コマンドのみを抽出する。
データ処理手段42は、通信コマンド(及び本体)に基づいた処理を行う(ステップS1902)。
通信コマンドには、例えば「状態送信リクエスト」「状態データ送信」「Pingリクエスト」「Pingアンサー返送」「日時情報送信」「設定情報返信リクエスト」「設定情報送信」「設定情報変更リクエスト」「制御リクエスト」等がある。
例えば通信コマンドの「状態送信リクエスト」は、ホスト装置4が子局装置2の状態情報を取得する際のコマンドであり、「状態データ送信」は、子局装置2が状態情報を送信する際のコマンドである。
ホスト装置4のホスト監視装置14は、子局装置2の状態情報を取得するための送信リクエストをホスト装置4の通信用基板10へ出力する。通信用基板10は、ホスト監視装置14から送信リクエストを入力すると、通信コマンドに「状態送信リクエスト」を設定した通信データを生成し、通信データの電波を中継器3へ送信する。通信データの電波は、中継器3を経由して子局装置2へ到着する。
子局装置2の通信用基板10は、通信コマンドに「状態送信リクエスト」が設定された通信データの電波を受信する。そうすると、通信用基板10の通信処理部34に備えたデータ処理手段42は、通信コマンド「状態送信リクエスト」を判断し、送信リクエストをI/F基板12を介して中継局監視装置13へ出力する。
中継局監視装置13は、送信リクエストを入力すると、これに対応する状態情報を生成し、状態情報を、I/F基板12を介して通信用基板10へ出力する。通信用基板10は、中継局監視装置13からI/F基板12を介して状態情報を入力し、通信コマンドに「状態データ送信」を設定すると共に、本体に状態情報を設定した通信データを生成し、通信データの電波を中継器3へ送信する。通信データの電波は、中継器3を経由してホスト装置4へ到着する。
ホスト装置4の通信用基板10は、通信コマンドに「状態データ送信」が設定され、本体に状態情報が設定された通信データの電波を受信する。そうすると、通信用基板10の通信処理部34に備えたデータ処理手段42は、通信コマンド「状態データ送信」を判断し、本体に設定されている状態情報を抽出し、状態情報をホスト監視装置14へ出力する。これにより、ホスト装置4のホスト監視装置14は、子局装置2の中継局監視装置13が管理している状態情報を取得することができる。
また、通信コマンドの「Pingリクエスト」は、ホスト装置4等がラウンドトリップタイム(RTT)またはデータロス率を求める際に用いるコマンドである。「Pingアンサー返送」は、対象となる子局装置2等が「Pingリクエスト」の返答を送信する際のコマンドである。
また、通信コマンドの「日時情報送信」は、ホスト装置4等が自らのタイマーの「日時情報」を送信する際のコマンドである。
また、通信コマンドの「設定情報返信リクエスト」は、ホスト装置4が子局装置2及び中継器3に備えた通信用基板10のメモリ35に格納されている設定情報(図12を参照)を取得する際のコマンドである。「設定情報送信」は、子局装置2等が設定情報を送信する際のコマンドである。
ホスト装置4のホスト監視装置14は、例えば中継器3の設定情報を取得するための返信リクエストをホスト装置4の通信用基板10へ出力する。通信用基板10は、ホスト監視装置14から返信リクエストを入力すると、通信コマンドに「設定情報返信リクエスト」を設定した通信データを生成し、通信データの電波を中継器3へ送信する。
中継器3の通信用基板10は、通信コマンドに「設定情報返信リクエスト」が設定された通信データの電波を受信する。そうすると、通信用基板10の通信処理部34に備えたデータ処理手段42は、通信コマンド「設定情報返信リクエスト」を判断し、メモリ35から設定情報を読み出す。そして、データ処理手段42は、通信コマンドに「設定情報送信」を設定すると共に、本体に設定情報を設定した通信データを生成し、通信データの電波をホスト装置4へ送信する。
ホスト装置4の通信用基板10は、通信コマンドに「設定情報送信」が設定され、本体に設定情報が設定された通信データの電波を受信する。そうすると、通信用基板10の通信処理部34に備えたデータ処理手段42は、通信コマンド「設定情報送信」を判断し、本体に設定されている設定情報を抽出し、設定情報をホスト監視装置14へ出力する。これにより、ホスト装置4のホスト監視装置14は、中継器3に備えた通信用基板10の設定情報を取得することができる。
また、通信コマンドの「設定情報変更リクエスト」は、ホスト装置4が子局装置2及び中継器3に備えた通信用基板10のメモリ35に格納されている設定情報を変更するためのコマンドである。つまり、「設定情報変更リクエスト」により、通信用基板10に設定された設定情報である受信チャンネル、複数の上位局コード及び上位局チャンネル、複数の下位局コード及び下位局チャンネル、送信電力値、並びに中継遅延時間のうち、1以上の情報を変更することができる。
ホスト装置4のホスト監視装置14は、例えば中継器3の設定情報(設定情報の一部であってもよい。)を変更するための変更リクエスト及び変更データをホスト装置4の通信用基板10へ出力する。通信用基板10は、ホスト監視装置14から変更リクエスト及び変更データを入力すると、通信コマンドに「設定情報変更リクエスト」を設定すると共に、本体に変更データを設定した通信データを生成し、通信データの電波を中継器3へ送信する。
中継器3の通信用基板10は、通信コマンドに「設定情報変更リクエスト」が設定され、本体に変更データが設定された通信データの電波を受信する。そうすると、通信用基板10の通信処理部34に備えたデータ処理手段42は、通信コマンド「設定情報変更リクエスト」を判断し、本体に設定されている変更データを抽出する。そして、データ処理手段42は、変更データを、メモリ35に格納されている設定情報の対象箇所に格納する。これにより、ホスト装置4のホスト監視装置14は、中継器3に備えた通信用基板10の設定情報を変更することができる。
また、通信コマンドの「制御リクエスト」は、ホスト装置4が中継器3によるリレー中継を制御するために、中継器3をリモート制御するためのコマンドである。
以上のように、本発明の実施形態の中継器3によれば、通信用基板10及び太陽電池11を備えて構成するようにした。通信用基板10に備えた受信部32は、メモリ35に格納された設定情報に含まれる受信チャンネルをチャンネル情報として保持し、アンテナ30及びスイッチ31を介して受信した電波から、受信チャンネルの通信データを生成する。
通信用基板10に備えた通信処理部34の受信処理手段40は、受信部32から通信データを入力し、通信データから抽出した着局コードと、自らが保持している自局コードとを比較することで、通信データが自局宛であるか否かを判定する。また、受信処理手段40は、通信データから抽出した着局コードと、全局宛のコードとを比較することで、通信データが全局宛であるか否かを判定する。また、受信処理手段40は、通信データから抽出した発局コードと、設定情報に含まれる全ての上位局コードとを比較することで、通信データが上位局からのデータであるか否かを判定する。また、受信処理手段40は、通信データから抽出した発局コードと、設定情報に含まれる全ての下位局コードとを比較することで、通信データが下位局からのデータであるか否かを判定する。
データ処理手段42は、通信データが自局宛または全局宛である場合、通信データに含まれる通信コマンドに基づいた処理を行う。
送信処理手段41は、通信データが上位局からのデータである場合、宛先局への送信処理または全下位局への送信処理を行う。また、送信処理手段41は、通信データが下位局からのデータである場合、宛先局への送信処理または全上位局への送信処理を行う。
送信処理手段41は、送信処理の際に、宛先局コード及び通信データを送信キューに格納し、送信キューから宛先局コード等を取り出す。送信処理手段41は、送信キューから宛先局コード等を取り出して送信処理を行った際に、送信キューに宛先局コード等が有る場合、設定情報に含まれる中継遅延時間待機した後、送信キューから宛先局コード等を取り出して送信処理を行う。
通信用基板10に備えた送信部33は、送信処理手段41の送信処理により生成された通信データの電波を、設定情報に含まれる送信電力値の電力にて、スイッチ31を介してアンテナ30から送信する。
このように、中継器3の通信用基板10は、受信チャンネルを設定するようにした。同じ通信用基板10を備える子局装置2及びホスト装置4においても同様である。これにより、混信関係の無線回線が存在する場合に、無線通信のチャンネルを分けることができ、混信の発生を回避することができる(図5を参照)。
また、中継器3の通信用基板10は、上位局(上位局コード及び上位局チャンネル)及び下位局(下位局コード及び下位局チャンネル)を設定するようにした。これにより、有線回線のように、無線回線をブランチ化することができ、複数の中継器3によるリレー中継を実現し、予備通信ルートを確保することができる(図6を参照)。
また、中継器3の通信用基板10は、通信データの電波を送信する際の送信電力を設定するようにした。これにより、中継器3の通信用基板10は、例えば1chの送信チャンネルを用いて電波を送信する際に、電波を1chにて受信する上位局または下位局の中継器3のみへ届き、電波を1chにて受信する他の中継器3へ届かないように、1chの送信チャンネルの送信電力を設定することができる。したがって、中継器3における混信を軽減することができる(図7を参照)。
また、中継器3に備えた通信用基板10は、連続して通信データの電波を送信する際に、中継遅延時間待機した後に、通信データの電波を送信するようにした。これにより、中継器3は、送信リクエストを第1の中継器3へ送信し、当該第1の中継器3からそのアンサーを受信し、その後の中継遅延時間経過したときに、送信リクエストを第2の中継器3へ送信することとなる。つまり、中継器3が、送信リクエストを他の複数の中継器3へ転送する際に、第1の中継器からの受信と第2の中継器3への送信との競合を回避することができる(図8を参照)。
したがって、遠方の設備の状況を監視する監視システムにおいて、公共のインフラの状況に影響されることなく、リレー中継を実現すると共に、混信を軽減することができる。つまり、公共インフラが遮断した場合であっても、遠方に設置された放送所等の各種情報を無線伝送にて確実に取得することができる。