以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の物体をターゲットとして検出することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、自動運転自動車、バス、タクシー、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、ヘリコプター、トラクターなどの農作業装置、除雪車、清掃車、パトカー、救急車、及びドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。一実施形態に係る電子機器は、センサ及び所定の物体の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ及び物体の双方が静止していても、センサと物体との間の距離などを測定することができる。
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備える電子機器を、移動体に設置した例を示している。
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備える電子機器1が設置されている。また、図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)していてもよい。電子機器1の具体的な構成については後述する。電子機器1は、後述のように、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
図1に示すように、移動体100には、送信アンテナを備える電子機器1が設置されている。図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備える電子機器1は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、電子機器1が移動体100に設置される位置は、図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、図1に示すような電子機器1を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このような電子機器1の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。電子機器1は、移動体100の内部に設置されているとしてもよい。移動体100の内部とは、例えばバンパー内の空間、ボディ内の空間、ヘッドライト内の空間、又は運転スペースの空間などでよい。
電子機器1は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の物体(例えば図1に示す物体200)が存在する場合、電子機器1から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えば電子機器1の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該物体をターゲットとして検出することができる。
送信アンテナを備える電子機器1は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、電子機器1は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係る電子機器1は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の物体200をターゲットとして検出することができる。例えば、図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
ここで、物体200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、物体200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者などの人間、動物、昆虫その他の生命体、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、マンホール、又は障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、物体200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、物体200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。
図1において、電子機器1の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、図1において、電子機器1は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、電子機器1は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、電子機器1は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。
以下、典型的な例として、電子機器1の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。
図2は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、例として、このような実施形態について説明する。
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、信号処理部10を備えている。信号処理部10は、信号発生処理部11、受信信号処理部12、及び通信インタフェース13を備えてよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、送信部として、送信DAC21、送信回路22、ミリ波送信回路23、及び、送信アンテナアレイ24を備えている。また、一実施形態に係る電子機器1は、受信部として、受信アンテナアレイ31、ミキサ32、受信回路33、及び、受信ADC34を備えている。一実施形態に係る電子機器1は、図2に示す機能部のうち少なくともいずれかを含まなくてもよいし、図2に示す機能部以外の機能部を含んでもよい。図2に示す電子機器1は、ミリ波帯域等の電磁波を用いた一般的なレーダと基本的に同様に構成した回路を用いて構成してよい。一方で、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部10による信号処理は、従来の一般的なレーダとは異なる処理を含む。
一実施形態に係る電子機器1が備える信号処理部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。特に、信号処理部10は、電子機器1が扱う信号について各種の処理を行う。信号処理部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。信号処理部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、信号処理部10は、例えばCPU(ハードウェア)及び当該CPUで実行されるプログラム(ソフトウェア)として構成してよい。信号処理部10は、信号処理部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
信号処理部10の信号発生処理部11は、電子機器1から送信する信号を発生する。一実施形態に係る電子機器1において、信号発生処理部11は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号発生処理部11は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号発生処理部11は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号発生処理部11は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号発生処理部11が生成する信号は、例えば信号処理部10において予め設定されていてもよい。また、信号発生処理部11が生成する信号は、例えば信号処理部10の記憶部などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号発生処理部11によって生成された信号は、送信DAC21に供給される。このため、信号発生処理部11は、送信DAC21に接続されてよい。
送信DAC(デジタル・アナログ・コンバータ)21は、信号発生処理部11から供給されるデジタル信号をアナログ信号に変換する機能を有する。送信DAC21は、一般的なデジタル・アナログ・コンバータを含めて構成してよい。送信DAC21によってアナログ化された信号は、送信回路22に供給される。このため、送信DAC21は、送信回路22に接続されてよい。
送信回路22は、送信DAC21によってアナログ化された信号を中間周波数(Intermediate Frequency:IF)の帯域に変換する機能を有する。送信回路22は、一般的なIF帯域の送信回路を含めて構成してよい。送信回路22によって処理された信号は、ミリ波送信回路23に供給される。このため、送信回路22は、ミリ波送信回路23に接続されてよい。
ミリ波送信回路23は、送信回路22によって処理された信号を、ミリ波(RF波)として送信する機能を有する。ミリ波送信回路23は、一般的なミリ波の送信回路を含めて構成してよい。ミリ波送信回路23によって処理された信号は、送信アンテナアレイ24に供給される。このため、ミリ波送信回路23は、送信アンテナアレイ24に接続されてよい。また、ミリ波送信回路23によって処理された信号は、ミキサ32にも供給される。このため、このため、ミリ波送信回路23は、ミキサ32にも接続されてよい。
送信アンテナアレイ24は、複数の送信アンテナをアレイ状に配列させたものである。図2においては、送信アンテナアレイ24の構成を簡略化して示してある。送信アンテナアレイ24は、ミリ波送信回路23によって処理された信号を、電子機器1の外部に送信する。送信アンテナアレイ24は、一般的なミリ波レーダにおいて用いられる送信アンテナアレイを含めて構成してよい。
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナアレイ24を備え、送信アンテナアレイ24から送信波として送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。
例えば、図2に示すように、電子機器1の周囲に物体200が存在する場合を想定する。この場合、送信アンテナアレイ24から送信された送信波の少なくとも一部は、物体200によって反射される。送信アンテナアレイ24から送信された送信波のうち、物体200によって反射されるものの少なくとも一部は、受信アンテナアレイ31に向けて反射され得る。
受信アンテナアレイ31は、反射波を受信する。ここで、当該反射波は、送信アンテナアレイ24から送信された送信波のうち物体200によって反射されたものの少なくとも一部としてよい。
受信アンテナアレイ31は、複数の受信アンテナをアレイ状に配列させたものである。図2においては、受信アンテナアレイ31の構成を簡略化して示してある。受信アンテナアレイ31は、送信アンテナアレイ24から送信された送信波が反射された反射波を受信する。受信アンテナアレイ31は、一般的なミリ波レーダにおいて用いられる受信アンテナアレイを含めて構成してよい。受信アンテナアレイ31は、反射波として受信された受信信号を、ミキサ32に供給する。このため、受信アンテナアレイ31は、ミキサ32に接続されてよい。
ミキサ32は、ミリ波送信回路23によって処理された信号(送信信号)と、受信アンテナアレイ31によって受信された受信信号とを、中間周波数(IF)の帯域に変換する。ミキサ32は、一般的なミリ波レーダにおいて用いられるミキサを含めて構成してよい。ミキサ32は、合成された結果として生成される信号を、受信回路33に供給する。このため、ミキサ32は、受信回路33に接続されてよい。
受信回路33は、ミキサ32によってIF帯域に変換された信号をアナログ処理する機能を有する。受信回路33は、一般的なIF帯域に変換する受信回路を含めて構成してよい。受信回路33によって処理された信号は、受信ADC34に供給される。このため、受信回路33は、受信ADC34に接続されてよい。
受信ADC(アナログ・デジタル・コンバータ)34は、受信回路33から供給されるアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有する。受信ADC34は、一般的なアナログ・デジタル・コンバータを含めて構成してよい。受信ADC34によってデジタル化された信号は、信号処理部10の受信信号処理部12に供給される。このため、受信ADC34は、信号処理部10に接続されてよい。
信号処理部10の受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に各種の処理を施す機能を有する。例えば、受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に基づいて、電子機器1から物体200までの距離を算出する(測距)。また、受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に基づいて、物体200の電子機器1に対する相対速度を算出する(測速)。さらに、受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に基づいて、物体200の電子機器1から見た方位角を算出する(測角)。具体的には、受信信号処理部12には、I/Q変換されたデータが入力されてよい。このようなデータが入力されることにより、受信信号処理部12は、距離(Range)方向及び速度(Velocity)方向の高速フーリエ変換(2D-FFT)をそれぞれ行う。その後、受信信号処理部12は、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、及び/又は、CFAR(Constant False Alarm Rate)などの処理による雑音点の除去による誤警報の抑制と一定確率化を行う。そして、受信信号処理部12は、CFARの基準を満たす点に対して到来角度推定を行うことにより、物体200の位置を得ることとなる。受信信号処理部12によって測距、測速、及び測角された結果として生成される情報は、通信インタフェース13に供給される。
信号処理部10の通信インタフェース13は、信号処理部10の情報を例えば外部の制御部50に出力などするインタフェースを含んで構成される。通信インタフェース13は、物体200の位置、速度、及び角度の少なくともいずれかの情報を、例えばCAN(Controller Area Network)などの信号として、信号処理部10の外部に出力する。物体200の位置、速度、角度の少なくともいずれかの情報は、通信インタフェース13を経て、制御部50に供給される。このため、通信インタフェース13は、信号処理部10に接続されてよい。
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばECU(Electronic Control Unit)のような制御部50に有線又は無線によって接続されてよい。制御部50は、移動体100の様々な動作を制御する。制御部50は、少なくとも1以上のECUにより構成されるものとしてよい。
図3は、信号処理部10の信号発生処理部11が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
図3は、FCM(Fast-Chirp Modulation(高速チャープ変調))方式を用いた場合における1フレームの時間的構造を示す。図3は、FCM方式の受信信号の一例を示している。FCMは、図3においてc1,c2,c3,c4,…,cnのように示すチャープ信号を、短い間隔(例えば最大測距距離から算出される電磁波のレーダと物標との間の往復時間以上)で繰り返す方式である。FCMにおいては、受信信号の信号処理の都合上、図3に示すようなサブフレーム単位に区分けして、送受信の処理を行うことが多い。
図3において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。図3に示す例において、信号発生処理部11は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。図3においては、各チャープ信号を、c1,c2,c3,c4,…,cnのように示してある。図3に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
図3に示す例において、c1,c2,c3,c4,…,cnのようにいくつかのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、図3に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,c3,c4,…,cnのようにいくつかのチャープ信号を含んで構成されている。また、図3に示す例において、サブフレーム1,サブフレーム2,…,サブフレームNのようにいくつかのサブフレームを含めて、1つのフレーム(1フレーム)としている。すなわち、図3に示す1フレームは、N個のサブフレームを含んで構成されている。また、図3に示す1フレームをフレーム1として、その後に、フレーム2,フレーム3,…などが続いてよい。これらのフレームは、それぞれフレーム1と同様に、N個のサブフレームを含んで構成されてよい。また、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。図3に示す1つのフレームは、例えば30ミリ秒から50ミリ秒程度の長さとしてよい。
一実施形態に係る電子機器1において、信号発生処理部11は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、図3においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号発生処理部11が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えば信号処理部10の記憶部などに記憶しておいてよい。
このように、一実施形態に係る電子機器1は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
以下、電子機器1は、図3に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、図3に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は任意としてよい。すなわち、一実施形態において、信号発生処理部11は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、図3に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは任意としてよい。すなわち、一実施形態において、信号発生処理部11は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。信号発生処理部11は、異なる周波数の信号を生成してよい。信号発生処理部11は、周波数fがそれぞれ異なる帯域幅の複数の離散的な信号を生成してもよい。
図4は、図3に示したサブフレームの一部を、他の態様で示した図である。図4は、信号処理部10の受信信号処理部12(図2)において行う処理である2D-FFT(Two Dimensional Fast Fourier Transform)を行った結果として、図3に示した送信信号を受信した受信信号の各サンプルを示したものである。
図4に示すように、サブフレーム1,…,サブフレームNのような各サブフレームにおいて各チャープ信号c1,c2,c3,c4,…,cnが格納されている。図4において、各チャープ信号c1,c2,c3,c4,…,cnは、それぞれ横方向に配列された升目によって示す各サンプルから構成されている。図4に示す受信信号は、図2に示した受信信号処理部12において、2D-FFT、CFAR、及び各サブフレームの統合信号処理が施される。
図5は、図2に示した受信信号処理部12において、2D-FFT、CFAR、及び各サブフレームの統合信号処理が施された結果、レンジ-ドップラー(距離-速度)平面上の点群が算出された例を示す図である。
図5において、横方向はレンジ(距離)を表し、縦方向は速度を表している。図5に示す、塗りつぶされた点群s1は、CFARの閾値処理を超えた信号を示す点群である。図5に示す、塗りつぶされていない点群s2は、CFARの閾値を超えなかった、点群のないbin(2D-FFTサンプル)を示す。図5において算出されたレンジ-ドップラー平面上の点群は、方向推定によりレーダからの方位を算出されて、物体200を示す点群として、2次元平面上の位置及び速度が算出される。ここで、方向推定は、ビームフォーマ及び/又は部分空間法により算出されてよい。代表的な部分空間法のアルゴリズムには、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、及び、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotation Invariance Technique)などがある。
図6は、受信信号処理部12が、方向推定を行った後に、図5に示したレンジ-ドップラー平面から、XY平面への点群座標の変換を行った結果の例を示す図である。図6に示すように、受信信号処理部12は、XY平面上に点群PGをプロットすることができる。ここで、点群PGは、各点Pから構成されている。また、それぞれの点Pは、角度θ、及び、極座標における半径方向の速度Vrを有している。
次に、一実施形態に係る電子機器1の動作の説明に際し、まず、一般的なミリ波レーダの技術の現状について説明する。
以下、ミリ波帯域とは、24GHz帯域(21.65GHzから26.65GHz)、60GHz帯域(60GHzから61GHz)、76GHz帯域(76GHzから77GHz)、及び79GHz帯域(77GHzから81GHz)を含むものとする。一般的に、ミリ波帯域の電磁波を用いたレーダのうち、いわゆる近距離及び中距離を監視するレーダにおいて、周辺物体を監視するためには、物体の検出点として生成される点群の空間的密度が高いことが望まれる。点群の空間密度が高ければ、周辺物体の位置のみならず、当該周辺物体の形状も正確に観測し得る。
一方、レーダにおいては、下記のような物理的制約及び/又は信号処理の要因により、1フレームと呼ばれる所定の時間内に生成される点群の空間密度が制約され得る。
(1)電磁波の波長に依存する回折の限界
(2)送信波のパルス幅に伴う距離の分解能
(3)信号のコンフィギュレーション及びFFT(Fast Fourier Transform)の点数などの制約による、距離の分解能及び/又は速度の分解能
(4)雑音と信号とのレベル比(S/N比)の低下による角度の分離性能の低下(部分空間法を用いる場合)
(5)プロセッサ(CPU、DSP、又はFPGAなど)における演算量又はメモリ容量の制約
(6)出力インタフェース30が外部機器に出力する通信の速度(ボーレート(baud rate))による制約
上述した点群の空間密度を制約する要因のうち、上記(1)は、送信アンテナアレイ24、受信アンテナアレイ31、及び物体200の間における電磁波の物理的制約に起因する傾向にある。また、上記(2)は、信号処理部10の信号発生処理部11に起因する傾向にある。また、上記(3)、(4)、及び(5)は、信号処理部10の受信信号処理部12に起因する傾向にある。また、上記(6)は、通信インタフェース13及び制御部50に関連する傾向にある。
一般的なミリ波レーダの技術においては、図3に示す1つのフレームに対して、図5に示すXYプロットを1つ描画する。しかしながら、この場合、前出の(1)から(6)の要因により、空間密度が十分に密な点群を生成することが困難になる。受信信号に基づいて生成される点群の空間密度が密であるほど、検出される物体の形状及び/又は大きさなどの情報を得ることは容易になる。すなわち、受信信号に基づいて生成される点群の空間密度が極力密になるようにシステムを構成することが望ましい。一実施形態に係る電子機器1は、受信信号に基づいて生成される点群の空間密度をより密にし得る。以下、そのような実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図7は、一実施形態に係る電子機器1の信号処理部10が行う動作(信号処理)を説明するフローチャートである。具体的には、図7は、電子機器1の信号処理部10が行う点群重畳処理を示すフローチャートとしてよい。一実施形態に係る電子機器1において、到来角度の推定に関する算出処理は、信号処理部10、又は信号処理部10の受信信号処理部12によって行なわれてよい。
図8に示す動作が開始すると、信号処理部10は、自車(電子機器1が搭載された移動体100)の移動速度を取得する(ステップS11)。ステップS11において、信号処理部10は、移動体100の移動速度を例えば制御部50から取得してよい。例えば、ECUを含んで構成される制御部50は、移動体100の車輪の回転を検出するセンサ等のセンサの計測値を、CANバスにより送信してもよい。このように、本実施形態において、電子機器1は、例えば移動体100のような所定の移動体に搭載されてよい。この場合、信号処理部10は、移動体100のような所定の移動体を制御する制御部(例えばECUなど)から、電子機器1の速度の情報を移動体100の速度として取得してよい。
ステップS11において自車の移動速度を取得したら、信号処理部10は、点群を重畳するフレーム数を算出する(ステップS12)。ステップS12において、信号処理部10は、自車の移動速度に基づいて、例えば以下の式(1)を用いて、重畳するフレーム数を算出してよい。ただし、この場合、Ve≠0、つまり自車は静止していないものとする。
ここで、Nは点群を重畳するフレーム数を表し、Δrは点群のレーダからの距離に関する許容誤差を表し、Tはフレームの時間長を表し、Veは自車両の速度ベクトルを表すものとする。また、式(1)においては、算出されるフレーム数を少数ではなく整数(例えば自然数)にするために、算出結果を丸める処理を行う。第1実施形態において、信号処理部10は、点群を重畳するフレーム数Nを、自車両の速度に応じて動的に変化する数として算出してよい。
式(1)は、点群を重畳するフレーム数を、許容可能な距離許容誤差Δrとなるように調整することを示している。距離許容誤差Δrは、FFTの点数及び最大測定距離から決定される点群の距離分解能を、1つの指標とすることができる。
一方、自車が静止している、すなわち、Ve=0のとき、式(1)の右辺は無限大に発散する。この場合、信号処理部10は、ステップS12において、重畳するフレーム数Nを、メモリ等のシステムが許容する最大値Nmaxとして算出してよい。すなわち、ステップS12において、Ve=0のとき、重畳するフレーム数Nは、以下の式(2)のように表すことができる。
N=Nmax (2)
ステップS12において点群を重畳するフレーム数を算出したら、信号処理部10は、検出された物体が静止しているか否かを判定する(ステップS13)。すなわち、ステップS13において、信号処理部10は、検出される各点群が静止物に属するのか移動物体に属するのかを判定する。
一般的に、レーダの技術においては、図6に示したように、動径方向の速度Vrのみの測定ができる。ここで、本実施形態において効果を提供する実際の仕様において、電子機器1からみた同心円状の接線方向に大きな速度もって移動する物体が存在する可能性は低い。このため、ステップS13において、信号処理部10は、以下のようにして、静止物体と移動物体を識別してよい。すなわち、物体の移動速度Vpは、自車の移動速度Veと点群の動径方向の速度Vsとの和として、以下の式(3)のように表すことができる。
Vp=Ve+Vs (3)
したがって、ステップS13において、信号処理部10は、以下の式(4)に示す閾値Vthを適当に設定することにより、検出された物体が静止しているか否かを判定することができる。
すなわち、ステップS13において、信号処理部10は、速度ベクトルVの大きさが閾値Vthよりも小さい場合、検出された物体が静止していると判定してよい。一方、ステップS13において、信号処理部10は、速度ベクトルVの大きさが閾値Vthよりも小さくない場合、検出された物体が移動していると判定してよい。
ステップS13において物体が静止していると判定された場合、信号処理部10は、当該物体を示す点群を重畳する(ステップS14)。一方、ステップS13において物体が静止していない、すなわち移動していると判定された場合、信号処理部10は、ステップS14をスキップする。すなわち、この場合、信号処理部10は、当該物体を示す点群を重畳しない。
ステップS14において、信号処理部10は、実際の処理として、図5に示すレンジ-ドップラーのドップラー軸を、式(3)によってベクトルVpの大きさを示す軸に変換してよい。そして、信号処理部10は、ステップS14において、0を中心とした数bin内(1又は2程度のbin)に属する点群のみに、点群重畳処理を行ってよい。
また、ステップS14において点群を重畳する際、信号処理部10は、重畳する点群に1からNのフレーム番号を付与してもよい。これにより、信号処理部10は、点群の新旧に関する順序を把握することができる。
このように、一実施形態において、信号処理部10は、例えば物体200の速度及び電子機器1の速度に基づいて、静止物体と判定される物体の位置を示す点を重ね合わせて、点群の情報を出力してもよい。一方、信号処理部10は、例えば物体200の速度及び電子機器1の速度に基づいて、静止物体でないと判定される物体の位置を示す点を重ね合わせずに、点群の情報を出力してもよい。
また、ステップS12に示したように、信号処理部10は、送信波又は受信波のフレームの少なくとも1つによって規定される時間において、静止物体と判定される物体の位置を重ね合わせて、点群の情報を出力してもよい。
特に、本実施形態において、信号処理部10は、上述のフレームの少なくとも1つの数を、例えば電子機器1の速度に応じて決定してもよい。
例えば、信号処理部10は、電子機器1の速度がゼロでない場合、上述のフレームの少なくとも1つの数を、電子機器1から物体200までの距離の誤差の許容範囲に基づいて決定してもよい。一方、信号処理部10は、電子機器1の速度がゼロである場合、上述のフレームの少なくとも1つの数を、電子機器1のシステムにおいて許容される最大の数に基づいて決定してもよい。
ステップS13において物体が静止していないと判定された場合、又は、ステップS14において点群が重畳された場合、信号処理部10は、ステップS15において点群を忘却する処理を行ってよい。ステップS15において、信号処理部10は、重畳された全点群の中で古い1フレームに相当する点群を、消去してよい。ステップS15の処理を行うことにより、電子機器1は、重畳された点群数が増え続けることを防止することができる。このように、本実施形態において、信号処理部10は、点群の情報を、所定のタイミングで忘却する処理を行ってもよい。
ステップS15において点群の忘却処理をしたら、信号処理部10は、図7に示す処理を終了するよう指示されたか否かを判定する(ステップS16)。ステップS16において、図7に示す処理を終了するよう指示された場合、信号処理部10は、図7に示す処理を終了してよい。一方、ステップS16において図7に示す処理を終了するよう指示されていない場合、信号処理部10は、ステップS11に戻って処理を続行してよい。
次に、一実施形態に係る電子機器1による点群重畳処理の効果の例を説明する。図8は、一実施形態に係る電子機器1による点群重畳処理の効果を説明するための比較例として、電子機器1による点群重畳処理を行わずに得られる結果を例示する図である。また、図9及び図10は、一実施形態に係る電子機器1による点群重畳処理の結果を例示する図である。
図8乃至図10に示すように、駐車場の枠線300a及び300Bが描かれた駐車場において、既に4台の自動車(200A,200B,200C,及び200D)が停車又は駐車している状況を想定する。図8乃至図10に示すように、駐車場の枠線300aにおいて、自動車200A及び200Bが停車又は駐車している。また、図8乃至図10に示すように、駐車場の枠線300Bにおいて、自動車200C及び200Dが停車又は駐車している。このような状況において、一実施形態に係る電子機器1を搭載した移動体100が、矢印の方向に速度Ve[m/s]で進む動作を想定する。図8乃至図10に示すように、自車両である移動体100は、前方中央に電子機器1を搭載した車両としてよい。図8乃至図10に示す状況は、レーダの点群を駐車場のフリースペース検知に使用することを想定した数値シミュレーション結果を示すものとしてよい。図8乃至図10において、点群PGは、ミリ波レーダである電子機器1によって検出された物体の面上にプロットしたものを表している。
上述のように、図8は、本実施形態に係る電子機器1による信号処理(点群重畳処理)を行わない場合の例を示すものである。図8は、例として、図3に示した1フレームのデータから生成される点群をプロットしたものである。すでに駐車されている他車両(自動車200A,200B,200C,及び200D)の形状及び/又は大きさの情報を得るためには、点群PGは、できるだけ高密度にプロットされることが望ましい。しかしながら、本実施形態に係る電子機器1による点群重畳処理を行わない場合、生成される点群の空間的密度は、比較的疎になってしまう。このため、本実施形態に係る電子機器1による点群重畳処理を行わない場合、他車両である自動車(200A,200B,200C,及び200D)の大きさ又は形状を把握することができない。
一方、図9及び図10は、本実施形態に係る電子機器1による信号処理(点群重畳処理)を行った結果、検出される点群の分布の例を示す図である。図9及び図10は、図3に示したフレームを10フレーム分、自車両の移動速度を考慮して点群を重畳されることにより、点群の密度を向上させている。図9に示すように、電子機器1は、すでに駐車されている他車両(自動車200A,200B,200C,及び200D)の形状及び/又は大きさの情報を得るのに必要十分な点群PGを得ることができる。したがって、本実施形態に係る電子機器1の点群重畳処理によれば、他車両である自動車(200A,200B,200C,及び200D)の大きさ又は形状を把握し易くなる。
図10は、図9に示した移動体100が駐車場においてさらに矢印の方向に進行した様子を例示する図である。図10は、図9と同様に、本実施形態に係る電子機器1による信号処理(点群重畳処理)を行った結果、検出される点群の分布の例を示す図である。図10においても、電子機器1は、すでに駐車されている他車両(自動車200A,200B,200C,及び200D)の形状及び/又は大きさの情報を得るのに必要十分な点群PGを得ることができる。したがって、本実施形態に係る電子機器1の点群重畳処理によれば、他車両である自動車(200A,200B,200C,及び200D)の大きさ又は形状を把握し易くなる。したがって、本実施形態に係る電子機器1による信号処理(点群重畳処理)は、例えば自動駐車システムなどのアプリケーションに対しての適用が可能である。
このように、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部10は、送信波として送信される送信信号及び反射波として受信される受信信号に基づいて、例えば物体200を検出する。また、信号処理部10は、例えば物体200の速度及び電子機器1の速度に基づいて、静止物体と判定される物体の位置を示す点群の情報を出力する。
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1によれば、例えばミリ波帯域の電磁波を用いたミリ波レーダのうち近距離又は中距離を監視するレーダにおいて、静止物の形状及び大きさを得るのに必要十分な点群の空間密度を得ることができる。一実施形態に係る電子機器1によれば、他の静止物体との相対速度を考慮して、適切に時間的に点群を重畳させることができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、例えば、レーダの自動駐車システム、又は衝突回避などに適用することができる。一実施形態に係る電子機器1によれば、物体ターゲットを検出する精度を向上し得る。一実施形態に係る電子機器1は、例えば、樹木、柵、塀、建物、乗り物、作物などの静止物を、精度よく検知することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る電子機器1について説明する。
第2実施形態は、上述した第1実施形態において、一部の処理を変更するものである。また、第2実施形態に係る電子機器1は、上述した第1実施形態に係る電子機器1と同様の構成とすることができる。以下、上述した第1実施形態と重複する説明は、適宜、簡略化又は省略する。
上述した第1実施形態において、図7のステップS12に示したように、点群を重畳するフレーム数Nは、自車両の速度に応じて動的に変化する数として算出することを想定した。これに対し、第2実施形態に係る電子機器1の信号処理部10は、図7のステップS12において、点群を重畳するフレーム数Nを、固定値Nfixとして設定してよい。
例えば、第2実施形態において、信号処理部10は、駐車場におけるフリースペース検知等において想定され得る自車両の最大速度の絶対値を定義してよい。このように定義された自車両の最大速度は、信号処理部10の内部メモリに記憶されてもよい。具体的には、第2実施形態において、信号処理部10は、例えば以下の式(5)のように、点群を重畳するフレーム数Nfixを、固定値として決定してよい。
ただし、上述の式(5)において、次の式(6)は、自車両の最大速度の絶対値を表すものとする。
第2実施形態において、信号処理部10は、常時、点群を重畳するフレーム数として、式(5)に示すNfixを適用してよい。
このように、第2実施形態において、信号処理部10は、点群を重畳するフレーム数として、送信波又は受信波のフレームの少なくとも1つの数を、例えば電子機器1の最大速度の絶対値に基づく固定値として決定してもよい。第2実施形態に係る電子機器1は、点群を重畳するフレーム数を固定値にすることにより、例えば信号処理部10の処理負荷を軽減し得る。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る電子機器1について説明する。
第3実施形態も、上述した第1実施形態において、一部の処理を変更するものである。また、第3実施形態に係る電子機器1も、上述した第1実施形態に係る電子機器1と同様の構成とすることができる。以下、上述した第1実施形態と重複する説明は、適宜、簡略化又は省略する。
図11は、一実施形態に係る電子機器1の信号処理部10が行う動作(信号処理)を説明するフローチャートである。図11は、図7に示した動作において、例えばステップS15の後に、ステップS21としてクラスタリングの処理を追加するものである。
図11に示すように、信号処理部10は、例えば処理の終了を判定するステップS16の前に、ステップS21としてクラスタリング処理を行ってもよい。これにより、移動体100の周囲に存在する物体200に属さない雑音に分類される点群を除去し得る。ステップS21において行う具体的な処理としては、例えば、DBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)、最短距離法(Nearest neighbor method)、及びk-means法などがある。ステップS21において、信号処理部10は、全ての点群に対してクラスタリングを行ってよい。
このように、第3実施形態において、信号処理部10は、例えば点群の情報を忘却した後で、所定のクラスタリング処理を行ってもよい。第3実施形態に係る電子機器1は、クラスタリング処理を行うことにより、信号処理において発生するノイズを低減し得る。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る電子機器1について説明する。
第4実施形態も、上述した第1実施形態において、一部の処理を変更するものである。また、第4実施形態に係る電子機器1も、上述した第1実施形態に係る電子機器1と同様の構成とすることができる。以下、上述した第1実施形態と重複する説明は、適宜、簡略化又は省略する。
上述した第1実施形態において、図7のステップS15に示した点群の忘却処理は、ステップS14に示した点群の重畳の後で毎回行うことを想定した。これに対し、第4実施形態に係る電子機器1の信号処理部10は、図7のステップS15において、点群の忘却処理を、条件付きで行ってもよい。例えば、信号処理部10は、繰り返しの数nがフレーム重畳数Nに達したら、すなわち、n=Nとなったら、図7のステップS15において、全ての点群を消去して更新してもよい。このように、本実施形態において、信号処理部10は、点群の情報を、所定のタイミングで忘却する処理を行ってもよい。
このように、第4実施形態に係る電子機器1は、点群の忘却処理の回数を間引くことにより、例えば信号処理部10の処理負荷を軽減し得る。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る電子機器について説明する。
第5実施形態は、上述した第1実施形態に係る電子機器1の構成を一部変更するものである。その他の観点では、第5実施形態に係る電子機器は、上述した第1実施形態に係る電子機器1と同様の構成とすることができる。以下、上述した第1実施形態と重複する説明は、適宜、簡略化又は省略する。
図12は、一実施形態に係る電子機器1’の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。図12に示す電子機器1’は、図2に示した電子機器1において、制御部50を制御部50’に変更するものである。
図12に示すように、制御部50’は、例えば、点群処理部51と、出力部52とを備えてよい。図12に示すように、制御部50’は、例えば、電子機器1の外部に設けられた制御部としてよい。制御部50’は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。図12に示す電子機器1’において、信号処理部10は点群の処理を行う必要がない。このため、図12に示す電子機器1’において、信号処理部10は、検出された点群の処理を行う前段階の信号を、通信インタフェース13から制御部50’に出力してよい。
図12に示すように、電子機器1’において、点群の処理は、信号処理部10ではなく点群処理部51によって行ってよい。点群処理部51によって点群の処理が施された情報は、出力部52などから出力されるようにしてよい。ここで、出力部52とは、例えばプロットされた点群を視覚的に表示する任意の表示部(ディスプレイ)などとしてよい。
このように、第5実施形態に係る電子機器1は、点群の処理を外部において行うことにより、例えば信号処理部10の処理負荷を軽減し得る。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る電子機器について説明する。
第6実施形態は、上述した第1実施形態に係る電子機器1の使用態様及び動作を変更するものである。その他の観点では、第5実施形態に係る電子機器は、上述した第1実施形態に係る電子機器1と同様の構成とすることができる。以下、上述した第1実施形態と重複する説明は、適宜、簡略化又は省略する。
第6実施形態は、図2に示したような電子機器1を複数設置する。以下、一例として、2つの電子機器1を移動体100に設置する場合について説明する。
図13は、移動体100の前方に2つの電子機器1を設置した態様の例を示す図である。図13は、移動体100の前方を監視するコーナーレーダとして用いられる設置態様としてよい。図13に示すように、移動体100の左前方には、左前方用の電子機器1Aが設置されてよい。また、移動体100の右前方には、右前方用の電子機器1Bが設置されてよい。以下、電子機器1A及び電子機器1Bを特に区別しない場合、単に「電子機器1」と記すことがある。
例えば、図7に示したステップS13の静止物体か否かの判定において、物体200の速度を測定する際に、ある点群の速度が、1つの電子機器1によって送受信される電波の同心円における接線方向の成分しか持たないことも想定される。図13に示すような設置態様によれば、一方の電子機器1(例えば電子機器1A)によって送受信される電波の同心円における接線方向の成分しか持たない場合でも、他方の電子機器1(例えば電子機器1B)で動径方向の速度を検出できる。したがって、電子機器1A及び電子機器1Bによれば、適切な判定がし易くなる。
図13に示すPは、電子機器1A及び電子機器1Bによって検出される点群上のある測定点である。電子機器1A及び電子機器1Bが測定する測定点は、完全に同一場所に重なることはない。しかしながら、電子機器1A及び電子機器1Bの各々が近接する空間上の座標に測定点を生成することを想定して、測定点Pを一点のみ示している。実際には、例えば信号処理部10などによって、電子機器1A及び電子機器1Bが生成する近接する測定点の速度を統合する処理が必要となる。
図13に示す破線の円Caは、電子機器1Aに対する同心円を示している。また、図13に示す破線の円Cbは、電子機器1Bに対する同心円を示している。破線Taは、電子機器1Aの同心円Caの点Pにおける接線を示す。また、一点鎖線Tbは、電子機器1Bの同心円Cbの点Pにおける接線を示す。さらに、一点鎖線Rbは、電子機器1Bの同心円Cbの点Pにおける動径を示す。
図13に示す例においては、極端な場合を想定している。すなわち、図13に示す例においては、測定点Pの速度Vが、電子機器1Aに対して接線方向の成分のみを有する場合を想定している。図13に示すように、測定点Pの速度Vは、破線Taの方向に、Vθaの大きさを有している。このような極端な場合であっても、測定点Pは、電子機器1Bに対して、動径方向の速度Vrbを持つことになる。このため、電子機器1A及び電子機器1Bによれば、上述のような極端な場合であっても、物体200が静止しているか否か判定することができる。
次に、電子機器1A及び電子機器1Bがそれぞれ検出する、空間的に近接する測定点の速度を統合する処理について説明する。
図14は、信号処理部10によって、空間的に近接する2つの測定点の速度を統合する処理の例を説明する図である。ここでは、図14に示すように、電子機器1Aが検出するi番目の測定点Paと、電子機器1Bが検出するj番目の測定点Pbが、距離Dijで近接している場合を想定する。図14に示すように、電子機器1Aが検出するi番目の測定点Paは、動径方向の速度Vraを有するものとする。また、電子機器1Bが検出するj番目の測定点Pbは、動径方向の速度Vrbを有するものとする。一実施形態において、信号処理部10は、距離Dijが所定の距離閾値ε以下である場合、それぞれの動径方向の速度Vra及びVrbのうち、絶対値の大きい方を採用して、速度ベクトルを書き換えてよい。
すなわち、速度を更新する処理を施した後の速度ベクトルをそれぞれV’ra及びV’rbとすると、以下のように表すことができる。
動径方向の速度ベクトルVraの大きさが、動径方向の速度ベクトルVrbの大きさよりも小さい場合、速度ベクトルV’ra及びV’rbとして、速度ベクトルVrbを採用してよい。
動径方向の速度ベクトルVraの大きさが、動径方向の速度ベクトルVrbの大きさよりも大きい場合、速度ベクトルV’ra及びV’rbとして、速度ベクトルVraを採用してよい。
動径方向の速度ベクトルVraの大きさが、動径方向の速度ベクトルVrbの大きさと同じ場合、速度ベクトルV’raとして速度ベクトルVraを採用し、速度ベクトルV’rbとして、速度ベクトルVrbを採用してよい。
上述のように2つの測定点の速度を統合する処理を行うことにより、電子機器1は、実際には静止していない物体に属する測定点及び点群を、静止している物体に属する測定点及び点群と誤判定することを軽減し得る。このため、本実施形態に係る電子機器1によれば、2つの電子機器1の共通検知範囲における、静止物か移動物体かの判定をより正確に行い得る。
上述のように2つの測定点の速度を統合する処理を行うに際し、信号処理部10は、距離Dijが所定の距離閾値ε以下となる測定点Pa及びPbをリストアップする。この場合、信号処理部10は、例えば、電子機器1A及び電子機器1Bがそれぞれ生成する点群内のする全測定点Pa及びPbにわたって、距離Dijの添字i及びjを総当たりで探索してよい。このような処理によって、信号処理部10は、Dij<εとなる測定点Pa及びPbをリストアップしてよい。
2つの測定点の速度を統合する処理を行った後、信号処理部10は、電子機器1A及び電子機器1Bが生成した点群P1及びP2の和集合をとることにより、統合された点群Pを生成してよい。すなわち、信号処理部10は、以下の式(7)を満たす点群P1及びP2から、統合された点群Pを生成してよい。
P=P1 ∪ P2 (7)
一般に、電子機器1を2つ以上用いる場合、統合された点群Pは、例えば複数の電子機器1がなす集合Γに対して、和集合をとることにより、以下の式(8)のように示すことができる。
次に、第6実施形態に係る電子機器1A及び1Bの動作について説明する。
図15は、一実施形態に係る電子機器1の信号処理部10が行う動作(信号処理)を説明するフローチャートである。図15は、図11に示した動作において、例えばステップS11の前に、ステップS31及びステップS32の処理を追加するものである。図15に示す動作は、電子機器1A及び1Bいずれか一方又は両方の信号処理部10が行う動作としてよい。また、図15に示す動作は、電子機器1A及び1Bの外部に設けられた制御部が行う動作としてもよい。
2つ以上のレーダを用いた構成において、信号処理部10は、図15に示す動作を開始した後、ステップS31として複数のレーダが生成した点群の速度を統合する処理を行ってよい。ステップS31に示す処理が行われたら、信号処理部10は、ステップS32として全ての電子機器1(例えばレーダ)を統合した点群を生成する処理を行ってよい。
図15に示す動作において、信号処理部10は、ステップS31及びステップS32の処理を行った後、図11に示した動作と同様の処理を行ってよい。
このように、第6実施形態において、信号処理部10は、送信波として複数の位置から送信される送信信号及び反射波として複数の位置において受信される受信信号に基づいて物体を検出してもよい。この場合、信号処理部10は、送信信号及び受信信号に基づいて物体を検出した結果生成された点群の速度を統合してもよい。また、この場合、信号処理部10は、点群の速度を統合してから、送信信号及び受信信号に基づいて物体を検出した結果に基づいて、点群の情報を出力してもよい。第6実施形態に係る電子機器1は、複数の電子機器1を備えて点群を良好な精度で検出することができる。したがって、電子機器1によれば、適切な判定がし易くなる。
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器が実行するプログラムとして実施してもよい。