以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
はじめに、内視鏡の全体構成について説明する。図1は、内視鏡100の概略的な構成を示す図である。本実施形態の内視鏡100は、内視鏡本体1および先端カバー60を備える。本実施形態では一例として、内視鏡100は、被検体である人体内に挿入される挿入部2を有する内視鏡であり、より具体的には側視型の十二指腸用内視鏡である。
内視鏡本体1は、被検体内に挿入される挿入部2と、挿入部2の基端側に設けられた操作部3と、操作部3から延出するユニバーサルコード4と、を備えて構成されている。
操作部3には、湾曲操作装置11と、送気送水釦12と、吸引釦13と、起上台操作レバー14と、操作スイッチ15と、が設けられている。操作スイッチ15は、挿入部2に設けられた撮像装置42(図1には図示せず)を操作するための電子スイッチである。
操作部3には、図示しない処置具を体内に導入するための処置具挿入口16が設けられている。処置具挿入口16にはチャンネルチューブ17の基端側が接続されている。チャンネルチューブ17の先端側は、挿入部2の先端部5において開口している。
挿入部2は、先端に配設される先端部5、先端部5の基端側に配設される湾曲自在な湾曲部6、および湾曲部6の基端側と操作部3とを接続する可撓性を有する可撓管部7が連設されて構成されている。先端部5には、先端カバー60が装着される。先端部5および先端カバー60の構成の詳細は後述する。
湾曲部6は、操作部3に設けられた湾曲操作装置11の上下湾曲ノブ11aの回動に応じて上方向又は下方向に湾曲し、左右湾曲ノブ11bの回動に応じて左方向又は右方向に湾曲する。
挿入部2内には、起上台操作ワイヤ18(図1には不図示)が挿通されている。起上台操作ワイヤ18は、起上台操作レバー14の揺動に応じて、長手方向に進退移動する。すなわち、起上台操作レバー14は、挿入部2内に挿通された起上台操作ワイヤ18を押し引きする装置を、使用者が操作するための操作部材である。起上台操作ワイヤ18の先端は、先端部5に設けられた後述する可動部材51(図1には不図示)に接続されている。
図2は、先端部5の斜視図である。図2に示すように、先端部5には、先端カバー60が装着される。先端カバー60は、先端部5の所定の外表面を覆う鞘状の部材であり、先端部5に着脱可能である。図3は、先端カバー60と先端部5とを分離した状態で示す斜視図である。
先端カバー60は、本実施形態では一例として、ポリエチレンまたはポリプロピレン等の樹脂のうち、ゴム等に比べて弾性が低く、塑性変形や破断しやすい樹脂によって形成される。本実施形態の先端カバー60は、先端部5に装着された後に当該先端部5から取り外される際に不可逆な変形や破断が生じるようになっており、再使用できないようになっている。図3においては、先端部5に一度も装着されたことのない状態(未使用状態)の先端カバー60を示している。
先端部5の構成について説明する。なお、以下の説明において、細長な挿入部2の長手方向に沿う軸を長手軸2aと称する。また、長手軸2aに沿って挿入部2の先端側に向かう方向を先端方向Aと称し、先端方向Aの反対の方向を基端方向Bと称する。また、長手軸2aに直交する平面上において互いに直交する二つの直線軸をX軸およびY軸と定義する。そして、X軸に沿って一方の側に向かう方向を右方向Rと称し、右方向Rの反対方向を左方向Lと称する。また、Y軸に沿って一方の側に向かう方向を上方向Uと称し、上方向Uの反対方向を下方向Dと称する。X軸およびY軸は、湾曲部6の湾曲方向と略平行である。本実施形態では一例として、長手軸2aに沿って基端側から先端側に向かって見た場合であって、X軸を水平とした場合において、右側が右方向Rであり上側が上方向Uであるとする。
図4は、先端カバー60が装着されていない状態の先端部5の左側面を示す図である。また、図5は、図4のV-V断面図である。図6は、図4のVI-VI断面図である。図7は、先端部材20の分解斜視図である。
図3に示すように、先端部5は、先端部材20と、電気絶縁性を有する樹脂またはセラミック製の絶縁部20jと、を備える。先端部材20は、ステンレスなどの金属製の硬質部材であり、内視鏡本体1の挿入部2先端に配置された硬質部材である。先端部材20は、湾曲部6の先端に固定される基部20aと、基部20aから先端方向Aに向かって突出する一対の腕部である第1腕部20bおよび第2腕部20cと、第1腕部20bおよび第2腕部20cの間に形成された空間である起上台収容空間20dと、を有している。基部20aの外形は略柱状である。基部20aの外周は、環状の絶縁部20jによって覆われている。
第1腕部20bおよび第2腕部20cは、間に形成される空間である起上台収容空間20dが、上方向U、下方向Dおよび先端方向Aの三方に向かって開放されるように配置されている。すなわち、第1腕部20bおよび第2腕部20cは、起上台収容空間20dを間に挟んでX軸に沿う方向に配列されている。本実施形態では一例として、第1腕部20bが起上台収容空間20dの左方向L側に配置されており、第2腕部20cが起上台収容空間20dの右方向R側に配置されている。
第1腕部20bの外周面のうちの上方向Uに面する上面には、照明レンズ41、撮像装置42および洗浄ノズル43が配設されている。照明レンズ41は撮像装置42の被写体に向かって照明光を出射するためのものである。照明光は、挿入部2内に挿通された光ファイバケーブル41aを通って発光装置から照明レンズまで導かれる。発光装置は、内視鏡100に配設されていてもよいし、内視鏡100に接続される外部装置に配設されていてもよい。
撮像装置42の視野は、概ね上方向Uを中心としている。すなわち、撮像装置42は、挿入部2の側方を視野に入れている。洗浄ノズル43は、照明レンズ41および撮像装置42に向かって流体を噴出する部位である。
図5に示すように、第1腕部20bの内部には、撮像装置収容空間20eが形成されている。撮像装置収容空間20e内には、光ファイバケーブル41aの先端部および撮像装置42が配設される。
撮像装置収容空間20eは、基部20aを貫通する貫通孔20fを通って湾曲部6の内部空間に連通している。光ファイバケーブル41aの先端部および撮像装置42は、貫通孔20fを通って撮像装置収容空間20e内に挿入されている。
また、撮像装置収容空間20eは、図7に示すように第1腕部20bの下方向Dに面する下面において開口する開口部20gを有している。当該開口部20gは、開口部20g内に陥入する栓体20hによって閉塞される。栓体20hは、接着剤によって開口部20g内に固定される。また、図5に示すように、栓体20hには、例えば内視鏡100のメンテナンス時において当該栓体20hを開口部20g内から抜き出す際に、工具を引っかけるための爪20iが形成されている。
詳しくは後述するが、第2腕部20c内には、可動部材51が配設される収容空間22が設けられている。可動部材51は、起上台操作ワイヤ18の動きを起上台50に伝える部材である。
先端カバー60は、先端方向A側が閉じており基端方向B側が開口している鞘状の部材である。先端カバー60の基端方向B側に設けられた開口を、挿入口60dと称する。先端カバー60を先端部5に装着する際には、挿入口60dを経由して先端カバー60内に先端部5が挿入される。
先端カバー60には、先端部5に装着された状態において、起上台収容空間20dを上方向Uのみに向かって露呈させる開口部60aを有する。また、先端カバー60が先端部材20に装着されている状態において、照明レンズ41、撮像装置42および洗浄ノズル43も、開口部60aを通して上方向Uに向かって露出する。
先端カバー60の外表面において、開口部60aは、挿入口60dと接続していない。よって、先端カバー60の基端60bには、長手軸2a周りに全周が環状に繋がった環状部60eが形成されている。先端カバー60が先端部材20に装着されている状態では、環状部60eが、絶縁部20jの外周に嵌合する。
次に、先端部材20の第2腕部20cに設けられた収容空間22および当該収容空間22内に配設された可動部材51の構成について説明する。
図8は、図5のVIII-VIII断面図である。図9は、先端部材20の右側面を示す図である。図10は、蓋部材23を取り外した状態の先端部材20の右側面を示す図である。図11は、図4のXI-XI断面図である。図12は、長手軸2aに沿った蓋部材23と第2腕部20cの断面図である。
図5、図6および図7に示すように、第2腕部20cは、先端部材20と一体である基台部21と、基台部21に固定用樹脂26によって接着固定されている蓋部材23と、によって構成されている。本実施形態では、蓋部材23は、基台部21の右側面に固定されている。蓋部材23は、先端部材20の一部を覆う。そして収容空間22は、基台部21および蓋部材23の互いに対向する面にそれぞれ凹設された第1凹部21aおよび第2凹部23aによって構成されている。また蓋部材23は、上述した先端部材20と同様に、ステンレスなどの金属製の硬質部材である。
より詳細に、基台部21は、第1凹部21a、開口形成面21bおよび壁面部21cを備える。第1凹部21aは、基台部21の表面のうちの、開口形成面21b内において開口している先端部材20の窪みである。すなわち、開口形成面21bは、第1凹部21aの開口の周囲を囲うように形成された面である。
開口形成面21bの形状は特に限定されるものではなく、例えば単一の平面によって構成されていてもよいし、複数の平面によって構成されていてもよいし、曲面によって構成されていてもよい。
本実施形態では一例として、図5および図11に示すように、開口形成面21bは、長手軸2aに略平行であって互いに交差する角度で配置された一対の平面21b1および21b2を含む。一対の平面21b1および21b2は、両者の交線が外側に向かって凸となる稜線となるように、柱状である基台部21の表面において異なる方向に面している。
この一対の平面21b1および21b2を含む開口形成面21bは、長手軸2aに直交する断面において山状に屈曲した形状となる。
壁面部21cは、開口形成面21bから基台部21の外側に向かって立設されている。壁面部21cについては後述する。
蓋部材23は、先端部材20の一部を覆うためのほぼ平板状に形成された部材であり、第2凹部23a、当接面23bを備えている。さらに蓋部材23は、先端方向A側の端面に突起30Aを、基端方向B側の端面に他の突起30Bを備えている。当接面23bは、開口形成面21bに当接する面である。また、当接面23bは、第1凹部21aの開口よりも大きく、第1凹部21aの開口の周囲全体にわたって開口形成面21bと当接する。したがって、当接面23bが開口形成面21bに当接した状態では、第1凹部21aの開口は、蓋部材23によって閉塞される。
蓋部材23は、第2凹部23aの外周部、すなわち側面23dの近傍の部分が、第2凹部23aが形成された中央部よりも肉厚であるため、中央部と同等の厚さの板に比してより高い強度を有する。なお第2凹部23aの外周部における厚みは、蓋部材23の必要強度に十分な厚みに設計されていれば良い。
当接面23bは、第1凹部21aを閉塞するため、開口形成面21bに密着する形状である。具体的に本実施形態では、開口形成面21bが長手軸2aに平行な断面において山状に屈曲した形状であることから、当接面23bは開口形成面21bの屈曲に合わせて谷状に屈曲した形状を有している。すなわち、当接面23bは、開口形成面21bの一対の平面21b1および21b2に平行となる一対の平面23b1および23b2を含む。
このように、基台部21側の開口形成面21bが山形状であり、蓋部材23側の当接面23bが谷形状であることから、開口形成面21bに当接面23bを当接させることによって、蓋部材23の基台部21に対する長手軸2a周りの周方向の位置決めがなされる。本実施形態では、蓋部材23の基台部21に対する長手軸2a周りの周方向の位置決めとは、概ねY軸に沿った上方向Uおよび下方向Dの位置決めとなる。
第2凹部23aは、当接面23b内において開口している。すなわち、第2凹部23aの開口の周囲は、当接面23bによって囲まれている。第2凹部23aは、蓋部材23が第1凹部21aの開口を閉塞した状態において第1凹部21aと繋がる。
以上に説明したように、収容空間22は、基台部21に設けられた第1凹部21aおよび蓋部材23に設けられた第2凹部23aが向かい合わせとなるように、基台部21と蓋部材23とが接着されることによって形成されている。したがって、収容空間22の側壁面には、第1凹部21aおよび第2凹部23aのそれぞれの底面から離間した位置において、基台部21と蓋部材23との間の境界線が存在する。
ここで、収容空間22の側壁面とは、収容空間22の内面のうち、第1凹部21aおよび第2凹部23aの底面を除いた面である。すなわち収容空間22の側壁面とは、第1凹部21aおよび第2凹部23aの側壁によって構成される。また、境界線とは、基台部21と蓋部材23の合わせ面、すなわち開口形成面21bおよび当接面23bが収容空間22の側壁面に現れたものである。本実施形態では、基台部21と蓋部材23の合わせ面は、長手軸2aに略平行である。
次に、基台部21に設けられた壁面部21c、および蓋部材23に設けられた突起30A、他の突起30Bについて説明する。
まず、壁面部21cについて説明する。壁面部21cは、開口形成面21bから基台部21の外側に向かって立設されており、当接面23bが開口形成面21bに当接した状態の蓋部材23の側面23dの少なくとも一部に対向する面を有する。すなわち、壁面部21cは、先端部材20に設けられた窪みである凹部21aを囲う周縁面の一部である。
本実施形態の壁面部21cは、蓋部材23の周囲を、側面23dから所定の距離だけ離間して囲うように配設されている。本実施形態では、壁面部21cは、基台部21の表面に形成され、蓋部材23が内側に嵌り込む形状の凹部の側壁面であり、開口形成面21bは当該凹部の底面にあたる。
さらに、図12に示すように、壁面部21cのうち、先端方向A側に形成された壁面(以下、先端側壁面という)21caには、突起30Aが嵌入する凹部21c1dが形成されている。すなわち、壁面部21cは、先端側壁面21caを有する。先端側壁面21caは、先端部材20に設けられ、挿入部2の長手軸2aに対し交差する方向に沿って形成されている。凹部21c1dが形成されている面は、第1凹部21aを囲う周縁部の一部である。第1凹部21aは、先端部材20に設けられた窪みである。
次に、蓋部材23について説明する。図13は、蓋部材23の当接面23bの反対側の外表面23f側から見た斜視図である。図14は、蓋部材23の当接面23b側から見た斜視図である。図15は、蓋部材23の突起30Aの一部が凹部21c1dに入り込んだ状態を示す断面図である。
本実施形態では一例として、蓋部材23は概ね矩形状であり、図9に示すように、一部が切り取られたカット形状部23xを有している。基台部21の第1凹部21aは、その蓋部材23のカット形状部23xの形状に対応した形状を有している。よって、基台部21においてそのカット形状部23xに対応した形状部分が肉厚となるので、第2腕部20cの剛性が高まる。
蓋部材23の側面23dは、長手軸2aに略平行な一対の面と、長手軸に略直交する一対の面と、を含む。側面23dは、蓋部材23の周縁面の一部である。側面23dは、蓋部材23が先端部材20の一部を覆う際に壁面部21cに対向する。
具体的には、図13及び図14に示すように、蓋部材23は、突起30Aと他の突起30Bを有している。突起30A及び他の突起30Bは、蓋部材23が基台部21に装着されたときに、蓋部材23の側面23dの一部から壁面部21cに向かって突出している。特に、突起30Aは、蓋部材23が基台部21に装着されたときに、先端方向Aの先端側壁面21caに向かって突出し、他の突起30Bは、蓋部材23が基台部21に装着されたときに、基端方向Bに向かって突出する。すなわち、他の突起30Bは、突起30Aが先端部材20に設けられた場合、蓋部材23において突起30Aが設けられた側面とは反対側の面に設けられている。
突起30Aは、壁面21c1に形成された凹部21c1dに差し込み可能なように形成されている。図13に示すように、突起30Aは、蓋部材23の側面から突出する第1突出部30A1と、第1突出部30A1よりも突出量が少ない第2突出部30A2を有する。第1突出部30A1の長手軸2aに直交する側面23d方向に沿った長さL1は、第2突出部30A2の長手軸2aに直交する側面23d方向に沿った長さL2よりも長い。
図15に示すように、第1突出部30A1は、その突出方向(先端方向A)の先端面30A1aと、外表面23f側の外側面30A1bと、外表面23fとは反対側の内側面30A1cを有する。凹部21c1dは、先端部材20の外側の上面21a1と、先端方向A側の底面21a2と、先端部材20の内側の下面21a3とを有する。
図13に示すように、第1突出部30A1の上述した長さL1が第2突出部30A2の上述した長さL2よりも長く、かつ側面23dからの第1突出部30A1の突出量が側面23dからの第2突出部30A2の突出量よりも大きい。
また、固定用樹脂26は、蓋部材23の当接面23bの一部と先端部材20の開口形成面21bの一部の間にも入り込む。さらに、固定用樹脂26は、凹部21c1dの底面21a2と先端面30A1aとの間、及び凹部21c1dの下面21a3と内側面30A1cとの間にも入り込む。
先端部5を組み立てる作業者は、突起30Aを凹部21c1dに差し込んだ後に、他の突起30Bが基端方向B側の壁面部21cに沿って当接させながら、蓋部材23を第1凹部21aの内側に嵌め込む。このとき、図15に示すように、第2突出部30A2の先端面30A2aは、先端方向A側の先端側壁面21caに当接するが、第1突出部30A1の先端面30A1aは、第1凹部21aの底面21a2に押し付けられていない。すなわち、第1凹部21aに対する蓋部材23の先端方向Aの位置決めは、蓋部材23の側面23dからの第2突出部30A2の突出量によって規定される。
また、蓋部材23が第1凹部21aの内側に嵌め込まれたとき、第1突出部30A1の外側面30A1bが凹部21c1dの上面21a1に当接するように、第1突出部30A1は形成されている。このとき、第1突出部30A1の内側面30A1cは、第1凹部21aの下面21a3に接していない。すなわち、先端部材20の外側方向における蓋部材23の位置決め及び先端部材20の外表面と蓋部材23の外表面23fとの面位置調整は、第1突出部30A1の外側面30A1bと、第1凹部21aの外側面である上面21a1との当接によって規定される。
突起30A、他の突起30Bは、図6および図12に示すように、蓋部材23の側面23dにおける肉厚よりも小さい肉厚を有している。よって、図15に示すように、突起30Aは、蓋部材23の当接面23bおよび当接面23bとは反対側の外表面23fから厚さ方向に離間している。第2突出部30A2の先端面30A2aが先端方向A側の先端側壁面21caに当接することによって、突起30Aが設けられた部分における側面23dが壁面部21cに密着することが防止され、側面23dと壁面部21cとの間には所定の幅の隙間27が生じる。すなわち、蓋部材23に設けられた第2突出部30A2は、蓋部材23の側面23dと先端部材20の壁面部21c間隔を維持する位置決め用の突出部である。
また、他の突起30Bは、図12及び図14に示すように、カット面30Baを有している。突起30Aが凹部21c1dに差し込まれた後に、他の突起30Bを、壁面部21cのうち基端方向B側に形成された壁面(以下、基端側壁面という)21cbに沿って当接させながら、第1凹部21aの内側に嵌め込みし易いように、カット面30Baは、外表面23fの逆側の面から長手軸2aに向かって、カット面30Baが先端方向Aに近づくように傾斜している。
基台部21に設けられた先端側壁面21caと基端側壁面21cbは、蓋部材23を長手軸2aに沿った両方向から挟むように配設されている。したがって、本実施形態では、第2突出部30A2の先端面30A2aが先端側壁面21caに当接することによって、蓋部材23の基台部21に対する長手軸2a方向の位置決めがなされる。
なお、図12に示すように、蓋部材23が第1凹部21aの内側に嵌め込まれたときの長手軸2a方向におけるクリアランス量Lbは、第1突出部30A1の突出量Laに略等しいが、カット面30Baが設けられていることによって、蓋部材23が第1凹部21aの内側に嵌め込み可能となっている。
蓋部材23の基台部21に対する長手軸2aに直交する周方向の位置決めは、前述のように、開口形成面21bに当接面23bを当接させることによってなされる。したがって本実施形態では、蓋部材23を基台部21に接着する際には、作業者は、開口形成面21bに当接面23bを当接させ、突起30Aを凹部21c1dに差し込んだ後に、他の突起30Bを基端側壁面21cbに沿って当接させながら、蓋部材23を第1凹部21aの内側に嵌め込ませることによって、長手軸2a方向における基台部21の表面における蓋部材23の位置決めが行われる。
またこのとき、蓋部材23と当該蓋部材23の周囲を囲う壁面部21cとの間には、溝状の隙間27が生じている。この蓋部材23の周囲に生じた隙間27は、蓋部材23の当接面23bの外周に沿って途切れることなく連続している。
そして、図6に示すように、蓋部材23と壁面部21cとの間に生じた隙間27内に、硬化前の固定用樹脂26を流し込み、その後に固定用樹脂26を硬化させることによって、基台部21に蓋部材23が接着固定される。ここで、本実施形態では、固定用樹脂26を隙間無く蓋部材23の当接面23bの外周に沿って途切れることなく配置することができるため、蓋部材23の基台部21への固定を確実かつ強固に行うことができる。固定用樹脂26を隙間27に流し込むとき、凹部21c1dの上面21a1と第1突出部30A1の外側面30A1bとが当接して係合しているため、蓋部材23が基台部21から脱落しない。よって、固定用樹脂26の流し込みの作業性がよい。
また、本実施形態では、図7および図11に示すように、蓋部材23の当接面23bと側面23dとが交差する角の一部に、当該角を切り欠いた面取り部23eが形成されている。また、この面取り部23eが形成された側面23dに対向する壁面部21cには、切り欠き21eが形成されている。面取り部23eと開口形成面21bとの間の隙間には、例えば内視鏡100のメンテナンス時において蓋部材23を基台部21から取り外す際に、工具を差し込むことができる。
次に、収容空間22内に配設される可動部材51について説明する。
可動部材51は、図5、図6および図10に示すように、第1凹部21a内において基台部21に対して移動可能なように、基台部21によって支持されている。具体的には、基台部21には、第1凹部21aの底面から起上台収容空間20dまで貫通する軸受28が形成されている。軸受28は、可動部材51に固定された軸部51aを回動可能に支持する。可動部材51は、第1凹部21a内において、軸部51aから軸部51aに直交する方向に延出するレバー51bを備える。したがって、レバー51bは、第1凹部21a内において、軸部51aの回動軸周りに揺動する。
本実施形態では、可動部材51の回動軸は、X軸に略平行である。したがって、レバー51bは、第1凹部21a(収容空間22)内において、概ね長手軸2aに沿う方向に移動する。
レバー51bには、軸部51aから所定の距離だけ離れた位置において、起上台操作ワイヤ18の先端が接続されている。起上台操作ワイヤ18は、第1凹部21aの側面から基端方向Bに向かって基台部21および基部20aを貫通する貫通孔21d内に挿通されている。なお、本実施形態では、貫通孔21d内には、起上台操作ワイヤ18を導く案内パイプ29が挿入されている。案内パイプ29は、硬質な管状の部材である。起上台操作ワイヤ18は、案内パイプ29内に挿通されている。
前述のように、起上台操作ワイヤ18は、起上台操作レバー14の揺動に応じて、長手軸2aに沿う方向に進退移動する。したがって、レバー51bは、起上台操作レバー14の揺動に応じて回動軸周りに揺動する。
軸部51aは、起上台収容空間20d内に延出しており、軸部51aの起上台収容空間20d内に延出した部分には起上台50が固定されている。したがって、起上台50は、図8に示すように、可動部材51とともに軸部51aの回動軸周りに揺動する。すなわち、起上台50は、起上台操作レバー14の揺動に応じて回動軸周りに揺動する。
起上台50は、軸部51aから一方向に延出する舌状の部材である。起上台収容空間20dの起上台50の基端方向B側には、処置具チャンネルチューブ17が開口している。起上台50の揺動に伴い、処置具チャンネルチューブ17から突出する処置具の角度が変化する。
可動部材51のレバー51bは、第1凹部21aの開口から開口形成面21bよりも一部が突出している。すなわち、可動部材51の一部は、蓋部材23に形成された第2凹部23a内にまで突出している。
すなわち、本実施形態では、収容空間22内において移動する可動部材51は、基台部21と蓋部材23の合わせ面に略平行に移動するよう配置されており、かつ可動部材51の一部は、第1凹部21aから基台部21と蓋部材23の合わせ面である開口形成面21b(当接面23b)を超えて第2凹部23a内にまで突出している。したがって、基台部21と蓋部材23の合わせ面に平行な方向から見た場合(例えば図6の視線方向から見た場合)、可動部材51は、基台部21と蓋部材23の合わせ面と重なっている。
次に、収容空間22内における可動部材51の移動範囲を定める構成について説明する。
収容空間22内における可動部材51の移動範囲の両端のうちの少なくとも一方は、可動部材51が収容空間22の側壁の一部である規制部22aに当接する位置によって定められている。
具体的に、本実施形態では、可動部材51の移動範囲のうちの先端方向A側の端は、可動部材51が第1凹部21aの側壁の一部に設けられた規制部22aに当接する位置である。図6および図10は、可動部材51が移動範囲の先端方向A側の端に位置し、規制部22aに当接している状態を示している。
前述のように、基台部21と蓋部材23の合わせ面に平行な方向から見た場合において、可動部材51は、基台部21と蓋部材23の合わせ面と重なった状態で収容空間22内を移動する。このため、第1凹部21aの側壁に設けられた規制部22aは、収容空間22内において先端方向Aに向かって移動する可動部材51に、第2凹部23aの側壁よりも先に当接するために、第2凹部23aの側壁よりも基端方向B側に突出している。
すなわち、第2凹部23aの長手軸2a方向における開口幅は、第1凹部21aの開口幅よりも広く、第2凹部23aの側壁は、規制部22aに当接した状態の可動部材51から長手軸2a方向に離間している。
本実施形態のように、可動部材51を支持する軸受28と可動部材51の移動範囲を定める規制部22aを同一の部材である基台部21に設けることによって、可動部材51の移動範囲の精度を向上させることができる。なお、規制部22aは、蓋部材23(第2凹部23aの側壁)に設けられてもよい。
一方、可動部材51の移動範囲のうちの基端方向B側の端は、可動部材51に固定された起上台50が、起上台収容空間20d内に突出するストッパ20kに当接する位置である。ストッパ20kは、図5および図8に示されている。図8は、起上台50がストッパ20kに当接している状態を示している。起上台収容空間20d内に、起上台50に直接当接するストッパ20kを設けることによって、可動部材51と起上台50との固定位置のばらつきに関わらず、起上台50の位置決めを行うことができる。
以上に説明したように、本実施形態の内視鏡100は、被検体に挿入される挿入部2に、可動部材51を収容する収容空間22を有している。そして、収容空間22は、挿入部2に設けられた基台部21に形成された第1凹部21aと、基台部21に接着固定される蓋部材23に形成された第2凹部23aとによって構成されている。
本実施形態では、蓋部材23に、側面23dから突出し、かつ側面23dの肉厚よりも薄い突起30Aと他の突起30Bを設けている。当該突起30Aの一部が基台部21に設けられた壁面部21cの凹部21c1dに入り込み、かつ、第2突出部30A2の先端面30A1aが先端側壁面21caに当接することによって、長手軸2a方向における基台部21に対する蓋部材23の位置決めを行うとともに、側面23dと壁面部21cとの間に固定用樹脂26を流し込むための所定の幅の溝状の隙間27を形成する。
なお、第2突出部30A2の先端面30A2aを先端側壁面21caには当接しないようにして、第1突出部30A1の先端面30A1aを凹部21c1dの底面21a2に当接させることによって、長手軸2a方向における基台部21に対する蓋部材23の位置決めを行うようにしてもよい。
突起30Aと他の突起30Bは、側面23dの一部から突出するのみであり、かつ側面23dよりも薄い部位であることから、溝状の隙間27は、側面23dに沿って途切れることなく連続して延在する。よって本実施形態では、硬化前の固定用樹脂26を、蓋部材23の外周である側面23dの全体に行き渡らせることができる。
したがって本実施形態の内視鏡100では、作業者は、組み立て時において、突起30Aの一部を先端側壁面21caの凹部21c1dに差し込んだ後に、他の突起30Bを基端側壁面21cbに沿って当接させながら、蓋部材23を第1凹部21aに入り込ませる。その後に、隙間27内に流し込んだ固定用樹脂26を硬化させることによって、基台部21に対して蓋部材23を精度よく位置決めしながら、蓋部材23を強固に固定することができる。本実施形態では、先端部材20と蓋部材23をステンレスなどの金属にて形成しているが、これら先端部20と蓋部材23をプラスチックなどの硬質の樹脂で形成しても良い。先端部20と蓋部材23との間を上述した実施形態と同様に固定用樹脂26で接着しても良く、また、固定用樹脂を使用する代わりに先端部20と蓋部材23との間、例えば溝状の隙間27を超音波による溶着技術などを用いて溶着しても良い。
以上に説明したように、本実施形態の内視鏡100によれば、挿入部先端に配置された硬質部材に蓋部材を固定する際の作業性を向上させた内視鏡を提供することができる。
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。
(変形例1)
上述した実施形態では、蓋部材23に突起30Aが設けられ、先端部材20の第1凹部21aの壁面部21cに凹部21c1dが形成されているが、蓋部材23に凹部を設け、壁面部21cに突起を設けてもよい。
図16は、本変形例1に関わる先端部の断面図である。先端部材20の先端側壁面21caには、上述した実施形態における突起30Aに相当する突起30Cが設けられている。突起30Cは、上述した突起30Aと同様の形状を有する。すなわち、突起30Cは、第1突出部30C1と、第1突出部30C1よりも突出量が少ない第2突出部30C2を有する。第1突出部30C1と第2突出部30C2は、それぞれ上述した第1突出部30A1と第2突出部30A2と同じ形状を有している。
蓋部材23の側面23dには、第1凹部23gが形成されている。第1凹部23gは、上述した凹部21aと同じ形状を有しており、突起30Cが第1凹部23gに嵌入する。突起30Cは、蓋部材23の側面23dに向かって突出する。図16では、第1突出部30C1の内側面(先端部材20の外側とは反対側に形成された面)30C1aが第1凹部23gの下面(先端部材20の外側とは反対側に形成された面)23gaに当接しているが、第1突出部30C1の先端面30C1bと第1凹部23gの底面23gbは当接しておらず、第1突出部30C1の外側面30C1cと第1凹部23gの上面23gcも当接していない。
第1突出部30C1の内側面30C1aが第1凹部23gの下面23gaに当接することによって、外表面23fの方向における蓋部材23の位置決めがなされる。よって、また、第2突出部30C2の先端面30C2aが先端側壁面21caに当接することによって、長手軸2a方向における蓋部材23の位置決めがなされる。
本変形例1によっても、上述した実施形態と同様の効果を生じる。
(変形例2)
上述した実施形態では、蓋部材23は他の突起30Bを有し、この他の突起30Bが基端側壁面21cbに当接しているが、壁面部21cに斜面形成部を設け、蓋部材23は突起を有していなくてもよい。
図17は、本変形例2に関わる先端部材20の基端側壁面21cbと、蓋部材23の当接状態を示した断面図である。図17に示すように、先端部材20の基端側壁面21cbには、その開口縁部に斜面形成部21cbxが形成されている。斜面形成部21cbxは、開口形成面21bの、挿入軸に沿った基端側に向かって傾斜した傾斜面からなる。
よって変形例2においては、突起30Aが凹部21c1dに差し込まれた後に、蓋部材23の下端縁23iが斜面形成部21cbxの傾斜面21cbx1に沿って当接しながら移動し、蓋部材23は、第1凹部21aの内側に嵌め込まれる。
本変形例2によっても、上述した実施形態と同様の効果を生じる。
(変形例3)
上述した実施形態では、突起30Aは、蓋部材23の当接面23bおよび外表面23fから厚さ方向に離間して設けられているが、当接面23bからは離間していなくてもよい。
図18は、上述した実施形態における突起30Aに相当する、本変形例3に関わる突起30Dの一部が凹部21c1dに差し込まれた状態を示す断面図である。
図18に示すように、蓋部材23の突起30Dは、第1突出部30D1と第2突出部30D2を有する。第1突出部30D1と第2突出部30D2は、それぞれ、上述した第1突出部30A1と第2突出部30A2と同様の形状を有しているが、第1突出部30D1の下面(開口形成面21b側の面)には、カット面30D1aが形成されている。
先端部材20の先端側壁面21caには、凹部21c2dが形成されている。凹部21c2dは、凹部21c2dの下面21c2d1が開口形成面21bと面一になるように、先端側壁面21caに形成されている。凹部21c2dは、上述した凹部21c1dと同じ形状を有する。
また、長手軸2a方向における蓋部材23の位置決めは、第1突出部30D1の先端面30D1bが凹部21c2dの底面21c2d2に当接することによってなされている。
なお、第1突出部30D1の先端面30D1bを凹部21c2dの底面21c2d2に当接させないで、第2突出部30D2の先端面30D2aを先端側壁面21caに当接させることによって、長手軸2a方向における蓋部材23の位置決めを行うようにしてもよい。図19は、第2突出部30D2の先端面30D2aが先端側壁面21caに当接する場合を示す断面図である。図19の場合、長手軸2a方向に直交する方向における凹部21c2dの高さが大きいため、カット面が第1突出部30D1の下面には形成されていないが、図18と同様に、第1の突出部30D1の下面にカット面を設けてもよい。
本変形例3によっても、上述した実施形態と同様の効果を生じる。
(変形例4)
上述した変形例1では、突起30Cは、第1突出部30C1と第2突出部30C2の二つの突出部を有しているが、二つの突出部を有していなくてもよい。
図20は、上述した実施形態における突起30Aに相当する、本変形例4に関わる突起30Eが凹部23gに入り込んだ状態を示す断面図である。図20に示すように、突起30Eは、二つの突出部を有していない。また、蓋部材23の側面23dの下部にカット面23d3が形成されている。
突起30Eは、蓋部材23に設けられた第1凹部23gに入り込んだときに、突起30Eの先端面30Eaが第1凹部23gの底面23d1に当接することによって、長手軸2a方向における蓋部材23の位置決めを行うことができる。なお、突起30Eは、蓋部材23に設けられた第1凹部23gに入り込んだときに、先端側壁面21caが蓋部材23の側面23dの下側部分に当接することによって、長手軸2a方向における蓋部材23の位置決めを行うようにしてもよい。
なお、図20においては、蓋部材23にはカット面23d3が設けられているが、蓋部材23はこのようなカット面を有していなくてもよい。
図21は、本変形例4に関わる、蓋部材23がカット面を有さない場合の突起30Eが凹部23g1に入り込んだ状態を示す断面図である。図21に示すように、蓋部材23に設けられた凹部23g1の開口部が広いため、突起30Eは凹部23g1に入れ易い。
本変形例4によっても、上述した実施形態と同様の効果を生じる。
以上のように、上述した実施形態及び各変形例によれば、挿入部先端に配置された硬質部材に蓋部材を固定する際の作業性を向上させた内視鏡を提供することができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。