以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態に係る電子装置は、例えば複数の無線機が予め定められている複数の設置位置に設置されている場合において、当該複数の設置位置の中から当該複数の無線機の各々が設置されている位置を推定(特定)するために用いられる。
以下、図1を参照して、本実施形態に係る電子装置の使用態様の一例について具体的に説明する。ここでは、本実施形態に係る電子装置を照明機器システムに用いる場合について説明する。
図1は、複数の部屋1a~1cと当該部屋1a~1cの各々に配置されている照明機器の位置P1~P9とを示している。図1に示す例では、部屋1aの位置P1~P3の各々に照明機器が配置されており、部屋1bの位置P4~P6の各々に照明機器が配置されており、部屋1cの位置P7~P9の各々に照明機器が配置されている。
ここで、照明機器システムにおいて、例えば各部屋1a~1cの各々に配置されている照明機器に無線機を設置し、当該無線機を介して当該照明機器の電源のオン/オフ等を制御(遠隔操作)する場合を想定する。なお、各無線機は適宜設置された無線親機を介して通信してもよいし、無線メッシュネットワークを構成して通信してもよい。
このような場合において、例えば部屋1aに設置されている照明機器のみを制御する場合には、当該部屋1aの位置P1~P3に設置されている無線機に対して制御信号を送信する必要がある。また、部屋1aに配置されている3つの照明機器の1つのみを制御する場合には、当該1つの照明機器に設置されている無線機器に対して制御信号を送信する必要がある
ところで、照明機器の各々に設置されている無線機にはそれぞれ当該無線機を識別するための識別子(以下、無線機IDと表記)が割り当てられている。このため、無線機IDを用いることによって特定の無線機に対して制御信号を送信することは可能である。
しかしながら、上記した照明機器システムにおいて、無線機IDと照明機器(が配置されている位置)との対応関係が不明である場合には、特定の照明機器を制御する際に制御信号の送信先となる無線機を判別することができない。
この場合、無線機IDと照明機器との対応関係を予め登録(設定)しておくことが考えられるが、例えばオフィスビル等においては数百~数千もの照明機器が配置されていることを鑑みると、例えば作業員が当該無線機に割り当てられている無線機IDを登録しながら設置作業を行うことは非常に煩雑である。また、無線機が設置された後に、当該無線機に割り当てられている無線機IDを確認して登録することも困難である。
そこで、本実施形態に係る電子装置は、上記したように複数の無線機が設置されている位置(以下、設置位置と表記)は判明しているが、当該設置位置の各々に対していずれの無線機が設置されているか(つまり、設置位置と無線機IDとの対応関係)が不明である状況において、当該設置位置の中から各無線機が設置されている位置(つまり、各設置位置に設置されている無線機に割り当てられている無線機ID)を推定するために用いられる。
ここでは、本実施形態に係る電子装置が照明機器システムに用いられる例について説明したが、本実施形態に係る電子装置は、例えば太陽光発電システムに用いられてもよい。
具体的には、太陽光発電システムが例えば図2に示すような複数の太陽光パネル2a~2lを備える場合において、当該複数の太陽光パネル2a~2lの各々(つまり、位置P1~P12)に無線機を設置する場合がある。これによれば、太陽光パネル2a~2lの各々の発電量、温度等を無線機を介して収集することができるため、当該発電量、温度等に基づいて太陽光パネル2a~2lの各々の状態(稼働状況または故障等)を監視することができる。
このような場合においても、複数の無線機の各々が設置されている位置P1~P12を判別することができなければ、例えば異常値に相当する発電量が特定の無線機から受信された場合であっても、太陽光パネル2a~2lの中から故障している太陽光パネル(つまり、異常値が検出された太陽光パネル)を特定することはできない。
本実施形態に係る電子装置は、このような太陽光発電システムにおいて複数の設置位置(太陽光パネル)の中から各無線機が設置されている位置を推定するために用いることもできる。
なお、本実施形態は、上記した以外にも、例えば空調システムにおいて複数の空調機に無線機を設置する場合または電車等の各種設備(空調機、モータ、インバータ、センサ等)に無線機を設置する場合等にも適用可能である。
以下、本実施形態に係る電子装置について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る電子装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図3に示すように、電子装置10は、CPU11、不揮発性メモリ12、主メモリ13及び通信デバイス14等を備える。
CPU11は、電子装置10内の各コンポーネントの動作を制御するハードウェアプロセッサである。CPU11は、ストレージデバイスである不揮発性メモリ12から主メモリ13にロードされるプログラムを実行する。
通信デバイス14は、有線通信または無線通信を実行するように構成されたデバイスである。この通信デバイス14により、電子装置10は、上記した複数の無線機の各々と通信可能に接続され、各種情報(信号)を送受信することができる。
なお、本実施形態においては、電子装置10が複数の無線機の各々と無線通信可能に接続されているものとして説明するが、当該電子装置10は例えば有線ネットワークを介して無線アクセスポイントに接続され、当該無線アクセスポイントが複数の無線機とスター型ネットワークを構成して無線通信可能に接続されていてもよい。また、各無線機は無線メッシュネットワークを構成して接続されてもよい。すなわち、本実施形態においては、電子装置10が複数の無線機の各々と通信可能に接続されていれば、その一部において有線通信が実行されても構わない。
図3においては不揮発性メモリ12及び主メモリ13のみが示されているが、電子装置10は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の他の記憶装置を備えていてもよい。
また、図3においては省略されているが、電子装置10は、例えばマウスまたはキーボードのような入力デバイス及びディスプレイのような表示デバイスを更に備えていてもよい。
図4は、電子装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、電子装置10は、測定指示部101、特性情報格納部102、位置情報格納部103及び推定部104を含む。
なお、本実施形態において、電子装置10は、上記したように複数の無線機20と通信可能に接続されている。
本実施形態において、測定指示部101及び推定部104の一部または全ては、上記したCPU11にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。なお、これらの各部101及び104の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
また、本実施形態において、特性情報格納部102及び位置情報格納部103は、例えば不揮発性メモリまたは他の記憶装置等によって実現されるものとする。
測定指示部101は、複数の無線機20の各々における伝搬特性を測定するために使用するチャネルを、当該複数の無線機20の各々に対して指示する。また、測定指示部101は、指示したチャネルを使用して複数の無線機20の各々で測定された伝搬特性から求められる特性情報を、当該複数の無線機20の各々から受信する。
特性情報格納部102には、測定指示部101によって受信された特性情報が格納される。
位置情報格納部103には、複数の無線機20の各々が設置されている設置位置を示す位置情報が予め格納されている。なお、位置情報格納部103に格納されている位置情報(によって示される設置位置)は、例えば複数の無線機20を設置する位置を示す図面等から自動的に抽出されてもよいし、複数の無線機20を設置する作業員等によって入力されてもよい。
推定部104は、特性情報格納部102に格納された特性情報及び位置情報格納部103に格納されている位置情報に基づいて、当該位置情報によって示される複数の設置位置の中から複数の無線機20の各々が設置されている位置(つまり、設置位置と無線機20との対応関係)を推定する。換言すれば、推定部104は、位置情報によって示される設置位置毎に、当該設置位置に設置されている無線機(に割り当てられている無線機ID)を推定する。
図5は、図4に示す位置情報格納部103に格納されている位置情報のデータ構造の一例を示す。
図5に示すように、位置情報は、設置位置IDに対応づけてX座標及びY座標を含む。設置位置IDは、位置情報によって示される設置位置(つまり、1つの無線機20が設置される位置)に割り当てられている識別情報である。X座標は、対応づけられている設置位置IDが割り当てられている設置位置のX座標値である。Y座標は、対応づけられている設置位置IDが割り当てられている設置位置のY座標値である。位置情報においては、このX座標値及びY座標値により、無線機20が設置されている位置(設置位置)を表している。なお、Z座標値を加えて3次元の座標で位置を表してもよい。
図5に示す例では、位置情報格納部103には、設置位置ID「P1」に対応づけてX座標「1」及びY座標「1」を含む位置情報が格納されている。この位置情報によれば、設置位置ID「P1」が割り当てられ、X座標値が1であり、Y座標値が1である設置位置に複数の無線機20の中の1つの無線機20が設置されていることが示されている。
また、位置情報格納部103には、設置位置ID「P2」に対応づけてX座標「1」及びY座標「2」を含む位置情報が格納されている。この位置情報によれば、設置位置ID「P2」が割り当てられ、X座標値が1であり、Y座標位置が2である設置位置に複数の無線機20の中の1つの無線機20が設置されていることが示されている。
ここでは、設置位置ID「P1」及び「P2」が割り当てられている設置位置を示す位置情報についてのみ説明したが、他の位置情報についても同様である。
なお、図5に示す位置情報によれば、複数の無線機20(つまり、9個の無線機20)が設置されている設置位置(つまり、設置位置ID「P1」~「P9」が割り当てられている9箇所の設置位置)は判別可能であるが、各設置位置にいずれの無線機20(無線機ID)が設置されているかを判別することはできない。
以下、図6のシーケンスチャートを参照して、複数の無線機20の各々が設置されている位置を推定する際の電子装置10及び複数の無線機20の処理手順の一例について説明する。図6においては、複数の無線機20のうちの1つの無線機(以下、対象無線機と表記)20の処理について主に説明するが、他の無線機20においても同様の処理が実行される。
まず、測定指示部101は、複数の無線機20の各々における伝搬特性を測定するために使用するチャネル(無線チャネル)を決定する(ステップS1)。なお、ステップS1においては、複数のチャネルが決定される。
次に、測定指示部101は、ステップS1において決定された複数のチャネルの各々を示す番号(以下、測定チャネル番号と表記)を含む測定指示情報を対象無線機20に送信する(ステップS2)。なお、測定指示情報は、例えばブロードキャストにより、全ての無線機20に対して送信される。
ここで、測定指示情報には複数の測定チャネル番号が含まれるが、当該測定チャネル番号はステップS1において決定されたチャネルを複数の無線機20の各々が識別可能なものであればよく、例えば920MHz帯の場合には、33、42、51、60のようなチャネルに対して定められている番号を測定チャネル番号として用いることができる。また、測定チャネル番号としてチャネルの中心周波数等を用いてもよい。
また、測定指示情報には、上記した測定チャネル番号以外に、伝搬特性を測定する期間(以下、測定期間と表記)及び伝搬特性の測定が終了した後に複数の無線機20の各々において使用するチャネルを示す番号(以下、切り替え先チャネル番号)が含まれる。この測定期間及び切り替え先チャネル番号については例えば予め定められていてもよいし、測定指示部101によって動的に決定されてもよい。
なお、測定期間は、複数の測定チャネル番号(つまり、ステップS1において決定された複数のチャネル)に対して同一の期間であってもよいし、当該複数の測定チャネル番号の各々に対して異なる期間であってもよい。また、無線機が計時部を具備し、これらが同期している場合には、測定期間は、例えば伝搬特性の測定を開始する時刻(以下、測定開始時刻と表記)及び伝搬特性の測定を終了する時刻(以下、測定終了時刻と表記)によって定められる期間であってもよい。この場合、測定指示情報には、測定チャネル番号毎の測定開始時刻と測定終了時刻とが含まれていればよい。
切り替え先チャネル番号は、例えば伝搬特性の測定が開始される前のチャネルとすることができるが、他のチャネルであってもよい。また、例えば伝搬特性の測定が終了した時点のチャネルを継続して使用するのであれば、測定指示情報には切り替え先チャネル番号が含まれていなくてもよい。
ステップS2において測定指示部101(電子装置10)から送信された測定指示情報は、対象無線機20において受信される。
対象無線機20は、受信された測定指示情報に含まれる複数の測定チャネル番号に基づいて、当該対象無線機20が通信を実行するチャネルを切り替える(ステップS3)。
ここで、上記したように測定指示情報には複数の測定チャネル番号が含まれるが、伝搬特性の測定においては、後述するように複数の無線機20間で信号を送受信する必要がある。このため、同一の測定期間内においては、当該複数の無線機20の各々で使用する(通信を実行する)チャネルを統一する。この場合、複数の無線機20の各々においては、測定指示情報に含まれる複数の測定チャネル番号の各々によって示されるチャネルを、予め定められた順序で使用するものとする。なお、複数の測定チャネル番号の各々によって示されるチャネルを使用する順序は、当該測定チャネル番号の小さい(若い)順等であってもよいし、電子装置10(測定指示部101)側で指定されてもよい。チャネルを使用する順序が電子装置10側で指定される場合、当該指定された順序は、測定指示情報に含まれていればよい。
ステップS3において上記した順序に基づいてチャネルが切り替えられた場合、複数の無線機20の各々は、複数の測定チャネル番号の各々によって示される複数のチャネルのうちの同一のチャネルを使用して信号を送受信することが可能な状態となる。
以下、ステップS3において切り替えられたチャネル(つまり、対象無線機20が通信を実行するチャネル)を対象チャネルと称する。
次に、対象無線機20は、伝搬特性の測定を開始する(ステップS4)。なお、ステップS4の処理は、ステップS3の処理が実行された直後に実行されてもよいし、無線機20において受信された測定指示情報に測定開始時刻が含まれている場合には、当該測定開始時刻に到達した時点で実行されてもよい。
ステップS4において伝搬特性の測定が開始されると、対象無線機20は、伝搬特性を測定するための信号(以下、測定信号と表記)を、ランダムなタイミングで他の複数の無線機20に対してブロードキャストにより送信する(ステップS5)。この場合、測定信号は、対象チャネルを使用して送信される。また、測定信号には、対象無線機20に割り当てられている無線機ID(つまり、測定信号の送信元の無線機ID)が含まれている。なお、対象無線機20が測定信号を送信するタイミング、順序等を定めておくことも可能であり、この場合には、当該定められたタイミング、順序等に従って測定信号を送信すればよい。
ここで、測定信号は、対象無線機20以外の他の複数の無線機20の各々からも同様にブロードキャストにより送信される。このため、対象無線機20は、他の複数の無線機20の各々から送信された測定信号を受信する。対象無線機20において測定信号が受信された場合、当該対象無線機20は、当該測定信号に基づいて対象無線機20の対象チャネルにおける伝搬特性を測定する(ステップS6)。なお、本実施形態における伝搬特性とは、対象無線機20と他の無線機20と間の無線通信環境に関する特性を表すものであればよい。具体的には、例えば受信信号強度インジケータ(RSSI:Received Signal Strength Indicator)が伝搬特性として測定される。
なお、対象無線機20においては他の複数の無線機20の各々から送信された測定信号(当該他の無線機20に割り当てられている無線機IDを含む測定信号)が受信されるが、ステップS6においては、対象無線機20において受信された測定信号に基づいて、当該対象無線機20と当該測定信号に含まれる無線機IDが割り当てられている他の無線機20との間における伝搬特性が測定される。すなわち、対象無線機20は、他の複数の無線機20の各々から送信された測定信号に基づいて、当該他の無線機20毎に伝搬特性を測定する。
ステップS6において測定情報に基づいて測定された伝搬特性(他の無線機20毎に測定された伝搬特性)は、当該測定情報に含まれる無線機ID(当該他の無線機20に割り当てられている無線機ID)とともに、対象無線機20の内部に保持される。
なお、上記したステップS5及びS6の処理は、ステップS4の処理が実行された後、後述するステップS7の処理が実行されるまでの間に、複数回実行されてもよい。これにより、例えば1つの他の無線機20から複数の測定信号が受信された場合には、当該複数の測定信号の各々に基づいて測定された伝搬特性(例えば、RSSI)の平均値、最大値、中央値、最頻値及び標準偏差のうちの少なくとも1つを対象無線機20と当該他の無線機20との間における伝搬特性として用いることができる。
また、図6においては便宜的にステップS5の処理が実行された後にステップS6の処理が実行されることが示されているが、当該ステップS5及びS6の処理は、適宜入れ替えられても構わない。
次に、対象無線機20は、伝搬特性の測定を終了する(ステップS7)。ステップS7の処理は、ステップS4が実行された後に計測される測定期間が経過した時点で実行される。なお、測定指示情報に測定終了時刻が含まれている場合には、ステップS7の処理は当該測定終了時刻が経過した時点で実行されればよい。
上記した測定期間の計測は、例えば複数の無線機20間で同期して動作する計時部(図示せず)を用いて実現されるものとする。この計時部は、通信制御のためのIEEE802.11のTSFタイマのように対象無線機20に内蔵されていてもよいし、IEEE1588により同期したアプリケーションプログラムとして対象無線機20において実装されていてもよい。
ステップS7の処理が実行されると、測定指示情報に含まれる複数の測定チャネル番号の各々によって示される全てのチャネルについて上記したステップS3~S7の処理が実行されたか否かが判定される(ステップS8)。
全てのチャネルについて処理が実行されていないと判定された場合(ステップS8のNO)、ステップS3に戻って処理が繰り返される。この場合、測定指示情報に含まれる複数の測定チャネル番号によって示される複数のチャネルのうち上記したチャネルを使用する順序に基づいて次に使用するチャネルを判別し、対象チャネルを当該判別されたチャネルに切り替える処理がステップS3において実行される。
これにより、本実施形態においては、測定指示部101によって指示された全てのチャネル(つまり、測定指示情報に含まれる複数の測定チャネル番号によって示される全てのチャネル)において伝搬特性が測定される。
一方、全てのチャネルについて処理が実行されたと判定された場合(ステップS8のYES)、対象無線機20の内部には、複数の測定チャネル番号によって示される複数のチャネルの各々において測定された他の無線機20毎の伝搬特性が保持されている。この場合、対象無線機20は、他の無線機20毎に伝搬特性の特徴量を抽出する(ステップS9)。
このステップS9において抽出される伝搬特性の特徴量は、例えば複数の測定チャネル番号によって示される複数のチャネルの各々において測定された伝搬特性(RSSI)の平均値、最大値、中央値、最頻値及び標準偏差のうちの少なくとも1つとして求めることができるが、他の特徴量であってもよい。
ステップS9の処理が実行されると、対象無線機20は、測定指示情報に含まれる切り替え先チャネル番号に基づいて、当該対象無線機20が通信を実行するチャネルを切り替える(ステップS10)。なお、測定指示情報に切り替え先チャネル番号が含まれない場合には、ステップS10の処理は実行されず、対象無線機20においては現在のチャネル(ステップS3において切り替えられたチャネル)が継続して使用される。また、特定のチャネルとして例えば測定開始前に使用していたチャネル等を使用することが予め全ての無線機20に対して通知されている場合には、当該チャネルが使用される。
ステップS10の処理が実行されると、対象無線機20は、ステップS9において他の無線機20(無線機ID)毎に抽出された伝搬特性の特徴量を含む特性情報を電子装置10に送信する(ステップS11)。この特性情報は、電子装置10において当該特性情報を送信した対象無線機20を特定可能とするために、対象無線機20に割り当てられている無線機IDとともに電子装置10に送信される。なお、ステップS11の処理は、ステップS10の処理が実行されたタイミングで実行されてもよいし、電子装置10(例えば、測定指示部101)からの指示に応じて実行されてもよい。
ここで、上記したステップS3~S11の処理は、複数の無線機20の各々において実行される。このため、複数の無線機20の各々においてステップS11の処理が実行された場合、電子装置10は、当該複数の無線機20の各々から送信された特性情報を受信する。
電子装置10において受信された特性情報は、当該特性情報を送信した無線機20に割り当てられている無線機IDとともに特性情報格納部102に格納される(ステップS12)。
図7は、特性情報格納部102に格納された特性情報のデータ構造の一例を示す。図7に示す例では、複数の無線機20が無線機D1~D9であり、特性情報格納部102には各無線機D1~D9の各々から送信された特性情報102a~102i(無線機D1~D9の特性情報)が格納されている。なお、図7に示す「D1」~「D9」はそれぞれ、無線機D1~D9の各々に割り当てられた無線機IDに相当する。
特性情報102aは、無線機D1から送信された特性情報である。この特性情報102aには、無線機D1に割り当てられた無線機IDと他の無線機D2~D9の各々に割り当てられた無線機IDとに対応づけて、当該他の無線機D2~D9から送信された測定信号に基づいて無線機D1において測定された伝搬特性の特徴量(ここでは、RSSI)が含まれている。
具体的には、特性情報102aによれば、無線機D1と無線機D2との間における伝搬特性の特徴量が「-50」であることが示されている。なお、この「-50」は、複数のチャネルの各々において測定された無線機D1と無線機D2との間における伝搬特性の例えば平均値(つまり、特徴量)である。
また、特性情報102aによれば、無線機D1と無線機D3との間における伝搬特性の特徴量が「-55」であることが示されている。なお、この「-55」は、複数のチャネルの各々において測定された無線機D1と無線機D3との間における伝搬特性の例えば平均値(つまり、特徴量)である。
詳細な説明については省略するが、特性情報102aに含まれる無線機D1と他の無線機D4~D9の各々との間における伝搬特性の特徴量についても同様である、
また、他の特性情報102b~102iについては、特性情報102aと同様であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
なお、例えば無線機D2から送信された測定信号に基づいて無線機D1において測定された伝搬特性(の特徴量)と、無線機D1から送信された測定信号に基づいて無線機D2において測定された伝搬特性(の特徴量)とは、両方とも無線機D1と無線機D2との間における伝搬特性に相当し、概ね同様の値となる場合が多い。複数の無線機D1~D9のうちの無線機D1及びD2以外の2つの無線機間における伝搬特性についても同様である。このため、複数の無線機D1~D9のうちの2つの無線機間の伝搬特性(を含む特性情報)は、一方の無線機のみで測定され、送信側無線機と受信側無線機とを区別せずに特性情報格納部102に格納されてもよい。この場合には、例えば図7に示す特性情報格納部102に格納される情報量(データ量)を削減することが可能となる。
再び図6に戻ると、推定部104は、位置情報格納部103に格納されている位置情報を取得する(ステップS13)。
次に、推定部104は、ステップS12において特性情報格納部102に格納された特性情報と、ステップS13において取得された位置情報とに基づいて、当該位置情報によって示される複数の設置位置の中から複数の無線機20の各々が設置されている位置(つまり、複数の設置位置の各々と複数の無線機20の各々との対応関係)を推定する(ステップS14)。
このステップS14の処理について具体的に説明すると、まず、推定部104は、例えば位置情報によって示される設置位置の各々と複数の無線機20の各々(に割り当てられている無線機ID)との組み合わせの仮説を複数生成する。
上記したように設置位置がP1~P9であり、複数の無線機20が無線機D1~D9であるものとすると、この設置位置P1~P9の各々と無線機D1~D9の各々との組み合わせには、例えば「P1-D1、P2-D2、P3-D3、P4-D4、P5-D5、P6-D6、P7-D7、P8-D8、P9-D9」、「P1-D9、P2-D8、P3-D7、P4-D6、P5-D5、P6-D4、P7-D3、P8-D2、P9-D1」、「P1-D2、P2-D3、P3-D4、P4-D5、P5-D6、P6-D7、P7-D8、P8-D9、P9-D1」等の様々な組み合わせが含まれる。
次に、推定部104は、上記した設置位置の各々と無線機20の各々との様々な組み合わせに対する評価値を算出し、最も高い評価値が算出された組み合わせに基づいて、各無線機20が設置されている位置を推定する。具体的には、例えば「P1-D2、P2-D3、P3-D4、P4-D5、P5-D6、P6-D7、P7-D8、P8-D9、P9-D1」の組み合わせについて最も高い評価値が算出された場合には、設置位置P1に無線機D2、設置位置P2に無線機D3、設置位置P3に無線機D4、設置位置P4に無線機D5、設置位置P5に無線機D6、設置位置P6に無線機D7、設置位置P7に無線機D8、設置位置P8に無線機D9、設置位置P9に無線機D1が設置されていると推定される。
評価値は、例えば位置情報によって示される設置位置間の距離と無線機20間の伝搬特性との相関関係に基づいて算出される。上記したように伝搬特性としてRSSIが測定されている場合には、設置位置間の距離が大きいほどRSSIが小さくなる組み合わせが探索される。本実施形態においては、距離が大きいほどRSSIが小さくなる(減衰する)ため、上記した相関関係を表す指標である相関係数が-1に最も近い組み合わせを推定結果とする。
なお、ステップS14における推定処理は、複数の設置位置の各々と複数の無線機20の各々とにおける全ての組み合わせに対して実行されてもよいし、処理負荷を低減するために例えば遺伝的アルゴリズム等を用いて限定した組み合わせに対して実行されてもよい。更に、この推定処理は、例えば機械学習等に基づく人工知能を用いて実行されても構わない。なお、相関係数を用いた推定方法については、例えば特開2017-227600号公報等に開示されている。
上記した図6の処理が実行されると、推定結果として複数の無線機20の各々が設置されている位置(つまり、複数の設置位置の各々と複数の無線機20の各々との対応関係)を得ることができるが、当該推定結果は例えば各種システム等において利用することができる。
具体的には、例えば図1において説明した照明機器システムにおける位置P1~P9と無線機D1~D9との対応関係が推定された場合を想定する。この場合において、位置P1~P9と無線機D1~D9との対応関係(つまり、推定結果)が例えば「P1-D2、P2-D3、P3-D4、P4-D5、P5-D6、P6-D7、P7-D8、P8-D9、P9-D1」であるものとすると、例えば部屋1aに配置されている照明機器のみを点灯させるような制御を行う場合には、無線機D2、D3及びD4に制御信号を送信すればよい。このように照明機器システムにおいて位置P1~P9と無線機D1~D9との対応関係が推定された場合には、当該推定結果を用いて適切に照明機器を制御することが可能となる。
また、例えば図2において説明した太陽光発電システムにおける位置P1~P12と無線機D1~D12との対応関係が推定された場合を想定する。この場合において、位置P1~P12と無線機D1~D12との対応関係(つまり、推定結果)が例えば「P1-D12、P2-D11、P3-D10、P4-D9、P5-D8、P6-D7、P7-D6、P8-D5、P9-D4、P10-D3、P11-D2、P12-D1」であるものとすると、例えば無線機D8から異常値に相当する発電量が受信されたことによって、当該無線機D8が設置されている位置P5に配置されている太陽光パネル2eに異常が発生していることを特定することができる。このように太陽光発電システムにおいて位置P1~P12と無線機D1~D12との対応関係が推定された場合には、当該推定結果を用いて適切に太陽光パネルの状態を監視することができる。
なお、図6においてはステップS1において複数のチャネルが決定されるものとして説明したが、当該複数のチャネルは順次決定される構成とすることも可能である。この場合には、伝搬特性を測定すべきチャネルの各々に対してステップS1~S7の処理が繰り返し実行されればよい。
また、図6においては無線機(対象無線機)20側で特徴量を抽出するものとして説明したが、複数のチャネルの各々において測定された伝搬特性(特性情報)が無線機20から電子装置10に送信され、当該電子装置10側で当該伝搬特性の特徴量を抽出する処理が実行されてもよい。
また、図6においてはステップS12の処理が実行された後にステップS13の処理が実行される(つまり、位置情報を取得する)ものとして説明したが、当該ステップS13の処理(位置情報を取得する処理)は、図6に示す処理が開始された後、ステップS14の処理が実行されるまでの間であれば、任意のタイミングで実行されればよい。
上記したように本実施形態においては、第1無線機20の第1チャネルにおける第1伝搬特性及び当該第1無線機20の第2チャネルにおける第2伝搬特性から求められる第1無線機20の特性情報と、第2無線機20の第1チャネルにおける第3伝搬特性及び当該第2無線機20の第2チャネルにおける第4伝搬特性から求められる第2無線機20の特性情報を受信し、位置情報格納部103に格納されている位置情報と、第1無線機20の特性情報と、第2無線機20の特性情報とに基づいて、当該位置情報によって示される第1及び第2設置位置の中から第1及び第2無線機20が設置されている位置(つまり、複数の設置位置の各々と複数の無線機20の各々との対応関係)を推定する。なお、本実施形態において、第1及び第2無線機20が設置されている位置とは、上記した図1に示す照明機器及び図2に示す太陽光パネル等を含む当該第1及び第2無線機20が設置されている各種機器の設置位置に相当する。
ここで、例えば1つのチャネルにおけるRSSI(伝搬特性)に基づいて複数の無線機20の各々が設置されている位置を推定するものとすると、電波の反射が多い環境では、直接波と反射波とが互いに干渉し合うマルチパスフェージングと称される現象が発生し、2つの無線機20間の距離が同じであっても、当該2つの無線機20の設置位置(環境)によってはRSSIが大きく落ち込む場合がある。このようなRSSIに基づいて複数の無線機20の各々が設置されている位置を推定した場合には、当該位置の推定精度が低下する。
しかしながら、特定のチャネルではマルチパスフェージングによりRSSIが落ち込むような場合であっても、波長の異なる他のチャネルではマルチパスフェージングの影響を受けることなくRSSIを測定することができる場合がある。
このため、本実施形態においては、複数のチャネルにおいて測定されたRSSIを用いることによってマルチパスフェージングによる影響を緩和し、設置位置間の距離とRSSI(伝搬特性)との相関を高めることによって、推定精度を向上させることができる。
なお、本実施形態においては、第1及び第2無線機20で測定される伝搬特性としてRSSIが用いられるものとして主に説明したが、当該伝搬特性としては例えばパケット誤り率(PER:Packet Error Rate)等が用いられても構わない。
更に、本実施形態においては、複数のチャネルの各々における伝搬特性が第1及び第2無線機20の各々で測定されるが、当該第1及び第2無線機20から電子装置10に対しては、当該複数のチャネルにおける伝搬特性の特徴量(つまり、複数のチャネルの各々における伝搬特性から抽出される特徴量)が送信される。このような構成によれば、複数のチャネルの各々における伝搬特性の全てを電子装置10に送信する必要がないため、第1及び第2無線機20から電子装置10に対する通信量を削減し、電子装置10においてより短時間で測定結果を収集(受信)することが可能となる。
一方、複数のチャネルの各々において測定された伝搬特性が第1及び第2無線機20の各々から電子装置10に対して送信され、電子装置10側において複数のチャネルにおいて測定された伝搬特性の特徴量を抽出(算出)する構成としてもよい。一般的には第1及び第2無線機よりも電子装置10の方がハードウェア性能が高い場合が多いため、このような構成によれば、複数のチャネルにおいて測定された伝搬特性の特徴量をより効率的に抽出することが可能となる。
なお、伝搬特性の特徴量としては、例えば複数のチャネルの各々において測定された伝搬特性の平均値、最大値、中央値、最頻値及び標準偏差のうちの少なくとも1つを用いることができる。
また、本実施形態においては、第1及び第2無線機20における伝搬特性の測定期間(時間)及び第3チャネル(切り替え先チャネル)が第1及び第2無線機20の各々に指示される。この場合、第1無線機20の各々は、指示された測定期間に基づいて第1及び第2伝搬特性を測定し、当該測定が終了した後に当該第1無線機が通信を実行するチャネルを第3チャネルに切り替える。同様に、第2無線機20の各々は、指示された測定期間に基づいて第3及び第4伝搬特性を測定し、当該測定が終了した後に当該第2無線機が通信を実行するチャネルを第3チャネルに切り替える。このような構成によれば、同一のタイミングで第1及び第2無線機20の各チャネルにおける伝搬特性を測定することができるとともに、測定終了後においては第3チャネルで継続して通信を実行することが可能となる。測定期間としては、測定開始時刻及び測定終了時刻が指示されても構わない。
なお、本実施形態においては、複数の無線機20の各々において他の無線機20との間の伝搬特性を測定するものとして説明したが、例えば電子装置10が複数の無線機20の各々から測定信号を受信することによって当該無線機20との間の伝搬特性を測定し、当該測定された伝搬特性に基づいて各無線機20が設置されている位置を推定する構成としてもよい。
更に、本実施形態においては、図4に示す各部101~104が1つの装置に含まれるものとして説明したが、当該各部101~104は複数の装置に配置されても構わない。すなわち、本実施形態に係る電子装置10は、複数の装置によって実現される構成であってもよい。更に、例えば位置情報格納部103は電子装置10の外部のサーバ装置等に設けられていてもよい。この場合、上記した図6に示すステップS13においては、位置情報を外部のサーバ装置から取得(受信)すればよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、前述した第1実施形態の説明で用いた図面と同様の部分には同一参照符号を付して説明するものとする。また、本実施形態に係る電子装置の使用態様及びハードウェア構成については前述した第1実施形態と同様であるため、ここではその詳しい説明を省略する。以下の説明では、前述した第1実施形態と異なる部分について主に述べる。
図8は、本実施形態に係る電子装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態においては、推定部104が一次推定部104a及び二次推定部104bを含む点で、前述した第1実施形態とは異なる。
また、前述した第1実施形態においては複数の無線機20の各々から複数のチャネルにおいて測定された伝搬特性の特徴量を含む特性情報が送信されるものとして説明したが、本実施形態においては、当該特徴量を含む特性情報ではなく、複数のチャネルの各々において測定された伝搬特性から求められるチャネル毎の特性情報が複数の無線機20の各々から送信されるものとする。すなわち、本実施形態において、特性情報格納部102には、チャネル毎の特性情報が格納される。
一次推定部104aは、特性情報格納部102にチャネル毎に格納された特性情報及び位置情報格納部103に格納されている位置情報に基づいて、チャネル毎に、当該位置情報によって示される複数の設置位置の中から複数の無線機20の各々が設置されている位置(つまり、設置位置と無線機20との対応関係)を推定する。
二次推定部104bは、一次推定部104aによってチャネル毎に推定された結果に基づいて、位置情報格納部103に格納されている位置情報によって示される複数の設置位置の中から複数の無線機20の各々が設置されている位置を推定する。
以下、図9のシーケンスチャートを参照して、複数の無線機20の各々が設置されている位置を推定する際の電子装置10及び複数の無線機20の処理手順の一例について説明する。図9においては、複数の無線機20のうちの1つの無線機(以下、対象無線機と表記)20の処理について主に説明するが、他の無線機20においても同様の処理が実行される。
まず、前述した図6に示すステップS1~S8及びステップS10の処理に相当するステップS21~S29の処理が実行される。
なお、前述した第1実施形態においては、ステップS8において全てのチャネルについて処理が実行されたと判定された場合に、ステップS9の処理が実行されることによって他の無線機20毎に伝搬特性の特徴量が抽出されるが、本実施形態においては、このステップS9の処理に相当する処理は実行されない。
ステップS29の処理が実行されると、対象無線機20は、当該対象無線機20の内部に保持されている複数の測定チャネル番号によって示される複数のチャネルの各々において測定された他の無線機20毎の伝搬特性から求められる特性情報(つまり、チャネル毎の特性情報)を電子装置10に送信する(ステップS30)。この特性情報は、対象無線機20に割り当てられている無線機IDとともに電子装置10に送信される。また、測定チャネル番号も併せて送信されてもよい。なお、ステップS30の処理は、ステップS29の処理が実行されたタイミングで実行されてもよいし、電子装置10(例えば、測定指示部101)からの指示に応じて実行されてもよい。
なお、ステップS30の処理は、測定指示情報に含まれる複数の測定チャネル番号によって示される複数のチャネルのうちの1つのチャネルにおける伝搬特性の測定が終了する(つまり、ステップS27の処理が実行される)度に実行されても構わない。
また、前述した図6に示すステップS5及びS6の処理と同様に、ステップS25及びS26の処理が複数回実行される場合には、1つの他の無線機20から受信された複数の測定信号の各々に基づいて測定された伝搬特性の平均値、最大値、中央値、最頻値または標準偏差等のうちの少なくとも1つを対象無線機20と当該他の無線機20との間における特性情報として求めることができる。
ここで、上記したステップS23~S30の処理は、複数の無線機20の各々において実行される。このため、複数の無線機20の各々においてステップS30の処理が実行された場合、電子装置10は、当該複数の無線機20の各々から送信されたチャネル(測定チャネル番号)毎の特性情報を受信する。
電子装置10において受信されたチャネル毎の特性情報は、当該特性情報を送信した無線機20に割り当てられている無線機ID及び当該チャネルを示す測定チャネル番号とともに特性情報格納部102に格納される(ステップS31)。
図10は、特性情報格納部102に格納された特性情報のデータ構造の一例を示す。図10に示す例では、複数の無線機20が無線機D1~D9であり、特性情報格納部102には各無線機D1~D9の各々から送信された特性情報が格納されている。
本実施形態において、特性情報格納部102には、伝搬特性が測定されたチャネル毎に特性情報が格納されている。図10においては、測定チャネル番号1によって示されるチャネルにおける無線機D1~D9の各々の伝搬特性から求められた特性情報と、測定チャネル番号2によって示されるチャネルにおける無線機D1~D9の各々の伝搬特性から求められた特性情報とが示されている。なお、図10においては省略されているが、測定チャネル番号1及び測定チャネル番号2によって示されるチャネル以外のチャネルについても同様に特性情報が格納される。
なお、特性情報格納部102に格納される特性情報のデータ構造に関しては、チャネル毎に特性情報が格納されている以外は前述した図7において説明した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
再び図9に戻ると、前述した図6に示すステップS13の処理に相当するステップS32の処理が実行される。
次に、一次推定部104aは、ステップS31において特性情報格納部102に格納されたチャネル毎の特性情報と、ステップS32において取得された位置情報とに基づいて、一次推定処理を実行する(ステップS33)。この一次推定処理は前述した第1実施形態における推定部104によって実行される処理(推定処理)と同様の処理であるが、当該一次推定処理においては、チャネル毎に複数の無線機20の各々が設置されている位置が推定される。
ステップS33の処理が実行されると、二次推定部104bは、ステップS33におけるチャネル毎の一次推定処理の結果を取得し、二次推定処理を実行する(ステップS34)。二次推定処理が実行された場合には、ステップS32において取得された位置情報によって示される複数の設置位置の中から複数の無線機20の各々が設置されている位置が推定されるが、本実施形態においては、この二次推定処理が実行されることによって得られる推定結果(つまり、二次推定結果)が前述した第1実施形態において説明した各種システムによって利用されることになる。
次に、図11のフローチャートを参照して、二次推定処理の処理手順について詳細に説明する。図11に示す二次推定処理は、上記したように二次推定部104bによって実行される。
なお、図9に示すステップS33の処理が実行された場合、二次推定部104bは、チャネル毎の一次推定処理の結果(以下、一次推定結果と表記)を一次推定部104aから取得する。この一次推定結果には、上記した位置情報によって示される複数の設置位置の各々と複数の無線機20の各々(に割り当てられている無線機ID)との対応関係(つまり、複数の設置位置のうち無線機20の各々が設置されていると推定された位置)が含まれている。
この場合、二次推定部104bは、位置情報によって示される複数の設置位置の各々について以下のステップS41及びS42の処理を実行する。なお、以下の説明においては、このステップS41及びS42の処理の対象となる設置位置を、便宜的に、対象設置位置と称する。
まず、二次推定部104bは、チャネル毎の一次推定結果のうちの予め定められた数以上の一次推定結果において対象設置位置に設置されていると推定された無線機(以下、該当無線機と表記)20が存在するか否かを判定する(ステップS41)。
該当無線機20が存在すると判定された場合(ステップS41のYES)、二次推定部104bは、当該該当無線機20が対象設置位置に設置されていると推定する(ステップS42)。
一方、該当無線機20が存在しないと判定された場合(ステップS41のNO)、ステップS42の処理は実行されない。
次に、位置情報によって示される全ての設置位置についてステップS41及びS42の処理が実行されたか否かが判定される(ステップS43)。
全ての設置位置について処理が実行されていないと判定された場合(ステップS43のNO)、上記したステップS41に戻って処理が繰り返される。この場合、処理が実行されていない設置位置を対象設置位置としてステップS41及びS42の処理が実行される。
一方、全ての設置位置について処理が実行されたと判定された場合(ステップS43のYES)、二次推定部104bは、該当無線機20が存在しないと判定された(つまり、複数の無線機20のうちの特定の無線機20が設置されていると推定されていない)設置位置があるか否かを判定する(ステップS44)。
該当無線機20が存在しないと判定された設置位置がないと判定された場合(ステップS44のNO)、各設置位置に設置されている無線機20が特定(推定)されているため、図11の処理は終了される。
一方、該当無線機20が存在しないと判定された設置位置があると判定された場合(ステップS44のYES)、当該設置位置に関して再推定処理が実行される(ステップS45)。なお、再推定処理の詳細については後述する。
なお、ステップS41及びS42においてはチャネル毎の一次推定結果のうちの予め定められた数以上の一次推定結果において対象設置位置に設置されていると推定された無線機20が当該対象設置位置に設置されていると推定するものとして説明したが、当該ステップS41及びS42においては、例えばチャネル毎の一次推定結果の中で対象設置位置に設置されていると最も多く推定されている無線機20が当該対象設置位置に設置されていると推定してもよい。
以下、図12を参照して、上記した図11に示す二次推定処理について具体的に説明する。ここでは、位置情報によって示される複数の設置位置が設置位置P1~P6であり、複数の無線機20が無線機D1~D6であるものとする。また、測定チャネル番号1~3の各々によって示されるチャネルにおいて伝搬特性が測定され、当該チャネル毎の一次推定結果が取得されているものとする。
図12に示すように、一次推定結果(測定チャネル番号1)においては、設置位置P1~P6の各々がそれぞれ無線機D1、D2、D3、D4、D5、D6(に割り当てられている無線機ID)と対応づけられている。この一次推定結果(測定チャネル番号1)によれば、測定チャネル番号1によって示されるチャネルにおける一次推定処理において、無線機D1が設置位置P1に設置されており、無線機D2が設置位置P2に設置されており、無線機D3が設置位置P3に設置されており、無線機D4が設置位置P4に設置されており、無線機D5が設置位置P5に設置されており、無線機D6が設置位置P6に設置されていると推定されたことが示されている。
また、一次推定結果(測定チャネル番号2)においては、設置位置P1~P6の各々がそれぞれ無線機D1、D2、D6、D3、D4、D5(に割り当てられている無線機ID)と対応づけられている。この一次推定結果(測定チャネル番号2)によれば、測定チャネル番号2によって示されるチャネルにおける一次推定処理において、無線機D1が設置位置P1に設置されており、無線機D2が設置位置P2に設置されており、無線機D6が設置位置P3に設置されており、無線機D3が設置位置P4に設置されており、無線機D4が設置位置P5に設置されており、無線機D5が設置位置P6に設置されていると推定されたことが示されている。
更に、一次推定結果(測定チャネル番号3)においては、設置位置P1~P6の各々がそれぞれ無線機D1、D5、D3、D2、D6、D4(に割り当てられている無線機ID)と対応づけられている。この一次推定結果(測定チャネル番号3)によれば、測定チャネル番号3によって示されるチャネルにおける一次推定処理において、無線機D1が設置位置P1に設置されており、無線機D5が設置位置P2に設置されており、無線機D3が設置位置P3に設置されており、無線機D2が設置位置P4に設置されており、無線機D6が設置位置P5に設置されており、無線機D4が設置位置P6に設置されていると推定されたことが示されている。
ここで、上記した二次推定処理においては、設置位置P1を対象設置位置として、3つの一次推定結果(測定チャネル番号1~3)のうちの予め定められた数以上の一次推定結果において設置位置P1に設置されていると推定された無線機(該当無線機)が存在するか否かが判定される。
上記した予め定められた数が例えば2であるものとすると、3つの一次推定結果の全てにおいて設置位置P1には無線機D1が設置されていると推定されているため、二次推定部104bは、無線機D1が該当無線機に相当し、二次推定結果として無線機D1が設置位置P1に設置されていると推定する。
同様に、設置位置P2を対象設置位置として、3つの一次推定結果(測定チャネル番号1~3)のうちの予め定められた数以上の一次推定結果において設置位置P2に設置されていると推定された無線機(該当無線機)が存在するか否かが判定される。
上記したように予め定められた数が例えば2であるものとすると、3つの一次推定結果のうちの2つの一次推定結果(測定チャネル番号1及び2)において設置位置P2には無線機D2が設置されていると推定されているため、二次推定部104bは、無線機D2が該当無線機に相当し、二次推定結果として無線機D2が設置位置P2に設置されていると推定する。
更に、設置位置P3を対象設置位置として、3つの一次推定結果(測定チャネル番号1~3)のうちの予め定められた数以上の一次推定結果において設置位置P3に設置されていると推定された無線機(該当無線機)が存在するか否かが判定される。
上記したように予め定められた数が例えば2であるものとすると、3つの一次推定結果のうちの2つの一次推定結果(測定チャネル番号1及び3)において設置位置P3には無線機D3が設置されていると推定されているため、二次推定部104bは、無線機D3が該当無線機に相当し、二次推定結果として無線機D3が設置位置P3に設置されていると推定する。
次に、設置位置P4を対象設置位置として、3つの一次推定結果(測定チャネル番号1~3)のうちの予め定められた数以上の一次推定結果において設置位置P4に設置されていると推定された無線機(該当無線機)が存在するか否かが判定される。
この場合、図12に示すように、3つの一次推定結果において設置位置P4に設置されていると推定された無線機はそれぞれ無線機D4、D3及びD2であり、予め定められた数(ここでは、2)以上の一次推定結果において設置位置P4に設置されていると推定された無線機は存在しないと判定される。なお、設置位置P5及びP6についても同様に、該当無線機は存在しないと判定される。
二次推定処理において上記したように設置位置P4~P6において該当無線機が存在しないと判定された場合には、図11に示すステップS45において再推定処理が実行される。
以下、図13を参照して、再推定処理の一例について説明する。なお、図13の上段は、図12において説明した再推定処理が実行される前までの二次推定処理の処理結果を示している。すなわち、一次推定結果(測定チャネル番号1~3)が取得された後に二次推定処理(図11に示すステップS41~S44の処理)が実行された結果、設置位置P1~P3の各々にそれぞれ無線機D1~D3が設置されていると推定され、設置位置P4~P6において該当無線機が存在しないと判定された場合を想定している。
再推定処理においては、上記したように設置位置P1~P3の各々にそれぞれ無線機D1~D3が設置されていると推定されたことを考慮して、チャネル毎に再度一次推定処理が実行される。
具体的には、一次推定処理においては、前述した第1実施形態において説明したように設置位置P1~P6の各々と無線機D1~D6の各々との様々な組み合わせ(仮説)に対して評価値を算出し、最も高い評価値が算出された組み合わせに基づいて無線機D1~D6が設置されている位置を推定するが、再推定処理において再度実行される一次推定処理においては、二次推定処理において既に推定された設置位置P1~P3と無線機D1~D3との対応関係(P1-D1、P2-D2、P3-D3)を満たす組み合わせのうち、最も高い評価値が算出された組み合わせに基づいて無線機D1~D6の各々が設置されている位置を推定する。
なお、二次推定処理において既に推定された設置位置P1~P3と無線機D1~D3との対応関係を既に満たしている測定チャネル番号1によって示されるチャネルについては一次推定処理を再度実行しなくてもよい。
ここで、図13の下段は、再推定処理において一次推定処理が再度実行された結果(一次推定結果)の一例を示す。
図13の下段に示す例によれば、一次推定結果(測定チャネル番号1)においては、設置位置P1~P6の各々がそれぞれ無線機D1、D2、D3、D4、D5、D6と対応づけられている。また、一次推定結果(測定チャネル番号2)においては、設置位置P1~P6の各々が無線機D1、D2、D3、D5、D4、D6と対応づけられている。また、一次推定結果(測定チャネル番号3)においては、設置位置P1~P6の各々が無線機D1、D2、D3、D4、D5、D6と対応づけられている。
再推定処理においては、このように一次推定処理が再度実行された結果に基づいて上記した二次推定処理(図11に示す処理)が再度実行される。
この再度実行された二次推定処理によれば、図13の下段に示すように、設置位置P4には無線機D4が設置されており、設置位置P5には無線機D5が設置されており、設置位置P6には無線機D6が設置していると推定することができる。
上記した再推定処理において二次推定処理が再度実行されたとしても全ての設置位置に設置されている無線機を推定することができない場合には、再度、再推定処理が実行されても構わない。
なお、再推定処理においては、一次推定処理が再度実行された後に二次推定処理が再度実行されるものとして説明したが、例えば二次推定処理は再度実行されない構成としても構わない。具体的には、一次推定処理においては評価値(例えば、相関係数)が算出されるが、再推定処理において一次推定処理が再度実行されることによって取得されるチャネル毎の一次推定結果のうち、評価値の最も高い一次推定結果を選択(採用)し、当該選択された一次推定結果に基づいて無線機D1~D6の各々が設置されている位置を推定する構成としてもよい。
このような構成の場合には、例えば図14に示すように再推定処理において再度実行された一次推定処理の結果に基づいて二次推定処理が再度実行されたとしても設置位置P4~P5に設置されている無線機を推定することができないような場合であっても、評価値の高い一次推定結果(測定チャネル番号1)に基づいて、設置位置P4に無線機D4が設置されており、設置位置P5に無線機D5が設置されており、設置位置P6に無線機D6が設置されていると推定することができる。
なお、上記した再推定処理においては特性情報格納部102に格納されている全ての特性情報(無線機D1~D6間における伝搬特性)を用いて一次推定処理が再度実行されるが、例えば再推定処理が実行される前に設置位置P1~P3に無線機D1~D3が設置されていることが推定されている場合には、設置位置P4~P6を示す位置情報及び設置位置が推定されていない無線機D4~D6間における伝搬特性を含む特性情報のみを用いて各チャネルにおける一次推定処理を実行する構成としてもよい。換言すれば、この一次推定処理においては、設置位置P4~P6の中から無線機D4~D6の各々が設置されている位置を推定する処理が実行される。このような構成の場合であっても、例えば図13において説明したような推定結果を得ることができる。
上記したように本実施形態においては、位置情報格納部103に格納されている位置情報と、第1無線機20の第1チャネルにおける第1伝搬特性から求められた第1特性情報と、第2無線機20の第1チャネルにおける第3伝搬特性から求められた第3特性情報とに基づいて、第1及び第2無線機20の各々が設置されている位置の第1推定結果(第1チャネルにおける一次推定結果)を取得し、当該位置情報と、第1無線機20の第2チャネルにおける第2伝搬特性から求められた第2特性情報と、第2無線機20の第2チャネルにおける第4伝搬特性から求められた第4特性情報とに基づいて、第1及び第2無線機20の各々が設置されている位置の第2推定結果(第2チャネルにおける一次推定結果)を取得する。本実施形態においては、上記した第1及び第2推定結果に基づいて、第1及び第2無線機20の各々が設置されている位置を推定する。
この場合、予め定められた数以上の第1及び第2推定結果において第1及び第2設置位置のうちの同一の位置に複数の無線機20のうちの同一の無線機20が設置されていると推定された場合、当該位置に当該無線機20が設置されていると推定するものとする。なお、第1及び第2推定結果において第1設置位置に設置されていると最も多く推定された複数の無線機20のうちの特定の無線機20が当該第1設置位置に設置されていると推定し、第1及び第2推定結果において第2設置位置に設置されていると最も多く推定された複数の無線機20のうちの特定の無線機20が当該第2設置位置に設置されていると推定してもよい。
本実施形態においては、上記した構成により、第1チャネルにおける第1推定結果及び第2チャネルにおける第2推定結果の各々を考慮して第1及び第2無線機20の各々が設置されている位置を推定するため、前述した第1実施形態のように複数のチャネルの各々において測定された伝搬特性の特徴量を用いて当該位置を推定する場合と比較して、伝搬特性の外れ値の影響を受けにくく、より推定精度を向上させることが期待できる。
更に、本実施形態においては、第1及び第2推定結果に基づいて第1及び第2設置位置のうちの第3設置位置の各々について設置されている第1及び第2無線機20が推定され、前記第1及び第2設置位置のうちの第4設置位置の各々に設置されている第1及び第2無線機20を推定することができない場合、当該第4設置位置の中から第1及び第2無線機20の各々が設置されている位置を再度推定する再推定処理を実行する。
具体的には、再推定処理においては、位置情報格納部103に格納されている位置情報と、第1無線機の第1伝搬特性から求められた第1特性情報と、第2無線機の第3伝搬特性から求められた第3特性情報と、第3設置位置の各々に設置されていると推定された第1及び第2無線機20とに基づいて、第4設置位置のうちの第1及び第2無線機の各々が設置されている位置の第3推定結果(第1チャネルにおける一次推定結果)を取得し、当該位置情報と、第1無線機の第2伝搬特性から求められた第2特性情報と、第2無線機の第4伝搬特性から求められた第4特性情報と、第3設置位置の各々に設置されていると推定された第1及び第2無線機とに基づいて、第4設置位置のうちの第1及び第2無線機の各々が設置されている位置の第4推定結果(第2チャネルにおける一次推定結果)を取得する。再推定処理においては、このように取得された第3及び第4推定結果に基づいて第4設置位置の中から第1及び第2無線機20の各々が設置されている位置を再度推定する。
このような構成によれば、二次推定処理(第1及び第2推定結果に基づく推定処理)において全ての設置位置に設置されている無線機20を推定することができない場合であっても、再推定処理(一次推定処理及び二次推定処理)を繰り返し実行することによって、全ての設置位置に設置されている無線機20を推定することが可能となる。
また、再推定処理においては、第3推定結果に対する第1評価値及び第4推定結果に対する第2評価値に基づいて選択された第3または第4推定結果に基づいて第4設置位置の中から第1及び第2無線機20が設置されている位置を再度推定するようにしてもよい。このような構成によれば、再度推定処理において二次推定処理を再度実行する必要がないため、電子装置10における処理負荷を低減することができる。
更に、再推定処理においては、第4設置位置の各々を示す位置情報と、第3設置位置の各々に設置されていると推定された第1及び第2無線機20以外の無線機20の特性情報とに基づいて、当該第4設置位置の中から当該無線機20が設置されている位置を再度推定する。このような構成によれば、特性情報格納部102に格納されている全ての特性情報を用いて再推定処理を実行する必要がないため、電子装置10における処理負荷を低減することができる。
以上述べた少なくとも1つの実施形態においては、無線機20が設置されている位置を高精度で推定することが可能な電子装置及び方法を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。