JP7242382B2 - 水中油型化粧料 - Google Patents
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Description
メトキシケイヒ酸エチルヘキシルは、紫外線散乱剤のような白浮きやきしみ感はないが、汗や水に弱く効果が減弱しやすいことから、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの配合量を増やして紫外線防御効果の持続性を高める方策がしばしばとられてきた。しかし、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルが皮膚中に浸透すると、痛みやかゆみ等の刺激感や接触皮膚炎を起こす例が報告されており、配合量をむやみに増やしてよいと言うわけではない。
このように紫外線吸収剤は皮膚中に浸透してしまう成分であることは知られていたものの、その浸透メカニズムについては知られておらず、浸透メカニズムに基づいた改善はされていなかった。
詳細には、水中油型化粧料中において、セチルリン酸塩と高級アルコールを用いてメトキシケイヒ酸エチルヘキシルを乳化する際に、ポリヒドロキシステアリン酸を配合することで乳化粒子の界面が強固になり、皮膚に塗布されて製剤中の水分が蒸発した際にも、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルを含む乳化状態が維持されるため、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルによる直接的な細胞間脂質の流動化を抑制することができることを見出した。これにより、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの皮膚浸透が抑制され、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルによる痛みやかゆみ等の刺激感や接触皮膚炎等の安全性上の問題が低減され、かつ紫外線防止効果が持続する水中油型化粧料を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)第1発明としては、
下記成分(a)~(d)を含有することを特徴とする水中油型化粧料。
(a)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル
(b)セチルリン酸塩 0.05~5質量%
(c)高級アルコール 0.05~5質量%
(d)ポリヒドロキシステアリン酸
より具体的には、(a)メトキシケイヒ酸エチルヘキシルを含有する水中油型化粧料に(b)セチルリン酸塩、および(c)高級アルコール、および(d)ポリヒドロキシステアリン酸を含有することで、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの皮膚浸透を抑制するものである。
(2)第2発明としては、
(c)成分が、炭素数16以上の高級アルコールから選択される1種以上であることを特徴とする第1発明に記載の水中油型化粧料。
(3)第3発明としては
(d)成分を0.1~3質量%含有することを特徴とする第1又は第2発明に記載の水中油型化粧料。
(4)第4発明としては
(b)成分と(c)成分の総量が化粧料全量に対して0.5~5質量%となることを特徴とする第1乃至第3発明のいずれかに記載の水中油型化粧料。
メトキシケイヒ酸エチルヘキシルによる皮膚浸透促進作用を確認するため、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの量依存的な堅牢性への影響を評価した。
[評価方法]
セラミド、コレステロール、及びパルミチン酸を2:1:1の質量比で配合した脂質混合物に、クロロホルム:メタノール=5:1混液を加え、超音波処理により溶解した。これを、90℃で加熱後冷却し、擬似細胞間脂質を得た。得られた擬似細胞間脂質とメトキシケイヒ酸エチルヘキシルを様々な質量比で混合し、示差走査熱量計((株)日立ハイテクサイエンス社製、DSC7000)に供して測定した。なお、測定条件は、温度範囲:0~100℃、昇温速度:5℃/分で行い、得られたDSCプロファイルの60℃付近に見られるピークから算出した吸熱エンタルピーを図1に示す。擬似細胞間脂質の吸熱エンタルピーが大きいほど脂質の堅牢性が維持されているため浸透しにくく、吸熱エンタルピーが低いほど脂質の堅牢性が弱まり浸透しやすい状態にあることが言える。
製剤塗布後の水分蒸発による含有成分の濃縮が生じた後でも、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルが乳化された状態であるかどうかを確かめるため、実使用を想定し、濃縮後の組成で製剤を調製し乳化状態を評価した。
[評価方法]
表1、2に示した各サンプルが皮膚に塗布されて水分が蒸発し、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルがある一定濃度(56%)まで濃縮されたと仮定した時の組成を、常法により調製し、調製後のバルクを20℃で一晩保管して外観評価を行った。
[乳化状態の評価基準]
〇:均一な乳化状態である(分離していない)。
×:不均一な乳化状態で分離している。
製剤組成によってメトキシケイヒ酸エチルヘキシルの乳化粒子からの漏出性が異なると予想されるため、本発明の水中油型化粧料が擬似細胞間脂質の堅牢性に与える影響を評価した。
[評価方法]
実験2と同様に、濃縮されたと仮定した時の表1、2に示した組成と、実験1で調製した擬似細胞間脂質を1:1の質量比で混合し、示差走査熱量計に供して測定した。なお、測定および解析方法は実験1と同様に行い、堅牢性低下抑制度(実施例の吸熱エンタルピー/比較例1の吸熱エンタルピー)を評価した結果を表1、2に示す。
[堅牢性低下抑制度の評価基準]
◎:4以上(堅牢性の低下を、非常に大きく抑制する)
〇:3以上~4未満(堅牢性の低下を、大きく抑制する)
△:1以上~3未満(堅牢性の低下を、わずかに抑制する)
×:1未満(堅牢性の低下を、抑制しない)
本発明の水中油型化粧料における、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの皮膚浸透抑制効果を評価するため、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの皮膚浸透性を測定した。
[評価方法]
表3に示す処方にて常法により製剤を調製し、ヒト前腕内側部を洗浄後10分間安静にした後、各製剤を前腕内側2.25cm2に被験試料を7.5mg適用した。室温で1時間放置した後、被験部位を軽くティッシュで押さえ、皮膚表面に被験試料の残りがないようにし、塗布1時間後および塗布6時間後に、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの皮膚浸透性を測定した。
測定は、被験試料の塗布前後で、室温20℃、相対湿度50%の条件で、in vivo共焦点ラマン分光装置(RiverD International B.V.社製、gen2-SCA)を用い、785nmの波長で測定した。具体的には、測定ステージに被験部位を乗せ、被験部位に対して共焦点ラマン分光装置からレーザー光を照射し、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルのラマン散乱(1590~1620cm-1)の強度相対値(対ケラチンのラマン散乱;1400~1500cm-1)を皮膚深さ2μmごとに算出した。塗布1時間後および6時間後における皮膚表面から深さ10μmまでの合算値を、塗布6時間後/塗布1時間後の比として表3に示す。
[皮膚浸透抑制効果の評価基準]
◎:0.8以上(皮膚浸透性を、大きく抑制する)
〇:0.5以上~0.8未満(皮膚浸透性を、わずかに抑制する)
×:0.5未満(皮膚浸透性を、抑制しない)
本発明の水中油型化粧料の安全性上の問題の低減作用を評価するため、実使用試験を行った。
[評価方法]
表3に示す処方にて常法により製剤を調製し、過去にメトキシケイヒ酸エチルヘキシルによる皮膚トラブルを経験したことのあるモニター10名に1週間使用してもらい、皮膚トラブルの有無についてアンケートを行い、安全性の評価を行った。
[安全性の評価基準]
◎:皮膚トラブルが有ったと回答したモニターが、10名中0名だった。
○:皮膚トラブルが有ったと回答したモニターが、10名中1~2名だった。
△:皮膚トラブルが有ったと回答したモニターが、10名中3~4名だった。
×:皮膚トラブルが有ったと回答したモニターが、10名中5名以上だった。
成分(b)及び(e)を含む水相成分を80~90℃で撹拌混合し、溶解させて均一にしたものを水相部とする。次に、成分(a)、(c)及び(d)を含む油相成分を80~90℃で撹拌混合し、溶解させて油相部とする。水相部に油相部を80~90℃で撹拌しながら添加し、ホモミキサーを使用して6,000rpmで30秒間、乳化した。更に撹拌しながら35℃まで冷却して、水中油型化粧料を製造した。
また、(b)成分であるセチルリン酸塩と(c)成分である高級アルコールが配合されていない処方(比較例4)では、調製後の組成物は乳化されず、分離して安定な乳化物ができない。(b)成分及び(c)成分を少量配合した処方(比較例5)では、乳化はするものの、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの漏出を抑えるには不十分であり、細胞間脂質の堅牢性低下抑制効果は見られなかった。(b)、(c)の配合量を増加させた処方(実施例1、5)では、乳化粒子からのメトキシケイヒ酸エチルヘキシルの漏出を抑え、細胞間脂質の堅牢性低下を抑制した。しかし、これらの総量が10%を超えると、乳化粒子の界面が強固になりすぎて、安定な乳化物を調製することができなかった(比較例6)。
さらに、(a)成分であるメトキシケイヒ酸エチルヘキシルの量を変えても、細胞間脂質の堅牢性低下抑制効果を得る事ができた(実施例6~8)。
(b)成分をセチルリン酸Kからセチルリン酸DEAに変えた処方(実施例11)では、実施例1と同様の乳化物が調製できた。しかし、(b)成分をセチルリン酸塩から、別のアニオン活性剤に変えた処方(比較例7~9)では、安定な乳化物ができない、或いは乳化物ができたとしても細胞間脂質の堅牢性低下抑制効果は不十分であった。
(d)成分をポリヒドロキシステアリン酸から、別のステアリン酸誘導体に変えた処方(比較例10、11)では、乳化粒子の界面が強固にならずメトキシケイヒ酸エチルヘキシルの漏出を防ぐ事ができないため、細胞間脂質の堅牢性を低下させてしまった。
皮膚浸透抑制効果および安全性のいずれの結果においても、擬似細胞間脂質を用いた堅牢性の影響度評価の結果とおおよそ相関しており、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルを含む乳化粒子の界面が強固になったことで、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルによる直接的な細胞間脂質の堅牢性低下が抑制され、皮膚浸透性の低下とそれに伴う安全性の向上が確認された。
Claims (3)
- 下記成分(a)~(d)を含有することを特徴とする水中油型化粧料。
(a)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 2~20質量%
(b)セチルリン酸塩 0.05~5質量%
(c)高級アルコール 0.05~5質量%
(d)ポリヒドロキシステアリン酸 0.1~3質量% - (c)成分が、炭素数16以上の高級アルコールから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1記載の水中油型化粧料。
- (b)成分と(c)成分の総量が化粧料全量に対して0.5~5質量%となることを特徴とする請求項1または2に記載の水中油型化粧料。
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