JP7240086B2 - 水素脆化感受性を抑えた高硬度非磁性鋼 - Google Patents

水素脆化感受性を抑えた高硬度非磁性鋼 Download PDF

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Description

本発明は、水素製造プラント、貯蔵施設、各種水素運搬手段(船舶やトレーラー等)、そして水素ステーションや燃料電池自動車といった水素エネルギー利用設備の部材(バルブ、配管、継手、ノズル、圧縮機、蓄圧器、計測機器など)や、水冷孔を有して高温に曝される熱間金型やロール等、材料中への水素侵入が促される環境下(以下「水素侵入環境下」ともいう。)において使用可能な鋼材に関する。
たとえば、高圧水素ガス使用設備における、ノズルや水冷孔を有した金型等では、水素侵入環境下に曝されながらも耐久性が求められている。こうした場面で適用可能な鋼材があれば、水素エネルギーを利用する社会の構築が促進できるが、それには、優れた耐水素脆性を有するとともに、高硬度および高強度であって、さらに高い耐候性を有し、かつ、比較的安価な鋼材が求められることとなる。
もっとも、高圧の水素環境下での使用が認められている鋼材として、SUS316、ASTMのXM19系があるが、ここにいう強度とはこれらを遥かに上回るものであり、高価なSUH660の時効硬化材と同等以上であることが必要となる。
また、SUH660のようにオーステナイト安定度は高くても強度が高い鋼材はあるものの、水素脆化感受性が高くなってしまうものであった。
従来の技術として、特許文献1には、高強度で耐硫化物応力腐食割れ性に優れた金属材料の発明が提案されている。この提案の発明の金属材料の成分系は本願の発明と一部似通うところがあるが、Ni、Cuが成分元素として必須とされておらず、かつ、積層欠陥エネルギー(stacking fault energy:以下「SFE」という。)の調整による平滑破面の発現抑制に関する言及もない。さらに延性や耐食性や、あるいは過酷な水素侵入環境への耐性などについては不明であり、示唆もない。
さらに、特許文献2には、高強度で耐水素脆性に優れた金属材料の発明が提案されている。この提案の金属材料の成分系も本願の発明と一部似通っているが、この金属材料は高Mnかつ低Ni(Niは本発明の範囲より低い。)の金属材料であり、上記の特許文献1の提案と同様に、SFEの調整による平滑破面の発現抑制に関する言及はみあたらない。
また、特許文献3には、高強度で耐水素脆性に優れた金属材料の発明が提案されている。この提案の金属材料の成分系も本願の発明と類似している。しかし、この提案の金属材料は、本願の発明よりもコストに強みがあるものの、平滑破面抑制への言及は無く、水素脆化感受性が高いものである。なお、この文献の実施例に記載の発明例では、その全てが本発明の式4の範囲外の値となっている。
さらに、上記の発明と同様に高耐食性化を狙って、特許文献4には高強度で耐水素脆性に優れる金属材料が提案されている。しかし、上記の特許文献3の発明と同様に、この提案の発明の成分系も本願の発明と一部似通ってはいる。しかし、この提案の金属材料は、本願の発明よりコストに強みがあるものの、平滑破面抑制への言及も無く、水素脆化感受性が高いものである。なお、この文献の実施例に記載の発明例では、その全てが本発明の式4の範囲外の値となっている。
特開平9-249940号公報 特開2017-031483号公報 特開2016-014180号公報 特開2016-183372号公報
水素利用アプリケーション向けの金属材料においては、十分な耐水素脆性を有しながら、一方で、安価で、高強度で、かつ優れた耐食性を有するといった要求に応え得ることが望まれている。そして、水素脆化感受性を抑えるためには、高いオーステナイト安定度を維持しながら、加工組織の均質化および積層欠陥エネルギー(stacking fault energy:以下「SFE」という。)を向上させることが有効であると考えられる。SFEが低い金属ほど転位は2本の部分転位に分かれて拡張しやすくなるなどすることから、積層欠陥を導入するのに必要なエネルギーであるSFEが高いことは有効と考えられる。もっとも、従来の技術では、これらの全ての要求に応えることは困難であった。
そこで、本願発明が解決しようとする課題は、Ni代替のMnによるコストダウンと、V(C、N)析出物による高硬度化と、含有の各化学成分の合金元素が及ぼす引張特性、コスト、耐食性、および、高強度材に特有の水素脆化感受性(平滑破面の発現)に対する影響を把握し、化学成分の添加量と組成バランスの調整による、安価で優れた耐水素脆性、引張特性、および耐食性を兼備した鋼材料の高硬度非磁性鋼を提供することである。
本願の発明の、安価で優れた耐水素脆性、機械的性質および耐食性を兼備した鋼材料を提供する手段は、下記の指定の範囲の化学成分とその残部であるFeおよび不可避不純物からなり、かつ下記の(1)~(4)式で規定された高硬度非磁性鋼である。
すなわち、上記の課題を解決するための手段における、
第1の手段は、質量%で、C:0.15~0.80%、Si:0.15~0.80%、Mn:2.0~10.0%、P:0.050%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0~20.0%、Cr:8.0~18.0%、Mo:0.05~0.50%、Cu:0.20~5.00%、V:0.50~3.00%、Al:0.001~1.000%、N:0.015~0.100%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼において
V/{4([C]+[N])}=0.5~1.0・・・(1)
{16([C]+[N])-3[V]}/([Cr]+0.9[Ni]-16[N])=0.10~0.30・・・(2)
551-462([C]+[N]-0.07[V])-9.2[Si]-8.1[Mn]-13.7[Cr]-29([Ni]+[Cu])-18.5[Mo]≦-100・・・(3)
2.3[Ni]+3.0[Mo]+5.0[Al]+5.6[Cu]-[Cr]-[Si]-1.2[Mn]≧18.5・・・(4)
からなる(1)~(4)の式を満足し、
さらに、50nm以下のV(C、N)析出物が、3.5×10-2μm2中に50個以上、分散して存在することを特徴とする安価で優れた耐水素脆性、機械的性質および耐食性を兼備した高硬度非磁性鋼である。
第2の手段は、質量%で、C:0.15~0.80%、Si:0.15~0.80%、Mn:2.0~10.0%、P:0.050%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0~20.0%、Cr:8.0~18.0%、Mo:0.05~0.50%、Cu:0.20~5.00%、V:0.50~3.00%、Al:0.001~1.000%、N:0.15~0.100%を含有し、さらに、B:0.010%以下、Ca:0.050%以下、Mg:0.050%以下の3種から選択したいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなることを特徴とする鋼であり、該鋼において、
V/{4([C]+[N])}=0.5~1.0・・・(1)
{16([C]+[N])-3[V]}/([Cr]+0.9[Ni]-16[N])=0.10~0.30・・・(2)
551-462([C]+[N]-0.07[V])-9.2[Si]-8.1[Mn]-13.7[Cr]-29([Ni]+[Cu])-18.5[Mo]≦-100・・・(3)
2.3[Ni]+3.0[Mo]+5.0[Al]+5.6[Cu]-[Cr]-[Si]-1.2[Mn]≧18.5・・・(4)
からなる(1)~(4)式を満足し、
さらに、50nm以下のV(C、N)析出物が、3.5×10-2μm2中に50個以上、分散して存在することを特徴とする安価で優れた耐水素脆性、機械的性質および耐食性を兼備した水素脆化感受性を抑えた高硬度非磁性鋼である。
上記の本願の手段とすることにおいて、(1)式の右項の値の範囲とすることで、V、CおよびNを効果的に析出硬化に利用でき、V(C、N)の析出物を安価で高硬度なものとすることができ、(2)式の右項の値の範囲とすることで、高硬度と優れた耐食性との両立にC、N、V、CrおよびNiを効果的に利用でき、(3)式の右項の値以下とすることで、耐水素脆性に優れるγ組織の安定性を示す鋼とすることができ、右項の値は低いほどγ組織が安定でき、(4)式の右項の値以上とすることで、加工組織の安定性が確保でき、高いSFEを確保でき局所すべりの発生が抑制でき、その結果平滑破面の発現が阻止できる。さらに50nm以下のバナジウム炭窒化物が時効析出することで、得られた鋼材に高硬度が付与でき、かつこの析出した炭窒化物は水素トラップサイトとして作用し、脆化を促進する水素を固定して脆化を阻止する。
発明を実施するための形態の記載に先立って、本願の発明に係る手段における、化学成分、(1)~(4)式、および、50nm以下のV(C、N)析出物が3.5×10-2μm2中に50個以上分散して存在する理由について、順次以下に説明する。なお、化学成分における%は、質量%である。
C:0.15~0.80%
Cは、VおよびNと化合して、鋼中にV(C、N)[バナジウム炭窒化物]を生成して析出強化する元素である。このためには、Cは0.15%以上が必要である。一方、Cは0.80%より超えて含有されると、粗大なバナジウム炭窒化物を生成して鋼の耐食性を劣化する。そこで、Cは、0.15~0.80%とし、好ましくは、Cは0.20~0.60とする。
Si:0.15~0.80%
Sは、製鋼段階での脱酸材として添加される元素である。そこで、Siは鋼中に0.15%以上含有される。一方、Siは鋼中に0.80%を超えて含有されると、鋼の延性が劣化し、かつフェライト生成によって耐水素脆性が劣化する。そこで、Siは0.15~0.80%とする。
Mn:2.0~10.0%
Mnは、γ組織を安定化する元素で、優れた耐水素脆性を有する元素である。そこで、Mnは2.0%以上が必要である。一方、Mnは10.0%を超えて含有されると、積層欠陥エネルギー(SFE)が低下するので平滑破面の発生が促進される。そこで、Mnは2.0~10.0%とし、好ましくは、Mnは2.0~9.0とする。
P:0.050%以下
Pは、不純物元素であり、通常の精錬では含有されている元素である。しかし、Pは0.050%を超えて含有されると、得られた鋼の延性、靭性および熱間加工性が劣化する。そこで、Pは0.050%以下とする。
S:0.030%以下
Sは、不純物元素であり、通常の精錬では含有されている元素である。しかし、Sは0.030%を超えて含有されると、得られた鋼の延性、靭性および熱間加工性を劣化する。そこで、Sは0.030%以下とする。
Ni:8.0~20.0%
Niは、オーステナイトを安定化し、SFEを上昇させ、優れた耐水素脆性をもたらす元素である。そこで、Niは8.0%以上が含有される。しかし、Niが20.0%を超えて含有されるとその効果は飽和してくる。また、Niは高価な元素であるので高コストとなる。そこで、Niは8.0~20.0%とする。
Cr:8.0~18.0%
Crは、耐食性を向上させる元素である。そこで、Crは8.0%以上が必要である。しかし、Crは18.0%を超えて含有されると、Crの耐食性の向上の効果は飽和に向かい、フェライト生成により耐水素脆性が劣化してくる。そこで、Crは8.0~18.0%とする。
Mo:0.05~0.50%
Moは、耐食性が向上し、SFEを上昇させ、優れた耐水素脆性をもたらす元素である。そこで、Moは0.05%以上とする。しかし、Moは0.50%を超えて含有されると、高い元素であるので高コスト化する。そこで、Moは0.05~0.50%とする。
Cu:0.20~5.00%
Cuは、オーステナイトを安定化し、SFEを上昇させ、優れた耐水素脆性をもたらす元素である。そこで、Cuは0.20%以上とする。しかし、Cuは5.00%を超えて含有されると、熱間加工性が劣化する。そこで、Cuは0.20~5.00%とする。
V:0.50~3.00%
Vは、バナジウム炭窒化物[V(C,N)]の生成により鋼を析出強化する元素である。そこで、Vは0.50%以上を含有するものとする。しかし、Vは3.00%を超えて含有されると、粗大なバナジウム炭窒化物が生成され、耐食性が劣化し、かつVは高価な元素であるので高コスト化する。そこで、Vは0.50~3.00%とする。
Al:0.001~1.000%
Alは、精錬時の脱酸および鋼としてのSFEを上昇させる元素である。そこで、Alは0.001%以上とする。しかし、Alは1.000%を超えて含有されると、延性が低下され、フェライトの生成による耐水素脆性を劣化する。そこで、Alは0.001~1.000%とする。
N:0.015~0.100%
Nは、上記したようにバナジウムと炭窒化物を生成して析出強化する元素である。そこで、Nは0.015%以上とする。しかし、Nは0.100%を超えて含有されると、粗大な炭窒化物生成により耐食性が劣化され、かつ窒化物の生成によって延性が低下される。そこで、Nは0.015~0.100%とする。
B:0.010%以下
Bは、熱間加工性を改善する元素であって、必要に応じて添加できる。しかし、Bは0.010%を超えて含有されると、熱間加工性の改善効果は飽和し、熱間加工性が劣化する。そこで、Bは0.010%以下とする。
Ca:0.050%以下
Caは、熱間加工性を改善する元素であって、必要に応じて添加できる。しかし、Caは0.050%を超えて含有されると、熱間加工性の改善効果は飽和し、熱間加工性が劣化する。そこで、Caは0.050%以下とする。
Mg:0.050%以下
Mgは、熱間加工性を改善する元素であって、必要に応じて添加できる。しかし、Mgは0.050%を超えて含有されると、熱間加工性の改善効果は飽和し、熱間加工性が劣化する。そこで、Mgは0.050%以下とする。
本発明の第2の手段では、上記B、Ca、Mgのうち少なくとも1種を含むものである。BとCa、BとMg、CaとMgのいずれか、あるいは、B、Ca、Mgの3種すべてを含むものであってもよい。
V/{4([C]+[N])}=0.5~1.0・・・(1)
(1)式の左項の値は右項の0.5~1.0の範囲にすることで、V、C、およびNを析出硬化に効果的に利用できる。すなわち、下限値の0.5未満ではC、Nの過剰により耐食性が悪化する。一方、上限値の1.0を超えるとVの過剰により高コストとなる。そこで、V/{4([C]+[N])}は0.5~1.0とする。
{16([C]+[N])-3[V]}/([Cr]+0.9[Ni]-16[N])=0.10~0.30・・・(2)
(2)式の左項の値は右項の0.10~0.30の範囲にすることで、C、N、V、Cr、Ni、およびNを鋼の硬さおよび耐食性の両立に効果的に利用できる。すなわち、下限値の0.10未満では、鋼が軟化しかつコストアップとなる。一方、上限値の0.30を超えると耐食性を悪化する。そこで、{16([C]+[N])-3[V]}/([Cr]+0.9[Ni]-16[N])=0.10~0.30とする。
551-462([C]+[N]-0.07[V])-9.2[Si]-8.1[Mn]-13.7[Cr]-29([Ni]+[Cu])-18.5[Mo]≦-100・・・(3)
(3)式は、耐水素脆性に優れるγ組織の安定度を表す指標である。(3)式の値が低いほどγ組織は安定しており、-100以下であればγ組織は安定する。そこで、551-462([C]+[N]-0.07[V])-9.2[Si]-8.1[Mn]-13.7[Cr]-29([Ni]+[Cu])-18.5[Mo]≦-100とする。
2.3[Ni]+3.0[Mo]+5.0[Al]+5.6[Cu]-[Cr]-[Si]-1.2[Mn]≧18.5・・・(4)
(4)式は、加工組織の安定性の確保を示す式である。この式の値が18.5以上であると、高いSFEが確保されて局所すべりの発生が抑制され、その結果、平滑破面の発現が妨げられる。そこで、2.3[Ni]+3.0[Mo]+5.0[Al]+5.6[Cu]-[Cr]-[Si]-1.2[Mn]の値は18.5以上とする。
50nm以下のV(C、N)析出物は、3.5×10-2μm2中に50個以上分散して存在すること。
50nm以下のサイズのバナジウム炭窒化物が時効析出することで、鋼材に高い強度が付与され、この時効析出した析出物が水素トラップサイトとして働き、脆化を促進する水素を固定することで無害化する。そこで、50nm以下のV(C、N)析出物は、3.5×10-2μm2中に50個以上分散して存在することとする。
続いて、発明の実施の形態について順次に説明する。
下記の表1-1と表1-2に示す化学成分を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる、本願の発明例であるNo.1~19とその比較例であるNo.20~43のそれぞれの供試材の鋼塊を以下に示すようにして溶製した。
先ず、表1-1と表1-2に示す各No.の発明例と比較例の化学成分からなる鋼塊を100kg真空誘導溶解炉で溶製し、これらの鋼塊を1150℃に加熱した後、これらの鋼塊から鍛伸によりそれぞれ径15mmの棒鋼を作製した。さらに、これらの棒鋼を1000~1250℃に10分以上加熱した後に水冷することで、固溶化熱処理を行った鋼材とした。次いで、これらの固溶化熱処理した鋼材をそれぞれ600~900℃に30分以上加熱した後、空冷して時効処理を行った。これらの時効処理した鋼材から各試験片を作製した。
Figure 0007240086000001
Figure 0007240086000002
(析出物分散状態)
表1-1の発明例のNo.1~19と表1-2の比較例のNo.20~43の各試験片を透過型電子顕微鏡(TEM)およびエネルギー分散型X線分析(EDX)により析出物の同定と粒子径の測定を実施した。そして3.5×10-2μm2の範囲で観測された、長径50nm以下のV(C、N)の個数を測定し、その結果、50個以上の個数が確認された場合は表1-1及び表1-2の「析出物分散状態」の欄に「○」と表示し、50個未満の個数が確認された場合は「×」と表示した。
(熱間加工性)
各種の調査に用いる試験片の作製における上記工程の、径15mmの棒鋼の鍛造において、問題なく加工できたものは、表2の「φ15鍛造」の欄に「○」と表示し、熱間加工性が悪く、割れが多発して加工を続行不可となったものは、表2の「φ15棒鋼」の欄に「×」と表示した。
Figure 0007240086000003
(時効硬さ)
表2における「時効硬さ(HRC)」の評価は、試験片のロックウェル硬さを測定して評価し、硬さが39HRC以上を「○」と表示し、硬さが35~38HRCを「△」と表示し、硬さが35HRC未満を「×」と表示した。
(引張特性評価)
表2における引張特性の「引張強さ」の評価は、各種試験片から平行部の径6mmかつ長さ30mmの棒状の引張試験片に加工した後、大気中でストローク速度1.0mm/minで引張試験を実施し、引張強さが、1200MPa以上を「○」と表示し、1200MPa未満で1100MPa以上を「△」と表示し、1100MPa未満を「×」と表示した。
表2における引張特性の「絞り」の評価は、上記の引張試験における、
最初の断面積をS0とし、破断後の最小断面積をSとすると、絞りは、
100(S0-S)/S0
で得られる値であり、「%」で表わす。
このようにして測定した絞りは、表2の「絞り」の欄に30%以上を「○」と表示し、絞りが25~29%を「△」と表示し、25%未満を「×」と表示して表示した。
(平滑破面率)
表2における「平滑破面率」の評価は
上記の引張特性評価後の破断試料の断面中心部を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察撮影する。得られた画像からディンプルが認められない箇所を平滑破面と定義し、その2次元的な面積を観察視野面積(50,000μm2)で除した値を平滑破面率として算出した。
表2において「平滑破面率」が13%以下を「○」と表示し、「平滑破面率」が14~17%を「△」と表示し、18%以上を「×」とした。
(耐食性)
表2における「耐食性」の評価として、上記の15mmの各種試験片を径12mmかつ長さ21mmの棒状の腐食試験片へ加工した後、塩水噴霧試験(50ppmの希薄塩水を35℃で16hr噴霧)を実施した後、試験片の表面を観察し、長径1mm以上の点状錆の数が20個以下のものを、「耐食性評価」の欄に「○」と表示し、21個以上のものを「×」と表示した。
(耐水素脆性)
表2における「耐水素脆性」の評価として、
(1)上記した引張特性の評価と同様の試験片を用い、端部にNi線を電気溶接し、平行部以外を樹脂被膜で覆って水素の浸入を遮断した。この試験片を、0.01Nの硫酸と0.5g/lのチオシアン酸アンモニウムからなる溶液内に浸漬し、陰極チャージ法にて、68A/mm2、30℃、24hrの条件で、水素チャージを行った。
(2)水素チャージ後、直ちに上記の引張特性の評価と同様の試験を実施して絞りを評価し、表2の「水素チャージ後絞り(%)」の欄に、絞りの値を%で示した。
さらに、絞りの変化を、水素チャージ有無の比率で示す相対絞り比(RRA)は、[水素チャージ有り材の絞り]/[水素チャージ無し材の絞り]で評価した。RRAが0.80以上を表2の「RRA」の欄に「○」と表示し、RRAが0.80未満を表2の「RRA」の欄に「×」と表示した。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.15~0.80%、Si:0.15~0.80%、Mn:2.0~10.0%、P:0.050%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0~20.0%、Cr:8.0~18.0%、Mo:0.05~0.50%、Cu:0.20~5.00%、V:0.50~3.00%、Al:0.001~1.000%、N:0.015~0.100%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼において
    V/{4([C]+[N])}=0.5~1.0・・・(1)
    {16([C]+[N])-3[V]}/([Cr]+0.9[Ni]-16[N])=0.10~0.30・・・(2)
    551-462([C]+[N]-0.07[V])-9.2[Si]-8.1[Mn]-13.7[Cr]-29([Ni]+[Cu])-18.5[Mo]≦-100・・・(3)
    2.3[Ni]+3.0[Mo]+5.0[Al]+5.6[Cu]-[Cr]-[Si]-1.2[Mn]≧18.5・・・(4)
    からなる(1)~(4)の式を満足し、
    さらに、50nm以下のV(C、N)析出物が、3.5×10-2μm2中に50個以上、分散して存在することを特徴とする安価で優れた耐水素脆性、機械的性質および耐食性を兼備した高硬度非磁性鋼。
  2. 質量%で、C:0.15~0.80%、Si:0.15~0.80%、Mn:2.0~10.0%、P:0.050%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0~20.0%、Cr:8.0~18.0%、Mo:0.05~0.50%、Cu:0.20~5.00%、V:0.50~3.00%、Al:0.001~1.000%、N:0.015~0.100%を含有し、さらに、B:0.010%以下、Ca:0.050%以下、Mg:0.050%以下の3種から選択したいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなることを特徴とする鋼であり、該鋼において、
    V/{4([C]+[N])}=0.5~1.0・・・(1)
    {16([C]+[N])-3[V]}/([Cr]+0.9[Ni]-16[N])=0.10~0.30・・・(2)
    551-462([C]+[N]-0.07[V])-9.2[Si]-8.1[Mn]-13.7[Cr]-29([Ni]+[Cu])-18.5[Mo]≦-100・・・(3)
    2.3[Ni]+3.0[Mo]+5.0[Al]+5.6[Cu]-[Cr]-[Si]-1.2[Mn]≧18.5・・・(4)
    からなる(1)~(4)式を満足し、
    さらに、50nm以下のV(C、N)析出物が、3.5×10-2μm2中に50個以上、分散して存在することを特徴とする安価で優れた耐水素脆性、機械的性質および耐食性を兼備した水素脆化感受性を抑えた高硬度非磁性鋼。
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