JP7239304B2 - 水系接着剤 - Google Patents

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Description

本発明は、水系接着剤、及びその水系接着用を用いて製造される成形体に関する。
従来、グラスウール、ロックウール及びセラミックファイバー等の無機繊維を用いた断熱材、防音材及び木材ボード製品等の成形体の製造に用いられる組成物として、機械的強度等の性能に優れ、低コストであることからフェノール樹脂組成物が利用されている。
無機繊維を用いた成形体を製造する際、無機繊維に組成物を付着させ、目的とする成形体の形状に、組成物が付着した無機繊維を成形した後、加熱により組成物を硬化させて、目的の成形体を得る。
従来、組成物として、ホルムアルデヒドを含むフェノール樹脂組成物が広く用いられていたが、近年、環境基準が厳しくなり、ホルムアルデヒドを使用しない組成物が望まれている。
特許文献1~3には、ホルムアルデヒドを使用しない組成物として、糖類を主成分とし、ポリカルボン酸のアンモニウム塩又は無機酸アンモニウム塩等を配合した組成物が開示されている。
特許文献1は、少なくとも1種の非還元糖、少なくとも1種の無機酸アンモニウム塩と添加剤、および水から成る、鉱物繊維用のホルムアルデヒドを含まないサイズ剤組成物を開示する(特許文献1請求項1等参照)。
特許文献2は、ファイバーマット上に、ホルムアルデヒドを含まない水性バインダー溶液を吹き付ける工程を含む断熱又は防音繊維ガラス製品を作製する方法を開示し、水性バインダー溶液は、メイラード反応物を含み、メイラード反応物は、(i)ポリカルボン酸のアンモニウム塩等からなるアミン反応物及び(ii)1つ以上の還元糖を有する1つ以上の炭水化物反応物等から選択される(引用文献2請求項1~5等参照)。
特許文献3は、非還元糖と、不飽和モノカルボン酸塩と、無機酸アンモニウム塩とを含むバインダー組成物を開示する(特許文献3請求項1等参照)。特許文献3は、このバインダー組成物を無機繊維に付着させ、無機繊維を集積して集積体を得、集積体を所望の成形体に対応する所定の形状に成形し、バインダー組成物を加熱硬化させ、その後、バインダー組成物を冷却して、成形体を得ることを開示する(特許文献3請求項10、[0057]~[0067]等参照)。
特許第5931901号公報 特許第5628889号公報 特許第6062099号公報
従来のホルムアルデヒドを使用しない組成物を、成形体の製造に用いた場合、ホルムアルデヒドを含むフェノール樹脂組成物と比べ、熱硬化後の強度や弾性率が劣ることがあった。
特許文献1~3の組成物は、ホルムアルデヒドを含まないので環境面では好ましいが、無機繊維成形材や木質成形材の力学的特性(例えば引張弾性率及び引張強度)を十分に向上させることが難しい。
さらに、特許文献1~3の組成物は、硬化速度が遅いので成形材の生産効率を低下させることがある。さらに、製造された成形材は、空気中の水分を吸収し易くなることがあり、成形材の耐水性も低くなる。
本発明は、このような事情を鑑みなされたものであり、ホルムアルデヒドを含むフェノール樹脂組成物と比較しても、成形材の強度及び弾性率等の力学的特性の向上に寄与できる、ホルムアルデヒドを含まない水系接着剤、及びその水系接着剤を用いて得られる成形材を提供することを目的とする。
本研究者らは、鋭意研究を続けた結果、カラメル状に変性した糖類を含む水系接着剤は、硬化速度が速くなり、成形材の効率的な製造に有用であり、成形材の力学的特性をより向上させるだけでなく、耐水性についてもより高いレベルまで向上させることを見いだした。
本発明の態様を以下に記載する。
本発明の一の要旨において、(A)カラメルを含む水系接着剤を提供する。
本発明の一の態様において、(A)カラメルは、(a)糖類の化学構造が(b)ラジカル開始剤によって変化した生成物を含む、上述の水系接着剤を提供する。
本発明の他の態様において、無機酸塩及び有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の(B)硬化触媒を含む、上述の水系接着剤を提供する。
本発明の更なる態様において、(B)硬化触媒がアンモニウム塩を含む、上述の水系接着剤を提供する。
本発明の好ましい態様において、更に、(C)多価アルコールを含む、上述の水系接着剤を提供する。
本発明の他の要旨において、上述の水系接着剤の硬化物を有する、成形材を提供する。
本発明の実施形態の水系接着剤は、(A)カラメルを含むので、硬化速度が速くなり、塗布又は散布された材料の効率良い生産に貢献することができる。
(A)カラメルは、(a)糖類の化学構造が(b)ラジカル開始剤によって変化した生成物を含むので、硬化速度をより高いレベルで向上せることができる。
本発明の実施形態の水系接着剤は、その硬化物を含む成形材の性質を考慮すると、様々な成形材を製造するために有用であるが、無機繊維を含む成形材及び木質材料を含む成形材の製造に最適である。
本発明の実施形態の水系接着剤に含まれる(A-8)カラメルのトータルイオンクロマトグラムを示す。 (A-8)カラメルのクロマトグラムの一部分(ピーク1~3)を示す拡大図である。 (A-8)カラメルのクロマトグラムの一部分(ピーク4~6)を示す拡大図である。 (A-8)カラメルのクロマトグラムの一部分(ピーク7~10)を示す拡大図である。 クロマトグラムのマススペクトルから同定された(A-8)カラメルの化学構造を示す。 クロマトグラムのマススペクトルから同定された(A-8)カラメルの化学構造(続き)を示す。
本発明の実施形態の水系接着剤は、(A)カラメルを含む。
本明細書において、カラメルとは、一般に糖類を加熱等して(例えば、約70~約200℃、約80℃~約200℃、又は約90℃~約200℃に)得られる褐色の生成物であり、糖類の分解物、酸化物、縮合物、重合物等を含む。
「カラメル化」は、糖類が他成分(例えば、タンパク質やアミノ酸のアミノ基等)と反応することなく、糖類のみが熱等によって分解、酸化、結合等する反応をいう。
これに対し「メイラード反応」とは、糖類と、タンパク質やアミノ酸とが加熱されることによって、糖類とたんぱく質等とが結合し、褐色生成物を生じさせる反応をいう。
すなわち、カラメルは、メイラード反応で得られる褐色生成物と異なる物質である。
本発明において、(A)カラメルは、(a)糖類が(b)ラジカル開始剤の存在下で、加熱すること(例えば、約70~約200℃、約80℃~約200℃、又は約90℃~約200℃)によって変性した糖類(変性糖)を有することが好ましい。変性糖は、糖類が他成分(例えば、アミノ酸及びタンパク質等)と反応したものではなく、(a)糖類の環状アセタール構造が(b)ラジカル開始剤によって変化したと推察され、カラメルに該当する。
変性糖は、例えば、カルボキシル基及びフラン環等の化学構造を有し、(A)カラメルは、変性糖が有するそれらの化学構造を含むことが好ましい。
一般的に、(a)糖類は、ヒドロキシ基とカルボニル基(アルデヒドまたはケトン)をもつ直鎖(open chain) 構造と、自己のヒドロキシ基を巻き込んで環状アセタール(ないしはケタール)の環構造の二つの構造をとることができる。(A)カラメルは、(a)糖類の環状アセタール構造が、熱の代わりに、又は熱とともに、(b)ラジカル開始剤によって酸化し、カルボキシル基やフラン構造が生成し、さらに分解及び/又は高分子量化した化合物を含むと推察される。
本発明の実施形態の水系接着剤は、(A)カラメルがカルボキシル基やフラン構造を含むことによって、硬化速度が高まり、成形材の引張強度及び引張弾性率等の力学的特性を向上させることができる。
本明細書において、「(a)糖類」とは、一般に糖類と呼ばれ、本発明が目的とする水系接着剤を得られる限り特に制限されることはない。(a)糖類は、例えば、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、多糖類、及びその他オリゴ糖を含む。
「単糖類」として、具体的に以下のものを例示できる。
グルコース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フコース、フクロース及びラムノース等のヘキソース;
ケトトリオース(ジヒドロキシアセトン)及びアルドトリオース(グリセルアルデヒド)等のトリオース;
エリトリロース、エリトロース及びトレオース等のテトロース;及び
リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース及びデオキシリボース等のペントース。
「二糖類」として、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース及びセロビオースを例示できる。
「三糖類」として、例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース及び1-ケストース(GF2)を例示できる。
「四糖類」として、例えば、アカルボース、スタキオース及びニストース(GF3)を例示できる。
「多糖類」として、例えば、グリコーゲン、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、デキストリン、グルカン、N-アセチルグルコサミン、キチン質及びイヌリン(フラクトフラノシルニストース:GF4を含む)を例示できる。
「その他のオリゴ糖」として、例えば、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖及びマンナンオリゴ糖を例示できる。
これらの「糖類」は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
「(a)糖類」は、スクロースに由来する構造を含むことが好ましい。スクロースは、グルコースとフルクトースが結合した糖であり、加水分解するとグルコースとフルクトースを生じる。
(a)糖類は、更に、例えば、糖蜜を含むことができる。「糖蜜」とは、サトウキビ、テンサイ、サトウカエデ及びオウギヤシ等の砂糖原料から得られる繊維質および不純物を取り除いた糖液(シロップ)であるか、又は、砂糖を原料から精製するときに得られ、糖分以外の成分も含む粘性のある液体(モラッセス)をいう。
糖蜜は、例えば、廃糖蜜、氷糖蜜、白蜜、粗糖、砂糖溶液、及び砂糖原料(サトウキビ、テンサイ、サトウカエデ及びオウギヤシ等)の絞り汁を含む。
糖蜜は、廃糖蜜、氷糖蜜及び粗糖から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
本明細書において、(b)ラジカル開始剤とは、ラジカル反応を進めるために穏和な反応条件でラジカルを発生させる化合物をいう。ラジカルとは、不対電子を持つ原子や分子、あるいはイオンのことをさす。一般的に、フリーラジカル又は遊離基と称される。
ラジカル開始剤は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限されることはなく、例えば、アゾ化合物及び過酸化物等が該当する。
アゾ化合物は、熱および光によって分解し、炭素ラジカルを発生するアゾ基(R-N=N-R’)をもつ化合物である。具体的には、2,2’-アゾビスブチロニトリル(AIBN)が挙げられる。
過酸化物は、有機過酸化物、無機過酸化物、過酸化水素に大別される。
有機過酸化物は、ペルオキシド構造(-O-O-)を含む化合物であり、例えば、過酸化ベンゾイルが代表的である。
無機過酸化物は、過酸化物イオン(O 2-)を含む化合物であり、具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。
過酸化水素とは、化学式Hで表される化合物である。
水性媒体への溶解性や、(a)糖類との相溶性を考慮すると、本発明では、(b)ラジカル開始剤は、過酸化物を含むことが好ましい。
変性糖は、(a)糖類を(b)ラジカル開始剤存在下で加熱して得ることができるが、その際、更に(c)アミン類を存在させて加熱してよい。
本明細書では、(c)アミン類は、アンモニア及びアミンを含む総称とする。
アンモニアとは、分子式がNHで表される無機化合物であり、常温常圧で無色の気体である。
アミンとは、アンモニアの水素原子が炭化水素基及び芳香族原子団等の置換基で置換された化合物の総称であり、置換された水素の数が1つであれば第一級アミン、2つであれば第二級アミン、3つであれば第三級アミンである。更に置換基が第三級アミンに結合して第四級アンモニウムカチオンとなる。
アミンは、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンに大別される。
脂肪族アミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、カテコールアミン等が挙げられる。
複素環式アミンとしては、ピロリジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、オキサゾール、チアゾール等が挙げられる。
本発明の実施形態の水系接着剤は、(c)アミン類がアンモニアを含むことが好ましい。(c)アミン類がアンモニアを含む場合、水系接着剤の硬化物を含む成形材料の力学的特性(引張強度、引張弾性率)が向上する。
本発明の実施形態の水系接着剤は、(B)硬化触媒を含むことが好ましい。(B)硬化触媒は、水系接着剤の硬化速度を向上することができ、成形材の引張強度及び引張弾性率等の力学的特性を向上させることができる。
(B)硬化触媒としては、無機酸塩と有機酸塩が挙げられる。
無機酸塩としては、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されることはないが、アンモニウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩及びマグネシウム塩から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、特に、無機酸アンモニウム塩を含むことが最も望ましい。無機酸アンモニウム塩を含む場合、本発明の実施形態の水系接着剤は、硬化速度がより優れ、成形材の引張強度及び引張弾性率等の力学的特性をより向上させることができる。
無機酸アンモニウム塩とは、一般に、無機酸のアンモニウム塩と呼ばれるものであって、本発明が目的とする水系接着剤を得ることができる限り、特に制限されることはない。
「無機酸アンモニウム塩」として、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、ハロゲン化アンモニウム塩(例えば、塩化アンモニウム、フッ化アンモニウム、臭化アンモニウム及びヨウ化アンモニウム)、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム及びリン酸二水素アンモニウムを例示することができる。
「無機酸アンモニウム塩」として、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸水素アンモニウム及びリン酸二水素アンモニウムから選択される少なくとも一種が好ましい。
「無機酸アンモニウム塩」が、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸水素アンモニウム及びリン酸二水素アンモニウムから選択される一種である場合、本発明の実施形態の水系接着剤は、より優れた硬化性を有し、成形材の物性(引張強度及び引張弾性率等の力学的特性)をより向上させることができる。
「無機酸アンモニウム塩」は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
「無機酸アンモニウム塩」として、市販品を使用することができる。
本発明では、無機酸塩は、「無機酸アンモニウム塩」の他に、無機酸金属塩を含むことができ、例えば、カリウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩及びマグネシウム塩から選択される少なくとも1種を含むことができる。
「無機酸金属塩」として、具体的には、
硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、ハロゲン化カリウム(例えば、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム及びヨウ化カリウム)、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム及びリン酸二水素カリウム等のカリウム塩;
硫酸カルシウム、硫酸水素カルシウム、ハロゲン化カルシウム(例えば、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム及びヨウ化カルシウム)、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム及びリン酸二水素カルシウム等のカルシウム塩;
硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、ハロゲン化ナトリウム(例えば、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム及びヨウ化ナトリウム)、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウム等のナトリウム塩;及び
硫酸マグネシウム、硫酸水素マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム(例えば、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム及びヨウ化マグネシウム)、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム及びリン酸二水素マグネシウム等のマグネシウム塩
などを例示できる。
本発明では、「無機酸金属塩」は、硫酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムから選択される少なくとも一種を含むことが特に好ましい。
「無機酸金属塩」は、硫酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムから選択される少なくとも一種を含む場合、本発明の実施形態の水系接着剤を用いて製造された成形材は、より低温で、かつより短時間、加熱及び加圧することで硬化し、引張強度及び引張弾性率がより高くなりえる。
「無機酸金属塩」は、塩化マグネシウムを含むことが最も好ましく、塩化マグネシウムを含む場合、本発明の実施形態の成形材は、より低温で、かつより短時間、加熱及び加圧することで硬化し、引張強度及び引張弾性率がさらに高くなりえる。
有機酸塩についても、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されることはない。無機酸塩と同様、アンモニウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩及びマグネシウム塩から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、特に、有機酸アンモニウム塩を含むことが最も望ましい。
有機酸塩とは、有機酸と金属イオンとが結合してできた化合物である。有機酸としては、カルボン酸が挙げられる。カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、桂皮酸、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、α,β-メチレングルタル酸等が挙げられる。
本発明における有機酸塩の好ましい態様としては、クエン酸アンモニウム、クエン酸トリアンモニウム、シュウ酸アンモニウム、酢酸アンモニウムが挙げられ、特に、クエン酸アンモニウムが好ましい。
本発明の実施形態の水系接着剤は、(A)カラメルと(B)硬化触媒の総重量100重量部に対し、(B)硬化触媒は2.5~5.0重量部であることが好ましく、特に3.0~5.0重量部であることが好ましい。(B)硬化触媒の配合量が上記範囲にあることによって、水系接着剤は、硬化速度がより向上し、得られる成形材の強度も優れたものとなる。
本発明の実施形態の水系接着剤は、(C)多価アルコールを含むことが好ましい。(C)多価アルコールを含むことによって、水系接着剤の硬化速度が向上し、成形材の生産効率を高めることが可能となる。
(C)多価アルコールの沸点は、200℃以上が好ましく、200℃~285℃が望ましく、200~280℃がさらに望ましく、220~260℃が最も望ましい。尚、本明細書において、沸点とは、液体が沸騰する時の温度をいう。
(C)多価アルコールの沸点が200℃を超えることによって、水系接着剤の粘度上昇を抑えつつ、硬化速度が向上する。成形材に塗工する際の水系接着剤の粘度が抑えられることによって、成形材の物性(特に、せん断強度)がより優れたものとなる。(C)多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロールが挙げられる。これら多価アルコールは、単独で用いられても、複数種類が用いられても良く、特に、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール及びトリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種を含むのが好ましく、ジエチレングリコール及び/又はジプロピレングリコールを含むのが最も望ましい。
本発明の実施形態の水系接着剤が(A)カラメル、(B)硬化触媒、(C)多価アルコールを含む場合、(A)カラメルと(B)硬化触媒の総重量100重量部に対し、(C)多価アルコールが5.0~15.0重量部含まれることが好ましい。
(C)多価アルコールの配合量が上記範囲にあることによって、本発明の実施形態の水系接着剤は、粘度上昇が抑えられつつ、硬化速度がより向上する。成形材に塗工する際の水系接着剤の粘度が抑えられることによって、成形材の物性(特に、せん断強度)がより優れたものとなる。
本発明の実施形態の水系接着剤は、上述の成分(A)~(B)、必要に応じ成分(C)、及びその他の成分が水に溶解若しくは分散した形態(溶液、懸濁液又は分散液の形態)を有し、様々な材料(例えば、無機繊維、木質材料)、基材、被着体等に塗布され、成形され、硬化する。
本明細書において「水」とは、一般的に「水」と呼ばれ、本発明が目的の水系接着剤を得ることができる限り、特に制限されることはないが、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、水道水及び工業用水等を例示することができる。
本発明の実施形態の水系接着剤に含まれる水の量は、本発明が目的とする水系接着剤を得ることができる限り特に制限されることはなく、成分(A)~(B)、必要に応じ成分(C)、任意成分及び添加剤などによって、適宜選択される。
本発明の実施形態の水系接着剤は、水溶液、懸濁液、又は水分散液の形態を有するので、様々な材料(例えば、無機繊維、木質材料)、基材、被着体等への塗布及び散布が容易である。更に、本発明の実施形態の水系接着剤は、有機溶媒を好ましくは使用せず、地球環境の保護、及び作業者の作業環境の保護に優れる。
本発明の実施形態の水系接着剤は、その他の成分を含むことができる。そのような成分として、例えば、貯蔵安定剤、力学特性改良剤、増粘剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤及び分散安定化剤等を例示できる。
貯蔵安定剤として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、エルソルビン酸等の多価カルボン酸を例示できる。
力学特性改良剤として、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、フルフリルアルコール、(メタ)アクリル酸グリシジル等の側鎖に反応性を有するビニル系重合性モノマーを例示できる。
増粘剤とは、接着剤を加圧し加熱する際に、その粘度が低下することを防止するために使用し、本発明が目的とする水系接着剤を得ることができる限り特に制限されることはない。そのような増粘剤は、例えば、有機系増粘剤と無機系増粘剤に分類される。
無機系増粘剤として、例えば、クレイ、タルク及びシリカなどを例示できる。
有機系増粘剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース、植物粉末の小麦粉、コーンスターチ、上新粉、クルミ粉及びヤシ粉等の天然系増粘剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成系増粘剤を例示できる。
これらの増粘剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
本発明の実施形態の水系接着剤は、上述の(A)~(B)、水、必要に応じて成分(C)及び必要に応じてその他の成分などを加えて、攪拌して製造することができる。(A)~(C)の各成分、水及びその他の成分を加える順序、各成分及び水を加える方法及び攪拌方法などは、本発明が目的とする水系接着剤を得ることができる限り、特に限定されることはない。
本発明の水系接着剤を用いて得られる材料として、無機繊維、珪酸カルシウム、石膏、ロックウール、コンクリート、セメント、モルタル及びスレート等の材料が種々の形態(板、ブロック等)で得られた成形材が挙げられる。
無機繊維としては、例えばロックウール、ストーンウール、ミネラルウール、グラスウール、ミネラルグラスウール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明では、これら無機繊維のいずれか1種を単独で用いるか、2種以上を組み合わせて用いて、無機繊維成形材を製造することが好ましい。無機繊維としては、汎用性、断熱性、防音性等の観点から、グラスウール又はロックウールを用いることが好ましい。
本発明では、無機繊維成形材以外にも、本発明の実施形態の水系接着剤で木材(木材チップ、木材繊維等)、鋳物砂等を成形することで、木質材、鋳型等の成形材を提供することができる。
本発明の実施形態の木質材は、本発明の実施形態の水系接着剤と木質要素(原料)(例えば、木質又は草本植物の繊維、小片及び単板など)との混合物である。水系接着剤が木質要素に塗布又は散布され、木質要素が加熱され、結合(接着)され、成形されて木質材が製造される。
木質要素(原料)として、木材から切削等して得られる、例えば、挽き板、単板、木質ストランド、木質チップ、木質繊維及び植物繊維などを例示することができる。
木質材として、例えば、木質要素が接着剤によって接着されて得られる、集成材、合板、パーティクルボード、繊維板及び中密度繊維板(MDF)等を例示できる。
本発明の実施形態の水系接着剤は、種々の被着体(例えば、無機繊維、紙、木質繊維及び合板等を接着するために使用することができる。
本発明の実施形態の成形材を製造する場合、水系接着剤の塗布量、塗布方法、成形圧力、成形温度及び成形時間などの製造条件は、成形材の種類、形状及び寸法などによって、適宜選択され、本発明が目的とする成形材を得ることができる限り、特に制限されることはない。成形材の製造効率を考慮すると、無機繊維を水系接着剤に含浸する方法や、水系接着剤をスプレー等で無機繊維や木質要素へ散布する方法、ロール等で水系接着剤を塗布する方法が好ましい。
成形圧力は、0.5~6.0MPaであることが好ましい。成形圧力が、6.0MPa以下の場合、圧力が大きすぎないので、成形材に痛みを生じにくい。成形圧力が、0.5MPa以上の場合、成形材の構成要素を十分に接着することができる。
成形温度は、140~230℃であることが好ましく、140~200℃であることがより好ましく、140~180℃であることが特に好ましい。成形温度が、230℃以下の場合、温度が高すぎず、エネルギーの消費が小さく、成形材も痛みにくい。成形温度が、140℃以上の場合、接着が適度の時間で進行し得る。
成形時間は、3~10分であることが好ましく、3~9分であることがより好ましく、3~7分であることが特に好ましい。成形時間が、10分以下の場合、時間が長くかかりすぎないので、エネルギーの消費が小さく、成形材も痛みにくい。成形時間が、3分以上の場合、適度の接着時間が確保され、適度の接着強度を確保できる。
上述のようにして得られる成形材は、従来と同様に、例えば、建築資材及び家具等、種々の用途に使用することができる。
以下に本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、これらの例は本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
水系接着剤の成分として、以下の成分を準備した。尚、本明細書に記載された部数は重量部を意味する。
(a)糖類
(a-1)スクロース(和光純薬(株)社製)
(a-2)グルコース(和光純薬(株)社製)
(a-3)フルクトース(和光純薬(株)社製)
(b)ラジカル開始剤
(b-1)過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学(株)社製)
(b-2)過硫酸ナトリウム(三菱ガス化学(株)社製)
(b-3)32.5%過酸化水素水(和光純薬(株)社製)
(c)アミン類
(c-1)25%アンモニア水(和光純薬(株)社製)
(c-2)ヘキサメチレンジアミン(和光純薬(株)社製)
(c-3)ピペラジン6水和物(和光純薬(株)社製)
(B)硬化触媒(無機酸塩、有機酸塩)
(B-1)硫酸アンモニウム(和光純薬工業(株))
(B-2)リン酸水素二アンモニウム(和光純薬工業(株))
(B-3)リン酸二水素アンモニウム(和光純薬工業(株))
(B-4)クエン酸アンモニウム(和光純薬工業(株))
(B’-5)オレイン酸 (和光純薬工業(株))
(C)多価アルコール
(C-1)ジエチレングリコール(和光純薬工業(株) 沸点245℃)
(C-2)トリエチレングリコール(和光純薬工業(株) 沸点285℃)
(C-3)ジプロピレングリコール(和光純薬工業(株) 沸点232℃)
(C-4)トリプロピレングリコール(和光純薬工業(株)沸点270℃)
(C-5)グリセロール(和光純薬工業(株) 沸点290℃)
<(A)カラメルの製造>
(A-1)カラメルの製造
409gの水、962gの(a-1)スクロースを2リットルの反応容器に入れた。
攪拌翼、還流管及び温度計等を反応容器へ取り付けた後、同反応容器を95℃の温浴につけ、混合物を加熱しながら攪拌し、(a-1)スクロースを水に溶解させた。
次に38gの(b-1)過硫酸アンモニウムと62gの水を別の容器に入れて、(b-1)を水に溶解させ、ラジカル開始剤溶液(38重量%)を調製した。この溶液を滴下漏斗に入れ、この滴下漏斗を反応容器に取り付けた。
反応容器内のスクロース水溶液を攪拌しながら、このスクロース水溶液が90℃以上に到達したことを確認後、滴下漏斗からラジカル開始剤溶液100gを4時間かけてスクロース水溶液に滴下した。滴下終了後、90℃以上で、反応容器内の混合物をさらに1時間攪拌し熟成させた後、40℃以下まで冷却して褐色の飴状物質を得た。
カラメルの水溶液(褐色飴状物質)は、ラジカル開始剤を含み、固形分濃度が68.0重量%であった。尚、固形分濃度とは、水溶液中に溶解している(A-1)カラメルと(b-1)過硫酸アンモニウムの総量から算出される。
(A-2)~(A-5)及び(A-7)カラメルの製造
表1に示される組成に基づき、ラジカル開始剤溶液(38重量%)を調製したことを除き、(A-1)カラメルの製造方法と同様の方法を用いて各カラメルを製造した。
(A-6)カラメルの製造
表1に示される組成に基づき、33%過酸化水素水を用いてラジカル開始剤溶液を調製したことを除き、(A-1)カラメルの製造方法と同様の方法を用いてカラメルを製造した。
(A-8)~(A-14)カラメルの製造
表1に示される組成に基づき、水、(a)糖類、(b)ラジカル開始剤と(c)アミン類で攪拌溶解させた。(A-8)~(A-12)及び(A-14)については(A-1)と同様の方法を用いて製造し、(A-13)については(A-6)と同様の方法を用いて製造した。
Figure 0007239304000001
尚、(A)カラメルの構造を分析機器で分析し、(a)糖類の構造との相違を立証した。
具体的には、図1に示されるように、例えば、(A-8)カラメルの構造をLC/FT-MS(Thermo Fischer Scientific社製 Ultimate 3000)で分析し、トータルイオンクロマトグラムを得た。クロマトグラムのピークを図2~4に示すように拡大し、ピーク1~10のマススペクトルから各ピークの化合物の構造を解析した。各ピークの化合物の構造を図5(図5-1及び5-2)に示す。
図5に示すように、(A-8)カラメルはカルボキシル基(ピーク4,ピーク6)とフラン構造(ピーク5)を含むことが確認され、カラメルであることが立証された。他の(A)カラメルについても、同様の構造を有することが予想され、成分(A)は(a)糖類がラジカル開始剤によって酸化されたカラメルであることは明らかである。
<水系接着剤の製造>
参考例1)水系接着剤の製造
(A-1)カラメル及び(B-1)硫酸アンモニウムを表2に示す割合で蒸留水に加え、常温で攪拌して溶解し、アンモニア水でpHを6.0~9.0に調整し、水系接着剤を得た。(A-1)、(B-1)及び蒸留水の割合は表2に示すとおりである。表2に示される配合割合は重量部であり、(A-1)の重量部数は固形分換算値である。
参考例2~18、実施例19~28)及び(比較例1~7)水系接着剤の製造
参考例2~18、実施例19~28については、表2,3に示される組成、配合に基づき、参考例1と同様の方法を用いて水系接着剤を製造した。比較例1~7についても、表4に示された組成及び配合に基づき、参考例1と同様の方法を用いて水系接着剤を製造した。
Figure 0007239304000002
Figure 0007239304000003
Figure 0007239304000004
実施例及び比較例の水系接着剤について、その性能を評価した。評価項目及び評価基準は、以下のとおりである。
<水系接着剤の硬化後固形分濃度の測定>
実施例、比較例で調整した水系接着剤を1gアルミカップにとり105℃で20分間乾燥後、190℃の電気炉の中で15分間硬化させた。硬化後固形分濃度は以下の計算式で求めた。
硬化後固形分濃度(%)=硬化後の重量×100/乾燥・硬化前の樹脂量
以下に記述する測定は全て、水系接着剤に水を添加して、固形分濃度が33重量%になるように調整して、評価用のサンプル液を得た。このサンプル液を、以下に記載する全ての測定で使用した。
<硬化速度:ゲルタイム測定>
JIS6910 B法に準じ、160℃のゲルタイムと、180℃のゲルタイムを測定した。評価基準を以下に示す。
160℃及び、180℃に加熱したホットプレート上に0.2mlのサンプル液を垂らし、サンプル液をスプーンでかき混ぜながら測定をおこなった。ゲルタイムの判定基準は、樹脂が硬化して糸が引かなくなった時点をゲルタイムとした。
ゲルタイムの評価基準(160℃)
◎・・・・・・150秒未満
○・・・・・・150秒以上180秒未満
△・・・・・・180秒以上210秒未満
×・・・・・・210秒以上
ゲルタイムの評価基準(180℃)
◎・・・・・・70秒未満
○・・・・・・70秒以上80秒未満
△・・・・・・80秒以上90秒未満
×・・・・・・90秒以上
<付着性評価>
ゲルタイム測定で用いた160℃に加熱したホットプレートに、サンプル液0.2mlを垂らし、10秒後)、20秒後、30秒後、40秒後にスプーンでサンプル液を掬いとり、コピー紙(幅:10mm、長さ:50mm)に塗りつけた。その直後に、このコピー用紙と別のコピー紙1枚をサンプル液を介して重ね合わせ、1分後、重ね合わせたコピー紙を手で剥がし、コピー紙が破れるか否かで水系接着剤(サンプル液)の付着性を評価した。付着性の評価基準は以下のとおりである。
付着性評価基準(水系接着剤が粘度上昇する迄の時間(秒))
◎・・・・・・40秒
○・・・・・・30秒
△・・・・・・20秒
×・・・・・・10秒
<耐水性:溶出率試験>
水系接着剤に水を添加し、固形分濃度が33重量%になるよう調製し、調製された組成物を評価用のサンプル液とした。
30mm×30mmの正方形にカットしたガラス繊維フィルター(ワットマン社 製品名GF/A)重量約0.05gに、サンプル液0.5mlを均一に塗布した。
ガラス繊維フィルター上のサンプルを105℃で30分間乾燥させた後、190℃のオーブン内に15分間放置し、試験片とした。
試験片を常温水50mlに24時間浸漬した後、130℃で1時間乾燥した。浸漬した水に、試験片から溶出した接着剤の量を求め、下記式で水の溶出率を求め、耐水性を評価した。
(数式1)
試験片に存する接着剤の割合=[試験片(水に浸漬処理後)-ガラス繊維フィルターの重量]/[試験片(190℃処理後)-ガラス繊維フィルターの重量]
(数式2)
溶出率(%)=(1-試験片に残存する接着剤の割合)×100
溶出率に基づく耐水性の評価基準を以下に示す。
溶出率評価基準
◎・・・・・・2.0%未満
○・・・・・・2.0%以上4.5%未満
△・・・・・・4.5%以上6.0%未満
×・・・・・・6.0%以上
<力学的特性:引張強度及び引張弾性率の測定>
水系接着剤に水を添加し、固形分濃度が33重量%になるよう調製し、調製された組成物を評価用のサンプル液とした。
20mm×100mmの長方形にカットしたガラス繊維フィルター(ワットマン社 製品名GF/A)重量約0.10gに、サンプル液1.0mlを均一に塗布した。
ガラス繊維フィルター上のサンプルを105℃で30分間乾燥させた後、190℃のオーブン内に15分間放置し、試験片とした。
試験片を恒温恒湿器(23℃、湿度50%)に入れ、2時間放置後、引張試験を行った。引張試験機としてインストロン社製モデル5585を用い、引張速度25.4mm/分で引張強度と引張り性率を測定した。引張り強度は破断強度(最大強度)値とした。
引張強度評価基準
◎・・・・・・強度が15MPa以上
○・・・・・・強度が14MPa以上15MPa未満
△・・・・・・強度が12MPa以上14MPa未満
×・・・・・・強度が12MPa未満
引張弾性率は、試験片のたるみを除く、歪量0.1%の傾きから求めた。
引張弾性率の評価基準
◎・・・・・・弾性率が1100MPa以上
○・・・・・・弾性率が1000MPa以上1100MPa未満
△・・・・・・弾性率が900MPa以上1000MPa未満
×・・・・・・弾性率が900MPa未満
<せん断強度測定>
せん断強度試験はJIS K 6850に準じて実施した。
ゲルタイム測定で用いた160℃に加熱したホットプレートにサンプル液0.2mlを垂らし、サンプル液を20秒後にスプーンで掬いとり、ガラス板(厚み: 幅:25mm、長さ:100mm)に塗りつけた。1分後、このガラス板と別のガラス板1枚をサンプル液を介して重ね合わせた。重ねられたガラス板を190℃の電気炉で15分間加熱し、サンプル液を硬化させ、ガラス片を貼り合わせることで試験片とした。
せん断試験を実施する際、試験片のつかみ部に、エポキシ樹脂を介して合板を接着し、つかみ部とした。
せん断試験機としてインストロン社製モデル5585を用い、引張速度2.0mm/分でせん断強度を測定した。最大強度値をせん断強度として評価した。
せん断強度の評価基準は以下のとおりである。
せん断強度評価基準
◎・・・・・・強度が0.6MPa以上
○・・・・・・強度が0.5MPa以上0.6MPa未満
△・・・・・・強度が0.4MPa以上0.5MPa未満
×・・・・・・強度が0.4MPa未満
表2に示すように、参考例1~18の水系接着剤は、(A)カラメルを含むので、硬化速度が速く、耐水性も優れる。得られた成形材も、引張強度及び引張弾性率の双方が優れる。
実施例19~28の水系接着剤は、表3に示すように、硬化速度や耐水性に優れるだけでなく、成形基材への付着性にも優れる。従って、成形材に水系接着剤が均一に塗工されるので、成形材の物性もより高くなる。実施例19~28の成形材は、引張強度と引張弾性率に優れるだけでなく、せん断強度にも優れる。成形材のせん断強度の向上は、水系接着剤の付着性が優れることに起因する。
これに対し、表4に示すように、比較例1~7の水系接着剤は、(A)カラメルを含まないので、硬化速度が著しく遅く、耐水性にも乏しく、成形材料の生産効率を低下させることが実証された。比較例1~7の成形材は、実施例の成形材と比較すると、引張強度、引張弾性率が劣る。
本発明は、水系接着剤を提供する。本発明に係る水系接着剤は、ガラス繊維等の無機繊維や、木質要素を成形する際に用いられる。

Claims (4)

  1. (A)カラメル、
    無機酸塩及び有機酸塩から選ばれる少なくとも1種の(B)硬化触媒、及び
    (C)多価アルコール
    を含み
    (A)カラメルは、(a)糖類の化学構造が(b)ラジカル開始剤によって変化した生成物を含み、
    (a)糖類は、スクロース、グルコース、フルクトースから選ばれた少なくとも1種である、
    水系接着剤。
  2. (A)カラメルと(B)硬化触媒の総重量100重量部に対し、(C)多価アルコールが5.0~15.0重量部含まれる、請求項1に記載の水系接着剤。
  3. (B)硬化触媒がアンモニウム塩を含む、請求項1又は2に記載の水系接着剤。
  4. 請求項1~のいずれかに記載の水系接着剤の硬化物を有する、成形材。
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